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脳幹出血を発症すると、意識障害や四肢麻痺、嚥下障害など重い後遺症が残る可能性があります。 しかし、治療と併行したリハビリにより、機能回復や自立した生活への復帰が可能です。 本記事では、脳幹出血のリハビリの進め方(急性期・回復期・生活期)や、リハビリ期間の目安について紹介します。 脳幹出血後の早期リハビリアプローチが回復を左右するため、時期別のリハビリプログラムを理解し、効果的な機能回復を目指しましょう。 脳幹出血とは?発症後にリハビリが必要な理由 脳幹出血とは、脳幹(脳の中心部)で起こる出血性疾患のことです。 脳幹は、呼吸や心拍、運動機能、嚥下などの生命維持に関わる重要な役割を果たしています。 脳幹出血を起こすと、重度の場合は意識障害、呼吸障害、四肢麻痺などをきたします。 軽度の出血でも、片麻痺や感覚障害、運動失調、嚥下障害や高次脳機能障害などの後遺症を残します。 看護が必要なくなっても、元の生活に戻るまでには長い時間が必要です。 少しでも後遺症を軽減し、寝たきり状態を防ぐために、発症後できるだけ早期からのリハビリテーションが重要となります。 早期リハビリは機能回復の可能性を高めます。 脳幹出血のリハビリの進め方【急性期・回復期・生活期】 脳幹出血のリハビリテーションの内容は、発症からの時期により変わってきます。 リハビリでは、 急性期 回復期 生活期(維持期) という3つの時期に分けてプログラムを組みます。 脳幹出血の具体的なリハビリテーションを、3つのステージ別に見ていきましょう。 急性期(発症直後〜1ヶ月)|早期リハビリが回復を左右する 急性期とは、脳幹出血が発症し、まだ状態が安定していない時期を指します。 発症から概ね2週間〜1ヶ月程度です。 急性期は、治療と並行してリハビリを進めていきます。 まず目指すのは、早い段階でベッドから離れる「早期離床」です。 脳幹出血をはじめとした脳卒中では、体の状態が安定していれば、発症後24〜48時間以内のリハビリ開始で回復が早まるとされています。 リハビリの初期段階では、 寝返りを打つ練習 体を起こして座る練習 立ち上がる、歩行の練習(可能であれば補助具を使用) 着替えや食事など日常生活動作(セルフケア)の訓練 といった基礎的な動作の回復を目指します。 また、脳幹出血の患者様は、嚥下障害(飲み込む力の低下)を伴うことが多いです。 肺炎予防のためにも、早くから嚥下機能の評価と口腔ケアを開始します。 一方で、重度の脳幹出血では、呼吸や血液循環の障害が生じる場合があります。 出血が広がり、髄液の流れに影響を及ぼす水頭症になることもあります。 このような状態では、早期離床が難しくなるため、ベッド上でできるリハビリを行います。 例えば、 関節が固まらないようにするための「関節可動域訓練」 筋肉が萎縮しないようにするための「他動運動」 などを行い、後の回復を促します。 回復期(1ヶ月〜6ヶ月)|本格的なリハビリで機能回復を目指す 急性期を脱し、体の状態が安定してくる回復期は、後遺症が完全に固定されていない時期です。 そのため、失われた機能の改善や、残っている機能を高める訓練をします。 多くの脳卒中の患者様は「回復期リハビリテーション病棟」に移ります。 リハビリを専門にしている病院や病棟です。 ここでは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリ専門スタッフが多く在籍しています。 1日最大3時間のリハビリが可能で、施設によっては休日も含めて毎日リハビリを行っている病棟もあります。 脳幹出血による後遺症は人それぞれ異なるため、リハビリの内容も個別に調整されます。 急性期から徐々に始めていたリハビリを、回復期ではより本格的に実施し、患者様一人ひとりに合った詳細なリハビリプログラムを組んでいきます。 本章では一例を紹介します。 運動麻痺 筋肉や関節の動きを自分の意思通りに動かせるよう、繰り返し訓練します。 麻痺は3〜6ヶ月程で回復が止まってしまいます。 症状が固定した後でも、麻痺のない部分でカバーしたり、装具や杖などを利用したりして動く訓練も行なっていきます。 運動失調 筋肉同士の協調性が失われ、運動をスムーズに行えない状態を運動失調といいます。 運動失調のリハビリでは、例えば、目で確認しながら何度も動作の練習をします。 重りを使い、固有感覚(身体の位置や力の入れ具合を感じる感覚)を刺激して、運動のコントロールを行う訓練も行います。 一つの動作をいくつかに区切って行うことも効果的です。 嚥下障害 急性期に引き続き、嚥下障害へのリハビリも続けます。 どのくらいの固さのものが食べられるのか、一口量はどのくらいが適切かなど、詳細な評価を行います。 飲み込む力を強化する訓練をしながら、少しずつ食事の形態を調整していきます。 構音障害 呂律が回らない、声の大きさのコントロールがつかないなど、喋りづらさ(構音障害)を抱える方が多いです。 正しい発音の練習や、話すスピードを調整する訓練によって、コミュニケーションが取りやすいようにしていきます。 綿密なリハビリテーションを続けながら、自宅への退院、社会復帰に向けた支援も行なっていきます。 生活期(6ヶ月以降)|自宅でのリハビリ 生活期(維持期)とは、退院後に自宅での生活を継続しながら、リハビリを続けていく時期です。 身体機能の維持・向上を目指し、できる限り自立した生活が送れるように支援することが重要になります。 リハビリ方法の例 関節可動域訓練 関節の柔軟性を保つためのストレッチを行います。関節や筋肉の硬直を防ぎ、動きをスムーズにします。 筋力強化トレーニング 自宅で安全に行える動作の中で筋力を強化します。立ち座りや踵上げなどが効果的です。 バランストレーニング 壁を持った状態でのスクワットや片脚立ちなど、バランス能力の改善を図るトレーニングです。転倒リスクの軽減が期待できます。 自宅以外にも、通所リハビリ(デイケア)や訪問リハビリなど、専門家の指導を受けることで、より効果的なリハビリが可能となります。 また、脳幹出血の最大のリスク要因は高血圧であり、血圧管理が再発予防につながります。 適度な運動習慣をつけることで、血圧を安定させ、再発リスクを減らす効果が期待できます。 脳幹出血を含む脳出血の再発予防策のひとつ「再生医療」 脳幹出血を含む脳出血は、一度発症すると再発リスクが高いとされています。 再発を防ぐためには、高血圧の管理や生活習慣の改善が基本ですが、近年では「再生医療」が新たな治療法として注目されています。 再生医療とは、患者様自身の幹細胞を活用し、損傷した神経細胞の修復や再生を促す治療法です。 脳幹出血を含む脳卒中の後遺症に対して再生医療が行われます。 脳幹出血のリハビリについてよくあるQ&A Q.脳幹出血はリハビリすれば回復見込みはある? A.後遺症の程度によりますが、リハビリによって回復の可能性はあります。 脳幹出血のリハビリは急性期・回復期・生活期の各段階で適切に行うことで、機能回復の可能性が高くなります。 特に早期リハビリが重要とされ、症状の軽減や日常生活への復帰が期待されます。 脳幹出血の方の予後に関しては、以下のようなデータがあります。(文献) 良好な回復だった方:13人(6.1%) 中程度の障害:27人(12.7%) 重度の障害:27人(12.7%) 植物状態:23人(10.8%) 死亡:122人(57.5%) 死亡あるいは後遺症が残る方が多いですが、回復見込みもゼロではないことが分かります。 Q.どうして急性期と回復期で病院(病棟)が変わるのですか? A.できれば同じところでリハビリを続けたいですよね。 しかし、場所が変わることにはきちんと理由があります。 発症直後に入院する「急性期病院(病棟)」の目的は、体の状態を落ち着かせることです。 リハビリのための時間や人手には制約があります。 治療がひと段落すれば、よりリハビリに特化した場所に移る方が良いのです。 次に急性期病棟に入院が必要な方にベッドをあけるためにも、状況が落ち着いてくれば行き先の調整を考え始めます。 Q.どのくらいの期間、入院が必要ですか? A.麻痺などの回復が一定の段階に達し、日常生活に必要な動作ができるようになれば退院を検討します。 どこまでできるようになるかという目標は患者様毎に異なります。 ただし、回復期リハビリ病棟の入院は脳卒中の場合は最大で150日(高次脳機能障害がある場合は180日)までと決まっているため、これを超えることはありません。 Q.リハビリ中に気をつけるべきことは? A.脳幹出血のリハビリでは、無理をせず、適切なペースで継続することが重要です。 リハビリの進め方には個人差があるため、焦って過度な負荷をかけないようにしましょう。 また、バランス能力の低下により転倒のリスクが高まるため、歩行補助具の活用や、リハビリ中の環境整備を行うことが大切です。 Q.家族ができるサポート方法とは? A.リハビリの継続をサポートし、無理のない範囲で日常生活の手助けをすることが重要です。 具体的には、コミュニケーションをとりながら軽い運動を一緒にしたり、食事管理、再発予防のための健康管理などがあります。 また、患者様本人のモチベーションを維持できるよう、励ましやポジティブな声かけを意識しましょう。 リハビリは長期間に及ぶことが多いため、家族も無理をせず、介護サービスや専門家の力を借りることも大切です。 まとめ|脳幹出血のリハビリは継続と早期アプローチがカギ! 脳幹出血後の回復には、早期からのリハビリが重要です。 リハビリを継続することで、後遺症を軽減し、もとの生活に近い状態に戻ることを目指していきます。 回復には長い時間がかかることもありますが、焦らず、一歩ずつ進めることが大切です。 家族や医療チームと協力しながら、継続的にリハビリを行い、生活の質を向上させていきましょう。 参考文献 日本脳卒中学会. 「日本脳卒中治療ガイドライン2021(2023年改訂版)」 日本脳卒中学会, 2023年. https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf 福岡 達之ほか. 「小脳失調を伴うdysarthriaと嚥下障害のリハビリテーション医療」 リハビリテーション医学, 2019年, 56(2), pp.105-109. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/2/56_56.105/_pdf Takeuchi Satoru ほか. 「Prognostic factors in patients with primary brainstem hemorrhage」 Clinical Neurology and Neurosurgery, 2013年, 115(6), pp.732-735. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22944466/
2023.07.17 -
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脳幹出血は、命に関わる深刻な病気です。脳幹には生命維持に関わる機能が集中しているため、ここで出血が起こると最悪の場合、突然死を招く場合もあります。 本記事では、脳幹出血で突然死する可能性について解説しています。早期発見につながる前兆サインも紹介しているので、健康管理に力を入れたい方はぜひ参考にしてみてください。 脳幹出血は突然死を起こす可能性がある【余命が短いケースも】 脳幹出血とは脳の脳幹部分に出血を引き起こす脳出血の一種です。 脳幹は人間の生命活動をつかさどる中枢で、呼吸・心拍のコントロールや視覚・聴覚の処理、ホルモン分泌などを担当しています。 この部位で出血が起きると、四肢麻痺や意識障害など深刻な後遺症を残す可能性があり、最悪の場合は突然死を招き余命が短くなるケースもあります。 一方で、出血量が少ない場合は、症状が軽く予後が良好なケースもあります。重症化を防ぐためにも、以降で紹介する脳幹出血の前兆サインを覚えて、早期発見に努めましょう。 以下の記事では、脳幹出血の後遺症について解説しています。後遺症の種類や症状を詳しく知りたい方はぜひあわせてご覧ください。 なお、後遺症の治療には人間の自然治癒力を活用した「再生医療」が効果的です。再生医療により身体の機能(後遺症)が回復した症例は数多く報告されています。具体的な症例が知りたい方は再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血で突然死のリスク警戒となる3つの前兆サイン 脳幹出血は、突然死のリスクを伴う怖い病気です。早期発見のためには、以下3つの特徴的な前兆サインを知っておくのが大切です。 めまい いびき 視覚の異常 順番に見ていきましょう。 めまい めまいは、脳幹出血の症状の1つです。そのため、普段と異なる激しいめまいを感じた際は、脳幹出血の疑いがあります。 めまいが起こる原因は、脳幹内の体全体のバランスを調整する機能が出血により破綻するためです。(文献1) 脳幹出血によるめまいは、同時に目や手足の麻痺、顔のしびれなどを含む複数の症状が現れるケースが多いです。複数の症状が同時に現れた場合は、脳幹出血である可能性がより疑われるため、医療機関を受診して検査してもらうと良いでしょう。 早期の対応で命を守れる可能性が高まります。 いびき 脳幹出血における前兆のサインとして、いびきが大きくなることがあります。脳幹は呼吸や血圧を調整する機能があり、その機能に問題が生じると、大きないびきが発生するのです。 以下のように、いびきに変化が見られたら体からの警告サインかもしれません。 ・いつもより大きないびきをかく ・段いびきをかかないのに急に大きないびきをかく 「こんないびきはおかしい…」と感じたら、脳幹出血の疑いを視野に入れて医療機関の受診を検討してみましょう。 視覚の異常 脳幹は視覚情報を処理する役割も担っているため、出血が起きると視覚に関わる症状が現れることがあります。 たとえば以下のような症状です。 視野が狭くなる 視力の低下する ものが二重に見える 光がいつもよりまぶしく見える 視覚の異常は、目の問題だと思ってしまうケースも多いため、脳の異常に気づくのが遅れる場合もあります。早期に対応できるよう、視覚異常も脳幹出血の症状の1つであると覚えておきましょう。 脳幹出血に有効は2つの治療法 ここでは、脳幹出血に有効な治療法を2つ紹介します。 保存療法 再生医療 治療内容をそれぞれ詳しく見ていきましょう。 保存療法 脳幹出血では、保存療法が中心となります。 まず優先されるのは、血圧を下げて安定させることです。さらなる出血を防いで、脳へのダメージをできるだけ少なくするためです。入院中は安静にしながら、点滴を使って血圧を下げる薬を投与します。 ほかの部分の脳出血では、たまった血液(血腫)を取り除く手術をおこなう場合があります。しかし、脳幹出血の場合、手術は基本的に選択されません。 脳幹は、生命維持に関わる機能が集中しており、手術には大きなリスクがあるためです。また、脳幹はとても狭い空間にあるため、手術自体が困難です。 そのため脳幹出血では、血圧の管理や脳のむくみを抑える保存療法が一般的な治療法となります。 再生医療 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした神経細胞を修復する新しい治療法です。 再生医療では、麻痺や意識障害といった脳幹出血の後遺症の回復を早めたり、脳卒中の再発を予防したりする効果が期待されています。 再生医療で脳幹出血の治療を進めたい方は、弊社『リペアセルクリニック』にご相談ください。再生医療の症例数10,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりに合った治療プランをご提案いたします。 まとめ|脳幹出血における突然死のリスクを把握して前兆サインを見逃さないようにしよう 脳幹出血は命にも影響を及ぼす怖い病気ですが、早期発見・早期治療で重症化のリスクを軽減できる可能性があります。 早期発見の鍵は、前兆サインの理解です。本記事で紹介した3つのサインを心に留めておき、普段と違う症状を感じたら、早めに病院への受診をご検討ください。 脳幹出血の有効な治療法の1つに「再生医療」があります。 これまで一度死んだ脳細胞は戻らないとされてきました。しかし、再生医療は脳細胞を復活させ、脳幹出血を含む脳卒中の後遺症を改善できることがわかってきたのです。 詳しい治療法や効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血に関するよくある質問 最後に脳幹出血に関するよくある質問と回答をまとめます。 脳幹出血を起こしやすい人はいますか? 脳幹出血は、高血圧が主な原因となる病気です。また、血管の病気や脳血管奇形をもつ人にも起こる可能性があります。 また、以下のような生活習慣も脳出血のリスクを高める要因です。。 喫煙 過度なアルコール 運動不足ストレス 肥満 高脂血症 生活習慣の見直しと改善をおこなえば、脳幹出血の予防につながります。 脳幹出血のリハビリテーションにはどんなものがありますか? 脳幹出血のリハビリは、どのような症状が出ているかによって患者さんごとにプランが立てられます。大きくは、以下3つにわけられます。 プラン 内容 理学療法 筋力の強化やバランス能力の改善を目指す 歩行練習・軽めの筋力トレーニングをおこなう 作業療法 食事や着替え、入浴といった日常生活動作の獲得を目指す 指先や手を動かす訓練をおこなう 言語療法 言語障害や嚥下障害の改善を目指す 発声発語訓練・舌の体操をおこなう 精神的なサポートや心理療法も大事なリハビリです。個々の患者さんの病態にあわせて、いろいろな角度からリハビリをおこなっていきます。 以下の記事では、脳幹出血のリハビリプログラムを解説しています。リハビリの進め方を 詳しく知りたい方はぜひあわせてご覧ください。 脳幹出血を発症したら余命はどれくらいですか? 脳幹出血の発症後における、公的データは見つかりませんでした。 ただし、脳幹出血の予後を調べたとある研究結果によると、70歳以上の死亡率が79%、70歳未満の死亡率が57%となっています。(文献2) 脳幹は生命の維持を司る部位のため、発症すれば生命に関わる危険性があると覚えておきましょう。 以下の記事では、脳幹出血の余命について詳しく解説しています。脳幹出血の予後への理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。 【参考文献】 文献1:https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/051111092.pdf 文献2:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/30/1/30_1_38/_pdf
2023.07.13 -
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脳幹出血になったら回復の見込みはあるの? 回復にはどのような治療やリハビリが必要? この記事を読んでいるあなたは、脳幹出血を起こした人が無事に回復できるのか、不安を抱いているのではないでしょうか。 どのような治療やリハビリが必要になるか疑問に思っているかもしれません。 結論、脳幹出血から回復する見込みがあるかは、出血の度合いをはじめとする重症度によって異なります。重度の脳幹出血は回復の見込みがなく、重い障害が残る、あるいは死に至るといったケースも珍しくありません。 本記事では、脳幹出血の回復の見込みや治療について、詳しく説明します。記事を最後まで読めば、脳幹出血の生存率や治療がわかり、今後の見通しを立てられるでしょう。 脳幹出血の回復の見込みは重症度によって異なる 「脳幹」は、脳の中心部にあり、以下のような役割を果たす組織です。 循環 呼吸 眼球運動 体温調節 消化液分泌 自律神経の中枢 どの役割も、人間の生命維持に欠かせないものです。そのため、出血によって脳幹の機能が失われると、手足の麻痺や意識障害、呼吸停止などの重篤な症状を起こす可能性があるのです。 脳幹出血の回復の見込みは、出血量や意識の有無などの「重症度」によって大きく異なります。 重度の場合は回復が難しい可能性が高いものの、軽度〜中程度の場合は回復が期待できるケースもあります。 脳幹出血は助からない人が半分以上 脳幹出血は半分以上の人が助からないという、以下のような調査結果があります。(文献1) 良好な回復だった方:13人(6.1%) 中程度の障害:27人(12.7%) 重度の障害:27人(12.7%) 植物状態:23人(10.8%) 死亡:122人(57.5%) 発症時に呼びかけや痛みなどの刺激を与えても反応しない意識レベルの場合、回復の見込みは難しいかもしれません。 一般的には、意識レベルの評価指標である「GCS:グラスゴー・コーマ・スケール」が7点以下の場合は、予後不良とされています。 また、意識レベルの低さに加えて、以下のような症状がある場合も予後は悪いといわれています。 高熱 呼吸障害 瞳孔・眼球の異常 手足の麻痺や過緊張 ただし、脳幹出血後の死亡率は、調査によってばらつきがあります。 別の調査では、死亡率を31%や40〜50%としているものもあるため、具体的な回復の見込みは担当の医師へ確認しましょう。(文献2)(文献3) 脳幹出血の死亡率・生存率は発症時の意識状態が重要 脳幹出血の回復の見込みは、「意識レベル」「全身状態」「重症度」など、複数の要因が関係します。 一般的には、以下の要因があると回復の見込みは低いといわれています。 麻痺が重い 出血の範囲が広い 意識不明など、発症時の意識状態が悪い また、脳幹出血の死亡率は、発症時の意識状態や出血量とも関係があります。海外の調査では以下のような死亡率が示されています。(文献4) 意識障害が低く、出血量が少ない場合:2.7% 意識障害が高く、出血量が多い場合:状態によっては100% 重篤な意識障害がみられ、出血量も多い場合は、助からない可能性が高いといえるでしょう。 後遺症の重さは受診スピードやリハビリの進行度によって変わる 脳幹は生命の維持に関わる重要な部位のため、機能が失われると重篤な後遺症が出る可能性があります。 元々の症状の重さに加え、発症後に受診までの時間がかかった場合や、リハビリテーションが進まない場合も後遺症が重くなりやすいでしょう。 しかし、重い後遺症が残ったとしても、諦めないことが大切です。失われた脳細胞や神経の再生は困難ですが、神経細胞群には新たなネットワークを築いて機能が改善する「可塑性」が期待できるからです。(文献5) 医師や理学療法士らの指導のもと、できる限りのリハビリテーションを行いましょう。 なお、半年後に歩けるようになるかは、発症後1カ月の状況で見通しがつくという報告もあります。(文献6) 脳幹出血の治療 出血直後である急性期のおもな治療法は、以下の2つです。 降圧療法:出血部位を拡大させないための治療 全身管理:呼吸や脈拍などをモニタリングして管理する 脳幹出血は他の脳出血と異なり、血腫を除去する手術はあまり適応されません。脳幹は脳の深い位置にあるため、手術の負担が大きく、メリットが少ないためです。 ただし、出血部位が広く、脳内の「脳室」という部位が拡大する「水頭症」になっている場合は、脳内の圧力を下げる「ドレナージ手術」を行うケースがあります。 また、意識状態が悪くて呼吸がうまくできない場合は、人工呼吸器による呼吸管理が必要です。症状が落ち着いて自力で呼吸ができるようになれば人工呼吸器を外しますが、自力で呼吸ができない場合には人工呼吸器を外せないケースもあります。 なお、症状によっては「気管切開」を行い、人工呼吸器の代わりに肺に空気を送るチューブを気管支につなぐこともあります。 【ステージ別】脳幹出血のリハビリの内容 脳幹出血の治療では、薬物治療に加えて、脳や身体の機能を回復させるリハビリも非常に重要です。 脳幹出血のリハビリ内容は、以下3つの時期で大きく異なります。 急性期(~3カ月) 回復期(3~6カ月) 生活期(6カ月以降) 本章の内容をもとに、リハビリの流れや概要を理解しておきましょう。 急性期のリハビリ 急性期のリハビリは「二次的合併症の予防」と「早期の機能回復」に重点をおきます。 最初は関節が固まらないためのリハビリを行い、麻痺が回復してきたら自力で動くための訓練へ移行します。具体的なリハビリの例は、以下の通りです。 座位訓練 嚥下訓練 移乗訓練(車いすに移る訓練) 立位歩行訓練 言語機能の回復訓練 近年、早くからリハビリを始めて寝たきりの時間を減らした方が、予後や後遺症の経過が良いといわれています。 脳幹出血は他の脳血管疾患よりも安静度が高いため、初期に行えるリハビリは限られますが、できる範囲で積極的に行います。(文献7) 回復期のリハビリ 急性期のリハビリで回復しなかった場合、「回復期リハビリテーション病棟」で集中的なリハビリを行います。(文献8) また、回復期には「痙縮 (けいしゅく)」という手足の筋肉が緊張して突っ張る症状があらわれます。そのため、ストレッチや筋弛緩薬による適切な対応も重要です。 リハビリを行っても機能回復が困難な場合は、装具の使用やできる方法での動作練習、環境の調節などを行い、自立した生活ができるよう目指します。 生活期のリハビリ 発症6カ月以降の「生活期」は、症状が安定したあとの維持が目的です。 筋肉の痙縮をやわらげる治療や装具の訓練・調整をしながら、日常生活を送れるように環境を整えます。 また、デイケアや訪問リハビリテーションなどの、介護保険を使用したサービスもよく使われます。 まとめ|脳幹出血は程度によって回復の見込みあり!リハビリをしっかりと行おう 本記事では、脳幹出血の回復の見込みや治療、リハビリなどを詳しく解説しました。 脳幹出血の回復の見込みは、出血量や意識状態などの重症度によって異なります。軽症の場合は回復するケースもありますが、意識不明や呼吸障害などがある重症の場合は助からないケースが半分以上です。 脳幹出血のおもな治療は「降圧治療」と「全身管理」です。命が助かった場合は、日常生活に戻るためのリハビリテーションをできるだけ早期から開始します。 当院「リペアセルクリニック」では、再生治療(幹細胞)による脳卒中の再生医療を実施しています。再生治療は、脳幹出血の再発防止やしびれ、麻痺の改善が期待できる治療です。 もしあなたが脳幹出血の再発予防や治療の選択肢を広げたいと考えているなら、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」にて当院へご相談ください。 この記事が脳幹出血の回復の見込みを知るのに役立ち、今後の見通しを立てる助けになれば幸いです。 脳幹出血の回復の見込みについてよくある質問 脳幹出血の後遺症にはどのようなものがありますか。 脳幹出血の代表的な後遺症は、以下の通りです。 麻痺 痙縮 感覚障害 言語障害 嚥下障害 排尿障害 高次機能障害 どのような後遺症が出るかは、脳幹出血によってダメージを受けた部位や程度によって異なります。 脳幹出血にならないようにするにはどうしたら良いですか。 脳幹出血は、高血圧が引き起こす「動脈硬化」が大きなリスクとされています。そのため、脳幹出血を防ぐには、高血圧を招く以下の内容を避けることが大切です。 塩分の摂りすぎ 暴飲暴食 運動不足による肥満 脳幹出血の予防については、以下の記事も参考にしてください。 参考文献一覧 文献1 原発性脳幹出血患者の予後因子,Clinical Neurology and Neurosurgery,Volume 115, Issue 6, June 2013, Pages 732-735 文献2 急性期脳血管障害の臨床的研究,急性期脳血管障害の臨床的研究, 脳卒中, 1980, 2 巻, 4 号, p. 326-332, 文献3 特発性脳幹出血の外科的治療,Medicine (Baltimore). 2019 Dec; 98(51): e18430. 文献4 原発性脳幹出血:予後因子と外科的治療のレビュー,Front Neurol. 2021; 12: 727962.Published online 2021 Sep 10. doi: 10.3389/fneur.2021.727962 文献5 脳の機能回復と神経可塑性,石田和人,玉越敬悟,高松泰行,理学療法学, 40 (8 ) p535-537,2013 文献6 脳幹出血患者の予後予測,木村紳一郎,光眞邦哲ら,脳卒中の外科 39:262-266,2011 文献7 脳卒中急性期リハビリテーション診療の指針,日本脳卒中学会「脳卒中急性期リハビリテーションの均てん化および標準化を目指すプロジェクトチーム」 文献8 脳卒中理学療法ガイドライン,日本神経理学療法学会
2023.07.10 -
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脳幹出血は、四肢麻痺や意識障害など重篤な後遺症が出る可能性のある病気です。 早めにケアをおこなえば回復が見込めるケースもあるので、後遺症が出たら早期リハビリを検討しましょう。 本記事では脳幹出血の後遺症の種類や治療方法を解説します。脳卒中の後遺症に対する有効な治療法「再生医療」も紹介しているので、治療方法に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。 脳幹出血の後遺症にはどのようなものがあるのか? そもそも脳幹出血は、脳幹という脳の中でも呼吸活動を司ったり、血圧を保ったりといった、生命活動にとって根幹となる機能をもつ部位に生じる出血のことです。 脳幹出血が起こると、命が助かったときでも後遺症が出る場合があります。 たとえば、両手足が動かなくなる四肢麻痺や、認識力や判断力が低下する意識障害、食事や水の呑み込みが難しくなる嚥下障害などがあげられます。(参考1) また、脳幹の一部である橋(きょう)の場所で出血が起こると、意識障害や全身の麻痺が起こり、出血が広がると呼吸困難となり、重篤な状態になる可能性もあります。ときに、出血量が多い場合には命が助からないケースもあり得るのです。 以下の記事では脳幹出血の後遺症の1つである「運動失調」について詳しく解説しています。具体的な症状や治療法も紹介しているので、運動失調の理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。 脳幹出血の有効な治療法の1つに「再生医療」があります。 これまで一度死んだ脳細胞は戻らないとされてきました。しかし、再生医療は脳細胞を復活させ、脳幹出血を含む脳卒中の後遺症を改善できることがわかってきたのです。 詳しい治療法や効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血の後遺症に効果的なリハビリや治療法 ここでは脳幹出血における後遺症の治療に有効なリハビリと再生医療について解説します。それぞれの目的や効果について紹介していくので、後遺症の治療方針を決める際の参考にしてみてください。 リハビリ 脳幹出血による後遺症のリハビリは、発症から以下3つの時期にわけてプログラムを組んでいきます。 急性期:発症から約2週間 回復期:急性期後、体の状態が安定した時期 維持時:回復期後、自宅に戻って生活をはじめる時期 急性期は、早期リハビリが推奨されています。安静状態でベッドに長期間とどまっていると「廃用症候群」(寝たきりによって筋肉の衰えや関節の硬化が起こる症状)を引き起こす可能性があるためです。そのため、急性期は廃用症候群の予防として、ベットの上で手足のストレッチや体位の交換といった軽い運動をおこなうケースが多い傾向にあります。 回復期は、後遺症により失われた機能を回復させるために本格的なリハビリを開始します。症状や重症度は個々によって異なるため、一人ひとりに合わせたプログラムの作成が必要です。リハビリ専門のスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の指導のもと、退院後の自宅での生活や会社復帰に向けた訓練をおこないます。 維持期は退院後、回復した機能の維持や向上を目指すリハビリを継続します。外来リハビリへの通院や自宅でのトレーニングを通して、機能の維持・改善を図っていく流れが一般的です。 以下の記事では脳幹出血のリハビリプログラム について詳しく解説しています。症状別のリハビリ 例も紹介しているので、気になる方は是非参考にしてみてください。 再生医療 脳幹出血の後遺症への治療法として「再生医療」が注目されています。 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした神経細胞を修復する新しい治療法です。 脳幹出血の後遺症に対する再生医療では、主に以下3つの効果が確認されてます。 脳神経細胞の再生による身体機能の回復 脳神経細胞の再生によるリハビリ効果の向上 脳血管の修復による再発予防 順番に解説していくので、詳しく見ていきましょう。 効果1. 脳神経細胞の再生により身体機能が回復する 傷ついた脳細胞を再生医療で修復すれば、麻痺や呂律困難などの後遺症の回復が期待できます。 再生医療に使われる幹細胞は、神経、血管、骨、軟骨などに変化する能力があり、炎症をおさえ症状の痛みや後遺症の痺れを緩和させる効果もあります。 自己の細胞を使用するため、身体への負担が少なく安全な治療が可能です。 効果2.脳神経細胞の再生によるリハビリ効果の向上 再生医療とリハビリと組み合わせれば、より高い回復効果が期待できます。発症から数年が経過した患者さんでも、幹細胞治療とリハビリの併用で症状改善の可能性が広がります。 再生医療をはじめたからといって劇的に後遺症がなくなるわけではありません。しかし「車椅子の方が杖で歩けるようになった」「呂律困難があったがスムーズな会話が可能となった」といった段階的な改善効果の希望がもてる治療法といえます。 効果3.脳血管の修復による再発予防 脳卒中の怖いところは再発率が高いことです。はじめは軽い症状でも、再発を繰り返せば後遺症が重症化していくリスクが高まります。 再生医療は傷ついた脳細胞を再生させるだけでなく、今後、脳出血や脳梗塞になるかもしれない傷ついた血管を予防的に修復させて、再発をおさえてくれます。 再生医療で脳幹出血の治療を進めたい方は、弊社『リペアセルクリニック』にご相談ください。再生医療の症例数10,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりに合った治療プランをご提案いたします。 まとめ|脳幹出血の後遺症に対する理解を深めて適切な訓練や治療を受けよう 脳幹出血による後遺症の代表的な治療は、リハビリです。回復過程と個人の状態に合わせた適切なプログラムを実施すれば、段階的な症状の改善が期待できます。 近年では、脳幹出血における後遺症の治療法として「再生医療」が注目されています。 再生医療は人間の自然治癒力を活用した最先端の医療技術です。幹細胞の修復力を利用して、脳細胞の機能回復を促進します。 「再生医療に興味があるけど具体的なイメージがつかめなくて不安…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血の後遺症に関するよくある質問 最後に脳幹出血の後遺症に関するよくある質問と回答をまとめます。 脳幹出血で後遺症なしの確率はどれくらい? 厚生労働省の調査では、18歳から65歳の脳卒中患者1,584名のうち、後遺症がまったくないと回答した人は344名でした。 つまり、約2割の脳卒中患者は後遺症が出ず、約8割の患者には脳卒中によるなんらかの影響が出ている結果となっています。 以下の記事では、脳出血で後遺症が残らない確率について詳しく解説しています。脳卒中に関する調査結果を複数紹介しているので、理解を深めたい方はぜひあわせてご覧ください。 脳幹出血を発症したら回復の見込みはあるの? 回復の見込みは、患者さん一人ひとりの状態によって変わってきます。回復見込みを把握したい方は、担当医に聞いてみると良いでしょう。 以下の記事では脳幹出血の回復見込みに関する情報をまとめています。軽度または重度における障害の程度も解説しているので、理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。 再生医療のメリット・デメリットが知りたい 再生医療のメリットは、患者さん自身の体から採取した組織を使用するため、拒絶反応のリスクが極めて低く、安全性の高い治療であることです。 また、従来の治療法(薬物療法や手術)が症状の安定化を主な目的としているのに対し、再生医療では損傷した血管の修復や新しい血管の形成を促すのが目的です。そのため、後遺症の根本的な症状改善が期待できます。 一方で再生医療のデメリットは、再生医療は2024年11月現在、保険適用外の自費診療となっているため、治療費が高額になる可能性があります。また、治療効果には個人差があるため、医師との十分な相談のもと慎重な判断が必要です。 【参考文献】 文献1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology1968/49/5/49_5_755/_pdf
2023.07.06 -
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脳幹出血になったら余命はどのくらい? どんな症状だったら余命に影響するの? この記事を読んでいるあなたは、脳幹出血になった人の余命がどのくらいなのか気になっているのではないでしょうか。 「今の症状だと、余命はどのくらいなのだろう」と、不安になっているかもしれません。 結論、脳幹出血の余命は症状の重さによって変わります。 脳幹出血のみの余命を調べたデータはないものの、重症の場合は発症後数時間から数日で亡くなるケースも少なくありません。ただ、発症した年齢が若い場合や出血量が少ない場合は、比較的余命に影響が出にくいこともあります。 本記事では、脳幹出血の余命や予後について、詳しく解説します。記事を最後まで読めば、脳幹出血の余命が症状ごとにわかり、現在の状況や今後の見通しの理解を深められるでしょう。 脳幹出血の余命に関する正確なデータはないが予後は悪い 脳幹出血だけの余命を調べた正確なデータはありませんが、予後は全体的に悪いといわれています。 重篤な脳幹出血が起こると急激に容体が悪化し、発症後数時間〜数日で亡くなる方も珍しくありません。 脳幹出血は「脳出血」の一種で、脳内にある「脳幹」という部位から出血する病気です。おもな原因は高血圧によって脳の血管が破れることで、脳出血の約1割ほどが脳幹出血といわれています。 脳出血後の余命は、調査対象の年齢や病状が異なるため、研究ごとにややばらつきがあります。生存率に関するデータは、以下の通りです。(文献1)(文献2) 脳出血を起こした人の平均余命は12年 脳出血を起こした人の10年生存率は24.1% 初めて脳出血を起こした人の1年生存率は38%、5年生存率は24% 初めて脳卒中を起こした年齢が50歳以下の人は、70歳以上の人よりも5年生存率が高い つまり、脳出血を起こした人の4人に3人は、余命が10年未満といえます。脳幹出血は上記に示した脳出血のなかでも予後が悪い病気のため、余命は比較的短いと考えられるでしょう。 脳幹出血の後遺症について解説した記事はこちら 脳幹出血の回復の見込みとその期間について解説した記事はこちら 脳幹出血の余命が短くて助からない人が多い理由 脳幹出血の余命が短い理由は、脳幹の機能が失われると生命の維持が難しいからです。 脳幹は「中脳」「橋」「延髄」の3つの部位から成り立つ器官で、以下のように生命維持に重要なさまざまな役割を果たしています。 意識を保つ 呼吸や血液の流れを調節する 身体が受けた刺激を脳へ伝える 手足を動かす信号を脳から出す 脳幹が行っている「呼吸や意識の保持など」が不可能になると、生命の維持は難しくなります。そのため、出血が起こり脳幹の機能が失われると、余命が短いケースが多いのです。 なお、脳幹のなかでも「橋」という部位で起こるケースが多いため、脳幹出血は「橋出血」とほぼ同じ意味となります。 【重症度別】脳幹出血の症状と余命への影響 脳幹出血の重症度は、余命に大きな影響を与えます。具体的には「出血量」は重症度に大きくかかわり、出血量が少なければ軽症、多ければ重症です。 本章で、脳幹出血の症状と余命への影響を理解しておきましょう。 軽症の場合 以下のような症状のみの場合は、軽症で余命への影響は小さい可能性があります。 嚥下の障害 顔の感覚や運動の障害 手足の運動や感覚の障害 複視(ものが二重に見える) 運動失調(バランスが取れずにふらつく) これらの症状は、脳幹出血の前兆で気付いたときや脳出血・脳梗塞など他の脳血管疾患でもみられます。 また、血管の奇形による脳幹出血の場合は軽症で済みやすく、一度の出血で命にかかわることはほとんどありません。 しかし、奇形のなかでも「海綿状血管腫」は出血をくり返して大きくなりやすいため、いずれ重い後遺症が出る可能性があります。 早めの受診で悪化を防ぎ、予後を改善できる可能性を高められます。もし紹介したような症状を感じたら、迷わずに当院へメール相談、もしくはオンラインカウンセリングにてご相談ください。 重症の場合 以下のような症状が出ている場合は、出血の多い脳幹出血の重症例と考えられます。生存率は低く、余命は短いケースが多いでしょう。 両手両足の麻痺 異常な呼吸パターン 重篤な意識障害:昏睡など 中枢性高熱:体温調節の中枢の障害による高熱 除脳硬直:筋肉が過剰に緊張し、手足が伸びきった状態 瞳孔異常:瞳孔不同(左右の黒眼の大きさが異なる)、縮瞳(黒眼が小さい)など 救急車を呼んだときは意識あり・自発呼吸ありだったにもかかわらず、急激に悪化して短時間で命を落とすケースもあります。 脳幹出血の治療 高血圧による脳幹出血は手術の適応があまりなく、基本的には血圧を下げて体の状態を保つ「保存的治療」が最優先されます。出血でダメージを受けた脳幹に対しては、手術が状況をより悪化させる危険性が高いためです。 ただし、血管奇形が原因の脳幹出血の場合は、時期をみて手術を検討するケースもあります。 脳幹は手術による合併症リスクの高い部位です。手術するべきか、どのタイミングで手術をするべきかなどは、状況をみて慎重に判断します。 なお、命が助かった場合は、日常生活に戻るためのリハビリも重要です。近年、リハビリはできるだけ早い時期から始めると予後が良いとされるため、ベッド上でできるものから少しずつリハビリを行います。 脳幹出血後のリハビリについては、以下の記事で詳しく紹介しています。 まとめ|脳幹出血の余命は短い人が多い 本記事では、脳幹出血の余命や、余命が短いといわれる理由などを詳しく説明しました。 脳幹は生命維持に欠かせない器官のため、脳幹出血によって機能が失われると余命が短いケースが多くみられます。ただし、軽症や前兆段階で気付いた場合、血管の奇形による脳幹出血の場合は、余命への影響が小さい可能性もあります。 手術のリスクが大きいため、積極的な治療ではなく保存的治療が原則となるでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、厚生労働省に届出を行い、再生医療(幹細胞)治療による脳幹出血後の治療を提供しています。 再生医療は脳神経細胞の修復・再生や脳の血管を新しく再生する作用により、後遺症の回復や脳幹出血の再発予防が期待できる治療です。 メールでの無料相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にご相談ください。 この記事が脳幹出血の余命を知るのに役立ち、今後の生活を再建するきっかけになれば嬉しく思います。 脳幹出血についてよくあるQ & A Q.脳幹出血を起こすと、どのくらい入院が必要になりますか。 A.入院日数に関する脳幹出血単独のデータはありません。 ただし、厚生労働省の統計では、脳の血管が詰まったり破れたりする「脳卒中」全般の平均入院期間は77.4日となっています。入院期間が比較的長いのは、脳卒中により神経にダメージが起こるからです。(文献3) 神経の回復は他の組織よりも遅く、麻痺や感覚障害などは完治しにくいものです。一番危ない時期を過ぎても、その後の体力の回復・リハビリテーションに時間がかかることも大きいでしょう。 Q.脳幹出血を起こさないために、どのようなことに気をつけたら良いでしょうか。 A.一番重要なのは血圧の管理です。そして適切な運動を心がけ、減塩に努めましょう。 すでに治療を受けている方は、しっかりと通院を続けてください。血圧が下がったからといって自己判断でお薬をやめないようにしましょう。 脳ドックなどで血管奇形が見つかった場合でも、出血症状がなければすぐに手術適応になることはありませんが、慎重な経過観察が必要になります。この場合も、血圧の管理は必要です。 Q.脳幹出血になったら助からないのでしょうか。 A.脳幹は生命維持に不可欠な器官のため、脳幹出血により機能が失われると助からないケースは珍しくありません。 ただし、脳幹出血で助かるか助からないかは重症度によって異なります。出血量が少なく障害の程度が低い軽症であれば、回復例もみられます。 助かるかどうかは、脳幹出血を初めて起こしたのか、再発なのかによっても異なるため、回復の見込みは医師に確認するのが確実です。 参考文献一覧 文献1 人口ベースのレジストリにおける脳内出血の発生率と10年生存率 Simona Sacco, MD, Carmine Marini, MD, Danilo Toni, MD, Luigi Olivieri, MD, and Antonio Carolei, MD, FAHAAuthor Info & Affiliations Stroke Volume 40, Number 2 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19038914/ 文献2 初めての脳卒中から5年生存,Dzevdet Smajlović 1, Biljana Kojić, Osman Sinanović,Bosn J Basic Med Sci. 2006 Aug;6(3):17-22. doi: 10.17305/bjbms.2006.3138. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16995842/ 文献3 厚生労働省. 令和2年(2020)患者調査の概況. 3退院患者の平均在院日数等 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/20/dl/heikin.pdf
2023.07.03 -
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脳幹出血の原因は何? 脳幹出血にならないための予防策はある? この記事を読んでいるあなたは、脳幹出血という病気に対して不安を抱いてるのではないでしょうか。 「今からできる予防法を知りたい」と思っている人もいるかもしれません。 結論、脳幹出血は動脈硬化が原因で起こるケースが多く、再発もしやすい病気です。しかし原因を知れば、適切な予防法を取れます。 本記事では、脳幹出血の原因や予防法について、詳しく解説します。記事を最後まで読めば、脳幹出血にならない方法がわかり、病気のリスクを軽減できるでしょう。 脳幹出血とは「脳幹(中脳・橋・延髄)で起こる出血」のこと 「脳幹」は、小脳・橋(きょう)・延髄という脳の部分を合わせた部位です。「呼吸」「体温調節」「ホルモン分泌」など、人間が生きるために重要な働きをしています。 脳幹出血によってそれらの機能が損なわれると命に関わることもあるため、あらかじめ原因や予防法に関する知識をつけておくことが大切です。 本章では、脳幹の働きや脳幹出血について説明します。脳幹出血の治療や生存率については、以下の記事も参考にしてください。 脳幹は生命の維持に不可欠な働きをしている 「脳幹出血」とは、脳出血の一種です。具体的には、脳のうち「脳幹」という部位の血管が破れて出血することを指します。 脳幹は、「小脳」「橋(きょう)」「延髄」からできており、心臓や呼吸などの生命維持に大きく関わります。各部位の働きは以下のとおりです。 部位 働き 小脳 ・筋肉の緊張や姿勢をコントロールする ・注意・言語・感情などの精神機能をコントロールする 橋(きょう) ・中脳や大脳、延髄などをつないでいる ・呼吸調節に関係する 延髄 ・呼吸や心臓の動きをコントロールする ・咳、くしゃみ、発生、発汗などにも関係する 脳内で出血すると血管からの酸素や栄養が供給されなくなり、脳はダメージを受けます。 また、脳内に血液があふれることで周りの脳細胞が圧迫される、出血により脳内の圧力が高まるなども、脳がダメージを受ける原因です。 出血により脳幹がダメージを受けると、意識不明の重体や寝たきり、ひどい場合は死に至るケースも珍しくありません。 脳幹出血は再発しやすい 脳幹出血を含む「脳出血」は、再発しやすい病気です。 具体的には、脳出血を10年以内に繰り返す確率(10年再発率)は55.6%というデータがあります。つまり、2人に1人の割合で、10年以内に脳出血の再発が起きています。(文献1) 出血によってダメージを受けた脳は、通常の医療技術による回復・修復は困難です。 また、脳出血を再発すると、初回はダメージを受けなかった部分もダメージを受けます。よって再出血時はさらに広い範囲の脳がダメージを受け、重い後遺症が出るケースもあります。 脳幹出血の主な原因は「高血圧による動脈硬化」 脳幹出血の主な原因は、「高血圧による動脈硬化」です。ただし、血圧に問題の無い人の場合、血管の奇形が原因のケースもあります。 本章の内容をもとに、脳幹出血の正しい基礎知識を身につけておきましょう。 脳幹出血後の回復については、以下の記事を参考にしてください。 動脈硬化は高血圧が原因で起こることが多い 脳幹出血を起こす「動脈硬化」は、主に高血圧によって起こると考えられています。 高血圧が動脈硬化を起こして脳幹出血に至る流れは以下のとおりです。 高血圧によって脳の血管に圧力がかかり続ける 動脈硬化が進み、血管がもろくなる 脳の血管が破れて出血が起こる 高血圧は「塩分の取りすぎ」「食生活の乱れ」「ストレス」「喫煙習慣」など、複数の要因が重なって起きるといわれています。(文献2) 「血圧が高くても体調は問題ない」と放置すると、脳出血につながる恐れもあるため、高血圧と診断された場合は医師の指導のもと早めに治療しましょう。 血管奇形が原因のケースもある 脳出血は、「脳動静脈奇形」という脳の血管奇形によって起こるケースもあります。脳動静脈奇形とは、脳の動脈と静脈をつなげる部分が「ナイダス」と呼ばれるとぐろを巻いたような固まり(奇形)になっている病気です。 奇形の部分は正常な血管よりも壁が薄いため破れやすく、20〜40代の若い人が脳出血になる原因の一つといわれています。 なお、奇形自体が痛みなどの症状を起こすことは、ほとんどありません。「脳出血」「頭痛」「てんかん発作」などの病気が出て見つかる、偶然受けた脳の検査で見つかるなどのケースが一般的です。 【今すぐできる】脳幹出血を予防する4つの方法 今すぐできる脳幹出血の予防方法は、以下の4つです。 減塩する 大量飲酒・喫煙を控える 肥満を解消する ストレスを溜めない 本章の内容をもとに脳幹出血の原因となる「高血圧」「動脈硬化」などのリスクを減らし、脳幹出血を予防しましょう。 減塩する 脳幹出血の大きな原因である「高血圧」の予防には「減塩」が有効です。 食塩摂取量の目標は、「健康日本21(第三次)」の目標値では7.0g未満、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の目標量では、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされています。(文献3)(文献4) 日本人は、食生活のなかで食塩の量が多くなりがちです。 以下に、厚生労働省が発信している減塩のコツを紹介します。ぜひ参考にして、毎日の食生活を見直してみてください。 1.漬物は控える 自家製浅漬けにして少量に 2.麺類の汁は残す 全部残せば2~3gの減塩になる 3.新鮮な食材を用いる 食材の持ち味で薄味の調理 4.具だくさんの味噌汁にする 同じ味付けで薄味の調理 5.むやみに調味料を使わない 味付けを確かめて使う 6.低ナトリウムの調味料を使う 酢、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシングを上手に使う 7.香辛料、香味野菜や果物の酸味を利用する こしょう、七味、ショウガ、柑橘類の酸味を組み合わせる 8.外食や加工食品を控える 目に見えない食塩が多く含まれている。塩干物にも注意する 引用: e-ヘルスネット(厚生労働省) 大量飲酒・喫煙を控える 大量の飲酒は、脳出血はもちろんのこと、脳梗塞やくも膜下出血のリスクも上昇させます。お酒の飲みすぎは避けましょう。 1日あたりの飲酒量の目安を、以下に紹介します。 ビール:中瓶1本500ml 清酒:1合180ml ウイスキー・ブランデー:ダブル60ml また、たばこの煙に含まれる有害物質は動脈硬化を起こし、脳出血をはじめとする脳の病気のリスクを高めます。(文献5) たとえば、たばこを吸う人は吸わない人に比べ、男性で1.3倍、女性で2.0倍脳卒中(脳出血・クモ膜下出血・脳梗塞)になりやすいというデータもあります。 お酒の飲みすぎとたばこは、どちらも控えるようにしましょう。 肥満を解消する 肥満の解消も、高血圧に伴なう動脈硬化や脳出血のリスク軽減に役立ちます。 具体的には以下の内容を試してみてください。 週に2~3回、20~30分程度の運動を行う(ウォーキング・息が上がらない程度のジョギング・サイクリング・水泳など) バランスの良い食生活を心がけ、高脂肪、高炭水化物の食事は避ける ストレスを溜めない 過剰なストレスは血管の収縮を引き起こし、血圧を上昇させるため、脳出血の原因となります。 また、ストレスを溜めると、高血圧の原因になる暴飲暴食や過剰な飲酒、喫煙などにつながり、脳出血の間接的な原因になりかねません。(文献6) ストレスを溜めないよう「生活習慣を整える」「困ったことがあれば誰かに相談する」などを、心がけてみてください。 脳出血とストレスの関係については、以下の記事も参考にしてください。 まとめ|生活習慣を見直して脳幹出血を未然に防ごう 本記事では、脳幹出血の概要や主な原因、予防策などを詳しく解説しました。 「脳幹出血」は脳出血の一種で、呼吸や言語機能に関連する「脳幹」から出血する病気です。最大のリスクは高血圧による動脈硬化ですが、血管の奇形によって起こる人もいます。 脳幹出血を防ぐには、高血圧にならないことが重要です。日頃から食生活や運動などに気を配ると良いでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療(幹細胞治療)による脳卒中の再生医療を実施しています。通常の保険診療では難しい壊れた脳細胞の再生も、再生医療なら可能です。 当院ではメール相談やオンラインカウンセリングも実施していますので、お気軽にお問い合わせください。 この記事が脳幹出血の基本的な知識を知るのに役立ち、効果的に予防できるきっかけになれば嬉しく思います。 脳幹出血についてよくある質問 脳幹出血を起こしても助かりますか。 少しでも早く治療を受けることが大切です。脳幹出血は、その部位の役割や特徴から、生命に直結する危険性もある病気です。ただ、早く治療を開始できれば、命が助かる可能性ももちろんあります。 日頃から、高血圧予防などの生活習慣改善に努め、健康診断などを受けて体調管理をしておくことがおすすめです。 脳幹出血は再発するとどうなりますか。 脳幹出血が再発すると、さらに重い後遺症が出ると考えられます。今までダメージが最小限に抑えられていた部分もダメージを受けると、より言語や呼吸の機能が低下するからです。場合によっては、命に関わるケースもあります。 再発を防ぐために、脳幹出血になったことのある人は、医師の指示にしたがってしっかりと血圧のコントロールを行いましょう。 参考文献一覧 文献1 Ten year recurrence after first ever stroke in a Japanese community: the Hisayama study J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2005 Mar;76(3):368-72. doi: 10.1136/jnnp.2004.038166. 文献2 e-ヘルスネット(厚生労働省) 文献3 健康日本 21(第三次)推進のための説明資料 厚生労働省 文献4 日本人の食事摂取基準(2020 年版)厚生労働省 文献5 男女別、喫煙と脳卒中病型別発症との関係について 国立がん研究センター 文献6 舛形尚 ほか.高血圧外来患者の精神的ストレスと血圧コントロールの関係.日本病院総合診療医学会雑誌 2017:12(2)p13-17
2023.06.29 -
- 頭部
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もやもや病がまねく脳梗塞のリスク要因と予防策について解説します もやもや病は脳血管の異常により起こる、原因不明の難病です。 もやもや病は脳梗塞をまねく可能性があり、その先の社会生活に大きな影響を及ぼすことがあります。しかし、上手にリスクに対応できれば、脳梗塞を起こす可能性を少なくすることができます。 この記事では、もやもや病がまねく脳梗塞のリスク因子と、予防策を中心に解説をしていきます。 もやもや病ってどんな病気? もやもや病は、一時的に脳内に充分な血液がめぐらなくなる「脳虚血発作」をきたします。 発作時には、麻痺や手足のしびれを起こしたり、うまく言葉がしゃべられなくなったりします。病気が進行すると、てんかんを起こしたり、脳梗塞や脳出血・くも膜下出血を発症したりすることもあるのです。 脳虚血発作は、脳梗塞の前触れともいえる状態です。 この発作は、生活上の注意で避けられることも多くあります。ひとたび脳梗塞が起こると、梗塞部の脳細胞は死んでしまいます。結果、麻痺・言葉の障害や、記憶・注意・感情などに関連する高次脳機能障害といった後遺症をもたらします。 子供と大人での発症の違い もやもや病の発症年齢には、10歳くらいまでと、30〜40歳代の2つの山があります。 子供の場合は、脳虚血の症状で発症することが多いです。 一方、大人では脳虚血の他に、細い血管が破れる出血で発症することもあります。 最近では、自覚症状がないまま、人間ドックなどで、もやもや病が見つかる人も増えています。長年の頭痛の原因が、もやもや病であった、ということもあるようです。 なお、この病気は法律の定める指定難病の一つです。画像検査で診断が確定したうえで、一定以上の重症度と考えられる方には、申請により医療費の補助がおります。 もやもや病による脳梗塞を防ぐには? もやもや病による脳梗塞を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。大切なのは、前ぶれである脳虚血発作を繰り返さないようにすることです。 〜子供の場合〜 子供の場合、脳虚血発作の多くは過呼吸、つまり激しく息を吸ったり吐いたりすることで起こります。過呼吸により二酸化炭素が体から出ていくと、脳内の血管が縮みます。そうなると、脳の血のめぐりが悪くなり、発作を起こすのです。 脳虚血発作を繰り返している方は、日常生活では、この過呼吸状態を避ける必要があります。 具体的には、次のようなことが挙げられます。 過呼吸につながる行動 激しく泣く 大声で笑う 息が切れるような運動をする 笛やハーモニカ、鍵盤ハーモニカなどを演奏する 大きな声で応援をする 熱いものを「ふーふー」と冷ます こういったことを制限すると、保育園・幼稚園や学校での生活に大きく影響してしまうことになります。保護者や学校の先生など、周囲の大人の理解と協力が必要になります。 また、脱水も脳の血のめぐりが悪くなってしまう原因になります。嘔吐や下痢・高い熱の時は、こまめに水分をとることを心がけてください。暑くなる季節には、熱中症を予防することも重要です。 〜大人の場合〜 大人の患者さんでも、発作を引き起こす行動があれば回避する必要があります。 加えて、脳梗塞の一般的なリスク管理が必要です。高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病をお持ちの方は、しっかり治療を受けてください。肥満であれば体重を減らす必要があります。タバコを吸っている方は禁煙をしてください。アルコールの飲み過ぎは、脱水につながるので気をつけましょう。 脳梗塞のリスク管理 生活習慣の見直し 体重の管理 禁煙する アルコールを飲みすぎない 患者さんの状況によっては、血液をさらさらにするお薬を処方されることがあります。発作を繰り返す場合には、脳の血液の流れを改善するための手術を考えます。ひとりひとり、必要な治療は異なります。どのような治療をどのようなタイミングで行うのか、担当の医師ともよく話し合いましょう。 もやもや病と脳梗塞の関係についてよくあるQ & A Q, 発作が起こったときはどすればよいですか? A, まずは、状況を把握することが重要です。麻痺やしびれなどの症状を確かめましょう。そして、ゆっくり息ができるように休みましょう。 落ち着いたら、どのような状況でどのような発作が起こったのか確認しておくことも大切です。いつもより麻痺・しびれなどが長く続く、意識の状態が悪いなど、「なにかおかしい」と感じた場合は、医療機関を受診しましょう。 Q, この病気の治療や経過の見通しは? A, 脳梗塞・脳出血などを起こしてしまうと、たとえ命にかかわらなかったとしても、運動や言葉の障害や、記憶障害などの高次脳機能障害を残してしまうことがあります。そうなると、社会生活に大きな影響を及ぼしてしまう可能性があります。 一方で、適切な管理・治療を受けた方の多くは、最終的には日常生活の制限なく安定して過ごすことができます。そのためにも、定期的に通院し、必要な治療のタイミングを逃さないことが大切です。 まとめ・もやもや病がまねく脳梗塞は、リスクの要因(因子)と予防方法を知って治療のタイミングを逃さないことが大切! 「脳の病気」「難病」といわれると、とても心配になると思います。しかし、適切なタイミングで適切な治療を受けることで、最終的には病気のない人とほぼ変わらない生活を送ることができるようになった患者さんが多くいらっしゃいます。生活上の注意点を守りながらきちんと通院し、担当医と治療方針を相談しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 〈参考文献〉 冨永ら.もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)診断・治療ガイドライン(改訂版).脳卒中の外科 46 (1), 1-24, 2018 難病情報センター.病気の解説(一般利用者向け) もやもや病(指定難病22) https://www.nanbyou.or.jp/entry/47 難病情報センター.診断・治療指針(医療従事者向け) もやもや病(指定難病22) https://www.nanbyou.or.jp/entry/209 ▼モヤモヤ病の情報:以下もご覧になりませんか もやもや病の初期症状かもしれません|特徴やサインを知って早期発見を!
2023.06.26 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
もやもや病を大きくわけると「虚血型」と「出血型」の2種類があります。発症した種類によって初期症状は異なります。 本記事では「虚血型」と「出血型」の違いを明確にした上で、それぞれの初期症状を詳しく解説します。 もやもや病は脳梗塞や脳出血、くも膜下出血を発症する可能性がある怖い病気です。この記事を参考にして初期症状のサインを知り、もやもや病の早期治療につなげていきましょう。 もやもや病の初期症状サイン【チェックリストあり】 もやもや病の初期症状を見る前に、もやもや病の特徴を理解しましょう。 もやもや病とは、脳に血液を送るための血管である「内頚動脈」が、徐々に細くなったり、詰まったりして、脳の血液不足を引き起こす原因不明の病気です。 不足した血液を補うために、細い血管が脳内に異常に発達していきます。血管を造影すると、細い血管が「もやもやした煙」に見えることから「もやもや病」と名付けられました。 もやもや病には、血管が狭くなるのが原因で血液不足を起こす「虚血型」と、増殖した血管が破裂して出血する「出血型」の2種類があります。 それぞれの初期症状のサインを見ていきましょう。 虚血型の場合 虚血型は、脳内の血管が細くなったり、詰まったりして血液不足を起こしている状態です。虚血型の場合、以下のような初期症状が現れます。 頭痛 けいれん 意識障害 言語障害 手足の麻痺 手足のしびれ 虚血型は、血管の狭窄が進行すると脳の組織への血流が完全に途絶え、脳梗塞を発症するリスクがあります。重症化を防ぐためには、早期発見が重要です。疑われる初期症状が見られたら、早めに病院を受診しましょう。 また、血流不足は脳の前頭葉にダメージを与え、高次脳機能障害を引き起こす可能性もあります。前頭葉には感情をコントロールする働きがあるため、高次脳機能障害を発症すれば、性格変化の症状が現れるケースもあります。 もやもや病から発症する高機能障害については以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はあわせてご覧ください。 出血型の場合 出血型は、細かい血管の増加が影響して出血を起こす状態です。出血すると、脳出血、くも膜下出血などを引き起こします。初期症状は、出血の種類によって異なります。 たとえば、くも膜下出血の場合の初期症状は以下のとおりです。 頭痛 めまい 吐き気 視力低下 意識障害 脳出血やくも膜下出血は、運動や感覚の麻痺といった後遺症を残す可能性がある病気です。症状が深刻化する前に初期症状が見られたら、速やかに医療機関を受診しましょう。 くも膜下出血や脳出血を含む脳卒中の治療法の1つに「再生医療」があります。身体のしびれや麻痺、言語障害といった後遺症も治療対象です。 期待できる治療効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 もやもや病の初期症状が現れたら早期に病院を受診する 血管が詰まって脳梗塞を起こした場合や、増加した血管から出血を起こした場合は、手足の麻痺や、言語の障害、脳機能障害などの後遺症が出ることもあります。そのため、早期に診断して専門の病院で治療を受けることが大切です。 以下の記事では、もやもや病が引き起こす脳梗塞のリスクについて解説しています。予防策も紹介しているので、詳細が気になる方は参考にしてみてください。 適切な治療や管理を受けている場合には、約7割程度の方は症状的に安定して生活を送っていると推計されています。 脳の血管の狭窄は、最初の診断時と同じ状態が何年も変わらない方もいれば、徐々に進行していく方もいるといわれています。従って、定期的にMRIなどによる画像検査が必要です。 もやもや病の治療方法 もやもや病の治療には「内科的治療」と「外科的治療」があります。 「内科的治療」では、詰まりかけている血管の血液の流れを改善する際に、抗血小板剤(血液をサラサラにする薬)、出血の予防を図るときは、血圧・脳圧をコントロールする薬を投与します。ただし、病院によって使用する薬が異なる可能性があるので、内科的治療を進める際は、事前に担当医に確認しましょう。 内科的治療を実施しても効果が不十分な場合や、根本的治療を目指す場合は、外科的治療を検討します。 もやもや病における「外科的治療」は、血行再建術(バイパス手術)です。バイパス手術は主に、頭皮の血管と脳表面の血管を直接つなぐ「直接再建術」と、血流が多い側頭筋や骨膜を脳の表面に置いて接着する「間接血行再建術」の2種類があります。 以下の記事では、もやもや病の手術についてさらに詳しく解説しています。入院期間や手術の成功率なども紹介しているので、気になる方はあわせてご覧ください。 まとめ|もやもや病の初期症状を感じたら早急に専門家の受診しよう もやもや病の初期症状は、明らかに違和感を感じるような症状もあれば、風邪の症状と混同してしまうような症状もあります。 もやもや病は、脳梗塞やくも膜下出血、脳出血といった脳卒中を引き起こす可能性のある病気です。なるべく初期症状の段階で病院を受診し、早期治療するのが望ましいといえます。 「なんかいつもの体調不良と違う…」「こんな症状初めて!」などの違和感を覚えたら、もやもや病の可能性も視野に入れて病院の受診を検討しましょう。 もやもや病から発症する脳卒中の治療には「再生医療」が効果的です。 再生医療は人間の自然治癒力を活用した最先端の医療技術です。幹細胞の修復力を利用して、損傷した脳細胞の機能回復を促進します。 脳卒中の後遺症も治療対象なので、具体的な治療法や効果が知りたい方は再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 もやもや病に関するよくある質問 最後にもやもや病に関するよくある質問と回答をまとめます。 もやもや病で手術を受けた方がいい場合は? 内科的治療を試しても効果が見られない場合や、現時点で脳梗塞や脳出血の発症リスクが高いと診断された場合は手術を受けたほうが良いといえます。手術は脳梗塞や脳出血の予防にもつながります。 子どもが発症した場合、年齢が低いほど、脳梗塞や脳出血などの重篤な症状を出しやすいとされているため、診断がついた時点で手術を検討するのが良いでしょう。 もやもや病が遺伝する可能性はありますか? 現在でも詳細な原因は不明であり、必ずしも遺伝する病気というわけではありません。 最近の研究では、もやもや病に関係した遺伝子(RNF213遺伝子)が発見されていますが、病気になる感受性が高くなる「感受性遺伝子」であって、病気の「原因遺伝子」ではないとされています。この遺伝子は、もやもや病がない一般の方にもみられる遺伝子ですので明らかな原因とは言えません。 家族内でもやもや病がみられる家族性のもやもや病は10〜20%であり、遺伝子以外に他のなんらかの要因が加わることで発症するのではないかと推測されています。(文献1) 以下の記事では、もやもや病と遺伝の関係性について詳しく解説しています。具体的な情報が知りたい方は、参考にしてみてください。 もやもや病の初期症状は子どもと大人で違いますか? 子どもと大人は同じ初期症状もありますが、発症しやすいもやもや病の種類が異なるため、症状に違いが見られる場合があります。 たとえば、子どもは虚血型のもやもや病を発症しやすいと言われており、虚血型の初期症状は手足のしびれや麻痺、言語障害などです。 大人は、出血型のもやもや病を発症しやすく、初期症状では頭痛やめまい、意識障害などを生じます。 ただし、子ども・大人どちらとも「虚血型」と「出血型」を発症する可能性はあるので、年齢に関わらず初期症状の知識を広く理解しておきましょう。 以下の記事では、もやもや病における大人と子どもの違いをまとめています。違いを見分ける上での注意点も解説しているので、詳細が気になる方はあわせてご覧ください。 【参考文献】 文献1:https://www.nanbyou.or.jp/entry/209
2023.06.22 -
- 頭部
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もやもや病の手術後にどのくらいで仕事復帰ができるのか、そもそも仕事ができるのか気になっていませんか。 もやもや病のような脳の手術は、長く休まなければいけないのか、以前と同じように仕事ができるのかなど不安は尽きないかもしれません。 結論、もやもや病の手術後は、個人差はあるものの「2週間以上」は静養が必要です。麻痺や感覚障害などの後遺症がある場合は、リハビリを実施し、日常生活・仕事への復帰を目指します。 本記事では、もやもや病の手術後の仕事復帰について詳しく解説します。この記事を参考に、仕事復帰までの期間を把握して今後に備えましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療によるもやもや病をはじめとする脳卒中の後遺症改善・再発予防の治療を行っております。 「メール相談」または「オンラインカウンセリング」にて無料相談を受け付け中です。気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 もやもや病の手術後の仕事復帰までは2週間以上かかる可能性がある もやもや病の手術後は個人差があるものの、静養が必要なため、仕事復帰まで2週間以上かかる可能性があります。 もやもや病は、脳の主要な血管(内頸動脈終末部)が徐々に狭くなり、その部分を補うように煙のようなもやもやした細い血管が発達する病気です。 新しく形成された血管は弱いため、血管の壁が破れて脳出血や脳虚血に陥るリスクがあります。脳卒中に発展するリスクがあるため、十分な静養や入院期間が必要である旨を職場に伝えておくと安心でしょう。 しかし、重篤な症状を発症する前に、バイパス手術などの治療を行うことができれば、後遺症なく社会復帰できる可能性が高い疾患です。 ただし、退院後も定期的な診察と検査は欠かせないため、医師の指示に従い受診しましょう。 もやもや病の手術については、以下のコラムで詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。 仕事復帰に影響するもやもや病の後遺症5つ もやもや病の術後には、以下の後遺症があらわれる可能性があります。 麻痺 感覚障害 構音(こうおん)障害 嚥下(えんげ)障害 高次脳機能障害 これらの症状は、仕事復帰に影響する可能性があります。本章で後遺症を把握して今後に備えましょう。 麻痺 もやもや病で多いのが、片側の手足が麻痺して動かなくなる症状です。 麻痺の度合いは出血の大きさによって異なります。全く動かない場合もあれば、少しなら動かせる場合もあります。 リハビリで改善は認められるものの、何らかの障害が残り、肉体労働が困難になるリスクも考えられるでしょう。 感覚障害(触感が鈍くなる) 触った感覚が鈍くなる「感覚障害」も後遺症のひとつです。 物に触れたときに分かる温度や硬さ、痛みなどが感じにくくなる症状です。重度の場合は火傷やケガを負っても気づかないことがあるため、業務内容に制限がかかる場合があります。 また、鈍くなるだけではなく、反対に過敏になりすぎるケースもあります。 構音障害(話すのが困難) 口の中または周辺が麻痺して呂律(ろれつ)が回りにくくなる「構音(こうおん)障害」も後遺症としてあげられます。 構音障害になると、文字の読み書きは問題なく行えるものの言葉が不明瞭で鼻にかかったような話し方になる場合が多いです。話すのが困難になるため、対人業務が難しくなるケースがあります。 嚥下障害(飲み込みにくくなる) もやもや病の急性期では、食べ物や飲み物を飲み込みにくくなる「嚥下(えんげ)障害」が多く見られます。 出血の部位によっては完全な回復が難しいケースがあり、口から食事を摂取できなくなる場合も考えられるでしょう。 また、飲食物が気道に入ってしまい咳が出る「誤嚥性肺炎」が併発する懸念もあります。 そのため、安全に飲み込めるよう食べ物を人肌の温度まで冷ましたり、ペースト状にしたりするなどの工夫が必要です。 思考力低下・注意力散漫 「高次脳機能障害」は、脳で複雑な情報を処理する部位が損傷して記憶力や注意力に問題が起こる後遺症です。 感情のコントロールが難しくなったり、言葉が出にくくなったりすることで社会生活に支障をきたす場合もあります。 高次機能障害によりできないことをリハビリでカバーしたり、業務内容を調整する必要が出てくるでしょう。 もやもや病による高次機能障害について詳しく知りたい方は、以下のコラムを参考にしてください。 もやもや病手術後に仕事復帰するときのポイント もやもや病の手術後に仕事復帰するときのポイントは、以下の2つです。 後遺症がつらい業務は避ける 症状について職場に理解をもらう 退院後に仕事をする際は、後遺症とうまく付き合う必要があります。本章を参考に術後も安心して仕事ができるような工夫をしましょう。 後遺症がつらい業務内容は避ける 後遺症によっては業務内容が限られます。後遺症で業務に支障が出る仕事は極力控えるようにしましょう。 つらい思いをして無理に業務を行った場合、体調を崩したり職場の人間関係が悪化したりするリスクが考えられます。 以下を例に、後遺症の種類に応じて業務内容を検討しましょう。 後遺症 避けるべき業務の例 運動麻痺 肉体労働 言語障害 電話応対 構音障害 接客業 自分の症状に合わせて職場と相談し、無理なくても働ける環境を整えましょう。 もやもや病の症状を職場に理解をもらう もやもや病の手術後、仕事の支障をきたす後遺症がある場合は、業務内容が制限されていることを職場へ相談することが大切です。 つらい症状を共有すると、業務内容や負担の調整をしてもらえる可能性があります。 ただし、職場の理解が得られなかったり、業務の継続が難しかったりする場合は、休職や転職も視野に入れましょう。 もやもや病手術後に気を付けるべき日常生活のポイント もやもや病の術後は以下の点に気を付けるべき日常生活のポイントは、以下の3つです。 1.リハビリは正しく行う 2.処方薬は適切に服用する 3.定期的に診察や検査を受ける 本章を参考に、日常生活の注意点を把握して再発防止や症状の改善を意識しましょう。 リハビリは正しく行う 医師から指示があった場合は、きちんとリハビリを行いましょう。 もやもや病の術後に後遺症が残っている場合は、医師の判断でリハビリを重点的に置いて治療が進められます。 後遺症の種類に応じて、運動療法や言語療法、作業療法などが選ばれます。 個人差はあるものの正しいリハビリを行うことで、後遺症の改善も期待できるでしょう。 処方薬は適切に服用する 脳の血流が不足している場合は、血をサラサラにする抗血小板薬を服用して血行が遮断されないようにします。 根本的な治療にはならないものの、脳卒中の防止になるため薬が処方された際はきちんと服用しましょう。 また、けいれんが見られる場合は抗けいれん薬が処方されることもあります。 定期的に診察や検査を受ける もやもや病の治療では手術の効果を見るために、脳血管の撮影が行われます。 検査の頻度には個人差がありますが、指示があれば必ず受けましょう。 もやもや病の検査ではMRIやCTで脳の画像を撮影されることが多く、自覚症状がなくても異変を確認できます。 術後に無症状で安定している状態でも、半年〜1年の頻度で検査することが大切です。 まとめ|もやもや病の手術後はしっかり休んで仕事復帰に備えましょう もやもや病は、症状や後遺症が個々に異なる希少な疾患です。 手術で後遺症なく社会復帰できる場合もあれば、何かしらの症状が残り介助が必要な場合もあります。回復を焦らずしっかり休むことが、社会復帰につながるでしょう。 本記事がご参考になれば幸いです。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療によるもやもや病をはじめとする脳卒中の後遺症改善・再発予防の治療を行っております。 「メール相談」または「オンラインカウンセリング」にて無料相談を受け付け中です。気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 もやもや病についてよくある質問 もやもや病の手術の術後、運動はできますか? 術後の状態が安定していれば、その後の運動制限は少ないでしょう。 ただし、退院後すぐの激しい運動は控えることをおすすめします。筋トレのような本格的に運動を行う際は、必ず事前に医師の許可を得てください。 もやもや病の入院期間はどのくらいですか? もやもや病の入院期間は、2〜3週間程度が目安です。 医師の判断により変動するため、術前に確認しておくと術後の生活が計画しやすいため安心でしょう。 また、退院後も定期的な受診や検査が必要な場合がほとんどです。医師の指示に従い忘れずに定期的な通院をしましょう。
2023.06.19 -
- 頭部
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「もやもや病の手術は難易度が高いって本当?」「成功率はどのくらい?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 もやもや病は頭の中で血管が詰まる病気で、手術が必要な場合もあります。 しかし脳の手術は難易度やリスクが高いと感じ、不安になるかもしれません。 結論からいえば、もやもや病の手術の難易度は高いといえます。血管をつなぐ繊細な作業が求められ、4~6時間に及ぶ手術になることもあるためです。 この記事では、もやもや病の手術方法の種類や難易度、成功率などを解説しています。もやもや病の手術について理解を深め、治療に前向きに臨むための参考資料になれば幸いです。 また、当院「リペアセルクリニック」では脳梗塞や脳出血の治療も行っております。 もやもや病に関して気になる症状がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 もやもや病の手術の難易度は高め もやもや病の手術は、脳の血流を改善するために行われるもので、難易度は高めといえます。 繊細な血管を扱う技術が求められ、一般的な手術と比べて以下のとおり難易度が高いのが特徴です。 本章では、手術の難易度が高いとされる理由や背景を詳しく解説いたします。 血管外科医の高度な技術が必要 もやもや病の手術には、血管外科医の高度な技術が欠かせません。 脳の血管は非常に細く、複雑に入り組んでいます。 もやもや病の手術では、顕微鏡を使用しながらミリ単位の血管を縫い合わせる繊細な作業が必要です。そのため、高度な技術と豊富な経験を持つ医師の執刀が求められます。 したがって、もやもや病の手術は難易度が高いといえるでしょう。 手術時間は数時間に及ぶ もやもや病の手術は、脳の血管を慎重につなぐ作業が続くため、通常4〜6時間ほどかかり、高い集中力が求められます。 とくに、血流を確保する繊細な工程では、一瞬の判断ミスが大きな影響を与えかねません。 そのため、熟練した技術と高い集中力が不可欠です。 難易度の高い手術ですが、具体的な時間など事前に理解を深めておくと不安を軽減できるでしょう。(文献1) もやもや病の手術方法は主に2種類ある もやもや病の手術には「直接バイパス手術」と「間接バイパス手術」の2種類があります。 どちらも脳の血流を改善する目的ですが、アプローチや効果に違いがあります。それぞれの特徴は以下のとおりです。 手術方法 特徴 主なメリット 直接バイパス手術 血管を直接接続する方法 即効性が高い 間接バイパス手術 血管の自然成長を促す方法 身体への負担が少ない それぞれの手術について詳しく解説します。 直接バイパス手術 直接バイパス手術は、頭皮や首の血管を脳の血管に接続する方法です。 この手術は即効性が高く、術後すぐに血流改善が期待できます。 一方で、手術には高度な技術が求められ、執刀医の経験が成功率に大きく影響します。 また、術後の合併症リスクを軽減するため、精密検査や丁寧な経過観察が欠かせません。 間接バイパス手術 間接バイパス手術は、頭皮や筋肉を脳表面に移植して血流改善を促す方法です。 新しい血管の成長を利用するため、身体への負担が少ないのが特徴です。 ただし、直接バイパス手術ほど即効性はなく、効果が現れるまでに時間を要する場合があります。 とくに子どもや血管が細い患者に適しており、長期的な観察と適切なリハビリが重要です。(文献2) また、もやもや病の詳しい症状や治療法については以下の記事でも詳細に解説しているので、参考にしていただけると幸いです。 もやもや病手術の成功率とリスク もやもや病の手術は成功率が高い一方で、いくつかのリスクも伴います。 適切な手術を受けることで8割以上の成功が見込めますが、合併症や少数の脳出血のリスクも考慮する必要があります。 ここでは、成功率と注意すべきリスクについて詳しく解説します。 適切な手術によって成功率は8割程度 もやもや病の手術は、適切に行われれば成功率は8割程度とされています。手術を行うことで、血流が改善し、症状の進行を抑えられる点が大きなメリットです。 しかし、成功率は手術を担当する医師の技術や施設の設備によって異なります。 経験豊富な医師の執刀によって、さらに高い成果が期待できるでしょう。 手術前には十分な説明を受け、不安を解消した上で治療に臨むことが重要です。 合併症のリスクがある もやもや病の手術には、術後の感染症や血管の閉塞など、合併症のリスクが伴います。 これらのリスクを減らすためには、術前の精密検査や術後の経過観察が欠かせません。また、体調を整えて手術に臨むことも大切です。 医師と密に連携し、不安や疑問をしっかり解消しておきましょう。 脳出血を起こす少数事例もあり もやもや病の手術では、少数ですが脳出血の事例も報告されています。血流の変化により脳の負担が一時的に増える可能性があるためです。 ただし、こうしたリスクは経験豊富な医師による適切な対応で抑えられます。また、術後は医師の指導に従い、慎重にリハビリを進めていきましょう。 もやもや病が招くリスクについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。 もやもや病の入院期間や予後・寿命について もやもや病の手術後の入院期間は2〜3週間で、リハビリを含めて社会復帰までには1〜2カ月ほどかかるのが一般的です。 ただし、入院期間や回復までの時間には個人差があります。 本章では、入院期間から社会復帰、寿命への影響について詳しく解説します。 入院期間は2〜3週間が一般的 もやもや病の手術後、入院期間は2〜3週間程度が目安です。 術後は脳の血流状態を慎重に観察し、退院後も合併症の兆候がないか定期的な検査を行うことで、寿命へのリスクを最小限に抑えられます。 術前に入院期間を確認し、術後の生活を計画しておきましょう。 社会復帰には1〜2カ月が目安 術後の経過や重症度によって差はありますが、もやもや病の手術後、社会復帰するまでには、通常1〜2カ月程度かかるとされています。 手術後はリハビリを経て、日常生活に戻ることを目指します。 デスクワークや軽作業は比較的早く再開できますが、体力が必要な作業はできるだけ避けたほうが良いでしょう。 医師やリハビリスタッフのアドバイスを受けながら、無理のない範囲で復帰を進めることが大切です。 術後の回復状況に応じて、焦らず段階的に日常生活を取り戻していきましょう。 完全回復には半年以上かかる場合も もやもや病からの完全回復には半年以上かかる場合があるため、その間のケアが重要です。(文献3) 手術で血流が改善されることで、もやもや病による寿命へのリスクは大幅に軽減されます。 ただし、重症の場合や術後の合併症がある場合は、引き続き注意が必要です。 健康寿命を延ばすためには、適切なリハビリと生活習慣の改善が欠かせません。 まとめ|もやもや病の手術は難易度とリスクも理解しておこう この記事では、もやもや病の手術に関する難易度や成功率、入院期間について解説しました。 もやもや病の手術は、脳の血管を扱う繊細な治療であり、難易度は高めといえます。手術を受けるかどうかは、担当医と十分に相談し、納得できる選択を心がけましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では脳卒中の再生医療も行っております。症状に不安がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 もやもや病の手術難易度に関するよくある質問 もやもや病は寿命に影響する? 適切な治療を受ければ、寿命への影響を最小限に抑えられます。ただし、放置すると脳卒中や血流障害が進行し、命の危険が高まる可能性があります。 手術によって血流が改善されれば、日常生活への支障が減り、健康寿命が延びるケースも多いでしょう。 また、術後も医師の指導に従い、定期的な検診を受ける必要があります。 以下の記事では、もやもや病の初期症状やリスクチェックについて紹介しているので、ぜひ参考にしてください。 もやもや病の手術は何回くらい必要ですか? もやもや病の手術は、基本的に1回で終えるケースが多いです。ただし、血流改善が不十分な場合や再発リスクが高い場合は、追加の手術が検討されることもあります。 1回目の手術で血流が安定すれば、再手術の必要性は低いといえるでしょう。 もやもや病の手術後に運動はできますか? 術後のリハビリを経て、軽い運動が可能になります。ウォーキングやストレッチなどの負担が少ない運動が推奨されます。 ただし、激しい運動は脳への負担が大きいため、術後しばらくは控えるべきといえる医師やリハビリスタッフの指導に従い、段階的に運動量を増やしていきましょう。 手術に失敗して後遺症が出るリスクはありますか? 手術が成功しても、少数ですが後遺症が出るリスクはあります。代表的な例として、軽度のしびれや血管の再閉塞などが挙げられます。 これらのリスクを最小限に抑えるため、経験豊富な医師の執刀と術後の経過観察が重要です。 不安な点は手術前に医師と相談し、納得した上で治療に臨むことが大切です。 もやもや病の後遺症については以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてください。 また、当院「リペアセルクリニック」では、脳疾患の後遺症治療として、再生医療を行っております。後遺症リスクが不安な方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 参考文献一覧 文献1 J-Stage_もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)診断・治療ガイドライン(改訂版) 文献2 J-Stage_もやもや病に対する間接血行再建術後における皮質および脳溝内の FLAIR 高信号と術後一過性神経脱落症状との関連 文献3 難病情報センター_もやもや病(指定難病22)
2023.06.15 -
- 足部、その他疾患
- 足部
スポーツなどで起こりやすいとされるアキレス腱断裂は、足首を動かすことが困難になり、日常生活が大きく制限されてしまいます。 アキレス腱断裂では、保存療法と手術どちらでもリハビリが必要ですが、実際にどんなリハビリをするか気になる人もいるのではないでしょうか。 実はリハビリをすすめていく上で、必ず守らないといけない注意事項や効果的な方法があるため、実際にリハビリを進めていく際には注意が必要です。 そこで本記事では、アキレス腱断裂をした後のリハビリメニューや治療法などを詳しく解説します。アキレス腱断裂をしてその後のリハビリメニューや治療法が気になる方はぜひ最後までチェックしてください。 アキレス腱断裂でのリハビリメニューは「アキレス腱以外の部位も行う」 アキレス腱断裂をした後のリハビリで重要なポイントは以下の3つです。 治療は手術と保存療法がある どちらの場合でもアキレス腱以外の部位を怪我した直後から動かす 患部は装具を使ってゆっくりと動かしていく アキレス腱断裂の治療は、外科的にくっつける手術と自然治癒を待つ保存療法の2択ですがどちらもリハビリが欠かせません。 とくにアキレス腱以外の膝・股関節・足趾(足の指)といった部位は、怪我した直後から積極的に動かすようにしましょう。 手術・保存療法どちらの場合でも、アキレス腱に負担をかけないために、踵を挙げた状態で固定する装具を装着してリハビリを行います。 なお、当院リペアセルクリニックでは手術・保存療法のほか再生医療の提供も可能です。もし気になる方はお気軽にメール相談もしくはオンラインカウンセリングでご相談ください。 また、アキレス腱治療における再生医療については、以下の記事でも解説していますので、ぜひチェックしましょう。 アキレス腱以外のリハビリは「足首以外を弱らせないため」に大切 アキレス腱断裂後のリハビリでは、足首以外の筋力を維持するために、アキレス腱以外の膝・股関節・足趾(足の指)などを積極的に動かします。とくに問題がなければ、怪我した直後から動かしていくメニューが一般的です。 とくにアキレス腱断裂の場合、足首以外の関節を装具で固定するケースも多くあります。関節を保護しすぎて動かす量が減ると、下肢筋力が大きく低下してしまう可能性も考えられます。 社会復帰を早めるためにも、足首以外の筋力強化は積極的におこないましょう。 足首が固まらないことを優先する アキレス腱断裂では、アキレス腱の再生を促す目的で、足首を固定する期間を設けるケースがほとんどです。足首が固まってしまい可動域が制限されることが多いため、リハビリでは足首の可動域を維持することが大切です。 具体的には、装具を使ってアキレス腱に負担がかからないようにしながら体重をかける練習や、足首周囲のマッサージを積極的におこないます。 アキレス腱に負担がかからない範囲で足首のリハビリをおこなうことで、足首の可動域制限を最小限にとどめることが大切です。 アキレス腱断裂後におこなうリハビリメニュー4選【アキレス腱】 アキレス腱断裂後におこなうアキレス腱のリハビリメニューには、以下の4つがあります。 足首を反らして可動域を広げる運動 アキレス腱にかかわる下腿三頭筋(ふくらはぎ)の筋力強化運動 体重を乗せる練習 スポーツや社会復帰に向けた動作練習 これらのリハビリは、アキレス腱への負担を考慮しながら進める必要があります。痛みが出たら即中止し、無理をしないようにこころがけてください。 関節可動域運動足首を反らして可動域を広げる運動 足首の関節が固まらないように、関節可動域運動(かんせつかどういきうんどう:ROM運動)を行います。 つま先を上に持ち上げるような動き(背屈運動:はいくつうんどう)はアキレス腱が伸ばされるため、慎重に始めて再断裂を予防するのが大切です。 アキレス腱の強度が高まれば、立ってアキレス腱を伸ばすようにストレッチをして関節の動きを改善します。 Step1 自分でゆっくり動かす アキレス腱の組織が癒着しているのをはがす Step2 最初はつっぱり感があり、痛みも出やすい 優しく行うのが重要です Step3 徐々に理学療法士によるマッサージやストレッチを加えながら関節を動かす アキレス腱の柔軟性を改善します。 筋力トレーニングアキレス腱にかかわる下腿三頭筋(ふくらはぎ)の筋力強化運動 アキレス腱が十分修復されてくれば、日常の動作やスポーツに必要な筋力を戻すためのトレーニングを実施します。 まずはゴムバンドなどを使用して体重をかけない状態で負荷をかけましょう。筋力や痛みの有無に合わせて、体重をかけた状態でのトレーニングに移行します。最初は無理をせず、徐々に負荷を高めていくことが重要です。 トレーニング 1. 座って踵上げ(座位カーフレイズ)から始める ⇩ 2. 両脚で立っての踵上げ(両脚カーフレイズ) ⇩ 3. 片足で立っての踵上げ(片脚カーフレイズ) 荷重練習体重を乗せる練習 アキレス腱の修復状況に合わせて、体重をかける時期や量を調整します。体重を乗せる練習は装具を使って、アキレス腱が無理に伸ばされないようにこころがけてください。 なお、保存療法に比べ、手術療法の方が早くから体重をかけることができます。 荷重は装具を使用しながら調整します。装具については、後ほど詳しく解説します。 動作練習スポーツや社会復帰に向けた動作練習 アキレス腱の強度や筋力が十分になれば、装具を外してのウォーキングやジョギング、ランニング、ジャンプといった動作を実施していきます。 スポーツ動作は複雑な動きや強い瞬発力を必要とするため、短くても6カ月ヶ月程度の期間が必要です。 アキレス腱断裂後におこなうリハビリメニュー4選【アキレス腱以外】 アキレス腱断裂後におこなうリハビリメニューとして、以下の4つをご紹介します。 足趾の強化(タオルギャザー) 太ももの筋力強化 膝を伸ばす運動 お尻の外側の筋力強化 これらの運動は、体重がかかったときにアキレス腱の働きを補助する筋肉を鍛えるメニューです。これらのリハビリを行うことで、アキレス腱の負担軽減につながります。 いずれもアキレス腱への負担がかかりにくい運動であり、アキレス腱断裂後、早期から実施可能です。 しかし、慣れないうちは足首に力を入れてしまうこともあるかもしれません。もしリハビリの実施中に痛みを感じた場合は、無理せず中止してください。 足趾の強化(タオルギャザー) 用意するもの:フェイスタオル等やや厚手のタオル 1.裸足で立位または椅子に座り、指先でタオルをたぐり寄せる。 2.たぐり寄せたタオルを指先で元の位置に広げる。 3.左右を入れ替えて繰り返し行う。 1セット10回を1日3セット程度から開始して、余裕があれば増やします。実践する際にはタオルを引き寄せるときに指を大きく動かすことが重要です。また、足首を反らしながら指を曲げてしまう人が多いため、つま先を床につけたままおこなう意識を持ってください。 太ももの筋力強化運動 用意するもの:バスタオル(またはクッション) 1.仰向けになり、まっすぐに伸ばした膝裏に丸めたタオルを挟む。 2.膝裏でタオルを力強く押すと同時に、つま先は上に持ち上げる。(5 秒ほど) 3.左右を入れ替えて繰り返し行う。 体重がかかったときに踏ん張って体を支えてくれる太もも(大腿四頭筋)の筋力強化運動です。1セット10回で1日3セット程度を目安に進めていきましょう。 ポイントはしっかりと膝を伸ばしながら足を持ち上げることで、膝を伸ばす意識を持てば太ももの筋肉に大きく刺激が入ります。また、足首に力を入れてしまう人が多いため、足首の力は抜くようにしてください。 膝を伸ばす運動 用意するもの:背もたれのある椅子か机などつかまれるもの 1.立位で椅子の背もたれなどに摑まり、片足を後ろに引き、膝を伸ばす。 2.左右を入れ替えて繰り返し行う。 後ろに引いた足の膝を伸ばして太ももの筋肉(大腿四頭筋)に刺激を入れる運動です。1セット10回で1日3セットを目安におこないます。体重をかけることで太ももの筋肉により強い刺激が入るでしょう。 この練習をするときはアキレス腱保護のため装具を必ず装着してください。体重をかけることで痛みを感じるようであれば、無理をしないように気をつけましょう。 お尻の外側の筋力強化 1.横向きになり、上側の足をゆっくりと持ち上げ、ゆっくりと下ろす。 2.左右を入れ替えて繰り返し行う。 立ったときに骨盤を横から支えてくれるお尻の筋肉(中臀筋)を鍛える運動です。1セット10回を2〜3セットを目安におこないましょう。 ポイントとして足を上げ下ろしする角度が大切です。骨盤より前で足を上げ下ろしすると太ももの筋肉に力が入りやすいので、足を骨盤と同じ角度か少し後ろに引く気持ちで上げ下ろしするとお尻への刺激が入りやすいでしょう。 日常生活やスポーツへの復帰を早めたいなら「手術」も検討する もし早期の社会復帰・スポーツ復帰をしたいと考えているならば、手術を受けることも検討しましょう。 手術ではアキレス腱を縫合するため、再生を早められるほか、保存療法による自然治癒よりも強固に修復できるためです。 アキレス腱断裂後に早く日常生活やスポーツに復帰したい人は、主治医と相談の上、手術も視野に入れても良いかもしれません。 本章ではアキレス腱断裂後のリハビリにかかる経過を、保存療法をおこなったケースと手術をしたケースでそれぞれご紹介します。 保存療法でのリハビリスケジュール 受傷日からの日数 リハビリメニューの例 受傷〜2週間 ・体重はまったくかけてはいけない ・患部以外のトレーニングの実施 2週間〜6週間 ・足首を下に向けた状態で固定 ・床に触れる程度から体重をかけ始める ・4周目以降に全体重をかけ始める ・足首をゆっくり自分で動かす 6週間〜8週間 ・足首をストレッチする 8週間〜12週間 ・徐々に筋力トレーニングを開始 ・ゴムバンドなどを使ったトレーニングを開始 ・筋力が向上すれば座位カーフレイズ開始 ・両脚カーフレイズ、片脚カーフレイズを段階的に実施 3カ月〜4カ月 ・装具を外してウォーキングやジョギングを開始 4カ月〜6カ月 ・ランニングやジャンプ開始 6カ月〜 ・スポーツ復帰 アキレス腱断裂後、保存療法を行う場合は、受傷からアキレス腱の修復状況に合わせて、段階的にリハビリメニューを変更していきます。 アキレス腱の修復状況や痛みの程度、合併症の有無などによって、上記のメニューのようにいかない場合もあるため、都度強度の調整が重要です。 受傷直後はギプス固定をして、足首が完全に動かないようにしばらく固定をする場合もあります。あくまでもアキレス腱の修復や再断裂の予防が最優先ですので、医師や理学療法士としっかり連携をとり、リハビリを進めていくのが大切です。 手術療法でのリハビリスケジュール 受傷日からの日数 リハビリメニューの例 受傷〜4週間 ・体重はまったくかけない。 ・患部以外のトレーニングの実施 ・痛みに合わせて徐々に足首の運動を実施 ・徐々に体重をかける量を増やしながら荷重する 4週間〜6週間 ・つま先を下に向ける ・徐々に戻していき、全体重をかけていく 6週間〜8週間 ・立った状態 ・ストレッチや足首の筋力トレーニングを始める ・筋力がつけば両足カーフレイズを実施(両手支持から始める) 8週間〜3カ月 ・装具を外してのウォーキング開始 ・片脚カーフレイズで筋力を向上させる 3カ月〜5カ月 ・ジョギングやランニング ・ジャンプなどを段階的に実施 5カ月〜 ・スポーツ復帰を目指す アキレス腱断裂後、手術を行う場合は、保存療法よりも早期に体重を乗せるリハビリをはじめます。 手術療法は比較的アキレス腱の修復が早く、体重を早くかけられるようになります。そのため、保存療法よりも早く社会復帰・スポーツ復帰が可能です。 メリットは手術でアキレス腱を強固に修復でき、スポーツ復帰が早いことです。しかし、費用や手術での感染・神経損傷リスクはデメリットといえるでしょう。 なお、当院リペアセルクリニックではアキレス腱断裂に対しても再生治療に取り組んでいます。興味がある人はお気軽にメール相談もしくはオンラインカウンセリングでご相談ください。 また、アキレス腱断裂後の手術については以下の記事でも解説しています。手術を検討している人はぜひチェックしてください。 まとめ|アキレス腱断裂後のリハビリメニューは下肢全体を鍛えよう!治療法で悩んだら受診がおすすめ アキレス腱断裂後のリハビリメニューは、断裂したアキレス腱以外の部位も含めて下肢全体を鍛えるように行う必要があります。 また、アキレス腱断裂後のリハビリ内容や経過は、保存療法か手術療法によって異なります。治療方法は医師としっかり相談して、個人個人のライフスタイルに合わせて選択してください。 いずれの治療方法でも、アキレス腱の修復を待ちながら、段階的にリハビリを進めて、日常生活やスポーツに復帰することが大切です。 ちなみに、当院リペアセルクリニックではアキレス腱断裂に対しても再生医療をおこなっています。保存療法の選択肢として検討してみたい人は、お気軽にメール相談もしくはオンラインカウンセリングでご相談ください。 本記事を参考にアキレス腱断裂後のリハビリについての理解を深めて、医師や理学療法士と連携しながら回復を目指しましょう。 アキレス腱断裂についてよくある質問 アキレス腱断裂は手術が必要ですか? A:必ず手術というわけではありません。 アキレス腱断裂では必ずしも手術が必要ではなく、保存療法という選択肢もあります。しかし手術をした方がスポーツ・社会復帰が早くできるため、ライフスタイルに合わせて治療方法を選択してください。 アキレス腱断裂後はどんなリハビリをしますか? A:足首だけでなく、下肢全体で運動を進めていきます。 アキレス腱断裂後はアキレス腱に負担がかからないように、股関節や膝などを動かしていきます。アキレス腱の修復度をみながら、足首も徐々に負荷をかけていき、無理せず動かすことが重要です。なお、リハビリも手術をした方が経過が早く進みます。
2023.06.13 -
- 足部、その他疾患
- 足部
アキレス腱断裂でも手術しない再生医療(PRP)!最新治療の効果と治療法を解説 アキレス腱断裂は中高年の方によく起こる代表的なスポーツ外傷です。 仕事やスポーツへの早期復帰を希望する場合には従来は手術治療がよく選択されてきました。一方で、手術治療を選択してもケガをする前の状態まで戻るには長期間のリハビリが必要であったり、傷や感染症など手術自体の合併症などの問題がありました。 その中で、最近では最新医療である「再生医療」が注目されてきており、アキレス腱断裂でも治癒を促進する治療として「自己多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma; PRP)療法」が行われてきています。 再生医療を行うことで、手術をしない場合でも早期に仕事復帰、スポーツ復帰が可能になると期待できますし、手術の合併症のリスクも回避することができます。 この記事では、最新医療として期待されている、アキレス腱断裂に対するPRP療法での再生医療について解説していきます。 アキレス腱断裂に対するPRP治療について PRP療法は、患者さんから採血した血液から抽出した「多血小板血漿(PRP)」を患者さんの傷んでいる場所に注射する再生医療です。 PRPは、採血した血液を特殊な血液分離機器を用いて精製することで、通常の血液に比べて血小板や様々なサイトカインや成長促進因子を含んでいることがわかっています。 再生医療と聞くと、「自分の細胞を培養して投与する複雑な治療?」と想像されるかもしれませんが、PRP療法は精製したPRPを局所に注射するだけですので、身体への負担が少なく、短時間で終わるため、外来で受けることが可能です。 PRP治療のメリット 身体への負担が少ない 治療が短時間で終わる 外来で受けることが可能 簡単かつ、自分の組織のため安全なので、普及しつつある治療法なのです。 PRP療法のメリット、デメリット PRP療法は、入院、手術が不要なばかりか、外来で治療ができるため、とても有効です。 メリット 1.副作用が少ない 自分から採取した組織で治すため、アレルギー症状などの拒絶反応などを引き起こしにくい 副作用もほとんどありません 2.身体を傷つける心配がない 身体への負担は、採血と精製した組織の注射だけ 手術などで身体にメスを入れる必要がありません 3.外来で治療が可能 PRP療法は、通院による治療が可能です。 実施後すぐ日常生活に戻れる 負担が非常に少ない治療法です デメリット 1.効果の個人差 PRP療法の効果には個人差があります ヒトの血液の中には様々な因子が含まれており、その量には個人差があります 精製過程で割合も変化するので、効果に個人差があることは知っておく必要があります。 2.処置部位の痛み 注射をするという医療行為の特性として、注射をした後の数日間は、痛みや腫れ、赤みなどの症状が出ることがある 心配な場合には一度治療された病院を受診されるすることをおすすめします。 アキレス腱断裂に対するPRP療法の有効性 PRP療法は最新の治療のため、現在様々な研究が行われ効果が検証され始めています。 一般的にアキレス腱などの腱は腱自体への血流が乏しいので治りにくく、復帰に時間を要するのですが、PRPを投与することで腱の修復を早くすることができます。複数の研究をまとめたシステマティックレビューというエビデンスレベルの高い論文では、PRP療法を行った場合、足関節の可動域が他の治療と比べて良好であるという報告がなされています。(参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34731144/) PRP療法を行うことで最短で治りつつ、機能的にも良好な成績が得られると考えられています。 再生医療に対するよくある質問 再生医療は、まだまだ馴染みのない治療方法です。そこでよく質問される内容から抜粋して以下に記しましたのでご参考美してください。 Q1.PRP療法は他にどのような疾患に適応がありますか。 A:PRP療法は様々な疾患で受けることができます。アキレス腱断裂のほかに、半月板や膝の靭帯損傷、ジャンパー膝などの腱の炎症、変形性膝関節症や変形性股関節症などの軟骨が摩耗する疾患、五十肩など痛みを伴う整形外科の疾患の多くに適応があります。 飲み薬や注射でも治らず、手術しかないと言われている方で手術をせずに治したい方、はやく痛みを和らげたい方は、適応があるか是非医療機関にご相談してみてください。 Q2.PRP療法はどこで受けることができますか。 回答:2023年5月時点ではPRP療法は自由診療ですので、行っている施設は限られています。当院では最新の再生医療としてPRP療法に加えて、独自の細胞培養技術を用いた自己脂肪由来幹細胞治療も行っています。 治療についてのご相談は、経験豊富な医師、アドバイザーが無料で行っており、内容についてご納得していただいた上で治療を受けることができます。 ご予約は電話、メール、WEBで可能ですので、治療について悩んでいる方は是非お気軽にご相談ください。 ▶リペアセルクリニック「メール・WEBで相談する」 まとめ・アキレス腱断裂でも手術しない再生医療(PRP)!最新治療の効果と治療法を解説 アキレス腱断裂は特に中高年に多く見られるスポーツ外傷で、従来は手術が一般的な治療法とされてきました。しかし、手術には長期間のリハビリが必要であったり、傷や感染症のリスクが伴うために最新医療の一つであるPRP(自己多血小板血漿)療法という再生医療が注目されています。 PRP療法は、患者自身の血液から抽出した「多血小板血漿」を用いる再生医療です。この方法は、血小板や成長因子を多く含むPRPを患部に注射することで、自然治癒力を高め、腱の修復を促進します。手術を避けられるため、体への負担が少なく、入院することなく、短時間で外来で受けられる利便性があります。 PRP療法のメリットには、アレルギーや拒絶反応のリスクが少なく、副作用がほとんどないことが挙げられます。また、注射のみで済むため、入院はもちろん手術の必要がなく、治療後すぐに日常生活に戻れる点も大きな利点です。しかし、効果には個人差があり、注射部位の痛みや腫れが数日続く可能性もあります。 PRP療法はアキレス腱の修復を早め、他の治療法に比べて足関節の可動域の改善が期待できるとされています 。腱の血流が乏しいために治癒が遅れがちなアキレス腱断裂に対して、PRP療法は有効な治療法となり得ます。 再生医療はまだ新しい分野であり、疑問や不安を持つ方も多いかと思ことでしょう。中でもPRP療法はアキレス腱断裂以外にも、膝や肩の靭帯損傷、変形性関節症など、多くの整形外科疾患に適用されています。治療できる医療機関は厚生労働省の認可が必要で限られていますが、再生医療専門クリニックである当院にご相談いただければ詳しくご説明させて頂きます。 アキレス腱断裂の治療法として、手術以外の選択肢を探している方や、早期の回復を望む方は、PRP療法をご検討されてはいかがでしょうか。 手術や入院をせずに早くケガを治したいなど、興味のある方はぜひお気軽に当院にご相談ください。 ▼アキレス腱が切れてしまう前に知るための方法は以下をご覧ください 【アキレス腱断裂】アキレス腱が切れる予兆の症状とその原因
2023.06.08 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
もやもや病と言われたら|原因・治療法について医師が解説 もやもや病とは、脳の太い血管が細くなり、その代わりにもやもやとした異常な血管が増える病気です。最近は、無症状でも脳ドックなどで診断される人もいます。 今回は、もやもや病の原因や治療法、そしてもやもや病だと言われた時に注意するポイントについて解説していきます。 もやもや病とは何か? もやもや病は、1950年代に日本で発見されました。昔の検査では、網の目のようになった異常な血管が「もやもや」とみえたことから、「もやもや病」と名付けられたといわれています。 現在、「もやもや病」という名前は世界中で通用する正式名称で、英語でも「Moyamoya disease(モヤモヤ・ディジーズ)」と言います。 もやもや病の原因 もやもや病とは、脳に血液を送る血管の一つである内頸動脈(ないけいどうみゃく)が徐々に狭くなり、詰まっていく病気のことです。*1 脳の太い血管が詰まってしまうので、その代わりに脳に血液を届けるために、異常な血管(側副血行路:そくふくけっこうろ)が網の目のように発達します。 なぜ血管が詰まってしまうのかについてはまだ分かっていませんが、ある特定の遺伝子と関係があるのではないかともいわれています。 また、日本に多くみられるという特徴があります。もやもや病は日本では国の指定難病になっており、申請を行うと医療費助成の対象となる場合があります。*5 *5 指定難病患者への医療費助成制度のご案内 – 難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460#taisho 引用)*1 もやもや病…ここまできた診断・治療 p2 http://jcvrf.jp/general/pdf_arekore/arekore_117.pdf もやもや病の症状 もやもや病は、大きく分けると、脳血流不足で発症と、脳出血で発症の2つの場合があります。 最近では、ほぼ無症状で発見されるタイプも増えていますが、たとえ無症状であっても、脳梗塞や脳出血のリスクは年2〜3%あると考えられています。 発症原因 (1)脳血流不足で発症 (2)脳出血で発症 (1)脳血流不足で発症する場合 大きな脳の血管が詰まることで、血流不足が起こります。 すると、急に「手足が動かしにくい」、「顔面や手足がしびれる」といった症状が生じます。 (2)脳出血で発症する場合 不足した脳の血流を補うために発達したもやもや血管は、長年負担がかかることで破れてしまうことがあります。 激しい頭痛とともに、意識障害、手足の麻痺、言語障害などが起こることがあります。出血が多い場合には生命に関わることもあります。 その他の症状 その他、小児の場合には、朝方に吐き気を伴う強い頭痛が続くという場合もあります。 また、頻度は高くありませんが、けいれん(ひきつけ)の症状が出ることもあります。この場合は、脳波の検査では特徴的な波形が出ることが知られています。 もやもや病といわれたらどうすればいい? では、ここからはもやもや病の治療方法や、もやもや病についてのよくある質問について説明します。 もやもや病の治療方法 もやもや病の治療は、もやもや病による脳梗塞や脳出血を予防する方法となります。 もしも脳梗塞や脳出血を発症してしまった場合には、その治療を行っていきます。 脳血流量を増やすためのバイパス手術 脳の血流量を増やすために、新しい血液の流れを作るためのバイパス経路を作る手術療法があります。 血流が不足するタイプのもやもや病の患者さんが脳梗塞を起こすのを防ぐ効果が認められています。 抗血小板薬の内服 脳血流不足で発症した場合には、血液の中の血小板(けっしょうばん)という成分の機能を抑え、血液を固まりづらくする抗血小板薬が使用されることもあります。 一定の効果があると考えられていますが、こうした治療薬のみでの治療には限界があるようです。 もやもや病についてよくある質問 それでは、もやもや病といわれた場合に、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。 もやもや病に関してよくある質問に答える形で、解説していきます。 Q1 脳の血管の詰まりなどは進行しますか? A 脳の血管の詰まりについては、最初に診断されたときと同じ状態が何年間も変わらない人もいれば、だんだんと進行していく人もいるといわれています。 そのため、定期的なMRIなどによる検査が必要と考えられます。 Q2 もやもや病でも普通の生活はできるの?注意点はありますか? A 手術によって脳血流がよくなった場合には、生活上の大きな制限はないと考えられます。 一方、打撃系の格闘技(ボクシングなど)やラグビーは、脳への強い振動などが懸念されるのでおすすめできません。サッカーのヘディングについても、大丈夫かはまだわかっていません。 また、成人の場合には、タバコは好ましくありません。タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮させる働きがあるので、もやもや病を抱えている場合にはタバコは禁物です。 また、お酒については、飲みすぎるとおしっこの回数が増え、脱水症状につながるおそれがあるので、たくさん飲むことは避けましょう。 Q3 もやもや病と診断されたら、必ず手術が必要ですか? A 基本的には、症状が頻繁にはないときには手術の必要はありません。 しかし、成人の場合で、症状がある、脳血流検査で脳の血流が著しく低下している、あるいは過去に脳出血を起こしたことがある場合には、一般的には手術が勧められます。 小児の場合には、将来症状がでることを予防するために、手術となることが多いです。 最終的には、検査結果や患者さんの年齢や状況を総合的にみて、手術適応が決まります。 まとめ・もやもや病と言われたら|原因・治療法について医師が解説 もやもや病は、脳の太い血管が詰まってしまうことで起こる病気です。根本的な治療法は、手術で脳の血流を改善することですが、それぞれの症状や年齢によって対応方法は決まっていきます。 今回の記事が参考になれば幸いです。
2023.06.05 -
- 足部、その他疾患
- 足部
「アキレス腱断裂の予防方法を知りたい」「再発するのが怖い」 これらの疑問や悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。 アキレス腱断裂は突然の激痛とともに起こり、長期間の治療を必要とするため、日常生活や仕事に大きな支障をきたす怪我です。 おもに40代以上の方や運動不足の人は発症リスクが高いと言われていますが、予防法をよく知らないまま運動を始めて後悔する人が多いのも現状です。 本記事では医師監修のもと、アキレス腱断裂の予防法と再発防止策を、具体的かつ実践しやすい方法でわかりやすく解説します。 また、当院「リペアセルクリニック」ではアキレス腱断裂の治療も提供しています。 気になる症状がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 アキレス腱断裂を予防する3つのポイント アキレス腱断裂を予防するには、適切な運動習慣や靴選びなど日頃からできることはたくさんあります。 ここでは、アキレス腱断裂予防に効果的な3つのポイントを紹介します。 適切な運動習慣でアキレス腱を鍛える アキレス腱をサポートできる靴を選ぶ 運動後はアキレス腱のケアを行う どれも簡単に取り入れられるものばかりなので、ぜひ今日から実践してみましょう。 適切な運動習慣でアキレス腱を鍛える アキレス腱を鍛えるためには、日常的な運動習慣が大切です。 運動不足の状態では、アキレス腱が硬くなり断裂しやすくなってしまうためです。 まずはウォーキングや軽いジョギングなど、アキレス腱に負担をかけすぎない運動を習慣化しましょう。 運動する際は、準備運動を入念に行いアキレス腱をしっかりと伸ばすことも大切です。 毎日少しずつでも良いので運動を続けていくと、アキレス腱は強化されて柔軟性が高まり、断裂リスクも低下します。 適度な運動によりアキレス腱を鍛え、断裂を予防しましょう。 アキレス腱をサポートできる靴を選ぶ アキレス腱断裂の予防には靴選びも重要です。 靴のかかと部分が硬いものや、サイズが合っていないものはアキレス腱に負担をかけてしまい、断裂のリスクを高めます。 アキレス腱をサポートしてくれる靴を選ぶポイントとしては、以下の点が挙げられます。 かかと部分がしっかりとしていて、安定感がある 自分の足に合ったサイズで、締め付け感がない クッション性があり、衝撃を吸収してくれる 通気性が良く、蒸れにくい 4つのポイントを踏まえ、各スポーツの種目に適したスポーツシューズを着用するようにしましょう。 運動後はアキレス腱のケアを行う 運動後には、アキレス腱は疲労し炎症を起こしている可能性があるため、しっかりとケアを行ってください。 アイシングやストレッチによる、アキレス腱のクールダウンが大切です。 また、アキレス腱周りにある筋肉のマッサージをすると、血行を促進し疲労回復を早める効果も期待できます。 日頃からのケアによって、アキレス腱の状態を整え断裂リスクも減らせるでしょう。 アキレス腱が切れないために行うべきストレッチ・トレーニング アキレス腱断裂を予防するには、日頃からストレッチやトレーニングを取り入れ、アキレス腱周りの筋肉を柔らかく保つことが大切です。 とくに、下腿三頭筋(かたいさんとうきん)と呼ばれるふくらはぎの筋肉のストレッチ・トレーニングは、アキレス腱断裂の予防に効果的です。 本章では、アキレス腱強化に役立つ2つのストレッチ・トレーニングを紹介します。 下腿三頭筋のストレッチで予防する方法 下腿三頭筋の筋力トレーニング方法 これらを正しく実践し、怪我のリスクを減らしましょう。 下腿三頭筋のストレッチで予防する方法 アキレス腱の負担を減らすには、下腿三頭筋(かたいさんとうきん)をストレッチで柔らかくすることが重要です。 下腿三頭筋は、腓腹筋とヒラメ筋という二つの筋肉が合わさってできています。 ストレッチの方法も筋肉によって違うので、それぞれ適切な方法で行いましょう。 まずは、腓腹筋のストレッチ方法から紹介します。 <腓腹筋のストレッチ> 1. 立った状態で左足を後ろに引く 2. 右足の膝を曲げながら体重を前にかけていく 3. 左足の膝は伸ばして踵を地面から離さないようにする 4. 左足のふくらはぎが伸びているのを感じながら30秒キープする 5. 脚を左右に変えて同じようにする。 次にヒラメ筋のストレッチ方法です。 <ヒラメ筋のストレッチ> 1. しゃがんだ状態で左脚を立てて片膝立ちになる 2. 左足に体重をかけるように前に重心を移動させる 3. 左足の踵が地面から離れないようにする 4. 左足のふくらはぎが伸びているのを感じながら30秒キープする 5. 脚を左右に変えて同じようにする。 ヒラメ筋は膝を曲げながらストレッチをかけるのがポイントです。膝を曲げると腓腹筋が緩んだ状態になるので、ヒラメ筋を単独でストレッチできます。 下腿三頭筋の筋力トレーニング方法 下腿三頭筋(かたいさんとうきん)のトレーニングでは、立った状態でゆっくり踵の上げ下ろしをする「カーフレイズ」が有名です。 <カーフレイズ> 膝を伸ばした状態と曲げた状態の両方で行うと、腓腹筋、ヒラメ筋を両方鍛えられます。バランスがとりづらい方は椅子やテーブルを持って行うと良いでしょう。 10回を最初の目標にして、ふくらはぎが疲れない程度に取り組みましょう。 アキレス腱断裂が起きやすい人の特徴3つ アキレス腱断裂は誰にでも起こりうる怪我ですが、とくにアキレス腱断裂のリスクが高い人の特徴は以下のとおりです。 40代以上の運動不足の方 急に運動を再開した方 立ち仕事が多い方 1つでも当てはまる方は、日頃からアキレス腱をケアし、断裂予防を心がけるようにしましょう。 40代以上の運動不足の方が危険 40代以上で運動不足の方は、アキレス腱断裂のリスクが高まります。 年齢を重ねると、アキレス腱の柔軟性や強度が低下していくためです。 また、運動不足によって下腿三頭筋(かたいさんとうきん)が衰えると、アキレス腱への負担が増加し断裂しやすくなります。 40代以上で運動不足の人は、定期的にストレッチや軽い屈伸運動を行い、アキレス腱を鍛えるよう意識しましょう。 急な運動再開はとくに注意が必要 運動不足の人が急に激しい運動を始めると、アキレス腱断裂のリスクが高まります。 アキレス腱は、日頃から使われていないと急な負荷に対応できません。 そのため、久しぶりに運動を再開する際は、準備運動をしっかり行い徐々に運動強度を上げていく意識が大切です。 いきなり激しい運動をするのではなく、ウォーキングや軽いジョギングなどから始めて体を慣らしていきましょう。 立ち仕事が多い方もリスクがある 立ち仕事が多い人も、アキレス腱断裂に注意が必要です。 長時間立ちっぱなしの状態だと、アキレス腱に常に負担がかかり続けて疲労が蓄積しやすくなります。 また、立ち仕事は同じ体勢を続ける場合が多いため、アキレス腱が硬くなり柔軟性が低下する傾向があります。 そのため、立ち仕事の人はこまめな休憩を挟んだり、習慣的にストレッチを行ったりして、アキレス腱への負担をできるだけ軽減しましょう。 【再発防止】アキレス腱の再断裂を防ぐ2つのポイント アキレス腱断裂から回復するまでの過程で再断裂してしまうと、治療期間がさらに長引いてしまう可能性があります。 再断裂を防ぐために注意すべきポイントは以下の2つです。 医師の指示通りにリハビリを続ける 運動復帰時は軽い動きから始める 本章を参考に再断裂のリスクを減らし、日常生活へのスムーズな復帰を目指しましょう。 また、当院ではアキレス腱断裂の治療も提供しておりますので、治療方法や再断裂に不安がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 医師の指示通りにリハビリを続ける アキレス腱断裂の回復には、医師の指導に基づいたリハビリが欠かせません。 リハビリでは、負荷を徐々に上げていく計画が重要ですが、焦って無理をすると回復が遅れるだけでなく再断裂のリスクが高まります。 したがって、ストレッチや筋力トレーニングで徐々に強化し、柔軟性を保つように心がけましょう。 医師のアドバイスを守り、地道に取り組む姿勢がアキレス腱の再断裂を防ぐポイントです。 運動復帰時は軽い動きから始める アキレス腱の再断裂を防ぐために、運動復帰時は軽い動きから始めるのがポイントです。 急な負荷や激しい運動はアキレス腱に大きな負担をかけ、再断裂につながる可能性が高まります。 ウォーキングや軽いストレッチからスタートし、段階的に運動強度を上げるのが理想です。 ただし、違和感や痛みがある場合は無理をせず、すぐに医師に相談するようにしましょう。 アキレス腱断裂の治療法や断裂後のリハビリメニューについては、以下の記事でも詳しく紹介しております。アキレス腱断裂後、運動への復帰を予定している方は目を通しておきましょう。 まとめ|アキレス腱断裂しないためにも常に予防対策を意識しよう アキレス腱断裂を予防するには、日頃からの適度な運動によりアキレス腱を鍛えておくことが大切です。 ストレッチや軽いトレーニングを通じて、アキレス腱を少しずつ丈夫にしていきましょう。 また、準備運動を怠らず、運動時は必ずクッション性の高い靴を選び、運動後のケアも忘れずに行ってください。 アキレス腱だけでなく、ふくらはぎの筋肉下腿三頭筋を柔軟に保つことで、アキレス腱への負担も軽減できます。 この記事を参考に、ぜひアキレス腱断裂の予防に取り組んでみてください。 当院「リペアセルクリニック」ではアキレス腱断裂の治療に役立つ再生医療を提供しています。 リハビリ方法も含め、気になる症状や疑問がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 アキレス腱断裂の予防に関してよくある質問 アキレス腱断裂してから完治するまでどのくらいの期間がかかりますか? アキレス腱断裂の治療期間は、保存療法か手術療法によって異なります。 ギプスなどによる固定期間と、スポーツ復帰できるまでの完治期間は以下のとおりです。 治療方法 保存療法 手術療法 ギプスなどの固定期間 6〜10週間 4〜8週間 スポーツ復帰までの期間 7〜9か月程度 6〜9か月程度 ただし、スポーツの種目によっても復帰時期は異なるため、主治医と相談することが大切です。(文献1) アキレス腱断裂の全治期間については、以下の記事も参考にしていただけると幸いです。 アキレス腱断裂後の癒着をほぐす方法はありますか? アキレス腱の癒着を予防・改善するには、医師の指導のもと適切なマッサージとストレッチが効果的です。 まずは、足首を優しく前後に動かす運動から始めましょう。 痛みの出ない範囲で、アキレス腱周辺を指でマッサージするのも有効です。 また、入浴後は血行が良くなっているため、ストレッチに適したタイミングだといえます。 ただし、強い痛みを感じる場合は即座に中止し、医師への相談をお勧めします。 参考文献一覧 文献1 伊佐整形外科_アキレス腱断裂
2023.06.01 -
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アキレス腱断裂の主な治療には「手術」と「保存療法」の2種類があります。どちらの選択をとっても、適切なケアをおこなえば回復を目指せます。 手術を選択した場合、回復に向けてダイレクトにアプローチできるため、スポーツや仕事復帰の期間が保存療法ほど長くかかりません。しかし、手術費用や手術後における合併症のリスクを考慮する必要があります。 本記事では、アキレス腱断裂の手術の流れや費用について解説しています。保存療法との違いも紹介しているので、アキレス腱断裂の治療方針を検討中の方は参考にしてみてください。 アキレス腱断裂の治療法は手術もしくは保存療法【どっちを選択すべき!?】 アキレス腱断裂の治療法には、主に「手術」と「保存療法」の2種類があります。適切な治療をおこなえば、どちらの治療法を選択しても回復が期待できます。 ただし、治療方法の判断基準は、本人の回復目的と医師の考えがあるため完全な正解はありません。 手術は保存療法よりも仕事やスポーツの早期復帰が期待できます。しかし、手術費や術後の合併症リスクといった懸念点があるため、慎重に検討する必要があるでしょう。 一方で、保存療法は、手術費用や合併症のリスクにおける心配は少ないものの、仕事やスポーツへの復帰に時間がかかる傾向にあります。 双方のメリット・デメリットを理解した上で、医師と相談しながら自分に合った治療法を選択していきましょう。 手術と保存療法については以下の記事で解説していますので、参考にしてみてください。 現在、アキレス腱断裂の治療法の1つとして「再生医療」が注目されています。切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 無料相談も受け付けていますので「再生医療でアキレス腱断裂をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 アキレス腱断裂における手術の流れ【3つの過程で解説】 ここでは、アキレス腱断裂における手術の流れを3過程にわけて解説します。 手術決定〜入院|入院期間はおよそ4〜10日 入院〜手術|手術時間はおよそ1〜2時間 退院後のリハビリテーション|リハビリ期間はおよそ4〜5カ月 1過程ずつ見ていきましょう。 1.手術決定〜入院|入院期間はおよそ4〜10日 手術が決まれば、具体的な日取りを決めていきます。 入院期間はおよそ4〜10日なので仕事や学校など、考慮したい事情がある場合は必ず伝えましょう。 入院オリエンテーションで入院中の生活、注意点などの説明がありますので、わからないことがある場合は積極的に聞いてください。 術前検査や、全身麻酔の場合は麻酔科の診察もありますので、治療中の病気などがあれば必ず申告しましょう。 2.入院〜手術|手術時間はおよそ1〜2時間 手術より前の日に入院する場合と、手術当日に入院する場合があります。合併症や治療中の病気がある場合には、前もって入院するケースが多くなります。 入院・手術が近づいてきたら飲酒は避けたほうが良いでしょう。食べるものなどに制限はありませんが、「手術前〇時間は絶食」などの指示は必ず守ってください。 手術時間はおよそ1〜2時間で、手術が終わったあとは合併症に気をつけながら経過観察します。 3.退院後のリハビリテーション|リハビリ期間はおよそ4〜5カ月 入院した直後から日常生活、スポーツの復帰まで継続したリハビリテーションが必要になります。 以下は、術後のおおまかなスケジュールです。 術後1週まで ・足関節が動かないようギプスで固定する ・ヒールをつけて歩くなど、固定したところ以外はしっかり動かす 術後2週頃 ・固定を外し、装具を装着する ・少しずつ足首を動かす練習をおこなう 術後1カ月頃 両足での底屈動作(つま先立ち)の練習を開始する 術後2カ月頃 ・片足での底屈動作(つま先立ち)の練習を開始する ・装具がとれて、軽いジョギングを開始する 術後3カ月頃 ランニングを開始する 術後4〜5カ月頃 スポーツ動作の練習を再開する それぞれの動作、運動を開始するタイミングは施設により異なりますが、最短でのスポーツ復帰は4~5カ月程度に設定している施設が多い傾向にあります。 せっかく受けた手術を無駄にしないためにも、していいこと・してはいけないことを確認し、しっかりと守りましょう。 アキレス腱断裂後のリハビリメニューについてはこちら▼ アキレス腱断裂の手術・入院にかかる費用相場 手術・入院にかかる費用は、どのような術式、麻酔法にするかで差があります。 3日間の入院で10万円ほど、7日間の入院で20〜30万円ほどは最低かかると見ておいた方が良いでしょう。食事代や個室を利用する場合は差額ベッド代がかかります。 【入院や手術に掛かる費用】 3日間の入院で10万円ほど 7日間の入院で20〜30万円ほど 食事や個室(差額ベット)は別途 収入により高額療養費制度を利用できます。しかし、一旦は負担分を窓口で支払う必要があるので注意が必要です。 ギプス固定後の治療用装具はオーダーメイドで作成するので、こちらも8万円前後かかります。保険適応になりますが、一旦全額を支払う必要があります(支払先は装具屋さんです)。 そこから手続きをおこなえば差額が還付され、実質負担は医療費の負担割合と同等になる仕組みです。 まとめ|アキレス腱断裂における手術の理解を深めて治療に臨もう アキレス腱断裂の手術は、仕事やスポーツの復帰を早めたり、再発リスクを低減したりする効果があります。 しかし、手術費用や術後における後遺症のリスクの懸念点があるため、治療法の選択は慎重におこないましょう。 「手術以外でアキレス腱断裂の早期回復を図りたい!」という方には「再生医療」がおすすめです。 切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 無料相談も受け付けていますので「再生医療でアキレス腱断裂をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 アキレス腱断裂の手術についてよくある質問 アキレス腱断裂の手術についてよくご質問いただく内容を以下に記載しました。 アキレス腱断裂の手術後、仕事復帰までどれくらいの期間がかかりますか? アキレス腱断裂の手術後、一般的に3カ月程度で仕事に復帰できるケースが多いです。しかし、具体的な復帰時期は、仕事の内容によって変わります。 たとえば、事務作業のように座っておこなう仕事であれば、松葉杖や装具を使って歩けるようになった段階で仕事に復帰できる可能性があります。 しかし、走ったり、重い物を運んだりするような負担のかかる仕事の場合は、筋力や機能が回復するまで待たなくてはなりません。 現在、アキレス腱断裂の治療法として「再生医療」が注目されています。 人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 アキレス腱断裂の手術後、歩けるまでどれくらいの期間がかかりますか? 歩行が可能になるのは、ギプスを外して装具を着用できるようになってからです。ギプスが外れるのは術後1〜2週間以降なので、歩行もその時期から段階的に開始します。 装具を使用してすぐの段階では、足元が安定せず、踵が高くなりがちです。そのため、歩行の際には松葉杖を併用するのが良いでしょう。 アキレス腱断裂における全治期間の解説はこちら▼ アキレス腱断裂手術の麻酔はどのようなものですか? 全身麻酔もしくは腰椎麻酔でおこなわれることが多いです。経皮的縫合術では侵襲が少ないために局所麻酔でおこなうケースもあります。 全身麻酔や腰椎麻酔の場合には、麻酔科医による麻酔がおこなわれるケースもあります。 手術の前に喫煙はしても良いですか? 喫煙をしていると、酸素の取り込みが少なくなります。 とくに全身麻酔をおこなう際には、痰の増加、肺炎や無気肺(肺の一部に空気が入らない状態)のリスクになります。 傷の治りも遅くなる可能性があるので、手術が決まった際にはその日から禁煙しましょう。
2023.05.29 -
- 下肢(足の障害)
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離断性骨軟骨炎は、主にスポーツを行っている人が発症しやすい病気です。発症した際、完治期間はどのくらいの期間を要し、運動はいつから再開できるのか疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。 離断性骨軟骨炎は安静にしていると次第に痛みが軽減されるものの、完治したと思って無理に動くと再発する可能性があるため注意が必要です。 本記事では、離断性骨軟骨炎における完治期間の目安を解説します。再発予防法も紹介するので、離断性骨軟骨炎の症状回復へ向けた治療が知りたい方は参考にしてください。 離断性骨軟骨炎の完治期間 離断性骨軟骨炎は、治療法によって完治期間の目安が異なりますが、一般的に完治するまで6カ月以上かかる可能性があります。 そのため、完治期間の目安を把握したうえで、復帰スケジュールを組むのが大切です。ここでは、保存療法と手術療法の完治期間の目安を解説するので参考にしてください。 保存療法における完治期間の目安 保存療法における完治期間は、6カ月以上~1年ほどが目安になります。離断性骨軟骨炎は10代~20代くらいに多く発症するため、低年齢の場合は保存療法を優先するケースが一般的です。 保存療法では、離断性骨軟骨炎の要因となるスポーツ活動を禁止して安静に過ごしながら、レントゲンやMRIなどで修復状態を定期的に確認します。 症状を見ながら段階的にスポーツ活動への復帰を進めていきますが、発症前の運動レベルまで戻す場合は数カ月~1年くらいはかかる可能性があります。また、保存療法で症状回復が得られない場合は、手術を行うのが一般的です。 手術療法における入院期間と完治期間の目安 手術療法における完治期間の目安は、術式によって異なりますが6カ月~10カ月ほどでスポーツ活動に復帰できる可能性があります。入院期間も術式でさまざまで、おおむね5日~7日程度です。 退院後はリハビリを行い、修復状態を確認しながら軽い運動から復帰を開始します。本格的な復帰は6カ月ほどが多いため、6カ月ほどは無理のない範囲でリハビリを進めていくのが重要です。 スポーツ復帰を目指す場合は、適切な手術を受けて完治期間までは医師の指示に沿ったリハビリを受けましょう。 離断性骨軟骨炎の主な治し方 離断性骨軟骨炎の主な治し方は、以下の通りです。 治療法の種類 特徴 安静 運動をせず安静に療養する リハビリテーション 患部への負担軽減を目的にリハビリ訓練を実施する 薬物療法 鎮痛薬や関節内注射を行う マイクロフラクチャー法 膝関節鏡を関節内に入れて、患部の数カ所に小さい穴を開けて出血させて治癒を促進 整復内固定術 骨釘や生体吸収性ピンなどを使用して固定 骨軟骨移植術 円柱状の軟骨片を採取して、損傷した部分に移植 離断性骨軟骨炎は、問診や触診、レントゲン検査などを行ったうえで診断します。ただし、初期の場合はレントゲンでは写りにくいため、MRI検査で確定診断をするのが一般的です。 また、手術療法の術式は、遊離した軟骨片の大きさや状態などから総合的に判断して決めます。 無理に運動を継続すると手術が必要になるだけでなく、競技生活を続けられなくなる可能性があります。離断性骨軟骨炎は、早期発見・早期治療が重要なため、肘や膝に違和感があった際は、ただちに医療機関を受診し、医師の指示に従いましょう。 離断性骨軟骨炎は再発するためリハビリが重要 離断性骨軟骨炎は、症状が治まっても再発するリスクが生じます。 再発する理由は、関節軟骨は血流が乏しく自然治癒力が限られているためです。離断性骨軟骨炎の症状は安静にしていると落ち着いてくる場合があるため、完治したと勘違いする人も少なくありません。 しかし、完治していない状態で運動を再開すると、まだ安定していない軟骨に負荷をかけてしまい結果として再発につながります。 痛みや引っかかりがなくなったとしても、自己判断で運動を再開するのは危険です。離断性骨軟骨炎は完治までに6カ月以上かかるケースが一般的なため、再発を防ぐためにもリハビリが重要です。運動を再開する際は自己判断せず、医師の診察を受けましょう。 離断性骨軟骨炎のリハビリ治療と期間 離断性骨軟骨炎は、症状が軽い場合はリハビリと安静中心の保存療法で治療が行われます。リハビリ期間は、患者さんの年齢や症状の進行具合によって変わってきます。 離断性骨軟骨炎は、一般的に約1〜2カ月で痛みがやわらぎますが、3か月ほどの安静が必要です。 リハビリは、可動域訓練や筋力トレーニングを中心に行います。理学療法士の指導やアドバイスをもとに、肘や膝に負荷のかからない動作を身につけるのがリハビリの目的です。 3カ月以上保存療法を行っていても症状の回復が見込めない、もしくはすでに症状が進行しており軟骨の状態が良くない場合は、リハビリより手術を先に行います。 手術は関節鏡を使ったものが多いですが、症状によっては軟骨の移植など大がかりな方法になる場合があります。 関節鏡下の手術の場合は傷口が小さく回復が早く、早期にリハビリを開始可能です。ただし、軟骨の修復は普通の骨と比べて時間がかかるため、無理に動かさないよう注意しましょう。 離断性骨軟骨炎の再発予防法 離断性骨軟骨炎は、再発する可能性のある病気です。痛みが軽減されたかといって、本格的な復帰をしないよう注意しましょう。ここでは、離断性骨軟骨炎の再発予防法を解説します。 完治してから復帰する 離断性骨軟骨炎の再発予防には、完治してから復帰するのが重要です。痛みがなくなると運動を再開しても問題ないと判断してしまいがちですが、完治していない場合、軟骨は不安定な状態です。 離断性骨軟骨炎の発症前と同じレベルで体を動かすのは、再発につながるリスクが生じるため注意しなければなりません。再発しないためにも運動の時期は勝手に決めず、治療期間中は医師の指示に従い、段階を踏んで本格的な復帰を目指すようにしましょう。 オーバーワークになりすぎないようにする 離断性骨軟骨炎の再発予防には、オーバーワークになりすぎないよう練習量を調整するのが大切です。痛みがなくなると、発症前と同じ運動量で練習に参加してしまう可能性があります。 特にスポーツをしている場合はまわりに遅れをとりたくないと思って、無理をしてしまいがちです。完治していない状態でオーバーワークになりすぎると、再発により長期離脱につながりかねません。医師から完治と言われない限りは、練習量を抑えるのが重要です。 サポーターを着用する 離断性骨軟骨炎の再発予防には、サポーターの着用が効果的です。軟骨と骨をつなぎとめる部分の血流障害を引き起こすと軟骨が剝がれやすくなり、離断性骨軟骨炎を再発する要因になります。 離断性骨軟骨炎の場合は、サポーターを使用すると体の重心バランスが整い、患部の負担軽減につながります。サポーターはギブスと異なり関節の動きを固定しないため、自然な動きが可能です。 なお、離断性骨軟骨炎向けのサポーターには大腿四頭筋を補強するタイプや固定力の高いタイプなど、さまざまな種類があります。再発防止策には、目的や症状に合ったサポーターを選ぶのが大切です。 定期的に検診を受ける 定期的に検診を受けるのが、離断性骨軟骨炎の再発予防策です。スポーツでは継続的な負荷がかかるため、定期的な検診により症状が悪化していないか確認できます。 離断性骨軟骨炎は治療が早ければ、保存療法で症状回復が期待できる病気です。完治したからといって無理をしてしまうと、再発する可能性が考えられます。再び長期離脱につながらないよう定期的に受診し、再発を予防するのが大切です。 離断性骨軟骨炎における治療法の1つ再生医療の可能性 再生医療とは、損傷した組織や臓器の機能を回復させるために、細胞や組織、臓器を人工的に作製したり、自己修復能力を促進したりする医療技術の総称です。 当院「リペアセルクリニック」では、患者様自身の幹細胞を接種、培養しているため、副作用のリスクが低く抑えられます。 また、採取する脂肪量は米粒2~3粒程度のため、体への負担は大きくありません。再生医療では、手術不要で治療が受けられます。 メール相談やオンラインカウンセリングを受け付けておりますので、離断性骨軟骨炎の治療に関する悩みがある方は、お気軽にお問い合わせください。 まとめ・離断性骨軟骨炎の再発予防には完治期間を守ることが大切 離断性骨軟骨炎の完治期間は、6カ月以上が目安となります。一般的に安静にしていれば症状軽減が期待できますが、完治したと思って発症前と同様の生活をすると再発しやすくなるため注意が必要です。 離断性骨軟骨炎はリハビリを正しく行うと症状緩和につながり、再発を予防できます 治療後はいきなり発症前と同じ練習量やトレーニングをするのではなく、段階を踏んで運動を再開するのが大切です。 離断性骨軟骨炎の完治期間を踏まえたうえで、症状回復へ向けた適切な治療を受けましょう。
2023.05.26 -
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アキレス腱が切れる前兆はあるのかな。 アキレス腱に違和感があるけれど、どうしたら良いか知りたい。 この記事を読んでいるあなたは、「自分の感じる違和感は、アキレス腱が切れる前兆なのでは」と不安に思っているのではないでしょうか。 結論、アキレス腱の違和感や腫れなどは、切れる前兆の可能性があります。正しい対処をすれば日常生活やスポーツ制限の緩和、重症化リスクを減らすことに期待できます。 本記事では、アキレス腱が切れる前兆や予防法について、詳しく解説します。 記事を最後まで読めば、アキレス腱に違和感があるときの正しい対処法がわかり、大きなケガを予防できるでしょう。 アキレス腱が切れる3つの前兆 アキレス腱が切れる前兆は、主に以下の3つです。 アキレス腱に違和感がある・腫れている ふくらはぎやかかとが痛む 足のむくみがひどい 本章を参考に、アキレス腱断裂の基本的な知識を確認しておきましょう。 アキレス腱に違和感がある・腫れている アキレス腱の違和感や腫れがあるときは、アキレス腱が傷ついたり周囲に炎症が起きたりしている可能性があります。 この症状を「アキレス腱炎」や「アキレス腱周囲炎」といい、これらはアキレス腱の強度を落とし、断裂の原因となります。(文献1) 具体的には、以下のような症状がある場合は、アキレス腱が切れる危険信号です。 アキレス腱の周りが全体的に腫れている コブ状に盛り上がって腫れている 違和感や痛みは、最初は立っているときやスポーツのときだけですが、症状が進行すると安静時にも出るようになります。 アキレス腱炎の症状やリスクについては、以下の記事も参考にしてください。 ふくらはぎやかかとが痛む アキレス腱はふくらはぎの筋肉とかかとの間に位置しています。そのため、アキレス腱の傷や炎症は、ふくらはぎやかかとの痛みとしてあらわれるケースもあります。 安静状態からの動き出しや、朝(起床時)の一歩目に痛みを感じる人は珍しくありません。 ふくらはぎやかかとに痛みがある場合は、アキレス腱自体に違和感がなくても、切れやすい状態と覚えておきましょう。 足のむくみがひどい ひどい足のむくみも、アキレス腱が切れる前兆かもしれません。 むくみとは、体内を循環する血液やリンパ液の流れが悪い状態です。血液の流れが悪いとアキレス腱へ十分な血液が供給されず、ストレスを受けたアキレス腱が十分に修復されません。 結果として、アキレス腱の傷ついた状態が続き、断裂を起こしやすくなるのです。 アキレス腱が切れやすくなる原因は? アキレス腱が切れやすくなる原因は、主に以下の3つです。 加齢 激しいスポーツ 長時間の立ち仕事 原因がわかれば、適切な対処がしやすくなります。順番にみていきましょう。 加齢 年を重ねるごとに、アキレス腱断裂のリスクは高まります。年を重ねると徐々にアキレス腱のコラーゲン組織が硬くなり、柔軟性が低下するためです。 健常なアキレス腱は約1トンもの張力に耐えられるといわれますが、老化してもろくなると日常生活の何気ない動作で切れることもあります。 とくに高齢になってからのアキレス腱断裂は、アキレス腱の老化が原因のケースも多くみられます。 激しいスポーツ 激しいスポーツは、年齢にかかわらずアキレス腱断裂の原因になりやすい傾向があります。 若い人や運動に慣れたトップアスリートでも、ジャンプやダッシュの繰り返しがアキレス腱を傷め、そのまま運動を続けるうちに切れてしまうケースがあります。 とくに、以下のようなスポーツはジャンプや急な動きが多く、アキレス腱に大きな負荷をかけがちです。 サッカー バレーボール バドミントン バスケットボール また、中高年に人気の登山やランニングも、足を蹴りだすときにアキレス腱やその周囲に繰り返し負担をかけるスポーツです。(文献2) 長時間の立ち仕事 加齢や過度なスポーツ以外にも、アキレス腱断裂の危険性を高める要因があります。それは、長時間の立ち仕事です。 長時間の立ち仕事はアキレス腱にストレスをかけ続けます。その結果、アキレス腱が傷ついたり、炎症を起こしたりします。 日常生活でもアキレス腱に負荷がかかる場合があるため、少しの違和感を見逃さないことが大切です。 アキレス腱断裂の予防法3選 アキレス腱断裂の予防法は、主に以下の3つです。 違和感がある場合は安静にする 日常的にストレッチをおこなう 早めに整形外科を受診する 本章の内容を生活に取り入れ、アキレス腱の断裂を防ぎましょう。 違和感がある場合は安静にする アキレス腱周囲炎の治療の基本は安静です。痛みや腫れなどの違和感がある場合は、負荷のかかるスポーツや動作を控え、安静にしましょう。 また、以下のような靴を選び、アキレス腱への負担を軽減する方法もあります。 靴底やかかと部分に厚みのある靴 靴底のクッション性が高い靴 かかと部分の芯(カウンター)がしっかりしている靴 サイズの合った靴 アキレス腱の痛みをセルフケアする方法や予防のポイントは、以下の記事も参考にしていただければ幸いです。 日常的にストレッチをおこなう 日常的なストレッチはアキレス腱の柔軟性を高め、断裂予防に効果的です。とくに、下腿三頭筋のストレッチや筋力トレーニングを日常的におこなうと良いでしょう。 アキレス腱断裂をした人は、ストレッチをしていなかったという研究もあります。アキレス腱への負荷を軽減して断裂を防ぐために、ぜひ日常的なストレッチを取り入れてみましょう。 アキレス腱断裂の予防法や再発防止策については、以下の記事もご覧ください。 早めに整形外科を受診する アキレス腱断裂の予防に重要なのは、早めに整形外科を受診することです。 一度アキレス腱が断裂すると、手術やギプス固定による長時間の治療が必要になります。そのため、断裂にいたる前の適切な処置が大切です。 ステロイドの注射を希望する人もいますが、ステロイドが逆にアキレス腱断裂のリスクを高める可能性があるため行いません。 まずは整形外科を受診し、専門医の正しい指示を仰ぎましょう。 まとめ|アキレス腱が切れる前兆がみられたら早めに医療機関に相談しよう 本記事では、アキレス腱が切れる予兆の症状や原因、予防法などを詳しく解説しました。 アキレス腱断裂は、日常生活の中で誰にでも起こりうるケガです。一度断裂すると、元の生活に戻るまでには長期間の治療を必要とします。 アキレス腱断裂には前兆があるため、注意すべき症状を知り適切な対策を取れば、断裂のリスクを下げられるでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、筋・腱・靭帯のスポーツ外傷に対する再生医療・PRP治療を提供しております。 再生医療による治療は慢性化したアキレス腱炎にも利用でき、スポーツへの早期復帰が期待できるでしょう。 この記事がアキレス腱断裂の予防に役立ち、運動や生活制限のない快適な毎日を送るきっかけになれば嬉しく思います。 アキレス腱断裂についてよくある質問 「服用しているとアキレス腱断裂を起こしやすい薬」があると聞いたのですが、本当ですか。 フルオロキノロン系の抗菌薬を長期間服用していると、アキレス腱の変性を誘発し断裂が起こりやすくなるという報告があります。しかし、抗菌薬は必要時に短期間処方されることが多いので、日常的に心配しすぎる必要はありません。ただし、長期間に及ぶ場合は注意が必要です。 アキレス腱断裂テストは簡単にできますか。 整形外科の診察でも使われるアキレス腱断裂テスト(トンプソンテスト)は、比較的簡単に行えます。ただし、1人でおこなうのは困難なため、誰かに手伝ってもらうのが良いでしょう。 1. うつ伏せになり、膝を曲げる 2. そのまま力を抜いた状態でふくらはぎを握って圧迫し、足首が動くかどうか確認する 3. アキレス腱が切れていない場合は、足首が下向きに動きますが、切れていると動きません。 アキレス腱炎のセルフチェックについては以下の記事も参考にしていただければ幸いです。 参考文献一覧 文献1 小田 俊明, 川上 泰雄, 片岡 弘之, 横田 秀夫, 姫野 龍太郎, ジャンプ時にアキレス腱組織に生じる局所ひずみ・応力の推定, バイオメカニクス研究, 2012, 16 巻, 2 号, p. 54-63 文献2 城下 貴司, アキレス腱炎に対する臨床的治療展開の検討, 理学療法学Supplement, 2007, 2006 巻, Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集), セッションID 270, p. C0270
2023.05.22 -
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アキレス腱断裂はスポーツに多い怪我で、歩行に大きな支障をきたします。 スポーツはもちろん、仕事や買い物といった日常生活でも歩けないと不便に感じる場面も多いはず。そのため、アキレス腱断裂をした後どのくらいで歩けるようになるのか気になる人も多いのではないでしょうか。 アキレス腱断裂後歩けるまでの期間は、ギプスで固定・安静にする保存療法の場合で約3か月後、手術でアキレス腱を縫合する場合で約2か月後です。 本記事では、アキレス腱断裂後いつ歩けるようになるかなどを治療法ごとに詳しく解説します。アキレス腱断裂で歩けず日常生活にお困りの方はぜひ最後までチェックしてください。 アキレス腱断裂後歩けるまでの期間は最短2カ月 アキレス腱断裂後、歩けるようになるまでは治療法によって異なり、手術の場合で約2か月後、安静・固定する保存療法の場合で約3カ月後です。 一般的に手術の方がアキレス腱を縫合するため強く再建でき、アキレス腱の成熟を早められます。そのため、足首の固定期間も比較的短く済み、装具を使って歩行可能です。 実際にどれくらいの違いがあるのか、詳しくみてみましょう。 装具での歩行はギプスが外れた後すぐに可能 アキレス腱断裂直後には足首をギプスで一定期間固定します。 ギプスを外してからは、アキレス腱に負担がかからないよう踵(かかと)を高くしたまま固定できる装具を使用することで、歩行が可能になります。 なおギプスの固定期間は保存療法と手術療法で異なり、目安としては以下のとおりです。 治療法 ギプスの固定期間 手術療法 1〜2週間 保存療法 2〜4週間 手術を行う場合、保存療法よりもアキレス腱を強固に再建できるため、保存療法よりも1〜2週間程度短い固定期間で済む傾向があります。 装具を外しての歩行は治療方法で1カ月差が出る 装具を外し、通常どおり歩けるまでの期間は以下のとおりです。 治療法 通常どおり歩けるまでの目安 手術療法 損傷後2カ月後 保存療法 損傷後3カ月後 手術療法と保存療法では、装具なしで歩けるようになるまで1カ月ほどの差があります。 アキレス腱断裂後の回復スピードを重視したい人は、手術を受けることも検討しておきましょう。 アキレス腱断裂の全治は手術の方が短い 結論からいえば、保存療法よりも手術療法の方が全治期間を短縮できます。アキレス腱の自然治癒を待つ保存療法に対し、手術は断裂したアキレス腱を縫合するので早くくっつき、強固になるためです。 なお、これはあくまで全治期間が手術の方が短いというだけで、再断裂のリスクは治療法に差はないといわれています。保存療法と手術療法のメリット・デメリットは以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひチェックしてみてください。 アキレス腱断裂で手術をした場合の全治期間の目安 アキレス腱断裂後手術療法を選択した際に歩行できるまでの全治期間目安は、2カ月程度といわれています。全治期間の過程は以下の表をご参照ください。 断裂・手術〜ギプス固定期間 1〜2週間 松葉杖の使用期間 1~2週間(ギプス固定をしている間に使用) 装具の使用期間 ギプスが取れてから6〜8週間 通常歩行できるようになるまで 手術後2カ月程度 手術後1〜2週間程度はアキレス腱に負荷をかけないために、足首をギプス固定しながら松葉杖で歩行します。2週間程度でギプスが外れるため、アキレス腱専用装具を利用しながらの歩行が可能です。ほとんどのケースでアキレス腱装具の使用と同時に松葉杖は中止します。 その後リハビリをしていけば2カ月程度で通常歩行可能です。なお、手術後のリハビリについての詳細は以下の記事で詳細に解説しています。ぜひこちらもご覧ください。 アキレス腱断裂後保存療法での全治期間の目安 アキレス腱断裂後保存療法を選択した場合、通常歩行までの目安はおよそ3カ月です。全治期間の過程は以下の表に記載していますのでご参照ください。 断裂〜ギプス固定期間 2〜4週間 松葉杖の使用期間 1~2週間(ギプス固定をしている間に使用) 装具の使用期間 ギプスが取れてから約4週間 通常歩行できるようになるまで 断裂後後3カ月程度 保存療法は、手術と比べて歩けるまで1カ月程度長い期間を要します。これはギプスによる固定でアキレス腱の自然な癒合を待つ必要があるためです。 保存療法は、手術療法よりも歩行までの時間がかかるのがデメリットですが、入院の必要がないなどのメリットもあります。そのため、自分に合った治療法を検討することが大切です。 なお、当院リペアセルクリニックでは保存療法の選択肢として、再生医療も選択可能です。手術をせずより強固にアキレス腱を治癒する方法として着目されている治療で、以下の記事で詳しく解説しています。 もし少しでも興味があるという方は、メール相談もしくはオンラインカウンセリングが可能なのでお気軽にお問い合わせください。 アキレス腱断裂の全治は「およそ6カ月」 アキレス腱断裂後、日常生活に完全に復帰するまでの全治期間目安は6カ月といわれています。これはあくまで目安であり、個人差があるものです。最も重要なのは再断裂しないことであり、全治期間が過ぎたからといって無理してはいけません。 本章ではアキレス腱断裂後に車の運転・スポーツ・仕事の復帰までどのくらいの期間が必要か解説します。個人差はありますが、大まかな目安としてチェックしておきましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、アキレス腱断裂の治療法として再生医療を提供しています。 アキレス腱断裂の痛みや再断裂を懸念されている方は、お気軽に「メール相談」「オンラインカウンセリング」にてお問い合わせください。 また、再断裂の予防については以下の記事で解説していますので、アキレス腱断裂した人はぜひチェックしましょう。 車の運転|アキレス腱断裂した足が左ならすぐに運転可能 アキレス腱断裂した足が左なら、全治後すぐに車の運転をしても問題ありません。運転は右足をメインにおこなうため、左足にギプスや装具がついていても運転に支障はないでしょう。 しかし、右足のアキレス腱を断裂した場合は、装具が外れるまで運転を控えてください。右足にギプスや装具をつけた状態の運転は違法ではありませんが、とっさの動きができないため危険です。 もし交通事故を起こしてしまった場合には怪我による過失を指摘される可能性もあるので、ギプスや装具を終了して日常生活について問題なく過ごすことができるようになってから運転を開始することが良いでしょう。 最終的には自己責任になってしまうので、運転時期については医師とも十分相談してください。 スポーツ|手術は3カ月、保存療法は6カ月 スポーツ復帰については、手術を受けた場合は3カ月、保存療法を受けた場合は6カ月以上の期間を要するとされています。そのため最短でスポーツ復帰をしたい方は手術療法がおすすめです。 また早く確実に治すためには、どちらの治療法でも医師や理学療法士の指導を守ってください。徐々に負荷を増やしていくトレーニングを行い、無理をしないように注意することが大切です。 スポーツ復帰までの期間 手術療法:3カ月程度 保存療法:6カ月以上 仕事の復帰|仕事内容によってはすぐに復帰可能 仕事復帰までの期間は業務内容によって異なります。 事務作業であれば座った状態で行えるので松葉杖、装具で歩行できている段階で可能ですが、走ったり、重いものを運んだりする重労働では、スポーツ復帰できるまで筋力が回復した時期からの復帰がおすすめです。 まとめ|アキレス腱断裂後は手術の方が1カ月早く歩ける!迷ったら受診しよう アキレス腱断裂後、歩けるまでの期間は治療法によって差があり、手術療法の場合で最短2カ月、保存療法の場合で最短3カ月ほどです。 「早く歩けるようになりたい」「スポーツに早く復帰したい」といった方は、手術を受けることも検討してみましょう。 なお当院リペアセルクリニックでは、ただ治癒を待つだけの保存療法でなく、再生医療でアキレス腱の再生を促す治療にも取り組んでいます。 「手術はしたくないけど早くアキレス腱断裂を治したい」と考えている方におすすめの治療法なので、お気軽にメール相談もしくはオンラインカウンセリングでお問い合わせください。 この記事がアキレス腱断裂でお困りの方に少しでも貢献できれば光栄です。 アキレス腱断裂についてよくあるQ&A Q, アキレス腱断裂後の痛み、腫れはいつまで続きますか? A, 術後の痛みや腫れが完全になくなるまでは個人差があります。 手術を受けてから抜糸をするまでは1〜2週間程度ですが、その後も傷、腱を治す過程で炎症が起こっているので1カ月から2カ月程度かかることもあるでしょう。 Q, アキレス腱断裂後の装具の歩き方や調整方法はどうすればいい? A, アキレス腱断裂用装具は踵に着脱できるヒールが付いており、段階を追って徐々にアキレス腱を伸ばすことができるようになっています。 治療開始直後はアキレス腱への負担を減らすために踵が高い状態で歩く必要があるので、つま先立ちの形で歩行が必要です。もしこの状態で上手に歩けない方は松葉杖を使用すると良いでしょう。 治療が進むと徐々にアキレス腱に負担をかけてもよくなるため、踵を少しずつ低くしていき、最終的に装具を終了します。装具の調整は医師と相談しながら行うようにし、ご自分で調整しないようにすることが必要です。 Q, アキレス腱断裂後、お酒の解禁はいつからですか? A, アルコールを摂取すると血流が増加するので、出血や腫れが悪化してしまう要因となります。そのため怪我をしてから腫れが落ち着くまでの数週間、手術を受けた方では抜糸をして傷がしっかり治るまでは摂取しないようにしましょう。
2023.05.18 -
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アキレス腱は、腓腹筋とひらめ筋という、ふくらはぎの筋肉から踵の骨につながる強力な腱で人体で最も太い腱です。中高年者に多く、激しい運動やスポーツ中の突然の動作、あるいは転倒などが原因で発生することがほとんどです。 アキレス腱は足首の動作に関与するので、断裂してしまった場合には歩行が困難になり、生活に支障をきたしてしまうことがあります。 アキレス腱断裂の治療には、手術と保存療法があり、どちらの治療を選んでも適切に行うことで完治できます。 しかし、手術と保存療法のどちらを選択するかには保存療法で失敗するリスクや歩けるまでの期間の比較、手術の合併症などの正確な情報を知っておく必要があります。 この記事では、アキレス腱断裂の治療方法について、それぞれのメリットとデメリットを詳しく説明し、失敗しない選択肢について解説します。 アキレス腱断裂後に歩けるまでの期間 アキレス腱断裂後に歩けるまでの期間は治療方針によって異なります。回復期間は人によってことなる場合はありますが、以下の期間が歩行が開始できる目安です。 手術療法:1〜2週間程度 保存療法:2〜4週間程度 上記の期間はギプス固定の期間であり、ギプスが外れてから歩けるようになります。それぞれの療法での違いは、以下の解説をご覧ください。 手術の場合 手術の場合、術後約1〜2週間はギプス固定を行い、ギプスが外れたタイミングで装具を使用して歩く練習を開始します。 ギプス固定は断裂したアキレス腱同士を縫合し、腱に負担がかからないようにする目的で行います。ギプス期間中はつま先立ちの状態で足首をギプス固定するため、松葉杖を使用して歩くことになるでしょう。 装具の装着期間は約6〜8週間の見込みで、スポーツ復帰は3〜5カ月程度です。ただし、治療の詳細は患者さんの状態や医師の判断で異なるため、医師に確認するようにしましょう。 保存療法の場合 保存療法の場合、歩けるようになる期間は約2〜4週間と手術療法よりもやや遅くなるでしょう。手術療法のように断裂したアキレス腱同士を縫合するのではなく、自然に腱がくっつくのを待たなければならないからです。 また、手術療法後のアキレス腱再断裂の確率が1.7〜2.8%だったのに対し、保存療法後の確率は10.7〜20.8%と高くなっています。近年、アキレス腱断裂後に保存療法を選択するケースも増えてきていますが、リハビリを開始する時期が遅くなってしまうリスクもある点を覚えておきましょう。 アキレス腱断裂の治療法|手術と保存療法の違いは? 手術治療のメリット、デメリット 手術治療では断裂したアキレス腱を縫合しますが、大きく直視化縫合術と経皮的縫合術という傷が小さい手術の2つに分けられます。行っている手術は病院ごとに異なるので、詳しい内容は病院に問い合わせるようにしましょう。 手術治療のメリットは再断裂率が低く、ギプス固定の期間が短く、スポーツ復帰までの期間が早いことです。デメリットとして手術の合併症である傷の感染症、神経損傷などのリスクがあることと、手術代+入院費用がかかることが挙げられます。 スポーツ復帰までの期間は手術内容によりますが、3〜5カ月程度です。 メリット ・再断裂率が低い ・ギプス固定の期間が短く、スポーツ復帰までの期間が早い デメリット ・手術の合併症である傷の感染症、神経損傷などのリスクがある ・手術代、入院費用がかかる 保存療法のメリット、デメリット メリット ・入院や手術が不要なので費用が安い ・手術による合併症のリスクが少なく安全 保存療法の主なメリットとして費用の安さが挙げられます。手術はなく通院のみで治療が進むため、入院費用や手術費用が不要で、経済的負担を軽減できます。 また、手術による合併症のリスクが少なく安全です。手術に伴う麻酔の負担や術後の感染リスクが回避できるため、とくに高齢者や持病を抱える人にとって効果的な方法です。また、手術痕が残らないため、外見を気にする人にも適しています。 デメリット ・ギプスの固定期間が長く、ギプス終了後の歩行の開始時期が遅くなる ・再断裂率が手術と比較して高い 保存療法ではギプスで固定する期間が数週間と長めです。この間、足首を動かさず固定するため、関節の硬直や筋力低下が生じ、歩行の開始時期が遅れます。また、固定を解除した後も、競技復帰に向けてリハビリを行う必要があるため、治療期間が手術に比べて長期化する可能性が高いです。 また、再断裂率が手術よりも高いことが懸念されています。保存療法の再断裂率は8.8%とされています。これは、手術療法の3.6%に比べてやや高い数値です。再断裂が起こると、再び固定や手術が必要になるため、治療がさらに長引いてしまいます。 まとめ|自分に適した治療法を選択しましょう アキレス腱断裂の治療方法は、手術と保存療法の2つです。どちらを選択するかは患者の状況や希望によって異なりますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。保存療法は手術や入院が不要で費用が安く、手術による合併症のリスクもないという利点がありますが、ギプス固定の期間が長く、再断裂率が高いです。 一方、手術治療では再断裂率が低く、スポーツ復帰までの期間が早いという利点がありますが、手術に伴う合併症や費用がかかるデメリットがあります。 治療方法の選択に際しては、患者自身の状況や希望を考慮し、主治医とよく相談することが重要です。 アキレス腱断裂についてよくあるQ&A アキレス腱断裂でよくいただく質問を以下に記載しました。 Q. 手術と保存療法のどちらがおすすめですか? A.どちらが適しているかは、患者の年齢や活動レベル、断裂の程度によって異なります。手術は腱を縫合することで早期復帰、再断裂のリスク軽減を目指します。とくにスポーツ選手や日常的に活発に動く人に適用されることが多いです。 一方、保存療法はギプスで固定して自然治癒を促す方法で、リスクが少なく、手術に抵抗がある場合に選択されます。しかし再断裂のリスクがやや高く、回復に時間がかかる点に注意が必要です。 Q.治療法によってアキレス腱を再断裂する確率に違いはありますか? A.再断裂率は保存療法で8.8%、手術療法で3.6%と保存療法療法で高い数値です。日本整形外科学会のガイドライン2019年版でも再断裂率は保存療法で高いと記載されており、再断裂のリスクを下げたい方は手術治療が適していると言えます。 この背景として、手術は断裂した腱を直接縫合して強度を高めるためられますが、保存療法はリスクは少ないものの、腱の自然治癒に頼るため回復に時間がかかり、再断裂のリスクがやや高くなると考えられます。どちらにもリスクはあるため、患者の生活スタイルや年齢、活動レベルによって適切な治療法を選択することが大切です。
2023.05.15 -
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アキレス腱の断裂はスポーツ中のケガというイメージがありますが、40代以降の方では段差の踏み外しや軽いジャンプなど、日常のちょっとした動作でも起こる可能性があり注意が必要です。 断裂すると受傷直後は歩行困難になることがありますが、時間の経過とともに歩けるようになるケースも多く、完全に歩けなくなるわけではありません。 しかし腱は自然に修復されることはなく、「なんか違和感あるけど、そのうち治るだろう」と放置してしまうと、歩行障害や慢性的な痛み、関節の可動域制限など、深刻な後遺症につながる恐れがあります。 そこで本記事では、アキレス腱が切れたときに現れる症状や音の特徴、応急処置の方法・治療の選択肢について詳しく解説します。 従来の治療方法に加え、近年注目されている再生医療による新しい治療法についても紹介しています。 「アキレス腱が切れた場合、手術以外の治療法を知りたい」「この症状は様子を見ても大丈夫?」といった不安をお持ちの方は、専門カウンセラーが丁寧にお答えしますので、まずはお気軽に無料の電話相談をご利用ください。 >>今すぐ電話してみる アキレス腱が切れるときは「ブチッ」「パン」などの音がする アキレス腱は、体の中でもとても太い腱で、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋(かたいさんとうきん)と、かかとの骨をつないでいます。 アキレス腱が切れてしまうと、人によって程度は変わりますが、かかと周辺に強い痛みが生じます。 実際に怪我をされた方から話をお聞きすると、以下のような経験をしている場合が多いようです。 「後ろから誰かにかかとを蹴られたような強い衝撃と痛みがあった」 「ブチッといった断裂音が聞こえた」 アキレス腱が切れた直後は、歩行困難になる場合も多く、少しずつ腫れや内出血があらわれます。 何かしらの症状が出ていない場合でも、放置せず早急に医療機関を受診するのが大切です。 アキレス腱が切れた直後の応急処置 「アキレス腱が切れたかも」と思ったら、運動中のときはすぐに中断し、できる限り歩行を避けましょう。 固定できるもの(新聞紙・段ボールなどで代用可)があるときは、足首が動かないように固定できると良いです。 周りの人が応急処置を手伝ってくれるときは、うつ伏せの姿勢になりながら、固定用具を足元の下に敷いて、固定用具ごと包帯などで巻いてもらいます。 また、腫れや痛みを防ぐために足を心臓より高くして、足首を氷などで冷やす方法をお試しください。 アキレス腱が切れたまま放置すると後遺症が出る場合もある アキレス腱が切れたまま放置すると、歩行困難になる場合があります。 アキレス腱が切れると、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋がうまく機能しません。以下のように、足首を動かす動作に影響が出る可能性もあります。 つま先立ちが難しくなる 立ち上がり、階段の昇り降りが難しくなる また、時間が経過すると、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋が少しずつ痩せて、筋肉が萎縮します。 ほかにも、断裂した部位を治療せずに放置すると、慢性的な痛みが残る可能性もあるでしょう。 アキレス腱が切れたときは後遺症を出さないためにも、適切な治療を受けるのが重要です。 「この痛み、放っておいて本当に大丈夫かな」「病院に行くべきか迷う」と少しでも不安に感じたら、まずは専門のカウンセラーがお話を伺いますので、お気軽にご相談ください。 >>今すぐ電話してみる アキレス腱が切れたかを判断する検査方法 アキレス腱が切れたかどうかは、視診や触診だけでも、ある程度判断できます。 アキレス腱が断裂した部位には、delle(デレ)と呼ばれる凹みがあり、皮膚表面からでも触れると確認できるからです。 また、アキレス腱が切れた可能性がある方には、うつ伏せの姿勢になってもらい、ふくらはぎを圧迫して、足首が動くかどうかを確認するトンプソンテストを行います。 アキレス腱がつながっていれば、ふくらはぎを圧迫すると自然に足首が動きます。しかし、アキレス腱が切れている場合、ふくらはぎを圧迫しても足首は動きません。 ほかには、超音波でもアキレス腱の断裂を確認できます。別の部分に骨折がないかレントゲンで撮影したり、触診でわかりづらいときはMRI検査をしたりする場合もあります。 アキレス腱が切れたときの治療方法は2つ アキレス腱が切れたときの治療方法は、手術を行わずにギプスや装具を使って治療する「保存療法」と、断裂したアキレス腱を直接糸で縫合する「手術療法」に分けられます。 どちらが良いのかは、個人の状況によっても異なるので、十分に担当医と相談しながら決めてみてください。 保存療法 手術療法 保存療法【手術を避けたい場合】 保存療法では、断裂したアキレス腱が離れないように、足首を底屈(つま先立ちする際の方向)にした状態でギプスによる固定を行います。 その後、専用の装具を使って、少しずつ歩行練習などを行う流れです。 手術療法【スポーツで復帰したい場合】 スポーツ選手や若い世代など、体を使う機会が多い方は、手術をする場合が多いです。 ただし、手術をしたとしても、すぐにスポーツができるわけではなく、保存療法と同じく専用の装具を使った治療期間が必要になります。 再断裂するリスクは手術療法のほうがやや低いですが、どちらも再断裂の危険性はあります。また、手術をすると細菌感染などのリスクも生じるでしょう。 ただ、スポーツの復帰を目指したい方が、必ず手術療法を選ばないといけないわけではありません。担当医と話し合って納得した上で治療法を選ぶのが大切です。 保存療法と手術療法のメリットとデメリットについては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。 まとめ|アキレス腱が切れたら放置せず治療を始めよう アキレス腱の断裂は、スポーツをしている方だけでなく、誰にでも起こりうる怪我です。ただ、放置すると歩行困難や慢性的な痛みなど、後遺症が出る可能性もあります。 「アキレス腱が切れたかも」と感じたときは、運動している場合は中止し、足の固定と冷やす応急処置が大切になります。 保存療法と手術療法など、放置せずに適切な治療を行うと、後遺症を防ぎながら、日常生活やスポーツへの復帰が可能となります。 アキレス腱の断裂を疑う症状がある場合は、速やかに整形外科を受診しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、自身の幹細胞を培養して投与する「再生医療」を含めて、アキレス腱断裂などの治療を行っています。 スポーツ外傷は⼿術をしなくても治療できる時代です。痛みや症状に合わせた治療を行いますので、まずはお悩みや症状をご相談ください。 >>今すぐ電話してみる アキレス腱が切れたときによくあるQ&A アキレス腱が切れたときに、よくお聞きする質問をまとめました。 Q.いつからスポーツの復帰ができますか? A.スポーツに復帰できる時期は個人差がありますが、一般的には保存療法の場合は6カ月程度、手術療法でも4カ月程度の治療期間が必要になることが多いです。 復帰してからも、少しずつ運動強度を上げていく必要があり、再断裂を防ぐための筋力トレーニングなどのリハビリは必須です。 アキレス腱の断裂における全治期間を知りたい方は、以下の記事で詳細を解説しています。仕事への復帰期間とあわせて確認してみてください。 Q.手術はどのような方法で行いますか? A.基本的に手術は、ふくがい(うつぶせの姿勢)で行うのが一般的です。 アキレス腱を断裂している部分に近い皮膚を切開し、直接アキレス腱に糸をかけて縫い合わせます。 縫い方にはいくつかの方法があり、どのような方法を選択するかは医師の判断によりますが、いずれの方法でもしっかりと縫合できます。 また、手術は全身麻酔や腰椎麻酔(下半身麻酔)で行う場合が多いでしょう。ただ、局所麻酔のみの日帰りで行っている病院もあるので、各担当医に詳細をご確認ください。 Q.アキレス腱が切れるのを予防するには? A.アキレス腱の断裂を予防するには、ふくらはぎの筋肉における柔軟性を保つために、下腿三頭筋などのストレッチやトレーニングをするのがおすすめです。 また、運動するときはいきなり激しく足を動かさず、事前に軽く体のストレッチなどを実施します。 アキレス腱の断裂を予防するストレッチやトレーニングの詳細が知りたい方は、以下の記事で解説しています。再発予防にも期待できるので、ぜひ参考にしてみてください。
2023.05.12 -
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「靴を履くとアキレス腱が痛む…これは何が原因?」 このような悩みを抱えていませんか? アキレス腱の痛みは、靴が原因で引き起こされる場合があります。 サイズが合っていない靴やクッション性の低い靴を履くと、アキレス腱に負担がかかり、外傷や炎症につながるのです。 本記事では、靴によるアキレス腱の痛みの原因や対処法を詳しく解説します。靴選びのポイントや正しい履き方も紹介しているので、参考にしてみてください。 靴着用でアキレス腱が痛くなる2つの原因 靴の着用によりアキレス腱が痛くなる主な原因は、以下の2つです。 靴擦れ アキレス腱炎 それぞれの原因や症状を詳しく見ていきましょう。 靴擦れ 靴擦れが原因でアキレス腱周辺に傷や水ぶくれができると、外傷による痛みを伴います。その状態で靴を履き続けると、さらに摩擦が加わり、傷口が悪化しやすくなります。 痛みが強くなるだけでなく、細菌感染のリスクも高まるため、適切な処置が必要です。 靴擦れが発生する主な原因は以下の通りです。 新しい靴を履き始めた(特に硬い素材の靴) 足のサイズと靴のサイズが合っていない (大きいと足が動いて摩擦が生じ、小さいと圧迫されて擦れる) 長時間同じ靴を履き続けた 足の形状の特徴(外反母趾など)で足の一部が突出している場合 アキレス腱周辺の靴擦れは、靴の履き口(カウンター部分)が硬い場合や高すぎる場合に発生しやすくなります。また、汗をかくと摩擦が増し、さらに靴擦れが悪化する傾向があります。 靴擦れの症状としては、軽度の場合は赤みや熱感、中程度では水疱(水ぶくれ)形成、重度になると表皮がはがれて出血することもあります。 アキレス腱部分の靴擦れは、靴を履くたびに同じ場所に摩擦が繰り返し加わるため、治りにくく慢性化しやすいという特徴があります。 アキレス腱炎 靴を履いたときにアキレス腱が痛む場合、アキレス腱炎を発症している可能性があります。 アキレス腱炎とは、アキレス腱に過度な負担がかかることで起こる炎症です。とくに、ランニングやジャンプなど、足を酷使する運動は発症率を高めます。 運動の他にも加齢による腱の弾力性の低下や肥満による腱への負担増加、サイズの合わない靴を履くことによるアキレス腱の圧迫なども原因です。 アキレス腱炎の状態で靴を履くと、炎症を起こした部分にさらなる負担がかかるため、痛みを感じやすくなります。 症状としては、痛みや腫れ、熱感があります。 アキレス腱炎を放置すると慢性化し、治療が長期化するリスクがあるため、症状に気づいたら早めに医療機関を受診しましょう。 【関連記事】 アキレス腱炎をセルフチェックする方法!痛みの原因や治療法も解説 アキレス腱を押すと痛いのはなぜ?アキレス腱炎の原因と治療法を解説 アキレス腱の痛みを悪化させない3つの対処法 アキレス腱に痛みを感じた場合の対処法を3つ紹介します。 外傷があれば手当をする アキレス腱に負担の少ない靴を選ぶ 正しい靴の履き方を覚える 適切な対処をして、痛みを悪化させないようにしましょう。 外傷があれば手当をする 靴擦れによる外傷がある場合は、手当を優先します。 傷を放置すれば、傷口が広がったり、傷口から細菌が侵入して化膿したりする可能性があるからです。 以下は靴擦れで傷口ができた場合の手当のやり方です。 傷口を洗って汚れを落とす 乾いたら絆創膏を貼る 手当しても痛みが強い場合や、傷口がなかなか治らない場合は、病院の受診を検討してみてください。 なお、アキレス腱の炎症や損傷の治療法には「再生医療」の選択肢が挙げられます。 詳しい治療法や効果を知りたいという方は、再生医療を専門とする当院「リペアセルクリニック」へお気軽にお問い合わせください。 【関連記事】 アキレス腱炎で痛みが出たときの対処法5つ|発症する原因や自宅セルフケア法も解説 アキレス腱炎をほっとくとどうなる?慢性的に痛みが残る?治療法も解説 アキレス腱に負担の少ない靴を選ぶ アキレス腱に痛みが出ているときは、今履いている靴が自分の足に合っているかを確認しましょう。 アキレス腱に負担がかかる靴を履き続けると、靴擦れやアキレス腱炎を悪化させる可能性があります。 アキレス腱に負担の少ない靴選びのポイントは、以下の4つです。 靴底の厚みが適度にあるものを選ぶ クッション性の高い靴を選ぶ かかとをしっかり支える構造の靴を選ぶ サイズの合った靴を選ぶ 靴底の厚みがあり、クッション性が高い靴は足の負担を軽減してくれます。 また、靴のかかと部分(ヒールカウンター)が硬く、しっかりとした作りの靴は歩行時の足のねじれ・ブレを防止してくれます。 ヒールの高すぎる靴やサイズが合わない靴もアキレス腱の痛みにつながるため注意が必要です。靴を選ぶときは、つま先部分に1cm程度の余裕があるサイズを選びましょう。 適切な靴選びは、アキレス腱の負担を減らし、痛みの予防につながります。とくに、運動をする方や靴を着用する時間が長い方は、靴選びに力を入れましょう。 正しい靴の履き方を覚える 正しい方法で靴を履くのも、アキレス腱の痛みを悪化させない対策です。 不適切な履き方をすると、靴の機能を十分に活かせず、アキレス腱への負担が増えてしまうからです。 以下は、靴を履く正しい手順なので覚えておきましょう。 靴紐をゆるめる 足を靴に入れ、つま先を上げながらかかとを地面に押しつける 靴紐を調整しながら結ぶ 履いた後、フィット感やかかとの安定性を確認する 靴紐をしっかりゆるめることは、足を入れる際の摩擦や圧迫を軽減するために重要です。とくにアキレス腱に痛みがある場合は、この工程を省略せずに丁寧に行いましょう。 履き口を広げられるタイプの靴なら、しっかり広げてから足を入れることで、アキレス腱への負担を減らせます。 また、靴紐は締めすぎず、緩すぎない程度に調整しましょう。運動靴の場合は、履いている間に緩むことも考慮して、やや強めに締めるのが効果的です。 普段の履き方を見直し、正しい方法を実践してみてください。 アキレス腱損傷の治療には「再生医療」の選択肢もある アキレス腱の損傷や炎症の治療には「再生医療」という方法もあります。 再生医療の治療法でよく紹介されるのは、幹細胞治療とPRP療法です。 幹細胞治療は、患者様から採取・培養した幹細胞を患部に投与する治療法です。 一方、PRP療法では、血液から抽出した多血小板血漿(PRP)を注射します。血小板に含まれる成長因子には炎症を抑える働きがあります。 どちらも自分の細胞や血液を使うため、副作用のリスクが少ないのが特徴です。 当院「リペアセルクリニック」では、幹細胞治療とPRP療法の両方を提供しています。 アキレス腱損傷に対する治療として再生医療をご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。 まとめ|アキレス腱の痛みの原因を理解して適切に対処しよう アキレス腱の痛みを和らげたり、予防したりするには、自分に合った靴選びと正しい履き方が欠かせません。 本記事を参考に、適切な靴選びと履き方を習慣にして、アキレス腱に負担のかからない生活を心がけてください。 もし痛みが長引く場合は、アキレス腱炎やアキレス腱の損傷が起きている可能性があります。痛みを放置すると症状が悪化する場合もあるため、早めに医療機関を受診しましょう。 体への負担が少ない治療法をお探しの方は、再生医療も選択肢の一つとしてご検討ください。 再生医療について詳しくは、以下のページでご確認いただけます。
2023.05.10