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ぎっくり腰で病院へ行っても意味ないって本当? ぎっくり腰は自宅で安静にしていればそのうち治るのかな。 この記事を読んでいるあなたは、ぎっくり腰は病院に行くべきなのかを迷っているのではないでしょうか。「安静にしていれば治るなら、受診せずに済ませたい」と思っているかもしれません。 結論、ぎっくり腰は病院に行かなくても治るケースが大半を占めます。 しかし、ぎっくり腰だと思った痛みが別の病気やケガだった場合、処置が遅れることで重症化してしまうリスクもあるでしょう。手術や入院が必要になってしまうケースもあるため、不安であれば一度受診するのがおすすめです。 本記事では、ぎっくり腰で受診する目安やおすすめの治療法を紹介します。 記事を最後まで読めば、ぎっくり腰の対処法がわかり、状況に応じた適切な対応ができるでしょう。 ぎっくり腰は病院に行っても意味ない? 結論からお伝えすると、ぎっくり腰の場合は必ずしも病院に行く必要はありません。病院に行かず自宅療養をしても2週間程度で痛みが治まるケースが一般的だからです。 しかし、ぎっくり腰だと思っていた腰の痛みは、以下のような別の病気やケガによって起きている可能性もあります。 椎間板ヘルニア 化膿性脊椎炎 骨折 これらの病気やケガを放置すると、重症化して手術や入院が必要になることも考えられます。 ぎっくり腰であると自己判断した場合でも「痛みがなかなか引かない」「下肢がしびれる」「発熱がある」などの症状があるときは、我慢せずに早めに医療機関を受診しましょう。 なお、おもな症状が腰の痛みの場合、受診するのは整形外科です。診察の結果、他の病気を疑う場合は内科を始めとする別の診療科へ紹介するため、まずは整形外科を受診してください。 ぎっくり腰の原因や症状については、以下の記事も参考にしてください。 ぎっくり腰で病院に行く3つの目安 ぎっくり腰で病院に行く目安は以下の3つです。 痛みが2週間以上続く、あるいはぎっくり腰を繰り返す 発熱している 高齢である 本章を参考に、ぎっくり腰になった際の正しい受診タイミングを理解しておきましょう。 痛みが2週間以上続く、あるいはぎっくり腰を繰り返す 痛みが2週間以上続く、ぎっくり腰を繰り返すなどの場合は、「椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」などの疑いがあります。 椎間板ヘルニア:背骨の間でクッションの役割を果たす「椎間板」の中にある組織が外へ飛び出し、神経を圧迫して痛みやしびれが出る病気 脊柱管狭窄症:背骨の中にある神経の通り道(脊柱管)が何らかの要因で狭まることで圧迫され、腰や下半身の痛みやしびれが出る病気 原因となる病気に気づかず放置すると痛みが長引き、場合によっては手術が必要になるケースも考えられます。痛みの治りが悪い場合は、早めの受診が大切です。 発熱している 熱を伴う腰痛の場合、細菌やウイルスに感染している可能性が考えられます。 病名はいくつか考えられますが、整形外科的な疾患では、脊椎が細菌に感染する「化膿性脊椎炎(かのうせいせきついえん)」がよく疑われます。 高齢、糖尿病、透析を受けている、免疫抑制剤を飲んでいるなどの人は免疫力が低いため、細菌感染から化膿性脊椎炎を発症しやすいのです。(文献1) 化膿性脊椎炎は抗生物質で治療を行いますが、薬で改善しないと手術が必要になるケースもあります。 高齢である 高齢になると骨がもろくなり折れやすくなる「骨粗しょう症」の人が増え、転倒時や中腰、重いものを持ったときなどに骨折するリスクが高まります。 ぎっくり腰だと思ったら、実際は背中の骨が折れる「圧迫骨折」だったというケースもあります。 骨折は2~3カ月の治療で良くなるケースが多いものの、ベッドでの生活が長くなると認知症や体力の低下によって、寝たきりになるリスクが高まり危険です。 高齢でぎっくり腰になった場合は、骨折の可能性も考えて念のため受診した方が良いでしょう。 病院で受けられるぎっくり腰の治療 ぎっくり腰で受診した場合、病院では以下のような治療を行います。 コルセットの装着 湿布・内服薬の処方 リハビリ 「病院に行っても意味がない」といわれることもありますが、受診することで症状に合わせた治療を受けられる可能性があります。 本章を参考に、受診した場合どのような治療が行われるか理解しておきましょう。 コルセットの装着 ぎっくり腰の急性期(発症直後)は、腰回りの筋肉をサポートして身体を支える「コルセット」を装着するケースがよく見られます。 「コルセットは筋力が下がる」という説もありますが、痛みが強い1〜2週間ほどの使用なら問題はありません。 ただし、痛みが治まった後に予防として使い続けると筋力が低下するリスクがあるため、医師の指示する期間を守って着用しましょう。 湿布・内服薬の処方 ぎっくり腰の発症直後は、消炎鎮痛薬(非ステロイド系抗炎症薬)の「湿布」や「飲み薬」で痛みを落ち着かせます。 また、背中の神経に麻酔薬を注射する「神経ブロック療法」によって、脳に痛みを伝える信号を遮断してつらい症状をやわらげる治療が有効な場合もあります。(文献2) リハビリ 痛みが落ち着いた後は、医師の判断でリハビリを行うケースもあります。具体的には、腰や背中、太もものストレッチや腹筋、背筋などの筋肉トレーニングなどです。(文献3) ただし、リハビリを始めるタイミングや行う内容は、個人の症状によって異なります。自己判断でのリハビリは避け、医師の判断に従いましょう。 ぎっくり腰で病院に行く前にできる応急処置 ぎっくり腰になったときに自宅でできる応急処置は、以下の通りです。 発症直後は安静にする 痛みが落ち着くまで冷やす 人の助けを借りず自分で動く ぎっくり腰は再発するケースもあります。本章を参考に、今後再発した際に適切な対応ができるよう、応急処置の方法を理解しておきましょう。 発症直後は安静にする ぎっくり腰になると激痛が急に襲ってくるため、驚いてパニックになりがちです。 大切なのは、まず「落ち着くこと」です。無理しないようにゆっくりと正座の体勢になり、深く息を吸って長く吐き出すような「深呼吸」を行いましょう。数分すると、腰周りの筋肉の緊張がやわらぎ、少しずつ楽になります。 痛みがやわらいだら、少しずつゆっくりと動きましょう。動くときは机や椅子などの倒れにくいものをつかむのもおすすめです。 痛みが落ち着くまで冷やす ぎっくり腰の発症時は、腰が炎症を起こしている状態です。痛みがあるときは、氷枕や保冷剤などをタオルでくるみ、腰に当ててください。基本的には5〜10分くらいで痛みが軽減します。 ただし、冷やしすぎると逆効果になるケースがあるため、痛みが落ち着いたら冷やすのはやめましょう。 人の助けを借りず自分で動く ぎっくり腰の痛みが落ち着いて動くときは、人の助けを借りずに自分で動くことをおすすめします。 なぜなら、人の手を借りると予期せぬ場所に力が入り、痛みが悪化する可能性があるからです。 身体を起こす手伝いを人から申し出られた場合は、「自分で少しずつ動いた方が安心なので」と伝え、自分のペースで身体を動かしてみてください。 まとめ|ぎっくり腰の症状がつらいなら病院を受診しよう 本記事では、ぎっくり腰で受診する目安や受診して受けられる治療法、自分でできる応急処置などを詳しく解説しました。 ぎっくり腰は病院に行かなくても数日で痛みが治まるケースが一般的です。しかし、ぎっくり腰と思われる症状が「椎間板ヘルニア」「化膿性脊椎炎」「骨折」などの場合もあります。 病院では、痛み止めの湿布や飲み薬、注射などの治療を行います。必要に応じてコルセットの処方やリハビリなども受けられるため、痛みがつらい、長く続いていて心配などの場合は受診すると良いでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、脊髄損傷に対して幹細胞による治療を行っています。 脊髄の損傷部へ直接幹細胞を投与するため、神経再生の効果をより高めることが期待できます。 この記事がぎっくり腰の正しい対処法を知るのに役立ち、より早期に快適な生活に戻れるきっかけになれば幸いです。 ぎっくり腰で病院に行くべきか悩んでいるときによくある質問 ぎっくり腰の治療にストレッチやマッサージをやってもいいですか。 ぎっくり腰を発症してすぐにストレッチをしても、ぎっくり腰を悪化させることはありません。ただし、ストレッチに不安があるなら、安心できるまで待ちましょう。 また、ぎっくり腰でマッサージをやって良いかどうかは、症状によって異なります。マッサージについては自己判断せず、医師に相談しましょう。 ぎっくり腰の予防法はありますか。 ぎっくり腰の予防法は、以下の通りです。 朝起きるときは、腰を丸めて体をほぐしてからゆっくり起きる 洗顔は膝を曲げて重心を下げるようにして行い、腰への負担をやわらげる ものを拾うときは、膝も曲げて腰を落とすようにして拾う 背筋や腹筋の筋力トレーニングをする ストレッチで股関節を柔らかくする 太り気味なら腰の負担を軽くするため、ダイエットを心がける 太らないように体重管理をする 背筋を伸ばし、良い姿勢を心がける また、ぎっくり腰の再発予防には、適切な治療を受けてぎっくり腰を完治させることも大切です。 ぎっくり腰の予防法や再発防止策については、以下の記事もご覧ください。 参考文献一覧 文献1 一般社団法人日本脊髄外科学会,化膿性脊椎炎 文献2 菅尚義,宮崎昌利,吉田省二,三原茂.急性期腰痛に対する硬膜外ブロックについて.日本腰痛会誌.2006;10:77-84 文献3 千田益生,堅山佳美ら.腰痛のリハビリテーション-運動療法を中心に-.リハビリテーション医学 2006;43:661-667
2021.11.17 -
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- 頚椎症性脊髄症
頚椎症性脊髄症の手術を受けたものの、期待したほど痛みが取れなかったり、手術後もしびれが残っていて辛い、良くなる兆しが見えないなどと、不安やもどかしさを感じていませんか? 手術で神経の圧迫を取り除いても、ダメージを受けた神経が完全に回復せず、症状が残ってしまうケースは残念ながら少なくありません。 「もう打つ手はないのか」と諦めかけている方もいらっしゃるかもしれませんが、近年、傷ついた神経機能の回復をサポートする新しいアプローチが登場しています。 この記事では、頚椎症性脊髄症の手術後の痛みや後遺症の現実について解説するとともに、改善を諦めないための次の一手として注目される「再生医療(幹細胞治療)」の可能性についてご紹介します。 手術を検討すべきタイミングやおすすめの治療法も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。 ▼後遺症のご相談や無料のオンライン診断をお受けいただけます 【結論】頚椎症性脊髄症の手術後に痛みやしびれなどの後遺症はある 頚椎症性脊髄症を改善する目的から手術をしても、痛みやしびれなどの後遺症が発症する可能性があります。 長期にわたって脊髄神経の圧迫状態が続いた場合、手術によっても神経は元通りに改善するわけではないからです。 たとえ手術をして圧迫を取り除いたとしても、神経症状は治りません。 頚椎症性脊髄症の手術後「手足にしびれが残っている」と感じる患者様が多いと、大阪公立大学大学院医学研究科による研究結果で明らかになっています。(文献1) 研究グループによると、187例中86人の患者様が「強いしびれがある」と答えるほどで、手術後の後遺症が発症する可能性が高いと言えます。 中には「除圧後急性増悪」や「上肢挙上困難」などの合併症になるケースもあるため、手術をしたからと言っても油断しないようにしましょう。 そもそも頚椎症性脊髄症とは 頚椎症性脊髄症とは、脳から続く脊髄(中枢神経)を通すための管である「脊柱管」が狭くなり、圧迫されて起きる症状です。 老化によって頚椎そのものや頚椎と頚椎の隙間でクッションとして機能している「椎間板」などの変形が原因です。 50歳以上の方が発症しやすく、加齢とともに発症しやすい病気と考えられているので年配の方は注意が必要です。 ただし、もともと脊柱管が狭い方もいるので「私はまだ問題なさそう」と自己判断せず、専門医に相談しましょう。 頚椎症性脊髄症の症状 頚椎症性脊髄症の症状は、主に以下の症例があります。 首、背中、手足のしびれ 手足を使用する上での不器用さ(ボタンのはめ外し、箸の使用など) 歩行障害 など 50歳以上の方が多く発症しますが、若年層の方でも駆け足しにくくなるような軽度な症状も認められています。 頚椎症性脊髄症が神経に関係する症状であるため、神経を圧迫した結果、頻尿や尿失禁など日常生活に影響する症例も稀ではありません。 症状が悪化するとボタンのはめ外し、箸の使用だけでなく、歩けなくなる事態にまで進行してしまいます。 運動機能障害により、転倒のしやすさから頭部の打撲や捻挫、頚椎症性脊髄症が急速に悪化する恐れもあるのです。 ケガのように見た目で判断できない神経の疾患である頚椎症性脊髄症は、正確に神経障害の進行度を診断し、適切な治療を受けられるかが重要です。 また、以下の記事では「脊柱管狭窄症」にも触れているので、早期の発見・治療のためにも、ぜひご覧ください。 頚椎症性脊髄症の治療法 ここからは現役医師の立場から、頚椎症性脊髄症の治療法を紹介します。 手術を検討すべきタイミングや注意点を解説しているので、ぜひ役立ててください。 治療法 頚椎症性脊髄症の治療法は、一般的なケースで薬やけん引などが行われています。 しかしあくまで痛みを緩和させるための治療法なため、神経の圧迫を改善する治療法とは言えません。 首の後ろから骨を削り、脊柱管の圧迫を取り除く方法が頚椎症性脊髄症の手術法です。 「椎弓形成術(ついきゅうけいせいじゅつ)」と呼ばれる手術ですが、首の後ろを削る手術なため、後遺症として痛みを感じる患者様もいます。 首の筋肉も削るため、後弯の進行を防げるよう金属のネジを使い固定するケースもあります。 手術を検討すべきタイミング 頚椎症性脊髄症の治療法だけ聞くと、患者様にとって「いつ踏ん切りをつけるべきか」の判断が難しいでしょう。 頚椎症性脊髄症の手術後、後遺症のリスクを軽減させるためにも、症状が確認できたタイミングで手術を検討し始めるのがおすすめです。 しかし患者様の中には「軽度なのに手術しなければいけないの?」と感じる方もいるでしょう。 たとえばしびれが両手足まで広がったり、直立しているだけで不安定さを感じたりするような進行が確認できてから手術を検討するのも1つの選択肢です。 注意点として頚椎症性脊髄症は進行性のある疾患なため、進行度によっては危険状態と診断される可能性がある点は注意してください。 いずれにしても症状が軽度なうちに手術をしておけば、しびれや痛みなどの後遺症が比較的早く軽快する可能性が高まります。 頚椎症性脊髄症の手術後、2週間程度は頸椎カラーを装着し経過観察になります。 術後の経過や「いつ日常生活に復帰できるか」など、少しでも不安な点がありましたら、当院へ気軽にご連絡ください。 手術時の注意点 頚椎症性脊髄症の手術をする上で、進行が軽度なタイミングで手術するのがおすすめですが、いくら早期の治療でも手術後の自己判断は注意が必要です。 頚椎症性脊髄症の手術後、後遺症は確認されていたとしても、痛み自体は比較的回復しやすい傾向にあります。 しびれのみだった場合、比較的軽度な症状ですが手術後のしびれは完全には取れにくいと把握しておきましょう。 他にも頚椎症性脊髄症の手術後、以下の合併症が発症するリスクもあげられます。 ・神経損傷 ・硬膜損傷 ・傷の感染 ・血腫 ・肝機能、腎機能傷害 など 頚椎症性脊髄症の手術は、後遺症の恐れが考えられますが、手術をせず放置すると歩けなくなるような障害にまで発展してしまいます。 専門医と納得のいくまで念入りにカウンセリングした上で手術を受けるようにしましょう。 再生医療なら頚椎症性脊髄症の治療におすすめ! 頚椎症性脊髄症の治療は、自己脂肪由来幹細胞を用いて治療する「再生医療」による治療がおすすめです。 再生医療は、患者様の体内にある脂肪から幹細胞を取り出し、数千倍にも培養し患部様へ注射します。 点滴で培養した幹細胞を投与すれば、神経再生を促進する治療につながる先端医療です。 そもそも幹細胞とは、間のあらゆる場所に存在していて、同じ細胞を作る能力と、別の種類に分化する能力を持った細胞です。 投与された自己脂肪由来・幹細胞が傷ついた神経部位に対して血管の新生や圧迫された神経の修復を促す特徴が認められてきました。 再生能力が高く、新しく問題や傷のある部位に働きかける幹細胞は、神経の再生に重点を置いたリハビリテーションを並行できます。 つまり、「再生医療」は、頚椎症性脊髄症で問題となる「しびれをはじめとした神経症状」に対して有効な治療法として期待できるのです。 脊髄の損傷は手術しなくても治療できる時代です。 まとめ・頚椎症性脊髄症の症状や手術後の後遺症が心配なら再生医療を! 頚椎症性脊髄症とは、脊柱管が加齢によって変形して、重要な脊髄が走行する脊柱管の隙間が狭くなり、脊髄が圧迫され、いろいろな問題のある神経症状を覚える病気です。 本疾患を発症する原因としては、加齢に伴う頚椎などの物理的な構造の変化が多いと考えられています。 しかし、もともと日本人は諸外国人に比べて脊柱管が狭い傾向であり、頚椎症性脊髄症を発症しやすいと言われています。 脊髄へのダメージが軽度なケースでは軽い手足のしびれ症状のみです。 神経へのダメージが大きければ大きいほど、手足の筋力低下やしびれ、頻尿や失禁など膀胱、直腸障害などの症状も併せて見られるようになります。 神経の圧迫を手術で除いたにもかかわらず、術後にしびれや麻痺などの症状が残った場合はあきらめないでください。 近年注目を浴びている「自己脂肪由来の幹細胞を投与する再生治療を受けると改善の可能性がある」と思い出し、後遺症リスクを減らしていきましょう。
2021.11.17 -
- 頚椎椎間板ヘルニア
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頚椎椎間板ヘルニアの各症状と身体所見、治療法|似た病態について解説します 背骨の骨と骨をつなぐ役割の組織を「椎間板」と言い、「頚椎椎間板ヘルニア」とは、椎間板組織が脊柱管内に突出または脱出して脊髓や神経根を圧迫し症状をきたす疾患です。 発症年齢としては、30~50歳代の男性に多くみられます。発生する部位ではC5、C/6(第5頚椎と第6頚椎の間の椎間板で発生)が最も多く、次にC4、C5並びにC6、C7にも多く発症します。(以下の図参照) 事故による外傷性や加齢による経年性による変性が機序となることが多く、「喫煙も危険因子」とされています。 なお脊柱管横断面で「正中型」、「外側型」と「傍正中型」とヘルニアが飛び出た方向で3分類されます。正中ヘルニアを脊髄症、外側型や傍正中型は神経根症や脊髄神経根症(脊髄症と神経根症の合併)をきたすことが多く、画像検査で椎間根ヘルニアを認めても、無症状であることも多いので注意が必要です。 脊柱管横断面 正中型 脊髄症 外側型 神経根症、脊髄神経根症(脊髄症と神経根症の合併) 傍正中型 発症原因 事故による外傷性 加齢による経年性による変性 喫煙も危険因子とされる 症状について 「頸椎症」のほかに、神経根が圧追されると「神経根症」、脊髄が圧迫されると「脊髄症」の症状が生じます。以下に各症状と身体所見、治療法を解説します。 頚椎症 首から肩甲骨にかけて痛みがあり首を動かすに痛みが増強し、安静にすると軽快します。 神経根症(radiculopathy) 上肢への放散痛、知覚障害、しびれ感、脱力感などの症状が生じます。放散痛の領域を詳しく把握することで障害神経根を推測することが可能です。前胸部に放散する疼痛がある狭心症に似た頸性狭心症(cervical angina)と呼ばれる疾患があり、鑑別を必要とします。 脊髄症(myelopathy) ボタンが掛けにくい、著が使いにくい、ボタンを上手く掛けることができない、といった手指巧級運動障害や歩行障害を生じます。痙性歩行により歩容は揺劣となり、階段昇降時には手すりが必要となります。また小走りも難しくなります。 初期は大きなボタンを掛けることはできますが、ワイシャツのような小さいボタンが掛けにくくなります。指または手のひら全体のしびれを訴えることがあり、脊髄の圧迫する部位によってしびれの領域に違いがみられます。手の痺れは手根管症候群などの疾患を除外診断しなければいけません。 進行すると膀胱直腸障害(頻尿、尿勢低下、残尿感、便秘)も自覚するようになります。 身体所見について 身体的な所見としては、以下のような症状があげられます。 頸椎症 頸椎の可動域制限と僧帽筋、棘下筋、棘上筋などに圧痛を生じます。 神経根症 神経根の障害高位に一致した上肢の筋力低下および筋萎縮、感覚障害、深部腱反射の低下が生じます。スパーリングテスト(Spurling test)、ジャクソンテスト(Jackson test)が陽性となることが多いです。 脊髄症 上肢の障害髄節に一致して深部反射が弱くなり、筋力低下が生じることもあります。また錐体路障害により、それ以下の深部反射、ホフマン(Hoffmann)反射、ワルテンベルク(Wartenberg)反射が亢進し、バビンスキー(Babinski)反射、膝・足間代(足クローヌス)も陽性となります。 また小指が閉じることができない指離れ徴候(finger escape sign)がみられ、10秒テスト(手掌を下にしてできるだけ速く、グーパーを繰り返す)では通常20回以下になります。感覚障害は、初期には上肢のみに生じることが多いです。 画像検査について 診断には画像による診断が必要となり、そのため以下のような検査が行われます。 X線像(レントゲン) 椎間板ヘルニアでは一般に椎間板腔狭小化(椎間板と椎間板の間の隙間が狭くなること)や骨棘形成は軽度であることが多いです。高齢者では、骨棘などの変性が著明になると隣接椎間に椎間板ヘルニアが発生することもあります。 MRI(磁気共鳴画像法) 椎間板ヘルニアの局在や、圧迫された脊髄、椎間板変性の度合い、神経根の状態を確認することができます。 脊髄造影(ミエログラフィー) 脳槽・脊髄用の水溶性造影剤をくも膜下腔に注入して、脊髄や神経根を明瞭に描出することができる検査です。脊髄造影後にCTを撮影すると椎間板ヘルニアの局在、神経根や脊髄の圧迫を三次元的にとらえることが可能です。しかし、MRIが導入された現在では、脊髄造影をする機会は減ってきています。 頚椎椎間板ヘルニアの治療法について 頚椎症状、神経根症、脊髄症に分けて説明します。椎間板ヘルニアは自然吸収されることが多いため、無理に手術を選択すべきではないと考えます。 頚椎症に対する治療 頚椎症状のみで手術療法を行うことはあまりありません。消炎鎮痛剤などの薬物療法、トリガーボイントブロック注射、ストレッチなどを行います。 神経根症に対する治療 神経根症は症状によりますが保存療法を行った後に手術療法が検討します。 ●保存療法 消炎鎮痛薬などの薬物療法を行います。頸椎カラーを装着して頸部の安静を図ることもあり、痛みが激しい場合には、副腎皮質ステロイドの内服、硬膜外ブロック、神経根ブロック、星状神神経ブロックなどを併用します。ほとんどの症例で、保存療法により2〜3カ月以内に軽快することが多いです。 ●手術療法 保存療法を2〜3カ月続けても効果がない場合や、進行性の麻痺を認めた場合には手術を行います。推間板ヘルニアは脊髄や神経根の前方にあるため、前方除圧固定術(anterior decompression and fusion)を選択することが多いです。 前方除圧固定術は胸鎖乳突筋の内側から進入し、気管と食道を内側によけて椎間板に到達し、当該高位の椎間板やヘルニアを完全に摘出し、椎体間に腸骨から採取した骨や人工物(インプラント)を移植して固定します。 アライメントの維持や移植骨の脱転を予防する目的で、前方にプレートを使用することもあります。神経根症をきたす椎間板ヘルニアは傍正中型あるいは外側型なので、後方から部分椎弓切除と椎間孔切除を行った上でヘルニアを摘出することもあります。 脊髄症に対する治療 脊髄症では症状により保存療法と重症であれば手術療法が検討され以下のような治療を行います。 ●保存療法 軽度であれば、鎖椎カラーで頸部の安静を図り、椎間板ヘルニアの自然吸収を待ちます。しかし痙性歩行、手指巧緻運動障害により日常生活に支障がある場合や、排尿障害がある場合には、機能障害が永続性となることを避けるために手術を行います。 ●手術療法 脊髄症の場合でも、通常は1椎間での障害で脊髄の前方にヘルニアがあるので、神経根症と同様に前方除圧固定術を選択することが多いです。しかし、椎間板ヘルニアの高位以外でも脊柱管の狭窄がある場合には、後方から椎弓形成術 (laminoplasty)を選択することもあります。 椎弓形成術は脊髄の広範囲な除圧を容易に行うことができ、さらに脊髄を保護する脊柱の後方要素を温存することができます。合併症は比較的少ないですが、頸椎後方伸筋群に侵襲を加えるため、術後に頸部痛をきたしやすいという難点があります。 頸椎椎間板ヘルニア、脊髄症いずれにおいても言えることなんですが症状が出現して手術するまで時間がかかればかかるほど、術後の後遺症は残りやすくなります。後遺症が残るとその後一生治らなかったり、症状が増強することがあります。 そんな場合の最新治療として注目されるのが「再生医療」となります。当院では、数多くの術後の後遺症に対する幹細胞治療を行なっており高い治療効果を得ています。詳しくはこちらへ ▼こちらの動画もご参考になれば幸いです。 https://www.youtube.com/watch?v=0hyJR5VW3oY&t=63s 頸椎椎間板ヘルニアと似た症状の病気 頸椎椎間板ヘルニアと似ていますが違った病態をご紹介しておきます。似ているとはいえ、疾患によって治療方針が変わってくるため、頸肩腕痛を引き起こす疾患との鑑別が大変重要となります。。 肩軟部組織の変性疾患(腱板断裂、凍結肩など) 肩関節の運動痛や肩関節可動域制限を認めれば、頸椎疾患以外と考えます。C5神経根症と腱板断裂は、ともに上腕近位外側の疼痛を訴え、関節の外転ができなくなるので鑑別を必要とします。 C5神経根症では、三角筋や上腕二頭筋で筋力低下を生じることが多いですが、腱板断裂では上腕二頭筋の筋力は通常正常です。 胸郭出口症候群 (thoracic outlet syndrome) 頸肋、中斜角筋、前斜角筋、鎖骨および第1肋骨、小胸筋などにより腕神経叢と鎖骨下動脈が胸郭出口部で圧迫され、上肢の疼痛、しびれ、握力低下、重だるさなどが生じます。 ライトテスト(Wright test)、モーレイテスト(Moley test)、アドソンテスト(Adson test)が陽性となります。胸郭出口症候群の症状は前腕尺側に多いのが特徴です。 肘部管症候群(cubital tunnel syndrome) 尺骨神経の絞扼性神経障害で尺骨神経溝にティネル様徴候(Tinel)がみられます。環指尺側から小指にかけてのしびれや麻痺など感覚障害が生じ、進行すると環指と小指の変形が起きます。 手根管症候群(carpal tunnel syndrome) 正中神経の絞扼性神経障害手根管部でティネル様徴候(Tinel)が陽性になります。母指から環指の痺れや疼痛など生じ、指先の症状は夜間や早朝に強い傾向があります。 母指球筋萎縮が進むと猿手変形が生じます。確定診断には、当該神経の神経伝導速度を測定が必要です。 脊随腫瘍 (spinal cord tumor)、脊椎腫瘍(spiatumor) MRIで容易に確定診断することが可能です。稀に パンコースト(Pancoast)腫瘍により、主に尺骨神経側に神経症状を生じることもあるので注意が必要です。 まとめ・頚椎椎間板ヘルニアの各症状と身体所見、治療法|似た病態 以上、頚椎椎間板ヘルニアで現れる症状の種類と身体の所見、治療法について記し、合わせて似た病態についても解説させて頂きました。 頚椎椎間板ヘルニアは、椎間板組織が脊柱管内に突出または脱出して脊髓や神経根を圧迫し症状を引き起こす疾患です。 30〜50歳代といった年齢の男性に多く見られ、特にC5-C6や、C6-C7の部位で頻繁に発生することが多い疾患です。発症原因は、事故による外傷性や、加齢による変性が主な原因とされ。喫煙も問題視されています。 症状には頚椎症、神経根症、脊髄症があり、それぞれ首から肩甲骨にかけての痛みや、上肢への放散痛、手指の運動障害、歩行障害などが見られます。 その診断には、レントゲン、MRI、脊髄造影などの画像検査によって行われます。 治療法としては保存療法と手術療法があり、保存療法では「消炎鎮痛薬」の使用や「頸椎カラー(首を安定させて保護する目的で使用される装具。多くはプラスチック製で首を固定し、動きを制限することで頚椎を保護する)」の装着が行われます。 手術による治療は、保存療法が効果的ではない場合、また神経障害が進行している場合に選択されて前方除圧固定術や椎弓形成術といあった手術が行われます。 尚、他にも類似した病態に「肩腱板断裂」「胸郭出口症候群」「肘部管症候群」「手根管症候群」「脊髄腫瘍」なども考慮し、区別しなければなりません。 いずれにしても、医療機関で検査の上、医師の診断をもとに症状や病態に合わせた治療法を選択することが大切です。 今回は、頚椎椎間板ヘルニアを大きな視点から、記事に致しました。分かりにくい部分ではございますのでご不明な点があればお問い合わせください。 ▼以下の記事も参考にされませんか 頚椎椎間板ヘルニア!日常生活でやってはいけないこと
2021.08.05