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「乳がん治療後の痛みがひどい…」 「手術後、腕や脇辺りが腫れていて痛む」 乳がんの手術後は上記のような痛みを感じることがあります。 手術後長期間にわたって慢性的に続く痛みは「乳房切除後疼痛症候群(PMPS)」と呼ばれています。 また、薬物療法による副作用で痛みが残ることもあり、適切な対応を行わないと日常生活に支障をきたすことがあります。 こうした状況を避けるためには、乳がんの治療とその後遺症、特に痛みについて理解を深めることが重要です。 もし後遺症の痛み治療に行き詰まりを感じたら、再生医療も検討しましょう。 この記事を読むとわかること 乳がん手術後の後遺症の種類 乳がんのステージ分類と治療方法 術後後遺症についてよくあるQ&A 後遺症に対する再生医療の可能性 それでは、乳がん治療後の痛みの種類とその対処法について詳しく見ていきましょう。 乳がんの手術後の慢性的な痛みと後遺症 基本的に、どんな手術や治療にも合併症が起こり得ます。 もちろん、乳がんの治療も例外ではありません。 治療後、長期間にわたって後遺症に悩まされることもあるでしょう。 本章では、乳がん治療の合併症とその対処方法について詳しく見ていきます。 手術後に痛む「乳房切除後疼痛症候群(PMPS)」 乳房切除後疼痛症候群(PMPS)は、乳がんの手術後に乳房、胸部、腋窩、上腕にかけて起こる慢性的な痛みです。 PMPS は、手術で肋間上腕神経などの神経が損傷されることで起こる神経障害性疼痛に分類されます。 乳房切除後疼痛症候群(PMPS)の主な症状は、火傷をした後のようなひりつく痛みやびりびりした痛みです。 痛みとともに、何かが挟まっているような違和感を覚える方も多くいます。 下着がすこし擦れただけでも強い痛みを感じるという方もいるのです。 これらの症状は仕事や日常生活に支障をきたしたり、うつ病・適応障害などの精神障害と関与したりする可能性があります。 治療の中心は薬物療法です。一般的な痛み止めはあまり効果がありません。 神経の痛みを抑える薬・抗うつ薬・抗けいれん薬などが処方されます。 また、痛みで関節や筋肉が動かせなくなり、日常生活に影響が出ている方はリハビリも必要です。 心理的な因子や症状の精神面での影響を評価してサポートすることも考慮されます。 乳がんの転移による「骨の痛み」 乳がん治療後の痛みは、ほかにもあります。 乳がんの転移が多い場所の一つは骨です。 転移が起こった骨は、骨折をしやすくなります。 治療後も、骨折の痛みが残ってしまう可能性があります。 また、抗がん剤治療による副作用も少なくありません。 一部の抗がん剤では末梢神経障害を起こします。 手や足のびりびりした痛み・しびれが起こると、長期間持続することもあります。 手術後の合併症「リンパ浮腫」 術後の合併症で多いリンパ浮腫は通常痛みを伴いません。 しかし、急激に腫れたり感染を合併したりすると痛みが起こることがあります。 このように、がんの治療後の痛みは様々です。 まずは、痛みの原因を探り、それぞれに適した対応をしていく必要があります。 乳がんのステージ分類について 乳がんはその進行の度合いにより、0期からⅣ期までのステージに分類されます。 ステージを決定するのは、がんの大きさや広がり・リンパ節転移の有無・遠隔転移の有無といった要素です。 なお、遠隔転移とは他の臓器への転移のことで、乳がんが転移しやすいのは骨・肝臓・肺・脳などです。 以下に各ステージについて解説します。 <乳がんのステージ分類> 遠隔転移(他の臓器への転移)がない場合 → 0〜Ⅲ期のいずれか 0期 非浸潤がん(乳がんが、発生した場所にとどまっており、広がったり転移を起こしていたりしない状態) Ⅰ期 がんの大きさが2cm以下+リンパ節転移をしていない ⅡA期 がんの大きさが2cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されておらず動く) がんの大きさが2cm以上5cm以下+リンパ節転移がない ⅡB期 がんの大きさが2cm以上5cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されておらず動く) がんの大きさが5cm以上+リンパ節転移がない ⅢA期 がんの大きさが5cm以下+腋窩リンパ節に転移がある(リンパ節は固定されているか、リンパ節同士が癒着している) がんの大きさが5cm以下+腋窩リンパ節に転移がない+内胸リンパ節に転移がある がんの大きさが5cm以上+腋窩リンパ節あるいは内胸リンパ節のどちらか一方に転移がある ⅢB期 がんが胸壁に固定されている がんが皮膚に食い込んでいたり、皮膚から出ていたりする 炎症性乳がん(乳房が腫れたり赤くなったりといった炎症を伴う乳がん) ⅢC期 腋窩リンパ節と内胸リンパ節のどちらにも転移がある 鎖骨の上あるいは下のリンパ節に転移している 遠隔転移(他の臓器への転移)がある場合 →Ⅳ期 乳がんの手術・治療法について 乳がんの治療は外科的手術・放射線治療・化学療法(薬物治療)の3つを組み合わせて行います。 これから紹介するのはあくまでも標準療法です。 実際には患者様の状態や希望にあわせて臨機応変に治療が行われます。 治療を受ける際には、担当の医師としっかり話をした上で選びましょう。 本章では、先ほど紹介した乳がんのそれぞれのステージごとに、選択されることが多い治療内容を紹介していきます。 <0期からⅢA期の治療について> 0期からⅢA期の乳がんでは、治療の中心は手術です。 がんのサイズや広がり方で、乳房の切除範囲が異なります。 がんが小さければ乳房部分切除術が可能です。 最近では、早期のがんはラジオ波で焼いたり、内視鏡の手術で切除したりという方法も徐々に広まってきています。 一方、大きい場合や広がりが大きい場合は、乳房全切除術を行わなければなりません。 リンパ節への転移が疑われれば、その部位のリンパ節も切除します。 また、状況に応じて放射線療法を行なったり、手術の前や後に薬物療法を行ったりすることもあります。 患者様のご希望に応じて、乳房再建術を検討します。 <ⅢB期からⅣ期の治療について> ⅢB期からⅣ期の場合の中心は薬物療法です。 患者様の体の状態や希望・がんの性質など様々な要因を加味して治療薬を選びます。 乳がんの薬物療法で使う薬には一般的な抗がん剤のほか、ホルモン療法薬や分子標的薬と呼ばれる薬もあります。 分子標的薬とは、がん細胞に特有の遺伝子・タンパクなどをターゲットにした治療薬のことです。 治療の効果・症状の経過次第で手術や放射線療法が追加されることもあります。 <再発した場合の治療について> 再発した乳がんの場合には、その再発部位により治療法が異なります。 手術を受けた側の乳房やその周囲の皮膚、リンパ節に発生する局所領域の再発では、治癒を目指して手術でがんを切除します。 必要に応じて放射線療法や薬物療法を併用します。 手術で切除するのが難しいような局所再発や、他の臓器への遠隔再発では、薬物療法を中心に行います。 <緩和ケアについて> がんの患者様は緩和ケアを受けることができます。 緩和ケアは、がんで苦しんでいる人たちが、できるだけ穏やかに生活できるように助けるためのケアです。 緩和ケアは終末期のケアというイメージがあるかもしれません。 しかし、実はがんと診断されてからいつでも緩和ケアを受けることができます。 がんに伴うつらい症状を和らげるだけでなく、気持ちの落ち込みや不安を軽くしたり、生活での困りごとに対処したり、人生の意味についての悩みにも対応します。 患者様とその家族が抱えるいろいろな苦しみに対して、身体的、精神的、社会的な面から全体的に支援するのが緩和ケアなのです。 まとめ|乳がんの手術後の痛みは乳房切除後疼痛症候群などの可能性あり 乳がんはその進行の度合いにより、治療は手術や薬物療法など多岐にわたります。 乳房切除後疼痛症候群(PMPS)や乳がんの転移による骨の痛み、手術後の合併症リンパ浮腫など様々な原因が考えられます。 これから治療を受ける方は、ご自身の治療内容についての説明をよく聞いてどのようなことに気をつけるべきかしっかり理解しましょう。 後遺症に悩まされている方は、一人で抱え込まずに主治医に相談してください。 後遺症の痛みの治療に行き詰まったら、再生医療も一つの選択肢です。一般的に神経の障害は治らないとされています。 しかし、幹細胞治療とよばれる再生医療では、神経の修復ができるかもしれません。 当院「リペアセルクリニック」では、幹細胞治療を提供しています。実際に乳がん治療の後遺症の痛みにお困りの方の治療実績もあります。 【関連記事】 乳がん術後後遺症のしびれや胃腸障害、倦怠感が改善!50代女性 再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひお問合せください。 乳がんの手術後の後遺症に関してよくある質問【Q&A】 Q:乳がん手術後ずっと痛みが続きます。いつ良くなりますか? A:乳房切除後疼痛症候群において、症状が改善するまでは長い時間がかかる可能性があります。 例えば、国内の報告では、術後9年経過後も21%、およそ5人に1人が痛みを抱えていると言われています。 自然に良くなると思わず、早めに受診をすることをご検討ください。 Q:乳がん手術後の痛みは何科に相談したら良いの? A:麻酔科やペインクリニックなどで相談すると良いでしょう。 お近くにそういった医療機関がない、どこに行ったら良いかわからない場合は、主治医やかかりつけ医に相談することをおすすめします。 必要に応じて専門の病院・クリニックなどを紹介してもらうことができます。 Q:乳がん手術後の腕や脇の腫れが治まりません A:乳がん手術後の腕や脇の腫れ(リンパ浮腫)は、手術や放射線治療によるリンパ管の詰まりが原因で起こることがあります。 対応としてまずは、腕の傷のケアを徹底しましょう。 小さな傷でも感染のリスクがあるため、アルコール消毒と軟膏の使用がおすすめです。 リンパの流れを改善するために、リンパマッサージやアームスリーブの着用も有効です。 適度な腕の位置調整(長時間座る際は心臓より高くする)や、重い物を持たないようにすることも大切です。 少しでも腫れを引き起こしている原因を少なくする対応が重要です。 もし腫れが続いたり、腕が赤く熱を持ち、強い痛みや発熱を伴う場合は、速やかに医師に相談しましょう。 参考文献 小島圭子. Practice of Pain Management 5(3): 164-168, 2014. 国立がん研究センター プレスリリース. 早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法による切らない治療が薬事承認・保険適用を取得先進医療制度下で実施した医師主導特定臨床研究の成果を活用. 国立がん研究センター. がん情報サービス. 乳がん 治療. 日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドライン 2022年版. 日本乳癌学会. 患者さんのための乳癌診療ガイドライン2023年版.
2024.08.28 -
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胃がんは、日本で罹患数が多いがんのひとつです。 手術によって治療を行うケースも多いですが、術後はダンピング症候群や下痢、栄養障害、胆石症、骨粗鬆症などさまざまな後遺症が起こる可能性があります。 症状に応じて食事療法や栄養補助食品の使用、手術などが行われます。 また、近年では長く続く痛みや長期的ながん予防には再生医療といった新しい選択肢もあります。 この記事では、胃がんの症状や原因、診断や治療法の他、術後の後遺症の種類や後遺症に対する対処法、また、再生医療の可能性について詳しく解説していきます。 胃がんの手術をこれから受ける予定で術後について不安がある方、また術後後遺症でお悩みの方はぜひ参考にしてください。 胃がん手術後の後遺症に対しては、再生医療も治療選択肢の一つです。 胃がん手術後の後遺症のお悩みを今すぐ解消したい・再生医療に興味がある方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。 胃がん手術後の後遺症と対処法 胃がんの手術後には「胃切除後症候群」と呼ばれるさまざまな後遺症があらわれることがあります。 代表的な後遺症として、以下が挙げられます。 ダンピング症候群 貧血 消化・吸収不良(体重減少) 骨粗鬆症 胆石症・胆嚢炎 これらの後遺症は症状の内容や程度によって対応方法が異なります。 たとえば、食事の摂り方を工夫したり、薬物療法や栄養補助食品を取り入れることで改善を目指すことが可能です。 なかには時間の経過とともに軽快するものもありますが、長引く症状は放置せずに医師へ相談することが大切です。 ①ダンピング症候群 胃を切除すると食べ物を一時的にためる容量が減り、胃酸の分泌も少なくなります。 その結果、通常よりも濃い内容物が一気に腸内へ流れ込み、ダンピング症候群が起こります。 食後すぐに動悸・立ちくらみ・めまい・吐き気・発汗などが出るのを「早期ダンピング症候群」、食後2~3時間後に疲労感・失神・手の震えなどが出るのを「後期ダンピング症候群」と呼びます。 対処法 1時間以上かけてゆっくり食べる 1回の食事量を減らして1日5~6回に分けて食事する よく噛んでから飲み込む 食事中の水分摂取を減らす ②貧血 胃酸の分泌が減ることで胃からの鉄の吸収が妨げられ、胃の切除から数カ月で鉄欠乏性貧血を起こしやすくなります。 さらに数年経つと、胃の壁から分泌される内因子というビタミンB12の吸収を助ける糖たんぱく質が減り、ビタミンB12欠乏による貧血が生じることもあります。 対処法 鉄剤の内服 ビタミンB12注射補充 ③消化・吸収不良(体重減少) 胃酸や消化酵素の働きが低下し、さらに手術で迷走神経を切除すると消化管の動きも弱くなります。 その結果、栄養をうまく吸収できず体重が減少してしまいます。 対処法 一度に多く食べず、少しずつ時間をかけて食べる 医師や栄養士に相談しながら食事の調整を行う 少量で効率よく栄養が取れる補助食品を活用する ④骨粗鬆症(こつそしょうしょう) 胃を切除すると胃酸分泌の減少や腸内細菌の変化が起き、カルシウムの吸収が低下します。 その結果、骨がもろくなり骨粗鬆症のリスクが高まります。 対処法 カルシウムやビタミンD製剤の服用 骨密度を上げる薬の使用 ⑤胆石症・胆嚢炎 胃切除後は胆嚢の動きが弱まり、胆石ができやすくなります。 胃切除後の患者様の、2〜3割にみられます。 対処法 無症状の場合は経過観察 発作や胆嚢炎を起こした場合は治療が必要 根治的には胆嚢摘出術(場合によっては胃切除と同時に行うこともある) 胃がん手術後の生活と注意点|食事・仕事復帰・痛みのケア 胃がんの手術後は、後遺症だけでなく日常生活の工夫や体調管理が大切です。 食事の取り方や復職のタイミング、さらに長引く痛みやしびれへの対処について理解しておくことで、術後の生活をより快適に過ごすことができます。 ここでは、生活上のポイントを3つの観点から解説します。 食事の工夫(食べ方・避けたい食品・おすすめ食品) 手術後は胃の容量が減り、消化や吸収がスムーズにいかなくなります。 そのため、少量をゆっくり、回数を分けて食べることが基本です。 1日3食ではなく、5〜6回に分けて摂取する よく噛んでゆっくり食べる 食事中や直後の水分は控えめにする 避けたい食品には、高脂肪・刺激物・アルコールなどがあります。 一方で、消化に良い白身魚や豆腐、柔らかい野菜スープなどはおすすめです。 栄養士のアドバイスを受けながら、自分に合った食生活を整えると安心です。 日常生活と仕事復帰の目安 退院後すぐに無理をすると体力の回復が遅れてしまうため、段階的に日常生活に戻ることが大切です。 軽い散歩などから始めて体力を徐々に回復させる 車の運転や重い荷物の持ち運びは医師に相談してから 仕事復帰はデスクワークであれば数週間〜1カ月程度、肉体労働ではさらに時間がかかるケースが多い 個人差はありますが、医師の診断を受けながら無理のない復帰スケジュールを立てましょう。 痛みやしびれが長引く場合の対処 手術後に感じる痛みやしびれは、通常は時間とともに改善します。 しかし、3カ月以上続く場合は「遷延性術後痛」の可能性があります。 これは手術による神経障害や心理的要因などが関係しており、自己判断で我慢するのは危険です。 医療機関での適切な検査・治療を受ける 鎮痛薬や神経障害に対応した薬の使用 必要に応じてリハビリや心理的サポート 症状を早期に医師へ相談することで、回復を早めることができます。 胃がんとは【基礎知識】 胃がんは、胃の内壁を覆う粘膜の細胞が異常に増殖し、がん化することで発生します。 日本では比較的多くみられるがんの一つで、早期発見が治療の鍵となります。 胃がんの症状 胃がんは初期段階では自覚症状がほとんどないのが特徴です。 そのため、検診で偶然見つかるケースも多くあります。 初期 無症状 進行すると 吐き気や嘔吐 貧血によるふらつき 吐血 腹痛 など 胃がんの原因 胃がんの発生にはいくつかの要因が関わっています。 代表的なものは次の通りです。 ヘリコバクター・ピロリ菌感染 高塩分食 喫煙 ストレス アルコール 刺激物 これらの要因が複合的に作用し、胃の粘膜にダメージを与えることで発症リスクが高まります。 胃がんの診断 診断には次のような検査を組み合わせて行います。 胃内視鏡検査(胃カメラ) 内視鏡で採取した組織の病理診断 血液検査 CT検査 胃X線検査 これらを総合的に判断して確定診断がなされます。 胃がんの治療法 胃がんの治療には以下の方法があります。 内視鏡治療(早期がんに有効) 外科的手術(胃を部分的またはすべて切除) 化学療法(抗がん剤治療) 放射線療法 進行度(ステージ)に応じて適切な治療法が選ばれます。 とくに外科的手術では胃を一部またはすべて切除することが多く、その結果として「胃切除後症候群」と呼ばれる後遺症が発生する場合があります。 長く続く胃がん手術後の痛みと再生医療の可能性 胃がんの手術後、時間が経っても傷跡の痛みや周囲のしびれが続くことがあります。 これが3カ月以上続く場合、「遷延性術後痛」の可能性があり注意が必要です。(文献1) 遷延性術後痛の原因は複雑で、手術による神経障害だけでなく、精神的・心理的因子や遺伝的素因、生活環境などが絡み合って生じることがあります。検査をしても原因が特定できないケースも少なくありません。 手術の後遺症に対しては、再生医療という治療法があります。 当院では、再生医療の「自己脂肪由来幹細胞治療」と「PRP(多血小板血漿)療法」を行っています。 治療法 方法 特徴 所要時間・治療時間 自己脂肪由来幹細胞治療 脂肪から幹細胞を採取・培養し、点滴で投与する 幹細胞が他の細胞に変化する「分化能」という能力を活用した治療法 入院・手術を必要とせず日帰りの施術が可能 脂肪の採取(約30分) 細胞培養(約1カ月) 特定細胞加工物の投与 静脈点滴投与(約80分)/ 局所投与(約5分~) PRP(多血小板血漿)療法 血液を遠心分離して血小板を濃縮し、患部に投与 血小板の成長因子が持つ「炎症を抑える働き」を活用した治療法 入院・手術を必要とせず日帰りの施術が可能 ・採血・加工・投与(約30分~) 長期にわたる痛みやしびれは、身体的なつらさだけでなく、気分の落ち込みやうつ状態を引き起こすこともあります。 症状が改善すると、活動範囲が広がり、精神的・社会的にも患者様の満足度が上がります。 ▼実際に当院では、乳がん術後の化学療法で末梢神経が障害され、長い間足のしびれと原因不明の胃腸症状・倦怠感に悩まされていた患者様が、幹細胞治療によって改善した症例を経験しています。 また、再生医療のひとつであるNK(ナチュラルキラー)細胞免疫療法は、がんの予防に有効とされています。 自己の血液中にある免疫細胞の一種、NK細胞と呼ばれるものを血液から採取し、培養後に点滴でまた体内に戻す治療です。 当院「リペアセルクリニック」の免疫細胞療法については、以下をご覧ください。 まとめ|胃がん手術後の後遺症は生活習慣の工夫で改善できる 胃がんは初期に症状が出にくく、腹痛や嘔吐などの症状が出たときには手術が必要な状態になっていることも少なくありません。 手術後は胃切除後症候群と呼ばれる後遺症が生じることがあり、代表的なものにはダンピング症候群、消化・吸収不良、貧血、骨粗鬆症、胆石症などがあります。 これらの症状は、食事の摂り方を工夫したり、不足する栄養素を補ったりすることで改善を目指すことが可能です。 また、手術後に長く痛みやしびれが続く「遷延性術後痛」に悩まされる場合もあり、身体的・精神的なサポートが必要となります。 再生医療は、末梢神経障害を根本的に治療できる手立てとして注目されており、今後ますます普及していくことが予想されます。 胃がん手術後の後遺症は一人ひとり症状の現れ方が異なるため、気になる症状がある場合は早めに医師に相談し、生活習慣の工夫と適切な治療を組み合わせて改善を目指すことが大切です。 再生医療に興味がある方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお問い合わせください。 胃がんに関してよくある質問 胃がんは日本人に多いがんの一つであり、手術後の生活や再発の可能性など、患者様やご家族にとって気になる点は少なくありません。 ここでは、よく寄せられる質問をピックアップし、わかりやすく解説します。 胃がんの罹患者数や死亡率は他のがんと比べてどれくらい多いの? 2021年の部位別がん罹患数では、男性の胃がんは前立腺がん、大腸がん、肺がんに次いで4番目に多く、女性の胃がんは乳がん、大腸がん、肺がんに次いで4番目に位置しています。 また、2023年の部位別がん死亡数では、胃がんは肺がん、大腸がんに次いで3番目に多く、男女別でみると男性は3番目、女性は5番目という結果でした。(文献2) 胃がんは依然として日本における主要ながんの一つといえます。 若年者に多くて進行も早い胃がんの種類があるって本当? 胃がんは内視鏡やX線の所見から、以下のように分類されます。 表在型(0型) 腫瘤型(1型) 潰瘍限局型(2型) 潰瘍浸潤型(3型) びまん浸潤型(4型) この中で、びまん浸潤型(4型)にあたるスキルス性胃がんは、若年者や女性に多くみられるタイプです。 胃の壁が硬く厚くなり、進行が速く、腹膜転移が起こりやすい特徴があります。 そのため早期発見・早期治療が非常に重要です。 参考文献 (文献1)遷延性術後痛の対策|日本ペインクリニック学会誌 (文献2)がんの部位別統計|公益財団法人 日本対がん協会
2024.08.22 -
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大腸癌の手術を終えた後、多くの方が「これからの生活はどうなるのだろう」「再発のリスクは?」と不安を抱きます。 実際には、排便リズムの乱れや体力低下、合併症のリスクなど、手術後ならではの課題があります。 しかし、手術後に起こりやすい症状や生活上の工夫を理解しておけば、不安を軽減し安心して回復へと進むことが可能です。 本記事では、大腸癌手術後の後遺症や合併症による体の変化、そして日常生活で取り入れたい工夫についてわかりやすく解説します。 また、大腸癌手術後の合併症や後遺症に対しては、再生医療も治療選択肢の一つです。 手術後の体調変化や生活面でのお悩みを今すぐ解消したい・再生医療に関心のある方は、当院「リペアセルクリニック」の電話相談までお気軽にお問い合わせください。 大腸癌手術後の体の変化 大腸癌の手術後は、身体的負担で体力が落ちたり、腸の動きが一時的に乱れて排便リズムが変化するなど、体にさまざまな変化が起こります。 さらに、回復過程での不安や気持ちの揺れから、精神的な負担を感じる方も少なくありません。 ここでは、大腸癌手術後に起こる主な3つの体の変化について解説します。 体力の低下 大腸癌手術後は、体力が落ちて「少し歩くだけで疲れる」「家事が思ったよりもつらい」と感じることが多くあります。 体力の回復には個人差がありますが、退院後すぐに以前のように動ける人は少なく、日常生活に無理なく戻れるようになるまでには数週間から数カ月かかるといわれています。 無理をせず、短い散歩や軽い活動から少しずつ体を慣らしていくことが、焦らず回復を進めるコツです。 担当の医師やリハビリの専門家と相談しながら、ゆっくりと生活のリズムを取り戻していきましょう。 排便リズムや便の状態の変化 大腸癌の手術後、腸の一部を切除した影響から、排便リズムや便の状態が大きく変わる場合があります。 下痢や便秘、頻便、残便感、ガスがたまりやすい状態、お腹の張りなどが起こりやすく、手術後数週間から数カ月間は排便の不安定さを感じる方が多いです。 これは腸が新しい状態に慣れるまでの自然な経過で、徐々に落ち着いてくることがほとんどです。 また、症状を和らげるための工夫として、水分補給や消化に良い食事、腹部マッサージなども役立ちます。 ただし、排便やガスが全く出ない、強い腹痛や嘔気、血便などの症状がみられる場合は、腸閉塞や他の合併症の可能性があるため、速やかに医療機関への相談が必要です。 心理的な不安や落ち込み 大腸癌の手術後、体の回復と同時に「再発の不安」や「これからの生活がどうなるか」といった将来への不安を抱える方が多く、気持ちが沈んだり落ち込んだりする場合があります。 これは「手術後うつ」と呼ばれることもあり、誰にでも起こりうる自然な反応です。 沈んだ気持ちをそのままにしておくと、眠れなかったり、食欲が減るなど、普段の生活や対人関係にも影響を及ぼす可能性があるため、早めの対処が大切です。 一人で抱え込まずに家族や友人、医療スタッフなど、信頼できる相手に気持ちを話すだけでも心の負担が軽くなる場合もあるため、必要に応じて、精神的なサポートを受けることを検討しましょう。 大腸癌手術後に起こりやすい3つの後遺症 大腸癌手術後、長期的に続く後遺症が起こることがあります。 代表的な後遺症として、次の3つが挙げられます。 排尿・性機能への影響 排便障害 人工肛門(ストーマ)造設による生活の変化 それぞれの後遺症について、詳しくみていきましょう。 排尿・性機能への影響 大腸癌手術や治療の影響により、以下のような排尿や性機能に関する症状が現れる場合があります。 排尿がスムーズにできない 尿意を感じにくい・残尿感が続く 勃起機能の低下や射精の変化 性欲の減退 上記症状は、時間の経過とともに回復するケースが多いですが、場合によっては薬やカテーテルの使用が必要になることもあります。 また、症状の程度や回復の速さは個人差が大きいため、手術前から医師と十分に相談し、必要に応じて泌尿器科など専門医のサポートを受けることが大切です。 排便障害 大腸癌の手術によって、大腸の一部を切除したり、手術の影響で腸や臓器同士がくっつく「癒着」が生じたりすると、長期的な排便障害が残る場合があります。 代表的な症状は、次の3つです。 便失禁 頻便 残便感 排便障害は腸の切除範囲や神経への影響によって起こりやすく、時間がたっても改善しにくいケースがあります。 生活の質に大きく関わるため、上記のような症状が続く場合は我慢せず医師に相談し、薬の使用や骨盤底筋トレーニングなどのリハビリを取り入れることが大切です。 人工肛門(ストーマ)造設による生活の変化 人工肛門(ストーマ)とは、手術で腸の一部をお腹の表面に出し、そこから便を排泄できるようにした出口のことです。 腸の切除範囲が大きい場合や、縫合部を安静に保つ必要がある場合に、一時的または永久的に造設されます。 ストーマを造設すると、専用の袋で便を受け止める排便方法になるため、生活習慣が大きく変わります。 最初は管理や外出に不安を感じる方も多いですが、正しいケア方法を身につければ、入浴や旅行、仕事など日常生活をこれまで通り送ることも可能です。 また、皮膚のトラブル予防や、身体イメージの変化に伴う心理的な負担への対応も大切です。 専門の看護師やサポートを活用すると、安心してストーマと向き合う生活を続けることができます。 大腸癌手術後に注意すべき3つの合併症 大腸癌の手術後には、後遺症のほかにも合併症が起こることがあります。 ここでは、大腸癌手術後に起こりうる以下3つの合併症について解説します。 感染症や創部トラブル 縫合不全 腸閉塞・イレウス それぞれ、詳しくみていきましょう。 感染症や創部トラブル 大腸癌手術後は、縫合部分(創部)やお腹の内部で細菌が感染を引き起こし、次のような症状が現れることがあります。 発熱 傷口の赤みや強い痛み 膿(うみ)が出る 腹部の張りや痛みが続く 上記の症状がみられたら、創部感染や腹腔内感染を疑う必要があります。 こうした症状を放置すると、炎症が広がったり、全身状態が悪化したりする可能性があるため、速やかに医療機関に相談しましょう。 縫合不全 大腸癌の手術では、癌を含む腸の一部を切除したあとに、残った腸同士をつなぎ合わせる「吻合(ふんごう)」 という処置を行います。 この腸管を再びつなぎ合わせた部分(つなぎ目)がうまくくっつかず、接合部が開いてしまう状態を「縫合不全」と言います。 縫合不全になると腹腔内で炎症や感染が起こり、次のような症状が現れ、重症化すると腹膜炎や敗血症など命に関わる合併症を引き起こす可能性もあります。 発熱 吐き気や腹痛 腹水(お腹の中の水) 下痢や下血 縫合不全は早期発見と治療が重要なため、違和感や異変を感じた場合はすぐに医師の診察が必要です。 腸閉塞・イレウス 腸閉塞とは、腸の中で物理的なつまりが起こることで、食べ物やガスが通れなくなる状態を指します。 一方で、イレウスは腸の動きが麻痺したり痙攣(けいれん)し、内容物の通過がうまくいかない「機能的な通り道の障害」です。 どちらの場合も、次のような症状が現れます。 激しい腹痛 吐き気・嘔吐 お腹の張り 便やガスが全く出ない 上記症状は放置すると重篤になる可能性があるため、早めの医療機関への受診が必要です。 大腸癌手術後の生活で気をつけたいこと 大腸癌手術後は、体力や腸の働きが少しずつ回復していくため、生活の中でいくつかの工夫が必要になります。 ここでは、運動、食事、社会復帰の3つの視点から大腸癌手術後の生活について解説します。 運動とリハビリの進め方 大腸癌の手術後すぐは体力が落ちているため、無理に動くと体に負担がかかります。 まずはベッドの上で体を動かすところから始め、退院後は短時間の散歩など軽い運動を取り入れると良いでしょう。 目安としては、手術から1カ月ほど経ち、医師の許可が得られればウォーキングなどの有酸素運動を少しずつ再開できるケースが多いです。 無理のない範囲での継続が、体力回復や気分のリフレッシュにつながります。 食事の工夫と栄養管理 大腸の一部を切除すると、消化や排便のリズムが乱れやすくなります。 そのため、消化に良い食材を中心に選び、油っこい料理や香辛料の強い食品は控えることが大切です。 一度にたくさん食べるのではなく、少量を数回に分けて食べる「少量頻回食」を意識すると、腸への負担を軽減できます。 また、たんぱく質やビタミンなど体の回復に必要な栄養素をバランスよく摂ることも重要です。 仕事や日常生活への復帰目安 大腸癌手術後は、体力や体調が安定するまでに時間がかかるため、社会復帰にはある程度の時間が必要です。 一般的には手術後1〜3カ月ほどで職場や日常生活に少しずつ復帰できる人が多いですが、最初のうちは短時間勤務や在宅勤務を取り入れるなど、無理をしないことが大切です。 また、肉体労働や長時間の勤務は体に負担をかけやすいため、医師の判断を参考にしながら段階的に生活を整えていきましょう。 大腸癌手術後の予後・再発率について 大腸癌の手術後の予後や再発率は、癌の進行度(ステージ)によって大きく異なります。 大腸癌の再発は、手術後の経過の中でもとくに注意が必要で、ステージが早いほど再発のリスクは低く、進行している場合ほど再発や転移の可能性が高まります。 以下表は、5年生存率や手術後再発率をステージごとにまとめたものです。(文献1,2,3) ステージ 5年生存率の目安 手術後再発率の目安 0期 (上皮内がん・粘膜内がん) 非常に高く、ほぼ再発なし ごくわずか (再発は極めて稀) I期 約90〜95% 約3~6%程度 II期 約80~85% 約13~15% III期 約60~70%程度 約30%前後 IV期 (遠隔転移あり) 大幅に低下 (進行具合や治療内容によって大きな差がある) 再発率・転移の可能性が高い (統計値はさらにばらつきがある) ※数値は過去の臨床研究やがん情報サイトによる平均値であり、実際のリスクは年齢・癌の場所(結腸か直腸かなど)、手術後の治療内容、遺伝的要因、術中の状況などによって個人差があります。 統計的には、再発の8〜9割が手術後3年以内に起こり、およそ95%は手術後5年以内に確認されているため、手術後5年間の定期的な経過観察が非常に重要とされています。(文献4) 経過観察は再発や転移を早期に見つけるため、腫瘍マーカーを調べる血液検査やCT・MRIなどの画像検査、大腸内視鏡検査を組み合わせて行います。 再発が見つかった場合でも、その広がり方や部位によっては再手術や化学療法によって治癒や長期的なコントロールを目指せる可能性があります。 再発リスクを少しでも減らすためには、手術後の生活習慣改善や必要に応じた追加治療を取り入れることが大切です。 大腸癌手術後の再発予防と長期的なケア 大腸癌の手術後は、生活習慣の見直しや家族や支援サービスの利用、そして定期的な検査による経過観察が予後を左右します。 ここでは、再発予防と安心して生活を送るための具体的なポイントを紹介します。 生活習慣の改善 大腸癌手術後の再発リスクを下げるためには、日々の生活習慣を整えることが重要です。 野菜や魚を中心としたバランスの良い食事を心がけ、脂っこい食べ物や加工肉の摂取は控えめにしましょう。 また、禁煙も癌の再発予防に直結する大切な習慣であり、アルコールのとりすぎにも注意が必要です。 さらに、無理のない範囲でウォーキングなどの適度な運動を続けることは、体力回復だけでなく免疫力の維持にも役立ちます。 免疫細胞療法 免疫細胞療法は、自分の免疫細胞を活性化させてガン細胞を攻撃する力を高める治療法で、癌の再発予防や補助療法の一つとして注目されています。 手術や抗がん剤治療と併用されることもあり、副作用が比較的少ない点が特徴です。 まだ新しい治療法ではありますが、再発への不安を抱える方にとっては、今後の治療選択肢の一つとなり得ます。 詳細は専門の医療機関で相談し、適応があるかどうかの確認が大切です。 家族や福祉などサポート体制の活用 大腸癌の手術後は、体調や気持ちの面で不安が続くこともあり、家族や身近な人のサポートが非常に大切です。 全国に設置されている「がん相談支援センター」では、医療や生活に関する相談を無料で受けられるため、必要に応じて活用しましょう。 また、福祉サービスや地域のサポート団体を利用することで、経済面や生活面の負担の軽減も可能です。 定期的な検査・通院の重要性 大腸癌手術後は、再発を早期に見つけるために定期的な検査と通院が欠かせません。 検査の頻度は、癌のステージや受けた治療内容によって異なりますが、手術後5年間は特に丁寧な経過観察が行われます。 医師の診察を定期的に受ける習慣が、手術後を安心して過ごすことにつながります。 まとめ|大腸癌手術後も笑顔で毎日を送れる生活を 大腸癌の手術後は、体力の低下や排便の乱れ、合併症や後遺症など、さまざまな変化に直面します。 しかし、手術後に起こりやすい症状や注意点を知っておけば、不安を必要以上に抱えずに過ごすことができます。 食生活や運動など日常の工夫を取り入れることは、体の回復を促し、再発のリスク軽減にもつながります。 また、定期的な検査や通院を続け、少しでも気になる症状がみられた場合は医師へ早めに相談するのも、安心した生活を送るための大切なポイントです。 前向きに工夫を重ねながら、一日一日を大切に過ごしていきましょう。 参考文献 (文献1) 大腸がん(結腸がん・直腸がん)|国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ (文献2) 7.大腸癌手術後について|日本臨床外科学会 (文献3) 1.4 大腸がんの病期分類と予後|国立がん研究センター がん対策研究所 (文献4) 大腸がんの術後の経過観察と再発・転移 / 再発・転移|大腸がんを学ぶ
2024.08.19 -
- 手部、その他疾患
- 手部
手首にできるしこりの一種である「ガングリオン」は良性の腫瘍です。ただ、場合によっては痛みや動かしにくさのほか、見た目が悪くなるといった問題が起こることもあります。 治療法を調べると手術に関する情報が見つかりますが、「手術をしても大丈夫なのか?」「後遺症が出ることはないのか」といった不安を感じる人も多いでしょう。 実際、ガングリオンの手術は局所麻酔で行うため日帰りで受けられます。切開も小さく済むため、身体への負担やリスクが少ない手術といえるでしょう。ただし、ガングリオンが再発する可能性はゼロではありません。 本記事ではガングリオンの詳しい手術法や再発予防などを解説します。ガングリオンの治療で手術を検討している人は、ぜひ最後までチェックしてください。 ガングリオンの手術内容【日帰り可】 ガングリオンとは、関節の周りにできる「こぶのように膨らんだ良性の腫瘍」です。 関節の中で関節を包む膜(関節包)や筋肉の腱を覆う組織(腱鞘)から関節液が漏れ出し、袋の中でゼリー状に固まることで発生すると考えられています。 治療で手術をおこなう場合、日帰り手術で済むのが一般的です。本章ではガングリオンの手術について詳しく解説していきます。 また、ガングリオンの詳細や悪性腫瘍との見分け方は以下の記事で解説しているため、ぜひご覧ください。 ガングリオンの手術は局所麻酔でおこなう ガングリオンの手術は、局所麻酔を行い、関節や腱を包む膜についているガングリオンを袋ごと取り除きます。 基本的には日帰りが可能ですが、関節の奥深くにガングリオンができている場合は身体への負担が大きくなるため、1~2日の入院が必要なケースもあります。 手術はガングリオンの周囲を切開しを直接取り除く「切開法」と、関節液が漏れ出ている茎を破壊する「鏡視下手術」の2つが主流です。鏡視下手術の場合、ガングリオン自体は関節内に残るものの、茎の破壊により関節液の流れが止まるため、ガングリオンも自然に消滅します。 切開法と鏡視下手術では、鏡視下手術の方が比較的傷が小さく済むことが多く、術後の痛みも早く軽減しやすいのが一般的です。 ただし個人差があるため、どちらの手術を受けるかは主治医と相談の上で判断することをおすすめします。 ガングリオンの手術後は2週間程度の固定が必要 手の甲や手の関節にできたガングリオンを切除した場合、切開法・鏡視下手術いずれも術後1~2週間の固定が必要です。 どちらの手術も傷は小さく関節への影響が比較的少ないですが、炎症が起きる可能性があるため、固定して関節への負担を減らす必要があります。 ガングリオンの手術で考えられる2つのリスク ガングリオンの手術には、以下2つのリスクが考えられます。 血管や神経などを傷つける可能性がある 感染の可能性がある リスクについても十分理解した上で、ガングリオンの手術を検討しましょう。 血管や神経などを傷つける可能性がある ガングリオンの手術は、一般的に後遺症などのリスクは比較的低く、複雑ではないものといわれています。しかし、ガングリオンが関節の深い部分にできている場合、除去時に血管や神経を傷つけてしまう可能性はゼロではありません。 万が一手術で血管や神経が傷つくと、痛みやしびれといった後遺症が出る可能性があります。 ちなみに、当院リペアセルクリニックでは損傷した神経や筋肉の治療として再生治療を取り入れています。もし手術の後遺症でお困りの人は、お気軽にメール相談もしくはオンラインカウンセリングからご相談ください。 感染の可能性がある ガングリオンの手術の傷口から、細菌やウイルスが感染し感染症を引き起こす可能性があります。感染症は、ガングリオンの手術に限らず、メスを入れる以上避けられないリスクです。 感染症を引き起こした場合には入院による治療が必要になる可能性があります。そのため、術後は医師の指示に従い、数日間抗生剤を内服したり、傷口を清潔に保つなどのケアが重要です。 ガングリオンの治療には「注射やサポーターなどの保存療法」もある ガングリオンの治療では手術以外にも、注射やサポーターなどの保存療法を行うこともあります。とくに痛みがなく日常生活に支障がない場合には、まずは保存療法が選択されるでしょう。 ガングリオンは良性腫瘍のため、日常生活や見た目の問題がなければ放置しても問題ありません。多くの場合、保存療法を試して効果が見られなかった場合に手術が検討されます。 なお、ガングリオンは手にできることが多い良性腫瘍ですが、足にできることもあります。足にできるガングリオンは目立ちにくいため、痛みがなければ保存療法のみで対処できることが多いでしょう。 足にできるガングリオンについての詳細は以下の記事で詳しく解説しています。気になる人はぜひチェックしてみてください。 ちなみに、当院リペアセルクリニックでおこなっている再生医療は、神経や血管・筋肉の損傷に対して効果的な治療方法です。気になる人はぜひメール相談もしくはオンラインカウンセリングからご相談ください。 ガングリオンが痛むときの対処法【自宅でできる】 ガングリオンが痛む場合、自宅でできる以下2つの対処方法を試してみましょう。 安静にして様子を見る 痛いときにはアイシング 痛みがあるときには無理をせず、安静にしアイシングをすると痛みが落ち着く可能性があります。 なぜこれらの方法が有効なのかは以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひチェックしてください。 ガングリオン再発の予防法2選 ガングリオンは手術後の再発率が高く、再発を確実に予防する方法はありません。しかし、再発のリスクを少なくする対策は可能です。 具体的には、以下2つの方法を試してみましょう。 関節への負担を避ける 関節周囲の筋力や柔軟性を高める ガングリオンの再発に不安がある人は、本章で紹介する予防法を心がけてみましょう。 関節への負担を避ける ガングリオンは関節への負担がかかることで発症する可能性が指摘されています。そのため、日ごろから以下のような行動を心がけ、関節への負担を減らしましょう。 体重をかけたり重い物を持ったりしない 関節に疲れをためないようにする 不適切な姿勢を避ける サポーターや装具を使う たとえば、後ろに手をついて手で体重を支えるような長座位や、涅槃像(ねはんぞう)のように片手で頭を支え横になる姿勢は、手首に負担がかかるため避けたほうが良いでしょう。 また、違和感・痛みを感じた場合は、早めに整形外科を受診し、定期的に関節の状態を確認することも大切です。 関節周囲の筋力や柔軟性を高める ガングリオンは関節への負担によって発症するため、再発予防として普段から関節周りの柔軟性を高めることも大切です。 筋トレやストレッチによって筋肉の質が高くなると、関節を保護する働きが向上し、ガングリオンの再発予防につながります。 とくに運動不足は筋力の低下や姿勢の崩れにつながり、関節への負担をかける原因になるでしょう。 普段から無理のない範囲で運動やストレッチ取り入れて筋力や柔軟性を保ち、ガングリオンの再発予防に努めましょう。 まとめ|ガングリオンの手術は日帰り・局所麻酔で行う!痛みが続く場合は早めに受診しよう ガングリオンは関節への過剰な負担によって発症する良性の腫瘍です。治療には保存療法のほか手術も選択可能で、手術の場合は局所麻酔でおこないます。 手術方法は切開法もしくは関節鏡による鏡視下手術で、どちらのケースでも日帰りが可能です。 ちなみに、当院リペアセルクリニックは神経や血管・筋肉の損傷への再生医療に力を入れているクリニックです。 気になる人は、ぜひメール相談もしくはオンラインカウンセリングからお気軽にご相談ください。 この記事がガングリオンの手術を検討している人のお役に立てれば光栄です。 ガングリオンについてよくある質問 Q.ガングリオンの手術はどんなことをしますか? ガングリオンを外科的に取り除く切開法とガングリオンの茎を壊す関節鏡があります。 直接取り除く切開法と関節鏡を比較すると、関節鏡の方が早く痛みが引くといわれています。しかしどちらも日帰り手術が可能なので、リスクも低い手術です。 Q.ガングリオンは手術後再発しますか? 再発の可能性が高いといわれています。 ガングリオンは手術方法に関わらず、再発の可能性が高い疾患です。再発の予防には関節周囲の筋力強化や柔軟性向上が重要なので、日頃から筋トレ・ストレッチをおこないましょう。
2024.08.05 -
- 幹細胞治療
- PRP治療
- 免疫細胞療法
- 再生治療
エクソソームとは、体の中にある多くの細胞から分泌される顆粒状の物質です。 近年、アンチエイジングなどの美容や健康ために点滴などの方法で治療にも用いられるようになってきましたが、その安全性についてはまだ研究段階でもあります。 今回の記事では、エクソソームによって期待できる効果や課題について再生医療の専門医師が解説します。 エクソソーム(幹細胞上清液)と幹細胞の違い まずそもそも、エクソソーム、幹細胞上清液は再生医療でありません。幹細胞治療は再生医療法に守られた治療であり、安全性は確保されています。しかし、エクソソーム、幹細胞上清液は、再生医療法には含まれません。 幹細胞を培養する際に出てくる分泌液が、エクソソーム、幹細胞上清液となります。つまり、幹細胞培養の際の副産物なのです。 幹細胞培養し、治療では、幹細胞のみを使用します。そして副産物のエクソソーム、幹細胞上清液には、幹細胞を培養するときに出てくる不純物が含まれているので、本来は捨てる液体となります。 この液体を、点滴で体内に入れてしまうと、不純物があるので観戦などのリスクがあります。そういう理由で、当院では、開院以来エクソソーム、幹細胞上清液の治療を一才取り扱いはしていません。 再生医療の法律に含まれていないということは、エクソソーム、幹細胞上清液は、点滴投与をしてもいいという法律もなければ、点滴投与をしてはいけないという法律もないのです。 つまり、点滴をするかは、医師の判断ということになります。今後、このエクソソーム、幹細胞上清液には、近々、厚生労働省から何らかの規制やルールが作られるものと言われています。 エクソソームとは何か エクソソームとは、細胞から分泌される大きさ30~200mmほどの顆粒状の小胞です。 幹細胞を培養し、培養液から幹細胞を取り出し処理を行ったあとの上澄みのことを、ヒト幹細胞培養上清液(じょうせいえき)といいます。エクソソームは、この上清液の中に含まれます。*1 エクソソームは1980年代に見つかったのですが、当初は細胞内の不要な物質を捨てるための「ゴミ袋」のようなものだと考えられてきました。 しかし、研究が進むにつれて、エクソソームは細胞同士の相互作用に関して情報伝達の役割を果たすことが分かってきました。*2 つまり、エクソソームは細胞間の情報伝達物質の「運び手」とも言えます。 また、エクソソームはその分泌された細胞由来の細胞膜の成分や核酸、タンパク質などを含んでおり、その細胞の特徴や生理的な機能を持っているとも考えられており、いろいろな疾患に対する新しい治療方法の候補としても注目されています。*3 エクソソームは点滴や局所注射、塗布などの投与方法があります。エクソソームによる治療は自由診療のため、費用は各医療機関で幅があります。一般的な相場は、5万円から20万円程度のようです。 エクソソームの可能性 さて、再生医療の分野でよく用いられるものに、間葉系幹細胞(かんようけいかんさいぼう:Mesenchymal stem cell:MSC)があります。 これは、結合組織の中に存在する、多分化能を持つ幹細胞です。MSCは組織が損傷を受けた際に修復を手助けすることが知られています。 最近の研究ではMSCそのもののみならず、MSC由来のエクソソーム、つまりMSCから分泌されるエクソソームにMSC自身と同じような治療効果を示すことも明らかになりつつあります。*4 これまでに報告されている、MSC由来のエクソソームが治療効果を示す疾患には以下のようなものがあります。*5 腎臓疾患 心筋障害 脳疾患(脳卒中やアルツハイマー病) 肺疾患 このような病気に対して、MSC由来のエクソソーム治療は効果があることが分かってきており、今後の研究が期待されるところです。 また、MSC由来のエクソソーム治療は、MSC細胞よりサイズが小さいために、塞栓などの可能性が理論上は低いことや、組織へうまく移行してくれること、また複数回の投与ができることなどのメリットがあります。 また、厚生労働省のワーキンググループでの報告によると、日本の自由診療を行っている121医療機関で、美肌、毛髪再生、勃起不全などが期待される効果や対象疾患に含まれていたとのことです。*6 エクソソームの課題 一方で、エクソソーム治療については課題もあります。 MSC由来のエクソソーム治療では、MSC細胞による治療よりも多くの細胞数が必要なことや、安全性や有効性を確保するためのリスクがまだ研究段階であること、さらに品質の管理や製造管理とともに法律の整備がまだ未成熟なことなどがあります。*7 その他の課題としては、まだエクソソームに関しての基本的な理解が十分ではない可能性があることです。例えば、免疫系の細胞が貪食(どんしょく)作用によってエクソソームを取り込むことが知られているのですが、免疫系の細胞以外の細胞による取り込みの様子は世界でもまだほんのわずかしか報告がない、という状況です。このように、基礎的なメカニズムについて見解がまだ定まっていないという現状があります。 また、エクソソームを回収する方法が統一されていないということも問題となっています。 エクソソームの回収方法は、さまざまな企業が抽出試薬などを販売しつつあるのですが、果たして異なる方法で回収したエクソソームが「同じ」ものとして治療に用いてよいのかどうかという疑問が残ります。*8 さらに、副作用の危険性もあります。 実際に、正常なMSCが分泌するエクソソームには抗がん作用があるのに対して、異常なMSCが分泌するMSCが分泌するエクソソームは、がんの悪性化を促してしまうという報告もあるようです。*9 MSCでもMSC由来のエクソソームであっても、正常な自分の細胞から培養されたものであれば、拒絶反応などのリスクは高くないかもしれませんが、さらなる研究によって安全性が確保されることが期待されるでしょう。 まとめ リペアセルクリニックでは、エクソソームを産生する細胞の元の一つである、自己脂肪由来幹細胞による再生医療を行なっています。 当院での細胞加工の強みとしては、幹細胞を冷凍保存しない都度培養のため細胞の生存率や質が高いこと、2億個の細胞を投与できるので治療成績が良好であること、採取する脂肪の量は米粒3つ分くらいと少量であり負担が少ないこと、さらに患者さん自身の血液を用いるため安全性が高いことが挙げられます。 脳や神経の病気をはじめ、さまざまな疾患に効果があると示されている再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までお気軽にご相談ください。 再生医療専門クリニック リペアセルクリニック ✉ メール相談はこちら 💻無料オンラインカウンセリングはこちら ✉ webでの来院予約はこちら ☎ 無料電話相談はこちら: 0120-706-313(09:00~18:00) 診療時間:10:00~19:00(完全予約制) 休診日:不定休 各院へのアクセス:札幌院/東京院/大阪院 ▼その他のコラムはこちらからもお読み頂けます。 参考文献 *1 再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直し 厚生労働省研究開発振興課 p11 *2 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p140 *3 再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直し 厚生労働省研究開発振興課 p10 *4 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p141 *5 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p143-147 *6 再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直し 厚生労働省研究開発振興課 p16 *7 エクソソーム等の調製・治療に対する考え⽅ 一般社団法人日本再生医療学会 p4,5 *8 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p147,148 *9 新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来 エクソソームの応用可能性.Drug DeliverySystem.2014:29(2):140-151. p149 日本再生医療学会|エクソソーム等に対する日本再生医療学会からの提言
2024.08.02 -
- 幹細胞治療
- PRP治療
- 免疫細胞療法
- 再生治療
エクソソーム、幹細胞上清液での治療で知っておくべき安全性や副作用、医師が解説! 幹細胞をはじめとした種々の細胞から分泌されるエクソソーム。細胞同士の情報伝達に欠かせない存在であり、抗炎症効果などを示すこともわかっています。現在、がんの診断・多くの疾患の治療・化粧品や食品の研究開発など幅広い分野で注目を浴びています。再生医療においても、エクソソーム治療への期待が高まっています。 再生医療や美容医療を検討されている方の中には、エクソソーム治療を受けたいと考えたことがある方も多いでしょう。 では、エクソソーム治療が安全性の面から全く問題がないのでしょうか。実は一概にそうとも言い切れません。 本記事では、エクソソーム治療の安全性・起こりうる副作用について解説をしていきます。 エクソソーム(幹細胞上清液)と幹細胞の違い まずそもそも、エクソソーム、幹細胞上清液は再生医療でありません。幹細胞治療は再生医療法に守られた治療であり、安全性は確保されています。しかし、エクソソーム、幹細胞上清液は、再生医療法には含まれません。 幹細胞を培養する際に出てくる分泌液が、エクソソーム、幹細胞上清液となります。つまり、幹細胞培養の際の副産物なのです。 幹細胞培養し、治療では、幹細胞のみを使用します。そして副産物のエクソソーム、幹細胞上清液には、幹細胞を培養するときに出てくる不純物が含まれているので、本来は捨てる液体となります。 この液体を、点滴で体内に入れてしまうと、不純物があるので感染などのリスクがあります。そういう理由で、当院では、開院以来エクソソーム、幹細胞上清液の治療を一才取り扱いはしていません。 再生医療の法律に含まれていないということは、エクソソーム、幹細胞上清液は、点滴投与をしてもいいという法律もなければ、点滴投与をしてはいけないという法律もないのです。 つまり、点滴をするかは、医師の判断ということになります。今後、このエクソソーム、幹細胞上清液には、近々、厚生労働省から何らかの規制やルールが作られるものと言われています。 エクソソームの安全性は不確実 エクソソームの医学への応用はまだごく初期の段階です。医薬品として承認されるために必要な臨床試験などをほとんど経ていません。 流通している「エクソソーム」製剤は医薬品医療機器等法の承認を得ていない試薬などという扱いです。つまり、再生医療の法律外となります。 試薬であっても、自由診療の場では医師の責任において投与することが可能です。幹細胞治療と同等の効果を発揮するためには、非常に高濃度のエクソソームを投与する必要があると考えられています。 しかし、実際に高濃度のエクソソームを投与したときにどのようなことが起こるのかはまだはっきりわかっていません。これまでのところ目立って「悪いこと」が起こったケースがほとんどないため、「安全だろう」ということで使われているのです。 エクソソームの材料とはなにか エクソソームの安全性について論じる時に問題になるのはエクソソームそのものの安全性だけではありません。 多くの「エクソソーム」製品は細胞を培養してその培養液の上澄みを精製することで作られています。そのため、エクソソームをつくる「材料」の安全性もしっかりと考えていく必要があります。材料とは「エクソソームを分泌する細胞」と「細胞培養のための培地」のことです。 一般的に「エクソソーム治療」で使われるものは、様々な細胞に変化できる「間葉系幹細胞」と呼ばれる幹細胞を培養する際に分泌されるものです。では、この幹細胞はどこから来たものでしょうか。ご自身の細胞を手術などで採取していない限りは、誰か「他人」の間葉系幹細胞を使って作られたものです。幹細胞は骨髄・歯髄・脂肪・臍帯血などから得たものが中心になっています。 また、幹細胞を培養するためには最適な環境を整える必要があります。植物を育てる際には、植える時期を選んだり日当たりを気にしたりするでしょう。同様に、細胞を育てるにも細胞に合った「培地」が用いられます。そしてホルモンの供給や有害物質からの保護作用などの役割のため、培地には「血清」が添加されることがほとんどです。培地によく用いられる血清は牛の血清です。 エクソソームの材料による副作用 エクソソームを作る過程で「他人の細胞」「他の動物」由来の成分が含まれていると、心配しなければいけない副作用が2つあります。 ひとつはアレルギー反応、もうひとつは感染症です。 アレルギーは外界から何かを体に投与するときには切っても切り離せない問題です。特に、自分以外のもの由来の成分へのアレルギーは誰にでも起こり得ます。当然、「他人」「他の動物」由来の成分が含まれるエクソソーム療法も例外ではないのです。 そして、残念ながら誰にどんな反応が起こるかを予測する手立てはありません。 製剤として販売されるのですから、細胞も血清も基本的には危険な感染症のスクリーニングを受けたものが使用されているはずと思うかもしれません。しかし、感染が起こった直後のごく微量の微生物や、現時点でまだ知られていないウイルスなどがいる可能性はどうしても否定できないのです。 「エクソソーム」と謳われている製品でも、純粋なエクソソームだけを抽出したものではないのです。エクソソームの回収技術はまだ完全に確立されたものではありません。不純物が完全に除去されている保証はどこにもないのです。 そして一番怖いのは他人の遺伝子が含まれているということです。他人の遺伝子があるということで将来的にどのような疾患が出てくるのか予期できなくなるのです。 幹細胞による再生医療は、再生医療等安全確保法という法律があるのですが、上清液やエクソソームには法律がなく無法地帯なのが現状です。いつどこで、誰から作られたかもわからないでのす。 リペアセルクリニックの幹細胞治療は、「ご自身の細胞と血液を使用」して、国内では珍しい「冷凍せず培養」する方法にこだわっています。これにより、「高い生存率と高い活動率」を持った生き生きとした幹細胞を投与でき、良好な治療成績を実現しております。 エクソソームについて気になるQ & A Q:エクソソーム含有の健康食品やサプリメントに病気の治療や予防効果はある? サプリメントや健康食品は医薬品ではありません。基本的には病気を予防したり治療したりするものでないのです。したがって、エクソソーム含有されていることで、病気にならない・病気を良くするという効果については期待できません。 Q:エクソソーム治療は高額と聞きましたが保険はききませんか? 残念ながら、いかなるエクソソーム治療も現時点(2024/7)で公的な保険の適応外です。 なお、混合診療(自由診療と保険診療を同時に行うこと)は禁じられています。エクソソーム治療と同時に何らかの検査や処方をうけると、それらも自費扱いになることに注意が必要です。 まとめ・エクソソーム・幹細胞上清液での治療について、知っておくべき安全性や副作用、医師が解説!! エクソソーム治療は美容や関節の痛み、神経の損傷の後遺症など幅広い分野で期待されています。しかし、安全性の面からはまだまだ検証の余地が多く残っています。 安全性について心配であれば、幹細胞治療も選択肢になるでしょう。当院では患者様ご本人の細胞・血液を使い、独自の技術で培養することで生き生きとした幹細胞を投与できる体制を整えています。ぜひ一度お問合せください。 ■参考文献落合孝広. 生物資料分析 42(5): 217-221,2019. 花井洋人, 下村和範, 中村憲正. 臨床スポーツ医学. 37(5):599-603, 2020. 一般社団法人再生医療抗加齢学会幹細胞培養上清液に関する死亡事例の発生について 岩崎剣吾, 森田育男. 最新医学 73(9): 1243-1253, 2018. 厚生労働省|再生医療などのリスク分類・法の適用除外範囲の見直し 第二回ワーキンググループ(R3.1.18)における議論 株式会社ケー・エー・シー 細胞.jp|細胞基礎講座 細胞培養基礎講座 第7回「血清はなぜ必要?」 厚生労働省|再生医療等安全性確保法における再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直しに資する研究報告書 日本再生医療学会|エクソソーム等に対する日本再生医療学会からの提言 ▼その他、「エクソソームや幹細胞上清液」で参考にしていただける記事
2024.07.31 -
- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
むちうち症は自動車の追突事故や、ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツでよく見られる外傷の一つです。 首の痛みや手のしびれなど明らかな症状が見られるケースもありますが、事故の直後は無症状のケースが多く、放置すると思わぬ健康被害に見舞われる恐れがあります。 また、交通事故が原因でむちうちを発症した場合、医師の診察を受けておかないと、症状と事故との因果関係が証明できず、保険が下りない可能性もあるため注意が必要です。 本記事ではむちうち症の症状や治し方、予後に関する注意点まで解説します。 むちうち症を発症した方はもちろん、後遺症にお悩みの方も参考にしてください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 むちうち症について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 むちうち症とは?主な症状や原因を紹介 むちうち症は、自動車の追突事故やコンタクトスポーツにおける衝突などがきっかけで起こる頚椎捻挫の一種です。 後方からの追突により頭が前後に大きく揺さぶられる現象が鞭のしなりのように見えるため、むちうち症の名が付けられました。 むちうち症は正確には病名ではなく、首に大きな負荷がかかった結果、筋肉や腱、靭帯、神経などを損傷した状態を意味します。 首のどこに損傷が見られるのか、またどんな症状が出ているのかにより、さまざまな病名が付けられます。 ここでは、むちうち症の主な症状や原因について詳しく解説します。 むちうち症のタイプと主な症状 むちうち症は自動車の追突事故やコンタクトスポーツのタックルなど、後方からの衝撃により頭が大きく前後に揺さぶられ、頚部が鞭をうったようにしなって生じるのが特徴です。 むちうち症の症状は受傷部位や加わった衝撃の程度によりさまざまですが、頚部や肩、頭などに表れやすいです。 むちうち症にはいくつかのタイプがあり、それによっても症状の種類が異なります。 むちうち症の種類 特徴 出現しやすい症状の例 頚椎捻挫型 椎間板や靭帯が損傷している可能性がある 首や肩の痛み、肩の動かしにくさ、肩や腕の重さ 神経根損傷型 腕の感覚を司る神経が椎間板に圧迫される 腕の痛み、知覚異常、しびれ、筋力低下 脊髄損傷型 脊髄が傷つく 手足のしびれ、麻痺、歩行障害、排泄障害 自律神経障害型 (バレー・リュー型) 首の自律神経が障害される 頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、後頭部の痛みなど これらの症状は受傷後数時間〜数日後に自覚されることが多いです。 受傷から発症までにタイムラグがある原因として、事故の際に多く分泌されるアドレナリンの作用により症状を自覚しにくい、あるいは受傷部位の炎症の増強に伴って痛みが徐々に悪化していくなどの理由が考えられます。 むちうち症の原因 自動車の追突事故の場合、むちうち症が発生する原因は次の通りです。 後方からの衝撃で胴体は前に振られ、頭は後ろにしなる 胴体に引っ張られるようにして、頭が前に振られる 頚椎が過屈曲してむちうち症が発生する このような一連の動作は数秒という短時間で起こりますが、首の構造上、急激で不自然な動きに対応することができません。 その結果、首の筋肉や靭帯、神経などが急激に伸ばされたり圧迫されたりして、むちうち症特有の症状が現れるのです。 むちうち症になった直後は安静にして速やかに病院へ行きましょう むちうち症の症状は個人によりさまざまですが、場合によっては首を少し動かすだけでも激痛が走り、身動きもままならないことがあります。 ズキズキとした痛みがあり患部が熱を持っているようであれば、氷や保冷剤をアイスパックやビニール袋に入れて冷やしましょう。 冷やしすぎると凍傷を起こす恐れがあるため、10〜15分ほど冷やしたら、5〜10分程度の休憩をはさむようにしてください。 痛みで眠れないようであれば、一時的に市販の痛み止めを服用しても構いません。 むちうち症による痛みが強い間は無理をせず安静を心がけ、動けるようになったら速やかに医療機関を受診するのがポイントです。 むちうち症の治療方法 むちうち症を発症した場合、以下2つの方法で改善を図るのが一般的です。 医学的アプローチ 家庭でできる対処法 それぞれについて解説します。 医学的アプローチ むちうち症の発症が疑われる場合、医療機関では以下の方法で症状の改善を図ります。 治療法 目的 安静 激しい痛みが生じるのを抑制する 消炎鎮痛剤 服用・外用によりむちうち症に伴う痛みを緩和する 冷シップ・アイシング 患部の炎症を鎮める 装具療法(頚椎カラー) 動作に伴う頚椎への負担を軽減する リハビリテーション 適度な運動で血行を促進し、症状の回復をうながす ストレッチ 関節の可動域を広げて首にかかる負担を軽減する 牽引療法 神経圧迫を緩和する むちうち症に伴う症状は長期化するケースもあるため、適切な治療により早期改善を図る必要があります。 家庭でできる対処法 むちうち症を発症した場合、医療機関での治療と合わせて、家庭でも以下の対処を講じる必要があります。 対処法 目的 安静 症状の増悪を抑制する 冷湿布 急性期の炎症状態を鎮め、自発痛や夜間痛を緩和する 温湿布 慢性期の疼痛を緩和する 入浴 血行を促進し症状の回復を促進する リハビリテーション 適度な運動により身体の回復力を高める ストレッチ 関節の可動域を広げて首へのダメージを減らす 自宅でできる簡単なリハビリ・ストレッチは以下のとおりです。 仰向けに寝てバスタオルを丸めて首の下に置き、リラックスする フェイスタオルを首に巻き、両手でタオルを前に引っ張りながら首をゆっくりと後ろに反らす 正面を向き、首をゆっくりと上下左右に動かす ただし、動きによって痛みが増強した場合は決して無理をせず、安静にしましょう。 むちうち症の後遺症|影響と予防策を解説 むちうち症の特徴の一つが、後遺症を残しやすい点です。 主な後遺症としては以下の例が挙げられます。 首の痛みや肩こり 腕や手のしびれ 頭痛や耳鳴り 吐き気や嘔吐 動悸やめまい 不眠症や全身倦怠感など むちうち症の後遺症の特徴として、身体症状だけでなく自律神経系の症状が見られやすい点が挙げられます。 交通事故やコンタクトスポーツに伴うダメージが自律神経にまで及ぶと、さまざまな自律神経系症状が出やすくなります。 また、自律神経系の後遺症はなかなか治りにくい点も特徴です。 場合によってはむちうち症による後遺症が後遺障害として認定されるケースもあるため、発症が疑われる際は医療機関を受診するのが重要です。 むちうち症や後遺症の治療法として再生医療もご検討ください むちうち症や後遺症を治療する際に、再生医療を受ける選択肢があります。 当院リペアセルクリニックの再生医療においては、患者様自身の脂肪細胞から抽出した幹細胞を培養・増殖させ、点滴や注射を用いて患部に投与します。 幹細胞とは、他の細胞に変化する(分化)能力を持つ細胞で、さまざまな外傷への適応が可能です。 自分自身の細胞を用いた治療法のため、副作用や拒絶反応のリスクが低い点がメリットの一つです。 日帰りでの治療も可能なため、できれば入院しての治療を避けたい方にとって、再生医療は新たな選択肢の一つとなっています。 カウンセリングは無料で受けられるため、むちうち症がなかなか治らないとお悩みの方は、リペアセルクリニックまでお気軽にご相談ください。 むちうち症になった後にやってはいけないこと むちうち症になった後、やってはいけないことは以下のとおりです。 自己判断での放置 急性期の無理な運動 慢性期の過度な安静 首に負担がかかる習慣 むちうち症になった後、自己判断で放置するのは禁物です。初期症状が軽微な場合であっても、後から症状が悪化するケースが多いためです。 とくに交通事故の場合は、無症状でも必ず病院を受診して検査を受けてください。後から症状が出て保険を請求する際に、病院を受診しておかないと因果関係が説明できません。 むちうち症の症状が強く出ている急性期には、無理な運動を避けましょう。急性期の無理な運動は炎症状態を悪化させ、症状の増悪を招く可能性があります。 また、強い痛みや炎症が落ち着いたら適度に身体を動かし、血行を促進して回復に努めましょう。過度の安静は筋拘縮や血行不良を引き起こし、かえって症状の回復を遅らせます。 そのほか、猫背や巻き肩などの不良姿勢や、高い枕での睡眠などは首への負担を増すため注意してください。 むちうち症後の生活や治療を続ける上でのポイント むちうち症後の生活や治療を続ける上でのポイントは以下の4つです。 痛みがある場合は服薬や湿布などでコントロールする 鍼治療・電気治療なども活用する 症状が長引く・ひどいときは無理をしない メンタルヘルスも含めて周りにサポートしてもらう それぞれについて解説します。 痛みがある場合は服薬や湿布などでコントロールする むちうち症の症状は個人によりさまざまですが、急性期(炎症期)には身動きが困難なほどの痛みを生じるケースがあります。 痛みで自由に動くこともままならない場合や、眠ることもできない場合や、痛み止めの服用や湿布などでコントロールするのがおすすめです。 できれば薬は飲みたくないとおっしゃる方もいますが、痛みで睡眠が満足にとれないと、かえって症状の回復を遅らせてしまいます。 急性期を早く乗り越えるためにも服薬や湿布などで痛みをコントロールし、リハビリテーションに取り組める状態に持っていくことが大切です。 鍼治療・電気治療なども活用する むちうち症後の生活や治療を続ける上で、鍼治療や電気治療なども活用するのがおすすめです。むちうち症の急性期を過ぎると、首や肩のこりが原因で頭痛や吐き気を生じるケースがあります。 鍼治療や電気治療には筋緊張を緩和して血行を促進する作用があるため、むちうち症後の首や肩のこりを改善する際に効果的です。 鍼の施術には鎮痛物質の一種であるエンドルフィンの分泌を促進させ、痛みを緩和する効果も期待されています。(文献1) 投薬などの対症療法とは異なり、人間が本来持っている自然治癒力を高める点も、鍼灸の施術を受けるメリットの一つです。 手技療法では揉み返しが出る方にも、鍼治療や電気治療がおすすめです。 症状が長引く・ひどいときは無理をしない むちうち症後の生活や治療を続ける上では、症状が長引く・ひどいときは無理をしないのもポイントです。 むちうち症に限らず外傷からの回復には適度な運動が効果的ですが、痛みが強い際に身体を動かすと逆効果のことも少なくありません。 むちうち症に伴う急性期の持続期間は個人によりさまざまなため、適切な時期に身体を動かし始めるのが大切です。 かかりつけ医や専門医に、いつから・どの程度の運動を始めるべきか相談し、自分の判断で無理をするのは避けてください。 症状があまりにも長く続く際は後遺症の可能性も疑われるため、後遺障害の申請も検討しましょう。 メンタルヘルスも含めて周りにサポートしてもらう むちうち症後の生活や治療を続ける上では、メンタルヘルスを含めた周りのサポートも欠かせません。 交通事故やコンタクトスポーツによるダメージが筋肉だけでなく自律神経にまで及ぶと、頭痛やめまい、吐き気、耳鳴りなどの不快な症状(バレー・リュー症候群)が出やすくなります。 バレー・リュー症候群は頚椎捻挫型のむち打ちに比べて長期化する傾向にあり、つらい症状がなかなか治らないとイライラや不眠、不安、抑うつ症状などを引き起こしがちです。 むちうち症に伴う自律神経系の不調がある方は、家族やパートナー、職場の同僚などに理解を求め、サポートしてもらいましょう。 むちうち症は経過に応じて適切な治療を実施しましょう むちうち症は時間の経過により症状が変化しやすい点が特徴です。 交通事故やスポーツの後に急激に痛みが強くなるケースもあれば、外傷から1週間以上して症状が出てくるケースもあります。 患部がズキズキと痛む場合は無理をせず安静やアイシングを心がけ、症状が落ち着いてきたらリハビリテーションやストレッチに取り組むのが基本です。 むちうち症を発症すると後遺症に悩まされる方も多いため、とくに交通事故の後は必ず医療機関を受診しておきましょう。 医療機関を受診しておかないと交通事故と症状との因果関係が説明できず、後遺障害の認定に支障が生じる恐れがあります。 むちうち症を治療する際の選択肢の一つが再生医療です。 自分の幹細胞を培養・増殖して患部に注入する治療方法で、手術や入院を必要としない点が特長といえます。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報発信や簡易オンライン診断を実施しています。再生医療に興味がある方や、むちうち症がなかなか治らないとお悩みの方は、ぜひ一度お試しください。 参考文献 (文献1) 臨床鍼灸の現場より|明治国際医療大学
2024.07.30 -
- 上肢(腕の障害)
- 下肢(足の障害)
- スポーツ外傷
「腰の疲労骨折と診断されたけれど、早く回復して仕事やスポーツに復帰したい…」といった、悩みを抱えていませんか? 腰の疲労骨折は、無理をすると悪化しやすく、治癒までの期間が延びてしまうこともあります。 しかし、安静を最優先し、適切な時期にストレッチやトレーニングを実施すれば早期回復を目指せます。 本記事では、腰の疲労骨折を早く治す方法を具体的に解説しています。 治療中の注意点も紹介しているので、早期回復を目指したい方は参考にしてみてください。 疲労骨折のような症状があるけれど、病院に行くほどか迷うという方は、当院(リペアセルクリニック)の無料電話相談をご利用ください。 専門スタッフが痛みの程度や生活への影響をお伺いしながら、必要な対応やセルフケアのポイントをご案内します。 【基礎知識】腰椎疲労骨折とは 腰椎疲労骨折は、腰椎の「椎体」と呼ばれる骨の部分に微小な亀裂が生じる状態を指します。 腰椎疲労骨折の主な原因は、以下のとおりです。 重労働や繰り返しの負荷 不適切な姿勢や体の使い方 加齢に伴う骨密度の低下 骨粗鬆症などの基礎疾患 このように腰椎疲労骨折は、一度の強い衝撃ではなく、長期的な負荷の蓄積によって引き起こされます。特にスポーツを積極的に行う10代の若年層に多く見られ、同じ動作を繰り返すことで発症しやすいです。 腰椎疲労骨折の症状は、単なる腰痛とは異なり、以下のような特有の特徴があります。 安静時にも持続する鈍い痛み 特定の姿勢や動作で増悪する痛み 腰の特定の場所を押すと痛みを感じる(圧痛) 腰の特定の場所をトントンとたたくと痛みを感じる(叩打痛) これらの症状は、時間の経過とともに徐々に悪化する場合が多いです。最初は軽度の痛みで済んでいても、放置すれば日常生活や仕事に大きな支障をきたすようになります。 そのため、疲労骨折が疑われる場合は、早期の診断と適切な治療が不可欠です。適切な治療を行えば、痛みの軽減と日常生活の質の向上が期待できます。 なお、腰の痛みを伴う原因はほかにもあり、以下は対象となる疾患です。クリックすると詳細記事をチェックできるので、症状や治療法が気になる方は参考にしてみてください。 腰椎椎間板ヘルニア 脊柱管狭窄症 ぎっくり腰 近年、腰の痛みを伴う腰椎椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症の治療法として「再生医療」が注目されています。再生医療とは人間の自然治癒力を活用した新しいの医療技術で、損傷した脊髄の再生を図ります。 「腰に関連のある疾患の治療法に興味がある」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお問い合わせください。 腰椎疲労骨折はどれくらいで治る?【完治までは約3カ月】 腰椎疲労骨折の回復には約3カ月かかると言われています。 亀裂または折れた骨が癒合するまでに時間が必要なため、焦らず適切な治療を続けましょう。 治癒までの期間は、年齢や症状の程度、個人の体質などによって左右されます。 症状が軽度の方や若い方ほど治癒が早い傾向があります。 腰椎疲労骨折を早く治す方法5選 腰椎疲労骨折からの早期回復を目指す上で、日常生活で意識したいポイントを5つ紹介します。 焦らず安静にする コルセットの着用ルールを守る 計画的にリハビリを進める 軽めのストレッチ・トレーニングを行う 栄養バランスのとれた食事を心がける 参考にしながら実践をして、早期回復を目指しましょう。 焦らず安静にする 腰椎疲労骨折の基本治療は、安静により骨の自然回復を待つ保存治療です。 骨に亀裂が入っている状態なので、体を無理に動かすと状態が悪化します。 安静期間は、症状や人によって異なり、4週間から12週間程度です。 この間は、腰に負担をかけないように、できるだけ安静にして過ごしましょう コルセットの着用ルールを守る 疲労骨折の状態によってはコルセットを装着して安静時期を過ごします。 コルセットの着用が必要になった場合、使用ルールを必ず守りましょう。コルセットを着用する際は以下のような点に注意が必要です。 装着方法:締め付け具合 装着時間:1日の中での装着時間 着脱のタイミング:入浴時や就寝時の取り扱い コルセットを正しく装着しなかったり、着用を怠ったりすると、症状が悪化してしまう場合があります。早期回復のためにも、医師の指示に従って使用しましょう。 軽めのストレッチ・トレーニングを行う 骨の回復が認められ医師の許可が出たら、軽めのストレッチやトレーニングを開始していきます。 回復期は、骨盤周囲の筋肉を伸ばすストレッチや、腰を支える筋肉を強化するトレーニングが効果的です。 具体的には、ハムストリングストレッチや腰回りのストレッチや、腰椎を支える筋肉を強化を目的とした体幹トレーニングです。 適切な強度でストレッチやトレーニングを継続すれば、腰の機能改善につながります。 日常生活で負担のかかる動きを制限する 腰椎疲労骨折の回復段階では、日常生活で腰に負担をかけない動きをとる意識をもちましょう。 腰に負担がかかる動作をとれば、回復が遅れる可能性があるほか、再発のリスクも高まるからです。 腰に負担がかからない主な動作は以下の3つです。 腰を反らさない 力を入れすぎない ねじらない たとえば、ベッドから起き上がるときは、腰を反らさないように気をつけ、横向きになってから腕の力を使って上体を起こします。体をひとまとまりにして動かせば、腰に余計な負担をかけずに済みます。 椅子から立ち上がる際は、両手で座面を押しながら、膝を伸ばして立ち上がりましょう。腰を前後に動かさず、脚の力を使うと負担が軽くなります。 重い物を持つときも注意が必要です。腰を曲げずに膝を曲げ、背筋をまっすぐにしたまま持ち上げると、腰への負担が減ります。また、物を持ったまま体をねじらず、向きを変えるときは足から動かしましょう。 このように日常生活の動作を見直し、腰にやさしい動きを意識してみてください。 栄養バランスのとれた食事を心がける 骨の修復には多くの栄養が必要です。栄養バランスのとれた食事を心がけると、より早い回復が期待できます。 以下は、骨の修復に大切な栄養素と食材です。 栄養素 働き 食材 カルシウム 骨の主成分となり、強化を助ける 牛乳、チーズ、小魚、ひじき、小松菜 ビタミンD カルシウムの吸収を助ける イワシ、秋刀魚、鮭、しいたけ、きくらげ ビタミンK カルシウムを骨に定着させる 納豆、小松菜、ほうれん草、わかめ たんぱく質 筋肉や血液の材料になり、骨の修復を助ける 赤身の肉、魚、豆腐、納豆、ヨーグルト マグネシウム 骨の健康を維持し、強化をサポートする アーモンド、ごま、わかめ、大豆製品 バランスの取れた食事で、骨の修復に必要な栄養を補給しましょう。 まとめ|腰の疲労骨折を早く治すには焦らず治療していくのがもっとも大切 焦らず治療に専念するのが、腰の疲労骨折を早く回復させる近道です。腰に負担のかかる動作や運動を控えて、完治までじっくり治療に取り組みましょう。 本記事で紹介した、回復後の運動や食事のアプローチも参考にして、早期回復を目指してみてください。 腰の疲労骨折に関するよくある質問 腰の疲労骨折について、不安や疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。 ここでは、治療や予防、日常生活での注意点など、よくある質問とその回答を紹介します。腰の健康を守るための参考にしてください。 保存治療で症状がなかなか改善しない場合は手術が必要ですか? 保存的治療で十分な改善が見られない場合や、重度の骨折、神経症状を伴う場合などは、外科的治療が検討されます。 手術の方法は、骨折部位の固定や骨移植などです。 手術は、痛みの軽減、脊柱の安定化、神経症状の改善などを目的として行われます。 腰の疲労骨折における予防策を教えてください 腰椎疲労骨折の予防には、以下のようなポイントがあります。 適切な姿勢の保持 重量物の正しい持ち上げ方の習得 定期的な運動による腰部や体幹の筋力維持 骨密度の維持(バランスの取れた食事、適度な日光浴など) 日常生活の中で、腰への負担を減らす工夫を心がけるのが大切です。 重労働の仕事で腰が疲労骨折にならないためのポイントを知りたい 重労働に従事する人は、以下の点に注意をする必要があります。 項目 ポイント 詳細 1. 適切な重量制限の順守 無理なく持てる重量か確認する 重量物を分割して運ぶ 周囲と協力して持ち上げる 安全を優先して無理をしない 2. 重量物を持ち上げる際の正しい体の使い方 重心を低くし、物を体に近づける 膝を曲げ、脚の力で持ち上げる 急な動作を避ける 正しい姿勢で持ち上げ、腰への負担を減らす。定期的に訓練を受ける。 3. 休憩の確保と作業の分散 長時間の連続作業を避ける 同じ姿勢を続けない 作業を分散し負担を減らす 適切に休憩を取り、疲労を防ぐ。作業スケジュールを管理する。 4. 必要に応じた補助具の使用 台車や手押し車を使う 高所作業には脚立を使用する 腰ベルトの着用を検討する 補助具を活用し、負担を軽減する。正しい使い方を守る。 仕事と腰の健康は、切り離せない関係にあります。自分の体を守るためにも、リスク管理と予防策の実践を心がけましょう。 参考文献 MSDマニュアル家庭版."骨折の概要" 日本スポーツ整形外科学会.“スポーツ損傷シリーズ-疲労骨折" 日本臨床整形外科学会.”疲労骨折・腰痛” 日本脊椎脊髄病学会.”脊椎脊髄疾患について・主な症状” 日本生活習慣病予防協会.”骨粗鬆症” 村山医療センター.”腰椎分離症” 教えて!先生!腰痛の専門医による安心アドバイス.”腰の疲労骨折・脊椎分離症(腰椎分離症) 日本脊髄外科学会.”腰椎分離症・分離すべり症” 徳島県医師会.” 腰椎分離症 -病期・病態に応じて治療-” 日本整形外科学会.”「腰椎分離症・分離すべり症」” 厚生労働省.”腰痛予防対策” 厚生労働省.”職場における腰痛予防対策指針及び解説” ドクターズファイル.”疲労骨折” 医療法人大場整形外科.”腰椎疲労骨折” 日本骨折治療学会.”骨折の解説-疲労骨折”
2024.07.29 -
- 脊髄損傷
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「脊髄硬膜外血腫」とは、背骨の中で出血が起きる病気の一種です。(文献1)脊髄を覆う「硬膜」の外側で出血し、激しい痛みが起きるほか、溜まった血が脊髄を圧迫すれば麻痺やしびれなどを引き起こします。 脊髄硬膜外血腫の患者様の中には、後遺症が出て日常生活に不便を感じ、お悩みの方もいるのではないでしょうか。 後遺症は今までリハビリテーションなどの対症療法でのみ治療されていましたが、現在では再生医療も選択可能となり、根治的治療として注目を浴びています。 今回は脊髄硬膜外出血の後遺症や、急性期の治療法と発症後のリハビリテーション、予後についてもお伝えします。また、後遺症の治療法(再生医療)についても解説するのでぜひ参考にしてください。 脊髄硬膜外血腫の主な後遺症 脊髄硬膜外血腫は、溜まった血を取り除くまでに脊髄が傷ついてしまうと、治療後に後遺症が出る可能性があります。 後遺症の症状や程度は、障害部位(頸髄や胸髄、腰髄、仙髄、馬尾)や脊髄へのダメージ具合(部分的か全体的なダメージか)によってさまざまです。 代表的な後遺症を以下にまとめました。 運動障害(麻痺) 感覚障害(温痛覚や振動感覚、位置感覚の障害など) 膀胱直腸障害(尿失禁、頻尿、便秘、頻便など) 呼吸障害 体温調節障害 起立性低血圧 など それぞれ説明していきます。 運動障害(麻痺) 筋肉がうまく動かせなくなるのが運動障害です。具体的には以下の症状が現れます。 手足に力が入らない しびれる まったく動かせない など 出血が起きた部位により、運動障害の範囲は異なります。首のあたりで起きれば両手足の麻痺が、胸や腰の背骨内で起きれば両足の麻痺が出やすいです。 一方で、左右の片方だけに麻痺が起きることもあります。 日常生活での困難は歩けない、座ったり立ったりしていられない、手の細かい動作ができないなどです。 着替えや食事、入浴といった日常生活動作が難しくなり、介助が必要となる場合もあります。リハビリテーションが重要となりますが、どれくらい回復するかは個人差があります。 感覚障害(温痛覚・振動感覚・位置感覚の障害など) 感覚障害とは、以下に示す感覚が鈍くなったり消失したりする障害です。 熱さ・冷たさ 痛み 触覚(触られている感覚) 振動感覚(震えを感じとる感覚) 手足の位置感覚 など 感覚障害も、出血が起きた部位によって範囲が異なります。首のあたりで出血が起きれば両手足に感覚障害が出やすく、胸や腰で起きれば下半身に症状が出ることが多いです。また、左右どちらかだけに症状が出ることもあります。 日常生活では、やけど・けがに気付きにくくなります。歩くときにバランスが取りにくい、箸を使いにくいなどもよくある症状です。 運動障害と同様、リハビリテーションによって回復が見込める場合があります。 膀胱直腸障害(尿失禁・頻尿・便秘・頻便など) 膀胱直腸障害とは、排泄に関する障害です。 排尿に関する症状は以下の通りです。 尿意切迫感 頻尿 尿失禁 排尿困難 残尿感 など また、排便に関する症状として以下が挙げられます。 便秘 排便困難 便失禁 頻便 など 日常生活では、突然の尿意や便意あるいは失禁により、生活に大きな支障をきたすでしょう。 逆に排尿困難や便秘があると、お腹の張りや不快感につながります。外出時のトイレの不安から、活動範囲が狭くなる方も多いです。 症状に応じて自己導尿や排便コントロールを身につけたり、薬の力を借りたりして適切に管理することが大切です。 その他(呼吸障害・体温調節障害・起立性低血圧など) 脊髄硬膜外血腫では、運動・感覚・膀胱直腸障害以外にもさまざまな後遺症の可能性があります。 呼吸障害は、頸椎の上の方で出血が起きた場合の症状です。呼吸に必要な筋肉が麻痺し、人工呼吸器が必要となる場合もあります。 自律神経が障害されれば、体温や血圧の自動調節がうまくいかず、体温調節障害や起立性低血圧などを引き起こします。自律神経への影響が大きくなるのは、胸椎より上で出血が起きた場合です。 筋肉が緊張しすぎる「痙縮」では手足が突っ張ったり、意識しないのに動いてしまったりします。ビリビリとした痛みや刺すような痛みを感じる場合は「神経障害性疼痛」かもしれません。これは神経が傷ついたことで、外傷がない部位でも痛みを感じる症状です。 脊髄硬膜外血腫の治療法 脊髄硬膜外血腫の治療法は、手術をしない保存的治療と、手術による外科的治療に分けられます。どちらを選択するかは、症状の程度や持続時間、出血が止まりにくい要因の有無を考慮して決定します。 保存的治療|症状が軽度の場合 保存的治療では安静を保ち、必要に応じて止血剤や降圧剤を投与します。保存的治療を選択する明確な基準はありません。(文献2)脊髄硬膜外血腫102例を分析した報告では、以下の両方に当てはまれば、保存的治療での回復も期待できるとされています。(文献3) 血をサラサラにする薬(抗凝固薬)を使っていない 運動機能が完全に麻痺していない 上記の片方だけに当てはまる場合も、保存的治療を選択する場合があります。抗凝固薬を使用中なら、必要に応じて効果を打ち消す薬を投与します。 保存的治療では、注意深い経過観察が重要です。症状の変化を定期的に確認し、保存的治療を続けるか手術に変更するかを判断するのです。 麻痺が出てから15時間以内に症状が回復に向かえば、出血が自然に止まって血腫の吸収が始まり、神経への圧迫がゆるんできていると考えられます。(文献3)この場合は自然に完治する可能性が高いとされます。 外科的治療|症状が重篤な場合 運動機能が完全に麻痺している場合や、神経症状の進行が見られる場合は速やかに外科的治療を検討します。少しでも麻痺が見られれば速やかに手術すべきとの考えもあります。 発症から24時間以内に手術できれば、重度の麻痺から回復できる可能性が高まるとの報告もあり、素早い判断が重要です。(文献3) 脊髄硬膜外血腫の手術では、血腫ができている部分の背骨の一部(椎弓(ついきゅう)と呼ばれる部分)を削り、奥にある血腫を取り除きます。(文献1)手術用の顕微鏡を使って血腫を除去し慎重に止血すれば、脊髄を圧迫する原因はなくなります。 脊髄硬膜外血腫に対するリハビリテーション 初期治療後に残った症状は、リハビリテーションを行いながら改善を目指します。 リハビリテーションとは、病気や怪我の後に社会復帰を目指して行う訓練の総称です。 病気や怪我以前の生活水準を目指し、日常生活を見据えた身体的訓練のほか、不安や無力感などの精神的な障害には心理的訓練、また必要に応じて職業訓練も行われます。 リハビリテーションに携わるスタッフは、医師や看護師に加えて、作業療法士や理学療法士、言語聴覚士などのスペシャリストです。 病院で行われることもあれば、リハビリ専門施設で実施されることもあります。 脊髄硬膜外血腫の急性期リハビリ 怪我や病気を患った直後の急性期は、まず全身状態を落ち着かせ、損傷や障害を最低限に抑えるためのリハビリテーションが必要となります。 具体的には、以下の訓練を実施します。(文献5) 頸髄や上位胸髄の損傷による呼吸機能低下に対しては呼吸訓練 手術後にうまく寝返りができない場合には、床ずれ予防のために体位変換訓練 ベッド上で動けない間に関節が固まってしまわぬように関節可動域訓練 全身状態が安定後のリハビリ 全身状態が落ち着いた後は、症状に合わせて積極的にリハビリテーションを進めていくことが重要です。 脊髄硬膜外出血によって脊髄が大きなダメージを受けた場合は、神経障害などを完全に取り除くのは難しく、後遺症が出ることが多いでしょう。 そのため、早期からのリハビリテーションを通じて、残存した能力を強化し、必要な筋力や柔軟性を取り戻します。 具体的には以下を実施し、合併症を避けて自分で尿路管理できることを目指します。 両下肢の麻痺(対麻痺)の場合には上肢の筋力を高め、プッシュアップ動作を練習し、車椅子の訓練 排尿障害を患っている場合は、腹壁徒手圧迫法や反射誘発、自己導尿法などの指導 脊髄硬膜外血腫の予後 脊髄硬膜外血腫はまれな疾患で、死亡率や予後についての情報も少ないのが現状です。 最初の運動麻痺が軽度の場合や、重度であっても早く血腫を取り除ければ良好に回復する傾向がありますが、確実に回復するかどうかは一概にはいえません。 海外で脊髄硬膜外血腫の報告を1000例以上集めて検討した論文では、死亡が確認された例は7%だったと報告されています。年齢別では40歳以上が9%、40歳未満が4%で、治療法によらず40歳以上では死亡率が有意に高くなると報告されました。(文献8) 後遺症については、初めの症状が軽度であった患者群では、8.5%がわずかな障害を示すのみでした。一方で、初めの症状が重篤だった患者群では、28.3%に軽度の障害が残っています。(文献8) また、日本国内のある病院では、自院で治療を行った16症例を分析しました。この報告では、完全治癒が10例(2回発症し2回とも完全治癒した例を含む)、軽度の運動麻痺が残ったケースが6例、死亡が1例でした。死亡例は、合併していた大動脈解離と腎不全が直接の原因とされています。(文献9) 脊髄硬膜外血腫の術後後遺症に対する再生医療 再生医療は、失われた身体の組織を再生する能力、つまり自然治癒力を利用した医療です。脊髄硬膜外血腫の手術後に残ってしまったしびれ、麻痺などの後遺症に対する治療として「幹細胞治療」が適応される可能性があります。 当院リペアセルクリニックで行う再生医療「自己脂肪由来幹細胞治療」では、患者様から採取した幹細胞を培養して増殖し、その後身体に戻します。自分自身の細胞から作り出したものを用いるため、アレルギーや免疫拒絶反応のリスクが極めて低い治療法です。 日本での一般的な幹細胞治療は、点滴によって血液中に幹細胞を注入するものです。しかし、それでは目的の神経に辿り着く幹細胞数が減ってしまいます。 そこで当院では、損傷した神経部位に直接幹細胞を注入する「脊髄腔内ダイレクト注入療法」を採用しています。注射によって脊髄のすぐ外側にある脊髄くも膜下腔に幹細胞を投与します。 幹細胞の培養には時間を要しますが、治療そのものは短時間の簡単な処置で、入院も不要です。 実際に当院では術後や外傷、脊髄梗塞、頚椎症による神経損傷に由来する麻痺やしびれ、疼痛などの後遺症に対して再生療法を施しております。 脊髄硬膜外血腫の術後後遺症にお悩みの方は、ぜひ一度リペアセルクリニックへお問い合わせください。 まとめ|脊髄硬膜外血腫の後遺症への理解を深めて正しい治療法を選択しましょう 脊髄硬膜外血腫を発症した場合、保存的治療または外科手術により治療を行います。麻痺の程度や、出血しやすい要因を考慮して治療を選択しますが、症状の変化に応じた素早い判断が重要です。 また、後遺症には運動障害や感覚障害、排尿・排便障害などがあります。回復には早期のリハビリテーションによる残存能力の強化や、合併症予防のための訓練が大切です。 さらに、多大なダメージを受けてしまった神経を元に戻す治療がなかった中で、近年になって再生医療が多くの患者様へ提供可能となりました。 当院では入院不要、外来診療のみで再生医療を受けられますので、気になる方はぜひ当院へ一度ご相談ください。 参考文献 (文献1) 日本脊髄外科学会「特発性脊髄硬膜外血腫」日本脊髄外科学会ホームページ https://www.neurospine.jp/original63.html(最終アクセス:2025年3月21日) (文献2) 中村直人ほか.「特発性脊髄硬膜外血腫の臨床診断と治療方針」『脊髄外科』32(3), pp.306-310, 2018年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/32/3/32_306/_pdf(最終アクセス:2025年3月21日) (文献3) 武者芳朗ほか.「急性脊髄硬膜外血腫に対する保存療法の適応と手術移行時期」『脊髄外科』29(3), pp.310-314, 2015年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/29/3/29_310/_pdf(最終アクセス:2025年3月21日) (文献4) 西亮祐ほか.「特発性脊髄硬膜外血腫に対する当院での治療成績の検討」『済生会滋賀県病院医学誌』32, pp.15-20, 2023 https://www.saiseikai-shiga.jp/content/files/about/journal/2023/journal2023_4.pdf(最終アクセス:2025年3月21日) (文献5) 日本リハビリテーション医学会「脊髄損傷のリハビリテーション治療」日本リハビリテーション医学会ホームページ https://www.jarm.or.jp/civic/rehabilitation/rehabilitation_03.html(最終アクセス:2025年3月21日) (文献6) 日本脊髄外科学会「脊髄損傷」日本脊髄外科学会ホームページ https://www.neurospine.jp/original62.html(最終アクセス:2025年3月21日) (文献7) 吉原智仁ほか.「当科で経験した脊髄硬膜外血腫の 3 例」『整形外科と災害外科』65(4), pp.845-848, 2016年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/65/4/65_845/_pdf(最終アクセス:2025年3月21日) (文献8) Maurizio Domenicucci, et al. (2017). Spinal epidural hematomas: personal experience and literature review of more than 1000 cases.J Neurosurg Spine, 27(2), pp.198–208. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28574329/ (Accessed: 2025-03-21) (文献9) 原直之ほか.「特発性脊髄硬膜外血腫の 16 症例の臨床分析 ―脳卒中との類似点を中心に―」『臨床神経学』54(5), pp.395-402, 2014年 https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/054050395.pdf(最終アクセス:2025年3月21日)
2024.07.23 -
- 手部、その他疾患
- 手部
「何だかガングリオンが急に痛い」 「手首のしこりが腫れてズキズキ痛む。放置しても大丈夫?」 そんな不安を抱えてこの記事に訪れた方は、今すぐの対応が必要かもしれません。 ガングリオンは良性の腫瘍の一種で放置しても自然に治ることもありますが、自己判断で対処すると、症状の悪化や他の病気を見逃す可能性もあります。 そこで本記事では、ガングリオンが痛いときの対処法や、やってはいけないことを解説します。 ただすでに強い痛みや違和感がある・不安を感じる場合は、まずはお気軽にお電話でご連絡ください。 当院ではガングリオンの神経圧迫や再発リスクに対し、手術なしでアプローチする「再生医療」のご相談を受け付けております。 ▼どんな些細なこともお気軽にご連絡ください >>お電話はこちらをクリック ガングリオンとは? ガングリオンは、関節内にある液体がガングリオンの袋に流れてコブになった良性腫瘍です。 2つの骨がつながる関節は、袋のような関節包で守られており、関節包の中は滑液(関節を保護する潤滑油)で満たされています。この滑液が、なんらかの理由でできたガングリオンの袋に流れるとコブ状の腫瘤(しゅりゅう)が形成されます。 なぜガングリオンの袋ができるのか原因は分かっていません。手首や足、足首などの関節周囲のほか、骨と筋肉をつなぐ部分の腱や、腱を支えるさやの役割である腱鞘(けんしょう)にもガングリオンができます。 以下の記事では、手首にできるガングリオンについて詳しく解説しています。手首にガングリオンらしいコブがある方はとくに参考にしてみてください。 ガングリオンの原因は特定されていませんが、体の様々な部位に痛みや不調が現れることがあります。 また、筋肉や腱、靭帯損傷の治療に効果が期待できる、人間の自然治癒力を活用した最新の医療技術である「再生医療」をご存じでしょうか。 当院の公式LINEでは、ひざ・肩・股関節の痛み・しびれ・スポーツによるケガなど、幅広い症状に関する情報や最新の治療法についてご紹介しています。 体の不調に対して手術以外の治療方法が知りたい方は、ぜひ当クリニックの公式LINEから症例や再生医療に関する最新情報をご確認ください。 ▼気になる症状の無料診断あり >>公式LINEはこちら ガングリオンはなぜ痛むのか ガングリオンは無症状の場合もありますが、以下のような症状を伴う方もいます。 コブのあるところが痛む 手足が痺れる・感覚が鈍くなる ガングリオンが神経にちかい場所にできると、神経を圧迫して痛みや手足の痺れ、感覚鈍麻といった症状がでます。 はじめは無症状でも、ガングリオンが大きくなると神経を圧迫しやすいため、大きくなるガングリオンは注意しましょう。 ガングリオンが痛いときの対処法2選 ガングリオンと疑われるコブが痛いと感じたときの対処法を解説します。 安静にして様子を見る 病院を受診する 症状に合わせて適切な対処法を選びましょう。 安静にして様子を見る ガングリオンは自然に治るものもあります。以下のように症状が軽度であれば、安静にして様子を見る選択もできます。 赤く腫れない 痛みや痺れが少ない コブが大きくならない ただし「この程度の症状であれば放置しても大丈夫だろう」と自己判断するのは危険です。症状が悪化して、痛みが強く出たり、関節の動きに支障が出たりする可能性があるためです。 ガングリオンの疑いがある場合は、なるべく医師に診てもらい、様子見で良いかを判断してもらいましょう。 病院を受診する ガングリオンの肥大化により関節が動かしにくくなったり、痛みやしびれが気になったりと生活に支障が出ている場合は、病院を受診して治療しましょう。 ガングリオンは小さくても、神経を圧迫していると痛みやしびれをともないます。大きさにかかわらず、気になる症状があれば専門医に診てもらうのがおすすめです。 ガングリオンの治療では、注射で内容物を吸引する方法が一般的です。ただし、この治療だとガングリオンの袋自体は体内に残ったままなので、再発する可能性があります。 再発を繰り返す場合は、手術でガングリオンの袋自体をとる手術も視野に入ってきます。 病院での治療を検討する中で、一般的な治療法に加えて手術を必要としない再生医療という選択肢があることをご存知でしょうか。 当院の公式LINEでは、再生医療を含む様々な治療法に関する情報を提供していますので、ご自身の症状や状況に合った治療法を選ぶための一助となれば幸いです。 ▼気になる症状の無料診断が可能 >>公式LINEはこちら ガングリオンが痛いときにやってはいけない3つの対処法 ガングリオンが痛いときにやってはいけない対処法を3つ紹介します。 強い痛みや長期の痛みを放置する 自分でガングリオンを潰す ガングリオンがある場所に負荷をかける 1つずつ見ていきましょう。 強い痛みや長期の痛みを放置する ガングリオンが強い痛みや長期の痛みを伴う場合、放置しておくのは危険です。以下のように、ガングリオンと似ているほかの病気の可能性があるためです。 病名 主な症状 粉瘤(ふんりゅう) 炎症が起き腫れる・悪臭が発生する 脂肪腫 悪性の場合がある 滑液包炎 炎症が強くなる・痛みが増す ガングリオンによく似ている粉瘤の中身は垢や老廃物で、放っておくと赤く腫れたり、悪臭が発生します。 ほかにガングリオンによく似ている腫瘍の1つに脂肪腫があります。脂肪腫は脂肪がつまったコブですが、まれに悪性腫瘍である脂肪肉腫の場合があります。悪性腫瘍はコブの成長が早い・コブの形がいびつなどの特徴があるため、当てはまる条件があれば病院を受診しましょう。 滑液包炎もガングリオンによく似ており、ケガや関節の使いすぎで炎症を起こしコブができます。中身は血混じりの滑液で、放置すると炎症が強くなって痛みが増したり、関節が動かしにくかったりする症状がでます。 見た目だけでガングリオン・粉瘤・脂肪腫・滑液包炎を見分けるのは難しいため、症状がなく放置したい場合でも病院へいき、医師に診てもらうと安心です。 腱や筋肉の損傷に効果的な治療法の1つに「再生医療」があります。人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。 ガングリオン以外で手や腕に痛みやしびれなどの症状がある方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 ▼関節の症例・再生医療の情報を無料で配信中! >>公式LINEはこちら 自分でガングリオンを潰す ガングリオンの痛みが気になって自分で押し潰そうとする方もいますが、自分で処置するのは危険です。神経を圧迫して、新たなしびれや痛みを引き起こす可能性があるためです。 痛みが気になる場合は自分で対処しようとせず、病院を受診して適切な治療を受けましょう。 ガングリオンがある場所に負荷をかける 痛みの有無にかかわらずですが、ガングリオンがある場所に負担をかけてはいけません。関節に負荷がかかると、関節包にある滑液がガングリオンの袋に流れやすくなり、コブが肥大化してしまう可能性があるためです。 たとえば、手首にガングリオンができた場合、手をついて立ち上がったり、手首を大きくひねったりする動作を極力控えるようにしましょう。 まとめ|ガングリオンが痛いときの対処法を知って適切にケアしよう 強く痛みを伴うガングリオンの場合は、病院を受診て専門医に診てもらいましょう。適切な治療を受けられれば、気になる症状を早期に改善できるはずです。 また、コブの出現や痛みの原因が、ガングリオンと似ているほかの病気の可能性もあります。それが悪性腫瘍のケースもあります。 自己判断で痛みを放置するのはリスクを伴うので、早めに専門医の診断を受けましょう。 手や足の筋肉や腱、靭帯を損傷したときは「再生医療」が効果的です。再生医療は身体にメスを入れない治療法なので、患者の負担が少ないです。「実はガングリオン以外の症状も気になる…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 ガングリオンでよくある質問ガングリオンに関するよくある質問 最後にガングリオンに関するよくある質問と回答をまとめます。 ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方は? ガングリオンは良性の腫瘍です。しかし、ガングリオンだと思っていたコブが悪性の脂肪肉腫だったケースや、炎症を繰り返していた粉瘤が悪性化するケースが極めてまれに起こります。 悪性の場合は、コブに以下のような特徴があります。 色むらがある 急に大きくなった 形がボコボコしている コブとまわりの境界線がはっきりしない 悪性の腫瘍は、まわりの組織ににじむように大きくなるため、コブとまわりの組織の境界がはっきりしません。また、違和感のある色や形のコブが出現したり、急速にコブが大きくなったりするなどの特徴があります。 自己判断するのは難しいため、該当する特徴があれば病院を受診して検査してもらいましょう。 以下の記事では、ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方を解説しています。見分け方の知識を深めたい方は、参考にしてみてください。 ガングリオンは何科で受診すればいい? ガングリオンは関節が関係しているため、基本的には整形外科で治療します。ガングリオンに似ている脂肪腫や粉瘤などは皮膚科や形成外科で診察するのが一般的です。 ガングリオンが自然に消えた原因を知りたい 自然に消えるのはガングリオンの袋がやぶけるためです。 ガングリオンの袋は大きくなると、局所的に薄い部分ができます。薄い部分は、関節を動かしたり、ぶつけたりする衝撃でやぶれやすくなります。 ガングリオンの袋がやぶけると中身の液体が流れ出し、ガングリオンが小さくなったり、消失したりします。 ガングリオンができやすい人の特徴は? 臨床報告の資料には、ガングリオンは中年の女性に多いと記載されています。20〜30代の男女比の割合は1:3であると同資料に示されています。(文献1) ガングリオンが発症するメカニズムは、まだ明確にわかっていません。つまり、ガングリオンができる部位を動かしすぎているからといって発症するとは言い切れないのです。 ガングリオンが足にできたときの対処法は? ガングリオンが足にできた場合でも、本記事で紹介した対処法が適用できます。 ガングリオンは自然に消えるケースがあるので、コブが小さかったり、痛みがなかったりする場合は、安静にして様子を見る選択もできます。 コブが大きくなってきたり、痛みが出たりする場合は、病院を受診して今後の治療方針を専門医と考えていくのが良いでしょう。 以下の記事では、ガングリオンが足にできたときの原因や症状を解説しています。治療法についても解説しているので、足にガングリオンができて悩んでいる方は参考にしてみてください。 参考文献 文献1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/67/4/67_371/_pdf/-char/ja 日本整形外科学会「ガングリオン」 Treatment of ganglion cysts Ganglions of the hand and wrist
2024.07.22 -
- 関節リウマチ
- 内科疾患
「両手の関節がこわばっている気がする」 「朝になるとこわばりが強くなる」 「もしかしたら関節リウマチなのではないか」 手足や指などの関節に腫れやこわばりといった症状があると、関節リウマチを疑う方も多いことでしょう。医療機関で、「関節リウマチの疑いがある」と説明された方もいらっしゃるのではないでしょうか。 関節リウマチは、免疫異常により関節に炎症が生じる疾患です。しかし、関節炎症は他の疾患でも起こり、関節リウマチには確定的な診断基準が存在しません。そのため関節リウマチは、症状や各種検査所見などを総合的に判断した上で診断されます。 そこで本記事では、関節リウマチの診断で用いられる分類基準や、各種検査の役割について詳しく解説します。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 関節リウマチの診断基準について知りたい方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください 関節リウマチの診断基準 関節リウマチには、単一の症状で確定診断できる診断基準が存在しません。(文献1) そこで使われるのが、分類基準と呼ばれるものです。従来は、1987年の米国リウマチ学会による基準が用いられていました。しかし、この基準では早期のリウマチ患者を診断できないケースがあったため、2010年に新たな分類基準が発表されました。詳しい内容は、次の章で説明します。 なお、分類基準はあくまで診療の目安として用いられるものです。実際は、医師が患者の症状や発症経過、検査結果などを総合的に判断した上で診断すると知っておきましょう。 関節リウマチの概要や症状などは、下記の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 関節リウマチの診断スコア|2010年分類基準の内容 2010年に、米国および欧州リウマチ学会が合同で新しい分類基準を発表しました。この分類基準は、関節の腫れや炎症があり、それらの症状が他の疾患で説明がつかない場合に適用されるものです。(文献1)(文献2)関節症状、血液検査、症状の持続期間について点数を合計し、6点以上であれば、関節リウマチの可能性が高いとされます。 関節症状の評価 関節症状については、症状が出ている関節の部位と数を数値化して評価します。詳細を表に示しました。(文献1)(文献2) 症状が出ている関節の部位と数 点数 大関節1か所 0点 大関節2~10か所 1点 小関節(大関節症状の有無を問わない)1~3か所 2点 小関節(大関節症状の有無を問わない)4~10か所 3点 11か所以上の関節(小関節1か所以上を含む) 6点 大関節とは、足や膝、ひじ、肩、股関節などを指します。小関節は、手や足の指、手関節などです。 血液検査で調べる項目 血液検査では、血清学的検査と炎症反応の2種類を調べます。(文献1)(文献2) 血清学的検査の項目は、リウマトイド因子と抗CCP抗体の2種類です。詳細を表に示しました。 検査結果 点数 2種類とも陰性 0点 1種類が陽性かつ、数値が基準値の3倍以下 2点 1種類が陽性かつ、数値が基準値の3倍より大きい 3点 炎症反応の項目は、CRP値と赤血球沈降速度の2種類です。詳細を表に示しました。 検査結果 点数 2種類とも正常値 0点 2種類のうちいずれかが異常値 1点 症状の持続期間 症状の持続期間も点数にカウントされます。詳細を表に示しました。(文献1)(文献2) 症状の持続期間 点数 6週間未満 0点 6週間以上 1点 診断における挑戦と注意点 早期の関節リウマチでは、典型的な症状や血液検査の異常が見られないことがあり、診断が難しい場合もあります。 また、他の関節疾患との区別も重要です。専門医は、豊富な経験をもとに総合的に判断します。 診断後も、定期的に患者の状態をモニタリングし、治療方針を適宜見直すことが必要です。 また症状や検査結果の変化を見逃さず、適切な治療を続けることが重要です。 血液検査および画像検査の役割 関節リウマチの主な検査としてあげられるのが、血液検査と画像検査です。この章では、各検査の役割を紹介します。 血液検査 免疫に関する検査としては、リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体などがあります。 リウマトイド因子陽性は、リウマチ患者の約70~80%に見られます。しかし、リウマトイド因子は膠原病や肝臓病などリウマチ以外でも陽性を示すことがあるため、単独での診断は難しい状況です。(文献3) 抗CCP抗体もリウマチ患者の約70~80%で陽性を示します。リウマトイド因子とは異なり、リウマチ以外で陽性になることは少ないとされています。(文献3) 炎症に関する検査としてあげられるものが、CRPや赤血球沈降速度です。CRPは、全身の急性炎症を表す指標であり、赤血球沈降速度は、慢性的な炎症の指標です。この2つはリウマチ以外の炎症性疾患でも高値を示します。そのため、炎症の検査単独で関節リウマチを診断するのは難しいといえるでしょう。 関節リウマチの血液検査については、下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 画像検査 画像検査としては、単純X線検査、MRI検査、関節超音波検査などがあげられます。(文献4) X線検査で確認できる所見は、主に以下のとおりです。 関節周辺の軟骨の腫れ 関節付近の骨の萎縮 関節の変形 骨びらん(関節周囲の骨が破壊される所見) 骨びらんは、リウマチの進行とともに見られる所見です。(文献4) MRI検査では、関節の内部を覆う滑膜や骨の炎症などを調べます。MRI画像を有効に活用すると早期診断に役立ちます。 超音波検査は、骨びらんの有無や滑膜の厚み、血流などを調べることにより、関節破壊や炎症の状況を確認できる検査です。診察で確認できなかった関節の炎症を診ることも可能とされます。 検査所見は診断における重要な指標ですが、症状や発症経過も大切な判断材料です。検査結果が正常でも症状が持続する場合は、再度医療機関を受診してください。 なお、治療方法については再生医療という選択肢もあります。 当院「リペアセルクリニック」で行っている、関節リウマチに対する再生医療については以下の記事をご覧ください。 関節リウマチの診断基準を知った上で正しい診断を受けよう 関節リウマチの診断では、主に2010年分類基準が用いられます。しかし、この基準は関節リウマチの特徴を把握するための目安であり、確定診断に用いるものではありません。分類上の数値や検査所見に加えて、医師による総合的な診断が必要です。 検査結果が正常であっても症状が続く場合は、自己判断せず再度医療機関を受診しましょう。 関節リウマチは、早期診断と早期治療が重要であり、進行を防ぐためにも、早めの受診が望ましいといえます。 当院、リペアセルクリニックではメール相談やオンラインカウンセリングを実施しています。関節リウマチの診断基準や現在の症状について疑問や不安をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。 関節リウマチの診断基準に関するよくある質問 関節リウマチの検査は何科で受けるものですか 基本的には、リウマチ科や膠原病科、もしくはこれらの科を標榜している整形外科です。自宅近くにこれらの診療科がない場合は、かかりつけの内科医を受診しましょう。リウマチの疑いがある場合は、かかりつけ医が紹介状を書いてくれるケースが多いため、それを持って専門の科を受診する流れになります。 公益財団法人日本リウマチ財団や、公益社団法人日本整形外科学会のホームページで専門医を探すことも可能です。 関節リウマチは検査をしたらすぐにわかりますか 関節リウマチは、検査をしたらすぐにわかるものではありません。関節リウマチの症状は、他の疾患による症状と類似していることも多く、診断が容易ではないためです。 レントゲンや超音波検査などは、検査結果がすぐに出ますが、MRI検査や各種血液検査は、結果が出るのに数日かかります。検査結果に加えて、患者の症状や医師の診察所見も加えて診断するため、確定診断には時間がかかると覚えておくと良いでしょう。 参考文献 (文献1) 関節リウマチの診断|公益財団法人日本リウマチ財団 (文献2) 関節リウマチと診断するための基準|リウマチe-ネット (文献3) 診断のための検査|公益財団法人日本リウマチ財団 (文献4) 関節リウマチの画像診断|臨床リウマチ
2024.07.22 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
大転子滑液包炎(だいてんしかつえきほうえん)は、特にランニングやスポーツなどをおこなう方に多く、1,000人中の5〜6人が発症します。 また、男性よりも女性、40~60歳の方が発症しやすいと言われてます。 大転子滑液包炎について以下のようなお悩みがありませんか? 痛みの改善方法が分からない 症状を悪化させる原因を知りたい ストレッチや運動などの予防策を知りたい この記事では大転子滑液包炎を改善・予防するための正しい知識を身につけ、原因や生活習慣、予防策について解説しています。 将来、自分の足が大転子滑液包炎になるのを防ぐためにも、適切な対策を行えるようになりましょう。 大転子滑液包炎とは? 大転子滑液包炎とは、 股関節の外側に存在する大転子という骨の周囲の滑液包が炎症を起こす症状 です。滑液包とは、関節や筋肉がスムーズに動くために存在する滑液という潤滑液を含む袋のことで、滑液包が炎症を起こすと関節や筋肉の動きが制限され、多くの場合、痛みを伴います。 大転子滑液包炎の原因には「大腿筋膜張筋」と「腸脛靭帯」の2つが関係しています。この2つの組織は大転子の上部を通過しているため、ランニングやサイクリングなどの同じ動作が行われ大転子滑液包と摩擦が起きることで炎症すると言われています。 また、大転子滑液包炎のリスクとなる要因は下記4つです。 転倒やスポーツなどによる外傷 大転子に付着する組織(中殿筋・小殿筋など)の損傷に伴う二次的な滑液包炎 滑液包自体の摩擦・微細損傷による炎症 関節リウマチや痛風などの疾患 外傷や内部の炎症性疾患が大転子滑液包炎を引き起こす要因です。 現在、股関節の疾患に対する治療法のひとつとして「PRP療法(再生医療)」 が注目されています。人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 大転子滑液包炎の症状 発症初期のころの痛みは股関節の外側と局所的ですが、症状が悪化すると大腿の外側まで痛みの範囲が拡大します。また、大転子を圧迫すると痛みが出現するため、横を向いて寝ることが大変になります。 また、痛みの程度により、日常生活やランニングなどの趣味活動に制限される場合もあるのです。 下記の記事では、股関節の疾患についてまとめています。ほかの病気もチェックしたい方は、あわせてご覧ください。 大転子滑液包炎が発症する原因3つ 大転子滑液包炎の原因は大きく分けて以下の3つがあります。 大転子を動かす激しい運動 長時間の立ち仕事 肥満体型 それぞれ以下で詳しく解説します。 大転子を動かす激しい運動 ランニングやサイクリングなどを頻繁に行う方は、大転子滑液包に対する摩擦が増え、炎症を引き起こす可能性があります。 階段の上り下りや、登山といった関節の動きが活発な動作も、大転子滑液包に負担をかけるため、大転子滑液包炎になる要因のひとつです。 長時間の立ち仕事 一般的に長い時間立っている方は、大転子滑液包にストレスがかかりやすいため、大転子滑液包炎を発症しやすくなります。 また、散歩やランニングの際に体が左右どちらかに傾いていたり猫背などの不良姿勢であることも、大転子滑液包にストレスがかかる原因となります。 このため、立ち仕事が増えたことや、ランニングを始めてから大転子周囲に痛みが出現した方は、大転子滑液包にストレスがかかっているかもしれません。 肥満体型 生活習慣では肥満も大転子滑液包炎の発症に影響を与えます。なぜなら、体重が増えると大転子滑液包にかかる負担も増加するためです。 肥満傾向の方は、体重を少し落とすだけでも痛みや症状の進行を抑えられるでしょう。 また、大転子滑液包炎は「PRP療法(再生医療) 」でも治療できます。PRP療法(再生医療)とは、血液に含まれる血小板の力を利用して傷ついた組織を修復する医療技術です。身体に負担の少ない治療法として、今注目されています。 「PRP療法(再生医療)で大転子滑液包炎はどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療専門の『 リペアセルクリニック 』にお気軽にお問い合わせください。実際の治療例をお見せしながら、再生医療の仕組みをわかりやすくお伝えいたします。 大転子滑液包炎の診断方法 大転子滑液包炎の診断は以下を用いて総合的に行われます。 問診 身体所見の確認 MRI 問診では、これまでの病歴や痛みが出現する前に行っていたこと、どのような時に痛いのかを確認します。身体所見の確認では、大転子を圧迫し痛みが出現するのかを確かめます。関節包に水が溜まっているかどうかや関節包の炎症の有無の判断は、MRIを使用しなければ分かりません。 大転子滑液包炎の効果的な治療方法 大転子滑液包炎の治療方法は大きく分けて以下の3つです。 保存的治療 手術療法 PRP療法(再生医療) それぞれ以下で詳しく解説します。 保存的治療 大転子滑液包炎の保存的治療の重要な目標は、痛みの軽減を図ることです。大転子滑液包炎に限らず、炎症があり痛みが強い場合にはアイシングが有効です。アイシングをすることで炎症を抑え痛みを抑制できます。 また、大転子滑液包の炎症を抑えるためには、ステロイドの注射や消炎鎮痛剤の内服も有効です。しかし、30%の方は痛みが改善しないと言われているため、保存的治療で痛みを改善できない場合には以下の方法の検討も必要となります。 手術療法 大転子滑液包炎が長期化し慢性化すると、大転子滑液包内に異常な血管が生じてしまいます。この場合、ステロイドや消炎鎮痛剤の使用により一時的に痛みは軽減しますが、再度痛みが出現します。 そのため、大転子滑液包炎が長期化している場合は、運動器カテーテル治療を行い、異常な微小血管を減らす治療が有効です。施術時間は20〜30分ほどで終了します。 運動器カテーテル治療後は、大転子滑液包炎による痛みが改善します。しかし、他にも原因がある場合は、痛みが残存する可能性があるため、医師への相談が必要です。 PRP療法(再生医療) 「PRP療法(再生医療)」とは、患者さまの血液に含まれる血小板の治癒力を利用して、傷ついた組織を修復する医療技術です。 注射を打つだけなので、日常生活や仕事への影響はありません。普段どおりの生活を送りながら、早期回復を期待できます。 弊社『リペアセルクリニック』は、再生医療専門のクリニックです。国内での症例数は10,000例以上に及び、多くの患者さんの治療に携わってきました。 大転子滑液包炎は再生医療の治療対象です。弊社では無料相談を受け付けていますので、詳しい治療法や効果を知りたい方はお気軽にお問い合わせください。 大転子滑液包炎の予防法 大転子滑液包炎の予防法を解説します。主な予防法は以下の3つです。 ストレッチ 適度な運動 規則正しい生活習慣 順番に見ていきましょう。 ストレッチ 大転子滑液包炎を予防するためには、股関節周囲の筋肉、 特に「大腿筋膜張筋」の柔軟性を高めること が重要です。大腿筋膜張筋のストレッチは座った状態と寝た状態どちらでも行えます。 まずは座った状態でのストレッチから解説します。椅子に浅く腰掛け、片方の足を反対側の太ももの上に乗せます。上体をゆっくりと前に倒し、太ももの外側に軽い張りを感じるところで20~30秒ほど保持します。反対側も同様に行います。 次に、寝た状態でのストレッチを説明します。両膝を立てて膝を左右どちらかに倒し、20~30秒ほど保持します。膝を右側に倒した時は左足の大腿筋膜張筋、左側に倒した時は右足の大腿筋膜張筋が伸ばされます。 どちらのストレッチも、1日に数回行うことで筋肉の柔軟性を維持できます。ストレッチを行う際は、痛みを感じない範囲で行い、呼吸を止めないように注意しましょう。膝を倒した時に痛みが強い場合は、痛みが出る直前まで倒すことで痛みなくストレッチできます。 無理なストレッチは症状を悪化させる可能性があるため、痛みのない範囲で行うことが大切です。 適度な運動 大転子滑液包炎を予防するためには、股関節周囲の筋力アップが必要です。 ここでは、自宅で簡単に行える以下2つの運動をお伝えします。 スクワット 足を横に開く運動 スクワットの方法は以下のとおりです。 足を肩幅にひらく 膝がつま先より前に出ないように膝を90度ほど曲げる 膝を伸ばし1の状態に戻る 上記を10回繰り返す この時に1つ注意点があり、膝を曲げている時は膝が内側に寄らないようにしましょう。スクワットを行うことで「大腿四頭筋」や「大臀筋」などの筋肉を強化できます。 また、足を横に開く運動は以下のとおりです。 立った状態で椅子や手すりなどに軽くつかまる 体が横に傾かない範囲で片方の足を横に開いて戻す 上記を10回繰り返す この時に1つ注意点があり、足を横に開く時はつま先が外側へ向かないように注意しましょう。足を横に開く運動では「中臀筋」や「小臀筋」の筋肉を強化できます。 規則正しい生活習慣 大転子滑液包炎を生活習慣から予防するためには以下の2つが大切です。 定期的な運動習慣 バランスの良い食事 定期的な運動習慣がなければ足腰の筋力が低下してしまい、大腿筋膜張筋にストレスがかかりやすくなります。また乱れた食生活では肥満につながり、体重が増えることでも大腿筋膜張筋へのストレスが増加します。 これらの日常生活での予防策は、大転子滑液包炎の予防だけでなく、他の整形外科疾患の予防にもつながります。 大転子に関するよくある質問 最後に大転子に関するよくある質問と回答をまとめます。 大転子が痛いと感じたら何科を受診すればいい? 整形外科を受診しましょう。痛みを放置すると症状が慢性化するリスクがあるので、股関節周りに痛みや違和感を感じたら、なるべく早く病院を受診するのがおすすめです。 股関節が突然痛くなり歩けなくなりました。考えられる原因はなんでしょうか? 歩けないほど股関節に痛みが出る原因として考えられるのは、下記の外傷や疾患です。 骨折 大転子滑液包炎 変形性股関節症 変形性股関節症とは、股関節の軟骨がすり減り、骨の変形によって痛みがともなう疾患です。変形性股関節症も「再生医療 」の治療対象です。 まとめ|大転子が痛いと感じたら大転子滑液包炎の可能性あり 大転子滑液包炎は、ランニングやサイクリング、階段の上り下りなど、趣味のスポーツや日常の動作を繰り返す過程で発症します。 症状が悪化すると、歩いたり、横を向いて寝たりする際に強い痛みを感じます。症状の悪化を防ぐためにも、大転子に痛みを感じたら、早めに整形外科を受診しましょう。 現在、大転子滑液包炎の治療法のひとつとして「PRP療法(再生医療)」が注目されています。切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 リペアセルクリニック では、無料相談も受け付けていますので「PRP療法(再生医療)で大転子滑液包炎をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 参考文献一覧 ・Effect of corticosteroid injection for trochanter pain syndrome: design of a randomised clinical trial in general practice. Brinks A, van Rijn RM, Bohnen AM, Slee GL, Verhaar JA, Koes BW, Bierma-Zeinstra SM BMC Musculoskelet Disord. 2007 Sep 19; 8():95. ・Lustenberger DP, Ng VY, Best TM, Ellis TJ: Efficacy of treatment of trochanteric bursitis: A systematic review. Clin J Sport Med 2011;21(5):447-453. ・Fox JL: The role of arthroscopic bursectomy in the treatment of trochanteric bursitis. Arthroscopy 2002;18(7):E34. ・渡邉 博史.静的ストレッチングの効果的な持続時間について.第47回日本理学療法学術大会.
2024.07.18 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
「人工股関節置換術を受けたのに痛みが続いてしんどい」 「痛みの原因がわからず不安」 股関節を人工関節に置き換える人工股関節置換術を受けた方で、痛みが続いて本当に回復するのか不安に感じている方も多いでしょう。痛みが続くと日常生活に支障をきたしたり、回復しない焦りで不安になったりしますよね。 そうした術後の痛みに対しては、適切なリハビリテーションと痛みのコントロールが重要です。 そこで今回は、人工股関節置換術後の痛みの原因から自宅でできるリハビリテーションの方法、人工関節を長期的に保つためのケア方法まで紹介していきます。 人工股関節置換術後の痛みが生じる原因 まず人工股関節置換術後に痛みが生じるのは「遺残疼痛(いざんとうつう)」と呼ばれる状態です。 人工股関節置換術後、痛みは多くの場合数週間から3カ月程度で回復します。 しかし、痛みが気になる方や長引いている方は、主に以下の原因から生じている可能性があります。 手術による損傷 リハビリ不足 感染(合併症) 人工関節の耐久性の問題 それぞれ詳しく解説していきます。 【関連記事】 【医師監修】人工関節とは|メリット・デメリットや置換術について詳しく解説 原因1:手術による損傷 人工股関節置換術後に生じる痛みの原因は、手術による損傷が代表的な理由です。 人工股関節置換術は、患部の股関節の骨を削る工程があるため、体への負担がかかる治療法です。骨を削るだけでなく、人工関節の埋め込みに伴い、筋肉や血管などを傷つけてしまいます。 手術をしている最中に神経が引っ張られて損傷し、足の感覚が鈍くなる症例も認められています。 多くの場合、手術による損傷は一時的で回復する傾向にはありますが、長引いている方は早めに担当医師に相談しましょう。 以下の記事では、人工関節における年代別のリスクも取り上げているので、あわせてご覧ください。 原因2:リハビリ不足 人工股関節置換術後に痛みが生じる原因には、リハビリ不足もあげられます。人工股関節置換術後のリハビリは、関節の動きを改善するだけでなく、筋力強化が主な目的です。 リハビリが不足していると、筋肉や靭帯への負荷がかかります。無理に歩くと人工関節周辺にかかった負担が炎症につながってしまうのです。逆に早く痛みを改善しようと、無理なリハビリをおこなってしまうのも注意が必要です。 原因3:感染(合併症) 人工股関節置換術後の痛みは、合併症を引き起こした場合でも現れる可能性があります。 痛みを感じる合併症の代表的なものとして感染があり、痛みが長期的に続いたり、強くなったりする方は注意が必要です。 感染が起こると、痛みのほかに関節の腫れ、発赤、熱感、発熱、倦怠感を伴う場合もあります。 なお、以下の危険因子(特定の病気や状態を引き起こす可能性がある要因)がある方は感染症にかかるリスクが高いため、注意してください 肥満 糖尿病 関節リウマチ 心血管障害など 人工股関節置換術後に痛みだけでなく、感染を疑わせる症状を伴う場合は、早めに整形外科を受診しましょう。 高齢者の方は、危険因子以外に注意しておきたい手術のリスクがあるため、以下の記事もあわせてご覧ください。 原因4:人工関節の耐久性の問題 人工関節の耐久性も術後に痛みを感じる原因の1つです。 人工関節をできるだけ長持ちさせるには、定期的な診察が重要です。しかし、日常生活において過度に負担をかけていると、耐久性に問題が生じてしまいます。 術後は3カ月、6カ月、1年後、その後は年1回のペースでレントゲン検査や医師の診察を受けましょう。 人工関節への負担を抑えるために、杖のような生活支援用具を使用した生活がおすすめです。 さらに、運動をする場合には、ウォーキングや水中エクササイズ、ルームバイクなどの実施をおすすめします。 ジョギングや器械体操、シングルテニスなどを含め、走ったりジャンプしたりと急な動きは避けましょう。 人工股関節置換術後の注意点について以下の記事で詳しく解説しているため、合わせてご覧ください。 人工股関節置換術後の痛みに対処する方法 人工股関節置換術後の痛みが気になる方には、以下の方法で対処しています。 薬物療法 リハビリ 再手術 それぞれ詳しく解説していきます。 薬物療法 人工股関節置換術後の痛みに対処するため、まずおこなわれるのが薬物療法です。 主に、炎症を抑えるためにロキソニンのような痛み止めを処方します。ただし、薬物療法の場合は根本的な解決を目的にしているわけではないため注意してください。 また、薬によっては胃腸障害や眠気などの副作用が伴うケースがあります。長期間使用すると、効果が薄れてしまうため、あくまで一時的な対処と覚えておきましょう。 リハビリ 人工股関節置換術後の痛みには、適切なリハビリも重要です。 効果的なリハビリは、関節の動きを改善する運動や筋力をつける運動、日常動作の練習など複数あります。 具体例をあげると、以下のようなリハビリを実施しています。 種類 内容例 関節可動域訓練 下肢の曲げ伸ばし ストレッチポールなどを使った下肢のストレッチ 筋力増強訓練 踏み台昇降運動 椅子からの立ち上がり運動 歩行練習 平行棒内歩行 杖歩行 ひとり歩き バランス訓練 足踏み運動 日常生活動作の訓練 階段の昇り降り 着替え 入浴 トイレ動作 複数の運動を組み合わせ、患者様の状態に合わせて難易度を上げていくと、関節の機能回復と日常生活への復帰がしやすいでしょう。 再手術 人工股関節置換術後の痛みを感じる場合、以下の原因が考えられます。 インプラントの緩み 感染 関節の不安定性 周囲組織の炎症や損傷 診断により原因を特定し、必要に応じて再手術を検討します。 再手術では、緩んだインプラントの交換や、感染組織の除去、位置の修正などを行うことで、多くの場合症状の改善が期待できます。一方で、回復そのものに時間がかかってしまう点には注意が必要です。 人工股関節置換術前の再生医療も1つの選択肢 人工股関節置換術後の痛みは、薬物療法・リハビリ・再手術で対処しますが、そもそも術後の痛みを発症させないために、人工股関節置換前の再生医療も選択肢の1つとなります。 再生医療は、患者様自身の幹細胞を用いて関節の修復・再生を促す治療法です。手術と比べて体への負担が少なく、軟骨の再生や炎症の軽減により、痛みの改善が期待できます。 手術を受けるには入院期間や回復期間が必要で、手術に伴うリスクも考慮する必要があります。対して再生医療は、そのような手術のリスクを避けながら、痛みの軽減と関節機能の改善を目指す新しい治療選択肢です。 再生医療について、より詳しい情報は以下のページでご紹介しています。ぜひご覧ください。 ※再生医療は人工関節置換術後に実施できません。あくまでも人工関節置換術前の選択肢としてご考慮ください。 まとめ・人工股関節置換術後の痛みが気になったら早めの受診を! 今回は人工股関節置換術後の痛みを感じる原因や対処法について解説しました。 人工股関節置換術後の痛みの原因として、手術による損傷やリハビリ不足などがあげられます。 痛みを早く解決するために無理なリハビリをするのはおすすめできません。症状の改善には、専門医による適切な指導のもとでリハビリを進めることが大切です。 また、人工関節の不安定性や炎症が痛みの原因の場合は、再手術が検討されます。「手術を避けたい」「人工股関節置換術後の痛みを避けたい」とお考えの方は、人工股関節置換術前の再生医療も1つの選択肢になることも覚えておきましょう。 当院「リペアセルクリニック」では幹細胞を用いた再生医療を行っています。 当院では、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、ぜひお気軽にご相談ください。 人工股関節置換術後の痛みの原因が知りたい方からのよくある質問 そもそも人工股関節置換術後の痛みはいつまで続くの? 人工股関節置換術後の痛みは、手術した日とその翌日をピークに、1週間程度続きます。痛みは次第に回復し、手術後に処方された痛み止めを徐々に減らしていきます。 術後のつっぱり感も多くの場合、半年程度で回復しますが、長期的な健康維持が大切です。 なお、仕事の完全復帰や旅行、スポーツなどを考えている方は6カ月〜1年程度と考えてください。 無理をしてしまうと、痛みが続く期間が伸びる可能性があるため、定期的な受診をおすすめします。 以下の記事では人工関節置換術について、知っておきたいポイントを網羅的に解説しています。 人工股関節置換術後にやってはいけないことは? 人工股関節置換術後、やってはいけない姿勢や動きがあります。 たとえば、横座りやあぐら、足組みなどがあげられます。和式トイレの使用や前傾姿勢も、脱臼の可能性があるので、控えてください。 また、人工股関節置換術後は適度な運動が推奨されていますが、野球やテニスのような関節の動きが多いスポーツは避けましょう。 日常生活でも階段の利用は控え、立ちっぱなしの時間が長くならないよう、座ってできる作業をおすすめします。 転倒にも注意が必要なため、術後はとくに杖やストックを使って歩くのがおすすめです。 ※上記はあくまでも人工股関節置換術後の禁忌行為です。術式によってやってはいけないことは異なります。 自宅でできる予防法はある? 自宅で簡単に行える予防法は、以下のようなエクササイズです。 エクササイズ 内容 目的 足関節ポンプ運動 仰向けに寝て足を台の上に乗せ、足首を上下に動かし、血流を促進する 浮腫の軽減 ストレートレッグレイズ 手術した脚を真っすぐに保ったまま持ち上げ、保持する 太もも前面の筋力強化 膝の屈曲・伸展運動 椅子に座り、手術した膝を曲げたり伸ばしたりする 太もも前面の筋力強化 上記のエクササイズを毎日行うと、筋力と関節の動きが改善され、日常の動作がスムーズに行える場合もあります。 しかし、人工関節の種類によっては関節の動きに制限があるため、必ず医師や理学療法士の指示に従い、痛みに注意しながら行ってください。 なお、エクササイズだけでなく、日頃の感染予防も大切です。手術した部位を清潔に保てるよう、定期的な受診や抗菌薬の服用が主な予防法です。 発熱や腫れ、痛みが生じた場合は速やかに担当医に相談してください。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、気軽にご連絡ください。
2024.07.17 -
- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
脊髄出血と呼ばれる疾患に聞きなじみがない方も多いのではないでしょうか。 脊髄出血は脊髄血管障害の一つであり、外傷や脊髄の血管奇形などが主な原因です。 稀な疾患であり、研究症例数としては1826年から1996年までの170年間で613例しか報告されていません。しかし、脊髄出血は重大な脊髄損傷や神経障害を引き起こす可能性があります。(文献1) この記事では、脊髄出血の原因や症状、治療について詳しく解説するので、脊髄出血の理解を深める手助けになれば幸いです。 脊髄出血について 脊髄出血とは、脊髄内やその周囲の組織が出血した状態です。 脊髄は、脳から背骨の中を腰に向かって走る太い神経を指し、脳からの指令を筋肉に伝えるのが主な役割です。脊髄血管障害と呼ばれる病気を発症する場合があり、脳と同じように出血したり、血管が詰まったりします。 出血した場合は脊髄出血、血管が詰まった際は脊髄梗塞と呼びます。 脊髄梗塞について詳細は、以下の記事をご覧ください。 脊髄出血の種類 脊髄出血は、出血した場所により4つの種類に分けられます。 脊髄内出血(脊髄内部の出血):麻痺やしびれなど急激に症状が進行する場合が多い 脊髄くも膜下出血(軟膜とくも膜の間の出血):発熱や頭痛、嘔吐など 脊髄硬膜下出血(くも膜と硬膜の間の出血):首や背中の強い痛みなど 脊髄硬膜外出血(硬膜よりも外側の出血):4つのうちで症例が多い傾向にあり、首や背中の強い痛みなどがみられる 脊髄は軟膜・くも膜・硬膜の3層の膜に覆われていて、出血した場所によって疾患名は異なります。出血している部位の検査は、脳神経外科によるCTスキャンやMRIなどが一般的です。 脊髄出血の患者背景と特徴 1869年から2012年までの脊髄出血の症例1010件を検討した報告では、患者様の平均年齢は47.97歳(年齢幅:0〜91歳)であり、6割以上が男性でした。(文献2) その後の医療発展や画像検査技術の向上により、脊髄出血の報告数も増えてきましたが、稀な疾患といえます。 脊髄を守る3つの膜の一番外側である、硬膜よりも外側の出血(脊髄硬膜外出血)が最も多い傾向にあります。出血が多い部位は、首の下方や胸の下方です。 また、出血は背骨の2つ以上に渡っていることが多く、最大で6つに広がるケースがみられました。そのため、出血が広がる前に医療機関で適切な治療を受けるのが重要です。 脊髄出血の原因 脊髄出血の主な原因は以下のとおりです。 外傷:交通事故や転落など 血管奇形:動脈や静脈、リンパ管などが異常に発生する 硬膜外動静脈瘻:動脈と静脈が硬膜の中でつながる 医療行為による合併症:髄液組成を調べる腰椎穿刺や脊椎麻酔など 脊髄腫瘍:脊髄やその周囲で腫瘍が発生し、脊髄を圧迫する 抗血栓薬:血液を固まりにくくする薬の服用 脊髄出血の原因は、交通事故や転落などによる外傷が一番多いとされています。 また、動脈と静脈がつながる血管の異常や腫瘍の発生、血液を固まりにくくする薬も原因に挙げられます。血液を固まりにくくする薬は、血栓や梗塞の予防に必要なので自分の判断で服薬を止めず、不安があれば医師に相談しましょう。 脊髄出血の症状 脊髄出血によって神経が圧迫されると、以下の症状を引き起こします。 首や背中の強い痛み 身体を動かしにくくなる(運動障害) 温度や痛みを感じない、しびれを感じる(感覚障害) 出血は急に起きることが多いので突発的に発症するのが一般的ですが、24時間~数日経ってから症状が現れることもあります。 また、出血した部位によって麻痺が及ぶ範囲が以下のように異なる場合があります。 胸部の脊髄が出血:股関節からつま先までの麻痺 首の脊髄が出血:下半身に加えて、肩から手の指まで麻痺 出血量が多いほど血液の塊が大きくなり、症状が重くなる傾向があるので、上記のような症状がみられる方は早急に医療機関を受診しましょう。 脊髄出血の診断 脊髄出血の診断には、以下の検査を用いるのが一般的です。 CT:骨の損傷を調べる MRI:脊髄の出血や血のかたまり(血腫)を調べる 血管造影検査:血管を詳しく調べる 脊髄出血の検査はMRIが一般的で、出血や血のかたまりである血腫がないか調べます。 複数の層にまたがって出血している際は、MRIより詳しく調べられる血管造影検査を行います。血管造影検査とは、太ももの付け根の血管から細い管を入れ、造影剤を流して撮影する検査です。 出血量が多く疾患が早く進行した場合、麻痺や強い痛みなど日常生活に深刻な影響を与えるリスクが高まります。適切な診断を受けて回復の可能性を高めるには、正確な検査を受けることが重要です。 脊髄出血の治療 脊髄出血の治療について、以下の表にまとめました。 治療の種類 治療の内容 適用される条件 外科的治療 神経への圧迫を取り除く 血管内治療 身体に麻痺症状がある 保存的治療 安静 止血剤(血液を固める薬)の投与 降圧剤(血圧を下げる薬)の投与 血液をサラサラにする薬を服用していない 身体の麻痺症状がない 脊髄出血は、出血の原因や部位、出血によって治療の方法が異なります。そして、急を要する場合が多い疾患です。 脊髄出血では外科的手術を行うことが多く、特に麻痺症状が重篤な場合は早期の手術が重要です。不全麻痺の場合は48時間以内、完全麻痺の場合は36時間以内の治療で回復の見込みが高まるとされています。 手術では、背骨の一部を削り神経への圧迫を取り除くのが一般的です。血管の奇形が見られる際は、血管からカテーテルと呼ばれる細い管を通して出血している血管を塞ぐ血管内治療を行います。 一方、血液をサラサラにする薬を服用しておらず身体の麻痺症状もない場合は、薬物療法などの手術しない保存的療法を行うことがあります。 脊髄出血の詳しい治療や症状の見通しについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 脊髄出血の後遺症 脊髄出血の主な後遺症は以下の通りです。 運動麻痺:身体の麻痺やしびれ 感覚障害:痛みや温度などの感覚低下 膀胱直腸障害:排尿や排便に支障が出る 出血の量が多かったり、血腫(血管外に血液が漏れて固まった状態)による圧迫が強かったりすると、脊髄が損傷して身体の麻痺やしびれ、痛みや温度などの感覚低下を引き起こします。後遺症は脊髄が損傷した部位によって異なりますが、首や胸の部分の脊髄が損傷すると下半身が麻痺する場合もあります。 発症から早期に適切な治療を受けるほど回復の可能性が高くなるため、脊髄出血が疑われる場合は一刻も早く治療を受けることが大切です。 脊髄出血のリハビリ 脊髄出血のリハビリは、時期によって異なります。 急性期:可動域の訓練や呼吸筋の強化 回復期:寝返りや起き上がりなどの動作訓練 慢性期:日常生活の動作の訓練や精神的なケア 脊髄は一度損傷すると、組織の再生はほとんど見込めません。そのため、脊髄出血のリハビリの主な目的は残っている機能の維持や強化です。 脊髄出血を発症した直後の急性期では、寝たきりの防止や後遺症の軽減のためできるだけ早い時期からリハビリを始めます。麻痺によって動けない関節が固まらないように可動域の訓練をしたり、体位交換やエアマットの使用などで床ずれを予防したりします。 状態が落ち着いた回復期以降は、症状に合わせて寝返りや車いすに乗る動作、日常生活の動作などを練習します。 まとめ|脊髄出血とは?脊髄血管障害の原因や症状 脊髄出血は、脊髄内やその周辺に出血が生じた状態を指します。原因の多くは外傷ですが、脊髄の血管奇形も考えられます。脊髄出血の症状は突然に見られ、背中の痛みの後に運動障害や感覚障害を引き起こすのが一般的です。 出血の場所や程度によりますが、発症してから早急に治療を受けると回復する可能性があります。ただし、脊髄へのダメージが大きい場合や障害を受けてから時間が経ってしまった場合は、身体の麻痺や感覚の低下などの後遺症が出るリスクが高まります。 損傷した脊髄は、自然回復がほとんど期待できません。そのため、脊髄出血の後遺症には、残っている機能の維持や強化が目的のリハビリが一般的です。 医学分野ではさまざまな治療アプローチが研究されており、再生医療もその一つです。脊髄出血の後遺症にお悩みの方は、再生医療を提供している当院「リペアセルクリニック」までお気軽にご相談ください。 脊髄出血についてよくある質問 脊髄ショックと言われましたがよくなりますか? 脊髄ショックの回復には、数日から数週間かかる場合が一般的です。 脊髄ショックとは、重度の脊髄損傷が見られた際、一時的に脊髄が機能不全を起こし、反射反応が無かったり、筋肉が緩んだ状態になったりします。身体の麻痺やしびれの評価は、脊髄ショックを離脱した後に行います。 脊髄出血はなぜいくつも検査するのですか? 脊髄出血では、CTで骨の損傷を調べたり、MRIで出血の状態を調べます。 出血が複数の層にまたがっている際や、血管の奇形が疑われる場合は、MRIよりも詳しく血管を調べるために血管造影検査を行います。血管造影検査とは、太ももの付け根や腕の血管から、カテーテルと呼ばれる細い管を入れ、造影剤を流して撮影する検査です。また、血管が細くなっている場所まで進み、血管の中から押し広げて血流を正常にしたり、塞栓物質と呼ばれる血管をふさぐ物質を注入して止血したりする治療ができます。 脊髄出血は、早期に適切な治療を受けると、後遺症が軽減する可能性があります。良好な予後のためにも、検査を受けて出血の状態を正しく把握しましょう。 参考文献 (文献1) Spinal hematoma: a literature survey with meta-analysis of 613 patients|Springer Nature Link (文献2) Spinal epidural hematomas: personal experience and literature review of more than 1000 cases|J Neurosurg Spine
2024.07.16 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
シンスプリントは、主にランナーやアスリートの間でみられる症状で、すねに痛みを引き起こす状態です。 オーバートレーニングや不適切な運動などが原因で、すねの骨に過度のストレスがかかると周りにある骨膜が炎症を起こします。 すねの痛みを抱えている方のなかには、「シンスプリントにストレッチは効果的なのか」「どのような治療法があるか」など、疑問を持っている方もいるでしょう。 今回は、シンスプリントに効くストレッチ方法のほか、治療法や具体的なリハビリテーションの方法を解説します。スポーツへの復帰時期についても詳しく解説するので、健康的な身体を維持するための参考にしてください。 シンスプリントの予防にはストレッチが効果的 シンスプリントの予防には、ストレッチをして筋肉や腱を柔軟に保つことが大切です。 シンスプリントは、運動時にすねの筋肉や腱に負担がかかることによって、痛みを引き起こします。初期症状の場合は主に運動中に痛みが現れ、重症化すると立っているときや安静時にも痛みを感じるようになります。 シンスプリントには、とくにふくらはぎや足裏、足首などのストレッチが効果的です。筋肉の緊張を和らげ、柔軟性を高めることで、筋肉の疲労が溜まりにくくなり、シンスプリントの発生リスクを減らせます。 以下の記事では、シンスプリントを発症する原因や治療法について解説しているので、あわせてご覧ください。 シンスプリントに効くストレッチ方法 シンスプリントに効くストレッチ方法として、以下の5つが挙げられます。 ふくらはぎ(ヒラメ筋・腓腹筋・後脛骨筋)のストレッチ 脛(すね)のストレッチ 足裏をほぐすストレッチ 足首まわりのストレッチ 股関節のストレッチ 以下で、それぞれのストレッチ方法を解説するので、ぜひ参考にしてください。 ふくらはぎ(ヒラメ筋・腓腹筋・後脛骨筋)のストレッチ ふくらはぎ(ヒラメ筋や後脛骨筋など)のストレッチは、シンスプリントの痛みを和らげるのに効果的です。 ヒラメ筋のストレッチ方法は、アキレス腱のストレッチに似ていて、足を前後に開いて後ろ足のヒラメ筋を伸ばします。この時、後ろ足の膝は曲げておこなうことが大切です。 このとき、後ろ足の膝を伸ばしておこなってしまうと、ヒラメ筋のストレッチにならなくなってしまうので注意してください。また、反動をつけると筋肉を痛めてしまう可能性があるため、ゆっくり30秒ほどかけてストレッチすると効果的です。 すねのストレッチ すねのストレッチも、シンスプリントの予防につながります。すねの前側に位置している前脛骨筋(ぜんけいこっきん)は、長時間の歩行などで硬くなりやすい筋肉です。 前脛骨筋のストレッチ方法は、まず椅子に座って片足を椅子の横に出します。出した足を少し後ろに引き、足の甲が床に触れる状態にします。そして、足の甲を床に押しつけるように体重をかけながら、ゆっくりと30秒ほどキープしてください。 片足ずつ、両足の前脛骨筋を伸ばしましょう。前脛骨筋をほぐすとシンスプリントによるすねの痛みを軽減できます。 足裏をほぐすストレッチ シンスプリントの予防には、足裏をほぐすストレッチも効果的です。足裏の筋肉が硬くなると、歩行時やランニング時に足首やすねに負担がかかりやすくなります。 足裏をほぐすためには、テニスボールのような硬めのボールを使用する方法がおすすめです。テニスボールを床に置き、足裏をボールの上に乗せて、体重をかけながら前後に転がします。両足とも1回40秒を目安におこないましょう。 体重を乗せた際、足裏に強い痛みが出る場合は、ストレッチを中止してください。 足首まわりのストレッチ 足首の筋肉や腱をほぐすと、足元の安定性が高まり、シンスプリントの予防につながります。 足首まわりのストレッチ方法は、踏み台や低めの椅子にかかとが出るように片足を置きます。そのまま、かかと側に体重をゆっくりとかけ、足首の後ろ側(アキレス腱周辺)が伸びる感覚を確認してください。1回40秒を目安に、反対の足も同様にストレッチしましょう。 なお、転倒しないように手すりや壁に手をかけておこなってください。 股関節のストレッチ シンスプリントの予防には、ストレッチポールを使った股関節のエクササイズも効果的です。股関節の柔軟性が低下すると、下半身全体に負担がかかりやすくなり、シンスプリントの痛みの原因になります。 股関節まわりの柔軟性を高める方法として、ストレッチポールを使った骨盤スライド運動があります。仰向けに寝転がり、両膝を曲げて足を床につけてください。骨盤を左右に揺らすように動かすと、骨盤の位置を整えて股関節の安定につながります。 腰が床と水平に動くように意識しながら、10〜20回ほど左右にスライドします。股関節の動きが良くなると、シンスプリントの予防につながります。 シンスプリントの治療法 シンスプリントの原因はオーバートレーニングやランニングフォーム、足の形状や筋力低下などであるため、症状に対する適切な治療が不可欠です。 シンスプリントの治療法は、痛みの程度に応じて以下の治療をおこないます。 保存療法 薬物療法による疼痛緩和 リハビリテーション 再生医療 それぞれ詳しく解説します。 保存療法 シンスプリントの治療は、保存療法が一般的です。シンスプリントによって痛みや腫れが現れている場合は、安静にして、疲労した筋肉や骨を休める必要があります。痛みを我慢して運動を続けていると、症状が悪化したり、最悪の場合は疲労骨折したりする可能性がある点に注意してください。 また、安静にすると同時にアイシングをして痛い部分を氷などで冷やすことも重要です。アイシングすると、腫れを抑えられるほか、痛みの軽減も期待できます。 ただし、アイシングする際は、以下に注意しましょう。 氷を袋に入れて患部を冷やす場合は、タオルを間に挟む 1回に冷やす時間は15~20分程度にする アイシングの際、短時間で急激に冷やそうとタオルを挟まず長時間あて続けると、凍傷になる可能性があります。 なお、1回アイシングをした後は、時間を空けてから再度行うことができます。特に怪我や炎症の初期(24〜48時間以内)は、定期的なアイシングが効果的です。 薬物療法 シンスプリントの治療法の一つが、薬物療法です。 薬物療法は主に疼痛緩和を目的におこなわれます。痛みが強く日常生活に支障をきたす場合には、整形外科で医師に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの使用を相談してみましょう。 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に限らず、薬物療法には副作用のリスクもあるため、医師の指導のもと用法用量を守って使用する必要があります。 しかし、薬物療法は痛みを一時的に和らげるためのもので、腫れや炎症といった根本的な問題が解決するわけではありません。 なぜなら、シンスプリントの原因には、過度なトレーニングやランニングフォーム、足の形状や筋力低下などが関与しているからです。このため、薬物療法に併せて原因に対する根本治療も重要です。 リハビリテーション 薬物療法と並行して、痛みの予防や再発防止に向けたリハビリテーションに取り組むことも大切です。シンスプリントに対するリハビリテーションには、主に以下の目的があります。 筋肉や関節の柔軟性の向上 筋力強化 シンスプリントの痛み軽減・再発防止 リハビリテーションは自宅で取り組めるメニューから、歩行姿勢やランニングフォームの改善までさまざまです。 歩行姿勢やランニングフォームを改善する際は、理学療法士をはじめとする専門家の指導のもと、正しい運動方法を習得する必要があります。 また、リハビリテーションは正しい方法でおこなわなければ、痛みが増悪する可能性がある点にも注意してください。 再生医療 保存療法で症状が改善しない場合は、再生医療も治療選択肢として挙げられます。 再生医療では、幹細胞を採取・培養して注射する幹細胞治療や、血液を利用するPRP療法などがあります。 再生医療は手術を必要とせず、スポーツによる怪我に対しても実施されています。 スポーツ外傷に対する再生医療については、以下のページで詳しく解説しています。 シンスプリントのリハビリテーションに取り組むポイント シンスプリントのリハビリテーションに取り組むポイントとして、以下の2つが挙げられます。 筋肉強化を図る テーピングやサポーターを活用する それぞれ詳しく見ていきましょう。 筋肉強化を図る シンスプリントにはストレッチも効果的ですが、リハビリテーションにおいては筋力強化を図ることも大切です。 ここでは、ふくらはぎの筋力トレーニングと足指でタオルを引き寄せる運動について解説します。 ふくらはぎの筋力トレーニング ふくらはぎの筋力トレーニングには、ゴムチューブを用いた低負荷の運動がおすすめです。まず足指の付け根にゴムチューブを巻き、手前に引きます。かかとは床につけた状態で、ゴムチューブを伸ばすようにつま先を下に伸ばします。 最初は低負荷から始め、徐々に負荷量を上げていくのが一般的です。いきなり高負荷でトレーニングすると、筋肉が再び炎症する可能性があるので注意しましょう。 足指でタオルを引き寄せるトレーニング 足指でタオルを引き寄せるトレーニングは、床に敷いたタオルの上に足を置き、足指でつまんだり離したりを繰り返して、手前に引き寄せる運動です。 この運動では、すねの内側深部にある長母趾屈筋(ちょうぼしくっきん)と長趾屈筋(ちょうしくっきん)が強化され、筋肉の滑走性が滑らかになります。 テーピングやインソールを活用する 筋力トレーニングのほかに、テーピングやインソールを使用して痛みの軽減を図ることも可能です。 テーピングは、筋肉や靭帯に適度な圧力を加えて安定化させ、痛みの軽減や再発防止といった効果があります。 とくに、ランニングやスポーツをする際の足への負担を軽減するのに役立つため、スポーツ選手にとってテーピングは欠かせない存在です。 シンスプリントに対するテーピング(伸縮性)の巻き方は、以下の通りです。 1本目:外くるぶしから足裏を通って引っ張り上げながら膝下まで張る 2本目:1本目と同様に、数cmずらして貼る 3本目:痛い部分の上をテーピングで1周巻く(大体すね下1/3付近) 4本目:数cmずらして1本目と同様に1周巻く また、自分の足に合ったインソール(中敷)の使用もシンスプリントの痛みの予防に効果的です。足のアーチが崩れるとバランスをとる際に筋肉に余計な負担がかかるため、アーチをしっかり支えるインソールが重要になります。 足のアーチを支えるインソールは数千円と高額ですが、痛みの予防につながるほか、自分の足を守るための装具であると考えると、決して高い買い物ではありません。 ただし、テーピングやインソールの活用だけでシンスプリントが完治するわけではないので注意しましょう。 シンスプリント発症後にスポーツ活動を再開するタイミング シンスプリントがある場合の日常生活での注意点やスポーツ活動を再開するタイミングについては、以下に示す痛みの段階(Walsh分類)を参考にするとよいでしょう。 分類 内容 Stage 1 運動後にのみ疼痛あり Stage 2 運動中に疼痛あるが、スポーツ活動に支障なし Stage 3 運動中に疼痛あり、スポーツ活動支障あり Stage 4 安静時にも慢性的な持続する疼痛あり Stage1〜3の場合、痛みによる日常生活への影響は少ないケースがほとんどです。しかし、Stage4の場合は痛みの増悪を防ぐためにも、安静にしなければいけません。 また、スポーツ活動を再開するタイミングの目安は以下の通りです。 症状が軽度の場合:約2週間 症状が重度の場合:2〜3カ月 ただし、いきなり激しい運動をすると、再度シンスプリントを発症する可能性もあるため、初めはウォーキングなど低負荷な運動から始めましょう。 疲労骨折後のスポーツ活動再開のタイミングについて知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
2024.07.11 -
- 内科疾患
- 内科疾患、その他
血友病は、生まれつき血液を固める力が弱い「先天性の出血性疾患」です。 放置すると、関節障害や日常生活への支障をきたす恐れもあります。 しかし、近年は治療法が進歩し、早期発見と適切な管理によって健常な人とほとんど変わらない生活を送ることが可能です。 本記事では、血友病の基礎知識から検査・治療法、日常生活での注意点をわかりやすく解説します。 正しい知識を身につけ、安心して向き合うための第一歩として参考にしてみてください。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEで情報提供と簡易オンライン診断を実施しています。 再生医療について知りたいことや不明な点があれば、ぜひご利用ください。 血友病とは|出血が止まりにくくなる病気 血友病とは、血液の凝固因子が生まれつき不足または欠損しているため、出血した際に血が止まりにくくなる遺伝性の疾患です。 通常の止血機能が働かないため、軽い打撲やけがでも出血が長引く場合があります。 血友病には主に2つのタイプがあり、治療方針も異なる場合があるため、正確な診断が重要です。 血友病の種類と特徴は以下のとおりです。 血友病A:第VIII因子(抗血友病因子A)が欠乏しているタイプ。全体の約80%を占める。(文献1) 血友病B:第IX因子(抗血友病因子B)が不足しているタイプ。 血友病は先天性が大半を占めますが、まれに後天的に発症する「後天性血友病A」というタイプもあります。 自己免疫の異常により体内で凝固因子に対する抗体が作られ、血が固まらなくなるのが特徴です。 いずれにおいても、日常生活で注意が必要な疾患であり、早期の診断と適切な治療が出血のリスクを減らす鍵となります。 血友病の症状 血友病では血液が固まりにくいため、皮膚表面だけでなく体の深部でも出血が起こりやすくなります。 とくに、筋肉や関節内での出血が特徴的で、日常生活に支障をきたす場合もあるため注意が必要です。 以下に、血友病でよく見られる代表的な症状をまとめました。 症状の種類 具体的な内容 筋肉内出血 腕や脚などの筋肉が腫れて痛む 関節内出血 膝や肘などの関節に腫れ・熱感・痛みが出る 皮下出血 ぶつけていないのに青あざができる 鼻出血・口腔内出血 鼻や口の中からの出血が止まりにくい 手術・抜歯後の出血 通常よりも長時間にわたって出血が続く 関節拘縮 出血により関節が固まり、動かしづらくなる また、以下のような症状が日常的に見られる場合も、血友病の可能性があるため、早めの医療機関を受診しましょう。 明らかな外傷がないのにあざができる 関節が腫れて痛み、動かしづらくなる 歯ぐきや鼻からの出血が長引く 以前より関節の可動域が狭くなってきた 症状が進行すると生活の質を大きく損なうため、早期発見と適切な管理が重要です。 血友病の検査・診断 血友病の診断では、まず血液がどれくらいの時間で固まるかを調べる「血液凝固検査」が行われます。 血が固まりにくい状態が確認された場合、さらに詳細な「凝固因子活性検査」に進み、第VIII因子または第IX因子の働きがどれほどあるかを評価し、病型と重症度を判定します。 凝固因子活性の値に応じた分類は以下の通りです。(文献2) 病型 凝固因子活性値 割合(目安) 特徴 重症型 1%以下 約50~60% 自発的出血が頻繁に起こる 中等症型 1~5% 約20% 軽い打撲でも出血することがある 軽症型 5%以上 約20% 手術やけがの際に出血しやすい 凝固因子の働きに基づいて重症度を把握することで、適切な治療方針を決定します。 とくに、重症型では無症候でも体内で出血している場合があるため、早期の診断が重要です。 血友病の治療法 血友病の治療では、不足している凝固因子を補充する「補充療法」が基本です。 重症度や出血頻度に応じて、以下の治療法を組み合わせて使い分けます。 定期補充療法 予備的補充療法 出血時補充療法(オンデマンド療法) それぞれ詳しく見ていきましょう。 定期補充療法 定期補充療法は、出血が起きる前から定期的に凝固因子製剤を静脈投与する治療法です。 重症型の血友病患者様に対しての標準治療ですが、軽中等症でも予防を目的に投与するケースがあります。 製剤によって週2〜3回、または2週間に1回の注射を継続的に行うことで、関節内出血や筋肉内出血などの出血リスクを未然に防げます。 定期補充療法の最大の利点は、日常生活の質(QOL)の向上です。 出血に対する不安を軽減し、学校や職場での活動を安心して行えるようになり、とくに小児期からの早期導入が関節障害の予防につながるとされています。 予備的補充療法 予備的補充療法とはスポーツや旅行、歯科治療など、出血リスクが予測される特定の場面に限定して、事前に凝固因子製剤を投与する方法です。 重症型以外の患者様や、日常的に出血の頻度が少ない方に適しています。 必要なときだけ補充を行うため、治療の負担を軽減できるのがメリットです。 ただし、タイミングを逃すと出血を防げない可能性があるため、患者様自身や家族が状況を正確に判断しながら適切な対処が求められます。 出血時補充療法(オンデマンド療法) 出血時補充療法は、実際に出血が起きたときに凝固因子製剤を投与する方法です。 軽症型や中等症型の患者様を対象とし、出血頻度が少ない場合に選択される場合があります。 出血が確認された段階で速やかに製剤を使用することが重要で、出血の進行を最小限に抑え、症状の悪化を防ぐのが目的です。 ただし、関節や筋肉の深部出血は初期症状がわかりにくいため、早期対応が難しいという課題もあります。 血友病の方が日常生活を送る上での注意点 血友病のある方が安全に日常生活を送るためには、出血を防ぐ工夫と周囲の理解が大切です。 とくに、外傷や薬の使用、医療機関との連携など、あらかじめ注意しておくべき点を理解しておくと、万が一の際にも迅速に対応できるでしょう。 ここでは、日常生活のうえで押さえておきたい具体的なポイントを紹介します。 外傷・ケガの予防意識を持つ 血友病の方は出血が止まりにくいだけでなく、関節や筋肉内での深部出血が起きやすいため、日常生活でも以下のような予防を意識しましょう。 段差の多い場所や滑りやすい床では慎重に歩行する ひじやひざなどの関節を保護するプロテクターを活用する スポーツは出血リスクを考慮し、事前に医師と相談する とくに、転倒しやすい場所では注意が必要です 予防する意識を持つように心がけて不要な出血のリスクを避け、安心して生活を送るための環境を整えましょう。 緊急時患者カードを携帯する 血友病の方は、外出時や災害・事故時に備えて「緊急時患者カード」の携帯が推奨されています。 緊急時患者カードは、血液凝固異常症の方がかかりつけ以外の医療機関を緊急で受診したり、救急車で搬送されたりした際に、医療関係者へ必要な情報を迅速かつ正確に伝えるためのカードです。 血友病の種類や使用している治療薬、投与量、かかりつけ医療機関などの情報が記載されています。 万が一の事故や意識障害などで本人が説明できない状況でも、周囲の医療関係者に正確な対応を促すことが可能です。 日常的に財布やスマートフォンケースに入れておくなど、常時携帯する習慣をつけましょう。 成人の場合は、各自治体から医療費助成の関連書類とともに、小児は患者会や製薬会社を通じて配布されています。 血友病の方でカードがまだ手元にない方は、「一般社団法人日本血液凝固異常症調査研究機構(JBDRO)」にお問い合わせください。 解熱剤・鎮痛剤の使用は避ける 血友病の方は、一般的な解熱剤や鎮痛剤の使用に注意が必要です。 とくに、アスピリンやインドメタシンなどの成分には血液を固まりにくくする作用があり、出血を助長する恐れがあります。 市販薬の中にも、これらの成分が含まれている可能性があるため、以下の点に注意しましょう。 解熱・鎮痛薬の購入時は、薬剤師に成分を確認する 医師の処方がない薬は使用しない 歯科や他科の受診時にも、血友病であることを必ず申告する 安全な薬物治療を行うためには自己判断を避け、医療従事者の指導のもとで薬を選びましょう。 口腔ケアを怠らない 口腔内は出血しやすい部位のひとつであり、血友病の方にとっては日々の口腔ケアがとても大切です。 虫歯や歯周病を予防すれば、歯ぐきからの出血を減らせます。 日常の歯磨きでは、以下の点に注意しましょう。 柔らかめの歯ブラシを使用し、歯ぐきを傷つけない 歯と歯ぐきの境目の汚れを丁寧に除去する 継続してケアを行う 定期的な歯科受診も欠かさずに、出血のリスクを最小限に抑えるよう心がけましょう。 なお、歯ぐきは適切にケアされていれば出血を抑えられますが、少量の出血が見られても問題ありません。 保育園や学校に出血が起きた際の対処法を共有する 小さい子どもの血友病患者様が安心して学校生活を送るには、保育園や学校側との情報共有が不可欠です。 以下のように、外傷や出血時の対応方法などを事前に伝えておくと、迅速かつ適切な対応が可能になります。 緊急時の連絡先と対応方法を文書で共有する 保管している凝固因子製剤の使い方を説明する 生活の中で注意すべき動作や活動を明確に伝える 子どもが血友病であっても、適切な治療と計画で多くの活動に参加できます。 以下のサイトのページでは、血友病の子どもを担当する先生向けに対応を説明しているので、情報共有時に参考にしてください。 学校・保育園などの先生方へ|ヘモフィリアTODAY 血友病の子どもさんを担当する学校の先生方へ|ヘモフィリアステーション まとめ|血友病は正しい知識と治療で管理できる病気 血友病は先天的に血液が固まりにくくなる疾患で、出血しやすい体質が特徴です。 完治は困難ですが、定期的な補充療法や生活上の注意によって、健常な人と変わらない生活を送れます。 早期診断と適切な治療の継続により、合併症の予防や生活の質の維持につなげていきましょう。 また、出血リスクへの理解に加え、周囲の協力や医療機関との連携も欠かせません。 なお、当院「リペアセルクリニック」では、公式LINEにて再生医療に関する情報提供と簡易オンライン診断を実施していますので、ぜひご登録ください。 血友病に関してよくある質問 血友病は治りますか? 現時点で、血友病を根本的に治す治療法は確立されていません。 しかし、定期的な補充療法によって不足している凝固因子を補うことで、出血を予防し、健常な人とほとんど変わらない生活を送れます。 とくに、早期の治療開始が関節障害の予防や生活の質の維持に大きく貢献する点に留意しておきましょう。 血友病Aと血友病Bの違いはなんですか? 血友病は主に2つのタイプに分類されており、それぞれの違いは次の通りです。 血友病A:第VIII因子(抗血友病因子A)が欠乏しているタイプ 血友病B:第IX因子(抗血友病因子B)が不足しているタイプ 両者の出血症状や経過は似ていますが、治療に用いる凝固因子製剤が異なるため、正確な診断が重要です。 血友病は予防できますか? 現在のところ、血友病そのものを予防する方法は存在しません。 しかし、出血による合併症を防ぐことはできるため、以下のような早期対応が重要です。 出血が起きた際は、速やかに凝固因子製剤を補充する あざや関節痛などの初期症状を見逃さない とくに乳児期後半にみられる皮下出血に注意する 症状を発見した場合には、医療機関での早めの相談が重症化を防ぐための第一歩となります。 参考文献 (文献1) Hemophilia ‒ Hematology and Oncology | Coagulation Disorders ‒ Merck Manual Professional Version|Merck Manual Professional Version (文献2) 血友病 (けつゆうびょう)とは | 恩賜財団 済生会
2024.07.10 -
- 肝疾患
- 内科疾患
「アルコール性肝炎になったら、もう肝臓は元に戻らないの?」 「アルコール性肝炎は治る病気?」 そんな疑問や不安を抱える方は少なくありません。 長年の飲酒習慣で傷ついた肝臓ですが、完全に回復不可能なわけではないのです。 本記事では、アルコール性肝炎からの回復可能性や有効な治療法、肝臓が健康を取り戻すまでの期間について詳しく解説します。 肝臓の健康を取り戻すための知識を身につけ、今からできる対策を始めましょう。 【結論】アルコール性肝炎は治る病気 アルコール性肝炎は、適切な治療と生活習慣の見直しにより回復が期待できる病気です。 とくに早期発見と適切な対策により、肝臓へのダメージを最小限に抑えられます。 しかし、進行すると回復が難しくなるため、早めの対応が重要です。 早期発見と適切な治療で回復は見込める 重症度によっては回復が難しい場合も 本章では、アルコール性肝炎の回復の可能性や治療法について詳しく解説します。 早期発見と適切な治療で回復は見込める アルコール性肝炎は、早期発見と適切な治療により回復が期待できる病気です。 肝臓には再生能力があり、飲酒を避けて健康的な生活を続けることで改善が見込めます。(文献1) まず禁酒が最優先です。アルコールを摂取し続けると炎症が進み、回復が遅れるだけでなく、肝硬変へ進行するリスクが高まります。 さらに、栄養療法や薬物療法により、肝機能の回復を促します。 早期発見のためには、定期的な健康診断で肝臓の数値をチェックしておくのもポイントです。 今まで自覚症状がなくても異変を感じたら、すぐに医療機関を受診し適切な対応をとりましょう。 アルコール性肝炎の初期症状については、以下の記事でも詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。 重症度によっては回復が難しい場合も アルコール性肝炎は早期発見と適切な治療により回復が期待できますが、重症度によっては改善が難しい場合もあります。 とくに長年の飲酒で肝臓に深刻なダメージが蓄積すると、完全な回復は困難です。(文献2) たとえば、アルコール性肝硬変に進行すると、肝臓の線維化が進み、元の健康な状態への回復はほぼ不可能になります。 そのため、症状が軽いうちに適切な治療を受けるのが重要です。 「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓は、ダメージを受けても自覚症状が出にくいため、日頃から健康管理を意識しましょう。 アルコール性肝炎における4つの治療法 アルコール性肝炎の治療には、主に以下の4つの方法があります。 断酒する 栄養療法で肝臓の回復を促す 薬物療法で症状を緩和する 再生医療を受ける それぞれの方法を組み合わせることで、より高い回復効果が期待できます。 断酒する アルコール性肝炎の最も効果的な治療法は、断酒です。(文献1) アルコールを摂取し続けると肝臓の炎症が進行し、回復が難しくなります。 そのため、完全に飲酒をやめることが肝臓を守る第一歩となります。 断酒による精神的ストレスや誘惑を乗り越えるためには、家族や友人の理解とサポートが重要です。 また、アルコール依存により断酒が難しい場合は、精神科や心療内科の専門医による治療も有効な選択肢となります。 適切なサポートを活用しながら、無理のない範囲で断酒を継続しましょう。 肝臓の数値に異常がある場合の原因や対策については、こちらの記事でも解説していますので、参考にしてください。 栄養療法で肝臓の回復を促す 肝臓の回復を助けるには、適切な栄養摂取が不可欠です。(文献1) とくにタンパク質やビタミンを十分に摂取すると、肝細胞の再生が促進されます。 具体的には、高タンパク質の食品(肉、魚、大豆製品など)や、ビタミン類を多く含む食材を積極的に取り入れると良いでしょう。 一方で、脂肪分の多い食事や糖分の過剰摂取は肝臓に負担をかけるため、なるべく控えることをおすすめします。 薬物療法で症状を緩和する アルコール性肝炎の症状が進行している場合、アルコール依存症と同様に薬物療法を行う場合があります。(文献3) アルコール依存症は、本人の意思ではどうすることもできないため、抗酒薬や抗不安薬などの薬物療法が用いられますが、同様に断酒を目的として治療が挙げられます。 ただし、薬物療法はあくまで精神的な症状の緩和や断酒を補助するためのものであり、根本的な治療にはなりません。 そのため、断酒を継続しつつ生活習慣の改善と並行して行っていくのが重要です。 再生医療を受ける 肝臓疾患に対する治療法には再生医療という選択肢もあります。 再生医療は、患者様自身から採取・培養した幹細胞を用いて治療を行う、副作用のリスクが少ない治療法です。 当院「リペアセルクリニック」では肝臓疾患に対して、再生医療による治療を行っています。再生医療について詳しくは、以下のページをご覧ください。 アルコール性肝障害の分類における位置付け アルコール性肝障害は以下の五つに分類され、そのうちの一つがアルコール性肝炎です。 アルコール性脂肪肝 アルコール性肝線維症 アルコール性肝硬変 アルコール性肝炎 アルコール性肝がん 慢性的に過剰飲酒を続けると、脂肪肝→肝線維症→肝硬変と順番に進行していく可能性があるため、注意が必要です。 なお、アルコール性肝炎ではこの慢性経過とは別に、酒量の増加などをきっかけにして肝臓に強い炎症が起こります。 背景の肝臓の組織が軽度の脂肪肝であっても進行した肝硬変であっても、肝細胞が変性や壊死を起こしていればアルコール性肝炎と考えられます。 つまり、もともとアルコールによる肝臓の障害がある方が、さらに過剰飲酒することで肝臓に強い炎症とダメージが起こってしまっているのがアルコール性肝炎なのです。 本章では、アルコール性肝障害の五つの分類についてそれぞれ解説します。 アルコール性脂肪肝 アルコールの摂取により、肝臓に脂肪が蓄積する初期段階の状態です。 この段階で飲酒をやめれば、比較的早い回復が見込めます。 アルコール性肝線維症 アルコール性脂肪肝が進行すると、肝細胞がダメージを受け、線維化が始まります。 この段階ではまだ回復の可能性がありますが、飲酒を続けると悪化する恐れがあります。 アルコール性肝硬変 長期間の飲酒により、肝臓が硬化し、機能が低下します。 この段階になると回復は困難で、合併症のリスクも高まります。 アルコール性肝炎 アルコールの影響で肝臓に炎症が生じる状態です。 重症になると命に関わる場合もあり、早急な治療が必要です。 アルコール性肝がん アルコールによるダメージを肝臓が受けている状況下に肝がんができており、他の原因が除外できている状態です。 肝臓の重要な働きと注意すべき病気については以下の記事でも解説しています。 気になる症状がある方は、ぜひご覧ください。 アルコール性肝炎の検査と診断 アルコール性肝炎を診断するには、複数の検査が行われます。 正確な診断を受けることで、適切な治療を選択し、回復へつながる可能性も高まります。 肝生検 肝生検は、肝臓の一部を採取し、組織を詳しく調べる検査です。 この方法により、炎症の進行度や線維化の程度を把握できます。 検査は局所麻酔を行い、細い針を肝臓に刺して組織を採取します。 検査後は数時間(検査自体は数分~20分程度、安静時間も含めて約4~6時間)の安静が必要ですが、肝臓の状態を詳しく知るために有効な方法です。 肝硬変などの進行具合を診断する際にも用いられます。 血液検査・画像検査 血液検査は、肝臓の状態を把握する基本的な検査です。 とくにAST(GOT)やALT(GPT)などの肝酵素の数値を調べることで、炎症の有無を確認できます。 また、超音波検査やCTスキャン、MRIなどの画像検査も活用されます。 これらの検査では、肝臓の形状や脂肪の蓄積、線維化の進行具合を視覚的に確認できます。 血液検査との組み合わせによって、より正確な診断が可能になります。 まとめ|アルコール性肝炎は節酒や断酒で回復を目指そう 本記事では、アルコール性肝炎の回復の可能性や治療法について解説しました。 アルコール性肝炎になっても、断酒や栄養管理、薬物療法によって、肝臓の機能は改善し、健康を取り戻せる可能性があります。 ただし、早期発見と対策が重要なため、生活習慣を見直し、必要に応じて医師の診察を受けましょう。 適切な対応を続けることで、肝臓への負担を軽減し、病状の悪化を防げます。 また、当院「リペアセルクリニック」では肝臓(脂肪肝・肝硬変・肝炎)の再生医療・幹細胞治療を提供しています。 肝機能の治療に不安がある方は、まずはお気軽にご相談ください。 アルコール性肝炎の治療についてよくある質問 アルコール性肝炎の治療についてよくある質問肝臓は禁酒すると回復しますか? 肝臓は回復力の高い臓器であり、禁酒することでダメージが改善する可能性があります。 とくに初期段階であれば、断酒によって肝細胞が再生し、健康な状態に戻ることが期待できます。 しかし、肝硬変など病状が進行すると、完全な回復は難しくなります。 そのため、肝臓のダメージが深刻化する前に、禁酒を徹底する意識が大切です。 アルコール性肝炎が回復するまでの期間は? 回復期間には個人差がありますが、軽度のアルコール性肝炎であれば、数週間から数カ月で改善が期待できます。 一方、重度の肝障害がある場合は、回復に数年かかるケースもあります。 断酒を継続し、適切な治療を受けることが回復の鍵となるため、医師と相談しながら自分に合った治療計画を立てましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では肝硬変・肝炎に対し手術を伴わない「再生医療」を提案しています。 治療に不安がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 竹井謙之,アルコール健康医学協会「アルコール性肝障害の最新トピックス」 https://www.arukenkyo.or.jp/information/pdf/kirokusyu/09/04.pdf(最終アクセス:2025年3月26日) (文献2) 全国健康保険協会「アルコール性肝障害 (Alcoholic Liver Disease:ALD)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kochi/20140325001/2016120600012kannshougai.pdf(最終アクセス:2025年3月26日) (文献3) 山田隆子,秋元典子.「アルコール性肝障害入院患者が断酒を決意し断酒を継続するプロセス」『日本看護研究学会雑誌』 Vol. 35 No. 5.pp.25-34,2012https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/35/5/35_20121030003/_pdf(最終アクセス:2025年3月26日)
2024.07.09 -
- その他、整形外科疾患
「仙腸関節のつらい痛みはどこで治療を受ければ良い?」 「仙腸関節炎の腰痛を治すためにできるセルフケアはある?」 仙腸関節は、体重や外部からの衝撃を常に受けるため、日常生活の中で不具合が起きやすい関節の一つです。 仙腸関節炎に対する治療法として、主に以下のようなものがあります。 【タップで該当箇所へスクロールします】 リハビリテーションと物理療法 AKA-博田法による治療 薬物治療 再生医療 仙腸関節炎の症状がでた場合は、適切な治療や自宅で行える予防策に取りくむ必要があります。 この記事では仙腸関節炎と診断されたときの治療法や、セルフケアの重要性を解説。 また「薬やリハビリを続けても痛みが改善しない」「手術は避けたいが、このままでは生活に支障がある」といった、お悩みを持つ方に、近年注目されているのが再生医療です。 当院(リペアセルクリニック)では、自己脂肪由来の幹細胞を使い、仙腸関節の炎症を抑え、関節周囲の組織を修復する治療を行っています。 仙腸関節の痛みについて「再生医療の対象になるか知りたい」「他の治療法では改善しなかった」という方は、一度ご相談ください。 仙腸関節炎(仙腸関節炎障害)とは? 仙腸関節炎とは上半身と脚をつなぐ仙腸関節に余計な負担がかかり、不具合が生じて腰まわりに痛みが生じることをいいます。 仙腸関節は骨盤の中心にある仙骨と、その左右にある腸骨とのつなぎ目に存在する動く幅の小さい関節です。 上半身の重さや地面からの衝撃を常に受けているため、いつもとちがう動きや長時間の同じ姿勢などで負荷がかかり、緩みや硬さが生じやすくなります。 仙腸関節の緩みや硬さが生じると、関節を支えている靭帯や筋肉の緊張も高まるため、周辺の痛みにつながります。 仙腸関節炎は女性の出産後に多くみられますが、年齢や性別関係なく腰痛の原因になるともいわれています。 日常的に起こりやすい疾患であるため、正しい治療法や対策を知って症状の緩和や予防をすることが大切です。 仙腸関節炎(仙腸関節炎障害)の治し方とセルフケア 仙腸関節炎は、痛みや不快感が生活の質に影響を与えるため、適切な治療とセルフケアが大切です。 この章では、仙腸関節炎を和らげるための治療法と、自宅でできるケアについて詳しく紹介します。 リハビリテーションと物理療法 AKA-博田法による治療 薬物治療 再生医療 専門的な治療から、日々の生活で取り入れられるセルフケアの方法まで、幅広くカバーしていますので、自分に合った対策を見つけて、仙腸関節炎の症状を軽減させ、日常生活をより快適に過ごしましょう。 リハビリテーションと物理療法 リハビリテーションや物理療法は仙腸関節炎の症状を緩和させる最もポピュラーな方法です。 痛みのある部位に対して運動療法や電気治療などを行うことにより、症状を和らげる効果が期待できます。 また、痛みが生じる根本にもアプローチすることで、腰痛を治すだけでなく再発の予防や日常生活の復帰も期待できます。 とくに仙腸関節炎による症状を繰り返している方は、長年のお悩みを解決できるでしょう。 AKA-博田法による治療 AKA-博田法(Arthrokinematic Approach:関節運動学的アプローチ)は、不適合をきたしている仙腸関節の動きを正常化させて痛みを改善させる手技です。 治療者の手で関節のわずかな動きや回旋などを治すことで、正常なはたらきに戻します。 しかしAKA-博田法は修得の難しい技術であるため、正しい方法で行わないと症状を悪化させる可能性があります。 治療を受けたい場合は、日本AKA医学会に認定されている医師に相談してみると良いでしょう。 参考:日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会 薬物治療 仙腸関節炎の痛みに対して、鎮痛薬の内服やブロック注射などの薬物治療も効果的です。 とくにブロック注射は仙腸関節の周囲に局所麻酔を行うことで痛みを減らし、関節の適合を良くすることが可能です。 始めは仙腸関節を覆っている靭帯に注射し、それでも、安静時や寝るときに痛みが残るようであれば、炎症がうたがわれる関節内にも注射します。 再生医療 仙腸関節炎の治療において、再生医療は新しい選択肢として注目されています。 リペアセルクリニックでは、幹細胞を用いた再生医療を通じて、関節の炎症を抑え、損傷した組織の修復を促す治療を提案しています。 幹細胞の持つ修復能力により、炎症の原因そのものに働きかけるため、従来の薬物治療やリハビリテーションでは得られない効果が期待でき、自然な治癒力を活かした治療で、患者さんが持つ本来の機能を取り戻すサポートをしています。 手術や入院が不要で、日常生活を送りながら治療を続けられるため、「すぐに手術はしたくない」「もっと自然に近い形で治したい」という方にも選択肢としてご検討いただけます。 無料カウンセリングやお電話でのご相談も受け付けていますので、将来の悪化を防ぐためにぜひご検討ください。 自宅でできるセルフケアと予防策 自宅では安静にするほか、骨盤ベルトの装着や梨状筋のマッサージなどを行いながら様子を見ます。 骨盤ベルトは仙腸関節の不適合をおさえる効果のあるゴム製のベルトです。 骨盤に装着して仙腸関節の適合を良くすることで、痛みを和らげたり再発を予防したりする効果が期待できます。 梨状筋は仙腸関節の外側に付着して股関節を外旋させる(つま先を外に回す)小さな筋肉です。 仙腸関節炎になると緊張が増して硬さや痛みがでやすいのが特徴です。 マッサージを行うと筋肉の血流や柔軟性が良くなり、痛みの緩和につながります。 画像付きでわかりやすく解説します。 梨状筋のマッサージ方法 ①膝を立てて座った状態で、マッサージをする側のお尻と座面の間にストレッチポールなどを置く ②ストレッチポールに体重をかけながらお尻を左右や前後に動かして梨状筋をほぐす 引用:園部俊晴.関節可動域.1版.㈱運動と医学の出版社.2023.329p.P38 仙腸関節炎(仙腸関節炎障害)の診断と治療 仙腸関節炎がうたがわれる場合は、整形外科やクリニックに行って医師の診断と理学療法士の治療を受けましょう。 実際の仙腸関節炎の診断と治療は以下のように行います。 専門医による診断プロセス 項目 点数 One finger test(※)で上後腸骨棘(仙腸関節の上部分にある突起)を指す 3 鼠径部(脚のつけね)に日ごろから痛みがある 2 椅子に座る時に痛みが増す 1 SIJ shear test(※)で痛みがでる 1 上後腸骨棘を押すと痛みがでる 1 仙結節靭帯(仙腸関節を覆う靭帯のひとつ)を押すと痛みがでる 1 ※One finger test…ひとさし指で痛みのある部位を指してもらう方法 ※SIJ shear test…うつ伏せで仙腸関節を押して痛みを確かめる方法 また靭帯にブロック注射をしたときに、痛みが7割以上減る場合も確定診断としています。 有効なエクササイズとストレッチ 治療には仙腸関節を安定させる腹横筋のトレーニングや、股関節や骨盤の周囲にあるハムストリングスと腸腰筋のストレッチが有効です。 これらの筋肉には以下のような特徴があります。 筋肉 ついている場所 はたらき 腹横筋 骨盤から腹部の全体 お腹を凹ませる 仙腸関節の適合を良くする ハムストリングス (大腿二頭筋と半腱様筋、半膜様筋) 骨盤から太ももの裏側 股関節を伸展させる(後ろに伸ばす) 骨盤を後ろに傾ける 腸腰筋 (大腰筋と小腰筋、腸骨筋) 腰椎や骨盤から太ももの内側 股関節を屈曲させる(前に曲げる) 骨盤を前に傾ける これらのエクササイズやストレッチを行うことで、仙腸関節の適合が良くなったり骨盤や股関節の動きがスムーズになります。 結果、日常生活で仙腸関節にかかるストレスを減らす効果が期待できます。 手術療法の検討 さまざまな治療を行っても日常生活に支障をきたすほど痛みが強い場合は、仙腸関節の動きを固定する手術を検討します。 手術が適応となる状態は以下が例として挙げられます。 6カ月以上の治療を行っても椅子に15分以上座れない 痛みによってうつ伏せでなければ就寝ができない 脚の強いしびれがでている 痛みにより歩行に杖が必要となった しかし別の疾患もうたがわれる場合は術後の改善が期待できないことも考えられるため、医師による慎重な判断が必要になります。 日常生活での予防策 仙腸関節炎は普段の生活から適切な姿勢やセルフトレーニングを習慣づけることによって、予防や再発防止が可能です。 以下に具体策を紹介していきます。 適切な姿勢の維持 日ごろから、仙腸関節や腰椎に負担のかからない立ち方や座り方を意識してとりましょう。 正しい姿勢を維持すると周囲の筋肉や靭帯が余計に緊張することがなくなり、仙腸関節の負担を減らす効果が期待できます。 気をつけるポイントを以下にまとめました。 <立ち方> ①軽くお尻の穴をしめることを意識して、お尻が後ろに出ないようにする ②背骨が曲がったり反ったりして、上半身の位置が骨盤より前や後ろにいかないようにする(鏡の前に立って身体の真横から姿勢を確認すると良い) <座り方> ①背もたれによりかからず、骨盤を前に起こした状態で背骨を伸ばすことを意識する ②脚を組んだり、左右どちらかに体重を偏ったりする姿勢はひかえる また、長時間の同じ姿勢は仙腸関節にストレスがかかる原因になりやすいので、デスクワークや立ち仕事では適度に姿勢を変えるようにしましょう。 運動とストレッチの重要性 日ごろから腹横筋やハムストリングス、腸腰筋のケアを行いましょう。 仙腸関節に関わる筋肉の強さや柔軟性を常にキープすることで、仙腸関節炎の予防が可能です。 以下に具体例を紹介します。 <ドローイン(腹横筋の筋力トレーニング)> ①膝を立てながら仰向けになり、手を左右のお腹(へそより下)に置く ②息をゆっくり吐きながらお腹を凹ませる。このときにお腹の奥の筋肉が硬くなっていることを確認する ③時間をかけて10回、1日2セット行う 引用:成田崇矢.成田崇矢の臨床 腰痛.1版.㈱運動と医学の出版社.2023.315p.P203 <ハムストリングスのストレッチ> ①膝を立てながら仰向けになる ②マッサージする側の膝を伸ばし、同時につま先を顔側に向ける ③筋肉が伸びた位置で20秒キープする。繰り返しながら3セット行う 引用:成田崇矢.成田崇矢の臨床 腰痛.1版.㈱運動と医学の出版社.2023.315p.P206 <腸腰筋のストレッチ> ①マッサージする側の膝を床につけて、片膝立ちの姿勢をとる ②骨盤を前にゆっくり倒しながら股関節から太ももの前側につく筋肉を伸ばす ③筋肉が伸びた位置で20秒キープする。繰り返しながら3回セット行う 引用:成田崇矢.成田崇矢の臨床 腰痛.1版.㈱運動と医学の出版社.2023.315p.P207 しかし運動とストレッチは痛みが強い時期に行うと、仙腸関節まわりの筋肉や靭帯の緊張を高めて症状を悪化させる可能性があります。 ある程度痛みが落ち着いてから無理のない範囲で行いましょう。 仙腸関節炎(仙腸関節炎障害)の治し方に関するよくある質問 この章では、治療方法の選び方やセルフケアの実践方法、再発防止のためにできることなど、日ごろ、患者さんから多く寄せられる質問に対してわかりやすく回答していきます。 仙腸関節炎のときにやってはいけないことは何ですか? 仙腸関節炎は温めたほうがいいですか? 治るまでの期間は? 仙腸関節炎とヘルニアの違いは? 仙腸関節炎の治療に関する不安や悩みを解消し、最適なケア方法を選択するためのヒントを得ることができますので、ぜひ参考にしてください。 仙腸関節炎のときにやってはいけないことは何ですか? A.仙腸関節に負担をかけるスポーツや動作は控えましょう。 野球やゴルフなどの回転動作が伴うスポーツは、症状を悪化させる可能性があります。中腰での作業や、重い荷物を持つ動作も仙腸関節にストレスがかかるためひかえましょう。 仙腸関節炎は温めたほうがいいですか? A.仙腸関節炎は周囲の筋肉や靭帯の緊張が高まることにより痛みがでやすいため、温めたほうが症状が和らぐでしょう。 温めて血流を良くすることによりこれらの緊張がほぐれ、腰痛の改善が期待できます。 治るまでの期間は? 仙腸関節炎の治療期間は、それぞれの状況や症状、治療方法によって異なります。 軽度の症状であれば、数週間から1カ月程度のリハビリやセルフケアで改善することがありますが、慢性化した場合や重度の炎症がある場合には、治療が数カ月に及ぶこともあります。 再生医療や物理療法を組み合わせることで回復を早めることができますが、治療の効果を最大化するには、継続的なケアと生活習慣の見直しが必要です。 仙腸関節炎とヘルニアの違いは? 仙腸関節炎とヘルニアは、どちらも腰や背中に痛みを引き起こしますが、原因や症状の発生部位が異なります。 仙腸関節炎は、骨盤にある仙腸関節に炎症が起こることで痛みが生じますが、ヘルニア(とくに椎間板ヘルニア)は、背骨の椎間板が突出し、神経を圧迫することで痛みが発生します。 そのため、症状の特徴や治療法も異なり、正確な診断が必要です。 まとめ:仙腸関節炎はセルフケアも重要になる この記事では仙腸関節炎の治療方法やセルフケアの重要性について解説しました。 日常生活の見直しや、骨盤周辺の筋力強化などによって症状の改善が期待できるケースもありますが、中には「セルフケアやリハビリを続けてもなかなか改善しない」というお悩みを抱える方もいるでしょう。 そうした場合には、仙腸関節の炎症や組織の損傷に対して直接働きかける再生医療という新たな選択肢も検討ください。 当院(リペアセルクリニック)では、自分の幹細胞を使った負担の少ない治療をご提供しています。 「手術は避けたい」「薬物療法に不安がある」という方は、まずは一度、無料のカウンセリングでお話を聞かせてください。 \無料相談はこちらから/ 0120-706-313 (受付時間:9:00〜18:00) 参考文献 仙腸関節障害の確定診断法と手術療法の変法からみた低侵襲仙腸関節固定術の適応仙腸関節障害の今,そしてこれから 仙腸関節研究会 仙腸関節痛の発生・慢性化のメカニズム 日本関節運動学的アプローチ(AKA)医学会 後靭帯由来の仙腸関節痛の診断スコアリングシステム(海外論文) 成田崇矢の臨床 腰痛
2024.07.08 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)は、スポーツに取り組む方を中心に見られる疾患です。 とくにジャンプ動作が伴う競技では頻繁に見受けられます。 しかしジャンパー膝の症状や重症度、診断方法は、あまり知られていません。また初期症状などがほかの疾患と類似しており、判断するのが難しい部分もあります。 本記事ではジャンパー膝の症状や診断方法、セルフチェックリストや有効なストレッチなどを解説します。 【前提知識】ジャンパー膝(膝蓋腱炎)とは 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)は、バレーボールやバスケットボールなどのスポーツで生じやすい膝蓋腱に起こる炎症で、慢性的な膝の痛みが特徴的です。 以下に症状や診断方法、リスク要因を詳しく解説します。 膝蓋腱炎の症状・重症度・診断方法 ジャンパー膝は、膝蓋骨(膝のお皿の部分)のすぐ下にある膝蓋腱にストレスがかかり、炎症が起こる疾患です。 典型的な症状はジャンプや走る動作、階段の昇り降りのときに生じる膝蓋腱の痛みで、痛みの程度により軽症と中等症、重症に分類されます。 ジャンパー膝の重症度の分類 軽症 スポーツの後や歩いた後に痛む 中等症 活動開始時と終わった後に痛む 重症 活動中や後の痛みで続行困難 ジャンパー膝の診断は問診や触診、MRI、超音波検査などを行います。 膝蓋腱を指で圧迫したときに痛みが強まることや、MRIや超音波による画像診断で筋肉や腱の変性が確認できることで確定診断とされます。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンプスポーツにおけるリスク要因 ジャンパー膝はバレーボールやバスケットボール、サッカーなど、ジャンプやダッシュの動作が多いスポーツで起こりやすいです。 膝蓋腱は大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)につながる腱で、膝蓋骨と脛骨(すねの骨)に付き、膝関節を動かしたり地面からの衝撃を吸収したりしています。 大腿四頭筋の伸び縮みにともなって膝蓋腱が脛骨や膝蓋骨の動きをコントロールし、膝の曲げ伸ばしが可能となっているわけです。 スポーツをしているときのジャンプやダッシュ、ストップ、ターンなどの動作は、急激な膝の曲げ伸ばしを繰り返し起こします。 この状態が慢性的に続くと膝蓋腱にストレスがかかり、組織に小さな損傷や炎症が起こってジャンパー膝につながります。 ジャンパー膝が軽症や中等症のうちは医師に相談しながらスポーツの継続が可能です。 しかし、ストレッチやウォーミングアップ、活動後のアイシングなどをおこない、常に膝のケアに努める必要があります。 また、重症例で腱に断裂がある場合は手術が必要になる可能性もあるため、疑わしい症状がでているときに放っておくのは危険です。 関連記事:ジャンパー膝といわれる大腿四頭筋腱付着部炎の原因と治療 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の症状のチェックリストと適切な対応 ジャンパー膝の症状が疑われるときは、自分で膝蓋腱に刺激を加えながらチェックできます。 家でもできる膝蓋腱の状態を確認する方法とその評価の意味を解説します。 家でできる症状チェックテスト スポーツや活動時に繰り返し膝が痛むときは、一度セルフチェックをおこない、ジャンパー膝の症状がでているか確かめてみましょう。 以下の状態が当てはまる場合は整形外科に受診してください。 膝蓋腱をゆびで押してみる 膝を曲げた状態と伸ばした状態で膝蓋腱をゆびで軽く押してみましょう。 どちらの状態でも痛む場合はジャンパー膝を疑います。(※曲げた状態のほうが痛みは走りやすいです) うつぶせで膝を曲げる うつぶせの状態で膝を曲げ、踵をお尻に近づけてみましょう。 股関節まわりが地面から浮いた場合は、ジャンパー膝が生じている可能性があります。 ジャンプする 何度かジャンプしてみましょう。 跳躍と着地の瞬間いずれか、または両方で違和感や痛みが感じられた場合、ジャンパー膝の発症が疑われます。 また痛みの懸念からジャンプを避けた、思い切り飛ばずに加減した際も、同様にジャンパー膝の発症が疑われます。 足に力が入りにくい いつものように足に力が入るか確かめてみましょう。 力が入りにくいと感じた場合には、ジャンパー膝の発症が疑われます。 また、どちらかというと膝の上(太ももの裏)が痛む場合は、以下の記事をご参考ください。 ジャンパー膝(膝蓋腱炎)が疑われる際の対応 ジャンパー膝が疑われる際は、ただちに診断を受けることをおすすめします。 ジャンパー膝は早期に対応すれば重篤な症状を呈する炎症ではありません。 しかし初期症状があるまま放置していると、痛みや腫れが悪化し、治療に時間がかかるようになります。 最悪の場合、腱の断裂が起こり、手術が必要になるかもしれません。 ジャンパー膝が疑われる場合は、可能な限りすみやかに医療機関で受診しましょう。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の治し方 ジャンパー膝の治療は以下の方法でおこなわれます。 物理療法|冷気や電気、低周波などを当てて、直接的に炎症の修復などを図る 体外衝撃波|特殊な衝撃波を当てて、痛みや痒みの緩和、患部の修復を図る リハビリ|大腿四頭筋を中心としたリハビリで、再発を予防する PRP(再生医療)|自己脂肪由来幹細胞などを用いて、患部の修復を図る PRP(再生医療)では、従来よりも容易にジャンパー膝を完治に導く期待があります。 興味がある方は以下を参考にしてください。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の痛みを緩和するストレッチ トレーニング前後のストレッチは、膝まわりの負担や痛みを減らすために重要です。 膝蓋腱の痛みを和らげる効果のあるストレッチや習慣づける方法を紹介します。 膝蓋腱を和らげる効果的なストレッチ 膝まわりやお尻の筋肉をストレッチで柔らかくすれば、膝蓋腱の負担軽減につながります。 以下の方法で大腿四頭筋やハムストリングス(太もも後面の筋肉)、殿筋(お尻の筋肉)のストレッチをおこないましょう。 必ず膝まわりに痛みがでない程度におこなってください。 大腿四頭筋のストレッチ ①床に両膝を伸ばして座った後、ストレッチをする側の膝を曲げて踵をお尻に近づける ②両手を床について身体を支えながら、上半身を後ろに倒して太もも前面の筋肉を伸ばす 大腿四頭筋のストレッチ(膝を曲げると痛む場合の方法) ①ストレッチをする側の膝を床につき、ストレッチをしない側の膝を立てて片膝立ちの姿勢になる ②上半身を起こしながら身体を前方に移動させ、太もも前面の筋肉を伸ばす ハムストリングスのストレッチ ①仰向けの状態でストレッチをする側の脚を上げる ②膝を伸ばしながら脚を胸に近づけ、太もも後面の筋肉を伸ばす 殿筋のストレッチ ①床に座り、ストレッチをする側の脚は膝を曲げて外側に開き、ストレッチをしない側の脚は後方に伸ばす ②上半身を前に倒しながらお尻の筋肉を伸ばす トレーニング前後のストレッチルーティン トレーニング前後では一つのストレッチを20〜30秒間かけておこない、10秒くらい休んだ後にもう一度施行しましょう。 とくに大腿四頭筋のストレッチは膝蓋腱にかかる負担が減るため、欠かさずおこなうことが大切です。 トレーニング前後のストレッチを習慣づけることで、ジャンパー膝の発症や再発の予防につながります。 メール相談 オンラインカウンセリング ジャンパー膝(膝蓋腱炎)を発症している際のテーピングテクニック 正しい方法でテーピングを施行すればスポーツや活動時における膝のサポートが可能です。 競技中の痛みを抑えるためにおこなう場合は必ず整形外科で専門家に相談しましょう。 以下に方法と注意点を詳しくお話しします。 膝のサポートに役立つテーピング方法 太さ50mmほどの伸縮性のあるテーピング(すねの上側から太ももの中間までの長さ)を3枚準備して以下のようにおこないます。 ①1枚目:膝を軽く曲げた姿勢ですねの外側から膝の内側、太ももの外側にかけて引っ張りながら貼る ②2枚目:膝の下から膝の外側、太ももの外側にかけて引っ張りながら貼る ③3枚目:1枚目のテープより少し上に重ねて、すねの外側から膝の内側、太ももの内側にかけて引っ張りながら貼る テーピングの正しいやり方と注意点 膝のサポートを目的としたテーピングは、運動に支障のない範囲で関節や筋肉の動きを制限させることが大切です。 テーピングをおこなうときは以下の内容に注意します。 外傷がある部位の接触を避ける 適切な巻き方でおこなう 正しい姿勢で巻く 巻くときにシワをつくらない 血管や神経、筋肉、腱の過度な圧迫は避ける パフォーマンスが低下するほど強く巻かない 水ぶくれや肌荒れ、かぶれ、湿疹などがないか確認する 適切な方法や姿勢でおこなわないと十分な効果が得られなかったり、逆効果になったりする可能性があります。 痛みが軽快しない、パフォーマンスが低下するなどの場合は正しいやり方でないこともあるので、一度見直してみましょう。 また、テーピングは肌に直接触れるため、汗で蒸れたりすると皮膚トラブルを起こしやすいです。 皮膚に外傷があったり、肌荒れやかぶれなどができた場合はできる限り接触を避けましょう。 予防策としてのトレーニング調整 スポーツを続けていく選手にとって、症状の再発や悪化の進行に対する予防策はかかせません。 ジャンパー膝の予防に向けたトレーニングや日常生活におこなう取り組みを紹介していきます。 適切なトレーニング方法とその頻度 ジャンパー膝の予防には、大腿四頭筋の筋力をきたえることが大切です。 また、過去の論文にはジャンパー膝に対するトレーニングに傾斜台上での片脚立ちスクワットが効果的であると報告されています。 トレーニングは症状が発症したばかりの時期はひかえ、専門家の指示のもとで痛みがない程度におこないましょう。 以下に方法を説明します。 大腿四頭筋の筋力トレーニング ①椅子に座り、膝を伸ばしたときに抵抗がかかるように足首と椅子の足をゴムバンドでつなぐ ②ゴムバンドによる抵抗を感じながら膝を伸ばす ③5秒ほど時間をかけて1回おこない、連続10回、1日2セットおこなう スクワット ①25度程度の傾斜台を準備し、降りの方向に顔を向けて立つ(※傾斜台がなければスロープの上や、踵に折りたたんだタオルを置いた状態でおこなう) ②片脚立ちになり、股関節と膝関節を曲げながらお尻を床に近づける。膝の位置が足の位置より前方に出ないように注意する ③股関節と膝関節を伸ばして片脚立ちの姿勢に戻る。10回連続でおこない、1日3セットほどおこなう。きつく感じるようであれば必要に応じて手すりなどを持ちながらおこなう。 再発防止のためのエクササイズと日常生活の調整 日常生活で膝のケアをおこないながら症状の再発や悪化の進行を防ぎましょう。 バンドを装着する ジャンパー膝の治療として、膝蓋腱の走行に横断して取り付けるバンド(サポーター)の装着が効果的です。 バンドによる膝蓋腱の圧迫は、腱の走行を変化させて負担を減らせることが明らかになっています。 スポーツや活動時の膝蓋腱の過剰なストレスが減り、痛みの緩和が期待できます。 患部の安静や練習を減らす 痛みが強いときはできるだけ患部の安静を保ち、ジャンプやランニングの練習を減らしましょう。 ジャンパー膝はジャンプ競技による膝のオーバーユース(使いすぎ)で生じることが多いので、活動量を減らすことで症状が軽快しやすいです。 重症化すると腱の断裂につながる可能性もあるため、痛みが強いときは無理をしないようにします。 練習後ににアイシングをおこなう 練習直後にアイシングを15〜30分ほどおこないましょう。 激しい運動の後は膝蓋腱により炎症が起きやすく、熱感や腫れが強まります。 できるだけ早く患部を冷やし、炎症を抑えることで症状の悪化を防げるわけです。 ジャンパー膝は皮膚から深い位置で起きている炎症なので、氷を入れた袋を弾性包帯で患部に巻きつけて固定すると効果的です。 ジャンプと着地の仕方を修正する 内股の状態で踏み切ったジャンプやバランスの悪い着地は、膝蓋腱のストレスを高める原因です。 ジャンプのフォームを客観的に確認したり、なわとびで正しいジャンプの方法を修得すれば、改善につながります。 硬い床を避ける底の厚いシューズも膝蓋腱の負担を減らせます。 炎症を抑える飲み薬やぬり薬などを使用する 痛みが強い場合は医師から処方された飲み薬やぬり薬、湿布などを使用しましょう。 医師の判断によってはステロイドの局所注射をおこなうこともあります。 炎症を抑える効果のある医薬品の使用で、スポーツや活動時の膝の痛みが抑えられます。 まとめ この記事ではジャンパー膝の概要やセルフチェックの方法、スポーツを継続するためのケアをお話ししました。 ジャンパー膝の痛みに悩まされてる方は以下の内容を守り、より長くスポーツを楽しめるようにしてください。 メール相談 オンラインカウンセリング 膝蓋腱炎の総合的な管理法 ジャンパー膝の症状に付き合いながらスポーツを続けていくためには、ストレッチやアイシングなどで、トレーニング前後に膝をケアするのが大切です。 また、発症や再発、重症化をを防止するためにも、専門家の指示のもと傾斜台でのスクワットもおこないましょう。 痛みが強い場合は安静にしたり、ジャンプのフォームを修正したりするのも重要です。 専門家との連携と更なる情報ソース ジャンプ競技への復帰や継続は必ず専門家と相談しながら決めていきましょう。 テーピングやトレーニングなどは症状の軽減や予防に効果がありますが、間違った方法でおこなわないためにも、専門家の指示を受けることが大切です。
2024.07.04 -
- 股関節、その他疾患
- 股関節
股関節唇損傷は、骨盤と太ももの骨が接続する股関節の部分で、関節のふちを囲むクッションのような役割をする「股関節唇(こかんせつしん)」という組織が裂けたり傷ついたりすることで起こる病気です。 安静に過ごす保存治療により症状緩和が期待できますが、股関節の可動域が狭くなってしまう可能性があります。可動域が狭くなると痛みを感じる原因となるため、ストレッチを取り入れるのが効果的です。 本記事では、股関節唇損傷の症状改善に役立つストレッチを5つ紹介します。 筋力強化トレーニングや回復をサポートする栄養もまとめているので、股関節唇損傷の症状改善へ向けた治療法が知りたい方は参考にしてください。 股関節唇損傷のリハビリにおけるストレッチの効果と重要性 股関節唇損傷の初期治療では、一般的に股関節への負担を軽減するため安静に過ごす保存治療を行います。 しかし、この安静期間が長引くと股関節の可動域が狭くなり、周囲の筋肉の動きも制限されてしまいます。 そこで回復段階では、股関節の可動域を広げるためのストレッチが効果的です。ストレッチは、痛みの軽減にもつながります。 股関節唇損傷に効果的なストレッチ方法 股関節唇損傷に効果的なストレッチ方法は、以下の5つです。 腸腰筋ストレッチ 大腿四頭筋ストレッチ 内転筋ストレッチ 外転筋ストレッチ お尻のストレッチ 柔軟性の維持や可動域を広げるために、ストレッチを取り入れましょう。 ただし、ストレッチを行う際に痛みがある場合は、無理をしないでください。 腸腰筋ストレッチ 腸腰筋(ちょうようきん)とは腰から脚の付け根に位置する筋肉の総称で、インナーマッスルの一種です。腰筋ストレッチのやり方は、以下の通りです。 床に仰向け状態になる 片膝を立てる 立てた膝を抱えながらお腹につけるように引き寄せる 30秒ほどキープする 1~4の動作を5回ほど繰り返す 膝を引き寄せる際は、反対側の脚が浮き上がらないよう注意します。また、背中を丸めると効果を得られにくくなるため、背筋を伸ばした状態で行うことを意識するのもポイントです。 大腿四頭筋ストレッチ 大腿四頭筋(だいたいしとうきん)とは、太ももの前側に位置する筋肉です。 大腿四頭筋が衰えると、股関節だけでなく膝関節も弱くなってしまい変形性膝関節症の原因になるため、可動域を広げて予防するのが重要です。 大腿四頭筋ストレッチのやり方は、以下の通りです。 立った状態で片方の手を壁につける もう片方の手で片足首を持ち、かかとをおしりに近づける 持ち上げた膝を後ろにゆっくり引く 太ももの前面が伸びる部分で30秒ほどキープする 1~4の動作を3回ほど行う バランスを崩さないよう、片手をしっかり壁につけるのがポイントです。体勢が不安定な場合は、横向きになって寝転がった状態で行いましょう。 内転筋ストレッチ 内転筋(ないてんきん)は股関節の付け根から太ももの内側にかけてある筋肉で、内ももと呼ばれる部分です。 股関節唇損傷を発症すると硬くなりやすい筋肉となるため、しっかりストレッチしましょう。 内転筋ストレッチのやり方は、以下の通りです。 いすに座って片脚を広げる 背筋を伸ばしたままお辞儀をするように上半身を軽く倒す 30秒ほどキープして上体をゆっくり起こす 2~3の動作を5回ほど行い、反対側の脚も行う 股関節部分の筋肉が硬いと痛みを伴いやすいため、無理のない範囲で行うのがポイントです。 外転筋ストレッチ 外転筋(がいてんきん)は股関節の付け根から太ももの外側にかけてある筋肉で、外ももと呼ばれています。 ストレッチにより股関節の可動域が向上するため、股関節唇損傷のリハビリに取り入れると効果的です。 外転筋ストレッチのやり方は、以下の通りです。 横向きの状態で寝る 下側の脚を上げ、ゆっくり下ろす 上げ下げを10回ほど繰り返す 体の向きを変えて、反対の脚も同様に行う 外転筋のストレッチをする際は、一つひとつの動作をゆっくり行うことが大切です。 お尻のストレッチ 股関節周囲筋群の柔軟性を高めるには、お尻のストレッチもおすすめです。お尻の筋肉が硬いのも、股関節の可動域が狭くなる要因になります。 お尻のストレッチのやり方は、以下の通りです。 仰向け状態で寝る 片膝を立て、反対側の脚と交差させる 立てた膝を横にゆっくり倒す 30秒ほどキープしてもとの体勢に戻す 10回ほど繰り返したあとに反対側を行う 片膝を倒して体をひねる際は、肩が床から離れないようにしましょう。肩が浮いた状態だと、ストレッチによる効果を得られにくくなるため注意が必要です。 また、膝を倒すときは無理に倒さず、気持ち良いと感じる程度の姿勢をキープするのがコツです。 股関節唇損傷に効果的な筋力強化トレーニング 股関節唇損傷では股関節の安定性や衝撃吸収能力が低下するため、ストレッチだけでなく筋力強化も大切です。筋力強化トレーニングにより、骨盤から股関節周辺の安定性や筋力が強化されるため、痛みの緩和につながります。 効果的な筋力強化トレーニングは、以下の3つです。 膝立て運動 伏せ運動 アンクルポンプ やり方とポイントを以下で解説するので、参考にしてください。 膝立て運動 膝立て運動はベッドで行える筋力トレーニングとなるため、寝る前など手軽に取り入れられます。 やり方は、以下の通りです。 仰向けの状態で寝る 片脚を立てる 立てた方の脚を伸ばす 2~3の動きを10回ほど繰り返す 一つひとつの動作をゆっくり丁寧に行うことが大切です。脚の曲げ伸ばしがスムーズに行える場合は、立てた脚と反対側の脚を真っすぐ上げて30秒ほどキープするトレーニングに挑戦してみましょう。 伏せ運動 伏せ運動も膝立て運動と同様に、ベッドで行える筋力トレーニングになります。やり方は、以下の通りです。 うつ伏せ状態で寝る 膝を伸ばした状態で片脚をゆっくり上げ、下ろす 上げ下ろしを10回ほど繰り返し、反対側の脚も行う 伏せ運動をする際は、骨盤が浮かないよう注意しながら行いましょう。また、無理のない範囲で脚を上げるのがポイントです。 アンクルポンプ アンクルポンプでは、血液循環や筋力の回復が期待できます。やり方は、以下の通りです。 脚を伸ばした状態で床に座る 片膝を立てる 足首を上下に伸ばす 10回ほど繰り返し、反対の足首も行う 痛みがない範囲内で、ゆっくり動かすことがアンクルポンプのポイントです。アンクルポンプは股関節唇損傷の手術を行った際、早期からはじめられるトレーニングになります。血液の循環が悪くならないよう、取り入れましょう。 股関節唇損傷におけるリハビリ期間の目安 股関節唇損傷におけるリハビリ期間は、3ヶ月ほどが目安になります。手術をした場合、術後に関節の癒着や可動域制限を引き起こさないよう、術後早期からのリハビリテーション実施が大切です。 また、術後1ヶ月~3ヶ月までの期間は、修復した組織へ徐々に負荷をかける筋力トレーニングを行い、筋力の回復を目指します。 体幹の筋力や骨盤、肩甲骨などの柔軟性を高めるのも股関節の負担を減らすのに重要です。そのため、無理のない範囲でストレッチや筋肉トレーニングをリハビリに取り入れましょう。 股関節唇損傷のリハビリ期間中にやってはいけないこと 股関節唇損傷のリハビリ期間中にやってはいけないことは、以下の通りです。 激しい動作や無理な体勢 長時間の座位や立位 股関節への過度の負荷 つま先立ちや深い屈曲 股関節に負担をかける行動は、股関節唇損傷の再発を誘発する要因となるため注意が必要です。また、筋力トレーニングの一環としてスクワットを取り入れるのは股関節への負荷がかかり、逆効果となります。 主治医からの指示によっては、移動する際に補助器具を使用したり、手すりを使ったりなどの工夫が必要です。股関節唇損傷の症状緩和を目指す場合は、股関節に負担がかかる動作は避けましょう。 股関節唇損傷の回復をサポートする栄養 股関節唇損傷の回復をサポートする栄養は、以下の通りです。 栄養素 期待できる効果 食品 タンパク質 筋肉や靭帯の修復を促す 赤身肉 卵 大豆食品 など オメガ3脂肪酸 炎症を抑える働きが期待できる 大豆 青魚や青魚から取れる魚油 くるみ など ビタミンC 組織の修復を助ける オレンジ いちご ブロッコリー など 筋肉や靭帯の修復や炎症を抑えるなどの働きが期待できる食品を積極的に摂取すると、股関節唇損傷の回復に役立つ可能性があります。 筋力トレーニングやストレッチとあわせて、栄養も意識した食生活を心がけましょう。 股関節唇損傷がリハビリで改善しない場合の治療手段「再生医療」 再生医療は、股関節唇損傷がリハビリで改善しない場合の治療手段の一つです。治療法の一つとなる幹細胞治療では、採取した幹細胞を培養して股関節に投与します。 当院「リペアセルクリニック」では、患者様自身から米粒2〜3粒程度の脂肪を採取し、幹細胞を培養、投与します。幹細胞は冷凍せず、投与のたびに採取するのが当院の特徴です。 また、再生医療は入院が不要のため、手術を避けたい方に適した治療法といえます。 当院では、無料のメール相談を受け付けておりますので、股関節唇損傷のリハビリに関する悩みをお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。 まとめ|股関節唇損傷の症状回復へ向けてストレッチを実践しよう 股関節唇損傷は、股関節に負担がかかることで軟骨の一部が剥がれたり傷ついたりすると引き起こされます。安静に過ごすことが治療の一つになりますが、股関節の可動域が狭くなり、周囲の筋肉を動かしにくくなるためストレッチを取り入れるのがおすすめです。 股関節唇損傷を発症した際は、自宅でできるストレッチや軽い運動により回復をサポートできる可能性があります。 また、ストレッチや筋力トレーニングなどのリハビリで回復が見られない場合は、再生医療を検討するのも手段の一つです。整形外科医や理学療法士などに相談しながら、社会生活への早期復帰を目指すリハビリを実施しましょう。
2024.07.03 -
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脊髄梗塞は稀な疾患で原因が不明なものも多く、現在でも明確な治療方針が定められてはいません。 そのため「脊髄梗塞が治るのか」不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 本記事では、脊髄梗塞の回復見込みや治療法について詳しく解説します。 従来の治療では有効な治療法が確立されていないため、リハビリテーションによって症状の改善を目指すことがほとんどです。 しかし、近年の治療では先端医療である再生医療が新たな選択肢として注目されています。 \脊髄梗塞の改善が期待できる再生医療とは/ 再生医療は、損傷した神経に対してアプローチできる治療法で、今まで根治が困難だった脊髄梗塞の改善が期待できます。 【こんな方は再生医療をご検討ください】 脊髄梗塞の根治を目指せる治療法を探している 脊髄梗塞による痛みやしびれを早く治したい 現在受けている治療で期待した効果が得られていない 当院リペアセルクリニックの「脊髄腔内ダイレクト注射療法」は、従来の点滴では届きにくかった損傷部位へ幹細胞を直接届ける治療法で、神経損傷による痛みやしびれに対しても高い治療効果が期待されます。 具体的な治療法については、当院(リペアセルクリニック)で無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 ▼まずは脊髄梗塞の治療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる 以下の動画では、実際に再生医療を受け、脊髄梗塞に悩まれていた患者様の事例を紹介しています。 https://youtu.be/hNXMlNYRAkI?si=xeOHGpwaSNk1X6Nx 【予備知識】脊髄梗塞の発生率・好発年齢・性差情報 ある研究においては、年齢や性差を調整した脊髄梗塞の発生率は年間10万人中3.1人と報告されています。 脳卒中などの脳血管疾患と比較し、脊髄梗塞の患者数はとても少ないです。 また、脊髄梗塞の患者さんのデータを集めた研究では、平均年齢は64歳で6割以上は男性だったと報告されています。 参考:A case of spinal cord infarction which was difficult to diagnose しかし、若年者の発症例もあり、若年者の非外傷性脊髄梗塞の発生には遺伝子変異が関係していると示唆されています。 脊髄梗塞は治るのか? 結論、脊髄梗塞を完全に治すことは困難です。 しかし、近年の治療では脊髄梗塞の根治を目指せる再生医療が注目されています。 現在のガイドラインにおいて完治までの有効な治療法は確立されておらず、リハビリテーションによって症状の緩和と日常生活への復帰を目指すことが中心です。 再生医療は損傷した神経に対してアプローチできる治療法で、今まで根治が困難だった脊髄梗塞の改善が期待できます。 「再生医療について詳しく知りたい」という方は、当院リペアセルクリニックで無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 ▼まずは脊髄梗塞の治療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる 脊髄梗塞の後遺症について 脊髄梗塞の発症直後には急激な背部痛を生じることが多く、その後の後遺症として四肢の運動障害(麻痺や筋力低下など)や感覚障害(主に温痛覚低下)、膀胱直腸障害(尿失禁・残尿・便秘・便失禁など)がみられます。 四肢の運動障害(麻痺や筋力低下など) 感覚障害(主に温痛覚低下) 膀胱直腸障害(尿失禁や残尿、便秘、便失禁など) これらの症状に関しては入院治療やリハビリテーションの施行で改善することもありますが、麻痺などは後遺症として残ることもあります。 歩行障害の予後に関して、115人の脊髄梗塞患者の長期予後を調査した研究報告では、全患者のうち80.9%は退院時に車椅子を必要としていましたが、半年以内の中間調査で51%、半年以降の長期調査では35.2%と車椅子利用者の減少がみられました。 出典:Recovery after spinal cord infarcts Long-term outcome in 115 patients|PubMed 同じ研究における排尿カテーテル留置(膀胱にチューブを挿入して排尿をさせる方法)の予後報告ですが、退院時には79.8%だったのが中間調査では58.6%、長期調査では45.1%へと減少がみられました。 症状が重度である場合の予後はあまり良くありません。 しかし、発症してから早い時期(1〜2日以内)に関しては症状が改善する傾向にあり、予後が比較的良好とされています。 【原因別】脊髄梗塞の治療方法 原因 治療方法 大動脈解離 手術 / 脳脊髄液ドレナージ(1) / ステロイド投与 / ナロキソン投与(2) 結節性多発大動脈炎 ステロイド投与 外傷 手術 動脈硬化・血栓 抗凝固薬 / 抗血小板薬(3) 医原性(手術の合併症) 脳脊髄液ドレナージ / ステロイド投与 / ナロキソン投与 (1)背中から脊髄腔へチューブを挿入し脊髄液を排出する方法 (2)脊髄の血流改善を認める麻酔拮抗薬 (3)血を固まりにくくする薬剤 比較的稀な病気である脊髄梗塞は、いまだに明確な治療法は確立されていません。 脊髄梗塞の発生した原因が明らかな場合にはその治療を行うことから始めます。 たとえ例えば、大動脈解離や結節性多発動脈炎など、脊髄へと血液を運ぶ大血管から中血管の病態に起因して脊髄の梗塞が生じた場合にはその、原因に対する治療がメインとなります。 一方で、原因となる病態がない場合には、リハビリテーションで症状の改善を目指します。 脊髄梗塞に対するリハビリテーション 脊髄梗塞で神経が大きなダメージを受けてしまうと、その神経を完全に元に戻す根本的治療を行うのは難しいため一般的には支持療法が中心となります。 支持療法は根本的な治療ではなく、症状や病状の緩和と日常生活の改善を目的としたものでリハビリテーションも含まれます。 リハビリテーションとは、一人ひとりの状態に合わせて運動療法や物理療法、補助装具などを用いながら身体機能を回復させ、日常生活における自立や介助の軽減、さらには自分らしい生活を目指すことです。 リハビリテーションは病院やリハビリテーション専門の施設で行うほか、専門家に訪問してもらい自宅で行えるものもあります。 リハビリテーションの流れ ①何ができて何ができないのかを評価 ②作業療法士による日常生活動作練習や、理学療法士による筋力トレーニング・歩行練習などを状態に合わせて行う 日常生活において必要な動作が行えるよう訓練メニューを考案・提供します。 脊髄梗塞発症後にベッド上あるいは車椅子移動だった患者さん7人に対して検討を行った結果、5人がリハビリテーションで自立歩行が可能(歩行器や杖使用も含まれます)となった報告もあります。 時間はかかりますし、病気以前の状態まで完全に戻すのは難しいかもしれません。しかし、リハビリテーションは機能改善に有効であり、脊髄梗塞の予後を決定する因子としても重要です。 再生医療が脊髄梗塞に有用! https://www.youtube.com/watch?v=D-THAJzcRPE 確立された治療法がない脊髄梗塞に対して、損傷した神経にアプローチし根治を目指す再生医療が注目されています。 再生医療では、患者様自身の細胞や血液を用いて損傷した神経の再生・修復を促し、従来の治療では難しかった脊髄梗塞の改善が期待できます。 当院リペアセルクリニックで行なっている再生医療「自己脂肪由来幹細胞治療」では、患者様から採取した幹細胞を培養して増殖し、その後身体に戻す治療法となっています。 \リペアセルクリニックの再生医療をご検討ください/ 【こんな方は再生医療をご検討ください】 脊髄梗塞の根治を目指せる治療法を探している 脊髄梗塞による痛みやしびれを早く治したい 現在受けている治療で期待した効果が得られていない また、当院リペアセルクリニックの「脊髄腔内ダイレクト注射療法」は、従来の点滴では届きにくかった損傷部位へ幹細胞を直接届ける治療法で、神経損傷による痛みやしびれに対しても高い治療効果が期待されます。 具体的な治療法については、当院(リペアセルクリニック)で無料カウンセリングを行っておりますので、ぜひご相談ください。 ▼まずは脊髄梗塞の治療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる 脊髄梗塞に関するQ &A この項目では、脊髄梗塞に関するQ &Aを紹介します。 多くの方が抱えているお悩み(質問)に対して、医者の目線から簡潔に回答しているのでご確認ください。 脊髄梗塞の主な原因は? 脊髄梗塞の主な原因は以下のとおりです。 脊髄動脈の疾患 栄養を送る血管の損傷 詳細な原因については以下の関連記事で紹介しているのでぜひご確認いただき、症状改善の一助として活用ください。 脊髄梗塞の診断は時間を要する? そもそも脊髄梗塞は明確な診断基準がありません。 発症率が低い脊髄梗塞は最初から強く疑われず、急速な神経脱落症状(四肢のしびれや運動障害、感覚障害など)に加えてMRIでの病巣確認、さらに他の疾患を除外してからの診断が多いです。 また、MRIを施行しても初回の検査ではまだ変化がみられず、複数回の検査でようやく診断に至った症例が少なくありません。 ある病院の報告では、発症から診断に要した日数の中央値は10日となっており、最短で1日、最長で85日となっていました。 まとめ|脊髄梗塞は治るのか?症状改善には再生医療による治療を検討しよう 脊髄梗塞に対する従来の治療では有効な治療法が確立されていないため、リハビリテーションによって症状の改善を目指すことがほとんどです。 しかし、確立された治療法がない脊髄梗塞に対して、損傷した神経にアプローチし、根治を目指す再生医療が注目されています。 再生医療は、患者さま自身の細胞や血液を用いて人間の持つ自然治癒力を向上させることで、脊髄梗塞や後遺症の改善が期待できる可能性がある治療法です。 \こんな方は再生医療をご検討ください/ 脊髄梗塞の根治を目指せる治療法を探している 脊髄梗塞による痛みやしびれを早く治したい 現在受けている治療で期待した効果が得られていない また、当院リペアセルクリニックでは、従来の点滴で届きにくかった損傷部位へ幹細胞を直接届ける「脊髄腔内ダイレクト注射療法」によって、神経損傷による痛みやしびれに対しても高い治療効果が期待されます。 「具体的な治療法を知りたい」「脊髄梗塞が治るか不安」という方は、ぜひ当院リペアセルクリニックにご相談ください。 ▼脊髄梗塞に対する再生医療について無料相談! >>(こちらをクリックして)今すぐ電話してみる ▼こちらも併せてお読みください。
2024.07.02






