- その他、整形外科疾患
トラムセットが腰痛に効かないときはどうする?対処法・やってはいけないことを現役医師が解説
「トラムセットを飲んでいるのに、腰痛が良くならない」
「このまま飲み続けても意味がないのでは?」
トラムセットを服用していても改善せず、長引く腰痛にお悩みではありませんか。
トラムセットは、通常の痛み止めで効果が得られない方に処方される鎮痛薬ですが、すべての腰痛に効果を発揮するわけではありません。
しかし、効かないからといって自己判断で服用量を増やしたり、急に中止したりすると、思わぬ副作用や離脱症状を引き起こす危険性があるため、正しい対処法を知っておく必要があります。
この記事では、トラムセットが腰痛に効かないときに考えられる主な理由、自己判断でやってはいけないこと、トラムセットが効かない場合の治療法について解説します。
適切な対応を知り、腰痛の改善に有効な手がかりを見つけましょう。
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目次
トラムセットが腰痛に効かないときに考えられる理由
トラムセットが腰痛に効かない場合、以下の理由が考えられます。
- 本来必要な量まで服用できていない
- 長期使用による耐性ができている
- トラムセットだけでは抑えきれない種類の痛みである
- ストレスなどの心理的要因で腰痛が強くなっている
薬の効果を最大限に引き出すために、まず「なぜトラムセットが効かないのか」を理解しましょう。
痛みの種類と薬の効果が合っていない
トラムセットを服用していても「効かない」と感じる場合、そもそもトラムセットの作用範囲ではカバーしきれない種類の腰痛が起こっている可能性が考えられます。
多くの場合、腰痛の原因は単一ではなく、以下のような痛みが混在しているといわれています。(文献1)
- 侵害受容性疼痛:炎症による痛み
- 神経障害性疼痛:神経の損傷や圧迫による痛み など
痛みが起こる仕組みが異なれば、効果を発揮しやすい薬も異なるため、トラムセット単独では十分に対応できないケースもあるのです。
また、慢性疼痛治療ガイドラインでは「慢性疼痛患者の痛みのない状態にすることは難しい」とも示されています。(文献2)そのため慢性腰痛に対しては、あくまでも「痛みをコントロールしながら日常生活を送りやすくすること」を治療の目標とするケースも少なくありません。
本来必要な量まで服用できていない
トラムセットの服用量が腰痛を抑えるのに必要な量まで達していない場合、「効かない」と感じることがあります。
通常、トラムセットは1回1錠を1日4回服用します。(文献3)副作用を抑制するため、少ない量から段階的に増量することが望ましいとされています。(文献4)
ただ、医師の指示のもとで、最大1回2錠、1日8錠まで増量することが可能です。(文献3)
初回処方量のままであったり、高齢や腎機能、肝機能、副作用などへの配慮により用量を制限されていたりする場合、痛みを抑える十分な量に達していない可能性があります。
もしトラムセットが腰痛に効かないと感じる場合は、かかりつけの医師に相談し、処方量を調整してもらうことも検討しましょう。
長期使用による耐性ができている
トラムセットに含まれる成分「トラマドール」は、長期間の使用によって耐性が形成される場合があります。(文献3)
耐性とは、特定の薬の服用を続けることで徐々に効き目が低下する現象です。
最初は効果を感じていても、耐性が形成されることで次第に「以前より腰痛に効かなくなった」と感じる原因となるでしょう。
ストレスなどの心理的要因で腰痛が強くなっている
腰痛が長期化すると、痛みの刺激に対して脳や脊髄が過敏になる「中枢性感作(ちゅうすうせいかんさ)」を引き起こすことがあります。(文献2)
また、不安や抑うつ、仕事や人間関係のストレス、「この痛みは一生治らないのでは」という思考などの心理社会的要因が重なると、実際の組織損傷の程度以上に痛みを強く感じるケースも珍しくありません。(文献5)
このような状態では、トラムセットのような鎮痛薬だけで痛みを十分に抑えることが難しくなり、「効かない」と感じてしまう原因となり得ます。
トラムセットが腰痛に効かないときの対処法
トラムセットの効果が不十分な場合でも、治療の選択肢は多数存在します。具体的な対処法は以下のとおりです。
- トラムセットの用量の見直し
- 別の薬の併用・種類の変更
- 運動療法
- 手術療法
- 再生医療
このように、薬の使い方を見直したり、運動療法や手術、再生医療といった別の治療法を組み合わせたりすることで、腰痛の軽減・生活の質の改善が期待できます。
本章で、トラムセットが効かない場合の対処法について詳しくみていきましょう。
トラムセットの用量の見直し
トラムセットの効果が弱いと感じる場合、現在の服用量と内服スケジュールの見直しを検討します。
前述のとおり、トラムセットに含まれる成分「トラマドール」は、少量から開始して副作用と効果のバランスを確認しながらの増量が推奨されているものです(文献4)。
副作用を懸念して極端に少ない用量にとどまっているケースでは、適切な増量や服用タイミングの変更で症状が改善する可能性があります。
主治医へ相談し、適切な範囲での増量や内服スケジュールの見直しを検討しましょう。
別の薬の併用・種類の変更
トラムセット単独で痛みが十分にコントロールできない場合、別系統の薬剤への切り替えや併用が有効です。
たとえば、しびれや電撃痛など神経障害性疼痛の要素が強い腰痛の場合、ガイドライン上の第一選択薬として推奨されている「プレガバリン(リリカ)」や「デュロキセチン」といった神経痛治療薬との併用や切り替えを行うケースがあります。(文献4)
痛みの性質に合わせて服用する薬を調整することで、腰痛の緩和が期待できます。トラムセットが効かないと感じる場合は、主治医に相談の上、薬の種類を変更することも視野に入れてみてください。
運動療法
運動療法は、慢性腰痛に対して有効性が認められており、「腰痛診療ガイドライン2019」でも強く推奨されている治療法です。(文献5)
実際に、ストレッチや体幹筋(腹筋・背筋)トレーニングなどは腰痛緩和への効果があると報告されています。(文献5)(文献6)
痛みを恐れて安静にしすぎると、筋力低下や関節可動域の制限を招き、かえって腰痛が悪化するケースも考えられます。医師や理学療法士の指導のもと、無理のない範囲から運動を取り入れていくと良いでしょう。
手術療法
薬物療法や運動療法などの保存的治療を一定期間行っても改善がみられない場合、手術療法を検討します。対象となる主な疾患は以下の通りです。
- 腰部脊柱管狭窄症
- 腰椎すべり症
- 椎間板ヘルニア
これらはいずれも骨の変形によって神経が圧迫されている疾患です。そのため手術で圧迫を解除することで腰痛や下肢の痛み、しびれなどの改善が期待できます。
とくに、進行性の筋力低下や排尿・排便障害などの重篤な神経症状が出現している場合は、緊急手術を含めた早期の外科的介入が必要です。
ただし、手術には麻酔や感染などのリスクが伴います。医師と十分に相談し、メリットとデメリットを理解した上で治療法を選択しましょう。
再生医療
腰痛にトラムセットが効かないと感じる場合、「再生医療」も治療の選択肢のひとつです。とくに椎間板ヘルニアや腰椎すべり症のような椎間板や背骨の変性による腰痛に対しては、再生医療を検討するケースもあります。
リペアセルクリニックでは、慢性腰痛に対する再生医療として患者さん自身の脂肪から採取した幹細胞を培養して骨や神経などの特定の組織に変化させる「幹細胞治療」をおこなっています。
腰の痛みに対する再生医療についてより詳しく知りたい方は、当院リペアセルクリニックの公式LINEをご登録ください。
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【自己判断NG】トラムセットが腰痛に効かないときにやってはいけないこと
トラムセットが効かないからといって誤った対処をすると、命に関わる重大な副作用につながる恐れがあります。
以下の行動は絶対に避け、該当する場合は直ちに医師へ相談してください。
- 規定量以上に服用する
- 突然服用を中止する
- 他の薬と併用する
規定量以上に服用する
トラムセットが腰痛に効かないと感じても、自己判断での増量は厳禁です。
トラムセットの最大用量は1日8錠、1回2錠が限度ですが、主治医は腎機能や肝機能、生活背景を総合的に判断して安全な用量を設定しています。自己判断で量を増やすとトラマドールのオピオイド作用による呼吸抑制やけいれん、意識障害など、重篤な副作用が起こる危険性があります(文献3)。
また、トラムセットに含まれるアセトアミノフェンは、市販の風邪薬(総合感冒薬)にも含まれていることが多い成分です。無自覚のうちにアセトアミノフェンの過剰摂取に陥り、肝臓に深刻なダメージを与え、肝不全に至るケースもゼロではありません。(文献3)
腰痛に対してトラムセットの効果が不十分だと感じても、自己判断では増量せず、必ず主治医に相談してください。
突然服用を中止する
トラムセットを長期間服用しているケースでは、突然服用を中止することで不安や不眠、感情の高ぶりなどの離脱症状を引き起こす場合があります。(文献3)
この離脱症状は、身体が薬剤に依存した状態に陥ることで発生します。
トラムセットの離脱症状を防ぐには、医師の指導による段階的な減量が必要です。自己判断で服用中止せず、主治医へ必ず相談しましょう。
他の薬と併用する
トラムセットには、飲み合わせの悪い薬が多数存在します。代表的なリスクを以下の表にまとめました。(文献3)
|
薬の種類 |
区分 |
起こり得るリスク |
|---|---|---|
|
MAO阻害薬 |
併用禁忌(同時に飲んではいけない) |
セロトニン症候群(錯乱、発汗、発熱、振戦、興奮など)、けいれん、意識障害、呼吸抑制、低血圧など |
|
ナルメフェン塩酸塩 |
併用禁忌(同時に飲んではいけない) |
離脱症状の出現、鎮痛効果の減弱など |
|
オピオイド鎮痛薬、中枢神経抑制剤 |
併用注意(同時に飲むこともあるが、リスクがあるため医師の注意が必要) |
けいれん、呼吸抑制など |
|
SSRI・SNRIなどの抗うつ薬、三環系抗うつ薬、リネゾリドなど |
併用注意(同時に飲むこともあるが、リスクがあるため医師の注意が必要) |
セロトニン症候群(錯乱、発汗、発熱、振戦、興奮、意識障害など)、けいれんなど |
とくに「セロトニンにかかわる薬」と「アセトアミノフェンを含む薬」は、トラムセットとの併用に注意する必要があります。
パーキンソン病やうつ病の治療薬などはセロトニンに関わる薬も多いため、他の医療機関にかかる際はトラムセットのことを必ず医師へ伝えましょう。
また、トラムセットと合わせると過量になりやすいアセトアミノフェンを含む市販の総合感冒薬や解熱鎮痛剤も、服用前に必ず医師や薬剤師に相談してください。
トラムセットが腰痛に効かないときは医師と相談の上で治療法を見直そう
トラムセットが腰痛に効かないと感じるときは、「薬が合っていない・量が不足しているサイン」かもしれません。
痛みのタイプに応じて、他の薬への切り替えや併用、運動療法との組み合わせによって改善が期待できる場合があります。
また、MRIやCTで椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの構造的な異常を確認し、必要に応じて手術や幹細胞治療を検討するのも選択肢です。
リペアセルクリニックでは、慢性腰痛や椎間板ヘルニアに対して患者自身の脂肪由来の幹細胞を用いた再生医療をおこなっています。
再生医療は、手術が難しい方の選択肢にもなり得る治療法です。詳細を知りたい方は、当院の公式LINEに登録し、再生医療に関する情報収集から始めましょう。
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トラムセットが腰痛に効かないときによくある質問
トラムセットだけでは腰痛に効かないのですが、リリカを一緒に飲んでも良いですか?
医師の判断により、リリカ(プレガバリン)とトラムセットの併用が可能です。
トラムセットに含まれるトラマドールは、弱オピオイド作用とノルアドレナリン・セロトニンの再取り込み阻害作用を持ちます。主に炎症・組織損傷に伴う痛み(侵害受容性疼痛)や一部の神経痛に効果が期待できます。
一方リリカは、神経細胞の異常な興奮を抑えることで、しびれや電撃痛などの神経障害性疼痛に効果を発揮する薬です。
両薬剤の併用によって炎症と神経の痛みを両方カバーできます。とくに神経障害性成分が強い腰痛では症状の改善が期待できます。
ただし、眠気やふらつきが強く出ることがあるため、併用は必ず医師の処方と指示のもとでおこなってください。
自己判断で併用したり、他者から譲り受けて飲んだりするのは厳禁です。
トラムセットとリリカはどちらが強いですか?
トラムセットとリリカは作用機序が異なるため、どちらが強いかは単純に比較できません。
腰痛には侵害受容性(炎症の痛み)と神経障害性(神経の痛み)の両方が混在するケースがあります。それぞれ性質が異なるため、痛みの原因や全身状態を総合的に評価し、単独処方か併用かを医師が決定します。
トラムセットとリリカのどちらが強いと感じるかは、「ご自身が抱える疾患や痛みの種類に合致するか否か」で異なるといえます。
坐骨神経痛にトラムセットは効きますか?
坐骨神経痛に対して有効なケースも存在しますが、トラムセット単独では痛みを取り切れないケースも少なくありません。
坐骨神経痛は、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などにより坐骨神経が圧迫されて発生します。(文献7)腰からお尻、太ももの後ろ、ふくらはぎにかけて痛みやしびれが広がるのが特徴で、神経障害性疼痛の要素が強いものです。
トラムセットは一部の神経痛にも効果が期待できるものの、神経障害性の要素が強い場合は他系統の薬が選択されます。
腰痛診療ガイドライン上でも坐骨神経痛の推奨薬にトラムセットは含まれておらず、NSAIDs、リリカやデュロキセチンといった神経障害性疼痛治療薬の使用が望ましいとされています。(文献5)
坐骨神経痛の症状が長引く、歩行や仕事に支障が出ているなどの場合は医療機関を受診し、原因疾患と痛みのタイプに合った治療を受けるようにしましょう。
トラムセットが効かない場合、医療用麻薬(モルヒネ)に頼るしかないのでしょうか?
トラムセットの効果が不十分でも、ただちにモルヒネなどの医療用麻薬(オピオイド鎮痛薬)へ移行するわけではありません。
神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン上、モルヒネ、フェンタニルなどのオピオイド鎮痛薬は「第三選択薬」の位置づけです。
そのため、トラムセットが効かない場合はリリカ(プレガバリン)やデュロキセチンなどの「第一選択薬」の切り替え・併用を優先します。(文献4)
トラムセットの用量・飲み方の見直し、神経障害性疼痛治療薬の併用や切り替え、運動療法、再生医療など、モルヒネ以外にも選択肢は多数存在します。主治医と相談の上、最適な治療法を模索しましょう。
参考文献
慢性疼痛治療ガイドライン|厚生労働行政推進調査事業費補助金慢性の痛み政策研究事業「慢性の痛み診療・教育の基盤となる システム構築に関する研究」研究班
神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン改訂第2版|日本ペインクリニック学会
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