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橋出血(きょうしゅっけつ:英語名「pontine hemorrhage」)は、脳卒中の中でも、とくに生命予後の悪い疾患の1つです。 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など、脳の血管が詰まったり破れたりする病気を総称して「脳卒中」と呼びます。 「脳卒中の症状ではないから大丈夫」と安心し、症状の発見が遅れると、重症を患う恐れがあります。 脳卒中の1つ「橋出血」の重症例では、意識・呼吸障害、四肢麻痺などをきたし、急激な経過で死に至るケースもあるのです。 本記事では、橋出血の症状・原因や治療について詳しく解説をしていきます。 橋出血とは 橋出血とは脳出血の1つで、5〜10%が橋出血に該当するといわれています。 突然脳の血管が破裂する症状なので、橋出血が発症すると以下の症状が起こります。 意識障害が起きる 頭痛が続く 手足の動きや感覚が鈍い など 血栓や動脈硬化で起こる脳梗塞を含め、脳の病態は複数あるので、早急に医療機関で受診しましょう。 なお、橋出血の疑いがすでにある方はとくに、以下の記事で初期症状や診断方法などを詳しくまとめました。 予後についても解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。 橋出血の「橋」は脳幹における構造物 橋出血が起こる「橋」とは、脳の一部分である「脳幹」の1つです。 上にある中脳、下にある延髄と共に「脳幹」の構成をしています。 脳幹には、以下4つの構造物があります。 神経伝達路 神経の中継(分岐地点) 自律神経反射中枢 脳幹網様体 それぞれ構造の役割とともに、橋出血による症状について見ていきましょう。 ①神経伝達路としての役割と橋出血の症状 脳幹には神経線維の束が通っており、以下の役割を果たしています。 ・大脳から運動神経の伝達 ・大脳へ感覚神経の伝達 ・脳幹の真後ろにある小脳との連絡経路 橋出血は神経の伝導路が障害されるため、運動麻痺や感覚障害が起こるのです。 運動麻痺は出血の部位にもよりますが、重症例では両方の手・足ともに動かなくなる四肢麻痺をきたすケースもあります。 四肢麻痺と顔の麻痺まで加わる特殊な形に「閉じ込め症候群」があります。 意識や感覚は保たれますが、まばたきと一部の目の動き以外の運動がすべてできません。 看護・介護を行う人とのコミュニケーションは、眼の動きのみで行うのです。 他にも橋出血が発症すると幾つかの運動失調が起こります。 以下の記事では橋出血による運動失調の種類を詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。 ②神経の分岐・中継地点の役割と橋出血の症状 脳幹には、脳から直接伸びる末梢神経である脳神経核をはじめ、神経回路の分岐点や中継地点になる複数の神経核(神経細胞体の塊)があります。 橋出血が発症する「橋」にも、以下4つの脳神経核があります。 三叉神経;主に顔面の感覚を伝える 外転神経;眼球の運動の一部を支配する 顔面神経;表情筋など顔面の運動に関わる 内耳神経;聴覚や平衡感覚を司る 橋出血で障害を受けた際の症状は以下の通りです。 ・顔の感覚や運動の障害 ・眼球運動の障害 ・聴力障害 とくに三叉神経や顔面神経は舌の動きや感覚などにも関わる神経です。 橋出血が起こると飲み込み障害とも呼ばれる「嚥下(えんげ)障害」も起こる可能性があるので注意しましょう。 ③自律神経中枢の役割と橋出血の症状 自律神経は生命維持の上で必要な動作を調整する神経です。 意識せずとも呼吸をし、心拍数をコントロールしています。 明るさに応じて瞳孔の大きさを調節しているように、自律神経は、脳幹に中枢があるのです。 橋には呼吸の中枢があるため、橋出血の患者様は呼吸障害が多くみられます。 橋出血では瞳孔の異常も多く、瞳孔の縮小や瞳孔を開く交感神経の障害もあるためです。 ④脳幹網様体の役割と橋出血の症状 脳幹の中心から背中側には「網様体」と呼ばれる神経線維の束と神経細胞体が合わさった構造物があります。 網様体の役割は主に以下3つです。 脳幹内の自律神経中枢と連絡し、生命維持機能を果たす 筋肉の緊張をコントロールする 大脳へ刺激を与えて意識を保つ 重症の橋出血だけでなく、網様体の障害でも呼吸・循環障害をきたします。 網様体の損傷により、「意識障害」の症例もあり、重症例では急激な経過で昏睡状態に陥っているケースもあるため、注意が必要です。 橋の網様体には眼球の運動の中枢もあるので、出血部位や程度により、さまざまな眼の動きの異常が認められます。 代表的な症例は、眼の動きがまったくできず、真ん中で固定される眼球の正中固定位が挙げられます。 眼球が真下に急に動き、ゆっくり真ん中に戻ってくる「眼球浮き運動」が認められるケースもあるので注意しましょう。 なお、橋出血を含め脳卒中は、手術しなくても治療できる時代です。 詳しくは以下のページをご覧ください。 橋出血が起こる2つの原因とそれぞれの治療法 橋出血の原因として、高血圧と血管奇形の2つが挙げられます。 原因により治療法が異なるので、それぞれ解説していきます。 高血圧で起こる橋出血と治療 橋出血の最大の原因は高血圧です。 橋への栄養動脈が、高い圧により破綻してしまいます。 橋は小さい中に重要な構造物が詰まっているところなので、出血が一気に広がり損傷が起こると、短時間で致命的になるので要注意です。 損傷を受けた脳幹の回復は難しく、手術は基本的には行いません。 可能な限り血圧を下げ、呼吸や循環などの生命維持のサポートをするのが治療の中心です。 血管奇形で起こる橋出血と治療 高血圧性の橋出血よりも若い方に多いのが、脳の血管奇形(赤あざ)によるものです。 代表的なものに「海綿状血管腫」と呼ばれる血管の塊があります。 生まれつき静脈の成分が拡張した場合によくみられ、発症場所や大きさなどは人によって異なります。 海綿状血管腫を持っている一部の患者様は、局所的な出血を起こすケースが大半です。 出血は少量で、重篤になりにくい反面、何度も繰り返すリスクがあります。 出血が落ち着いているときに手術が考慮されるケースもあるので注意してください。 橋出血についてよくあるQ&A Q , 橋出血の検査はどのようなものがありますか? A , 橋出血に限らず疑わしい症状があれば、CT撮影をします。 脳は灰色に映りますが、出血がある部分は白くなります。 なお、血管奇形の診断にはMRI も有用です。 近年では脳ドックなどにより症状がないまま発見されるものも多くあります。 Q , 海綿状血管腫は必ず手術が必要ですか? A , 症状のない海綿状血管腫が出血を起こすのは、年間で1,000人中4〜6人程度です。 手術の合併症リスクの方が高く、全員におすすめできません。 ただし、一度出血を起こすと、2年以内の再出血リスクが高くなります。手術のメリットとリスクを比較しつつ、手術ができない場合は、放射線治療が考慮されるケースもあります。 橋出血の後遺症や予後について、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。 まとめ・橋出血の症状を理解して適切に治療しよう! 橋出血は、重症例では命にかかわりかねない恐ろしい病気の1つです。 「橋」と呼ばれる部位でもあるため、神経伝達や自律神経においての重要な役割を果たしています。 高血圧は重症の橋出血のリスクになるため、しっかりと治療を受けるのがおすすめです。 症状を見つけるタイミングも当然早い方が良いので、少しでも不安に感じた方は医療機関でのカウンセリングを検討しましょう。 ▼以下もご参考下さい <参考文献> 東登志夫. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 364-368, 2014. 古谷一英. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 369-372, 2014. 茂木陽介, 川俣貴一. 日本臨牀. 80(増刊号2): 320-324, 2022. 医学書院 標準解剖学 第1版 メディックメディア 病気がみえるvol7. 脳・神経 第1版 中外医学社 イラスト解剖学 第7版 脳卒中診療ガイドライン2021
2023.08.14 -
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もやもや病になってから性格が変わった気がする。 もやもや病による性格変化にはどのように対処すべき? この記事を読んでいるあなたは、自分や大切な人がもやもや病になり、性格変化が起きているのではないでしょうか。 「どのように接したら良いかわからない」と悩んでいる人もいるかもしれません。 結論、もやもや病による性格変化は、「高次脳機能障害」が関係している可能性があります。 以前とまったく同じ性格に戻すのは困難ですが、原因や対処を知れば、生活上の不便は軽減できます。 本記事では、もやもや病による性格変化のメカニズムと対処法について詳しく解説します。 記事を最後まで読めば性格変化の原因や対処法がわかり、毎日を快適に過ごしやすくなるでしょう。 もやもや病の後遺症で性格が変化することがある もやもや病は、脳の重要な動脈が狭くなった結果、通常では見られない細い血管(もやもや血管)が発達する病気です。もやもや血管は血流悪化や脳卒中のリスクが高く、脳機能の低下につながるケースも見られます。 また、脳機能の低下によって「高次脳機能障害」が生じると、性格変化が起こる可能性があります。高次脳機能障害とは「怪我や病気によって脳がダメージを受けた結果、複雑な処理ができなくなり、生活に支障が出る状態」です。 もやもや病でダメージを受けやすいのは、脳の「前頭連合野」と呼ばれる部位です。 前頭連合野には以下のようなはたらきがあります。(文献1) 前頭連合野の機能 説明 認知・実行機能 状況を深く理解したり推理したりする 心の理論・社会性機能 人の気持ちを想像したり、周りを見て行動したりする 情動・動機付け機能 積極的に行動したり、自己表現をしたりする どの機能も、人間が社会的な生活を送るのに欠かせません。 そのため、もやもや病によって前頭連合野の機能が失われると、「感情のコントロールができず自己中心的になる」「周りの状況を見て動けない」などが起こり、性格が変わったと思われやすいのです。 当院「リペアセルクリニック」では、もやもや病による脳卒中後の治療として再生医療(幹細胞治療)を提供しています。再生医療には、リハビリの効果を高めたり、後遺症を軽減したりする効果が期待できます。 もやもや病後の後遺症にお悩みの方は「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」へ気軽にご相談ください。 なお、もやもや病については、以下の記事で詳しく説明しています。 もやもや病の後遺症でみられる性格の変化 もやもや病の後遺症「高次脳機能障害」による性格の変化は、以下のとおりです。 記憶障害により物忘れが増える 注意障害により気が散りやすくなる 社会的行動障害により感情をコントロールできなくなる 遂行機能障害により段取りが悪くなる 本章の内容をもとに、気になる性格の変化が高次脳機能障害によるものなのかを考えてみましょう。 なお、性格変化以外の後遺症については、以下の記事もぜひ参考にしてください。 記憶障害により物忘れが増える もやもや病によって脳の記憶をつかさどる部分の機能が低下すると、「作業記憶(ワーキングメモリー)」が低下することがあります。 作業記憶とは、何かを行うときに一時的に置いておく「記憶の引き出し」です。記憶障害の症状例は、以下のとおりです。 聞いたことをすぐ忘れて何度も聞き返す 買い物に出かけても、何を買えばいいか忘れる ものを置いた場所を思い出せない 何度も同じことを聞いたり、頼みごとができなくなったりする結果、本人や周囲の人に不便が生じ、ストレスとなるケースは珍しくありません。 注意障害により気が散りやすくなる 注意障害とは、気が散りやすく一つの物事に集中できない状態です。生活に支障をきたす注意障害の症状は、以下のとおりです。 ぼんやりしていてミスが多い 2つのことを同時にできない(マルチタスクができない) 少しの変化に気をとられ、自分の動作が止まる 注意障害は、仕事や勉強などのパフォーマンスの低下につながりやすい症状といえるでしょう。 社会的行動障害により感情をコントロールできなくなる 社会的行動障害とは、自分の感情をうまくコントロールできない、衝動的な行動が増えるなどの状態です。以下のようなケースがあり、社会生活に問題が出る可能性も考えられます。 自己中心的になる 感情の振れ幅が大きくなる 思い通りにならないと大声を出す 興奮したり暴力をふるったりする 欲求を抑えられずにギャンブルや借金に走る 逆に、人や物事への興味や自発性がなくなるケースもあります。 遂行機能障害により段取りが悪くなる 遂行機能障害とは、物事を順序立てて行えなくなることです。具体的な症状は、以下のとおりです。 段取りが悪い 優先順位をつけられない 約束の時間に間に合わない 人に指示してもらわないと何もできない 臨機応変に行動できず、少しのトラブルにも対応できない 日常生活は、予期せぬ出来事がたくさん起こります。遂行機能障害によりその場に応じた対応ができなくなると、仕事や生活の維持に支障が出やすくなるかもしれません。 もやもや病による性格変化は検査・症状で診断する 性格変化がもやもや病による高次脳機能障害が原因なのかは、以下の内容から総合的に判断されます。(文献2) 何かの病気(今回はもやもや病)が原因で起きたものか 現在、脳機能が低下したことにより日常生活・社会生活に支障が出ているか MRIやCT、脳波検査などにより、認知障害の原因が脳の異常によるものと考えられるか 先天性疾患や発達障害、持病などが関連していないか なお、高次脳機能障害の診断は、原因となる脳の病気や怪我の急性期が過ぎ、症状が安定してから行われます。そのため、もやもや病と診断されてすぐではなく、ある程度の期間が必要です。 当院「リペアセルクリニック」では、もやもや病による脳卒中後の治療として再生医療(幹細胞治療)を提供しています。再生医療は、もやもや病による脳卒中後の身体機能の回復や再発予防を目指した治療法の一つです。 もやもや病による脳卒中が原因の高次機能障害にお悩みの方は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」へ気軽にご相談ください。 もやもや病で性格が変化したときの対処法 もやもや病で性格変化や行動変化が見られても、原因を知り適切に対処すれば、日常生活への支障を軽減できます。 本章では、「自分の性格が変わった場合」「家族や友人の性格が変わった場合」の2つの事例において、おすすめの対処法を解説します。 自分の性格が変わった場合 もやもや病にかかった場合、病気による変化を理解した上で、自分に合う対応を学ぶのがおすすめです。 具体的な対処法の例は以下のとおりです。(文献3) 無理のない範囲で運動し、体力をつける バランスの取れた食事や規則正しい生活を意識する 人と比較せず、自分の状況や希望に合わせた生活の目標を考える 地域のリハビリ科や精神科の病院、地域の保健福祉センターなどに相談してみるのも良い方法です。焦らずに、少しずつ進んでいきましょう。 家族や友人の性格が変わった場合 性格変化が周りの人に起きた場合は、もやもや病による影響を正しく理解し、適切なサポートを検討しましょう。 たとえば、本人がどのような状況でイライラしたり不自由したりしているかをチェックし、専門家からどのような生活や手助けが適しているかのアドバイスを受けます。相談先は病院や保健福祉センターなどです。 具体的な対策の例は、以下のとおりです。 気が散らない環境を整え、ものごとに集中できるようにする こまめにメモを取り、低下した記憶力をおぎなう 低下した機能を助ける訓練を受ける 一度の相談ですべての課題に対応するのは難しいため、相談と検討を繰り返しながら少しずつ本人の抱える困難に対応していきます。焦らずに、寄り添う姿勢を大切にしてみてください。 まとめ|もやもや病で性格変化が起きたら医療機関へ相談しよう 本記事では、もやもや病の後遺症による性格変化について、詳しく説明しました。 もやもや病のあとに性格が変わるのは、脳のダメージによる「高次脳機能障害」が原因の可能性があります。感情の制御をつかさどる「前頭連合野」がダメージを受けた結果、記憶障害や行動障害などが起こります。 性格変化は病気の後遺症であると理解し、専門家の指導のもとに適切な対応を行いましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、損傷した脳に対する再生医療(幹細胞治療)を実施しています。再生医療は、もやもや病による脳卒中後の身体機能の回復や再発予防を目指した治療法の一つです。 「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」を行っております。気軽にご相談ください。 もやもや病による性格変化に関するよくある質問 高次脳機能障害は完治しますか? 脳に傷がある状態のため、高次脳機能障害を完全に治すことは困難です。しかし、得意・不得意を考慮した工夫により、生活上の不便は軽減できます。根気強くリハビリをおこないましょう。 脳卒中による高次脳機能障害があるとき、入院期間はどのくらいになりますか? 脳卒中では、発症直後の急性期を過ぎたあとは「回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)」に移ってリハビリを続ける方が多く見られます。 回復期リハ病棟では、脳血管障害における一般的な入院期間は150日とされています。ただし、高次脳機能障害の合併があると、180日まで入院可能です。 期間すべてを使っての入院が必要というわけではありません。しかし、高次脳機能障害は麻痺と違い一見してわかりづらく、周りの理解が得られにくいケースが多いです。退院後を快適に過ごすために、社会復帰のためのリハビリや環境整備にしっかりと時間をかけましょう。 もやもや病による脳梗塞については、以下の記事もぜひ参考にしてください。 参考文献 (文献1) 渡邊正孝「頭連合野のしくみとはたらき|高次脳機能研究( 第36巻,第1号)」https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/36/1/36_1/_pdf (文献2) 厚生労働省 科学研究成果データベース「令和4年版高次脳機能障害診断基準 ガイドライン」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/36/1/36_1/_pdf (文献3) 相模原市「もしかしたら高次脳機能障害?」 https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/025/677/r03_pamphlet.pdf
2023.08.10 -
- 頭部
- 頭部、その他疾患
もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)は、脳血管に異常が生じることで脳卒中などを引き起こす可能性がある、原因不明の難病です。 近年、家族内で複数の患者様が見られるケースも報告されており、「もやもや病は遺伝するのでは?」と心配する方も増えています。 この記事では、もやもや病と遺伝の関係性について、最新の研究や専門的な見解をわかりやすく解説します。 なお、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 もやもや病が引き起こす可能性がある脳卒中の予防や、再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 もやもや病と遺伝の関係|どこまで明らかになっているのか もやもや病は長らく原因不明の病気とされてきましたが、近年の研究により、遺伝との関連が少しずつ解明されつつあります。 家族内での発症例や、特定の遺伝子との関連が指摘されており、遺伝的な背景を考慮した研究が進められています。 もやもや病は「遺伝病」ではないが遺伝的要因が関与する可能性がある もやもや病は、いわゆる「遺伝病」ではありません。 つまり、親から子へ必ず受け継がれるような仕組みは確認されていません。 しかし、これまでの研究では、家族内に複数の患者様がいるケースが一定の割合で報告されており、遺伝的な要因が関係している可能性があると考えられています。 また、特定の人種や地域に患者様が集中していることからも、環境要因に加えて、体質的な背景も影響しているのではないかと指摘されています。 現在のところ、もやもや病の発症には、遺伝だけでなく複数の要因が複雑に関わっていると考えられており、まだ解明されていない部分も多いのが現状です。 家族内発症の傾向と報告例について もやもや病は、日本において10〜20%の患者様に家族内での発症が確認されていると報告されています。 つまり、兄弟や親子などの近い家族の間では、10人に1〜2人の割合で罹患していることになります。(文献1) このような「家族性もやもや病」は、特定の遺伝的背景を持つ人に起こりやすい可能性があると考えられています。 また、家族性のケースでは、次の世代になるほど発症年齢が早くなったり、症状が重くなるといった傾向(表現促進現象)が見られることもあります。 子どもへの遺伝確率や兄弟リスクは? 家族にもやもや病の患者様がいると、「子どもや兄弟にも遺伝するのでは」と不安に感じる方が多いかもしれません。 とくに親が患者様である場合、将来の子どもの健康に影響があるかを心配されるケースもあります。 現在のところ、もやもや病は単純な遺伝形式で受け継がれる病気ではないとされています。 たとえば、親が発症しても子どもには症状が現れない場合も多く、反対に親に症状がなくても子どもが発症することもあります。 また、兄弟間で発症する確率が何%といった明確な数値は示されていません。 これは、遺伝的な素因に加えて、環境や個人の体質など、さまざまな要因が発症に関わっているためです。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、簡易オンライン診断が受けられます。 もやもや病による脳卒中に関してお悩みの方は、公式LINEに登録してぜひ一度お試しください。 もやもや病と関連した遺伝子とは? もやもや病は、家族内に複数の患者様がいるケースや、東アジアに多いという特徴から、以前から遺伝的な要因が関係しているのではないかと考えられてきました。 近年では、ある特定の遺伝子と病気の関連性も報告されており、研究が進んでいます。 遺伝子多型 私たちの体は、細胞の中にあるDNA(遺伝情報)によってつくられています。 DNAは、アデニン(A)・チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C)の4種類の「塩基」が並んでできており、この配列によって体のさまざまな情報が決まります。 人間同士のDNAは、約99.9%が同じですが、ごくわずかに異なる部分があります。 この違いを「遺伝子多型(いでんしたけい)」と呼びます。 たとえば、肌や髪の色の違い、病気へのなりやすさの個人差などが、この多型によって現れることがあります。 ただし、遺伝子多型があるからといって、必ず症状が出るわけではありません。 体質の違いや傾向を示す個性のようなものと考えると、イメージしやすいでしょう。 RNF213遺伝子多型p.R4810K もやもや病と関わりの深い遺伝子として、「RNF213(アールエヌエフ213)」があります。 これはヒトの染色体のうち17番目に存在する遺伝子です。 日本人の患者様のRNF213遺伝子を調べると、80〜90%もの人が「p.R4810K」という遺伝子多型があることがわかりました。 一方で、このp.R4810K多型は、健康な日本人でも約1〜2%の人に見られることがわかっています。 つまり、この多型を持っているからといって、必ずもやもや病を発症するわけではありません。 これは、RNF213のp.R4810Kが「発症しやすい体質を示す素因」であり、発症には他の遺伝的要因や環境要素も関係していることを意味します。 発症の背景は複雑で、一つの要因だけで決まるものではないと考えられているのです。 遺伝子検査はできる?費用や対象について 現在のところ、RNF213遺伝子の多型(p.R4810K)を調べる遺伝子検査は、一般的な医療機関では実施されていません。 保険診療の対象にもなっておらず、通常の診療では行われていないのが現状です。 また、この遺伝子多型を持っていても、必ず発症するわけではないため、検査で結果が出ても予防や治療に直結するわけではありません。 そのため、現時点では、診断目的の検査は画像検査(MRAや脳血管造影など)が中心となっています。 研究機関や一部の専門施設では、研究協力の一環として遺伝子検査が行われる場合がありますが、その際も倫理審査を経て同意が必要となります。 費用や受けられる条件も施設によって異なるため、希望がある場合は専門医に相談することをおすすめします。 もやもや病と診断されたら|家族の健康管理でできること もやもや病と診断されたとき、本人だけでなく家族も「ほかの家族にリスクはないのか」と不安を感じることがあります。 この章では、家族として意識しておきたい健康管理のポイントや、子ども・兄弟への対応についてご紹介します。 子どもや兄弟の定期的なチェックは必要? 家族にもやもや病の方がいると、発症リスクがやや高まるとされているため、気になる症状があれば早めに受診しておくことをおすすめします。 もやもや病は、5〜10歳ごろの小児期に発症のピークがあることが知られています。 また、成人期では40歳前後に発症するケースが多く、子どもから大人までどの年代でも注意が必要な病気です。(文献2) とくに、小児では過呼吸や運動後の脱力、てんかん発作のような症状が現れることがあり、成人では脳出血で発症する例もあります。 症状がなくても、気になる背景がある場合は画像検査(MRAなど)で早期に確認するという選択もあります。 不安なときの相談先や検査のすすめ方 家族に患者様がいる場合、「自分や子どもも発症するのでは」と心配になる方は少なくありません。 そんなときは、一人で悩まずに医療機関で相談することが大切です。 もやもや病の診療を行っているのは、主に脳神経外科や神経内科です。 とくに、もやもや病に詳しい専門医のいる病院や、脳卒中センターを併設している大きな医療機関での相談が安心です。 症状がある場合はもちろんですが、「家族に患者がいるので心配」「子どもの頭痛が気になる」といった理由でも、相談して問題ありません。 必要に応じてMRA(磁気共鳴血管撮影)などの画像検査が行われます。 また、小さなお子さんの場合は、検査中に動かずにいられるかどうかがポイントになります。 状況によっては鎮静剤を使って検査を受けることもあるため、不安があれば事前に医師に相談しましょう。 まとめ|もやもや病は遺伝だけではないが家族で知っておきたい病気 もやもや病は、一部で家族内での発症が見られる病気であり、関連する遺伝子も報告されています。 ただし、「遺伝=必ず発症する」わけではなく、さまざまな要因が重なって起こる複雑な病気です。 遺伝的な背景があることを知っておくことは大切ですが、過剰に心配し過ぎる必要はありません。 大切なのは、必要に応じて早めに相談・検査を行い、家族で健康を守っていくことです。 気になることがあれば、専門医にしっかり相談をしましょう。 参考文献 (文献1) もやもや病(指定難病22)|難病情報センター (文献2) Moyamoya disease in children|PubMed
2023.08.07 -
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橋出血の後遺症と予後予測|回復の見通しについて医師が解説 橋出血は非常に致死率の高い病気です。 かつて脳卒中は、日本人の死因の1位でした。しかし、医療技術が進歩するにつれて、脳卒中による死者数は徐々に減少しています。2022年においては死因の第4位でした。 橋出血は、その中でもいまだに生存率が低いとされており、発症すると半分近くの方が亡くなるという報告もあります。 本記事では、致命的になることの多い橋出血の予後の予測、また後遺症の回復について、解説をしていきます。 橋出血が重症化しやすいのはなぜか? 橋出血の最大の原因は高血圧です。高い血圧がかかり続けると、血管が急に破れてしまうことがあります。 血管をホース、血圧を水の勢いと考えてみてください。高血圧による脳出血は、勢いよく水を出しているホースが途中で破れてしまった状態と同じです。破れたところから、水はさらに激しく飛び散るでしょう。 脳は柔らかい組織で、一度出血すると簡単に止血できず、機能が急激に失われていきます。橋は意識や生命維持のための機能のコントロールを行う場所です。そのため、橋出血は死に直結することも少なくありません。 橋出血の生命予後に関わる症状とは? 重症の橋出血で起こる症状には次のようなものがあります。これらの症状は、橋出血において生命予後不良であることを示すものです。 発症早期の高度の意識障害 橋を含む脳幹は大脳へ刺激を与え、意識を保ちます。橋出血によりその刺激ができなくなると、昏睡状態など、高度の意識障害を認めます。 四肢麻痺 橋は大脳からの運動の伝達経路です。大脳の損傷でも麻痺は起こりますが、基本的には片麻痺(左右どちらかのみの麻痺)です。橋の広い範囲の出血では、運動神経が一気に障害されるので、四肢麻痺を呈します。 除脳硬直 意識障害下に、痛み刺激を加えると、手足が強く緊張して伸びたような姿勢になります。橋を含む脳幹のダメージにより、筋肉の緊張をコントロールすることができなくなるからです。 眼球正中位固定 橋には眼球の動きを司る部分があります。この障害により、目が真ん中から動かなくなります。 対光反射の消失 対光反射とは、瞳孔に光を当てた時、瞳孔の大きさが小さくなることです。この反射の中枢の「動眼神経」は橋の上の中脳にあります。橋出血の範囲が広いと中脳まで影響がおよび、対光反射は消失します。 失調性呼吸 脳幹の呼吸中枢が障害されるために起こる不規則な呼吸です。リズムも、一回ごとの呼吸の量も、バラバラで、呼吸が止まる直前の状態と考えられます。 中枢性過高熱 体温の調節中枢は脳幹のすぐ上にある間脳の視床下部というところです。広範な橋出血により、間脳までダメージが広がると、高い熱が出ます。 後遺症の治療について 重症にならず命が助かっても、出血で脳が傷つくと、後遺症が残ってしまうケースもあります。 例えば、神経の伝達経路の損傷による片麻痺、感覚障害などです。 橋は小脳という動作のコントロールに重要な部分と密接に関連しているため、運動失調によりふらついたり、動作がスムーズにいかなくなったりする方もいます。 また、物を飲み込む力が弱くなる嚥下障害も、頻度の高い後遺症です。飲み込みに関わる神経の多くは、橋をはじめとする脳幹から、顔・頸などに直接のびているからです。 後遺症のために、すぐに自宅に帰ることができなくなる方も多くいらっしゃいます。そのような場合に行うのが、リハビリテーションです。 急性期(発症直後の体の状態が安定しない時期)からリハビリが始まりますが、それだけでは不充分なことも多いです。そのため、患者さんの多くは、急性期がすぎると回復期病院(病棟)に移動し、集中的にリハビリを受けることになります。 リハビリの種類 理学療法・作業療法・言語聴覚療法の3種類があります。 理学療法 作業療法 言語聴覚療法 理学療法は、基本的な動作能力の回復を目指すリハビリです。 作業療法は日常生活に必要な作業の訓練を行います。同じリハビリでも、理学療法は立つ・歩くなどの基本的な動作、作業療法は着替え・入浴など応用的な動作が主体です。それぞれ、理学療法士・作業療法士という専門のスタッフがいます。 言語聴覚療法の担当は、言語聴覚士というスタッフです。構音障害などコミュニケーションの障害に対してリハビリを行います。また、橋出血に多い嚥下障害へのアプローチも行います。 リハビリの目標と後遺症の回復の見通しについて リハビリの最終的な目標は、個人個人の後遺症の具合、また退院後の生活環境を踏まえて決定していきます。そして、機能予後、つまり後遺症の回復見通しを勘案しながら、リハビリテーション計画を考えます。 では、回復の見通しはどのように立てるのでしょうか。 脳卒中全般で、発症時の重症度、画像の所見、入院時の日常生活動作(ADL)など、初期の評価からの機能予測についての研究が複数行われています。 また、急性期の回復の具合から、最終的な回復の見通しを立てる方法も模索されています。その中で、最初の1ヶ月での回復具合が大きいほど、最終的に自立した生活につながりやすいことが示されているのです。状態が許せば、早いうちから積極的なリハビリを行なうことは、回復につなげるために非常に重要です。 麻痺が回復するのは発症後どのくらいまでか 一般的に麻痺の回復は、3〜6ヶ月程度までと言われています。そのため、発症して早いうちから、集中的にリハビリに取り組むことが重要です。 この期間を過ぎてしまっても、リハビリを続ける意味がないわけではありません。麻痺の無い側でうまく補ったり、補助具を使ったりする訓練ができます。 まとめ・橋出血の後遺症と予後予測|回復の見通しについて医師が解説 橋出血は現在の医療の進歩をもってしても、いまだに生命予後の悪い病気です。 また、後遺症も残りやすく、回復には時間がかかります。早いうちにリハビリに集中的に取り組むことで、麻痺などの後遺症が軽くなる可能性がありますので、諦めないことが大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 ▼以下もご参考ください 橋出血による運動失調の種類とリハビリプログラム 〈参考文献〉 奥田佳延 他. Neurosurg Emerg 13:63-71,2008. 木村紳一郎 他. 脳卒中の外科. 39: 262-266, 2011. 東登志夫. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 364-368, 2014. 古谷一英. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 369-372, 2014. 佐藤栄志. 日本臨牀. 72 (増刊号7): 373-375, 2014. 厚生労働省.令和4年(2022)人口動態統計月報年計の概況. 結果の概要. (閲覧2023年6月28日). 脳卒中診療ガイドライン2021
2023.08.03 -
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「視床出血の症状や後遺症は何があるの?」 「視床出血のリハビリ方法は?」 視床出血は、脳の中でも脳内ネットワークの中心となる視床で起こる出血です。 脳の中心である視床に出血が起きると、片麻痺や感覚障害、また運動失調の原因にもなります。 この記事では、視床出血で運動失調が起こる理由を始め、特徴や治療方法、リハビリなどを解説します。 再生医療の可能性も解説するので、視床出血後の症状に悩まれている方はぜひ参考にしてみてください。 視床出血とは【脳の視床で起こる出血】 視床出血は、脳卒中と総称される脳出血・脳梗塞・クモ膜下出血の中でも、脳の中の視床で起こる出血です。 主な原因は高血圧で、脳出血の中では、被殻(ひかく)出血の次に視床出血の頻度が高いとされています。(文献1) 視床と被殻は隣にあり、視床出血は脳室とも隣接しています。視床出血と被殻出血は、脳室にまで出血が広がるかどうかが違いのひとつです。 また、視床出血は、重症度によってI〜IIIに分類されます。 その中でも、脳室穿破(せんぱ:脳室と呼ばれる脳脊髄液がある部分まで出血が及んでいるか)の有無で「無=a」「有=b」とさらに細かく分類できるのがポイントです。 視床に限局しているものをⅠ、内包に進展したものをⅡ、視床下部または中脳に進展したものをⅢとしています。 簡単に述べると、出血が大きくなるほど、数字も大きくなるようなイメージで良いでしょう。 視床出血による症状 視床は、脳内ネットワークの中心になる場所で、感覚神経をはじめ、さまざまな神経線維がここを経由しています。 視床出血によって、以下のようにさまざまな症状が起こるのが特徴です(文献2) 片麻痺 瞳孔径の縮小 顔面神経麻痺(病変と反対側に起こる) 知覚障害 病変側への共同偏視 外転神経麻痺 半盲 嘔吐 運動失調 など 他にも、視床出血では失語症や半側空間無視、注意障害などの高次脳機能障害が起こる場合もあります。(文献3) また、他の脳卒中と同じように症状が出たばかりの急性期には、視床出血が原因となり、嚥下障害(食べ物の飲み込み運動に支障が出る)が起こる可能性もあるでしょう。(文献4) 嚥下運動は、大脳から脳幹に至るまでの複雑なネットワークによって成り立っているからです。 視床出血による運動失調が起こる理由 運動失調とは、動作や姿勢保持などの協調運動に起こる障害です。 運動麻痺がないときもあれば、軽症の運動麻痺があるケースも含まれます。 視床出血で失調症状がでるのは、小脳の運動機能調節に重要な経路に小脳や視床、大脳皮質、橋があるためです。 上記のいずれかが障害されても、小脳性運動失調を生じるのです。 また、視床出血によって、深部感覚が障害されるのも原因のひとつと考えられています。 【失調と麻痺の違いとは?】 失調と麻痺の違いは、筋力の低下があるかどうかです。 視床出血による運動失調だと、意識障害や片麻痺を伴う場合が多い傾向にあります。協調運動障害や不随意運動、感覚障害が認められる場合は少ないとされています。 つまり、運動失調の症状があっても、四肢の麻痺によるものなのか判別がつきにくいと考えられるのです。(文献5) 視床出血の種類と特徴 運動失調の種類には、以下のようなものがあります。 視床出血の失調症状では、四肢の失調症状や歩行の異常が認められます。 視床出血の治療方法 視床出血が起こったときの治療は、血圧を下げるのが中心となります。視床は脳の深部にあるため、手術適応にはなりにくいのです。 また、視床出血によって、水頭症と呼ばれる脳室に脳脊髄液がたまる症状になってしまう場合があります。 水頭症を放置しておくと、脳ヘルニア(脳の一部が頭蓋骨の外側に飛び出してしまう状態)になる危険性があるのです。 呼吸障害などが起こり生命に関わるため、シャント術の手術を行い、余分な髄液を脳室から腹腔にまで流します。 視床出血後のリハビリについて【後遺症が出る場合】 視床出血では、発症後から感覚障害があった場合、感覚障害の症状が残ったり、逆に半身の痛み(視床痛)が出現したりします。 運動失調が残る場合を始め、出血が大きいときは、片麻痺の後遺症が出る可能性もあるでしょう。 視床出血後、ある程度落ち着いた段階で、作業療法や理学療法などのリハビリを行います。 作業療法 理学療法 作業療法 作業療法では、麻痺している上肢(肩口から先の手)を積極的に使い、日常生活への復帰を目標とします。 たとえば、麻痺側の手を中心に動かして、食事に必要なお箸の使い方などを訓練する流れです。 リハビリは毎日続けて行うと、身体機能をサポートする働きかけにつながります。 理学療法 理学療法では、以下のように、日常生活を送る上で必要な動作の練習をします。 重り負荷 弾性包帯による圧迫 フレンケル体操 立ち上がりや立位時の荷重負荷練習 視覚誘導 視床出血後には片麻痺が出て、運動障害と運動失調症状が同時に起こる場合もあるでしょう。 そのため、視床出血後のリハビリの一つとして、免荷式(めんかしき)トレッドミルの機械を使い、歩行のリハビリを行います。 上記の方法は、体を上から吊るしてハーネスで体を支えると、足にかかる体重を調整できて、バランス感覚を鍛える働きかけにつながります。(文献7) 視床出血に関するリハビリについては、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。 まとめ|視床出血による運動失調はリハビリと再生医療の治療法もある 視床は脳内ネットワークの中心で、視床出血が起こると運動失調などの症状が出る場合もあります。 視床出血は後遺症が残ってしまう可能性が高い疾患です。 ただ、当院ではリハビリに再生医療を組み合わせて、脳神経細胞の修復や身体機能の改善への取り組みを行っています。 また、関連する内容として、当院の患者様で視床出血後に左半身の麻痺があり、膝の強直における幹細胞治療の実績もあります。 脳卒中後の後遺症に対しての再生医療にご興味がある方は、ぜひ一度当院へご相談ください。 参考文献 文献1 加齢の面からみた脳出血の部位 文献2 脳出血部位と症状 (CM Fisher)|秋田大学 大学院医学系研究科 文献3 原著視床出血の高次脳機能障害 文献4 急性期脳出血における摂食・嚥下障害の検討 文献5 運動失調を主徴とした左視床出血の1例 文献6 神経メカニズムから捉える失調症状 文献7 運動失調に対するアプローチ
2023.07.27 -
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橋梗塞(橋出血)ではどんな症状が出るのだろう。 橋梗塞(橋出血)になったらどんなリハビリが必要なのかな。 この記事を読んでいるあなたは、橋梗塞の症状やリハビリについて不安を抱いているのではないでしょうか。「橋梗塞」という病気自体に馴染みがなく、今後の治療・リハビリの流れを知りたいと思っているかもしれません。 結論、橋梗塞になると麻痺やしびれなどが多く見られます。しかし、梗塞の程度や治療開始までにかかった時間などにより、その後の経過や必要なリハビリに個人差があるのも事実です。 本記事では、橋梗塞(橋出血)の症状やリハビリについて、詳しく解説します。記事を最後まで読めば、症状や経過がわかり、今後の見通しを立てやすくなるでしょう。 橋梗塞(橋出血)における4つの症状 橋梗塞(きょうこうそく)とは、脳の奥にある「脳幹」の一部、「橋(きょう)」という部分の血管が詰まり、脳細胞の機能が失われる病気です。橋梗塞は脳梗塞全体の約7%を占めるといわれています。(文献1) 橋は大部分の脳神経の出入口であり、運動や感覚をつかさどる神経が通る部分です。り、睡眠や覚醒、呼吸運動や循環機能などの「自律運動」をつかさどり、人間の生存や活動に重要な役割を果たします。っている重要な部分です。 そのため、橋梗塞(橋出血)が起こると、以下のような症状が出ることがあります。 運動失調 感覚障害 嚥下障害 四肢の麻痺(閉じ込め症候群) ほかにも、意識障害や高熱、瞳孔縮小、高血圧、呼吸異常、眼球運動障害などが出るケースもあります。 なお、橋梗塞(橋出血)による麻痺は、梗塞によって機能が失われた脳の反対側に見られるのが一般的です。 本章の内容をもとに、橋梗塞(橋出血)のおもな症状を理解しておきましょう。 橋出血の症状については、以下の記事で詳しく説明しています。 運動失調 運動失調とは、運動麻痺が認められにくい、または軽度であるにもかかわらず動作や姿勢保持などの協調運動ができなくなる状態です。 運動失調の代表的な症状は、以下のとおりです。(文献2) 言葉がうまく出ない 呂律がまわらなくなる 起立・歩行時にふらつく 字を書くのが下手になる ボタンかけがうまくできない 手が震えて、コップに入れた水をこぼす 箸がうまく使えず、スムーズな食事ができない 運動失調は、障害された部位によって以下の表にある3つの種類に大きく分けられます。(文献3) 運動失調の種類 特徴 小脳性運動失調 眼球のけいれん・揺れ(眼振) 言語障害(発音しにくい) 四肢の失調 運動時の手足の震え 両足を開いた不安定な歩き方(酩酊様歩行) 感覚性運動失調 四肢の失調 深部感覚障害 眼を閉じるとまっすぐ立てなくなる 膝を高く上げて前に放り出すような歩き方(踵打歩行) 前庭性運動失調 眼球のけいれん・揺れ(眼振) 歩行時の片側へのふらつき 橋と小脳は神経でつながっているため、橋梗塞(橋出血)が起こると小脳への伝達がさまたげられます。そのため、橋梗塞(橋出血)により小脳性運動失調をきたすケースがあるのです。 感覚障害 感覚障害とは、神経伝達がうまくできなくなり、手や身体などからの感覚に麻痺や違和感が出る症状です。 感覚障害の代表的な症状は、以下のとおりです。(文献4) しびれ感がある 少しの刺激でも強い痛みや刺激を感じる なにかを触っても感覚がしない(温かさ・硬さ・重さなど) 健康な人では、身体からの感覚は脳へスムーズに伝達されます。 しかし、橋梗塞(橋出血)により神経の伝達がさまたげられると、身体の感じた刺激がうまく脳へ伝わらなくなります。 その結果、「しびれる」「感覚がおかしい」など、生活の質に大きな影響が生じる感覚障害が出るのです。 運動失調や感覚障害については、以下の記事も参考にしてください。 嚥下障害 橋を含む「脳幹」で梗塞が起こると、飲み込みに関する神経が傷ついたり神経伝達が阻害されたりして、「嚥下障害」になるケースがよく見られます。(文献5) 嚥下障害のおもな症状は、以下のとおりです。 食べ物・飲み物でむせやすくなる 食べるのに疲れ、食事を嫌がるようになる 食べたものが気管に入る「誤嚥」のリスクが上がる 口から食べ物がこぼれるため、食事を楽しめなくなる 嚥下障害は、食べ物が気管に入って炎症が起こる「誤嚥性肺炎」のリスクが上がるのも大きな問題です。 ただし、一度食べられなくなっても、リハビリをすれば少しずつ機能が回復するケースもあります。 四肢の麻痺(閉じ込め症候群) 橋の機能が大きく失われ四肢がまったく動かせなくなると、眼球やまぶたしか自分の意思で動かせなくなる「閉じ込め症候群」になるケースがあります。 閉じ込め症候群は、本人の意識は保たれているにもかかわらず身体を動かせないのが大きな特徴です。 また、閉じ込め症候群の人は、嚥下機能も大きく低下する傾向があります。 その結果、誤嚥性肺炎をはじめとする感染症により命を落とすケースは珍しくありません。(文献6) 当院「リペアセルクリニック」では、橋梗塞(橋出血)の症状や後遺症に対して、再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。治療により傷ついた脳細胞が再生されれば、橋梗塞によるつらい症状の改善が期待できます。 ご質問やご相談は「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」から、気軽にお問い合わせください。 橋梗塞(橋出血)による運動失調のリハビリプログラム4選 橋梗塞(橋出血)によって起きた運動失調に対するリハビリプログラムは、以下の4つです。 フレンケル体操 重り負荷での運動 弾性緊縛帯での運動 固有受容性神経筋促通手技(proprioceptive neuromuscular facilitation:PNF) 本章の内容をもとに、リハビリについて理解しておきましょう。 橋梗塞を含む脳梗塞のリハビリについては、以下の記事でも詳しく解説しています。リハビリ内容について詳しく知りたい方はあわせてチェックしてみてください。 フレンケル体操 フレンケル体操は、運動失調のリハビリとして古くから行われている治療法です。 自分の動きを目で見ながら身体の動きをコントロールし、同じ動作を繰り返します。 何度も繰り返し練習することで、協調運動を再びできるようにするのが狙いです。 重り負荷での運動 重り負荷での運動では、足や手の関節や腰に重りをつけ、負荷をかけた状態で運動をおこないます。 身体に重りが付くと、運動量が増えて身体が受ける感覚が強まります。その結果、過剰な運動を抑える力が働き、運動失調が軽減するのです。 弾性緊縛帯での運動 弾性緊縛帯での運動も、重り負荷での運動と同じ発想に基づくリハビリ方法です。 弾性緊縛帯とは、弾性包帯やサポーターなどの身体を圧迫して圧力をかけるものです。上肢・下肢近位部の関節を圧迫して身体への感覚を強化します。(文献7) 感覚入力が強化されると上下肢の過剰な運動が抑えられ、運動失調の軽減が期待できるでしょう。 固有受容性神経筋促通手技(proprioceptive neuromuscular facilitation:PNF) 固有受容性神経筋促通手技(proprioceptive neuromuscular facilitation:PNF)とは、筋肉や皮膚、関節などにある感覚の受容体を刺激しながら身体を動かすリハビリ方法です。 この手法は、治療者(セラピストなど)と患者本人のペアでおこないます。 1.治療者は患者の関節を交互に動かす 2.患者は関節を動かす治療者の動きに負けないように、関節を特定の位置に保つ 効果の持続は短時間にとどまりますが、毎日反復しておこなえば機能の回復が期待できるという報告もあります。 当院「リペアセルクリニック」では、橋梗塞(橋出血)後の治療として再生医療(幹細胞治療)をおこなっています。治療と並行して理学療法士、柔道整復師、鍼灸師などを含むチーム体制によるリハビリテーションも可能です。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」から気軽にお問い合わせください。 橋梗塞で行われる3つの治療 橋梗塞でおこなわれる治療は、以下の3つです。 血栓溶解療法(t-PA治療) 血管内治療(血栓回収療法) 抗血栓療法(内服治療) なかでも血栓溶解療法は、梗塞が生じてから4.5時間以内に始める必要があるため、早く気付いて治療を始めることが非常に大切です。 機能が失われた脳の部位によっては、急激に体調が悪化するリスクもあります。橋梗塞では呼吸や心機能などの全身管理を慎重におこないながら、スピーディな治療がおこなわれます。 橋梗塞を含む脳梗塞の治療については、以下の記事も参考にしてください。 まとめ|運動失調は橋梗塞(橋出血)の症状!リハビリで後遺症を改善しよう 本記事では、橋梗塞(橋出血)の症状や運動失調のリハビリについて詳しく解説しました。 橋梗塞は脳の奥にある「脳幹」の一部「橋」の血管が詰まり、脳細胞がダメージを受ける病気です。運動失調や感覚障害、嚥下障害などが起こり、必要に応じて治療やリハビリがおこなわれます。 適切なリハビリをおこなえば、後遺症の改善が少しずつ見込めるでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、橋梗塞をはじめとする脳梗塞に対して再生医療(幹細胞治療)を提供しています。 再生医療(幹細胞治療)は、ダメージを受けた脳細胞の再生による後遺症の回復や、リハビリ効果の向上などが期待できる治療です。 再生医療へのご質問・ご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けております。気になる点がありましたら、どうぞ気軽にご相談ください。 橋梗塞の症状やリハビリが気になる人によくある質問 橋梗塞と脳梗塞の違いは? 橋梗塞は脳梗塞の一部で、両者の違いは「梗塞の起きた部分の範囲」です。 橋梗塞:脳のなかにある「脳幹」のさらに一部「橋」で起こった梗塞のみを指す 脳梗塞:脳内で起きた梗塞すべてを指す つまり、橋梗塞の方が脳梗塞よりも起きた場所が限定された梗塞といえるでしょう。 脳梗塞については、以下の記事で詳しく解説しています。 運動失調と麻痺の違いは? なにかの運動をしようとする際に障害がある状態を、運動障害といいます。 運動障害には「運動麻痺」と「運動失調」があり、症状や原因に以下の違いがあります。 症状 原因 運動麻痺 筋肉を自分の意思で動かせない 筋肉そのものや、筋肉に命令を送る大脳皮質や脊髄・末梢神経がダメージを受けた 運動失調 スムーズな運動が難しい 運動に関わる筋肉の動きを調整する機能が失われた リハビリの効果を高めるための方法はあるの? リハビリの効果を高める方法には、「自己脂肪由来幹細胞の投与」があります。 自己脂肪由来幹細胞の投与には、リハビリの効果を高めることに加え、脳神経細胞の修復再生による運動失調からの回復効果も期待できます。 リハビリには失われた機能を改善する効果が期待できますが、橋梗塞(橋出血)により失われた脳細胞の再生は困難です。 また、発症から時間が経つにつれて、リハビリの効果はあらわれにくくなることもあります。 リハビリの効果が上がらない、早く効果を上げたいなどの方は再生医療の利用も検討してみてはいかがでしょうか。ご質問・ご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けております。どうぞ気軽にご相談ください。 リハビリ効果を上げる方法は、以下の記事でも詳しく解説しています。 参考文献 文献1 阿部宗一郎ほか,構音障害と両下肢感覚障害で発症した橋両腹外側梗塞の1例,”臨床神経”2017,57,764-768 文献2 脳神経内科の主な病気|日本神経学会 文献3 望月仁志,宇川義一,神経メカニズムから捉える失語症状,Jpn J Rehabil Med 2019;56:88-93 文献4 稲富惇一ら,感覚障害へのリハビリテーション,高知県作業療法1:37-42,2021 文献5 井熊大輔ら,橋梗塞における摂食嚥下障害の検討,脳卒中33 巻1号(2011:1) 文献6 佐藤岳史ら,経皮的電気神経刺激は閉じ込め症候群における四肢運動機能回復を促進する,脳卒中 31 : 211―216,2009 文献7 立野勝彦,失語症のリハビリテーション,リハビリテーション医学VOL. 28 NO. 10 1991年10月
2023.07.24 -
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脳卒中や脳出血の後遺症でふらふらする状態が続いている方は「体幹失調」かもしれません。 体幹失調とは、脳の障害により胴体(体幹)のバランスがうまく取れない状態です。ふらつきが続くと、転倒のリスクもあるため不安ですよね。 体幹失調は適切なリハビリ・治療を行うことで体幹の筋力やバランス感覚が改善され、ふらつきの緩和が期待できます。 本記事では、体幹失調の原因や効果的なリハビリについて解説します。体幹失調でお悩みの方は、本記事を参考に、体幹失調を改善する方法を実践してみてください。 また、当院「リペアセルクリニック」では再生医療による脳卒中の後遺症治療も行っております。メールやオンラインでの無料カウンセリングも実施しておりますので、気になる方はお気軽にご連絡ください。 体幹失調とは胴体のバランスが取れない状態 体幹失調は、運動失調の一種です。運動失調は「脳と筋肉の連携がうまくできていないため、体のバランスが取れずスムーズな動作が難しい状態」です。(文献1) その中でも体幹失調は「胴体」の運動失調として知られており、胴体のバランスがうまく取れない状態です。歩き方が不自然になり、転びやすくなる可能性もあるでしょう。 体幹失調では、以下のような歩き方の特徴が見られます。 足を広く開いて歩く 手足の動きがバラバラである 酔っぱらっているような歩き方をする 体幹失調の症状が強いと、座っているときも胴体がぐらぐら揺れるケースもあります。 脳幹梗塞で体幹失調が起こるメカニズム 脳の病気の一つである「脳幹梗塞(のうかんこうそく)」は、体幹失調を引き起こす原因となることがあります。 脳幹梗塞とは、脳と脊髄をつなぐ「脳幹」の血流がふさがれる脳梗塞の一種です。 脳幹は以下3点の重要な役割を担っています。(文献2) 脳と体の信号をつなげる 心臓や呼吸など、生命維持に必要な活動をコントロールする 動作のための指令を体に送る 脳幹梗塞が起こると、体のバランス感覚をつかさどる小脳や前庭迷路との連絡通路も障害されます。その結果、体幹失調の症状があらわれてふらつきやすくなるのです。 脳幹梗塞と似たような病気で「脳幹出血」があります。脳幹出血について詳しく知りたい方は下記のコラムを参考にしてください。 体幹失調のリスクがあるそのほかの脳障害 脳幹梗塞以外には、以下の脳の部位の障害により体幹失調があらわれる可能性が考えられます。 小脳 前庭迷路 脊髄 大脳 本章が体幹失調の原因への理解が深まり、脳の病気の早期発見や適切な対応に役立てられれば幸いです。 バランスの維持に関わる「小脳」の障害 動作を行う際に必要な関節・筋肉などを調整して活動する「協調運動」を担う小脳が障害されると、体幹失調があらわれる可能性があります。 小脳は、運動のコントロールやバランスの維持をする脳の部位です。さまざまな筋肉を連携させてスムーズな動作をするためには小脳の活動が欠かせません。 そのため小脳に障害が起こると、体幹失調のようにバランスが取れなくなったり、手足の細かい動きが不自然になったりする可能性が考えられるでしょう。 バランス感覚をつかさどる「前庭迷路」の障害 前庭迷路は内耳に位置しており、バランス感覚をつかさどっています。 前庭迷路が正常に働き、平衡バランスや空間認識(物体の位置や距離・形・大きさなどを立体的に認識する能力)を保っているのです。 しかし、前庭迷路が障害されると前庭迷路やそこから情報を伝える神経にダメージを受けます。そのため、体幹失調や物体の距離感がうまくつかめなくなる症状が目立つようになります。 反射的動作に関わる「脊髄」の障害 脊髄は以下の役割を果たしています。 体を動かすための動作をするよう脳から筋肉に指令する 熱いものに触ると手を引っ込めるような「反射的動作」の指令を体に送る 脊髄に障害が起こると、筋肉の伸び縮みの具合や関節の状態についての感覚(深部感覚)が障害されます。その結果、自分の筋肉や関節の状態がうまく把握できず、体幹失調のようなふらつきが起こるのです。 運動の計画に関わる「大脳」の障害 大脳の一部である「前頭葉」は、運動の計画や運動の指令を出す働きをします。目的に向かって歩く、ご飯を食べるなど日常的に行っている動作も無意識で順番通りに行っている方が多いでしょう。これらは前頭葉で情報を正確に処理して行われています。 前頭葉が障害されると、運動の計画や実行がうまくいかないため、体幹失調のような歩行困難や手足の動きが不自然になる症状があらわれるのです。 大脳は小脳とともに協調運動に関わっているため、小脳の障害と症状が類似しています。 体幹失調の改善におすすめの運動4選【リハビリが重要】 病院による体幹失調の治療は、リハビリが重要です。実際には以下のようなリハビリ方法が行われます。 フレンケル運動 運動学習 重り荷運動 弾性緊縛帯 本章を参考に、積極的にリハビリに取り組んでみてください。 当院「リペアセルクリニック」では、人体に元々ある幹細胞を活用した脳卒中・脳梗塞の後遺症の治療が可能です。詳しく知りたい方は、下記のリンクをご覧ください。 フレンケル運動 フレンケル運動とは、運動失調の方が体の動きや位置を把握する感覚や、協調運動が再びできるようになるリハビリ方法です。(文献3)たとえば、以下のようなフレンケル運動があります。 姿勢 方法 座った状態 1.床に何かしらの印(ゴミ箱のような身近にあるもの)を置く 2.座った状態になり、足で印をタッチする 横になった状態 1.仰向けになり、かかとを床につける 2.かかとを滑らせて片方ずつひざの曲げ伸ばしを行う 3.片足全体を床につけ、ひざを伸ばしたまま股関節を左右に動かす フレンケル体操では、無理のない範囲での段階的な難易度調整が重要です。初めは簡単な動作から始め、徐々に複雑な運動へと移行します。 運動学習 運動学習とは、運動の動作をいくつかの工程に分けて繰り返すリハビリ方法です。運動学習は、主に以下の3段階に分けて実践されます。 1.認知段階:一連の運動を行うためにはどのような動作をどの手順で行う必要があるのかを考える 2.連合段階:認知段階で学んだ運動を試行錯誤しながら行い、自然な動作を目指す 3.自動化段階:意識しなくても一連の運動が自然とできるようになる 何度も同じ動作を繰り返し、動きが上手になる訓練をする目的があります。 重り荷運動 重り荷運動は、手足に重りをつけて負荷をかけるリハビリ方法です。手足に負荷をかけると体幹の筋肉が鍛えられて安定し、体幹失調の症状を緩和する目的があります。 最初は軽い重りから始め、個人の症状に応じて徐々に重さを上げていくと、無理をせず体幹の筋肉トレーニングができるでしょう。 また、病院によっては靴の中に重りが含まれている装具を活用している場合もあります。(文献4) 弾性緊縛帯 弾弾性緊縛帯(だんせいきんばくたい)とは、ゴムのように伸縮性がある包帯です。 体幹や手足の付け根部分に適度な圧迫感を感じる程度に弾性緊縛帯を巻いて使用します。個人差はありますが、弾性緊縛帯を用いてリハビリすると、過度な動きを抑えながら体幹の安定性の向上が期待できるでしょう。 弾性緊縛帯を用いたリハビリにより小脳性運動失調症が改善した報告もあります。(文献5) 体幹失調に効果的なトレーニング3選【自宅でできる】 体幹失調のトレーニングは、自宅で取り組めるものもあります。おすすめのトレーニング方法は、以下の3つです。 寝ながら行う「ブリッジ運動」 立ちながら行う「ひざの屈伸運動」 座りながら行う「ゆらゆら運動」 いずれも手軽にできるトレーニング方法です。無理のない範囲で取り組んでみてください。 寝ながら行う「ブリッジ運動」 ブリッジ運動は、名前の通り橋の形になって体幹を鍛えるトレーニング方法です。実際には、下記の手順で行います。 1.床で仰向けになる 2.ひざを曲げる 3.太ももと股関節が一直線になる程度に腰を上げる 4.そのまま数秒程度キープする 5.ゆっくり腰を床に降ろす 実際に体幹の安定性やバランス感覚が改善された報告もあります。(文献6)強引にブリッジ運動を行うと腰を痛める原因になるため、無理のない範囲で行いましょう。 立ちながら行う「ひざの屈伸運動」 ひざの屈伸運動も、体幹の安定性の向上に効果的であるとの報告があります。(文献6)実際には、以下の手順で行いましょう。 1.立った状態のまま、手すりや壁や重たい家具などに手をかける 2.上半身は背筋を伸ばした状態で保ったまま、ひざを45度くらいに曲げる 3.2.の状態を5秒前後キープする 転倒する可能性があるため、手すりのような手をつかめる場所で行うようにしましょう。また、立った状態でもふらつきを感じる場合は、ひざの屈伸運動を控えることをおすすめします。 座って行う「ゆらゆら運動」 足に障害があり、まっすぐ立つ姿勢が難しい方は座ってできる「ゆらゆら運動」がおすすめです。 「ゆらゆら運動」は以下の手順で行います。事前にタオルを用意しましょう。 1.巻いたタオルをお尻の下に敷いて座る 2.背筋は伸ばしたままお尻の重心を左右に交互に移動させ、ゆらゆらさせる 自宅にいるときの隙間時間を活用し、ゆらゆら運動を実践してみてください。 脳梗塞の後遺症を改善するリハビリ方法について詳しく知りたい方は、下記のコラムを参考にしてください。 まとめ|体幹失調を改善するために定期的なリハビリを行いましょう 体幹失調とは、脳梗塞や脳出血などの障害により、胴体(体幹)のバランスがうまく取れない状態を指します。 体幹失調は日々のリハビリやトレーニングで症状の改善が期待できます。脳の病気の後遺症でふらつきや歩き方が気になる方は、積極的に実践してみてください。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による治療を行っております。メールやオンラインでの無料カウンセリングも実施しておりますので、気になる方はお気軽にご連絡ください。 体幹失調についてよくある質問 体幹失調と麻痺の違いはなんですか? 麻痺とは、脳や神経のダメージにより体が自分の意志通りに動かせない状態です。筋肉がまったく動かせない、または動かすときに力が入らない症状が麻痺に該当します。 一方の体幹失調は、脳と筋肉の連携がうまくいっていない状態です。麻痺とは違い、筋肉自体は動かせます。ただし、筋肉をスムーズに動かせないため、歩くとふらつきが出たり、日常の動作がぎこちなくなったりします。 体幹が不安定だとどうなりますか? 体幹は体の中心にあり、頭や手足を除いた胴体の部分です。正しい姿勢を保ち、手足の動きを支える役割を果たしています。 体幹が不安定だと姿勢や手足の動きを支えきれず、バランスが取れなくなり歩行困難や転倒のリスクがあります。 そのため、体幹失調の場合は、体幹を鍛えるリハビリやトレーニングが重要となるのです。 参考文献一覧 文献1 後藤 淳. 運動失調に対するアプローチ. 関西理学.14:1-9,2014, p1-9. 文献2 NL, Demarest, RJ, Laemle, LB. Noback's Human Nervous System, Seventh Edition. 第 7 版, Humana Press, Totowa, NJ, 2012年, p217-238], 文献3 立野 勝彦. 失調症のリハビリテーション. リハビリテーション医学. 1991年10月, Vol.28 No.10, p774-778 文献4 安東範明.小脳性運動失調のリハビリテーション 医療―体幹・下肢について―. Jpn J Rehabil Med 2019;56:101-104, 文献5 吉村 ゆかり, 福田 宏幸, 小谷 尚也, 手島 礼子.小脳性運動失調症に対する弾性緊縛帯の効果. 理学療法学Supplement (第48回日本理学療法学術大会 抄録集). 2013年. Vol.40,No.2 文献6 阪本 誠,松木 明好, 谷 恵介, 木村 大輔.Core stability trainingにより運動失調および バランス障害が改善した重度小脳性および 感覚性運動失調の1症例. 理学療法科学 32(3):459–464,2017,
2023.07.20 -
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脳幹出血を発症すると、意識障害や四肢麻痺、嚥下障害など重い後遺症が残る可能性があります。 しかし、治療と併行したリハビリにより、機能回復や自立した生活への復帰が可能です。 本記事では、脳幹出血のリハビリの進め方(急性期・回復期・生活期)や、リハビリ期間の目安について紹介します。 脳幹出血後の早期リハビリアプローチが回復を左右するため、時期別のリハビリプログラムを理解し、効果的な機能回復を目指しましょう。 脳幹出血とは?発症後にリハビリが必要な理由 脳幹出血とは、脳幹(脳の中心部)で起こる出血性疾患のことです。 脳幹は、呼吸や心拍、運動機能、嚥下などの生命維持に関わる重要な役割を果たしています。 脳幹出血を起こすと、重度の場合は意識障害、呼吸障害、四肢麻痺などをきたします。 軽度の出血でも、片麻痺や感覚障害、運動失調、嚥下障害や高次脳機能障害などの後遺症を残します。 看護が必要なくなっても、元の生活に戻るまでには長い時間が必要です。 少しでも後遺症を軽減し、寝たきり状態を防ぐために、発症後できるだけ早期からのリハビリテーションが重要となります。 早期リハビリは機能回復の可能性を高めます。 脳幹出血のリハビリの進め方【急性期・回復期・生活期】 脳幹出血のリハビリテーションの内容は、発症からの時期により変わってきます。 リハビリでは、 急性期 回復期 生活期(維持期) という3つの時期に分けてプログラムを組みます。 脳幹出血の具体的なリハビリテーションを、3つのステージ別に見ていきましょう。 急性期(発症直後〜1ヶ月)|早期リハビリが回復を左右する 急性期とは、脳幹出血が発症し、まだ状態が安定していない時期を指します。 発症から概ね2週間〜1ヶ月程度です。 急性期は、治療と並行してリハビリを進めていきます。 まず目指すのは、早い段階でベッドから離れる「早期離床」です。 脳幹出血をはじめとした脳卒中では、体の状態が安定していれば、発症後24〜48時間以内のリハビリ開始で回復が早まるとされています。 リハビリの初期段階では、 寝返りを打つ練習 体を起こして座る練習 立ち上がる、歩行の練習(可能であれば補助具を使用) 着替えや食事など日常生活動作(セルフケア)の訓練 といった基礎的な動作の回復を目指します。 また、脳幹出血の患者様は、嚥下障害(飲み込む力の低下)を伴うことが多いです。 肺炎予防のためにも、早くから嚥下機能の評価と口腔ケアを開始します。 一方で、重度の脳幹出血では、呼吸や血液循環の障害が生じる場合があります。 出血が広がり、髄液の流れに影響を及ぼす水頭症になることもあります。 このような状態では、早期離床が難しくなるため、ベッド上でできるリハビリを行います。 例えば、 関節が固まらないようにするための「関節可動域訓練」 筋肉が萎縮しないようにするための「他動運動」 などを行い、後の回復を促します。 回復期(1ヶ月〜6ヶ月)|本格的なリハビリで機能回復を目指す 急性期を脱し、体の状態が安定してくる回復期は、後遺症が完全に固定されていない時期です。 そのため、失われた機能の改善や、残っている機能を高める訓練をします。 多くの脳卒中の患者様は「回復期リハビリテーション病棟」に移ります。 リハビリを専門にしている病院や病棟です。 ここでは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリ専門スタッフが多く在籍しています。 1日最大3時間のリハビリが可能で、施設によっては休日も含めて毎日リハビリを行っている病棟もあります。 脳幹出血による後遺症は人それぞれ異なるため、リハビリの内容も個別に調整されます。 急性期から徐々に始めていたリハビリを、回復期ではより本格的に実施し、患者様一人ひとりに合った詳細なリハビリプログラムを組んでいきます。 本章では一例を紹介します。 運動麻痺 筋肉や関節の動きを自分の意思通りに動かせるよう、繰り返し訓練します。 麻痺は3〜6ヶ月程で回復が止まってしまいます。 症状が固定した後でも、麻痺のない部分でカバーしたり、装具や杖などを利用したりして動く訓練も行なっていきます。 運動失調 筋肉同士の協調性が失われ、運動をスムーズに行えない状態を運動失調といいます。 運動失調のリハビリでは、例えば、目で確認しながら何度も動作の練習をします。 重りを使い、固有感覚(身体の位置や力の入れ具合を感じる感覚)を刺激して、運動のコントロールを行う訓練も行います。 一つの動作をいくつかに区切って行うことも効果的です。 嚥下障害 急性期に引き続き、嚥下障害へのリハビリも続けます。 どのくらいの固さのものが食べられるのか、一口量はどのくらいが適切かなど、詳細な評価を行います。 飲み込む力を強化する訓練をしながら、少しずつ食事の形態を調整していきます。 構音障害 呂律が回らない、声の大きさのコントロールがつかないなど、喋りづらさ(構音障害)を抱える方が多いです。 正しい発音の練習や、話すスピードを調整する訓練によって、コミュニケーションが取りやすいようにしていきます。 綿密なリハビリテーションを続けながら、自宅への退院、社会復帰に向けた支援も行なっていきます。 生活期(6ヶ月以降)|自宅でのリハビリ 生活期(維持期)とは、退院後に自宅での生活を継続しながら、リハビリを続けていく時期です。 身体機能の維持・向上を目指し、できる限り自立した生活が送れるように支援することが重要になります。 リハビリ方法の例 関節可動域訓練 関節の柔軟性を保つためのストレッチを行います。関節や筋肉の硬直を防ぎ、動きをスムーズにします。 筋力強化トレーニング 自宅で安全に行える動作の中で筋力を強化します。立ち座りや踵上げなどが効果的です。 バランストレーニング 壁を持った状態でのスクワットや片脚立ちなど、バランス能力の改善を図るトレーニングです。転倒リスクの軽減が期待できます。 自宅以外にも、通所リハビリ(デイケア)や訪問リハビリなど、専門家の指導を受けることで、より効果的なリハビリが可能となります。 また、脳幹出血の最大のリスク要因は高血圧であり、血圧管理が再発予防につながります。 適度な運動習慣をつけることで、血圧を安定させ、再発リスクを減らす効果が期待できます。 脳幹出血を含む脳出血の再発予防策のひとつ「再生医療」 脳幹出血を含む脳出血は、一度発症すると再発リスクが高いとされています。 再発を防ぐためには、高血圧の管理や生活習慣の改善が基本ですが、近年では「再生医療」が新たな治療法として注目されています。 再生医療とは、患者様自身の幹細胞を活用し、損傷した神経細胞の修復や再生を促す治療法です。 脳幹出血を含む脳卒中の後遺症に対して再生医療が行われます。 脳幹出血のリハビリについてよくあるQ&A Q.脳幹出血はリハビリすれば回復見込みはある? A.後遺症の程度によりますが、リハビリによって回復の可能性はあります。 脳幹出血のリハビリは急性期・回復期・生活期の各段階で適切に行うことで、機能回復の可能性が高くなります。 特に早期リハビリが重要とされ、症状の軽減や日常生活への復帰が期待されます。 脳幹出血の方の予後に関しては、以下のようなデータがあります。(文献) 良好な回復だった方:13人(6.1%) 中程度の障害:27人(12.7%) 重度の障害:27人(12.7%) 植物状態:23人(10.8%) 死亡:122人(57.5%) 死亡あるいは後遺症が残る方が多いですが、回復見込みもゼロではないことが分かります。 Q.どうして急性期と回復期で病院(病棟)が変わるのですか? A.できれば同じところでリハビリを続けたいですよね。 しかし、場所が変わることにはきちんと理由があります。 発症直後に入院する「急性期病院(病棟)」の目的は、体の状態を落ち着かせることです。 リハビリのための時間や人手には制約があります。 治療がひと段落すれば、よりリハビリに特化した場所に移る方が良いのです。 次に急性期病棟に入院が必要な方にベッドをあけるためにも、状況が落ち着いてくれば行き先の調整を考え始めます。 Q.どのくらいの期間、入院が必要ですか? A.麻痺などの回復が一定の段階に達し、日常生活に必要な動作ができるようになれば退院を検討します。 どこまでできるようになるかという目標は患者様毎に異なります。 ただし、回復期リハビリ病棟の入院は脳卒中の場合は最大で150日(高次脳機能障害がある場合は180日)までと決まっているため、これを超えることはありません。 Q.リハビリ中に気をつけるべきことは? A.脳幹出血のリハビリでは、無理をせず、適切なペースで継続することが重要です。 リハビリの進め方には個人差があるため、焦って過度な負荷をかけないようにしましょう。 また、バランス能力の低下により転倒のリスクが高まるため、歩行補助具の活用や、リハビリ中の環境整備を行うことが大切です。 Q.家族ができるサポート方法とは? A.リハビリの継続をサポートし、無理のない範囲で日常生活の手助けをすることが重要です。 具体的には、コミュニケーションをとりながら軽い運動を一緒にしたり、食事管理、再発予防のための健康管理などがあります。 また、患者様本人のモチベーションを維持できるよう、励ましやポジティブな声かけを意識しましょう。 リハビリは長期間に及ぶことが多いため、家族も無理をせず、介護サービスや専門家の力を借りることも大切です。 まとめ|脳幹出血のリハビリは継続と早期アプローチがカギ! 脳幹出血後の回復には、早期からのリハビリが重要です。 リハビリを継続することで、後遺症を軽減し、もとの生活に近い状態に戻ることを目指していきます。 回復には長い時間がかかることもありますが、焦らず、一歩ずつ進めることが大切です。 家族や医療チームと協力しながら、継続的にリハビリを行い、生活の質を向上させていきましょう。 参考文献 日本脳卒中学会. 「日本脳卒中治療ガイドライン2021(2025年改訂版)」 https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2025_kaiteikoumoku.pdf 福岡 達之ほか. 「小脳失調を伴うdysarthriaと嚥下障害のリハビリテーション医療」 リハビリテーション医学, 2019年, 56(2), pp.105-109. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/56/2/56_56.105/_pdf Takeuchi Satoru ほか. 「Prognostic factors in patients with primary brainstem hemorrhage」 Clinical Neurology and Neurosurgery, 2013年, 115(6), pp.732-735. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22944466/
2023.07.17 -
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脳幹出血は、命に関わる深刻な病気です。脳幹には生命維持に関わる機能が集中しているため、ここで出血が起こると最悪の場合、突然死を招く場合もあります。 本記事では、脳幹出血で突然死する可能性について解説しています。早期発見につながる前兆サインも紹介しているので、健康管理に力を入れたい方はぜひ参考にしてみてください。 脳幹出血は突然死を起こす可能性がある【余命が短いケースも】 脳幹出血とは脳の脳幹部分に出血を引き起こす脳出血の一種です。 脳幹は人間の生命活動をつかさどる中枢で、呼吸・心拍のコントロールや視覚・聴覚の処理、ホルモン分泌などを担当しています。 この部位で出血が起きると、四肢麻痺や意識障害など深刻な後遺症を残す可能性があり、最悪の場合は突然死を招き余命が短くなるケースもあります。 一方で、出血量が少ない場合は、症状が軽く予後が良好なケースもあります。重症化を防ぐためにも、以降で紹介する脳幹出血の前兆サインを覚えて、早期発見に努めましょう。 以下の記事では、脳幹出血の後遺症について解説しています。後遺症の種類や症状を詳しく知りたい方はぜひあわせてご覧ください。 なお、後遺症の治療には人間の自然治癒力を活用した「再生医療」が効果的です。再生医療により身体の機能(後遺症)が回復した症例は数多く報告されています。具体的な症例が知りたい方は再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血で突然死のリスク警戒となる3つの前兆サイン 脳幹出血は、突然死のリスクを伴う怖い病気です。早期発見のためには、以下3つの特徴的な前兆サインを知っておくのが大切です。 めまい いびき 視覚の異常 順番に見ていきましょう。 めまい めまいは、脳幹出血の症状の1つです。そのため、普段と異なる激しいめまいを感じた際は、脳幹出血の疑いがあります。 めまいが起こる原因は、脳幹内の体全体のバランスを調整する機能が出血により破綻するためです。(文献1) 脳幹出血によるめまいは、同時に目や手足の麻痺、顔のしびれなどを含む複数の症状が現れるケースが多いです。複数の症状が同時に現れた場合は、脳幹出血である可能性がより疑われるため、医療機関を受診して検査してもらうと良いでしょう。 早期の対応で命を守れる可能性が高まります。 いびき 脳幹出血における前兆のサインとして、いびきが大きくなることがあります。脳幹は呼吸や血圧を調整する機能があり、その機能に問題が生じると、大きないびきが発生するのです。 以下のように、いびきに変化が見られたら体からの警告サインかもしれません。 ・いつもより大きないびきをかく ・段いびきをかかないのに急に大きないびきをかく 「こんないびきはおかしい…」と感じたら、脳幹出血の疑いを視野に入れて医療機関の受診を検討してみましょう。 視覚の異常 脳幹は視覚情報を処理する役割も担っているため、出血が起きると視覚に関わる症状が現れることがあります。 たとえば以下のような症状です。 視野が狭くなる 視力の低下する ものが二重に見える 光がいつもよりまぶしく見える 視覚の異常は、目の問題だと思ってしまうケースも多いため、脳の異常に気づくのが遅れる場合もあります。早期に対応できるよう、視覚異常も脳幹出血の症状の1つであると覚えておきましょう。 脳幹出血に有効は2つの治療法 ここでは、脳幹出血に有効な治療法を2つ紹介します。 保存療法 再生医療 治療内容をそれぞれ詳しく見ていきましょう。 保存療法 脳幹出血では、保存療法が中心となります。 まず優先されるのは、血圧を下げて安定させることです。さらなる出血を防いで、脳へのダメージをできるだけ少なくするためです。入院中は安静にしながら、点滴を使って血圧を下げる薬を投与します。 ほかの部分の脳出血では、たまった血液(血腫)を取り除く手術をおこなう場合があります。しかし、脳幹出血の場合、手術は基本的に選択されません。 脳幹は、生命維持に関わる機能が集中しており、手術には大きなリスクがあるためです。また、脳幹はとても狭い空間にあるため、手術自体が困難です。 そのため脳幹出血では、血圧の管理や脳のむくみを抑える保存療法が一般的な治療法となります。 再生医療 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした神経細胞を修復する新しい治療法です。 再生医療では、麻痺や意識障害といった脳幹出血の後遺症の回復を早めたり、脳卒中の再発を予防したりする効果が期待されています。 再生医療で脳幹出血の治療を進めたい方は、弊社『リペアセルクリニック』にご相談ください。再生医療の症例数10,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりに合った治療プランをご提案いたします。 まとめ|脳幹出血における突然死のリスクを把握して前兆サインを見逃さないようにしよう 脳幹出血は命にも影響を及ぼす怖い病気ですが、早期発見・早期治療で重症化のリスクを軽減できる可能性があります。 早期発見の鍵は、前兆サインの理解です。本記事で紹介した3つのサインを心に留めておき、普段と違う症状を感じたら、早めに病院への受診をご検討ください。 脳幹出血の有効な治療法の1つに「再生医療」があります。 これまで一度死んだ脳細胞は戻らないとされてきました。しかし、再生医療は脳細胞を復活させ、脳幹出血を含む脳卒中の後遺症を改善できることがわかってきたのです。 詳しい治療法や効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血に関するよくある質問 最後に脳幹出血に関するよくある質問と回答をまとめます。 脳幹出血を起こしやすい人はいますか? 脳幹出血は、高血圧が主な原因となる病気です。また、血管の病気や脳血管奇形をもつ人にも起こる可能性があります。 また、以下のような生活習慣も脳出血のリスクを高める要因です。。 喫煙 過度なアルコール 運動不足ストレス 肥満 高脂血症 生活習慣の見直しと改善をおこなえば、脳幹出血の予防につながります。 脳幹出血のリハビリテーションにはどんなものがありますか? 脳幹出血のリハビリは、どのような症状が出ているかによって患者さんごとにプランが立てられます。大きくは、以下3つにわけられます。 プラン 内容 理学療法 筋力の強化やバランス能力の改善を目指す 歩行練習・軽めの筋力トレーニングをおこなう 作業療法 食事や着替え、入浴といった日常生活動作の獲得を目指す 指先や手を動かす訓練をおこなう 言語療法 言語障害や嚥下障害の改善を目指す 発声発語訓練・舌の体操をおこなう 精神的なサポートや心理療法も大事なリハビリです。個々の患者さんの病態にあわせて、いろいろな角度からリハビリをおこなっていきます。 以下の記事では、脳幹出血のリハビリプログラムを解説しています。リハビリの進め方を 詳しく知りたい方はぜひあわせてご覧ください。 脳幹出血を発症したら余命はどれくらいですか? 脳幹出血の発症後における、公的データは見つかりませんでした。 ただし、脳幹出血の予後を調べたとある研究結果によると、70歳以上の死亡率が79%、70歳未満の死亡率が57%となっています。(文献2) 脳幹は生命の維持を司る部位のため、発症すれば生命に関わる危険性があると覚えておきましょう。 以下の記事では、脳幹出血の余命について詳しく解説しています。脳幹出血の予後への理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。 【参考文献】 文献1:https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/051111092.pdf 文献2:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/30/1/30_1_38/_pdf
2023.07.13 -
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「脳幹出血になったら回復の見込みはある?」 「回復にはどのような治療やリハビリが必要?」 脳幹出血を発症した患者様やご家族は、上記のような不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。 本記事では、脳幹出血からの回復の見込みや治療法について詳しく説明します。 脳幹出血を根本的に治療できる可能性がある再生医療についても紹介しているので、ぜひ治療の参考にしてみてください。 \脳幹出血の改善が期待できる再生医療とは/ 再生医療は、損傷した脳細胞に対してアプローチできる治療法で、従来の治療では元に戻らないとされている脳細胞の改善が期待できます。 幹細胞を用いて傷ついた神経や血管の修復を促し、脳出血によるふらつきや麻痺、言語障害などの後遺症改善が期待される新しい選択肢です。 以下の動画では、実際に再生医療を受け、脳出血の後遺症に悩まれていた患者様の事例を紹介しています。 https://youtu.be/AoMLP77h-c4?si=NhaTu-LU0KlfQEb2 【こんな方は再生医療をご検討ください】 脳幹出血が回復しないか不安を抱えている 現在受けている治療やリハビリで期待した効果が得られていない 患者様が治療やリハビリに積極的になれない ふらつきや手足の震え、言葉がうまく出ないといった脳出血にお悩みの方も、回復を諦める前に新しい選択肢を検討してみてください。 具体的な治療法や症例については、当院(リペアセルクリニック)で無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 ▼まずは脳出血の治療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる 脳幹出血の回復の見込みは重症度によって異なる 「脳幹」は、脳の中心部にあり、以下のような役割を果たす組織です。 循環 呼吸 眼球運動 体温調節 消化液分泌 自律神経の中枢 どの役割も、人間の生命維持に欠かせないものです。そのため、出血によって脳幹の機能が失われると、手足の麻痺や意識障害、呼吸停止などの重篤な症状を起こす可能性があるのです。 脳幹出血の回復の見込みは、出血量や意識の有無などの「重症度」によって大きく異なります。 重度の場合は回復が難しい可能性が高いものの、軽度〜中程度の場合は回復が期待できるケースもあります。 脳幹出血は助からない人が半分以上 脳幹出血は半分以上の人が助からないという、以下のような調査結果があります。(文献1) 良好な回復だった方:13人(6.1%) 中程度の障害:27人(12.7%) 重度の障害:27人(12.7%) 植物状態:23人(10.8%) 死亡:122人(57.5%) 発症時に呼びかけや痛みなどの刺激を与えても反応しない意識レベルの場合、回復の見込みは難しいかもしれません。 一般的には、意識レベルの評価指標である「GCS:グラスゴー・コーマ・スケール」が7点以下の場合は、予後不良とされています。 また、意識レベルの低さに加えて、以下のような症状がある場合も予後は悪いといわれています。 高熱 呼吸障害 瞳孔・眼球の異常 手足の麻痺や過緊張 ただし、脳幹出血後の死亡率は、調査によってばらつきがあります。 別の調査では、死亡率を31%や40〜50%としているものもあるため、具体的な回復の見込みは担当の医師へ確認しましょう。(文献2)(文献3) 脳幹出血の死亡率・生存率は発症時の意識状態が重要 脳幹出血の回復の見込みは、「意識レベル」「全身状態」「重症度」など、複数の要因が関係します。 一般的には、以下の要因があると回復の見込みは低いといわれています。 麻痺が重い 出血の範囲が広い 意識不明など、発症時の意識状態が悪い また、脳幹出血の死亡率は、発症時の意識状態や出血量とも関係があります。海外の調査では以下のような死亡率が示されています。(文献4) 意識障害が低く、出血量が少ない場合:2.7% 意識障害が高く、出血量が多い場合:状態によっては100% 重篤な意識障害がみられ、出血量も多い場合は、助からない可能性が高いといえるでしょう。 後遺症の重さは受診スピードやリハビリの進行度によって変わる 脳幹は生命の維持に関わる重要な部位のため、機能が失われると重篤な後遺症が出る可能性があります。 元々の症状の重さに加え、発症後に受診までの時間がかかった場合や、リハビリテーションが進まない場合も後遺症が重くなりやすいでしょう。 しかし、重い後遺症が残ったとしても、諦めないことが大切です。失われた脳細胞や神経の再生は困難ですが、神経細胞群には新たなネットワークを築いて機能が改善する「可塑性」が期待できるからです。(文献5) 医師や理学療法士らの指導のもと、できる限りのリハビリテーションを行いましょう。 なお、半年後に歩けるようになるかは、発症後1カ月の状況で見通しがつくという報告もあります。(文献6) 脳幹出血の治療 出血直後である急性期のおもな治療法は、以下の2つです。 降圧療法:出血部位を拡大させないための治療 全身管理:呼吸や脈拍などをモニタリングして管理する 脳幹出血は他の脳出血と異なり、血腫を除去する手術はあまり適応されません。脳幹は脳の深い位置にあるため、手術の負担が大きく、メリットが少ないためです。 ただし、出血部位が広く、脳内の「脳室」という部位が拡大する「水頭症」になっている場合は、脳内の圧力を下げる「ドレナージ手術」を行うケースがあります。 また、意識状態が悪くて呼吸がうまくできない場合は、人工呼吸器による呼吸管理が必要です。症状が落ち着いて自力で呼吸ができるようになれば人工呼吸器を外しますが、自力で呼吸ができない場合には人工呼吸器を外せないケースもあります。 なお、症状によっては「気管切開」を行い、人工呼吸器の代わりに肺に空気を送るチューブを気管支につなぐこともあります。 【ステージ別】脳幹出血のリハビリの内容 脳幹出血の治療では、薬物治療に加えて、脳や身体の機能を回復させるリハビリも非常に重要です。 脳幹出血のリハビリ内容は、以下3つの時期で大きく異なります。 急性期(~3カ月) 回復期(3~6カ月) 生活期(6カ月以降) 本章の内容をもとに、リハビリの流れや概要を理解しておきましょう。 急性期のリハビリ 急性期のリハビリは「二次的合併症の予防」と「早期の機能回復」に重点をおきます。 最初は関節が固まらないためのリハビリを行い、麻痺が回復してきたら自力で動くための訓練へ移行します。具体的なリハビリの例は、以下の通りです。 座位訓練 嚥下訓練 移乗訓練(車いすに移る訓練) 立位歩行訓練 言語機能の回復訓練 近年、早くからリハビリを始めて寝たきりの時間を減らした方が、予後や後遺症の経過が良いといわれています。 脳幹出血は他の脳血管疾患よりも安静度が高いため、初期に行えるリハビリは限られますが、できる範囲で積極的に行います。(文献7) 早期回復を目指したい方は、損傷した脳細胞の改善によってリハビリ効果を高めることが期待できる再生医療をご検討ください。 \こんな方は再生医療をご検討ください/ 脳幹出血や後遺症を早く治したい リハビリ効果を高めて、早めに日常生活に復帰したい 脳幹出血の再発を予防したい 再生医療の具体的な治療法や症例については、当院(リペアセルクリニック)で無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 ▼まずは脳出血の治療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる 回復期のリハビリ 急性期のリハビリで回復しなかった場合、「回復期リハビリテーション病棟」で集中的なリハビリを行います。(文献8) また、回復期には「痙縮 (けいしゅく)」という手足の筋肉が緊張して突っ張る症状があらわれます。そのため、ストレッチや筋弛緩薬による適切な対応も重要です。 リハビリを行っても機能回復が困難な場合は、装具の使用やできる方法での動作練習、環境の調節などを行い、自立した生活ができるよう目指します。 生活期のリハビリ 発症6カ月以降の「生活期」は、症状が安定したあとの維持が目的です。 筋肉の痙縮をやわらげる治療や装具の訓練・調整をしながら、日常生活を送れるように環境を整えます。 また、デイケアや訪問リハビリテーションなどの、介護保険を使用したサービスもよく使われます。 まとめ|脳幹出血は程度によって回復の見込みあり!リハビリをしっかりと行おう 脳幹出血の回復の見込みは、出血量や意識状態などの重症度によって異なります。 軽症の場合は回復するケースもありますが、意識不明や呼吸障害などがある重症の場合は助からないケースが半分以上です。 脳幹出血の主な治療は「降圧治療」と「全身管理」です。 命が助かった場合は、日常生活に戻るためのリハビリテーションをできるだけ早期から開始します。 当院「リペアセルクリニック」では、脳幹出血の再発防止やしびれ、麻痺の改善が期待できる再生医療(幹細胞療法)による治療を実施しています。 \こんな方は再生医療をご検討ください/ 脳幹出血が回復しないか不安を抱えている 現在受けている治療やリハビリで期待した効果が得られていない 患者様が治療やリハビリに積極的になれない ふらつきや手足の震え、言葉がうまく出ないといった脳出血にお悩みの方も、新しい選択肢になる可能性がある治療です。 具体的な治療法については、患者様一人ひとりの症状やお悩みに合わせてご案内しておりますので、当院(リペアセルクリニック)の無料カウンセリングにて、ぜひご相談ください。 ▼まずは脳出血の治療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる 脳幹出血の回復の見込みについてよくある質問 脳幹出血の後遺症にはどのようなものがありますか。 脳幹出血の代表的な後遺症は、以下の通りです。 麻痺 痙縮 感覚障害 言語障害 嚥下障害 排尿障害 高次機能障害 どのような後遺症が出るかは、脳幹出血によってダメージを受けた部位や程度によって異なります。 脳幹出血にならないようにするにはどうしたら良いですか。 脳幹出血は、高血圧が引き起こす「動脈硬化」が大きなリスクとされています。そのため、脳幹出血を防ぐには、高血圧を招く以下の内容を避けることが大切です。 塩分の摂りすぎ 暴飲暴食 運動不足による肥満 脳幹出血の予防については、以下の記事も参考にしてください。 参考文献一覧 文献1 原発性脳幹出血患者の予後因子,Clinical Neurology and Neurosurgery,Volume 115, Issue 6, June 2013, Pages 732-735 文献2 急性期脳血管障害の臨床的研究,急性期脳血管障害の臨床的研究, 脳卒中, 1980, 2 巻, 4 号, p. 326-332, 文献3 特発性脳幹出血の外科的治療,Medicine (Baltimore). 2019 Dec; 98(51): e18430. 文献4 原発性脳幹出血:予後因子と外科的治療のレビュー,Front Neurol. 2021; 12: 727962.Published online 2021 Sep 10. doi: 10.3389/fneur.2021.727962 文献5 脳の機能回復と神経可塑性,石田和人,玉越敬悟,高松泰行,理学療法学, 40 (8 ) p535-537,2013 文献6 脳幹出血患者の予後予測,木村紳一郎,光眞邦哲ら,脳卒中の外科 39:262-266,2011 文献7 脳卒中急性期リハビリテーション診療の指針,日本脳卒中学会「脳卒中急性期リハビリテーションの均てん化および標準化を目指すプロジェクトチーム」 文献8 脳卒中理学療法ガイドライン,日本神経理学療法学会
2023.07.10 -
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脳幹出血は、四肢麻痺や意識障害など重篤な後遺症が出る可能性のある病気です。 早めにケアをおこなえば回復が見込めるケースもあるので、後遺症が出たら早期リハビリを検討しましょう。 本記事では脳幹出血の後遺症の種類や治療方法を解説します。脳卒中の後遺症に対する有効な治療法「再生医療」も紹介しているので、治療方法に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。 脳幹出血の後遺症にはどのようなものがあるのか? そもそも脳幹出血は、脳幹という脳の中でも呼吸活動を司ったり、血圧を保ったりといった、生命活動にとって根幹となる機能をもつ部位に生じる出血のことです。 脳幹出血が起こると、命が助かったときでも後遺症が出る場合があります。 たとえば、両手足が動かなくなる四肢麻痺や、認識力や判断力が低下する意識障害、食事や水の呑み込みが難しくなる嚥下障害などがあげられます。(参考1) また、脳幹の一部である橋(きょう)の場所で出血が起こると、意識障害や全身の麻痺が起こり、出血が広がると呼吸困難となり、重篤な状態になる可能性もあります。ときに、出血量が多い場合には命が助からないケースもあり得るのです。 以下の記事では脳幹出血の後遺症の1つである「運動失調」について詳しく解説しています。具体的な症状や治療法も紹介しているので、運動失調の理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。 脳幹出血の有効な治療法の1つに「再生医療」があります。 これまで一度死んだ脳細胞は戻らないとされてきました。しかし、再生医療は脳細胞を復活させ、脳幹出血を含む脳卒中の後遺症を改善できることがわかってきたのです。 詳しい治療法や効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血の後遺症に効果的なリハビリや治療法 ここでは脳幹出血における後遺症の治療に有効なリハビリと再生医療について解説します。それぞれの目的や効果について紹介していくので、後遺症の治療方針を決める際の参考にしてみてください。 リハビリ 脳幹出血による後遺症のリハビリは、発症から以下3つの時期にわけてプログラムを組んでいきます。 急性期:発症から約2週間 回復期:急性期後、体の状態が安定した時期 維持時:回復期後、自宅に戻って生活をはじめる時期 急性期は、早期リハビリが推奨されています。安静状態でベッドに長期間とどまっていると「廃用症候群」(寝たきりによって筋肉の衰えや関節の硬化が起こる症状)を引き起こす可能性があるためです。そのため、急性期は廃用症候群の予防として、ベットの上で手足のストレッチや体位の交換といった軽い運動をおこなうケースが多い傾向にあります。 回復期は、後遺症により失われた機能を回復させるために本格的なリハビリを開始します。症状や重症度は個々によって異なるため、一人ひとりに合わせたプログラムの作成が必要です。リハビリ専門のスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の指導のもと、退院後の自宅での生活や会社復帰に向けた訓練をおこないます。 維持期は退院後、回復した機能の維持や向上を目指すリハビリを継続します。外来リハビリへの通院や自宅でのトレーニングを通して、機能の維持・改善を図っていく流れが一般的です。 以下の記事では脳幹出血のリハビリプログラム について詳しく解説しています。症状別のリハビリ 例も紹介しているので、気になる方は是非参考にしてみてください。 再生医療 脳幹出血の後遺症への治療法として「再生医療」が注目されています。 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした神経細胞を修復する新しい治療法です。 脳幹出血の後遺症に対する再生医療では、主に以下3つの効果が確認されてます。 脳神経細胞の再生による身体機能の回復 脳神経細胞の再生によるリハビリ効果の向上 脳血管の修復による再発予防 順番に解説していくので、詳しく見ていきましょう。 効果1. 脳神経細胞の再生により身体機能が回復する 傷ついた脳細胞を再生医療で修復すれば、麻痺や呂律困難などの後遺症の回復が期待できます。 再生医療に使われる幹細胞は、神経、血管、骨、軟骨などに変化する能力があり、炎症をおさえ症状の痛みや後遺症の痺れを緩和させる効果もあります。 自己の細胞を使用するため、身体への負担が少なく安全な治療が可能です。 効果2.脳神経細胞の再生によるリハビリ効果の向上 再生医療とリハビリと組み合わせれば、より高い回復効果が期待できます。発症から数年が経過した患者さんでも、幹細胞治療とリハビリの併用で症状改善の可能性が広がります。 再生医療をはじめたからといって劇的に後遺症がなくなるわけではありません。しかし「車椅子の方が杖で歩けるようになった」「呂律困難があったがスムーズな会話が可能となった」といった段階的な改善効果の希望がもてる治療法といえます。 効果3.脳血管の修復による再発予防 脳卒中の怖いところは再発率が高いことです。はじめは軽い症状でも、再発を繰り返せば後遺症が重症化していくリスクが高まります。 再生医療は傷ついた脳細胞を再生させるだけでなく、今後、脳出血や脳梗塞になるかもしれない傷ついた血管を予防的に修復させて、再発をおさえてくれます。 再生医療で脳幹出血の治療を進めたい方は、弊社『リペアセルクリニック』にご相談ください。再生医療の症例数10,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりに合った治療プランをご提案いたします。 まとめ|脳幹出血の後遺症に対する理解を深めて適切な訓練や治療を受けよう 脳幹出血による後遺症の代表的な治療は、リハビリです。回復過程と個人の状態に合わせた適切なプログラムを実施すれば、段階的な症状の改善が期待できます。 近年では、脳幹出血における後遺症の治療法として「再生医療」が注目されています。 再生医療は人間の自然治癒力を活用した最先端の医療技術です。幹細胞の修復力を利用して、脳細胞の機能回復を促進します。 「再生医療に興味があるけど具体的なイメージがつかめなくて不安…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脳幹出血の後遺症に関するよくある質問 最後に脳幹出血の後遺症に関するよくある質問と回答をまとめます。 脳幹出血で後遺症なしの確率はどれくらい? 厚生労働省の調査では、18歳から65歳の脳卒中患者1,584名のうち、後遺症がまったくないと回答した人は344名でした。 つまり、約2割の脳卒中患者は後遺症が出ず、約8割の患者には脳卒中によるなんらかの影響が出ている結果となっています。 以下の記事では、脳出血で後遺症が残らない確率について詳しく解説しています。脳卒中に関する調査結果を複数紹介しているので、理解を深めたい方はぜひあわせてご覧ください。 脳幹出血を発症したら回復の見込みはあるの? 回復の見込みは、患者さん一人ひとりの状態によって変わってきます。回復見込みを把握したい方は、担当医に聞いてみると良いでしょう。 以下の記事では脳幹出血の回復見込みに関する情報をまとめています。軽度または重度における障害の程度も解説しているので、理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてください。 再生医療のメリット・デメリットが知りたい 再生医療のメリットは、患者さん自身の体から採取した組織を使用するため、拒絶反応のリスクが極めて低く、安全性の高い治療であることです。 また、従来の治療法(薬物療法や手術)が症状の安定化を主な目的としているのに対し、再生医療では損傷した血管の修復や新しい血管の形成を促すのが目的です。そのため、後遺症の根本的な症状改善が期待できます。 一方で再生医療のデメリットは、再生医療は2024年11月現在、保険適用外の自費診療となっているため、治療費が高額になる可能性があります。また、治療効果には個人差があるため、医師との十分な相談のもと慎重な判断が必要です。 【参考文献】 文献1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology1968/49/5/49_5_755/_pdf
2023.07.06 -
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脳幹出血になったら余命はどのくらい? どんな症状だったら余命に影響するの? この記事を読んでいるあなたは、脳幹出血になった人の余命がどのくらいなのか気になっているのではないでしょうか。 「今の症状だと、余命はどのくらいなのだろう」と、不安になっているかもしれません。 結論、脳幹出血の余命は症状の重さによって変わります。 脳幹出血のみの余命を調べたデータはないものの、重症の場合は発症後数時間から数日で亡くなるケースも少なくありません。ただ、発症した年齢が若い場合や出血量が少ない場合は、比較的余命に影響が出にくいこともあります。 本記事では、脳幹出血の余命や予後について、詳しく解説します。記事を最後まで読めば、脳幹出血の余命が症状ごとにわかり、現在の状況や今後の見通しの理解を深められるでしょう。 脳幹出血の余命に関する正確なデータはないが予後は悪い 脳幹出血だけの余命を調べた正確なデータはありませんが、予後は全体的に悪いといわれています。 重篤な脳幹出血が起こると急激に容体が悪化し、発症後数時間〜数日で亡くなる方も珍しくありません。 脳幹出血は「脳出血」の一種で、脳内にある「脳幹」という部位から出血する病気です。おもな原因は高血圧によって脳の血管が破れることで、脳出血の約1割ほどが脳幹出血といわれています。 脳出血後の余命は、調査対象の年齢や病状が異なるため、研究ごとにややばらつきがあります。生存率に関するデータは、以下の通りです。(文献1)(文献2) 脳出血を起こした人の平均余命は12年 脳出血を起こした人の10年生存率は24.1% 初めて脳出血を起こした人の1年生存率は38%、5年生存率は24% 初めて脳卒中を起こした年齢が50歳以下の人は、70歳以上の人よりも5年生存率が高い つまり、脳出血を起こした人の4人に3人は、余命が10年未満といえます。脳幹出血は上記に示した脳出血のなかでも予後が悪い病気のため、余命は比較的短いと考えられるでしょう。 脳幹出血の後遺症について解説した記事はこちら 脳幹出血の回復の見込みとその期間について解説した記事はこちら 脳幹出血の余命が短くて助からない人が多い理由 脳幹出血の余命が短い理由は、脳幹の機能が失われると生命の維持が難しいからです。 脳幹は「中脳」「橋」「延髄」の3つの部位から成り立つ器官で、以下のように生命維持に重要なさまざまな役割を果たしています。 意識を保つ 呼吸や血液の流れを調節する 身体が受けた刺激を脳へ伝える 手足を動かす信号を脳から出す 脳幹が行っている「呼吸や意識の保持など」が不可能になると、生命の維持は難しくなります。そのため、出血が起こり脳幹の機能が失われると、余命が短いケースが多いのです。 なお、脳幹のなかでも「橋」という部位で起こるケースが多いため、脳幹出血は「橋出血」とほぼ同じ意味となります。 【重症度別】脳幹出血の症状と余命への影響 脳幹出血の重症度は、余命に大きな影響を与えます。具体的には「出血量」は重症度に大きくかかわり、出血量が少なければ軽症、多ければ重症です。 本章で、脳幹出血の症状と余命への影響を理解しておきましょう。 軽症の場合 以下のような症状のみの場合は、軽症で余命への影響は小さい可能性があります。 嚥下の障害 顔の感覚や運動の障害 手足の運動や感覚の障害 複視(ものが二重に見える) 運動失調(バランスが取れずにふらつく) これらの症状は、脳幹出血の前兆で気付いたときや脳出血・脳梗塞など他の脳血管疾患でもみられます。 また、血管の奇形による脳幹出血の場合は軽症で済みやすく、一度の出血で命にかかわることはほとんどありません。 しかし、奇形のなかでも「海綿状血管腫」は出血をくり返して大きくなりやすいため、いずれ重い後遺症が出る可能性があります。 早めの受診で悪化を防ぎ、予後を改善できる可能性を高められます。もし紹介したような症状を感じたら、迷わずに当院へメール相談、もしくはオンラインカウンセリングにてご相談ください。 重症の場合 以下のような症状が出ている場合は、出血の多い脳幹出血の重症例と考えられます。生存率は低く、余命は短いケースが多いでしょう。 両手両足の麻痺 異常な呼吸パターン 重篤な意識障害:昏睡など 中枢性高熱:体温調節の中枢の障害による高熱 除脳硬直:筋肉が過剰に緊張し、手足が伸びきった状態 瞳孔異常:瞳孔不同(左右の黒眼の大きさが異なる)、縮瞳(黒眼が小さい)など 救急車を呼んだときは意識あり・自発呼吸ありだったにもかかわらず、急激に悪化して短時間で命を落とすケースもあります。 脳幹出血の治療 高血圧による脳幹出血は手術の適応があまりなく、基本的には血圧を下げて体の状態を保つ「保存的治療」が最優先されます。出血でダメージを受けた脳幹に対しては、手術が状況をより悪化させる危険性が高いためです。 ただし、血管奇形が原因の脳幹出血の場合は、時期をみて手術を検討するケースもあります。 脳幹は手術による合併症リスクの高い部位です。手術するべきか、どのタイミングで手術をするべきかなどは、状況をみて慎重に判断します。 なお、命が助かった場合は、日常生活に戻るためのリハビリも重要です。近年、リハビリはできるだけ早い時期から始めると予後が良いとされるため、ベッド上でできるものから少しずつリハビリを行います。 脳幹出血後のリハビリについては、以下の記事で詳しく紹介しています。 まとめ|脳幹出血の余命は短い人が多い 本記事では、脳幹出血の余命や、余命が短いといわれる理由などを詳しく説明しました。 脳幹は生命維持に欠かせない器官のため、脳幹出血によって機能が失われると余命が短いケースが多くみられます。ただし、軽症や前兆段階で気付いた場合、血管の奇形による脳幹出血の場合は、余命への影響が小さい可能性もあります。 手術のリスクが大きいため、積極的な治療ではなく保存的治療が原則となるでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、厚生労働省に届出を行い、再生医療(幹細胞)治療による脳幹出血後の治療を提供しています。 再生医療は脳神経細胞の修復・再生や脳の血管を新しく再生する作用により、後遺症の回復や脳幹出血の再発予防が期待できる治療です。 メールでの無料相談やオンラインカウンセリングも実施しておりますので、お気軽にご相談ください。 この記事が脳幹出血の余命を知るのに役立ち、今後の生活を再建するきっかけになれば嬉しく思います。 脳幹出血についてよくあるQ & A Q.脳幹出血を起こすと、どのくらい入院が必要になりますか。 A.入院日数に関する脳幹出血単独のデータはありません。 ただし、厚生労働省の統計では、脳の血管が詰まったり破れたりする「脳卒中」全般の平均入院期間は77.4日となっています。入院期間が比較的長いのは、脳卒中により神経にダメージが起こるからです。(文献3) 神経の回復は他の組織よりも遅く、麻痺や感覚障害などは完治しにくいものです。一番危ない時期を過ぎても、その後の体力の回復・リハビリテーションに時間がかかることも大きいでしょう。 Q.脳幹出血を起こさないために、どのようなことに気をつけたら良いでしょうか。 A.一番重要なのは血圧の管理です。そして適切な運動を心がけ、減塩に努めましょう。 すでに治療を受けている方は、しっかりと通院を続けてください。血圧が下がったからといって自己判断でお薬をやめないようにしましょう。 脳ドックなどで血管奇形が見つかった場合でも、出血症状がなければすぐに手術適応になることはありませんが、慎重な経過観察が必要になります。この場合も、血圧の管理は必要です。 Q.脳幹出血になったら助からないのでしょうか。 A.脳幹は生命維持に不可欠な器官のため、脳幹出血により機能が失われると助からないケースは珍しくありません。 ただし、脳幹出血で助かるか助からないかは重症度によって異なります。出血量が少なく障害の程度が低い軽症であれば、回復例もみられます。 助かるかどうかは、脳幹出血を初めて起こしたのか、再発なのかによっても異なるため、回復の見込みは医師に確認するのが確実です。 参考文献一覧 文献1 人口ベースのレジストリにおける脳内出血の発生率と10年生存率 Simona Sacco, MD, Carmine Marini, MD, Danilo Toni, MD, Luigi Olivieri, MD, and Antonio Carolei, MD, FAHAAuthor Info & Affiliations Stroke Volume 40, Number 2 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19038914/ 文献2 初めての脳卒中から5年生存,Dzevdet Smajlović 1, Biljana Kojić, Osman Sinanović,Bosn J Basic Med Sci. 2006 Aug;6(3):17-22. doi: 10.17305/bjbms.2006.3138. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16995842/ 文献3 厚生労働省. 令和2年(2020)患者調査の概況. 3退院患者の平均在院日数等 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/20/dl/heikin.pdf
2023.07.03