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「首(または腕)が痛く、1日でも早く治す方法が知りたい」 「首の痛みは日常生活にも影響するため、できるなら通院せず治したいけれど可能なの?」 頚椎捻挫が発症していると、首や腕の痛みだけでなく、しびれ、頭痛、めまいなどの症状が起きます。 早く治したい一心から、自宅でストレッチや軽い運動をしてしまうと、症状を悪化させてしまう恐れがあります。 そこで今回は現役医師の立場から、頚椎捻挫を早く治す方法をまとめました。 受傷からの期間別でどのような治療がおすすめなのかも解説したので、ぜひ最後までご覧ください。 【予備知識】頚椎捻挫を早く治す方法の前に押さえておきたい注意点 まず把握してもらいたいのが頚椎捻挫は、よく耳にする「むち打ち症」と同じ意味である点です。 自動車で運転中に追突事故に遭ったり、スポーツ中の衝突により首が過剰に動いたりすると起こる症状です。 首の筋肉や靭帯に損傷が起こる症状として知られています。そこで改めて頚椎捻挫の症状と治るまでの期間をお伝えします。 頚椎捻挫の主な症状 頚椎捻挫の症状として代表的なのは、主に首や腕の痛み、しびれなどが挙げられます。 しかし代表的な症状以外にも、以下の症状があるため注意しましょう。 腕の脱力感 肩こり 頭痛 めまい 耳鳴り 動悸 倦怠感 など 以下の表では、タイプ別で症状や考えられる発症の原因をまとめました。 タイプ 症状 発症の原因 頚椎捻挫型 首や腕の痛み 首回りの筋肉や靭帯が引き伸ばされ発症する 神経根症状型 手、指、腕のしびれ 神経が圧迫されて脳からの伝達が伝わらなくなり発症する バレ・リーウー型 頭痛、耳鳴り、吐き気、難聴、視力低下 など 事故後の安静(急性期の対応)が不十分だと発症しやすい 脊髄型 足の感覚異常、排尿と排便のしにくさ 脊髄の損傷から動きにくくなり発症する 以下の記事では、頚椎捻挫の後遺障害等級についても触れているので、あわせて参考にしてください。 頚椎捻挫を治すまでの期間 頚椎捻挫が治るまでの期間は、患者様の容態によって異なりますが、1〜3カ月で症状が軽快するでしょう。 早ければ1〜2週間の方もいれば、6カ月かけても症状が残っている方もいます。 もしも6カ月経っても治らない場合は、後遺障害としての申請をするのがおすすめです。 以下の記事では、頚椎捻挫の後遺障害等級についても触れているので、あわせて参考にしてください。 頚椎捻挫を早く治す方法 頚椎捻挫を早く治したい場合、受傷してからの期間によって対処方法が異なります。 順番に早く治す方法を解説していきます。 早めの受診がおすすめ(1週間以内) 頚椎捻挫を受傷したら、あまり症状を感じていなくても早めに受診するのがおすすめです。 時間が経ってから急速に症状が出てくるケースがあるため、痛みを感じていなくても受診を検討してください。 受傷後すぐ(急性期)は、首に負担をかけないのが望ましいため、首を固定する「頚椎カラー」の装着が1つの選択肢になります。 患部に対し、リハビリを実施してしまうと、炎症が悪化する恐れがあるため、注意しましょう。 鎮痛剤の処方をしてくれる場合もあるため、まずは病院を受診するのが早く治る方法として挙げられます。 激しい運動を控える(〜2週間) 首の筋肉や靭帯に損傷が起こっている状態のため、受傷から2週間経過するまでは症状が軽いケースでも安静にしましょう。 むやみに動かし過ぎると症状を長引かせる原因になります。 「亜急性期」と呼ばれる時期になり、理学療法士によるリハビリを開始しながら早く治していきましょう。 物理療法として、温熱や低周波などによる治療も実施するケースがあります。 どれも自宅ではできない治療法になるため、専門医から適切なアドバイスを受けるのがおすすめです。 無理のない範囲でストレッチする(6カ月前後) 痛みが落ちついてきたら痛みが出ない範囲で首や肩周りを動かしましょう。 同時に、受傷から6カ月以上経っても以下の症状を感じる方は要注意です。 強い痛みは無いけれど首や肩周りが突っ張る なんとなくスッキリしない など 上記のような症状を感じる方は「慢性化」している恐れがあります。 筋肉や靭帯の損傷は安静にしていれば治りますが、筋肉の緊張状態は安静にしていると、どんどん固まってしまい、緊張状態が強くなってしまいます。 つまり、慢性化しないためにも適度なストレッチが必要になるのです。 デスクワークやスマホを見る習慣が多い現代人のほとんどが負担のかかる姿勢が続いています。 姿勢を治すためには肩甲骨や胸椎(両方の肩甲骨の間にある背骨)を動かすような体操や顎を引く運動、胸前の筋肉をほぐすストレッチをしましょう。 なお、頚椎捻挫が治っていない原因を確かめるには、MRI検査が選択肢として挙げられます。 以下の記事では、MRI検査の所要時間や注意点をまとめているので、ぜひ参考にしてください。 早く治すなら週3の通院がおすすめ 捻挫を1日でも早く治したいのであれば、週3回の通院をおすすめします。 頚椎捻挫は受傷後、1週間以内の受診をおすすめしたように、時間の経過とともに急速な変化が伴うケースが大半です。 首や腕に負担をかけないよう固定したりリハビリを案内し始めたりする時期が、患者様によって異なるからです。 症状によって通院の頻度が異なるので、あくまで1つの基準として捉えてもらえると幸いです。 なお、症状や適切なリハビリなどでお困りでしたら、当院ではオンラインカウンセリングも実施しております。 「いつまでに治りそうなのか」「今の症状では何をすべきか」など、気になる方は以下からご連絡ください。 病院受診時の流れ 頚椎捻挫を早く治す方法を取り入れるため、病院の受診を検討している方に向け、実際の流れをお伝えします。 一般的な病院での受診時、以下の流れになるケースが大半です。 診断 安静 リハビリ それぞれ何を実施するのか、詳しく解説していきます。 受診 頚椎捻挫の受診は基本的に「整形外科」を選択しましょう。 整形外科は、頚椎捻挫や関節リウマチなど、慢性疾患を主に取り扱っています。 専門学校で3年間勉強し「柔道整復師」に合格した方が施術する整骨院とは異なり、医学部合格後、最低でも6年間の勉強と臨床実習が医師には必要です。 理学療法や物理療法を始め、CTやMRI検査など、正確な医学的な知識をもとに治療してもらうには、整形外科がおすすめです。 しかし、整形外科にはリハビリテーション専門のスタッフ(理学療法士や作業療法士)がいない整形外科もあります。 できれば理学療法士や作業療法士のいる整形外科を選択しましょう。 安静 頚椎捻挫を受傷したら、最初のうちは患部を安静にしておくのが無難です。 症状の重さにもよりますが、軽度であれば投薬(薬物療法)を行います。 症状が重い場合は頚椎カラーを装着し、少しでも患部を安静できるようサポートしていきます。 頚椎捻挫は症状の重さに関係なく急性期の症状を早く落ち着かせることが、早く治す方法として挙げられるのです。 リハビリ 頚椎捻挫で骨折や脱臼が発症していない限り、少しずつ痛みがない程度のリハビリを行います。 整形外科で専門的な知識と経験がある理学療法士や作業療法士になるリハビリ指導が始まります。 理学療法士や作業療法士が在籍していない整形外科の場合、温熱療法や牽引療法、電気治療を施しているので、受診時に治療方法を確認しておきましょう。 以下の記事では、頚椎捻挫の治療方法について、自宅でできる対処法を紹介しています。 悪化予防の観点から、ぜひ参考にしてください。 まとめ・頚椎捻挫をすぐに治したいなら受診してもらおう! 頚椎捻挫を早く治す方法は、すぐに受診し安静にしておくのがおすすめです。受傷直後は興奮状態で痛みを感じない場合もありますが、数日経ってから症状が出る可能性もあります。 仮に痛みを感じていなくても「受傷したら痛みがなくても受診」と考えておきましょう。 首回りの組織が損傷している可能性もあるため、スポーツだけでなくストレッチも含めて無理に首を動かすのは控えるのが無難です。 患部を動かすのは、痛みが落ち着いたらリハビリを実施しましょう。 動かさない期間が長くなってしまうと筋肉が固まってしまい、慢性化する可能性もある点に十分気をつけましょう。当院ではオンラインカウンセリングをはじめ、メール相談も承っております。 頚椎捻挫を早く治す方法を専門医からのアドバイスを受けたい方を含め、お気軽にお問い合わせください。
2024.04.29 -
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むちうち症(頚椎捻挫)は、交通事故やスポーツ中の事故などにより、首の周りの筋肉や靱帯に急激に力がかかったことで痛みが生じる状態をいいます。 軽症なものであればネックカラーを装着しての安静処置やリハビリなどで徐々に軽快してきます。しかし、重症なものだと慢性的な痛みと長期間付き合っていく状態になりかねません。 そこで本記事では、むち打ち(頚椎捻挫)の治療方法と治し方を中心に、完治期間についても医師の観点から解説します。 むち打ち症(頚椎捻挫)の症状 むち打ち症の症状は、首を動かしたときの痛み・頭痛・倦怠感(だるさ)・耳鳴り・やめまい・手や腕のしびれと多岐にわたります。 中でも代表的な症状は首を動かしたときの痛みです。筋肉や靱帯に不自然な強い力がかかったことで炎症し痛みが生じます。 頭痛は脳が強く揺さぶられたことによる脳振盪症状や、頭・首・背中につながっている僧帽筋という筋肉が損傷し、全体の痛みを頭痛として捉えることもあります。 倦怠感や耳鳴り、めまいといった症状も脳振盪が原因とされ、首の損傷がさまざまな症状を引き起こします。 むち打ち症(頚椎捻挫)4つのタイプ 上記のとおり、むち打ち症には4つのタイプがあります。 最も多いのは捻挫型で、首や肩の痛み・動かしづらさを発症します。頚椎捻挫の約80%程度がこのタイプです。 神経根型は、腕や手のしびれや痛みが出現するタイプです。頸髄の神経根が筋肉や骨で圧迫されることで発症します。首を動かしたり、咳やくしゃみをしたりすると、強い痛みやしびれが出現します。 脊髄型は、下肢のしびれや知覚異常などを引き起こすタイプです。 頚椎捻挫だけでなく、脊椎椎間板ヘルニアなどが合併した場合に分類される傾向にあります。重度の場合、歩行障害や排尿困難・排便困難といった膀胱直腸障害を発症します。 Barre-Lieou型(バレー・リュー型)は首の痛みだけでなく、めまい・耳鳴り・難聴・視力障害などさまざまな症状が起こるタイプです。不眠症や不安症といった精神的な症状が合併するケースもあります。 むち打ち症(頚椎捻挫)の治療方法 交通事故やスポーツで強い衝撃が首にかかって頚椎捻挫を起こした場合、まずは意識障害や嘔吐・手足のしびれや麻痺、下半身の症状がないかを確認します。 意識障害や嘔吐がある場合、脳にも強く力がかかって調子が悪くなっている可能性があるため安静にし、必要に応じて脳神経外科の受診をします。 手足のしびれや麻痺・下半身に症状がある場合は、頚部に強い力がかかって骨の変形や骨折もありえますので、首をなるべく動かさないようにして、安静にして病院を受診します。 病院を受診した場合、まずは骨折がないかレントゲンやCTを行い確認します。もし骨折や変形があれば医療機関で治療を行い、骨折や変形がなければ、頚椎捻挫と診断されます。 頚椎捻挫は炎症が重症にならないよう、受傷直後から1〜2日程度は冷やして安静にすることが大切です。 急性期(受傷時)の治療 安静を保つ 炎症が重症にならないように注意 冷やして安静にする(受傷直後から1~2日程度) 急性の炎症が落ち着いたら、筋肉の萎縮や硬直を防ぐためにも少しずつ動かしていきましょう。最初はストレッチや可動域訓練から始め、マッサージや軽い運動を行います。また、並行して痛み止めの内服や湿布薬を使用していきます。 急性期後の治療 ストレッチ(可動域訓練) マッサージ 日常的な普段通りの生活 痛み止め(内服) 湿布薬 牽引療法や温熱療法 ハビリテーション 急性期後は整形外科クリニックなどで、牽引療法や温熱療法や通院リハビリテーションを行うケースもあります。慢性化する場合は、さらに鍼治療・漢方薬・精神療法・認知行動療法といった、補完的な治療も必要です。 また、癒着した筋膜に生理食塩水を注入するハイドロリリースや、神経根に対して局所麻酔を投与してしびれや痛みを軽快する神経ブロックなどもペインクリニックなどで検討されます。 むち打ち症(頚椎捻挫)の完治期間 症状が軽快するまで通院を行うことが一般的です。軽症であれば1カ月弱で改善しますが、数カ月通院を必要としたり場合によっては慢性化するケースもあります。 特に交通事故やスポーツ外傷の場合は保険も関わってきますから、医師とよく相談し、必要に応じて積極的な通院が必要です。 軽いものであれば自然に軽快しますが、むち打ち症(頚椎捻挫)が完治しないうちにまた強い衝撃が加われば頚椎捻挫が重症化する可能性もあります。 とくにスポーツ外傷では軽快するまでむち打ち症になりかねない激しい運動への復帰は控えましょう。 もし、むち打ち症(頚椎捻挫)後、症状がこれ以上改善しない場合は、症状固定と判断され、行為障害診断書を発行したのち後遺障害等級の認定を受けることも検討する必要があります。 後遺症は以下の通りです。 多くの場合、14級や12級で認定します。 むち打ち症(頚椎捻挫)後遺障害等級 1級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に要介護 2級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護 3級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、生涯働けない 5級 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特とくに軽易な労務以外働けなくなった 7級 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外働けなくなった 9級 神経系統の機能または精神に障害を残し、就ける仕事の程度が制限された 12級 局部に頑固な神経症状を残す 14級 局部に神経症状を残す *症状固定となると、治療費、休業補償などは打ち切られますが、後遺障害等級の認定を受けることで、後遺障害慰謝料などが受け取れるようになります。弁護士や保険会社とよく相談の上、医師に認定を相談してみてください。 *症状固定とは ケガや病気を治療する上で治療を続行したとて現在の症状以上の改善を見込むことが難しいと判断された状態を指します。 まとめ|むち打ちを早く治すなら医師の指示を守ろう むちうち症(頚椎捻挫)は交通事故やスポーツ外傷で起きてしまうことが多いです。慢性化して日々痛みに悩まされることにもなりかねません。 また、むち打ち症には4つのタイプがあり(捻挫型、神経根型、脊髄型、Barre-Lieou型)、それぞれ異なる症状を示します。 治療方法としてはまず安静にし炎症を抑えることが重要です。その後ストレッチやマッサージ、湿布薬の使用などを行い、必要に応じて整形外科での治療を受けましょう。 治療期間は症状の重さによって異なりますが、一般的には数週間から数カ月かかることがあります。慢性化した場合は、補完的な治療や後遺障害の認定を受けることも考えねばなりません。 むち打ち症状を疑う場合は最寄りの整形外科医を受診するか、当クリニックにご相談ください。ちょっとした悩みでも真摯に対応いたします。
2024.04.29 -
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- 再生治療
減圧症では、体内にできた気泡が神経や関節、血流に影響を与えることで、治療後もさまざまな症状が続くことがあります。 とくに重症例や治療までの時間が長かった場合には、後遺症として症状が長引くこともあります。 しかし、後遺症といっても必ずしも一生続くわけではなく、経過観察やリハビリによって回復が見込めるケースも少なくありません。 本記事では、減圧症の後遺症として現れやすい症状の例や回復までの目安、再発を防ぐための注意点などについてわかりやすく解説します。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 気になる症状や再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 減圧症の後遺症で主な症状とその特徴 減圧症は早期に治療を受けることで多くの場合改善が期待できますが、重症度や治療までの時間、個人の体質などによっては後遺症が残る場合があります。 ここでは、減圧症の後遺症としてよく見られる主な症状と、その特徴について解説します。 関節痛・筋力の低下 減圧症の後遺症で比較的多く見られるのが、関節や筋肉に痛みや違和感が残るケースです。 これは関節内にできた気泡や周囲の組織へのダメージが原因とされ、軽い痛みが長引く可能性があります。 さらに重症化すると、筋力の低下やしびれが進行して歩行障害を引き起こす場合もあり、日常生活に支障をきたすことがあります。 手足のしびれや感覚異常 手足のしびれや感覚の鈍さは、減圧症の後遺症としてみられる症状のひとつです。 とくに指先や足先など、末端部分に症状が出やすく、これは神経内に発生した気泡や血流の障害が原因とされています。 軽い場合は数日から数週間で自然に軽快することもありますが、長く続く場合には神経にダメージが残っている可能性も考えられます。 めまい・疲労感・集中力の低下 脳や中枢神経系に気泡ができた場合には、めまいや頭痛、慢性的な疲労感、集中力の低下といった症状が後遺症として残る場合があります。 上記症状は一見すると減圧症とは結びつきにくいため、「なかなか疲れが取れない」「集中できない」といった変化を見過ごしがちです。 さらに、精神的なだるさや注意力の低下は日常生活や仕事に影響を及ぼすため、放置すると生活の質を下げる原因にもなります。 後遺症が残るケースの特徴 減圧症の後遺症が残るかどうかは、さまざまな要因によって変わります。 治療を始めるまでの時間が長いほど、気泡による組織へのダメージが進行し、後遺症が残りやすくなるとされています。 また、重症度が高かったケースや、高齢者は回復力が低下していることもあり、症状が長引く傾向があります。 適切な治療を早期に受けること、経過観察を怠らないことが後遺症を軽減するための重要なポイントです。 後遺症は自然に治る?回復の目安と経過観察のポイント 減圧症の後遺症は、症状の種類や重症度、治療を始めたタイミングなどによって回復の経過は大きく変わります。 ここでは、自然に改善するケースと、長期的な経過が必要なケース、それぞれの対応やポイントについて解説します。 数日〜数週間で改善する場合 減圧症による軽度の神経症状や感覚異常は、治療後に数日から数週間程度で自然に回復するケースが多いです。 たとえば、軽いしびれや関節の違和感は、血流の回復や神経の炎症が落ち着くことで徐々に改善します。 ただし、症状が軽いからといって自己判断で経過を見続けるのではなく、医師の指導のもとで様子をみることが大切です。 経過観察により後遺症を早期に発見すれば、適切な処置が受けられます。 後遺症が長期的に続く場合の対応 減圧症の後遺症は、短期間で症状が回復するケースがある一方で、症状が長期的に続くケースもあります。 重症度が高い場合や治療開始が遅れた場合、神経や関節などの組織にダメージが残りやすく、数か月から年単位で経過を見る必要が出てきます。 このような場合は、定期的な神経検査による評価や、後遺症の進行を抑えるための経過観察が重要です。 また、高気圧酸素治療を追加で行ったり、理学療法やリハビリを通じて筋力や可動域を維持・改善したりすることも有効です。 医療機関と連携し、根気強く対応することが回復を支えます。 早期治療が後遺症リスクを減らす 減圧症では、発症から治療までの時間が後遺症のリスクに大きく影響します。 後遺症を防ぐためには症状が軽く見えても油断せず、早めに医療機関を受診することが大切です。 不安を感じたらすぐに相談する姿勢を持ちましょう。 減圧症の後遺症が疑われるときの対処法 減圧症の後遺症が疑われる場合は、以下のような症状が現れていないか確認しましょう。 激しい頭痛やめまいが続く 意識がぼんやりする、混乱が見られる 手足の麻痺や強いしびれが進行している 呼吸が苦しい、胸の痛みを伴う 歩行が困難になるほどの筋力低下 これらの症状は、神経や循環器の深刻な障害が関係している可能性があり、放置すると後遺症が悪化するおそれがあります。 気になる症状がある場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。 また、後遺症が疑われるときは、減圧症を診療した経験のある医療機関を受診するのが望ましいです。 高気圧酸素治療を行っている専門施設をはじめ、神経内科では神経症状の評価や治療を、整形外科では関節痛や運動機能の評価を、リハビリテーション科では機能回復や生活指導を担当します。 症状の内容や重症度によって適切な診療科は変わるため、まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらう方法も有効です。 減圧症の再発を防ぐためにできること 減圧症は一度発症すると、体の状態やダイビングの習慣によっては再発のリスクが高まる場合があります。 後遺症が残る不安を減らし、安全にダイビングを楽しむためには、日頃からの対策が欠かせません。 ここでは、減圧症の再発を防ぐために意識したい3つのポイントを紹介します。 安全なダイビング計画を立てる 健康状態の自己管理 後遺症がある人のダイビング再開はまず専門家に相談する それぞれのポイントについて、詳しくみていきましょう。 安全なダイビング計画を立てる 減圧症を防ぐための基本は、無理のない安全なダイビング計画を立てることです。 急浮上を避け、適切な浮上速度を守る、安全停止を確実に行うなど、ダイビング中の基本動作を徹底しましょう。 また、無減圧潜水時間や水深なども十分に管理し、複数ダイブを行う際はしっかりと間隔を空けるなど、計画段階からリスクを減らす工夫が重要です。 健康状態の自己管理 身体のコンディションは減圧症のリスクに大きく影響します。 脱水状態や過度な疲労、風邪などの体調不良は、血液循環や代謝を乱し、気泡の排出を妨げる要因となります。 ダイビング前日は十分な睡眠をとり、飲酒は控え、水分補給をしっかり行うなど、自分の健康状態を万全に整えることが再発予防には欠かせません。 後遺症がある人のダイビング再開はまず専門家に相談する すでに減圧症の後遺症が残っている場合、再発リスクを最小限に抑えるためには慎重な判断が必要です。 自分の判断だけでダイビングを再開するのではなく、担当医や高気圧酸素治療の専門医など、専門家への相談を強くおすすめします。 症状の程度や体調、潜水計画を含めた総合的なリスク評価を受けることで、安全性を高め、安心して趣味を続けられる可能性が広がります。 まとめ|減圧症の後遺症は放置せず専門家に相談することが大切 減圧症は適切な治療を受けることで多くの場合は改善しますが、場合によっては手足のしびれや関節痛、めまいや集中力の低下などの後遺症が残る可能性があります。 こうした症状を「そのうち治るだろう」と放置してしまうと、回復が遅れたり、生活への支障が大きくなったりする場合があります。 大切なのは、気になる症状が続く場合や変化を感じたとき、迷わず医療機関を受診し専門家に相談することです。 早期の対応や経過観察、リハビリを通じて後遺症のリスクを減らし、安心してダイビングを続けるためにも、正しい知識を持ち、適切な行動を心がけましょう。
2024.01.25 -
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「水中世界を楽しみたいけれど、ダイビング後の体調不良が心配……」 「高地登山は魅力的だけど、体調が悪くなったらどのように対処したら良いの?」 ダイビングや登山などのレジャーに伴う体調変化について、不安や疑問を感じている方もいるでしょう。 減圧症は、潜水や高地登山などで急激な気圧変化が起きた際に発症する場合があり、放置すると深刻な後遺症を残すケースも珍しくありません。 本記事では、減圧症を発症する仕組みや症状について解説します。誰にでもできる予防法も紹介するので、正しい知識を身につけ、安心してアウトドアを楽しみましょう。 減圧症とは?発症する仕組み 減圧症とは、周囲の気圧が急激に低下する環境において、体内に吸収されていた窒素などの不活性ガスが気泡となり、体内組織や血管内で問題を引き起こす現象です。 急激な気圧変化が起こる状況としてよく挙げられるのは、スキューバダイビングや急激に18,000ft(約5,500m)以上まで上昇する高地登山などです。 私たちの体は呼吸を通じて空気中の窒素ガスを取り込みますが、気圧や水圧が高い場所では、通常よりも多くの窒素ガスが血液や体組織に溶け込みます。 急激に気圧や水圧が低い場所へ移動すると、体内に溶け込んでいた窒素を気体の状態に戻し、気泡を発生させる原因へとつながります。 気圧変化によって発生した気泡は、血管を塞いだり神経を圧迫したりするため、しびれやめまいなどの症状を引き起こすケースも少なくありません。 気圧変化の大きいスキューバダイビングや高地登山をする際には、適切な知識と慎重な行動が求められます。減圧症を予防できるよう、発症のメカニズムを理解しておきましょう。 減圧症の症状と分類をわかりやすく解説 軽度の減圧症で発症する症状は、以下のとおりです。 関節や筋肉の痛み 皮膚の湿疹やかゆみ 疲労感 吐き気や頭痛 注意力散漫 ただし、減圧症は症状の現れ方や重症度によってⅠ型とⅡ型に分類されます。重症度で影響を受ける部位や対処法が異なるため、症状の特徴を理解するのが重要です。 ここでは「Ⅰ型減圧症」と「Ⅱ型減圧症」について、具体的な症状を交えながら詳しくみていきましょう。 減圧症の症状については、こちらの記事も参考にしてください。 Ⅰ型減圧症 Ⅰ型減圧症は比較的軽度の症状が中心で、主に筋肉や関節、皮膚およびリンパ管に異常が現れます。典型的な症状は、以下のとおりです。 関節の痛みや筋肉痛 かゆみ 皮膚の斑点や発疹 腕のむくみ 胸部や腹部の腫れ 極度の疲労 Ⅰ型減圧症の場合、腕や脚の関節・背中・筋肉に痛みを感じます。痛みが出る部位をはっきりと特定できないケースも珍しくありません。 初期段階での痛みは軽く断続的ですが、徐々に強く感じるようになり、動かすと悪化します。また、リンパ系が影響を受けると、腕や脚の腫れが見られるケースがあるのも事実です。 Ⅰ型は一見すると疲労や打撲に似た軽い違和感から始まるため、見逃されやすい傾向がありますが、早期に発見すれば大きな後遺症は残りません。 症状が軽度であっても放置せず、潜水・登山歴や行動内容と照らし合わせて慎重に評価する必要があります。 Ⅱ型減圧症 Ⅱ型減圧症はⅠ型よりも重篤で、神経系や呼吸器系、循環器系に深刻な影響を及ぼす可能性がある危険な状態です。具体的な症状は以下のとおりです。 めまい ろれつが回らない 手足のしびれや麻痺 視覚障害 聴覚障害 記憶障害 胸の痛みや咳と 不整脈 ショック状態 上記をはじめとするII型減圧症の症状は、脊髄や脳、心臓、肺などの重要な器官の血管が気泡によって閉塞したり、組織が圧迫されたりすると引き起こされます。 また、減圧症の長期的な影響として、減圧性骨壊死という骨の障害を引き起こすケースもあります。骨障害は、肩関節や股関節に起こる症例が多いのも事実です。なかでも、大腿骨頭壊死が起こると歩行障害などの影響が出るだけでなく、重症な場合には手術が必要となるケースも珍しくありません。 Ⅱ型減圧症は、迅速かつ専門的な治療を必要とする病気です。後遺症が出るリスクもあるため、疑わしい場合は直ちに医療機関を受診しましょう。 減圧症の治し方 減圧症を発症した場合、体内で生じた気泡を縮小させ、組織への酸素供給を改善する治療が基本です。症状の重症度や種類に応じて治療法は異なりますが、主に専門的な医療機関での処置が必要です。 ここでは、減圧症の代表的な治療法である「高気圧酸素療法」と「再圧治療」について、特徴と効果を詳しく解説します。 減圧症の応急処置や治療方法については、こちらの記事も参考にしてください。 また、後遺症でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 高気圧酸素療法 高気圧酸素療法は、患者様を「高気圧酸素治療装置(チャンパー)」と呼ばれる装置内に入れ、大気圧よりも高い気圧環境下で高濃度の酸素を吸入させる治療方法です。 高い気圧によって、体内の気泡は物理的に圧縮され小さくなります。また、高濃度の酸素を吸入すると血液中に溶け込む酸素量が増加し、気泡によって酸素不足に陥った組織への酸素供給を促進します。 高気圧酸素療法は、Ⅰ型減圧症からⅡ型減圧症まで、幅広い症状に対して有効性が認められており、多くの医療機関で採用されている治療方法です。治療は早期に実施するほど効果が高く、神経症状の改善や回復時間の短縮が期待できるでしょう。 再圧治療 再圧治療は、とくに重症なⅡ型減圧症や高気圧酸素療法だけでは十分な改善が見られない場合に選択される、より強力な治療方法です。 症状が消失するか大幅に軽減する気圧を「再圧チャンパー」と呼ばれる治療装置内で再現し、ゆっくりとした速度で慎重に減圧していきます。徐々に減圧すると、体内に残る気泡を確実に縮小させ、再度溶解させる効果が期待できます。 再圧治療を実施できる施設は限られていますが、重篤な神経症状や意識障害を伴うケースでは、救命や後遺症軽減のために重要な治療方法です。 減圧症の予防ポイント6つ 減圧症は正しい知識と行動で十分に予防できる疾患です。とくに、ダイビングや高地登山などの気圧差の大きな環境下では、事前準備と行動の工夫が減圧症発症のリスクを大きく左右します。 ここでは、減圧症を予防するためのポイントを6つに分けて解説するので、ダイビングや登山の予定がある方はぜひチェックしてください。 ①潜水前の注意 潜水前には体調を整え、十分な睡眠を取るのが大切です。前日はアルコールを控え、疲労を残さないように注意してください。 風邪や鼻づまりがあると、周囲の水圧と体の圧力を同じに保つための耳ぬきをはじめとする圧平衡(あつへいこう)が上手くできず、気圧変化の影響を強く受けるため、無理な潜水は避けることをおすすめします。 また、以下のリスクがある方は、医師に事前に潜水をして良いか、確認しましょう。 卵円孔開存(らんえんこうかいぞん)や心房中隔欠損などの心臓の病気 疲労 肥満 高齢 経験やスキルレベルに見合った無理のない深度や潜水時間で潜水を計画するのが大切です。 ②潜水時の注意 急激な深さへの潜水や長時間の潜水は避け、適切な休憩を取りましょう。 潜水中はゆっくりとした下降と浮上を心がけ、急激な圧力変化を防ぐのが重要です。浮上する際は、ダイビングの種類によって1分間に9~18メートルを最大浮上速度とします。さらに、水深3~4m地点で3~5分間の安全停止時間を設けるのも、水圧の平衡を保つために推奨されています。 深く長く潜るほどリスクは高まるため、無理のない計画が必要です。体調に異変を感じたら、無理せず速やかに安全な方法で潜水を中止し、バディやインストラクターに知らせてください。 ③潜水後の注意 潜水直後は激しい運動や高所への移動を避け、身体を休ませる時間を確保します。 潜水回数や深度によって異なりますが、潜水後12〜24時間以内に飛行機に乗ると、減圧症のリスクが高まるといわれています。潜水後、飛行機に乗る予定がある場合は、12〜24時間ほど海抜0mの場所にとどまり、一定期間の休息が取れるようにしましょう。 潜水後は体調変化に十分注意を払い、万が一、関節痛や皮膚のかゆみ、しびれ、めまいなどの減圧症を疑う症状が現れた場合は、速やかに専門の医療機関に相談してください。 ④高地登山の適切な計画 登山前には、適切な標高への適応期間を確保し、急激な標高の変化を避けるよう計画しましょう。 登山中に急激な標高の変化があると、大気中の酸素濃度が減少し、減圧症が引き起こされるケースがあります。急激に標高を上げるのではなく、数日かけて徐々に体を高地の気圧に慣らしましょう。 登山中も、常にゆっくりとしたペースを心がけ、呼吸が乱れないように注意しましょう。十分な睡眠と休息も、高所での体調管理には欠かせません。 万が一、頭痛や吐き気、めまい、息切れなどの高山病の初期症状や、減圧症を疑う症状が現れた場合は、無理をせず直ちに下山を開始するのも重要な対処法です。 ⑤十分な水分摂取 十分な水分摂取は、体内の水分バランスを整えるだけでなく、減圧症の予防において重要です。 脱水状態に陥ると、血液のねばり気が高まります。血液がドロドロになると血流が悪化し、体内に溶け込んだ窒素ガスが気泡となった際に体外へ排出されにくくなったり、血管内で詰まりやすくなったりする減圧症のリスクが高まります。 活動中だけでなく、活動前後も意識的に水分を摂取するのが大切です。とくに、活動中はこまめに水分補給を行い、喉の渇きを感じる前に飲むように心がけましょう。 摂取する飲み物は、水やスポーツドリンクがおすすめです。アルコールやカフェインを多く含む飲料は利尿作用があり、かえって脱水を引き起こす可能性があるため、控えるようにしてください。 ⑥専門家のアドバイスを仰ぐ 潜水や高地登山などの活動前には、専門の医師や指導者・ガイドなどに相談し、適切なアドバイスを受けましょう。個人の体調や経験値に応じたアドバイスを受けられるため、より確実な予防が可能です。 以下の条件に当てはまる方は、潜水や高地登山前に潜水医学や高山医学に詳しい医師の診察を受けるのをおすすめします。 健康状態に不安がある方 循環器系や呼吸器系に持病がある方 過去に減圧症を発症した経験がある方 また、経験豊富な指導者やガイドは、個々のスキルレベルや経験に応じた安全な計画と、現地状況や特有のリスクに関する情報を提供してくれます。 自己判断に頼らず、専門家のアドバイスを受ける行動が重要です。 まとめ|減圧症の予防ポイントを押さえて安全なダイビング・登山をしよう 減圧症は、体内に溶け込んだ窒素が急激な気圧変化で気泡化することで起こる病気です。 Ⅰ型は関節痛や皮膚の異常など比較的軽度な症状が多く、Ⅱ型は神経や呼吸器に深刻な影響を及ぼします。治療には高気圧酸素療法や再圧治療が用いられますが、いずれも早期対応が重要です。 減圧症予防には、活動前後の体調管理や水分補給、安全な活動計画などを徹底しましょう。 しかし、適切な予防法を心がけても、減圧症による脊髄障害や脳障害によって麻痺などの症状が残ってしまう場合もあります。 減圧症による脊髄損傷に対しては、リハビリテーションやステロイドなどの薬物治療が一般的ですが、根本的な治療方法はありませんでした。 当院では、幹細胞治療として、ご自身の脂肪から培養した脂肪由来間葉系幹細胞治療を行っています。 減圧症などで脊髄損傷を起こしてしまった方で、再生医療にご興味のある方は、ぜひ1度当院までご相談ください。
2024.01.17 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
減圧症(潜水病)は、水圧の急激な変化によって体内に気泡が発生することで発症します。 とくにダイビングや潜水後に起こる可能性がある障害で、軽度であれば自然に回復するケースもありますが、症状を見極めた適切な対処が大切です。 本記事では、軽度の減圧症に見られる症状や自然治癒のセルフケア、そして治療法や予防策までをわかりやすく解説します。 減圧症(潜水病)とは?軽度なら自然治癒も可能 減圧症は、水中から水面浮上時に起こる急激な気圧環境の変化によって、体内に溶け込んだ窒素などのガスが急激に気泡化し、関節、筋肉、神経、皮膚、血管などに悪影響を及ぼすことで発症します。 減圧症の症状は、関節痛や筋肉痛、めまい、意識障害など多岐にわたり、症状の重さによって大きく2つに分類されます。 I型減圧症(軽度): 命に関わらない比較的軽い症状が中心で、場合によっては自然に回復するケースもあります。 例:関節痛や皮膚のかゆみ、疲労感、皮下浮腫(浮腫性減圧障害)など II型減圧症(重度): 神経系や循環器系に影響が及び、重篤な症状を引き起こすため、早急な治療が必要です。 例:意識障害や麻痺、呼吸困難など 軽度の減圧症は自然治癒する場合もありますが、自己判断で放置すると思わぬ悪化を招くこともあります。 正しい知識を持ち、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。 軽度の減圧症のチェックリストとセルフケア 減圧症は、症状の程度によって対応が異なります。 本章では、軽度の減圧症によく見られる症状のチェックリストと、症状が出たときにできるセルフケアについて解説します。 軽度の減圧症に見られる主な症状|チェックリスト 減圧症は軽度の場合、自然治癒が期待できるケースもありますが、早期発見と適切な対応がなにより重要です。 以下は、軽度の減圧症に該当する可能性がある代表的な症状です。 ダイビングや潜水後に当てはまるものがないかセルフチェックしてみましょう。 【症状セルフチェックリスト】 関節や筋肉の痛み(鈍い痛みや違和感を含む) 皮膚の発疹やかゆみ(特に上半身) 強い疲労感やだるさ 吐き気、頭痛、軽いめまい 注意力の低下や集中できない感じ 上記の症状が1つでも現れた場合は、「軽度だから大丈夫」とは考えず、速やかに適切な対応を取りましょう。 軽症の減圧症で自然治癒に向けたセルフケア 軽度の症状が見られた場合でも、放置せず次の対応を取ることで自然回復が期待できます。 ◆症状の確認と潜水の中断 自分に該当する症状があるか冷静に確認しましょう。 症状が出た時点で、すぐに潜水を中止し、水中から浮上します。 ◆酸素吸入の応急処置 ダイビング中にフェイスマスクで酸素吸入できる準備がある場合は、迷わず活用してください。 これは、体内の窒素を早く排出するのに役立ち、症状の悪化防止にもつながります。 可能であれば100%酸素を吸入することが推奨されています。 ◆医療機関の受診 症状が軽くても長引く場合、あるいは少しでも不安がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 自己判断に頼りすぎると、症状が悪化し重症化する可能性も否定できません。 軽度の減圧症は、初期対応が適切であれば自然に回復することもありますが、油断は禁物です。 「軽い症状でも酸素」「不安なら医師に相談」という基本を忘れず、安全を第一に行動しましょう。 重度の減圧症に見られる主な症状(タイプ) 減圧症の中でもII型減圧症と呼ばれる重症タイプは、神経系や呼吸器、循環器などの重要な臓器に障害を及ぼす可能性があり、生命に関わるケースもあります。 本章では、重度の減圧症に見られる以下、4つの症状(タイプ)を紹介します。 脳型減圧症 脊髄型減圧症 呼吸器の減圧症(チョークス) 減圧性骨壊死 脳型減圧症 脳型減圧症は、体内で気泡が血流を妨げたり、直接的に脳組織を損傷することで発症します。 正確なメカニズムは完全には解明されていないものの、脳卒中に似た神経症状が現れるのが特徴です。 脳型減圧症の主な症状は、次の4つです。 強い頭痛 複視(二重に見える) 発話のしづらさ(言葉が出てこない) 錯乱や意識の混濁 上記の症状が出た場合は、ただちに医療機関を受診する必要があります。 脊髄型減圧症 脊髄型減圧症は、II型減圧症の中でもとくに多く見られるタイプで、脊髄に気泡ができることで神経伝達が阻害されます。 初期は軽いしびれや痛みであっても、対応が遅れると麻痺や排泄障害に進行する危険があります。 脊髄型減圧症の主な症状は、次の4つです。 筋力の低下(動きにくい、力が入らない) 手足のしびれや痛み 腹部や背中の痛み 排尿・排便のコントロールができない(膀胱直腸障害) 時間の経過とともに悪化するケースが多いため、違和感を覚えた段階で専門医の診察を受けることが重要です。 呼吸器の減圧症 呼吸器の減圧症(通称:チョークス(chokes))はまれですが、重篤な症状を引き起こす可能性があります。 肺に気泡が生じることで肺水腫を起こし、酸素と二酸化炭素のガス交換が正常に行えなくなるため、酸素不足に陥る危険性があります。 呼吸器の減圧症の主な症状は、次の3つです。 胸の痛み 息切れや呼吸困難 咳(とくに泡状の痰が出る場合) 肺の細い血管が詰まり、全身への血流が阻害されると、最悪の場合致命的になる可能性もあるため、ただちに高気圧酸素治療を要します。 減圧性骨壊死 重度の減圧症の中には、長期間を経て発症する遅発性の合併症もあります。 代表的な合併症に減圧性骨壊死があり、これは、繰り返し潜水したり、短期間に高圧環境に頻繁に出入りすることで、骨の血流が障害され壊死が起こる状態です。 主に影響を受ける部位は次の2つで、進行すると関節の動きが制限されたり、痛みで日常生活に支障が出ることがあり、場合によっては手術が必要になることもあります。 肩関節 股関節(大腿骨頭) とくに職業的に潜水を行う人は、定期的な健康チェックが推奨されます。 減圧症の治療 減圧症の治療で、まず行うべき処置は、100%酸素の吸入です。 体内に気泡化した窒素を早く排出するため、フェイスマスクなどで高濃度の酸素を吸うことが推奨されます。 あわせて、脱水対策として水分補給も行います。 口からの摂取が難しいときは、点滴による水分・電解質の補充が必要です。 症状が持続する、または重度の減圧症が疑われる場合は、専門医療機関での「高圧酸素療法(再圧治療)」が行われます。 高圧酸素療法は、高気圧環境で100%酸素を吸入することで、体内の気泡を縮小・除去し、損傷組織への酸素供給を促す治療です。 とくに、神経症状や呼吸器症状が出ている場合は早急な実施が求められます。 また、意識障害や心肺停止が見られる場合には、心臓マッサージや人工呼吸などの救急対応が必要になります。 軽度の症状でも自然治癒に任せず、医療機関での診断と治療を受けることが大切です。 減圧症の予防策 減圧症は、正しい知識と対策を講じることで、発症リスクを大きく減らすことができます。 とくにダイバーや潜水作業者は、事前の準備と潜水後の対応を徹底することが重要です。 以下表は、減圧症を予防するために押さえておきたい基本的な行動です。 予防策 内容 潜水前後の体調管理 疲労・脱水・風邪などがあると減圧症のリスクが高まるため、体調が万全でない日は潜らない 減圧停止の遵守 浮上時に段階的に停止し、体内の窒素を安全に排出する 無理のない潜水計画 潜水深度・時間を事前に計画し、無理のないスケジュールで行動する 潜水後すぐの飛行を避ける ダイビング後は最低でも12〜24時間、飛行機搭乗を控えることが推奨されている ダイブコンピューターの使用 減圧停止や浮上スピードを正確に管理し、安全性を高める 減圧症の予防は、潜水時の注意だけでなく、日常生活の中でも取り組める習慣がいくつかあります。 頻繁に潜る場合は間隔を十分に空ける 水分補給をこまめに行い、脱水を防ぐ 飲酒や喫煙は潜水前後には控える 定期的に減圧症の知識を学び直す(講習会・安全講座など) 肥満、循環器疾患、糖尿病などの持病がある人は医師と相談する 安全に水中活動を楽しむためにも、常にリスクを意識し、正しい手順と知識に基づいた行動を心がけましょう。 まとめ|軽症でも油断禁物!適切な対応を知ることが再発や後遺症を防ぐ鍵 本記事では、初期に現れる軽症状から、神経系や呼吸器系に深刻な影響を及ぼす重症例まで幅広く解説しました。 減圧症は、軽度であっても油断は禁物です。 軽度の減圧症であれば、チェックリストを活用した早期の気づきと、酸素吸入や潜水の中止など適切な初期対応によって、自然治癒が期待できるケースもあります。 しかし、症状を見逃したり、対応が遅れたりした場合には、脊髄損傷などの後遺症が残る可能性があり、完治が難しいケースもあるのが現実です。 とくに脊髄型減圧症による麻痺などは、これまで有効な治療法が限られていました。 そうした中で、脂肪由来幹細胞を用いた再生医療が、新たな治療法の選択肢として考えられています。 この治療では、自身の脂肪から培養した幹細胞を脊髄に直接注入します。 万が一、減圧症による後遺症に悩んでいる方や再生医療に興味のある方は、ぜひ一度当院「リペアセルクリニック」までご相談ください。
2024.01.08 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
子どもや若い人も発症する可能性がある、もやもや病に不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。 もやもや病は、脳内の動脈が徐々に細くなったり詰まったりした結果、不足した脳内の血液を補うために、もやもやとした血管が作られる状態を指します。脳出血や脳梗塞のリスクがあるので早期の発見と適切な治療を受けるのが重要です。 この記事では、もやもや病の原因や症状、治療法を解説します。 もやもや病の理解を深めるのにお役立てください。 もやもや病とは指定難病の一つ もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)は、脳の血管が細くなり血流が不足して、手足の麻痺やけいれんなどを引き起こす疾患です。ウィリス動脈輪とは六角形のような形をしている脳内の動脈の一部で、脳に血液を循環させるのが主な役割です。 不足した脳の血流を補うために、もやもやとした細い血管が発達するので「もやもや病」と呼ばれています。もやもや病は、以下の内容をどちらも満たしているので、指定難病として厚生労働省に定められています。(文献1) 患者数が一定の人数より少ない 病気の診断基準が確立している もやもや病の患者数は、人口10万人につき6から10人程度いるとされていて、稀な病気であるといえます。(文献2) もやもや病の症状や治療の状況によって医療費の助成を受けられる場合があります。助成には申請が必要なので、お住まいの都道府県の窓口に問い合わせてみましょう。 【参考】 都道府県・指定都市担当窓口 – 難病情報センター もやもや病の原因 もやもや病は、脳内の太い血管(内頚動脈)が細くなることで発症する疾患です。 その発症メカニズムは完全に解明されていませんが、病気の進行過程は以下のような段階で進みます。 脳内の太い血管である内頚動脈が少しずつ細くなる 脳内の酸素や栄養が不足する 足りない血液を補うために、もやもやとした細い血管が作られる 内頚動脈が細くなると、血液不足を補うため新たに細い血管が多数作られます。これらの細い血管に多量の血液が通るため、脳出血や脳梗塞のリスクが高まります。 もやもや病になりやすい人 もやもや病になりやすい方には、以下のような傾向があります。(文献3) 日本人 ご家族でもやもや病を発症した 女性 5~10歳 30~40歳 もやもや病は、特定の遺伝子をもつ方に発症しやすいことがわかっており、家族内で発症する方が10~20%程度見られるという研究結果があります。そのため、親や兄弟姉妹などがもやもや病を発症した方で、もやもや病の症状がみられる方には、脳神経外科での検査をおすすめします。 もやもや病と遺伝の関係について以下の記事でまとめていますので、詳しく知りたい方はご覧ください。 もやもや病の症状 もやもや病では、主に以下の二つのメカニズムによって症状が現れます。 血流不足が原因の場合 脳の出血が原因の場合 本章で説明するこれらの症状に当てはまる方は、脳出血や脳梗塞などの重大な病気を発症する前に医療機関を受診をしましょう。 血流不足による症状 もやもや病によって脳の血流が不足した場合の症状は、以下の通りです。 頭痛 手足のしびれ 言葉が話せない 手足の麻痺 ろれつが回らない けいれん 脳内の血流が不足すると、頭痛や手足のしびれ、ろれつが回らないなどの症状が一時的にみられます。 多くは数分~数十分程度で症状が改善されますが、まれに脳梗塞を引き起こす場合があります。脳梗塞とは、脳内の血流が不足することで、脳細胞が壊死する疾患です。症状が回復しても、もやもや病を発症している可能性があるので医療機関への受診を検討しましょう。 また、子どものもやもや病は脳の血流不足によるものがほとんどです。楽器の演奏や息が切れる運動がきっかけで症状が出る場合があります。子どものもやもや病について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 脳出血による症状 もやもや病によって脳内に出血が起きた場合の症状は、以下の通りです。 激しい頭痛 手足の麻痺 ろれつが回らない 言葉が出ない 意識がなくなる 自分の意に反して手や足が動く けいれん 注意力や記憶力の低下(高次脳機能障害) 脳内の血流不足を補うため、もやもやとした細い血管に多くの血液が送り込まれると、血管が耐え切れずに破れる場合があります。出血型の症状は、40代前後に多くみられる点も特徴です。 出血する部位や量によりますが、激しい頭痛や言葉が出なくなる言語障害、意識がなくなる意識障害などを引き起こし命に関わる状況につながりかねません。 また、出血型の症状の後遺症には麻痺や手足のしびれ、高次脳機能障害などが挙げられます。高次脳機能障害とは、脳の機能が低下して物忘れの増加や注意力の低下、感情のコントロールが難しくなるなど「性格が変わった」と感じるような症状が現れます。 もやもや病の後遺症は日常生活に大きな影響を与える恐れがあるため、早急に医療機関を受診しましょう。 もやもや病の検査 もやもや病の主な検査の内容は以下の通りです。 CT・MRI・MRA:詰まっている血管やもやもや血管、脳出血の有無を調べる 脳血管造影検査:血管の状態を調べる 脳血流検査(SPECT(スペクト)検査):どれくらい血流が低下しているか調べる もやもや病の検査は脳神経外科で行われるのが一般的で、CTやMRIでもやもや血管の有無や詰まっている血管がないかなどを確認します。 血管の状態をMRIよりも詳しく調べるには、脳血管造影検査が有効です。脳血管造影検査は、足の付け根の血管から、カテーテルと呼ばれる長い管を入れ、血管内に造影剤を入れてレントゲン撮影する検査です。 また、脳の血流を調べるには、放射性同位体と呼ばれる薬剤を投与して、放射線を画像化できるカメラで撮影します。検査に使用する放射性同位体は人体に影響を及ぼす量ではありません。 もやもや病の治療法 もやもや病の治療法は、薬物療法と外科手術の2つに分けられます。 症状によって治療法が異なるので、受診の際の参考にしてください。 薬物療法 薬物による主なもやもや病の治療法は、以下の通りです。 抗血小板薬:血液を固まりにくくして血流不足を防ぐ 血圧や脳圧を下げる薬:脳出血を防ぐ もやもや病の薬物治療では、血液をサラサラにする薬や血圧を下げる薬などで脳梗塞や脳出血の予防を目指します。しかし、現在もやもや病の原因である細くなった内頚動脈を根本的に治療する薬はありません。そのため、無症状の方や初期症状の方に用いられます。 手術 脳内の血流が少ない場合や、もやもや血管の負担が大きい場合は手術が検討されます。 主なもやもや病の手術は、以下の2種類です。 直接血行再建術:血流が不足している血管と、頭皮に栄養を送る血管をつなぎ脳の血流を増加させる 間接血行再建術:脳を包む膜に、こめかみ付近の動脈と周囲の組織を縫い合わせて、新たな血管の再建を目指す 直接血行再建術は、手術後からすぐに血流が改善されますが、間接血行再建術では、新たに血管が再建するまで数週間から数カ月かかる場合があります。また、間接血行再建術は子どもに対して効果が期待できる傾向にあるので、成人には行わない病院もあります。 もやもや病の原因である細くなった動脈を治療する手術はできないとされています。手術後に血流が改善しても、もやもや病が再発する可能性があるので定期的に検査を受けましょう。 まとめ|もやもや病の疑いがある方は医療機関を受診しよう もやもや病は、脳の血管が細くなり血流が不足して、手足の麻痺やけいれんなどを引き起こす疾患で、指定難病として厚生労働省に定められています。もやもや病が発症しやすい方は、子どもや30〜40代の若い世代に多いのが特徴です。 もやもや病によって脳内の血液が不足したり、もやもや血管の負担が大きくなり損傷したりすると、麻痺や手足のしびれ、うまく話せなくなるなどの後遺症が現れるリスクが高まります。 病状が進行すると、重篤な後遺症のリスクが高まるため、早期の医療機関受診が重要です。 以下の記事では、もやもや病の初期症状を解説しています。あわせてご覧ください。 もやもや病に関してよくある質問 もやもや病の予後や寿命への影響は? もやもや病を放置すると脳梗塞や脳出血のリスクが高まり、重い後遺症や命に関わる状況につながりかねません。 適切な治療と定期的な検査を受けると、リスクを回避できる可能性が高まります。手術後の入院期間はおよそ2~3週間、社会復帰までの期間はは2~3カ月ほどが目安です。 また、健康寿命を延ばすには、禁煙や激しい運動を避けるなど生活習慣の改善も重要です。 以下の記事では、もやもや病の予後や寿命についてまとめているので、参考にしてください。 もやもや病で性格は変化しますか? もやもや病は、性格の変化を伴う高次脳機能障害を引き起こす可能性があります。高次脳機能障害は、脳機能の低下によって日常生活に支障をきたす認知機能の障害です。 高次脳機能障害による性格の変化と考えられるポイントは、以下の通りです。 感情の起伏が激しくなる 物忘れが増える 集中力が低下する 判断力が低下する 段取りが悪くなる 高次脳機能障害の診断は、もやもや病の症状が安定してからMRIやCTでの検査や、日常生活の状況評価などから総合的に行います。もやもや病になってから、感情の起伏が激しくなったり物忘れが増えたりするなどの症状にお悩みの方は、医療機関に相談してみましょう。 もやもや病は人間ドックで調べられますか? 一般的な人間ドックでは、もやもや病が調べられる検査項目が無かったり、オプションとして追加したりする必要があります。 もやもや病を調べられる主な検査は、以下の通りです。 MRI:体内の断面を画像化する MRA:脳の血管を立体画像として書き出す 脳ドックでは、MRIやMRAによる検査ができる場合があります。 参考文献 (文献1) 厚生労働省「指定難病の要件について」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000184562.pdf(最終アクセス:2025年5月9日) (文献2) 難病情報センター「もやもや病(指定難病22)」 https://www.nanbyou.or.jp/entry/47(最終アクセス:2025年5月9日) (文献3) 厚生労働省「22 もやもや病」 https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/001173459.pdf001173459.pdf(最終アクセス:2025年5月9日)
2023.09.28 -
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- 頭部、その他疾患
子どもがもやもや病と診断されて、困っている方もいるのではないでしょうか。 もやもや病は、脳の重要な血管である内頸動脈が細くなり、代わりに細い血管が多くなる病気です。大人と子どもでは、もやもや病の症状の出方やタイプ、そして注意点が異なります。 子どものもやもや病の症状や治療法などを知っておくと、今後病気に向き合っていく際に役に立ちます。本記事では、もやもや病の大人と子どもの違いや注意すべきポイントについて徹底解説していきましょう。 もやもや病の症状|子どもと大人の違い もやもや病は、脳の血管に生じる病気で、脳でも重要な血管である「内頸動脈」の終末部が徐々に細くなっていくのが特徴です。 脳に酸素や栄養を供給する脳血管は、血管が細くなるほど脳への血流が不足します。足りなくなった血流を補うため、内頚動脈の周囲に細い血管が網のように出現します。細い血管を脳血管撮影で映し出した際、煙のようにもやもやして見える点が、「もやもや病」の名前の由来です。 もやもや病の症状は大きく分けると、脳の血流不足である脳虚血と、発達した細い血管がちぎれて発生する脳出血が挙げられます。加えて、一時的な頭痛や言語障害などの症状が出るのも特徴です。 さらに子どもと大人とでは、症状の現れ方や注意点が異なります。 子どもの症状 子どものもやもや病は、小児もやもや病と呼ばれます。脳虚血症状がほとんどで脳出血はめったに例が見られません。 脳虚血症状では、手足の力が入らなかったりしびれたりするほか、言葉がうまく出ないなどの症状が急に起こります。 また、子どものもやもや病では、過呼吸(かこきゅう)によって脳虚血発作が誘発されやすい点も特徴的です。過呼吸は血中の二酸化炭素濃度を下げ、それにより脳血管が収縮して脳虚血発作が誘発されやすくなります。日常生活では、激しい運動や興奮状態など、呼吸が速くなる状況で注意が必要です。 一過性脳虚血発作は通常、数分から数時間で自然に回復します。ただし、これらの発作が繰り返されると脳梗塞につながる可能性があるため、軽視すべきではありません。 特に小さな子どもほど病気の進行が早い傾向があり、脳梗塞を発症するリスクが高いため、注意が必要です。 大人の症状 一方で大人のもやもや病では、脳の血流不足を補うために発達した細い血管が破れて起きる脳出血が多く見られます。 脳出血は、もやもや病による死亡や後遺症の最大の原因とされている症状です。後遺症が残った場合、脳機能の低下による高次脳機能障害や、運動障害によるマヒなどが発生するケースがあります。 また、成人のもやもや病では慢性的な頭痛を訴える患者様も多く、これも重要な症状の一つです。 もやもや病の検査 もやもや病かどうかを検査する方法は、MRI(磁気共鳴画像診断)・MRA(磁気共鳴血管造影)と脳血管造影検査(カテーテル検査)、脳血流検査の3つが代表的です。 MRI(磁気共鳴画像診断)・MRA(磁気共鳴血管造影) MRIでは脳の断層画像を撮影し、脳梗塞や出血などの病変を確認します。 MRAでは脳血管の形態を非侵襲的に評価でき、内頚動脈終末部の狭窄や閉塞、もやもや血管の発達状況を確認できます。放射線被曝がなく、造影剤なしでも検査可能なため、小児や定期的な経過観察に適しています。 脳血管造影検査(カテーテル検査) もやもや病の診断において重要な検査のひとつです。 足の付け根や手首から細いカテーテルを挿入し、造影剤を注入して脳血管を詳細に撮影します。 侵襲性(体への負担)があり、まれですが合併症のリスクがあるため、必要性を十分検討して実施されます。 脳血流検査 脳血流検査は、脳のどの部分にどれくらい血液が流れているかを調べる検査です。 特殊なカメラで撮影し、普通の状態と薬で血管を広げた状態の両方を調べることがあります。 この検査により、血管が血流を増やす能力を評価できます。この能力が弱い部分は将来脳梗塞のリスクが高まるため、手術が必要かどうかを判断する重要な材料になります。 症状が少ない方や手術効果の確認にも役立ちます。 小児での検査の注意点 小児では検査の協力が得られにくいため、年齢に応じた対応が必要です。 MRIやMRAでは、小さな子どもの場合、鎮静や全身麻酔を要することがあります。また、放射線被曝や造影剤使用についても配慮が必要です。 検査時の負担を最小限にするために、複数の検査をまとめて行ったり、年齢に応じた説明や準備を行うことが重要です。 もやもや病の治療 もやもや病の治療の目的は、脳梗塞や脳出血の防止です。 もやもや病を治療する方法に、薬による治療と、脳血流量を増やすためのバイパス手術があります。 薬による治療 薬による治療では、血液をサラサラにする抗血小板薬が用いられます。抗血小板薬は、血液が固まるのを防ぐとともに、血液の流れを円滑にする効果があるのが特徴です。 投薬により、一過性虚血発作を予防できます。ただし、効果が限定的であるため、次に紹介するバイパス手術が用いられるケースもあります。 バイパス手術 バイパス手術は、虚血型もやもや病の治療で、脳梗塞を予防する効果が認められています。 バイパス手術は、頭皮の血管を脳血管に直接つなぎ合わせる「直接バイパス術」と、頭皮の血管を周りの組織とともに脳の表面に接触させて、新たな血管の生成を促す「間接バイパス術」が主な方法です。加えて、両者の手法を組み合わせる「複合血行再建術」も用いられます。 大人の手術では直接バイパス術と複合血行再建術が、子どもの手術では間接バイパス術と複合血行再建術が行われます。 バイパス手術では、一過性脳虚血発作(TIA)や脳梗塞リスクなどの改善効果が報告されているのが現状です。(文献1) 小児もやもや病の注意点 子どもが小児もやもや病になった場合、脳虚血症状がたびたび見られるときは、激しい運動や楽器の演奏を控えさせる点に注意します。 激しい運動などをきっかけに、血流不足に陥るリスクがあるためです。そして、可能な限り早い段階で、子どもへの手術を主治医と相談する必要があります。 手術などの治療が終わった後は、子供の日常生活で必要以上の制限は不要です。ただ制限の要不要については、主治医との綿密な相談が大切です。 小児もやもや病になった子ども向けの就学支援 小児もやもや病の子どもは、たとえ脳梗塞などの症状がなくても、認知機能に関するさまざまな悩みを抱えることがあります。 特に計画立案や複数の課題の同時処理が難しいことがあり、学校生活に支障をきたすケースも見られます。 このような子どもたちの学校生活をサポートするため、厚生労働省の研究班による「医療関係者・教育関係者のためのもやもや病就学支援マニュアル」(2023年)が作成されました。(文献2) このマニュアルを活用し、医療機関と教育機関が連携して支援を行う取り組みが進められています。 まとめ|もやもや病の症状は大人と子どもで異なる もやもや病は子どもと大人で症状や注意すべき点、治療法が異なります。 いずれにしても脳梗塞や脳出血の症状が出る前に、適切な診断・治療を受けることが大切です。 また、脳卒中の後遺症に対しては、機能回復のためのリハビリテーションや再生医療による治療の選択肢があります。 再生医療をご検討方は、当院「リペアセルクリニック」でご相談ください。 もやもや病についてよくある質問 もやもや病は必ず手術しなければなりませんか? 症状が多発していない患者様であれば、すぐ手術をする必要はありません。 しかし、すでに脳虚血症状や脳血流検査での血流低下が認められる方などは、手術を勧めるのが一般的です。 また、子どもの場合は、将来の脳虚血や出血予防のために、手術による治療が広く考えられています。 以上に加えて、もやもや病の経験豊富な医師が的確な検査や年齢、患者様の状況を総合的に検討・判断していきます。 子どもの「もやもや病」の予後はどうなりますか? 子どものもやもや病は、症状のほとんどが脳虚血発作です。 このため、大きな脳梗塞が起こる前にバイパス手術を受けられれば、術後の脳梗塞の発症は少ないとされています。 また社会生活については、8割以上の子どもたちが通常の生活を送れる状況です。一方、2割弱は普通学級への就学困難や、卒業後の就職の困難が報告されています。 診断が遅れ、手術の時点で脳梗塞が起きた場合、その後の社会生活に支障が出てしまう可能性があります。そのため、早期の診断と適切なタイミングでのバイパス手術が非常に重要です。 もやもや病の検査費用はいくら? もやもや病の検査費用は、検査の種類によって異なります。 種類別もやもや病の検査費用の相場(3割負担の場合) MRI・MRA検査:8,000円~2万5,000円程度 CT検査:非造影は5,500円~8,000円程度/造影で7,500円~1万2,000円程度 ただし、具体的な金額は医療機関によって異なるため、詳しくは各医療機関にご確認ください。 参考文献 (文献1) 一般社団法人日本小児神経外科学会 「小児脳神経外科(もやもや病)」 一般社団法人日本小児神経外科学会公式サイト http://jpn-spn.umin.jp/sick/d.html(最終チェック日 2025年3月20日) (文献2) 京都大学医学部附属病院「もやもや病就学支援マニュアル」2023年. https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/department/division/pdf/moyamoya/moyamoya_web.pdf (最終アクセス:2025年3月30日)
2023.09.25 -
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もやもや病になってから性格が変わった気がする。 もやもや病による性格変化にはどのように対処すべき? この記事を読んでいるあなたは、自分や大切な人がもやもや病になり、性格変化が起きているのではないでしょうか。 「どのように接したら良いかわからない」と悩んでいる人もいるかもしれません。 結論、もやもや病による性格変化は、「高次脳機能障害」が関係している可能性があります。 以前とまったく同じ性格に戻すのは困難ですが、原因や対処を知れば、生活上の不便は軽減できます。 本記事では、もやもや病による性格変化のメカニズムと対処法について詳しく解説します。 記事を最後まで読めば性格変化の原因や対処法がわかり、毎日を快適に過ごしやすくなるでしょう。 もやもや病の後遺症で性格が変化することがある もやもや病は、脳の重要な動脈が狭くなった結果、通常では見られない細い血管(もやもや血管)が発達する病気です。もやもや血管は血流悪化や脳卒中のリスクが高く、脳機能の低下につながるケースも見られます。 また、脳機能の低下によって「高次脳機能障害」が生じると、性格変化が起こる可能性があります。高次脳機能障害とは「怪我や病気によって脳がダメージを受けた結果、複雑な処理ができなくなり、生活に支障が出る状態」です。 もやもや病でダメージを受けやすいのは、脳の「前頭連合野」と呼ばれる部位です。 前頭連合野には以下のようなはたらきがあります。(文献1) 前頭連合野の機能 説明 認知・実行機能 状況を深く理解したり推理したりする 心の理論・社会性機能 人の気持ちを想像したり、周りを見て行動したりする 情動・動機付け機能 積極的に行動したり、自己表現をしたりする どの機能も、人間が社会的な生活を送るのに欠かせません。 そのため、もやもや病によって前頭連合野の機能が失われると、「感情のコントロールができず自己中心的になる」「周りの状況を見て動けない」などが起こり、性格が変わったと思われやすいのです。 当院「リペアセルクリニック」では、もやもや病による脳卒中後の治療として再生医療(幹細胞治療)を提供しています。再生医療には、リハビリの効果を高めたり、後遺症を軽減したりする効果が期待できます。 もやもや病後の後遺症にお悩みの方は「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」へ気軽にご相談ください。 なお、もやもや病については、以下の記事で詳しく説明しています。 もやもや病の後遺症でみられる性格の変化 もやもや病の後遺症「高次脳機能障害」による性格の変化は、以下のとおりです。 記憶障害により物忘れが増える 注意障害により気が散りやすくなる 社会的行動障害により感情をコントロールできなくなる 遂行機能障害により段取りが悪くなる 本章の内容をもとに、気になる性格の変化が高次脳機能障害によるものなのかを考えてみましょう。 なお、性格変化以外の後遺症については、以下の記事もぜひ参考にしてください。 記憶障害により物忘れが増える もやもや病によって脳の記憶をつかさどる部分の機能が低下すると、「作業記憶(ワーキングメモリー)」が低下することがあります。 作業記憶とは、何かを行うときに一時的に置いておく「記憶の引き出し」です。記憶障害の症状例は、以下のとおりです。 聞いたことをすぐ忘れて何度も聞き返す 買い物に出かけても、何を買えばいいか忘れる ものを置いた場所を思い出せない 何度も同じことを聞いたり、頼みごとができなくなったりする結果、本人や周囲の人に不便が生じ、ストレスとなるケースは珍しくありません。 注意障害により気が散りやすくなる 注意障害とは、気が散りやすく一つの物事に集中できない状態です。生活に支障をきたす注意障害の症状は、以下のとおりです。 ぼんやりしていてミスが多い 2つのことを同時にできない(マルチタスクができない) 少しの変化に気をとられ、自分の動作が止まる 注意障害は、仕事や勉強などのパフォーマンスの低下につながりやすい症状といえるでしょう。 社会的行動障害により感情をコントロールできなくなる 社会的行動障害とは、自分の感情をうまくコントロールできない、衝動的な行動が増えるなどの状態です。以下のようなケースがあり、社会生活に問題が出る可能性も考えられます。 自己中心的になる 感情の振れ幅が大きくなる 思い通りにならないと大声を出す 興奮したり暴力をふるったりする 欲求を抑えられずにギャンブルや借金に走る 逆に、人や物事への興味や自発性がなくなるケースもあります。 遂行機能障害により段取りが悪くなる 遂行機能障害とは、物事を順序立てて行えなくなることです。具体的な症状は、以下のとおりです。 段取りが悪い 優先順位をつけられない 約束の時間に間に合わない 人に指示してもらわないと何もできない 臨機応変に行動できず、少しのトラブルにも対応できない 日常生活は、予期せぬ出来事がたくさん起こります。遂行機能障害によりその場に応じた対応ができなくなると、仕事や生活の維持に支障が出やすくなるかもしれません。 もやもや病による性格変化は検査・症状で診断する 性格変化がもやもや病による高次脳機能障害が原因なのかは、以下の内容から総合的に判断されます。(文献2) 何かの病気(今回はもやもや病)が原因で起きたものか 現在、脳機能が低下したことにより日常生活・社会生活に支障が出ているか MRIやCT、脳波検査などにより、認知障害の原因が脳の異常によるものと考えられるか 先天性疾患や発達障害、持病などが関連していないか なお、高次脳機能障害の診断は、原因となる脳の病気や怪我の急性期が過ぎ、症状が安定してから行われます。そのため、もやもや病と診断されてすぐではなく、ある程度の期間が必要です。 当院「リペアセルクリニック」では、もやもや病による脳卒中後の治療として再生医療(幹細胞治療)を提供しています。再生医療は、もやもや病による脳卒中後の身体機能の回復や再発予防を目指した治療法の一つです。 もやもや病による脳卒中が原因の高次機能障害にお悩みの方は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」へ気軽にご相談ください。 もやもや病で性格が変化したときの対処法 もやもや病で性格変化や行動変化が見られても、原因を知り適切に対処すれば、日常生活への支障を軽減できます。 本章では、「自分の性格が変わった場合」「家族や友人の性格が変わった場合」の2つの事例において、おすすめの対処法を解説します。 自分の性格が変わった場合 もやもや病にかかった場合、病気による変化を理解した上で、自分に合う対応を学ぶのがおすすめです。 具体的な対処法の例は以下のとおりです。(文献3) 無理のない範囲で運動し、体力をつける バランスの取れた食事や規則正しい生活を意識する 人と比較せず、自分の状況や希望に合わせた生活の目標を考える 地域のリハビリ科や精神科の病院、地域の保健福祉センターなどに相談してみるのも良い方法です。焦らずに、少しずつ進んでいきましょう。 家族や友人の性格が変わった場合 性格変化が周りの人に起きた場合は、もやもや病による影響を正しく理解し、適切なサポートを検討しましょう。 たとえば、本人がどのような状況でイライラしたり不自由したりしているかをチェックし、専門家からどのような生活や手助けが適しているかのアドバイスを受けます。相談先は病院や保健福祉センターなどです。 具体的な対策の例は、以下のとおりです。 気が散らない環境を整え、ものごとに集中できるようにする こまめにメモを取り、低下した記憶力をおぎなう 低下した機能を助ける訓練を受ける 一度の相談ですべての課題に対応するのは難しいため、相談と検討を繰り返しながら少しずつ本人の抱える困難に対応していきます。焦らずに、寄り添う姿勢を大切にしてみてください。 まとめ|もやもや病で性格変化が起きたら医療機関へ相談しよう 本記事では、もやもや病の後遺症による性格変化について、詳しく説明しました。 もやもや病のあとに性格が変わるのは、脳のダメージによる「高次脳機能障害」が原因の可能性があります。感情の制御をつかさどる「前頭連合野」がダメージを受けた結果、記憶障害や行動障害などが起こります。 性格変化は病気の後遺症であると理解し、専門家の指導のもとに適切な対応を行いましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、損傷した脳に対する再生医療(幹細胞治療)を実施しています。再生医療は、もやもや病による脳卒中後の身体機能の回復や再発予防を目指した治療法の一つです。 「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」を行っております。気軽にご相談ください。 もやもや病による性格変化に関するよくある質問 高次脳機能障害は完治しますか? 脳に傷がある状態のため、高次脳機能障害を完全に治すことは困難です。しかし、得意・不得意を考慮した工夫により、生活上の不便は軽減できます。根気強くリハビリをおこないましょう。 脳卒中による高次脳機能障害があるとき、入院期間はどのくらいになりますか? 脳卒中では、発症直後の急性期を過ぎたあとは「回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)」に移ってリハビリを続ける方が多く見られます。 回復期リハ病棟では、脳血管障害における一般的な入院期間は150日とされています。ただし、高次脳機能障害の合併があると、180日まで入院可能です。 期間すべてを使っての入院が必要というわけではありません。しかし、高次脳機能障害は麻痺と違い一見してわかりづらく、周りの理解が得られにくいケースが多いです。退院後を快適に過ごすために、社会復帰のためのリハビリや環境整備にしっかりと時間をかけましょう。 もやもや病による脳梗塞については、以下の記事もぜひ参考にしてください。 参考文献 (文献1) 渡邊正孝「頭連合野のしくみとはたらき|高次脳機能研究( 第36巻,第1号)」https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/36/1/36_1/_pdf (文献2) 厚生労働省 科学研究成果データベース「令和4年版高次脳機能障害診断基準 ガイドライン」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/36/1/36_1/_pdf (文献3) 相模原市「もしかしたら高次脳機能障害?」 https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/025/677/r03_pamphlet.pdf
2023.08.10 -
- 頭部
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もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)は、脳血管に異常が生じることで脳卒中などを引き起こす可能性がある、原因不明の難病です。 近年、家族内で複数の患者様が見られるケースも報告されており、「もやもや病は遺伝するのでは?」と心配する方も増えています。 この記事では、もやもや病と遺伝の関係性について、最新の研究や専門的な見解をわかりやすく解説します。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 もやもや病が引き起こす可能性がある脳卒中の予防や、再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 もやもや病と遺伝の関係|どこまで明らかになっているのか もやもや病は長らく原因不明の病気とされてきましたが、近年の研究により、遺伝との関連が少しずつ解明されつつあります。 家族内での発症例や、特定の遺伝子との関連が指摘されており、遺伝的な背景を考慮した研究が進められています。 もやもや病は「遺伝病」ではないが遺伝的要因が関与する可能性がある もやもや病は、いわゆる「遺伝病」ではありません。 つまり、親から子へ必ず受け継がれるような仕組みは確認されていません。 しかし、これまでの研究では、家族内に複数の患者様がいるケースが一定の割合で報告されており、遺伝的な要因が関係している可能性があると考えられています。 また、特定の人種や地域に患者様が集中していることからも、環境要因に加えて、体質的な背景も影響しているのではないかと指摘されています。 現在のところ、もやもや病の発症には、遺伝だけでなく複数の要因が複雑に関わっていると考えられており、まだ解明されていない部分も多いのが現状です。 家族内発症の傾向と報告例について もやもや病は、日本において10〜20%の患者様に家族内での発症が確認されていると報告されています。 つまり、兄弟や親子などの近い家族の間では、10人に1〜2人の割合で罹患していることになります。(文献1) このような「家族性もやもや病」は、特定の遺伝的背景を持つ人に起こりやすい可能性があると考えられています。 また、家族性のケースでは、次の世代になるほど発症年齢が早くなったり、症状が重くなるといった傾向(表現促進現象)が見られることもあります。 子どもへの遺伝確率や兄弟リスクは? 家族にもやもや病の患者様がいると、「子どもや兄弟にも遺伝するのでは」と不安に感じる方が多いかもしれません。 とくに親が患者様である場合、将来の子どもの健康に影響があるかを心配されるケースもあります。 現在のところ、もやもや病は単純な遺伝形式で受け継がれる病気ではないとされています。 たとえば、親が発症しても子どもには症状が現れない場合も多く、反対に親に症状がなくても子どもが発症することもあります。 また、兄弟間で発症する確率が何%といった明確な数値は示されていません。 これは、遺伝的な素因に加えて、環境や個人の体質など、さまざまな要因が発症に関わっているためです。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、簡易オンライン診断が受けられます。 もやもや病による脳卒中に関してお悩みの方は、公式LINEに登録してぜひ一度お試しください。 もやもや病と関連した遺伝子とは? もやもや病は、家族内に複数の患者様がいるケースや、東アジアに多いという特徴から、以前から遺伝的な要因が関係しているのではないかと考えられてきました。 近年では、ある特定の遺伝子と病気の関連性も報告されており、研究が進んでいます。 遺伝子多型 私たちの体は、細胞の中にあるDNA(遺伝情報)によってつくられています。 DNAは、アデニン(A)・チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C)の4種類の「塩基」が並んでできており、この配列によって体のさまざまな情報が決まります。 人間同士のDNAは、約99.9%が同じですが、ごくわずかに異なる部分があります。 この違いを「遺伝子多型(いでんしたけい)」と呼びます。 たとえば、肌や髪の色の違い、病気へのなりやすさの個人差などが、この多型によって現れることがあります。 ただし、遺伝子多型があるからといって、必ず症状が出るわけではありません。 体質の違いや傾向を示す個性のようなものと考えると、イメージしやすいでしょう。 RNF213遺伝子多型p.R4810K もやもや病と関わりの深い遺伝子として、「RNF213(アールエヌエフ213)」があります。 これはヒトの染色体のうち17番目に存在する遺伝子です。 日本人の患者様のRNF213遺伝子を調べると、80〜90%もの人が「p.R4810K」という遺伝子多型があることがわかりました。 一方で、このp.R4810K多型は、健康な日本人でも約1〜2%の人に見られることがわかっています。 つまり、この多型を持っているからといって、必ずもやもや病を発症するわけではありません。 これは、RNF213のp.R4810Kが「発症しやすい体質を示す素因」であり、発症には他の遺伝的要因や環境要素も関係していることを意味します。 発症の背景は複雑で、一つの要因だけで決まるものではないと考えられているのです。 遺伝子検査はできる?費用や対象について 現在のところ、RNF213遺伝子の多型(p.R4810K)を調べる遺伝子検査は、一般的な医療機関では実施されていません。 保険診療の対象にもなっておらず、通常の診療では行われていないのが現状です。 また、この遺伝子多型を持っていても、必ず発症するわけではないため、検査で結果が出ても予防や治療に直結するわけではありません。 そのため、現時点では、診断目的の検査は画像検査(MRAや脳血管造影など)が中心となっています。 研究機関や一部の専門施設では、研究協力の一環として遺伝子検査が行われる場合がありますが、その際も倫理審査を経て同意が必要となります。 費用や受けられる条件も施設によって異なるため、希望がある場合は専門医に相談することをおすすめします。 もやもや病と診断されたら|家族の健康管理でできること もやもや病と診断されたとき、本人だけでなく家族も「ほかの家族にリスクはないのか」と不安を感じることがあります。 この章では、家族として意識しておきたい健康管理のポイントや、子ども・兄弟への対応についてご紹介します。 子どもや兄弟の定期的なチェックは必要? 家族にもやもや病の方がいると、発症リスクがやや高まるとされているため、気になる症状があれば早めに受診しておくことをおすすめします。 もやもや病は、5〜10歳ごろの小児期に発症のピークがあることが知られています。 また、成人期では40歳前後に発症するケースが多く、子どもから大人までどの年代でも注意が必要な病気です。(文献2) とくに、小児では過呼吸や運動後の脱力、てんかん発作のような症状が現れることがあり、成人では脳出血で発症する例もあります。 症状がなくても、気になる背景がある場合は画像検査(MRAなど)で早期に確認するという選択もあります。 不安なときの相談先や検査のすすめ方 家族に患者様がいる場合、「自分や子どもも発症するのでは」と心配になる方は少なくありません。 そんなときは、一人で悩まずに医療機関で相談することが大切です。 もやもや病の診療を行っているのは、主に脳神経外科や神経内科です。 とくに、もやもや病に詳しい専門医のいる病院や、脳卒中センターを併設している大きな医療機関での相談が安心です。 症状がある場合はもちろんですが、「家族に患者がいるので心配」「子どもの頭痛が気になる」といった理由でも、相談して問題ありません。 必要に応じてMRA(磁気共鳴血管撮影)などの画像検査が行われます。 また、小さなお子さんの場合は、検査中に動かずにいられるかどうかがポイントになります。 状況によっては鎮静剤を使って検査を受けることもあるため、不安があれば事前に医師に相談しましょう。 まとめ|もやもや病は遺伝だけではないが家族で知っておきたい病気 もやもや病は、一部で家族内での発症が見られる病気であり、関連する遺伝子も報告されています。 ただし、「遺伝=必ず発症する」わけではなく、さまざまな要因が重なって起こる複雑な病気です。 遺伝的な背景があることを知っておくことは大切ですが、過剰に心配し過ぎる必要はありません。 大切なのは、必要に応じて早めに相談・検査を行い、家族で健康を守っていくことです。 気になることがあれば、専門医にしっかり相談をしましょう。 参考文献 (文献1) もやもや病(指定難病22)|難病情報センター (文献2) Moyamoya disease in children|PubMed
2023.08.07 -
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「もやもや病の悪化を防ぐには何を避けるべきか」 「日常生活でどこに注意すれば良いのか」 もやもや病は、厚生労働省が指定する難病で、脳の血管が徐々に狭くなり血流が不足することで、手足の麻痺やけいれんなどを引き起こす疾患です。正しい知識と適切な対策により、症状の進行を抑え、安定した日常生活を送ることが期待できます。 本記事では、もやもや病で気をつけるべきことを現役医師が詳しく解説します。記事の最後には、もやもや病に関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 もやもや病について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 もやもや病で気をつけること|私生活 私生活で気をつけること 詳細 異変を感じたらすぐに医療機関を受診する 症状出現時の早期受診の徹底 生活習慣を見直す 食事・睡眠・禁煙・節酒の維持 無理のない身体の使い方を意識する 過度な運動・力仕事の回避 ストレスに配慮する 日常でのリラックス時間確保 体調管理を心がける 発熱・疲労・気温変化に注意 もやもや病は脳の血流が不足し、さまざまな症状を引き起こす疾患です。そのため、日常生活では工夫や注意が必要です。頭痛やしびれなどの異変を感じた際は、早めに医療機関を受診しましょう。 食事や睡眠の質を整え、禁煙や節酒を心がけるなど、生活習慣を見直すことも欠かせません。また、無理な運動や力仕事を避けて体への負担を減らし、リラックスできる時間を意識して確保することも重要です。さらに、発熱や疲労、気温の変化に注意し、体調を整えることが症状の進行を防ぐ基盤となります。 以下の記事では、もやもや病の症状や治療法について詳しく解説しています。 異変を感じたらすぐに医療機関を受診する もやもや病は脳の血流が不安定になる疾患で、突然のしびれや言葉のもつれ、視覚の異常などが発作のサインとして現れることがあります。症状が軽くても放置すると脳梗塞や脳出血に進行する危険があるため、早期に医療機関を受診することが重要です。 とくに片側のしびれや会話のしにくさは典型的な脳血管障害の兆候であり、受診の遅れは治療の選択肢を狭め、後遺症のリスクを高めます。普段と異なる違和感を覚えたときは、医療機関を受診しましょう。 生活習慣を見直す 理由 詳細 血液の粘度や血流の安定 規則正しい水分補給・バランスの取れた食事 血管への負担軽減 禁煙・節酒・適量の飲酒 全身バランスの維持 適度な運動・十分な睡眠・ストレス管理 長期的な進行抑制 生活習慣改善による保存的な管理 生活習慣を見直すことは、もやもや病と診断された方が自分で取り組める大切なリスク管理です。水分補給や栄養状態の維持は血液が濃くなるのを防ぎ、脳梗塞や一過性虚血発作のリスクを下げる基盤になります。 禁煙や節酒は血管への直接的なダメージを防ぎ、過度な飲酒や喫煙による脳卒中のリスクを減らします。さらに、適度な運動や十分な睡眠、ストレス管理は心身のバランスを保ち、発作や症状の悪化を防ぎます。こうした取り組みの積み重ねが症状の進行を抑えることにつながるため、日常生活での意識的な改善が重要です。 以下の記事では、生活習慣改善について詳しく解説しています。 【関連記事】 脂質異常症改善のための正しい運動とお茶の選び方|生活習慣の見直しポイントを医師が解説 【医師監修】脂質異常症の診断基準|総コレステロールなど各数値の正常値と治療法を解説 無理のない身体の使い方を意識する もやもや病は脳への血流が不足しやすく、手足の麻痺や言語障害、けいれんなどを引き起こす疾患です。そのため、日常生活では身体に無理のない使い方を意識することが重要です。 激しい運動や過度な力仕事は呼吸を乱し、脳血管の収縮を招く恐れがあります。長時間の無理な動作や過労も血圧の変動や過呼吸を招き、発作や再発の引き金になります。休憩を取り、ゆっくりと動作することが脳への血流不足を防ぐために有効です。 具体的には、急に立ち上がらず姿勢をゆっくり変える、重い荷物を無理に持たない、ウォーキングやストレッチなど軽い運動を取り入れることが推奨されます。 頭部に強い衝撃が加わるスポーツや激しい運動は避ける必要があります。体調の変化に注意し、無理のない範囲での活動が、症状の悪化や再発を防ぎ、安定した生活につながります。 ストレスに配慮する 理由 詳細 血圧変動の負担軽減 交感神経刺激による血圧上昇抑制 過換気(過呼吸)リスクの回避 強いストレスによる早い呼吸回避 症状誘発要因の排除 血管緊張・血圧変動時の症状予防 精神的負担の軽減 生活の質向上・再発リスク低減 具体的な対策実施の重要性 リラックス・休息・趣味の活用 ストレスへの配慮は、もやもや病の患者様が安定した日常生活を維持する上で極めて重要です。ストレスは血圧を急激に上昇させ、脳血流に過度な負担を与える要因となります。 とくに脳血管が狭窄している場合には、脳梗塞や脳出血の誘因となる可能性があり、注意が必要です。また、強い精神的緊張は呼吸を浅く速くする過換気を招き、脳血流の低下や症状の誘発につながることがあります。 これらのリスクを軽減するためには、日常生活の中で精神的負担を和らげ、リラックスできる環境や方法を取り入れることが大切です。自身に合ったストレス対処法を実践することで、症状の増悪や急変を予防し、生活の質の維持につながります。 以下の記事では、ストレスについて詳しく解説しています。 体調管理を心がける 理由 詳細 疲労や睡眠不足の回避 免疫・循環機能の維持 水分補給と脱水予防 血液の濃度調整による血流改善 発熱や感染症の早期対処 体調悪化のリスク軽減 血圧管理の重要性 血圧変動の自己把握とコントロール 体調変化の気づき習慣 微妙な症状の早期発見・受診促進 もやもや病は脳の血流が不足しやすく、体調のわずかな変化が症状の悪化や発作の引き金となる可能性があります。そのため、日常的な体調管理は極めて重要です。十分な休養と良質な睡眠を確保することで、血圧や呼吸の乱れを防ぎ、症状の安定につながります。 こまめな水分補給は脱水を予防し、血液の流れを保つことが脳梗塞のリスクを低減する上で重要です。発熱や感染症は血流に大きな影響を与えるため、体調不良を感じた際には早めに医療機関を受診しましょう。 また、気温の変化に注意しつつ血圧を測定するなど自己管理を習慣化するのも大切です。さらに、頭痛や倦怠感、手足の違和感といった小さな変化を記録しておくことで、早期に異常を把握しやすくなります。 もやもや病で気をつけること|仕事・人間関係 仕事・人間関係で気をつけること 詳細 周囲への理解を得る 疾患の状況や配慮事項の共有 無理のない働き方をする(精神的・身体的) 負担軽減と休憩確保 急激な温度変化・過換気の回避 寒暖差対策と呼吸の過剰防止 人間関係のトラブル回避 適切なコミュニケーションと支援 もやもや病の患者様は、仕事や人間関係においていくつかの点に注意する必要があります。まず、疾患の状況や配慮すべき点を職場や周囲の人に共有し、理解を得ることが大切です。 精神的・身体的な負担を軽減し、無理のない働き方と十分な休憩を確保することが求められます。また、急激な温度変化には衣服で調整し、過換気を防ぐことも重要です。 さらに人間関係ではトラブルを避けるために適切にコミュニケーションを取り、必要に応じて周囲の支援を活用することが大切です。こうした配慮が症状の安定と生活の質の向上につながります。 周囲への理解を得る 重要性 詳細 疾患の特徴を伝え誤解を防止 体調変化や疲労の理解促進 仕事上の配慮を得やすくする 休憩時間や業務内容の調整 支えと協力の輪づくり 急な休みやサポート要請の円滑化 安定感と信頼感の向上 精神的負担軽減とコミュニケーション改善 もやもや病は外見からは判断しにくく、突然の体調変化や疲れやすさが現れることがあります。そのため、周囲に疾患の特徴や注意点を伝え、理解を得ることが重要です。 あらかじめ病状を共有しておくことで、急な症状が出た際にも誤解を避け、落ち着いた対応を受けられる可能性が高まります。また、疲労を感じやすい場合には休憩時間の確保や業務内容の調整が必要となりますが、職場の理解を得ることで配慮を依頼しやすくなります。 さらに、体調の波が大きいときには周囲の支援が欠かせません。協力を得やすい環境は心身の安定につながり、信頼関係の構築に役立ちます。仕事や人間関係を円滑に保つためには、主治医に相談し説明用資料の活用も有効です。 無理のない働き方をする(精神的・身体的) ポイント 詳細 身体的な無理を避ける 休憩の確保・重い作業控える・通院を優先する ストレスをためない環境づくり 体調共有・業務調整・リラックス時間確保・支援の活用 柔軟な働き方の導入 テレワーク・時差出勤・短時間勤務・コミュニケーション重視 体調変化の早期伝達と支援活用 疲労のサイン共有・限界認識・サポート制度活用 もやもや病の患者様が無理なく働き続けるには、身体と心の両面に配慮した働き方が必要です。疲れやすい体質を理解し、適度に休憩を取りながら長時間労働や重労働を避け、症状悪化の兆しがあれば早めに職場へ伝えましょう。 精神的な負担を減らすためには、体調や気持ちを共有し、過度な責任を抱え込まないことが大切です。リラックスできる時間を持ち、必要に応じて支援を活用するのも効果的です。 さらに、テレワークや短時間勤務など柔軟な働き方を取り入れ、体調変化を早めに共有して職場のサポート制度を活用することが、安定した就労につながります。 急激な温度変化・過換気の回避 ポイント 詳細 過呼吸を起こす動作の回避 長時間の楽器演奏や激しい運動、大声の制限 こまめな休憩と無理の回避 体調に応じた休息の確保 急激な寒暖差の環境での体調管理 身体を温かく保つこと 精神的安定の維持 急な感情の高ぶりを避ける 周囲へのリスク理解 過換気のリスク周知と支援依頼の促進 急激な温度変化は血管に負担をかけるため注意が必要です。夏場の屋外と冷房の効いた室内、冬場の暖房の部屋と寒い屋外の行き来では、羽織り物を用意するなど体温調節を心がけましょう。 また、過換気は脳の血管を収縮させる可能性があるため、興奮や緊張の場面では意識してゆっくり深呼吸を行い、防ぐことが大切です。 人間関係のトラブル回避 気をつけること 詳細 疾患の適切な伝達 症状の特徴と体調の変動説明による誤解防止 感情のコントロール 怒りや焦りの抑制による過換気防止 無理しすぎない 体調に合わせた休息確保とストレス軽減 理解と助けの受け入れ 早期相談と支援依頼によるトラブル予防 コミュニケーション工夫 短時間対話やメール活用による負担軽減 周囲の理解促進と啓発支援 症状の理解に対する促進と説明資料共有による偏見軽減 もやもや病における人間関係のトラブルを避けるためには、疾患の特徴や体調の変動を周囲に適切に伝え、突然の体調不良や欠勤に対する誤解を防ぐことが重要です。 感情的になりすぎると過換気を起こしやすくなるため、できるだけ落ち着いた対応を心がけましょう。また、無理に仕事や付き合いを続けず、体調に応じて十分な休養を確保することが必要です。困難を感じた際には早めに相談し、周囲の支援を受け入れる姿勢を持つことでトラブルを未然に防止できます。 さらに、疲労が強い場合には面談時間を短縮したり、メールやメッセージを活用したりするなど、コミュニケーション方法を工夫することも有効です。周囲の理解を深めるためには、説明資料の活用や啓発活動を取り入れることが推奨され、偏見の軽減と良好な人間関係の構築につながります。 もやもや病で気をつけること|家族が発症した際の対応 家族が発症した際の対応 詳細 もやもや病についての理解を深める 疾患の特徴や遺伝的背景の把握 ストレス・疲労をためない生活を一緒に作る 規則正しい生活リズムと休息の確保 発作の兆候に気づけるようにする 症状の変化や異常の早期発見 仕事・学校など周囲への説明と調整の支援 状況説明と環境調整の協力 自分自身(家族)のケアも忘れない 介護負担の軽減と心身の健康維持 もやもや病には家族内で発症する例があり、遺伝的な素因が関与すると考えられています。家族が発症した場合は、まず疾患の特徴や背景を正しく理解することが重要です。 ストレスや疲労をためない生活リズムを一緒に整え、発作や症状の兆候に早く気づけるよう注意しましょう。さらに、仕事や学校などで周囲に説明し、環境を調整することで理解と協力を得やすくなり、生活の質の向上につながります。また、介護やサポートを担う家族自身の心身のケアも忘れず、支え合いながら疾患と向き合うことが大切です。 以下の記事では、もやもや病と遺伝の関係性について詳しく解説しています。 もやもや病についての理解を深める もやもや病は脳の血管が狭くなり、血流が低下することで症状や体調の変動を起こしやすい指定難病です。家族がもやもや病について正しく理解することは、日常生活での支援や配慮を可能にし、患者自身の精神的・身体的負担を減らすために不可欠です。 正しい知識を共有することで誤解や不安を防ぎ、安定したコミュニケーションを保てます。患者様のできないことを責めず、支え合う姿勢を持つことは、生活の質を守り、家族の負担を軽くすることにつながります。 以下の記事では、家族がもやもや病を発症した際に起こりうることを詳しく解説しています。 【関連記事】 小児もやもや病の症状|子どもと大人の違いや注意点を解説 もやもや病になると性格が変化する?メカニズムや高次機能障害について医師が解説 ストレス・疲労をためない生活を一緒に作る もやもや病の患者様にとって、ストレスや疲労の蓄積は症状悪化の要因となります。そのため、ご家族が生活環境を整え、無理のない生活リズムを作ることが大切です。 体調や生活のペースを尊重し、健康な人と同じ生活を無理に求めないようにしましょう。急激な温度変化や過換気を起こしやすい状況を避ける工夫も有効です。 日々の体調や疲労のサインを共有し、家族で支え合うことが精神的負担の軽減につながります。さらに、趣味やリラックスの時間を持ち、十分な休息を心掛けることも重要です。 必要に応じて医療機関やカウンセリングを利用することで、安定した生活を送りやすくなります。無理に「普通」を求めず、体調や環境に合わせて柔軟に支えることが、生活の質を守る上で大切です。 発作の兆候に気づけるようにする 重要性 詳細 迅速かつ適切な対応のための早期発見 発作の兆候を素早く見つけ、落ち着いて対応できる 医療機関への速やかな受診促進 早期受診による重篤な合併症のリスク低減 症状状況の正確な把握と共有 発作頻度や状況を医師に伝え、適切な治療計画に役立てる 生活の質と安定性の向上 生活の安定を維持 もやもや病は脳の血流が不足することで、しびれや脱力、言葉の障害、頭痛、けいれん、意識障害など多様な発作を引き起こします。とくに子どもでは激しい運動や過換気が誘因となりやすく、一時的に改善する場合もありますが、繰り返すことで脳梗塞へ進展する危険があります。 そのため、家族が発作の兆候を早期に察知することが極めて重要です。発作に気づくことで、冷静な対応や迅速な医療受診が可能となり、重篤化の防止につながります。また、症状の記録は診断と治療精度を高め、症状理解と体調観察は進行予防と生活安定に不可欠です。 以下の記事では、もやもや病の初期症状について詳しく解説しています。 仕事・学校など周囲への説明と調整の支援 理由 詳細 もやもや病に関する理解を広げ誤解や偏見防止 周囲の特徴説明による休暇や配慮への理解促進 適切な環境や配慮の実現 勤務時間や学習環境の調整による無理のない生活サポート トラブルやストレス軽減 誤解や摩擦の回避による環境の確保 支援の輪を広げやすくする 具体的な支援方法の相談で協力体制の強化 本人の自己管理と生活質向上支援 周囲の理解により体調に応じた活動が可能となり、心身の安定と生活の質が向上 もやもや病の方が社会生活を続けるには、職場や学校に疾患の特性を理解してもらうことが重要です。勤務時間や学習環境の調整には、診断書や医師の意見書の活用が有効です。 家族が説明を担うことで本人の負担は軽減され、発作時の対応を共有しておけば周囲も落ち着いて行動できます。こうした取り組みにより、社会とのつながりを保ちながら体調に配慮した生活を続けやすくなり、家族が橋渡し役となることが求められます。 自分自身(家族)のケアも忘れない もやもや病の家族ケアは長期にわたるため、支える側の心身の健康維持が不可欠です。疲労やストレスが蓄積すると冷静な対応が難しくなりますが、体調と心を整えることで適切なサポートが可能になります。 家族が健やかでいることは本人、家庭の安定にも直結します。趣味や休養、運動、睡眠を心がけ、信頼できる人や医師への相談などストレスケアを意識しましょう。また、医療機関や福祉サービスを活用することで負担を分散でき、持続的な支援につながります。 もやもや病に気をつけて異常があれば医療機関を受診しよう もやもや病は、発作がなければ日常生活を普段通り送れることもあります。しかし、症状を放置すると脳梗塞や脳出血のリスクが高まります。 軽度のしびれや言葉のもつれ、視覚の異常といった違和感も軽視せず、早期に医療機関を受診することが重要です。 もやもや病によって引き起こされる脳出血の後遺症改善や再発予防を目的とした治療法として、再生医療という選択肢があります。 当院「リペアセルクリニック」では、幹細胞治療などの再生医療を用いて、脳の血流改善や症状の軽減を目指す治療を行っています。もやもや病に関連する脳出血に対する再生医療の治療例については、以下の症例記事をご覧ください。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 もやもや病に関するよくある質問 もやもや病は完治しますか? もやもや病には現時点で根本的に完治させる方法はありません。しかし、薬物療法や血行再建術などの外科的治療により、脳の血流を補い症状の進行を抑えることができます。 適切な治療と生活管理を組み合わせることで、発作や脳卒中のリスクを減らし、日常生活を安定して続けることが期待できます。 以下の記事では、もやもや病の治療について詳しく解説しています。 【関連記事】 もやもや病の手術の難易度と成功率とは?入院期間や寿命への影響も医師が解説! もやもや病の手術後に仕事復帰できるのはいつ?後遺症や退院後の働き方を医師が解説 もやもや病を発症すると寿命が短くなりますか? もやもや病にかかったからといって、必ず寿命が短くなるわけではありません。もやもや病は、治療を行わず放置すると脳梗塞や脳出血のリスクが高まり、生命に関わる可能性があります。 一方で、血行再建術や薬物療法に加え、生活習慣の管理や定期的な受診を続けることで重症化を防ぎ、寿命への影響を最小限に抑えることができます。早期発見と適切な管理を行えば、健康な人と大きく変わらない生活を送れるケースも少なくありません。 もやもや病は国からの補助金などを貰うことは出来ますか? 項目 詳細 指定難病としての位置づけ 厚生労働省が認める「特定疾患(指定難病)」に含まれる 医療費助成対象 国・都道府県による公費負担医療制度の対象 助成認定条件 重症度や軽症高額該当の基準を満たした場合、都道府県の審査を経て認定される 小児慢性特定疾病制度の適用 18歳未満の患者に対し、小児慢性特定疾病医療費制度が適用される もやもや病は厚生労働省認定の指定難病で、公的な医療費助成の対象です。 重症度や高額医療の条件を満たせば、都道府県の審査を経て助成が受けられます。18歳未満は小児慢性特定疾病制度も適用され、医療費負担が軽減されます。申請は医師と相談し、手続きを行うことが重要です。
2023.06.26 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
もやもや病を大きくわけると「虚血型」と「出血型」の2種類があります。発症した種類によって初期症状は異なります。 本記事では「虚血型」と「出血型」の違いを明確にした上で、それぞれの初期症状を詳しく解説します。 もやもや病は脳梗塞や脳出血、くも膜下出血を発症する可能性がある怖い病気です。この記事を参考にして初期症状のサインを知り、もやもや病の早期治療につなげていきましょう。 もやもや病の初期症状サイン【チェックリストあり】 もやもや病の初期症状を見る前に、もやもや病の特徴を理解しましょう。 もやもや病とは、脳に血液を送るための血管である「内頚動脈」が、徐々に細くなったり、詰まったりして、脳の血液不足を引き起こす原因不明の病気です。 不足した血液を補うために、細い血管が脳内に異常に発達していきます。血管を造影すると、細い血管が「もやもやした煙」に見えることから「もやもや病」と名付けられました。 もやもや病には、血管が狭くなるのが原因で血液不足を起こす「虚血型」と、増殖した血管が破裂して出血する「出血型」の2種類があります。 それぞれの初期症状のサインを見ていきましょう。 虚血型の場合 虚血型は、脳内の血管が細くなったり、詰まったりして血液不足を起こしている状態です。虚血型の場合、以下のような初期症状が現れます。 頭痛 けいれん 意識障害 言語障害 手足の麻痺 手足のしびれ 虚血型は、血管の狭窄が進行すると脳の組織への血流が完全に途絶え、脳梗塞を発症するリスクがあります。重症化を防ぐためには、早期発見が重要です。疑われる初期症状が見られたら、早めに病院を受診しましょう。 また、血流不足は脳の前頭葉にダメージを与え、高次脳機能障害を引き起こす可能性もあります。前頭葉には感情をコントロールする働きがあるため、高次脳機能障害を発症すれば、性格変化の症状が現れるケースもあります。 もやもや病から発症する高機能障害については以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はあわせてご覧ください。 出血型の場合 出血型は、細かい血管の増加が影響して出血を起こす状態です。出血すると、脳出血、くも膜下出血などを引き起こします。初期症状は、出血の種類によって異なります。 たとえば、くも膜下出血の場合の初期症状は以下のとおりです。 頭痛 めまい 吐き気 視力低下 意識障害 脳出血やくも膜下出血は、運動や感覚の麻痺といった後遺症を残す可能性がある病気です。症状が深刻化する前に初期症状が見られたら、速やかに医療機関を受診しましょう。 くも膜下出血や脳出血を含む脳卒中の治療法の1つに「再生医療」があります。身体のしびれや麻痺、言語障害といった後遺症も治療対象です。 期待できる治療効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 もやもや病の初期症状が現れたら早期に病院を受診する 血管が詰まって脳梗塞を起こした場合や、増加した血管から出血を起こした場合は、手足の麻痺や、言語の障害、脳機能障害などの後遺症が出ることもあります。そのため、早期に診断して専門の病院で治療を受けることが大切です。 以下の記事では、もやもや病が引き起こす脳梗塞のリスクについて解説しています。予防策も紹介しているので、詳細が気になる方は参考にしてみてください。 適切な治療や管理を受けている場合には、約7割程度の方は症状的に安定して生活を送っていると推計されています。 脳の血管の狭窄は、最初の診断時と同じ状態が何年も変わらない方もいれば、徐々に進行していく方もいるといわれています。従って、定期的にMRIなどによる画像検査が必要です。 もやもや病の治療方法 もやもや病の治療には「内科的治療」と「外科的治療」があります。 「内科的治療」では、詰まりかけている血管の血液の流れを改善する際に、抗血小板剤(血液をサラサラにする薬)、出血の予防を図るときは、血圧・脳圧をコントロールする薬を投与します。ただし、病院によって使用する薬が異なる可能性があるので、内科的治療を進める際は、事前に担当医に確認しましょう。 内科的治療を実施しても効果が不十分な場合や、根本的治療を目指す場合は、外科的治療を検討します。 もやもや病における「外科的治療」は、血行再建術(バイパス手術)です。バイパス手術は主に、頭皮の血管と脳表面の血管を直接つなぐ「直接再建術」と、血流が多い側頭筋や骨膜を脳の表面に置いて接着する「間接血行再建術」の2種類があります。 以下の記事では、もやもや病の手術についてさらに詳しく解説しています。入院期間や手術の成功率なども紹介しているので、気になる方はあわせてご覧ください。 まとめ|もやもや病の初期症状を感じたら早急に専門家の受診しよう もやもや病の初期症状は、明らかに違和感を感じるような症状もあれば、風邪の症状と混同してしまうような症状もあります。 もやもや病は、脳梗塞やくも膜下出血、脳出血といった脳卒中を引き起こす可能性のある病気です。なるべく初期症状の段階で病院を受診し、早期治療するのが望ましいといえます。 「なんかいつもの体調不良と違う…」「こんな症状初めて!」などの違和感を覚えたら、もやもや病の可能性も視野に入れて病院の受診を検討しましょう。 もやもや病から発症する脳卒中の治療には「再生医療」が効果的です。 再生医療は人間の自然治癒力を活用した最先端の医療技術です。幹細胞の修復力を利用して、損傷した脳細胞の機能回復を促進します。 脳卒中の後遺症も治療対象なので、具体的な治療法や効果が知りたい方は再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 もやもや病に関するよくある質問 最後にもやもや病に関するよくある質問と回答をまとめます。 もやもや病で手術を受けた方がいい場合は? 内科的治療を試しても効果が見られない場合や、現時点で脳梗塞や脳出血の発症リスクが高いと診断された場合は手術を受けたほうが良いといえます。手術は脳梗塞や脳出血の予防にもつながります。 子どもが発症した場合、年齢が低いほど、脳梗塞や脳出血などの重篤な症状を出しやすいとされているため、診断がついた時点で手術を検討するのが良いでしょう。 もやもや病が遺伝する可能性はありますか? 現在でも詳細な原因は不明であり、必ずしも遺伝する病気というわけではありません。 最近の研究では、もやもや病に関係した遺伝子(RNF213遺伝子)が発見されていますが、病気になる感受性が高くなる「感受性遺伝子」であって、病気の「原因遺伝子」ではないとされています。この遺伝子は、もやもや病がない一般の方にもみられる遺伝子ですので明らかな原因とは言えません。 家族内でもやもや病がみられる家族性のもやもや病は10〜20%であり、遺伝子以外に他のなんらかの要因が加わることで発症するのではないかと推測されています。(文献1) 以下の記事では、もやもや病と遺伝の関係性について詳しく解説しています。具体的な情報が知りたい方は、参考にしてみてください。 もやもや病の初期症状は子どもと大人で違いますか? 子どもと大人は同じ初期症状もありますが、発症しやすいもやもや病の種類が異なるため、症状に違いが見られる場合があります。 たとえば、子どもは虚血型のもやもや病を発症しやすいと言われており、虚血型の初期症状は手足のしびれや麻痺、言語障害などです。 大人は、出血型のもやもや病を発症しやすく、初期症状では頭痛やめまい、意識障害などを生じます。 ただし、子ども・大人どちらとも「虚血型」と「出血型」を発症する可能性はあるので、年齢に関わらず初期症状の知識を広く理解しておきましょう。 以下の記事では、もやもや病における大人と子どもの違いをまとめています。違いを見分ける上での注意点も解説しているので、詳細が気になる方はあわせてご覧ください。 【参考文献】 文献1:https://www.nanbyou.or.jp/entry/209
2023.06.22 -
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もやもや病の手術後にどのくらいで仕事復帰ができるのか、そもそも仕事ができるのか気になっていませんか。 もやもや病のような脳の手術は、長く休まなければいけないのか、以前と同じように仕事ができるのかなど不安は尽きないかもしれません。 結論、もやもや病の手術後は、個人差はあるものの「2週間以上」は静養が必要です。麻痺や感覚障害などの後遺症がある場合は、リハビリを実施し、日常生活・仕事への復帰を目指します。 本記事では、もやもや病の手術後の仕事復帰について詳しく解説します。この記事を参考に、仕事復帰までの期間を把握して今後に備えましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療によるもやもや病をはじめとする脳卒中の後遺症改善・再発予防の治療を行っております。 「メール相談」または「オンラインカウンセリング」にて無料相談を受け付け中です。気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 もやもや病の手術後の仕事復帰までは2週間以上かかる可能性がある もやもや病の手術後は個人差があるものの、静養が必要なため、仕事復帰まで2週間以上かかる可能性があります。 もやもや病は、脳の主要な血管(内頸動脈終末部)が徐々に狭くなり、その部分を補うように煙のようなもやもやした細い血管が発達する病気です。 新しく形成された血管は弱いため、血管の壁が破れて脳出血や脳虚血に陥るリスクがあります。脳卒中に発展するリスクがあるため、十分な静養や入院期間が必要である旨を職場に伝えておくと安心でしょう。 しかし、重篤な症状を発症する前に、バイパス手術などの治療を行うことができれば、後遺症なく社会復帰できる可能性が高い疾患です。 ただし、退院後も定期的な診察と検査は欠かせないため、医師の指示に従い受診しましょう。 もやもや病の手術については、以下のコラムで詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。 仕事復帰に影響するもやもや病の後遺症5つ もやもや病の術後には、以下の後遺症があらわれる可能性があります。 麻痺 感覚障害 構音(こうおん)障害 嚥下(えんげ)障害 高次脳機能障害 これらの症状は、仕事復帰に影響する可能性があります。本章で後遺症を把握して今後に備えましょう。 麻痺 もやもや病で多いのが、片側の手足が麻痺して動かなくなる症状です。 麻痺の度合いは出血の大きさによって異なります。全く動かない場合もあれば、少しなら動かせる場合もあります。 リハビリで改善は認められるものの、何らかの障害が残り、肉体労働が困難になるリスクも考えられるでしょう。 感覚障害(触感が鈍くなる) 触った感覚が鈍くなる「感覚障害」も後遺症のひとつです。 物に触れたときに分かる温度や硬さ、痛みなどが感じにくくなる症状です。重度の場合は火傷やケガを負っても気づかないことがあるため、業務内容に制限がかかる場合があります。 また、鈍くなるだけではなく、反対に過敏になりすぎるケースもあります。 構音障害(話すのが困難) 口の中または周辺が麻痺して呂律(ろれつ)が回りにくくなる「構音(こうおん)障害」も後遺症としてあげられます。 構音障害になると、文字の読み書きは問題なく行えるものの言葉が不明瞭で鼻にかかったような話し方になる場合が多いです。話すのが困難になるため、対人業務が難しくなるケースがあります。 嚥下障害(飲み込みにくくなる) もやもや病の急性期では、食べ物や飲み物を飲み込みにくくなる「嚥下(えんげ)障害」が多く見られます。 出血の部位によっては完全な回復が難しいケースがあり、口から食事を摂取できなくなる場合も考えられるでしょう。 また、飲食物が気道に入ってしまい咳が出る「誤嚥性肺炎」が併発する懸念もあります。 そのため、安全に飲み込めるよう食べ物を人肌の温度まで冷ましたり、ペースト状にしたりするなどの工夫が必要です。 思考力低下・注意力散漫 「高次脳機能障害」は、脳で複雑な情報を処理する部位が損傷して記憶力や注意力に問題が起こる後遺症です。 感情のコントロールが難しくなったり、言葉が出にくくなったりすることで社会生活に支障をきたす場合もあります。 高次機能障害によりできないことをリハビリでカバーしたり、業務内容を調整する必要が出てくるでしょう。 もやもや病による高次機能障害について詳しく知りたい方は、以下のコラムを参考にしてください。 もやもや病手術後に仕事復帰するときのポイント もやもや病の手術後に仕事復帰するときのポイントは、以下の2つです。 後遺症がつらい業務は避ける 症状について職場に理解をもらう 退院後に仕事をする際は、後遺症とうまく付き合う必要があります。本章を参考に術後も安心して仕事ができるような工夫をしましょう。 後遺症がつらい業務内容は避ける 後遺症によっては業務内容が限られます。後遺症で業務に支障が出る仕事は極力控えるようにしましょう。 つらい思いをして無理に業務を行った場合、体調を崩したり職場の人間関係が悪化したりするリスクが考えられます。 以下を例に、後遺症の種類に応じて業務内容を検討しましょう。 後遺症 避けるべき業務の例 運動麻痺 肉体労働 言語障害 電話応対 構音障害 接客業 自分の症状に合わせて職場と相談し、無理なくても働ける環境を整えましょう。 もやもや病の症状を職場に理解をもらう もやもや病の手術後、仕事の支障をきたす後遺症がある場合は、業務内容が制限されていることを職場へ相談することが大切です。 つらい症状を共有すると、業務内容や負担の調整をしてもらえる可能性があります。 ただし、職場の理解が得られなかったり、業務の継続が難しかったりする場合は、休職や転職も視野に入れましょう。 もやもや病手術後に気を付けるべき日常生活のポイント もやもや病の術後は以下の点に気を付けるべき日常生活のポイントは、以下の3つです。 1.リハビリは正しく行う 2.処方薬は適切に服用する 3.定期的に診察や検査を受ける 本章を参考に、日常生活の注意点を把握して再発防止や症状の改善を意識しましょう。 リハビリは正しく行う 医師から指示があった場合は、きちんとリハビリを行いましょう。 もやもや病の術後に後遺症が残っている場合は、医師の判断でリハビリを重点的に置いて治療が進められます。 後遺症の種類に応じて、運動療法や言語療法、作業療法などが選ばれます。 個人差はあるものの正しいリハビリを行うことで、後遺症の改善も期待できるでしょう。 処方薬は適切に服用する 脳の血流が不足している場合は、血をサラサラにする抗血小板薬を服用して血行が遮断されないようにします。 根本的な治療にはならないものの、脳卒中の防止になるため薬が処方された際はきちんと服用しましょう。 また、けいれんが見られる場合は抗けいれん薬が処方されることもあります。 定期的に診察や検査を受ける もやもや病の治療では手術の効果を見るために、脳血管の撮影が行われます。 検査の頻度には個人差がありますが、指示があれば必ず受けましょう。 もやもや病の検査ではMRIやCTで脳の画像を撮影されることが多く、自覚症状がなくても異変を確認できます。 術後に無症状で安定している状態でも、半年〜1年の頻度で検査することが大切です。 まとめ|もやもや病の手術後はしっかり休んで仕事復帰に備えましょう もやもや病は、症状や後遺症が個々に異なる希少な疾患です。 手術で後遺症なく社会復帰できる場合もあれば、何かしらの症状が残り介助が必要な場合もあります。回復を焦らずしっかり休むことが、社会復帰につながるでしょう。 本記事がご参考になれば幸いです。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療によるもやもや病をはじめとする脳卒中の後遺症改善・再発予防の治療を行っております。 「メール相談」または「オンラインカウンセリング」にて無料相談を受け付け中です。気になる方はぜひ当院までご連絡ください。 もやもや病についてよくある質問 もやもや病の手術の術後、運動はできますか? 術後の状態が安定していれば、その後の運動制限は少ないでしょう。 ただし、退院後すぐの激しい運動は控えることをおすすめします。筋トレのような本格的に運動を行う際は、必ず事前に医師の許可を得てください。 もやもや病の入院期間はどのくらいですか? もやもや病の入院期間は、2〜3週間程度が目安です。 医師の判断により変動するため、術前に確認しておくと術後の生活が計画しやすいため安心でしょう。 また、退院後も定期的な受診や検査が必要な場合がほとんどです。医師の指示に従い忘れずに定期的な通院をしましょう。
2023.06.19







