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- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
ぎっくり腰を、ただの腰痛と侮るなかれ!自己診断厳禁 腰痛の中でも、ぎっくり腰の痛みは特別です。 ある日突然、何の前触れもなくグキッ!という感じで急激な痛みに襲われます。その痛みは激しく、突然起こった精神的な驚きはかなりのものです。 まさに秒速、たった1秒くらいで急激な痛みが襲うので、ドイツ語では、ぎっくり腰のことを魔女の一撃(Hexenschuss ヘクセンシュース)と言うくらいです。 ぎっくり腰の痛みは、数秒で起きるので、他の腰痛のように数か月~数年で徐々に痛みがひどくなる「腰椎症」。そして、数日で痛みがひどくなるスポーツによる腰痛などと区別できます。 ぎっくり腰の原因 ぎっくり腰は、一説に50人に1人は経験するとまで言われているほど日常的に起こりえる病なので注意が必要です。原因としては、変な体勢で重いものを持ち上げるなど、通常でない力が、筋膜や椎間板に加わって、組織の炎症が瞬間的、急激に起こるものです。 しかし、重いものを持ち上げるなど無理な姿勢からの大きい負荷だけで起こるのではなく、姿勢によっては簡単な事であっても、ぎっくり腰が起きることがあります。 たとえば、単に身をかがめただけ(あいさつでのお辞儀など)、後ろを振り向いただけ、ただ咳をしただけ、掃除機をかける時に少し体を折り曲げただけ、子どもを抱っこしただけ、正座などの座った体勢から立ち上がろうとしただけ、これら普通の生活でありえる動作でも「ぎっくり」が起きることがあるので困ります。 ぎっくり腰を侮るなかれ 痛み方についても一定ではなく、典型的な急激に発症する際の激痛型のぎっくり腰だけではなく、最初は、痛みが軽度だったのに、数時間から数日かけて、身動きがとれなくなるくらい徐々に痛くなる場合もあります。 また、重い物を持ったからといった、きっかけが全くない状況なのに段々と身動きがとれないほどの激痛になるという非典型的な、ぎっくり腰もあります。 多くの場合、ぎっくり腰は2週間程度で自然経過で治ることが多いのですが、実のところ、ぎっくり腰だと思い込んでいたら、実は全く違う病気で、病院での治療が必要な重い病気だった・・・ ということが実際にあることを覚えておかねばりません。 そのため自己診断は避け、医師による正確な診断が必要です。最も怖いのは、ぎっくり腰だと思い込んでいたところ、調べてみると内科の病気で多発性骨髄腫という血液の悪性腫瘍で、腰椎が圧迫骨折を起こしていたための腰痛だった人もいます。 または、泌尿器科の病気が、腰痛を引き起こしている可能性もあります。中には前立腺癌の腰椎転移で腰痛を起こしていた人もいます。 仮に自己診断の通り、ぎっくり腰だったとしても、適切な治療をせず、自分勝手な自己流の方法で治そうとしたために、かえって痛みが慢性化してしまうこともあります。 やはり、自己診断や症状を過信せず「何かおかしい?!」と思ったら、迷わず病院等、医療機関の専門家に相談することが大事ということです。 ぎっくり腰と日常生活 日常生活について、「ぎっくり腰は、安静にし過ぎても、かえって治りが遅くなる」ことがあります。安静は必要なのすが、長すぎる安静は回復するのを遅らせる可能性があります。。 安静にしている長さは個人の状態によって変わりますが、痛みが引いた時点で適度に動いたほうが安静を続けるより回復が早いと言われています。 痛みを避けるためには「この姿勢なら楽だ」という無理のない楽な姿勢を意識した日常生活を送ることが大切です。楽な姿勢なら、組織の炎症を悪化させることもなく、組織の修復を助けてくれるからです。 面倒だからと、つい変な姿勢で何かを行ってしまうなどのことが無いようにしましょう。かがむ、腰を折る、腰を曲げるなどの姿勢は要注意。膝を折ることを意識してください。 ぎっくり腰のお薬 ぎっくり腰は最初、冷やすと効果的と言われています。そのため湿布を貼って患部を冷やす方法もありますが、冷やしすぎるのも皮膚を刺激することで症状が悪化してしまう恐れがあります。 また、痛みについて「耐えられない」という場合は、鎮痛剤の服用に頼ってもいいですが痛み止めの薬を飲み過ぎると、胃炎や胃潰瘍などの胃腸障害を起こすので、過量服用や空腹時は避け、多くの水と共に飲むことが大事です 特に、「胃潰瘍を過去に起こしたことがある」という人の場合は、鎮痛剤を飲む場合にはガスターなどの制酸剤を一緒に飲む必要があるかもしれません。 また、鎮痛消炎剤としてモーラステープなどの貼り薬でも、副作用として、光線過敏症や皮膚のかぶれなどが起きることがあるので、「単なる貼り薬だから大丈夫」と侮ってはいけません。 なお、発症した当日など腰に炎症が起こった状態になっているため、その当日の入浴は控えた方が無難です。当初、温めるのは厳禁です。よく聞かれるのがマッサージの良否ですが、これも控えたほうが良いと思われます。 仕事でぎっくり腰 ぎっくり腰が会社の仕事で起きた場合ですが、労災が認められないことが多いようです。厚生労働省のリーフレットには、次のように書いてあります。 「災害性の原因による腰痛」の労災認定要件①腰の負傷またはその負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること②腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症・基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること(厚生労働省「腰痛の労災認定」) 「災害性の原因によらない腰痛」の労災認定要件突発的な出来事が原因ではなく、重量物を取り扱う仕事など腰に過度の負担のかかる仕事に従事する労働者に発症した腰痛で、作業の状態や作業時間からみて、仕事が原因で発症したと認められるもの(厚生労働省「腰痛の労災認定」) 労災で認められるには、「ぎっくり腰」が、業務に起因すること、それが業務遂行中であることが必要です。 つまり、仕事中のぎっくり腰でも、業務とは関連性の乏しい理由で発症した場合は、労災に認められる可能性は低くなります。 ぎっくり腰が仕事中に起きて、2週間程度、休まなくてはならない場合でも、上記を明確に証明しなけらば労災にならないとは、厳しいですね。 労災がダメでも傷病手当金をもらうことは可能なので、ぎっくり腰が起きた日に病院を受診しておけば、発症日の証明になります。そのため、ぎっくり腰が起きた日に、病院を受診しておくのは、いいかもしれませんね。 ただ、避けるべきは痛みを我慢して仕事を続けることです。 ぎっくり腰を早く治すための食生活 いろいろな栄養素を挙げて、特定の食べ物を勧められることがありますが、絶対確実なものはありません。それよりも、「絶対確実に悪い!」というものがあります。 アルコールです。アルコールでビタミンBやミネラル、微量元素などが欠乏し、組織修復を妨げるばかりか、炎症を悪化させて、治りが遅くなります。 また、日頃からアルコールを多飲している人は、ぎっくり腰になりやすく、予防の上でも良くありません。「酒は百薬の長」などというのは、真っ赤な嘘です。 また、ぎっくり腰の予防などについて、詳しくはこちらをご覧ください ぎっくり腰の原因と予防|やって良いこと、悪いこと! まとめ・ぎっくり腰は、ただの腰痛ではない!自己判断厳禁 以上、「ぎっくり腰の症状を、ただの腰痛と侮るなかれ」と題して話をしましたが、実のところぎっくり腰の正確な発症メカニズムや原因については詳しく解明されていないことが多い状況です。 ぎっくり腰を発症し、激痛で動けない期間が生じて多くの人が苦しむことになるため、今後の研究が待たれるところです。 くれぐれも、ギックリ腰を自己判断で侮って重症化しないよう、繰り返し発症させないよう、発症したら病院などの医療機関を受診し、指導を受けるようにしましょう。 ▼以下もぎっくり腰の情報を公開しています。 ぎっくり腰の前兆はあるのか?まずは原因を知って予防する! また、腰痛になった場合は下記の記事も参考になるので、ぜひ読んでみてください。
公開日:2024.10.11 -
- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
ぎっくり腰で病院へ行っても意味ないって本当? ぎっくり腰は自宅で安静にしていればそのうち治るのかな。 この記事を読んでいるあなたは、ぎっくり腰は病院に行くべきなのかを迷っているのではないでしょうか。「安静にしていれば治るなら、受診せずに済ませたい」と思っているかもしれません。 結論、ぎっくり腰は病院に行かなくても治るケースが大半を占めます。 しかし、ぎっくり腰だと思った痛みが別の病気やケガだった場合、処置が遅れることで重症化してしまうリスクもあるでしょう。手術や入院が必要になってしまうケースもあるため、不安であれば一度受診するのがおすすめです。 本記事では、ぎっくり腰で受診する目安やおすすめの治療法を紹介します。 記事を最後まで読めば、ぎっくり腰の対処法がわかり、状況に応じた適切な対応ができるでしょう。 ぎっくり腰は病院に行っても意味ない? 結論からお伝えすると、ぎっくり腰の場合は必ずしも病院に行く必要はありません。病院に行かず自宅療養をしても2週間程度で痛みが治まるケースが一般的だからです。 しかし、ぎっくり腰だと思っていた腰の痛みは、以下のような別の病気やケガによって起きている可能性もあります。 椎間板ヘルニア 化膿性脊椎炎 骨折 これらの病気やケガを放置すると、重症化して手術や入院が必要になることも考えられます。 ぎっくり腰であると自己判断した場合でも「痛みがなかなか引かない」「下肢がしびれる」「発熱がある」などの症状があるときは、我慢せずに早めに医療機関を受診しましょう。 なお、おもな症状が腰の痛みの場合、受診するのは整形外科です。診察の結果、他の病気を疑う場合は内科を始めとする別の診療科へ紹介するため、まずは整形外科を受診してください。 ぎっくり腰の原因や症状については、以下の記事も参考にしてください。 ぎっくり腰で病院に行く3つの目安 ぎっくり腰で病院に行く目安は以下の3つです。 痛みが2週間以上続く、あるいはぎっくり腰を繰り返す 発熱している 高齢である 本章を参考に、ぎっくり腰になった際の正しい受診タイミングを理解しておきましょう。 痛みが2週間以上続く、あるいはぎっくり腰を繰り返す 痛みが2週間以上続く、ぎっくり腰を繰り返すなどの場合は、「椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」などの疑いがあります。 椎間板ヘルニア:背骨の間でクッションの役割を果たす「椎間板」の中にある組織が外へ飛び出し、神経を圧迫して痛みやしびれが出る病気 脊柱管狭窄症:背骨の中にある神経の通り道(脊柱管)が何らかの要因で狭まることで圧迫され、腰や下半身の痛みやしびれが出る病気 原因となる病気に気づかず放置すると痛みが長引き、場合によっては手術が必要になるケースも考えられます。痛みの治りが悪い場合は、早めの受診が大切です。 発熱している 熱を伴う腰痛の場合、細菌やウイルスに感染している可能性が考えられます。 病名はいくつか考えられますが、整形外科的な疾患では、脊椎が細菌に感染する「化膿性脊椎炎(かのうせいせきついえん)」がよく疑われます。 高齢、糖尿病、透析を受けている、免疫抑制剤を飲んでいるなどの人は免疫力が低いため、細菌感染から化膿性脊椎炎を発症しやすいのです。(文献1) 化膿性脊椎炎は抗生物質で治療を行いますが、薬で改善しないと手術が必要になるケースもあります。 高齢である 高齢になると骨がもろくなり折れやすくなる「骨粗しょう症」の人が増え、転倒時や中腰、重いものを持ったときなどに骨折するリスクが高まります。 ぎっくり腰だと思ったら、実際は背中の骨が折れる「圧迫骨折」だったというケースもあります。 骨折は2~3カ月の治療で良くなるケースが多いものの、ベッドでの生活が長くなると認知症や体力の低下によって、寝たきりになるリスクが高まり危険です。 高齢でぎっくり腰になった場合は、骨折の可能性も考えて念のため受診した方が良いでしょう。 病院で受けられるぎっくり腰の治療 ぎっくり腰で受診した場合、病院では以下のような治療を行います。 コルセットの装着 湿布・内服薬の処方 リハビリ 「病院に行っても意味がない」といわれることもありますが、受診することで症状に合わせた治療を受けられる可能性があります。 本章を参考に、受診した場合どのような治療が行われるか理解しておきましょう。 コルセットの装着 ぎっくり腰の急性期(発症直後)は、腰回りの筋肉をサポートして身体を支える「コルセット」を装着するケースがよく見られます。 「コルセットは筋力が下がる」という説もありますが、痛みが強い1〜2週間ほどの使用なら問題はありません。 ただし、痛みが治まった後に予防として使い続けると筋力が低下するリスクがあるため、医師の指示する期間を守って着用しましょう。 湿布・内服薬の処方 ぎっくり腰の発症直後は、消炎鎮痛薬(非ステロイド系抗炎症薬)の「湿布」や「飲み薬」で痛みを落ち着かせます。 また、背中の神経に麻酔薬を注射する「神経ブロック療法」によって、脳に痛みを伝える信号を遮断してつらい症状をやわらげる治療が有効な場合もあります。(文献2) リハビリ 痛みが落ち着いた後は、医師の判断でリハビリを行うケースもあります。具体的には、腰や背中、太もものストレッチや腹筋、背筋などの筋肉トレーニングなどです。(文献3) ただし、リハビリを始めるタイミングや行う内容は、個人の症状によって異なります。自己判断でのリハビリは避け、医師の判断に従いましょう。 ぎっくり腰で病院に行く前にできる応急処置 ぎっくり腰になったときに自宅でできる応急処置は、以下の通りです。 発症直後は安静にする 痛みが落ち着くまで冷やす 人の助けを借りず自分で動く ぎっくり腰は再発するケースもあります。本章を参考に、今後再発した際に適切な対応ができるよう、応急処置の方法を理解しておきましょう。 発症直後は安静にする ぎっくり腰になると激痛が急に襲ってくるため、驚いてパニックになりがちです。 大切なのは、まず「落ち着くこと」です。無理しないようにゆっくりと正座の体勢になり、深く息を吸って長く吐き出すような「深呼吸」を行いましょう。数分すると、腰周りの筋肉の緊張がやわらぎ、少しずつ楽になります。 痛みがやわらいだら、少しずつゆっくりと動きましょう。動くときは机や椅子などの倒れにくいものをつかむのもおすすめです。 痛みが落ち着くまで冷やす ぎっくり腰の発症時は、腰が炎症を起こしている状態です。痛みがあるときは、氷枕や保冷剤などをタオルでくるみ、腰に当ててください。基本的には5〜10分くらいで痛みが軽減します。 ただし、冷やしすぎると逆効果になるケースがあるため、痛みが落ち着いたら冷やすのはやめましょう。 人の助けを借りず自分で動く ぎっくり腰の痛みが落ち着いて動くときは、人の助けを借りずに自分で動くことをおすすめします。 なぜなら、人の手を借りると予期せぬ場所に力が入り、痛みが悪化する可能性があるからです。 身体を起こす手伝いを人から申し出られた場合は、「自分で少しずつ動いた方が安心なので」と伝え、自分のペースで身体を動かしてみてください。 まとめ|ぎっくり腰の症状がつらいなら病院を受診しよう 本記事では、ぎっくり腰で受診する目安や受診して受けられる治療法、自分でできる応急処置などを詳しく解説しました。 ぎっくり腰は病院に行かなくても数日で痛みが治まるケースが一般的です。しかし、ぎっくり腰と思われる症状が「椎間板ヘルニア」「化膿性脊椎炎」「骨折」などの場合もあります。 病院では、痛み止めの湿布や飲み薬、注射などの治療を行います。必要に応じてコルセットの処方やリハビリなども受けられるため、痛みがつらい、長く続いていて心配などの場合は受診すると良いでしょう。 当院「リペアセルクリニック」では、脊髄損傷に対して幹細胞による治療を行っています。 脊髄の損傷部へ直接幹細胞を投与するため、神経再生の効果をより高めることが期待できます。 この記事がぎっくり腰の正しい対処法を知るのに役立ち、より早期に快適な生活に戻れるきっかけになれば幸いです。 ぎっくり腰で病院に行くべきか悩んでいるときによくある質問 ぎっくり腰の治療にストレッチやマッサージをやってもいいですか。 ぎっくり腰を発症してすぐにストレッチをしても、ぎっくり腰を悪化させることはありません。ただし、ストレッチに不安があるなら、安心できるまで待ちましょう。 また、ぎっくり腰でマッサージをやって良いかどうかは、症状によって異なります。マッサージについては自己判断せず、医師に相談しましょう。 ぎっくり腰の予防法はありますか。 ぎっくり腰の予防法は、以下の通りです。 朝起きるときは、腰を丸めて体をほぐしてからゆっくり起きる 洗顔は膝を曲げて重心を下げるようにして行い、腰への負担をやわらげる ものを拾うときは、膝も曲げて腰を落とすようにして拾う 背筋や腹筋の筋力トレーニングをする ストレッチで股関節を柔らかくする 太り気味なら腰の負担を軽くするため、ダイエットを心がける 太らないように体重管理をする 背筋を伸ばし、良い姿勢を心がける また、ぎっくり腰の再発予防には、適切な治療を受けてぎっくり腰を完治させることも大切です。 ぎっくり腰の予防法や再発防止策については、以下の記事もご覧ください。 参考文献一覧 文献1 一般社団法人日本脊髄外科学会,化膿性脊椎炎 文献2 菅尚義,宮崎昌利,吉田省二,三原茂.急性期腰痛に対する硬膜外ブロックについて.日本腰痛会誌.2006;10:77-84 文献3 千田益生,堅山佳美ら.腰痛のリハビリテーション-運動療法を中心に-.リハビリテーション医学 2006;43:661-667
公開日:2024.10.28 -
- 脊椎
- 頚椎症性脊髄症
頚椎症性脊髄症の症状と手術後のしびれ、機能障害への対処 頚椎症性脊髄症の症状と手術後のしびれや機能障害にいかに対処するか 【はじめに】 頚椎症性脊髄症という病気、難しい病名ですね。 実はこの病気、聞きなれないようですが、比較的多くの方が患われている病なんです。 この病気は、慢性的な神経への圧迫によって脊髄への血液循環が悪くなることで、その結果として細胞が死んでしまうために起こると考えられています。何とも怖いものです。 頚椎症性脊髄症は、年齢的な原因が多く、加齢を重ねることによって頚椎そのものや、頚椎と頚椎の隙間でクッションとして機能しておる椎間板、そして骨と骨の間に存在する靱帯などを含めて脊柱管といわれるものが変形してしまうために起こります。 年齢的には、50歳以降になって加齢とともに発症しやすい病気と考えられているのでご年配の方は注意が必要です。 ただし、年齢について、もともと脊柱管が狭い人がいて、そんなケースでは頚椎などの加齢性変化が始まると言われている40歳前後で発症する可能性もあるので「私は、まだまだ・・・」と思うのは早計です。 そこで気になる、この病気の治療法。一般的には外科手術で「髄神経の圧迫を減らす」ことが解決策になるのですが、手術の部位的にも難しく、いかに安全に神経組織への影響を最小限に抑えて行うえるかが命題でした。 そんな高難度な手術ですが・・・ 先端医療である「再生医療からのアプローチ」なら、そもそも手術を回避できる可能性があったりもしますので興味のある方はご相談ください。 次に、頚椎症性脊髄症の症状で手術後の症状としてお悩みの方が多いのが「しびれ」です。 この「しびれの症状」が残ると治療が難しい場合が多いのが実情ですが、最近は、「再生医療という新分野からのアプローチが可能」になってきています。 【第1章】頚椎症性脊髄症の症状 はじめにもご紹介しましたが、頚椎症性脊髄症のほとんどは、加齢による脊椎症性の変化によって脊柱管が狭くなる狭窄を生じることによって、脊髄や馬尾神経根という部分が圧迫されて引き起こされます。 この病気が発症すれば、脊髄が圧迫されるために、その影響で首や背中を含めて手足のしびれといった症状が現れます。それ以外にも、手がうまく使えなくなったり、足に力が十分入らずスムーズに歩行できなくなるなどの運動障害が現れるようになります。 また、神経を圧迫する結果、症状として頻尿や尿失禁などをはじめ、膀胱や直腸の機能が低下して日常生活に大きな支障を及ぼしてしまうことも稀ではありません。 特に困るのが頚椎症性脊髄症を患うと日常生活で必要不可欠な動作ができなくなります。 機能障害 例えば、箸を使う、ボタンをかける、字を書くといった細かい動作ができなくなるだけでなく、歩くことさえできなくなるなど、運動機能に大きな弊害が発生することになります。 このような運動機能障害が起こると、歩き方に障害が起こり、両脚が突っ張って、つま先を引きずるような歩き方になるため注意したいのは、頻繁に躓くようになり、その結果、転倒しやすくなるというものです。こうなると非常に危険です。 それだけではありません。脅すようで申し訳ないのですが、歩行時に足がピクピクとけいれんする異常反射が出現することもあり、バランスを崩して転倒後に頭部や頚部を打撲したり、捻挫すると、頚椎症性脊髄症自体が急速に悪化してしまうため、歩行時は極めて最大限の注意が必要です。 これらの疾患を日頃の症状から正確に診断して神経障害の程度を正確に評価することは、適切な治療を行う上でもたいへん重要な視点になります。 症状と注意 ・頻尿、失禁 ・手が上手く使えない、手足のしびれ ・足の痙攣 ・頻繁につまずくようになる ・転倒しやすくなる 【第2章】頚椎症性脊髄症 術後のしびれと再生治療による治療効果 仮に本疾患を発症したとしても、手足の軽いしびれ程度しかないなど、自覚のない軽症である場合は鎮痛剤や、神経ダメージを修復する作用を有するビタミンB12などによる薬物療法などを中心とした保存的な治療が行われます。 ところが、日常生活を送るうえで大な支障をきたすような痛みや、しびれ、あるいは運動機能の低下など強い症状がある場合は、脊柱管を拡げるための手術が必要と考えられています。 さらには、近年ではMRIなどの画像検査で神経圧迫が顕著な場合や、骨や靱帯など構造物の物理的変化が明らかに認められるようなケースでは、たとえ症状が軽微であっても早期的に手術した方がよいとの意見もあります。 実際に、症状を改善させる目的で脊椎手術に期待するわけなんですが、ここに問題があって、せっかく手術した後でも実のところ、しびれや、感覚障害が残存する可能性があるのです。 その理由は、長期に渡って脊髄神経の圧迫状態が続いた場合、手術によっても神経は元通りに改善するわけではなく、たとえ「圧迫を取り除いたとしても、神経症状が治らない」からです。 再生医療の可能性 そこで昨今のトピックスとして、術前に強い感覚障害などの自覚症状を呈する症例や、術後にもしびれ症状が残存する強い脊髄症を患っている方々に対して、自己脂肪由来幹細胞を用いて治療する再生医療による治療が話題を呼びはじめています。 この方法は、その患者の体内にある脂肪から幹細胞を取り出し、数千倍~にも培養し、患部への注射や、点滴で培養した幹細胞を投与することで神経再生を促進する治療に繋げるという先端医療です。 幹細胞は、本来人間のあらゆる場所に存在していて、同じ細胞を作る能力と、別の種類に分化する能力を持った細胞なのです。つまりは、何にでも変化できるため、自己修復能力を持った細胞と言えるのです。 実際に、投与された自己脂肪由来・幹細胞が傷ついた神経部位に対して血管の新生や圧迫受傷された神経箇所の修復を促す特徴が認められてきました。 さらには、この再生医療を行った後にリハビリテーションを重ねて実践することで、組織修復力が格段と向上することを期待もできるため、お悩みの方には朗報になるものですね。 再生能力が高く、新しく問題や傷のある部位に働きかける幹細胞は、神経の再生に重点を置いたリハビリテーションを並行して実施することで神経細胞としての機能を獲得して傷んでいる損傷部位の修復に効果的に働きかけることが期待できます。 つまり、「再生医療」は、頚椎症性脊髄症で問題となる「しびれをはじめとした神経症状」に対して有効な治療法として期待が持てる!ということなのです。 まとめ・頚椎症性脊髄症の症状と手術後のしびれ、機能障害への対処 頚椎症性脊髄症とは、頚椎などの脊柱管が加齢性によって変形して、重要な脊髄が走行する脊柱管の隙間が狭くなることで脊髄が圧迫され、色々な問題のある神経症状を覚える病気です。 本疾患を発症する原因としては、加齢に伴う頚椎などの物理的な構造の変化が多いと考えられていますが、もともと日本人は諸外国人に比べて脊柱管が狭い傾向があることもあり、頚椎症性脊髄症を発症しやすいと言われています。 頚椎症性脊髄症では、脊髄へのダメージが軽度なケースでは軽い手足のしびれ症状のみですが、神経へのダメージが大きければ大きなほど、手足の筋力低下や、運動障害などの麻痺、そして頻尿や失禁など膀胱、直腸障害などの症状も併せて見られるようになります。 ▼改善を目指し、神経の圧迫を手術で除いたにもかかわらず、術後にしびれや麻痺などの症状が残った場合には、あきらめることなく、近年注目を浴びている「自己脂肪由来の幹細胞を投与する再生治療を受けることで改善の可能性がある」ことを思い出してください。 https://www.youtube.com/watch?v=_ao6mMbBhSE
公開日:2024.10.07 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 健康・美容
変形性膝関節症に東洋医学の鍼灸(はり、おきゅう)治療が有効か考えました 「変形性膝関節症の悪化を防ぎたい」そんなお悩みありませんか? 変形性膝関節症は中高年以降に多く発生する疾患で、その原因は軟骨のすり減りを起因とし、膝に痛みや変形をもたらします。進行性の疾患だけに放っておくと悪化の一途を辿ります。 進行を防ぐためには生活習慣を見直し膝への負担を軽減させ、運動に取り組むことで膝の安定性を高めることが大切です。しかし膝に痛みがあると満足に運動に取り組むことができません。 そんな膝の痛みを緩和する手段には、湿布などの貼り薬や飲み薬のほかに、「鍼灸(しんきゅう)という選択肢」があります。 鍼灸はいわゆる「はり(鍼)」「おきゅう(灸)」と呼ばれ、中国を起源とした東洋医学の治療法です。しかし鍼灸に馴染みない方からすると、「そもそも効くのか」という疑問や、「痛そう」「熱そう」と不安を抱く方もいるはずです。 そこで今回の記事では、「変形性膝関節症に対する鍼灸の有効性」について、また安全面についてもご紹介します。変形性膝関節症の痛みで悩まれている方はご覧ください。 変形性膝関節症に鍼灸は有効なのか 鍼灸の具体的な治療法は、体にある361箇所あるとされる経絡(ツボ)の中から、膝の痛みに適した場所に、鍼やお灸を使い刺激を入れていきます。鍼の刺し方・刺激の入れ方はさまざまで、奥が深い治療です。 鍼灸で期待できる効果 変形性膝関節症への効果ですが、膝の痛みの緩和と可動域の向上が期待できます。変形性膝関節症の基本的な治療法は、運動療法により膝周囲の筋肉を鍛えることで、安定性を高めることです。 しかし痛みにより膝を動かさなくなったり、運動する機会が減ると、可動域が狭まり膝の状態は悪化するという悪循環になりがちです。 ところが鍼灸により膝の痛みが緩和されると、日常生活が楽になるだけでなく、可動域が向上し運動療法にも意欲的に取り組むことができます。また膝が安定し、軟骨のすり減りを抑えることが、膝内部の炎症を防ぎ、膝に水が溜まる「関節水腫」の予防にもつながります。 2005年に発表された論文からも、変形性膝関節症の方に鍼を刺した群と、刺さない群では、鍼を刺した群の方が、膝の機能面、痛みに対して高い治療効果が現れることが分かっています。 "参照:学会誌vol44-No2_本文-29.indd 4/8ページ” https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsop/44/2/44_9/_pdf/-char/ja 鍼灸はなぜ効くのか 鍼灸は人間が持つ傷の修復作用を利用して、痛みにより固まった筋肉の緊張を緩和させます。人間が体に傷を負うと血液循環が促進されるのですが、鍼灸では鍼やお灸を使い、あえて微細な傷を作り出すことで、血液循環を促し筋肉の緊張を緩和させます。 変形性膝関節症に対して治療点は、膝の痛みや筋緊張に関与する場所に鍼や灸を施します。 経絡でのポイントは、衝門、伏兎、梁丘、血海、陰包、足三里、殷門、委中、陰谷、委陽、承山などです。 解剖学的なポイントは、大腿四頭筋、縫工筋、薄筋、大腿二頭筋、半腱・半膜様筋、前脛骨筋、腓腹筋(内側頭・外側頭)、膝窩筋、また、関節裂隙(大腿脛骨関節・膝蓋大腿関節)、鵞足、靭帯(腸脛靭帯、膝蓋靭帯、内・外側側副靭帯など)などです。 ”参照:学会誌vol44-No2_本文-29.indd 3/8ページ” https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsop/44/2/44_9/_pdf/-char/ja 鍼灸でできないこと 鍼灸では血流を促すことで、筋肉の緊張や痛みの緩和はできても、変形性膝関節症のようにすり減った軟骨を再生させたり、変形を元に戻すことができません。軟骨の再生には再生医療という最新治療である自己脂肪由来・幹細胞治療というものがあり、変形を元に戻すには手術という選択肢があります。 https://youtu.be/VAxeH1j4TEY?si=BGSGpFFf3eL8sZxu ▲再生を実感された患者様のインタビュー動画。こちらも是非ご覧ください。 鍼灸の安全性はどうなのか 鍼灸は痛い?熱い? 鍼はステンレスや銀製の極めて細い鍼を使用します。鍼の太さは直径約0.14mm~0.30mmと、人の髪の毛の太さ0.10mmと同程度なので、鍼を刺すときもほとんど痛くないといわれています。 お灸は、療部位に置かれたもぐさに火をつけることで、温熱効果が得られます。お灸の温度は熱ければあついほど効果があるわけではなく、経絡を刺激するには程よい熱さが効果的な点からも、痛みや熱さが苦手な方でも安心して受けられる治療法になります。 鍼灸は無資格でもできるのか 鍼灸は誰でも行えるわけではなく、国家資格が必要です。 国家資格を取るためには、高等学校卒業後、鍼灸を学べる専門学校や大学・視覚障害者のための教育機関に3年以上通います。 各学校を卒業後し、国家試験を受験・合格するとはり師・きゅう師の国家資格が取得できます。このように、体の専門的な知識と技術を習得した人しか鍼灸を人に施すことはできません。 ただし薬局などで販売されている火を使わないお灸や、貼るだけで効果が期待できる円皮鍼など、資格を有しない個人でも鍼灸を取り入れることができます。 しかし、変形性膝関節症は進行する疾患であることから、個人で治療方針や方法を決定せず、進行度合いを確認できる整形外科でみてもらいながら、はり師・きゅう師の国家資格保持者に鍼灸治療をしてもらうことをオススメします。 まとめ・変形性膝関節症に東洋医学の鍼灸(はり、おきゅう)治療は有効か ここまで変形性膝関節症の痛みに対して、鍼灸を使った治療法の効果と安全性を紹介してきました。 結論 ・鍼灸により痛みの緩和、可動域の向上が期待できます。 ・しかし、変形やすり減った軟骨が元に戻るわけではありません。 ・根本的な治療には医療機関へ 変形は高位脛骨骨切り術や人工関節置換術のような手術で元に戻せます。また、軟骨の再生は自己脂肪由来幹細胞治療にて再生が期待できます。 鍼灸は歴史ある治療法で、髪の毛と同じくらいの太さの鍼と、心地よい温かさのお灸により変形性膝関節症の痛みにアプローチすることから、初めての方にも安心して受けられる治療法です。 鍼灸を受けるには、定められた学習過程を経て、国家試験に合格した鍼灸師が居る「鍼灸院」で受けるのが一般的ですが、鍼灸を薬局で気軽に取り入れられる物もあります。 しかし、体にある361箇所もの経絡から、変形性膝関節症に適した場所に、鍼やお灸をしてもらうには、やはり鍼灸師にみてもらうのが最善の方法です。 これまで膝の痛みで悩み、湿布や痛み止めの薬での思ったような効果がみられなかった方は、根本的な治療にはなりませんが鍼灸の治療を検討されてはいかがでしょうか? ▼ 再生医療は、手術や鍼灸に頼らず変形性膝関節症を改善できます 変形性膝関節症は「再生医療」により症状の改善が可能な新しい治療の選択肢です ▼以下もご参考下さい 変形性膝関節症のPRP療法|治療効果と体験談
公開日:2024.10.07 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
変形性膝関節症の治療|整骨院の自費診療で改善が期待できること、期待できないことや注意点 そんな疑問にお答えします。 変形性膝関節症は、中年以降の女性に多く発生する疾患で主に加齢から関節軟骨がすり減ることで、膝に痛みや変形をもたらす疾患です。 変形初期にはわずかに軟骨のすり減りが確認できる程度ですが、長年の年月をかけて徐々にすり減りや変形の程度が大きくなります。放っておくと進行していく疾患であるため、膝の状態が悪化しないように生活習慣の見直しや、膝の周りを鍛える運動が必要不可欠となります。 ただ膝に痛みがある状態では運動に満足に取り組めないため、痛みの緩和を図るため、整形外科を受診すると抗炎症・抗鎮痛作用のある薬を処方されるほかリハビリの指導を受けることになります。ただ、中には整骨院や鍼灸院、ヨガ・ピラティスなどの代替療法を検討される方もいるはずです。 その中でも整骨院は怪我の応急処置を専門とする場所であることから、体を傷めたときに整骨院を訪れた経験があるという方がおられるかもしれませんね? そこで今回は、変形性膝関節症の方が整骨院での施術で改善できるのか?また気をつけるべき点!について解説しますのでご覧ください。 整骨院での自費施術で期待できること、期待できないこと 整骨院では変形性膝関節症に対して、緊張した筋肉へ血液の循環を促し、痛みの緩和と可動域の向上が期待できます。 施術の内容は、手を使い筋肉に刺激を入れるほか、ストレッチなどがあります。また膝の安定性を高めるためにトレーニングを提供している整骨院もあります。 このように膝そのものにアプローチする方法のほか、姿勢や歩行の改善をすることで、間接的に膝への負担を軽減させる施術を提供している所があったりと、その施術方法はさまざまです。 このように整骨院の施術では膝の痛みの緩和と可動域の向上が期待できることから、日常生活が楽になり、変形性膝関節症の治療の基本である運動療法にも、積極的に取り組むことが期待できます。 しかし、変形性膝関節症によって「変形した関節を元に戻したり」「すり減った軟骨を再生はさせることはできません」つまり根本治療は、期待できないということになります。 変形性膝関節症に対しての施術は、健康保険が適応されず、全額自己負担になるため注意が必要です。 整骨院では変形性膝関節症に対して保険は効かない これまで整骨院を訪れたことがある人は、傷めた部位を冷やしたり、温めたりしてもらったかと思います。これらは主に健康保険を使用した施術で、患者様に施術費用の一部だけを負担してもらう仕組みにです。 しかし、変形性膝関節症に対しては例外なのです。 整骨院(接骨院)の開業は、厚生労働大臣からの免許を受けた国家資格を保持する柔道整復師の存在が不可欠です。柔道整復師の主な業務は、怪我に対して応急処置をすることで、柔道整復師が行う施術を「医療類似行為」といい、医師が行う治療=医業のように画像診断や、注射・手術はできません。 あくまで応急的もしくは、医療補助的方法により、患部の回復を図ることを、目的としています。 健康保険が適応される具体的な範囲は、「急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲、捻挫、肉ばなれ等」です。つまり以前から慢性化した肩こりや、長年の年月をかけて進行してきたような変形性膝関節症は健康保険適応外となるのです。 整骨院での自費施術の費用は院によりバラバラですが、3000円〜5000円程度が相場になります。 整骨院の自費施術を受ける際に気をつけたいこと 病院にて変形性膝関節症と診断された後、整骨院の自費施術を受ける前には、気をつけるべき点があります。それは医師への相談と定期的に病院を受診することです。 前項で説明した通り、整骨院の自費施術の内容はさまざまです。整骨院で受けようとしている自費施術が、あなたの膝に余計な負担とならないのか医師に相談することが大切です。 また相談される際は、「整骨院の施術を受けても大丈夫か?」と聞くのではなく、整骨院で受ける具体的な施術方法を挙げることで、より医師もあなたの質問に答えやすくなります。 また整骨院の自費施術を受け、痛みが緩和したとしても、定期的な病院の受診は忘れずに行きましょう。変形性膝関節症の進行度合いを確認する画像検査は、整骨院ではできません。 まとめ・変形性膝関節症の治療|整骨院の自費診療で改善が期待できること、期待できないことや注意点 いかがでしたか? ここまで変形性膝関節症の方が整骨院での施術で改善できるのか、また気をつけるべき点まで解説してきました。変形性膝関節症に対して整骨院の施術を受けることで、膝の痛みの緩和と可動域の向上が期待できます。 しかし変形を元に戻したり、変形が起こる起因となる、すり減った軟骨を再生させることはできません。変形を元に戻すには手術が必要です。 また、軟骨を再生させるには最新医療の「自己脂肪由来・幹細胞治療」という再生医療という選択肢もあります。 ▼変形性膝関節症の患者様。再生医療(幹細胞治療)の治療前と、治療後の歩行動画を是非ご覧ください。 https://youtu.be/anWlm-9L-ao?si=EaaJQOTY9cf3ZHLA 変形性膝関節症に対して自費施術を受ける場合には、医師と相談し、自分に合った施術方法を取り入れましょう。ただし整骨院は病院と違い、レントゲン撮影はできないため、その進行度を確認することはできません。 自費施術で痛みの緩和がみられたとしても、変形性膝関節症の進行度は痛みの程度と比例するとは限らないことから「良くなった!治った!」とご自身の体感で判断はせずに、定期的に病院を受診し、画像診断で膝の状態を確認することが大切です。 また整骨院は痛みに対して処方される「ロキソニン」などをはじめとする第一類の医薬品の取り扱いができないことから、痛みがきつい時には、迷わず病院を受診するようにしましょう。 ▼ 再生医療は、変形性膝関節症を根本治療できる方法です。 変形性膝関節症は、再生医療で手術を避けて改善することが可能です ▼以下も参考にしませんか 変形性膝関節症で必須なサポーター!そのメリットと注意点について
公開日:2024.10.07 -
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変形性膝関節症でヒアルロン酸、ステロイドでは不可能な軟骨を再生させる再生医療をご紹介 「変形性膝関節症」の治療でヒアルロン酸を注射をしているけど「思ったような結果が得られず困っている・・・」、「ステロイド注射は副作用が怖いと聞いたが・・・」こんなお悩みはありませんか? 変形性膝関節症の炎症や痛みに対する治療と言えば、ヒアルロン酸や、ステロイドを関節内に注射することが多々ありますが、実のところ、これらの注射は一時しのぎで根本的な治療にはなりません。 これらヒアルロン酸や、ステロイドなどの注射による治療では症状を改善させたり、症状の進行を止めることが難しく、最終的に人工関節などの手術に頼ることになりかねません。つまり、これらの治療では根本的な治療にはならないということです。 なぜなら、ヒアルロン酸注射やステロイドは、一時的に痛みを緩和することはできるのですが、痛みの根本原因となっている傷んだ軟骨を再生させる力は無いからです。 しかし、医療の発展で「再生医療」という新たな選択肢が現れました。 再生医療は、手術はもちろん、入院までもが不要という、これまでの常識を覆した最新の治療法として厚生労働省が許認可し、中でも「幹細胞治療」は、変形性膝関節症で軟骨を再生する可能性を持った治療法として非常に期待が持てます。 ・従来のヒアルロン酸、ステロイドでの治療:その場しのぎで、根本治療にはならない ・再生医療(幹細胞治療):変形性膝関節症の根本治療!軟骨を再生させる症例が多数報告されている ・安心安全:手術が不要、あなた自身の幹細胞を使う、入院も不要の最新医療 そこで今回は、再生医療の中でも「幹細胞」を培養して注射で投与でき、軟骨を再生させる!「変形性膝関節症の最新治療法」をご紹介します。 まずは、これまで変形性膝関節症の治療に使われてきた、「ヒアルロン酸注射」、「ステロイド注射」をについてご説明し、最新の再生医療での治療法である再生医療、中でも「PRP療法」「自己脂肪由来・幹細胞治療」をご紹介してまいりましょう。合わせて以下の動画もご参照ください https://youtu.be/2GCVH-Jw5Ps?si=ZEHWq8a2WU2MxWZX 従来の治療法①|膝関節へのヒアルロン酸注射について さて、膝関節へのヒアルロン酸や、ステロイドの注射は、関節の潤滑性を高めたり、炎症や痛みを抑える目的で使われるものです。関節内にある関節液は、関節軟骨を保護し、膝の動きを滑らかにサポートする潤滑油の役割を果たしています。 そんな関節液の潤滑成分としてヒアルロン酸が含まれていることから、変形性関節症で枯渇したサラサラの関節液に対して、ヒアルロン酸を関節内へ注射することで潤滑性を高めることで膝の動きをサポートさせます。 今、まさに治療を行われている方なら、お分かりかもしれませんが慣れてくると注射後2〜3日、中には1日ほどで、また痛みに悩まされることも少なくないのです。 ヒアルロン酸注射の頻度・回数は、ヒアルロン酸に含まれる分子量により異なります。この分子量が高いほど関節内で長時間留まるとされています。ただ、実際に痛みを回避するには週に1回から、いずれは3回~注射することになりかねません。 ご注意)ヒアルロン酸を注射で痛みの原因である「軟骨が再生されることはありません」 膝に水が溜る!とは 膝に炎症が起こり、水が溜まることがあります。これを「関節水腫」といい、膝に水が溜っていたらヒアルロン酸注射の前にこの水を抜いてやる必要があります。 なぜなら膝に水が溜まった状態でヒアルロン酸注射をしたところで、溜った水によってヒアルロン酸の濃度が薄められ、効果が半減されてしまうからです。更に、溜まった関節液には、炎症を悪化させてしまうサイトカインという物質も含まれています。 また稀にヒアルロン酸にアレルギー反応を起こす場合もあるため、万人が受けられるわけでもありません。 膝への「ヒアルロン酸注射」 効果 問題 注意事項 ・膝軟骨を保護 ・膝の滑らかな動きをサポート ・軟骨を再生するものではない ・改善等の根本治療にはならない ・効果が続かない(3日ほど) ・末期になるほど効果が減る ・水が溜る「関節水腫」になる危険性 従来の治療法②|「ステロイド注射」痛みは消えるが注意が必要 痛みや炎症が強い時は、ステロイド薬を関節内へ注射します。ステロイド注射はヒアルロン酸注射と比べ、痛みを抑えるのに非常に高い効果を発揮するとの報告が多くあります。 ただし、注意しておきたいのは、ステロイド注射を多用すると副作用があること。それは骨や、軟骨の新陳代謝をステロイドが阻害したことによって起こる可能性のある「骨壊死」、関節が破壊される「ステロイド関節症」というもので注意が必要です。 注意)ステロイド注射の多用による副作用に注意 ▼「骨壊死」「ステロイド関節症」を防ぐために ・最低でも6週間置いての注射とする。 ・できれば3ヶ月ほどは、間隔を空けるべきであること。 ・短期での連続した注射や長期間に及ぶ使用は避けるべき。 ・知識として知っていて欲しい。 繰り返しになりますがステロイド注射による痛みの改善は一過性であり、変形性膝関節症の痛みの起因となる、すり減った軟骨が元に戻るわけではありません。痛いからと、使い方を誤ると副作用という大きな危険性があります。 ここまでヒアルロン酸や、ステロイドとしった痛みを抑える目的で使われる注射を紹介しました。 次に自分の血液や細胞を使うことで「アレルギー反応が起こりにくい」「軟骨の再生を期待できる」最新の注射による治療方法を紹介します。 膝への「ステロイド注射」 効果 副作用 副作用を抑えるための注意事項 膝の意痛みを抑える 膝の炎症を抑える ・骨や軟骨の新陳代謝を阻害 → 骨壊死 → 関節が破壊されるステロイド関節症 ・6週間置きの注射 ・3ヶ月間は空ける ✕ 短期での連続した使用 ✕ 長期間に及ぶ使用 膝の痛みを消すだけ、変形性膝関節症の痛みの起因となる、すり減った軟骨が元に戻るわけではない 最新|変形性膝関節症の再生医療 再生医療 1)PRP治療 2)幹細胞治療 1)PRP治療(Platelet-Rich Plasma=多血小板血漿) PRP療法とは、患者様の血液を採取し、血液中に含まれる血小板の多い血漿だけを抽出し、膝へ注射する治療法です。多血小板血漿には、組織や細胞の成長を促す成長因子が多く含まれています。 そのため、高い治癒効果が期待できる方法といえます。またヒアルロン酸と違い、自分の血液を使用することでアレルギー反応が出にくいのも特徴です。PRP療法は、近年耳にする機会が増えた「再生医療」に分類される治療法です。 まだ日本では保険が適応されない自由診療となるため、ヒアルロン酸注射やステロイド注射のように気軽に打てる金額ではない点がデメリットになります。 また再生医療を扱うには「再生医療等の安全性確保等に関する法律」に基づき、厚生労働省に届出し、受理された医療機関、専門医にしかできない治療法になっているため、近所の整形外科で簡単にできるわけではありません。 ただ、そのため、安全性が確保されている治療法とも申せます。 2)幹細胞治療 「軟骨の再生」を期待!自己脂肪由来・ 主に皮下脂肪にある幹細胞組織を使い、軟骨をはじめとして、さまざまな組織に再生させる機能を持つ、可能性に満ちた治療法です。 幹細胞は、軟骨や皮膚、骨などに分化(複雑なものに発展していくこと)する機能があります。体から採取した幹細胞を培養(増やす)して膝の関節内へ注射することで、傷んだ軟骨の再生を期待することができ、これまでになかった治療法になります。 幹細胞は骨髄からも採取することはできますが、より侵襲が少ない皮下脂肪から採取されるのが一般的です。それでは同じ再生医療の分野であるPRP治療と幹細胞治療とは何が、どう違うのでしょうか? PRP治療は、傷んだ組織に対して組織や、細胞の成長を促す栄養素が含まれている「多血小板血漿」を注射します。もともと血小板の役割に成長因子の分泌がありますが、「多血小板血漿」には通常の血小板と比べて3〜5倍もの成長因子があることが特徴です。 これにより、ヒアルロン酸注射にはできなかった慢性化した患部の修復や、治癒を高めることができます。その一方でPRPには幹細胞が含まれていないため、軟骨を再生することはできません。 幹細胞治療では、さまざまな組織に分化(変化)する働きをもつ幹細胞を、何千〜何百万倍にも培養し、膝に注射します。この幹細胞が集中的にすり減った軟骨に働きかけることで、これまで不可能とされてきた「軟骨を再生」させます。 そのため、注射する幹細胞の数にも注目すべきです。海外の臨床データによると幹細胞の数が多いほど治療成績が良いことがわかっているからです。 なぜなら培養せず注射する治療法をADRC(脂肪組織由来再生幹細胞治療)セルーションと言うのですが、培養を行わないため幹細胞の数自体が少ないことになるからです。 その意味で治療を受ける際は、受診するクリニックが幹細胞を培養しているか確認することは大切なことになります。PRP治療は注射で実施できることから、傷口は小さくてすみます。 自脂肪由来幹細胞治療も米粒2〜3粒ほどの脂肪を摂取するために、下腹部周辺を5ミリほど切開しますが、投与自体はPRPと同じく直接膝に注射することため、大きな傷口を作ることはありません。 日帰りで受けられるこれまでには無かった治療法です。なお自己脂肪由来幹細胞治療もPRP治療ともに自由診療で、厚生労働省によって認可された医療機関でしか行えません。 再生医療の比較 PRP治療 幹細胞治療 軟骨 再生できない 再生する アレルギー ⇒ 出にくい 治療 ⇒ 専門医、専門院に限る 種類 再生医療 まとめ・変形性膝関節症の最新治療|ヒアルロン酸、ステロイドでは不可能な軟骨を再生させる再生医療という治療方法 いかがでしたか?変形性膝関節症に対する従来の注射「ヒアルロン酸注射」と「ステロイド注射」、最新治療の注射「PRP治療」「自己脂肪由来幹細胞治療」の役割を紹介しました。 これまで変形性膝関節症に対する注射は、痛みを抑え、少しでも悪化を遅らせる目的で使用されてきたものですが、再生医療であるPRP治療・自己脂肪由来幹細胞治療により、治癒そのものを促進させ、失われた軟骨を再生させることで回復を目指す!といった今までには無かった前向きな治療法です。 変形性膝関節症の痛みで悩み、薬や注射をしたけれど「期待していた効果を感じられなかった」「できるだけ手術はしたくない」という思いがある方は、薬や注射といった薬物療法と手術の中間に位置する再生医療での治療を検討してみてはいかがでしょうか。 以上、変形性膝関節症の最新治療と題し、従来のヒアルロン酸やステロイド注射では不可能な軟骨の再生を期待できる新たな選択肢である再生医療による治療について解説させていただきました。 ご参考にしていただければ幸いです。 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下もご参考にされませんか 変形性膝関節症の治療「薬物療法の種類と悪化を防ぐ」ポイントとは
公開日:2024.10.07 -
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PRP療法とAPS療法の比較|期待できる効果と治療法 「再生医療」という先端医療をご存知でしょうか?近代になって研究室での実験から、医療の現場で実施されるまでに至ってきた医療分野です。 いわゆる再生医療とは、怪我や病気によって低下あるいは喪失した生体機能を従来の医療方法では違うアプローチで治療する方法です。人為的に加工や培養して作製した細胞や組織などを用いて人体に元来備わっている修復能力を増大させて症状を改善させることが出来る可能性を秘めた未来的な治療方法です。 一昔前ならSFの世界、まともに語っていたなら「夢でも見てるの」かと夢物語にされかねない非現実的な医療でした。このような非現実的な治療方法であるだけに、実際にその治療を受けることが可能だとは、ほとんどの方がご存知ないのではないでしょうか。 それもそのはず現場の医師でさえ詳細を知る方は、まだまだ少ないのが現実なんです。そこで再生医療とは、どんな治療方法なのでしょうか? 今回は、PRP療法とAPS療法の比違いについて、比較を交えてお話しさえて頂きます。 そもそも私たちの血液中には、赤血球や白血球、あるいは血小板と呼ばれる成分が含まれていることはご存知ですね。これらの成分には、それぞれに特化した役割が存在しています。 その中でも血小板は外傷によって皮膚表面が傷ついた場合や、関節捻挫、あるいは筋肉打撲などで負傷をした際に損傷部位を治癒させる働きを有しています。つまり、自己治癒力です!傷ついたり、痛んだりした組織を自動で修復してしまう!すごい機能です。 このような働きができるのは血小板の中に含まれて、傷んだ組織部位を治す「成長因子」と呼ばれる成分のお陰お陰です。それが今回、ご紹介するAPS療法の基礎となるものです。 PRP療法とAPS療法 血液中の血小板から濃縮して大量の成長因子を含む「多血小板血漿」は、昨今の再生医療の分野で大変着目されており、英語表記でPlatelet Rich Plasma(略して以下、PRP)と呼称されているものです。 さらに、Autologous Protein Solution(略して以下、APS)を用いた療法は、自己タンパク溶液として、前述したPRPを特殊な過程で更に濃縮したものです。このAPS治療は、目下のところ慢性的な膝関節等の疼痛に対する再生医療という新たな最先端治療として注目されているものなのです。 今回は、再生医療の新人!APS療法について解説していきましょう。 [再生医療] PRPとAPSの比較 自己多血小板血漿、注入療法とも呼ばれるPRP療法については聞き覚えのない馴染みが薄い治療法に感じられるかもしれませんね。しかし、実のところ海外においては10年以上の使用実績がある方法なのです。 ケガなど、傷ついた部位の修復に作用する血小板に含まれる成長因子を取り出すPRP療法は、私たちがもっている治癒能力や組織の修復能力、再生能力を引き出すという目的があります。 それに対してAPS治療は、患者様自身の血液成分から特殊な専用医療機器を用いてAPS成分のみを抽出します。 このAPSの抽出方法は、基本的にPRPそのものを更に遠心分離器を活用して特殊加工することによって、炎症を抑制する役割を有したタンパク質と軟骨を保護して損傷を改善させる「成長因子」を高濃度に抽出したものになります。 このような抽出背景から「APS」は、まさに「次世代型のPRP」とも表現されることがあります。 抽出したAPSを関節内などの疼痛部位に向けて成分を注射することによって関節部の疼痛や炎症の軽減のみならず、軟骨の変性進行や組織破壊を抑制することが期待されるものです。 APS治療は、現在のところ、まだ「変形性膝関節症」に痛みなどを対象疾患を限定して使用されている段階ですが、これまでのPRP治療でも難渋していた患部改善にも一定の効果を示すことが徐々に判明してきています。 尚、APS療法では患者さんご自身の血液を基準にして作るために異物免疫反応が引き起こされる可能性は極めて低確率であると考えられています。 また、本治療はPRPと同じく、手技的に採血操作と注射投与だけですので、手術などのように患者さんの身体的な負担も大幅に少なくて済むという特徴があります。 PRP療法とAPS療法の比較 ・PRP療法 「PRP療法」は血液中の血小板から濃縮して大量の成長因子を含む「多血小板血漿」Platelet Rich Plasmaを略したもので、自己血液から血小板を取り出し、それを患部に注入する治療法です。 血小板には成長因子が豊富に含まれており、これらの成長因子が治癒を促進する働きがあります。具体的には、炎症を抑え、組織再生を刺激し、細胞の増殖と修復を促進します。主に関節炎や腱や靭帯の損傷、筋肉の損傷などに使用されます。 ・APS療法 「APS療法」は、Autologous Protein Solutionを略したものです。前述したPRPを特殊な過程で更に濃縮したもので抗炎症性のサイトカインとよばれるタンパク質と関節を健康に保つ成長因子を高濃度で取り出した⾃⼰タンパク質溶液を患部に注入する治療方法です。 再生させるという観点ではなく、現在のところ、関節内で痛みを引き起こすたんぱく質の活動を低下させることから症状緩和に焦点を当てた特化的治療といえるものです。 APS療法で期待できる効果や、実際の治療法 さて、ここからは変形性膝関節症に対してAPS療法で期待できる効果や実際の治療法などについて紹介しましょう。 ご注意頂きたいのは、APS療法は、再生医療ではありますが自己の血液から抗炎症成分のみを濃縮して抽出したあと、関節内に注射することで関節の軟骨を修復し、再生させるという観点ではなく、膝痛の症状緩和に焦点を当てた特化的治療であることです。 膝の変形性関節症では、疾患が進行することによって「半月板の損傷」や、「靭帯のゆるみ」など膝関節のバランスが崩れることで軟骨がすり減り、膝関節が変形して発症します。 また、変形性膝関節症では膝関節部における変形度の進行に伴って、軟骨がすり減り、半月板が擦り減って傷み、さらには滑膜炎など炎症が起きて膝部に水が溜まることがあります。 従来、治療としては繰り返し鎮痛剤を内服することや、ヒアルロン酸を関節内に注入するなどが代表的な治療法でした。しかし、鎮痛剤を飲み続ける是非や、ヒアルロン酸の効果が期待できなくなった変形性膝関節症の患者様の中には、このAPS治療によって症状が幾ばくかの改善を示すケースがあることが分かってきたのです。 一般的にAPS治療では、投与してからおよそ1週間から1か月程度で患部組織の修復が起こり始めて、だいたい治療してから約2週間から3ヶ月前後までには一定の効果が期待できると言われています。 海外のAPS治療に関する報告例では、APSを一回注射するだけで、最大約24ヶ月間にもわたって痛みに対する改善効果が継続するとの実例も紹介されていました。ただし、これは一例で実際の治療効果や症状が改善する持続期間に関しては、患者さんの疾患の程度、条件によって様々、個人差があり変化することをご理解ください。 また、このAPS治療は、PRPと同じく、患者さん自身の血液を活用して生成するために、通常ではアレルギー反応や免疫学的な拒絶反応は出現しないと考えられている点も良いい面でのポイントです。 APS治療の手順 1)まず約50~60mlの血液を採取 2)厚生労働省が認めている特殊な技術で処理し、血小板成分を濃縮したPRPを抽出 2)精製されたPRP物質をさらに濃縮してAPSを抽出 こうして抽出した後、痛みを自覚されている関節部位に超音波エコー画像を見ながらAPS成分を注射して投与する まとめ・PRP療法とAPS療法の比較|期待できる効果と治療法 従来におけるPRP療法(自己多血小板血漿注入療法)は、患者自身の血液中に含まれる血小板を活用した再生医療です。 そして、昨今特に注目されているAPS治療では、先のPRPを更に濃縮。このAPS成分を患部に注射投与してから平均しておよそ1週間から1か月程度で組織修復が促進されて更には疼痛緩和に繋がる可能性があります。 なおAPS治療を現実的に受けた当日は、入浴や飲酒、あるいは喫煙、また激しい運動やマッサージなどは出来る限り回避するように意識しましょう。 APS注射直後には、個人差はあるものの一時的に痛みや腫脹、発赤などの症状が出ることがありますが、疼痛があるために関節部位を全く動かさないと逆効果になってしまうこともあります。 ここのあたり治療後の行動については、くれぐれも十分に主治医と相談するようにしましょう。また現段階では、このAPS治療は保険適応外であり自費負担になります。 費用は、それぞれの対象医療施設や治療適応となる患部箇所などによって異なりますので、この治療法をもっと知りたい方は私どもほか、専門の外来へお問い合わせされることをお勧めします。 このAPS療法のほかにも再生医療として、私どもが推進する「幹細胞治療」という関節部分の軟骨を自己治癒力を用いて再生させるという正に未来的な治療法も存在し、この分野から目が離せません。 いずれにせよ関節に問題があって、「後は手術しかないと」言われた方は再生医療をご検討されてはいかがでしょうか。私たちは再生医療の幹細胞治療で1,600例を超える豊富な症例を有しています。いつでもご相談ください。 以上、PRP療法とAPS療法の比較|期待できる効果と治療法について記させていただきました。 ▼ PRP療法をさらい詳しく PRPを使った再生医療は、人間が持つ自然治癒力を活かして治療する先端医療です
公開日:2024.10.07 -
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PRP-FDはメジャーリーグで田中選手や大谷選手が靱帯損傷に使った治療法 膝のPRP-FD注射は、再生医療の新たな選択肢!になるか? 従来、膝の変形性膝関節症などに対する注射療法として、ヒアルロン酸の関節内注射が一般的に普及していた時代がありました。その後、近年には再生医療として血液中の血小板中に含まれる多種の成長因子多血小板血漿(Platelet Rich Plasma: 略してPRP)の関節内注射の効果が報告されてきました。 この自己・多血小板血漿注入療法とも呼ばれる「PRP療法」は、実は海外においては10年以上の使用実績があることをご存知でしょうか。海外では比較的ポピュラーな治療方法なのです。 例えば、プロ野球選手、アメリカのメジャーリーグで当時、ニューヨーク ヤンキースの田中将大選手、あるいは、今も大活躍のロサンゼルス エンゼルスの大谷翔平選手」が右肘の「靱帯損傷」に対して「PRP療法」を行なったことはよく知られています。 一方で、さらにPRP療法は、PRP-FD(又はPFC-FD)療法という新たな再生医療となり注目され始めています。今回は、このPRP-FDに注目して解説してまいりたいと思います。 PRP-FDとは、 Platelet Rich Plasma Freeze Dryの略であり血小板由来因子濃縮物を指します。同様にPFC-FDとは、Platelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dryの略称であり日本語に訳すと「血小板由来成長因子濃縮液を凍結乾燥保存」したものという意味の頭文字になります。 これらの療法は、患者さんご自身の血液中の血小板に含まれる「成長因子」を活用するバイオセラピー(再生医療)と呼ばれるもので、関節や筋肉、腱の疾患または損傷に対して「手術をすることなく、注射でのアプローチする再生医療」であることを意味しています。 そこで今回は、再生医療の新たな選択肢となり得る膝のPRP-FD注射について解説してまいりましょう。 1)PRP-FD(PFC-FD)の成り立ちとPRPとの違い 従来からあった「PRP療法」は、自己多血小板血漿注入療法のことであり、患者さん自身の血液中に含まれる血小板の要素を利用した再生医療です。 この療法は、血液中の「血小板の成分だけを高い濃度で抽出して、患部に直接的に注射」する方法です。 これによって関節部の損傷した組織へ、血小板の修復能力を用いた自己治癒力を高めることが可能になり、痛みを含めた損傷した患部の改善を目指し、手術などを避けて治癒できることを期待するものです。 この方法は、歴史的にまだ浅いもののイランの医師であるDr.Raeissadatらが過去の研究をもとにPRP関節内注射の方が従来のヒアルロン酸の関節内注射よりも変形性膝関節症における症状を改善させると発表したことにはじまりました。 このPRP関節内投与は、他の再生医療同様、手術等を回避しながら、症状の改善効果が期待できることから、患者さんのQOL(※1)を向上させることにもつながります。 一般的な治療法では解決できなかった「変形性膝関節症」をはじめとした各種関節症の患者さんに対する治療の有効なオプションになり得ると報告されています。 (※1)QOLは、英語でQuality of Lifeの略です Quality of Lifeを医療面から考えると「自分らしい生活、毎日が充実し、心身が満たされた納得のいく生活」を考慮した上で治療を行うというものになります。 患者さんへの治療方針を定めるに場合に治療方法や、その後の療養生活が患者さんへ与える肉体的、精神的はもちろん社会的、経済的といった生活の質といえる各要素を維持すべきではないかというものです。 病気の内容や治療方針によっては、その後の症状や副作用などによって治療する前と同様な生活が不可能になることがあります。そこで治療法を選択する場合には、単に症状の改善や、回復といった治療の効果だけに目を向けるのではなく、QOLの維持にも目を向けて治療方法を選択したいものです。 その意味で今後、再生医療は従来の手術による治療方法を転換させるさせるものとしてQOLに沿った治療法と言えるのではないかと思われます。再生医療は最新の医療技術で手術や入院そのものを避けることができるからです。 だからメジャーリーグをはじめ、スポーツ選手は再生医療に着目する このように再生医療は、治療結果だけに着目するものではなく、治療後を考えた治療方法といえるのです。なぜならスポーツ選手なら誰しも手術を避け、入院を避け、治療後にパフォーマンスを落とすことのない治療が条件になるからです。 スポーツ選手にとって、このパフォーマンスの維持こそがQOLになり、それを維持することこそが治療の条件になります。だからメジャーリーグをはじめ、スポーツ選手は再生医療を目指すのです。 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています PRP-FD(PFC-FD)療法について、 これは、PRP療法と同様に患者さん自身の血液から「PRP-FD(PFC-FD)」を作製します。投与方法も患部に直接注射して行うという治療法の面でも同じになります。 期待する効果としても同様でPRP-FD(PFC-FD)を注射した後には、PRP療法と同じく損傷した組織において自然治癒力が促進されて患部の早期修復や、疼痛軽減に繋がる再生医療としての効果を期待されるものです。 PRP-FD(PFC-FD)療法とPRP療法の決定的な違いは何でしょうか? PRP-FD(PFC-FD)療法では患者さんの血液からいったん作製したPRPをさらに活性化させて、「血小板に含まれる成長因子だけを抽出し、無細胞化した上で濃縮する」ため、成長因子の総量がPRP療法の約2倍程度に及ぶところが大きな相違点です。 また投与のスケジュールも違いがあります。PRP療法であれば採血当日に限り投与が可能ですがPRP-FD(PFC-FD)療法の場合には、採血から投与ができるまでに約1週間~3週間必要です。 尚、PRP-FD(PFC-FD)療法では、濃縮した血小板由来成長因子をフリーズドライ加工するため、長期保存が可能となります。そのため約半年の間に複数回、タイミングを見て何度か投与することが可能になります。 PRP療法 PRP-FD療法 分野 再生医療 再生医療 投与方法 患部に注射で投与 患部に注射で投与 投与タイミング 採血した当日 採血後1~3週間後 保管 できない フリーズドライ化にて長期可能 回数 当日一回 回数を分けて複数回投与可能 有効成分(成長因子) ― PRPの約2倍 期待する効果 損傷した組織の自己治癒力を高めて改善を目指す 2)膝のPRP-FD注射で期待できる効果や実際の治療法 さてここからは、膝のPRP-FD(PFC-FD)注射に期待できる効果や実際の治療法などについて紹介していきます。 このPRP-FDは、従来のPRP療法と効用効能は、ほぼ同じと考えられていますが、PRP-FD(PFC-FD)療法では患者さんから単回の採血で作製する量が多く、フリーズドライ化しているおかげで保存も長期に可能です。 そのため、症状が重いなど、複数回にわたって関節内注射を打つ必要があるケースでは、PRP-FD(PFC-FD)療法が期間を設けて複数回打つことができるため、その面ではPRPよりも適しているとみることもできます。 また、これらのPRP-FD (PFC-FD)注入療法によって、「テニス肘(テニスエルボー)」や、「ゴルフ肘」と呼ばれる肘内側部あるいは外側上顆炎、そして「ジャンパー膝」と呼ばれる「膝蓋腱炎」を修復できる可能性があります。 また、アキレス腱炎、足底腱膜炎などの腱付着部における疾患や、肉離れ(筋不全断裂)や靱帯損傷などの病気をより早期に治癒させる確率を高める効果を期待できます。 そのため、PRP-FD(PFC-FD)治療では、比較的早く、腱や靱帯由来の関節部の痛みを軽減する効果が見込まれるため、手術といった回復が長期化する治療法を避けることができ、重要なシーズンまでに回復しなければならないなど一日も早く復帰を必要とするプロアスリートや、トップアスリートなどに対して有効な治療法となる可能性があります。 また、変形性膝関節症では膝関節部における変形度の進行に伴って、軟骨がすり減り、半月板が擦り減って傷み、さらには滑膜炎など炎症が起きて膝部に水を溜めるような場合にも、PRP-FD(PFC-FD)治療を実践すると軟骨や半月板などの組織の改善を促すと同時に関節部の滑膜炎を抑制して症状を軽減、回復させる効果を期待できるものです。 これら従来の方法では、変形性膝関節症に対する薬物療法としては、一般的な鎮痛剤の内服やヒアルロン酸を含む関節内注射などを施行されてきました。 ところが、これらの既存的治療が最初から効かない場合、あるいは効かなくなってしまった場合でも、PRP-FD(PFC-FD)を関節内注射することで痛みが軽減した例が多く存在します。 PRP-FD(PFC-FD)療法の実際の手順を簡単に紹介します。 まずは、患者さんに問診、診察を行うことから開始します。 次に、治療内容の説明をして同意を得られた患者様から、約50mlの血液を採血します。その後、血液検査結果からHBV、HCV、HIV、梅毒など感染症の除外を行なった上で、PRP-FD(PFC-FD)を実際に作製します。 この際、活性化成分のみを抽出してフリーズドライ化するのに約1~3週間かかることを念頭に置いておきましょう。そして、最後にPRP-FD(PFC-FD)を患部に直接的に注射することになります。 これらのPRP-FD(PFC-FD)療法は、体外で成長因子を抽出して無細胞化する作業を行うため、PRP療法より、痛みが少ない治療法であると言われています。 まとめ・PRP-FDはMLBで田中選手や大谷選手が靱帯損傷に使った治療法です 従来におけるPRP療法(自己多血小板血漿注入療法)は、患者さん自身の血液中に含まれる血小板を活用した再生医療でした。 そして昨今、注目されている再生医療の一つであるPRP-FD(PFC-FD)療法は、血小板が傷を治す際に放出する成長因子の働きに着目したものでPRP療法を応用した技術を使える上、それらを濃縮活用し、我々の生体が生理的に元来有している「自然治癒力」を高めることで治療効果を向上させるものです。 このように、PRP-FD(PFC-FD)療法はPRPと同様に急性あるいは慢性問わず関節症、あるいは関節周囲の靭帯や半月板など軟部組織疾患に対して治療応用が開始されていますので今後の進展に期待が持てます。 尚、今回ご紹介したPRP療法やPRP-FD療法には、更に高度な最先端医療といわれる「幹細胞を培養して患部に投与する幹細胞療法」があり、症状や軽減だけでなく、「軟骨そのものを再生することができ、再生医療の本命」といわれる治療法があります。 当院は、患者様の生活の質、QOLを大切にできる再生医療を推進しています。これまで多くの症例を有する国内でも唯一のクリニックです。いつでもお問い合わせください。 治療後や、療養生活の質を高める再生医療にご注目ください。 ▼QOLを大切にするPRP療法を用いた 再生医療の詳細は以下をご覧下さい PRP療法は、自ら再生しようとする自然治癒力を活かした最先端の治療方法です
公開日:2024.11.06 -
- 変形性膝関節症
- ひざ関節
変形性膝関節症の手術、その種類と入院期間、術後のリハビリから退院までの経過 変形性膝関節症と診断され、手術を検討されている方にとって、色々な面で不安や疑問は多いものですね。いざ手術を受けようと思っても、人によってはお仕事や、家庭など理由は様々、家を空けられない事情もあるはずです。特に術後の「入院期間」は、「リハビリ」を含めて気になるところでしょう。 その変形性膝関節症の手術として代表的なのが「関節鏡視下手術」「高位脛骨骨切り術」「人工関節置換術」ですが、受ける手術によって入院期間は異なります。 受ける手術によって入院期間は変わります。手術によって退院するまで短くて数日、長くて1ヶ月以上と差があります。膝に痛みや、しびれなどの異常を感じて整形外科等、医療機関を受信、検査を経て手術が必要という診断を受けた場合。下図に示したような3種類の手術が考えられます。 そこで今回は、変形性膝関節症の手術にかかる入院期間に併せてリハビリの内容を解説してまいります。 入院期間 1.関節鏡視下手術 2.高位脛骨骨切り術 3.人工関節置換術 4.参考)再生医療:入院不要 1.関節鏡視下手術の場合:入院期間は2〜3日 関節鏡視下手術とは? 関節鏡視下手術は、変形性膝関節症の手術の中でも1番入院期間が短い手術になります。この手術は、他に比べて最も入院期間が少なく、手軽に受けることが可能です。 手術の方法としては、カメラ・ハサミや鉗子など手術器具を入れるために膝の周囲に小さな孔を2〜3ヶ所開けます。そちらにカメラを入れてモニターに映し出された映像をもとに傷んだ関節軟骨・半月板・滑膜・骨棘を切除するほか、癒着した関節包をはがします。 麻酔は下半身のみで、手術時間も短く1時間程度です。 関節鏡視下手術の特徴は、「骨切り術」や「人工関節置換術」と比べ、皮膚の切開範囲が小さく、体への侵襲(影響)が少ないことから、入院から退院までの期間が短く、年齢問わず受けられる手術法となります。 また関節鏡視下手術や、耐久性に寿命がある人工関節置換術に踏み切る前段階の手術としても有効です。 関節鏡視下手術は、患者様の7〜8割に効果が認められた手術法でありますが、手術の適応(可否)は、膝の変形が軽度から中程度の変形性膝関節症の方が対象になるため、この術式を行うには変形が進行しすぎないよう早期発見が重要です。 関節鏡視下手術の術後のリハビリと退院までの経過 手術直後は、ベッド上にて安静に過ごします。手術による炎症を抑えるためにアイシングを行います。血栓を防ぐために、脚の位置を高く保つほか、弾性ストッキングにて血流を促します。 リハビリは、術後、翌日からは積極的な運動療法を行い、全体重を乗せて歩けるように行います。数日間は痛みを感じますが、できる限り膝の関節を動かすことで血栓を予防します。 多くの場合、手術の翌日から、2日後には退院できます。 退院しても痛みは数週間続きます。手術前と同じ生活を送るには2〜3週間、膝に痛みや違和感を感じなくなるまでに3〜6ヶ月かかります。 変形性膝関節症も、初期の段階であれば、この関節鏡視下手術で済み、体への負担も非常に少なく済みます。ただし、この術式で痛みなどの症状が改善しない場合もあることもあります。 膝に違和感を感じたら放置することなく、早期に整形外科等、医療機関で医師の診断を受けることが大切になります。症状が進行して悪化すると次で紹介するような、より重い術式を選択する必要性が出てまいります。 やはり病気は早期発見が大切ということです。 2.高位脛骨骨切り術の場合:入院期間は5〜6週間 高位脛骨骨切り術とは? 高位脛骨骨切り術は、膝にかかる決まった方向への負担を減らす手術法です。膝の軟骨がすり減ってしまい、変形性膝関節症になると、O脚方向へと変形していきます。 骨切り術では脛骨を楔形に骨を切りとり、プレートで固定することで、X脚方向へと膝の角度を調整します。これによって膝の内側にかかっていた負担を外側へ移行させ、内側・外側に均等に荷重が掛かるようにするものです。 手術時間は1時間30分程度です。 関節鏡視下手術と比べて体への侵襲(負担)は高いですが、関節鏡視下手術同様に、自分の関節を残すことが特徴です。人工関節置換術のように正座ができなくなるなど、関節運動に制限がかかることはありません。 「自分の関節は残したい」と思う方は、人工関節置換術に踏み切る前段階の手術としても有効です。 高位脛骨骨切り術の術後のリハビリと退院までの経過 高位脛骨骨切り手術の当日は安静に過ごしますが、関節鏡視下手術に比べ血栓ができやすいため、術後は、フットポンプにて脚の血流を促すようにします。このフットポンプは、多くの場合、2日目には取り外し、車椅子での移動が可能になります。 また、膝の安定性を図るため装具を装着します。 フットポンプとは フットポンプは、手術後などで寝たままになる患者の静脈への血栓塞栓症を予防するために用います。足の下腿 といわれる膝と足首との間の部分を断続的に圧迫を繰り返して下肢静脈の流を手助けする医療器具です。 リハビリテーション リハビリで膝の運動を行う場合、持続的関節他動訓練器(CPM:continuous passive motion)を使い膝の屈伸を行います。 持続的関節他動訓練器(CPM:Continuous Passive Motion)とは この機械は、関節の曲げ伸ばし、屈曲・伸展といった運動を自動的に連続して行えもので、主に下肢への術後、リハビリ用いることが多い。 時間を設定して運動速度、曲げる角度を変えて行うことができる。メリットは、荷重をかけることなく関節の屈伸運動を行えることにあります。 患者さんの体重や、矯正角度により、リハビリの進行度合いには差が出るものの、1週目から少しずつ体重をかけ、3週目から両側で松葉杖をつき歩行を開始します。 ただし患側へかける負荷は体重の1/2程度です。そして、5週目頃には全体重をかけて歩く練習をします。尚、高位脛骨は術後3年を目安に固定していたプレートを取り外すため手術が必要になります。 退院の目安は、松葉杖なしで階段の歩行練習・退院後の動作練習がスムーズにできることです。退院時からデスクワークや多少の早歩き、車の運転ができるようになります。 ただ、長時間の立ち仕事は浮腫み(腫れや、むくみ)やすいので3ヶ月は避けた方が良いでしょう。杖を使わず歩けるようになるには退院後約2ヶ月はかかります。 3.人工関節置換術の場合:入院期間は約1ヶ月 人工関節置換術 変形性膝関節症の変形が進んだ場合、すり減った軟骨や骨を、チタンやセラミックなどを使った人工関節に入れ替える手術法です。術後は膝を傷める以前のような状態をほぼ取り戻すことができ、膝の痛みなく歩くことができます。 ただし、正座のように膝を深く曲げる動作ができなくなるため、手術を行うには患者様の生活習慣や活動量を考慮しなければなりません。骨切り術より入院期間が短いことから、仕事や日常生活への復帰が早く見込めることが特徴です。手術時間は2時間程度です。 人工関節置換術の術後のリハビリと退院までの経過 人工関節置換の手術直後は弾性ストッキングを着用し、浮腫(腫れや、むくみ)を予防し、その軽減に努めます。また膝関節は安静にし、足関節の運動を行います。 骨切り術同様に翌日からは車椅子での移動ができ、5日目からは歩行器を使い移動します。同時に松葉杖での歩行指導が始まり、徐々に歩けるように練習していきます。10日目には、関節の角度を90度くらいまで曲げられるよう回復を目指します。 リハビリは、退院に向けて、車椅子・歩行器・杖等を使って元の日常生活に戻れるよう訓練を続けます。退院の目安は1本杖での歩行、階段昇降、床からの立ち上がり、股関節屈曲100〜120度可能などです。 日常生活への復帰の目安は術後1ヶ月程度です。 ただし、知っておかねばならないことに、「人口関節には耐用年数があるということです。」その期間は、概ね15年程度と言われていて、すり減りや、感染、緩み次第では、再手術の可能性があるということです。 将来、耐用年数が過ぎると再度、同じ人工関節へお置換手術をしなければならない可能性があります。 4.入院不要な再生医療 変形性膝関節症に関する手術について記してまいりましたが、実は、もう一つの治療方法があります。それは、「再生医療」と言われるものです。上記で書いたような手術的アプローチとはまったく違う方法で改善を図るものです。 https://youtu.be/JwAqQziEinw?si=oZkktVjE6xYzxR6j 変形性膝関節症の再生医療について詳しくは、別途ページに記載しています。これまで「すり減った膝の軟骨を再生することは不可能」といわれてきましたが、医療技術の進歩で自己治癒力を用いて軟骨の再生を目指せる先端医療です。 そのため、変形性膝関節症であっても手術自体が不要。当然、入院も必要ありません。日帰りで行える新しい先端治療です。 まとめ・変形性膝関節症の手術、その種類と入院期間、術後のリハビリから退院までの経過 ここまで変形性膝関節症と診断され、手術を検討されている方に向けて変形性膝関節症の手術にかかる入院期間から、リハビリの内容までを紹介しました。関節鏡視下手術の入院期間は2〜3日、人工関節置換術の入院期間は約1ヶ月、高位脛骨骨切り術の入院期間は5〜6週間です。 下記は手術を行った場合の目安です。入院期間は、各個人の症状や経過によって変わります。再生医療は入院が不要です。 手術の種類 入院期間 1.関節鏡視下手術 約2〜3日 2.高位脛骨骨切り術 約5〜6週間 3.人工関節置換 約1ヶ月 4.再生医療(手術はしない) 不要 入院期間だけで比べると、関節鏡視下手術が最も短いのですが、それが良いことかというと、実は、そうでもないのです。もちろん、この術式だけで回復する例も多数ありますが、そうではないこともあります。 実は、関節鏡視下手術をしても、痛みが改善されないことがあります。その場合は、再手術が必要となり、高位脛骨骨切り術や人工関節置換術を実施しなければなりません。 手術を検討されている方は、入院期間はもちろんのこと、術後のリハビリ、退院後の再手術の可能性、ご自身の膝の痛みの程度、生活環境を考慮し、主治医としっかりと話し合いを重ねた上で、判断することが大切です。 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により入院不要、手術せずに症状を改善できます ▼以下も参考にされませんか 変形性膝関節症初期|初期~末期の痛みの段階と人工関節のメリット・デメリット、避ける方法
公開日:2024.10.07 -
- ひざ関節
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変形性膝関節症の薬物療法!薬の種類と使用上の注意、悪化を防ぐポイント 変形性膝関節症の治療で、ご自分が服用している薬について詳しくご存知ですか? 変形性膝関節症の炎症や痛みに対して行われるのが「薬物療法」です。しかし薬物療法を実施している人の中には「自分がどんな薬を服用しているのだろうか」「薬だけで治るのだろうか」という疑問を持つ方もいらっしゃるはずです。 実際、薬物療法により炎症を抑え、痛みを緩和できますが、その種類によっては胃腸障害などの副作用が出ることもあり、注意が必要なこともあります。 ご自身の薬について、理解した上で服用したいものです。そこで今回、薬物療法で主に用いられる薬の種類と副作用「変形性膝関節症の悪化を防ぐために注意すべきポイント」を解説してまいります。 変形性膝関節症の薬物療法 膝に痛みがある場合、リハビリをはじめとした運動療法に加えて、膝に負担がかからないような生活習慣に変える必要があるのですが、それらを経ても痛みを感じ、改善しない、日常生活に支障がでたり、運動療法にも取り組めなくなった場合に薬物療法がその対象になります。 変形性膝関節症の薬物療法に使われる薬は、外用薬(塗り薬、貼り薬)、内服薬(飲み薬)、座薬があり、使用の際は副作用に気をつけながら使い分けねばなりません。 変形性膝関節症の薬物療法に使用する薬(炎症を抑える、痛みを抑える) ・外用薬:塗り薬、貼り薬 ・内服薬:飲み薬 ・座薬;外用薬 ※使用には、副作用に注意を要する 基本的には、外用薬・内服薬・座薬で炎症を抑え、炎症が落ち着いたらヒアルロン酸注射により膝の潤滑を高めます。膝の痛みを抑え、関節の動きを滑らかにすることで日常生活の負担を軽減し、積極的に運動療法に取り組みます。 変形性膝関節症の炎症や痛みに対して、まず初めに使われるのが「抗炎症作用がある湿布や塗り薬」です。効果がみられなければ、鎮痛作用のあるアセトアミノフェン、次に非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDS)、(ロキソニンという名前を聞けばご理解も早いと思います。)などが使われます。 また最初から非ステロイド性抗炎症薬が使われることもありますが、副作用に胃腸障害や消化管潰瘍の危険性が高まることから、長く使い続けることは避けるべきです。 非ステロイド性抗炎症薬でも効果がみられない場合は、鎮痛効果が強い医療用麻薬のオピオイド鎮痛薬が使われます。 変形性膝関節症治療で使用することが多い薬 変形性膝関節症の治療、薬物療法に際して用いられることが多い「薬の種類」について以下に記しました。薬ごとに特徴や副作用など、気を付けたい事柄を記しました。 アセトアミノフェン 抗炎症作用はありませんが、鎮痛効果があり、妊娠中にも使われることから比較的安全性が高いことが特徴です。しかし副作用がない訳ではありません。鎮痛薬は痛みがある時だけ使いましょう。 ・副作用: 肝障害、食欲不振、胃痛、消化器症状 ・商品名: アンビバ、カロナール、ピリナジンなど 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) よく知られている「ロキソニン」などもこの種類に含まれ、変形性膝関節症に多く使われるのが、この非ステロイド性抗炎症薬です。 非ステロイド性抗炎症薬は鎮痛効果や抗炎効果がありますが、長期間使用すると胃腸障害などを引き起こすことがあるため、注意が必要です。 非ステロイド性抗炎症薬の中には胃腸障害が起こりやすいもの、起こりにくいものがあり、胃腸や粘膜を保護する薬を一緒に飲む必要があります。 ・副作用: 胃腸障害、消化管潰瘍、気管支炎、肝障害、腎障害 ・商品名: ロキソニン、ボルタレン、ナボールSR、インテバンなど COX-2(コックスツー)阻害薬 非ステロイド性消炎鎮痛薬より、副作用が起こりにくいため、長期間の使用に向いています。ただし非ステロイド性消炎鎮痛薬に比べると、鎮痛効果がやや弱いもの特徴です。 ・副作用: 胃腸障害 ・商品名: セレコックス、モービック、ハイベン、オスペラックなど オピオイド鎮痛薬 非ステロイド性消炎鎮痛薬でも効果が見られない場合に使われます。オピオイド鎮痛薬は強い鎮痛効果がある医療用麻薬です。医療用麻薬と効くと怖いとイメージされる方もいますが、医師の指示のもと、正しく使用すれば安全に大きな効果が期待できます。 ・副作用: 便秘、吐き気、めまい、眠気 ・商品名: トラムセット、トラマール、ノルスパンテープなど 外用薬・内服薬・座薬の使い方と注意点 変形性膝関節症の炎症や痛みを抑える薬には、外用薬(塗り薬や貼り薬)、内服薬(飲み薬)、座薬(直腸から薬剤を吸収)があります。まずは外用薬を使い、十分な効果がみられない時には内服薬を使い、痛みがきつい時には即効性のある座薬が使われます。 どの薬を使うかは痛みの程度や、薬の扱いやすさを考慮して選択します。 担当医の説明をよく聞き、自分自身の生活習慣なども伝えて相談しながら進めましょう。副作用については薬局にて薬剤師からの説明を聞き理解して使用しましょう。異変があればスグに担当医や薬剤師に相談すべきです。 外用薬(湿布や塗り薬) ・手軽に使える点から、痛みに対して最初に処方されることが多い。 ・皮膚から吸収された成分が効率よく膝に運ばれ、重い副作用が起こりにくい反面、作用は穏やか。 ・強い痛みには適しません。 ・皮膚のかぶれに注意して使用すること。 内服薬(飲み薬) ・外用薬と同じように手軽に行える上、効果が高いことが特徴。 ・成分によっては副作用が出やすく、胃腸薬の併用が必要なことがある。 ・医師や薬剤師の説明に留意して服用しましょう。 座薬 ・即効性があり、強い痛みに有効。 ・重い副作用が出にくい特徴があるものの、慣れないと薬剤の挿入に時間がかかる。 ・しっかり挿入しないと効果がない。 変形性膝関節症の悪化を防ぐには!薬物療法に運動療法を組み合わせる ここまで変形性膝関節症の薬物療法について紹介してきました。薬を使うことで痛みを緩和させることができます。しかし「薬だけで膝の状態は良くなっていくか?」というと、そうではありません。 変形性膝関節症の治療の基本は運動療法です。運動療法により、膝周囲に筋力を鍛え関節を安定させます。しかし膝に痛みがあると、歩行や大腿四頭筋の筋力トレーニングにも支障が出ます。 痛みをかばい、膝を動かすことができなければ、筋力や関節の可動域はさらに低下し、変形性膝関節症は悪化します。 このような悪循環を止めるために薬物療法が用いられます。薬物療法により、膝の炎症や痛みを抑えますが、併せて運動療法に取り組むことが、変形性膝関節症の進行を遅らせることができます。 まとめ・変形性膝関節症の薬物療法!薬の種類と使用上の注意、悪化を防ぐポイント 変形性膝関節症の治療に用いる「薬物療法の薬の種類と注意点、悪化を防ぐポイント」を解説しました。薬は炎症や痛みを抑えますが、副作用を考慮し、痛みのある時だけ使い、予防的に飲むことは避けましょう。 また痛みが緩和すれば安心ではなく、基本は運動療法です。膝周囲のトレーニングにより変形性膝関節症の進行を遅らせることができます。 中には膝の痛みに対して、市販薬を服用される方もいるはずです。市販薬でも病院の処方薬と比べ、有効成分の含有量は少ないですが効果はあります。 しかし変形性膝関節症は進行する可能性があることから、市販薬で痛みを凌ぐだけでなく、膝の状態をできればMRIなどを使った正確な画像検査で診断を受け、患者様にあった薬を処方してくれる病院の受診をおすすめします。 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により薬に頼らず症状を改善することができます ▼治療法について、こちらもご参照ください 変形性膝関節症の治療法(薬物療法、保存療法、手術療法、理学療法、理学療法、再生医療)について
公開日:2024.10.07 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 膝の慢性障害
高位脛骨骨切り手術のメリットとデメリットを医師が解説します 変形性膝関節症の治療方法には、大きく分けて「保存療法」と、「手術療法」の2つがあります。 保存療法にはリハビリテーション、装具療法、薬物療法などがあり、これらを色々と組み合わせることで行われます。そして、手術という選択肢は保存療法で効果が得られない場合に検討することになります。 手術療法の中でも、特に「高位脛骨骨切り術」と呼ばれる手術は、O脚変形のために内側部(内側大腿から脛骨関節)に偏った過重なストレスを、自分の骨を切って少し角度を変える処置が施されるものです。 この手技によって、膝の内側部に過度の負担となっていた外力のベクトルを比較的きれいな軟骨の存在する外側部(外側大腿から脛骨関節)に移動させることが出来ます。 一般的には、手術を受けた結果として通常では脚の形はO脚からX脚に変化します。 この手術治療では、患者さんの膝関節が温存できますので、正座が引き続き可能であり、普段の生活はもとより、スポーツや、農業などの仕事へ復帰出来る方々も多くいらっしゃいます。 一方で、ある程度の入院期間が必要で術後に骨が癒合するまでの間、痛みが多少なりとも続くことや、膝関節部周囲の機能的な回復には、リハビリをしっかりと行うことが必要となってきます。 そこで今回は、高位脛骨骨切り術が適応となる症例や高位脛骨骨切り術について予後に後悔のないように、その利点、メリットとデメリットについて説明していきましょう。 高位脛骨骨切り術が適応となる症例とは? まず過度なスポーツ活動による関節に対して負担の大きな動き、専門的に言うと膝内反モーメント(ひねり)の増大により内側骨端線が早期閉鎖して脛骨内反(O脚)が起こりやすく、普段の生理的なレベルを逸脱した脛骨内反そのものが将来の「変形性膝関節症」の発症リスクとなります。 要は、通常とは違う動き、激しい動き、加重、ひねり、衝撃などが繰り返されることで関節の負担が増えると、同時に関節症のリスクも増えるということです。 後悔先に立たず!激しい運動の前には、ストレッチや準備体操をしっかり行い、終わりには整備体操やストレッチなどを入念に行うなど体に対する十分なケアを忘れず実施しましょう。 加えて申し上げるなら、これら体操やストレッチも自己流ではなく、適切な方法をトレーナーなどから指導を受けて行うべきです。通常では、股関節から足の甲までを一直線に結ぶ線を「荷重線」といいます。 一般的に変形性膝関節症を罹患している方の多くは、この荷重線が膝の内側を通っているので、膝の内側に荷重がかかり過ぎて膝に障害が起こります。高位脛骨骨切り術では、この「荷重線」を膝の中心に近づける手術を行います。 この手術を受ける対象者とは 一般的には、高位脛骨骨切り術の適用年齢は、概ね50歳〜75歳までで、変形性膝関節症を認める症例の中でも中程度の変形を呈する方に薦められることが多いです。 若年者でも症状が強いケースであるならば高位脛骨骨切り術を行って、下肢機能軸や脛骨近位の内反角を正常化すべきであるという意見もあります。 また、人工膝関節置換術は、骨と人工の異物を接合する都合上、ゆるみなど再手術が必要になることがあり、そうなれば初回の手術よりも再手術は、手技的に難しくなることがあります。 そのため、再手術のリスクを避けるために65歳よりも若い方にはこの高位脛骨骨切り術が勧められています。 また、変形性膝関節症の症状が中程度までで、まだまだ運動や肉体を使う仕事を続けたいなどの場合を含めて年齢を問わず活動性が高い患者さんには本手術治療を受けることをお勧めします。 高位脛骨骨切り術の適用 ・適用年齢:概ね50歳〜75歳 ・変形性膝関節症の症状:中程度まで 高位脛骨骨切り術のメリットとデメリット さてここからは、「高位脛骨骨切り手術」自体の利点と欠点について紹介していきます。 メリットについて 高位脛骨骨切り術では、O脚に変形した脚を、X脚ぎみに矯正して変形性膝関節症の進行を遅らせることが出来る唯一の術式と考えられています。この手術の最大のメリットは、最終手段の人工関節を使わずに「自分の関節を残したまま」で症状を改善することが期待できる点です。 また、比較的侵襲(体への負担)が少ない手術であり、手術後の日常生活に対する制限も少なく、スポーツさえ継続できて、要否はともかく正座が可能になる症例も多く見受けられるため、変形性膝関節症において現在最も推奨される治療法であると言えるでしょう。 しかも、最近の高位脛骨骨切り術は、新しい手術方法が開発された結果、術後早期からの歩行も可能になっています。 入院期間も従来の人工膝関節置換術とほとんど変わらず、およそ4週間~6週間が平均的です。 高位脛骨骨切り術を受けた場合のリハビリは、術後1週間位から徐々に膝に体重をかけ始めて、3週間以内には全体重をかけて歩行訓練を施行します。そして、4週間~5週間程度で安定した歩行、階段の昇降、日常生活動作などをクリアすることで軽快退院の運びとなります。 デメリットについて 従来の高位脛骨骨切り術は、骨癒合までの数ヶ月間、手術した足に十分な体重をかけることが出来ず、入院が長期にわたるのが欠点でした。そのため、仕事をお持ちの方にとって復帰に時間が必要なことは大きな欠点でした。 そして、これまでにも高位脛骨骨切り術の処置に伴って腓骨短縮などの合併症や有痛性偽関節(骨がくっつかず、痛みも出る)が引き起こされることが問題としてあります。 また、高位脛骨骨切り術を受けたのちに、骨が癒合するまで多少なりとも膝部の痛みが続くと言われており、実際に術後の痛みが軽快して骨癒合が完了するまでに個人差はあるものの、およそ半年以上は時間がかかるとも伝えられています。 つまり、膝機能がある程度満足が得られるレベルまで回復するためには、気苦労の多いリハビリをコツコツ、しっかり行う必要があると言えるでしょう。 まとめ・高位脛骨骨切り術のメリットとデメリット 変形性膝関節症は慢性疾患であり、骨肉腫などのように、命に関わるといった疾患ではありません。従って、どのような治療法を選択するかは、患者さん一人ひとりが望むゴールによって変わってきます。 例えば、変形性膝関節症を抱える80代の高齢者であっても、「登山や舞踊が長年の生き甲斐なので今後もあきらめずに続けたい」などの目標がある場合には、高位脛骨骨切り術で自分の関節を温存できるようにチャレンジするケースもあります。 高位脛骨骨切り術とは、脚の形をO脚からX脚に変える手術であり、変形性膝関節症によって内側に偏っている過重ストレスを自分の骨を切って角度を変えることによって反対の外側に移動させる治療方法です。 この手術では、術後に多少疼痛は伴うデメリットが挙げられる一方で、自分の関節を温存して機能を維持することができるために術後の日常生活にほとんど制限がない所が大きなメリットと言えます。 いずれにしましても病院等の医療機関を受診され、しっかりご相談されることをおススメします。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。
公開日:2024.10.07 -
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病院やクリニックの外来で『膝の水は抜いてもクセになりませんか』と患者様からよく聞かれることがあります。 結論から言うと、水を抜いてもクセにはなりませんのでご安心ください。 ・なぜ膝に水が溜まるのか? ・初期症状はどんなものか? ・そしてどのように対処すれば治せるのか? といった知識を正しく理解すれば怖いことはありませんので、原因や症状、そして対処方法など動画を交えながら専門医が説明していきたいと思います。 膝に水が溜まる原因・メカニズム なぜ膝に水が溜まるのかその仕組みを説明していきましょう。少し専門的な話になり恐縮ですが少しだけお付き合いください。 膝の関節は関節包という組織で覆われており、その内側に滑膜が存在します。その滑膜から、「関節液(滑液)」が出てきて関節内を満たします。関節液の役割は関節の栄養と関節の潤滑の2つです。関節液にはヒアルロン酸やタンパク質など栄養分が入っています。そして、関節の栄養分となった後に、老廃物としてまた滑膜から吸収されます。 このようにして関節内には1~3cc程の関節液が常に循環して存在している状態なのです。 そしてもう一つの潤滑の役目ですが、関節包の中の関節液は、膝関節の軟骨同士がぶつからないように関節の保護や潤滑を担い、スムーズな関節の曲げ伸ばしといった動きを実現するため存在し、歩いたり、走ったり、座ったりする仕草のあらゆる場面で無くてはならない大切な存在なのです。 機械に例えれば歯車に油をさして滑りを良くし、歯車の摩耗を防ぎつつ、滑らかな動きもサポートする。そんなイメージが近いと思われます。良くできた仕組みです。 このように、正常でも膝の水は少し存在しますが、何らかの原因で滑膜が炎症を起こすとそれに反応してたくさんの関節液を放出します。その結果として膝に水溜まる仕組みとなっているのです。病名として関節水腫と言われます。 膝の水が溜まる原因・メカニズムについて下記の動画でも詳しく説明しています。 https://youtu.be/FtrRUk8RNik?si=Xu5GuHeu5S0LHtDW 滑膜に炎症が起こる3つの原因 では、なぜ滑膜に炎症が起こるのでしょうか。 原因①変形性膝関節症 40代以降の中年層や高齢者に多く、すり減った軟骨や半月板のかけらが原因で滑膜を刺激して水が溜まります。そのまま放置していると、軟骨のすり減りが進行していくのでできるだけ早く対処が必要となります。(文献1) 原因② 半月板損傷・靭帯損傷・骨折 スポーツや怪我などで、関節内の組織が損傷すると同時に滑膜が炎症をおこします。靭帯や骨、半月板に血管が通っているため、関節液に血液が混じって赤くなることが多く見られます。(文献2) 原因③感染症・偽痛風・リウマチなど 細菌やピロリン酸カルシウム、自己免疫疾患により関節液が溜まります。抜いた関節液は濁っていることが多く、さらに関節液の検査を行うことで原因が特定できます。(文献3) 膝に水が溜まったときの初期症状は?自分で治せる? では、実際の診察の流れを見ていきましょう。まず、膝に水が溜まった時にはどんな症状が出るのでしょうか。 膝に水が溜まった時の初期症状 ・腫れていて膝が痛い ・膝が曲がらない ・膝に熱を持っている ・寝返りの時痛い ・階段の上り下りが辛い などがあります。 上記のように膝に水が溜まる初期症状としては、膝が少し腫れて重たい感じから始まり、溜まる水が増えてくると、歩行や階段の上り下り、正座などが困難になってきます。 膝関節は関節包と呼ばれる袋に閉じ込められており、そこに多くの水が溜まると関節包がはち切れんばかりに張ってしまうことで痛みが出ます。一旦、水を抜くことでその張りがなくなることで痛みは激減します。要するに膝に水が溜まった時の痛みのほとんどは、関節包の突っ張りによるものとなります。その痛みは、水が溜まる原因疾患による痛みよりも痛い場合が多く見られます。 写真のように明らかに膝が腫れているのがわかります。ただし、溜まっている水が少ないと見た目ではわかりづらく、その時は膝を触って診察したり、画像検査としてエコーやMRIで判断します。経験上10cc程以下の水の量では、触診だけではわからないことがあります。 膝に溜まっているか自分で調べる方法 膝を伸ばした状態で座り、片方の手で膝のお皿の上をしっかりと掴みます。 そして、もう片方の手でお皿を上から押してみましょう。 少しぷよぷよしてお皿が浮いた感じがあれば、膝に水が溜まっている可能性があります。 膝に水が溜まったときに自分で治す方法 膝に水が溜まった時のマッサージ方法については下記の動画で説明しています。 https://youtu.be/RDCyO--FvvI あくまで、慢性期の痛みを緩和するためのもので、外傷の急性期や感染症、偽痛風などでは基本的にマッサージはしないほうがいいでしょう。マッサージにより痛みが強くなる場合は中止して医療機関と相談しましょう。 基本的には自分だけで治そうとせずに、必ず医療機関と相談しながら行いましょう。 膝に水が溜まった際は冷やしたらいい?温めたらいい? 変形性膝関節症などの慢性的な痛みの場合は温めるのが基本です。逆に、外傷後や感染、偽痛風などの急性期の痛みや膝が熱を持っている場合は冷やす方がいいでしょう。湿布に関しては冷湿布でも温湿布でもどちらでも大丈夫です。 膝に水が溜まった際にサポーターは有効? 膝のサポーターは膝の関節を安定させる効果があります。 ▶サポーターに関してはこちらの記事で詳しく説明していますので参考にしてください。 膝に溜まった水は自然になくなる場合もある 膝に水が溜まっても、自然に治癒することはよくあります。ではどれくらいで治るのでしょうか。 原因である膝の炎症が落ち着けば、滑膜から放出される関節液は減少し、余分に増えた関節液は滑膜から吸収されることで、膝の水の量が減っていきます。自然治癒する期間として1日から数週間で水は吸収されます。 ただし注意点として、膝関節に水が溜まるということは膝の屈伸がしばらくできない状態になるため、膝の関節が固まる拘縮となります。そのため、膝の水を1ヶ月以上放置することはお勧めしません。膝の水が自然に治った後でも、拘縮は残ります。対処法として膝の水が引いた後や病院やクリニックで膝の水を抜いた後にや、必ずリハビリで関節の可動域訓練をして拘縮を予防しなければいけません。 そしてもう一つ注意しなければいけないことは、膝関節が熱を持っていたり、安静にしていても痛みが強い時です。この場合は、感染や自己免疫疾患、痛風、偽痛風などが疑われるため、早めに整形外科にかかることをお勧めします。 膝に水が溜まらないようにするにはどうしたらいい?具体的な予防法 膝に水が溜まらないようにする具体的な予防方法をご紹介していきます。 筋トレやマッサージ・ストレッチ 膝を支える筋肉を鍛えることで、関節の負担を減らします。また、マッサージやストレッチで筋肉に柔軟性を持たせて血行を促進することで炎症を抑えてくれます。 ▼自宅で簡単にできる!変形性膝関節症の筋力トレーニング https://youtu.be/uYcAR-nveNg https://youtu.be/10Gq_0lhJfc ウォーキング 変形性膝関節症の場合、痛みが軽度であればある程度ウォーキングをしたほうがいいでしょう。 歩くことで、関節周りの筋力強化や軟骨の修復が期待できるからです。(文献4) サポーターやテーピング 膝の安定性を保持してくれるので、痛みが強い時や予防には効果的です。 アイシング・湿布など 外傷による炎症にはアイシングが効果的です。湿布は冷・温湿布いずれでも消炎鎮痛作用が期待できます。 漢方薬 防己黄耆湯がよく使用されますが、効果には個人差があります。 膝に水が溜まった際の病院での治療方法 このように水を抜く(写真①)ときには、普段採血やヒアルロン酸の注射やブロック注射などの注射針より太い注射針を使用します。(写真②) 膝の注射は痛いの? よく患者様には、『足の膝の水を抜くのは痛いでしょう?』と聞かれますが、針が太い分一般的には痛いものです。しかし長年の経験上、実はあまり痛くないように注射をするコツを知っているので(笑)、『思ったより、痛くなかった』と言ってくれる方が多いです。 そして、せっかく痛い思いをして針を刺していただいたので、水を抜いた後は針は刺したままで注射のシリンジを入れ替えて、ヒアルロン酸やステロイドなどの炎症止めの注入をします。 ただし注意点として、抜いた水の色(見た目)や濁りをみて感染症の疑いがある場合には、薬液は注入しません。透明の薄い黄色であれば問題ないのですが、濁りがあったり茶色や褐色のような場合は、感染や骨折などの外傷などがあるかの検査結果がわかるまでは、薬液の注入は行わないことがほとんどです。 水の量は多い時で、100ccになることもあります。 膝の水の色(見た目)と原因疾患 抜いた水の色 考えられる原因 褐色・赤色 骨折・半月板損傷・靭帯損傷などの外傷 白濁色 感染症・痛風 濃い黄色で透明 変形性膝関節症 膝の水を抜いた後の過ごし方や安静期間 変形性膝関節症 特に安静期間は必要ありません。 抜いた後でも積極的にウォーキングや筋力トレーニングなどの運動やリハビリ、マッサージが必要であり、痛みが軽度であれば仕事も可能です。 骨折や半月板損傷、靭帯損傷などの外傷 根本の外傷の安静期間に準じます。 感染症、偽痛風 感染や偽痛風の痛みや炎症が落ち着くまではあまり動かさない方が良いです。 膝の水を抜いた後の注意点 膝の水を抜いた後は、24時間はお風呂やシャワーなどは避けた方がいいでしょう。 膝の水を抜いた後は、針を刺した場所が痛む時がありますが数日で消えることが多いので心配はいらないでしょう。ただ、注射をした後に膝が熱を持ったり、腫れがひどくなったり、体温が高くなったりした場合は細菌感染の疑いがあります。 できるだけ早くかかりつけ医に診てもらうことをお勧めします。 膝の水を抜く間隔 膝の水を抜く間隔は、抜いた後に再び腫れたときに抜きます。この間隔は、症状によって様々ですが、膝の水を抜いてもすぐに繰り返し水が溜まる場合もよく見かけます。 外傷によって膝に水が溜まった場合、外傷が治ってくると同時に水も自然に吸収されるので、痛みがそれほど強くなければ、多少膝が腫れていても放置することもあります。 膝の水を抜くとクセになる? 冒頭でも少しお話しましたが、従来からよく耳にするのは、「膝の水を抜くと癖になる!だから抜かない方が良いのではないか?」という疑問点についてです。この意見は必ずしも正しくはありません。 膝に水が溜まっている原因は膝の炎症が強く関与しているため、「水を抜くから癖になる」というのではありません。 正しくは、炎症が続いているから→ 水が溜まり続けて→ 癖になっているのでは?!と感じるのです。 ✕ 水を抜くから癖になる・・・違います! ⇩ 〇 膝の炎症が続いているから、抜いても水が溜り続ける・・・正解(治療を行い症状の改善を目指す) したがって、重要なのは膝内部の炎症をしっかり抑制してコントロールすることにあります。時に水を抜かずに放置することは、滑膜部の炎症を長引かせる要因になりえます。 膝の水をどうする? ・放置しない → 抜く方が良い ・放置すると → 症状が悪化 ・放置すると → 炎症が長引く可能性 ・正解は → 水を抜きながら、根本的な症状の改善を目指す 繰り返し水が溜まる症状は、膝に溜まる関節液の中に炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)が含まれているからです。(文献5) そのため、膝の水が溜まっているときは放置せず膝内部の炎症を鎮めることを念頭に治療を行っていただくことが理にかなっています。適切に治療に繋げるためには、まずは損傷部位を正しく把握して、同部に対してしっかりと炎症を制御するアプローチを行うことが大切です。また、膝に水が溜まった際に水を抜く処置を行う理由は他にもあります。例えば、水が溜まっている原因が細菌感染の場合では、放置すれば膝関節内部でどんどんと細菌が繁殖して、益々膝部が腫脹して自覚的にも痛くなってきます。 この場合にも、水が大量に溜まった状態のままで放置しますと、膝の重苦しい感じが持続して、膝の動きがさらに悪くなり、日常生活において正座が出来ない、あるいは左右の膝の伸展度が違うなどといったことが起こり得ます。さらに、正常とは言えない関節液には様々な物質が含まれていて、関節の軟骨そのものに悪影響を及ぼすことも十分に考えられます。 そして、膝に水が溜まっている原因が「変形性膝関節症」であった場合には、そのまま放置していると、どんどん病状が進行してしまい、末期になると人工関節の手術を選択するなど選択肢が狭められてしまいます。それだけは避けたいものですね。 再生医療による治療の可能性 ただ、このような手術しかないとの診断を受けた方への朗報として近年、医学の目覚ましい発展で人工関節を避ける方法があることもご報告しておきます。これは人工関節を避けるだけではなく、手術すら不要。ケースによっては日帰りの治療も可能とされています。それが「再生医療」といわれる先端医療で、傷ついた膝の軟骨を自力で修復させることで症状の改善を目指すものです。 もしも、あなたが人工関節など、手術しかないとの診断を受けて迷われているなら、日進月歩のこのような先端医療分野を検討されても良いかもしれません。 このように治療方法に光明が見えては来ましたが、まずは放置せず、手遅れになる前に整形外科をはじめとした専門医に出向むいて、膝の状態を診てもらい、それに適した治療を受けることが重要な視点となります。 ▼よろしければこちらの動画もご覧ください。 https://youtu.be/a4VXf0Rsu70?si=0cXIJ2Ni78BoXPpk まとめ|膝に水が溜まっているなら早めに専門医に相談しよう! 記事のポイントおさらい ・膝に水溜まったら、早い目に抜きましょう ・膝の水は抜いてもクセにならない ・膝の水が溜まる原因は滑膜の炎症による ・しっかり筋力をつけて予防しましょう 一般的に、膝関節は関節包で覆われており、その内側には「滑膜」と呼ばれる組織があります。関節包の内部は滑膜から分泌される関節液で満たされていますが、その量は通常では約1~3mL程度です。 ところが、いったん滑膜部が炎症を起こすと、関節液の量は概ね20~30mLにまで増加傾向を示し、「水が膝に溜まる」とはこのような状態を指しています。 膝の痛みや、膝が腫れ、膝に違和感を感じたら悪化を防ぐためにも早期に病院等、医療機関を受診しましょう。したがって、膝に水が溜まっている際には膝関節内の骨以外の組織である軟骨、靭帯、半月板などの状態を把握しやすいMRI画像なども基準にして専門医が詳しい状態を分かり安く評価した上で、生活スタイルを考慮した形で的確な治療を提案してもらいましょう。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。 ▼ 再生医療で膝の痛みを治療する 膝の痛みは、再生医療なら入院や手術をせずに改善を目指せます ▼こちらも合わせてお読みください 参考文献 文献1^ 変形性膝関節症に対する運動療法としてのノルディックウォーキングの効果日本臨床スポーツ医学会誌 21(1): 11-16, 2013.井上 千春ら 文献2 ^ 変形性膝関節症の疫学・病態・診断Loco CURE 10(1): 14-18, 2024. 田中 栄 文献3 ^ 半月板損傷のメカニズムと予防法スポーツメディスン 15(9): 42-44, 2003. 堀居 昭 文献4 ^ 化膿性関節炎 日本医事新報 (5219): 40-41, 2024.星野 裕信 文献5 ^ 膝関節水腫と変形性膝関節症の臨床症状の関係 体力・栄養・免疫学雑誌 24(3): 178-179, 2014. 千葉 大輔ほか
公開日:2024.10.07 -
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- 変形性膝関節症
40代以降になってから現れてくる膝の痛みの原因には、どのようなものがあるのか気になる方はいませんか。 膝関節は加齢とともに衰えやすくなるため、そのままにすると痛みや骨の変形などを引き起こす原因となります。 とくに40代以降になると「変形性膝関節症」を発症しやすくなるので、その病気も疑う必要があるでしょう。 この記事では、40代以降で膝が痛くなる原因や治療法などをご紹介します。どのような対処法があるのかを把握・実践することで、膝の痛みを軽減できるきっかけになるでしょう。 40代以降で膝が痛む原因の多くは「変形性膝関節症」 変形性膝関節症とは、膝の関節内でクッションの役割をしている関節軟骨がすり減ってしまう病気です。関節軟骨がすり減ることで、骨と骨が摩擦を起こすようになり、膝関節の変形や痛みなどが現れます。 若いころはなんともなかったのに、40歳を過ぎたあたりから徐々に膝の痛みを自覚しはじめる方も増えてきています。 40代から50代は働き盛りで、人生にとっても重要な時期といえるでしょう。そんな40代からはじまる膝の痛みの多くが、変形性膝関節症とされています。 ある調査によると、膝に痛みを感じはじめた年齢でもっとも多いのは50代(全体の約29%)であり、次いで40代(全体の25%を占める)といわれています。 変形性膝関節症の原因 変形性膝関節症の原因の代表例は、加齢による関節軟骨の衰えです。 加齢とともに関節軟骨の弾力性が低下すると、クッションとしての役割がうまく果たせなくなります。このことから、変形性膝関節症は加齢にともなって発症しやすくなります。 そのほかにも、以下のような要素も変形性膝関節症の発症原因です。 ・肥満 ・遺伝 ・膝の使いすぎ ・外傷による膝の損傷 変形性膝関節症の原因や初期症状について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。 変形性膝関節症の症状 変形性膝関節症のおもな症状は、膝の痛みです。発症初期の段階では、膝のこわばりや違和感などからはじまり、症状が進行するにつれて徐々に痛みが現れます。 とくに、以下のような動作時に痛みが生じる傾向にあります。 ・歩く ・座る ・かがむ ・立ち上がる ・階段の昇り降りをする ・膝を曲げ伸ばしする 痛みだけでなく、炎症によって膝周囲が腫れることもあるでしょう。また、変形性膝関節症の症状は膝関節に起こりますが、膝の下が痛むケースもあります。 【40代以降】膝が痛む原因の「変形性膝関節症」の症状チェック 40代以降で膝が痛む場合、変形性膝関節症を疑う必要があります。 しかし、変形性膝関節症の有無を判断するには、どのようなポイントに注意すべきなのでしょうか。ここでは、おさえておくべき症状のチェックポイントについて解説します。 膝の痛みの症状チェック 膝の健康を確認するためには、以下の症状をチェックしてみましょう。 これらのチェック項目が多いほど、変形性膝関節症の可能性が高くなります。 膝関節は、普通の道を歩くだけでも体重のおよそ3倍、立つ・しゃがむなどの動作では約8倍の負担がかかるといわれています。 私たちは、普段の生活で知らないうちに膝を酷使しがちです。さらに加齢や体重の増加にともなって膝への負担が高まり、やがて変形性膝関節症につながります。 変形性膝関節症を予防するには体重管理によって肥満を避けつつ、運動などで筋肉を維持して膝への負担軽減が重要です。 膝が痛む場所は内側か外側か 変形性膝関節症の症状が現れる場所は大きく二つに分けられ、それぞれ特徴が異なります。 一つは「膝関節の外側がすり減る外側型」、二つ目が「膝の内側の関節がすり減ってしまう内側型」です。 たとえば、外側型の場合は怪我や病気などによる二次性の原因から発症することがよくあります。 また、内側型では、以下のような一次性の原因が中心です。 ・加齢 ・肥満 ・O脚 膝関節にかかる体重の負荷度合いは、内側が7割、外側が3割程度といわれています。 変形性膝関節症の症状について詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。 【40代以降向け】膝痛の治し方 ここでは、40代以降の中年期に注意すべき膝の痛み、とくに変形性膝関節症の治療方法について紹介します。 膝の負担を減らす 膝の負担を減らすための予防法としては、以下のとおりです。 ・体重管理に努める(適正体重の維持) ・O脚の治療 ・正しい姿勢をキープすることを意識する ・正しい靴を選ぶ ・正しい歩き方を身に付ける このような方法で膝の負担を軽減し、変形性膝関節症の予防に努めましょう。 ストレッチや運動をする どのようなケースでもおすすめのリハビリは、「膝の曲げ伸ばし」や「軽めのストレッチ」です。ただし、この膝の曲げ伸ばしは、筋力トレーニングではありません。 膝の痛みに対して膝まわりの筋力強化がおすすめと聞くと、早く治したい気持ちからハードなトレーニングをしがちです。 しかし、膝に過度な負担をかけると、余計に症状が悪化する原因となります。そのため、筋トレではなく膝のストレッチや、ゆっくりとした曲げ伸ばし運動などのエクササイズを継続的に行ってみましょう。 変形性膝関節症の治療ガイドラインにもとづいた運動を詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。 手術を必要としない再生医療で治療する 近年では、ヒトの皮下組織に存在する「脂肪組織由来幹細胞」を用いた再生医療によって、膝の痛みが改善する可能性が期待されています。日本でも変形性膝関節症に対して、幹細胞による再生医療が本格的に開始されています。 変形性膝関節症は退行性疾患であり、鎮痛剤や運動をはじめとした保存療法では完全に痛みをおさえることは難しいでしょう。そのため症状が進行した場合、根本的な治療である人工関節置換術や骨切り術などの手術を選択するしかありませんでした。 しかし、脂肪組織由来の幹細胞を用いた再生医療が発展したことにより、膝軟骨の再生が期待できるようになりました。 再生医療によって膝周囲の疼痛が軽減した中で適切な理学療法を行えば、変形性膝関節症における症状の改善につながるのです。 まとめ|40代以降の膝の痛みは放置せずに医師に相談を! 膝の痛みの原因として、仕事や日常動作による膝の酷使、そして加齢が考えられます。とくに40代以降に起こりがちな変形性膝関節症には十分に注意する必要があります。 擦り減った関節軟骨は再生医療を利用する以外、元には戻りませんが、症状の進行を遅らせることは十分に可能です。 また、膝が痛いからといって安静にしすぎるのも良くないことです。膝関節は動かさなくなれば、徐々に衰えて機能が低下してしまいます。 機能低下を予防するには、膝への負担をかけないようにしつつ、体重の管理やストレッチなどのエクササイズが有効です。それでも進行が進む場合は、手術または再生医療などに頼る方法があります。 中年期以降に少しでも膝の部分に違和感や痛みを感じた際は、症状がひどくなる前に、早めに整形外科を受診されることをおすすめします。
公開日:2024.11.06 -
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「グルコサミンとコンドロイチンの違いは?」 「グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントに副作用はある?」 グルコサミンやコンドロイチンは、体のあらゆる部分に存在しており、細胞同士をつなぎとめたり、水分を保持したりする性質をもっています。 ただ、グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントによる摂取は、研究結果によると、残念ながら痛みが軽減したエビデンスは少ないのが実情です。 今回はグルコサミンとコンドロイチンの違いを始め、サプリメントの摂取による副作用などを解説します。 思い込みによって効果を感じるプラセボ効果についても解説するので、これからサプリメントの摂取を検討されている方は参考にしてみてください。 グルコサミンとコンドロイチンの違いとは? グルコサミンは、アミノ糖の一種で軟骨を始め、爪や皮膚などに分布しています。 一方、コンドロイチンは、ムコ多糖と呼ばれており、グルコサミンなどのアミノ糖が連なってできた多糖体です。 どちらも体内で自然に生成される成分、関節を構成する成分として有名です。 グルコサミンやコンドロイチンは、体のあらゆる部分に存在しており、細胞同士をつなぎとめたり、水分を保持したりする性質をもっています。 関節内では、コンドロイチンはプロテオグリカンと呼ばれ、軟骨の構成成分としてクッションのような役割を果たし、骨と骨が接触しないよう保護してくれています。 膝・腰・肩などの関節が痛む原因 膝や腰、肩の痛みは多くの場合、加齢によるものが原因です。残念なことに体の機能は、年齢を重ねるにつれて徐々に衰えます。 グルコサミンやコンドロイチンといった体内で生成される成分も、加齢で生産率は減少していき、関節内の柔軟性や弾力性がしだいに失われます。 関節を構成する成分が減ってしまうと脆くなり、軟骨がすり減って骨がぶつかり合い、周辺の神経に伝わって痛みが出てくるのです。 たとえば、重労働や激しい運動など、膝や腰、肩を使いすぎる行動を継続すると痛みの原因になります。 すでに症状があり、膝などの関節痛が治らない方は、根本的な治療を行うほうが良いケースもあります。 当院「リペアセルクリニック」では、膝の痛みに関する再生医療の治療実績もございますので、まずはお気軽にメールや電話にてお問い合わせください。 グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントは関節痛に効果がない 軟骨に豊富に含まれているグルコサミンやコンドロイチンは、サプリメントから補給する方法もありますが、実は関節痛には効果がないのがわかっています。 関節の痛みに効果がない理由として、口からの摂取による影響が考えられるでしょう。 消化器官を通過すると、グルコサミンやコンドロイチンの構成成分であるアミノ酸や糖質は、胃液などにより消化および分解されてしまいます。 そのまま体に吸収されるため、軟骨まで到達するとは考えにくいのです。また、軟骨には血管がほとんどなく、栄養として成分が直接届きにくいとされています。 一般的にイメージされるサプリメントの効果は、軟骨減少の改善を始め、膝や腰、肩の痛みにおける症状改善などがあげられます。 ただ、研究結果をみると、グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントがもたらす効能は、科学的な根拠に乏しいのが実情です。 サプリメントの効果に関する研究論文【痛みが軽減したエビデンスは少ない】 米国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)が出資した主要な研究など、一部の研究によると、グルコサミンのサプリメントが痛みを軽減させたエビデンスは、ほとんどあるいはまったくありませんでした。 一部の研究発表では、コンドロイチンやグルコサミンなどの成分をサプリメントとして服用すると、膝や腰、肩の痛みを軽減する可能性があると示唆しています。 ただし、実際のところは「可能性レベル」であって、ほとんどの研究において「劇的な改善をもたらしたといえるほどの効果はない」と報告されています。 実際に大規模な研究結果でも、グルコサミンやコンドロイチンといった成分が関節の痛みに効果があるというエビデンスを示していません。 つまり、グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントが、痛みを軽減するのかは十分な証拠がない状況といえます。 関節痛にサプリメントが効くのは思い込み?プラセボ(プラシーボ)効果とは プラセボ(プラシーボ)効果とは、本来は薬としての効能がまったくない物質を摂取しているのにもかかわらず、効能が得られたと感じることです。 膝や関節に関わるグルコサミンやコンドロイチン、プロテオグリカン、ヒアルロン酸などのサプリメントも、同様に思い込みで効果を実感している可能性もあります。 実際に摂取された方のなかには「痛みが軽くなった」「痛みが半減した」などの意見が上がっている製品もあるようです。 実際に利用者が、どの製品のサプリメントに効果があると感じたのかは正確にはわかりません。 ただ、サプリメントの摂取で、膝や関節への効果を感じている理由としては、プラセボ効果が関わっているのではないかと考えられています。 グルコサミンとコンドロイチンの服用における実験結果 アメリカの臨床研究では、関節痛などの問題を抱えている大勢の方に集まってもらい、2つのグループに分けてモニタリングを行いました。 片方のグループには、グルコサミンやコンドロイチンの「本物のサプリメント」を与えて、もう片方のグループには、まったく何の効果もない「偽のサプリメント」を与えました。 実際にそれぞれのグループに一定の期間服用させたところ、グルコサミンとコンドロイチンの成分が入っているかどうかにかかわらず、以下のような改善が見られたのです。 本物のサプリメントを与えたグループ ・症状の改善が見られた層がいた 偽のサプリメントを与えたグループ ・「痛みが緩和した」「痛みが改善した」 など症状の改善が見られた層がいた 上記はプラセボ効果によるもので、一種の「思い込みによる心理的な働き」と考えられています。 「グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントは、摂取すると膝の痛みがとれる」といった情報から、思い込みやイメージなどにより、効いたように感じてしまうのです。 しかし、思い込みだとしても、実際に症状が良くなったと感じるなら、本人にとっては「痛みを改善する目的が達成できた」といった見方もできるかもしれません。 ただ、残念ながら結果が得られなければ、この記事を思い起こしていただければと思います。 グルコサミンとコンドロイチンの副作用 厚生労働省eJIMによると、グルコサミンとコンドロイチンのどちらも、3年間継続して摂取した場合、重篤な副作用は見られない結果でした。(文献1) ただ、本人の体における状態などを始め、服用している薬との飲み合わせによっては、何かしらの副作用が出る可能性もゼロではありません。 サプリメントの摂取を行うときは、必ず医療機関で医師や薬剤師などに問題がないかを確認してみてください。 まとめ|グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントが関節痛に効く可能性は低い グルコサミンやコンドロイチンは、体の軟骨成分に豊富に含まれている物質です。 医学的にはサプリメントで成分を補ったとしても、膝や肩などの関節に届く可能性は低く、痛みに効くとは言い切れないのが現状です。 ただ、今後の臨床研究により、なんらかの効能が見つかる可能性もあるかもしれません。 現在膝や肩などの関節痛に悩まされているなら、サプリメントに頼りすぎず、ぜひ整形外科を始めとした医療機関の受診をおすすめします。 痛みには思わぬ病気が隠れている場合もあるため、早期発見と早期治療が何よりの対処法です。 体の痛みや違和感といった症状を放置せず、しっかりとした診断に基づく治療を受けてみてください。 また、膝まわりの痛みに関しては、幹細胞を使った再生医療による治療方法もございます。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による関節症などの治療実績もございますので、関節に関わる症状がある方は、ぜひメールや電話からお悩みをご相談ください。 グルコサミンとコンドロイチンの違いに関するQ&A グルコサミンとコンドロイチンの違いに関する質問と答えをまとめています。 Q.軟骨成分のプロテオグリカンは関節痛に効果があるの? A.食事やサプリメントによる効果は期待できないと考えられています。 ただ、運動によって血流が良くなると、細胞に栄養などが届きやすくなり、プロテオグリカンの増加が促進されるのがわかっています。 プロテオグリカンと関節痛に関する詳細については、以下の記事を参考にしてみてください。 Q.コラーゲンのサプリメント・ドリンクは関節の違和感などに効果があるの? A.「低分子コラーゲン」「コラーゲンペプチド」と表記があるサプリメントやドリンクは、効果が期待できるかもしれません。 低分子化したものはコラーゲンペプチドとも呼ばれており、粒子が細かく腸壁で吸収されてから血液を通り、皮膚や骨、関節などの全身に届きます。 コラーゲンのサプリメントと関節痛との関わりについては、以下の記事も参考になります。 Q.グルコサミンやコンドロイチンを含む食べ物は? A.以下の食べ物に含まれています。 ・グルコサミン:カニやエビなど(甲殻類の殻) ・コンドロイチン:牛や豚などの軟骨、干しえび、きのこ類、山芋 など 栄養素は相互作用で働くので、偏らずにさまざまな食べ物をバランス良く摂取してみてください。 参考文献 文献1 厚生労働省eJIM|海外の情報 グルコサミンとコンドロイチン
公開日:2024.11.06 -
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変形性膝関節症の画像診断と進行度合の目安、ステージ分類の仕方、自覚症状の見方 変形性膝関節症と診断されてから「どれくらい進行しているのだろう?」ご心配や、お悩みは尽きないものです。もしかして「悪くなっているのか?、いや良くなっているかも」「平行線なのか?」自分の症状が今どの程度なのか。 実は、そんな症状の進行度合を指標とした指標があります。それが「ステージ分類」というものと「自覚症状からの分類」というものがあります。 変形性膝関節症は、膝に痛みや変形をもたらし、日常生活に多大なる影響を及ぼします。進行すると手術の適応となるのですが、その進行度合いは画像診断や、患者様の自覚症状から見極められます。 そこで今回は、症状の進行を現す変形性膝関節症のステージ分類と、自覚症状による分類についてご紹介しましょう。 変形性膝関節症の「ステージ分類」の仕方 変形性膝関節症は、X線検査(x-ray)にて診断されます。撮影には寝転んだ状態で正面・側面から撮影する方法(非荷重位)と、立って撮影する方法(荷重位)があります。寝転んだ状態では、関節の隙間が広がり、正確に隙間を見ることができないため、立位で撮影することが大事です。 膝の診断レントゲン撮影 ・寝て撮影:否荷重位 ・立って撮影:荷重位(正確な診断にはこちらを選択する) X線により白く映し出された大腿骨と脛骨の末端に注視し、膝の状態を確認します。特に大腿骨と脛骨の隙間・O脚やX脚・骨棘(異常に突出した骨)が形成されているかどうかです。これらを元に、Kellgren-Lawrence(ケルグレンローレンス)分類のグレード0〜4のいずれかに分けて変形性膝関節症の進行度合いを表示します。数字が大きくなるほど進行が進んでいる状態を表示します。 Kellgren-Lawrence (ステージ分類) グレード0 ・大腿骨と脛骨の関節の隙間が十分にある正常な状態です。 グレード1 ・骨棘のほか、関節液が骨に侵入 ・溶解され骨に穴が空く骨のう胞、度重なる骨への負担から骨が異常に固くなる骨の硬化がみられる。 グレード2 ・関節の隙間が狭くなりますが、正常の2分の1以上の隙間が残っている。 グレード3 ・関節の隙間がさらに狭くなり、正常の2分の1以下になる。 グレード4 ・関節の隙間が消え、大腿骨が内側に傾くなど大腿骨と脛骨のズレが見られます。 ・また明らかな骨棘の形成が見られる。 こられ「X線検査」は、骨の状態や隙間を確認することには長けていますが、靭帯や軟骨などの軟部組織はハッキリと映し出されません。靭帯や軟骨を確認するには、明暗がハッキリわかるMRI(Magnetic Resonance Imaging)が使われます。 このように変形性膝関節症はX線にて診断され、画像を元に分類分けされます。 次に自覚症状などから分けられる4つの分類を紹介します。 変形性膝関節症の進行に沿った「自覚症状による分類」の見方 変形性膝関節症の自覚症状は「前期」「初期」「中期」「末期」と進行していきます。 「前期」の自覚症状 ・痛みは感じず、健康な状態です。軟骨変性といい関節軟骨に劣化や傷みが起こることがありますが外部から確認はできない。 ・ここから長い年月をかけて関節軟骨の弾力が少しずつ衰え、病気は進行する。 「初期」の自覚症状 ・この頃から軟骨が擦り減り始める。 ・X線では膝関節に変形はほとんどない。 ・主な症状は、膝の「動かしにくさ、こわばり、違和感」がある。 ・軟骨変性が進むと、関節軟骨のクッション機能が失われていき、一箇所に負担がかかることで骨硬化が見られる。 ・滑膜が炎症を起こし、激しい痛みを感じることがあるのも初期の特徴。 「中期」の自覚症状 いよいよ膝関節の変形が始まるのが中期。 ・初期の炎症が落ち着き、痛みは軽減される。 ・しかし痛みは慢性化し、日常生活動作に影響が出始める。 ・特に階段の昇降や、正座や立ち上がりなど、膝の曲げ伸ばしに関する動作に支障が出る。 ・動くたびに痛みを感じるので、痛みを庇うことで膝周囲の筋肉や靭帯を動かす機会が減る。 ・膝関節の動きが固くなり、制限がかかる状態を関節拘縮と言う。 「末期」の自覚症状 ・変形はさらに進行し、軟骨がほとんど擦り切れた状態。 ・大腿骨と脛骨が直接ぶつかることから、立つ・座る・歩くといった生活の基本の動作がまともにできなくなる ・膝が動かなくなる。 ・基本的にはじっとしていても痛みを感じ、杖や手すりなど、何かを頼りにしないと歩くのも難しくなる。 ここまで単純X線写真で判断するグレードと、自覚症状などから判断する「前期」「初期」「中期」「末期」の4つの分類を紹介しました。 しかし前項で紹介したX線検査でのKellgren-Lawrence分類が進行していたとしても、自覚症状が一致するとは限りません。 自覚症状があまり強くない場合や、その逆の場合もあります。 まとめ・変形性膝関節症の画像診断と進行度合の目安、ステージ分類の仕方、自覚症状の見方 いかがでしたでしょうか? 変形性膝関節症の画像診断と自覚症状における分類について、その見方や仕方をご紹介しました。両者の進行度合いが一致するとは限らないことから、膝に痛みがないからと安心してはいけません。 膝に違和感を覚えた時点で早期受診・発見することが、変形性膝関節症の治療の幅を広げ、進行を遅らせることができます。 また変形性膝関節症の基本的な治療は「運動療法」になります。膝周囲の筋肉を鍛え、膝への負担を軽減させることで、進行を遅らせることができるからです。 たとえ手術の適応となった場合でも、術後も運動療法を継続することが大事です。運動療法により膝の可動域を維持することで、その先の人生をいかに支障なく過ごせるかに関わってきます。 ▼ 最新の再生医療で変形性膝関節症を治療する方法をご存知ですか? 変形性膝関節症は「再生医療なら手術をせずに改善できます」早期はもちろん、末期でもご相談下さい! ▼以下もご参照ください 変形性膝関節症の最新治療|ヒアルロン酸ではできない軟骨の再生を期待できる治療法とは
公開日:2024.10.07 -
- 変形性膝関節症
- ひざ関節
変形性膝関節症の痛みの段階と人工関節のメリット・デメリット、避けるために 変形性膝関節症とは、骨の先端にある軟骨がすり減ったり骨が変形し、痛みや腫れを伴う状態をいいます。残念ながら一度すり減った軟骨に自力で復活するなどの改善を期待することは通常できません。 軟骨のすり減りが進行すると骨の周りを覆っている骨膜が露出し、骨膜同士が当たるようになり、そのため痛みが伴うようになってきます。さらに、そこに変形した膝の骨が骨同士に負担をかけてしまうことになり、痛みが倍増することになります。このように痛みを伴うのは、骨膜同士がぶつかり合ってしまうための痛みです。 膝には関節包と呼ばれる袋があり、袋の中には滑液と呼ばれる潤滑液で満たされています。古くなった滑液は、骨の先端から吸収され新しい滑液が流され、その流れが繰り返されます。しかし、骨同士のぶつかりが頻発すると炎症が起きます。 炎症が起きると、滑液が骨の先に吸収されずつねに膝の袋の中に滑液が貯まります。これが「水がたまる」と言われる現象で膝が変形した人や膝に痛みを伴う人に見られる症状の一つです。 膝の痛みを抑えるために、医者が診察時に患者さんによく言う言葉に「膝の痛みを取るためには筋肉を鍛えなさい」という言葉があります。一度は耳にされたことがあるかもしれません!筋肉を鍛える理由は、膝の周りにはいくつもの筋肉が膝の骨同士がぶつからないように支えており、年を重ねるにつれて筋肉は衰えます。 衰えるということは、膝を支えている部分が弱くなり、膝の骨同士がぶつかりやすくなります。お互いにぶつかりがないようにするために、筋力をつけろと言うわけです。 変形性膝関節症|初期・中期・末期の症状 変形性膝関節症は時間をかけて変形し、痛みの度合いも変化していきます。変形による痛みがどのように変わるのかを以下の3つに分けてご説明します。 1)初期症状 2)中期症状 3)末期症状 ※ご注意 変形による痛みではなく、違う膝の病気という可能性もあります。自己判断ではなく、病院で診察を受けていただくなど正確な情報をもとにして、お膝の具合と照らし合わせて確認されることをお勧めします。 1)初期症状 朝起きて動き始めに、膝がこわばる(曲げ伸ばししづらい)感覚があり、鈍い痛みが伴います。しばらく動かしたり歩いていると、こわばりもとれいつもと変わらない膝の曲げ伸ばしができるようになり、気にならなくなる方が多いようです。 最初の頃だと、膝の痛みが直ぐに消えるため、気になる方が少ないのが現状です。このような症状が出始めたときは、膝の筋肉が弱くなり、膝の骨同士が少しずつ当たり始めている状態です。 2)中期症状 中期になると、しばらく動かしていたら消えた痛みが中々消えず、正座やしゃがむという動作が辛くなります。他にも階段の上り下りが痛みを伴います。 この場合だと、膝の炎症が起き始め、膝も腫れて熱感も生じます。関節包(関節の袋)の中に滑液が貯まりはじめ、膝の変形も少しずつ始まります。 また軟骨がすり減っているため、関節の曲げ伸ばしのときに軋む音がします。 3)末期症状 関節軟骨がほとんど無くなり、骨同士がぶつかるようになります。炎症も常に続いているので、骨の変形も著しくなります。初期・中期で見られた症状全てが悪くなった状態で、「しゃがむ」「正座」「階段の上り下り」が困難になります。 日常の歩行も難しく、常に痛みを伴う状態です。痛みを常に伴うため、体だけでなく心の負担も大きくなり、精神的に追いやられる方が多いようです。 このように段階を経て膝の変形に伴い痛みのレベルも変化していきます。少しでも痛みや違和感を感じたときには、最寄りの整形外科を受診されることを強くおすすめします。 人工関節|メリットとデメリット 症状が末期になり、膝の変形がひどくなると、医者から「人工関節にしては?」と手術を勧められた場合、人工関節にはメリットとデメリットがあることを知ってご判断されることをお勧めします。 メリットは、歩行時の痛みが和らぎ、歩くことが楽になります。膝が痛むため、歩く機会が減ったという方にとっては何よりのメリットと言えるでしょう。 しかし、手術には感染症や深部静脈血栓・塞栓症などの合併症を引き起こす可能性があります。 また人工関節には寿命があり、それは10~15年と言われていることです。つまり、年齢によっては再び入れ替えるための手術が必要となる可能性があります。 こ例外、膝の痛みは取れても、正座や運動制限といった日常動作に対する制限も加わることもデメリットと言えるでしょう。 膝の人工関節手術|メリットとデメリット メリット デメリット ・痛みの原因を改善できる ・痛みが和らぐ ・歩行の改善 ・入院に3~6週間を要する ・手術後はリハビリが必須 ・日常生活で動きに制限 ・手術後、10~15年で交換が必要(再手術) ・感染症、合併症を引き起こす可能性がある ・人工物に置換える心理的な抵抗感 膝の人工関節(手術)を避ける最新医療(再生医療)について 手術を避けたい、踏み切れないなら「再生医療(幹細胞治療)」という選択肢もあります https://youtu.be/ek8aeRHpKiA?si=R7VdYuGlwZD5HoLU 幹細胞による治療法とは、「幹細胞」と呼ばれる「自己複製能」と様々な細胞に「分化する能力(多分化能)」を持つ特殊な細胞を膝に注射をします。すり減った軟骨が幹細胞により再生し、膝の痛みが和らぎます。 状態によっては、手術をすることなく、これまでのように日常生活の動きに制限がない快適な生活を手にすることが可能となります。幹細胞を用いた治療は「再生医療」と呼ばれ、体に負担をかけない方にとって画期的な治療方法として注目を浴びています。 当院は厚生労働省から認められた再生医療の専門院です。再生医療による膝の治療について詳しいことはお気軽にお問い合わせください。 まとめ・変形性膝関節症の痛みの段階と人工関節のメリット・デメリット、避けるために 変形性膝関節症は、骨や軟骨の変形によって引き起こされる痛みを伴う進行性の疾患です。本稿では、初期から末期までの症状の変化や、人工関節手術のメリットとデメリット、さらには再生医療の選択肢について解説しました。 初期症状では、こわばりや軋みが感じられ、中期になると痛みが増し、末期には日常生活に支障をきたすまで進行します。人工関節手術は痛みを和らげる一方で、入院やリハビリが必要であり、人工物であるだけに寿命があることも理解しなければなりません。 一方で、新しい治療法として注目されている再生医療という治療法もあります。これはご自身の幹細胞を用いて自己の軟骨を再生させるこれまでに無い治療法です。手術を回避しつつ、痛みの緩和を図るもので治療の選択肢を与えてくれるものです。 いずれにしても治療は、患者様自身の状態や希望に応じて、適切な治療法を選択することが重要です。 医師との相談を通じて、最良の治療プランを見つけましょう。 ▼ 再生医療は、人工関節を避けて変形性膝関節症を治療できる方法です 変形性膝関節症は、再生医療にで人工関節の手術をせずに改善することが可能です ▼こちらもご参考にされませんか 変形性膝関節症は膝痛の9割以上にその可能性!急増する原因と予防のヒント
公開日:2024.10.07 -
- 変形性膝関節症
- ひざ関節
変形性膝関節症の手術と保険費用について 変形性膝関節症で手術を薦められたけど、「膝の手術ってどれくらいの費用がかかるのだろうか?」「保険は適用されるのか?」そんなお悩みにお答えします。 変形性膝関節症は、膝の変形や痛みを伴う疾患で、進行すると手術が適応されることがほとんどです。そんな変形性膝関節症の手術には、「関節鏡視下手術」、」「高位脛骨骨切り術」、「人工関節置換術」の3つの手術方法があります。 それぞれの手術にかかる費用は、手術に用いる材料や技術料、入院の有無などにより決められ、健康保険の適応や軽減制度の利用で最終的な自己負担額が決定します。 変形性膝関節症の手術 ・関節鏡視下手術 ・高位脛骨骨切り術 ・人工関節置換術 変形性膝関節症の手術の内容と費用 変形性膝関節症の手術にかかる費用は、少額順に「関節鏡視下手術」→「高位脛骨骨切り術」→「人工関節置換術」となり人工関節に関する費用が一番高額になります。 手術を含めた治療費用の概算は、保険診療にかかった費用(保険組合に加入されている方は、1〜3割負担)+ 保険適応外診療(ベッド代や食事代)にかかった費用の合計です。また保険内診療が定められた金額を超える場合には、「高額療養費制度」を利用して費用の軽減ができます。 まずはそれぞれの手術内容、高額療養費制度が適応される前の負担金を紹介します。 関節鏡視下手術 関節内に内視鏡を入れ、画面を見ながら傷んだ軟骨(関節軟骨や半月板)・骨棘・増殖した滑膜を取り除く手術です。体への侵襲(影響)は少なく、手術にかかる時間や回復期間も短い一方で、効果の持続が短く、痛みが再発する可能性がある手術法です。 ・関節鏡視下手術にかかる費用は約25万円 (3割負担の方で約7.5万円、1割負担で約2.5万円) ここに差額のベッド代や食事代が入った金額が自己負担額になります。 高位脛骨骨切り術 脛骨の一部を切り取ることで、O脚のような膝の変形や、荷重の偏りを矯正する手術です。O脚になると膝の内側に荷重が集中することから、骨切りにより形を整え、変形を改善させることで、膝内側への負荷を軽減させます。 ・高位脛骨骨切り術にかかる費用は約146万円 (3割負担の方で約43.8万円、1割負担で約14.6万円) ここに差額のベッド代や食事代が入った金額が自己負担額になります。 人工関節置換術 膝の関節全体を人工関節に置き換える手術です。関節全体を取り換える人工関節全置換術と、傷んだ一部のみを入れ換える単顆置換術がありますが、適応されるほとんどが全置換術です。 関節を人工関節に入れ換えることで、痛みの改善が期待できます。ただし正座ができなくなるなど関節可動域は低下します。また体への侵襲が他の手術と比べて大きく、稀に重篤な合併症を引き起こすことがあります。 ・人工関節置換術にかかる費用は約186万円 (3割負担の方で約55万円、1割負担で約18.6万円) ここに差額のベッド代や食事代が入った金額が自己負担額になります。 手術内容 主代金例 費用 その他 関節鏡視下手術 250,000円 3割負担:約75,000円 1割負担;約25,000円 + 差額のベッド代 + 食事代 高位脛骨骨切り術 1,460,000円 3割負担:約438,000円 1割負担;約146,000円 人工関節置換術 1,860,000円 3割負担:約550,000円 1割負担;約1,860,000円 ▼「手術をすれば痛みは消えるの?」 ・変形性膝関節症の手術で痛みは消えるのか? ・高齢者が変形性膝関節症の手術を受けるリスク 自己負担を減額できる高額療養費制度をご存じですか? 次に高額療養費制度について紹介します。 膝の手術にかかる費用は、健康保険の有無や、その負担割合により決められますが、保険内診療の自己負担額が、定められた金額を上回る場合には、高額療養費制度が適応されます。 高額療養費制度とは、一ヶ月にかかる金額が高額になった場合、所得や年齢によって定められた金額(自己負担限度額)を超えた分だけ戻ってくる制度です。ただし、入院の際のベッド代や食事代などは保険外となり本制度の対象にはなりません。 高額療養費制度が適応される健康保険内診療 ・技術代 ・金属などの材料費 ・輸血料 ・麻酔料 ・検査料 ・画像診断料 ・注射料 ・再診療 ・入院料 ・リハビリ料などです。 高額療養費制度が適応されない保険外診療費 ・ベッド代 ・食事代など ただし、高額療養費制度を利用した場合、払い戻されるまで一時的に高額の支払いが生じる場合があります。 しかし70歳未満または、70歳以上の非課税世帯の方は医療機関の窓口に限度額適用認定証を提示することで、払い戻しではなく、支払い上限額があらかじめ「自己負担限度額」に抑えることができます。 限度額適用認定証取得方法は、市町村役場、区役所、全国健康保険協会、 健康保険組合にて、申請の手続きを行い取得できます。詳しくはお住まいの市町村役場などにお問い合わせください。 中には限度額適用認定証を必要としない場合もあります。70歳以上75歳未満の非課税世帯ではない方は、高齢受給者証を窓口に提示し、75歳以上で非課税世帯ではない方は、後期高齢者医療被保険者証を窓口提示することで窓口での支払いを自己負担限度額にできます。 ※平成30年8月から70歳以上の方の上限額に変更がありました。 これまで現役並みとされる課税所得145万円以上の方でも限度額適用認定証を必要としませんでしたが、新たに課税所得145万円〜689万円の方は、I〜Ⅲの区分に従って上限額が変更され、限度額適用認定証も必要になりました ▼詳しくはこちらをご覧ください。 厚生労働省HP 高額医療費制度の見直しについて https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000209857.pdf まとめ・変形性膝関節症の手術と保険費用について ここまで変形性膝関節症の手術にかかる費用の一例と、実際に手術を受ける場合の負担額の例をご紹介しました。 手術費用だけでみると、高額な費用がかかりますが、保険を適応し、高額療養費制度を利用することで最終的な自己負担額が決定します。 また事前に限度額適用認定証(必要に応じて高齢受給者証や後期高齢者医療被保険者証)を窓口に提示することで、支払い上限額をあらかじめ自己負担限度額にすることもできます。 手術というとこれら以外にも何かと費用がかかるもの、病院によっては別途、費用が必要なものもあります。入院前には、治療はもちろん、費用についてもよくご相談されるようにお勧めいたします。 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する方法をご存知ですか 変形性膝関節症の再生医療による治療費は、状態により変動します ▼以下のページもご参考にしていただけます 変形性膝関節症、最新の治療法!再生医療の手術をしない幹細胞治療という可能性
公開日:2024.10.07 -
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「変形性膝関節症でしてはいけないことは?」 「変形性膝関節症のときに仕事の動作で注意したいことは?」 変形性膝関節症とは、膝の軟骨(半月板・関節軟骨)がすり減るのを原因として、膝に痛みや変形をもたらす病気です。 変形性膝関節症の悪化を防ぐには、膝への負担をかけないように過ごす必要があります。 膝は足関節と股関節の間に位置する関節で、立ち座りの動作を始め、歩くといった日常生活の動作に重要な関節のため、大きな負担がかかりがちです。 たとえば、歩行では体重の2~3倍、走ると5倍もの負担がかかります。階段の昇降においては5~6倍、しゃがみ立ちでは7~8倍の負担がかかるといわれています。 今回は、変形性膝関節症でしてはいけないことを仕事の職種別に、対策を含めて解説します。生活のためにも、仕事を辞めるわけにはいかない方は参考にしてみてください。 また、当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による変形性膝関節症の治療実績もございます。膝まわりの悩みを抱えておられる方は、ぜひ一度ご相談ください。 変形性膝関節症でしてはいけないこと【仕事の職種別】 変形性膝関節症の人がしてはいけないことは、膝に負担がかかる動作が頻繁に起こる仕事です。 具体的には、以下のような仕事内容が当てはまります。 【膝に負担がかかる動作】 ・立ったり、座ったりを繰り返す ・急な方向転換やストップがある ・ジャンプの動作など膝に強い衝撃がかかる ・長時間の立位を行う ・長距離の歩行を行う ・重い荷物などの上げ下げがある ・しゃがむ、立ち上がるといった動作を行う ただ、膝の関節痛がありながらも、仕事を続けなければならない方も少なくありません。 膝に負担がかかる動作が多い職種について、以下で具体的に対策を考えてみました。痛みの根本的な解決にはなりませんが、予防するときの参考にしてみてください。 ・大工 ・引っ越し作業・配達 ・トラックの運転手 ・デスクワーク ・旅館・茶道の講師 ・スーパー・コンビニのレジ打ち業務 ・営業職 変形性膝関節症の方で、仕事中にサポーターを使うときは以下の記事も参考になります。 大工 大工の仕事は、重たい部材の上げ下げや木材の運搬、長時間の立ち仕事などが多く、膝に負担がかかりがちな仕事です。 床貼りやペンキ塗りをするときは、立ったり座ったりするなど、しゃがみこむ動作が必要になります。 仕事のときは、膝の曲げ伸ばしを助けてくれるタイプのサポーターをつけましょう。また、膝を意識しながら、なるべく負担のかからないような動作を研究してみてください。 また、時間配分を決めて定期的に休みつつ、作業前後にストレッチを取り入れるのも有効です。 引っ越し作業・配達 引っ越しや配達の作業では、重たい荷物を積み下ろしするため、膝に大きな負担がかかります。 ほかにも、階段の昇り降りを始め、繰り返しの屈伸など、膝に大きな負担がかかる作業を繰り返しがちです。 また、誤解されている方が多いのですが、階段や坂道では、上りよりも下るほうが膝への負担が大きくなります。階段の昇降には手すりを持ちながら、上り下りのサポートを行いましょう。 膝を痛めてしまう前にサポーターを装着し、膝の曲げ伸ばしを助けながら、作業の前後は準備運動やストレッチを習慣化してみてください。 トラックの運転手 トラックの運転をされる場合、渋滞などにあうとクラッチを操作する左足の曲げ伸ばしにおいて、膝が悲鳴をあげがちです。 同様に姿勢が崩れると、アクセルの動作でも膝に負担がかかります。 シートに腰をしっかりつけて正しい姿勢で座り、少しでも足の曲げ伸ばしに負担がかからない姿勢を模索しましょう。 また、以下のような状況のときは、膝に負担がかからないように、できる範囲でゆっくりした動作を意識してみてください。 ・高さのある荷台を降りるとき ・運転席から降りるとき ・荷物の出し入れや運搬をするとき ほかにも、高速道路などのサービスエリアで休憩するときは、ストレッチを習慣化するのがおすすめです。短距離のときも、作業の合間に取り入れて体をほぐしてみてください。 デスクワーク 室内のデスクワークは心配がないと思われがちですが、冷房が効いた室内にいると膝が冷えます。膝が冷えると血管が収縮し、血液の流れが悪くなって筋肉が硬くなりがちです。 また、長時間椅子に座っているのも良くありません。膝を動かさないままでは、痛みの物質の排出が滞り、痛みを感じやすくなります。 対策としては、以下の心がけを行うのがおすすめです。 ・膝にブランケットをかけて冷え対策をする ・膝にサポーターをつけて温める ・椅子の高さを調整して膝に負担がかからないようにする ・座る姿勢にも気を使う 時間を決めて、席を立ったり膝のストレッチを行ったりするなど、膝を含めて全身を動かすのが大切です。 旅館・茶道の講師 旅館や茶道の講師は、畳の作法やお茶を振る舞うときに正座の動作が多い仕事です。 正座は膝が折りたたまれる上、自身の体重がかかります。また、椅子から立ち上がるときと比べて、地面から高さがあるので膝への負担がかかりがちです。 とくに正座から立ち上がる動作は、膝に負荷がかかりやすい動作なので要注意です。 対策としてはできる限り、以下の内容を意識してみてください。 ・正座するときはクッションや正座椅子を使う ・立ち上がるときは手で何か支えになるものを持つ ・定期的なストレッチを行う ・負担を減らすために体重の管理を心がける 旅館や茶道の講師として仕事をされている方にかかわらず、正座や床に近いところで作業が多い方は、上記を参考に膝への負担を配慮してみてください。 スーパー・コンビニのレジ打ち業務 スーパーやコンビニなどのレジ打ち業務の特徴は、一定の場所で長時間、立ちっぱなしである点です。 同じ姿勢で長時間過ごすと、膝から上の体重がすべてかかるため、膝への負担が大きくなります。 とくに変形性膝関節症になると、膝に偏った負担がかかって痛みを感じやすくなります。膝への負担を少なくするために、以下の対策を行いましょう。 ・体重管理を行う ・なるべく椅子を使う 椅子に座るのが難しいときは、その場で足踏みをしたり、少しだけでも体を動かすように意識して膝への負担を減らしてみてください。 営業職 営業の外回りで歩く時間が多い方は、靴が重要です。女性の場合、ヒールのように安定性に欠けた靴では膝に負担がかかります。 ほかにも、サンダルやデッキシューズなども、膝に負担がかかるので注意が必要です。 靴を選ぶときは男性も女性も、かかとがしっかり包み込まれるような靴や、ビジネスタイプのウォーキングシューズを選びましょう。 衝撃を吸収するタイプの中敷き(インソール)などを使うのも有効です。 また、歩くときの足腰への負担を減らすには、体重の管理を行うのも大切になります。 ただ、上記で述べてきた方法は解決策ではないので、根本的な治療が重要です。変形性膝関節症に関する膝の痛みは、早めに医療機関で治療に取り組むのをおすすめします。 たとえば、再生医療による治療では幹細胞を使い、手術不要で膝まわりにおける症状の改善をサポートします。 変形性膝関節症になったときの過ごし方 膝に痛みがあると、関節を動かさないようにしがちですが、適度に体を動かすのも大切です。 膝まわりの筋力が落ちてしまうと、かえって関節への負担が高まります。そのため、初期症状がある頃は、膝まわりの筋力が落ちないように、意識して動くのをおすすめします。 ウォーキングなどであれば、歩くと大腿四頭筋を始めとする膝まわりの筋力低下を防げるのでおすすめです。 肥満傾向の方は、筋力を落とさないように注意しながら、脂肪を落として体重を減らすのも大切です。 単に食事量を減らすのではなく、カロリー制限をするなど、食事制限を行うと負荷を減らしながら膝の安定性を高められます。 軽めの運動は大切ではありますが、膝の負担になるほどの運動は行わないように、様子を見ながら取り組んでみてください。 また、日常生活の動作見直しを始め、変形性膝関節症の予防法における詳細は、以下の記事も参考になります。 まとめ|変形性膝関節症になったら膝への負担を減らす工夫をしよう 仕事での屈伸動作や正座、急な方向転換など、膝に負荷がかかる仕事の動作が積み重なると、痛みを感じる原因につながります。 また、軟骨下骨の新陳代謝(骨吸収と形成)に異常をきたすほか、関節軟骨の変性や破壊にもつながるので注意が必要です。 対策としては、膝関節に安定性をもたらすウォーキングや、大腿四頭筋のトレーニングのように、適度に膝を動かすのが変形性膝関節症の予防にも大切です。 仕事で変形性膝関節症の悪化を防ぐには、進行の予防にサポーターを使ったり、ストレッチを定期的に取り入れたりするなど、自分なりの工夫を心がけましょう。 また、根本的な改善には、治療方法を検討するのも重要です。当院「リペアセルクリニック」では、変形性膝関節症における治療方法のひとつとして再生医療を行っています。 以下の動画を参考に、実際に来院された患者様のお声もご覧いただけると幸いです。 https://youtu.be/VAxeH1j4TEY?feature=shared 【リペアセルクリニックへの相談方法】 ・メール相談 ・来院予約 ・電話相談:0120-706-313(オンラインカウンセリングの予約) 変形性膝関節症でしてはいけないことに関わるQ&A 変形性膝関節症でしてはいけないことに関わる質問と答えをまとめています。 Q.変形性膝関節症のときにしてはいけない運動はある? A.以下のように、ひざに負担のかかる運動は避けましょう。 ・テニス ・卓球 ・ゴルフ ・社交ダンス など 屈伸運動やジャンプを必要とする運動は控えながら、なるべく膝への負担が少ない運動を取り入れてみてください。 Q.変形性膝関節症のときは運動したほうが良い? A.はい、適度な運動は大切です。 たとえば、水中運動、地上での適度なウォーキングなどがおすすめです。 室内でできる運動では、厚生労働省に掲載されている椅子に座って行うストレッチなどが参考になります。(文献1) 運動するときは無理をしないように注意して、かかりつけの医師などに相談しながら行いましょう。 運動方法の詳細については、以下の記事も参考にしてみてください。 Q.変形性膝関節症の治療方法は何がある? A.以下のような治療方法があります。 ・薬物療法:飲み薬や湿布薬、塗り薬などを使う ・手術療法:内視鏡手術、人工関節置換術などを行う ・理学療法(運動療法):装具、運動により筋肉や関節などに働きかける ・再生医療:PRP療法などにより自然治癒力に働きかける それぞれの治療方法については、以下の記事で詳しく解説しています。 Q.変形性膝関節症の手術をするメリット・デメリットは? A.手術するメリットとデメリットには、以下のような内容があげられます。 手術のメリット 手術のデメリット ・起床時に膝のこわばりがなくなる ・痛みなく階段を上り下りできる ・膝を気にせずスッと歩き出せる ・膝を気にせず好きなところに出かけられる ・手術そのもので合併症の危険性がある ・膝の曲げ伸ばしに違和感が出る場合もある ・重い荷物を避ける必要がある ・正座ができない ・かがめない、かがみにくくなる ・生活習慣の変化を受け入れる必要がある ・スポーツに支障が出る可能性もある ただし、本人の状態や症状によっては、手術のメリットとデメリットについて、上記に当てはまらない可能性もあります。必ず医療機関で医師にご相談ください。 変形性膝関節症の手術をする前に知っておきたい内容については、以下の記事も参考になります。 参考文献 文献1 厚生労働省|変形性ひざ関節症の人を対象にした運動プログラム
公開日:2024.11.06 -
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変形性膝関節症の治療法や種類を一挙に解説します(薬物療法、保存療法、手術療法、理学療法、理学療法、再生医療) 変形性膝関節症の治療法(保存療法)にはどんな種類があるの? 変形性膝関節症の治療法については、様々な種類があります。今回は、その治療について徹底して解説させていただきます。変形性膝関節症は、関節軟骨の変性や摩耗を伴う退行性の病気です。 中高齢者の膝関節痛のいちばんの原因疾患として、その頻度は高くみられます。 そして、初期や中期の変形性膝関節症に対しては、さまざまな保存療法が有効であり、ある程度まで進行した変形性膝関節症に対しては、手術が必要となります。 変形性膝関節症の治療法 ・初期~中期:さまざまな「保存療法」が有効 ・~末期:「手術療法」が必要となる 症状としては、初期では起床時や休憩後などでの膝を動かした際に痛みが発生します。痛みは寒い日や、雨の降る日など、天気の悪い日に増悪することが多く、天気のよい日などは痛みを感じにくい場合もあります。 変形性膝関節症の進行に伴い、歩く場合に痛みが発生し、長距離歩行や階段昇降が困難になり、安静時痛や夜間痛が出現することもあります。 また、正座ができなくなるなどの膝関節の屈曲制限や、反対に膝が完全に伸ばせなくなるなどの関節可動域制限が生じてくると日常生活上いろいろな支障がみられます。 変形性膝関節症に対して行われる治療法にはおもに薬物療法・運動療法・理学療法・装具療法・内視鏡手術・人工関節置換術、そして最近注目されている先端医療分野で再生医療というものがあります。 1.薬物療法 変形性膝関節症の薬物療法では、さまざまな薬が処方されます。薬の種類には大きく分けて「内服薬(飲み薬)」「湿布薬」「塗り薬」「坐薬」の4種類があります。 通常、内服薬は頓用、塗り薬や湿布薬は痛みが慢性化した場合の長期使用、坐薬は耐え難い痛みがあるときの緊急用として使用されます。 薬物療法、薬の種類 ・内服薬(飲み薬) ・湿布薬 ・塗り薬 ・坐 薬 内服薬として最もよく処方されるのは鎮痛薬で、「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」と「アセトアミノフェン」が多く使用されます。NSAIDsはロキソニン、ボルタレンなどの製品名がよく知られています。 体内の炎症を鎮める薬で、主に痛みが関節の中にある場合によく効きます。ただし、副作用として胃腸障害が現れることがあり、胃痛や吐き気、ときには胃潰瘍になるというケースもあります。そのため、多くの場合「胃薬」も一緒に処方されます。 湿布薬や塗り薬は「外用薬」と呼ばれ、その中にはNSAIDsの成分が含まれており、患部に貼ったり塗ったりすることで経皮吸収(皮膚から吸収すること)され、炎症を鎮める効果が期待できます。 内服薬のような胃腸障害や内臓疾患の心配が少なく、長期使用も可能です。一方でかゆみや、かぶれ、アレルギー反応を起こすこともあり、皮膚が過敏な人は注意が必要です。 薬物療法の種類 ■内服薬:鎮痛薬 ■概 要:体内の炎症を鎮める薬、主に痛みが関節の中にある場合に効果が高い ■副作用:胃腸障害(胃痛、吐き気、胃潰瘍) ・NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):ロキソニン、ボルタレンなどの製品名 ・アセトアミノフェン ■外用薬:湿布薬、塗り薬、 ■概 要:NSAIDsの成分を含み患部に貼付、塗布することで経皮吸収(皮膚から吸収) ■副作用:かぶれ、アレルギー等(長期使用も可能) 鎮痛薬や湿布薬などで痛みがひかない場合には、膝の関節内にヒアルロン酸注射を打つことがあります。ヒアルロン酸は、膝の動きを滑らかにし、クッションの役割を担うことに一役買っています。 変形性膝関節症では、関節液中のヒアルロン酸の量が少なかったり、弾性や粘性が低下していたりするため、不足するヒアルロン酸を注射器で関節内に注入します。 膝関節にヒアルロン酸を注入すると、痛みが和らぐほか、膝の動きが滑らかになり、また関節軟骨の栄養になるといった効果が期待できます。 鎮痛薬や湿布薬などで痛みがひかない場合 ・膝(関節内):注射(ヒアルロン酸) ・概 要:膝の動きを滑らかになる。 ・痛みを和らげ、動きを滑らかする。 運動療法/リハビリ 運動療法は、リハビリの一貫として専門家の指導の下、筋肉をほぐしたり、硬くなった関節の動きを広げて動きやすくするなどの適切な所作、運動を行うことによって痛みや機能の障害を回復させ、或いは改善を目指すために行います。 その他、運動療法は膝周りの弱った筋肉の力を向上させて膝を支えることができるよう、運動機能を取り戻すことを期待して行います。その内容は、以下のような目的をもって各種、組み合わせて行われます。 リハビリの目的 ・筋力アップ ・可動域の拡大 ・体重管理(必要ならダイエット) ※体重管理は、膝に負担をかけないために重要です。肥満傾向がある場合は、ダイエットも指導することになります。 理学療法・装具療法 装具療法では、装具を用いることで膝関節にかかる負担を軽減し、関節を安定させることで痛みを和らげます。装具は、関節の変形を治す効果はありませんが、普段の生活の立つ、歩くなど膝関節にかかる負担を軽減するのに役立ちます。 希望する人は医師に相談して、自分の関節の状態に合ったものをすすめてもらうといいでしょう。変形性膝関節症の治療に用いる装具には、次のようなものがあります。 ① 装具/サポーター ・目的:膝を温める。 ・効果:患部の細胞の新陳代謝を促進、炎症を鎮める。膝が守られているという安心感。 ・タイプ:薄型で伸縮性や保温性の高い医療用タイプを選ぶといいでしょう。 ② 足底板/インソール ・目的:歩いたりした際の痛みが緩和される。 ・概要:O脚、X脚タイプの変形性膝関節症の初期、靴の中や足裏に足底板(インソール)を活用する。 ・タイプ:靴への中敷きタイプ、足裏に直接つける室内用タイプがある。 ・注意 :初期~中期の患者さんに有効。変形が進行した末期の場合は改善効果が期待できない。 足底板は、物理的な作用で変形した膝関節の角度を一定角度補整できる治療法です。O脚の人の場合、足底板を使って足の外側を高くし、内側を低くすることで、膝の内側に偏っていた負荷が軽くなって痛みが和らぐのです。 内視鏡手術 内視鏡(関節鏡)手術は、腰椎麻酔をしてから膝蓋骨の周辺に1cmほどの小さな切開口を2〜3カ所あけて、カメラのついた内視鏡を挿入し、炎症の原因となるこすれ落ちた軟骨や断裂した半月板、炎症を起こした滑膜などを取り除き、膝痛を改善する手術法です。 滑膜の炎症が強くて水がたまりやすい人、半月板損傷や関節遊離体(いわゆる関節ネズミ)のある人など、膝の痛む原因がはっきりわかっている人に特に有効です。 内視鏡手術の最大の利点は、切開部が小さいため体力的負担が少ないことです。 手術時間は1時間前後と短く、手術当日は翌朝まで安静にしますが、翌日からは歩くことができます。入院も1日程度と短期間で済み、多くの場合2〜3日で通常の生活に戻れます。 人工関節置換術 変形性膝関節症が進行し、痛みがとても強くて歩行が困難になった場合、「人工膝関節置換術」が検討されます。変形した膝関節の骨をインプラント(人工の関節)に置き換えるというもので、膝関節の一部のみを入れ換える「片側置換術(UKA)」と、関節の接合部全体を入れ換える「全置換術(TKA)」に分けられます。 人工膝関節置換術の手術を受けると、痛みはほぼ完全に消え、可動域が広がって滑らかに膝を動かすことができるようになります。O脚やX脚がある場合には、まっすぐな足に矯正され、歩行時に膝のぐらつきがある人はそれも解消されます。 再生医療/PRP療法 再生医療とは、人の細胞が持つ「自然治癒力」を引き出して機能の回復を図る治療法です。 変形性膝関節症の場合、重症化すると手術に頼らざるを得ないのが実情ですが、こうした手術適応例において、組織修復力を持つ再生医療の治療効果が期待されています。 現在、最も多く行われている再生医療が「PRP療法(自己多血小板血漿注入療法)」です。 血小板とは、血液に含まれる細胞のことで、血液を固める働きのほかに、組織の修復を促す成長因子を出す働きがあります。PRP療法では、患者さん自身の血液から、血小板が多く含まれる血小板血漿(PRP)を抽出し、患部に注入します。すると、その部分の組織の修復が促されていきます。 PRPは自分の血液から抽出するため、薬物療法のような副作用がほとんどないという利点があります。その反面、PRPは軟骨や半月板にはならないので、完全に軟骨がなくなってしまった重症の膝痛に対する効果は低下します。 変形性膝関節症では、関節の炎症を抑えて痛みを和らげ、軟骨や骨の変形の進行を防ぐ目的でPRP療法が用いられます。 https://youtu.be/OHnPrPHbtZM?si=IVTQZdjdcf8krciR 再生医療/幹細胞治療 このほかの再生医療には「幹細胞治療」があります。これは、衰えた膝の関節軟骨を再生させて痛みを抑える再生医療です。 幹細胞とは、皮膚や血液など、絶えず細胞が入れ替わる組織を保持するために、新しい細胞を再び産生して補充する能力をもつ細胞のことです。 幹細胞には、分化能(皮膚、血液、神経、血管、骨、筋肉など細胞を作り出す能力)と、自己複製能(自らと同じ能力を持つ細胞に分裂することができる能力)の2つの能力があります。 変形性膝関節症の治療で実用化されているのは「間葉系幹細胞」による軟骨再生療法です。間葉系幹細胞は骨髄に由来する非造血系の細胞ですが、骨髄ばかりか脂肪や骨膜などから比較的容易に取り出すことが可能です。 しかも、骨芽細胞や脂肪細胞だけでなく、軟骨細胞や筋細胞、神経細胞にも分化する能力を持っています。患者さん自身の細胞を使うため拒絶反応や副作用もなく、増殖に伴う老化の影響や分化能の低下が少ないのも大きな特徴です。 培養幹細胞治療では、お腹の脂肪から採取した間葉系幹細胞を培養して膝関節内に注入する治療や、膝の滑膜から採取した間葉系幹細胞を関節内に定期的に注入したり、半月板損傷に対する内視鏡手術の際に幹細胞を移植したりする治療が行われています。 さらに、軟骨細胞そのものを取り出して培養し、欠けた軟骨の再生を促す「自家培養軟骨移植」の研究も進み、実用化されています。これは患者さん自身の軟骨から取り出した細胞を培養し、膝の軟骨が欠けた箇所へ移植することにより、痛みなどの症状を緩和します。 これらの再生医療は、一部を除き自由診療となり、全額が自己負担となります。費用は医療施設によって大きく異なりますのでお問合せされることをお勧めします。 ただ、再生医療は実施する医療機関によって培養手段、投与手法をはじめ特徴が違います。そのため、一律に比較することができず、費用感だけでの比較はあまり意味がありません。興味がお有りならお問合せされることをお勧めします。 当院も再生医療専門のクリニックです。お問合せ頂ければ親切丁寧にご説明させて頂き、無理にお勧めすることもございませんのでお気軽にお問い合わせください。 尚、医療機関が再生医療を行う、あるいは特定細胞加工物を製造する場合には、厚生労働省への届出が法律で定められています。再生医療をお考えならその施設が「再生医療等提供機関」として登録されているか、必ず確認のうえ受診しましょう。 https://youtu.be/JvYn_j6n9io?si=bIobL5rL_HgE3wt3 まとめ・変形性膝関節症の治療方法や種類を一挙に解説します 以上のように、変形性膝関節症を治すための治療法は、薬物療法、保存療法、手術療法、理学療法、理学療法、再生医療などのように様々ありますが、まずは予防が大切です。 普段、日常生活を過ごすというだけでも膝には、体重の何倍もの負担が掛かっています。体重管理に気を付けて体重の増加に敏感になっていただきたいと思います。 それでも膝に痛みや、違和感を感じられたら年齢や症状に応じて整形外科をはじめとした医療機関で検査・診察を受け、医師と相談の上、適応となる治療法を選択してください。 以上、変形性膝関節症の保存療法を徹底解説させていただきました。参考にしていただけると幸いです。 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下の情報も参考にされませんか 変形性膝関節症の装具療法の種類と注意点について
公開日:2024.10.07 -
- 腱板損傷・断裂
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腱板損傷の画像診断|超音波(エコー)による検査方法について 超音波検査の特徴には、①簡便かつ非侵襲的(体に傷をつけない)、②リアルタイムで観察可能、③プローブを使用するなどの特徴があります。 検査をするにあたって、場所は選ばず、特別な準備も必要ありません。そのため超音波器械さえあれば、その場で好きなときに好きなだけ検査を行うことができます。また、体の外から当てた超音波は人体には無害で痛みもありません。簡便かつ非侵襲的な診断といえるものです。 最近ではポータブルの超音波器械が普及しており、性能も十分に高いため、器械そのものを持ち込んで集団検診、疫学調査が可能となっています。 スポーツ領域では競技グラウンドや練習現場に、学校などでは集団検診の場で検査が可能であり、一度に大量のデータを集積することも可能となっています。 リアルタイムで観察が可能 超音波画像はリアルタイムで観察できるため、腱板や関節唇上腕二頭筋長頭腱の動態検査、ストレス検査による不安定性の計測が可能です。また超音波の画像をみながら、損傷部位にピンポイントで穿刺(対外から針を刺す)することも可能です。 プローブを使用する 超音波検査ではプローブを用いますが、この際プローブによる軽い圧迫で、患部の圧痛との相関がみられることがあります。腱板の検査においては特にそれが認められ、診断率を上げることが可能です。 (1)使用する装置とプローブ 肩関節の超音波診断に使用する超音波断層装置は、ある程度の上級機種であれば大差はありません。プローブは7.5MHz~10MHz程度のリニアプローブを用いるのが一般的です。 体表面が凹となっている腋窩(わきの下のリンパ節)や肩峰—鎖骨間隙では、小型のコンベックスタイプのプローブが有用です。 (2)肩関節に対する超音波検査 ①患者を坐位または仰臥位とし、肩関節を中間位で軽度伸展させます。 ②まず、上腕二頭筋長頭腱および結節間溝を中心に検索します。肩甲下筋腱は、被検者の上腕を内外旋して小結節付着部を中心に検索します。 ③プローブを頭側へ移動させると棘上筋腱前縁が確認でき、さらに後方へ長軸像のまま棘上筋腱全体を検索します。 ④短軸像でも棘上筋腱全体を調べた後、棘下筋腱を長軸像で付着部を中心に検索します。 ⑤さらに、肩甲棘の中点で棘下筋の筋幅を両側計測します。 腱板損傷の超音波像 (1)肩甲下筋腱断裂・損傷 上腕骨を外旋させ、健側と厚み形態を比較します。健側と比べ腱が非薄化しており、投球障害では頭側関節包面に低エコーを呈します。 (2)棘上筋腱断裂 腱板の表面エコーと内部エコーの変化に注意しながら検査します。 表面エコーが平坦か下方凸になっていれば小断裂の存在を、内部エコーにおいて限局した低エコーが関節包面に存在していれば関節包断裂の存在を、境界エコーが不整で直下の内部エコーが低エコーになっていないケースでは滑液包断裂を示唆します。 また超音波で異常が存在した部位に限局している圧痛を認めたら、臨床的に同部が疼痛の主因になっていることが多いです。 (3)棘下筋断裂 棘下筋は薄いため、左右を比較します。頭側に低エコーを呈することが多いです。 (4)棘下筋萎縮 棘下筋の萎縮は投球動作で出現しやすいです。棘下筋の筋腹の厚みを左右比較するとともに、経時的に観察します。 まとめ・腱板損傷の画像診断|超音波(エコー)による検査方法について 超音波検査は、軟部組織を簡便かつ非侵襲的に診断できるとともに、患者自らモニターに映し出される画像をみることができるという利点があります。 最近では、超音波器機の発達に伴い画像が鮮明化し、診断の精度が向上するとともに、腱板のみならず他の部位にも応用されつつあります。 しかし、まだ診断率は検者の技量と経験に左右されるため、超音波検査の特性と限界を十分理解することが正診率を上げるうえで重要になってきます。 以上、腱板損傷における超音波・画像診断による検査についてご説明しました。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下では腱板損傷の保存療法をご紹介しています 肩の腱板損傷の症状と機能改善のための保存療法について
公開日:2024.10.07 -
- 頚椎椎間板ヘルニア
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頚椎椎間板ヘルニアの各症状と身体所見、治療法|似た病態について解説します 背骨の骨と骨をつなぐ役割の組織を「椎間板」と言い、「頚椎椎間板ヘルニア」とは、椎間板組織が脊柱管内に突出または脱出して脊髓や神経根を圧迫し症状をきたす疾患です。 発症年齢としては、30~50歳代の男性に多くみられます。発生する部位ではC5、C/6(第5頚椎と第6頚椎の間の椎間板で発生)が最も多く、次にC4、C5並びにC6、C7にも多く発症します。(以下の図参照) 事故による外傷性や加齢による経年性による変性が機序となることが多く、「喫煙も危険因子」とされています。 なお脊柱管横断面で「正中型」、「外側型」と「傍正中型」とヘルニアが飛び出た方向で3分類されます。正中ヘルニアを脊髄症、外側型や傍正中型は神経根症や脊髄神経根症(脊髄症と神経根症の合併)をきたすことが多く、画像検査で椎間根ヘルニアを認めても、無症状であることも多いので注意が必要です。 脊柱管横断面 正中型 脊髄症 外側型 神経根症、脊髄神経根症(脊髄症と神経根症の合併) 傍正中型 発症原因 ・事故による外傷性 ・加齢による経年性による変性 ・喫煙も危険因子とされる 症状について 「頸椎症」のほかに、神経根が圧追されると「神経根症」、脊髄が圧迫されると「脊髄症」の症状が生じます。以下に各症状と身体所見、治療法を解説します。 頚椎症 首から肩甲骨にかけて痛みがあり首を動かすに痛みが増強し、安静にすると軽快します。 神経根症(radiculopathy) 上肢への放散痛、知覚障害、しびれ感、脱力感などの症状が生じます。放散痛の領域を詳しく把握することで障害神経根を推測することが可能です。前胸部に放散する疼痛がある狭心症に似た頸性狭心症(cervical angina)と呼ばれる疾患があり、鑑別を必要とします。 脊髄症(myelopathy) ボタンが掛けにくい、著が使いにくい、ボタンを上手く掛けることができない、といった手指巧級運動障害や歩行障害を生じます。痙性歩行により歩容は揺劣となり、階段昇降時には手すりが必要となります。また小走りも難しくなります。 初期は大きなボタンを掛けることはできますが、ワイシャツのような小さいボタンが掛けにくくなります。指または手のひら全体のしびれを訴えることがあり、脊髄の圧迫する部位によってしびれの領域に違いがみられます。手の痺れは手根管症候群などの疾患を除外診断しなければいけません。 進行すると膀胱直腸障害(頻尿、尿勢低下、残尿感、便秘)も自覚するようになります。 身体所見について 身体的な所見としては、以下のような症状があげられます。 頸椎症 頸椎の可動域制限と僧帽筋、棘下筋、棘上筋などに圧痛を生じます。 神経根症 神経根の障害高位に一致した上肢の筋力低下および筋萎縮、感覚障害、深部腱反射の低下が生じます。スパーリングテスト(Spurling test)、ジャクソンテスト(Jackson test)が陽性となることが多いです。 脊髄症 上肢の障害髄節に一致して深部反射が弱くなり、筋力低下が生じることもあります。また錐体路障害により、それ以下の深部反射、ホフマン(Hoffmann)反射、ワルテンベルク(Wartenberg)反射が亢進し、バビンスキー(Babinski)反射、膝・足間代(足クローヌス)も陽性となります。 また小指が閉じることができない指離れ徴候(finger escape sign)がみられ、10秒テスト(手掌を下にしてできるだけ速く、グーパーを繰り返す)では通常20回以下になります。感覚障害は、初期には上肢のみに生じることが多いです。 画像検査について 診断には画像による診断が必要となり、そのため以下のような検査が行われます。 X線像(レントゲン) 椎間板ヘルニアでは一般に椎間板腔狭小化(椎間板と椎間板の間の隙間が狭くなること)や骨棘形成は軽度であることが多いです。高齢者では、骨棘などの変性が著明になると隣接椎間に椎間板ヘルニアが発生することもあります。 MRI(磁気共鳴画像法) 椎間板ヘルニアの局在や、圧迫された脊髄、椎間板変性の度合い、神経根の状態を確認することができます。 脊髄造影(ミエログラフィー) 脳槽・脊髄用の水溶性造影剤をくも膜下腔に注入して、脊髄や神経根を明瞭に描出することができる検査です。脊髄造影後にCTを撮影すると椎間板ヘルニアの局在、神経根や脊髄の圧迫を三次元的にとらえることが可能です。しかし、MRIが導入された現在では、脊髄造影をする機会は減ってきています。 頚椎椎間板ヘルニアの治療法について 頚椎症状、神経根症、脊髄症に分けて説明します。椎間板ヘルニアは自然吸収されることが多いため、無理に手術を選択すべきではないと考えます。 頚椎症に対する治療 頚椎症状のみで手術療法を行うことはあまりありません。消炎鎮痛剤などの薬物療法、トリガーボイントブロック注射、ストレッチなどを行います。 神経根症に対する治療 神経根症は症状によりますが保存療法を行った後に手術療法が検討します。 ●保存療法 消炎鎮痛薬などの薬物療法を行います。頸椎カラーを装着して頸部の安静を図ることもあり、痛みが激しい場合には、副腎皮質ステロイドの内服、硬膜外ブロック、神経根ブロック、星状神神経ブロックなどを併用します。ほとんどの症例で、保存療法により2〜3カ月以内に軽快することが多いです。 ●手術療法 保存療法を2〜3カ月続けても効果がない場合や、進行性の麻痺を認めた場合には手術を行います。推間板ヘルニアは脊髄や神経根の前方にあるため、前方除圧固定術(anterior decompression and fusion)を選択することが多いです。 前方除圧固定術は胸鎖乳突筋の内側から進入し、気管と食道を内側によけて椎間板に到達し、当該高位の椎間板やヘルニアを完全に摘出し、椎体間に腸骨から採取した骨や人工物(インプラント)を移植して固定します。 アライメントの維持や移植骨の脱転を予防する目的で、前方にプレートを使用することもあります。神経根症をきたす椎間板ヘルニアは傍正中型あるいは外側型なので、後方から部分椎弓切除と椎間孔切除を行った上でヘルニアを摘出することもあります。 脊髄症に対する治療 脊髄症では症状により保存療法と重症であれば手術療法が検討され以下のような治療を行います。 ●保存療法 軽度であれば、鎖椎カラーで頸部の安静を図り、椎間板ヘルニアの自然吸収を待ちます。しかし痙性歩行、手指巧緻運動障害により日常生活に支障がある場合や、排尿障害がある場合には、機能障害が永続性となることを避けるために手術を行います。 ●手術療法 脊髄症の場合でも、通常は1椎間での障害で脊髄の前方にヘルニアがあるので、神経根症と同様に前方除圧固定術を選択することが多いです。しかし、椎間板ヘルニアの高位以外でも脊柱管の狭窄がある場合には、後方から椎弓形成術 (laminoplasty)を選択することもあります。 椎弓形成術は脊髄の広範囲な除圧を容易に行うことができ、さらに脊髄を保護する脊柱の後方要素を温存することができます。合併症は比較的少ないですが、頸椎後方伸筋群に侵襲を加えるため、術後に頸部痛をきたしやすいという難点があります。 頸椎椎間板ヘルニア、脊髄症いずれにおいても言えることなんですが症状が出現して手術するまで時間がかかればかかるほど、術後の後遺症は残りやすくなります。後遺症が残るとその後一生治らなかったり、症状が増強することがあります。 そんな場合の最新治療として注目されるのが「再生医療」となります。当院では、数多くの術後の後遺症に対する幹細胞治療を行なっており高い治療効果を得ています。詳しくはこちらへ ▼こちらの動画もご参考になれば幸いです。 https://www.youtube.com/watch?v=0hyJR5VW3oY&t=63s 頸椎椎間板ヘルニアと似た症状の病気 頸椎椎間板ヘルニアと似ていますが違った病態をご紹介しておきます。似ているとはいえ、疾患によって治療方針が変わってくるため、頸肩腕痛を引き起こす疾患との鑑別が大変重要となります。。 肩軟部組織の変性疾患(腱板断裂、凍結肩など) 肩関節の運動痛や肩関節可動域制限を認めれば、頸椎疾患以外と考えます。C5神経根症と腱板断裂は、ともに上腕近位外側の疼痛を訴え、関節の外転ができなくなるので鑑別を必要とします。 C5神経根症では、三角筋や上腕二頭筋で筋力低下を生じることが多いですが、腱板断裂では上腕二頭筋の筋力は通常正常です。 胸郭出口症候群 (thoracic outlet syndrome) 頸肋、中斜角筋、前斜角筋、鎖骨および第1肋骨、小胸筋などにより腕神経叢と鎖骨下動脈が胸郭出口部で圧迫され、上肢の疼痛、しびれ、握力低下、重だるさなどが生じます。 ライトテスト(Wright test)、モーレイテスト(Moley test)、アドソンテスト(Adson test)が陽性となります。胸郭出口症候群の症状は前腕尺側に多いのが特徴です。 肘部管症候群(cubital tunnel syndrome) 尺骨神経の絞扼性神経障害で尺骨神経溝にティネル様徴候(Tinel)がみられます。環指尺側から小指にかけてのしびれや麻痺など感覚障害が生じ、進行すると環指と小指の変形が起きます。 手根管症候群(carpal tunnel syndrome) 正中神経の絞扼性神経障害手根管部でティネル様徴候(Tinel)が陽性になります。母指から環指の痺れや疼痛など生じ、指先の症状は夜間や早朝に強い傾向があります。 母指球筋萎縮が進むと猿手変形が生じます。確定診断には、当該神経の神経伝導速度を測定が必要です。 脊随腫瘍 (spinal cord tumor)、脊椎腫瘍(spiatumor) MRIで容易に確定診断することが可能です。稀に パンコースト(Pancoast)腫瘍により、主に尺骨神経側に神経症状を生じることもあるので注意が必要です。 まとめ・頚椎椎間板ヘルニアの各症状と身体所見、治療法|似た病態 以上、頚椎椎間板ヘルニアで現れる症状の種類と身体の所見、治療法について記し、合わせて似た病態についても解説させて頂きました。 頚椎椎間板ヘルニアは、椎間板組織が脊柱管内に突出または脱出して脊髓や神経根を圧迫し症状を引き起こす疾患です。 30〜50歳代といった年齢の男性に多く見られ、特にC5-C6や、C6-C7の部位で頻繁に発生することが多い疾患です。発症原因は、事故による外傷性や、加齢による変性が主な原因とされ。喫煙も問題視されています。 症状には頚椎症、神経根症、脊髄症があり、それぞれ首から肩甲骨にかけての痛みや、上肢への放散痛、手指の運動障害、歩行障害などが見られます。 その診断には、レントゲン、MRI、脊髄造影などの画像検査によって行われます。 治療法としては保存療法と手術療法があり、保存療法では「消炎鎮痛薬」の使用や「頸椎カラー(首を安定させて保護する目的で使用される装具。多くはプラスチック製で首を固定し、動きを制限することで頚椎を保護する)」の装着が行われます。 手術による治療は、保存療法が効果的ではない場合、また神経障害が進行している場合に選択されて前方除圧固定術や椎弓形成術といあった手術が行われます。 尚、他にも類似した病態に「肩腱板断裂」「胸郭出口症候群」「肘部管症候群」「手根管症候群」「脊髄腫瘍」なども考慮し、区別しなければなりません。 いずれにしても、医療機関で検査の上、医師の診断をもとに症状や病態に合わせた治療法を選択することが大切です。 今回は、頚椎椎間板ヘルニアを大きな視点から、記事に致しました。分かりにくい部分ではございますのでご不明な点があればお問い合わせください。 ▼以下の記事も参考にされませんか 頚椎椎間板ヘルニア!日常生活でやってはいけないこと
公開日:2024.10.07