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変形性股関節症の治し方は?症状軽減へ向けた生活の工夫も紹介

変形性股関節症は中高年以降の女性に多く発生する病気で、動き出しなど動作のはじめや、長時間の歩行後に痛みを感じます。悪化すると安静時にまで痛みを感じるようになり、日常生活を送るうえで大きな支障となるため注意が必要です。
変形性股関節症にはさまざまな治し方があり、症状の進行状況によって治療法が行われます。手術をしない治療法でも症状の緩和や進行抑制が期待できるため、ご自身の状態に合った治し方を検討するのが大切です。
本記事では、変形性股関節症の治し方についてまとめました。症状軽減へ向けた生活の工夫も紹介するので、治し方や日常生活で気を付けるべき点を知りたい方は参考にしてください。
目次
変形性股関節症は手術しないで治すことは可能か
変形性股関節症は手術をしなくても、症状を緩和できる可能性があります。前提として変形性股関節症は、脚の骨となる大腿骨(だいたいこつ)と骨盤との間に位置する関節軟骨がすり減ってしまう病気です。
すり減ったり、変形したりした骨を元に戻す治療法はなく、症状緩和や進行抑制が目的となります。痛みを和らげ、可動性の改善が期待できる治療法はいくつか存在するため、変形性股関節症では症状に合わせて適切な治療プランを選ぶのが大切です。
変形性股関節症の治し方
変形性股関節症の主な治し方は、以下の通りです。
- 物理療法
- リハビリ療法
- 薬物療法
- 手術療法
ご自身に合った治療を受けられるよう、各療法について解説するので参考にしてください。
物理療法
物理療法とは、痛みの改善やむくみの軽減により身体を動かしやすくするために実施される治療法です。治療法には、以下の物理的手段があります。
主な療法の種類 |
治療内容 |
---|---|
温熱療法 |
身体を温めて股関節周囲の血行を促進させ、筋肉をほぐして痛みを和らげる治療 |
電気療法 |
電気刺激を加えて筋肉の緊張をやわらげる治療 |
光線療法 |
レーザーを活用して関節照射を行い、血行を促進させて筋肉の緊張をほぐす治療 |
マッサージ療法 |
空気圧式マッサージ器や手技で筋肉や関節、リンパなどを刺激して血行促進を図り、痛みを緩和させる治療 |
物理療法は、主に血行促進により筋肉の緊張をほぐして痛み軽減につなげる治療になります。
リハビリ療法
運動療法は変形性股関節症の一般的な治療法で、股関節における筋肉の柔軟性を保ったり、位置を矯正して痛みを緩和させたりする効果が期待できます。
主な治療法は、以下の通りです。
- 筋トレ
- ストレッチ
- 水中ウォーキング
- ウォーキング
変形性股関節症では、主にお尻の横に位置する中殿筋をはじめとする股関節周囲の筋肉をトレーニングで鍛えます。筋トレとストレッチを組み合わせた運動は、変形性股関節症の進行を抑える効果が期待できます。
また、水中ウォーキングやウォーキングは、股関節を守るための筋力強化や柔軟性向上に役立つため、リハビリとして効果的です。いずれも、過度な負担をかけず無理のない範囲で続ける治療法になります。
薬物療法
変形性股関節症で強い痛みを伴う場合は、薬物療法が行われます。薬物療法は一時的に痛みを軽減したり、炎症を抑えたりする目的で行われる対症療法です。
医薬品を使用したからといって、変形性股関節症が完治するわけではないことは理解しておきましょう。
変形性股関節症で使用される主な薬物療法は、以下の通りです。
薬物療法の種類 |
特徴 |
---|---|
外用薬 |
主に塗り薬を使用しますが、痛みが強い場合は座薬を用いる場合もある |
内服薬 |
主に、炎症を抑える作用がある非ステロイド性消炎鎮痛薬を用いる |
注射薬 |
ヒアルロン酸やステロイド製剤を使用し、関節の動きをスムーズにさせて痛みや炎症の緩和を図る |
使用する薬物の種類は症状の進行によって異なるため、担当医と相談して適切な薬物療法を検討しましょう。
手術療法
物理療法やリハビリ療法などの保存治療で症状の緩和が図れない場合、手術が必要になる場合もあります。変形性股関節症の主な手術治療法は、以下の通りです。
主な手術療法 |
手術内容 |
---|---|
関節鏡手術 |
内視鏡を使用して関節軟骨の傷んだ部分を削り滑らかにして炎症を改善する手術 |
骨切り術 |
患者の骨の一部を活用して、変形した股関節の形を整えて症状緩和を図る手術 |
人工関節手術 |
傷んだ股関節を取り除き、人工関節に置き換える手術 |
術式は症状の進行具合によって異なり、痛みの程度や日常生活での不自由さ、将来的な悪化を考慮のうえ決定されます。
変形性股関節症の症状回復が見込めない場合は、自分に合った手術治療法の検討がおすすめです。
変形性股関節症の症状軽減に向けた日常生活の工夫
変形性股関節症の症状軽減するには、日常生活における工夫が必要になります。症状を悪化させないためにも、生活をするうえでのポイントを理解しておくのが大切です。ここでは、変形性股関節症の症状軽減に向けた日常生活の工夫を紹介します。
背筋を伸ばす
変形性股関節症の際は、体操を通して常に股関節や骨盤の柔軟性を高め、できる限り背筋を伸ばしましょう。
症状が発症すると痛みをかばおうと骨盤が前傾し、不自然な姿勢を取りがちになるためです。姿勢が腰椎の前弯と胸椎の後弯を増強させ、股関節の可動域や筋力は低下します。
とはいえ、猫背のように骨盤が後傾する姿勢では、背骨の湾曲だけでなく、股関節に不安定さをもたらし、痛みにつながります。
変形性股関節症では、肩を後ろに引いた状態で背筋を伸ばし、自然なカーブを保つ姿勢が大切です。
低い位置での生活をやめる
変形性股関節症の場合、低い位置での生活は股関節に大きな負荷をかけるため、以下のような洋式の生活スタイルへの変更をおすすめします。
- 椅子を活用する
- トイレを洋式へ変える
- 布団からベッドに変更する
- 料理をする際、頻繁に使うものは高い位置に置く
畳のような和式の生活環境では、座る・立ち上がるといった動作のたびに股関節に負担がかかります。かがむ機会を極力減らし、地べたからの生活を避けることが症状軽減への効果的な対策となります。
減量する
変形性股関節症の症状軽減には、減量も重要です。股関節は骨盤と下肢をつなぐ部分であり、体重による負荷がかかりやすい関節になります。
肥満の場合、体重が重い分、股関節にかかる負荷も上がるため、変形性股関節症を進行させる要因の一つです。
つまり、肥満傾向の方は体重を落とすと、症状の軽減が期待できます。股関節の負担を減らすために、適度な運動や食事管理などを実施して、適正体重を目指しましょう。
手すりを設置する
変形性股関節症の症状軽減には、股関節に負荷がかかりやすい場所に手すりを設置するのがおすすめです。昇降動作は、股関節に負荷がかかるだけでなく、転倒するリスクが高まります。
例えば、お風呂場やトイレなど、立ち座り動作がある場所に手すりを設けると関節への負担軽減が期待できます。また、浴槽へ浸かるためにまたぐ場合は、脱臼しやすくなるため注意が必要です。
階段やお風呂場などに手すりをつけると関節への負荷と転倒リスクを減らせます。
靴の選び方を意識する
変形性股関節症の症状を軽減するには、靴選びが重要です。靴を工夫すると痛みや疲れを軽減できるため、変形性股関節症の症状緩和が期待できます。
変形性股関節症の患者が靴を選ぶ際のポイントは、以下の通りです。
- 足の長さの差を整えて臀筋のサポートができるもの
- 靴の先端が丸くローリング加工が施されているもの(スムーズに押し出せる)
- クッション性が高く着地の際に衝撃軽減できるもの
身体が左右に揺れたり、地面の衝撃が強かったりすると痛みを感じやすくなる原因になるため、安定感を高められるよう靴の加工やインソールを工夫しましょう。
杖の使用を検討する
杖は股関節への負担を軽減し、痛みを和らげる効果が期待できるため、日常生活で積極的に活用するのが効果的です。変形性股関節症で杖を使用すると歩く際に安定感が高まり、歩幅を広げるメリットがあります。
また、バランスを安定させられる杖の使用は転倒のリスクを減らせます。変形性股関節症の方が杖を選ぶときのポイントは、以下の通りです。
- 症状や生活スタイルに適した種類を選ぶ
- 身長に合った長さのものを選ぶ
杖を使用する際は、正しい使い方を覚えておくのもポイントです。
痛めにくい歩き方の特徴を押さえておく
変形性股関節症の場合、正しい歩き方が症状軽減につながります。痛めにくい歩き方の特徴を押さえておくと、関節への負荷を軽減できるため、動くのを億劫に感じにくくなる点がメリットです。
歩く際は、かかとから着地して、つま先で地面を蹴るように意識しましょう。着地するときに足首や膝関節が衝撃を吸収するため、股関節にかかる負担を軽減できます。
また、歩くときは背筋を伸ばすのもポイントです。べた足やすり足は股関節への負担が大きいだけでなく、転倒のリスクが高まるため、正しい歩き方のコツを押さえましょう。
変形性股関節症におすすめのストレッチ
変形性股関節症の場合、股関節まわりの筋肉を緩めるストレッチを取り入れるのが効果的です。ストレッチを取り入れると、股関節まわりの筋肉をほぐせるため、可動域が広がります。
変形性股関節症の患者におすすめのストレッチ方法は、以下の通りです。
- 仰向けになる
- 膝を両手でゆっくり抱える
- 膝をゆっくり抱えた状態を10秒キープする
- (1)~(3)の動作を5回繰り返す
ストレッチをするときは、呼吸を忘れないようにするのがポイントです。また、肩の力は抜きリラックスした状態を意識しましょう。ただし、痛みを感じた場合は、直ちにストレッチを中断してください。
変形性股関節症にお悩みの場合は再生医療を選択するのも手段の一つ
変形性股関節症に対しては、再生医療も治療選択肢となります。治療法の一つとなる幹細胞治療では、採取した幹細胞を培養して股関節に注入します。
当院「リペアセルクリニック」では、患者様自身から米粒2~3粒程度の脂肪を摂取して幹細胞を培養、投与します。幹細胞は冷凍せず、投与の度に採取するのが当院の特徴です。
また、再生医療は入院が不要です。
当院では、メール相談やオンラインカウンセリングを受け付けておりますので、治療に関する悩みがある方は、お気軽にお問い合わせください。
まとめ・変形性股関節症の治し方を参考に適切な治療を選ぼう
変形性股関節症の治し方には、物理療法やリハビリ療法などの保存治療があります。保存治療で症状回復が見込めなかった場合、手術治療法を行うケースが一般的です。
変形性股関節症を進行させないためには股関節へ負荷がかからないように和式から洋式へと生活スタイルを見直し、自分のペースで痛みのない運動療法に継続して取り組むのが大切です。
また、手術を必要としない再生医療を選択するのも手段の一つになります。変形性股関節の治し方を理解したうえで、ご自身に合った治療法を選択しましょう。
監修者

坂本 貞範 (医療法人美喜有会 理事長)
Sadanori Sakamoto
再生医療抗加齢学会 理事
再生医療の可能性に確信をもって治療をおこなう。
「できなくなったことを、再びできるように」を信条に
患者の笑顔を守り続ける。