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膝へのヒアルロン酸注射が効かなくなった!その原因と対策 はじめに 膝のご病気をかかえている方で、定期的に膝にヒアルロン酸の注射を行っている方は非常に多いです。その中で、『最初は注射すると膝の痛みがひいたのに、最近は効かなくなってきた』『注射しても効かないどころか、余計にひどくなった気がする』という経験をしている方も少なくないと思います。 膝のヒアルロン酸注射が効かなくなる原因と、効果が乏しいときの対処法について紹介していきます。 膝のヒアルロン酸注射について 『ヒアルロン酸』とは、水分をたくさん含む物質で、我々の身体の色々な場所で様々は役割を担当している物質です。目や皮膚に対しては潤いを保つように働きかけています。関節の中では動きをよくする潤滑油のような役割を担っています。 ヒアルロン酸を治療のために使用する場面はたくさんあります。眼の乾燥にもヒアルロン酸の目薬を行いますし、最近では美容目的に皮膚にヒアルロン酸の注射を行うこともあります。 たくさんの用途に用いられるヒアルロン酸ですが、膝にヒアルロン酸の注射を行う必要がある病気もたくさんあります。その中で、変形性膝関節症などの病気が代表的で、膝にヒアルロン酸注射を行うことの一番の目的は、膝の関節の動きを滑らかにすることです。 もともと、膝の関節の中はヒアルロン酸をたくさん含んでいる滑液という物質で満たされています。この滑液という液体が膝の滑らかな動きを保つのに重要な役割を担っています。 しかし、年齢を重ねることや、外傷や他の疾患などの影響で、滑液の中のヒアルロン酸の量が減ることがあります。ヒアルロン酸の量が減ってくると、膝を滑らかに動かすことが難しくなってしまいます。すると、膝にある骨や軟骨がこすれて、次第に膝に痛みが出現するようになります。 そのような際に、ヒアルロン酸注射を膝に行うことで、膝の動きが滑らかになり、痛みも軽減するのです。 ヒアルロン酸注射が効かなくなる原因 変形性関節症の初期ではヒアルロン酸注射を行うと動きも滑らかになり痛みも速やかに改善することが多いです。 しかし、病気が進行し、膝の変形が重度になってくると、ヒアルロン酸注射をしても効果が得られなくなります。もともと年齢を重ねると進行してくる病気なので、誰でも変形が強くなることは起こりますが、体重が重かったり、もともと運動習慣がなかったりすることも、変形が進行する原因になると言われています。 また、膝自体に炎症があるときはヒアルロン酸の注射は効かないことが多いです。さらに膝に感染があるときは、ヒアルロン酸注射をすること自体が余計に症状を悪化させてしまうこともあります。 膝の変形性関節症の重症度や膝の組織を評価するために、病院では、レントゲン検査やM R I検査などの画像検査が行われます。 M R I検査では、膝の軟骨や靭帯、半月板という組織が傷ついていないかも診ることもできるため治療方法の選択をするためにも非常に重要な検査です。 膝へのヒアルロン酸注射が効かなくなったら ヒアルロン酸注射は徐々に効かなくなるときがあります。そのためまず、ヒアルロン酸注射以外の治療法を併用していくことも大事です。まず、膝変形性関節症には、病院に受診しなくても自分自身で行える治療がたくさんあります。体重が重い方については、体重を減量することも治療のために非常に重要です。 その他には運動療法を実施することも非常に大事であると言われており、規則正しい有酸素運動や筋力トレーニング、関節可動域運動を実施して継続していくことが大事です。膝をサポーターで保護することや、テーピングを実施することも推奨されていますので実施していくのがよいでしょう。 また、超音波を用いて行う超音波療法や、温める温泉療法なども推奨されています。 膝に炎症があるときは、ヒアルロン酸の注射ではなく、ステロイドという薬を膝に注射する必要があることもあります。また炎症を抑える薬を飲む必要があることもあります。 重症になってしまい、注射が効かない状態になると手術が必要になります。手術では人工関節と言い関節の代用となる部品を、実際の関節の変わりに埋め込むという治療が行われます。そのため、皮膚を切って開く必要があるため、全身麻酔で手術が行われます。 全身麻酔とは寝た状態で手術を行う麻酔の方法なので、患者さんの目が覚めた時には手術は終わっています。手術は、傷口が感染しないか、麻酔によるアレルギーなどがないかを診るためにも入院で行われます。 入院自体は数日〜数週間の期間のことが多いですが、もともとの歩行状態に戻るためには膝のリハビリが必要で、数ヶ月程度のリハビリが必要になります。最近では手術の代わりにPRP療法という新しい治療が行われることもあります。 これは、患者さんの血液から抽出した『多血小板血漿(P R P)』を傷んでいるところに注射する「再生医療」です。 PRP療法は副作用もほとんどなく、手術を行う必要もないので、非常に安全に行え、傷も残りにくく、入院の必要もないので患者さんの負担は非常に少ない治療法です。 まとめ・膝へのヒアルロン酸注射が効かなくなった!その原因と対策 膝へのヒアルロン酸注射は膝の動きを滑らかにするために非常に有用な治療法です。 しかし、患者さんによって効果が得られない状態かもしれないので、効果が乏しいのに漫然と注射を行うのは良くないでしょう。ヒアルロン酸の注射以外の治療が必要な時もあります。 ヒアルロン酸の注射の効果が減ってきなと、感じている人は、漫然と治療を継続するのではなく、医療機関をはじめ、かかりつけ医など、専門家の評価を受けて、適切な治療に切り替えを検討してはいかがでしょうか。 No.073 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療が膝の治療を変える! 変形性膝関節症や半月板損傷、その他膝の不具合や痛みに新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療
2022.06.30 -
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膝に溜った水を抜いたあとに、注意しておきたいこととは 多くの方を悩ませる「膝の痛み」。 膝痛の症状が長期にわたると日常生活に支障をきたすようにもなってきます。このような膝の痛みを抱える方によくある症状のひとつに「膝に水が溜まる」というものがあります。 この症状のある方は医療機関を受診した際に膝に溜った水を抜く処置を受ける場合が往々にしてあります。この記事では、主に膝に溜った水を抜いたあとの注意点について医師が解説したいと思います。 なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 ・膝の水はなぜ溜まるのか? 膝の関節は、関節包というもので覆われ、更にその中には、滑膜と言われる膜があり、関節がスムーズに動くための潤滑油のような役割を果たす「関節液」が存在します。この関節液は、健常者においても常に作られながら吸収され、一定の量になるように調整されています。 これが半月板損傷や、変形性関節症など関節の炎症をはじめとして、骨折や何らかの感染や外傷、靭帯損傷、痛風、偽痛風、関節リウマチなどといった原因により関節液が作られるスピードが吸収されるスピードを超えてしまうことがあります。 これにより「膝に水が溜まる」という症状が起こります。 膝に水が溜る原因 ・半月板損傷 ・変形性関節症 ・何らかの関節の炎症 ・骨折 ・何らかの感染や外傷 ・靭帯損傷 ・痛風、偽痛風 ・関節リウマチ ・膝の水はどういう時に抜く? 膝の痛みで医療機関を受診した際に膝の水を抜くことがありますが、医療用語でこの診療行為を「関節穿刺」といいます。この関節穿刺には主に診断と治療の2つの目的があります。 ①関節液が溜まる原因を調べる(診断): 膝に水が溜まる原因はさまざまで、その原因によって適切な治療が変わる可能性があります。関節液を採取し検査することで膝に水が溜まっている原因を知る目的に関節穿刺を行う場合があります。 ②関節の痛みを和らげる(治療): 膝に水が溜まると、その溜まった水が膝の痛みをより悪くする可能性があります。そのため、関節液を排出したり、状況に応じて関節内注射を行い症状を和らげることがあります。この治療目的に関節穿刺を行う場合があります。 膝の水を抜いた後の合併症 関節穿刺を行った後に注意することは、関節穿刺によって起きる別の症状や病気、つまり合併症です。関節穿刺後の一般的な合併症について解説します。 ①感染 通常、関節内は無菌状態が維持されています。しかし、関節穿刺を行うことで体の表面にいた細菌が関節内に移行することがあります。細菌が関節内に移行し感染を起こすと、膝が赤く腫れたり、熱持ったり、痛みを伴うことがあります。 通常、関節穿刺を行った後数時間は穿刺を行ったことによる痛みが生じることがありますが、これが長引く場合はこの感染の可能性があります。一般的な目安としては48時間以上持続する症状、48時間以内でも悪化を伴う症状を認めた場合には感染などの可能性を考慮し、可能な限り処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 ②出血 関節穿刺の際に関節周囲の血管を傷つけてしまい出血を起こすことがあります。多くの場合は細い血管の損傷にとどまるため、自然に止まることがほとんどです。仮に穿刺後に貼付していたテープなどを剥がした際に出血が起きても、綺麗なガーゼなどでしばらく圧迫すれば止血されることが多いです。 しかし、他の持病などで血液をサラサラにする薬を飲まれている方やもともと血が固まりにくい病気の方、またより大きな血管を損傷してしまった場合などは自然に止血されないこともあります。圧迫しても止まらない出血の際には速やかに処置を行った医療機関に相談することをお勧めします。 ③その他 そのほかの合併症として、特に関節内に薬剤を注射した場合などに起こりやすいものもあります。例えば、アレルギー反応は通常原因となる薬剤などの物質を投与されてから数時間以内に、発疹・呼吸困難感・腹痛などの多彩な症状を生じる合併症です。 多くの場合は投与後すぐに発症しますので医療機関で発見される場合がほとんどですが、まれに帰宅後に発症することもあります。 血管以外の神経、靭帯、腱などの損傷も稀な合併症の例です。穿刺のみでこれらの組織に重大な損傷をきたすことは稀ですが、薬剤注入などを伴うと症状をきたす可能性があります。 膝の水を抜いた後に注意しておきたい観察項目 関節穿刺後に気になる症状が出現した場合、どこまで様子を見て良いのか判断に迷うことがあると思います。悩んだ場合はまず処置を行った医療機関に相談することをお勧めしますが、一般的な観察項目についても解説します。 ・症状の持続時間が長い: 通常、痛みなどの症状は処置をしたことにより生じたものであれば数時間から1日程度で消失します。しかし、なかなか症状が消失せず持続期間が長い場合は合併症を疑うサインとなります。 ・症状がどんどん悪くなる: 処置からあまり時間が立っていなくても、どんどん悪化する症状は合併症を疑うサインになります。通常徐々に改善する痛みが、ぶつけたなどのきっかけもなく悪くなる場合は速やかに相談しましょう。 まとめ・膝に溜った水を抜いたあとに、注意しておきたいこととは 今回の記事では膝に溜った水を抜いたあとの注意点について解説しました。 症状が出現した際に自己判断で放置せず気になる場合は速やかに処置を行った医療機関に相談しましょう。処置を行った医療機関が時間外などで対応できない場合は夜間救急などの受診を検討しましょう。 No.072 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療が膝の治療を変える! 変形性膝関節症をはじめ膝の障害に対する新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療
2022.06.29 -
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膝の人工関節、手術を決断する前に知っておくべきこと 膝関節に変形や炎症が起きたりする病気があると、膝に人工関節を入れなくてはいけない状態になることもあります。膝の人工関節の手術をする決断する前に、手術の流れや合併症、手術に備えて準備するべきことなどを知ることは非常に大事です。 膝関節とは まず、膝関節とは何かについて述べていきます。膝関節は3つの骨で支えられています。太ももの骨である大腿骨と、すねの骨である脛骨、いわゆる膝のお皿と呼ばれる膝蓋骨の3つです。 その3つの骨と、太ももの筋肉である大腿四頭筋と、膝の腱である膝蓋腱で膝関節をつくっています。これらの3つの骨と筋肉、腱が支え合うことで、私たちが、走ったり、飛んだり、座ったりするときに安定するようになっています。 膝関節の病気 膝関節の病気については様々なものがあります。変形性膝関節症、膝靭帯損傷、関節リウマチなど様々な病気があります。また、スポーツ外傷でも膝の慢性的な障害を起こしたりします。それらの病気の中で、変形性膝関節症や関節リウマチは、変形や炎症が強くなった時に、人工膝関節置換術という、人工関節のための手術を行う必要のある病気です。 変形性膝関節症 変形性膝関節症は、膝が痛くなり水が貯まる病気です。最初は歩き始めに痛い程度ですが、徐々に階段を登ることが難しくなり、最終的には、休んでいる時も痛みが取れなくなるような病気です。 変形性膝関節症では、膝が変形して、伸ばすことができなくなります。変形性膝関節症の治療法は、症状が軽いうちは、炎症を抑える薬を飲んだり、膝関節にヒアルロン酸の注射をしたり、リハビリを行なったりします。しかし、重症になると、人工関節の手術をするか否かの選択が必要になります。 関節リウマチ 関節リウマチは、関節内にある『滑膜』とよばれる組織が、異常に増えることが原因で、関節の中に炎症が起きる病気です。関節リウマチでは身体の中のいろいろな関節が破壊されるので、膝だけでなく、手や足など様々な関節に変形を起こします。 関節リウマチの治療は、抗リウマチ薬や、炎症を抑える薬、免疫抑制剤、ステロイド剤などの薬を飲むことが一番大事です。お薬の治療に併用して、ヒアルロン酸の関節内注射やリハビリなどが行われることもあります。 関節リウマチも治療が遅れたりして重傷になると、人工関節のための手術を行うか同課の選択が必要になります。 膝の人工関節とは 膝の人工関節は、金属や、ポリエチレンやセラミックなどで作られます。変形性膝関節症や関節リウマチなどの病気で、変形し傷ついた膝関節を取り出して、手術によって膝用の人工関節を変わりに入れます。悪くなってた関節を置換えるイメージです。 この人工関節は、膝の動きを再現するために3つの部品から作られています。人工関節の3つの部品は、実際の膝を構成している3つの骨(大腿骨部、脛骨部、膝蓋骨部)の部分をそれぞれ担当しています。 膝の人工関節のための手術 膝の人工関節を入れるためには手術が必要です。手術が必要ということは、もちろん入院も必要です。昨今の新型コロナウイルスの関係で、入院生活は、家族や友人との面会が制限されているところが多いです。 入院前に入院生活のために必要な物品や、家族や友人との連絡手段を事前に決めておく必要があります。手術は全身麻酔をかけて眠った状態で行われます。そのため、麻酔から覚めて、目が覚めると手術が終わっている状態になります。 手術自体は、膝の皮膚を切り開いて、骨が見える状態になったら、器械を使って傷のある膝の部分を削り、人工関節の形に合わせて残りの骨の形を調整します。形の調整ができたら人工関節をはめ込みます。しっかりと固定できていることを医師が確認したら、縫い合わせます。 手術の傷口にたまった血液を出すための管を入れて傷口をふさぎ手術が終わります。手術の時間は、平均2−3時間程度のことが多いですが、もともとの病気や膝の状態に応じて手術の時間は変わってきます。 膝・人工関節の手術後 手術が終わればすぐに退院できるという訳ではありません。手術した関節を安定させるために、リハビリを開始します。リハビリは手術後の状態に応じて開始時期が異なりますが、早ければ手術翌日から段階的に始めることが多いです。 リハビリは、寝たまま膝を伸ばしたりして筋力をつけることから始まり、だんだんと平行棒などを使用したり、歩行器などで歩く練習などへと移行していくのが一般的です。 外来通院でリハビリを実施できる患者さんは退院が早くなりますが、外来に通院するのが難しい患者さんは、手術した病院からリハビリ専門の病院に転院してリハビリを行うことになります。 そのため入院期間は患者さんによって異なりますが、多くは2週〜4週くらいのことが多いです。 膝・人工関節手術の合併症 人工関節のための手術で一番気をつけなくてはいけないのが、手術した場所に悪い菌が感染することです。感染すると、腫れたり、発熱したりします。 手術した場所に感染が起きると抗生物質による治療が行われますが、多くの場合、再び手術のやり直しが必要になることがあります。そのほかには麻酔によるアレルギー反応や、手術によって身体が防御反応を示し、血液が固まりやすい状態になることから血栓症の心配もあります。 手術中はもちろん、手術後にじゃ身体を動かすことができないことから、血の流れが滞ることで静脈内に血栓という血液が固まったものができる事がああります。これが深部静脈血栓症です。この血の塊が血液の中に混じって肺へ移動することで、肺の血管を詰まらせることがあります。これを肺塞栓症といい、生命の危機にもかかわりかねないため注意が必要です。 その他、術後としては、人工関節のゆるみや、歩けるようになったことで逆に転倒し、脱臼や、その周りの骨を骨折するという心配もあります。もちろんこれらのリスクには予防法があります。手術に際しては主治医から説明を受け、十分に納得して挑んで頂ければと思います。 人工膝関節手術の一般的なリスク ・最近による感染症(抗生物質、再手術) ・麻酔によるアレルギー反応 ・肺塞栓症、深部静脈血栓症 ・人工関節は、緩むことがある ・転倒による脱臼や骨折の可能性 ・その他 まとめ・膝の人工関節、手術を決断する前に知っておくべきこと 人工関節のための手術のためには入院が必要です。入院期間は短くはなってきましたが1か月ほどは見ておきたいものです。また、手術を行うことによる合併症のリスクもあります。できれば膝に違和感を感じたり、痛みを感じるようになった時には早めにリハビリや投薬などの保存的治療を受けて手術を避けることが一番です。 ただ、既に症状が進んでしまった場合は、しっかりと説明を受けて納得して手術を受けましょう。近年は医学が発達、「再生医療」という新しい先端医療を選択できる道ができました。これ方法なら手術が不要で、入院も不要という興味深い方法です。 手術に不安をお待ちの方は、当院のような再生医療専門の医療機関に問い合わせてみても良いでしょう。いずれにしまして人工関節になると、元には戻せないだけによく理解してお取組みください。 また、昨今は新型コロナウイルスの関係で面会が制限されています。家族と会えない数週間は、患者さんにとって、とても寂しくつらい期間です。手術のために入院する患者さんは、家族や友人とビデオ通話ができるように準備などをしてのぞむのも一つ方法ではないかと思います。 以上、膝の人工関節、手術を決断する前に知っておくべきことについて記載させていただきました。参考にしていただけると幸いです。 No.070 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療が膝関節の治療を変える! 手術不要、入院も必要ない日帰りで治療する膝関節症の新たな選択肢、再生医療
2022.06.21 -
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朝起きると膝が痛い、歩きはじめの膝に違和感を感じたとき はじめに 膝の痛みはしばしば経験する症状であるだけでなく、座る・立つ・歩くといった日常動作に深く関わるためその症状の生活への影響はとても大きいです。膝の痛みを抱える方の中には、朝起きると膝が痛い、歩きはじめの膝に違和感を感じるといった症状を経験する方もいるのではないでしょうか。 この記事では、そのような特徴的な症状を含む膝の痛みを生じる疾患と、その原因および治療法について解説します。なお、本記事では一般的な注意点について解説しておりますので、個別の事象については各自で判断せず医療機関に相談するようにしましょう。 朝起きると膝が痛い、歩きはじめの膝に違和感を感じる 膝の痛みの中でも、このような症状は「関節リウマチ」と、「変形性膝関節症」などの疾患に特徴的と言われています。それでは、なぜこのような症状が起きるのでしょうか。 関節は骨と骨のつなぎ目ですが、そこにはクッションの役割を果たす「軟骨」と、潤滑油の役割を果たす「関節液」があります。関節リウマチや、変形性膝関節症といった疾患ではこの軟骨に障害が及んだり、関節液の量の調整がうまくいかなくなったりする結果、しばらく関節を動かさないと朝起きた時や、動き始めの時にこわばりや、痛みを感じることがあります。 関節を動かしてしばらく経つと、関節液の量が自然に調節されて症状が改善することがあります。ここからは、これらの主な原因となる関節リウマチと変形性膝関節症について解説していきます。 関節リウマチ 関節リウマチは膝を含む全身の関節に起こる炎症を特徴とする疾患で、その原因には不明なところが残っているものの、関節組織に対する自己免疫の関与が考えられています。一般的には手足の指の関節から始まることが多く、左右対称制の症状、朝のこわばりなどの典型的な症状が知られています。自己免疫の関与が考えられている関節リウマチですが、関節外に目や血管に症状をきたすこともあります。 関節リウマチの診断 関節リウマチの診断は、関節症状などの病歴だけでなく、レントゲン上での関節腔の狭小化などの所見、全身の炎症を反映した血液検査でのリウマチ因子・特殊抗体などを総合的に判断してなされます。関節炎などの症状が出た場合は整形外科などへの受診をまずは考えますが、関節リウマチは膠原病内科やアレルギー内科などが専門となることがあります。適切な診療科も含めて、気になる症状がある場合はかかりつけまたは最寄りの医療機関に相談してみましょう。 関節リウマチの治療 自己免疫の関与が考えられている関節リウマチの治療法は、消炎・鎮痛といった一般的な関節痛にも共通する治療だけでなく、過剰な自己免疫を制御する免疫調整薬の使用が必要になることがあります。このような治療は専門家の詳細な評価を必要とする場合が多いため、かかりつけ医の意見をよく聞いて治療を進めるようにしましょう。 変形性膝関節症 変形性膝関節症は主に加齢により発症すると考えられており、膝関節の痛みやこわばり、関節可動域の制限などといった症状が認められます。変形性関節症は膝以外にも手足や脊椎に発症することもあります。 変形性膝関節症の診断 典型的な症状や病歴があれば必ずしも画像などによる検索は必要ではないとされていますが、非典型的な症状を伴う場合には同様の症状をきたす別の疾患を想定して画像検査や血液検査を必要とすることがあります。 レントゲンでは関節腔の狭小化や骨棘などといった所見を認めることがありますが、血液検査では変形性膝関節症に特徴的な所見はないとされています。 変形性膝関節症の治療 変形性膝関節症は基本的には加齢による変化であり、痛みの制御を目的とした治療が主眼となります。具体的には消炎・鎮痛薬の使用を症状に応じて行うことになります。しかし、加齢による変化そのものは不可逆性のため、消炎・鎮痛薬の使用で症状がコントロールできない場合などは人工関節置換術といった手術による治療を考慮することもあります。 関節リウマチと変形性膝関節症の違い 今回紹介した関節リウマチと変形性膝関節症は同じ膝関節の痛みを生じる疾患ですが、異なる特徴もあります。症状については、一般的には関節リウマチは関節を動かさないと症状が悪化するという特徴があるため、朝のこわばりが特徴になります。一方で変形性膝関節症は関節の疲労で症状が悪化するため、夜のこわばりが特徴と言われています。 また関節リウマチは全身の炎症を起こすため血液検査で異常が出ることがありますが、変形性膝関節症に特徴的な所見はないとされています。 まとめ・朝起きると膝が痛い、歩きはじめの膝に違和感を感じたとき 今回の記事では朝起きると膝が痛い、歩きはじめの膝に違和感を感じたときに想定される疾患である関節リウマチと変形性膝関節症について解説しました。 この二つの疾患は類似点もありますが診断や治療など、大きく異なるものもあります。より詳しく知りたい場合は既に受診している、または最寄りの医療機関に問い合わせることを推奨します。 No.067 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療で膝の痛み、違和感を治療する 膝の違和感への新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療とは
2022.06.17 -
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- 変形性膝関節症
膝が腫れているときに考えられる病気とは はじめに 日常生活において両足を揃えて左右を比較してみた際に両膝の大きさや形が異なっているのに気づいたことはありませんか。 また、膝が腫れてその部分に発赤所見や熱成分を認める、そして膝が急に痛みを覚えてよくよく見てみると腫脹がひどくなっているという経験をした方も少なからずいらっしゃるでしょう。 膝という人体組織は、太ももに位置する大腿骨、足のすねに存在している脛骨や腓骨、そしてお皿と呼ばれる膝蓋骨などの筋骨格系に関するパーツが組み合わさって出来ています。 膝は普段の生活を送る、もしくは運動を実行する際などに膝を曲げ伸ばしを行う動きを司り、上半身などの体重を支える重要な役割を有していますので、その膝が腫れて痛くなると、どうしても日常生活に支障をきたすことに繋がっていきます。 そこで今回、「膝が腫れているときに疑うべき病気」と題し、それらに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 膝が腫れているときに考えられる病気とは 変形性膝関節症 膝が腫れて痛む有名な病気としては「変形性膝関節症」が挙げられます。 変形性膝関節症は、加齢や遺伝的要因、もしくは肥満による重量増加が引き金になる膝関節への過度な負担によって関節部の炎症や変形を生じさせて、膝の痛みや腫れなどが引き起こされる病気と認識されています。 この疾患では、ひざ部分における関節軟骨が摩擦や摩耗などですり減ることによって膝部位に強い痛みが長期に渡って自覚される病気であり、年齢を重ねれば重ねるほど病状が進行して安静時にも痛みが緩和されずに歩行することすら困難になる進行性のある病気です。 変形性膝関節症の直接的な原因は、先にあげた加齢、肥満以外にも、O脚、閉経してからの女性ホルモンの変動などが挙げられるほか、日常生活において布団の上げ下ろしなど、膝の曲げ伸ばしを頻繁に行う行為や、正座を長時間保持するなどといった動作を日常的に行うことによってひざに負担がかかる場合に起こりやすくなります。 半月板損傷 膝の腫れを伴う症状として、「半月板損傷」も疑われます。半月板は膝関節の中にある三日月の形をした軟骨組織です。膝の内と外に2枚あって、走る、歩く、跳ねるなどの動きからくる負荷を和らげるクッションとしての役割があり、膝の安定性に欠かせない存在です。 半月板損傷の原因は、スポーツや事故などで急激な負荷や、強い衝撃、無理な動きがあった場合に傷つくことがあります。これが「半月板損傷」といわれるものです。また加齢によって組織がもろくなって起こる場合は先天的に症状を持っている場合があります。 関節リウマチ 次に、膝が腫れやすい代表疾患として「関節リウマチ」があります。「関節リウマチ」という病気は、自己免疫の異常が原因となって関節部位で炎症が引き起こされて、その結果として膝の腫れや強い痛みを自覚するものです。 この疾患では、軟骨や骨組織が「免疫異常」によって攻撃されることで関節部が破壊され、変形し、健常な関節機能が喪失する病気であることが知られており、その罹患患者数は我が国で80万人程度存在すると伝えられています。 一般的に、女性に多く発症し、発症年齢としては30代~50代前後という、若年から中年層がメインです。初期段階では手足の指の関節が左右対称性に腫れあがり、それ以外にも発熱や倦怠感など全身症状を自覚することもがあります。 以前は関節リウマチに対する治療薬も限定的でありましたが、最近では生物学的製剤などの薬品開発が進歩しているため、できるだけ早期から治療に入いることができれば炎症所見を改善させて膝関節の機能の回復を見込めるようになりました。それによって日常生活内のQOLが向上することが期待することができます。 痛風 次に、膝関節部が腫脹を認める疾患として、「痛風」が考えられます。 生体内で尿酸成分が過剰に貯留されると、膝関節を始めとする関節部位に尿酸の結晶がたまることで、その部分に炎症を引き起こして腫れを生じます。 尿酸と呼ばれる成分はビールや甲殻類などに多く含まれる「プリン体」が体内で分解されて形成されるものです。この尿酸の血液中における濃度が高値である状態が慢性的に継続すると、関節内で結晶化してしまい、この結晶化した尿酸を白血球が破壊処理する反応に伴って炎症を引き起こすと考えられています。 昨今の医療技術の進歩によって良好な薬剤も開発されており、的確な治療を実施すれば健康な生活を送ることができますが、痛風状態を放置すると関節部の激痛を引き起こして膝の腫れをきたすなどを繰り返し、全身的に痛風結節と呼ぶ「こぶ」が表れ運動機能障害が起こるほか、最終的には腎不全にまで進行する可能性があるため、放置することなく、十分に手当することが大切になります。 痛風の原因となる尿酸値は、食事に大きな影響を受けるため、カロリーの高い食事や、アルコールの採りすぎなどに注意が必要です。食生活全般にわたり見直し、改善を行いましょう。 また、肥満を防ぐ意味でも、代謝を整える意味でも適度なスポーツは有効です、ただ激しいスポーツは逆効果になることもありますので注意が必要です。 その他 その他にも、膝靭帯損傷、血友病、オスグッド・シュラッター病などが考えられます。また、日常生活に関する習慣性によって膝が腫れる場合も考えられています。 普段から立ち仕事が多かったり、スポーツで膝への負担が多い場合、膝の痛みや、腫れを発症することがありますので、適当なタイミングで休憩するよう気を付けましょう。その際に、ストレッチや体操などを少しであっても挟むなど、工夫することで膝を定期的にケアするよう心がてください。 最後に肥満状態は、膝に大きな負担をかけています。肥満による体重増加は、膝の腫れを悪化させる大きな要素と考えられていますので、年齢を重ねても健全で安定した膝の良好な状態を維持するためにも適正体重を保つように注意しましょう。 まとめ・膝が腫れているときに考えられる病気とは 今回は膝が腫れているときに考えられる病気について詳しく解説してきました。膝の腫れをきたす原因の多くのは、関節疾患や骨の病気、外傷など様々です。 ふと膝が腫れていることを自覚した際には、かかりつけ医など医療機関を受診し、担当医に症状出現前後のイベントや出来事はあったか、そして普段からスポーツを活発に実践しているかどうか、あるいは膝に負担がかかりやすい仕事や、習慣、スタイルを送っていないかなどを詳細に伝えてください。 また、急激に膝部分に激しい痛みを覚えて、腫れを認める場合、そして日常動作をする際やスポーツ運動時に膝が腫れて痛みが悪化するようなケースでは、「無理に膝を動かさずに安静を保つ」ように努めて早期に専門医を受診することが重要です。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 No.060 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療で膝の治療を行えることを知っていますか?! 膝の痛みなどの悩みに対する新たな選択肢、再生医療について
2022.06.07 -
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幹細胞治療とPRP療法(再生医療)で治療する膝の痛みの治療法! このページでは変形性ひざ関節症について解説します。「変形性ひざ関節症」は、実は全国で3千万人ぐらいの方が悩まれている膝の病気です。ここでは、その症状だったり治療の仕方、そして最新の治療法である再生医療(幹細胞治療とPRP療法)について詳しく解説してまいりましょう。 変形性ひざ関節症は男性より女性がなりやすい! ご存知ですか?!変形性ひざ関節症は、全国で約3千万人の患者さんがいるのですが、男女比でいうと1対4と、圧倒的に女性の方が男性より多い症状なのです。 以下は、この膝の症状に対する先端医療である再生医療を解説しています。それは幹細胞治療とPRP治療と言われるものです。ご一読いただければ変形性膝関節症を治療するための新たなアプローチ方法をご理解いただけるはずです。 変形性ひざ関節症になる原因 変形性ひざ関節症のメカニズム・原因は、関節にある軟骨に起因します。具体的には次のようなものがあります。 ・年齢を重ねることによる摩耗 ・体重増加による負荷 ・O脚変形 ・遺伝性の軟骨の柔らかさの影響 年齢を重ねるにつれて軟骨が摩耗したり、体重が増えて負荷がかかると軟骨がどんどんすり減っていきます。それ以外にも、例えばO脚変形と呼ばれる、少し膝がO脚になっている方も原因になりやすいです。あとは遺伝性、つまり生まれつき軟骨が柔らかい方もいらっしゃいます。 このように、軟骨がすり減ってなくなってくると、いよいよ関節が変形して炎症を起こしてしまい、出歩くときに膝が痛かったり、あとは関節に水がたまり動きにくくなるという状態になります。 これがいわゆる変形性ひざ関節症です。 変形性ひざ関節症の症状 次に、変形性ひざ関節症の症状についてお話をしていきます。 変形性ひざ関節症になると、 ・立ち上がり時に膝が痛かったり ・階段を下りるときにも膝が痛かったり ・水が溜まって膝が腫れてしまって、正座が出来なくなったり、曲げにくかったり などと、いろんな症状があります。私が診ている患者さんの中でも、このような症状を訴えてこられる方々が、たくさん来られます。 ただ、その中でも、膝の中に水がたまってしまい、抜いても抜いても水がたまり続けてしまう方もいらっしゃいます。また、ヒアルロン酸を打っても一日や二日しか、持たなかったり、ほとんど効かないという方も大勢いらっしゃいました。 従来ならば、こういた水が溜り続ける、注射が効かない患者さんには「手術をしましょう」という話になってきました。ただ、いきなり手術となると抵抗感もあり、どうしたらいいのかと、困られている患者さんもたくさんおられました。 ・水もたまる、注射が効かないし、手術もしたくない・・・ そこで、最近注目されている再生医療という治療があります。 再生医療という新たな選択肢 そこで、この「再生医療」という新たな治療法について解説していきます。再生医療には大きく分けて2つの治療方法があります。まず1つは自己脂肪由来の幹細胞治療、そしてもうひとつはPRP治療です。 自己脂肪由来の幹細胞治療 まず自己脂肪由来幹細胞治療方法です。これは今、最先端の治療方法です。私は初めてこの治療法を知ったとき、今までの治療概念を覆されました。それほど驚きを覚えたのです。 どういうものかと言いますと、自分の細胞を少しだけ取り出します。その取り出した脂肪の中には「幹細胞」といわれる細胞があって、この幹細胞が身体のいろんな組織に変化する性質持っていて、その性質を活かして治療を行う方法です。 取り出した幹細胞は、約1ヶ月間くらいかけて培養し、たくさんの幹細胞に増殖させることができます。その培養した、たくさんの幹細胞を膝に入れることによって、幹細胞が変化し、失われた軟骨が出来上がったり、壊れた素子が修復されたりします。 これがいわゆる「幹細胞治療」です。 PRP治療 そして、もう一つの「PRP治療」を解説しましょう。 まず自分の血液を採取し、その中から血小板成分を取り出します。この血小板成分は、自分の壊れた組織を修復する能力があります。その特性を利用するため、血小板成分を凝縮して高濃度の血小板成分として取り出し、それを体に戻すことによって、壊れた組織を修復する能力を促します。 これが「PRP治療」です。 ▼こちらも合わせて読んでおきましょう 変形性膝関節症のPRP療法|その治療効果と体験談 まとめ・幹細胞治療とPRP療法、再生医療で治療する膝の痛みの治療法 変形性ひざ関節症は、次のような原因で軟骨がすり減ることで起こります。 ・年齢を重ねることによる摩耗 ・体重増加による負荷 ・O脚変形 ・遺伝性の軟骨の柔らかさの影響 従来はヒアルロン酸の注射や手術によって治療されてきましたが、最近再生医療(幹細胞治療・PRP治療)という新たな選択肢が登場しています。興味のあるかたはぜひお近くのクリニックへご相談してみてください。 以上、幹細胞治療とPRP療法、再生医療で治療する膝の痛みに対する治療法ついて記させていただきました。 ▼こちらも合わせて読んでおきましょう 膝関節の痛み!そんな時、どういった病気が疑われるのか No.050 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療が膝の痛み!変形性膝関節症の治療を変える! 変形性膝関節症の新たな選択肢、再生医療の幹細胞治療で手術せずに症状を改善
2022.05.12 -
- ひざ
- 半月板損傷
- 変形性膝関節症
- 前十字靭帯
膝関節が痛い!そんな時、どういった病気が疑われるのか 日常生活において、膝に痛みを覚えたり違和感を自覚したことはありませんか? そもそも、膝関節という部分は大腿骨、脛骨、膝蓋骨と呼ばれる3種類の骨形成群が組み合わさって構成されています。私たちが膝を曲げ伸ばしするということは、脛骨の上を大腿骨が前後になめらかに転がっている状態だということになります。 これらの骨表面には弾力性に富んだ柔らかい軟骨というクッションで覆われており、同時に大腿骨と脛骨の間に位置する半月板と呼ばれる部分も膝関節にかかる物理的な衝撃を吸収するという役割を果たしています。 膝関節の痛みを抱えている人にとって、膝に関する正しい知識を知り、日々の適切なケアを継続することによって疼痛症状を緩和させることが期待できます。 今回は、膝関節の痛みを感じた際には「どういった病気が疑われるのか」、そして膝関節の痛みを自覚するようになった場に「どのような対応策があるのか」という2つの観点から解説してまいります。 膝関節の痛みは、どういった病気が疑われるのか 通常の場合には、膝関節の痛みを生じさせる代表的な病気には、「変形性膝関節症」と言われるものが最も多く、その他、運動などのスポーツ障害として「半月板損傷や、前十字靱帯損傷等」などが良く知られ、一部に「関節リウマチ」という場合もあります。 「膝の痛む」ときに多い疾患 変形性膝関節症 関節リウマチ 膝骨壊死症ほか 半月板損傷 前十字靱帯損傷等 後十字靱帯損傷 内側・外側々副靱帯損傷 離断性骨軟骨炎 関節ネズミ オスグッド病 軟骨損傷ほか 変形性膝関節症について、 これは加齢によることが多く、原因としては、年齢を重ねるごとに軟骨が少しずつ摩耗し、半月板が損傷、炎症が起こり関節の変形がみられるようになることです。 変形性膝関節症の初期段階では座った状態から立ち上がる瞬間や歩行動作を開始する時などに限定して膝の痛みを感じますが、休息すれば自然と症状が改善する傾向にあります。 ところが、病状が進行すると正座の姿勢を取る、あるいは階段を昇り降りすることが困難となり、さらに悪化すると安静にしている時でさえも膝の痛みがとれずに膝関節の変形が顕著になると歩行することが出来なくなってしまう怖い病気です。 本疾患における原因としては加齢に伴って膝関節内の軟骨組織が老化することのみならず、肥満体形であることや、元々の遺伝的素因、そして膝関節周囲における骨折病変や半月板損傷を始めとした外傷などの後遺症として発症することが往々にしてあります。 変形性膝関節症は進行性の病気で元の状態に回復させることが困難な病気です。いかに現状の状態を維持できるかといったことが治療の主眼となり、保存療法を中心としたリハビリが有効な治療法となります。 ただ、最終的には「人工関節」という選択を迫られる時がまいります。そのため、膝に違和感を感じたら、早めに病院等にて診察を受け、リハビリ等にて進行を、できるかぎり遅らせるようなお取組みが必要です。 関連記事 変形性膝関節症の人がしてはいけない仕事とその理由 関節リュウマチは、 膠原病という自己免疫が関連した病気で膝関節のみならず手指、手関節、肘関節などを中心に身体のあらゆる関節で炎症が引き起こされる病気です。 関節リウマチを引き起こす要因としては未だに明確なことは判明していませんが、どうやら生体の自然免疫システムが発症に深く関係していると言われており、病状が悪化するメカニズムは最近の医学研究などによって少しずつ明らかになってきています。 本疾患における初期症状としては関節自体に炎症が起こることに伴って関節部の腫れが認められ、それが膝部分で発症すると膝関節部の痛みが出現することになります。 さらに病状が進行してしまうと関節を構成している骨や軟骨などが破壊されることによって関節が変形して屈曲拘縮や関節脱臼など日常生活に多大に支障をきたす症状を自覚することに繋がっていきます。 ▼合わせて読みたい 関節リウマチ放置してはいけない!初期症状と治療法 膝骨壊死症 骨壊死の特徴として、急な痛みがあります。病気が進行することで徐々に痛みが進行していく変形性膝関節症とは違って骨壊死は、急に、突然に痛みが発症する場合が多いと報告されています。 原因としては、軟骨の土台になっている軟骨下骨に微小骨折が生じて骨の壊死が発症していくと推測されています。夜間など寝ている時や、体を動かしていないのに膝の痛みがある場合に膝骨壊死(大腿骨内顆骨壊死、脛骨内顆骨壊死)が考えられます。 半月板損傷、前十字靱帯損傷等 これらの損傷は、比較的若い世代で起こることが多く、運動や、スポーツによって強い力を受けたときに生じる外傷によって膝の痛みがみられる場合に疑われます。 半月板損傷などは、年をとって弱くなった半月板に力が掛かると損傷することもあります。この場合は、日常の軽い怪我、転んだりした場合にも起こるため、年齢を重ねた場合は転倒や、つまずきに注意すべきでしょう。 半月板損傷や前十字靱帯損傷、軟骨損傷などでは膝が伸びないロッキングと言われる症状が出ることがあったり、膝が痛みと共に、曲がらなくなったり、走れなくなる場合があります。 また、前十字靭帯損傷には完全断裂や部分断裂、弛緩といった症状があります。前十字靭帯は、膝関節の脛骨と大腿骨を繋いでいる靱帯で、この部分に強い力が加わることで断裂や伸びてしまったりして損傷が起こります。 この症状はスポーツや運動を行うことで発症することが多く、サッカーやラグビー、バレーボール、バスケットボール、スキーやスノボード。柔道や空手などの格闘技等、激しいぶつかり合いやジャンプしたり、急な捻りが起こったり、転倒が起こることで損傷することが多く見られます。 ▼こちらも合わせてご覧ください 半月板損傷は自然には治らない/その症状と治療法 膝関節の痛みを自覚する病気になった時の対応策 膝関節痛の原因が変形性膝関節症の場合には、 日常生活において、ふとももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛えて、出来る限り「正座」の姿勢を取らないように心がけましょう。 また、肥満気味と指摘されれば食生活を見直して運動習慣を持って減量に努める、また膝部分を冷房などで極力冷やさずに血行を良好に保つ、そして和式トイレで長時間膝を屈曲した状態を保持せずになるべく洋式トイレを使用するように認識しておきましょう。 変形性膝関節症を患った患者さんの場合、膝関節の痛みが軽度であれば鎮痛剤を内服するあるいは湿布などの外用薬を貼付する、あるいは膝関節内にヒアルロン酸を注射する処置を実施することもあります。 その上で並行して大腿四頭筋を強化するリハビリ訓練を受ける、関節可動域を改善させるための理学療法を実践する、膝を温める物理療法を試みる、あるいは膝関節にかかる負担を補助するための足底板や膝専用装具を作成するなどの工夫策を組み合わせてみましょう。 これらの保存的な治療でも症状が改善しない場合には関節内視鏡手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術などを中心とした手術治療を考慮することになります。 関節リウマチ疾患の治療は、 膝関節の疼痛症状のみならず発熱や体重減少などの全身症状を合併することも多いため、病状の活動性が盛んな際には絶対的安静も必要になるでしょう。 本疾患の病状進行度は患者さん自身の日常生活の習慣と密接に関与していると考えられているため、周囲のサポート環境がリウマチ患者さんに日常生活指導を実践して生活習慣を改善させることで膝関節の痛みなどを代表とする症状を軽減させる効果が期待できます。 普段の食生活においてはタンパク質やビタミン成分、そして微量ミネラル元素などを中心にバランスに優れた食事内容を摂取することをお勧めしますし、体重が増加し過ぎて肥満にならないように心がけることが重要な観点となります。 関節リウマチに対する薬物療法としては、抗リウマチ薬や生物製剤を用いた免疫療法、ならびに原疾患に伴う炎症所見や痛みを緩和させる非ステロイド系鎮痛消炎剤などを用いた対症療法が主流となります。 膝関節における屈曲制限などを含めた機能障害の重症度によっては、その機能を回復させることを主目的として滑膜切除術や人工膝関節置換術などの手術療法を検討するケースも考えられます。 前十字靭帯損傷の治療について 損傷が起こった場合は、リハビリを中心とした運動療法を中心に理学療法、装具療法等の保存療法を行います。それでも症状が改善しない場合は、手術療法を検討することになります。 手術療法には、関節鏡視下にて行う低侵襲の手術であるため、術後の回復も早く、スポーツの場合では競技への復帰、また社会への復帰も早く見込めます。 ただし、注意点としては、靭帯損傷で適切な治療を行わないままに運動や、スポーツを継続すると半月板等、周囲の軟骨を損傷することとなりかねません。そうなると変形性膝関節症に移行しかねない危険性があります。 上記、どんな症状であっても初期の治療が非常に大切です。また、治りきらないまま放置したり、運動を行うのは危険であることをご理解いただければ幸いです。 まとめ・関節の痛み!そんな時、どういった病気が疑われるのか 膝関節痛を来す病気として代表的なものは変形性膝関節症や、半月板損傷、前十字靱帯損傷、関節リウマチが挙げられます。 これらの関節疾患に罹患した場合には、疼痛症状の度合い、病状の進行度、日常生活における支障度などにはそれぞれ個人差があるので、個々のケースに応じて状態を評価して綿密な治療計画を立案する必要があります。 これらの病気に対する治療や予防に関しては、まずは膝関節を含めて自分の身体の状態を適切に知ることが重要です。その詳細な症状や具体的な治療法、薬剤効果などを本人や家族自身が十分に向き合って理解することが重要な視点となります。 膝に痛みや違和感などがあって心配であれば、最寄りの整形外科クリニックや専門病院などの医療機関を受診して相談されることを検討しましょう。 以上、関節の痛み!そんな時、どういった病気が疑われるのかについて記載しました。今回の記事、情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼こちらの動画も是非ご覧ください https://fuelcells.org/channel/12570/ No.S074 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療の幹細胞治療で膝の関節症を治療する 膝に起こる各種関節の問題を再生医療の幹細胞治療で手術せずに症状を改善する
2022.04.18 -
- ひざ
- 変形性膝関節症
鵞足炎と変形性膝関節症の違いについて はじめに 日常生活において、膝に痛み症状が出現したことはありませんか。 ひざ痛の原因となって膝の部分に慢性的な炎症を引き起こす病気の代表例として、「鵞足炎」や、「変形性膝関節症」という名前が頭をよぎる方もいらっしゃるかもしれませんね。 鵞足炎とは、過度のスポ―ツ活動や運動などによって引き起こされる膝の鵞足部における滑液包炎であると考えられています。一方で、変形性膝関節症とは肥満体形や加齢などに伴って膝の軟骨部分がすり減ることによって膝に強い痛みを引き起こす病気であると知られています。 今回は、鵞足炎や変形性膝関節症が一体どのような病気なのか、また両者の相違点について詳しく解説してまいりましょう。 鵞足炎とは、どういった病気なのか そもそも鵞足(がそく)という言葉は、普段聞き慣れない方も多いかと思います。膝関節の下に存在している脛骨に連続している三個の腱組織の形状がまるでガチョウの足のように見える事から「鵞足」と名付けられた経緯があります。 人体の膝関節は日常生活において頻繁に曲げ伸ばしといった運動が行われている部位です。何らかの原因で靱帯や腱が、膝を屈曲伸展させる際に骨と摩擦することによって時に炎症といた所見を引き起こすことが指摘されています。 その結果として、膝の内側の下方周辺に痛みといった症状を感じた際は、鵞足炎(あるいは鵞足滑液包炎)を発症して痛みを自覚している可能性があります。 この疾患は、普段の生活の中で過度のランニングなどのスポーツ活動によってひざ関節をオーバーユースして酷使する事が発症の原因であることが多いと言われています。 それ以外にも、自分の足に合っていない靴で運動する、あるいは膝部分における怪我などの外傷によっても引き起こされる可能性があります。 ▼鵞足炎についてはこちらも併せてご覧ください 鵞足炎は膝の酷使で起こる、その痛みと治療法 鵞足炎のときの湿布の貼り方【湿布の種類や選び方を解説】 変形性膝関節症とは、どういった病気なのか 変形性膝関節症という病気は、加齢に伴って慢性的、機械的な刺激が膝部分に加わることで骨が変形して発症すると考えられています。特に40代を過ぎた女性に発生することが多く、加齢、肥満、外傷などの要素が変形性膝関節症の発症に関与していると言われています。 変形性膝関節症では、膝の関節内でクッションの役割をしている関節軟骨がすり減って、骨と骨が摩擦を起こして膝関節が変形すると捉えられています。 元来より日本人は一般的にO脚の人が多いとされており、膝が外へずれるために、その内側に負担がかかりやすくなります。こうしてO脚では、外側部分の筋肉と内側の筋肉のバランスが崩れることになります。 悪化すると軟骨がすり減り、痛みが生じるようになります。このように膝関節を支えている半月板も徐々に質が変化して、少しのストレスで容易に切れてしまうことが指摘されています。 膝関節を支持する重要な役割を担っている半月板が切れてしまうとその位置がずれて膝のクッションの役目を果たさなくなり、膝関節の変形につながり変形性膝関節症を罹患することになります。 ▼変形性膝関節症についてはこちらもご覧ください 変形性膝関節症の人がしてはいけない仕事とその理由 膝の痛み/変形性膝関節症のおススメの最新治療法 鵞足炎と変形性膝関節症の違いについて ここまで「鵞足炎」や、「変形性膝関節症」に関する簡単な病気の特徴を紹介してきました。 鵞足炎は、変形性膝関節症と似たような膝の部位に痛みを起こすことから両者は非常に混同されやすい疾患と言えますが、お分かりのように膝部の痛みを引き起こす原因がそれぞれ違っています。 鵞足炎の特性としては、膝関節の少し下に圧痛があり、関節部分の腫れを伴うこともあるものの、骨の変形は基本的には認められない、そして変形性膝関節症と比較して半月板組織のすり減りが原因で起こるのではなく筋肉の炎症によって症状がもたらされるという点があります。 したがって、膝関節における半月板の場所と鵞足部の筋肉部位が違うことと同様に、痛みや炎症を起こしている圧痛点がそれぞれ異なる点で両者を鑑別できると言えるでしょう。 鵞足炎の場合には、根本的に症状を改善していくためには、過剰な膝関節部のオーバーユースを回避して足のねじれを取る工夫をすることが必要となります。 変形性膝関節症においては、大腿骨と、その下の骨である脛骨の間で発症します。典型的な症状として最初は膝関節が強ばるなどの違和感から始まって、徐々に階段を上り降りする際や立ち上がったときに膝が痛むという具合に次第に症状が強くなって悪化していきます。 変形性膝関節症の原因は、関節部の軟骨が加齢で弾力性が低下したり、使いすぎ、肥満などが原因と言われています。 その他にも靭帯損傷や、半月板損傷、骨折などの外的要因によるもの、一部には化膿性関節炎の後遺症としても発症すると言われます。 御存知の通り、膝という部位は体重から受ける負担が大きくかかる場所であり、変形性膝関節症の発症を防ぐためには体重を増やしすぎないようにコントロールすることが重要であり、さらに膝周囲の筋力をしっかりと保持することが膝の負担を減らすために有効です。 また、病院などで変形性膝関節症と診断された方は鎮痛剤などの投薬、湿布貼付が選択肢になることがありますし、関節部に比較的多く水が貯留しているケースでは患部を注射して水成分を抜く処置が必要となることもあります。 鵞足炎について ・膝関節の少し下に圧痛 ・関節部分の腫れを伴うことがある ・骨の変形は基本的には認められない ・原因:筋肉の炎症によって発症する 変形性膝関節症について ・階段の昇り降りに膝関節部分が痛み、進行すると平地での歩行でさえ痛みを感じる ・膝関節が強ばる等、違和感から、徐々に症状が強くなって悪化、進行する ・関節は、変形していき硬くなり、曲げ伸ばしに支障 ・原因:加齢や肥満、靱帯損傷、半月板損傷、骨折等の外傷、化膿性関節炎等の後遺症 まとめ・鵞足炎と変形性膝関節症の違いについて 膝関節部の痛みを呈する病気として代表的なものに変形性膝関節症や鵞足炎が挙げられます。 両者は類似的に膝の痛みを引き起こす原疾患として知られているがゆえに、これまでひざ痛の原因が変形性膝関節症だと思っていた場合でもよくよく調べてみると実は鵞足炎だったという場合も考えられます。 レントゲン検査だけで両者を鑑別することは難しく、正しい診断に繋がらないこともあろうかと思いますので、膝が痛い時には詳細に検査をして確実に原因を精査して的確な治療を実践できれば長期的に悩んでいたひざ痛が改善できる可能性があります。 心配であれば、最寄りの整形外科クリニックや専門病院などの医療機関を受診して相談してみることも考慮してみましょう。今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼こちらも併せてご覧ください No.S069 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療が変形性膝関節症等膝の治療を根本から変える! 変形性膝関節症は、再生医療の幹細胞治療で手術せず、入院不要で改善できます
2022.04.13 -
- ひざ
- 変形性膝関節症
- PRP治療
変形性膝関節症のPRP療法|治療効果と体験談 こんにちは Dr.サカモトです。 今回はPRP療法(PRP治療)が実際どのように行われるかを、患者さんの声を交えながら解説していきます。それでは行ってみましょう! PRP治療での注射方法 PRP治療では、膝のお皿の外から関節の中にめがけて注射をします。膝の関節の中にはちょうど袋がありまして、その中にPRPを注射するという形になります。痛みもそれほど痛いものではないと思います。 PRP療法がオススメの症状 実際どういった方がPRP治療を受けられるかというと、以下のような方がPRP治療を選択されています。 ・保険診療のヒアルロン酸注射が効かなくなった方 ・薬を飲んでも痛みが取れない方 ・スポーツや仕事に早く復帰したい方 ・薬剤アレルギーが怖い方 ・手術を避けたい方 ・長期入院ができない方 PRP療法は短期間で痛みも少ない治療法 PRP治療などの再生医療は、すごく難しいことをするんじゃないの?といった声もよく聞かれますが、実際は大げさなことは何もなく、短時間で痛みも少ない方法です。だから手術も入院も不要という医療分野といえるのです。 実際のPRP治療の流れは、まず腕から少し採血をし、それを特殊な機械で約30分ほど分離します。それを膝の関節に注射をするだけの治療なので、それほど痛いものでもなく時間も30分ほどで終わります。 このようにPRP治療はとてもシンプルなので何か大きな準備をしなきゃいけないだとか何か大変な検査をしなきゃいけないということはありません。特に身構えなくても大丈夫なのでご安心ください。 ▼変形性膝関節症をPRPで治療/その効果を動画で解説 PRP治療の体験談をご紹介 では実際にPRP治療を受けられた方の実例がありますのでご紹介します。 (PRP治療を受けられた女性) 「テレビで再生医療についての特集を見たり、プロ野球選手が再生医療で治ったという話を人から聞いたりして興味はあったのですが、私は車いすの状態だったので、本当に再生医療で歩けるようになるの?と思っていました。 採血をして少し時間を置いて、いつものような膝の注射をしただけだったので、つらい気持ちは全然感じる感じることなく、スムーズに治療を受けられました」 この方は、もともと膝がとても痛くて歩行困難が見られ、ヒアルロン酸の注射をしても1日しかもたないということで、PRPの治療を選択されました。かなり膝の変形も強く、人工関節をしてもおかしくない方だったのですが、手術はどうしても避けたいということで注射をしました。 (PRP治療を受けられた女性) 「PRP注射は6回していただいたのですが、1~3回目に関しても少しずつ効いているなという感じはしていたのですが、4回目のときには杖なしで自分の足で立つことができるようになっていて、 自分でもすごくびっくりしました。『すごく効いた』という実感があってとてもうれしかったです」 はじめ10あった痛みが、4回注射した後には、2か3になり、もともと杖で歩かれていたのですが、その杖も必要ないぐらい痛みが軽快し、ぎこちないながらもスムーズに歩けるようになりました。 その後、数ヶ月様子を見ていましたが痛みの程度が始め10あったものの、2~3に落ちて、その後5ぐらいには戻ってはきましたが、5でとても安定しておられます。 (PRP治療を受けられた女性) 「今までは料理のときも杖をついたり椅子に座ったりしていましたが、PRP治療後は立ったまま料理や家の片付けができるようになりました。 友だちとUSJに遊びにいったり、ひとりで旅行したり色々なところに自分の足でいきたいと思います」 このように色々と個人差はありますが持続期間も長く認めてますので、かなりPRPの効果はあったと思われます。今まで再生医療と出会う前は、このように劇的に注射で痛みが取れるということは考えられませんでした。 PRP治療の注意点 以上、いかがでしたでしょうか? 私もPRP治療でこれほど歩けるようになるのかとビックリしました。PRPは、痛みを取るために非常に有効で、ご自身の血液を使った治療法なので安全性も高く、入院も手術も不要です。患者さん自身も本当に喜んでおられたのが印象的でした。 ただし、知っていて欲しいのは、「PRP療法には、すり減った軟骨を再生する力は無い」ということです。確かに痛みを止める効果には優れていますが「根本的な解決策ではないので注意が必要」です。そのため、いずれかの段階で痛みが戻って来る可能性があります。 痛みを止め、軟骨レベルで再生を目指すなら、同じ再生医療の分野でもう一歩踏み込んだ治療法として「幹細胞治療」というものがあります。これはPRP療法のように即日実施できるというものではありませんが非常に優れた手法です。 もちろん、手術や入院は不要です。 患者さんの脂肪、米粒2~3粒を専門施設で幹細胞を抽出して培養、患部に戻すことで、これまで不可能と言われてきた軟骨の再生を即する手法です。根本的な治療を望まれるな以下で詳しく説明しましたのでご参照下さい。 ▼こちらもご覧ください PRP療法について、そのメリットとデメリットについて まとめ・変形性膝関節症のPRP療法|その治療効果と体験談 いかがでしたでしょうか? 今回は、PRP治療の流れとPRP治療を受けた方の実際の声をご紹介しました。PRP治療が画期的な治療だと思われた方は多くいらっしゃると思います。実際受けてみたい方、そしてまだ疑問がある方はお問合せください。 以上、変形性膝関節症|PRP療法の治療効果と体験談について記しました。PRPはもちろん、幹細胞治療に興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。お悩みをお伺いして詳しくご説明させていただきます。 s043 医師:坂本貞範 ▼PRP療法(再生医療)をもっと詳しく PRPによる治療は、これまでない画期的な治療法です
2022.04.07 -
- 変形性膝関節症
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変形性股関節症の保存療法で効果を上げるための注意点 変形性股関節症の初期の治療では、保存療法という治療法を選択することが多いです。保存療法には、運動療法や薬物療法、温熱療法などが挙げられます。また、日常生活における動作を見直すなど、股関節への負担を軽減するための生活習慣の改善もおこないます。 今回は、変形性股関節症の人が保存療法をするときの注意点について解説します。変形性股関節症の人がおこなう保存療法の1つに、運動療法があり、軽いストレッチや筋力トレーニングが推奨されます。 筋力をつけることで股関節をサポートし、股関節を正しい位置に矯正することで、股関節への負担の軽減、痛みの緩和が期待できます。 変形性股関節症の保存療法で「運動療法」に取り組むための注意点 運動療法では、まずストレッチやマッサージをおこない、筋肉をほぐします。股関節周囲の筋肉の柔軟性は、痛みの改善だけでなく、関節の動く範囲の改善にもつながります。 しかし、運動療法をするときに、早く筋肉をつけようとして無理に運動しないように注意しなければなりません。 また、ジョギングやサッカーのような激しい運動も股関節に負担をかけ、変形性股関節症を進行させてしまうため、ゆっくりと歩くウォーキングや、負担の少ない水泳などをおこなうようにしましょう。 変形性股関節症の保存療法でウォーキングをするときの注意点 ウォーキングをするときに早く歩きすぎたり、長距離歩いてしまうと、股関節への負担が増大します。ですから、ゆっくりと歩く15分程度のウォーキングにとどめましょう。 変形性股関節症の保存療法で筋トレをするときの注意点 股関節をラクに動かすことができるようになったら、徐々に運動強度をあげて、筋力トレーニングもおこないます。筋力トレーニングをするときも、やりすぎると股関節に負担がかかってしまうため、毎日少しずつ継続しておこなうようにしましょう。 変形性股関節症の保存療法で日常生活における注意点 変形性股関節症の人は、生活習慣を見直して、股関節に負担をかけない生活をするようにしましょう。重いものを持つときにしゃがみこむような動作は、股関節に大きな負担をかけてしまいます。 できるだけ重いものを持ったり、しゃがみこむような動作は避け、布団で寝ている人はベッドに変える、和式トイレも洋式トイレにするなど、生活様式も洋式に見直すと良いでしょう。 場合によっては、杖を使うことも股関節への負担軽減に役立ちます。 体重管理は非常に大切! 変形性股関節症で肥満気味の人は、ダイエットが必要になる場合があります。股関節には、自分自身の体重による負担がかかります。体重が重ければそれだけ負担が増します。できるだけ標準的な体重を保つよう体重管理を行うことが必要です。 とはいっても、過激なダイエットをして健康を害してしまったのでは元も子もないので主治医と相談しながら体重管理に努めましょう。運動療法だけでなく食生活も見直して体重を管理をし、体重による股関節への負担を軽減できるように努めましょう。 変形性股関節症の保存療法で薬物療法をする場合の注意点 変形性股関節症の保存療法では、痛みの改善のために薬物療法もおこないます。痛み止めを服用して炎症を抑え、痛みの改善を図るため、内服薬のほかにも、湿布薬や座薬が処方されることもあります。 飲み間違いや飲み忘れに注意して、痛みと上手に付き合うようにしましょう。 変形性股関節症の保存療法を「効果的に実践する」ための注意点 変形性股関節症の人が保存療法を効果的に実践するためには、どのような注意点に気をつければ良いのでしょうか。 自分にあった医療機関を見つける 変形性股関節症の人が効果的に保存療法をするためには、病院までの距離や、医師との相性も大切です。通院が負担になってしまうと、その後の治療に対するモチベーションにも関わります。 運動療法や生活習慣、薬の内容や手術の希望など、自分の希望を医師に伝えて、よく話し合うようにしましょう。 自己判断で治療を中断しない 保存療法をおこなって、痛みの改善や動きやすさを感じるようになっても、自己判断で治療を中断しないようにしましょう。筋力がついたり、体重コントロールに成功して股関節の痛みが軽減したとしても、一度損傷した股関節が元通りになったわけではありません。 自己判断で治療を中断すると、再度症状が進行してしまう可能性もあるので、医師の指示通りにきちんと受診して、治療を継続するようにしましょう。 痛み止めの増減は医師とよく相談する 痛み止めを処方されるときに、痛みがあるときだけ飲むように言われることもあります。しかし、痛みを感じるからといって飲みすぎると、副作用が出てしまう危険性もあります。 もし、処方された痛み止めが効かないなど、不安がある場合は痛み止め薬の変更などを医師に相談するようにしましょう。 家族が変形性股関節症と診断され保存療法を選択した場合の注意点 家族が変形性股関節症と診断され、保存療法をおこなうことになった場合の注意点を紹介します。 股関節に負担がかからない生活になるようにサポートする 重い荷物を持つ、立ち上がり時に支えるなど、できるだけ股関節に負担がかからないような工夫をし、サポートしましょう。重い荷物を持つと、股関節に負担がかかり症状が進行してしまいますし、しゃがみこみや立ち上がりのような動作も股関節への負担が大きいです。 自宅から病院まで遠い場合は、家族が運転して一緒に病院に行くことで、変形性股関節症の人の歩行距離を減らし、股関節の負担を軽減することができます。 変形性股関節症の治療には再生医療という最先端の方法もある! 変形性股関節症の治療法として、再生医療という最先端の方法があります。最近ではスポーツ選手が再生医療で治療をするなど、注目を浴びている治療法です。 変形性股関節症の再生医療とは? 変形性股関節症の再生医療では、自身の幹細胞や血小板を利用することで、すり減った軟骨や骨の変形の修復や再生を促し、痛みの改善を目指します。幹細胞には、さまざまな組織や細胞に変化する能力が備わっています。 この幹細胞を変形性股関節症の人(本人)から取り出し、量を増やしてから体に戻すことで、幹細胞が組織の修復を促し、股関節の炎症や痛みを抑える効果が期待できます。 また、血小板にも、組織の修復や再生を促す能力があります。血液を採取し、血小板成分を濃縮させて損傷した股関節部位に注入することで、組織の修復を促し、症状の進行を抑え、痛みの改善を目指します。 再生医療は、自身の幹細胞や血液成分を用いるため、拒絶反応やアレルギーの危険性も低い安全な治療法です。 まとめ/変形性股関節症の保存療法で効果を上げるための注意点 変形性股関節症の人が保存療法をおこなうときの注意点を紹介しました。保存療法には、運動療法や生活習慣の改善、薬物治療などがありますが、注意点としては、とにかく股関節に負担をかけないこと、医師とよく話し合って最適な治療を受けること、家族がサポートすることなどが挙げられます。 また、変形性股関節症の治療方法の一つとして、再生医療があります。自身の幹細胞や血液成分を利用して損傷した股関節の修復や再生を促すことで、痛みの改善が期待できる最先端の治療方法です。 今までの治療では効果が感じられない、なるべく薬物治療や手術をしたくないという人は、再生医療も変形性股関節症の治療の選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。 以上、変形性股関節症の保存療法を行う際の注意点をまとめてみました。保存療法は正しく継続することが秘訣です。 監修:院長 坂本貞範 ▼ 再生医療で変形性股関節症を治療する 変形性股関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善する先進医療です
2022.04.07 -
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変形性膝関節症の装具療法の種類と注意点について この記事は、「膝の痛みを緩和してくれる装具が欲しい」と自分にあった装具を探している。そんなあなたに書いています。装具は、足などの弱った部分に装着して、その部分を支えることで痛みを軽減したり、運動の能力を補助して向上させる目的で行うものをいいます。 変形性膝関節症は、膝のクッションの役割を担う関節軟骨のすり減りが起因となって膝に痛みなどの障害を感じる疾患です。進行すると関節が変形したり、安静時にも痛みを感じるようになることから、日常生活だけでなく、健康寿命まで脅かす病気です。 そんな変形性膝関節症の治療は大きく外科的療法と、保存的療法の2つに分けることができます。外科的療法では、関節鏡視下手術・骨切り術・人工関節置換術があります。 また、保存的療法には運動療法・薬物療法・物理療法、そして膝や足底に装具をつけることで、痛みの緩和や運動機能の補助を目的とする装具療法があります。変形性膝関節症による膝の痛みでお悩みの方に向けて装具療法とその種類について参考になればと記させて頂きました。 膝の痛みの緩和や、歩行などの動くために、どんな装具にしたら良いのかと、迷われている方はぜひご覧ください。 変形性膝関節症の治療 1.外科的療法:関節鏡視下手術・骨切り術・人工関節置換術 2.保尊療法:運動療法・薬物療法・物理療法、装具療法 変形性膝関節症に対する装具と注意点 変形性膝関節症に対する装具は、大きく分けてサポーターとインソールといった2つがあります。 サポータを装着することで、不安定になった関節を安定させます。変形性膝関節症では膝を安定させる大腿四頭筋をはじめ、膝周囲の筋肉が弱まることで膝を支えることができずに膝が不安定な状態になります。 不安定な膝に対して不規則な負担が繰り返されると、軟骨がすり減り痛みにつながるのですが、サポーターで膝を支え、安定性を高めて痛みを減らします。サポーターで膝が支えられると安心感が増すため、精神的にも効果が上がります。 サポーター ただし、安心だから、楽だからとサポーターに頼りっぱなしになるのはオススメできません。 サポーターはあくまで筋肉の代わりをする補助的な役割を果たしているだけで、痛みがないのにも関わらずサポーターを常に装着していては、かえって膝の筋力が低下しかねないからです。 サポーターは、薬局、ドラッグストアに置いてあるような市販のサポーターから、健康保険を適応して医療機関から入手できるモノまであります。市販のものは膝を一周覆うような簡易的なものが特徴です。 医療機関で入手できるものは、膝の両側、または片側に支柱が付いている特徴があり、装着に際して医療的見地から個人に合ったものをフィットさせてくれる特徴があります。 支柱タイプのサポーターは、簡易的なものと比べ高価なものが多いですが、市販のものと比べ安定感は強いです。支柱は金属やプラスティックでできており、荷重の偏りを減らすほか、太ももから膝下までの範囲をサポートしてくれます。 最近は、支柱タイプのサポーターであってもインターネットを使えば入手することが可能ですが、自分にフィットする保証が無いだけに心配です。膝の変形が強いほど、サポーターの支柱にかかる負担も大きくなるため、膝に支柱が当たることで皮膚にすり傷ができるなどのケガをする可能性があります。 簡単な擦り傷でも、サポーターを着けると、傷にあたって痛むため、あたらないようにかばっていると不自然な力が入って、悪化しかねません。これでは痛みを取るための装具としての意味が無くなってしまいかねません。 装具は、できるだけ医師に相談し、あなたの症状はもちろん、膝のサイズに合ったサポーターを購入しましょう。 こちらでもサポーターについて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。 変形性膝関節症はサポーターをしたほうが良い!その理由と注意点 インソール 膝内側への負荷を減らすインソールは、別名「ラテラルウェッジ(外側くさび状)型足底板」と呼ばれます。 下肢に体重がかかるラインを荷重線またはミクリッツ線(大腿骨頭と足関節の中心を結んだライン)といい、通常であれば膝の中央を通ります。しかしO脚(内返膝)になると荷重線は膝の内側を通るようになります。 そこで、インソールを用いることにより荷重線を膝の中心へ近づけるように、膝の角度、すなわち荷重線を調整することで、内側軟骨のすり減りや痛みを減らせます。 変形性膝関節症のほとんどの方は、O脚になってしまいます。O脚になると体重が小指側に乗りやすく、膝の内側部に負荷がかかることで痛みを感じます。 小指側を高く持ち上げるように足裏にインソールを挿入することで、親指側へ体重が乗るように膝の角度を調整します。すると小指ではなく親指側へ荷重が抜けるような歩行ができるほか、膝内側にかかる過剰な負担を軽減させ、痛みを緩和します。 X脚を抱えた方の場合は、その逆に親指側を持ち上げる装具があります。一般的にインソールは屋外で履く靴に使用しますが、屋内で使用できるタイプや、足に直接装着するタイプもあります。 インソールもサポーター同様、市販で購入できるものよりも、健康保険が適応される医療機関での購入をお勧めします。 病院で購入できるインソールは、市販のものより高価になりがちですが、あなたの膝の状態に合わせて採寸することで、症状に合わせて矯正が可能になります。治療効果を得て頂くためにも国家資格である義肢装具士に依頼できるよう、かかりつけ病院の担当医に相談されてはいかがでしょうか。 まとめ・変形性膝関節症の装具療法と、その種類について いかがでしたでしょうか?変形性膝関節症の装具療法、サポーターとインソールについて、その種類や効果について解説しました。 サポーターをすることで、筋肉の代わりに膝の安定性を高める効果があります。サポーターの種類には、支柱がないものと、支柱があるものに分けられます。支柱タイプのサポーターは、膝にかかる荷重の偏りを防げますが、時には支柱が膝に接触し、痛みを伴うことがあります。 インソールは膝の固定はしないものの、O脚やX脚のように偏った荷重線に対して膝の中央ラインを通るように膝の角度を調整し、関節への負担を軽減させます。 サポーター、インソールともに薬局など市販で購入できます。しかし変形性膝関節症の変形の度合いは一人ひとり違うこと、進行に伴い角度が変わることから、医療機関であなたにあったサポーター・インソールを購入されることをオススメします。 以上、変形性膝関節症の装具療法と、その種類について、を記させていただきました。自分に合った装具を身につけて心身ともに前向きな生活を見つけましょう。 No.030 監修:医師 坂本貞範
2022.03.30 -
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変形性膝関節症が中高年で急増!その発症原因と予防のヒント、リハビリまで 近年、膝痛(変形膝関節症)の患者さんが急増しています。 2005年に東京大学医学部の研究グループが行った疫学調査によると、日本における「中高年の膝痛の患者数は約2400万人」と推測されるそうです。 その後も患者数は増加し続けており、現在では、膝痛の患者さんとその予備軍は、約3000万人にものぼるとも推測されています。そして、膝痛を訴える患者さんの実に9割以上が「変形性膝関節症」が原因と考えられています。 そこで変形性膝関節症の症状で悩まれている人が増えてる理由を解説。その理由を通じて予防のヒントをつかみましょう!また、リハビリとして運動療法を行う際に注意したいことを記しました。 変形性膝関節症/膝の痛みの原因とは 変形性膝関節症は長年、膝が受け続けた負担によって膝の軟骨がすり減り、炎症が起きた結果、しだいに関節が変形してしまう病気です。私たちの膝は、この世に生を受けて、はじめて歩行を始めてから現在まで、日常生活はもちろん、労働や運動を通じて様々な負担をかけ暮らしてきました。 普段、何もなければ意識することはありませんが、膝は立っているだけでも体重を受け止めています。しかも、歩くだけで体重の5倍以上の負荷が掛かることが分かっています。この負荷を受け続けると膝関節の軟骨は、徐々にすり減り、最終的に炎症を起こす可能性があるのです。 膝関節は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の末端が接合する部分で、その間には、クッションのような役割をしている関節軟骨や、半月板という軟骨組織から出来ています。 この関節軟骨や半月板が、年齢を重ねることで徐々にすり減り、その過程で削れた摩耗粉が関節包の内側に滞留し、滑膜を刺激するようになります。すると、この摩耗粉を体は異物とみなして免疫反応を起こしてしまうのです。 その反応の結果、滑膜の細胞から「炎症性サイトカイン」という、生理活性物質(体の働きを調整する役割のある物質)の一種が分泌されます。この炎症性サイトカインは本来、細菌やウイルスが体に侵入した際、それら異物を撃退して体を守るため、重要な働きをする物質です。 それが意に反して摩耗粉を異物と認識して分泌されることで炎症が起こり、痛みが現れることになります。これが膝が痛む原因で、その理由となるものです。 変形性膝関節症の発症/膝痛で悩む患者さんが急増する原因 原因.その① 膝にお悩みの患者さんが増えた第一の理由は、本格的な「高齢社会」が到来したことです。2019年におけるわが国の総人口は前年よりも26万人少なくなっているにもかかわらず、65歳以上の高齢者は32万人も増加し、3588万人と過去最高となっています。 日本人の平均寿命も、男性81.25歳、女性87.32歳(2019年)と年々長生きになっており、高齢者の人口は、これからもますます増加していくものと思われます。 変形性膝関節症は高齢者ほど発症しやすく、日本では、60歳以上の人の約6割が変形性膝関節症というデータもあり、高齢者が増加する傾向はまだ当分続くと考えられるため、変形性膝関節症で悩まれている患者さんは、今後も増えるものと考えられます。 原因.その② 膝にお悩みの患者さんが増えた第二の理由は「運動不足」です。現代社会では自動車や電車など便利な交通機関が発達し、さらにはエレベーターやエスカレーターといった移動を楽にする設備が普及しています。 その結果、歩いたり、階段を上り下りする機会が減り、現代人はあまり体を動かさなくなってしまいました。また、高齢になると移動が億劫になり、家に引きこもりがちとなり、運動不足になってしまいます。 膝関節を支える骨や軟骨、筋肉や靭帯(骨と骨をつなぐ丈夫な線維組織)は、日頃から体を動かし適度な刺激を与えていないと、少しずつ衰えていきます。 現代人としては、意識して運動をすることが大切です。けして、激しい運動である必要は無く、適度な刺激を筋肉や軟骨などに与えることで膝関節の健康を維持することが可能になり、膝の健康はもちろん、心身の健康のためにも重要です。 また、膝にためは運動以外にも日ごろからストレッチやウォーキングなどの習慣化も大切です。 原因.その③ 膝にお悩みの患者さんが増えた第三の理由は「肥満」です。運動不足は肥満を招きがちです。体重が増えると、立ったり歩いたりするだけで膝関節に大きな負荷がかかってしまうことはご想像頂けるろ思います。 肥満は、体重の増加により、膝痛の原因となる軟骨や半月板を、通常より圧迫するリスクが増し、傷めやすくなってしまいます。そのため、膝痛を予防するためには、普段から適度な運動をして、適正体重を維持することが重要です。 膝痛の回復に向けて 以前は、膝痛の患者さんに対して「安静にすること」が勧められていました。鎮痛薬で痛みを和らげた上で膝に負担をかけないように安静にして、自然の回復力にまかせ、治癒するのを待っていました。これでは次のような問題が生じます。 膝が痛いからと、安静にばかりしていると、体重が増えがちとなり、膝周辺の筋肉や靭帯などが、どんどん衰えていきます(廃用性症候群という)。膝を支えている筋肉や靭帯が衰えると、膝を支えることができなくなり、結果として軟骨への負荷が余分にかかるようになり、摩耗がますます進む悪循環に陥ってしまいかねません。 さらに、安静に加えて鎮痛薬を使うと確かに膝の痛みは治まりますが、痛みが出ないからと膝を以前と同じように使ってしまえば、膝を支える筋肉や靭帯が衰えているため、しばらくするとまた発症してしまいます。 従来の安静にするという治療法では、こうした炎症サイクルの悪循環に陥りやすいのです。特に肥満の場合は注意が必要です。 それに対し、リハビリでの「運動療法を活用」すれば、2〜3週間ほどで痛みが軽減した上、楽に歩けるようになることがあります。筋肉が膝をさせることができるようになるためです。 それによって日常生活の活動性が増すと、膝周囲の筋肉や靭帯が自然に鍛えられ、関節軟骨の摩耗が抑えられるようになります。 その結果、膝関節の炎症が起こりにくくなり、痛みもどんどん軽減するのです。痛みが軽減すれば、さらに患者さんの悩みは薄れていき、行動は活発となり、膝関節の安定性は一段と高まることで膝痛は遠ざかります。 この好循環に導くことで、「膝痛から卒業できる可能性」があるという訳です。 変形性膝関節症/予防のヒント! これまでの記事で変形性膝関節症が増えてる理由についてご理解は進みましたでしょうか?簡単に要約すると高齢化社会の到来ということで、発症率が高い高齢者の人口が多いため、カウント数が伸びたということ。 加えて運動不足と、肥満という理由があげられています。ここから分かるのは、「適度な運動をすることで体重の増加を止め、その結果若々しくいれば変形性股関節症を発症するリスクを低くできる」ということで、これは予防のヒントになります。 簡単に要約しましたが、膝の痛みの予防は、難しく考えないことが大切です。加齢は誰にも訪れることで仕方がありません。年齢があがると、どうしても体は衰えるもので自然の摂理です。思い悩みすぎずに気持ちを明るく、前向きにすごされることが大切です。 気持ちが前向きになれば、体に負担のない範囲という条件のもと、簡単でも軽めの運動を継続的に心がける動機になりえます。家に籠ることなく、外に出かけて色々な人と会ったり、景色を見たり、そんな何気ない行動だけでも運動になります。 もちろん、もっと積極的にウォーキングを行うことも効果的です。日課にして継続的に行いうことを強くお勧めします。尚、体重の増加が気になる方は体重計を用意しカレンダーに記録したり、食べたモノを書き出したりして体重を意識することから始めてみてはいかがでしょうか! ただ。前向きになりすぎて体を痛めてしまわないように見定めてください。できれば医療機関などで医師から助言を受けて取り組まれることをおススメします。 変形膝関節症・予防のヒント ・前向きな気持ち ・体重コントール(肥満を防いで適正体重を維持する) ・軽めの運動を継続して行うようにする(外に出かけよう) ・無理はしすぎないように ・運動内容、量は医療機関にて助言を得ましょう 変形性膝関節症の予防/運動療法(リハビリ)は無理のない範囲で行う 変形性膝関節症の運動療法について 「変形性膝関節症患者には、定期的な有酸素運動、筋力強化訓練および関節可動域拡大訓練を実施し、かつこれらの継続と奨励する」としており、「筋力強化訓練」「有酸素運動」「可動域拡大」の3つを効果的なリハビリとして推奨しています。 (参照:日本整形外科学会による変形性膝関節症診療ガイドラインより) リハビリとしての筋力強化訓練では、太ももの前面の筋肉「大腿四頭筋」の家庭での強化、有酸素運動については、激しい運動ではなく穏やかな無理のない運動が推奨されています。 可動域拡大については、膝関節を動かさないでいると可動域が狭くなり柔軟性が失われてしまうためリハビリの目的としながらも無理をしない範囲で訓練するようにします。 膝は、無理のない程度に動かすことで、炎症を起こしている滑膜や軟骨の細胞に一定のソフトでも力が作用し、以下の様な3つの効果を得ることができます。 ① 炎症の原因となる、炎症性サイトカイン(細胞から分泌される生理活性物質)の産生を抑える作用 ② 炎症を鎮める効果を持つ、抗炎症性サイトカインが分泌される作用 ③ 膝関節の軟骨成分、膝関節の組織の修復に必要なコラーゲンやプロテオグリカンの産生が増加する作用 変形性膝関節症の予防/運動療法(リハビリ)の注意点 膝関節を適度に動かすことが膝痛を改善に導くとはいえ、膝にあまり強い力をかけてしまうと、むしろ症状が悪化し、痛みも強まることになってしまいます。 リハビリの一環としての運動は必要ですが膝を動かす場合には激しい運動は禁物です。適度な運動であれば①〜③の効果が得られ、関節内の炎症を抑えられます。さらには組織の新陳代謝が促され、効果的に膝痛の改善が期待できることになります。 運動が良いとなると早く治したい、また予防する意識が強すぎて限度を超えた運動に取り組む方がおられますが、過度な運動は逆効果です。できれば整形外科などのリハビリに通ったり、運動方法のアドバイスを受けて適切な方法と必要な運動量を確保しましょう。 適切な運動を無理なく、継続しましょう! 以上、変形性膝関節症が中高年で急増!その発症原因と予防のヒント、リハビリまでについて記させて頂きました。 No.0019 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する なってしまった変形性膝関節症は、再生医療により症状を改善することができます
2022.03.25