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【医師監修】腱鞘炎とは|症状・原因・治療法から重症度のチェック方法まで解説

「腱鞘炎とはどのような疾患か知りたい」「手首や指の痛みで日常生活に支障を感じている」といった疑問や悩みをお持ちの方もいるでしょう。
腱鞘炎は、手や指を動かす腱を包む「腱鞘」に炎症が起こる疾患で、軽症であればセルフケアで改善が見込めるケースもあります。しかし、症状が進行すると医療機関での治療が必要になることもあるため、早めの対処が大切です。
そこで今回は、腱鞘炎とは何か、主な症状や原因から治療法までを解説します。重症度チェックやセルフケアの方法もまとめているので、腱鞘炎でお悩みの方は参考にしてください。
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目次
腱鞘炎とは|主な症状について
腱鞘炎には、「ドケルバン病」と「ばね指」の2種類があります。下表のように、手首に痛みを伴う「ドケルバン病」に対し、指に症状が現れるのが「ばね指」です。
種類 |
ドケルバン病 |
ばね指 |
---|---|---|
症状 |
|
|
腱鞘炎が重症化すると痛みで思うように手や指を動かせなくなり、日常生活に支障をきたします。
- 箸が持てない
- フライパンが持てない
- ペットボトルの蓋を開けられない
- 硬貨を掴めない
- タオルが絞れない など
かつて、腱鞘炎はスポーツ選手や楽器の演奏者などに多く現れており、一種の職業病とされてきました。しかし、近年はパソコンやスマホの使用などにより、職業を問わず多くの人が腱鞘炎に悩まされています。
腱鞘炎の原因
腱鞘炎の主な原因は手首や指の使いすぎです。同じ動作を繰り返すことで腱と腱鞘に摩擦が生じ、炎症を引き起こします。たとえば、長時間のパソコン作業やスマホ操作、ピアノやギターといった楽器演奏は腱に大きな負担がかかる代表例です。
ほかにも、加齢による腱の柔軟性低下や、更年期や産後のホルモンバランスの変化なども腱鞘炎の発症リスクを高める原因とされています。
腱鞘炎は、症状を無視して手部を使い続けると悪化するため注意が必要です。症状が現れたら、できるだけ安静にして負担をかけないよう心がけましょう。
腱鞘炎の原因となる使いすぎを防ぐための注意点
腱鞘炎にならないためには、原因となる手首や指の使いすぎを防ぐ必要があります。
パソコンやスマホ、ピアノの使用時における注意点について、以下で詳しく見ていきましょう。
パソコンの使用
腱鞘炎を防ぐためには、長時間のパソコン使用に注意が必要です。キーボードを使ったタイピングやマウス操作を繰り返していると、手首や指に炎症が起こりやすくなります。たとえば、タイピングの際に手首を反らした状態を続けたり、マウスを強く握って操作したりする習慣は大きな負担になります。
パソコン使用時における手首と指の使いすぎを防ぐポイントは、以下のとおりです。
- キーボードの高さを調整する
- リストレストを使用する
- 30分〜1時間ごとに休憩を取る など
作業環境を整えつつ、意識的に休息を取り入れることで、腱鞘炎の発症リスクを減らせます。
スマホの使用
スマホの使いすぎも腱鞘炎の原因の一つです。片手で長時間スマホを操作し続けると親指の腱に負担が集中し、炎症を引き起こします。とくに、親指での連続スクロールやゲーム操作、寝転びながらの片手持ちはリスクが高い行動だといえます。
腱鞘炎の発症リスクを減らすためにも、スマホの使用時は以下のような対策をしましょう。
- 両手でスマホを持って操作する
- スマホスタンドを活用する
- 時間を区切ってスマホ操作する など
親指を中心に過度な負担をかけない習慣を意識することで、スマホ腱鞘炎を未然に防ぐことが可能です。
ピアノの演奏
ピアノの演奏も腱鞘炎の原因になります。手首や指を使って長時間同じ動作を繰り返すことで、腱と腱鞘に摩擦が生じるためです。とくに、過度な練習や力みすぎた演奏は、手首や指に大きなストレスを与えます。
腱鞘炎を防ぐため、ピアノの演奏時には以下の点に注意しましょう。
- 適度に休憩をはさむ
- 演奏前後にストレッチする習慣を取り入れる
- 正しい姿勢で演奏する
- 力を抜いてリラックスして演奏する
演奏時の姿勢に注意し、痛みを感じたらすぐに休むようにすると、ピアノ腱鞘炎のリスクを減らせます。
腱鞘炎の重症度チェック
腱鞘炎の重症化を防ぐためには、早期発見が欠かせません。腱鞘炎の重症度は、以下の6段階でチェックできます。
- 筋肉痛のような痛みを感じる
- 手首や手を動かしているときに痛みを感じる
- 安静時にも痛みを感じる
- 日常生活において頻繁に痛みを感じる
- 日常生活に支障が出る
- 強い痛みに悩まされる
腱鞘炎になると、手首や手に筋肉痛のような重みを感じるようになります。動かしているときに痛みが現れるようになると、多くの人が「腱鞘炎かもしれない」と自覚し始める段階です。たまに痛みを感じる程度であれば、安静にしているだけで症状が改善する可能性もあります。
しかし、手首や手を動かしていなくても痛みを感じたり、日常生活に支障がでたりするようになったら、腱鞘炎が重症化しているサインです。腱鞘炎は重症化すると外科的治療が必要になるケースもあります。「このくらいの痛みなら大丈夫だろう」と放置せず、早めに医療機関を受診するようにしてください。
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腱鞘炎の治療法
腱鞘炎の治療は、症状の程度によって選択肢が変わります。軽度であれば保存療法で改善が見込めますが、炎症や痛みが強い場合にはステロイド注射や手術を検討するケースもあります。腱鞘炎の代表的な治療法を下表にまとめました。
治療法 |
内容 |
特徴 |
---|---|---|
保存療法 |
|
|
ステロイド注射 |
患部にステロイドを注入する |
|
手術療法 |
腱鞘を切開して腱の動きを改善させる |
|
腱鞘炎は必ずしも手術が必要な疾患ではなく、多くは保存療法で改善が見込めます。ただし、激しい痛みが続く場合や生活に支障がある場合は、早めに医療機関を受診して適切な治療法を選択することが大切です。
再生医療による腱鞘炎の治療について
近年は、従来のステロイド注射や手術療法に加えて、再生医療による腱鞘炎の治療も注目されています。再生医療には、幹細胞を採取・培養して注射する幹細胞治療や、血液から血小板を分離して作製した多血小板血漿(PRP)を利用するPRP療法があります。
再生医療は、従来の治療で効果が得られない場合の選択肢になる一方で、保険適用外の治療も多く専門医との十分な相談が必要です。なお、当院の幹細胞治療では、米粒2〜3粒ほどの脂肪から治療に必要な量の細胞を培養できるため、従来の治療法と比べて身体への負担が少なくて済む点が特徴です。
以下のページでは、再生医療による治療法や症例などを詳しく紹介しています。腱鞘炎の治療における再生医療の可能性について知りたい方は、ぜひご覧ください。

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腱鞘炎のセルフケア方法
腱鞘炎は、軽度であれば自宅でのセルフケアによって症状を和らげる効果が期待できます。ストレッチや食事改善、ツボ押しなど、日常生活に取り入れやすい方法を実践することで、痛みの緩和や再発予防にもつながります。
以下で、具体的なセルフケア方法を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
ストレッチ
腱鞘炎のセルフケアとして、以下のような手首や指のストレッチに取り組むことをおすすめします。
部位 |
ストレッチ方法 |
---|---|
手首(指全体) |
|
腕 |
|
親指 |
|
ストレッチは、基本的に痛みが和らいでいるときに行いましょう。強い痛みを感じる時期に無理してストレッチすると逆効果になりかねません。腱鞘炎を悪化させないよう、医師に相談しながらストレッチに取り組むことをおすすめします。
【関連記事】
ドケルバン病におけるストレッチ方法3選|注意点と予防方法も解説
食事改善
腱鞘炎は、食生活の見直しによっても症状の改善が期待できます。具体的には、以下の食材を中心に摂取するよう心がけましょう。
- オメガ3脂肪酸が豊富な食べ物(青魚や亜麻仁油など)
- ビタミンCおよびビタミンEを多く含む食べ物(野菜や果物など)
- たんぱく質を多く含む食べ物(大豆食品や肉類など)
- グルコサミンなどのサプリメント
腱鞘炎の改善には適切な治療が欠かせません。しかし、毎日の食生活も症状の改善をサポートする重要な要素であるといえます。腱鞘炎を早く治すためにも、効果的に栄養素を摂取しましょう。
ツボ押し
ツボ押しは、血行を促進して腱鞘炎の痛みを和らげる効果が期待できます。腱鞘炎に効く代表的なツボは、以下の5つです。
- 親指の付け根と手首の境目にある「陽谿(ようけい)」
- 親指と人差し指の付け根の間にある「合谷(ごうこく)」
- 手のひらのちょうど真ん中にある「労宮(ろうきゅう)」
- 手首を内側に折ったときにしわができる部分の真ん中にある「大陵(だいりょう)」
- 手の甲と手首をつなぐ部分にある「陽池(ようち)」
刺激しすぎず、気持ち良いと感じる程度の力でツボを数秒間押しましょう。その後、ゆっくりと離す動きを繰り返してみてください。リラックスしながらツボ押しすることで、手首や指の痛みやしびれの軽減につながります。
ツボ押しは手軽に取り入れられるセルフケアの一つです。ただし、ツボ押しをしても症状が軽減しない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
腱鞘炎とはどのような疾患か理解して重症化を防ごう
腱鞘炎は、主に手首や指の使いすぎによって発症する疾患です。初期の段階であれば、ストレッチや食事改善などのセルフケアによって症状の改善が期待できます。しかし、放置すると炎症が進んで強い痛みを伴い、日常生活にも支障をきたす可能性があるため注意が必要です。
重症化した腱鞘炎の治療には、ステロイド注射や手術療法のほか、再生医療という選択肢もあります。腱鞘炎の症状が長く続き、徐々に悪化していると感じた場合は自己判断せず、早めに医療機関を受診しましょう。
腱鞘炎に関するよくある質問
腱鞘炎発症時に腫れる場所はどこですか?
腱鞘炎を発症すると、主に手首の親指側や指の付け根、場合によっては指全体が腫れるケースもあります。
「ドケルバン病」の場合、手首の親指側が腫れて痛みが生じる場合がほとんどです。一方で、「ばね指」の場合は、指の付け根が腫れ、指を曲げ伸ばしする際に引っかかりや痛みを伴う場合があります。
手首や指以外にも腱鞘炎は起こりますか?
腱鞘炎が起こるのは主に手首や指です。しかし、腱を繰り返し使う関節であればほかの部位でも発症する可能性があります。
たとえば、ランニングやジャンプなどによって負担がかかる足首や、スポーツで酷使されるような肩や肘にも腱鞘炎は起こり得ます。特定の部位に痛みを感じたり、動かしにくさが続いたりする場合は、無理をせず医師に相談しましょう。