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変形性膝関節症の手術による成功率は?入院期間や費用も解説

「変形性膝関節症の手術は、実際どれくらいの成功率なの?」
「変形性膝関節症の手術で失敗が怖い」
このように、不安に思われる方は多いのではないでしょうか。
報告によっては手術後10年間で再手術をせずに過ごせる割合が90%近いケースもあります。
本記事では、変形性膝関節症の手術方法や成功率、入院期間と費用などを詳しく解説します。
手術のメリット・デメリットだけでなく、再手術リスクや再生医療という選択肢についてもわかりますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
変形性膝関節症の手術成功率|90%以上の報告もあり
変形性膝関節症の手術は主に以下の3種類の術式から選択されます。
- 関節鏡視下手術
- 高位脛骨骨切り術
- 人工関節置換術
どの術式を選択するかは、膝の変形の進行度や痛みの程度、そして年齢などを踏まえて判断されることが一般的です。
それぞれの手術法における成功率や術式を見ていきましょう。
変形性膝関節症の手術は主に以下の3種類の術式から選択されます。
- 高位脛骨骨切り術
- 人工関節置換術
- 関節鏡視下手術
どの術式を選択するかは、膝の変形の進行度や痛みの程度、そして年齢などを踏まえて判断されることが一般的です。
それぞれの手術法における成功率や術式を見ていきましょう。
1.高位脛骨骨切り術|手術後10年で96%が良好な状態を維持
高位脛骨骨切り術は脚の変形を矯正し、関節にかかる偏った負担をなくす手術です。
変形が進行しきっていないことが条件で、人工関節置換術を受ける方より年齢が若い60歳未満の方に適応されることが多い傾向です。
高位脛骨骨切り術により、O脚やX脚などの脚の変形を矯正しても、軟骨のすり減りや、痛みが再発する可能性があります。
将来的には再手術を必要とする場合があります。
ある調査では、この手術を受けた人のうち、10年後に96%、15年後でも90%が良い状態を保っていたという結果が出ています。(文献1)
2.人工関節置換術|手術後10年で99%以上が良好な状態を維持
人工関節置換術は変形性が進行した末期、または60歳以上の方に適応されます。
年齢が重要視される理由は、人工関節の耐久性(15~20年前後)を考慮して、再手術をしなくても良いように考えられているためです。
人工関節置換術をすると、軟骨がすり減る心配をしなくて済むほか、痛みを気にせずに過ごせる可能性が高くなります。
しかし、膝に負担がかかるような過ごし方を続けると、人工関節に破損や緩みが出てきて耐久年数に関わらず再手術の可能性が高まります。
ある研究では、手術後の膝の状態を10年にわたって調べた結果、再び大がかりな手術を受けた人はわずかでした。
5年後の良好な状態の割合は99.4%、10年後も99.3%と高く、12年半たっても96.2%と報告されています。(文献2)
3.関節鏡視下手術|プラセボ効果と変わらない可能性
変形性膝関節症で比較的初期に適応される手術は「関節鏡視下手術」です。
小さなカメラと器具を使って、関節の中を直接見ながら、炎症の原因になる軟骨のかけらを取りのぞいたり、傷んだ半月板の形を整えたりします。
2022年の研究では、実際に関節鏡視下手術を受けた人と、切開のみで治療を行わないプラセボ手術(研究のためのニセ手術)を受けた人で成功したと感じた割合は以下の通りでした。(文献3)
- 関節鏡視下手術:82%
- 関節鏡視下手術のプラセボ手術:74%
また、2024年の研究では、関節鏡視下手術を受けた人と手術をしない保存療法のみの人で、5年後と10年後に人工関節置換術(TKA)を受けた人の割合について以下の結果が出ています。(文献4)
5年後にTKAを受けた人の割合 | 10年後にTKAを受けた人の割合 | |
関節鏡視下手術を受けた人 | 10.2% | 23.3% |
保存療法のみの人 | 9.3% | 21.4% |
これらの研究結果から、変形性膝関節症に対する関節鏡視下手術の効果は、実際の手術をしない場合と大きく差がない可能性が高いことが示唆されています。
医療機関や治療法を選ぶ際には、これらの情報も参考に検討することをおすすめします。
変形性膝関節症の手術における入院期間や費用
変形性膝関節症の手術では、術式ごとに入院期間や費用が大きく変わります。
たとえば、関節鏡視下手術は比較的短い入院期間で済む一方、高位脛骨骨切り術や人工関節置換術ではリハビリを含めて長期の入院を要するケースが少なくありません。
費用面も同様に、手術方法や保険の適用割合によって負担額は大きく異なります
以下に、主な術式ごとの入院期間と費用の目安をまとめましたので、参考にしてみてください。
手術名 | 入院期間 | 保険適用前費用 | 3割負担費用 | 1割負担費用 |
関節鏡視下手術 | 2日~3日 | 約25万円 | 約7.5万円 | 約2.5万円 |
高位脛骨骨切り術 | 約5~6週間 | 約146万円 | 約43.8万円 | 約14.6万円 |
人工関節置換術 | 約1カ月 | 約186万円 | 約55.8万円 | 約18.6万円 |
※表の入院期間、費用は病院によっても変わるのであくまで目安の数値になります。
なお、入院中の食事代として1食あたり約110〜490円程度がかかるほか、個室や特別室を希望する場合には1日あたり5,000〜20,000円ほどの差額ベッド代が発生する場合もあります。
以上のように、術式によって滞在期間や費用が大きく変わるため、手術前にしっかりと情報を収集し、家族とも相談することで入院期間や費用に関する不安は減らせます。
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変形性膝関節症で手術するメリット
変形性膝関節症で手術を受けるメリットとしては、まず起床時の膝のこわばりが軽減する点が挙げられます。
これにより、痛みを意識することなく階段の上り下りができる可能性が高まります。
膝の痛みを気にせず歩き出せるようになるため、外出や趣味などへの意欲が向上する人も少なくありません。
膝をかばう動作が減り、日常生活全般がスムーズになることで精神的にも負担が軽くなるメリットもあります。
変形性膝関節症で手術するデメリット
手術には合併症のリスクが伴います。感染症や血栓症、手術後の痛みや関節の動かしづらさなどが代表的です。
高位脛骨骨切り術のあとに再手術が必要となった場合、膝の変形がさらに進行している可能性が高く、その時点で加齢が進んでいれば、人工関節置換術に移行する可能性もあります。
人工関節置換術後は、膝が完全に曲がらなくなるため、痛みの改善が期待できる一方で、関節の可動域が制限されるデメリットがあります。
そのため、重い荷物を持ったり正座をしたりすることが難しくなる場合も少なくありません。
また、膝に負担をかけるスポーツや動作を続けていると、人工関節が破損やゆるみを起こすリスクが高まり、耐久年数に関係なく再手術が必要になる場合もあります。
変形性膝関節症で手術をしない「再生医療」の選択肢
変形性膝関節症で入院を伴うような大きな手術を必要としない治療選択肢として「再生医療」が挙げられます。
再生医療には、幹細胞治療とPRP(多血小板血漿)療法などがあります。
幹細胞治療は、患者様自身の幹細胞を培養して患部に注射する治療法です。
PRP療法では、患者様の血液を採取して遠心分離器にかけ、血小板を濃縮した液体を患部に注射します。
当院「リペアセルクリニック」では「幹細胞治療」「PRP療法」の両方を提供しております。
「関節内ピンポイント注射」という手法を取り入れているため、体への負担を軽減しながら治療を進められます。
詳しい治療方法や症例が気になる方は、リペアセルクリニックまでお気軽にお問い合わせください。
まとめ|変形性膝関節症の手術における成功率を把握した上で治療を検討しよう
変形性膝関節症の手術は、術式によって成功率が異なります。
病院ごとでも実績や専門性が異なるため、担当医に術式別の成功率を聞いて情報収集してみると良いでしょう。
手術は体への負担が大きいため、念入りな検査や診断のもと、どの治療法が最適かを判断していく姿勢が大切です。
入院を伴うような大きな手術を必要としない治療法をお探しの方は、再生医療をご検討ください。
再生医療について詳しくは、当院リペアセルクリニックにお気軽にお問い合わせください。
変形性膝関節症の手術に関するよくある質問
変形性膝関節症の手術後はどんな生活を送ることになりますか?
手術後は、感染症の予防や傷口の安静といった基本的なケアが必要となり、激しい運動や膝に負担のかかる姿勢はしばらく控えることが求められます。
たとえば、正座やあぐら、長時間のしゃがみ込みなどは痛みや再発のリスクを高める可能性があるため注意が必要です。
人工関節を入れた場合には、破損や緩みのリスクを防ぐ意味でも、大きな負荷が加わる運動を避けるよう指示されることが少なくありません。
また、生活環境を整え、膝への負担を減らす工夫することで、術後の回復をスムーズに進められます。
具体的には、床座をやめて椅子中心の生活に変える、手すりを設置するなど、小さな改善を積み重ねることが回復を早めるコツです。
変形性膝関節症の手術で名医はいますか?
変形性膝関節症の治療を得意とする医師は、全国に多数存在しますが、最適な治療を受けるためには、各医療機関の実績や専門分野をしっかりと調べることが重要です。
ウェブサイトや医師紹介ページを確認し、これまでの手術症例数や学会での活動歴、論文発表などをチェックするのも良い方法です。
さらに、当院ではメスを使用せずに治療をおこなう「再生医療」のスペシャリストが在籍しており、患者様の状態に合わせてより最適な治療法を提案できます。詳しい経歴や実績は「ドクター紹介ページ」をご覧いただき、安心してご相談ください。
場合によっては、医師への直接の質問やセカンドオピニオンも検討し、自分に合った医療機関を選択しましょう。
膝の人工関節手術で失敗例はありますか?
膝の人工関節手術は成功率が高い一方、合併症や感染症などのリスクが完全にゼロになるわけではありません。
術後の痛みや可動域の制限が想定以上に残った場合や、人工関節に過度な負担がかかった結果、破損や緩みが生じる可能性もあります。その際には再手術が必要となるケースも少なくありません。
また、人工関節の素材や術式にはさまざまな種類があり、個々の体質や生活スタイルとの相性が影響を及ぼす場合もあります。術後のリハビリを怠らず、医師の指示に従ったケアで膝の負担を減らすことで、失敗と感じるリスクを抑えられるでしょう。
参考文献
(文献1)
信州大学医学部附属病院 整形外科下肢グループ「高位脛骨骨切り術について」
https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/chair/i-seikei/images/03-03-1-008_case-lower_treatment05.pdf
(最終アクセス:2025年4月18日)
(文献2)
龍 準之助.「人工膝関節の開発と術後成績」日大医誌 70 巻 5 号 pp254~259 2011年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/70/5/70_254/_pdf/-char/ja
(最終アクセス:2025年4月18日)
(文献3)
O’Connor D, et al. (2022). Arthroscopic surgery for degenerative knee disease (osteoarthritis including degenerative meniscal tears). Cochrane Database of Systematic Reviews, CD014328.
10.1002/14651858.CD014328
(最終アクセス:2025年4月25日)
(文献4)
Birmingham TB, et al. (2024). Incidence of Total Knee Arthroplasty After Arthroscopic Surgery for Knee Osteoarthritis: A Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial. JAMA Network Open, 7(4), e246578.
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2817814
(最終アクセス:2025年4月25日)