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「病院で股関節を人工関節に置き換える手術をすすめられた」「変形性股関節症の手術が決まっている」といった方の多くは、手術後の生活が気になるのではないでしょうか。 股関節の変形などの治療として手術で人工股関節を入れても、すべてが元通りになるわけではありません。 手術後は、股関節に負担がかからないように以下のような動作や姿勢に気をつけて生活する必要があります。 本記事では、人工股関節手術後の生活で気をつけるべきことを解説します。 早期回復のためのポイントや仕事復帰までの目安もまとめているので、人工股関節手術を控えている・検討している方は、ぜひ参考にしてください。 人工股関節手術後の生活における注意点 人工股関節手術後の生活では、過度な運動や股関節に大きな負担がかかる姿勢を避ける必要があります。 具体的には、以下の6つに注意して過ごしましょう。 それぞれ詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。 以下の記事では、人工関節や手術のリスクについて解説しています。あわせてご覧ください。 【医師監修】人工関節とは|メリット・デメリットや置換術について詳しく解説 【医師監修】高齢者が股関節手術を受けるリスクを解説|年代別で控えた方がいい理由も紹介 適度に歩く時間をつくる 人工股関節手術後の歩行に関して、とくに制限はありませんが、以下の点に注意しましょう。 筋力の低下を防ぐため歩く時間を作る 歩行時は革靴ではなく滑り止めがついた運動靴を履く 翌日まで疲労が残る場合は、運動量が多すぎる可能性が高いため、ペースを調節してください。 股関節に負担がかかる日常動作は避ける 人工股関節手術後の生活では、股関節を曲げて膝を内側にねじるような姿勢は負担が大きいので避けましょう。 とくに股関節の屈曲などの複合動作が続くと、股関節に大きな負担がかかって脱臼や骨折の原因になります。 人工股関節の脱臼を防ぐためにも、日常生活の中では以下の点に注意が必要です。 あぐらや横座りなどを避ける ズボンや靴下などを履くときは床ではなく椅子に腰掛ける ただし、座るときにどの程度の注意が必要かは、手術方法によって異なります。 近年は筋肉や腱を切らずに済む方法が増え、人工股関節手術後の脱臼のリスクそのものが低下しています。 手術後に避けるべき動作や姿勢については、医療機関や主治医に確認しましょう。 過度な運動やスポーツを避ける 人工股関節手術後は、過度な運動やスポーツを避ける必要があります。 手術をしたからといって、ハードな運動ができるわけではありません。 過度な運動は股関節の脱臼やゆるみを起こしてしまう可能性があるため、注意が必要です。 ただし、適度な運動は、股関節周りの筋肉を鍛えることにつながるため、無理のない範囲で体を動かすことをおすすめします。 実際に、人工股関節手術後の生活で、ハイキングやウォーキングなど、さまざまな運動を楽しんでいる人もいます。 手術後の生活で無理なくできる運動は、水泳やウォーキングなどです。 ただし、水泳の場合、股関節に負担がかかる平泳ぎよりもバタ足などがおすすめです。 また、ウォーキングは15分程度の軽い運動にとどめるなどの配慮が必要です。 重いものを持たないようにする 人工股関節手術後の生活では、日常的に重たいものを持たないように注意しましょう。 重いものを持ち上げたり、持って移動したりすると、股関節に大きな負担がかかります。 もちろん、しゃがんだ姿勢から荷物を持ち上げることも避けましょう。 軽い荷物であれば大丈夫ですが、足腰を使わなければ持ち上がらないほどの重い荷物であれば、家族や友人に手伝ってもらって運んでください。 とくに家族には、人工股関節手術ことを伝え、手術後の生活についてよく理解してもらっておくと安心です。 入浴時は膝を大きく曲げないようにする 人工股関節手術後の入浴時は、とくに身体を洗う姿勢に注意してください。 ほかにも、以下の点に気をつけると股関節への負担を減らせます。 シャワーチェアを使用して椅子に腰掛けた姿勢で身体を洗う かがみこまなくて済むようにタオルではなく柄が長いブラシを使用する 浴槽で両足を伸ばせない場合は浴槽用の小さな椅子を使用する 椅子を使うスペースがない場合は、浴槽の縁にも腰掛けることも可能です。しかし、足先を洗う際などは無理にかがみこむと脱臼する可能性が高いため注意しましょう。 なお、浴槽への出入りしやすくするためには、浴室の壁に手すりを取り付けると便利です。 転倒を防ぐための生活環境を整える 人工股関節手術後は、人工股関節の破損を避けるためにも転倒に気をつけましょう。 手術後の生活では、人工股関節とうまく付き合っていく意識が必要です。 転倒は、人工股関節の破損だけではなく骨折の原因にもなります。 骨折によって歩行が難しくなると、手術をした意味がなくなってしまいます。 手術後は、外出の際に階段を避けてエスカレーターやエレベーターを利用したり、足場の悪いところは極力歩かないようにしたりするといった心がけが必要です。 人工股関節手術後から仕事復帰までの目安期間 人工股関節手術後に仕事復帰できるまでの期間は職種によって異なり、事務職であれば、数週間から1カ月程度で復帰が可能です。 しかし、業務上でしゃがんだりかがんだりする動作を伴う場合は、復帰までに時間がかかります。 人工股関節手術後の仕事復帰までの目安は、以下の通りです。 事務職 2~4週 立ち仕事(半日) 4~6週 立ち仕事(1日) 6~8週 ドライバー・配送業 2~3カ月 激しい肉体労働が中心の仕事 3カ月以降 ただし、手術後の回復には個人差があるため、まずは主治医に相談してから仕事に復帰する計画を立てましょう。 人工股関節手術後に生活へ復帰するためのポイント ここでは、人工股関節手術後の生活において、早期回復のために工夫すべきポイントを紹介します。 股関節に負担の少ない生活スタイルに変える 人工股関節手術後の生活では、股関節に負担のかかる姿勢を避ける必要があります。 たとえば、正座や足を前に投げ出して座る姿勢は手術後でも問題ありませんが、体育座りや横座りなどは脱臼のリスクが高まります。 和式トイレなどでしゃがみ込む、座布団に座る、重いものを持ち上げるなどの動作は、意識して避けましょう。 人工股関節手術後は、できる範囲で椅子や洋式トイレを利用するようにして、生活スタイルを切り替えていくことをおすすめします。 また、布団を敷いて寝ている方は、ベッドにしたほうが股関節に負担をかけずに済みます。 体重管理をする 人工股関節手術後の回復を早めるためには、体重管理もポイントです。 体重が重いだけでも、股関節には大きな負担がかかるため、適度な運動をして体重管理しましょう。 標準体重よりも重い場合や、普段から身体が重いと感じている場合は、思い切ってダイエットを始めることもおすすめです。 ただし、単に体重を減らすだけではなく、筋力の維持にも努める必要があります。手術後は徐々に股関節を慣らすようにして、1日15分程度のウォーキングなど軽い運動をしましょう。 適切なリハビリテーションを続ける 人工股関節手術後の回復を早めるためには、適切なリハビリテーションを続ける必要があります。 人工股関節手術後は、筋力が低下している状態です。 とくに手術前から痛みで動きが制限されていた場合は、筋力の低下が顕著になる傾向があります。 人工股関節手術後に目指す生活レベルにもよるものの、筋力を回復させるためには、手術後も長期間にわたってリハビリテーションを続けることが大切です。 医療機関や主治医に相談しながら、納得のいく治療計画を立てましょう。 人工股関節手術後の生活の注意点に関するよくある質問 人工股関節手術後の日常生活の注意点に関するよくある質問と回答を紹介します。 人工股関節手術後の生活で気を付けることは? 人工股関節手術後の日常生活では、股関節に負担がかからないように気を付けましょう。 近年では人工股関節の耐久年数が向上していることから、日常生活だけでなく運動をする方も増えてきています。 しかし、人工関節は使えば使うほど摩耗していくため、股関節に負担がかかる動作を続けることで人工股関節の寿命が短くなっているといえます。 そのため、人工股関節を少しでも長持ちさせるためにも、術後の日常生活では股関節に負担がかからないように注意することが重要です。 自宅でもリハビリは必要ですか? 基本的に退院後でも自宅でリハビリは継続した方が良いです。 必要なリハビリは患者さまの目的によって異なるため、自分に合ったリハビリを続けましょう。 例えば「趣味のスポーツを再開したい」という場合には、そのスポーツで股関節にかかる負担を軽減できるように筋力トレーニングやストレッチが必要です。 しかし、自宅付近の移動ができれば良いという方は、スポーツをやりたい人ほどリハビリを頑張る必要はないといえます。 日常生活をおくる上で影響がない程度に筋力や柔軟性の維持に努めましょう。 人工股関節手術後にやってはいけないスポーツは? 人工股関節手術後は、股関節を捻るような以下のスポーツは控えましょう。 サッカー バスケットボール 野球 バレーボール テニス 水泳 柔道 ラグビー 上記のようなスポーツは、股関節を捻る際に大きな負荷がかかるため、人工関節の摩耗や破損につながる可能性が高いです。 しかし、筋力や柔軟性を低下させないために適度な運動は推奨されています。 どの程度の運動ができるかは個人差があるため、主治医と相談した上で行いましょう。 人工股関節手術後に杖はいつまで使うべき? 人工股関節手術後は、3ヶ月前後を目安に杖を使用しましょう。 術後に転倒してしまうと人工股関節の脱臼や損傷のリスクがあるため、転倒防止に杖の使用が有効です。 とくに混雑しやすい場所や長時間歩く場合などの状況をみて、3ヶ月を過ぎても杖を使用した方が良いでしょう。 人工股関節手術後の生活では関節に負担をかけないようにしよう 今回は、人工股関節手術後の生活で気をつけるべきことや工夫すると良いことなどを解説しました。 基本的に人工股関節手術後の生活では、人工股関節に配慮さえすれば大きな支障はきたさないでしょう。 しかし、人工股関節とうまく付き合っていく必要があるため、どうしても注意や工夫をしなければならない場面も出てきます。 なお、手術後の生活における注意事項や運動、リハビリテーションなどに関しては、必ず主治医の指導を受けるようにしてください。 ▼ 立ち上がり動作における股関節への負担を減らすポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。
2022.03.31 -
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レントゲン検査やCT検査で股関節の痛みや違和感の原因が特定できない場合、MRI検査が必要となるケースがあります。 MRI検査では、レントゲンやCTでは映し出せない神経や筋肉の異常を詳しく調べられるからです。 本記事では、股関節に異常がないかを調べるMRI検査について詳しく解説します。 MRI検査で発見できる病名・疾患や、MRIの撮り方も紹介しているので、股関節の痛みや違和感に悩み詳しい検査を検討されている方は参考にしてみてください。 MRIを含む股関節を調べる画像検査3種【費用相場】 股関節の異常を調べるときに実施される画像検査は、主に以下の3種類です。 レントゲン検査 CT検査(Computed Tomography) MRI検査(Magnetic Resonance Imaging) 検査の内容や費用をそれぞれ見ていきましょう。 1)レントゲン検査 レントゲン検査は、多くの方にとってなじみのある放射線の一種であるエックス線を用いた検査方法です。短時間で簡単におこなえますし、苦痛もほとんどないため、まずはレントゲンを撮る病院が多いかと思います。 レントゲン検査は、骨の状態、部分を詳しく見るのに適しています。 たとえば骨折や、骨の変形などがその代表です。しかし、筋肉・軟骨・神経などの骨より柔らかい組織は撮影できません。 最近はデジタル化の影響で線量が格段に少なくなっているため通常の検査であれば問題はありません。ただ、放射線を用いる検査ですので、何度も繰り返して検索をおこなうなどの場合は被曝の可能性については気になるところです。 【検査費用の目安】 検査費用:600〜2,000円 ※撮影枚数2枚で3割負担の料金を想定 2)CT検査(Computed Tomography) CT検査は、レントゲンと同じエックス線を用います。 このエックス線をあらゆる方向から照射することで、体の輪切りした画像撮影が可能になります。レントゲンと違って体の内部まで輪切りにした状態で確認ができます。 輪切り画像を重ね合わせて他の断面の画像を構築したり、三次元(3D)の立体画像で確認したりできる検査です。 レントゲン検査よりもさらに詳しく骨の状態を評価できますが、レントゲンと同じく筋肉・軟骨・神経などの骨より柔らかい組織については判断しにくい特徴があります。 【検査費用の目安】 検査費用:5,000〜15,000円 ※3割負担の料金を想定 3)MRI検査(Magnetic Resonance Imaging) MRI検査とは、大きな磁石(磁場)を利用して体の内部を画像化する検査です。 レントゲン検査や、CT検査ではわからない筋肉や神経などの柔らかい組織を写し出す作業を得意としています。また、何より放射線を使用しないため被曝もなく、患者さんの人体に無害な検査という点で優れています。ただ、装置自体が大きく、とても高価なため、大学病院をはじめとした一部の施設にしか配置されていません。 また、誰でもできる訳ではありません。仕組みとして非常に強力な磁石を用いた装置なので、体内に金属があると検査できない場合があります。 MRI検査の注意点はこちら▼ 【検査費用の目安】 検査費用:5,000〜17,000円 ※3割負担の料金を想定 股関節のMRI検査でわかる主な3つの病名 ここでは、MRI検査で発見できる主な股関節の疾患を3つ紹介します。 ・変形性股関節症 ・関節リウマチ ・大腿骨頭壊死 順番に見ていきましょう。 変形性股関節症 変形性股関節症とは、股関節にある軟骨がすり減って、骨が変形する疾患です。変形性股関節症を発症し、症状が進行すると股関節に痛みが生じます。 また、股関節の可動域が制限されるようになり、立ち上がる動作や靴下をはく動作などに支障をきたすようになります。 変形性股関節症の詳細はこちら▼ なお、変形性股関節症の治療には、人間の自然治癒力を活用した「再生医療」が有効です。 幹細胞を股関節に注射すれば、すり減った軟骨が再生されます。徐々に痛みが軽減し、手術を回避できる可能性が高まります。 期待できる治療効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 関節リウマチ 関節リウマチとは、免疫システムの異常により、炎症を起こし痛みや腫れが生じる疾患です。股関節で発症した場合、リウマチ性股関節症と呼ばれます。 症状が進行または慢性化すると、関節が変形したり、こわばり・痛みによって日常生活に支障をきたしたりします。 また、炎症による発熱や、免疫システムのエラーによる臓器障害なども発生する可能性があるので、視野を広げた治療アプローチが必要です。 関節リウマチの詳細はこちら▼ 大腿骨頭壊死 大腿骨頭壊死は、股関節を形成する骨の一部である大腿骨頭への血流が低下して骨組織が壊死する疾患です。原因が不明な場合は「特発性大腿骨頭壊死」と呼ばれ、難病に指定されています。 症状が軽度で壊死の範囲が狭い場合は、経過観察も可能です。 しかし、壊死範囲が広く、症状が著しく進行している場合は、骨切り術や人工股関節置換術の手術が視野に入ってきます。 大腿骨頭壊死の詳細はこちら▼ 股関節を調べるときのMRIの撮り方 股関節を調べるときのMRIの撮り方を以下の表にまとめました。検査の流れを把握しておきたい方は参考にしてみてください。 流れ 検査内容 1.磁性体の装飾品を外す 磁場を発生させるMRIの故障の原因となるため、アクセサリーや時計などの金属類は事前に外しておく 2.検査着に着替える 必須ではないが安全性を考慮して推奨されている(参考1) 3.ヘッドホンや耳栓を装着する 検査中に騒音が発生するため、専用のアイテムで耳をふさぐ 4.ベッドに横たわる 指示に従って体勢を整える。撮影部位を固定する必要があるため患部によって多少体勢が変わる 5.検査開始 トンネル型の機械に入って検査を受ける。検査時間は撮影部位や撮影方法にもよるが、20〜45分 検査結果は、早くて当日中に出ます。詳細な分析を要する場合は、7〜10日ほどかかります。 MRI検査の全体像を解説した記事はこちら▼ まとめ|股関節に異常を感じたらMRI検査を検討しよう MRI検査は、レントゲン検査やCT検査ではわからない筋肉や神経などの組織の異常を詳細に映し出せます。 原因がはっきりわからない痛みや違和感が股関節に現れたら、MRI検査を受けて病名や疾患名を調べると良いでしょう。 早期に原因がわかれば、適切な治療を開始して早い回復を目指せます。 変形性股関節症を含む膝の痛みに対する根本的治療には「再生医療」を推奨します。再生医療は、人間の自然治癒力を活用した最新の医療技術で、すり減った膝軟骨の再生を図ります。 「再生医療に興味があるけど具体的なイメージがつかめなくて不安…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 股関節のMRI検査に関するよくある質問 最後に股関節のMRI検査に関するよくある質問と回答をまとめます。 MRIの画像に映る白い影は何ですか? MRI画像に映る白い影の原因は、以下のように複数考えられます。 ・小出血 ・骨髄の浮腫 ・組織や骨の損傷 ・レントゲンには映らないような微小な骨折 医師の話を聞いて、白い影の正確な原因を確認しましょう。 股関節のMRI検査で異常なしでも痛みが生じるのはなぜですか? 小さな組織の損傷は、MRIに映らない場合もあります。そのため、実際には損傷が起きていても、検査結果では「異常なし」と診断されるケースもゼロではありません。 また、股関節の靭帯が緩んで、痛みを伴う場合もあります。靭帯の緩みはMRIでは確認が難しく、検査では異常が見つからないケースもあります。 【参考文献】 参考1:http://fms.kopas.co.jp/fmdb/JJMRM/27/4/230.pdf
2022.03.30 -
- 股関節
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「変形性股関節症にはどのような治し方がある?」 「進行度に応じた治療方法を知りたい」 変形性股関節症とは、股関節の軟骨がすり減り、痛みや動かしにくさが現れる病気です。進行度によって治療方針は異なり、早期から適切な治療を進めれば手術を回避できる可能性が高まります。 本記事では進行度に応じた病状や症状をはじめとして、以下を解説します。 前期・初期における治し方 進行期・末期における治し方 悪化させないための日常生活の工夫 進行度別の症状や治療方針の一覧表を解説しています。自身に当てはめながら、変形性股関節症の治し方の理解を深めるために役立ててください。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 股関節の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 変形性股関節症の治し方は進行度で異なる 変形性股関節症の治し方は、以下のように進行度によって異なります。 分類 特徴 主な治療方針 前期 ・軟骨はほぼ正常だが発症リスクが高い状態 ・長時間の歩行後に痛みが出る ・運動療法 ・薬物療法 ・生活指導 ・理学療法 初期 ・軟骨が徐々にすり減り始める ・歩き始めに脚の付け根に違和感や軽い痛みが出る ・運動療法 ・薬物療法 ・生活指導 ・理学療法 進行期 ・軟骨のすり減りが進み、骨にとげ状の変形が現れる ・安静時も痛みが続く ・薬物療法 ・手術療法 末期 ・軟骨がほぼ失われ、骨同士がぶつかる ・強い痛みで日常生活に大きな支障が出る ・薬物療法 ・手術療法 以上のように病状に応じた治療を進めていきます。 前期・初期における変形性股関節症の治し方【保存療法】 前期・初期における変形性股関節症の治し方は、以下のような保存療法です。 薬物療法 理学療法 装具療法 再生医療 それぞれについて詳しく解説します。 薬物療法 薬物療法では、消炎鎮痛剤により炎症や痛みを抑えて、日常生活の動作の改善を目指します。 薬には以下のような種類があります。 内服薬 貼付薬 注射薬 消炎鎮痛剤には、胃腸や腎臓の障害、喘息発作などの副作用を引き起こすものがあります。そのため、副作用が起きていないか確認するために、定期的に診察してもらう必要があります。 また、薬物療法により痛みが改善したからといって無理に関節を動かすと、病状が悪化するおそれもあるため注意しなければなりません。医師の指示通りに服用を行い、無理せず理学療法を進めていくことが重要です。なお、進行期や末期においても、痛みの状況に応じて薬物療法を行います。 理学療法 理学療法は筋力の強化や関節の動く範囲を改善するために行います。 理学療法の種類には以下のようなものがあります。 理学療法 詳細 運動療法 股関節周囲の筋力訓練、ストレッチ、有酸素運動などを行い、関節の痛みや動く範囲の改善を目指す療法 徒手療法 理学療法士が直接手で触れて、関節の動く範囲や筋肉の柔軟性などの維持・向上を目指す療法 物理療法 ホットパックや低周波、レーザーなどを用いて、痛みや血の巡り、関節の動く範囲、むくみなどの改善を目指す療法 とくに運動療法は、進行度に関わらず重要な治療方法とされています。 装具療法 装具療法では、装具や歩行補助具を用いることで、痛みや歩行能力の改善を目指します。 装具や歩行補助具の種類には以下のようなものがあります。 種類 詳細 杖 ・一般的な持ち手のT字杖や手と前腕の2点を支えられる杖など、さまざまな種類があり病状によって選択する ・体重を分散でき安定した歩行能力の獲得を期待できる 補高装具 (ほこうそうぐ) ・インソールなどにより骨盤や腰椎の歪みを補正するために用いる ・股関節の痛みの改善も期待できる 股関節装具 ・太ももや骨盤付近を固定する装具で股関節への負荷を軽くする ・股関節の負荷の軽減により痛みや安定性の改善などが期待できる 以上のような装具や歩行補助具を病状に応じて活用します。 再生医療 新たな治療方法として期待されているのが再生医療です。再生医療とは、自己の細胞を患部(病気の部位)に注入して、身体が持つ自然治癒力を活かす治療方法です。保存療法と手術療法の中間と位置づけられています。 具体的な治療方法は以下の通りです。 再生医療の種類 詳細 幹細胞治療 (かんさいぼうちりょう) 組織の修復に関わる働きを持つ「幹細胞」を患部に投与する治療方法 PRP療法 血液中の血小板に含まれる成長因子などが持つ、炎症を抑える働きや組織修復に関与する働きを利用した治療方法 実際に変形性股関節症の症例について知りたい方は、以下を参考にしてください。 【症例紹介】 両股関節痛の改善で人工関節回避 両変形性股関節症 幹細胞治療 50代女性 痛み10段階中10の激痛が2に!人工関節を回避 左変形性股関節症(臼蓋形成不全) 60代女性 進行期・末期における変形性股関節症の治し方【手術療法】 保存療法で症状の改善が望めない進行期・末期においては、以下のような手術療法を検討します。 股関節鏡下手術(かんせつ きょうかしゅじゅつ) 骨切り術(こつきりじゅつ) 人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ) それぞれの手術療法について詳しく解説します。 股関節鏡下手術 股関節鏡下手術とは、内視鏡(細い管の先端に小型カメラが付いた医療器具)により、傷んでいる股関節の軟骨の修復を行う療法です。再生医療の前に関節の修復や炎症部位の切除を行うこともあります。 股関節鏡下手術は、関節の周囲に2〜3カ所の小さな穴を開けて、その穴から内視鏡を挿入して行うため、従来の手術よりも負担が少ないのが特徴です。 初期から進行期における変形性股関節症が適応となります。変形性股関節症に移行してしまうおそれがある、大腿骨寛骨臼インピンジメント(大腿骨頭と寛骨臼に異常形態がある病気)に対しても行われることがあります。 骨切り術 骨切り術は、変形した骨を切り取って関節の形を整え、症状の緩和や進行を抑える手術です。初期または進行期の青年期・壮年期の方が適応となります。 骨切り術にはいくつかの種類があり、一例を紹介すると以下の通りです。 種類 詳細 寛骨臼回転骨切り術 (かんこつきゅうかいてんこつきりじゅつ) 寛骨臼の一部をくりぬき、回転させることで大腿骨頭を十分に覆えるようにする手術 キアリ骨盤骨切り術 寛骨臼の上方あたりを切り、大腿骨頭を覆うように横にずらして固定する手術 これらの手術は、大腿骨頭を寛骨臼が十分に覆えていない際に行います。人工的に寛骨臼を形作ることで、関節の温存ができます。なお、軟骨がすり減りすぎた状態では骨切り術を行うことはできません。 人工股関節置換術 人工股関節置換術は、損傷した関節を人工関節に置き換える手術です。進行期や末期の関節の温存が困難な病状に対して適応となります。人工股関節は20~30年ほどが寿命です。そのため、交換が不要となる50代以降の方が適応されるケースが多いです。 現在の人工股関節置換術は、筋肉を切らずに小さな傷口で済む方法で行っています。手術時間も比較的短く済むため、手術中の出血量や感染症のリスクも少なく済みます。 【関連記事】 変形性股関節症|人工関節手術のデメリット・リスクと治療の代替案を紹介 【医師監修】人工股関節置換術後における仕事復帰の目安を解説|職種別の注意点も紹介 変形性股関節症を悪化させない日常生活の工夫【生活指導】 変形性股関節症を悪化させないためには、以下のような日常生活の工夫が重要です。 股関節に負担をかけない日常生活の動作を心がける 肥満を改善する【BMI25未満】 和式から洋式の生活を取り入れる 靴の選び方を意識する 手すりを設置する それぞれについて詳しく解説します。 股関節に負担をかけない日常生活の動作を心がける 変形性股関節症を悪化させないためには、以下のように股関節に負担をかけない日常生活の動作を心がけることが重要です。 早歩きは控えてゆっくりと歩く 長時間の歩行は控えて10〜15分ほど歩いたら休憩を入れる 痛みがあるときは無理して歩かない 重い荷物の持ち運び作業は避ける 長時間の立ち仕事は避ける 階段の上り下りは極力避ける 以上のように、股関節へ負担がかからないように心がけると、悪化を防ぐだけなく症状の改善にもつながります。また、歩行の際は積極的に杖を利用して、股関節への負担を減らしましょう。 肥満を改善する【BMI25未満】 体重管理は股関節への負担を減らすために重要です。体重が重い分だけ股関節に負担がかかり、変形性股関節症を悪化させる要因になるためです。 BMI(体格指数)を25未満に保つことが推奨されています。(文献1)BMIの計算式は「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」です。なお、BMI25以上は日本肥満学会の基準では肥満に該当します。 日頃から食事管理や適度な運動を心がけて、体重管理を行い股関節の負担を軽減しましょう。なお、運動は股関節への負担が少ない水中ウォーキングが効果的とされています。 和式から洋式の生活を取り入れる 「床に布団を敷く」「和式トイレから立ち上がる」などの和式の生活は、股関節への負担が大きいです。 そのため、以下のような洋式の生活を取り入れることが望ましいです。 椅子を活用する トイレを洋式にする 布団ではなくベッド利用する よく利用する食器や日用品などは低い位置に置かない 日常的に「床に座る」「床から立ち上がる」「かがむ」という動作を避けることで、股関節の負担を軽減できます。 靴の選び方を意識する 変形性股関節症を悪化させないためには靴選びが重要です。適切な靴を選べば、股関節への負担を減らし、症状の改善も期待できます。 靴の選び方のポイントは以下の通りです。 スムーズな歩行を促すロッカーソール(靴底が丸く加工してある)の靴を選ぶ クッション性が高く衝撃を吸収してくれる靴を選ぶ 脚の長さの差を整えてくれるインソールは、医師に必要と診断してもらえれば保険適用で作成できます。 手すりを設置する 生活環境の中に手すりを設置すれば、股関節への負担を軽減できます。 例えば、以下のような股関節へ負担がかかる動作を行う場所への設置を推奨します。 玄関など段差のある場所 浴室やトイレなど立ち座り動作がある場所 手すりの設置は、股関節への負担の軽減だけでなく転倒予防につながります。 まとめ|変形性股関節症の治し方の理解を深めて適切な治療を選ぼう 変形性股関節症の治し方には、薬物療法や理学療法、再生医療、手術療法などがあります。これらの治療方法は、進行度や症状に応じて適切に選択しなければなりません。 「ゆっくりと歩く」「長時間歩かない」「洋式の生活を取り入れる」など、日常生活での工夫も症状の悪化を防ぐために重要です。また、変形性股関節症の早期の段階から、適切な治療に取り組めば、手術を回避できる可能性も高まります。 変形性股関節症と診断された方は、積極的に理学療法や装具療法、生活指導を受けましょう。当院「リペアセルクリニック」では、変形性股関節症に対しても再生医療を行っています。まずは相談だけでもお気軽にご連絡ください。 変形性股関節症の治し方に関するよくある質問 Q.手術をしないで治すことはできる? 保存療法を通じて症状の改善や進行の抑制は可能です。しかし、変形性股関節症は完治するものではないため、病状に応じて手術を検討しなければなりません。手術を回避するためにも、早期の段階から理学療法や生活指導を積極的に受けることを推奨します。 Q.末期に手術をしないとどうなる? 末期となり手術が必要な病状であるにも関わらず治療をしないと、痛みの程度や関節の動かせる範囲がさらに悪化していくと想定できます。そうなるとさらに日常生活に支障をきたして、生活の質も低下していきます。 Q.ストレッチは効果がある? ストレッチは、股関節の柔軟性を高めて痛みや関節の動く範囲の改善に役立ちます。 ストレッチの一例を紹介すると以下のようなものがあります。 仰向けに寝て片方の膝を胸に抱える 息を吐きながら引き上げてお尻の筋肉を伸ばす 反対の脚も同様に行う 1回5〜10秒を目安にして行いましょう。 参考文献 (文献1) シリーズ17 変形性股関節症|日本理学療法士協会
2022.01.22 -
- 肘関節
- 関節リウマチ
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- 足部
「人工関節の手術は痛みをなくすために必要なのはわかるけれど、合併症や後遺症が心配でなかなか踏み切れない……」そのような不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 肩の人工関節置換術は、つらい痛みを和らげ、生活の質を取り戻す有効な方法です。 しかし一方で、手術には特有のデメリットやリスクがあるのも事実です。 本記事では、肩人工関節の手術に伴う代表的な7つのデメリットを整理して解説します。 それぞれのリスクの特徴や発生しやすい条件、予防の工夫についても触れますので、正しくリスクを理解し、後悔のない治療選択につなげましょう。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。肩の痛みや人工関節について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 肩の人工関節の7つのデメリット・リスク 肩人工関節手術は、痛みを軽減し生活の質を取り戻す有効な方法ですが、肩は可動域が広く、膝や股関節とは異なるリスクを抱えやすい部位です。 そのため、手術を受ける前に想定される合併症を理解しておくことが大切です。 ここでは代表的な7つのリスクを紹介します。 感染症や血栓症といった生命に関わるものから、脱臼や可動域制限、再手術の必要性といった長期的に影響するものまで、それぞれ確認していきましょう。 なお、人工関節とは何か詳しく知りたい方には、以下の記事が参考になります。あわせてご覧ください。 感染症リスク 肩の人工関節手術で最も注意すべき合併症の一つが感染症です。 人工関節は体内に異物を入れるため、いったん細菌が侵入すると自然には治りにくく、再手術が必要になることもあります。 感染症には大きく2つのタイプがあります。手術後すぐに起こる「早期感染」と、数年後に発症する「遅発感染」です。 早期感染では発熱や患部の強い痛み、腫れなどがみられ、遅発感染では軽い痛みや動かしにくさが長く続く形で現れることがあります。 感染症リスクを高める要因としては以下が知られています。 糖尿病 関節リウマチ 免疫抑制剤を使用している 肥満 喫煙習慣 これらの条件がある方は、感染の危険性が高まるため、手術前に十分な準備や対策を行うことが重要です。 感染症にかかった場合の治療は、まず抗菌薬による点滴が行われます。症状が強い場合や感染が広がっている場合には、人工関節を入れ替える再手術が必要になることもあります。 予防策としては、手術前に虫歯や皮膚炎などの感染源を治療しておくこと、手術時には抗菌薬を予防的に投与することが有効とされています。 また、清潔な環境での手術操作と手術後の適切なリハビリ管理も重要です。(文献1) 血栓症の危険性 肩人工関節の手術では、血栓症も重要なリスクの一つです。血栓症とは、血管の中に血のかたまり(血栓)ができて血流を妨げる状態を指します。 とくに脚の深い血管にできる深部静脈血栓症(DVT)と、血栓が肺に飛んで血管を詰まらせる肺塞栓症は、命に関わることもある合併症です。 症状としては、脚の腫れや赤み、強い痛みが現れる場合があります。 肺塞栓症では、急な息切れ、胸の痛み、めまいなどが起こり、緊急対応が必要になります。 リスクを高める要因には次のようなものがあります。 高齢 肥満 がんなどの悪性疾患 血栓症の既往歴 長時間の手術や手術後の安静 手術後の体調に異変を感じた場合は、すぐに医療スタッフに伝えましょう。(文献2) 脱臼リスクと動作制限 肩は体の関節の中でも最も動きの幅が広い構造を持っています。 そのため、人工関節に置き換えると、特定の動作で脱臼が起こりやすくなる特徴があります。 注意が必要なのは、次のような動作です。 背中に手を回す(帯を結ぶ、ポケットに手を入れるなど) 腕を大きく上げる(洗濯物を干す、高い場所に物を取るなど) 手を体の内側に大きくひねる動作 これらは人工関節に強い負担をかけ、脱臼のリスクを高めるとされています。 予防のためには、手術後のリハビリで正しい動かし方を学ぶことが欠かせません。 一度脱臼すると再発しやすい傾向があるため、手術後は慎重な管理で脱臼を防ぎましょう。 生活の中では脱臼しやすい姿勢を避けたり、無理に腕を伸ばさない工夫も必要です。 理学療法士による生活指導も受けて、動作の工夫を取り入れてください。(文献3) 摩耗・ゆるみによる再置換の可能性 人工関節は一度入れれば一生使えるわけではありません。 時間の経過とともに摩耗や「ゆるみ」が起こり、再手術(再置換)が必要になる場合があります。 人工関節の摩耗は、金属やポリエチレンといった部品同士が繰り返し擦れ合うことで進行します。 その結果、関節の安定性が低下し、痛みや腫れ、動かしにくさが再び現れてきます。 また、摩耗によって生じた微細な粉が骨を刺激し、骨が少しずつ体に吸収されて弱くなることで、人工関節がゆるみやすくなります。 再置換が必要となる主な兆候は以下の通りです。 関節の痛みが再発する 肩を動かしたときに違和感や異常な音がある X線検査でインプラントの位置がずれている 再置換手術は、初回の手術よりも難易度が高く、合併症のリスクも大きくなります。 人工関節の寿命は一般的に15〜20年程度とされますが、患者様の年齢や生活スタイルによって大きく変わります。 若い方や活動量が多い方は、再置換の可能性が高まるため、長期的な視点で手術を検討しましょう。 神経損傷と機能障害のリスク 肩人工関節手術では、周囲を走行する重要な神経を傷つけてしまう可能性があります。神経は細く繊細で、一度損傷すると回復が難しい場合があるため、とても注意が必要です。 代表的な神経損傷には次のようなものがあります。 神経 働き・役割 腋窩神経(えきかしんけい) 三角筋を通っており、損傷すると腕を横に持ち上げる(外転)動作ができなくなります。 筋皮神経(きんぴしんけい) 上腕二頭筋を通り、肘を曲げる力が弱くなるほか、前腕の外側の感覚が鈍くなることがあります。 これらの神経は肩関節のすぐ近くを通っているため、人工関節の設置や手術器具の操作中に影響を受けやすい位置にあります。 神経損傷が起こると、日常生活の質に大きな影響を与えます。 このため、手術を担当する医師が肩の解剖を熟知していること、また術後の神経症状を見逃さずに早期対応する体制が整っていることがとても重要です。(文献4) 可動域制限による生活動作の困難 肩人工関節手術の後、多くの患者様が直面する課題の一つが可動域の制限です。 とくにリバース型人工関節では、肩の構造を反転させて安定性を高めるため、どうしても動かせる範囲が狭くなります。 代表的に制限されやすい動きは以下の通りです。 動作 難しくなる動き・事例 屈曲(前に腕を上げる) 洗濯物を干す、高い棚に手を伸ばすといった動作が難しくなる。 外転(横に腕を広げる) 荷物を持ち上げる、体操で両手を広げるといった動きに制限が出る。 内旋(腕を内側にひねる) 背中に手を回す動作が困難となる。 外旋(腕を外にひねる) 洗髪や髪を後ろで束ねる動作がしにくくなる。 研究報告では、リバース型人工関節は痛みの改善や安定性の向上に有効である一方、背中に手を回す動作(内旋)や頭上動作の制限が残ることが多いと示されています。(文献5) このため、術後にはどの動きが難しくなるのかを事前に理解し、理学療法士と一緒に日常生活に適した代替動作を学ぶことが重要です。 たとえば、衣服の着脱では前開きの服を選ぶ、入浴では入浴補助具を活用するなど、生活を工夫することで制限の影響を軽減できます。 再手術が必要になる可能性 肩人工関節は、痛みを和らげ生活の質を改善する有効な治療法ですが、一度の手術で一生使えるとは限りません。 感染、脱臼、摩耗・ゆるみなどの問題が生じると、再手術(再置換や再固定)が必要になる場合があります。 再手術は初回の手術に比べて難易度が高く、以下の課題があります。 骨の欠損や変形:人工関節の取り外しにより骨がさらに損なわれ、固定が難しくなる。 合併症の増加:感染や神経損傷、血栓症などのリスクが高まる。 回復期間の延長:リハビリが長引き、日常生活への復帰に時間がかかる。 とくに高齢者の場合、再手術時には体力や合併症の影響が大きくなるため、初回手術の段階で将来の再手術の可能性を念頭に置いて計画を立てることが大切です。 肩の人工関節の種類別デメリット|従来型とリバース型 肩人工関節には、大きく分けて「アナトミカル型(従来型)」と「リバース型」の2種類があります。 それぞれの構造や適応が異なるため、発生しやすいデメリットにも違いがあります。以下の通りです。 アナトミカル型(従来型) リバース型 特徴 自然に近い動きを再現しやすい 若年層や活動性の高い患者にも用いられる 腱板損傷があっても施術可能 脱臼リスクあり デメリット 腱板が損傷している場合は安定性が低い 脱臼リスクが比較的高い 可動域制限が生じやすい 負荷をかける動作で脱臼リスクがある 主な適応 腱板が保たれている場合に適応 腱板断裂性関節症、高齢者 このように、肩の人工関節はどちらを選ぶかで将来の生活に与える影響が変わります。 担当医と十分に相談し、自分の症状や生活スタイルに合った方法を選択することが重要です。(文献6)(文献7) 肩の人工関節手術の概要とポイント 肩人工関節手術は、保存療法で改善が得られない患者様に行われる治療法です。 損傷した関節を人工関節に置き換えることで、痛みを和らげ、生活の質を高めることを目的としています。 手術は全身麻酔で行われ、入院は一般的に2〜4週間程度です。術後はリハビリを通じて徐々に可動域と筋力を回復させていきます。 肩の人工関節手術の適応疾患別リスク 肩人工関節手術は、基礎疾患によって手術後のリスクや経過が異なります。主な疾患ごとの特徴を以下の表にまとめました。 疾患名 手術が適切と判断される特徴 主なリスク・注意点 変形性肩関節症 関節のすり減りによる痛み・可動域制限 高齢者では感染や血栓症リスクが高い 関節リウマチ 炎症で関節が破壊される 免疫抑制薬の影響で感染リスクが上昇 腱板断裂性関節症 腱板が損傷し肩を動かせない リバース型が多く、可動域制限や脱臼が残りやすい 上腕骨頭壊死 骨への血流障害で壊死が進行 若年者でも起こり、再手術の可能性が比較的高い 疾患ごとのリスクを理解しておくことで、手術後の生活に備えられます。 変形性肩関節症のリスクについては、以下の記事で詳細に解説しておりますので、気になる方はご確認ください。 肩の人工関節手術の入院期間と回復までの流れ 肩人工関節手術は、入院から退院後のリハビリまで一定の流れがあります。以下の表に一般的な目安をまとめました。 時期 主な内容 ポイント 手術当日〜翌日 全身麻酔で手術、安静 痛み止めや感染予防の管理が行われる 1週目 基本的なリハビリ開始 医師や理学療法士の指導で可動域訓練を少しずつ開始 2〜3週目 入院リハビリ 日常生活に必要な動作(更衣・洗面など)の練習 退院後(1〜3カ月) 外来リハビリ中心 洗濯物を干す・棚に手を伸ばすなど生活動作を徐々に回復 半年以降 社会生活復帰 家事・趣味・軽いスポーツが可能となる例もある 入院は平均で2〜3週間程度ですが、年齢や合併症によって延びることもあります。完全な回復には半年ほどかかるケースもあるため、焦らず段階的にリハビリを続けることが大切です。 肩の人工関節手術にかかる費用目安 手術費用については、自己負担3割の場合、おおむね50万〜60万円前後が一つの目安になります。 例として、ある病院では人工肩関節置換術(入院8日)で約56万円と案内されています。 医療機関や入院日数、個室利用などで上下しますが、総医療費が200万〜250万円に達するケースもあり、その場合の3割負担は約60万〜75万円もあります。 ただし、高額療養費制度を併用すれば自己負担は月ごとの上限額までに抑えられる仕組みです。 以下は、肩の人工関節手術で費用が掛かる項目についてまとめたものです。 費用項目 概要 確認ポイント 手術料・麻酔料 人工関節本体を含む外科手技と麻酔管理の費用 保険適用範囲、インプラントの種類、術式の違い 入院費 病室・投薬・処置・検査などの入院管理費 入院日数、個室か大部屋か、食事療養費の扱い リハビリ費 急性期から外来期までの理学療法費 入院中の頻度、退院後の通院回数と期間 術後外来・投薬 創部チェック、画像検査、疼痛コントロール 通院間隔、画像検査の種類と回数 装具・消耗品 スリング、保護材、創部ケア用品 自費分の有無、交換頻度 公的制度 高額療養費制度、限度額適用認定証、医療費控除 手続き方法、自己負担上限、対象外費用の確認 費用を抑えるには、公的制度の活用が鍵となります。高額療養費制度などを活用して、人工関節手術の費用を抑えましょう。 肩疾患の人工関節に再生医療は適用される? 再生医療は、すでに人工関節を入れた肩には適用されません。しかし、人工関節手術を行う前の段階であれば、症状や画像所見、生活背景などを総合して、手術前の選択肢として検討されることがあります。 再生医療は、患者様自身から採取・培養した幹細胞を患部に投与する治療法です。入院や手術を行わずに受けられます。ただし、対象疾患や期待できる経過には個人差があり、医師の評価が前提となります。 以下は、当院リペアセルクリニックで行った肩腱板断裂に対する再生医療の症例です。左肩の痛みに悩む70代の男性が再生医療により症状が改善した事例を紹介しているので、参考までにご覧ください。 患者様の状態によって、再生医療の実施可否、治療計画、想定される経過、リスクなどが異なります。 詳細については、当院リペアセルクリニックまでご相談ください。 まとめ|肩人工関節のデメリットを理解して後悔のない治療選択を 肩に人工関節を入れるかどうかの判断は、リスクの理解から始まります。 本記事では、感染症・血栓症・脱臼・摩耗やゆるみ・神経損傷・可動域制限・再手術の7点を軸に整理しました。 人工肩関節置換術後に変形性肩関節症などの合併症が起こるリスクは、患者様の年齢や基礎疾患、手術方法、術後の過ごし方によって変わります。 また、使用する人工関節が従来型かリバース型かによって、術後に残る機能制限や日常生活での注意点も異なります。 人工肩関節置換術後の入院はおおむね2〜3週間が目安で、外来リハビリを経て数カ月かけて生活を整える流れになります。 費用は複数の項目で構成されるため、高額療養費制度などの公的支援も視野に入れて、見積もりの内訳を早めに確認しましょう。 迷いが残るときは、専門医に相談して診察を受けるのが一番の解決策です。 手術を避けたいとお考えの場合は再生医療の選択肢もあるので、お悩みの方はぜひ当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。 リペアセルクリニックでは再生医療に精通した医師が、患者様の状態に応じて個別に治療方針を提案いたします。 参考文献 (文献1) 人工関節置換術後感染に関する研究|日本人工関節学会誌 (文献2) 人工関節置換術と静脈血栓塞栓症|core.ac.uk (文献3) リバース型人工肩関節置換術後の脱臼症例報告|肩関節学会誌 (文献4) 人工肩関節置換術における腋窩神経損傷のリスク|肩関節学会誌 (文献5) 肩関節リバース型人工関節置換術後の可動域と機能評価|日本リハビリテーション医学会誌 (文献6) リバース型人工肩関節置換術の適応基準|日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会 (文献7) リバース型人工肩関節のガイドライン|日本肩関節学会
2021.12.20 -
- 股関節
- 変形性股関節症
「椅子に座っている時間が長くなると股関節が痛くなる」「椅子に座ったり立ったりする動作がつらい」 このようなお悩みはありませんか。 椅子に座っている時間が長くなると股関節に負担がかかり、股関節痛や腰痛、坐骨神経痛などの発症リスクが増加します。 股関節への負担を減らすためには、自分の体に合った椅子を選び、正しい姿勢で座るのが大切なポイントです。 本記事では股関節に負担をかけない椅子の必要性や自分に合った商品の選び方、NGな座り方、および対処法について解説します。 なお、股関節の疾患に対しては再生医療も治療選択肢の一つです。当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 股関節に関する不調やお悩みがある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 なぜ股関節に負担をかけない椅子が必要なのか 股関節は人体のなかでもっとも大きく、可動域が広い関節の一つです。 股関節は体の中央に位置しており、上半身の体重を支え、地面からの衝撃を緩和する大切な役割を持ちます。 体に合わない椅子に座っている時間が長いと、股関節周りの筋肉が緊張して可動域が低下し、腰痛や坐骨神経痛などさまざまな不調を引き起こすリスクが増加します。 股関節は健康寿命にも大きな影響を与えるため、股関節に負担をかけない椅子に正しく座ることが重要です。(文献1) とくに股関節痛や変形性股関節症をお持ちの方は、症状を悪化させないためにも股関節に負担をかけない椅子を選ぶ必要があります。 股関節に負担をかけない椅子の選び方 股関節に負担をかけない椅子の選び方は次のとおりです。 座面の高さが調整できて自分好みの高さと合っている 硬めで安定したクッションがついている 体を支える背もたれと肘掛けがある 座面の奥行きが浅すぎず深すぎない それぞれについて解説します。 座面の高さが調整できて自分好みの高さと合っている 股関節に負担をかけない椅子選びのポイントの一つが、座面の高さが調節できて自分の好みの高さと合っている点です。 自分の体に合った椅子を選ぶと、立ったり座ったりする際に股関節や膝関節を無理に曲げ伸ばしする必要がないため、関節や筋肉にかかる負担が減少します。 椅子に座った際に両足の裏がしっかりと床に着き、膝関節および股関節が90度になる高さに調節できる椅子を選びましょう。 硬めで安定したクッションがついている 股関節に負担をかけない椅子を選ぶポイントの一つが、硬めで安定したクッションがついているかどうかです。 柔らかいクッションの方が座り心地が良いと思われがちですが、お尻が沈み込みすぎると骨盤が傾き、かえって股関節や腰にかかる負担が増加します。 適度な硬さのクッションがついていると、坐骨(お尻の骨)を意識して骨盤を起こして座れるため、股関節だけでなく腰や上半身にかかる負担も軽減できます。 通販サイトで椅子を購入する際には、商品を販売している店で実際に座って確認しておくのがおすすめです。 体を支える背もたれと肘掛けがある 体を支える背もたれと肘掛けがあるのも、股関節に負担をかけない椅子の特徴の一つです。 背もたれがあると立ったり座ったりする際に腕の力で上半身を支えられるため、股関節や膝関節にかかる負担が減少します。 背もたれがあると椅子に座り疲れた際にもたれかかり、股関節周りの筋肉を緩めたり、上半身をリラックスさせたりできます。 ただし、椅子に浅く腰かけて背もたれによりかかると、骨盤が後ろに倒れて股関節への負担が増すため注意が必要です。 座面の奥行きが浅すぎず深すぎない 股関節に負担をかけない椅子を選ぶ際には、座面の奥行きが浅すぎず深すぎないかチェックしましょう。 座面の奥行きが深すぎると膝裏にある血管が圧迫されて下肢の血行不良を起こしたり、足のしびれが出たりしやすくなります。 座った際に座面から膝裏が指の幅1〜2本程度出る椅子を選びましょう。 反対に、座面の奥行きが浅すぎると長時間座った際に疲れやすい上、体が大きい方はリラックスできない可能性があります。 【年配の方向け】股関節にやさしい椅子の特徴とは? 年配の方は若い方に比べて比較的筋力が弱い傾向にあるため、以下のポイントを踏まえて股関節にやさしい椅子を選ぶのがおすすめです。 座面が高すぎず低すぎない 肘掛けがついている 座面が柔らかすぎず沈みにくい 作りが丈夫で安定している 座面が高すぎず低すぎない椅子で肘掛けが付いていると、立ったり座ったりする際に腕の力が使えるため、股関節にかかる負担が軽減します。 座面が柔らかくお尻が沈み込む椅子は立つ際に筋力が必要で、股関節にかかる負担も大きいため避けましょう。 作りが丈夫で安定した椅子であれば、肘掛けに手を置いて力を入れた際に、しっかりと体を支えてくれます。 キャスターがついた椅子や軽すぎる椅子は、座ったり立ったりする際に転倒するリスクがあります。 転倒により骨折すると、寝たきりになる恐れもあるため注意が必要です。 症状別|股関節に負担をかけない椅子の選び方 次に、症状別に股関節に負担をかけない椅子の選び方を紹介します。 変形性股関節症の場合は座面が浅めで硬い椅子を選ぶ リハビリ中の人は高さ調整ができて安定感のある椅子を選ぶ 手術後の回復期は立ち座りのしやすさを重視する 慢性的な股関節痛にはクッションや骨盤サポーターも併用する 変形性股関節症の場合は座面が浅めで硬い椅子を選ぶ 変形性股関節症をお持ちの方は、座面の奥行きが浅く、クッションが硬い椅子を選ぶのがポイントです。 座面が深い椅子は上半身がリラックスする反面、背もたれによりかかると姿勢の悪化により下半身にかかる負担が増大し、股関節の痛みが生じやすくなります。 座面が浅くクッションが比較的硬い椅子の場合、坐骨を支点として骨盤を起こし、体に無駄な力を入れずに座れます。 変形性股関節症をお持ちの方が椅子を選ぶ際は「座面が浅め・クッションが硬め・肘掛けつき」を目安にしましょう。 リハビリ中の人は高さ調整ができて安定感のある椅子を選ぶ 股関節のリハビリに取り組んでいる方は、高さ調整ができて安定感のある椅子を選ぶのがポイントです。 股関節のリハビリに取り組む際、椅子に座ってお尻のストレッチをしたり、股関節を回したりして柔軟性を高める方法があります。 また、立った状態で椅子の背もたれに手を置き、股関節周りの筋トレをするのも効果的です。 高さ調節ができて安定感のある椅子であれば、ストレッチや筋トレに取り組む際のサポートになります。 手術後の回復期は立ち座りのしやすさを重視する 変形性股関節症や大腿骨頚部骨折など手術後の回復期には、立ち座りのしやすさを重視して椅子を選びましょう。 変形性股関節症や大腿骨頸部骨折の手術に伴う入院期間は、個人により異なりますが、手術前に比べて筋力の低下を避けられません。 そのため、立ったり座ったりしやすく、安定性がある椅子を選ぶのが重要なポイントです。 転倒のリスクを下げるため、軽くて安定感のない椅子や、キャスター付きの椅子は避けましょう。 慢性的な股関節痛にはクッションや骨盤サポーターも併用する 慢性的な股関節痛をお持ちの方は、自分に合った椅子を選んだ上でクッションや骨盤サポートも併用するのがおすすめです。 デスクワークが長くなると猫背になってしまう方は、姿勢サポートチェアなどを利用して骨盤を起こし、股関節への負担を軽減する方法があります。 姿勢サポートチェアの代わりに小さめのクッションをおしりの下にドアストッパーのように差し込み、骨盤を起こすのも効果的です。 立ったり座ったりする動作が多い方は、骨盤ベルトで股関節への負担を減らす方法があります。 股関節に負担をかけない椅子を使ってもNGな座り方 股関節に負担をかけない椅子を使っても、以下4つの座り方はNGです。 背中を丸めた姿勢で長時間座る 足を組む・片足だけを曲げる 椅子の前方に浅く座る 座面が低すぎて股関節が深く曲がる 対処法と併せて解説します。 背中を丸めた姿勢で長時間座る 股関節に負担をかけない椅子を使っても、背中を丸めた姿勢で長時間座るのはNGです。 背中を丸めた姿勢を続けると頭が前に倒れ、バランスを取るために骨盤が後ろに傾きます。 骨盤が後ろに傾くとお尻の筋肉(殿筋)が弱くなり、股関節への負担が増加する傾向にあります。 椅子に座る際は坐骨に体重を乗せるよう意識し、上半身をまっすぐ伸ばすようにしましょう。 猫背になってしまう方は、椅子の上に姿勢サポートチェアを置いて対処する方法があります。 足を組む・片足だけを曲げる 椅子に座った際に足を組んだり、片足だけを曲げたりすると、股関節にかかる負担が増大するため注意が必要です。 足を組んで左右いずれかが上になった状態が長く続くと、股関節周りの筋肉が緊張して股関節痛を発症するリスクが増加します。 片足だけ曲げて座る時間が長くなると、骨盤が左右のどちらかに傾き、股関節にかかる負担が増大します。 椅子に座る際は両足の裏がしっかりと地面につき、膝関節と股関節を90度に保てるよう座面の高さを調節しましょう。 椅子の前方に浅く座る 股関節に負担をかけない椅子を使っても、椅子の前方に浅く座るのはNGです。 座面に十分な奥行きがあるのにもかかわらず浅く座ると、疲れた際に背もたれによりかかり、骨盤が大きく後ろへ傾きます。 骨盤が大きく後ろに傾くと、股関節への負担が増加しやすくなります。反対に、椅子の前方に浅く座ると、反り腰のリスクが増加するため注意が必要です。 反り腰の姿勢が続くと腰の深部の筋肉(大腰筋)や太ももの前面の筋肉(大腿四頭筋)が緊張し、股関節痛を発症するリスクが増加します。 とくに男性に比べて筋力が弱い女性は、反り腰に注意する必要があります。 座面が低すぎて股関節が深く曲がる 座面が低すぎて股関節が深く曲がる座り方を続けると、長く座り続けた際に股関節周辺の筋肉が緊張し、コリや痛みが生じやすくなります。 また、座面が低すぎると立ち上がる際に筋力が必要となる上、座る際にも股関節に負担がかかるため、年配の方はとくに注意が必要です。 座った際に両足の裏が地面にしっかりとつき、股関節と膝関節が90度を維持できる座面の高さが理想です。 椅子を購入する際には、座面の高さが調節できる商品を選びましょう。 今ある椅子を工夫して股関節への負担を減らす方法 椅子をすぐに買い替えられない方や、股関節周りの症状がそれほど深刻でない方は、今ある椅子を工夫して股関節への負担を減らす方法があります。 股関節への負担を減らす具体的な方法は以下の3つです。 座布団やクッションで高さを調整する 股関節用のサポートクッションを使う 骨盤サポーターを使って正しい姿勢に近づける 高さを調節する機能がない椅子を使っている方は、座布団やクッションを利用する方法があります。 長時間椅子に座っていると姿勢が悪くなってしまう方は、股関節用のサポートクッションを利用して、股関節にかかる負担を減らしましょう。 また、椅子に座っているとき以外も骨盤サポーターを装着し、正しい姿勢を身につけるのがおすすめです。 椅子を変えても股関節の痛みが改善しないなら「再生医療」をご検討ください 椅子を変えたりサポートグッズを使用したりしても股関節の痛みが改善しない方は、再生医療をご検討ください。 変形性股関節症が悪化すると日常生活に支障を来すようになるため、手術で人工関節に置き換える方法があります。 しかし、人工関節に置き換えてもメンテナンスのために通院する必要がある上、経年劣化にともない再手術を受ける例が少なくありません。 再生医療は自分自身の幹細胞や血小板を用いる治療法で、以下2つの方法があります。 治療法 特徴 幹細胞治療 さまざまな細胞に変化する幹細胞を利用する PRP療法 濃縮した自己の血小板を患部に注入して炎症を鎮める 再生療法は手術療法に比べると体にかかる負担が小さく、体力が低下した年配の方でも受けられる点がメリットの一つです。 外科的な手術には抵抗がある方や、仕事が忙しくて手術に踏み切れない方は、当院リペアセルクリニックの再生医療をご検討ください。 股関節の疾患に対する再生医療については、以下の症例紹介の記事が参考になります。 まとめ|股関節に負担をかけない椅子で正しい姿勢と快適な生活を送りましょう 椅子の高さが自分の体に合っていないと、長時間のデスクワークなどが原因で股関節周囲の筋肉が緊張し、股関節痛や腰痛の発症リスクが増加します。 とくに慢性的な股関節痛や変形性股関節症をお持ちの方は、症状の悪化を防ぐためにも自分の体に合った椅子選びが欠かせません。 椅子を選ぶ際には作りがしっかりしていて安定性があり、高さが調節できる背もたれや肘掛けがついた商品がおすすめです。 猫背や反り腰の姿勢を避けたい方は、クッションや骨盤サポーターを併用すると良いでしょう。 椅子を変えたりサポートグッズを使用したりしても股関節の痛みが改善しない方は、変形性股関節症や股関節インピンジメント症候群などの疾患の可能性があります。 股関節の疾患に対する主な治療法は、保存療法・手術療法・再生医療です。 再生医療は自分の幹細胞や血小板を用いた治療法で、手術療法に比べて身体にかかる負担が少ない上、入院が必要ありません。 再生医療について詳しくは、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEをご覧ください。 股関節に負担をかけない椅子に関してよくある質問 クッションだけで調整しても大丈夫? 椅子の高さが体に合わない際に、自宅にあるクッションを利用して調整する方法があります。 クッションを上手に用いると座る際の高さを調整できる上、猫背を予防するメリットも得られます。ただし、クッションが有効なのは座面を少し高くする場合だけです。 座面を大幅に高くしたい場合や、座面を下げたい場合は、椅子を交換する必要があります。 股関節に良い座り方ってどんな姿勢? 股関節に良い座り方のポイントは以下のとおりです。 両足の裏がピッタリと床についている 膝関節と股関節が90度に保たれている デスクワークの際は肘関節が100度程度に保たれている デスクワークの方はパソコンのモニターを視線のまっすぐ先、もしくはやや下に見る位置に置くと、上半身の正しい姿勢を保ちやすいです。 床に座るより椅子に座ったほうが良い? 床に座るより、椅子に座る方が股関節への負担は少なくなります。 床に座る場合、あぐらや横座りなどで股関節を深く曲げる姿勢が続き、股関節周りの筋肉が緊張しやすくなります。また、床から立ち上がる際も股関節や膝に大きな負担がかかるため、おすすめできません。 とくに年配の方や変形性股関節症をお持ちの方には、椅子の使用をおすすめします。 参考文献 (文献1) 股関節の手術と健康寿命|公益財団法人股関節研究振興財団
2021.12.17 -
- 股関節
大腿骨頭壊死は血流の悪化により、太ももの骨の根本にある大腿骨頭が骨壊死を起こす病気です。大きく「特発性大腿骨頭壊死症」と「症候性大腿骨頭壊死症」の2種類に分けられます。とくに特発性大腿骨頭壊死症は医療費助成の対象となる指定難病の一つです。(文献1) 好発年齢は男性が40代・女性が60代で、男女比は3:2です。新たに特発性大腿骨頭壊死症を発症する方は1年に2000〜3000人とされており、それほど珍しい病気ではありません。 骨が壊死してもすぐには痛みが出ず、壊死部分が圧迫されて潰れる(圧壊する)段階になって初めて痛みが生じます。現代の医療技術では、適切な治療により痛みを効果的に管理し、質の高い日常生活を送ることが可能です。 今回は大腿骨頭壊死のうち、特発性大腿骨頭壊死症の症状や治療法、入院期間について解説します。特発性大腿骨頭壊死症を発症した方で、治るか不安な方はぜひ参考にしてください。 大腿骨頭壊死が治るかは壊死の範囲・部位によって大きく異なる 大腿骨頭壊死が治るかは、壊死の範囲および部位により大きく異なります。そもそも骨壊死を起こしたから痛みが出るわけではありません。骨壊死を起こした部分に負荷がかかり、骨がつぶれる(圧壊を起こす)と痛みが生じます。 骨壊死を起こしている範囲が狭い・負荷がかかりにくい場所の場合、生涯に渡り圧壊を起こさず痛みが出ない例も少なくありません。骨壊死した部分が圧壊して痛みが強い場合であっても、適切な治療で取り除くことは可能です。 しかし、骨壊死により圧壊した部分を元通りに修復する方法はありません。骨壊死を起こした場合は経過を観察し、必要に応じて適切な治療を受けることが重要です。 大腿骨頭壊死の症状|初期症状とどんな痛みがあるかも紹介 大腿骨頭壊死を発症しても骨が壊死した段階では自覚症状がほとんどありませんが、骨が圧壊すると以下の初期症状が出始めます。 足の付け根の痛み 股関節の可動制限(文献2) 大腿骨頭壊死の初期症状の一つが、足の付け根の痛みです。椅子から立ち上がる際や歩行時など、股関節に体重がかかると鋭い痛みが生じます。股関節を内側にひねった際に傷みが生じやすい点も大腿骨頭壊死の特徴の一つです。 大腿骨頭壊死の初期症状としては、股関節の可動制限も挙げられます。股関節の外転(足を外側に開く動作)・内旋(足を付け根からひねる動作)が制限されるのが特徴です。 足の付け根の痛みが見られる方や、股関節の可動制限が気になる方は、大腿骨頭壊死の疑いもあるため、自己判断で放置せず専門医の診察を受けるようにしましょう。 大腿骨頭壊死の原因 特発性大腿骨頭壊死症の「特発性」は明確な原因がわからないことを意味しますが、主に以下の要因で発症リスクが増加すると考えられています。 ステロイド製剤の服用 アルコールの過剰摂取 ステロイド製剤は全身性エリテマトーデス(SLE)や膠原病、関節リウマチ、アレルギー疾患などの治療に用いられる身近な医薬品の一つです。ステロイド製剤を服用した方すべてが大腿骨頭壊死を発症するわけではありませんが、発症者の約半数にステロイド製剤の使用歴があるとわかっています。(文献3) アルコールの過剰摂取も、特発性大腿骨頭壊死症のリスクを高めるとされています。さまざまな研究により特発性大腿骨頭壊死症の発症者にアルコールの過剰摂取が認められていますが、発症機序は不明です。 大腿骨頭壊死が疑われる際にやってはいけないこと 大腿骨頭壊死が疑われる際にやってはいけないことは以下の通りです。 股関節に持続的な負荷をかける動作 体重増加 股関節の屈曲 飲酒・喫煙 大腿骨頭壊死の症状は、壊死した場所が圧壊して増悪します。激しい運動や重量物の運搬、階段の昇降など、股関節に持続的な負荷がかかる動作はなるべく避けてください。 体重増加も股関節への負担増加につながるため、標準体重を超過しないよう食事メニューを見直す必要があります。股関節の屈曲も壊死した部分に負荷をかけるため、頻繁にしゃがんだり立ったりする動作は可能な限り避けましょう。 また、「大腿骨頭壊死の原因」でも解説した通り、アルコールは大腿骨頭壊死を発症する要因の一つです。タバコに含まれるニコチンは毛細血管を収縮させ、骨壊死を加速させる可能性が指摘されています。大腿骨頭壊死を発症したら禁酒・禁煙に取り組みましょう。 大腿骨頭壊死の診断方法 大腿骨頭壊死は血液検査では診断できないため、主に以下2つの方法で発症の有無を確認します。 レントゲン MRI 大腿骨頭壊死が疑われる際は、まずレントゲンによる検査が行われます。大腿骨頭壊死の初期では壊死部の圧壊が起きておらず、診断が難しいケースも少なくありません。症状が進行すると変形性股関節症の所見から、大腿骨頭壊死が見つかる例もあります。 レントゲンでは大腿骨頭壊死を発症しているかわからない場合、MRI(磁気共鳴画像診断)による検査が行われます。MRIでは圧壊が起こっていない初期の大腿骨頭壊死を発見できる点がメリットの一つです。 整形外科ではCT(コンピュータ断層撮影)を用いた検査を行うケースもありますが、大腿骨頭壊死に関しては治療内容を決めたり、手術の計画を立てたりする際に用いられるのが一般的です。 股関節の大腿骨頭壊死の治療法 大腿骨頭壊死の主な治療法は以下の3つです。 保存療法(手術しない方法) 手術療法 再生医療 大腿骨頭壊死は自然治癒が見込めないため、症状の程度や進行度合いに応じて適切な治療法が選択されます。 それぞれの治療法をさらに詳しく解説します。 保存療法(手術しない方法) 大腿骨頭の壊死範囲がごく小さく圧壊が見られない際は、保存療法で経過を観察するケースがあります。大腿骨頭壊死の保存療法としては、主に以下3つの方法が挙げられます。 免荷・装具療法 物理療法・高圧酸素療法 薬物療法 免荷・装具療法は松葉づえやロフストランドなどを用いて患部にかかる負担を軽減し、痛みの緩和や歩行機能の改善を図る治療法です。 日本整形外科学会などが監修する特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン2019では、免荷療法で短期的には痛みが緩和するものの、長期的な圧壊予防効果および手術療法への移行を抑制する効果は期待できないとされています。(文献4) 物理療法・高圧酸素療法に関しては多くが海外で行われており、痛みを軽減したり圧壊の進行を予防したりする点に関して、エビデンスを伴う論文は認められていません。 薬物療法ではアレンドロネートやゾレドロネートなどのビスホスホネート系製剤が用いられます。薬物療法に関しては圧壊を抑制したり症状の増悪を予防したりする効果が報告されているものの、近年の調査では有意な効果が認められないとの報告もあります。 骨頭壊死に伴う圧壊がそれほど進行していなければ保存療法も有効ですが、日常生活に支障を来すほどの症状が見られる際は、その他の治療法を検討する必要があるでしょう。 手術療法 大腿骨頭の壊死範囲が広い場合や、日常生活に支障を来すほどの痛み・可動制限が認められる場合は、手術療法が検討されます。 大腿骨頭壊死の手術法としては以下2つがよく知られています。 骨切り術 人工関節置換術 それぞれについて詳しく解説します。 骨切り術 大腿骨頭壊死に対する手術療法の一つが骨切り術です。骨切り術では壊死を免れた健常な関節面を、体重がかかる部分へ移動する点が特徴です。自分の骨を利用した手術療法のため、関節を温存できる点が大きなメリットです。また、体重がかかる部分から移動した壊死部は、健常な骨へと生まれ変わる可能性も指摘されています。 大腿骨頭壊死症に対する大腿骨頭前方回転骨切り術を行ったある病院では、術後経過観察期間平均5年5カ月で、関節温存率が77.8%(18例のうち14例)と報告されています。(文献5) 人工関節置換術 大腿骨頭壊死に対する手術療法の一つが人工関節置換術です。人工関節置換術はさらに「人工骨頭置換術」と「人工股関節全置換術」の2つに分けられます。人工骨頭置換術では、臼蓋側(骨盤側)には手を加えず、壊死した骨頭だけ置換します。簡便な方法ですが、術後も痛みを残すケースが少なくありません。 人工股関節全置換術では壊死した骨頭を置換するだけでなく、臼蓋側(骨盤側)も人工物に置き換える点が特徴です。大腿骨頭の壊死した部分を切除して丸いボールを被せ、臼蓋側(骨盤側)に半球状のカップを設置し、特殊な加工を施したポリエチレンをはめ込みます。(文献6) 人工関節置換術のメリットは痛みの緩和や関節可動域の改善効果が高い点です。また、手術の翌週には歩行訓練が始められる上、リハビリ期間が骨切り術に比べて短いため、高齢者に関しては極めて有効な治療法とされています。 一方で、人工関節がすり減るため15〜20年程度を目途に再度手術を受けなければならない点や、感染症を起こしやすいのが懸念点です。また、特定の動作に伴い人工関節が脱臼しやすい点もデメリットとして挙げられています。 再生医療 大腿骨頭壊死の治療法として、近年では再生医療も挙げられるようになりました。大腿骨頭壊死を発症した方の血液から採取した幹細胞を培養し、増殖させてから患部に注入するのが再生医療の特徴です。 ただし、再生医療には健康保険が適用されないケースが多いため、治療費が高額になりがちです。再生医療は新しい治療法のため、地域によっては受けられる病院やクリニックがないケースもあります。 当院「リペアセルクリニック」では細胞加工室と連携し、通常は難しいとされる股関節への幹細胞注入を実現しています。大腿骨頭壊死の再生医療に興味がある方や、できれば手術を避けたい方は、当院までお気軽にお問い合わせください。 大腿骨頭壊死の治療にかかる入院期間は? 大腿骨頭壊死の治療で入院する期間は治療法や施設により異なりますが、一般的には以下の期間が目安となります。 骨切り術:1~2ヶ月程度 人工関節置換術:2週間~4週間程度 再生医療:数日程度 骨切り術は自分の関節を温存できる点がメリットですが、入院期間およびリハビリ日数が長い点が特徴です。人工関節置換術は2週間〜4週間程度が入院期間の目安で、安定して階段昇降や中距離歩行が可能になった段階で退院するケースが多いです。 まとめ|大腿骨頭壊死は早期発見・治療によって治るかが決まる 大腿骨頭壊死は早期発見・早期治療ができるかにより、どの程度回復するか決まります。発症初期には自覚症状を伴わないケースも多いですが、動作に伴う痛みや関節の動きの悪さが気になる方は、可能な限り早めに医療機関を受診して適切な治療を受けることが重要です。 症状が軽度の場合は保存療法で様子を見るケースもありますが、長期的な圧壊予防効果および手術療法への移行を抑制する効果は期待できません。人工関節置換術は痛みの緩和および関節可動域の改善効果が高い治療法ですが、感染症や脱臼のリスクを伴います。 近年では大腿骨頭壊死に対しても再生医療が用いられるケースがあり、手術を避けたい方にとっては検討したい治療法の一つとなっています。 リペアセルクリニックでは独自の技術で、通常は難しいとされる股関節への幹細胞注入を可能にしました。なるべく手術を避けたい方や再生医療に興味がある方は、リペアセルクリニックまでお気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献 (文献1) 難病情報センター「特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71)」 https://www.nanbyou.or.jp/entry/160(最終アクセス:2025年4月18日) (文献2) 公益財団法人日本股関節研究振興財団「指定難病の特発性大腿骨頭壊死症をご存知ですか?」 https://www.kokansetu.or.jp/personal/hpjclumn.php?no=23(最終アクセス:2025年4月18日) (文献3) 公益財団法人日本股関節研究振興財団「ステロイド治療に伴う大腿骨頭壊死の発生予防を目指して」 https://www.kokansetu.or.jp/personal/hpjclumn.php?no=36(最終アクセス:2025年4月18日) (文献4) 日本整形外科学会・厚生労働省指定難病特発性大腿骨頭壊死症研究班「特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン2019」 https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00541.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true(最終アクセス:2025年4月18日) (文献5) 整形外科と災害外科66「当科における大腿骨頭壊死症に対する大腿骨頭前方回転骨切り術の検討」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/66/4/66_800/_pdf(最終アクセス:2025年4月18日) (文献6) 東京医科大学病院「人工股関節全置換術を受ける患者さんへ」 https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/kansetsu/pdf/pamph_tha.pdf(最終アクセス:2025年4月18日)
2021.12.10 -
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再生医療の分野で注目されている「PRP療法」と「APS療法」。 どちらも自身の血液を使って行う治療法ですが、目的や仕組みに違いがあります。 本記事では、PRPとAPSの特徴や違い、治療の流れをわかりやすく解説します。 膝などの慢性的な痛みに悩む方や、手術以外の選択肢を探している方は、再生医療という新たな可能性を知るきっかけにしてみてください。 PRP療法とAPS療法の違い|再生医療としての特徴 再生医療とは、怪我や病気によって低下あるいは喪失した生体機能を、細胞や組織の働きを利用して回復を目指す医療分野です。 人為的に加工や培養して作製した細胞や組織などを用いて人体に元来備わっている「自己修復力」を引き出すアプローチとして、可能性が広がりつつあります。 中でも、PRP療法やAPS療法は、患者様自身の血液成分を活用する「自己由来」の再生医療とされ、とくに関節の痛みに関する治療の選択肢のひとつです。 どちらの療法も、血液中に含まれる「血小板」が関係しています。 血小板は止血の働きだけでなく、ケガをしたときに損傷部位の修復に関与する「成長因子」を含んでいるとされます。 PRP療法やAPS療法は、この成長因子を利用した治療法です。 PRP療法は、血小板が多く含まれる血漿(多血小板血漿=Platelet Rich Plasma)を注入する方法です。 一方、APS療法(Autologous Protein Solution)は、PRPをさらに加工・濃縮したもので、炎症に関与するタンパク質や関節の状態に関わる因子に注目した治療法として研究が進められています。 PRP療法とAPS療法とは?それぞれの特徴を解説 PRP療法(Platelet Rich Plasma療法)とAPS療法(Autologous Protein Solution療法)は、どちらも患者様自身の血液を利用して行われる再生医療の一種です。 主に関節の不調や慢性疼痛のケアを目的に導入されるケースがあります。 PRP療法では、採取した自己血液を遠心分離して血小板を濃縮し、それを処置部位に注入する方法が用いられます。 血小板には「成長因子」と呼ばれる物質が含まれているとされており、この成分には組織の修復や細胞の活性化などを促す働きがある可能性が報告されています。 そのため、ケガや関節の違和感に対して使用されることがあります。 APS療法は、PRPをさらに専用の装置で処理し、抗炎症性タンパク質や成長因子などを高濃度に含むとされる成分を抽出した自己タンパク溶液を用いる方法です。 こうした成分の働きにより、関節の炎症性因子に対するアプローチが期待される場面もあります。 なお、どちらの治療も自己血液をもとにしているため、異物による免疫反応のリスクは比較的少ないとされます。 ただし、症状の改善には個人差があり、すべての人に同じような効果が得られるわけではないため、実施の際は医師による十分な説明を受けることが大切です。 PRP療法とAPS療法の比較 項目 PRP療法 APS療法 抽出方法 血小板を多く含む血漿を抽出 PRPをさらに遠心分離・処理して特定タンパク質を濃縮 主な成分 血小板由来の成長因子を含む 成長因子と抗炎症性サイトカインを含む 期待される作用 組織修復や細胞増殖に関与する 炎症を抑える働きがあるとされる成分が含まれる 主な対象 関節・腱・靭帯の損傷など 変形性膝関節症など慢性的な関節の痛み 治療の特徴 自己治癒力を高め傷ついた組織にアプローチ 痛みの緩和を目的とする治療法 抗炎症・鎮痛を重視 痛みの緩和を目的とする治療法 使用する血液量 一般に10〜20ml前後 約50〜60ml程度 手技 採血後、専用機器で処理し注射 採血後、さらに濃縮処理し注射 自己多血小板血漿、注入療法とも呼ばれるPRP療法については馴染みが薄い治療法に感じられるかもしれません。しかし、海外においては10年以上の使用実績がある方法です。 PRP療法は、ご自身の血液を採取し、遠心分離機を用いて血小板を多く含む部分(PRP)を抽出・濃縮し、損傷した部位に使用する治療法です。血小板に含まれる成分が、もともと体に備わっている修復の過程に関与するとされています。 一方、APS治療は、同じく採取した血液を特殊な専用装置で処理し、炎症に関与する物質に着目して特定のタンパク質(抗炎症性サイトカインなど)を選択的に濃縮・抽出したものを用いる治療法です。関節などの炎症に対して使用されることがあります。 APS療法で期待できる効果と治療法 APS療法は、患者自身の血液から抽出したタンパク質濃縮液(Autologous Protein Solution)を患部に注射することで、関節まわりの環境を整えることを目的とした再生医療の一つです。 ここでは、変形性膝関節症に対してAPS療法で期待できる効果や実際の治療法などについて紹介します。 ご注意頂きたいのは、APS療法は再生医療ではありますが、関節の軟骨を修復して再生させるのが目的ではありません。 自己の血液から抗炎症成分のみを濃縮して抽出したあと、関節内に注射することで、膝痛の症状緩和に焦点を当てた特化的治療です。 膝の変形性関節症では、疾患が進行することによって「半月板の損傷」や、「靭帯のゆるみ」など膝関節のバランスが崩れることで軟骨がすり減り、膝関節が変形して発症します。 また、変形性膝関節症では膝関節部における変形度の進行に伴って、軟骨がすり減り、半月板が擦り減って傷み、さらには滑膜炎など炎症が起きて膝部に水が溜まることがあります。 従来、治療としては繰り返し鎮痛剤を内服することや、ヒアルロン酸を関節内に注入するなどが代表的な治療法でした。 しかし、鎮痛剤を飲み続ける是非や、ヒアルロン酸の効果が期待できなくなった変形性膝関節症の患者様の中には、このAPS治療によって症状の改善を示すケースがあることが分かってきたのです。 一般的にAPS治療では、投与してからおよそ1週間から1か月程度で患部組織の修復が起こり始めて、だいたい治療してから約2週間から3ヶ月前後までには一定の効果が期待できると言われています。 海外のAPS治療に関する報告例では、APSを一回注射するだけで、最大約24ヶ月間にもわたって痛みに対する改善効果が継続するとの実例も紹介されていました。 ただし、これは一例で実際の治療効果や症状が改善する持続期間に関しては、患者様の疾患の程度、条件によって様々、個人差があり変化することをご理解ください。 また、このAPS治療は、PRPと同じく、患者様自身の血液を活用して生成するために、通常ではアレルギー反応や免疫学的な拒絶反応は出現しないと考えられている点も良い面でのポイントです。 ヒアルロン酸の効果が感じられない方は以下の記事も参考にしてください。 APS治療の手順 1)まず約50~60mlの血液を採取 2)厚生労働省が認めている特殊な技術で処理し、血小板成分を濃縮したPRPを抽出 3)精製されたPRP物質をさらに濃縮してAPSを抽出 こうして抽出した後、痛みを自覚されている関節部位に超音波エコー画像を見ながらAPS成分を注射して投与する まとめ|PRP療法・APS療法は血液成分を活用した治療法 PRP療法(自己多血小板血漿注入療法)は、患者様自身の血液中に含まれる血小板を活用、APS治療は患者様自身の血液中に含まれる抗炎症性物質を活用した治療法です。 これらの治療を受けた当日は、入浴や飲酒・喫煙・激しい運動やマッサージなどは出来る限り回避するように意識しましょう。 治療後の行動については、くれぐれも十分に主治医と相談してください。 費用は、それぞれの対象医療施設や治療適応となる患部箇所などによって異なりますので、この治療法をもっと知りたい方は私どもほか、専門の外来へお問い合わせされることをおすすめします。 このPRP・APS療法のほかにも再生医療として、当院「リペアセルクリニック」が推進する「幹細胞治療」という治療法も存在します。 いずれにせよ関節に問題があって、「後は手術しかないと」と言われた方は再生医療をご検討されてはいかがでしょうか。 再生医療をご検討の際は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にお問い合わせください。
2021.10.20 -
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「グルコサミンとコンドロイチンの違いは?」 「グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントに副作用はある?」 グルコサミンやコンドロイチンは、体のあらゆる部分に存在しており、細胞同士をつなぎとめたり、水分を保持したりする性質をもっています。 ただ、グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントによる摂取は、研究結果によると、残念ながら痛みが軽減したエビデンスは少ないのが実情です。 今回はグルコサミンとコンドロイチンの違いを始め、サプリメントの摂取による副作用などを解説します。 思い込みによって効果を感じるプラセボ効果についても解説するので、これからサプリメントの摂取を検討されている方は参考にしてみてください。 グルコサミンとコンドロイチンの違いとは? グルコサミンは、アミノ糖の一種で軟骨を始め、爪や皮膚などに分布しています。 一方、コンドロイチンは、ムコ多糖と呼ばれており、グルコサミンなどのアミノ糖が連なってできた多糖体です。 どちらも体内で自然に生成される成分、関節を構成する成分として有名です。 グルコサミンやコンドロイチンは、体のあらゆる部分に存在しており、細胞同士をつなぎとめたり、水分を保持したりする性質をもっています。 関節内では、コンドロイチンはプロテオグリカンと呼ばれ、軟骨の構成成分としてクッションのような役割を果たし、骨と骨が接触しないよう保護してくれています。 膝・腰・肩などの関節が痛む原因 膝や腰、肩の痛みは多くの場合、加齢によるものが原因です。残念なことに体の機能は、年齢を重ねるにつれて徐々に衰えます。 グルコサミンやコンドロイチンといった体内で生成される成分も、加齢で生産率は減少していき、関節内の柔軟性や弾力性がしだいに失われます。 関節を構成する成分が減ってしまうと脆くなり、軟骨がすり減って骨がぶつかり合い、周辺の神経に伝わって痛みが出てくるのです。 たとえば、重労働や激しい運動など、膝や腰、肩を使いすぎる行動を継続すると痛みの原因になります。 すでに症状があり、膝などの関節痛が治らない方は、根本的な治療を行うほうが良いケースもあります。 当院「リペアセルクリニック」では、膝の痛みに関する再生医療の治療実績もございますので、まずはお気軽にメールや電話にてお問い合わせください。 グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントは関節痛に効果がない 軟骨に豊富に含まれているグルコサミンやコンドロイチンは、サプリメントから補給する方法もありますが、実は関節痛には効果がないのがわかっています。 関節の痛みに効果がない理由として、口からの摂取による影響が考えられるでしょう。 消化器官を通過すると、グルコサミンやコンドロイチンの構成成分であるアミノ酸や糖質は、胃液などにより消化および分解されてしまいます。 そのまま体に吸収されるため、軟骨まで到達するとは考えにくいのです。また、軟骨には血管がほとんどなく、栄養として成分が直接届きにくいとされています。 一般的にイメージされるサプリメントの効果は、軟骨減少の改善を始め、膝や腰、肩の痛みにおける症状改善などがあげられます。 ただ、研究結果をみると、グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントがもたらす効能は、科学的な根拠に乏しいのが実情です。 サプリメントの効果に関する研究論文【痛みが軽減したエビデンスは少ない】 米国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)が出資した主要な研究など、一部の研究によると、グルコサミンのサプリメントが痛みを軽減させたエビデンスは、ほとんどあるいはまったくありませんでした。 一部の研究発表では、コンドロイチンやグルコサミンなどの成分をサプリメントとして服用すると、膝や腰、肩の痛みを軽減する可能性があると示唆しています。 ただし、実際のところは「可能性レベル」であって、ほとんどの研究において「劇的な改善をもたらしたといえるほどの効果はない」と報告されています。 実際に大規模な研究結果でも、グルコサミンやコンドロイチンといった成分が関節の痛みに効果があるというエビデンスを示していません。 つまり、グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントが、痛みを軽減するのかは十分な証拠がない状況といえます。 関節痛にサプリメントが効くのは思い込み?プラセボ(プラシーボ)効果とは プラセボ(プラシーボ)効果とは、本来は薬としての効能がまったくない物質を摂取しているのにもかかわらず、効能が得られたと感じることです。 膝や関節に関わるグルコサミンやコンドロイチン、プロテオグリカン、ヒアルロン酸などのサプリメントも、同様に思い込みで効果を実感している可能性もあります。 実際に摂取された方のなかには「痛みが軽くなった」「痛みが半減した」などの意見が上がっている製品もあるようです。 実際に利用者が、どの製品のサプリメントに効果があると感じたのかは正確にはわかりません。 ただ、サプリメントの摂取で、膝や関節への効果を感じている理由としては、プラセボ効果が関わっているのではないかと考えられています。 グルコサミンとコンドロイチンの服用における実験結果 アメリカの臨床研究では、関節痛などの問題を抱えている大勢の方に集まってもらい、2つのグループに分けてモニタリングを行いました。 片方のグループには、グルコサミンやコンドロイチンの「本物のサプリメント」を与えて、もう片方のグループには、まったく何の効果もない「偽のサプリメント」を与えました。 実際にそれぞれのグループに一定の期間服用させたところ、グルコサミンとコンドロイチンの成分が入っているかどうかにかかわらず、以下のような改善が見られたのです。 本物のサプリメントを与えたグループ ・症状の改善が見られた層がいた 偽のサプリメントを与えたグループ ・「痛みが緩和した」「痛みが改善した」 など症状の改善が見られた層がいた 上記はプラセボ効果によるもので、一種の「思い込みによる心理的な働き」と考えられています。 「グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントは、摂取すると膝の痛みがとれる」といった情報から、思い込みやイメージなどにより、効いたように感じてしまうのです。 しかし、思い込みだとしても、実際に症状が良くなったと感じるなら、本人にとっては「痛みを改善する目的が達成できた」といった見方もできるかもしれません。 ただ、残念ながら結果が得られなければ、この記事を思い起こしていただければと思います。 グルコサミンとコンドロイチンの副作用 厚生労働省eJIMによると、グルコサミンとコンドロイチンのどちらも、3年間継続して摂取した場合、重篤な副作用は見られない結果でした。(文献1) ただ、本人の体における状態などを始め、服用している薬との飲み合わせによっては、何かしらの副作用が出る可能性もゼロではありません。 サプリメントの摂取を行うときは、必ず医療機関で医師や薬剤師などに問題がないかを確認してみてください。 まとめ|グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントが関節痛に効く可能性は低い グルコサミンやコンドロイチンは、体の軟骨成分に豊富に含まれている物質です。 医学的にはサプリメントで成分を補ったとしても、膝や肩などの関節に届く可能性は低く、痛みに効くとは言い切れないのが現状です。 ただ、今後の臨床研究により、なんらかの効能が見つかる可能性もあるかもしれません。 現在膝や肩などの関節痛に悩まされているなら、サプリメントに頼りすぎず、ぜひ整形外科を始めとした医療機関の受診をおすすめします。 痛みには思わぬ病気が隠れている場合もあるため、早期発見と早期治療が何よりの対処法です。 体の痛みや違和感といった症状を放置せず、しっかりとした診断に基づく治療を受けてみてください。 また、膝まわりの痛みに関しては、幹細胞を使った再生医療による治療方法もございます。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による関節症などの治療実績もございますので、関節に関わる症状がある方は、ぜひメールや電話からお悩みをご相談ください。 グルコサミンとコンドロイチンの違いに関するQ&A グルコサミンとコンドロイチンの違いに関する質問と答えをまとめています。 Q.軟骨成分のプロテオグリカンは関節痛に効果があるの? A.食事やサプリメントによる効果は期待できないと考えられています。 ただ、運動によって血流が良くなると、細胞に栄養などが届きやすくなり、プロテオグリカンの増加が促進されるのがわかっています。 プロテオグリカンと関節痛に関する詳細については、以下の記事を参考にしてみてください。 Q.コラーゲンのサプリメント・ドリンクは関節の違和感などに効果があるの? A.「低分子コラーゲン」「コラーゲンペプチド」と表記があるサプリメントやドリンクは、効果が期待できるかもしれません。 低分子化したものはコラーゲンペプチドとも呼ばれており、粒子が細かく腸壁で吸収されてから血液を通り、皮膚や骨、関節などの全身に届きます。 コラーゲンのサプリメントと関節痛との関わりについては、以下の記事も参考になります。 Q.グルコサミンやコンドロイチンを含む食べ物は? A.グルコサミンやコンドロイチンは以下の食べ物に含まれています。 コンドロイチン 肉の関節部分と軟骨(鶏の手羽・豚のリブ・牛のナックル) 甲殻類の外骨格(エビ・ロブスター・カニの殻) フカヒレ など グルコサミン 同上 山芋 オクラ なめこ 納豆 うなぎ きのこ類 甲殻類の殻や動物の関節部などは摂取が難しいため、スープなどにして調理すると良いでしょう。栄養素は相互作用で働くので、偏らずにさまざまな食べ物をバランス良く摂取してみてください。 参考文献 文献1 厚生労働省eJIM|海外の情報 グルコサミンとコンドロイチン
2021.10.06 -
- 股関節
- 変形性股関節症
人工股関節の手術を勧められて「農作業は続けられるのだろうか」と不安に感じている方は多いのではないでしょうか。手術後の過ごし方やリハビリ、作業の工夫次第で農作業を続けることは可能です。 この記事では、人工股関節を入れた際に農作業を行う際のポイントや再手術につながる症状について詳しく解説します。 また、再生医療という手術を伴わない新しい治療法も選択肢のひとつです。当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報提供や簡易オンライン診断も実施していますのでご活用ください。 【結論】人工股関節でも農作業は可能!ただし関節への負担に注意 人工股関節の手術を受けたあとでも、農作業を続けることは可能です。しかし、中腰やしゃがみ姿勢を長時間続ける作業や重い荷物の持ち運びなどの動作は、人工関節に過度な負担をかける可能性があります。 少し古いデータですが2000年に発表された研究では、人工股関節置換術を受けた患者のうち農作業を行う人は関節のゆるみのリスクが2.85倍高かったという報告がありました。(文献1) 研究当時と比べて現在の人工関節は素材や固定技術が大きく進歩し、耐久性も向上しています。それでも、肉体労働による負担が無関係ではありません。 人工関節が緩んでしまうと痛みや関節を動かせる範囲(可動域)の制限が再び現れ、再手術が必要になるケースもあります。そのため、人工関節を入れたあとに農作業を再開する場合は、作業内容や時間、身体への負担を見直しながら無理のない範囲で行いましょう。 症状の経過や筋力の状態によっても適切な活動量は異なるため、手術の検討や復帰のタイミングについては、必ず主治医と相談の上で判断するのが重要です。 人工股関節手術後の農作業で注意すべき3つのポイント 人工股関節手術後の農作業で注意したいポイントは、以下の3つです。 股関節を深く曲げない しゃがみ方・立ち方に気をつける 不安定な足場では無理に動かない 中腰やしゃがみ姿勢が多く、地面の近くでの作業が中心となる農作業では、関節に負担がかかりやすいため注意が必要です。農作業への復帰を検討する際は、作業内容や姿勢について主治医や理学療法士と相談しながら進めましょう。 以下の記事では、人工股関節手術後の生活における注意点について解説しているので参考にしてください。 股関節を深く曲げない 人工股関節の手術後は、股関節を一定の角度以上に深く曲げると、人工関節が外れてしまう「脱臼」を起こすおそれがあります。とくに、股関節を90度以上深く曲げないよう注意が必要です。 脱臼が起こると、股関節に強い痛みが生じ歩行が困難になります。その際はすぐに手術を受けた医療機関へ連絡し、麻酔下で関節を元に戻す整復処置を受けるのが一般的です。状況によっては、関節の位置や安定性を保つために再手術が必要になることもあります。 農作業中に強い痛みがあった場合は無理に動かさずにすぐ医療機関を受診しましょう。 しゃがみ方・立ち方に気をつける 人工股関節手術後の農作業では、しゃがみ方や立ち方に気をつけましょう。 以下の動作では、人工関節の摩耗リスクを高める可能性があるというデータがあります。(文献2) しゃがむ 起きる 中腰になる 持ち上げる 急に動作を切り替える 人工関節の素材や耐久性は年々向上していますが、過度な力やねじれが加わることで関節のゆるみや寿命の短縮につながるおそれがあります。椅子の活用や、重い荷物を持つときは片側に偏らないよう左右に分けて持つなど、安定した動作を心がけましょう。 不安定な足場では無理に動かない 人工股関節の手術後は、転倒によるケガや人工関節への衝撃に注意が必要です。農地や畑などの不整地では、地面のぬかるみや傾斜などで足元が不安定になる場合があります。 人工股関節を入れた方が転倒すると、関節の周囲の骨折や人工関節の脱臼・ゆるみにつながります。 ぬかるみや段差のある場所では足元が安定してから体を動かし、無理に姿勢を変えないようにしましょう。また、作業靴を滑りにくいものに変えたり踏み台や支えを利用したりするなど、環境面での工夫も転倒予防につながります。 人工股関節の再手術につながる症状 人工股関節は、時間の経過とともに人工関節のゆるみや感染、骨の変化などが起こり再手術が必要になるケースもあります。 次のような症状がみられる場合は、早めに整形外科を受診してください。 痛みが現れる 違和感がある 股関節のまわりが腫れている 人工股関節の手術後は定期検診を継続し、少しでも異変を感じたら主治医に相談しましょう。 以下の記事では、人工股関節置換術後の痛みの原因について解説しているので参考にしてください。 手術を避けたい場合は再生医療も選択肢の一つ 人工股関節手術を避けたいとお考えの方には、再生医療という選択肢もあります。再生医療は、自身の細胞や血液を活かして損傷している部位に働きかける治療です。 幹細胞治療:軟骨や骨など他の細胞に変化する「分化能」と呼ばれる能力を持つ幹細胞を活用する治療法 PRP治療:炎症を抑える働きがある血液中の成長因子を活用する治療法 人工関節置換術を受ける前の段階であれば、通院治療で日常生活を続けながら受けられるケースもあります。そのため、人工関節の手術を避けたい方は、再生医療もご検討ください。 以下の記事は、人工関節置換術を回避して再生医療を受けた患者様の症例です。治療内容や予後について紹介しているので、参考にしてください。 まとめ|人工股関節になっても無理のない農作業を続けるために 人工股関節の手術を受けたあとでも、工夫次第で農作業を続けることは可能です。ただし、無理な動作や負担のかかる作業は、関節のゆるみや脱臼などのリスクにつながるため注意が必要です。 人工股関節の方が農作業を続ける場合は、以下の点に注意しましょう。 股関節を深く曲げすぎない しゃがみ方・立ち方を工夫する 不安定な足場では無理をしない 体の違和感や痛みを見逃さない また、手術を避けたい方には、再生医療も選択肢の一つです。自身の細胞や血液を活かして関節や軟骨に働きかける治療法で、通院で日常生活を続けながら受けられます。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療を詳しく紹介しており簡易オンライン診断も受けられます。再生医療について詳しく知りたい方はご登録ください。 人工股関節と農作業に関するよくある質問 人工股関節の寿命はどれくらい? 一般的に、人工股関節の入れ替え手術が必要になる割合は、手術後10年で約14人に1人、30年で約4人に1人程度とされています。(文献3) 症状や手術した部位、日常生活での負担(農作業)によって耐久年数は個人差があります。そのため、具体的な寿命や今後の活動範囲については必ず主治医に相談しましょう。 人工股関節の手術後、農作業はいつから再開できる? 一般的に、手術後4〜6週間で、負担の少ない作業や軽い動作は再開できる場合があります。(文献4)ただし、農作業のように中腰や重い荷物の持ち運びを伴う場合は、関節に大きな負担がかかるため復帰までに数週間〜数か月かかるケースもあります。 復帰のタイミングは年齢・体力・農作業の内容・手術前の活動状況などによって個人差があるため、農作業を再開する際は主治医と相談しながら段階的に負荷を調整するのが大切です。 以下の記事では、人工股関節置換術後における仕事復帰の目安について解説しているので参考にしてください。 人工関節後に再生医療できない理由は? 再生医療は、自身の細胞を用いて関節に働きかける治療法です。 一度人工股関節を入れると関節の軟骨や骨の一部が人工物に置き換わるため、再生医療で働きかける対象となる自身の関節組織が残っていません。再生医療は人工関節手術の前段階で検討される治療法です。 すでに人工関節を入れた方は、リハビリや生活動作の工夫が治療の中心になります。 参考文献 (文献1) 社会人口学的要因と股関節形成術の失敗|PubMed (文献2) 人工股関節全置換術のための2つの摩耗因子の推定:筋骨格モデリングに基づくシミュレーション研究|PubMed (文献3) チャーンリー全股関節形成術の後方アプローチによる前向き研究の30年後の結果|PubMed (文献4) 人工股関節全置換術後のスポーツ復帰と職場復帰:系統的レビューとメタ分析|PubMed
2021.02.10 -
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- 変形性股関節症
「歩くときにふらつく感じがするので、杖を使いたいけれど選び方がわからない」 「すでに杖を使っているけれど、本当に自分に合っているのか自信がない」変形性股関節症と診断され、歩行時の不安から上記のように悩む方もいるでしょう。 不安定になりがちな足元を支え、歩行を助けてくれる杖は、もう1本の足ともいえます。 本記事では、変形性股関節症に適した杖の選び方と気を付けたいポイントを解説します。杖の正しい使い方も紹介するので、少しでも股関節の負担を軽減させたい方は、参考にしてください。 変形性股関節症に合った正しい杖の選び方と気をつけたいポイント せっかく杖を買っても自分に合っていなければ、歩くたびに股関節へ余計な負担がかかってしまう恐れがあります。杖を購入する際は、実際に自分で持って歩いてみるのも大切ですが、理学療法士や専門の医師に相談すると良いでしょう。 変形性股関節症に合った杖の選び方について、気をつけたいポイントも交えて紹介します。 変形性股関節症に関して詳しく知りたい人は、こちらの記事もご覧ください。 1)杖の重さ 杖を選ぶうえで、とくに重視したい点は軽さと強度です。 一般的に販売されているのは、軽さと強度を兼ね備えたアルミ製や、より軽いカーボン製の杖で、軽量でありながら強度の高さが特徴です。 重量がある杖は十分な強度をもつだけでなく、歩行に安心感を与えるメリットがあります。 ただし、あまりに重い杖は持つ手や腕に負担がかかるため、使い続けると疲れやすく結果的に使いづらく感じてしまうかもしれません。 杖の重さ メリット デメリット 重い杖 頑丈、安心感 使用で疲れ、使いづらくなる 軽い杖 軽量で強度が高く使いやすい 安定性は重い杖に劣る 2)握りやすさ 杖を選ぶポイントは、持ち手が自分の手になじみ、無理なく握れる太さである点です。 持ち手の素材には、木製やゴム製などさまざまな種類があります。滑りにくく自分の手にフィットする素材を選ぶと、握力が弱い人でも疲れにくく快適に使用できるでしょう。 購入前は実際に握って歩く練習をすると、自分に合った持ち手の杖を見つけられます。 3)長さ 杖の長さは「身長÷2+2~3cm」が目安といわれています。 短すぎる杖を使うと前傾姿勢になり、股関節への負担が大きくなるため、歩行を補助するつもりが、かえって症状が悪化する原因になりかねません。 一方、長すぎると扱いづらく、スムーズな歩行を妨げます。長時間の使用や長距離を歩行する際には、疲れやすさを感じるでしょう。 正しい姿勢で歩けるよう、自分にあった適切な長さの杖を選ぶのがポイントです。伸縮可能なタイプも販売されており、自分の身長に合わせて細かく長さを調整して使用できます。 適切な長さポイント 身長の半分に2〜3cmプラスした長さ 正しい姿勢で歩行できるよう調整する → 短い杖:前に姿勢が倒れるため、股関節への負担が大きい → 長い杖:扱いづらさや歩きにくさを感じ、疲れやすくなる 【症状別】変形性股関節症の方に適した杖の種類 杖には複数の種類があり、杖の形も歩きやすさに影響を与えます。 変形性股関節症の症状に適した杖の種類を紹介するので、ご自身に合った形が探せるよう基本的な性能を比べてみてください。 【症状が軽い方】T字杖 T字杖は、一本杖に握り手がついたタイプで、一般的な杖のひとつです。T字杖は、特別な使い方を覚える必要がなく誰でも簡単に使用できるため、比較的症状が軽い人に向いています。 多脚杖ほど安定しないため、高齢者や症状が進み自力での歩くのが困難な人には、安定性の面から不向きといえます。 同じT字杖でも、持ち手の形状や大きさ、重心などさまざまな種類があります。持ち運びに便利な折りたたみ式の製品もあるため、実際の使用感や使用シーンを考慮して選びましょう。 【手が変形している方】ロフストランド杖 ロフストランド杖は、別名「前腕固定型杖」とも呼ばれる一本杖の一種です。上部にある腕を通す輪と、下部についている握り手の2点で体重を支えられる構造になっており、T字杖よりも安定感があります。 手が変形している人や、握力・腕の筋力が低下し、T字杖では歩行時に体重を支えきれない人などに選択されます。 【筋力が低下している方】多脚杖 3点あるいは4点が地面と接する多脚杖は、接地面が複数あり体重が分散されるため、T字杖よりも安定感が増します。 一本杖では歩く際にふらつく人や、症状が進み筋力が低下している人には、多脚杖がおすすめです。 変形性股関節症の痛みが強い場合、杖に体重を預けて歩く機会が増えますが、多脚杖は高い安定性により転倒リスクを軽減できるメリットがあります。一方、一本杖よりも重くなってしまうデメリットもあるのも事実です。 変形性股関節症における正しい杖の使い方 変形性股関節症の人は、購入した杖の効果を発揮できるよう購入したお店や受診している医院などで使い方の指導を受けるようにしましょう。 正しく杖を使えると、痛みが改善されるだけでなく、歩行が楽に感じられ、行動範囲も広がります。 本章では、正しい杖の使い方を紹介します。 杖は痛みのある足と反対側の手で持つ 杖を使う際は、痛みがある足と反対側の手で持つのが基本です。 たとえば、右股関節が痛いなら左手で、左股関節が痛いなら右手で杖を持ちます。症状がある反対側の手で杖を持つと、歩行時に体重を分散させ、痛みのある股関節にかかる負担が減らせます。 痛みがある足と同じ側の手で杖を持つと、体重が痛みのある足に偏り、さらに負担がかかって症状が悪化する恐れがあるため、注意してください。 杖を持つ際は、体の横で自然に腕を下ろした位置が基本です。杖の長さは身長に合わせて調節し、肘が伸びきらず軽く曲がる程度の高さに設定しましょう。 杖と痛みのある足を同時に出す 歩行時は、杖と痛みのある足を同時に出すのが基本です。 右足が痛む場合は、左手の杖と右足を前に出し、続けて左足を前に出します。右足を出した際に、左手の杖に体重を預けるよう意識すると、痛みがある足への負担が軽減できます。 「杖と痛みがある足を同時に出す」動作を意識的に繰り返せると、歩行のリズムが整い体の重心が安定するでしょう。平地での歩行に慣れたら、少しずつ歩幅を広げていくと、より自然な歩行に近づきます。 杖に体重を預けすぎず、あくまで補助として使う意識が大切です。 階段は手すりも利用してゆっくり昇降する 階段の昇降は、平地の歩行以上に注意が必要です。とくに、変形性股関節症の人は股関節の動きが制限されるため、バランスを崩しやすく転倒リスクが高まります。必ず手すりを利用し、1段ずつゆっくりと、安全を最優先に昇降しましょう。 <階段の上り方> 杖を1段上に出す 痛みがない側の足を1段上げる 杖で体重を支えながら痛みのある足を引き上げる <階段の下り方> 杖を1段下に下ろす 痛みのある足を下ろす 杖で体重を支えながら痛みのない足を下ろす 「上る際は健康な足から、下りる際は痛みがある足から」という手順を守り、1段ずつ確実に昇降します。焦らず、自分のペースを守るのが、転倒防止につながります。 手すりがない階段や、どうしても不安な場合は、他の人に介助を求めることも検討しましょう。 変形性股関節症で杖を使うメリット 変形性股関節症の人にとって、杖は単なる歩行補助具ではありません。適切に杖を使用すると、日常生活の質を大きく向上できます。 杖の使用がもたらす具体的なメリットを紹介するので、ぜひチェックしてください。 股関節への負担が減らせる 変形性股関節症の方が杖を使うメリットとして、股関節にかかる負担を軽減できる点が挙げられます。 歩行時は、両足の股関節に体重が均等にかかるのが理想的です。しかし、変形性股関節症では、痛みから無意識のうちに痛みがない足に体重をかけてしまう傾向があります。 片方の足に体重が偏ったままだと、股関節にかかる負担も増加し、症状悪化の可能性があるのも事実です。 杖を使用すると、体重の一部が杖に分散され、股関節にかかる圧力が減少します。とくに、長時間の歩行や階段の昇降など、股関節に負担がかかりやすい状況下でも、杖は大きな助けとなるでしょう。 歩行時の痛みが和らぎ安定する 杖の使用は歩行時の痛みを和らげ、歩行が安定するメリットをもたらします。杖が第3の足となり体の重心が安定すると、ふらつき・よろめきは軽減され、転倒リスクを減らせるでしょう。 変形性股関節症による歩行時の痛みは、多くの人が抱える悩みです。 痛みが強いと、トイレ・お風呂などの日常動作が億劫になり、筋力低下や症状悪化などの悪循環に陥る人もいます。さらに症状が進むと寝たきりになってしまう可能性があります。 安定した歩行は、身体的なメリットだけでなく、精神的な安定にもつながります。 歩行範囲が拡大し運動不足が解消する 変形性股関節症で歩行がつらくなっていても、正しく杖を使えると、痛みが軽減されて歩行範囲も広くなります。 「少し遠くまで歩いてみよう」「新しいお店に行ってみよう」と、意欲的に行動できるようになるかもしれません。 歩行範囲が広がると、運動不足の解消にも大きく貢献します。変形性股関節症の人は痛みから運動不足になりがちですが、歩けると筋力維持や関節の柔軟性向上につながります。 散歩や買い物など、日常生活の中で無理なく運動を取り入れ、より健康的な毎日を過ごしましょう。 変形性股関節症に合った杖を選んで歩行の負担を減らそう 変形性股関節症で杖を使う場合は、症状に合った種類の杖を選ぶのが大切です。自分の身長に合った高さや握りやすさだけでなく、使用シーンや使用時間も考慮すると、より使いやすい杖を選べます。 自分にピッタリな杖を選べると、股関節への負担が減るだけでなく、行動範囲も広がるなどのメリットをもたらします。変形性股関節症で杖の選び方や使い方に悩んでいる人は、実際に販売している店舗や病院へ行って理学療法士や専門の医師によるアドバイスを受けながら杖を選ぶと良いでしょう。 変形性股関節症についてはこちらもご参照ください。
2021.02.08 -
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股関節の痛みが強いときに行われる治療のひとつに、ステロイド注射があります。 とくに変形性股関節症の治療では、痛みを和らげるためにステロイド注射がよく使われますが、長期間の使用には副作用のリスクがあるため注意が必要です。 本記事では、股関節のステロイド注射の必要性や副作用の可能性について詳しく解説します。 治療に対する不安を少しでも軽減できるよう、正しい知識を身につけておきましょう。 変形性股関節症の治療|ステロイド薬の必要性と副作用を解説 ステロイドは、変形性股関節症の保存療法の一環でよく使われる薬です。 痛みに効く薬として、主にステロイド注射や経口薬として治療に用いられます。 「必要性は理解できるけど、副作用が気になる」 「どのぐらいの効果があるの?」など 副作用や効果について不安を感じる方は多く、なかには、ステロイドの使用を躊躇してしまう方もいらっしゃいます。 本章では、変形性股関節症に対するステロイド薬を用いた治療についてご説明します。 変形性股関節症におけるステロイド薬の使用目的とは? ステロイド薬は、痛みの緩和や痛みを抑える目的で使用されます。 変形性股関節症は、股関節の軟骨が摩耗し、関節が変形して痛みや可動域の制限を引き起こす疾患です。 治療法には「保存療法」と「手術療法」があり、初期から中期の症状の場合は保存療法で治療します。 保存療法では、手術を回避するためにまず痛みの緩和が求められます。 これは、運動療法の効果を高めるためだけでなく、痛みによって生じる体の防御反応を抑える目的もあります。 股関節に痛みがあると、無意識のうちに他の筋肉や組織に余計な負担がかかるため、ステロイド注射などで痛みを防ぐことが重要です。 ステロイド薬には抗炎症作用と鎮痛作用がある ステロイド薬の効果は、痛みを抑えるだけでなく、痛みの原因となる炎症そのものを抑える効果があります。 痛みの原因物質の産生を抑え、強い抗炎症作用や鎮痛(痛みを止める)作用を発揮します。 そのため、変形性股関節症でステロイド注射や経口薬を使用すると、炎症を抑え、痛みを軽減するなどの改善効果が期待できます。 ただし、ステロイド薬は免疫力の低下や骨密度の低下など、副作用が起こる可能性もあるため使用には注意が必要です。 ステロイド薬の効果時間(期間)はどのくらい? ステロイド薬の効果時間は、使用方法や投与経路によって異なります。 一般的に、以下のような持続時間が考えられます。 経口薬(内服薬):数時間〜1日程度 薬の種類によって異なりますが、中程度の作用時間を持つ薬は1日に1〜2回の服用が必要になる場合が多いです。 注射(関節内注射):1週間〜数か月 特に関節内に投与されるステロイド注射は、短期間で効果が現れ、持続時間は数週間から数か月とされています。 外用薬(塗り薬):数時間〜1日 皮膚に塗るタイプのステロイドは即効性があり、1日数回塗布することで効果を持続させます。 吸入薬:数時間〜1日 喘息などの治療に使用される吸入ステロイドは、即効性よりも継続的な使用で効果を発揮します。 変形性股関節症においては、ステロイド注射が使用される場合が多く、一時的に痛みを和らげる効果が期待できますが、持続時間には個人差があり、効果が切れると再度痛みが現れることもあります。 ステロイド薬の副作用 ステロイドは、さまざまな病気の治療に使用されていますが、長期間または高用量で使用すると、副作用が現れる可能性があります。 主な副作用として、次の5つがあります。 免疫力の低下 骨密度の低下(骨粗しょう症) 血糖値の上昇(糖尿病のリスク) 体重増加・むくみ 精神的な影響 ここから、上記副作用の解説とステロイド注射で副作用が現れる期間・対処法について紹介します。 免疫力の低下 ステロイドは免疫機能を抑制するため、感染症にかかりやすくなる可能性があります。 風邪やインフルエンザにかかるリスクが高まるほか、傷の治癒も遅くなるため、手術後の回復にも影響を与える場合があります。 骨密度の低下(骨粗しょう症) 長期間使用すると、骨形成を抑制し、骨吸収を促進することで骨密度低下を引き起こします。 そのため、骨折しやすくなる可能性があります。 とくに高齢者や閉経後の女性は、骨密度の低下が進みやすいため注意が必要です。 骨粗しょう症を予防するために、カルシウムやビタミンDの摂取、適度な運動を心がけましょう。 血糖値の上昇(糖尿病のリスク) ステロイドは血糖値を上げる作用があり、糖尿病の発症リスクを高めることがあります。 糖尿病の既往がある場合や家族に糖尿病の人がいる場合は注意が必要です。 体重増加・むくみ ステロイドは体内の水分や塩分のバランスを変えるため、顔や手足がむくみやすくなります。 また、食欲が増進するため、体重が増えやすくなります。 塩分を控えた食事と、適度な運動で、体重増加を抑えることが可能です。 精神的な影響 ステロイドの使用により、気分の変動が大きくなったり、不眠、不安感、うつ症状が現れたりする場合があります。 高用量のステロイド注射や経口薬を使用すると、一時的に気分が高揚する(多幸感)こともありますが、急に気分が落ち込むこともあるため、注意が必要です。 症状が強い場合は、医師に相談し、適切な対策を講じることが大切です。 ステロイド注射の副作用が現れるまでの期間 副作用が現れるまでの期間と主な症状は以下のとおりです。 【ステロイド注射を受けた直後から数時間以内】 注射部位の痛みや腫れ:一時的に患部が痛くなることがありますが、通常は数日以内に治まります。 顔のほてり(フラッシング):特に女性に多く見られ、顔が赤くなったり、体が熱く感じたりする場合があります。 軽度のめまい・頭痛:一時的な症状として現れることがありますが、長く続く場合は医師に相談が必要です。 【ステロイド注射を受けた数日から数週間後】 血糖値の上昇:糖尿病のある人や血糖値が上がりやすい体質の人は、注射後数日以内に血糖値が高くなることがあります。 睡眠障害や気分の変化:一部の人は、注射後に不眠や気分の浮き沈みを感じることがあります。 食欲の増加:ステロイドの影響で食欲が増し、体重増加につながることがあります。 【数ヶ月以上など長期間による、ステロイド注射を受ける場合】 骨密度の低下(骨粗しょう症):長期間にわたる使用は骨をもろくし、骨折のリスクを高めます。 皮膚の変化:皮膚が薄くなったり、注射部位に色素沈着が起こることがあります。 免疫力の低下:頻繁に使用すると感染症にかかりやすくなる可能性があります。 ステロイド注射の副作用が現れるまでの期間は、使用量や個人の体質、健康状態によって異なります。 ステロイド注射を受けた後は、体の変化に注意を払い、少しでも違和感を覚えたら、速やかに医師に相談しましょう。 ステロイド注射で副作用が現れたときの対処法 ステロイド注射後に副作用が現れた場合、軽度の症状であれば、経過を観察などで様子を見る場合が主ですが、症状が重篤であったり、日常生活に支障をきたすような場合は、ステロイドの減量や中止、または他の治療法への変更を検討する必要があります。 軽度な症状でも、自己判断は避け、すぐに医師に相談しましょう。 自己判断で放置してしまうと、症状が悪化し、最悪の場合は命に関わることもあるため、適切な処置を受けることが非常に重要です。 ステロイド薬は、変形性股関節症を根本的に治すものではない ステロイド注射や経口薬による治療は、痛みの改善には効果が期待できますが、損傷した関節を修復する効果はありません。 そのため、痛みの緩和をさせながら様子見はできても、軟骨のすり減りや骨の変形の進行自体を止めるなど、変形性股関節症の根本的な治療をすることはできません。 また、変形性股関節症は進行する病気です。 つまり、ステロイド注射などで治療をおこなったとしても、最終的には手術を行う必要が出てくる可能性があります。 変形性股関節症のステロイド薬での治療はどのように行うのか? 変形性股関節症の治療にはステロイド注射と経口薬があり、まずは経口薬から始め、痛みに対する効果が感じづらくなってきた場合に関節内にステロイドを直接注射します。 ステロイド注射を、直接損傷した股関節に注射することにより、ステロイド薬の強力な抗炎症作用が効果を発揮し、痛みを改善することができます。 しかし、長期的な使用は副作用のリスクがあり、徐々に変形性股関節症の症状が進行するとステロイド注射の薬効が薄れ、効き目が感じられなくなることもあります。 このように薬効がなくなると外科的治療である手術を検討しなければなりません。 ステロイド以外の治療選択肢としての再生医療 ステロイドは炎症を抑える効果が高い一方で、副作用のリスクも伴います。 そのため、近年では再生医療がステロイドに代わる新たな治療法として注目されています。 再生医療は、自己治癒力を高め、損傷した組織や細胞を修復・再生することを目的とした治療法です。 再生医療の治療法には、主にPRP(多血小板血漿)療法と幹細胞治療があります。 どちらも患者様自身から採取した血液・幹細胞を用いるため、副作用のリスクが低いのが特徴です。 再生医療に興味がある方は、ぜひ当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。 まとめ|変形性股関節症の治療におけるステロイド注射の副作用を知っておこう 本記事では、変形性股関節症の治療で使用されるステロイド薬についてご紹介しました。 ステロイド薬には強い抗炎症作用と鎮痛作用があり、経口薬やステロイド注射で、痛みの軽減と緩和が期待できます。 しかし、ステロイドには骨を脆くするなどの薬としての副作用があり、長期的なステロイド治療はおすすめできません。 また、ステロイドは変形性股関節症の根本的な治療に効果を発揮するわけでもありません。ステロイドの特性を知った上での服用が大切です。 いずれにしても、専門医と相談の上、無理のないより良い治療法を探し、痛みと向き合っていただくことをおすすめします。 変形性股関節症には、再生医療という治療選択肢もあります。 再生医療について詳しく知りたい方は、以下もあわせてご覧ください。
2021.02.02 -
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股関節の痛みや違和感が特徴的な「臼蓋形成不全」と診断され、本当に治るのか不安になっていませんか。 なかには症状がつらくて改善するイメージができず、今後の生活が成り立つかどうか心配されている方も多いでしょう。 しかし、臼蓋形成不全は早期治療で改善が期待できます。軽症ならリハビリや安静などの保存療法で症状が緩和されるため、早めの対処が大切です。 本記事では、臼蓋形成不全の治療や日常生活のポイントを詳しく解説します。 この記事を参考に、適切な治療やセルフケアを行って臼蓋形成不全の症状を緩和させましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、股関節痛の軽減や変形性股関節症の重症化予防を目的とした再生医療を行っております。 「メール相談」または「オンラインカウンセリング」にて無料相談を受付中です。股関節痛でお悩みの方は、ぜひ当院までご相談ください。 臼蓋形成不全は適切な治療で治る可能性が高まる 専門医による適切な治療を受けると、臼蓋形成不全の治癒率は高まる可能性があります。 臼蓋形成不全とは、大腿骨をつないでいる骨盤のくぼみ「臼蓋」が浅い状態です。大腿骨と臼蓋の安定性が破綻することで骨盤のバランスが崩れ、股関節の痛みや違和感が生じます。(文献1) ここでは、臼蓋形成不全の主な治療について詳しく解説します。股関節の痛みでつらい方も、本章を参考に前向きに治療を検討してみてください。 1.初期の場合は「保存療法」 「変形性股関節症への進行を防ぐこと」が、臼蓋形成不全の治療目的です。 臼蓋形成不全では、股関節が不安定になりやすい状態です。軽度の場合は股関節を支える筋肉を鍛えるために、筋肉トレーニングを保存療法として取り入れることもあります。 また、つらいときは安静にすることもありますが、筋肉が衰えて歩行困難になるリスクがあるため、長期間続けないようにします。 変形性股関節の保存療法について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。 2.重症の場合は「手術療法」 保存療法で改善がなければ、悪化を予防するために臼蓋を大きくする手術が行われる場合があります。 臼蓋形成不全の治療で用いられる手術は、主に以下の2つです。 術式 方法 骨切り術 股関節の骨を削り、大腿骨との咬み合わせを調整する 人工股関節置換術 人工関節に替え、大腿骨と臼蓋をつなぐ ただし、あくまで手術は保存療法を用いても重症化したときに行われます。臼蓋形成不全の診断を受けても、必ず手術をしなければならないわけではありません。そのため、懸念がある方は医師と入念に話し合ってから決めましょう。 臼蓋形成不全に伴う股関節痛は、保存療法・手術療法以外では「再生医療」を用いた治療も可能です。気になる方は、以下のページをご覧ください。 臼蓋形成不全は「変形性股関節症」のリスクがあるため放置は厳禁 実は、臼蓋形成不全が「変形性股関節症」の発症原因になる可能性があります。 一般的に変形性股関節症の主な発症原因は「加齢」です。しかし、臼蓋形成不全にて股関節が傷みやすい人の場合、若年でも変形性股関節症を発症する場合があります。 また、小児期の臼蓋形成不全は画像診断でわかることが多く、自覚症状がない場合もあります。そのため、幼少期に発症した臼蓋形成不全の後遺症に気が付かず放置し、変形性股関節症になってしまったケースも珍しくありません。 大人になってから股関節の違和感や痛みを放置せず、早期に適切な治療を受けることが大切です。 臼蓋形成不全でやってはいけないこと3つ 臼蓋形成不全になった際にやってはいけないことは、主に以下の3つです。 無理な運動や重労働 しゃがむ動作 関節に負担をかける座り方 本章を参考に日常生活の注意点をおさえ、悪化を防ぐようにしましょう。 無理な運動や重労働 激しい運動や重労働は、股関節に負担がかかります。股関節痛が気になる際は、以下のような動作を避けるようにしましょう。 重たい荷物の持ち運び 股関節を大きく動かす筋トレやストレッチ 激しく飛び跳ねる運動(ジョギング・ジャンプなど) ただし、まったく動かない状態が続くと筋肉が衰えてしまう原因になります。医師の指示に従って適切な運動をしましょう。 しゃがむ動作 深くしゃがむ動作は、股関節周辺の骨に負担をかけるため、痛みの悪化につながります。激しい運動のみならず、何気ない日常生活の動作にも注意が必要です。普段の生活で無意識に深くしゃがみ込む動作の例として、以下があります。 トイレでしゃがむ 床のものを拾う 靴ひもを結ぶ これらを行う際に、うっかり股関節に負担をかけると痛みが増すこともあります。臼蓋形成不全の方は、動作を過剰に繰り返さないよう十分注意しましょう。 座り方 以下の座り方は、股関節に負担をかける可能性があります。股関節の痛みがある際は避けるようにしましょう。 あぐら 正座 横座り とくに、普段から床に直接座る習慣のある方は注意が必要です。地べたに座らず、座布団・クッション・椅子などを活用して股関節の負担を和らげるようにしましょう。 臼蓋形成不全の人におすすめの筋力トレーニング ここからは、臼蓋形成不全の人におすすめの筋トレ方法を3つご紹介します。どれもすぐに実践できる方法のため、股関節痛で悩んでいる方はぜひ実践してみてください。 仰向けで膝を抱えるトレーニング 床の上に、仰向けの状態で横になる 右ひざを両手で抱える 無理のない範囲で胸に引き寄せ、10秒ほどキープ 左膝も同様に2.~3.を行う 自宅でリラックスした状態で、股関節の周りの筋肉を伸ばせます。寝る前や起床時のスキマ時間にお試しください。 立って足を広げるトレーニング 床に垂直になるようにまっすぐ立つ 右足をゆっくり真横に広げ、ゆっくり閉じる 数回繰り返す 左足も同様に行う ※転倒しないよう必要に応じて壁などに手をついて行ってください 上記の動作は、太ももの外側の筋肉が鍛えられます。また、体の軸がぶれないよう意識するとより効果的です。ぜひ実践してみてください。 座って股関節を回すトレーニング 椅子に座る 足を少し浮かせる 足の付け根を右回り・左回りにそれぞれ5回ずつ回す 上記のトレーニングは、股関節を動かす範囲を広げて柔らかくする効果が期待できます。自宅でくつろいでいるときや、仕事の合間にお試しください。 今回ご紹介した筋トレは臼蓋形成不全の方におすすめですが、無理に動かすと股関節の痛みが悪化する恐れがあります。痛みがつらい場合は、運動をすぐに中止してください。 まとめ|臼蓋形成不全を早めに治療して悪化を防ぎましょう 臼蓋形成不全は直ちに生命に関わる疾患ではありませんが、「変形性股関節症へ進行するリスクがある」ことを考えると、放置することは危険、問題になる可能性があります。 股関節に違和感があれば、早めに病院等、医療機関で専門医に相談しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、股関節痛の軽減や変形性股関節症の重症化予防を目的とした再生医療による治療を行っております。 「メール相談」または「オンラインカウンセリング」にて無料相談を受付中です。股関節痛でお悩みの方は、ぜひ当院までご相談ください。 臼蓋形成不全の治療についてよくある質問 臼蓋形成不全は進行しますか? 成長過程で自然治癒する場合が多いものの、臼蓋形成不全が重度になると自然に治らず悪化して変形性股関節症に移行するリスクも考えられます。 臼蓋形成不全は、股関節が不安定になりやすい状態です。軽度の場合は股関節を支える筋力を強化する目的で股関節周囲の筋力トレーニングを行うことがあります。一方で重度の場合は、変形性股関節症に進行するリスクが高いため、臼蓋を大きくするための手術を行う場合もあります。(文献2) 臼蓋形成不全になったら手術した方が良いですか? 臼蓋形成不全と診断されたからと言って、必ず手術しなければならないわけではありません。症状の程度により、適切な治療が異なります。多くの場合であれば保存療法が、重度では手術が選択されます。しかし、医師の判断と患者のライフスタイルや希望によるため、担当医としっかり相談しましょう。 年代別の変形性股関節症の進行リスクについては、以下の記事にて詳しく解説しています。気になる方は、あわせて参考にしてください。 参考文献 (文献1) 南角学ほか.「変形性股関節症患者の臼蓋形成不全は腸腰筋の筋萎縮と関連する」『第49回日本理学療法学術大会 抄録集』2巻(41号), https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2013/0/2013_0526/_article/-char/ja/(最終アクセス:2025年2月19日) (文献2) ニノ宮節夫.「リハ医のための股関節手術-その適応と術式の選択-」『リハビリテーション医学』5巻(35号), p330-p.333, 1998年https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1964/35/5/35_5_330/_pdf(最終アクセス:2025年2月19日)
2021.01.18







