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- ひざ関節
- 変形性膝関節症
どうする?変形性膝関節症の寝ていても痛い症状! 膝に痛みや変形をもたらす病気である変形性膝関節症。 その原因は加齢や、度重なる膝への負担から軟骨が摩耗することです。最初は膝の違和感程度でも、進行すると立ち上がりや歩き出しといった、膝を動かすタイミングに痛みを感じるようになります。 痛みで膝を伸ばせず、寝ていても痛みを感じるため、安心して眠れないという方までいらっしゃいます。そんなどうしようもない膝の痛みを治すための様々な対処法があります。 たとえば温めたり、冷やしたりする物理療法のほかに、薬物療法などがあるほか、手軽に取り組めるストレッチが効果的です。筋トレなどといったハードなものは逆効果です。 しかし、どの手段をどう取れば良いのか個人で判断するのは容易ではありません。そこで今回は、伸ばすと痛く、寝てても痛い膝は、一体どんな状態にあるのか、その対処法から寝るときの工夫まで紹介します。 伸ばすと痛く、寝てても痛い時の状態と対処法 膝を伸ばすと痛く、寝てても痛い原因に、すり減った軟骨片が骨膜を刺激ことが考えられますが、ほかにも筋肉が緊張していたり、膝の関節に炎症が起きていたりと、痛みを感じる原因は様々です。 ▼根本的には、無理をせず病院に行きましょう。▼ ・膝の痛みは放置しないで病院へ行こう! 筋肉が固まっているケース 膝の痛みをかばうことで筋肉が緊張し、膝の曲げ伸ばしに支障をきたします。筋肉の緊張は慢性化しやすく、ストレッチやホットパック・お風呂で膝を温め、柔軟性を取り戻します。 特にふくらはぎにある腓腹筋や、太ももの裏にあるハムストリングが硬くなると膝を伸ばしにくくなることから、ストレッチにより柔軟性を高めます。カイロも効果的ですが長時間の使用による低温やけどには注意しましょう。 ストレッチは、手軽に行えるので便利ですが継続が鍵です!時間を決めるなど自分のルールを作って取り組みましょう。 膝の痛みを軽減するための、腓腹筋のストレッチ 1.壁や椅子の背もたれに手をつき、脚を交差させます 2.前脚の膝を曲げていき、後ろ脚のふくらはぎの伸びを感じます 3.気持ちが良いところで20秒キープします 左右の脚を入れかえて1〜3を、1日3セット行います。 膝の痛みを軽減するための、ハムストリングのストレッチ 1.地面に座り脚を開きます 2.背筋を伸ばした状態で、片側のつま先に向かって、体を倒します 3.気持ちが良いところで20秒キープします 左右の脚を入れかえて1〜3を、1日3セット行います ■膝の固まりについて、夏場はエアコンに気をつけたいところです。 膝が冷えると血流が悪くなり、筋肉の動きが悪くなったり、痛みを感じやすくなったりします。エアコンが効いた部屋では、ブランケットなどを膝にかけて、直接膝に冷気が当たらないよう、膝を冷やさない工夫をしましょう。 ■こうした工夫をしても痛みが取れない場合は、膝の変形に注目します。 膝の変形が進行したO脚でも、膝にかかる負荷が偏り、筋肉が緊張します。これだといくら温めても、歩くたびに筋肉が緊張するため、膝へかかる負担を分散させるインソールを検討します。 足の外側が高くなっているインソールを装着することで、膝の内側へかかる負担を分散し、筋肉が過度に緊張しないようにします。 炎症を起こしているケース 寝ていても痛む場合は、膝に炎症を起こしている可能性があります。慢性化した長引く痛みに対しては温めますが、膝に強い痛みや腫れ、熱感があれば冷やすのが基本です。 アイスパックや氷嚢などで患部を冷やすことで、血管が収縮し、炎症や痛みを抑えることができます。氷嚢の作り方は、ビニール袋に適量の氷と水を入れ、口を縛るだけで簡単に作れます。 注意していただきたいのが冷湿布です。鎮痛消炎剤として使用される冷湿布は、メンソールやハッカ油の効果で、ヒンヤリと冷たく感じるのですが多く場合、関節の内部まで冷やす効果はありません。 温めても冷やしてもダメなら、、、 温めたり、冷やしても膝の痛みに沈静化がみられない場合には、痛み止めの薬を服用します。どの薬が良いのか、自己判断せずに、医療機関を受診したり、かかりつけ医に相談しましょう。 変形性膝関節症の人が寝るときのポイント 変形性膝関節症の方は、痛みが出やすい寝方があるのをご存知でしょうか?また寝具の種類によっても、痛みを誘発する可能性があることから解説します。 膝の痛みを回避するには、仰向けで寝る 膝の痛みに優しい寝方は「仰向けで寝る」ことです。中には、仰向けで寝ようと膝を伸ばした際に、痛みが出る場合があります。そうした時には、膝下にクッションを挟んで寝るのが効果的です。 うつ伏せのように顔を下に寝ると、股関節が開きO脚が強まる姿勢になるほか、地面からの圧力で膝周囲の血流が阻害されやすくなるのでおすすめできません。 また、「横向きでしか寝られない」というのも避けたいところです。日常生活で膝に痛みを感じるタイミングは、動き出しのほかに、振り返る動作のような体にひねりが加わる時です。 横向きで寝る癖がつくと、常に体にひねられることで、動作時に膝の痛みが悪化する恐れがあります。 〇 仰向け(オススメ) ✕ うつ伏せ(O脚が強まり膝の血流が阻害される) ✕ 横向き(ひねりがあることで動くと痛みが出る) 布団やベッドの硬さに注意する 柔らかすぎる布団やベッドは、体の歪みにつながることから注意が必要です。人間の体で1番重たい部位が下半身です。柔らかすぎるベッドで寝ると、下半身が沈み込むことで、体にひねりの癖がつきやすいためです。 寝るときに膝の痛みでお困りの方は、寝具の硬さにも注目してみましょう。 まとめ/どうする?変形性膝関節症の寝ていても痛い症状! 変形性膝関節症と診断され、膝を伸ばすと痛み、とても落ち着いて寝られない場合には、膝の筋肉が緊張して固くなっていたり、膝関節が炎症を起こしていたりする可能性があります。 それらに対して、慢性化した痛みには温め、強い痛みや腫れ、熱感があれば冷やします。温めたり冷やしたりしても効果がみられない場合は、薬物療法があります。 変形性膝関節症の治療の基本は、ストレッチや、運動療法により周囲の筋肉を鍛えることです。今回のように睡眠時に痛みが出ると、満足に運動に取り組めないなど治療の支障をきたします。 そうならないように、物理療法や薬物療法で痛みを抑え、寝方や寝具を工夫しながら、うまく膝の痛みと付き合っていくことが大切です。 ただし、いつも以上に膝に強い痛みを感じたり、どういった処置をすれば良いのか分からなかったりする場合には、自己判断せずに早めにかかりつけ医に相談してみましょう。 ほかにも病院に併設してあるリハビリテーション科では、専門のスタッフが膝の状態にあった物理療法を施してくれるほか、運動療法の指導を行っておりますので、膝に痛みを抱える方は選択肢の一つとして覚えておきましょう。 ▼ 変形性膝関節症の痛みを再生医療で治療する 再生医療により変形性膝関節症の痛みを改善することができます No.036 監修:医師 坂本貞範
2022.01.07 -
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- 変形性膝関節症
変形性膝関節症を発症!スポーツ選手の復帰に向けた治療法を探す スポーツ時に膝に痛みを感じたことがある方は多いのではないのでしょうか。 スポーツ時には、ジャンプ動作のほか、急な停止や発進・方向転換をするなどして、膝に大きな衝撃が加わりやすく、半月板や靭帯を傷めやすいものです。 さらにこれまでの研究から、半月板や靭帯を損傷すると、ある病気の起因になることがわかっています。それは「変形性膝関節症」です。 変形性膝関節症は、軟骨が摩耗することで膝に痛みを感じるほか、関節が変形する疾患です。一般的には50代以降の女性に多く発生しますが、スポーツ選手のように日頃から関節に負担がかかるような過ごし方をしていると、年齢や性別に関係なく軟骨が磨耗し発症します。 今回の記事では変形性膝関節症と診断されたスポーツ選手が、どのようにスポーツ復帰を目指すのか、最新の治療法をふまえて紹介します。 膝の負傷からスポーツへ復帰するまでの流れ 負傷してすぐの痛みのある場合は、無理をせず安静にし、保存療法により炎症や痛みを抑えます。痛みのレベルに合わせて、徐々に運動療法を取り入れ、スポーツ復帰を目指していくことになります。 実際のスポーツの動きを取り入れたり、運動強度を上げたりする際の目安は、「日常生活で膝に痛みや支障を感じない状態」程度です。 スポーツ復帰後の最終的なレベルは、膝に痛みが出ない範囲までの運動強度とします。 変形性膝関節症の運動療法で気をつけること スポーツ復帰に向けて運動療法を取り入れる際には、以下のような「膝に負荷のかかる要素」を取り除くことが大切です。 ・衝撃の強い運動を避ける ・軽度な運動からスタートし、徐々に強度を上げる ・ダイエットをして膝への負担を軽くする ・インソールを着用する 詳しく解説していきます。 衝撃の強い運動を避ける 変形性膝関節症では、してはいけない運動があります。それは、衝撃の強い運動です。例えば、ジャンプ動作のほか、急な停止や発進・方向転換です。 痛みが緩和されれば運動を再開しますが、その際、衝撃が強い運動は避けるようにしましょう。 軽度な運動からスタートし、徐々に強度を上げる たとえ膝に痛みがあったとしても、全く動かさないでいると筋肉や関節が拘縮し、元の運動レベルまで回復するのに時間がかかります。 そのため、ウォーキングやプールでの運動、軽度なストレッチや筋力トレーニングなどからスタートし、徐々に運動強度を上げて本格的にスポーツへの復帰を目指します。 プールでの運動は、浮力が関節への負荷を軽減するので、痛みが強い方にはおすすめです。 ダイエット/インソールの着用で、膝への負担を軽くする また、膝に負担がかかる原因に、下肢のアライメント異常や、肥満があります。体重が重たいと膝への負担が上がるので、減量することをおすすめします。 また、下肢にO脚変形性を呈する場合は、靴にインソールを装着することで膝の内側にかかる負荷を軽減させたりします。 このように、スポーツへの復帰に向けて運動に取り組む際には、膝に負荷がかかる要素を取り除くことが大切です。 変形性膝関節症は、よくある筋肉痛と違い、痛みを感じたまま放って置いて治るものではありません。痛みに耐えながらスポーツを続けると、状態が悪化し、今後の選手生命が短くなる可能性があります。そのため、スポーツをする頻度や時間、強度は慎重に調整しましょう。 保存療法でも思ったような効果がみられず、軽度な運動でも痛みが強く出てしまう場合、手術という選択肢があります。ただし、手術によってはスポーツに支障が出るため注意が必要です。 変形性膝関節症の手術療法と最新の治療方法を紹介 保存療法でも効果がみられなかった場合、観血療法(手術)という選択肢があります。 体への侵襲が低い順に、「関節鏡下視手術」「高位脛骨骨切り術」「人工関節置換術」があります。さらに最新の治療法「再生医療」についてもご紹介していきます。 手術のタイミングや適応される手術方法は、持病の有無・年齢・症状の程度によっても異なります。「大きな手術をしたくない」など個人の思いによっても使い分けられます。 関節鏡下視手術 膝に開けた小さな穴から手術器具を入れ、損傷した半月板や関節軟骨を取り除く手術法です。 体への侵襲は低く、手術は手術時間も 1 時間程度です。術後すぐに歩くことができることからスポーツへの早期復帰が見込まれます。ただし膝に違和感なく歩けるようになるまで数ヶ月から半年ほどかかります。 高位脛骨骨切り術 脛骨の一部を切り取り、膝にかかる偏った負担を整える手術法です。 変形性膝関節症に多いO脚変形を矯正し、膝関節の内側への負担を軽減させます。入院期間は2ヶ月程度、そこからリハビリテーションに5〜6週間かかることから、スポーツへの復帰まで時間がかかります。 人工関節置換術 金属やチタンなどを使い、傷んだ膝関節を人工の関節に置き換える手術です。 入院期間は1ヶ月程度と、高位脛骨骨切り術と比べて短いことが特徴です。 関節鏡視下手術や高位脛骨骨切り術と比べ、痛みに対して高い改善度合いが期待できますが、術後は正座のように、膝を深く曲げられなくなる(屈曲制限)ことから、スポーツ時のパフォーマンスに大きな影響が出る可能性があります。また、人工関節に劣化や緩みがみられた場合には再手術になります。 再生医療(スポーツのQOLの維持に最強) 再生医療は、運動療法や薬物療法と手術の中間に位置する新たな治療法として注目されています。 再生医療では、人間なら誰もが持つ「傷んだ部位を治そうとする働き」を利用した最新の治療法で、損傷した部位の治癒を促進させるほか、これまで不可能とされてきた軟骨や靭帯、半月板の再生が期待できます。 大きな手術や入院は必要なく、日帰りで行える、体への侵襲が最も低い治療法です。手術には選手生命に関わるような合併症のリスクがありますが、再生医療では自分の血液や脂肪由来の幹細胞を使うため、副作用のリスクはほとんどなく、スポール選手にとって最も理想的な治療方法といえるものです。 PRP療法と幹細胞治療について、以下で詳しく解説していきます。 1.PRP(血小板血漿)療法 損傷部位の修復を早める血小板や成長因子を利用し、膝の痛みや炎症を抑え、傷んだ部位の治癒を促進させます。治療の流れとしては、遠心分離機にて血漿成分を抽出し、関節内に注射するだけと日帰りで行えます。アメリカではスポーツ選手を中心に実施され、現在では一般の方々への治療法としても広く導入されています。 >PRP療法をもっと詳しく 2.自己脂肪由来幹細胞治療 培養した幹細胞を膝に注射し、磨耗した軟骨・靭帯・半月板を再生させます。幹細胞には内蔵や皮膚・筋肉など、さまざまな細胞に分化(変化)する能力があります。米2つぶほどの脂肪を採取後、4〜6週間かけて幹細胞を培養・増殖し、関節内へ注射します。PRP療法同様に日帰りで、痛みもほとんど伴わない治療法です。 >幹細胞治療をもっと詳しく 変形性膝関節症を発症!スポーツ選手の復帰に向けた治療法を探す・まとめ 変形性膝関節症のスポーツ選手が、現場復帰を目指すにあたり重要なのは見極めです。膝に強い痛みを感じたまま運動をすると悪化する可能性がありますが、痛みから膝を全く動かさないのもまた問題です。 膝がどのような状態なのかを見極めて、それに適した治療を施すことが、早期のスポーツ復帰につながるほか、選手生命の長期化になります。 運動療法などの保存療法でも効果がみられなければ、手術がありますが、スポーツからの離脱期間が発生したり、可動域が制限されたりするなど、パフォーマンスに影響が出ます。またスポーツ選手は絶えず膝に負荷がかかる生活を送ることから、手術をするのかどうかの判断は難しいところです。 そうした事情から、「湿布や運動療法では効果がみられなかったけど、手術は避けたい」方には、保存療法と観血療法の中間に位置する「再生医療」があります。 体に大きな負担をかけず、入院や手術の必要のない新たな治療法として期待されるほか、変形性膝関節症の初期から治療に取り組むことで、悪化を防ぎ、パフォーマンスをあげ、少しでも長く選手生活を続けられる可能性が広がりました。悩んでいる方は、まずは一度ご相談をされみることをおすすめします。 この記事がご参考になれば幸いです。 No.035 監修:医師 坂本貞範 ▼ スポーツの故障は再生医療が大きな力になる節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます
2021.12.20 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
変形性膝関節症のガイドライン 「変形性膝関節症で膝が痛い」そんなお悩みはありませんか? 変形性膝関節症は、膝にかかる衝撃を吸収・分散する役割を担う関節軟骨がすり減ることで、関節内部に炎症が起きるほか、関節に変形が起こり痛みを感じる疾患です。男女比は女性に多く、年齢は50代以降と年を重ねるほど罹患率は高くなります。 膝の痛みで病院を受診し、変形性膝関節症と診断されると、膝に負担がかかる日常生活を見直すよう指導されるほか、運動療法により膝を安定させる筋肉を鍛えるよう指導されます。 このような治療方針は、変形性膝関節症の「診療ガイドライン」に基づき決定されています。この記事では、「変形性膝関節症のガイドライン」と、それに基づいた運動療法をご紹介します。 変形性膝関節症のガイドラインについて 変形性膝関節症は、糖尿病診断に用いる血糖値・HbA1cのような基準が確立されていません。そのため変形性膝関節症の進行度合いや、治療効果を評価するために各国独自の診療ガイドラインが作成されています。 日本では日本整形外科学会の定めた「変形性膝関節症の管理に関するOARSI勧告 OARSIによるエビデンスに基づくエキスパートコンセンサスガイドライン変形性膝関節症ガイドライン」があります。 これは変形性膝関節症唯一の国際学会であるOARSIが定めたガイドラインを翻訳し、日本人向けに適合させたガイドラインです。 そんな日本整形外科学会の変形性膝関節症ガイドラインには「定期的な有酸素運動、筋力強化訓練および関節可動域訓練を実施し、かつこれらの継続を奨励する.」と記載されていることからも、変形性膝関節症の治療に、運動療法が有効だと推奨されています。 運動療法を行うことで、筋力低下・加齢により不安定になった膝の安定性を高め、痛みをかばうことで拘縮が起きている膝の可動域を向上させます。 また運動療法は、膝への負担になる肥満の解消にもつながることからも、変形性膝関節症に対して、基本の治療として評価されています。 引用:変形性膝関節症の管理に関する OARSI 勧告―OARSI によるエビデンスに基づくエキスパートコンセンサスガイドライン(日本整形外科学会変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会による適合化終了版) https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/1/106_75/_pdf/-char/ja ガイドラインに基づいた痛みを緩和する運動について 次にガイドラインに記載されている「有酸素運動」「筋力強化訓練」「可動域訓練」を紹介していきます。 有酸素運動 有酸素運動とは酸素を取り込みながら行う運動で、ウォーキングのほか長距離走・ヨガなどがあります。有酸素運動は酸素を取り込まずに行う無酸素運動と比べて、緩やかな運動が多いため、変形性膝関節症のように膝に痛みを抱えている方にはおすすめです。 その中でもウォーキングや、プールなどでの水中運動が変形性膝関節症の方に一般的な有酸素運動です。 変形性膝関節症の方のウォーキングは、無理のない距離とペースで取り組むことが大切です。1日1万歩と推奨されていることがありますが、無理に行う必要はありません。 無理をすると、かえって膝を傷めるばかりか、痛みが落ち着くまで運動に取り組めないなど、治療に支障をきたします。 またウォーキングをすると、痛みが強く満足に取り組めない場合は、プールでの水中運動がオススメです。水中では浮力がかかる分、膝をはじめ全身への負荷が下げることができます。 筋力強化訓練 大腿四頭筋などを筋力強化することで、膝の安定性が増します。代表的なものに、足あげトレーニングがあります。椅子に座った姿勢、または仰向けに寝転んだ状態で行います。 片側の膝を伸ばし、90度(寝た状態では30〜45度)挙上した状態で10秒ほどキープ、降ろして数秒間休憩します。これを20回繰り返します。全身を動かすウォーキングと違い、低負荷で大腿四頭筋をピンポイントに鍛えることができます。 可動域訓練 膝に痛みがある状態では、立ち座り、歩くといった動作がおっくうになってしまい、次第に関節の可動域が低下します。可動域が低下すると関節の柔軟性がなくなり余計に痛みを感じやすくなることから、普段から膝を曲げ伸ばしして、可動域を広げていく必要があります。 可動域訓練は、足あげトレーニングと同じ座った姿勢で、膝を曲げたり伸ばしたりすることにより可動域を広げていきます。筋力強化訓練・可動域訓練ともに椅子に座りながら行える点から、どちらの運動をしているのか混同しないように、意識して使い分けることがポイントです。 まとめ 今回紹介した有酸素運動・筋力強化訓練・可動域訓練に取り組むにあたり、いきなり長い距離を歩いたり、強度な運動をすると、かえって膝の負担になります。くれぐれも無理はせず、これまでの運動習慣や痛みの程度と相談しながら運動に励みましょう。 また歩行で痛みを感じる際には杖の使用をおすすめします。一般的な杖に、持ち手がT字のものがありますが、最近ではノルディック杖のようなスポーティーなタイプも普及しており、選択肢は増えています。 変形性膝関節症になると、膝の痛みをかばい、活動量が減ってしまいがちですが、ガイドラインで推奨されているように、体を動かしながら悪化を防ぐことが基本的な治療方法だと覚えておきましょう。 もし、膝関節の痛み、変形性膝関節症でお悩みなら私どもにご相談ください。先端分野である再生医療でお役に立てるかもしれません。思い立たれたら早めが有効です。症状は、遅れれば遅れるほど進行する恐れがあります。 痛みは早期治療が原則です。 ただ、お問い合わせで多くお聞きするのは、治療に行ってもヒアルロン酸の注射や、痛み止めしかなく、改善しないということ。実のところ、従来の治療では、現在の症状を回復させることはできず、痛みを緩和することしかできません。 それもそのはず、痛みを伴う軟骨のすり減りを改善させることは難しく、痛みを少なくする方法しかなかったからです。その結果、症状が進行し、人工関節の手術ということになりがちでした。 そこに医学の進歩で「再生医療」という医療分野が発達してまいりました。自分自身の幹細胞を用いた自己治癒力で軟骨を再生できるようになったのです。「幹細胞?」「自己治癒力?」「再生医療?」ご不明点は、以下のページでご確認ください。 ▼ 再生医療なら変形性膝関節症の新たな治療法に取り組めます 変形性膝関節症は、「再生医療」により手術せずに症状を改善することが可能です No.032 監修:医師 坂本貞範
2021.12.13 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
変形性膝関節症と半月板損傷の違いが気になりますか? 膝に痛みを感じる代表的な疾患が、変形性膝関節症と半月板損傷です。変形性膝関節症は加齢や筋力低下から発生し、長い年月をかけてゆっくりと進行します。一方、半月板損傷は運動時に足を捻ったなど明らかな要因があることを特徴とします。 両者とも膝に痛みが発生する疾患ではあるものの、発生原因や診断方法・治療法などは異なります。ですので、間違えた治療法を施してしまうと余計に悪化する恐れから、自分で判断しないなど注意が必要です。 そこで今回の記事では、変形性膝関節症と半月板損傷の違いから、治療の注意点・両者の関連性まで解説しますので、膝に痛みを抱えている方はぜひご覧ください。 変形性膝関節症とは 変形性膝関節症は50代に女性に多い疾患です。加齢や筋力低下から関節内で軟骨が摩耗し、その骨片が滑膜を刺激することで痛みを感じる疾患です。進行すると骨の増殖がみられたり、外見からわかるO脚やX脚(日本人ではほとんどがO脚)がみられたりと、膝関節の内外を問わず変形がみられます。 変形性膝関節症の症状 最初は膝の違和感程度ですが、進行すると立ち上がり、動き出しに痛みを感じるようになります。進行すると痛みで歩行が困難になるほか、痛みをかばうことで関節に可動域制限がみられ、正座ができなくなど悪循環に陥ります。 さらに末期になると、安静時にも痛みを感じるようにまでなります。 変形性膝関節症の診断 変形性膝関節症はX線検査(X-ray)で診断されます。画像診断では関節の隙間や、骨の硬化・増殖の程度から進行度を確認します。初期には膝に違和感を感じたとしても、画像上では明確な所見を確認できないこともおおく、長い年月をかけて進行する病気です。 変形性膝関節症の治療法 変形性膝関節症を発症すると、まずは保存療法です。膝に負荷がかかる動作を止めるなど、生活習慣を見直したり、筋力をつけるために運動に取り組んだりします。保存療法でも効果が見られない場合には手術が適応されます。 半月板損傷とは 半月板損傷は、膝関節を構成する大腿骨と脛骨の間にある半月板を損傷することです。半月板は膝にかかる荷重の分散や吸収の役割をすることから、立つ・歩くだけでなく激しい動作を必要とするスポーツには欠かせない存在です。 しかしバレー・バスケット・野球・陸上などの急激な方向転換や、瞬間的に発揮される力が膝への負担になり、スポーツ障害の中でも頻発する疾患です。発症年齢はスポーツをしている子供から大人まで年齢を問わず発生します。 半月板損傷の症状 半月板を損傷すると、膝に痛みや腫れ、可動域制限が出現します。特に患側の脚に体重を乗せた時に感じる荷重痛や、関節の隙間に半月板が入り込むことで膝を伸ばせなくなる”ロッキング”が起こります。 半月板損傷の診断 半月板損傷の診断には、マックマレー(McMurray)テストや圧迫アプライ(Apley)テストのような徒手検査、MRI(Magnetic Resonance Imaging)といった画像検査などを複合して診断されます。 半月板損傷の治療法 半月板を損傷するとRICE処置を行います。安静(Rest)をベースに、患部を冷却(Ice)圧拍(Compression)挙上(Elevation)します。RICE処置により血管を収縮させ、さらなる炎症を抑えます。保存的に経過を観ても関節水腫を繰り返す場合、ロッキングがみられる場合には手術検討されます。 変形性膝関節症と半月板損傷の違いと関連性 発症の違い 変形性膝関節症は、加齢や筋力低下を原因に長年かけて進行する疾患なので、スポーツで脚を捻るほか、瞬発的な力が働くことが原因で起こる半月板損傷とは違いがあります。 経過による痛み方の違い 変形性膝関節症の初期は、膝に違和感や痛みを感じますが、歩けば馴染むことがあります。しかし変形が進行すると痛みが増すことが特徴です。 一方半月板損傷は、受傷直後が1番腫れや痛みが強く、荷重をかけると痛みが強調されますが、経過とともに徐々に緩和されていく特徴があります。 しかし損傷の程度が大きい場合や、その後の過ごし方が悪ければ、時間の経過とともにさらに損傷が悪化し、痛みが増強することから注意が必要です。 治療方針の違い 変形性膝関節症は、膝に痛みが出ない範囲で無理なく筋力トレーニングを実施します。半月板損傷は運動時の突発的な怪我なので、治癒するまでは安静が原則です。 変形性膝関節症と半月板損傷の違い/まとめ いかがでしたか?ここまで変形性膝関節症と半月板損傷の違いを解説しました。変形性膝関節症は長年にわたり進行または慢性化する疾患ですが、半月板損傷はスポーツなどの突発的な怪我が原因で発生することが多い疾患と違いがあります。 しかし半月板を損傷すると、変形性膝関節症につながるケースがあることから、損傷が治癒したとしても膝周囲(特に大腿四頭筋)を鍛え予防に努めましょう。 また半月板損傷はスポーツ時の怪我と紹介してきましたが、中には生まれつき半月板に形態的異常を認める、“円板状半月”が原因で痛みを感じる場合があるため、「脚を捻った」など思い当たることがないからといって安心ではありません。 膝に痛みを抱える方は、くれぐれも自身で判断せず医師の診断・治療を受けましょう。 No.031 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療が変形性膝関節症の治療を変える 変形性膝関節症に再生医療という選択肢!幹細胞治療なら入院も手術もせずに症状が改善
2021.12.13 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
変形性膝関節症で必要になる体重の管理/コントロール この記事を読まれようとしているあなたは、「階段の上り、下り」で膝が痛くて困ったことはありませんか?現在、膝の痛みで困っている人は日本国内で2000万人以上もいるといわれています。 膝の痛みの原因となっている病気の一つとして、変形性膝関節症が挙げられます。本記事では、変形性膝関節症の症状は、体重を減らすことが膝の痛みの軽減に重要な要素であり、体重を管理することが症状の緩和につながること。そして、その方法をご説明しています。 「膝の痛みが気になる」「最近、体重が増えた」という人は、ぜひ参考にしてみてください。 ■変形性膝関節症とは 変形性膝関節症とは、膝の軟骨が摩擦などですり減り、痛みを起こす病気です。歩行や「階段の上り下り」など、膝の曲げ伸ばしには膝関節の骨と骨の間にある軟骨が大きく関わっています。膝軟骨が擦り減っていき、骨同士が擦れると炎症反応を起こします。この炎症反応が痛みに繋がるのです。 変形性膝関節症の原因となる要素は次のようなものがあります。 ・肥満 ・年齢 ・遺伝 それぞれの項目について、詳しく解説します。 ・肥満を避ける 肥満によって脂肪細胞の量が増える。つまり体重が増加するということですね!体重が増えると膝に大きな負荷がかかります。膝には体重増加の3倍もの負荷がかかると考えられているからです。 例えば、体重が10㎏増加すると、膝には30㎏の負担がかかっているということになり、こうした体重以上の負担が膝にかかることで変形性膝関節症に繋がるのです。当然、体重が増えれば、増えるほど危険性は増えていきます。 また、すでに変形性膝関節症になってしまった方なら、当然ですが膝への負担を和らげてやる必要があります。その意味でも体重管理は膝の健康のために非常に重要になってくるということです。 ・年齢 加齢に伴う筋力低下、特に太ももの筋力が低下することで、膝軟骨のすり減り、変形性膝関節症の原因となると考えられています。筋力が衰えると膝を支える力が低くなり、膝関節そのものへの負担が増えてしまいます。 ・遺伝 遺伝によって、膝軟骨がすり減りやすい人がいるといわれています。家族に変形性膝関節症の人がいる場合はあらかじめ気を付けておいた方が無難です。身内にこの病気にかかった人がいるなら、日常の体重管理を意識して行うようにしたいものです。 これらの要素に加えて、骨折や靭帯損傷も変形性膝関節症の原因になる可能性があります。変形性膝関節症が悪化すると、痛みが強くなり、日常生活に支障が出てしまいます。 ■変形性膝関節症の痛み 変形性膝関節症の症状として困るのは、膝の痛みがみられることです。では、どのような場面で膝の痛みが現れるのでしょうか?変形性膝関節症の患者さんの多くは、次のようなときに痛みを感じるといわれています。日常生活で、当てはまるものがあるかチェックしてみましょう。 痛みを感じる場面 ・立ち上がるとき ・歩き始めるとき ・階段の上り下り ・寝ているとき 特に、「階段を下りるとき」に痛みを感じることが多いようです。また、「膝の内側を押すと痛みがある」という人も、変形性膝関節症の疑いがあります。 変形性膝関節症が悪化すると、痛みが強くなり、日常生活に支障が出てしまいます。安静にしていても痛みが消えない、痛みが酷くなる場合は、放置せずに病院の整形外科を受診しましょう。 ■膝への負担を軽減しましょう 変形性膝関節症の場合、膝への負担を少なくする工夫が大切です。次のようなことが効果的といわれています。 膝への負担を避ける工夫や行動 ・体重を減少させる(ダイエット) ・洋式トイレを使う(和式を避ける) ・身体を温める、血行を良くする(サポーターも有効) ・正座を避ける(洋風の生活環境) 膝の痛みが気になる人は、まずは日常生活で膝への負担を減らすために洋風の生活(床に直接座らないような)への転換、ライフスタイルをお勧めします。意識して行うことで症状の悪化を防止しましょう。 ■体重を落としましょう ここからは、体重管理、体重を減少させることが変形性膝関節症に効果的であることをご説明します。体重の減少!ダイエットは、膝の関節への負担を直接減らすことに繋がります。運動療法には、膝の痛みについて、次のように様々なメリットがあります。 運動療法の有効性とメリット ・脂肪の増加を抑える→ 体重が減少する ・筋力をつける→ ぐらつく膝関節を支えることができる ・新陳代謝の改善→ 膝を含め身体全体の再生を促す つまり、体重を管理することは膝関節への負担を減らすことができるのです。標準体重より多めなら積極的なダイエットで体重を落とすようにしてください。 しかし、注意が必要なことがあります。それは体重を減らそうとした運動の仕方によっては膝への負担を増やしてしまう可能性があることです。膝の曲げ伸ばしが多い運動や、激しいスポーツは、膝の負担を減らすどころか、逆に痛みを酷くしてしまうことがあります。 膝の痛みを感じない程度のウォーキング、寝ながらのストレッチを無理のない範囲で継続していくのがオススメです。 ■運動できないときのダイエット方法 肥満を改善するためには、運動療法・食事療法が有効といわれています。すでに膝に痛みを感じるなど、運動で体重を減らすのが難しいと感じる人は、次の食事療法によるダイエットを試してみましょう。 食事療法といっても、急激な食事制限はリバウンドや体調悪化の原因となり、逆効果です。次に紹介する、体重を抑えたいときに効果的な食事方法を参考にしてダイエットにお取組みください。 食事療法での体重減少に効果的な方法 ・早食いを控える ・ながら食いを控える ・つられ食いを控える ・よく噛んで食べる ・不要な食品を買わないようにする ・身の回りに菓子類、甘いドリンクを置かない それぞれの項目について、詳しく解説していきます。 ・早食いを控える 早食いは体重増加に繋がるといわれています。満腹中枢が刺激され、満足感が得られるにはある程度の時間が必要といわれています。そのため、満腹中枢が働く前に必要以上に食べ過ぎてしまうのです。 ・まとめ食い(ドカ食い)を控える 一度に多くの量を食べると、血糖値が急激に上昇します。血糖値の急激な上昇は体脂肪や体重の増加に繋がりますので気を付けましょう。少ない量をこまめに食べるようにすると、血糖値の上昇も緩やかになり、体重の増加を抑えることができるといわれています。 ・ながら食い、つられ食いを控える、よく噛んで食べる テレビや動画を観ながら食べるなど、食事に集中せずに食べていると、食べ過ぎてしまいがちです。食事の見た目や匂いを気にしながら食べるだけでも、食事への満足感が増え、食べ過ぎを防ぐことができるのです。 周りにつられて食事の量が多くなることを避けましょう。家族や友人などとの食事で、ついつい同じように食べてしまうことがあります。自分の食べる量を見極めて食事するようにしましょう。 周りにつられないため、大食いにならないコツは、よく噛んで、ゆっくり食べることが大切です。シッカリ嚙めば普段より少ない量で、満腹感を得ることができるといいます。また、食べ過ぎないように食べたものの記録を付けるのも有効だと言います。食べ過ぎの罪悪感を利用するのです! ・不要な食品を買わない、菓子類を身の回りに置かない 私たちは意思の弱い面があります。手の届くところ周りに食べ物があると、「つい手伸ばしたくなるものです」。それなら、買い物のときに不要な食品を買わないようにしたり、同様に菓子類や甘い飲み物は、買い物かごに入れないようしましょう。入れそうになったらダメダメ!と思ってください。 食事についての意識を変えるだけでも、ダイエットに繋がりますので、ぜひ試してみてください。 体重管理について、おわりに 本記事では、変形性膝関節症の予防や膝の痛みの防止には、体重コントロール、ダイエットが重要であることをご説明しました。ライフスタイルの改善が、変形性膝関節症の予防や、膝の痛みを食い止めることに繋がります。 体重を管理する方法を決めて楽しみながら取り組むことができれば良いですね。そのためにも日常生活の中で出来ることから、体重コントロールに取り組んでみましょう。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます No.s017 監修:医師 加藤 秀一
2021.12.10 -
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変形性膝関節症の原因と初期症状、早期治療のポイント 皆さんは、日々の暮らしの中、例えば階段の昇り降りなど、膝を曲げ伸ばしする場面で「膝が痛い」と感じることはありませんか。 年齢を重ねて中高年になると、生活の中で膝の痛みを感じる人が増えてきます。そのほとんどが、「変形性膝関節症」といわれる病気を患っている可能性があることをご存知でしょうか。 この病気は、どのような症状を起こすのでしょうか。また早期に治療するために知っておきたいことを記しました。 変形性膝関節症の症状は、一気に現れず、何年にもわたって少しずつ進行していくのが特徴です。日本では、変形性膝関節症は40歳以上の有病者数が約2530万人、そして有症者数が約 800万人と推定されており、代表的な整形外科疾患とされています。 その症状として顕著なのは、膝関節痛や内反膝といった関節の変形です。 このような症状が出てくると日常生活でおこる様々な動作で痛みが発生するようになり、動きが低下していきます。 そこで今回は、放置せず初期の段階から症状を見逃さないで治療を行うことの大切さを記してまいります。 最初、少しの痛みだからと我慢したり、様子見を決め込んでいたら進行して大変な思いをしかねない「変形性膝関節症の初期症状」について解説してまいります。 1.変形性膝関節症の原因とは? 平成28年の国民生活基礎調査によれば、「関節疾患」は高齢者が要介護に至る原因の第5位にランクされ、同時に要支援、要介護に至る原因としてトップであると言われています。けして侮ってはいけません。 そのなかでも、変形性膝関節症の患者数は概ね2530万人程度と推計され、非常に多くの方がこの症状で悩まれていることが分かります。また、この病気の男女比としては1:4で女性に多くみられるほか、高齢者になるほど罹患率は高くなります。 疾患の発症および進行は、足の太ももの前側にある筋肉で大腿四頭筋の筋力の低下が影響すると言われています。 膝関節というのは、太もも側の「大腿骨」と、すね側の「脛骨」の間の関節、および大腿骨とお皿と言われる「膝蓋骨」の間の関節から構成されており、全体が滑膜という膜組織で包まれています。 これら骨と骨の接触面は、滑らかで弾力性のある関節軟骨で覆われていて、この軟骨そのものが膝の滑らかな運動を可能にして膝の衝撃を和らげてくれています。 変形性膝関節症の主な原因は、この膝関節部の軟骨の老化によることが多く、過度な運動や、肥満、遺伝的素因も関与しています。加齢によるものでは、関節軟骨が年齢とともに弾力性を失い、すり減り、関節が変形します。 また、変形性膝関節症は骨折、靱帯や半月板損傷などの外傷、化膿性関節炎などの感染の後遺症として発症することもあります。 2.変形性膝関節症の初期症状とは? さて、ここから変形性膝関節症の初期症状について紹介していきましょう。変形性膝関節症の初期症状は、まず「膝が痛い!(多くは内側)という症状」が多く見受けられます。 例えば、「歩き始めに痛い」、「階段の上り、下りで痛みを感じる」、「長い距離を歩いた後に痛くなるが、休むと消える」などの症状を訴え、その痛みのせいで運動が多少なりとも制眼されるようになります。 他にも「正座ができない」、「しゃがめない」、「胡坐がかけない」、「立ち仕事ができない」などの初期症状を自覚される方も少なからずいらっしゃいます。 歩いたり、階段の上り下りで、これまでとは違う・・・何か違和感じる。そういた場合でもそれが初期症状なのかもしれません。放置すると、「膝に水がたまって」膝部分が熱を持つようになることもあります。 そうなると膝を曲げようとすると膝に張りや、突っ張りなどの違和感や、強弱はありますが痛みを覚えるようになります。 変形性膝関節症、知っておきたい初期症状の一例 ・歩き初めに痛みを感じるようになった ・階段の上り下りで痛みを感じるようになった ・長い距離を歩くと痛むが、そのうち消える ・正座がしずらい、立ちあがりに痛みを感じる ・胡坐をかきにくくなる ・立ち仕事で膝に痛みが出る このような動作時に痛み等、違和感を感じたら、それは変形性膝関節症の初期症状かもしれません。 また、変形性膝関節症は、もともとO脚気味の人に多い病気です。病状が進行するにつれて、このO脚の程度が進んで行き、関節が変形をきたしていくことになります。 初期段階は、主に立ち上がりや、歩きはじめなど、動作の開始時に膝が痛みはじめますが休めば痛まなくなります。ところが、病状が悪化すれば正座や階段の昇降が困難となり、末期になると安静時にも痛みが走るようになります。こうなると関節部の変形も目立ち、膝が真っすぐに伸ばすことができなくなって最終的に歩行が困難になります。 3.変形性膝関節症は早期治療が大切 当初、症状が軽い場合には、内服薬や外用薬を使用して痛みを軽減し、膝関節内にヒアルロン酸の注射をおこなうことで動きをサポートします。 また、同時に保存的療法としてリハビリテーションを実践し、運動療法を行います。これは痛みを感じて動かさないよう安静にしすぎて関節が固まってしまうことを避けるために行うものです。 そのほかにも運動療法は、筋力の衰えを防いだり、その維持といった効果を見込んで行うものです。さらに加えて膝を温めたりする物理療法も同時に行われることもあります。 また、補助具として、足底板(インソール)を用いた補助や、サポーターなど膝装具を身に着けることで膝を固定、支えることで痛みや、膝の安定感を高め、動く際の不安感を取り除くこともできます。 治療のポイント/早期発見が選択肢を増やす 変形性膝関節症に早期に気づき、運動療法(リハビリ)に取り組むことで、悪化を防ぎます。運動療法でも痛みが引かない場合、薬物療法や物理療法、装具療法などで痛みを抑えながら、運動療法に取り組めるよう工夫します。 あらゆる手を尽くしても効果がみられない場合には観血療法、いわゆる手術療法という選択肢がありますが、手術の種類によっては進行しすぎていると実施できないケースがあります。 たとえば、体への侵襲が大きな人工関節置換術や高位脛骨骨切り術を、「今はしたくない」場合には、負担が少なく、術後の回復も早い関節鏡視下手術という選択肢があります。しかし、変形が進行した状態では、関節鏡視下手術をしたところで、改善が見込めない場合があります。 治療の選択肢 ・運動療法(リハビリ) ・薬物療法 ・物理療法 ・装具療法 ・手術療法(人工関節置換術、高位脛骨骨切り術、関節鏡視下手術) 早期発見で積極的に運動療法に取り組める 変形性膝関節症の治療の基本は運動療法ですが、初期から実施するのと、末期から実施するのでは大きな違いがあります。初期の運動療法には悪化を防ぐ目的があり、継続して行うとこれまで通りの生活を送れる可能性があります。 一方、発見が遅れた末期では、痛みが強く日常生活をまともに送るのは難しい状態です。そのため、満足に運動療法に取り組めず、これまで通りの生活を送れる可能性は低くなることから、早期発見が変形性膝関節症の治療において大切です。 膝関節の再生医療について 変形性膝関節症の一般的な治療方法は、リハビリ・関節注射・内服薬等によって痛みをコントロールする保存療法から始まりますが、変形が顕著で痛み等による日常生活への影響も大きい場合などには手術療法が選択されます。 基本的に関節の軟骨組織は自然治癒が難しく、軟骨組織の損傷により骨や半月板など周辺組織への影響も大きく出ます。痛みが強いために動くことが億劫になると、外出の機会が減り、生活の質が低下してしまうことも考えられます。 しかし中には、症状が進行していても様々な事情で手術の選択が難しい方もおられます。そのような方には、最新の治療方法として幹細胞治療があります。 幹細胞治療とは自身から取り出した脂肪組織に含まれる幹細胞を培養により増殖し、膝関節へ注入する治療法です。実は幹細胞には自ら傷ついている組織に集まり、その部分を再生させるホーミング効果というものがあります。例えば変形性膝関節症に対しては、注入された幹細胞が傷ついた関節軟骨や半月板に集約し、従来ではれば一度損傷すると治癒しないと言われていた関節軟骨や半月板が修復されます。 痛みの元凶である関節軟骨や半月板が再生されれば、痛みの減少に伴い活動量が増加され、生活の質の向上が期待されます。これまでの一般的な治療では効果が感じられない方にとって、再生医療による幹細胞治療は手術を受けない根本的治療として新たな選択肢となっています。 ▼最新の治療法についてはこちらもご覧ください。 膝の痛み/変形性膝関節症のおススメの最新治療法 ▼治療に取り組んでいるのに痛みが取れない方はこちら 変形膝関節症|なぜ痛みが取れない、治らない 4.変形性膝関節症の注意点 ただ、変形性膝関節症は進行性の病気なので、どのような治療を行っても症状が進行すると手術での治療を考慮しなければならなくなります。 ここでは個別に詳しく記載することはしませんが手術での治療としては、「関節鏡手術」、「高位脛骨骨切り術」、「人工膝関節置換術」などがあり、症状に合わせて実施しなければなりません。術後は、入院してのリハビリ等を含めた治療が必要となります。 このように、変形性膝関節症が明らかになると完治にいたらず、最終的に手術の選択が必要な病気です。そのため、膝に痛みや、違和感などの初期症状を感じたら、まずは病院等にて専門医の検査を受け、診断を仰ぐよう心得ましょう。 この病変は、治すことが難しい病気ですが、早期に治療を始めることで少なくとも進行を遅らせることができます。そのためにも日常生活における本疾患の予防方法として普段から気を付けて欲しいことがあります。 それは、大腿部の前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える。正座をさける。体重に気を配り、肥満を避け、膝を冷やさないよう、逆に温めて血行を良くするよう心がけてください。 生活面では、手すりを付けたり、足元に滑らないカーペットを敷いたり、もし、トイレも和式なら、かがまなくて済むよう洋式に変更するなど色々な面で改善が必要な事柄があります。普段の生活を根本から変えることを考えねばなりません。 進行を遅らせるヒント(適度な運動と普段の生活に気を付けましょう) ・大腿部の前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える。 ・正座を避ける ・体重に問題があったり、肥満気味であれば減量を心がける ・膝を冷やさないように注意する ・膝を温めて血行を良くする。 ・生活面で手すりを付けたり、足元を滑らないカーペットを敷き転倒したり、滑らないようにする ・トイレも和式なら、洋式に変更する ・地べたに座らず椅子に座る 変形性膝関節症と似たような病気 膝に痛みがあっても、全ての膝の痛みが変形性膝関節症ではありません。膝関節以外の痛みや発熱の有無など、問診や触診の情報を元に「関節リウマチ・痛風・化膿性関節炎」などを疑います。 検査では血液検査や関節液の成分を検査し、検査結果を元に変形性膝関節症以外の病気である要素を取り除いた上で、はじめて変形性膝関節症と診断されます。 ▼関節リウマチについてはこちらもご覧ください。 関節リウマチは、どんな病気?その初期症状と治療法 まとめ・変形性膝関節症の原因と初期症状、早期治療のポイント 変形性膝関節症は、関節のクッションの役割を果たす軟骨成分が、加齢や筋肉量の低下などにより擦り減って、最終的に骨に変形が起こり、膝の痛みが生じる病気です。 変形性膝関節症は人によって症状の出方や進行具合が異なります。変形が進んでいても、あまり痛みが出ない人もいれば、強い痛みがあっても、あまり変形が見られない人もいます。 初期の症状としては、「膝に違和感を覚える」ことが最も早く現れる症状であり、この段階では膝に負担がかかると痛みが少しある程度でそれも長続きすることは少ないです。 ただし、進行すると軟骨がすり減った分、膝関節の骨と骨のすき間が狭くなって内側の骨があらわになり、骨の辺縁にトゲのような突起物ができたり、骨が変形したりします。 また、関節をおおっている関節包と呼ばれる繊維膜の内側に炎症が起こるため、黄色味がかった粘り気のある液体が分泌されて、いわゆる「膝に水がたまった」状態にもなります。 変形性膝関節症は時間をかけて進行し、徐々に症状が重くなっていきます。そのため、違和感を感じた初期の段階!できるだけ早く治療を始めて、病気の進行を食い止めることが重要な視点となります。 最後に、変形性膝関節症で擦り減った軟骨は、元には戻らないが定説ですが、最新の「再生医療」なら、この軟骨を再生させることが可能になってきました。早めの受診で大きく改善する可能性があります。 いずれにしろ初期症状を感じたら早めの受診をおすすめ致します。 ▼こちらもあわせて読みたい 変形性膝関節症で必要な体重コントロールについて ▼半月板損傷との違いはこちらもチェックしておきましょう 変形性膝関節症と半月板損傷の違いをご存知ですか ▼手術について知りたい方は、こちらもご覧ください。 変形性膝関節症の手術と保険費用について詳しく解説します No.S013 監修:医師 加藤 秀一 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます
2021.11.25 -
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変形性膝関節症に東洋医学の鍼灸(はり、きゅう)治療は効くのか 「変形性膝関節症の悪化を防ぎたい」そんなお悩みありませんか? 変形性膝関節症は中高年以降に多く発生する疾患で、その原因は軟骨のすり減りを起因とし、膝に痛みや変形をもたらします。進行性の疾患だけに放っておくと悪化の一途を辿ります。 進行を防ぐためには生活習慣を見直し膝への負担を軽減させ、運動に取り組むことで膝の安定性を高めることが大切です。しかし膝に痛みがあると満足に運動に取り組むことができません。 そんな膝の痛みを緩和する手段には、湿布などの貼り薬や飲み薬のほかに、「鍼灸(しんきゅう)という選択肢」があります。 鍼灸はいわゆる「はり(鍼)」「おきゅう(灸)」と呼ばれ、中国を起源とした東洋医学の治療法です。しかし鍼灸に馴染みない方からすると、「そもそも効くのか」という疑問や、「痛そう」「熱そう」と不安を抱く方もいるはずです。 そこで今回の記事では、変形性膝関節症に対して鍼灸がどこまで効くのか、安全面は大丈夫なのか紹介します。変形性膝関節症の痛みで悩まれている方はご覧ください。 変形性膝関節症に鍼灸はどこまで効くのか 鍼灸の具体的な治療法は、体にある361箇所あるとされる経絡(ツボ)の中から、膝の痛みに適した場所に、鍼やお灸を使い刺激を入れていきます。鍼の刺し方・刺激の入れ方はさまざまで、奥が深い治療です。 鍼灸で期待できる効果 変形性膝関節症への効果ですが、膝の痛みの緩和と可動域の向上が期待できます。変形性膝関節症の基本的な治療法は、運動療法により膝周囲の筋肉を鍛えることで、安定性を高めることです。 しかし痛みにより膝を動かさなくなったり、運動する機会が減ると、可動域が狭まり膝の状態は悪化するという悪循環になりがちです。 ところが鍼灸により膝の痛みが緩和されると、日常生活が楽になるだけでなく、可動域が向上し運動療法にも意欲的に取り組むことができます。また膝が安定し、軟骨のすり減りを抑えることが、膝内部の炎症を防ぎ、膝に水が溜まる「関節水腫」の予防にもつながります。 2005年に発表された論文からも、変形性膝関節症の方に鍼を刺した群と、刺さない群では、鍼を刺した群の方が、膝の機能面、痛みに対して高い治療効果が現れることが分かっています。 参照:学会誌vol44-No2_本文-29.indd 4/8ページ https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsop/44/2/44_9/_pdf/-char/ja 鍼灸はなぜ効くのか 鍼灸は人間が持つ傷の修復作用を利用して、痛みにより固まった筋肉の緊張を緩和させます。人間が体に傷を負うと血液循環が促進されるのですが、鍼灸では鍼やお灸を使い、あえて微細な傷を作り出すことで、血液循環を促し筋肉の緊張を緩和させます。 変形性膝関節症に対して治療点は、膝の痛みや筋緊張に関与する場所に鍼や灸を施します。 経絡でのポイントは、衝門、伏兎、梁丘、血海、陰包、足三里、殷門、委中、陰谷、委陽、承山などです。 解剖学的なポイントは、大腿四頭筋、縫工筋、薄筋、大腿二頭筋、半腱・半膜様筋、前脛骨筋、腓腹筋(内側頭・外側頭)、膝窩筋、また、関節裂隙(大腿脛骨関節・膝蓋大腿関節)、鵞足、靭帯(腸脛靭帯、膝蓋靭帯、内・外側側副靭帯など)などです。 参照:学会誌vol44-No2_本文-29.indd 3/8ページ https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsop/44/2/44_9/_pdf/-char/ja 鍼灸でできないこと 鍼灸では血流を促すことで、筋肉の緊張や痛みの緩和はできても、変形性膝関節症のようにすり減った軟骨を再生させたり、変形を元に戻すことができません。軟骨の再生には再生医療という最新治療である自己脂肪由来・幹細胞治療というものがあり、変形を元に戻すには手術という選択肢があります。 鍼灸の安全性はどうなのか 鍼灸は痛い?熱い? 鍼はステンレスや銀製の極めて細い鍼を使用します。鍼の太さは直径約0.14mm~0.30mmと、人の髪の毛の太さ0.10mmと同程度なので、鍼を刺すときもほとんど痛くないといわれています。 お灸は、療部位に置かれたもぐさに火をつけることで、温熱効果が得られます。お灸の温度は熱ければあついほど効果があるわけではなく、経絡を刺激するには程よい熱さが効果的な点からも、痛みや熱さが苦手な方でも安心して受けられる治療法になります。 鍼灸は無資格でもできるのか 鍼灸は誰でも行えるわけではなく、国家資格が必要です。 国家資格を取るためには、高等学校卒業後、鍼灸を学べる専門学校や大学・視覚障害者のための教育機関に3年以上通います。 各学校を卒業後し、国家試験を受験・合格するとはり師・きゅう師の国家資格が取得できます。このように、体の専門的な知識と技術を習得した人しか鍼灸を人に施すことはできません。 ただし薬局などで販売されている火を使わないお灸や、貼るだけで効果が期待できる円皮鍼など、資格を有しない個人でも鍼灸を取り入れることができます。 しかし、変形性膝関節症は進行する疾患であることから、個人で治療方針や方法を決定せず、進行度合いを確認できる整形外科でみてもらいながら、はり師・きゅう師の国家資格保持者に鍼灸治療をしてもらうことをオススメします。 まとめ・変形性膝関節症に東洋医学の鍼灸(はり、きゅう)治療は効くのか いかがでしたか?ここまで変形性膝関節症の痛みに対して、鍼灸を使った治療法の効果と安全性を紹介してきました。 鍼灸により痛みの緩和、可動域の向上が期待できます。しかし変形やすり減った軟骨が元に戻るわけではありません。変形は高位脛骨骨切り術や人工関節置換術のような手術で元に戻せます。 また、軟骨の再生は自己脂肪由来幹細胞治療にて再生が期待できます。 鍼灸は歴史ある治療法で、髪の毛と同じくらいの太さの鍼と、心地よい温かさのお灸により変形性膝関節症の痛みにアプローチすることから、初めての方にも安心して受けられる治療法です。 鍼灸を受けるには、定められた学習過程を経て、国家試験に合格した鍼灸師が居る「鍼灸院」で受けるのが一般的ですが、鍼灸を薬局で気軽に取り入れられる物もあります。 しかし、体にある361箇所もの経絡から、変形性膝関節症に適した場所に、鍼やお灸をしてもらうには、やはり鍼灸師にみてもらうのが最善の方法です。これまで膝の痛みで悩み、湿布や痛み止めの薬での思ったような効果がみられなかった方は、鍼灸の治療を検討されてはいかがでしょうか? ▼ 再生医療は、手術や鍼灸に頼らず変形性膝関節症を改善できる 変形性膝関節症は、「再生医療」により症状を改善することができます 029 監修:医師 坂本貞範
2021.11.15 -
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変形性膝関節症の治療は整骨院でできるか?改善可能なのか! そんな疑問にお答えします。 変形性膝関節症は、中年以降の女性に多く発生する疾患で主に加齢から関節軟骨がすり減ることで、膝に痛みや変形をもたらす疾患です。 変形初期にはわずかに軟骨のすり減りが確認できる程度ですが、長年の年月をかけて徐々にすり減りや変形の程度が大きくなります。 放っておくと進行していく疾患であるため、膝の状態が悪化しないように生活習慣の見直しや、膝の周りを鍛える運動が必要不可欠となります。 ただ膝に痛みがある状態では運動に満足に取り組めないため、痛みの緩和を図るため、抗炎症・抗鎮痛作用のある薬を服用するほか、整骨院や鍼灸院、ヨガ・ピラティスなどの代替療法を検討される方もいるはずです。 その中でも整骨院は怪我の応急処置を専門とする場所であることから、体を傷めたときに整骨院を訪れた経験があるという方がおられるかもしれませんね? そこで今回は、変形性膝関節症の方が整骨院での施術で改善できるのか?また気をつけるべき点!について解説しますのでご覧ください。 整骨院での自費施術で改善が期待できること・期待できないこと 整骨院では変形性膝関節症に対して、緊張した筋肉へ血液の循環を促し、痛みの緩和と可動域の向上が期待できます。 施術の内容は、手を使い筋肉に刺激を入れるほか、ストレッチなどがあります。また膝の安定性を高めるためにトレーニングを提供している整骨院もあります。 このように膝そのものにアプローチする方法のほか、姿勢や歩行の改善をすることで、間接的に膝への負担を軽減させる施術を提供している所があったりと、その施術方法はさまざまです。 このように整骨院の施術では膝の痛みの緩和と可動域の向上が期待できることから、日常生活が楽になり、変形性膝関節症の治療の基本である運動療法にも、積極的に取り組むことが期待できます。 しかし、変形性膝関節症によって変形した関節を元に戻したり、すり減った軟骨を再生はさせることはできません。また変形性膝関節症に対しての施術は、健康保険が適応されず、全額自己負担になるため注意が必要です。 整骨院では変形性膝関節症に対して保険は効かない これまで整骨院を訪れたことがある人は、傷めた部位を冷やしたり、温めたりしてもらったかと思います。これらは主に健康保険を使用した施術で、患者様に施術費用の一部だけを負担してもらう仕組みにです。 しかし、変形性膝関節症に対しては例外なのです。 整骨院(接骨院)の開業は、厚生労働大臣からの免許を受けた国家資格を保持する柔道整復師の存在が不可欠です。柔道整復師の主な業務は、怪我に対して応急処置をすることで、柔道整復師が行う施術を「医療類似行為」といい、医師が行う治療=医業のように画像診断や、注射・手術はできません。 あくまで応急的もしくは、医療補助的方法により、患部の回復を図ることを、目的としています。 健康保険が適応される具体的な範囲は、「急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲、捻挫、肉ばなれ等」です。つまり以前から慢性化した肩こりや、長年の年月をかけて進行してきたような変形性膝関節症は健康保険適応外となるのです。 整骨院での自費施術の費用は院によりバラバラですが、3000円〜5000円程度が相場になります。 整骨院の自費施術を受ける際に気をつけること 病院にて変形性膝関節症と診断された後、整骨院の自費施術を受ける前には、気をつけるべき点があります。それは医師への相談と定期的に病院を受診することです。 前項で説明した通り、整骨院の自費施術の内容はさまざまです。整骨院で受けようとしている自費施術が、あなたの膝に余計な負担とならないのか医師に相談することが大切です。 また相談される際は、「整骨院の施術を受けても大丈夫か?」と聞くのではなく、整骨院で受ける具体的な施術方法を挙げることで、より医師もあなたの質問に答えやすくなります。 また整骨院の自費施術を受け、痛みが緩和したとしても、定期的な病院の受診は忘れずに行きましょう。変形性膝関節症の進行度合いを確認する画像検査は、整骨院ではできません。 まとめ・変形性膝関節症の治療は整骨院でできるか?改善可能なのか! いかがでしたか? ここまで変形性膝関節症の方が整骨院での施術で改善できるのか、また気をつけるべき点まで解説してきました。変形性膝関節症に対して整骨院の施術を受けることで、膝の痛みの緩和と可動域の向上が期待できます。 しかし変形を元に戻したり、変形が起こる起因となる、すり減った軟骨を再生させることはできません。変形を元に戻すには手術が必要です。 また、軟骨を再生させるには最新医療の「自己脂肪由来・幹細胞治療」という再生医療という選択肢もあります。 変形性膝関節症に対して自費施術を受ける場合には、医師と相談し、自分に合った施術方法を取り入れましょう。ただし整骨院は病院と違い、レントゲン撮影はできないため、その進行度を確認することはできません。 自費施術で痛みの緩和がみられたとしても、変形性膝関節症の進行度は痛みの程度と比例するとは限らないことから「良くなった!治った!」とご自身の体感で判断はせずに、定期的に病院を受診し、画像診断で膝の状態を確認することが大切です。 また整骨院は痛みに対して処方される「ロキソニン」などをはじめとする第一類の医薬品の取り扱いができないことから、痛みがきつい時には、迷わず病院を受診するようにしましょう。 ▼ 再生医療は、変形性膝関節症を根本治療できる方法です。 変形性膝関節症は、再生医療で手術を避けて改善することが可能です 028 監修:医師 坂本貞範
2021.11.15 -
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変形性膝関節症の最新治療|ヒアルロン酸注射ではできない軟骨の再生! はじめに 「変形性膝関節症」と診断され、ヒアルロン酸を注射をしているけど「思ったより効果がみられず困っている・・・」こんなお悩みはありませんか? 注射と言えば炎症や痛みに対して、ヒアルロン酸や、ステロイドを関節内にすることが多々ありますが、これらの注射は一時しのぎで根本的な治療にはならず、症状は進行を続け、最終的に人工関節などの手術に頼ることになりかねません。 これらの注射は、一時的に痛みを緩和できても、痛みの原因となっている傷んだ軟骨を再生させる力は無いことが常識でした。しかし、最新の治療法である「再生医療」がこの常識を覆したのです。 ヒアルロン酸、ステロイドでの治療は、その場しのぎで根本治療にはならない 再生医療で叶える変形性膝関節症の根本治療!軟骨を再生させる あなた自身の幹細胞を使った安全で、しかも手術不要、入院も不要の最新医療 そこで今回は、「注射で軟骨が再生する」変形性膝関節症の最新治療と題して変形性膝関節症に対する治療法をご紹介します。 まずは、これまで変形性膝関節症の治療に使われてきた、「ヒアルロン酸注射」、「ステロイド注射」をについて紹介し、最新の再生医療での治療法である「PRP療法」「自己脂肪由来・幹細胞治療」をご紹介しましょう。 膝関節へのヒアルロン酸注射について さて、膝関節へのヒアルロン酸や、ステロイドの注射は、関節の潤滑性を高めたり、炎症や痛みを抑える目的で使われるものです。関節内にある関節液は、関節軟骨を保護し、膝の動きを滑らかにサポートする潤滑油の役割を果たしています。 そんな関節液の潤滑成分としてヒアルロン酸が含まれていることから、変形性関節症で枯渇したサラサラの関節液に対して、ヒアルロン酸を関節内へ注射することで潤滑性を高めて動きをサポートさせます。 しかし、ヒアルロン酸を注射をしたところで、痛みの原因である「軟骨が再生されることはありません」 今、まさに治療を行われている方なら、お分かりかもしれませんが慣れてくると注射後2〜3日、中には1日ほどで、また痛みに悩まされることも少なくないのです。 ヒアルロン酸注射の頻度・回数は、ヒアルロン酸に含まれる分子量により異なります。この分子量が高いほど関節内で長時間留まるとされています。ただ、実際に痛みを回避するには週に1回から、いずれは3回~注射することになりかねません。 膝に水が溜るとは 膝に炎症が起こり、水が溜まることがあります。これを「関節水腫」といい、膝に水が溜っていたらヒアルロン酸注射の前にこの水を抜いてやる必要があります。 なぜなら膝に水が溜まった状態でヒアルロン酸注射をしたところで、溜った水によってヒアルロン酸の濃度が薄められ、効果が半減されてしまうからです。更に、溜まった関節液には、炎症を悪化させてしまうサイトカインという物質も含まれています。 また稀にヒアルロン酸にアレルギー反応を起こす場合もあるため、万人が受けられるわけでもありません。 膝へのヒアルロン酸 効果 問題 注意事項 ・膝軟骨を保護 ・膝の滑らかな動きをサポート ・軟骨を再生するものではなく ・改善等の根本治療にはならない ・効果が続かない(3日ほど) ・水が溜る「関節水腫」になる危険性 「ステロイド注射」で痛みは消えるが、注意すべきこと 痛みや炎症が強い時は、ステロイド薬を関節内へ注射します。ステロイド注射はヒアルロン酸注射と比べ、痛みを抑えるのに非常に高い効果を発揮するとの報告が多くあります。 ただし、注意しておきたいのは、ステロイド注射を多用すると副作用があること。それは骨や、軟骨の新陳代謝をステロイドが阻害したことによって起こる可能性のある「骨壊死」、関節が破壊される「ステロイド関節症」というもので注意が必要です。 このようなステロイド注射による副作用を防ぐためには最低でも6週間置いての注射とし、できれば3ヶ月ほどは、間隔を空けるべきであることを知識として知っていて欲しいと思います。短期での連続した注射や長期間に及ぶ使用は避けるべきです。 繰り返しになりますがステロイド注射による痛みの改善は一過性であり、変形性膝関節症の痛みの起因となる、すり減った軟骨が元に戻るわけではありません。痛いからと、使い方を誤ると副作用という大きな危険性があります。 ここまでヒアルロン酸や、ステロイドとしった痛みを抑える目的で使われる注射を紹介しました。 次に自分の血液や細胞を使うことで「アレルギー反応が起こりにくい」「軟骨の再生を期待できる」最新の注射による治療方法を紹介します。 膝へのステロイド注射 効果 副作用 副作用を抑えるための注意事項 膝の意痛みを抑える 膝の炎症を抑える ・骨や軟骨の新陳代謝を阻害 → 骨壊死、 → 関節が破壊されるステロイド関節症 ・6週間置きの注射 ・3ヶ月間は空ける ✕ 短期での連続した使用 ✕ 長期間に及ぶ使用 膝の痛みを消すだけ、変形性膝関節症の痛みの起因となる、すり減った軟骨が元に戻るわけではない 再生医療|変形性膝関節症に対する最新の幹細胞治療とは PRP(Platelet-Rich Plasma=多血小板血漿)療法 PRP療法とは、患者様の血液を採取し、血液中に含まれる血小板の多い血漿だけを抽出し、膝へ注射する治療法です。多血小板血漿には、組織や細胞の成長を促す成長因子が多く含まれています。 そのため、高い治癒効果が期待できる方法といえます。またヒアルロン酸と違い、自分の血液を使用することでアレルギー反応が出にくいのも特徴です。PRP療法は、近年耳にする機会が増えた「再生医療」に分類される治療法です。 まだ日本では保険が適応されない自由診療となるため、ヒアルロン酸注射やステロイド注射のように気軽に打てる金額ではない点がデメリットになります。 また再生医療を扱うには「再生医療等の安全性確保等に関する法律」に基づき、厚生労働省に認可された医療機関、専門医にしかできない治療法になっているため、近所の整形外科で簡単にできるわけではありません。 ただ、そのため、安全性が確保されている治療法とも申せます。 「軟骨が再生する!」自己脂肪由来・幹細胞治療 主に皮下脂肪にある幹細胞組織を使い、軟骨をはじめとして、さまざまな組織に再生させる機能を持つ、可能性に満ちた治療法です。 幹細胞は、軟骨や皮膚、骨などに分化(複雑なものに発展していくこと)する機能があります。体から採取した幹細胞を培養(増やす)して膝の関節内へ注射することで、傷んだ軟骨の再生を期待することができ、これまでになかった治療法になります。 幹細胞は骨髄からも採取することはできますが、より侵襲が少ない皮下脂肪から採取されるのが一般的です。PRP療法と自己脂肪由来幹細胞治療の違いそれでは同じ再生医療の分野であるPRP療法と自己細胞由来幹細胞治療とは何が、どう違うのでしょうか? PRP療法は、傷んだ組織に対して組織や、細胞の成長を促す栄養素が含まれている「多血小板血漿」を注射します。もともと血小板の役割に成長因子の分泌がありますが、「多血小板血漿」には通常の血小板と比べて3〜5倍もの成長因子があることが特徴です。 これによりヒアルロン酸注射にはできなかった慢性化した患部の修復や、治癒を高めることができます。 その一方でPRPには幹細胞が含まれていないので、軟骨を再生することはできません。自己脂肪由来幹細胞治療では、さまざまな組織に分化(変化)する働きをもつ幹細胞を、何千〜何百万倍も培養し、膝に注射します。 幹細胞が集中的にすり減った軟骨に働きかけ、これまで不可能とされてきた軟骨を再生させます。また注射する幹細胞の数にも注目すべきで海外の臨床データによると幹細胞の数が多いほど治療成績が良いことがわかっているからです。 なぜなら培養せず注射する治療法をADRC(脂肪組織由来再生幹細胞治療)セルーションと言うのですが、培養を行わないため幹細胞の数自体が少ないことになるからです。 その意味で治療を受ける際は、受診するクリニックが幹細胞を培養しているか確認することは大切なことになります。PRP療法は注射で実施できることから、傷口は小さくてすみます。 自脂肪由来幹細胞治療も米粒2〜3粒ほどの脂肪を摂取するために、下腹部周辺を5ミリほど切開しますが、投与自体はPRPと同じく直接膝に注射することため、大きな傷口を作ることはありません。 日帰りで受けられるこれまでには無かった治療法です。なお自己脂肪由来幹細胞治療もPRP療法ともに自由診療で、認可された医療機関でしか行えません。 再生医療 PRP療法 幹細胞治療 軟骨 再生できない 再生する アレルギー ⇒ 出にくい 治療 ⇒ 専門医、専門院に限る 種類 再生医療 変形性膝関節症|再生医療なら注射で「軟骨が再生する」/まとめ いかがでしたか?変形性膝関節症に対する従来の注射「ヒアルロン酸注射」と「ステロイド注射」、最新治療の注射「PRP療法」「自己脂肪由来幹細胞治療」の役割を紹介しました。 これまで変形性膝関節症に対する注射は、痛みを抑え、少しでも悪化を遅らせる目的で使用されてきたものですが、再生医療であるPRP療法・自己脂肪由来幹細胞治療により、治癒そのものを促進させ、失われた軟骨を再生させることで回復を目指す!といった今までには無かった前向きな治療法です。 変形性膝関節症の痛みで悩み、薬や注射をしたけれど「期待していた効果を感じられなかった」「できるだけ手術はしたくない」という思いがある方は、薬や注射といった薬物療法と手術の中間に位置する再生医療での治療を検討してみてはいかがでしょうか。 ▼膝の再生医療を詳しくお知りになりたい方は以下をクリックしてください。 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます No.026 監修:医師 坂本貞範
2021.10.23 -
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変形性膝関節症の手術別の入院期間とリハビリについて 変形性膝関節症と診断され、手術を検討されている方にとって、色々な面で不安や疑問は多いものですね。いざ手術を受けようと思っても、人によってはお仕事や、家庭など理由は様々、家を空けられない事情もあるはずです。 特に術後の「入院期間」は、「リハビリ」を含めて気になるところでしょう。 その変形性膝関節症の手術として代表的なのが「関節鏡視下手術」「高位脛骨骨切り術」「人工関節置換術」ですが、受ける手術によって入院期間は異なります。 受ける手術によって入院期間は変わります。手術によって退院するまで短くて数日、長くて1ヶ月以上と差があります。膝に痛みや、しびれなどの異常を感じて整形外科等、医療機関を受信、検査を経て手術が必要という診断を受けた場合。 以下に示すような3種類の手術が考えられます。そこで今回は、変形性膝関節症の手術にかかる入院期間に併せてリハビリの内容を解説してまいります。 入院期間 1.関節鏡視下手術 2.高位脛骨骨切り術 3.人工関節置換術 4.参考)再生医療:入院不要 1.関節鏡視下手術の場合、入院期間は2〜3日 関節鏡視下手術とは? 関節鏡視下手術は、変形性膝関節症の手術の中でも1番入院期間が短い手術になります。この手術は、他に比べて最も入院期間が少なく、手軽に受けることが可能です。 手術の方法としては、カメラ・ハサミや鉗子など手術器具を入れるために膝の周囲に小さな孔を2〜3ヶ所開けます。そちらにカメラを入れてモニターに映し出された映像をもとに傷んだ関節軟骨・半月板・滑膜・骨棘を切除するほか、癒着した関節包をはがします。 麻酔は下半身のみで、手術時間も短く1時間程度です。 関節鏡視下手術の特徴は、「骨切り術」や「人工関節置換術」と比べ、皮膚の切開範囲が小さく、体への侵襲(影響)が少ないことから、入院から退院までの期間が短く、年齢問わず受けられる手術法となります。 また関節鏡視下手術や、耐久性に寿命がある人工関節置換術に踏み切る前段階の手術としても有効です。 関節鏡視下手術は、患者様の7〜8割に効果が認められた手術法でありますが、手術の適応(可否)は、膝の変形が軽度から中程度の変形性膝関節症の方が対象になるため、この術式を行うには変形が進行しすぎないよう早期発見が重要です。 関節鏡視下手術の術後のリハビリと退院までの経過 手術直後は、ベッド上にて安静に過ごします。手術による炎症を抑えるためにアイシングを行います。血栓を防ぐために、脚の位置を高く保つほか、弾性ストッキングにて血流を促します。 リハビリは、術後、翌日からは積極的な運動療法を行い、全体重を乗せて歩けるように行います。数日間は痛みを感じますが、できる限り膝の関節を動かすことで血栓を予防します。 多くの場合、手術の翌日から、2日後には退院できます。 退院しても痛みは数週間続きます。手術前と同じ生活を送るには2〜3週間、膝に痛みや違和感を感じなくなるまでに3〜6ヶ月かかります。 変形性膝関節症も、初期の段階であれば、この関節鏡視下手術で済み、体への負担も非常に少なく済みます。ただし、この術式で痛みなどの症状が改善しない場合もあることもあります。 膝に違和感を感じたら放置することなく、早期に整形外科等、医療機関で医師の診断を受けることが大切になります。症状が進行して悪化すると次で紹介するような、より重い術式を選択する必要性が出てまいります。 やはり病気は早期発見が大切ということです。 2.高位脛骨骨切り術の場合、入院期間は5〜6週間 高位脛骨骨切り術とは? 高位脛骨骨切り術は、膝にかかる決まった方向への負担を減らす手術法です。膝の軟骨がすり減ってしまい、変形性膝関節症になると、O脚方向へと変形していきます。 骨切り術では脛骨を楔形に骨を切りとり、プレートで固定することで、X脚方向へと膝の角度を調整します。これによって膝の内側にかかっていた負担を外側へ移行させ、内側・外側に均等に荷重が掛かるようにするものです。 手術時間は1時間30分程度です。 関節鏡視下手術と比べて体への侵襲(負担)は高いですが、関節鏡視下手術同様に、自分の関節を残すことが特徴です。人工関節置換術のように正座ができなくなるなど、関節運動に制限がかかることはありません。 「自分の関節は残したい」と思う方は、人工関節置換術に踏み切る前段階の手術としても有効です。 高位脛骨骨切り術の術後のリハビリと退院までの経過 高位脛骨骨切り手術の当日は安静に過ごしますが、関節鏡視下手術に比べ血栓ができやすいため、術後は、フットポンプにて脚の血流を促すようにします。このフットポンプは、多くの場合、2日目には取り外し、車椅子での移動が可能になります。 また、膝の安定性を図るため装具を装着します。 フットポンプとは フットポンプは、手術後などで寝たままになる患者の静脈への血栓塞栓症を予防するために用います。足の下腿 といわれる膝と足首との間の部分を断続的に圧迫を繰り返して下肢静脈の流を手助けする医療器具です。 リハビリテーション リハビリで膝の運動を行う場合、持続的関節他動訓練器(CPM:continuous passive motion)を使い膝の屈伸を行います。 持続的関節他動訓練器(CPM:Continuous Passive Motion)とは この機械は、関節の曲げ伸ばし、屈曲・伸展といった運動を自動的に連続して行えもので、主に下肢への術後、リハビリ用いることが多い。 時間を設定して運動速度、曲げる角度を変えて行うことができる。メリットは、荷重をかけることなく関節の屈伸運動を行えることにあります。 患者さんの体重や、矯正角度により、リハビリの進行度合いには差が出るものの、1週目から少しずつ体重をかけ、3週目から両側で松葉杖をつき歩行を開始します。 ただし患側へかける負荷は体重の1/2程度です。そして、5週目頃には全体重をかけて歩く練習をします。尚、高位脛骨は術後3年を目安に固定していたプレートを取り外すため手術が必要になります。 退院の目安は、松葉杖なしで階段の歩行練習・退院後の動作練習がスムーズにできることです。退院時からデスクワークや多少の早歩き、車の運転ができるようになります。 ただ、長時間の立ち仕事は浮腫み(腫れや、むくみ)やすいので3ヶ月は避けた方が良いでしょう。杖を使わず歩けるようになるには退院後約2ヶ月はかかります。 3.人工関節置換術の場合、入院期間は約1ヶ月 人工関節置換術とは? 変形性膝関節症の変形が進んだ場合、すり減った軟骨や骨を、チタンやセラミックなどを使った人工関節に入れ替える手術法です。術後は膝を傷める以前のような状態をほぼ取り戻すことができ、膝の痛みなく歩くことができます。 ただし、正座のように膝を深く曲げる動作ができなくなるため、手術を行うには患者様の生活習慣や活動量を考慮しなければなりません。骨切り術より入院期間が短いことから、仕事や日常生活への復帰が早く見込めることが特徴です。 手術時間は2時間程度です。 人工関節置換術の術後のリハビリと退院までの経過 人工関節置換の手術直後は弾性ストッキングを着用し、浮腫(腫れや、むくみ)を予防し、その軽減に努めます。また膝関節は安静にし、足関節の運動を行います。 骨切り術同様に翌日からは車椅子での移動ができ、5日目からは歩行器を使い移動します。同時に松葉杖での歩行指導が始まり、徐々に歩けるように練習していきます。10日目には、関節の角度を90度くらいまで曲げられるよう回復を目指します。 リハビリは、退院に向けて、車椅子・歩行器・杖等を使って元の日常生活に戻れるよう訓練を続けます。退院の目安は1本杖での歩行、階段昇降、床からの立ち上がり、股関節屈曲100〜120度可能などです。 日常生活への復帰の目安は術後1ヶ月程度です。 ただし、知っておかねばならないことに、「人口関節には耐用年数があるということです。」その期間は、概ね15年程度と言われていて、すり減りや、感染、緩み次第では、再手術の可能性があるということです。 将来、耐用年数が過ぎると再度、同じ人工関節へお置換手術をしなければならない可能性があります。 まとめ/変形性膝関節症の手術別の入院期間とリハビリについて ここまで変形性膝関節症と診断され、手術を検討されている方に向けて変形性膝関節症の手術にかかる入院期間から、リハビリの内容までを紹介しました。関節鏡視下手術の入院期間は2〜3日、人工関節置換術の入院期間は約1ヶ月、高位脛骨骨切り術の入院期間は5〜6週間です。 入院期間だけで比べると、関節鏡視下手術が最も短いのですが、それが良いことかというと、実は、そうでもないのです。もちろん、この術式だけで回復する例も多数ありますが、そうではないこともあります。 実は、関節鏡視下手術をしても、痛みが改善されないことがあります。その場合は、再手術が必要となり、高位脛骨骨切り術や人工関節置換術を実施しなければなりません。 手術を検討されている方は、入院期間はもちろんのこと、術後のリハビリ、退院後の再手術の可能性、ご自身の膝の痛みの程度、生活環境を考慮し、主治医としっかりと話し合いを重ねた上で、判断することが大切です。 4.参考)入院不要な再生医療の可能性 変形性膝関節症に関する手術について記してまいりましたが、実は、もう一つの治療方法があります。それは、「再生医療」と言われるものです。上記で書いたような手術的アプローチとはまったく違う方法で改善を図るものです。 詳しくは、以下のページに記載していますが、これまで「すり減った膝の軟骨を再生することは不可能」といわれてきましたが、医療技術の進歩で自己治癒力を用いて軟骨の再生を目指せる先端医療です。 そのため、変形性膝関節症であっても手術自体が不要。当然、入院も必要ありません。日帰りで行える新しい先端治療です。 入院期間 1.関節鏡視下手術 約2〜3日 2.高位脛骨骨切り術 約5〜6週間 3.人工関節置換 約1ヶ月 4.再生医療 不要 上記は手術を行った場合の目安です。入院期間は、各個人の症状や経過によって変わります。再生医療は入院が不要です。 No.0025 監修:医師 坂本貞範 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により入院不要、手術せずに症状を改善できます
2021.10.19 -
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変形性膝関節症の治療で薬物療法の種類と悪化を防ぐポイント ご自分が服用している薬についてご存知ですか? 変形性膝関節症の炎症や痛みに対して行われるのが薬物療法です。しかし薬物療法を実施している人の中には「自分がどんな薬を服用しているのだろうか」「薬だけで治るのだろうか」という疑問を持つ方もいらっしゃるはずです。 実際、薬物療法により炎症を抑え、痛みを緩和できますが、その種類によっては胃腸障害などの副作用が出ることもあり、注意が必要なこともあります。 ご自身の薬について、理解した上で服用したいものです。そこで今回、薬物療法の種類と「変形性膝関節症の悪化を防ぐポイント」について解説してまいりましょう。 変形性膝関節症に対しての薬物療法 膝に痛みがある場合、まずは膝に負担がかからないように生活習慣を変えるのですが、それでも痛みを感じ、日常生活に支障がでたり、運動療法に取り組めない場合には薬物療法の対象になります。 変形性膝関節症の薬物療法に使われる薬は、外用薬(塗り薬、貼り薬)・内服薬(飲み薬)・座薬があり、使用の際は副作用に気をつけながら使い分けねばなりません。 基本的には、外用薬・内服薬・座薬で炎症を抑え、炎症が落ち着いたらヒアルロン酸注射により膝の潤滑を高めます。膝の痛みを抑え、関節の動きを滑らかにすることで日常生活の負担を軽減し、積極的に運動療法に取り組みます。 変形性膝関節症の炎症や痛みに対して、まず初めに使われるのが、抗炎症作用がある湿布や塗り薬です。効果がみられなければ、鎮痛作用のあるアセトアミノフェン、次に非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDS)、(ロキソニンという名前を聞けばご理解も早いと思います。)などが使われます。 また最初から非ステロイド性抗炎症薬が使われることもありますが、副作用に胃腸障害や消化管潰瘍の危険性が高まることから、長く使い続けることは避けるべきです。 非ステロイド性抗炎症薬でも効果がみられない場合は、鎮痛効果が強い医療用麻薬のオピオイド鎮痛薬が使われます。 変形性膝関節症治療に使われる薬の種類を紹介 変形性膝関節症の治療、薬物療法に関する主な薬について以下に記しました。 アセトアミノフェン 抗炎症作用はありませんが、鎮痛効果があり、妊娠中にも使われることから比較的安全性が高いことが特徴です。しかし副作用がない訳ではありません。鎮痛薬は痛みがある時だけ使いましょう。 ・副作: 肝障害、食欲不振、胃痛、消化器症状 ・商品名: アンビバ、カロナール、ピリナジンなど 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) よく知られている「ロキソニン」などもこの種類に含まれ、変形性膝関節症に多く使われるのが、この非ステロイド性抗炎症薬です。非ステロイド性抗炎症薬は鎮痛効果や抗炎効果がありますが、長期間使用すると胃腸障害などを引き起こすことがあるため、注意が必要です。 非ステロイド性抗炎症薬の中には胃腸障害が起こりやすいもの、起こりにくいものがあり、胃腸や粘膜を保護する薬を一緒に飲む必要があります。 ・副作用: 胃腸障害、消化管潰瘍、気管支炎、肝障害、腎障害 ・商品名: ロキソニン、ボルタレン、ナボールSR、インテバンなど COX-2(コックスツー)阻害薬 非ステロイド性消炎鎮痛薬より、副作用が起こりにくいため、長期間の使用に向いています。ただし非ステロイド性消炎鎮痛薬に比べると、鎮痛効果がやや弱いもの特徴です。 ・副作用: 胃腸障害 ・商品名: セレコックス、モービック、ハイベン、オスペラックなど オピオイド鎮痛薬 非ステロイド性消炎鎮痛薬でも効果が見られない場合に使われます。オピオイド鎮痛薬は強い鎮痛効果がある医療用麻薬です。医療用麻薬と効くと怖いとイメージされる方もいますが、医師の指示のもと、正しく使用すれば安全に大きな効果が期待できます。 ・副作用: 便秘、吐き気、めまい、眠気 ・商品名: トラムセット、トラマール、ノルスパンテープなど 外用薬・内服薬・座薬の使い方の違いを紹介 変形性膝関節症の炎症や痛みを抑える薬には、外用薬(塗り薬や貼り薬)、内服薬(飲み薬)、座薬(直腸から薬剤を吸収)があります。まずは外用薬を使い、十分な効果がみられない時には内服薬を使い、痛みがきつい時には即効性のある座薬が使われます。 どの薬を使うかは痛みの程度や、薬の扱いやすさを考慮して選択します。担当医の説明をよく聞き、自分自身の生活習慣なども伝えて相談しながら決めましょう。また副作用については薬局の薬剤師の説明を聞き、異変があればスグに担当医や薬剤師に相談しましょう。 外用薬(湿布や塗り薬) 手軽に使える点から、痛みに対して最初に処方されることが多いです。皮膚から吸収された成分が効率よく膝に運ばれ、重い副作用が起こりにくい反面、作用はおだやかです。また強い痛みには適さず、皮膚のかぶれに注意して使用します。 内服薬(飲み薬) 外用薬と同じように手軽に行える上、効果が高いことが特徴です。しかし成分によっては副作用が出やすく、胃腸薬の併用が必要なこともあります。医師や薬剤師の説明に留意して服用しましょう。 座薬 即効性があり、強い痛みに有効です。また重い副作用が出にくい特徴があるものの、薬剤の挿入に時間がかかることがあり、しっかり挿入しないと効果がないので慣れが必要です。 悪化を防ぐには運動療法を組み合わせることが重要 ここまで変形性膝関節症の薬物療法について紹介してきました。薬を使うことで痛みを緩和させることができます。しかし「薬だけで膝の状態は良くなっていくか?」というと、そうではありません。 変形性膝関節症の治療の基本は運動療法です。運動療法により、膝周囲に筋力を鍛え関節を安定させます。しかし膝に痛みがあると、歩行や大腿四頭筋の筋力トレーニングにも支障が出ます。 痛みをかばい、膝を動かすことができなければ、筋力や関節の可動域はさらに低下し、変形性膝関節症は悪化します。 このような悪循環を止めるために薬物療法が用いられます。薬物療法により、膝の炎症や痛みを抑えますが、併せて運動療法に取り組むことが、変形性膝関節症の進行を遅らせることができます。 変形性膝関節症の治療「薬物療法」の種類と悪化を防ぐポイント/まとめ 変形性膝関節症の痛みに対して、「薬物療法の種類」と悪化を防ぐポイントを解説しました。薬は炎症や痛みを抑えますが、副作用を考慮し、痛みのある時だけ使い、予防的に飲むことは避けましょう。 また痛みが緩和すれば安心ではなく、基本は運動療法です。膝周囲のトレーニングにより変形性膝関節症の進行を遅らせることができます。 中には膝の痛みに対して、市販薬を服用される方もいるはずです。市販薬でも病院の処方薬と比べ、有効成分の含有量は少ないですが効果はあります。 しかし変形性膝関節症は進行する可能性があることから、市販薬で痛みを凌ぐだけでなく、膝の状態をできればMRIなどを使った正確な画像検査で診断を受け、患者様にあった薬を処方してくれる病院の受診をおすすめします。 No.0024 監修:院長 坂本貞範 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により薬に頼らず症状を改善することができます
2021.10.11 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 膝の慢性障害
高位脛骨骨切り術の利点と知っておきたいデメリット 変形性膝関節症の治療方法には、大きく分けて「保存療法」と、「手術療法」の2つがあります。 保存療法にはリハビリテーション、装具療法、薬物療法などがあり、これらを色々と組み合わせることで行われます。そして、手術という選択肢は保存療法で効果が得られない場合に検討することになります。 手術療法の中でも、特に「高位脛骨骨切り術」と呼ばれる手術は、O脚変形のために内側部(内側大腿から脛骨関節)に偏った過重なストレスを、自分の骨を切って少し角度を変える処置が施されるものです。 この手技によって、膝の内側部に過度の負担となっていた外力のベクトルを比較的きれいな軟骨の存在する外側部(外側大腿から脛骨関節)に移動させることが出来ます。 一般的には、手術を受けた結果として通常では脚の形はO脚からX脚に変化します。 この手術治療では、患者さんの膝関節が温存できますので、正座が引き続き可能であり、普段の生活はもとより、スポーツや、農業などの仕事へ復帰出来る方々も多くいらっしゃいます。 一方で、ある程度の入院期間が必要で術後に骨が癒合するまでの間、痛みが多少なりとも続くことや、膝関節部周囲の機能的な回復には、リハビリをしっかりと行うことが必要となってきます。 そこで今回は、高位脛骨骨切り術が適応となる症例や高位脛骨骨切り術について予後に後悔のないように、その利点、メリットとデメリットについて説明していきましょう。 高位脛骨骨切り術が適応となる症例とは? まず過度なスポーツ活動による関節に対して負担の大きな動き、専門的に言うと膝内反モーメント(ひねり)の増大により内側骨端線が早期閉鎖して脛骨内反(O脚)が起こりやすく、普段の生理的なレベルを逸脱した脛骨内反そのものが将来の「変形性膝関節症」の発症リスクとなります。 要は、通常とは違う動き、激しい動き、加重、ひねり、衝撃などが繰り返されることで関節の負担が増えると、同時に関節症のリスクも増えるということです。 後悔先に立たず!激しい運動の前には、ストレッチや準備体操をしっかり行い、終わりには整備体操やストレッチなどを入念に行うなど体に対する十分なケアを忘れず実施しましょう。 加えて申し上げるなら、これら体操やストレッチも自己流ではなく、適切な方法をトレーナーなどから指導を受けて行うべきです。通常では、股関節から足の甲までを一直線に結ぶ線を「荷重線」といいます。 一般的に変形性膝関節症を罹患している方の多くは、この荷重線が膝の内側を通っているので、膝の内側に荷重がかかり過ぎて膝に障害が起こります。高位脛骨骨切り術では、この「荷重線」を膝の中心に近づける手術を行います。 ではどんな方々がこの手術を受ける対象になるのでしょうか 一般的には、高位脛骨骨切り術の適用年齢は、概ね50歳〜75歳までで、変形性膝関節症を認める症例の中でも中程度の変形を呈する方に薦められることが多いです。 若年者でも症状が強いケースであるならば高位脛骨骨切り術を行って、下肢機能軸や脛骨近位の内反角を正常化すべきであるという意見もあります。 また、人工膝関節置換術は、骨と人工の異物を接合する都合上、ゆるみなど再手術が必要になることがあり、そうなれば初回の手術よりも再手術は、手技的に難しくなることがあります。 そのため、再手術のリスクを避けるために65歳よりも若い方にはこの高位脛骨骨切り術が勧められています。 また、変形性膝関節症の症状が中程度までで、まだまだ運動や肉体を使う仕事を続けたいなどの場合を含めて年齢を問わず活動性が高い患者さんには本手術治療を受けることをお勧めします。 高位脛骨骨切り術のメリットとデメリット さてここからは、「高位脛骨骨切り手術」自体の利点と欠点について紹介していきます。 まずは利点、「メリットから」ご説明します 高位脛骨骨切り術では、O脚に変形した脚を、X脚ぎみに矯正して変形性膝関節症の進行を遅らせることが出来る唯一の術式と考えられています。この手術の最大のメリットは、最終手段の人工関節を使わずに「自分の関節を残したまま」で症状を改善することが期待できる点です。 また、比較的侵襲(体への負担)が少ない手術であり、手術後の日常生活に対する制限も少なく、スポーツさえ継続できて、要否はともかく正座が可能になる症例も多く見受けられるため、変形性膝関節症において現在最も推奨される治療法であると言えるでしょう。 しかも、最近の高位脛骨骨切り術は、新しい手術方法が開発された結果、術後早期からの歩行も可能になっています。 入院期間も従来の人工膝関節置換術とほとんど変わらず、およそ4週間~6週間が平均的です。 高位脛骨骨切り術を受けた場合のリハビリは、術後1週間位から徐々に膝に体重をかけ始めて、3週間以内には全体重をかけて歩行訓練を施行します。そして、4週間~5週間程度で安定した歩行、階段の昇降、日常生活動作などをクリアすることで軽快退院の運びとなります。 次に、知っておくべき欠点、「デメリット」に関するお話しです 従来の高位脛骨骨切り術は、骨癒合までの数ヶ月間、手術した足に十分な体重をかけることが出来ず、入院が長期にわたるのが欠点でした。そのため、仕事をお持ちの方にとって復帰に時間が必要なことは大きな欠点でした。 そして、これまでにも高位脛骨骨切り術の処置に伴って腓骨短縮などの合併症や有痛性偽関節(骨がくっつかず、痛みも出る)が引き起こされることが問題としてあります。 また、高位脛骨骨切り術を受けたのちに、骨が癒合するまで多少なりとも膝部の痛みが続くと言われており、実際に術後の痛みが軽快して骨癒合が完了するまでに個人差はあるものの、およそ半年以上は時間がかかるとも伝えられています。 つまり、膝機能がある程度満足が得られるレベルまで回復するためには、気苦労の多いリハビリをコツコツ、しっかり行う必要があると言えるでしょう。 高位脛骨骨切り術のメリットとデメリット/まとめ 変形性膝関節症は慢性疾患であり、骨肉腫などのように、命に関わるといった疾患ではありません。従って、どのような治療法を選択するかは、患者さん一人ひとりが望むゴールによって変わってきます。 例えば、変形性膝関節症を抱える80代の高齢者であっても、「登山や舞踊が長年の生き甲斐なので今後もあきらめずに続けたい」などの目標がある場合には、高位脛骨骨切り術で自分の関節を温存できるようにチャレンジするケースもあります。 高位脛骨骨切り術とは、脚の形をO脚からX脚に変える手術であり、変形性膝関節症によって内側に偏っている過重ストレスを自分の骨を切って角度を変えることによって反対の外側に移動させる治療方法です。 この手術では、術後に多少疼痛は伴うデメリットが挙げられる一方で、自分の関節を温存して機能を維持することができるために術後の日常生活にほとんど制限がない所が大きなメリットと言えます。 いずれにしましても病院等の医療機関を受診され、しっかりご相談されることをおススメします。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 S006 監修:医師 加藤 秀一
2021.10.09