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くも膜下出血は脳疾患のなかでも症状が重いことで知られています。 発症時の一年死亡率は65%以上とも言われています。 後遺症や再発のリスクもあり、十分な警戒が必要な疾患と言えるでしょう。 本記事ではくも膜下出血の症状や合併症、治療法や再発予防法などを解説します。 くも膜下出血の概要・症状・治療法 くも膜下出血とは、脳と周囲の膜との間の空間(くも膜下腔)で出血が起こる疾患です。 くも膜下で出血があると、脳に対して十分な血液が供給されません。虚血状態になり、心身にさまざまな症状が現れます。 ほとんどの出血は、生活習慣の乱れによって形成される「脳動脈瘤」の破裂に原因があると言われます。 直接の原因である脳動脈瘤が発生する理由は正確にはわかっていません。 ただ、次の特定の危険因子が関与していると見られます。 発症の危険 喫煙 過度のアルコール摂取 頭部外傷 喫煙やアルコール摂取は動脈硬化のリスクを高め、脳動脈瘤の発生や破裂を引き起こします。 また事故などによる外傷によっても、くも膜下出血は起こりえます。 くも膜下出血を発症した場合の予後は良くありません。一度発症した場合の一年死亡率は約65%と高く、生存した場合でも後遺症や再発リスクが生じます。 くも膜下出血の前兆には突如の強い頭痛や吐き気などがあり、これで発症に気づくケースが大半です。 発症は、激しい咳や運動、性行為など身体的負担が大きい生理反応や活動があった際に起こるケースが多いです。 くも膜下出血の初期症状 くも膜下出血では、以下の初期症状が突発的に起こります。 くも膜下出血の症状例 これまで経験したことない強さの、突発的な頭痛 極度の疲労感や気分不良 吐き気、嘔吐 光に対する過敏(羞明) かすみ目、複視、眼瞼下垂 脳梗塞のような症状(ろれつが回らない、体の片側の麻痺など) 意識消失 全身の痙攣 最初に強い頭痛を感じるケースが多いでしょう。 痛みの程度は「雷に打たれたかのよう」と表現されるほど激しいものです。 しかし頭痛は時間経過により緩和する傾向にあり、「治ったので問題がない」と判断して、前兆を見逃すケースが少なくありません。 また、くも膜下出血があったあとの数か月間は、極度の疲労を感じるケースがあります。 たとえば、普段の通勤通学や買い物に対して従来よりも明らかに強い疲労感が生じます。 不眠症や睡眠不足、手足の痺れや感覚の喪失を訴えるケースも少なくありません。 しかし、これらの初期症状は数か月かけて徐々に改善するため、頭痛が発生した際と同様、「治ったので問題がない」と誤解されることがあります。 基本的な治療法 くも膜下出血が疑われる場合、病院でCT検査をおこない、脳の周囲に出血の兆候がないか確認します。 発症が認められた際には「動脈瘤クリッピング術」と「脳動脈瘤コイル塞栓」などの治療法が用いられます。 動脈瘤クリッピング術は、頭部を切開し、頭蓋骨に穴を開けて、脳動脈瘤を取り除くもの。 脳動脈瘤コイル塞栓は、すでにある脳動脈瘤の破裂を塞ぐ目的でおこなわれます。 脳動脈瘤コイル塞栓では頭部を切開しません。鼠蹊部(足の付け根)から特殊なカテーテルを挿入し、脳動脈瘤内にコイル(プラチナ製の小さな機器)を送り込みます。 コイルにより、脳動脈瘤への血液の流入を遮断し、破裂が予防されるしくみ。 その他対症療法として、降圧薬や鎮痛薬などの投与もなされます。 また近年では、再生医療による治療法も注目されています。再生医療とは、自己脂肪由来幹細胞やPRP療法などを用いた新しい医術。 くも膜下出血に対しては、失われた脳機能の回復や、脳内血管の再生などによる再発予防などの効果が期待されます。 くも膜下出血の合併症 くも膜下出血は、治療を行う際に以下のような短期的および長期的な合併症を引き起こす可能性があります。 くも膜下出血の合併症 水頭症 出血 深刻な合併症には、動脈瘤の再出血や、脳への血液供給の減少によって引き起こされる脳の損傷によるさまざまな機能低下があるため、合併症を起こさない治療が大切です。 治療後のリハビリ計画 くも膜下出血から回復するのにかかる時間は、その重症度によって異なります。 とくに出血の部位は、手足の感覚の喪失や言語理解の問題(失語症)などの後遺症にも関連します。 そこで、治療後は急性期〜回復期にかけて理学療法士の下で実施されるリハビリ計画は、影響を受けた手足の感覚と動きを回復するのに役立ちます。 くも膜下出血の後遺症にはどのようなものがある? くも膜下出血は、適切な治療を早期に受けても後遺症が出る場合があります。 一般的に多くみられる後遺症 くも膜下出血は治療後の回復も、時間がかかるものであり、次のような後遺症が発生するのが一般的です。 くも膜下出血の後遺症 1.運動麻痺 右か左の手足が動かしづらくなる 2.感覚障害 痺れや脱力感 3.嚥下障害 物が飲み込みづらい 4.視野障害 半分の空間がうまく認識できない 5.高次脳機能障害 言葉がうまく話せない、理解がうまくできないなどの失語症、注意・集中ができない 6.認知や行動の障害 物事をうまく実行できない、最近の出来事を直ぐ忘れてしまう その他にみられる後遺症 そのほかにも次のような後遺症が現れることもあります。 くも膜下出血、後遺症 歩行不安定、尿便失禁 てんかん繰り返す発作 記憶などの認知機能障害 うつ病などの気分の変化 特に、認知機能障害はくも膜下出血の一般的な後遺症であり、ほとんどの人がある程度影響を受けます。 記憶の問題に関しては、発症前の記憶は通常影響を受けませんが、新しい情報や事実を思い出すのが難しくなります。 気分や思考にみられる後遺症 また、以下のような気分や思考の問題も現れます。 1.うつ病 気分が落ち込み、希望がなく、人生を楽しむことができない 2.不安障害 何か恐ろしいことが起こるのではないかという絶え間ない不安と恐怖感 3. 心的外傷後ストレス障害 (PTSD) 人は悪夢やフラッシュバックを通じて以前の外傷的出来事を追体験することが多く、孤立感、過敏性、罪悪感を経験することがある。 このような後遺症は、長期化するケースも稀ではなく、治療後のリハビリなどが重要になります。 くも膜下出血の再発リスクを減らす予防法 くも膜下出血を発症したあとも、再発の可能性が残ります。 再発した場合にも高い死亡リスクが残るため、予防は重要です。 予防法として以下が考えられるでしょう。 喫煙や飲酒を控える 定期的な運動に取り組む 健康的な食事を心がける 喫煙や飲酒を制限する まず、喫煙や飲酒を制限するのが重要です。 喫煙はくも膜下出血の主な原因になる脳動脈瘤を発生させる要因です。 したがって再発を防止する上では禁煙するのが基本となるでしょう。 飲酒は高血圧の原因になります。血圧が上昇すると膜下出血の主な要因である脳動脈瘤の破裂が起こりやすくなるため、飲酒は大きなリスクとなるでしょう。 上記の理由から喫煙や飲酒は控える、可能なら禁煙禁酒するのが望ましいです。 定期的な運動に取り組む 定期的な運動は、以下の効果をもたらすことから必要です。 血行不良の促進 高血圧の予防 ストレスの原因 血行不良や高血圧、ストレスは、すべてくも膜下出血の再発の原因です。 一方で定期的な運動の実施により、これらの影響をある程度解消できるでしょう。 とくにランニングやウォーキングなどの有酸素運動などが効果的です。 再発防止には、これらの運動を日常に取り入れるのが重要です。 健康的な食事を心がける 以下の健康的な食事は、くも膜下出血の再発防止に有効です。 緑黄色野菜や果物 青魚(イワシ、サバなど) ナッツ類 大豆製品 オリーブオイル、菜種油(トランス脂肪酸が含まれていないため) 塩分が少ない食事 栄養バランスが偏ると、くも膜下出血の原因になる高血圧や血行不良につながります。 一方で上記の食物や食事には、血圧を下げ、血行を促進する効果があると言われています。 再発防止には、不健康なものを遠ざけ、健康的な食事を摂るのが重要になるでしょう。 くも膜下出血によくあるQ&A 最後にくも膜下出血に関するよくある質問をまとめました。 後遺症がどのくらいで治るのか、仕事復帰の目安などを解説します。 Q.くも膜下出血に特徴的な前兆はありますか? A.くも膜下出血に特徴的な前兆としては、血圧の乱高下があります。 激しく上昇、下降する場合は可能性が高いです。 また脳梗塞などと同じように頭痛や吐き気などの前兆が現れることもあります。 Q.後遺症を残さずに仕事復帰はできますか? A.くも膜下出血で後遺症なく仕事復帰できるのは、3~4割程度といわれています。 完全に後遺症を残さないためにはリハビリが大切になります。 Q.くも膜下出血の後遺症で性格が変わりますか? A.くも膜下出血が原因で高次脳機能障害を患った場合、性格が変わるかもしれません。 高次脳機能障害は、脳に対するダメージが原因で、脳機能に影響が出る障害です。 とくに「意欲や情動のコントロールが困難になる」症状があり、これが現れると行動や言動に変化が生じます。 結果として「性格が変わった」と表される状態になるかもしれません。 まとめ:くも膜下出血を予防するには早期受診が重要! いかがでしたでしょうか? くも膜下出血は、突然起こると思われがちですが、血圧の変動や頭痛など特徴的な前兆があるため、少しでも不調があれば病院を受診するのが大切です。 くも膜下出血は、突然におこる激しい頭痛が特徴的です。後遺症が出ることもあります。 そのため、適切な治療や、リハビリのプランが重要です。 喫煙や、高血圧といった危険因子を管理し、健康的な生活習慣を心がけることが再発を予防するポイントです。 また、後遺症の程度によっては、仕事復帰に時間がかかる場合もありますが、治療後のリハビリは再発リスクを低減させて、回復を早めるためにも大切ですので医療機関の指導の下、前向きお取組みされることをお勧めします。 いずれにしましても、くも膜下出血で後遺症を残さないためには早期治療、そしてリハビリが大切です。 今回の記事を参考にして症状や、後遺症などに関して少しでも参考になれば幸いです。
2022.11.10 -
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この記事を読んでいる方の中には、「自分は脳梗塞のリスクが高いのではないか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。 実は、脳梗塞は誰にでも起こる可能性がある病気です。特に、高血圧や糖尿病がある方、喫煙習慣のある方、不整脈のある方は要注意です。 しかし、適切な予防策を取ることで、脳梗塞のリスクは下げられる可能性があります。本記事では、脳梗塞になりやすい人の特徴や、脳梗塞のリスクを下げる方法などを詳しく説明します。この記事を読むことで、適切な予防策が取れるようになり、健康に関するリスクを軽減できるでしょう。 脳梗塞になりやすい人の特徴6選 脳梗塞とは、脳の血管が詰まって血流が低下して、脳に障害が起こる病気です。 高齢者が寝たきりになる原因の多くを占め、初期段階での早期治療や発症予防が非常に重要といわれています。 脳梗塞になりやすい人の特徴は、以下のとおりです。 高血圧の人 糖尿病の人 不整脈(心房細動)がある人 脂質異常症の人 生活習慣の乱れやストレスがある人 妊婦や経口避妊薬の服用をしている人【女性】 本章の内容をもとに、自分が脳梗塞になりやすいのかを考えてみましょう。 高血圧の人 脳梗塞の原因疾患でもっとも多いものは、「高血圧」です。(文献1) 一般的には病院や健診施設などで測定した血圧が、最高血圧(収縮期血圧)140mmHg以上、あるいは最低血圧(拡張期血圧)90mmHg以上であれば、「高血圧症」と診断されます。(家庭内血圧 135/85mmHg以上) 脳梗塞を防ぐためにどの程度血圧を下げるかは、年齢や持病の状況によって異なります。 具体的な目標値は、以下のとおりです。 降圧目標 該当者 130/80mmHg未満 75歳未満 冠動脈疾患 CKD(たんぱく尿陽性) 糖尿病 抗血栓薬服用中 140/90mmHg未満 75歳以上 両側頸動脈狭窄や主幹動脈閉塞 CKD(たんぱく尿陰性) 糖尿病や重度の腎機能障害の人は脳梗塞になりやすいため、血圧の目標値がより厳しく定められています。 糖尿病の人 近年、糖尿病の増加に伴って「アテローム血栓性脳梗塞」の発症数が増えています。 血糖値が高い状態が続くと、血液中に多量に存在する糖分が血管の壁を傷つけ、動脈硬化が悪化します。 その結果、脳梗塞や心筋梗塞などの病気の発症リスクが高くなるのです。(文献2) 不整脈(心房細動)がある人 「心房細動」と呼ばれる不整脈がある場合、心房内に血栓ができるリスクが高まります。できた血栓が血流に乗って全身へ飛ぶ恐れがあり、飛んだ血栓が脳で詰まると「脳梗塞」になるためです。 この心臓由来の血栓による脳梗塞を、「心原性脳塞栓症」と呼びます。心原性脳塞栓症は、ほかの脳梗塞よりも大きな血管が詰まるため、命に関わるケースもあります。 脂質異常症の人 脂質異常症の人は、血液中のコレステロールが高い状態です。そのため、血管を詰まらせる「血栓」ができやすく、脳梗塞になるリスクも高いため注意が必要です。 脂質異常症から脳梗塞にいたる流れを、以下に紹介します。 血管中に脂質(コレステロール)が高い状態が続く 血管の壁に「プラーク」と呼ばれる塊ができ、詰まりやすくなる できたプラークが何かをきっかけに壊れる 破れた部分を修復するために「血小板」という血液を固める物質が集まり、血栓ができる 血栓が脳の血管に詰まり、脳梗塞が起こる 脂質異常症そのものには自覚症状が無いケースが多いため、治療の必要性を感じない人もいます。しかし、放置すると結果的に脳梗塞をはじめとする大きな病気につながるのです。 生活習慣の乱れやストレスがある人 以下のような生活習慣の乱れは、脳梗塞のリスクを上昇させます。(文献3) 喫煙 肥満 運動不足 食生活の乱れ お酒の飲みすぎ 塩分の取りすぎ ストレスの多い生活 複数の要因が重なると、より脳梗塞の発症リスクは高まります。 妊婦や経口避妊薬の服用をしている人【女性】 妊娠中の人や女性ホルモン剤を服用している一部の人は、血栓ができやすくなることがあります。 とくに、45歳未満で前兆のある片頭痛がある人は経口避妊薬の服用によって脳梗塞のリスクが上昇するという報告があります。(文献1) そのため、前兆のある片頭痛を持病に持つ女性は、経口避妊薬を飲むことはできません。 また、女性は、血管や骨の健康を保つ女性ホルモン「エストロゲン」が閉経により減少すると、脳梗塞になりやすくなるともいわれています。 当院「リペアセルクリニック」では、脳梗塞後の後遺症軽減や再発予防に、再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けています。どうぞ気軽にお問い合わせください。 また、脳梗塞の前兆については、以下の記事で詳しく説明しています。あわせてご覧いただければ幸いです。 \まずは当院にお問い合わせください/ 脳梗塞の発症を予防する3つの対策 脳梗塞の発症を予防する対策は、以下の3つです。 生活習慣病を治療して動脈硬化を防ぐ 生活習慣をととのえる 不整脈を治療する 本章の内容を参考に、脳梗塞のリスクを軽減させましょう。 1.生活習慣病を治療して動脈硬化を防ぐ 生活習慣病である「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」の治療は、脳梗塞の発症リスクを低下させます。取り入れやすい対策法を順番に説明します。 高血圧 高血圧を治療すれば血圧が下がり、血管への負担が軽減します。その結果、脳梗塞リスクの減少が期待できます。生活上の注意を守りながら、処方された薬を正しく服用しましょう。 高血圧の治療に使われる薬の例は、以下のとおりです。(文献1) カルシウム拮抗薬 利尿薬 アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB) また、血圧を下げるためには「規則正しい食生活」「適度な運動」などの生活習慣の改善が重要です。できることから少しずつ心がけましょう。 糖尿病 糖尿病のコントロールが悪いと脳梗塞の原因となる「動脈硬化」になりやすくなります。そのため、糖尿病の治療も、脳梗塞の予防に効果があります。。 糖尿病治療の基本は「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つです。具体的な指導内容は、糖尿病の状態や残された腎臓の機能などによって異なるため、医師の指示に従いましょう。(文献4) 脂質異常症 脳梗塞のリスクを下げるには、血中のLDLコレステロール値を適正に保つことも大切です。 LDLコレステロールは、脳梗塞のなかでも「アテローム血栓性脳梗塞」のリスクに関わるといわれています。 脂質異常症の治療は、生活習慣の改善に加えて以下の薬がよく使われます。 スタチン系 エゼチミブ スタチン系の薬で十分な効果が得られない場合、エゼチミブと併用するケースもあります。(文献1) 2.生活習慣をととのえる 生活習慣の乱れは高血圧、糖尿病、脂質異常症など多くの生活習慣病の発症・悪化に関わります。 取り入れたい生活習慣は、以下のとおりです。(文献5)(文献6) 肥満を解消する 適度な運動をする 十分な睡眠をとる 脂質や塩分を控える たばこをやめる(禁煙) お酒の飲みすぎは避ける 魚を積極的に取り入れる また、脱水も脳梗塞のリスクを上げるため、運動や入浴、サウナなど、汗を多くかいた後は水分をこまめにとることも心がけたいポイントです。 できることから少しずつ始めてみましょう。 脳梗塞の予防につながる生活習慣は、以下の記事でも詳しく説明しています。 3.不整脈を治療する 不整脈のうち「心房細動」があると、毎年約5%の方に脳梗塞が発症すると指摘されています。 日常生活で動悸・息切れなどの自覚症状が出現した際は、心臓専門の医療機関で詳しく調べてもらいましょう。 \まずは当院にお問い合わせください/ 脳梗塞の再発を予防する方法 最近、脳ドックを受診する方が増えて「無症候性脳梗塞(隠れ脳梗塞)」が見つかるケースが増えています。この隠れ脳梗塞が発見されたのち、数年以内に3割の人が再び脳梗塞の発作を起こすともいわれています。 「脳梗塞は再発する危険性がある」と考えておきましょう。 脳梗塞を発症した方は、血栓ができないように再発を予防する薬を飲む必要があります。起きた脳梗塞の種類と、代表的な再発予防薬は以下のとおりです。 起きた脳梗塞の種類 代表的な再発予防薬 「ラクナ梗塞」や「アテローム血栓症」 抗血小板薬(少量のアスピリン、シロスタゾールなど) 心臓が原因で起こる「脳塞栓」 抗凝固薬(ワーファリン、リバーロキサバンなど) 再発防止で大切なのは、症状が悪化していない・調子が良いなどの場合も、自己判断で薬をやめないことです。基本的には脳梗塞の再発予防薬は、継続する必要があります。 また、再発防止薬を飲んでいる人は、出血しやすい状態です。あざが治らない、鼻血が止まらない、便に血が混じるなどの場合はすぐに受診してください。 また、薬の効果に影響するため、ワーファリンを服用している人は納豆や青汁などを食べてはいけません。 薬の継続についてや副作用に関する不安がある場合は、当院「リペアセルクリニック」でも相談を受け付けております。「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で気軽にご連絡ください。 脳梗塞を含む脳卒中の再発予防については、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。 まとめ|脳梗塞になりやすい基礎疾患は早めに治療しよう 脳梗塞になりやすい人は、高血圧や糖尿病、脂質異常症など、動脈硬化になりやすい要素があります。脳梗塞の発症や再発を予防するために、高血圧や糖尿病を罹患している場合には疾病の治療を行い、日頃の生活習慣を見直してみましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、脳梗塞後の治療として再生医療(幹細胞)をおこなっています。再生医療は、脳梗塞によってダメージを受けた脳細胞の修復や麻痺の改善、リハビリ効果の向上などに効果が期待できます。 再生医療へのご質問・ご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けております。気になる点がありましたら、どうぞ気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 脳梗塞になりやすい人に関するよくあるQ&A 脳梗塞になりやすい性格は? ストレスをためやすい人は、脳梗塞のリスクを高める以下の病気が悪化しやすく、脳梗塞になりやすい可能性があります。(文献7)(文献8) 高血圧 糖尿病 また、「脳梗塞の発症には、労働時間や労働によるストレスが関与している可能性がある」という研究報告もあります。適度な運動や休息をとり、ストレスをやわらげるようにしてみてください。(文献3) ストレスは若年性脳梗塞の原因になりますか? 若年性脳梗塞とは、50歳以下の若い人に起こる脳梗塞です。通常の脳梗塞と同様に、動脈硬化がひとつのリスクといわれています。 そのため、動脈硬化を悪化させるストレスは、若年性脳梗塞のリスクを上昇させる可能性が考えられるでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、若年性脳梗塞後の治療にも再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。気になる症状がある方は「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」まで気軽にご連絡ください。 若年性脳梗塞については、以下の記事で詳しく説明しています。 脳梗塞になりやすい食べ物はありますか? 以下の食品を摂りすぎると、脳梗塞になりやすくなる可能性があります。 食品 理由 動物性脂肪・トランス脂肪酸が含まれる食品 コレステロールを増やしたり血行を悪くしたりするから 加工食品 添加物や保存料、トランス脂肪酸を多く含むから 塩蔵品 塩分が多く、動脈硬化や高血圧の原因となるから アルコール 摂りすぎると動脈硬化のリスクが上がるから おつまみとして塩分や脂肪が多い食品が過剰になりやすいから 高GI炭水化物 血糖値を急激に上げたり血管内に炎症をもたらしたりするから 毎日の積み重ねが身体をつくるため、摂りすぎには注意しましょう。 脳梗塞の予防・再発防止に関係する食事については以下の記事で詳しく紹介しています。 脳梗塞の後遺症はどんな症状ですか? 脳梗塞は、約半数の人に後遺症が出るといわれています。どのような後遺症が出るかは、ダメージを受けた部位によって異なります。 ダメージを受けた脳の部位 後遺症の例 前頭葉 人格や性格が変化する 頭頂葉 体が動かなくなる(麻痺) 後頭葉 視野の半分が欠ける 側頭葉 学習、記憶障害が起こる どの後遺症の場合も、継続的なリハビリが大切となります。 脳梗塞の治療や後遺症については、以下の記事もぜひ参考にしてください。 参考文献 (文献1) 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会「脳卒中治療ガイドライン 2021〔改訂2023〕」 https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf (文献2) 国立国際医療研究センター糖尿病情報センター「糖尿病の慢性合併症について知っておきましょう」 https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/060/020/02.html (文献3) 三重大学「ストレス関連疾患の発症に寄与する勤務状況の因子とその影響に関する研究」 https://www.mhlw.go.jp/content/000614929.pdf (文献4) 国立国際医療研究センター糖尿病情報センター「糖尿病の治療ってどんなものがあるの?」 https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/040/010/01.html (文献5) 文部科学省「健康啓発教材2021高校生用07」 https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/20210423-mxt_kouhou02-08111805_4.pdf (文献6) 国立がん研究センター「肥満度と病型別脳梗塞の発症リスクとの関連について」 https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8229.html (文献7) 服部朝美,宗像正徳「高血圧とストレス|Jpn J Psychosom Med(60)」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/60/5/60_398/_pdf (文献8) 湧田泰徳「2 型糖尿病の運動療法―ストレスとの関係性について―|専門リハビリ(19)」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/senmonreha/19/1/19_13/_pdf/-char/en
2022.11.07 -
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脳梗塞は多くの方が発症を恐れる疾病のひとつです。脳梗塞の前兆をいかに見逃さずに医療機関に早期受診するかが、重症化しないためのカギといえます。 そこで本記事では、脳梗塞の前兆を見逃さないためのチェックリストを提供します。ひとつでもチェックが当てはまるようであれば注意が必要なので、ぜひ最後までご覧ください。 脳梗塞の前兆を今すぐチェック【チェックリスト付き】 脳梗塞の前兆は突然現れます。 以下は、万が一に備えていただくために「脳梗塞の前兆を症状で判別いただくためのチェックリスト」です。ひとつであっても当てはまるものがあれば要注意です。 脳梗塞の前兆を確認したら早期受診を! 上記のような症状が急に現れると驚かれ多くの方は医療機関を受診されますが、中にはすぐに良くなってしまうこともあります。 その場合「気のせいか」「まあ良いか」と意図的に良い方に考えて医療機関を受診されない方が一定数いらっしゃいます。実際に2週間も症状が続いたにも関わらず、その後ようやく医療機関を受診した方もおられました。 症状が一時的であっても再度同様の症状を起こし、今度は生涯を棒にふる危険性もあります。上記のチェックリストに一つでも該当する場合は、早急に医療機関を受診しましょう。 また、当クリニックにご相談いただくことも可能です。「チェックリストの項目に当てはまって心配なんだけど…」とお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。 そもそも脳梗塞とは? 脳梗塞は脳血管障害の一種で、脳の血管が細くなると同時に固まった血液が脳の血管に詰まり、血液の流れが止まってしまう怖い病気です。 重度の脳梗塞だと呂律が回らなくなる言語障害や、言葉が出づらくなってしまう失語障害、体の片側に力が入らなくなる運動障害を前兆として引き起こします。 対して症状が軽い場合は、自然に治ったりと前兆に気が付けないケースあります。 【脳梗塞の前兆】一過性脳虚血発作とは 一過性脳虚血発作は、名前の通り一時的に脳梗塞のような症状が出現し、時間経過とともに(多くは30分程度)自然に改善する病態です。 地震にたとたとえると余震であり、本震の前兆・前触れとして認識するとわかりやすいかと存じます。 つまり、数日以内に「本格的な脳梗塞を起こす可能性」があるため、見逃すことのできない重要な疾病です。実際に、一過性脳虚血発作患者の約15%が90日以内に脳梗塞をきたすとされています。 脳梗塞が起きる原因 前述のとおり、脳梗塞は細くなった血管に血液が固まり、詰まりを引き起こす病気です。脳梗塞の要因はさまざまで、加齢や常習的な喫煙・飲酒等が主に挙げられます。 また、脳梗塞は大きく分けて次の3つに分類されます。 動脈硬化によるアテローム血栓性脳梗塞 アテローム血栓性脳梗塞は高血圧・高脂血症・糖尿病などの生活習慣病に伴い、血管壁にコレステロールが溜まる「動脈硬化」が主な原因です。 食事や運動に気を付けることや薬物治療を通して「動脈硬化の進行」を抑えることが予防につながります。 血栓による心原性脳塞栓症 心原性脳塞栓症は、不整脈の心疾患が原因で心臓内に血栓が生成され、血流に乗って脳血管に運ばれることで引き起こされます。 心疾患の早期発見・治療が最善の予防策です。 比較的細い血管が詰まるラクナ梗塞 ラクナ梗塞は「高血圧」が主因とされ、日々の血圧管理が予防につながります。 まとめ|脳梗塞の前兆を確認したら脳専門病院を受診しよう 本記事で紹介した前兆が現れたり、症状に心当たりがあった場合、脳神経内科・脳血管内科・脳外科など脳を専門としている病院を受診しましょう。診療科名は病院によって異なるため、ホームページの確認や、電話で問い合わせをすると良いでしょう。 脳梗塞の前兆発生時は一刻を争うため、ためらわず救急車を呼ぶ必要があります。
2022.10.31 -
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脳梗塞は治る病気なのかな。 脳梗塞になったら、どのくらい入院するのか知りたい。 この記事を読んでいるあなたは、脳梗塞は治る見込みがあるのか、疑問に思っているのではないでしょうか。 「退院できても、重い後遺症で生活に影響が出てしまうのではないか」と不安になることもあるかもしれません。 結論、脳梗塞は、発症してから早期に治療をおこなえば、治る見込みがある病気です。しかし治療が遅れると重篤な後遺症につながり、仕事への復帰や日常生活に影響が及ぶ可能性もあります。 本記事では、脳梗塞の具体的な治療法や後遺症について、詳しく解説します。記事を最後まで読めば、脳梗塞を治すために必要な治療がわかり、適切に準備を進められるでしょう。 脳梗塞は早期治療によって治る見込みがあります 脳梗塞は早期治療ができれば治る見込みがあります。 ただし発症してから早い段階で適切な検査・治療をおこなわないと、後遺症のリスクが高くなるのも事実です。 本章では脳梗塞における早期治療の必要性や後遺症について解説します。 治療が遅れると後遺症が出る危険性がある 脳梗塞で重い後遺症を出さないためには、発症してから早い段階での治療が必要です。 脳梗塞とは、脳の血管が詰まることで脳細胞が壊死し、脳機能が低下してしまう病気です。 脳梗塞によって損傷した脳組織を元に戻すことは、一般的な治療では不可能といわれています。そのため、継続的なリハビリによって損傷した部分を補う必要があります。 治療が遅れると後遺症が出るリスクが高まるため、専門機関で早期に治療・リハビリを受けましょう。 脳梗塞の種類と原因 脳梗塞の種類は以下の3つです。 アテローム血栓性脳梗塞 : 首や脳などのより太い血管が詰まることで起こる ラクナ梗塞 : 比較的小さな血管が詰まり、緩やかに症状が現れる 心原性脳梗塞 : 心臓の血栓の一部が血流により脳に運ばれ、血栓を作る いずれも高血圧や脂質異常症、高血糖などの生活習慣病による動脈硬化が原因で発症するケースが多くあります。 発症後は、脳内の正常な血流を回復する急性期治療を実施し、リハビリによって後遺症など二次的影響への治療をおこなうのが一般的です。 脳梗塞の原因や種類については、以下の記事も参考にしていただければ幸いです。 脳梗塞の早期治療に必要な検査とは 脳梗塞に対して早期に治療介入する上で重要になるのが検査です。 脳梗塞の主な検査は以下のとおりです。 身体検査:心臓の音や血圧を測ったり、神経学的診察を行います。 血液検査:血液が凝固する速さ、血糖値、感染症の有無を調べます。 CT検査:脳内出血、虚血性脳梗塞、腫瘍などを調べます。 MRI検査:虚血性脳梗塞や脳出血によって損傷した脳組織を検出します。 頸動脈超音波検査:頸動脈の脂肪沈着物 (プラーク) の蓄積と血流が示されます。 脳血管造影検査:脳と首の動脈を詳細に調べます。 心エコー検査:心臓から脳に移動して脳梗塞を引き起こした可能性のある心臓内の血栓の原因を見つけます。 脳梗塞を診断するためだけでなく、他の考えられる原因を除外する必要があるため非常に大切です。 これらの検査をおこなうことで正しく脳梗塞を診断でき、適切な治療へと導くための大切な治療プロセスになります。 脳梗塞の後遺症と生活への影響 脳梗塞の発症後は、身体の麻痺や言語障害などの後遺症が出るケースもあります。 本章で脳梗塞によって生活にどのような影響が出るのかを理解し、受けるべき治療や退院後の生活について検討しておきましょう。 後遺症の種類 脳梗塞の後遺症に多い症状は以下のとおりです。 後遺症の種類 症状 運動麻痺 歩行が困難になる 日常生活動作が難しい 飲み込みがしにくい(嚥下障害) など 感覚麻痺 温度や触感がわかりにくい 痺れを感じる など 高次脳機能障害 物忘れがひどい(記憶障害) 注意力散漫になり混乱しやすい(注意障害) 言葉が話しにくい、言葉を理解できない(失語症) など 脳梗塞が生じた部位や重症度によって、後遺症の種類・程度も変わる場合があります。 生活への影響 脳梗塞の後遺症により、日常生活にさまざまな影響が出ることがあります。 たとえば、運動麻痺の後遺症がある場合、歩行などの日常動作が難しくなり、食事や入浴、排泄などに介助が必要になるでしょう。 また、高次脳機能障害により、失語症や認知機能の低下がみられる場合は、周囲とのコミュニケーションが難しくなることもあります。 後遺症の種類や程度に応じて、日常動作訓練や言語訓練などのリハビリをおこない、社会・職場への復帰を目指します。 脳梗塞における3つの治療(急性期) 脳梗塞は脳梗塞の急性期における治療法は、主に以下の3つです。 血栓溶解療法(t-PA治療) 血管内治療(血栓回収療法) 抗血栓療法(内服治療) 本章を参考に、脳梗塞の治療に関する理解を深めておきましょう。 血栓溶解療法(t-PA治療) 虚血性の脳梗塞の場合は、血栓を溶かして脳への血流を回復させるアルテプラーゼと呼ばれる薬を注射することで治療できます。 このアルテプラーゼは、脳卒中の発生後できるだけ早く、確実に4.5時間以内に開始すると最も効果的です。4.5 時間以上経過した場合は、薬が出血性脳梗塞による出血を悪化させる可能性があるため、利用できません。 血管内治療(血栓回収療法) 重度の虚血性脳梗塞の場合は、血栓回収療法と呼ばれる血管内のカテーテル治療によって治療できます。 局所麻酔下または全身麻酔下でカテーテルを動脈に挿入し、小さなデバイスを、カテーテルを通して脳の動脈に挿入します。このデバイスを使用して血栓を除去することで、脳への血流が回復します。 血栓溶解療法同様に、脳梗塞後できるだけ早く開始すると最も効果的です。 抗血栓療法(内服治療) 血管の閉塞を治す急性期治療に加え、再発予防として、内服による治療も同時に行います。 1.抗血小板薬(アスピリン/クロピドグレル) アスピリンは抗血小板薬であり、新しく血栓が形成される可能性を減らすことができます。また、クロピドグレルなど、他の抗血小板薬も同時に併用する場合があります。 2.抗凝固剤(ワーファリンなど) 将来、新たな血栓ができるリスクを軽減するために、抗凝固薬を投与されることがあります。ワルファリン、ダビガトランなど、長期間使用できる抗凝固薬があります。 脳梗塞のリハビリについて 急性期治療の後は、できる限り多くの機能を回復するようリハビリに努めることが大切です。それが自立した生活を取り戻すことに繋がるからです。 リハビリには主に急性期、回復期、生活期の 3 つの段階があり、年齢、全体的な健康状態、および脳梗塞による障害の程度に基づいて、リハビリ内容を医師が決定します。 退院後は、同じ病院はもちろんですが、利便性を考慮して自宅の近くなど、別のリハビリ施設で、リハビリを続けることもできます。 リハビリは患者の状態に応じて以下のようなチームで行われます。 医師(脳外科、脳神経内科、精神科など) 看護師 栄養士 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 ソーシャルワーカー 発症後48時間以内の早期にリハビリを開始することで、脳梗塞による後遺症を軽減することがわかっています。 脳梗塞の治療期間・費用 脳梗塞の発症後は、一般的に2〜3カ月間の入院が必要です。入院・治療の期間によってかかる費用も変動します。 本章を参考に、脳梗塞の治療にかかる期間や費用を具体的に把握し、事前に準備を進めておきましょう。 入院・治療期間 厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査」によると、脳梗塞を含む脳血管疾患の平均入院期間は77.4日です。障害のある脳の部位や範囲など、脳梗塞の重症度によって、入院期間は変動します。 軽度の場合は2週間程度で退院できることもありますが、一般的には2〜3カ月の入院が必要になるでしょう。 悪性新生物(がん)による平均入院日数は19.6日であることから、脳梗塞の入院期間は一般的な病気に比べ長いといえます。 また、脳梗塞による入院期間は、年齢によっても差があります。年齢別の平均入院期間は以下のとおりです。 年齢 平均入院期間(平均在院日数) 0~14歳 31.3日 15~34歳 61.7日 35~64歳 51.8日 65歳以上 83.6日 70歳以上 86.9日 75歳以上 93.2日 ※厚生労働省|令和2年(2020)患者調査(確定数)の概況(P13)をもとに作成 高齢で脳梗塞を発症した場合、リハビリが長期化しやすい傾向があります。 脳梗塞になった本人やご家族が高齢の場合、入院が長期化する可能性があることを理解しておきましょう。 費用 厚生労働省の「令和2年度 医療給付実態調査報告」によると、脳梗塞を含む脳血管疾患の平均入院費用は約90万円となっています(健康保険3割負担の場合)。 脳梗塞の入院・治療費は、高額療養費制度を活用することである程度負担を抑えられる可能性があります。 高額療養費制度とは、医療機関などでかかった医療費が1カ月で上限額を超えた場合、超えた分の金額があとから払い戻される制度のことです。 参照:厚生労働省|高額療養費制度を利用される皆さまへ ただし、脳梗塞の医療費は入院期間や重症度などによって変動するため、具体的な金額は医療機関へ確認しておきましょう。 まとめ|脳梗塞を治すなら早めに適切な治療を受けましょう 本記事では、脳梗塞の治る見込みや後遺症、治療期間・費用などを詳しく解説しました。 脳梗塞は早期の治療開始が大切で、適切なリハビリをおこなうことで克服できる病気です。ただし、治療が遅れれば後遺症が重くなる可能性が高まり、日常生活にも大きな影響を及ぼしかねません。 早期の治療開始と適切なリハビリにより、発症前と同じような生活や仕事復帰も可能になるでしょう。 しかし、発症後の時間経過や後遺症の程度によっては、従来の治療法だけでは改善が難しい場合もあります。 そこで、ぜひ知っていただきたいのが「再生医療(幹細胞治療)」という選択肢です。 当院「リペアセルクリニック」では、国内でも数少ない、自己の幹細胞を用いた再生医療(幹細胞治療)を提供しています。 なかでも、厚生労働省に届出済の当院の幹細胞治療は、2億個もの「フレッシュ」な幹細胞を、患者様ご自身の血液を用いて培養する点が特長。 再生医療で一度壊れた脳細胞を復活させることで、リハビリ効果を高めたり脳梗塞の再発を予防したりする効果が期待できます。 脳梗塞の後遺症でお悩みの方、再生医療にご興味のある方は、ぜひリペアセルクリニックの無料相談をご利用ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 脳梗塞の治療や入院に関するよくある質問 Q.脳梗塞の治療後、仕事復帰はどのくらいでできる? A.仕事復帰までの期間は、患者それぞれによって異なりますが、基本的には3ヶ月後に退院できるケースが多いようですが、退院してすぐに復帰できるわけではありません。 多くの場合、発症から半年または1年後を目途に復帰できるケースが多いようです。 Q.脳梗塞を早く治すにはどうしたらいいですか? A.脳梗塞を早く治すには、何といっても早期治療が大切です。ただし、早期治療後にすぐに治るというわけではなく、リハビリなど日常生活に戻るには個人差があるのが実情です。 発症後 3ヶ月過ぎると、治りづらくなるため、できるだけ早くリハビリに取り組むことが、早く治すことにつながります。 ▼脳梗塞の後遺症|脳卒中の幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳梗塞の新たな治療法として注目を浴びています
2022.10.28 -
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「脳梗塞は20代や30代でも発症するの?」「若いうちから脳梗塞の予防を考えるべき?」と疑問に思っている人もいるのではないでしょうか。 結論からいえば、脳梗塞は20代や30代など若い人であっても起こりうる病気で、若年性脳梗塞と呼ばれることもあります。 20代・30代の若いうちから生活習慣を整え、脳梗塞の予防に努めることが大切です。 本記事では、20代の脳梗塞のリスクや予防方法について詳しく解説します。 本記事を参考に、20代から脳梗塞の予防に努めましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では、脳梗塞の後遺症改善や再発予防として再生医療を行っています。 気になる方は、当院の「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 20代・30代で脳梗塞になる確率は1% 脳梗塞は高齢者に多い病気ではあるものの、20代や30代でも1%の確率で発症する可能性があります。 現に、30代の脳血管患者(脳梗塞含む)は約1,000人もいるとの報告もあります。(文献1) 若年層の脳梗塞の発症は珍しいことではありません。 早期に発見できず治療が遅れると、その後の後遺症や生活へ大きな悪影響を及ぼすことも考えられます。 そのため、日常から健康に気を配ることが大切です。 「まだ20代だから大丈夫」と侮らずに、今からできる脳梗塞の予防策を実践してみてください。 脳梗塞とは「脳血管の詰まり」による脳障害 脳梗塞とは、脳にある血管が詰まることで脳への血流が途絶え、脳機能に障害が起こる病気です。 2025年1月現在、日本人の多くの死因である疾患として注目されています。 脳梗塞のタイプは大きく分けて以下の3つです。 種類 特徴 ラクナ梗塞 脳血管の中でも細い血管が詰まる脳梗塞。 無症状の場合があるものの、重要なカ所の血管が詰まると重篤になることがある。 アテローム性脳梗塞 コレステロールの塊が脳血管の中に蓄積することで生じる脳梗塞。 心原性脳梗塞 足や心臓など、脳以外のカ所が原因で引き起こされる脳梗塞。 これらの脳梗塞はいずれも血管が詰まることで発症するものの、原因が異なります。 原因や脳梗塞の範囲によって、対策方法や治療方法が異なるため、医師の指示のもとで適切な治療を受けることが大切です。 【すぐに受診しよう】脳梗塞における3つの前兆 脳梗塞の初期症状は、主に以下の3つです。 顔が動かない 片腕が動かない 会話ができない 脳梗塞の後遺症は、いかに早期に発見し、迅速な治療ができるかでその後の後遺症が変わります。 本章を参考に、初期症状を事前に理解して早期に脳梗塞を疑いましょう。 1. 顔が動かない 脳梗塞の前兆として、以下のように顔面の一方に麻痺があらわれる場合があります。 顔の半分が下がる 笑顔が上手につくれない 片目が開きにくいまたは閉じにくい 顔面神経に近い血管が詰まることで、神経の働きが阻止されて顔面麻痺があらわれる可能性があります。 鏡をみると顔の動きに違和感があり、周囲の人に指摘されたりした場合は迷わず脳神経外科へ受診しましょう。 2. 片腕が動かない 片腕が動かなくなる症状も、脳梗塞の前兆の一つとして知られています。 具体的な症状は以下のとおりです。 両手を同時にあげても、片方だけ下がる 物を持つ動作がぎこちない 片腕の感覚がないまたは薄い 片腕に違和感がある場合、両腕を上げてみて片腕が垂れてこないかどうかを確認してみましょう。 3. 会話できない 以下のような言語障害も、脳梗塞の前兆です。 いつも通り言葉が出てこない ろれつが回らない 他の人の言葉が理解できない 言語障害は自分自身で気づくこともあるものの、身近な人が会話していて異常に気がつく場合もあります。 自覚症状はもちろんのこと、他の人に言語障害の症状が見られる場合は迅速に受診を促すようにしましょう 今回解説したような前兆に早めに気がつき、すぐに処置を行うことで後遺症の悪化を防げる可能性があります。 脳梗塞の前兆についてより詳しく知りたい方は、以下のコラムを参考にしていただければ幸いです。 20代で脳梗塞になる7つの原因 20代で脳梗塞が起こる原因は、主に7つあります。 脂肪分や塩分の高い食品の摂取 ストレス 運動不足やデスクワーク タバコ 遺伝 妊娠 女性ホルモン剤の副作用 原因に対して今からでも予防が可能です。 本章の内容が該当する方は、脳梗塞を予防するために対策をしましょう。 1.脂肪分や塩分の高い食品の摂取 20代で脳梗塞のリスクを高める大きな一因が「脂肪分・塩分の多い食品の過剰摂取」です。 2025年1月現在では、食生活の欧米化が進み、ファストフードやスナック菓子など不健康な食生活が常態化している方も多いかもしれません。 脂肪分や塩分が高い食品の一例として、以下があります。 脂肪分が多い食品 フライドポテト ケーキ から揚げ など 塩分が高い食品 インスタントラーメン ポテトチップス 梅干し など 豊富な栄養素を含んだ食事にすると、脳梗塞のリスク低減が期待できます。 今回紹介したような食品を日常的に食べている方は、頻度や量を控えましょう。 2.ストレス ストレスも脳梗塞のリスクを増加させる一因です。 過度なストレスは交感神経を刺激し、ストレスホルモンの分泌を促します。 その結果血圧が上昇し、脳梗塞のリスクを高めてしまいます。 とくに20代や30代は仕事や学業、人間関係などでストレスを感じやすい年代です。 日頃からストレスを感じている方は、以下のようなストレス発散方法を生活に取り入れてみてください。 新しい趣味をはじめる 好きな音楽を聞く 自然に触れる ストレスを管理することが、結果的に脳梗塞の予防につながります。 3.運動不足やデスクワーク 運動不足や長時間座り続ける生活は、血流を悪化させ血管内で血の塊が作りやすくなる一因です。 デスクワークなどで座りっぱなしの状態を続けると、脳梗塞リスクを高めてしまいます。 適度な運動の習慣を取り入れるのはもちろんのこと、座りっぱなしを防ぐために「こまめに立つ」方法も脳梗塞防止に効果的です。 日常的に座りっぱなしの状態が続いている方は、1時間に1回程度は立つようにしましょう。 4.喫煙 喫煙は血管に悪影響を与える代表的な習慣です。 タバコに含まれる有害物質には血管を収縮させ、血圧を上げる作用があります。 その結果、血管が硬くなる「動脈硬化」を悪化させ脳梗塞のリスクも大幅に高まることも否定できません。 若い世代であっても、喫煙習慣を続けると脳梗塞になるリスクを高めます。 必要に応じて禁煙外来の受診も検討し、早めに禁煙できるよう心がけましょう。 5.遺伝 遺伝は20代での脳梗塞発生リスクを高める原因の一つです。 とくに「親や兄弟など近親者で脳梗塞にかかった人がいる」場合、遺伝的な体質によりリスクが上昇するとの報告もあります。 遺伝による原因を取り除くのは困難であるため、生活習慣の改善や定期的な検査で早期発見を心がけることが大切です。 また、脳血管障害の一つ「もやもや病」も、遺伝が一因であるとされています。 もやもや病について詳しく知りたい方は、以下のコラムを参考にしていただければ幸いです。 6.妊娠 妊娠により脳梗塞のリスクが上がる場合があります。 とくに妊娠高血圧症候群は脳血管への負担を増すため、脳梗塞のリスクが上がると言われているのです。 また、妊娠中は出産に備えて血液が固まりやすくなるよう体質が変わります。 そのため、妊娠高血圧症にかかっていなくても注意が必要です。 妊娠中は血圧管理や定期的な検診で、脳梗塞の予防になるため、出産を控えている方は心がけてみてください。 妊娠高血圧症について詳しく知りたい方は、以下のコラムを参考にしていただければ幸いです。 7.女性ホルモン剤の副作用 女性ホルモン剤の使用も脳梗塞のリスクを増加させる要因です。 女性ホルモン剤の服用で稀に血栓症が副作用としてあらわれる可能性があるため、脳梗塞につながる可能性があります。 血栓症が報告されている女性ホルモン剤は、以下のような目的で使用されるケースが多いです。 PMS(月経前症候群) 月経困難症 避妊 不安な方は、薬の使用前に医師から副作用について相談してみましょう。 20代の脳梗塞を予防する4つの方法 20代からできる脳梗塞の予防として、以下の4つがあります。 バランスの取れた食事をする 定期的に運動する 禁煙する 定期的に検査を受ける 若年層から脳梗塞を予防するためには、生活習慣を見直し、脳血管に負担をかけないことが重要です。 本章を参考に、脳梗塞のリスクを減らしましょう。 1.バランスの取れた食事をする 若年性脳梗塞を予防するためには、食生活の改善にて動脈硬化を防ぐことが大切です。 食生活が乱れていると感じる方は、以下のような工夫で食事を見直してみましょう。 野菜や果物、魚を積極的に取り入れる スープやみそ汁の塩分を減らし、具材を多く入れる インスタント食品のような加工食品を食べる頻度を減らす 20代や30代は仕事や育児で忙しく、食生活が乱れがちです。 塩分や脂質の摂りすぎに注意した食生活で、脳梗塞の予防に努めてみてください。 2.定期的に運動する 運動不足は血流を悪化させ、血の塊を作りやすくして脳梗塞のリスクが上がります。 ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を定期的に行うと、脳梗塞の予防につながるでしょう。 毎日無理なく続けられる運動を取り入れることが大切です。 また、デスクワークが中心の生活を送っている場合は、1時間に1回程度こまめに立ち上がり、ストレッチを行うことで血流の改善が期待できます。 デスクワークの方は、座りっぱなしの状態を防ぐように意識してみてください。 3.禁煙 喫煙は血管を収縮させ、動脈硬化を進行させる原因になります。 そのため、喫煙している人は早めの段階で禁煙することが重要です。 自力での禁煙が難しい場合、専門機関で治療が行える「禁煙外来」の活用も選択肢のひとつです。 以下の条件すべてに当てはまる場合、禁煙外来を利用できます。(文献2) ニコチン依存症と診断されている すぐの禁煙を希望している 禁煙治療について説明を受けて文書により同意している 無理をせずに、専門医の力を借りて禁煙を心がけましょう。 4.定期的に検査を受ける 高血圧や糖尿病、高コレステロール血症は自覚症状がほとんどないことが多いため、脳梗塞の発見が遅れる可能性があります。 定期的な健康診断で脳梗塞を早期に発見・治療すると、脳梗塞の悪化の防止が期待できます。 「無症状だから大丈夫」と侮らず、早期に脳梗塞の原因となる芽を見つけて対策をしましょう。 まとめ|20代でも脳梗塞リスクはある!生活習慣の改善で予防しましょう 本記事では、若年層、20代でも起こりうる脳梗塞について解説しました。 20代は高齢者に比べて脳梗塞にかかる可能性は低いものの、ストレスや食生活の乱れにより突然発症する可能性も否定できません。 そして、後遺症を残してしまうことも考えられます。 普段の生活習慣を改めた上で、医療機関での検診を活用し、若い頃から脳梗塞にならないように気をつけていきましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、脳梗塞の後遺症改善や再発予防として再生医療を行っています。 気になる方は、当院の「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 20代の脳梗塞についてよくある質問 20代で脳梗塞になったあとの再発率はどのくらいですか? 20代で脳梗塞を発症した場合の再発率は極めて少ないといわれています。 ただし、全体の脳梗塞患者における10年間の再発率は約50%であるため、若い世代でも注意が必要です。(文献3) とくに高血圧や高コレステロール血症などの持病がある場合は、定期的な検査と治療を怠らないようにしましょう。 当院「リペアセルクリニック」で行っている脳梗塞の後遺症改善や再発予防について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。 20代でも脳の検査をした方が良いですか? 家族に脳梗塞の往来歴がある方や、喫煙習慣がある方は定期的な検査をおすすめします。 また、高血圧や糖尿病など生活習慣病がある場合も同様に、定期的な検査で脳梗塞の早期発見が期待できます。 若年層でも、脳梗塞のリスクは否定できません。 定期的な検査を怠らないようにしましょう。 20代で脳梗塞で死に至る可能性はどのくらいですか? 20代の脳梗塞による死亡率は約5%未満と報告されています。(文献4) 若年層での脳梗塞による死亡率は極めて低いものの、発症後の治療までの時間が予後を大きく左右します。 脳梗塞の初期症状があらわれた際には、迷わず医療機関を受診しましょう。 参考文献一覧 (文献1) 厚生労働省.脳血管疾患患者数の状況.図表1-2-4 (文献2) 谷口 千枝 中村 正和.禁煙治療ってどんなもの?. e-ヘルスネット(厚生労働省). 2024.3.6. (文献3) 鳥谷 めぐみ, 長谷川 真澄, 粟生田 友子高齢軽症脳梗塞患者の再発に関するリスク認知.日本看護科学会誌. 2020 年 40 巻 p. 14-22 (文献4) 厚生労働省."死因順位(第5位まで)別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率(人口10万対)".平成21年(2009)人口動態統計(確定数)の概況.
2022.10.26 -
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くも膜下出血|その症状と原因、怖い再発について解説します 「くも膜下出血」は、脳と、くも膜の間に出血した血が溜ることをいいます。尚、くも膜とは、脳の周りを保護している3層の膜(硬膜、くも膜、軟膜)の一つです。 「脳」に関する病気は、死亡を伴う、命を落とす危険性が高いため、とても怖いものです。その意味で「くも膜下出血」も脳に関わる怖い病気の一つです。 ちなみに、この疾患は中年期40代以降から、発症リスクが高まるほか、男性よりも女性に多く発症しています。特に、喫煙や飲酒といった習慣がある場合や、高血圧の場合は、発症するリスク、その確率が高くなるとされています。 くも膜下出血が起こると激しい頭痛がおこるほか、死亡に至らずとも重い後遺症が残る可能性が高いことが知られていますが、実際には具体的なことは「よく知らない!」という人も少なくないのではないでしょうか。 そこで今回は、くも膜下出血の症状や原因、治療方法などの概要に合わせて、再発予防の観点からも、その注意点を紹介してまいりましょう。 くも膜下出血の症状 くも膜下出血を発症した際の症状で、代表的なものとして挙げられるのが「頭痛」です。くも膜下出血に場合、痛みは徐々に訪れるのではなく、数秒でピークに達するのが特徴です。 症状としては、これまでに経験したことがないような激しい頭痛で、大げさではなく「ハンマーで思いっきり叩かれたような痛み」が突然起こるという具合に例えられています。脳内での出血量が少ないと痛みも少ないのですが、出血量が多くなると痛みも強なりく、意識障害を引き起こすケースも少なくありません。 また、くも膜下出血によって脳が圧迫されると脳細胞が破壊されてしうことで「麻痺やしびれ、言語障害などの後遺症」が残るケースは珍しくありません。 そこで、これまで体験したことのない激しい痛みが突然、頭に覚えた場合は、大至急、救急車の手配など緊急で医療機関の受診が必要であることを忘れてはなりません。意識がある状態で病院に到着することが生死を分けると言います。 ぜひ前兆や初期症状を見逃すことなく対応下さい。 くも膜下出血の特徴 急激な頭痛 経験したことのない激しい痛み 意識障害が起こる可能性も 後遺症つぉいて「麻痺やしびれ、言語障害」が起こる可能性がある くも膜下出血の原因 くも膜下出血は、「激しい頭痛に見舞われる」「後遺症が残る」など、危険で怖い病気の一つです。くも膜下出血の原因は、脳動脈にできる瘤(こぶ:脳動脈瘤/のうどうみゃくりゅう)にあります。 血管には、膜が薄く弱い部位あります。その弱い部位が強い血流を受けると膨らんで瘤ができてしまいます。その瘤に、高い血圧がかかるなどした場合に破裂してしまうのが「くも膜下出血」です。 脳動脈瘤は血流が強くなる部分、血管が分岐している箇所などにできやすいのが特徴です。 くも膜下出血の治療 くも膜下出血の治療法は、原因となる脳動脈瘤が再び破裂しないように、頭痛や後遺症が発症するのを防ぐことが目的になります。ただし、脳動脈瘤を小さくしたり、脳動脈瘤を消したり、無くしたりする方法は無いことから、脳動脈瘤へ血液が流れないようにする手術的治療が行われます。 脳動脈瘤へ血液が行かないようにする手術方法として代表的なものの一つは、開頭して行う手術で動脈本管と動脈瘤がつながっている部分(ネック)を専用のクリップで挟む「ネック・クリッピング」という治療法です。 また、二つ目に、脳動脈瘤のなかに血液が入らないようにするために、開頭をせずに血管を使ってカテーテルを動脈瘤まで進め、破裂した部位にプラチナ製のコイルを詰める方法があり「コイル塞栓術」という治療方法になります。 いずれの治療法であっても必要なのは術後の経過観察です。定期的な診察を受けることが大切です。 くも膜下出血の治療(手術) ネック・クリッピング(開頭) コイル塞栓術(血管から) くも膜下出血が危険で怖い理由は「再発」です くも膜下出血が起こった際に適切な治療が行われても安心してはいけません。くも膜下出血は、非常に恐ろしく危険な病気だと呼ばれるのは、「命にかかわる病気であること」、そして何よりも「再発率の高さ」が挙げられます。 その「再発には前兆」があります。そこで再発を防ぐために気を付けて欲しいことを記しました。 くも膜下出血を発症した場合、治療を受けることは当然ですが、それに満足しないでください。その後、再発しないように気をつけることが重要なテーマになります。くも膜下出血の再発を防ぐためには、その前兆を知っておき、常日ごろから注意するという意識が大切です。 今回は、「くも膜下出血の再発の前兆」と題して既に発症し、治療をうけたものの再発に注意すべき人に向けて、覚えておいて欲しい点を解説しました。また、併せて発症後の後遺症に対してもご説明してまいります。 1.くも膜下出血の再発の前兆、初期症状「動眼神経麻痺」とは くも膜下出血の再発の前兆、初期症状として代表的な症状が目に現れます。それが動眼神経麻痺」です。動眼神経麻痺とは、片方の瞼が開かなくなって、両目で物を見ようとすると物が2つに見えるようになる状態をいいます。 動眼神経麻痺は、大きくなった動脈瘤が動眼神経を圧迫するために起こります。そのため、「動眼神経麻痺になってしまうと動脈瘤が大きくなっている可能性があるります。 この動脈瘤が破裂してしまうと、くも膜下出血が再発してしまう可能性があるいため、この症状を忘れないでくださいす。また、大きくなった動脈瘤は動眼神経だけではなく、「視神経を圧迫」することもあります。 そうなると視力が低下したり視野が欠けたりするケースもあるのでそのような症状に気が付いたときは、何よりも早く病院で脳外科、脳神経外科などの医療機関を受診し、治療を受けてください。 動眼神経麻痺の特徴 両目でモノを見るとモノが二つに見える 視力の低下 視野が欠ける 2.くも膜下出血の再発の前兆、初期症状「頭痛」に注意 動眼神経麻痺のほかにも、くも膜下出血の再発の前兆、初期症状として「頭痛」があります。視野の乱れと共に起こることがあり、くも膜下出血が再発する兆候として頭痛も疑って欲しいと思います。 その症状を感じた場合は、すでに少量の出血が生じている可能性が高いため、早急に治療すべきとの意識を持ってください。この際に「軽い頭痛」についてご注意ください。 初期症状として頭痛の程度はそれぞれで、例えば「軽い頭痛」の場合、「くも膜下出血」の再発の前兆とは考えずに見過ごしてしまいかねないことがあります。軽い頭痛であっても異常を感じたら念のため病院へ向かいましょう。 受診する際には、過去の既往症として「くも膜下出血を発症した」という情報を与えなければなりません。そうで無い場合、単なる風邪などと診断されてしまうケースが少なくないからです。 ついては、過去に「くも膜下出血」を発症したことがあるなら、重い軽いに、関わらず頭痛がある場合には明確に「過去、くも膜下出血を患った」という情報を伝えるようにすることが大切です。 その他にも症状を感じたなら、「いつもと違う」「初めての痛み」などと、症状の内容を詳しく医師に伝えるよう努めてください。 くも膜下出血の再発の前兆 動眼神経麻痺 めまい 視力低下 頭痛(症状は様々、軽い場合も要注意) くも膜下出血の再発を防ぐのは定期的な検査 ここまで「くも膜下出血の再発防止」のために、知っておきたい前兆について記してまいりましたが、再発防止には定期的に検査を受けることが非常に重要です。 くも膜下出血の原因となる動脈瘤を検査で発見することができれば、動脈瘤が破裂してしまう前に処置することができるからです。くも膜下出血を発症して10年くらい経過してから治療した動脈瘤が再び大きくなったり、新しい動脈瘤ができて破裂したりする可能性もあります。 一度検査して問題なかったからと安心や、油断をせずに定期的に検査を受けるようにしましょう。 再発を防ぐために 定期的な検査を受け続けることが何より大切 まとめ・くも膜下出血とは|その原因と治療、怖い再発について くも膜下出血の特徴について簡単に分かりやすいようにご紹介しました。発症時にハンマーやバットで突然殴られたような激しい頭痛に見舞われること。再発率が非常に高いため、くも膜下出血を経験したなら再発防止にも力を入れる必要があること等をご説明しました。 また、くも膜下出血は、危険です。死亡を免れても後遺症が残る可能性が高いとても怖い病気です。ここで記したような症状を感じたらすぐに病院の脳外科や、脳神経外科等の専門医療機関を受診してください。 手術による方法としては「ネック・クリッピング」や、「コイル塞栓術」というものがあります。 また、治療後であっても再発率は高いため、くも膜下出血の前兆を知っておくことは大切です。早期に対処すれば再発を防ぐ可能性が高まります。何度も申しますが何か頭に違和感を感じたら迷わず医療機関を頼りましょう。 ただ、くも膜下出血が早期に発見され、適切な処置を受けた場合でも麻痺や痺れといった障害が残る可能性が高いのが現実です。 障害については治療後、リハビリに励むことで改善を目指せますが慢性期に移行すると機能の回復は困難となり、最終的に身体を動かせなくなってしまいかねません。 そんな、くも膜下出血の後遺症でお困りの方へ再生医療の可能性を伝えることができればと考えています。興味があれば以下のリンクをクリックして下さい。 以上、くも膜下出血とは、その原因と治療、怖い再発について、記させていただきました。ご参考にしていただければ幸いです。 ▼ 再生医療で脳卒中の治療する 脳卒中(脳梗塞、脳内出血)は、再生医療による幹細胞治療で復活を目指せます ▼こちらも参照されませんか くも膜下出血"女性は男性の2倍ものリスク!今日からしたい本気の予防策!
2022.03.14 -
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脳卒中の3つの症状と治療法!脳梗塞の再発を予防するコントロール方法について 厚生労働省によると、脳卒中は、2018年の1年間における死因別死亡総数のうち、脳血管疾患は10万8,186人で全体の7.9%を占め、死因の上位から4番目という結果となっています。 その翌年、2019年においても、10万6,552人で全体の7.7%となり、こちらも2018年同様に死因の上位から4番目という結果になっています。 脳血管疾患で亡くなった方のうち、60%にあたるおよそ7万人の方が脳梗塞で亡くなっており、一命を取り留めたとしても、後遺症である麻痺が残り、寝たきりになってしまう場合も少なくない怖い病気です。 しかし以前、1950年頃より約30年間、脳卒中は日本人の死因の第1位でした。 少しではあるものの順位が下がったのは、1960年頃より脳卒中発症において最大のリスク原因である高血圧に対する治療が広く行われるようになり、脳卒中の発症を一定以上抑制することが可能になったからです。 また、脳梗塞の発症直後に閉塞した血管を再開通させ、神経細胞死を防止する血栓溶解薬(t-PA)が日本でも認可(2005年)され、さらにカテーテルで脳血管を閉塞している血栓を除去する血管内治療も認可(2010年)されるなど、脳卒中直後の超急性期において神経細胞死を防ぐ治療法も進歩してきました。 脳卒中の兆候を見つけたら即病院を受診 脳卒中は、その兆候を発見したら直ちに病院へ向かいましょう。 早期に治療を開始することで「後遺症が軽くなる可能性」があるからです。 治療を行うには検査が必要となり、その検査に1時間程度必要ですので症状を発見したら早急!遅くとも2時間以内を目処に速やかに病院で受診すべきです。この時間が症状を左右する可能性があります。 病院ではまず、問診、診察、採血、胸部レントゲン、心電図、頭部CT、頭部MRI、頸動脈エコー、心エコーなどの検査を行います。検査の結果、脳卒中と診断されると次は治療に移ります。 脳卒中の中でも「脳出血」、「くも膜下出血」、「脳梗塞」など各症状別に治療法は少し異なり、点滴や飲み薬による脳血流改善、血栓をできにくくする抗凝固療法や抗血小板療法、脳梗塞後に脳内で発生する活性酸素などの有害な物質を除去して、脳の障害を予防する脳保護薬の使用などがメインで行われます。 また、血圧、体温、脈拍などの全身状態の管理も行い、併せて日常生活動作の改善を目的としてリハビリも行います。 脳卒中の3つの症状とその治療法 1)脳出血 高血圧が脳出血の原因になることが多いので、降圧薬(血圧を下げる)を投与します。また、出血を止めるために止血剤を使用されることもあります。 さらに、出血によって脳が圧迫されるので、浮腫をとるための薬剤(抗浮腫剤)も投与します。また出血量が多い場合には、命にかかわる事もあるので、開頭手術によって血のかたまりを取り除く手術を行うこともあります。 2)くも膜下出血 脳の血管にできた「こぶ」が破裂して出血するので、破裂した部位をふさぐ手術をします。手術の方法は2通りあります。 開頭クリッピング術 頭の骨をはずして、「こぶ」の根元を洗濯ばさみのような道具(クリップ)ではさんでふさぎます。 血管内コイル塞栓術(動脈瘤塞栓術) 「こぶ」の中にコイルと呼ばれる細い金属をいれて「こぶ」全体をふさいでしまいます。カテーテルという細いストローのような道具を使って血管を通し、「こぶ」までコイルを運ぶので、開頭手術をすることはありません。 3)脳梗塞 脳梗塞は、脳の血管の動脈硬化が起きた部位に形成された血栓、あるいは心臓で出来た血栓によって脳の血管が詰まり脳が壊死してしまうものです。 脳梗塞がおこってから4.5時間くらいまでを超急性期といい、この時間内に詰まった血管を再開通させることができると、劇的に症状が改善する可能性があります。 脳梗塞がおこってから48時間以内であれば、血が固まるのを抑制する抗凝固薬を投与します。 脳梗塞の急性期のみに施行される治療には「t-PA」という点滴や、血管内治療などがあります。これらの治療を受けるには、発症してからの経過時間をはじめ、さまざまな条件があります。 それらをクリアする必要があり、そのため脳梗塞で病院に来られた方の2~5% (100人中で2~5人)程度しか、この治療は行われていません。 さらに、ルールを守って使っても 6%(100人に6人)程度の確率で症状が悪化するような脳出血を生じます。 うまくいけば劇的に症状が改善する一方で、効果が期待できなかったり、症状が悪化したりする可能性がある治療法であることを知っておいていただければと思います。 t-PA:組織型プラスミノゲン・アクティベーター(tissue-type plasminogen activator:t-PA) こちらの薬を点滴して血栓を溶かし、脳の血流を再開させます。t-PAを使用することで、3ヶ月後に自立した生活を送れる患者さんが、使用しなかった時と比べて約50%増加するとされています。 脳梗塞により脳神経細胞が死に至る経過は早く、適切なタイミングを逃すと、出血などの合併症で逆に症状が悪化する危険があります。基本的には発症してから4.5時間以内に治療が開始できる患者さんに限り、治療の対象となります。 (t-PAは2005年10月から日本で認可され、発症後3時間以内の患者さんを対象に使用されていましたが、2012年9月より対象となる治療間が4.5時間に延長されています。) 血管内治療 脳梗塞の血管内治療は、発症してから8時間以内の患者さんが対象となる治療です。 細いビニールの管(カテーテル)を足の血管から挿入して、脳の血管へ進めて、血管の詰まりの原因となっている血栓を溶解したり、回収したりして、閉塞した脳血管を再度開通させます。 具体的な方法として、カテーテルを閉塞した血管に導入し、血栓溶解剤(ウロキナーゼ)を投与する方法、バルーンを閉塞した血管に留置し血栓を破壊する方法。 また、メルシーリトリーバーという、先端がらせん状になっている柔らかいワイヤーで、脳の血管をつめている血栓をからめとって回収する方法。 ペナンブラという血栓を吸引する器具で、まるで掃除機のように血栓を吸引し回収する方法(柔らかい血栓も回収することが可能)などがあります。 t-PA療法の注意点 問題点としては、t-PA療法の適応対象となる時間「4.5時間」が強調されるあまり、「4.5時間を過ぎた場合は治療してもあまり意味がない」と誤解されることが多く、専門病院への受診を躊躇されるケースもみられます。 また発症時刻がはっきりとわからない場合では、発見から早急に病院へ搬送してもt-PA療法の適応とならないことがありました。しかし2019年3月より、頭部MRI検査で「発症からあまり経過していない可能性が高い」という所見がみられる場合には、t-PA療法を検討できるようになりました。 そして、脳卒中専門の病棟であるSCU(脳卒中ケアユニット)で従来使用される薬を用いた治療や急性期のリハビリテーションを積極的に行うことで、発症後4.5時間を過ぎて来院された患者さんでも良い治療効果が現れることも少なくないので時間にかかわらず専門施設でしっかりとした初期治療を始めることが重要です。 脳梗塞の再発予防 一度脳梗塞を起こすと再発しやすい傾向があり注意が必要です。統計的には脳梗塞発症後1年で10%、5年で35%、10年で50%もの人が再発しています。 そこで、脳卒中の再発を予防するには、まず生活習慣の改善を行うことです。脳卒中の危険因子とされている高血圧や喫煙、多量の飲酒、糖尿病、肥満、運動不足などは脳卒中の発症の危険性が高まります。 医師、薬剤師、栄養士など専門職の指導に従い、規則正しい生活や禁煙、減塩や減量に取り組みましょう。 また再発予防として、抗血栓薬を処方されることがあります。脳卒中の原因によって処方される薬剤は違い、心臓が原因で発症した心原性脳塞栓症には抗凝固薬が、心臓以外の原因(血管由来)の非心原性脳梗塞には抗血小板薬が使用されます。 ①具体的な再発予防~危険因子のコントロール~ 脳卒中の危険因子は、再発の危険因子でもあります。過去に一度脳卒中を発症しているということは、すでに危険因子があるということなので、十分注意をしましょう。 脳卒中の危険因子は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、多量飲酒、肥満、喫煙、運動不足などです。これらを予防し、さらにコントロールしていくことが再発予防につながりますので、以下のようなことを心がけましょう。 禁煙 文字通りタバコを止めましょう 塩分の取り過ぎを控える 成人男性8g未満、女性7g未満で高血圧患者では6g未満 減量 標準体重を知ってダイエットを行う 食事に気を付ける 毎日5種類以上の野菜(350g/日以上)、魚、果物の摂取 減塩、低カロリー、低コレステロール入浴 節酒 アルコール換算20g程度(日本酒1合程度)に抑える 既往症に注意する 高血圧、脂質異常症、糖尿病、心臓病などがある場合には適切に治療する 運動 適度な運動を行う、ストレスや疲労をやめない 定期健診 定期的に健診を受け、血圧、コレステロール、中性脂肪、血糖などをチェックする 水分を取る 脱水症状にも注意 ②具体的な再発予防~定期的な検査~ 脳梗塞が治まった後も年に1回程度専門病院へ行き、検査を受けることが重要です。CT、MRIの他に頸部の血管を検査する頚動脈エコーも脳梗塞再発予防には有用です。 ③具体的な再発予防~服薬継続~ 再発予防のためには、処方された薬をきちんと服用することも大切です。主治医の指示に従って、正しく継続して服用しましょう。なお、服用中に副作用が現れるなど気になることがある場合は、すぐに相談しましょう。 まとめ・脳卒中の3つの症状と治療法!脳梗塞の再発を予防するコントロール方法 脳卒中の治療には、手術・点滴・内服薬などがあります。 これらの中で内服薬な自分で管理をする必要があります。ところが、処方された量を決められた日数できちんと飲みきる人は意外と多くありません。実際のところ、薬を飲み残してしまう理由の大半は単なる飲み忘れです。 服薬カレンダーの使用や一包化するといった工夫で、その時間帯に服用すべきお薬を選ぶのは容易ですが、定刻に服薬することを思い出すことは、高齢者にとっては難しい面もあります。 定刻に服薬することを思い出すためには、お知らせ機能付きのピルケースやスマートフォン・携帯を利用してアラームや通知を設定し、飲み忘れを防ぎましょう。 以上、脳卒中の3つの症状とそれぞれの治療法、再発を予防する具体的なコントロール方法について解説にしました。参考にしていただければ幸いです。 ▼脳卒中の後遺症|脳卒中の最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳卒中の先端治療法として脚光を浴びています ▼以下のご覧いただけます 脳卒中の治療!リハビリについての予後予測 1.くも膜下出血とは?その症状と後遺症を医師が徹底解説! 2.脳梗塞になりやすい人とは?発症や再発予防で注意しておくべきこと 3.脳出血の初期症状をセルフチェック!早期治療で後遺症を残さない
2021.12.21 -
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二木の予後予測って何? 脳卒中のリハビリの見通しはどうやって立てる? 脳卒中を発症した家族を支えるのは、大きな不安と向き合う日々の連続です。「どのくらい回復するのか」「いつ自立できるのか」など、先が見えない状況に戸惑う方も多いでしょう。 そのようなときに役立つのが「二木の早期自立度予測基準」です。 本記事では、入院時・発症2週・1カ月時点での予後予測の具体的な活用方法を解説します。 予後を知ることで、リハビリ計画が立てやすくなりますので、ぜひ最後までご覧ください。 また、当院「リペアセルクリニック」では手術や入院を必要としない「再生医療」を提供しています。 脳卒中の後遺症治療にも効果が期待できますので、「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 二木の予後予測(早期自立度予測基準)とは? 脳卒中後の回復を予測する「二木の早期自立度予測基準」は、リハビリ計画を立てる際に重要な指標です。 入院時・発症2週・1カ月時点で回復の見込みを段階的に予測し、患者の自立度を評価します。 予測時期 評価項目 目的 入院時 運動機能、意識レベル、嚥下機能 初期の回復見込みを判断する 発症2週時 運動機能、日常動作、コミュニケーション リハビリの強度や内容を調整する 発症1カ月時 歩行能力、手足の動き、日常生活動作 退院後の生活計画を立てる 本章では、それぞれの時期における予測のポイントを解説します。内容を参考に、リハビリを進めるうえでの指針を明確にしましょう。 入院時の予測 入院時の予測では、発症から入院後できるだけ早い段階で、患者さんの状態を評価して行う予測です。 具体的には年齢、麻痺の程度、そして日常生活動作(ADL)の3つの要素から総合的に判断します。 入院時のADL能力 歩行能力予測 ベッド上の生活自立(※1) 歩行自立(大部分が屋外歩行可能で、かつ1カ月以内に屋内歩行自立) 基礎的ADL(※2)のうち2項目目以上実行 歩行自立(大部分が屋外歩行かつ、2カ月以内に歩行自立) 運動障害軽度(※3) 発症前の自立度が屋内歩行以下かつ運動障害重度(※4)かつ60歳以上 自立歩行不能(大部分が全介助) Ⅱ桁以上の意識障害かつ運動障害重度(※4)かつ70歳以上 ※1:介助なしでベッド上での起坐・座位保持が可能 ※2:基礎的ADL=食事、尿意の訴え、寝返り ※3:Brunnstorm stage4以上(麻痺側下肢伸展挙上可能) ※4:Brunnstorm stage3以下(麻痺側下肢伸展挙上不能) 発症2週時での予測 脳卒中の発症から2週間が経過すると、ある程度の回復が見られるようになり、この時点で再度、患者さんの状態を評価し予後予測を行います。 具体的には麻痺の程度、日常生活動作などを総合的に判断します。 発症2週時でのADL 歩行能力予測 ベッド上生活自立(※1) 歩行自立(かつその大部分が屋外歩行、かつ大部分が2カ月以内に歩行自立) 基礎的ADL(※2)3項とも介助かつ、60歳以上 自立歩行不能(かつ、大部分が全介助) Ⅱ桁以上の遷延性意識障害、重度の認知症、夜間せん妄を伴った中程度の認知症があり、かつ60歳以上 ※1:介助なしでベッド上での起坐・座位保持が可能 ※2:基礎的ADL=食事、尿意の訴え、寝返り 発症1カ月時の予測 発症から1カ月が経過すると、多くの患者さんで症状が安定してきますので、この時点で、より詳細な評価を行い最終的な予後予測を行います。 具体的には麻痺の程度、日常生活動作、認知機能などを総合的に判断材料とします。 発症1カ月でのADL 歩行能力予測 ベッド上生活自立(※1) 歩行自立(かつ、その大部分が屋外歩行、3カ月以内に歩行自立) 基礎的ADL(※2)の実行が1項目以下かつ、60歳以上 自立歩行不能(かつ、大部分が全介助) Ⅱ桁以上の遷延性意識障害、重度の認知症、両側障害、高度心疾患などがあり、かつ60歳以上 ※1:介助なしでベッド上での起坐・座位保持が可能 ※2:基礎的ADL=食事、尿意の訴え、寝返り 以下の記事では、脳卒中後のリハビリ方法について詳しく解説していますので、興味がある方はぜひご覧ください。 【脳卒中】予後予測に基づくリハビリが重要な理由 脳卒中の発症後、予後予測に基づくリハビリが重要な理由は以下の2つです。 リハビリ計画を立てる上で目標設定に役立つ 患者や家族が将来の見通しを知り安心できる 本章を参考に、二木の予後予測への理解を深めましょう。 リハビリ計画を立てる上で目標設定に役立つ リハビリには、明確な目標設定が欠かせません。 予後予測の活用によって回復見込みを把握し、段階的なリハビリ計画を立てられます。 無理のない範囲で適切な目標設定をしておくと、リハビリへのモチベーションも維持しやすくなります。 たとえば、発症2週時点での評価をもとに、どの程度歩行訓練を進めるべきかの判断も可能です。 また、発症1カ月時の予測によって、退院後の生活を見据えた計画も立てやすくなります。 患者や家族が将来の見通しを知り安心できる 予後の見通しがわかることで、患者や家族の不安が軽減されるメリットもあります。 脳卒中の回復には個人差がありますが、二木の予後予測を活用すれば、ある程度の見通しを立てられるためです。 たとえば、1カ月時点の予測をもとに、退院後に自宅でどの程度自立した生活が送れるかを判断できます。 そのため、必要な介護サービスの手配や、住環境の調整もスムーズに進めやすくなります。 予後を知ることで、家族も適切なサポートができるようになり、患者の自立を支える大きな力となるでしょう。 脳卒中の種類と原因については以下の記事で解説しています。予防するための注意点もチェックできますので、ぜひ参考にしてください。 脳卒中の予後は損傷部位や大きさによって変わる 脳卒中の回復度合いは、損傷した部位や病変の大きさによって大きく異なります。 同じ規模の脳卒中でも、損傷部位によって運動機能の回復が難しい場合や、逆に予後が良好なケースもあります。 本章では以下3つの損傷部位・損傷の大きさに分けて、予後への影響を解説します。 損傷が小さくても予後が不良な部位 損傷の大きさに比例して運動予後が決まる部位 損傷が大きくても運動予後が比較的良好な部位 本章の内容を、自分やご家族の予後をイメージするのにお役立てください。 損傷が小さくても予後が不良な部位 損傷が小さくても予後が不良な部位には以下が挙げられます。 放線冠(中大脳動脈穿通枝領域)の梗塞 内包後脚 脳幹(中脳・橋・延髄前方病巣) 視床(後外側の病巣で深部関節位置覚脱失のもの) 上記のような部位で脳梗塞が起こると、わずかな損傷でも機能低下を引き起こしやすいのが特徴です。 とくに内包や脳幹といった重要な神経経路を含む部位では、小さな病変でも運動機能に深刻な影響を与えます。(文献1)(文献2) 手足の動きや歩行能力が低下する可能性があるため、わずかな損傷でも機能回復が難しくなりやすいのです。 リハビリでは損傷部位に応じた適切なアプローチが求められます。 麻痺が強く残る可能性がある場合でも、適切なリハビリの継続によって、日常生活での自立度を向上させる可能性もあります。 損傷の大きさに比例して運動予後が決まる部位 病巣の大きさと比例して、運動予後がおおよそ決まるものは以下のとおりです。 被殻出血 視床出血 前頭葉皮質下出血 中大脳動脈前方枝を含む梗塞 前大脳動脈領域の梗塞 脳の大部分では、損傷の大きさが予後に直結します。損傷が大きいほど回復には長期間のリハビリが必要になる傾向があります。 適切な訓練を継続すれば、少しずつでも機能の回復を促すことが可能です。 無理をせず、損傷状態に合わせたプログラムを取り入れていけば、少しずつ日常動作の改善が期待できるでしょう。 損傷が大きくても運動予後が比較的良好な部位 大きい病巣でも運動予後が良好なものは、次のとおりです。 前頭葉前方の梗塞・皮質下出血 中大脳動脈後方の梗塞 後大脳動脈領域の梗塞 頭頂葉後方~後頭葉、側頭葉の皮質下出血 小脳半球に発生した片側性の梗塞・出血 たとえば、大脳皮質の非優位半球に損傷がある場合、もう一方の半球が機能を代償しやすいため、運動機能の回復が比較的良好な傾向にあります。 このような代償機能を「脳の可塑性(かそせい)」といいます。可塑性によって損傷が大きくても回復が進むケースがあるのです。 ただし、脳の可塑性を活用して回復を促すには、早期からの適切なリハビリが重要です。適切なトレーニングの継続で、日常生活に必要な動作を取り戻せる可能性があります。(文献3) 脳卒中の症状や治療法については、以下の記事でわかりやすくまとめていますので、ぜひご確認ください。 二木の予後予測の注意点は? 二木の予後予測は、脳卒中リハビリにおける有益な指標ですが、以下の点には注意が必要です。 あくまで予測であることを理解する 過信しすぎない 本章では、予後予測に関するそれぞれのポイントをわかりやすく解説します。 あくまで予測であることを理解する 二木の予後予測は、過去のデータに基づいて統計的に算出されたものです。 しかし実際の予後は個人差があり、予測よりも回復が早かったり、遅かったりするケースもあります。状態や置かれている環境によって、回復の度合いは大きく異なる可能性があるでしょう。 そのため、予後予測はあくまでも参考程度にとどめ、過度な期待や不安を抱かないように注意してください。 過信しすぎない 二木の予後予測の内容を過信しすぎないことも大切です。 予後が良いと予測されていても、積極的なリハビリテーションを行わなければ十分な回復を得られない可能性があります。 一方、予後が悪いと予測された場合でも、諦めずにリハビリを続けていれば状態が改善するケースもあります。 予後予測の結果を過信しすぎず、医師や専門家の指示のもと、適切なリハビリテーションを行いましょう。 まとめ|脳卒中のリハビリには二木の予後予測を取り入れよう 脳卒中の回復には、適切なリハビリ計画が欠かせません。 二木の予後予測の活用により、回復の見通しを立てやすくなり、より効果的なリハビリが可能になります。 入院時・発症2週・1カ月の評価を基に、適切なプランを立てることが重要です。 二木の予後予測を取り入れ、無理のないリハビリを続けて脳卒中後の自立を目指しましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では脳卒中の後遺症にお悩みの方へ、手術や入院の必要がない「再生医療」を提供しています。 まずはお気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 二木の予後予測に関するよくある質問 脳卒中の回復期はどれくらいの期間ですか? 脳卒中の回復期は、一般的に発症後1カ月〜6カ月程度と言われています。(文献4) この時期は、集中的なリハビリテーションによって、機能回復が期待できる大切な時期です。 しかし、回復の度合いは個人差が大きく、損傷部位や程度、年齢、合併症の有無などによって大きく異なります。 リハビリにおける予後予測とは何ですか? リハビリにおける予後予測とは、患者さんの状態や検査結果などを基に、リハビリテーションによってどれくらい回復が見込まれるのかを予測する指標です。 予後予測は、リハビリテーションの目標設定や計画立案、患者本人や家族への説明にも役立ちます。 ただし、予後予測はあくまでも予測であり、実際の回復状況とは異なる場合がある点も理解しておく必要があります。 参考文献 (文献1) 生理学研究所「脳卒中後のリハビリによる運動機能の回復には、脳幹を介した複数の回路が協力して関わる」 https://www.nips.ac.jp/release/2019/09/post_399.html (文献2) Chen. C.L ほか「Brain lesion size and location: effects on motor recovery and functional outcome in stroke patients.|Arch Phys Med Rehabil」81(4) https://www.archives-pmr.org/article/S0003-9993(00)37198-2/abstract (文献3) 角田 亘「脳卒中リハビリテーションの今後|臨床神経学(60巻,3号) https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/60/3/60_cn-001399/_article/-char/ja/#article-overiew-abstract-wrap
2021.12.21 -
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脳卒中のリハビリで手足の麻痺を回復させ残った機能を最大化させるには ご存知でしょうか?リハビリテーション(リハビリ)とは・・・元に戻すこと! リハビリテーションの語源はre(再び)+ habilis(適した)で「再び適した状態に戻ること」、「本来あるべき状態に回復すること」を意味します。 脳卒中におけるリハビリとは、脳卒中による手足の麻痺(まひ)を回復させ、残った機能を最大限に活用することで「人間らしい生活の送り方」を取り戻すための活動といえるものです。 これまで脳卒中のリハビリは、脳卒中を発症してから間もない急性期ではなく、病状が定着する慢性期や回復期から開始するのが一般的でした。 しかし、近年、脳科学の進歩に伴って「脳卒中を発症した早期から開始する」ことが、その後の良好な機能の回復につながる可能性が高いと指摘されるようになりました。 後遺症のリハビリ 脳卒中によって手足の麻痺などが生じた場合、程度には個人差がありますが、何らかの後遺症(障害)が残ることが多くみられます。この後遺症と付き合いながら、いかに人間らしい生活を送ることができるよう導きくことがリハビリテーションの意義となるのです。 その為には、麻痺した手足を回復させ、残った機能を最大限に活用することが大切です。 さらに、失った機能を補うための補装具や、コミュニケーション・エイド(コミュニケーションを助ける用具)の使用や、住宅の改修改造、ベッドや車いすを借りるなどについて公的な支援制度を生かし、「日常生活活動」(ADL:activities of daily living)の幅を広げるだけでなく、「生活の質」(QOL:quality of life)の向上を図ることが大切です。 脳卒中の発症を見逃さないために 脳卒中でみられる症状には様々あり、特に顔、手足、言語に障害がみられます。顔、手足、言語のうち一つでも異常があれば脳卒中である確率は、非常に高いとされています。 (1)頭痛やめまい 突然の激しい頭痛(吐き気や嘔吐を伴うこともある)→くも膜下出血 回転性めまい(吐き気や嘔吐を伴うこともある) (2)意識の異常 意識がもうろうとし、反応が鈍い わけもなく暴れる (3)手足の力の異常 ろれつが回らない 顔面を含む半身の脱力 口の片側からよだれが出る、食べたものがこぼれる 食事中に箸を落とす、字がうまく書けない、手の動きがぎこちない 足の片側でよくつまずく、片方のスリッパが脱げやすい 片足を引きずる、壁伝いか手すりを使わないと歩けない (4)手足の感覚の異常 唇の周囲と片方の手のひらの感覚が同時におかしくなる 顔の片側と左右どちらか一方の感覚がおかしくなる 入浴した時に体の半分はお風呂の熱さを感じない (5)言語の異常 言いたいことがうまく言えない、書けない 聞いた言葉や読んだ文章が理解できない (6)目の異常 片方の目が突然見えなくなる 視野が半分になる 物が二重に見える (7)バランスの異常 力はあるのに、うまく物がつかめない 座ったり、立ったり、歩いたりするのにバランスが取れない (8)その他 突然の記憶障害 けいれん発作 脳卒中で3つの症状>FAST 脳卒中で起こる典型的な3つの症状と、発症時刻を組み合わせた言葉に“FAST”というものがあります。 ①Face:顔のマヒ ・・・顔の半分が下がる、ゆがんでいる、うまく笑えない ②Arm:腕のマヒ ・・・両腕を前に突き出した時に片腕が高さを保持できず下がってくる ③Speech:ことばの障害 ・・・ろれつが回らない、文章を正しく繰り返せない、返事が乏しい ④Time:症状に気付いた時刻 ・・・これらの症状に気付いたら発症時刻を確認してすぐに“119番通報”を! 【救急車の呼び方】 ① “119番”に電話をかける ② “救急です”と伝える ③ 現在地を伝える ④ 患者の姓名、性別、年齢、症状を伝える 脳卒中急性期のリハビリテーション リハビリは、医師の指示のもと、セラピスト(療法士)によって行われます。セラピストにはそれぞれ専門分野があり、それに応じて役割を分担して対応させて頂きます。 ■セラピストの種類と役割 理学療法士 (PT:Physical Therapist) 起き上がる、座る、立つ、歩くなど生活の基本となる動作(基本的動作)に、必要となる関節の動きや筋力などを評価し、能力の習得や向上を目指す運動や練習を行います。 作業療法士 (OT:Occupational Therapist) 患者さんがご飯を食べる、着替えをする、トイレに行く、歯を磨く、字を書くなどの動作(応用動作)を身につけるために、不自由となっている腕や手の機能などについて評価し、その動作能力を向上させたり獲得するための作業練習を行います。 言語聴覚士 (ST:Speech Therapist) 聞く、話す、読む、書くなど言語機能に障害のある患者さんの障害の程度によって、必要な練習や助言をします。 次に、実際のリハビリついて紹介します。 【1】理学療法 離床に向けてのベッド上でのリハビリテーション ベッドで寝ている状態のことを臥床(がしょう)といい、臥床期間が長期にわたると、麻痺した側の手足の関節が硬くなったり、麻痺していない側の手足の筋力が弱くなったりします。そのため病床でのリハビリは必要不可欠になります。 長期の臥床は、褥瘡(じょくそう)や肺炎・尿路感染症、心肺機能の低下、起立時の血圧低下によるふらつきの原因にもなります。このように動けないことによって生じる一連の障害を「廃用症候群」と言います。 ①床上安静期 関節可動域訓練・筋力増強訓練 廃用症候群を予防するため、早期からベッドサイドでのリハビリによって手足の関節を動かしたり、筋力をつけたりする練習を開始します。 脳卒中を発症してから浅い時期は、病状が進行する可能性があり、ベッドから起き上がることは控えた方が良いため、セラピストが病室にてリハビリを行います。 この時期には、手足の関節が硬くなること(関節拘縮)を予防する目的で、痛みが生じないよう関節を動かす関節可動域訓練、筋力の低下を予防するため、手足の筋力増強訓練も行います。 ②離床期 頭部挙上負荷試験(とうぶきょじょうふかしけん) 脳卒中の患者さんの場合、突然起き上がると血圧が下がり(起立性低血圧)、症状が悪化することがあるので、ベッド上で寝た状態から徐々に頭を上げていき、症状に変化がないかどうかを確かめます。 チェック項目:血圧、心拍数、自覚症状、徴候の変化 頭部挙上角度:30°→60°→90°の順 負荷試験時間:30分間 端坐位、座位練習 ベッドで90°まで頭を上げられるようになれば、足を床に下ろして座る(端坐位)練習に移行します。その後、徐々に自力で座位を保つ練習や自分で起き上がる練習を行います。 車椅子の練習 ベッドから車椅子に、車椅子からベッドへ移乗する練習、車椅子の動かし方や止め方(ブレーキ)などの練習を、行動範囲を広げていけるように行います。 【2】リハビリテーション室にて 離床が進み、車いすに乗れるようになると、患者さんの行動範囲は大幅に広がるため、多くは集中治療室を出て一般病棟へ移ります。ベッドサイドで行われていたリハビリもリハビリテーション室に変わります。 一般的なリハビリ リハビリテーション室での訓練が可能になると、まず立つ練習から始め、立位保持が可能になれば歩行練習に移ります。まずは平行棒などの手すりを用いて行い、歩行が安定していけば、杖を使う歩行練習です。 基本は、①杖をつく→ ②麻痺側の足をだす→ ③健常側の足を出す。このような順で歩行します。 杖は歩行障害の程度に応じて大きく3種類あり、患者さんの麻痺の程度により使用する杖の種類が検討されます。麻痺した足をコントロールできず、立位保持や歩行が困難な場合は、足関節の固定を目的とした短下肢装具を使用する場合があります。 短下肢装具にはいくつかの種類があり、金属支柱付き短下肢装具、プラスチック短下肢装具、ゲイトソリューションデザイン、ファイナーなどが使用されます。 どの装具を選択するかは、ふくらはぎの筋肉の緊張度合いによって決めます。ふくらはぎの緊張が強く、足関節の強固な固定が必要な場合には金属支柱付き短下肢装具を、緊張が低い場合にはファイナーを使います。 それぞれの装具の特徴を理解し、患者さんの症状や回復度合いに合わせて、最適な装具を使用します。装具は、医師の処方をもとに作製すれば、健康保険の適用となります。 その他、必要に応じて階段昇降やバランス練習など、患者さん毎に練習内容を計画し、実施していきます。 【3】作業療法 サンディング 傾斜したボードを上下方向に滑らせるもの 関節の動きの改善や麻痺側の手の機能回復を目的として行う ペグボード 麻痺した手でペグ(木釘)をボードに差し込んだり、ペグを指先でつまんで反転させたりするもの 手指の巧緻性(つまんだり、離したりする機能)を高める目的で行う 【4】言語聴覚療法 言語機能の障害は大きく「失語症」と「構音障害」にわけられます。 ① 失語症 失語症になると「話す」ことだけでなく「聞く」、「読む」、「書く」ことも難しくなります。失語症には次のような種類があり、「聞く」「話す」「読む」「書く」などの言語機能について評価し、コミュニケーション能力の向上に必要な訓練・助言を行います。 ・運動性失語 言葉を聞くと理解はできるのに、うまくしゃべれない ・感覚性失語 言葉を聞いても理解ができず、言い間違い(錯語)が多い ・健忘失語 よく話を理解し流暢な話し方なのに、物の名前が出てこないために回りくどい話し方になる ・全失語 「聞く、話す、読む、書く」すべてに重度の障害がある ② 構音障害(運動性構音障害) 一方で「構音障害」は、脳卒中によって言葉を話すのに必要な舌や口唇、声帯など発声発語器官の麻痺や、それらの動きをうまくコントロールできず(失調)、呂律(ろれつ)が回らなくなり発音が不明瞭となる状態です。 麻痺の程度について評価し、より明瞭に発音できるよう発声・発語の練習を行います。重症の患者さんには、状態に合わせて筆談や五十音表の使用など、代わりのコミュニケーション手段の提案を行います。 【5】摂食・嚥下機能療法 脳卒中をきっかけに、食べたり飲んだりすることへの障害(摂食・嚥下障害)が起こる場合があります。 このような場合、医師や看護師、栄養士などが連携を取りながら、嚥下機能の評価・訓練を行い、患者さんの障害程度に応じ、食べる際の姿勢や、食べる物の柔らかさ、形を調整し、摂食・嚥下能力を高める練習をします。 再生医療という選択肢 脳卒中のリハビリは、これまで不通にできたことが、できなくなるため、嘆きたくなりますが、粘り強く続けることが大切です。そんな時、ともすれば挫折しそうにもなるものです。 そこで、お知らせしたいのが「再生医療」という最先端の医療分野の可能性についてです。 これまで脳の血管が破れたり、詰まったりすると脳細胞に血液や栄養が届かず約3~6時間で脳細胞が死に至り、元には戻らないと言われてきました。 しかし、再生医療によって一度機能しなくなった脳細胞が復活し、後遺症を改善できることが分かってきたのです。患者様ご自身の幹細胞を用いて脳細胞を再生させる可能性があります。以上、「脳卒中のリハビリで手足の麻痺を回復させ残った機能を最大化させるために」と題して記しました。 参考にしていただければ幸いです。 ▼ 脳の再生医療は安全性が高く効果があると認められ、世界でも注目されている治療法です。詳しくは以下よりお確かめください。 ▼以下もご参照ください 脳卒中の3つの症状と治療法!脳梗塞の再発を予防するコントロール方法
2021.12.14 -
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脳卒中の種類と原因|発症を予防する生活上の生活目標と修正方法について 脳卒中とは、脳の血管が突然つまったり破れたりすることで脳の血管に障害を起こす病気を総称して「脳卒中」といいます。この脳卒中、いくつか種類に分かれ、それぞれ発症原因も異なります。 そこで、脳卒中を4つの種類に分けて、それぞれの特徴と発症原因、その対策を分かりやすく解説します。その後、脳卒中の原因を提示して、予防できることと、できないことを解説します。 それぞれのリスクを知ることで普段の生活から予防を心がけていただければと思います。 脳卒中の原因 脳卒中の種類 ・脳の血管がつまる ① 脳梗塞 ・脳の血管が破れる ② 脳出血 ③ くも膜下出血 ・一時的に脳の血管がつまる ④ 一過性脳虚血発作 ①脳梗塞 脳梗塞とは、脳卒中のなかでも最も患者数が多いとされている病気で、脳の血管が詰まることが原因となって脳に栄養が運ばれなくなり、その結果、脳の組織が壊死(えし)してしまう病気を指します。 脳梗塞では、運動機能を司っている場所が障害を受けると、手足の麻痺が現れるといったように、壊死した部分が司っていた機能に応じた症状が現れるという特徴があります。 ②脳出血 脳出血とは、脳の血管が破れることが原因となって出血が起こり、脳の組織が壊されてしまう病気です。脳梗塞と同様、脳の障害された場所が司っている機能に応じた症状が現れる特徴があります。 ③くも膜下出血 くも膜下出血とは、血管にできた「こぶ(「脳動脈瘤」と呼ばれる)」が破裂することが原因となって脳の表面に出血が起こる病気です。特徴として、突然、強烈な頭痛を生じることが多く、緊急の処置を必要とするケースが多くみられ注意が必要です。 ④一過性脳虚血発作 一過性脳虚血発作とは、脳梗塞に近い病態であり、脳梗塞の前兆として現れることがあります。一時的に脳の血管がつまることで症状が現れますが、24時間以内に症状が消えてなくなる点が特徴的です。 脳卒中の原因 ①脳梗塞:動脈硬化や血栓が原因 脳梗塞には、主に「脳血栓症」と「脳塞栓症」があります。脳塞栓症は、脳血栓症と比べて脳の太い血管がつまり、広い範囲で脳梗塞を生じることが原因となって重症化することが多いのが特徴です。 ・脳血栓症 脳や頸部の血管に動脈硬化による狭窄や閉塞が起こることによって生じるもの。 ・脳塞栓症 心臓や足など全身のどこかにできた血栓(血のかたまり)が、血流に乗って脳に到達することによって生じるもの。 特に近年の高齢化に伴い、心房細動という不整脈によって心臓内に血栓が形成され、これが血流に乗って脳に到達して生じる「心原性脳塞栓症」が増加しています。 ②脳出血:動脈硬化が原因 脳出血は、脳の血管の動脈硬化が原因で発症します。動脈硬化によってもろくなった血管に高い血圧がかかることで血管が破れ、脳出血が起こると考えられており、運動時や用便時、入浴時など血圧が急激に上昇した際に発症しやすいとされています。 ③くも膜下出血:脳動脈瘤の破裂が原因 くも膜下出血は、脳動脈瘤と呼ばれる脳の血管にできたこぶが破裂することが原因となって起こります。脳動脈瘤ができる原因は正確にはわかっていませんが、高血圧や脳血管への血流、ストレス、喫煙や遺伝的要因が関与していると考えられています。 高血圧、喫煙は脳動脈瘤が破裂する危険因子にもなるといわれています。 また、脳動脈瘤が生じやすい体質は遺伝するともいわれており、家族の中に脳動脈瘤が生じたことがある方やくも膜下出血を起こしたことがある方がいる場合は発症しやすいといえます。 脳卒中の原因から理解する予防できること!予防できないこと! 脳卒中の危険因子(原因)は「修正できない危険因子」と生活上で「修正できる危険因子」とがあり、脳卒中を予防するためには「修正できる危険因子」を改善するように日頃から注意していく必要があります。 そこで、修正できない危険因子と、修正できる危険因子を明確にして、修正できる危険因子については、その対策を明示させて頂きました。 (1) 修正できない危険因子(原因)とは 自分ではどうしようもない発症原因となるもの ①年齢:55歳以上では、10歳ごとに脳卒中の発症リスクが約2倍になります ②性別:男性は女性よりもリスクが高いとされています ③家族歴 (脳卒中):両親や祖父母に脳卒中の既往がある場合、発症のリスクが高くなるとされています。 (2)修正できる危険因子(原因)とは 修正できる危険因子を知ることは、予防できない危険因子を知った上で、取り組めば脳卒中の発症リスクを下げることが可能になります。意識することで自分でできる対策です。 修正できる危険因子(原因) ①高血圧 ②糖尿病(高血糖) ③脂質異常症 ④心房細動などの心疾患 ⑤喫煙 ⑥飲酒 ⑦肥満 ①高血圧 高血圧は脳卒中の最大の危険因子であり、血圧が高いほど脳卒中の発生率は高くなります。食生活の乱れやアルコールの飲みすぎ、急激な運動などで血液の粘り気が強くなったり、血液が流れるときの抵抗が大きくなったりすることで血圧が上昇します。 【高血圧】の場合の修正目標 高齢者: 140/90mmHg 未満 若年、中年者: 130/85mmHg 未満 糖尿病や腎障害合併例: 130/80mmHg 未満が推奨されています (2009 脳卒中治療ガイドラインより) ▼ ▼ ▼ 【高血圧の場合】脳卒中の発症を避けるための生活目標 起床後や就寝前など、定期的に血圧を測定する(自己測定) 眼底検査や心電図、尿検査などで高血圧の合併症を定期的にチェックする 薄味にしたり減塩しょうゆを使ったりするなど、食塩を摂りすぎないようにする → 理想の塩分摂取量:6g/日未満 精神的、身体的ともに過剰なストレスを避ける → 疲れたら無理をせず休む、気分転換など 暖かい部屋から寒い廊下に出る、突然エアコンの風を直接受けるなど、急激な寒暖差を避ける ぬるま湯は血管を拡張させるため、入浴時はぬるま湯にそっと入る 定期的に有酸素運動を行う(例:毎日30分の散歩) 野菜・果物・魚類(カリウムを多く含む食品が望ましい)を積極的に摂る 体重を減らす 医師の指示通りに降圧剤を内服する (カルシウム拮抗剤、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬、ACE 阻害薬、β遮断薬など) ②糖尿病(高血糖) 糖尿病は、インスリンの作用不足によって血糖値が上昇する病態で、脳卒中のうち特に脳梗塞の危険因子として重要とされています。 【糖尿病の場合】の修正目標 空腹時血糖:110mg/dl以下 HbA1c:5.8%以下(ヘモグロビンA1c=過去約1ヵ月間の血糖値を反映する) ▼ ▼ ▼ 【糖尿病の場合】脳卒中の発症を避けるための生活目標 医療機関で定期的に血糖を測定する(食前採血が望ましい) 眼底検査や心電図、尿検査などで糖尿病の合併症を定期的にチェックする 食事カロリー(エネルギー摂取量)を減らす バランスのよい食事摂取を心がけ、偏食傾向を治す 散歩やジョギングなど、定期的に有酸素運動を行う 規則正しく、疲れすぎない生活を送る 医師の指示通りに、経口血糖降下剤を内服、またはインスリン注射を行う → インスリン注射を行っている場合は、血糖自己測定が望ましい インスリン注射を行っている場合、低血糖状態を正しく理解して、対処法(飴をなめるなど)を知っておく ③脂質異常症 脂質異常症とは、高コレステロール血症(高 LDL-コレステロール血症)、高トリグリセリド血症(高中性脂肪血症)、低 HDL-コレステロール血症を指します。 その中でも、高コレステロール血症が脳卒中のうち、特に脳梗塞の危険因子として重要で、高LDL-コレステロール血症は冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)の危険因子としても知られています。 【脂質異常症の場合】の修正目標 LDL-コレステロール 120~160mg/dl 以下 HDL-コレステロール 40mg/dl以上 トリグリセリド 150mg/dl ※他の冠動脈疾患の危険因子(年齢、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患の家族歴など)の有無によって LDL-コレステロールの目標値は異なる (動脈硬化性疾患予防ガイドラインより) ▼▼▼ 【脂質異常症の場合】脳卒中の発症を避けるための生活目標 肉や乳製品に多く含まれる動物性脂肪の摂りすぎに注意する (一日のコレステロール摂取量は 300g 以下にする) 野菜、海そう、穀類、豆類に多く含まれる食物繊維を多く摂る 植物油、大豆、緑黄色野菜を多く摂る 定期的に有酸素運動を行う ④心房細動などの心疾患 心房細動は、脳梗塞(心原性脳塞栓症)の危険因子です。心房細動では心房内の血流が乱れて滞るため、血栓(血のかたまり)ができやすくなります。血栓が血流に乗って脳に運ばれ脳の血管がつまると、脳梗塞を引き起こします。 治療法として、ワーファリンの内服による抗凝固療法を行うことで、脳梗塞の発症率が低下することが確認されています。 【心疾患の場合】の修正目標 ワーファリンを適切に内服して、定期的に医師の診察を受ける ▼▼▼ 【心疾患の場合】修正すべき生活目標 精神的、身体的ともに過剰なストレスを避ける 動悸、息切れ、めまい、胸痛などが出現したらすぐに医療機関を受診する 体内水分が過剰になると、心臓に負担がかかるため過剰な水分摂取を避ける 医師の指示通りにワーファリンを内服、定期的にプロトロンビン時間(INR)を測定する (INR を 2.0~3.0(高齢者では、1.6~2.6)にコントロールする) ※ワーファリンを内服している場合 ビタミン K を多く含む食品(納豆、緑色野菜など)の摂取を避ける 打撲、切り傷で出血しやすいため出血傾向に気をつける ⑤喫煙 喫煙は、脳卒中のうち特に脳梗塞とクモ膜下出血の危険因子です。タバコは交感神経系を興奮させるため、タバコを吸うと一過性に血圧が上がり、ニコチンは、血管を収縮させて高血圧や動脈硬化を一層悪化させます。 また受動喫煙も、脳卒中の危険因子と考えられています。 【喫煙の場合】の修正目標 禁煙する ▼▼▼ 【喫煙の場合】の生活目標 タバコを買わない 灰皿やライターを捨てる 皆の前で「禁煙宣言」をする 禁煙外来を受診して、専門的な治療を受ける ⑥飲酒 飲酒量が増えるほど、脳内出血とクモ膜下出血の発症率は高くなります。脳梗塞の発症率は、少量や中等量の飲酒者ではむしろ低くなりますが、大量飲酒者では高くなるとされています。 大量飲酒は、脱水を誘発し血液が濃くなり、固まりやすく=詰まりやすくなります。 【飲酒の修正目標】 摂取アルコール量を一日 30g 以下にする (日本酒で 1 合以下、ビールで中びん1 本以下、ワインで 240cc 以下に相当) ▼▼▼ 【飲酒の場合】の生活目標 アルコールを買わない 「飲み会」「宴会」への参加を控える 「休肝日」を作る ⑦肥満(メタボリック・シンドローム)・運動不足 肥満やメタボリック・シンドロームは新たな脳卒中の危険因子として注目されています。 ※メタボリック・シンドロームの診断基準 ウエスト周囲径が男性 85cm以上、女性 90cm 以上 トリグリセリド 150mg/dl 以上かつ/またはHDL-コレステロール 40mg/dl 未満 収縮期血圧 13mmHg 以上かつ/または拡張期血圧 85mmHg 以上 空腹時血糖 110mg/dl 以上 このうちの 2 項目以上が存在すること、とされています。 【肥満の場合】の修正目標 BMIを25未満にする (BMI=体重(kg) ÷ {身長(m) X 身長(m)}) ▼▼▼ 【肥満の場合】の生活目標 過剰なカロリー摂取(エネルギー摂取)を避ける 毎日、体重やウエスト周囲径を測定し、自己への動機づけを行う 散歩、早歩き、ジョギング、自転車など定期的に運動を行う まとめ・脳卒中の種類と原因|発症を予防するため、注意すべき生活目標と修正方法 脳卒中は、一旦発症すると命に係わる病です。避けれるものなら避けたい病です。そこで、注意できない事柄を「修正できない危険因子」とし、注意することで避けられるものを「修正できる危険因子」に分けてご説明しました。 ご自身の状態に合わせて取り組むべき課題を見つけて頂ければと思います。以上、脳卒中の種類と原因について記しました。 30代になったら自分の血圧を把握し、コントロールすることを心がける 塩分控えめの食生活で、コレステロールを減らす 仕事の時間以外でリラックスできる趣味を持ち、適度な運動を習慣化する 40代になったら脳ドックを定期的に受診し、脳の健康状態をきちんと把握する 脳卒中を発症してしまったら、再生医療という手段もございます。興味ある方は以下もご参考になさってください。 以上、脳卒中の4つの種類と発症原因、脳卒中にならないためにできること!について、記させて頂きました。 参考になれば幸いです。 ▼脳卒中の後遺症|脳卒中の最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳卒中の新たな治療法として注目を浴びる再生医療とは ▼こちらのご覧ください 脳卒中のリハビリで手足の麻痺を回復させ残った機能を最大化させるために
2021.12.14