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- 関節リウマチ
- お皿付近に違和感
- 内科疾患
関節リウマチは自らの免疫反応の異常で発症!注意したい初期症状と治療法 「関節リウマチ」という病気を耳にしたことがありますか。 この病気は、身体に自己免疫反応の異常で引き起こされます。関節内部には関節を覆っている滑膜と呼ばれる場所に炎症が引き起こされて起こります。 この病気は、 すでに1980年代の時点で確認されていて、発症すると数年以内に関節を破壊し、症状を変化させながら進行していくことが報告されています。しかも1990年頃まで、この関節リウマチに対する有効な薬物治療が存在しませんでした。 関節リウマチは進行すると関節の破壊を伴いながら骨格系の機能障害を引き起こし、日常生活における動作や、能力を極めて低下させていくやっかいな病気です。 現在のところ、わが国では人口の約1%程度の方に発症する可能性があるとされる全身性の自己免疫疾患であり、男女比はおよそ1:3と、女性のほうが男性より多い病気と言われています。 今回は、放置すると危険な「関節リウマチ」という病気の症状や治療法を中心に解説してまいります。 関節リウマチとは、どんな病気なのか? 関節リウマチとは、関節を覆っている滑膜で炎症が慢性的におこり、患部に疼痛(痛み)や腫れ、そして関節の機能障害がおこった結果、身体的な構造に異常をきたしてしまいます。その結果として日常生活が制限され、社会活動への参加を制約せざるを得なくなる怖い病です。 そもそも自己免疫学的な面から滑膜部に炎症が起こってしまうと、滑膜が増殖して周囲の軟骨や骨組織を溶かしてしまうため、関節の患部に長期に渡って炎症がおこります。結果として変化が続き、関節の変形をきたし、関節機能に様々な障害が現れます。 関節リウマチは、本来であれば自分を守るはずの免疫機能が何らかの異常を起こし、関節部位に対して攻撃的に働くことで同部の疼痛(痛み)や炎症を引き起こすと考えられています。 なぜ発症するのか? 実は、詳しい発症原因は現代においても明確になってはいないのですが、どうやら先天性の遺伝的要因と、周辺の環境的要素が複雑に組み合わさって発症するのではないかと考えられています。 昨今の研究によりますと、関節リュウマチの発症に関しては遺伝的要因がおよそ10%程度関与しており、症状を発症しやすい遺伝子として、約100種類程度が存在すると考えられています。 その一方、発症リスクという観点(環境的な原因)として重要視されるのが喫煙歴です。それ以外にも歯周病や、慢性呼吸器感染症など免疫機構などからの複数の要因が挙げられています。 画像検査は、レントゲンを中心に行われ、患部の手足部を実際に撮影して骨の表面が欠けて欠損しているか否か、あるいは骨隙間の距離が縮んでいないかどうかを診断します。 関節リウマチの初期症状 さてここからは、関節リウマチの初期症状について紹介していきます。 一般的に知られている関節リウマチの主な症状としては、「関節のこわばり」や、「関節部の疼痛」に「関節の腫れ」があります。なお、関節のこわばりとは、関節が自分で思ったように動かない機能障害が起こっている状況です。 痛みを発症する関節部位は、全身の中で、あらゆる場所で生じる可能性がありますが、特に手首や手指の関節部で引き起こされる傾向があり、多くの場合には患部はたった一か所だけではなく複数で認めることができます。 もし仮に関節部の炎症が長期間にわたって継続されると、関節の軟骨や骨組織自体が少しずつ破壊されていき、病状が進行すると関節の変形や、関節の脱臼をはじめとして、関節が硬くこわばってしまい曲げ伸ばしが困難になるほどの変化を引き起こしてしまうことになります。 さらに、炎症が強くなると発熱や全身の倦怠感、また体重の減少や、食欲不振といった全身症状を伴うこともあるために日常生活に著しく支障を来すことになりかねません。 注意すべき初期症状 ・関節のこわばり ・関節の疼痛 ・関節の腫れ ・関節の機能障害 関節リウマチの治療法 関節リウマチの治療法は、「薬物療法」や「手術療法」が挙げられます。 それぞれの治療方法にメリットや、デメリットがあり、どれを選択するかは重症度や、合併症の有無、あるいは日常生活でいかに支障が起こっているかという不自由度の具合などを多角的に評価して判断することになります。 一般的には、関節リウマチにおける関節の破壊的な変化は、発症して概ね2年以内という期間で急速に進行することが判明しているため、いったん破壊されてしまった軟骨や骨関節は、元の正常な状態に戻すことができませんので、この疾患に対しては早期診断および早期治療が重要になります。 まずは、関節リウマチという病気がいかなるものかを理解して、適度な運動と安静のバランスを考えながら、食生活などを含めた規則正しい生活習慣を送ることが重要です。 前述した通り、喫煙歴や歯周病の有無が関節リウマチという病気の活動性に影響しているとも考えられているため、患者さんが喫煙している場合には、禁煙の指導を行うことも考えられます。 次に、薬物療法についてお話しします。薬物療法は、関節リウマチにおける治療の中心的存在となっており、関節リウマチ患者における関節部位の炎症を抑えて、症状改善を目指すために行います。 治療薬としては、まずは抗リウマチ薬や、生物学的製剤があります。 この生物学的製剤とは、生物が産生するたんぱく質などの成分を改良して作製された新薬です。目下のところ関節リウマチに対する治療薬として使用できる生物学的製剤は、8種類程度あると言われています。 生物学的製剤に関しては、特に関節破壊を抑制する効果が際立って優れていると言われており、関節リウマチの症状をより軽度な状態に改善して維持することが可能になりました。 また、患者様の中にはいろんな薬物療法などの治療を実施しても関節変形による機能障害が後遺症として残るような場合には、人工関節置換術や滑膜切除術などの手術治療が選ばれることもあります。 まとめ・関節リウマチは自らの免疫反応の異常で発症!注意したい初期症状と治療法 関節リウマチという病気は「自己免疫疾患」のひとつとして捉えられており、例えば手指や手関節部に炎症が起きて、同部に疼痛や変形、腫れが現れる病気です。 近年では、治療法も大きな変貌を遂げており、その大きな役割を担っているのは2003年に初めて登場した生物学的製剤です。 生物学的製剤は、免疫機構において重要な役割を果たす炎症性サイトカインという物質に直接的に作用することで関節リウマチの活動を抑えることができ、従来の他の薬剤に比較して有効性が高いと評価されています。 実際に医療機関などで患者さんが関節リウマチを疑われた際には、血液検査や画像検査と自覚的な症状を診断して総合的に専門医が判断することになります。 いずれにしても関節リウマチは、初期症状を覚えたら放置してはいけない病気です。関節に違和感に感じたら専門の医療機関を早めに受診してください。 何といっても早期発見、早期治療が大原則です。
2021.12.10 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
変形性膝関節症|症状の緩和と体重管理・ダイエットとコントロール この記事を読まれようとしているあなたは、「階段の上り、下り」で膝が痛くて困ったことはありませんか?現在、膝の痛みで困っている人は日本国内で2000万人以上もいるといわれています。 膝の痛みの原因となっている病気の一つとして、変形性膝関節症が挙げられます。 本記事では、変形性膝関節症の症状は、体重を減らすことが膝の痛みの軽減に重要な要素であり、体重を管理することが症状の緩和につながること。そして、その方法をご説明しています。 「膝の痛みが気になる」「最近、体重が増えた」という人は、ぜひ参考にしてみてください。 変形性膝関節症とは 変形性膝関節症とは、膝の軟骨が摩擦などですり減り、痛みを起こす病気です。歩行や「階段の上り下り」など、膝の曲げ伸ばしには膝関節の骨と骨の間にある軟骨が大きく関わっています。 膝軟骨が擦り減っていき、骨同士が擦れると炎症反応を起こします。この炎症反応が痛みに繋がるのです。変形性膝関節症の原因となる要素は次のようなものがあります。 ・肥満 ・年齢 ・遺伝 それぞれの項目について、詳しく解説します。 ・肥満を避ける 肥満によって脂肪細胞の量が増える。つまり体重が増加するということですね!体重が増えると膝に大きな負荷がかかります。膝には体重増加の3倍もの負荷がかかると考えられているからです。 例えば、体重が10㎏増加すると、膝には30㎏の負担がかかっているということになり、こうした体重以上の負担が膝にかかることで変形性膝関節症に繋がるのです。当然、体重が増えれば、増えるほど危険性は増えていきます。 また、すでに変形性膝関節症になってしまった方なら、当然ですが膝への負担を和らげてやる必要があります。その意味でも体重管理は膝の健康のために非常に重要になってくるということです。 ・年齢 加齢に伴う筋力低下、特に太ももの筋力が低下することで、膝軟骨のすり減り、変形性膝関節症の原因となると考えられています。筋力が衰えると膝を支える力が低くなり、膝関節そのものへの負担が増えてしまいます。 ・遺伝 遺伝によって、膝軟骨がすり減りやすい人がいるといわれています。家族に変形性膝関節症の人がいる場合はあらかじめ気を付けておいた方が無難です。身内にこの病気にかかった人がいるなら、日常の体重管理を意識して行うようにしたいものです。 これらの要素に加えて、骨折や靭帯損傷も変形性膝関節症の原因になる可能性があります。変形性膝関節症が悪化すると、痛みが強くなり、日常生活に支障が出てしまいます。 変形性膝関節症の痛み 変形性膝関節症の症状として困るのは、膝の痛みがみられることです。では、どのような場面で膝の痛みが現れるのでしょうか?変形性膝関節症の患者さんの多くは、次のようなときに痛みを感じるといわれています。日常生活で、当てはまるものがあるかチェックしてみましょう。 痛みを感じる場面 ・立ち上がるとき ・歩き始めるとき ・階段の上り下り ・寝ているとき 特に、「階段を下りるとき」に痛みを感じることが多いようです。また、「膝の内側を押すと痛みがある」という人も、変形性膝関節症の疑いがあります。 変形性膝関節症が悪化すると、痛みが強くなり、日常生活に支障が出てしまいます。安静にしていても痛みが消えない、痛みが酷くなる場合は、放置せずに病院の整形外科を受診しましょう。 膝の負担を軽減しよう 変形性膝関節症の場合、膝への負担を少なくする工夫が大切です。次のようなことが効果的といわれています。 膝への負担を避ける工夫や行動 ・体重を減少させる(ダイエット) ・洋式トイレを使う(和式を避ける) ・身体を温める、血行を良くする(サポーターも有効) ・正座を避ける(洋風の生活環境) 膝の痛みが気になる人は、まずは日常生活で膝への負担を減らすために洋風の生活(床に直接座らないような)への転換、ライフスタイルをお勧めします。意識して行うことで症状の悪化を防止しましょう。 体重を落とそう ここからは、体重管理、体重を減少させることが変形性膝関節症に効果的であることをご説明します。体重の減少!ダイエットは、膝の関節への負担を直接減らすことに繋がります。 運動療法には、膝の痛みについて、次のように様々なメリットがあります。 運動療法の有効性とメリット ・脂肪の増加を抑える → 体重が減少する ・筋力をつける → ぐらつく膝関節を支えることができる ・新陳代謝の改善 → 膝を含め身体全体の再生を促す つまり、体重を管理することは膝関節への負担を減らすことができるのです。標準体重より多めなら積極的なダイエットで体重を落とすようにしてください。 しかし、注意が必要なことがあります。それは体重を減らそうとした運動の仕方によっては膝への負担を増やしてしまう可能性があることです。 膝の曲げ伸ばしが多い運動や、激しいスポーツは、膝の負担を減らすどころか、逆に痛みを酷くしてしまうことがあります。膝の痛みを感じない程度のウォーキング、寝ながらのストレッチを無理のない範囲で継続していくのがオススメです。 運動できないときの体重管理・ダイエット方法 肥満を改善するためには、運動療法・食事療法が有効といわれています。すでに膝に痛みを感じるなど、運動で体重を減らすのが難しいと感じる人は、次の食事療法によるダイエットを試してみましょう。 食事療法といっても、急激な食事制限はリバウンドや体調悪化の原因となり、逆効果です。次に紹介する、体重を抑えたいときに効果的な食事方法を参考にしてダイエットにお取組みください。 食事療法|体重コントロールで効果的な方法(ダイエット) ・早食いを控える ・まとめ食いを控える(ドカ食い) ・ながら食いを控える ・つられ食いを控える ・よく噛んで食べる ・不要な食品を買わないようにする ・身の回りに菓子類、甘いドリンクを買わない!置かない! それぞれの項目について、詳しく解説していきます。 ・早食いを控える 早食いは体重増加に繋がるといわれています。満腹中枢が刺激され、満足感が得られるにはある程度の時間が必要といわれています。そのため、満腹中枢が働く前に必要以上に食べ過ぎてしまうのです。 ・まとめ食い(ドカ食い)を控える 一度に多くの量を食べると、血糖値が急激に上昇します。血糖値の急激な上昇は体脂肪や体重の増加に繋がりますので気を付けましょう。 少ない量をこまめに食べるようにすると、血糖値の上昇も緩やかになり、体重の増加を抑えることができるといわれています。 ・ながら食い、つられ食いを控える、よく噛んで食べる テレビや動画を観ながら食べるなど、食事に集中せずに食べていると、食べ過ぎてしまいがちです。食事の見た目や匂いを気にしながら食べるだけでも、食事への満足感が増え、食べ過ぎを防ぐことができるのです。 周りにつられて食事の量が多くなることを避けましょう。家族や友人などとの食事で、ついつい同じように食べてしまうことがあります。自分の食べる量を見極めて食事するようにしましょう。 周りにつられないため、大食いにならないコツは、よく噛んで、ゆっくり食べることが大切です。シッカリ嚙めば普段より少ない量で、満腹感を得ることができるといいます。 また、食べ過ぎないように食べたものの記録を付けるのも有効だと言います。食べ過ぎの罪悪感を利用するのです! ・不要な食品を買わない、菓子類を身の回りに買わない!置かない! 誰にも意思の弱い面があって当然です。手の届くところ周りに食べ物があると、「つい手伸ばしたくなるものです」。それなら、買い物のときに不要な食品を買わないようにしたり、同様に菓子類や甘い飲み物は、買い物カゴに入れないようしましょう。入れそうになったら「ダメダメ!」「イカン!」と思うようにしましょう。 食事についての意識を変えるだけでも、立派な体重管理、ダイエットに繋がりますので、ぜひお試しください。 まとめ・変形性膝関節症|症状の緩和に必要な体重管理と、そのコントロール 本記事では、変形性膝関節症の予防や膝の痛みの防止には、体重コントロール、ダイエットが重要であることをご説明しました。ライフスタイルの改善が、変形性膝関節症の予防や、膝の痛みを食い止めることに繋がります。 体重を管理する方法を決めて楽しみながら取り組むことができれば良いですね。そのためにも日常生活の中で出来ることから、体重コントロールに取り組んでみましょう。 以上、変形性膝関節症において必要な体重管理・コントロール、ダイエットについて記しました。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下も参考にされませんか 変形性膝関節症のお悩み|新たに注目される最新の治療法とは
2021.12.10 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
膝に現れる関節ネズミとは?関節内遊離体についてと治療方法を解説 皆さんは、これまでに日々の暮らしの中で膝関節に現れる「ネズミ?」について聞いたことはありますか?その正体は・・・関節の中に軟骨や骨のカケラ(小骨片)となった骨片がみられる病気のことを指しています。 この小さな骨片そのものが、何らかの原因によって骨から遊離して関節内を自由に動きまわることから、別名で「関節ネズミ」と呼ばれています。おもしろい名前なのですが・・・実は、怖い病気なので注意が必要です。 ねずみが動き回るといった例えの通り、関節内で遊離体となった骨片が、他の骨に干渉しない空間にある間は、無症状であることが多いものの、膝関節の狭い隙間に挟まってしまうと、それが関節の曲げ伸ばしの途中など障害となって引っかかるようになります。 そうなると強い痛みとなったりし、更に関節の可動域制限(可動範囲)を起こす場合があります。こうなると歩行が困難となることもまれではありません。関節ネズミが存在するケースでは、根本的にその関節内で遊離体となった骨片を取り除かないかぎり、苦しい関節の症状が何度も再発する可能性があります。 そして、それらの再発を繰り返すことによって正常な軟骨や半月板を傷つけることに繋がり、最終的には変形性膝関節症へと進行していきます。 そこで今回は、膝関節に現れる「ネズミ」の正体とその治療法について解説してまいりましょう。 膝関節ネズミに現れる症状「なぜネズミ」というのか? さて、いわゆる膝関節に現れる「ネズミ」とは、けがや病気により関節軟骨やその下の骨(軟骨下骨)の一部が剥がれて、膝や肘などの関節内を動き回って移動するようになった骨軟骨片(関節内遊離体)のことを指すはお話ししました。 これらの「関節内遊離体」は、膝に限らず股関節、肘や足首、顎関節など、病気が起こっているさまざまな関節に生じることがあります。 関節内に骨片などの遊離体があると、症状としては関節を曲げ伸ばしする際などにひっかかりや、ズレなどの異変を感じるようになります。遊離した骨軟骨片が関節に挟まった場合には激痛を自覚することもあります。 特に、膝関節は肘関節とともに関節内遊離体のよく認められる部位であると言われています。 様々な理由による疾患により関節内遊離体を生じた結果、この遊離体によって関節痛、関節炎、関節水腫、関節可動域制限 (篏頓症状)などを引き起こし、変形性関節症の原因となる場合もあります。 関節遊離体が生じる原因となるのは、離断性骨軟骨炎、滑膜骨軟骨腫症、変形性関節症、骨軟骨骨折などが挙げられます。 変形性関節症とは、加齢とともに関節軟骨が弾力性を失い、すり減って変形してしまう病気であり、歩行時や階段の昇降時などに関節痛が生じるため、進行すると腫れや変形などが起こります。 特に変形性膝関節症は女性に多い病気で、高齢になるほど罹患率も高くなることが知られており、膝関節内に骨棘(とげのようなもの)が形成されることが多く見受けられます。 そして、形成された骨棘の一部は関節内遊離体として膝関節内を移動し、痛みなどの症状を引き起こす原因となります。 変形性膝関節症の臨床診断においては、単純レントゲン検査で骨棘形成の確認に加えて、関節裂隙の狭小化(骨と骨の隙間を確認)、軟骨下骨の硬化像などを確認します。更に病状が進行した状態になると嚢腫形成や関節内遊離体(ねずみ)が認められるようになってきます。 また、この関節内遊離体(ねずみ)は、糖尿病や脊髄疾患などでみられるシャルコー関節(神経病性関節症:破壊性関節症)や骨壊死症など、さまざまな原因により生じることが知られています。 膝の関ネズミの治療法 さて、ここからは膝関節に現れる通称「ネズミ」と呼ばれている関節内遊離体の治療法について紹介してまいりましょう。 関節内遊離体は、骨軟骨片が完全に剥離して関節内を移動しているものを指します。骨軟骨片が遊離して関節内を動くようになると、痛みはその時々によって異なる場所に生じることになります。 そして、移動していた関節遊離体が関節の荷重部にはさまってしまうと、激痛が生じたり、関節が急にこれまでのように動かなくなったりすることがあり、これらの現象を「ロッキング」と呼んでいます。 仮に関節内に遊離体が見つかった場合には、一般的には遊離体の整復固定や摘出を目的とした手術が選択されます。ただし、強い症状がない場合には手術治療を行わずに経過をみることもあり得ます。 関節内遊離体が生じている場合でも、骨軟骨片が完全に剥がれておらず安定している場合には、荷重制限や運動制限などの保存療法が選択される場合もあります。 ところが、病状進行して骨軟骨片が関節内遊離体として移動したり、関節にはさまったりした場合には、手術治療を積極的に考慮することになります。 この場合の手術方法としては関節鏡を用いての視下手術を用いることが多くあります。これは関節の周辺に開けた2、3個の約5mm程度の小さな切開創から関節鏡と呼ばれる内視鏡を挿入して行います。 この手法は、関節内の遊離体(ねずみ)が小さく、関節軟骨の欠損も小さい場合に行う方法で患者さんの体への負担が少ない手術になります。 そのほかにも剥がれた骨軟骨片が大きい場合でも母床内に留まっている場合に行える鏡視下での整復固定術などがあります。 この整復固定術とは、生体吸収性(体に適合していく)を有するピンや、患者自身の骨で形成した骨釘などを使用して、剥がれた骨軟骨片を元の位置で固定して癒合させる方法です。 一方で、遊離骨軟骨片が大きく母床から移動している場合には、関節を切開して直視下に遊離骨軟骨片を整復し、固定する手術式が選択されます。 また、骨軟骨片が粉砕され整復できない場合には、膝関節内の他の部位から骨軟骨柱を採取して母床へ移植することもあります。 昨今では、再生医療の技術を用いて鏡視下に正常軟骨をいったん採取して、体外で培養して増量した後に母床へ戻す軟骨細胞移植術や、自身の脂肪に含まれる幹細胞を培養で数千から億の単位まで培養増殖させて、患部に注入することで軟骨を再生させる先端治療法を実践できる施設もあります。 関節内遊離体(関節ネズミ)まとめ 関節内遊離体(関節ねずみ)とは関節内に本来ないはずの軟骨や骨のかけらが存在する状態です。肘や膝などの関節内で生じることが多く、高齢者のみならず野球やテニス、バスケットボールなどの競技者にも多く認められる傾向があります。 膝部分に関節内遊離体がある人は、関節の痛みや膝の動かしにくさなどの症状が現れます。 この疾患を疑われる人は、整形外科等にて画像検査(レントゲン検査やMRI検査)や、関節鏡検査を実践してもらうことをお勧めします。 一般的には、症状が軽い人では経過観察が行われて、症状が強い人やスポーツ選手は手術によって関節内遊離体の除去が施行されます。関節が痛んで関節内遊離体が心配な人はぜひ前向きに整形外科を受診してくださいね。 ▼ 再生医療で膝の悩みを解決する 再生医療なら膝の痛みを手術せずに改善することができます
2021.11.30 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
変形性膝関節症の原因と初期症状、治療方法とそのポイント 皆さんは、日々の暮らしの中で階段の昇り降りなど、膝を曲げ伸ばしする場面で「膝の痛み」を感じることはありませんか? 年齢を重ねて中高年になると、生活の中で膝の痛みを感じる場面が増えてきます。実は、そんな場合「変形性膝関節症」といわれる病気を患っている可能性があります。 変形性膝関節症を早期に発見し、治療に入るためには、事前にどのような症状を起こすのか知っておく必要があります。そこで早期に治療に入るために知っておきたいことを記しました。 変形性膝関節症の症状は、一気に現れず、何年にもわたって少しずつ進行していくのが特徴です。 日本で「変形性膝関節症」は、40歳以上の有病者数が約2530万人、そして有症者数が約 800万人と推定されており、代表的な整形外科疾患とされています。 その症状として顕著なのは、膝関節痛や内反膝といった「関節の変形」です。このような症状が出てくると日常生活でおこる様々な動作で痛みが発生するようになり、動きが低下してまいります。 最初、少しの痛みだからと我慢したり、様子見を決め込んで放置していると症状が進行して大変な思いをしかねません。 そこで今回は、変形性膝関節症の初期の段階から症状を見逃さないで治療を行うことの大切さと、実際の症状について解説してまいります。 1.変形性膝関節症の原因とは? 平成28年の国民生活基礎調査によれば、「関節疾患」は高齢者が要介護に至る原因の第5位にランクされ、同時に要支援、要介護に至る原因としてトップであると言われています。けして侮ってはいけません。 そのなかでも、変形性膝関節症の患者数は概ね2530万人程度と推計され、非常に多くの方がこの症状で悩まれていることが分かります。また、この病気の男女比としては1:4で女性に多くみられるほか、高齢者になるほど罹患率は高くなります。 疾患の発症および進行は、足の太ももの前側にある筋肉で大腿四頭筋の筋力の低下が影響すると言われています。 膝関節というのは、太もも側の「大腿骨」と、すね側の「脛骨」の間の関節、および大腿骨とお皿と言われる「膝蓋骨」の間の関節から構成されており、全体が滑膜という膜組織で包まれています。 これら骨と骨の接触面は、滑らかで弾力性のある関節軟骨で覆われていて、この軟骨そのものが膝の滑らかな運動を可能にして膝の衝撃を和らげてくれています。 変形性膝関節症の主な原因は、この膝関節部の軟骨の老化によることが多く、過度な運動や、肥満、遺伝的素因も関与しています。加齢によるものでは、関節軟骨が年齢とともに弾力性を失い、すり減り、関節が変形します。 また、変形性膝関節症は骨折、靱帯や半月板損傷などの外傷、化膿性関節炎などの感染の後遺症として発症することもあります。 2.変形性膝関節症の初期症状 さて、ここから変形性膝関節症の初期症状について紹介していきましょう。変形性膝関節症の初期症状は、まず「膝が痛い!(多くは内側)という症状」が多く見受けられます。 例えば、「歩き始めに痛い」、「階段の上り、下りで痛みを感じる」、「長い距離を歩いた後に痛くなるが、休むと消える」などの症状を訴え、その痛みのせいで運動が多少なりとも制眼されるようになります。 他にも「正座ができない」、「しゃがめない」、「胡坐がかけない」、「立ち仕事ができない」などの初期症状を自覚される方も少なからずいらっしゃいます。 歩いたり、階段の上り下りで、これまでとは違う・・・何か違和感じる。そのような場合でも、それが初期症状なのかもしれません。放置すると、「膝に水がたまって」膝部分が熱を持つようになることもあります。 そうなると膝を曲げようとすると膝に張りや、突っ張りなどの違和感や、強弱はありますが痛みを覚えるようになります。 変形性膝関節症の初期症状の一例 ・歩き初めに痛みを感じるようになった ・階段の上り下りで痛みを感じるようになった ・長い距離を歩くと痛むが、そのうち消える ・正座がしずらい、立ちあがりに痛みを感じる ・胡坐をかきにくくなる ・立ち仕事で膝に痛みが出る その他、膝の動作時に痛み等、違和感を感じたら、それは変形性膝関節症の初期症状かもしれません。 また、変形性膝関節症は、もともとO脚気味の人に多い病気です。病状が進行するにつれて、このO脚の程度が進んで行き、関節が変形をきたしていくことになります。 初期段階は、主に立ち上がりや、歩きはじめなど、動作の開始時に膝が痛みはじめますが休めば痛まなくなります。ところが、病状が悪化すれば正座や階段の昇降が困難となり、末期になると安静時にも痛みが走るようになります。 こうなると関節部の変形も目立ち、膝が真っすぐに伸ばすことができなくなって最終的に歩行が困難になります。 3.変形性膝関節症の治療 当初、症状が軽い場合には、内服薬や外用薬を使用して痛みを軽減し、膝関節内にヒアルロン酸の注射をおこなうことで動きをサポートします。 また、同時に保存的療法としてリハビリテーションを実践し、運動療法を行います。これは痛みのため、膝を動かさないよう安静にしすぎて、関節が固まってしまうことを避けるために行います。 そのほかにも運動療法は、筋力の衰えを防いだり、その維持といった効果を見込んで行うものです。さらに加えて膝を温めたりする物理療法も同時に行われることもあります。 また、補助具として、足底板(インソール)を用いた補助や、サポーターなど膝装具を身に着けることで膝を固定、支えることで痛みや、膝の安定感を高め、動く際の不安感を取り除くこともできます。 治療の種類/治療の選択 変形性膝関節症に気づき、運動療法(リハビリ)に取り組むことで、症状の悪化を防ぎます。運動療法でも痛みが引かない場合、「薬物療法」や「物理療法」「装具療法」などで痛みを抑えながら「運動療法」に取り組めるよう工夫します。 あらゆる手を尽くしても効果がみられない場合には観血療法、いわゆる「手術療法」という選択肢がありますが、手術によっては体への侵襲が大きな「人工関節置換術」や「高位脛骨骨切り術」が必要な場合があります。 手術をしたくない!という場合には、負担が少なく、術後の回復も早い「関節鏡視下手術」という選択肢もありますが、膝の変形が進行した状態では、関節鏡視下手術をしたところで、改善が見込めない場合があります。 治療の種類 ・運動療法(リハビリ) ・薬物療法 ・物理療法 ・装具療法 ・手術療法(人工関節置換術、高位脛骨骨切り術、関節鏡視下手術) 変形性膝関節症|治療のカギは早期発見 変形性膝関節症の治療の基本は運動療法ですが、初期から実施するのと、末期から実施するのでは大きな違いがあります。初期の運動療法には悪化を防ぐ目的があり、継続して行うとこれまで通りの生活を送れる可能性があります。 一方、発見が遅れた末期では、痛みが強く日常生活をまともに送るのは難しい状態です。そのため、満足に運動療法に取り組めず、これまで通りの生活を送れる可能性は低くなることから、「早期発見が変形性膝関節症の治療において大切」です。 膝関節の再生医療について 変形性膝関節症の一般的な治療方法は、リハビリ・関節注射・内服薬等によって痛みをコントロールする保存療法から始まりますが、変形が顕著で痛み等による日常生活への影響も大きい場合などには手術療法が選択されます。 基本的に関節の軟骨組織は自然治癒が難しく、軟骨組織の損傷により骨や半月板など周辺組織への影響も大きく出ます。痛みが強いために動くことが億劫になると、外出の機会が減り、生活の質が低下してしまうことも考えられます。 しかし中には、症状が進行していても様々な事情で手術の選択が難しい方もおられます。そのような方には、最新の治療方法として幹細胞治療があります。 幹細胞治療とは自身から取り出した脂肪組織に含まれる幹細胞を培養により増殖し、膝関節へ注入する治療法です。実は幹細胞には自ら傷ついている組織に集まり、その部分を再生させるホーミング効果というものがあります。例えば変形性膝関節症に対しては、注入された幹細胞が傷ついた関節軟骨や半月板に集約し、従来であれば一度損傷すると治癒しないと言われていた関節軟骨や半月板が修復されます。 痛みの元凶である関節軟骨や半月板が再生されれば、痛みの減少に伴い活動量が増加され、生活の質の向上が期待されます。これまでの一般的な治療では効果が感じられない方にとって、再生医療による幹細胞治療は手術を受けない根本的治療として新たな選択肢となっています。 https://youtu.be/VAxeH1j4TEY?si=Tuj40QcxTopyT6TX ▼最新の治療法についてはこちらもご覧ください。 膝の痛み/変形性膝関節症のおススメの最新治療法 4.変形性膝関節症の治療のポイント ただ、変形性膝関節症は進行性の病気なので、どのような治療を行っても症状が進行すると手術での治療を考慮しなければならなくなります。 ここでは個別に詳しく記載することはしませんが手術での治療としては、「関節鏡手術」、「高位脛骨骨切り術」、「人工膝関節置換術」などがあり、症状に合わせて実施しなければなりません。術後は、入院してのリハビリ等を含めた治療が必要となります。 このように、変形性膝関節症が明らかになると完治にいたらず、最終的に手術の選択が必要な病気です。そのため、膝に痛みや、違和感などの初期症状を感じたら、まずは病院等にて専門医の検査を受け、診断を仰ぐよう心得ましょう。 この病変は、治すことが難しい病気ですが、早期に治療を始めることで少なくとも進行を遅らせることができます。そのためにも日常生活における本疾患の予防方法として普段から気を付けて欲しいことがあります。 それは、大腿部の前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える。正座をさける。体重に気を配り、肥満を避け、膝を冷やさないよう、逆に温めて血行を良くするよう心がけてください。 生活面では、手すりを付けたり、足元に滑らないカーペットを敷いたり、もし、トイレも和式なら、かがまなくて済むよう洋式に変更するなど色々な面で改善が必要な事柄があります。普段の生活を根本から変えることを考えねばなりません。 変形性膝関節症の治療のポイント 進行を遅らせるヒント(適度な運動と普段の生活に気を付けましょう) ・大腿部の前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える。 ・正座を避ける ・体重に問題があったり、肥満気味であれば減量を心がける ・膝を冷やさないように注意する ・膝を温めて血行を良くする。 ・生活面で手すりを付けたり、足元を滑らないカーペットを敷き転倒したり、滑らないようにする ・トイレも和式なら、洋式に変更する ・地べたに座らず椅子に座る 変形性膝関節症と似たような病気 膝に痛みがあっても、全ての膝の痛みが変形性膝関節症ではありません。膝関節以外の痛みや発熱の有無など、問診や触診の情報を元に「関節リウマチ・痛風・化膿性関節炎」などを疑います。 検査では血液検査や関節液の成分を検査し、検査結果を元に変形性膝関節症以外の病気である要素を取り除いた上で、はじめて変形性膝関節症と診断されます。 ▼関節リウマチについてはこちらもご覧ください。 関節リウマチは、どんな病気?その初期症状と治療法 まとめ・変形性膝関節症の原因と初期症状、治療方法とそのポイント 変形性膝関節症は、関節のクッションの役割を果たす軟骨成分が、加齢や筋肉量の低下などにより擦り減って、最終的に骨に変形が起こり、膝の痛みが生じる病気です。 変形性膝関節症は人によって症状の出方や進行具合が異なります。変形が進んでいても、あまり痛みが出ない人もいれば、強い痛みがあっても、あまり変形が見られない人もいます。 初期の症状としては、「膝に違和感を覚える」ことが最も早く現れる症状であり、この段階では膝に負担がかかると痛みが少しある程度でそれも長続きすることは少ないです。 ただし、進行すると軟骨がすり減った分、膝関節の骨と骨のすき間が狭くなって内側の骨があらわになり、骨の辺縁にトゲのような突起物ができたり、骨が変形したりします。 また、関節をおおっている関節包と呼ばれる繊維膜の内側に炎症が起こるため、黄色味がかった粘り気のある液体が分泌されて、いわゆる「膝に水がたまった」状態にもなります。 変形性膝関節症は、時間をかけて進行し、徐々に症状が重くなっていきます。そのため、違和感を感じた初期の段階でできるだけ早く治療を始めて、病気の進行を食い止めることが重要な視点となります。 最後に、変形性膝関節症で擦り減った軟骨は、元には戻らないが定説ですが、最新の「再生医療」なら、この軟骨を再生させることが可能になってきました。早めの受診で大きく改善する可能性があります。 いずれにしろ初期症状を感じたら早めの受診をおすすめ致します。 ▼こちらもあわせて読みたい 変形性膝関節症で必要な体重コントロールについて ▼半月板損傷との違いはこちらもチェックしておきましょう 変形性膝関節症と半月板損傷の違いをご存知ですか ▼手術について知りたい方は、こちらもご覧ください。 変形性膝関節症の手術と保険費用について詳しく解説します ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます
2021.11.25 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 健康・美容
変形性膝関節症に東洋医学の鍼灸(はり、おきゅう)治療が有効か考えました 「変形性膝関節症の悪化を防ぎたい」そんなお悩みありませんか? 変形性膝関節症は中高年以降に多く発生する疾患で、その原因は軟骨のすり減りを起因とし、膝に痛みや変形をもたらします。進行性の疾患だけに放っておくと悪化の一途を辿ります。 進行を防ぐためには生活習慣を見直し膝への負担を軽減させ、運動に取り組むことで膝の安定性を高めることが大切です。しかし膝に痛みがあると満足に運動に取り組むことができません。 そんな膝の痛みを緩和する手段には、湿布などの貼り薬や飲み薬のほかに、「鍼灸(しんきゅう)という選択肢」があります。 鍼灸はいわゆる「はり(鍼)」「おきゅう(灸)」と呼ばれ、中国を起源とした東洋医学の治療法です。しかし鍼灸に馴染みない方からすると、「そもそも効くのか」という疑問や、「痛そう」「熱そう」と不安を抱く方もいるはずです。 そこで今回の記事では、「変形性膝関節症に対する鍼灸の有効性」について、また安全面についてもご紹介します。変形性膝関節症の痛みで悩まれている方はご覧ください。 変形性膝関節症に鍼灸は有効なのか 鍼灸の具体的な治療法は、体にある361箇所あるとされる経絡(ツボ)の中から、膝の痛みに適した場所に、鍼やお灸を使い刺激を入れていきます。鍼の刺し方・刺激の入れ方はさまざまで、奥が深い治療です。 鍼灸で期待できる効果 変形性膝関節症への効果ですが、膝の痛みの緩和と可動域の向上が期待できます。変形性膝関節症の基本的な治療法は、運動療法により膝周囲の筋肉を鍛えることで、安定性を高めることです。 しかし痛みにより膝を動かさなくなったり、運動する機会が減ると、可動域が狭まり膝の状態は悪化するという悪循環になりがちです。 ところが鍼灸により膝の痛みが緩和されると、日常生活が楽になるだけでなく、可動域が向上し運動療法にも意欲的に取り組むことができます。また膝が安定し、軟骨のすり減りを抑えることが、膝内部の炎症を防ぎ、膝に水が溜まる「関節水腫」の予防にもつながります。 2005年に発表された論文からも、変形性膝関節症の方に鍼を刺した群と、刺さない群では、鍼を刺した群の方が、膝の機能面、痛みに対して高い治療効果が現れることが分かっています。 "参照:学会誌vol44-No2_本文-29.indd 4/8ページ” https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsop/44/2/44_9/_pdf/-char/ja 鍼灸はなぜ効くのか 鍼灸は人間が持つ傷の修復作用を利用して、痛みにより固まった筋肉の緊張を緩和させます。人間が体に傷を負うと血液循環が促進されるのですが、鍼灸では鍼やお灸を使い、あえて微細な傷を作り出すことで、血液循環を促し筋肉の緊張を緩和させます。 変形性膝関節症に対して治療点は、膝の痛みや筋緊張に関与する場所に鍼や灸を施します。 経絡でのポイントは、衝門、伏兎、梁丘、血海、陰包、足三里、殷門、委中、陰谷、委陽、承山などです。 解剖学的なポイントは、大腿四頭筋、縫工筋、薄筋、大腿二頭筋、半腱・半膜様筋、前脛骨筋、腓腹筋(内側頭・外側頭)、膝窩筋、また、関節裂隙(大腿脛骨関節・膝蓋大腿関節)、鵞足、靭帯(腸脛靭帯、膝蓋靭帯、内・外側側副靭帯など)などです。 ”参照:学会誌vol44-No2_本文-29.indd 3/8ページ” https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsop/44/2/44_9/_pdf/-char/ja 鍼灸でできないこと 鍼灸では血流を促すことで、筋肉の緊張や痛みの緩和はできても、変形性膝関節症のようにすり減った軟骨を再生させたり、変形を元に戻すことができません。軟骨の再生には再生医療という最新治療である自己脂肪由来・幹細胞治療というものがあり、変形を元に戻すには手術という選択肢があります。 https://youtu.be/VAxeH1j4TEY?si=BGSGpFFf3eL8sZxu ▲再生を実感された患者様のインタビュー動画。こちらも是非ご覧ください。 鍼灸の安全性はどうなのか 鍼灸は痛い?熱い? 鍼はステンレスや銀製の極めて細い鍼を使用します。鍼の太さは直径約0.14mm~0.30mmと、人の髪の毛の太さ0.10mmと同程度なので、鍼を刺すときもほとんど痛くないといわれています。 お灸は、療部位に置かれたもぐさに火をつけることで、温熱効果が得られます。お灸の温度は熱ければあついほど効果があるわけではなく、経絡を刺激するには程よい熱さが効果的な点からも、痛みや熱さが苦手な方でも安心して受けられる治療法になります。 鍼灸は無資格でもできるのか 鍼灸は誰でも行えるわけではなく、国家資格が必要です。 国家資格を取るためには、高等学校卒業後、鍼灸を学べる専門学校や大学・視覚障害者のための教育機関に3年以上通います。 各学校を卒業後し、国家試験を受験・合格するとはり師・きゅう師の国家資格が取得できます。このように、体の専門的な知識と技術を習得した人しか鍼灸を人に施すことはできません。 ただし薬局などで販売されている火を使わないお灸や、貼るだけで効果が期待できる円皮鍼など、資格を有しない個人でも鍼灸を取り入れることができます。 しかし、変形性膝関節症は進行する疾患であることから、個人で治療方針や方法を決定せず、進行度合いを確認できる整形外科でみてもらいながら、はり師・きゅう師の国家資格保持者に鍼灸治療をしてもらうことをオススメします。 まとめ・変形性膝関節症に東洋医学の鍼灸(はり、おきゅう)治療は有効か ここまで変形性膝関節症の痛みに対して、鍼灸を使った治療法の効果と安全性を紹介してきました。 結論 ・鍼灸により痛みの緩和、可動域の向上が期待できます。 ・しかし、変形やすり減った軟骨が元に戻るわけではありません。 ・根本的な治療には医療機関へ 変形は高位脛骨骨切り術や人工関節置換術のような手術で元に戻せます。また、軟骨の再生は自己脂肪由来幹細胞治療にて再生が期待できます。 鍼灸は歴史ある治療法で、髪の毛と同じくらいの太さの鍼と、心地よい温かさのお灸により変形性膝関節症の痛みにアプローチすることから、初めての方にも安心して受けられる治療法です。 鍼灸を受けるには、定められた学習過程を経て、国家試験に合格した鍼灸師が居る「鍼灸院」で受けるのが一般的ですが、鍼灸を薬局で気軽に取り入れられる物もあります。 しかし、体にある361箇所もの経絡から、変形性膝関節症に適した場所に、鍼やお灸をしてもらうには、やはり鍼灸師にみてもらうのが最善の方法です。 これまで膝の痛みで悩み、湿布や痛み止めの薬での思ったような効果がみられなかった方は、根本的な治療にはなりませんが鍼灸の治療を検討されてはいかがでしょうか? ▼ 再生医療は、手術や鍼灸に頼らず変形性膝関節症を改善できます 変形性膝関節症は「再生医療」により症状の改善が可能な新しい治療の選択肢です ▼以下もご参考下さい 変形性膝関節症のPRP療法|治療効果と体験談
2021.11.15 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
変形性膝関節症の治療|整骨院の自費診療で改善が期待できること、期待できないことや注意点 そんな疑問にお答えします。 変形性膝関節症は、中年以降の女性に多く発生する疾患で主に加齢から関節軟骨がすり減ることで、膝に痛みや変形をもたらす疾患です。 変形初期にはわずかに軟骨のすり減りが確認できる程度ですが、長年の年月をかけて徐々にすり減りや変形の程度が大きくなります。放っておくと進行していく疾患であるため、膝の状態が悪化しないように生活習慣の見直しや、膝の周りを鍛える運動が必要不可欠となります。 ただ膝に痛みがある状態では運動に満足に取り組めないため、痛みの緩和を図るため、整形外科を受診すると抗炎症・抗鎮痛作用のある薬を処方されるほかリハビリの指導を受けることになります。ただ、中には整骨院や鍼灸院、ヨガ・ピラティスなどの代替療法を検討される方もいるはずです。 その中でも整骨院は怪我の応急処置を専門とする場所であることから、体を傷めたときに整骨院を訪れた経験があるという方がおられるかもしれませんね? そこで今回は、変形性膝関節症の方が整骨院での施術で改善できるのか?また気をつけるべき点!について解説しますのでご覧ください。 整骨院での自費施術で期待できること、期待できないこと 整骨院では変形性膝関節症に対して、緊張した筋肉へ血液の循環を促し、痛みの緩和と可動域の向上が期待できます。 施術の内容は、手を使い筋肉に刺激を入れるほか、ストレッチなどがあります。また膝の安定性を高めるためにトレーニングを提供している整骨院もあります。 このように膝そのものにアプローチする方法のほか、姿勢や歩行の改善をすることで、間接的に膝への負担を軽減させる施術を提供している所があったりと、その施術方法はさまざまです。 このように整骨院の施術では膝の痛みの緩和と可動域の向上が期待できることから、日常生活が楽になり、変形性膝関節症の治療の基本である運動療法にも、積極的に取り組むことが期待できます。 しかし、変形性膝関節症によって「変形した関節を元に戻したり」「すり減った軟骨を再生はさせることはできません」つまり根本治療は、期待できないということになります。 変形性膝関節症に対しての施術は、健康保険が適応されず、全額自己負担になるため注意が必要です。 整骨院では変形性膝関節症に対して保険は効かない これまで整骨院を訪れたことがある人は、傷めた部位を冷やしたり、温めたりしてもらったかと思います。これらは主に健康保険を使用した施術で、患者様に施術費用の一部だけを負担してもらう仕組みにです。 しかし、変形性膝関節症に対しては例外なのです。 整骨院(接骨院)の開業は、厚生労働大臣からの免許を受けた国家資格を保持する柔道整復師の存在が不可欠です。柔道整復師の主な業務は、怪我に対して応急処置をすることで、柔道整復師が行う施術を「医療類似行為」といい、医師が行う治療=医業のように画像診断や、注射・手術はできません。 あくまで応急的もしくは、医療補助的方法により、患部の回復を図ることを、目的としています。 健康保険が適応される具体的な範囲は、「急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲、捻挫、肉ばなれ等」です。つまり以前から慢性化した肩こりや、長年の年月をかけて進行してきたような変形性膝関節症は健康保険適応外となるのです。 整骨院での自費施術の費用は院によりバラバラですが、3000円〜5000円程度が相場になります。 整骨院の自費施術を受ける際に気をつけたいこと 病院にて変形性膝関節症と診断された後、整骨院の自費施術を受ける前には、気をつけるべき点があります。それは医師への相談と定期的に病院を受診することです。 前項で説明した通り、整骨院の自費施術の内容はさまざまです。整骨院で受けようとしている自費施術が、あなたの膝に余計な負担とならないのか医師に相談することが大切です。 また相談される際は、「整骨院の施術を受けても大丈夫か?」と聞くのではなく、整骨院で受ける具体的な施術方法を挙げることで、より医師もあなたの質問に答えやすくなります。 また整骨院の自費施術を受け、痛みが緩和したとしても、定期的な病院の受診は忘れずに行きましょう。変形性膝関節症の進行度合いを確認する画像検査は、整骨院ではできません。 まとめ・変形性膝関節症の治療|整骨院の自費診療で改善が期待できること、期待できないことや注意点 いかがでしたか? ここまで変形性膝関節症の方が整骨院での施術で改善できるのか、また気をつけるべき点まで解説してきました。変形性膝関節症に対して整骨院の施術を受けることで、膝の痛みの緩和と可動域の向上が期待できます。 しかし変形を元に戻したり、変形が起こる起因となる、すり減った軟骨を再生させることはできません。変形を元に戻すには手術が必要です。 また、軟骨を再生させるには最新医療の「自己脂肪由来・幹細胞治療」という再生医療という選択肢もあります。 ▼変形性膝関節症の患者様。再生医療(幹細胞治療)の治療前と、治療後の歩行動画を是非ご覧ください。 https://youtu.be/anWlm-9L-ao?si=EaaJQOTY9cf3ZHLA 変形性膝関節症に対して自費施術を受ける場合には、医師と相談し、自分に合った施術方法を取り入れましょう。ただし整骨院は病院と違い、レントゲン撮影はできないため、その進行度を確認することはできません。 自費施術で痛みの緩和がみられたとしても、変形性膝関節症の進行度は痛みの程度と比例するとは限らないことから「良くなった!治った!」とご自身の体感で判断はせずに、定期的に病院を受診し、画像診断で膝の状態を確認することが大切です。 また整骨院は痛みに対して処方される「ロキソニン」などをはじめとする第一類の医薬品の取り扱いができないことから、痛みがきつい時には、迷わず病院を受診するようにしましょう。 ▼ 再生医療は、変形性膝関節症を根本治療できる方法です。 変形性膝関節症は、再生医療で手術を避けて改善することが可能です ▼以下も参考にしませんか 変形性膝関節症で必須なサポーター!そのメリットと注意点について
2021.11.15 -
- 変形性膝関節症
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- ひざ関節
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変形性膝関節症でヒアルロン酸、ステロイドでは不可能な軟骨を再生させる再生医療をご紹介 「変形性膝関節症」の治療でヒアルロン酸を注射をしているけど「思ったような結果が得られず困っている・・・」、「ステロイド注射は副作用が怖いと聞いたが・・・」こんなお悩みはありませんか? 変形性膝関節症の炎症や痛みに対する治療と言えば、ヒアルロン酸や、ステロイドを関節内に注射することが多々ありますが、実のところ、これらの注射は一時しのぎで根本的な治療にはなりません。 これらヒアルロン酸や、ステロイドなどの注射による治療では症状を改善させたり、症状の進行を止めることが難しく、最終的に人工関節などの手術に頼ることになりかねません。つまり、これらの治療では根本的な治療にはならないということです。 なぜなら、ヒアルロン酸注射やステロイドは、一時的に痛みを緩和することはできるのですが、痛みの根本原因となっている傷んだ軟骨を再生させる力は無いからです。 しかし、医療の発展で「再生医療」という新たな選択肢が現れました。 再生医療は、手術はもちろん、入院までもが不要という、これまでの常識を覆した最新の治療法として厚生労働省が許認可し、中でも「幹細胞治療」は、変形性膝関節症で軟骨を再生する可能性を持った治療法として非常に期待が持てます。 ・従来のヒアルロン酸、ステロイドでの治療:その場しのぎで、根本治療にはならない ・再生医療(幹細胞治療):変形性膝関節症の根本治療!軟骨を再生させる症例が多数報告されている ・安心安全:手術が不要、あなた自身の幹細胞を使う、入院も不要の最新医療 そこで今回は、再生医療の中でも「幹細胞」を培養して注射で投与でき、軟骨を再生させる!「変形性膝関節症の最新治療法」をご紹介します。 まずは、これまで変形性膝関節症の治療に使われてきた、「ヒアルロン酸注射」、「ステロイド注射」をについてご説明し、最新の再生医療での治療法である再生医療、中でも「PRP療法」「自己脂肪由来・幹細胞治療」をご紹介してまいりましょう。合わせて以下の動画もご参照ください https://youtu.be/2GCVH-Jw5Ps?si=ZEHWq8a2WU2MxWZX 従来の治療法①|膝関節へのヒアルロン酸注射について さて、膝関節へのヒアルロン酸や、ステロイドの注射は、関節の潤滑性を高めたり、炎症や痛みを抑える目的で使われるものです。関節内にある関節液は、関節軟骨を保護し、膝の動きを滑らかにサポートする潤滑油の役割を果たしています。 そんな関節液の潤滑成分としてヒアルロン酸が含まれていることから、変形性関節症で枯渇したサラサラの関節液に対して、ヒアルロン酸を関節内へ注射することで潤滑性を高めることで膝の動きをサポートさせます。 今、まさに治療を行われている方なら、お分かりかもしれませんが慣れてくると注射後2〜3日、中には1日ほどで、また痛みに悩まされることも少なくないのです。 ヒアルロン酸注射の頻度・回数は、ヒアルロン酸に含まれる分子量により異なります。この分子量が高いほど関節内で長時間留まるとされています。ただ、実際に痛みを回避するには週に1回から、いずれは3回~注射することになりかねません。 ご注意)ヒアルロン酸を注射で痛みの原因である「軟骨が再生されることはありません」 膝に水が溜る!とは 膝に炎症が起こり、水が溜まることがあります。これを「関節水腫」といい、膝に水が溜っていたらヒアルロン酸注射の前にこの水を抜いてやる必要があります。 なぜなら膝に水が溜まった状態でヒアルロン酸注射をしたところで、溜った水によってヒアルロン酸の濃度が薄められ、効果が半減されてしまうからです。更に、溜まった関節液には、炎症を悪化させてしまうサイトカインという物質も含まれています。 また稀にヒアルロン酸にアレルギー反応を起こす場合もあるため、万人が受けられるわけでもありません。 膝への「ヒアルロン酸注射」 効果 問題 注意事項 ・膝軟骨を保護 ・膝の滑らかな動きをサポート ・軟骨を再生するものではない ・改善等の根本治療にはならない ・効果が続かない(3日ほど) ・末期になるほど効果が減る ・水が溜る「関節水腫」になる危険性 従来の治療法②|「ステロイド注射」痛みは消えるが注意が必要 痛みや炎症が強い時は、ステロイド薬を関節内へ注射します。ステロイド注射はヒアルロン酸注射と比べ、痛みを抑えるのに非常に高い効果を発揮するとの報告が多くあります。 ただし、注意しておきたいのは、ステロイド注射を多用すると副作用があること。それは骨や、軟骨の新陳代謝をステロイドが阻害したことによって起こる可能性のある「骨壊死」、関節が破壊される「ステロイド関節症」というもので注意が必要です。 注意)ステロイド注射の多用による副作用に注意 ▼「骨壊死」「ステロイド関節症」を防ぐために ・最低でも6週間置いての注射とする。 ・できれば3ヶ月ほどは、間隔を空けるべきであること。 ・短期での連続した注射や長期間に及ぶ使用は避けるべき。 ・知識として知っていて欲しい。 繰り返しになりますがステロイド注射による痛みの改善は一過性であり、変形性膝関節症の痛みの起因となる、すり減った軟骨が元に戻るわけではありません。痛いからと、使い方を誤ると副作用という大きな危険性があります。 ここまでヒアルロン酸や、ステロイドとしった痛みを抑える目的で使われる注射を紹介しました。 次に自分の血液や細胞を使うことで「アレルギー反応が起こりにくい」「軟骨の再生を期待できる」最新の注射による治療方法を紹介します。 膝への「ステロイド注射」 効果 副作用 副作用を抑えるための注意事項 膝の意痛みを抑える 膝の炎症を抑える ・骨や軟骨の新陳代謝を阻害 → 骨壊死 → 関節が破壊されるステロイド関節症 ・6週間置きの注射 ・3ヶ月間は空ける ✕ 短期での連続した使用 ✕ 長期間に及ぶ使用 膝の痛みを消すだけ、変形性膝関節症の痛みの起因となる、すり減った軟骨が元に戻るわけではない 最新|変形性膝関節症の再生医療 再生医療 1)PRP治療 2)幹細胞治療 1)PRP治療(Platelet-Rich Plasma=多血小板血漿) PRP療法とは、患者様の血液を採取し、血液中に含まれる血小板の多い血漿だけを抽出し、膝へ注射する治療法です。多血小板血漿には、組織や細胞の成長を促す成長因子が多く含まれています。 そのため、高い治癒効果が期待できる方法といえます。またヒアルロン酸と違い、自分の血液を使用することでアレルギー反応が出にくいのも特徴です。PRP療法は、近年耳にする機会が増えた「再生医療」に分類される治療法です。 まだ日本では保険が適応されない自由診療となるため、ヒアルロン酸注射やステロイド注射のように気軽に打てる金額ではない点がデメリットになります。 また再生医療を扱うには「再生医療等の安全性確保等に関する法律」に基づき、厚生労働省に届出し、受理された医療機関、専門医にしかできない治療法になっているため、近所の整形外科で簡単にできるわけではありません。 ただ、そのため、安全性が確保されている治療法とも申せます。 2)幹細胞治療 「軟骨の再生」を期待!自己脂肪由来・ 主に皮下脂肪にある幹細胞組織を使い、軟骨をはじめとして、さまざまな組織に再生させる機能を持つ、可能性に満ちた治療法です。 幹細胞は、軟骨や皮膚、骨などに分化(複雑なものに発展していくこと)する機能があります。体から採取した幹細胞を培養(増やす)して膝の関節内へ注射することで、傷んだ軟骨の再生を期待することができ、これまでになかった治療法になります。 幹細胞は骨髄からも採取することはできますが、より侵襲が少ない皮下脂肪から採取されるのが一般的です。それでは同じ再生医療の分野であるPRP治療と幹細胞治療とは何が、どう違うのでしょうか? PRP治療は、傷んだ組織に対して組織や、細胞の成長を促す栄養素が含まれている「多血小板血漿」を注射します。もともと血小板の役割に成長因子の分泌がありますが、「多血小板血漿」には通常の血小板と比べて3〜5倍もの成長因子があることが特徴です。 これにより、ヒアルロン酸注射にはできなかった慢性化した患部の修復や、治癒を高めることができます。その一方でPRPには幹細胞が含まれていないため、軟骨を再生することはできません。 幹細胞治療では、さまざまな組織に分化(変化)する働きをもつ幹細胞を、何千〜何百万倍にも培養し、膝に注射します。この幹細胞が集中的にすり減った軟骨に働きかけることで、これまで不可能とされてきた「軟骨を再生」させます。 そのため、注射する幹細胞の数にも注目すべきです。海外の臨床データによると幹細胞の数が多いほど治療成績が良いことがわかっているからです。 なぜなら培養せず注射する治療法をADRC(脂肪組織由来再生幹細胞治療)セルーションと言うのですが、培養を行わないため幹細胞の数自体が少ないことになるからです。 その意味で治療を受ける際は、受診するクリニックが幹細胞を培養しているか確認することは大切なことになります。PRP治療は注射で実施できることから、傷口は小さくてすみます。 自脂肪由来幹細胞治療も米粒2〜3粒ほどの脂肪を摂取するために、下腹部周辺を5ミリほど切開しますが、投与自体はPRPと同じく直接膝に注射することため、大きな傷口を作ることはありません。 日帰りで受けられるこれまでには無かった治療法です。なお自己脂肪由来幹細胞治療もPRP治療ともに自由診療で、厚生労働省によって認可された医療機関でしか行えません。 再生医療の比較 PRP治療 幹細胞治療 軟骨 再生できない 再生する アレルギー ⇒ 出にくい 治療 ⇒ 専門医、専門院に限る 種類 再生医療 まとめ・変形性膝関節症の最新治療|ヒアルロン酸、ステロイドでは不可能な軟骨を再生させる再生医療という治療方法 いかがでしたか?変形性膝関節症に対する従来の注射「ヒアルロン酸注射」と「ステロイド注射」、最新治療の注射「PRP治療」「自己脂肪由来幹細胞治療」の役割を紹介しました。 これまで変形性膝関節症に対する注射は、痛みを抑え、少しでも悪化を遅らせる目的で使用されてきたものですが、再生医療であるPRP治療・自己脂肪由来幹細胞治療により、治癒そのものを促進させ、失われた軟骨を再生させることで回復を目指す!といった今までには無かった前向きな治療法です。 変形性膝関節症の痛みで悩み、薬や注射をしたけれど「期待していた効果を感じられなかった」「できるだけ手術はしたくない」という思いがある方は、薬や注射といった薬物療法と手術の中間に位置する再生医療での治療を検討してみてはいかがでしょうか。 以上、変形性膝関節症の最新治療と題し、従来のヒアルロン酸やステロイド注射では不可能な軟骨の再生を期待できる新たな選択肢である再生医療による治療について解説させていただきました。 ご参考にしていただければ幸いです。 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下もご参考にされませんか 変形性膝関節症の治療「薬物療法の種類と悪化を防ぐ」ポイントとは
2021.10.23 -
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PRP療法とAPS療法の比較|期待できる効果と治療法 「再生医療」という先端医療をご存知でしょうか?近代になって研究室での実験から、医療の現場で実施されるまでに至ってきた医療分野です。 いわゆる再生医療とは、怪我や病気によって低下あるいは喪失した生体機能を従来の医療方法では違うアプローチで治療する方法です。人為的に加工や培養して作製した細胞や組織などを用いて人体に元来備わっている修復能力を増大させて症状を改善させることが出来る可能性を秘めた未来的な治療方法です。 一昔前ならSFの世界、まともに語っていたなら「夢でも見てるの」かと夢物語にされかねない非現実的な医療でした。このような非現実的な治療方法であるだけに、実際にその治療を受けることが可能だとは、ほとんどの方がご存知ないのではないでしょうか。 それもそのはず現場の医師でさえ詳細を知る方は、まだまだ少ないのが現実なんです。そこで再生医療とは、どんな治療方法なのでしょうか? 今回は、PRP療法とAPS療法の比違いについて、比較を交えてお話しさえて頂きます。 そもそも私たちの血液中には、赤血球や白血球、あるいは血小板と呼ばれる成分が含まれていることはご存知ですね。これらの成分には、それぞれに特化した役割が存在しています。 その中でも血小板は外傷によって皮膚表面が傷ついた場合や、関節捻挫、あるいは筋肉打撲などで負傷をした際に損傷部位を治癒させる働きを有しています。つまり、自己治癒力です!傷ついたり、痛んだりした組織を自動で修復してしまう!すごい機能です。 このような働きができるのは血小板の中に含まれて、傷んだ組織部位を治す「成長因子」と呼ばれる成分のお陰お陰です。それが今回、ご紹介するAPS療法の基礎となるものです。 PRP療法とAPS療法 血液中の血小板から濃縮して大量の成長因子を含む「多血小板血漿」は、昨今の再生医療の分野で大変着目されており、英語表記でPlatelet Rich Plasma(略して以下、PRP)と呼称されているものです。 さらに、Autologous Protein Solution(略して以下、APS)を用いた療法は、自己タンパク溶液として、前述したPRPを特殊な過程で更に濃縮したものです。このAPS治療は、目下のところ慢性的な膝関節等の疼痛に対する再生医療という新たな最先端治療として注目されているものなのです。 今回は、再生医療の新人!APS療法について解説していきましょう。 [再生医療] PRPとAPSの比較 自己多血小板血漿、注入療法とも呼ばれるPRP療法については聞き覚えのない馴染みが薄い治療法に感じられるかもしれませんね。しかし、実のところ海外においては10年以上の使用実績がある方法なのです。 ケガなど、傷ついた部位の修復に作用する血小板に含まれる成長因子を取り出すPRP療法は、私たちがもっている治癒能力や組織の修復能力、再生能力を引き出すという目的があります。 それに対してAPS治療は、患者様自身の血液成分から特殊な専用医療機器を用いてAPS成分のみを抽出します。 このAPSの抽出方法は、基本的にPRPそのものを更に遠心分離器を活用して特殊加工することによって、炎症を抑制する役割を有したタンパク質と軟骨を保護して損傷を改善させる「成長因子」を高濃度に抽出したものになります。 このような抽出背景から「APS」は、まさに「次世代型のPRP」とも表現されることがあります。 抽出したAPSを関節内などの疼痛部位に向けて成分を注射することによって関節部の疼痛や炎症の軽減のみならず、軟骨の変性進行や組織破壊を抑制することが期待されるものです。 APS治療は、現在のところ、まだ「変形性膝関節症」に痛みなどを対象疾患を限定して使用されている段階ですが、これまでのPRP治療でも難渋していた患部改善にも一定の効果を示すことが徐々に判明してきています。 尚、APS療法では患者さんご自身の血液を基準にして作るために異物免疫反応が引き起こされる可能性は極めて低確率であると考えられています。 また、本治療はPRPと同じく、手技的に採血操作と注射投与だけですので、手術などのように患者さんの身体的な負担も大幅に少なくて済むという特徴があります。 PRP療法とAPS療法の比較 ・PRP療法 「PRP療法」は血液中の血小板から濃縮して大量の成長因子を含む「多血小板血漿」Platelet Rich Plasmaを略したもので、自己血液から血小板を取り出し、それを患部に注入する治療法です。 血小板には成長因子が豊富に含まれており、これらの成長因子が治癒を促進する働きがあります。具体的には、炎症を抑え、組織再生を刺激し、細胞の増殖と修復を促進します。主に関節炎や腱や靭帯の損傷、筋肉の損傷などに使用されます。 ・APS療法 「APS療法」は、Autologous Protein Solutionを略したものです。前述したPRPを特殊な過程で更に濃縮したもので抗炎症性のサイトカインとよばれるタンパク質と関節を健康に保つ成長因子を高濃度で取り出した⾃⼰タンパク質溶液を患部に注入する治療方法です。 再生させるという観点ではなく、現在のところ、関節内で痛みを引き起こすたんぱく質の活動を低下させることから症状緩和に焦点を当てた特化的治療といえるものです。 APS療法で期待できる効果や、実際の治療法 さて、ここからは変形性膝関節症に対してAPS療法で期待できる効果や実際の治療法などについて紹介しましょう。 ご注意頂きたいのは、APS療法は、再生医療ではありますが自己の血液から抗炎症成分のみを濃縮して抽出したあと、関節内に注射することで関節の軟骨を修復し、再生させるという観点ではなく、膝痛の症状緩和に焦点を当てた特化的治療であることです。 膝の変形性関節症では、疾患が進行することによって「半月板の損傷」や、「靭帯のゆるみ」など膝関節のバランスが崩れることで軟骨がすり減り、膝関節が変形して発症します。 また、変形性膝関節症では膝関節部における変形度の進行に伴って、軟骨がすり減り、半月板が擦り減って傷み、さらには滑膜炎など炎症が起きて膝部に水が溜まることがあります。 従来、治療としては繰り返し鎮痛剤を内服することや、ヒアルロン酸を関節内に注入するなどが代表的な治療法でした。しかし、鎮痛剤を飲み続ける是非や、ヒアルロン酸の効果が期待できなくなった変形性膝関節症の患者様の中には、このAPS治療によって症状が幾ばくかの改善を示すケースがあることが分かってきたのです。 一般的にAPS治療では、投与してからおよそ1週間から1か月程度で患部組織の修復が起こり始めて、だいたい治療してから約2週間から3ヶ月前後までには一定の効果が期待できると言われています。 海外のAPS治療に関する報告例では、APSを一回注射するだけで、最大約24ヶ月間にもわたって痛みに対する改善効果が継続するとの実例も紹介されていました。ただし、これは一例で実際の治療効果や症状が改善する持続期間に関しては、患者さんの疾患の程度、条件によって様々、個人差があり変化することをご理解ください。 また、このAPS治療は、PRPと同じく、患者さん自身の血液を活用して生成するために、通常ではアレルギー反応や免疫学的な拒絶反応は出現しないと考えられている点も良いい面でのポイントです。 APS治療の手順 1)まず約50~60mlの血液を採取 2)厚生労働省が認めている特殊な技術で処理し、血小板成分を濃縮したPRPを抽出 2)精製されたPRP物質をさらに濃縮してAPSを抽出 こうして抽出した後、痛みを自覚されている関節部位に超音波エコー画像を見ながらAPS成分を注射して投与する まとめ・PRP療法とAPS療法の比較|期待できる効果と治療法 従来におけるPRP療法(自己多血小板血漿注入療法)は、患者自身の血液中に含まれる血小板を活用した再生医療です。 そして、昨今特に注目されているAPS治療では、先のPRPを更に濃縮。このAPS成分を患部に注射投与してから平均しておよそ1週間から1か月程度で組織修復が促進されて更には疼痛緩和に繋がる可能性があります。 なおAPS治療を現実的に受けた当日は、入浴や飲酒、あるいは喫煙、また激しい運動やマッサージなどは出来る限り回避するように意識しましょう。 APS注射直後には、個人差はあるものの一時的に痛みや腫脹、発赤などの症状が出ることがありますが、疼痛があるために関節部位を全く動かさないと逆効果になってしまうこともあります。 ここのあたり治療後の行動については、くれぐれも十分に主治医と相談するようにしましょう。また現段階では、このAPS治療は保険適応外であり自費負担になります。 費用は、それぞれの対象医療施設や治療適応となる患部箇所などによって異なりますので、この治療法をもっと知りたい方は私どもほか、専門の外来へお問い合わせされることをお勧めします。 このAPS療法のほかにも再生医療として、私どもが推進する「幹細胞治療」という関節部分の軟骨を自己治癒力を用いて再生させるという正に未来的な治療法も存在し、この分野から目が離せません。 いずれにせよ関節に問題があって、「後は手術しかないと」言われた方は再生医療をご検討されてはいかがでしょうか。私たちは再生医療の幹細胞治療で1,600例を超える豊富な症例を有しています。いつでもご相談ください。 以上、PRP療法とAPS療法の比較|期待できる効果と治療法について記させていただきました。 ▼ PRP療法をさらい詳しく PRPを使った再生医療は、人間が持つ自然治癒力を活かして治療する先端医療です
2021.10.20 -
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PRP-FDはメジャーリーグで田中選手や大谷選手が靱帯損傷に使った治療法 膝のPRP-FD注射は、再生医療の新たな選択肢!になるか? 従来、膝の変形性膝関節症などに対する注射療法として、ヒアルロン酸の関節内注射が一般的に普及していた時代がありました。その後、近年には再生医療として血液中の血小板中に含まれる多種の成長因子多血小板血漿(Platelet Rich Plasma: 略してPRP)の関節内注射の効果が報告されてきました。 この自己・多血小板血漿注入療法とも呼ばれる「PRP療法」は、実は海外においては10年以上の使用実績があることをご存知でしょうか。海外では比較的ポピュラーな治療方法なのです。 例えば、プロ野球選手、アメリカのメジャーリーグで当時、ニューヨーク ヤンキースの田中将大選手、あるいは、今も大活躍のロサンゼルス エンゼルスの大谷翔平選手」が右肘の「靱帯損傷」に対して「PRP療法」を行なったことはよく知られています。 一方で、さらにPRP療法は、PRP-FD(又はPFC-FD)療法という新たな再生医療となり注目され始めています。今回は、このPRP-FDに注目して解説してまいりたいと思います。 PRP-FDとは、 Platelet Rich Plasma Freeze Dryの略であり血小板由来因子濃縮物を指します。同様にPFC-FDとは、Platelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dryの略称であり日本語に訳すと「血小板由来成長因子濃縮液を凍結乾燥保存」したものという意味の頭文字になります。 これらの療法は、患者さんご自身の血液中の血小板に含まれる「成長因子」を活用するバイオセラピー(再生医療)と呼ばれるもので、関節や筋肉、腱の疾患または損傷に対して「手術をすることなく、注射でのアプローチする再生医療」であることを意味しています。 そこで今回は、再生医療の新たな選択肢となり得る膝のPRP-FD注射について解説してまいりましょう。 1)PRP-FD(PFC-FD)の成り立ちとPRPとの違い 従来からあった「PRP療法」は、自己多血小板血漿注入療法のことであり、患者さん自身の血液中に含まれる血小板の要素を利用した再生医療です。 この療法は、血液中の「血小板の成分だけを高い濃度で抽出して、患部に直接的に注射」する方法です。 これによって関節部の損傷した組織へ、血小板の修復能力を用いた自己治癒力を高めることが可能になり、痛みを含めた損傷した患部の改善を目指し、手術などを避けて治癒できることを期待するものです。 この方法は、歴史的にまだ浅いもののイランの医師であるDr.Raeissadatらが過去の研究をもとにPRP関節内注射の方が従来のヒアルロン酸の関節内注射よりも変形性膝関節症における症状を改善させると発表したことにはじまりました。 このPRP関節内投与は、他の再生医療同様、手術等を回避しながら、症状の改善効果が期待できることから、患者さんのQOL(※1)を向上させることにもつながります。 一般的な治療法では解決できなかった「変形性膝関節症」をはじめとした各種関節症の患者さんに対する治療の有効なオプションになり得ると報告されています。 (※1)QOLは、英語でQuality of Lifeの略です Quality of Lifeを医療面から考えると「自分らしい生活、毎日が充実し、心身が満たされた納得のいく生活」を考慮した上で治療を行うというものになります。 患者さんへの治療方針を定めるに場合に治療方法や、その後の療養生活が患者さんへ与える肉体的、精神的はもちろん社会的、経済的といった生活の質といえる各要素を維持すべきではないかというものです。 病気の内容や治療方針によっては、その後の症状や副作用などによって治療する前と同様な生活が不可能になることがあります。そこで治療法を選択する場合には、単に症状の改善や、回復といった治療の効果だけに目を向けるのではなく、QOLの維持にも目を向けて治療方法を選択したいものです。 その意味で今後、再生医療は従来の手術による治療方法を転換させるさせるものとしてQOLに沿った治療法と言えるのではないかと思われます。再生医療は最新の医療技術で手術や入院そのものを避けることができるからです。 だからメジャーリーグをはじめ、スポーツ選手は再生医療に着目する このように再生医療は、治療結果だけに着目するものではなく、治療後を考えた治療方法といえるのです。なぜならスポーツ選手なら誰しも手術を避け、入院を避け、治療後にパフォーマンスを落とすことのない治療が条件になるからです。 スポーツ選手にとって、このパフォーマンスの維持こそがQOLになり、それを維持することこそが治療の条件になります。だからメジャーリーグをはじめ、スポーツ選手は再生医療を目指すのです。 ▼ スポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています PRP-FD(PFC-FD)療法について、 これは、PRP療法と同様に患者さん自身の血液から「PRP-FD(PFC-FD)」を作製します。投与方法も患部に直接注射して行うという治療法の面でも同じになります。 期待する効果としても同様でPRP-FD(PFC-FD)を注射した後には、PRP療法と同じく損傷した組織において自然治癒力が促進されて患部の早期修復や、疼痛軽減に繋がる再生医療としての効果を期待されるものです。 PRP-FD(PFC-FD)療法とPRP療法の決定的な違いは何でしょうか? PRP-FD(PFC-FD)療法では患者さんの血液からいったん作製したPRPをさらに活性化させて、「血小板に含まれる成長因子だけを抽出し、無細胞化した上で濃縮する」ため、成長因子の総量がPRP療法の約2倍程度に及ぶところが大きな相違点です。 また投与のスケジュールも違いがあります。PRP療法であれば採血当日に限り投与が可能ですがPRP-FD(PFC-FD)療法の場合には、採血から投与ができるまでに約1週間~3週間必要です。 尚、PRP-FD(PFC-FD)療法では、濃縮した血小板由来成長因子をフリーズドライ加工するため、長期保存が可能となります。そのため約半年の間に複数回、タイミングを見て何度か投与することが可能になります。 PRP療法 PRP-FD療法 分野 再生医療 再生医療 投与方法 患部に注射で投与 患部に注射で投与 投与タイミング 採血した当日 採血後1~3週間後 保管 できない フリーズドライ化にて長期可能 回数 当日一回 回数を分けて複数回投与可能 有効成分(成長因子) ― PRPの約2倍 期待する効果 損傷した組織の自己治癒力を高めて改善を目指す 2)膝のPRP-FD注射で期待できる効果や実際の治療法 さてここからは、膝のPRP-FD(PFC-FD)注射に期待できる効果や実際の治療法などについて紹介していきます。 このPRP-FDは、従来のPRP療法と効用効能は、ほぼ同じと考えられていますが、PRP-FD(PFC-FD)療法では患者さんから単回の採血で作製する量が多く、フリーズドライ化しているおかげで保存も長期に可能です。 そのため、症状が重いなど、複数回にわたって関節内注射を打つ必要があるケースでは、PRP-FD(PFC-FD)療法が期間を設けて複数回打つことができるため、その面ではPRPよりも適しているとみることもできます。 また、これらのPRP-FD (PFC-FD)注入療法によって、「テニス肘(テニスエルボー)」や、「ゴルフ肘」と呼ばれる肘内側部あるいは外側上顆炎、そして「ジャンパー膝」と呼ばれる「膝蓋腱炎」を修復できる可能性があります。 また、アキレス腱炎、足底腱膜炎などの腱付着部における疾患や、肉離れ(筋不全断裂)や靱帯損傷などの病気をより早期に治癒させる確率を高める効果を期待できます。 そのため、PRP-FD(PFC-FD)治療では、比較的早く、腱や靱帯由来の関節部の痛みを軽減する効果が見込まれるため、手術といった回復が長期化する治療法を避けることができ、重要なシーズンまでに回復しなければならないなど一日も早く復帰を必要とするプロアスリートや、トップアスリートなどに対して有効な治療法となる可能性があります。 また、変形性膝関節症では膝関節部における変形度の進行に伴って、軟骨がすり減り、半月板が擦り減って傷み、さらには滑膜炎など炎症が起きて膝部に水を溜めるような場合にも、PRP-FD(PFC-FD)治療を実践すると軟骨や半月板などの組織の改善を促すと同時に関節部の滑膜炎を抑制して症状を軽減、回復させる効果を期待できるものです。 これら従来の方法では、変形性膝関節症に対する薬物療法としては、一般的な鎮痛剤の内服やヒアルロン酸を含む関節内注射などを施行されてきました。 ところが、これらの既存的治療が最初から効かない場合、あるいは効かなくなってしまった場合でも、PRP-FD(PFC-FD)を関節内注射することで痛みが軽減した例が多く存在します。 PRP-FD(PFC-FD)療法の実際の手順を簡単に紹介します。 まずは、患者さんに問診、診察を行うことから開始します。 次に、治療内容の説明をして同意を得られた患者様から、約50mlの血液を採血します。その後、血液検査結果からHBV、HCV、HIV、梅毒など感染症の除外を行なった上で、PRP-FD(PFC-FD)を実際に作製します。 この際、活性化成分のみを抽出してフリーズドライ化するのに約1~3週間かかることを念頭に置いておきましょう。そして、最後にPRP-FD(PFC-FD)を患部に直接的に注射することになります。 これらのPRP-FD(PFC-FD)療法は、体外で成長因子を抽出して無細胞化する作業を行うため、PRP療法より、痛みが少ない治療法であると言われています。 まとめ・PRP-FDはMLBで田中選手や大谷選手が靱帯損傷に使った治療法です 従来におけるPRP療法(自己多血小板血漿注入療法)は、患者さん自身の血液中に含まれる血小板を活用した再生医療でした。 そして昨今、注目されている再生医療の一つであるPRP-FD(PFC-FD)療法は、血小板が傷を治す際に放出する成長因子の働きに着目したものでPRP療法を応用した技術を使える上、それらを濃縮活用し、我々の生体が生理的に元来有している「自然治癒力」を高めることで治療効果を向上させるものです。 このように、PRP-FD(PFC-FD)療法はPRPと同様に急性あるいは慢性問わず関節症、あるいは関節周囲の靭帯や半月板など軟部組織疾患に対して治療応用が開始されていますので今後の進展に期待が持てます。 尚、今回ご紹介したPRP療法やPRP-FD療法には、更に高度な最先端医療といわれる「幹細胞を培養して患部に投与する幹細胞療法」があり、症状や軽減だけでなく、「軟骨そのものを再生することができ、再生医療の本命」といわれる治療法があります。 当院は、患者様の生活の質、QOLを大切にできる再生医療を推進しています。これまで多くの症例を有する国内でも唯一のクリニックです。いつでもお問い合わせください。 治療後や、療養生活の質を高める再生医療にご注目ください。 ▼QOLを大切にするPRP療法を用いた 再生医療の詳細は以下をご覧下さい PRP療法は、自ら再生しようとする自然治癒力を活かした最先端の治療方法です
2021.10.19 -
- 変形性膝関節症
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変形性膝関節症の手術、その種類と入院期間、術後のリハビリから退院までの経過 変形性膝関節症と診断され、手術を検討されている方にとって、色々な面で不安や疑問は多いものですね。いざ手術を受けようと思っても、人によってはお仕事や、家庭など理由は様々、家を空けられない事情もあるはずです。特に術後の「入院期間」は、「リハビリ」を含めて気になるところでしょう。 その変形性膝関節症の手術として代表的なのが「関節鏡視下手術」「高位脛骨骨切り術」「人工関節置換術」ですが、受ける手術によって入院期間は異なります。 受ける手術によって入院期間は変わります。手術によって退院するまで短くて数日、長くて1ヶ月以上と差があります。膝に痛みや、しびれなどの異常を感じて整形外科等、医療機関を受信、検査を経て手術が必要という診断を受けた場合。下図に示したような3種類の手術が考えられます。 そこで今回は、変形性膝関節症の手術にかかる入院期間に併せてリハビリの内容を解説してまいります。 入院期間 1.関節鏡視下手術 2.高位脛骨骨切り術 3.人工関節置換術 4.参考)再生医療:入院不要 1.関節鏡視下手術の場合:入院期間は2〜3日 関節鏡視下手術とは? 関節鏡視下手術は、変形性膝関節症の手術の中でも1番入院期間が短い手術になります。この手術は、他に比べて最も入院期間が少なく、手軽に受けることが可能です。 手術の方法としては、カメラ・ハサミや鉗子など手術器具を入れるために膝の周囲に小さな孔を2〜3ヶ所開けます。そちらにカメラを入れてモニターに映し出された映像をもとに傷んだ関節軟骨・半月板・滑膜・骨棘を切除するほか、癒着した関節包をはがします。 麻酔は下半身のみで、手術時間も短く1時間程度です。 関節鏡視下手術の特徴は、「骨切り術」や「人工関節置換術」と比べ、皮膚の切開範囲が小さく、体への侵襲(影響)が少ないことから、入院から退院までの期間が短く、年齢問わず受けられる手術法となります。 また関節鏡視下手術や、耐久性に寿命がある人工関節置換術に踏み切る前段階の手術としても有効です。 関節鏡視下手術は、患者様の7〜8割に効果が認められた手術法でありますが、手術の適応(可否)は、膝の変形が軽度から中程度の変形性膝関節症の方が対象になるため、この術式を行うには変形が進行しすぎないよう早期発見が重要です。 関節鏡視下手術の術後のリハビリと退院までの経過 手術直後は、ベッド上にて安静に過ごします。手術による炎症を抑えるためにアイシングを行います。血栓を防ぐために、脚の位置を高く保つほか、弾性ストッキングにて血流を促します。 リハビリは、術後、翌日からは積極的な運動療法を行い、全体重を乗せて歩けるように行います。数日間は痛みを感じますが、できる限り膝の関節を動かすことで血栓を予防します。 多くの場合、手術の翌日から、2日後には退院できます。 退院しても痛みは数週間続きます。手術前と同じ生活を送るには2〜3週間、膝に痛みや違和感を感じなくなるまでに3〜6ヶ月かかります。 変形性膝関節症も、初期の段階であれば、この関節鏡視下手術で済み、体への負担も非常に少なく済みます。ただし、この術式で痛みなどの症状が改善しない場合もあることもあります。 膝に違和感を感じたら放置することなく、早期に整形外科等、医療機関で医師の診断を受けることが大切になります。症状が進行して悪化すると次で紹介するような、より重い術式を選択する必要性が出てまいります。 やはり病気は早期発見が大切ということです。 2.高位脛骨骨切り術の場合:入院期間は5〜6週間 高位脛骨骨切り術とは? 高位脛骨骨切り術は、膝にかかる決まった方向への負担を減らす手術法です。膝の軟骨がすり減ってしまい、変形性膝関節症になると、O脚方向へと変形していきます。 骨切り術では脛骨を楔形に骨を切りとり、プレートで固定することで、X脚方向へと膝の角度を調整します。これによって膝の内側にかかっていた負担を外側へ移行させ、内側・外側に均等に荷重が掛かるようにするものです。 手術時間は1時間30分程度です。 関節鏡視下手術と比べて体への侵襲(負担)は高いですが、関節鏡視下手術同様に、自分の関節を残すことが特徴です。人工関節置換術のように正座ができなくなるなど、関節運動に制限がかかることはありません。 「自分の関節は残したい」と思う方は、人工関節置換術に踏み切る前段階の手術としても有効です。 高位脛骨骨切り術の術後のリハビリと退院までの経過 高位脛骨骨切り手術の当日は安静に過ごしますが、関節鏡視下手術に比べ血栓ができやすいため、術後は、フットポンプにて脚の血流を促すようにします。このフットポンプは、多くの場合、2日目には取り外し、車椅子での移動が可能になります。 また、膝の安定性を図るため装具を装着します。 フットポンプとは フットポンプは、手術後などで寝たままになる患者の静脈への血栓塞栓症を予防するために用います。足の下腿 といわれる膝と足首との間の部分を断続的に圧迫を繰り返して下肢静脈の流を手助けする医療器具です。 リハビリテーション リハビリで膝の運動を行う場合、持続的関節他動訓練器(CPM:continuous passive motion)を使い膝の屈伸を行います。 持続的関節他動訓練器(CPM:Continuous Passive Motion)とは この機械は、関節の曲げ伸ばし、屈曲・伸展といった運動を自動的に連続して行えもので、主に下肢への術後、リハビリ用いることが多い。 時間を設定して運動速度、曲げる角度を変えて行うことができる。メリットは、荷重をかけることなく関節の屈伸運動を行えることにあります。 患者さんの体重や、矯正角度により、リハビリの進行度合いには差が出るものの、1週目から少しずつ体重をかけ、3週目から両側で松葉杖をつき歩行を開始します。 ただし患側へかける負荷は体重の1/2程度です。そして、5週目頃には全体重をかけて歩く練習をします。尚、高位脛骨は術後3年を目安に固定していたプレートを取り外すため手術が必要になります。 退院の目安は、松葉杖なしで階段の歩行練習・退院後の動作練習がスムーズにできることです。退院時からデスクワークや多少の早歩き、車の運転ができるようになります。 ただ、長時間の立ち仕事は浮腫み(腫れや、むくみ)やすいので3ヶ月は避けた方が良いでしょう。杖を使わず歩けるようになるには退院後約2ヶ月はかかります。 3.人工関節置換術の場合:入院期間は約1ヶ月 人工関節置換術 変形性膝関節症の変形が進んだ場合、すり減った軟骨や骨を、チタンやセラミックなどを使った人工関節に入れ替える手術法です。術後は膝を傷める以前のような状態をほぼ取り戻すことができ、膝の痛みなく歩くことができます。 ただし、正座のように膝を深く曲げる動作ができなくなるため、手術を行うには患者様の生活習慣や活動量を考慮しなければなりません。骨切り術より入院期間が短いことから、仕事や日常生活への復帰が早く見込めることが特徴です。手術時間は2時間程度です。 人工関節置換術の術後のリハビリと退院までの経過 人工関節置換の手術直後は弾性ストッキングを着用し、浮腫(腫れや、むくみ)を予防し、その軽減に努めます。また膝関節は安静にし、足関節の運動を行います。 骨切り術同様に翌日からは車椅子での移動ができ、5日目からは歩行器を使い移動します。同時に松葉杖での歩行指導が始まり、徐々に歩けるように練習していきます。10日目には、関節の角度を90度くらいまで曲げられるよう回復を目指します。 リハビリは、退院に向けて、車椅子・歩行器・杖等を使って元の日常生活に戻れるよう訓練を続けます。退院の目安は1本杖での歩行、階段昇降、床からの立ち上がり、股関節屈曲100〜120度可能などです。 日常生活への復帰の目安は術後1ヶ月程度です。 ただし、知っておかねばならないことに、「人口関節には耐用年数があるということです。」その期間は、概ね15年程度と言われていて、すり減りや、感染、緩み次第では、再手術の可能性があるということです。 将来、耐用年数が過ぎると再度、同じ人工関節へお置換手術をしなければならない可能性があります。 4.入院不要な再生医療 変形性膝関節症に関する手術について記してまいりましたが、実は、もう一つの治療方法があります。それは、「再生医療」と言われるものです。上記で書いたような手術的アプローチとはまったく違う方法で改善を図るものです。 https://youtu.be/JwAqQziEinw?si=oZkktVjE6xYzxR6j 変形性膝関節症の再生医療について詳しくは、別途ページに記載しています。これまで「すり減った膝の軟骨を再生することは不可能」といわれてきましたが、医療技術の進歩で自己治癒力を用いて軟骨の再生を目指せる先端医療です。 そのため、変形性膝関節症であっても手術自体が不要。当然、入院も必要ありません。日帰りで行える新しい先端治療です。 まとめ・変形性膝関節症の手術、その種類と入院期間、術後のリハビリから退院までの経過 ここまで変形性膝関節症と診断され、手術を検討されている方に向けて変形性膝関節症の手術にかかる入院期間から、リハビリの内容までを紹介しました。関節鏡視下手術の入院期間は2〜3日、人工関節置換術の入院期間は約1ヶ月、高位脛骨骨切り術の入院期間は5〜6週間です。 下記は手術を行った場合の目安です。入院期間は、各個人の症状や経過によって変わります。再生医療は入院が不要です。 手術の種類 入院期間 1.関節鏡視下手術 約2〜3日 2.高位脛骨骨切り術 約5〜6週間 3.人工関節置換 約1ヶ月 4.再生医療(手術はしない) 不要 入院期間だけで比べると、関節鏡視下手術が最も短いのですが、それが良いことかというと、実は、そうでもないのです。もちろん、この術式だけで回復する例も多数ありますが、そうではないこともあります。 実は、関節鏡視下手術をしても、痛みが改善されないことがあります。その場合は、再手術が必要となり、高位脛骨骨切り術や人工関節置換術を実施しなければなりません。 手術を検討されている方は、入院期間はもちろんのこと、術後のリハビリ、退院後の再手術の可能性、ご自身の膝の痛みの程度、生活環境を考慮し、主治医としっかりと話し合いを重ねた上で、判断することが大切です。 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により入院不要、手術せずに症状を改善できます ▼以下も参考にされませんか 変形性膝関節症初期|初期~末期の痛みの段階と人工関節のメリット・デメリット、避ける方法
2021.10.19 -
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変形性膝関節症の薬物療法!薬の種類と使用上の注意、悪化を防ぐポイント 変形性膝関節症の治療で、ご自分が服用している薬について詳しくご存知ですか? 変形性膝関節症の炎症や痛みに対して行われるのが「薬物療法」です。しかし薬物療法を実施している人の中には「自分がどんな薬を服用しているのだろうか」「薬だけで治るのだろうか」という疑問を持つ方もいらっしゃるはずです。 実際、薬物療法により炎症を抑え、痛みを緩和できますが、その種類によっては胃腸障害などの副作用が出ることもあり、注意が必要なこともあります。 ご自身の薬について、理解した上で服用したいものです。そこで今回、薬物療法で主に用いられる薬の種類と副作用「変形性膝関節症の悪化を防ぐために注意すべきポイント」を解説してまいります。 変形性膝関節症の薬物療法 膝に痛みがある場合、リハビリをはじめとした運動療法に加えて、膝に負担がかからないような生活習慣に変える必要があるのですが、それらを経ても痛みを感じ、改善しない、日常生活に支障がでたり、運動療法にも取り組めなくなった場合に薬物療法がその対象になります。 変形性膝関節症の薬物療法に使われる薬は、外用薬(塗り薬、貼り薬)、内服薬(飲み薬)、座薬があり、使用の際は副作用に気をつけながら使い分けねばなりません。 変形性膝関節症の薬物療法に使用する薬(炎症を抑える、痛みを抑える) ・外用薬:塗り薬、貼り薬 ・内服薬:飲み薬 ・座薬;外用薬 ※使用には、副作用に注意を要する 基本的には、外用薬・内服薬・座薬で炎症を抑え、炎症が落ち着いたらヒアルロン酸注射により膝の潤滑を高めます。膝の痛みを抑え、関節の動きを滑らかにすることで日常生活の負担を軽減し、積極的に運動療法に取り組みます。 変形性膝関節症の炎症や痛みに対して、まず初めに使われるのが「抗炎症作用がある湿布や塗り薬」です。効果がみられなければ、鎮痛作用のあるアセトアミノフェン、次に非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDS)、(ロキソニンという名前を聞けばご理解も早いと思います。)などが使われます。 また最初から非ステロイド性抗炎症薬が使われることもありますが、副作用に胃腸障害や消化管潰瘍の危険性が高まることから、長く使い続けることは避けるべきです。 非ステロイド性抗炎症薬でも効果がみられない場合は、鎮痛効果が強い医療用麻薬のオピオイド鎮痛薬が使われます。 変形性膝関節症治療で使用することが多い薬 変形性膝関節症の治療、薬物療法に際して用いられることが多い「薬の種類」について以下に記しました。薬ごとに特徴や副作用など、気を付けたい事柄を記しました。 アセトアミノフェン 抗炎症作用はありませんが、鎮痛効果があり、妊娠中にも使われることから比較的安全性が高いことが特徴です。しかし副作用がない訳ではありません。鎮痛薬は痛みがある時だけ使いましょう。 ・副作用: 肝障害、食欲不振、胃痛、消化器症状 ・商品名: アンビバ、カロナール、ピリナジンなど 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) よく知られている「ロキソニン」などもこの種類に含まれ、変形性膝関節症に多く使われるのが、この非ステロイド性抗炎症薬です。 非ステロイド性抗炎症薬は鎮痛効果や抗炎効果がありますが、長期間使用すると胃腸障害などを引き起こすことがあるため、注意が必要です。 非ステロイド性抗炎症薬の中には胃腸障害が起こりやすいもの、起こりにくいものがあり、胃腸や粘膜を保護する薬を一緒に飲む必要があります。 ・副作用: 胃腸障害、消化管潰瘍、気管支炎、肝障害、腎障害 ・商品名: ロキソニン、ボルタレン、ナボールSR、インテバンなど COX-2(コックスツー)阻害薬 非ステロイド性消炎鎮痛薬より、副作用が起こりにくいため、長期間の使用に向いています。ただし非ステロイド性消炎鎮痛薬に比べると、鎮痛効果がやや弱いもの特徴です。 ・副作用: 胃腸障害 ・商品名: セレコックス、モービック、ハイベン、オスペラックなど オピオイド鎮痛薬 非ステロイド性消炎鎮痛薬でも効果が見られない場合に使われます。オピオイド鎮痛薬は強い鎮痛効果がある医療用麻薬です。医療用麻薬と効くと怖いとイメージされる方もいますが、医師の指示のもと、正しく使用すれば安全に大きな効果が期待できます。 ・副作用: 便秘、吐き気、めまい、眠気 ・商品名: トラムセット、トラマール、ノルスパンテープなど 外用薬・内服薬・座薬の使い方と注意点 変形性膝関節症の炎症や痛みを抑える薬には、外用薬(塗り薬や貼り薬)、内服薬(飲み薬)、座薬(直腸から薬剤を吸収)があります。まずは外用薬を使い、十分な効果がみられない時には内服薬を使い、痛みがきつい時には即効性のある座薬が使われます。 どの薬を使うかは痛みの程度や、薬の扱いやすさを考慮して選択します。 担当医の説明をよく聞き、自分自身の生活習慣なども伝えて相談しながら進めましょう。副作用については薬局にて薬剤師からの説明を聞き理解して使用しましょう。異変があればスグに担当医や薬剤師に相談すべきです。 外用薬(湿布や塗り薬) ・手軽に使える点から、痛みに対して最初に処方されることが多い。 ・皮膚から吸収された成分が効率よく膝に運ばれ、重い副作用が起こりにくい反面、作用は穏やか。 ・強い痛みには適しません。 ・皮膚のかぶれに注意して使用すること。 内服薬(飲み薬) ・外用薬と同じように手軽に行える上、効果が高いことが特徴。 ・成分によっては副作用が出やすく、胃腸薬の併用が必要なことがある。 ・医師や薬剤師の説明に留意して服用しましょう。 座薬 ・即効性があり、強い痛みに有効。 ・重い副作用が出にくい特徴があるものの、慣れないと薬剤の挿入に時間がかかる。 ・しっかり挿入しないと効果がない。 変形性膝関節症の悪化を防ぐには!薬物療法に運動療法を組み合わせる ここまで変形性膝関節症の薬物療法について紹介してきました。薬を使うことで痛みを緩和させることができます。しかし「薬だけで膝の状態は良くなっていくか?」というと、そうではありません。 変形性膝関節症の治療の基本は運動療法です。運動療法により、膝周囲に筋力を鍛え関節を安定させます。しかし膝に痛みがあると、歩行や大腿四頭筋の筋力トレーニングにも支障が出ます。 痛みをかばい、膝を動かすことができなければ、筋力や関節の可動域はさらに低下し、変形性膝関節症は悪化します。 このような悪循環を止めるために薬物療法が用いられます。薬物療法により、膝の炎症や痛みを抑えますが、併せて運動療法に取り組むことが、変形性膝関節症の進行を遅らせることができます。 まとめ・変形性膝関節症の薬物療法!薬の種類と使用上の注意、悪化を防ぐポイント 変形性膝関節症の治療に用いる「薬物療法の薬の種類と注意点、悪化を防ぐポイント」を解説しました。薬は炎症や痛みを抑えますが、副作用を考慮し、痛みのある時だけ使い、予防的に飲むことは避けましょう。 また痛みが緩和すれば安心ではなく、基本は運動療法です。膝周囲のトレーニングにより変形性膝関節症の進行を遅らせることができます。 中には膝の痛みに対して、市販薬を服用される方もいるはずです。市販薬でも病院の処方薬と比べ、有効成分の含有量は少ないですが効果はあります。 しかし変形性膝関節症は進行する可能性があることから、市販薬で痛みを凌ぐだけでなく、膝の状態をできればMRIなどを使った正確な画像検査で診断を受け、患者様にあった薬を処方してくれる病院の受診をおすすめします。 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により薬に頼らず症状を改善することができます ▼治療法について、こちらもご参照ください 変形性膝関節症の治療法(薬物療法、保存療法、手術療法、理学療法、理学療法、再生医療)について
2021.10.11 -
- ひざ関節
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- 膝の慢性障害
高位脛骨骨切り手術のメリットとデメリットを医師が解説します 変形性膝関節症の治療方法には、大きく分けて「保存療法」と、「手術療法」の2つがあります。 保存療法にはリハビリテーション、装具療法、薬物療法などがあり、これらを色々と組み合わせることで行われます。そして、手術という選択肢は保存療法で効果が得られない場合に検討することになります。 手術療法の中でも、特に「高位脛骨骨切り術」と呼ばれる手術は、O脚変形のために内側部(内側大腿から脛骨関節)に偏った過重なストレスを、自分の骨を切って少し角度を変える処置が施されるものです。 この手技によって、膝の内側部に過度の負担となっていた外力のベクトルを比較的きれいな軟骨の存在する外側部(外側大腿から脛骨関節)に移動させることが出来ます。 一般的には、手術を受けた結果として通常では脚の形はO脚からX脚に変化します。 この手術治療では、患者さんの膝関節が温存できますので、正座が引き続き可能であり、普段の生活はもとより、スポーツや、農業などの仕事へ復帰出来る方々も多くいらっしゃいます。 一方で、ある程度の入院期間が必要で術後に骨が癒合するまでの間、痛みが多少なりとも続くことや、膝関節部周囲の機能的な回復には、リハビリをしっかりと行うことが必要となってきます。 そこで今回は、高位脛骨骨切り術が適応となる症例や高位脛骨骨切り術について予後に後悔のないように、その利点、メリットとデメリットについて説明していきましょう。 高位脛骨骨切り術が適応となる症例とは? まず過度なスポーツ活動による関節に対して負担の大きな動き、専門的に言うと膝内反モーメント(ひねり)の増大により内側骨端線が早期閉鎖して脛骨内反(O脚)が起こりやすく、普段の生理的なレベルを逸脱した脛骨内反そのものが将来の「変形性膝関節症」の発症リスクとなります。 要は、通常とは違う動き、激しい動き、加重、ひねり、衝撃などが繰り返されることで関節の負担が増えると、同時に関節症のリスクも増えるということです。 後悔先に立たず!激しい運動の前には、ストレッチや準備体操をしっかり行い、終わりには整備体操やストレッチなどを入念に行うなど体に対する十分なケアを忘れず実施しましょう。 加えて申し上げるなら、これら体操やストレッチも自己流ではなく、適切な方法をトレーナーなどから指導を受けて行うべきです。通常では、股関節から足の甲までを一直線に結ぶ線を「荷重線」といいます。 一般的に変形性膝関節症を罹患している方の多くは、この荷重線が膝の内側を通っているので、膝の内側に荷重がかかり過ぎて膝に障害が起こります。高位脛骨骨切り術では、この「荷重線」を膝の中心に近づける手術を行います。 この手術を受ける対象者とは 一般的には、高位脛骨骨切り術の適用年齢は、概ね50歳〜75歳までで、変形性膝関節症を認める症例の中でも中程度の変形を呈する方に薦められることが多いです。 若年者でも症状が強いケースであるならば高位脛骨骨切り術を行って、下肢機能軸や脛骨近位の内反角を正常化すべきであるという意見もあります。 また、人工膝関節置換術は、骨と人工の異物を接合する都合上、ゆるみなど再手術が必要になることがあり、そうなれば初回の手術よりも再手術は、手技的に難しくなることがあります。 そのため、再手術のリスクを避けるために65歳よりも若い方にはこの高位脛骨骨切り術が勧められています。 また、変形性膝関節症の症状が中程度までで、まだまだ運動や肉体を使う仕事を続けたいなどの場合を含めて年齢を問わず活動性が高い患者さんには本手術治療を受けることをお勧めします。 高位脛骨骨切り術の適用 ・適用年齢:概ね50歳〜75歳 ・変形性膝関節症の症状:中程度まで 高位脛骨骨切り術のメリットとデメリット さてここからは、「高位脛骨骨切り手術」自体の利点と欠点について紹介していきます。 メリットについて 高位脛骨骨切り術では、O脚に変形した脚を、X脚ぎみに矯正して変形性膝関節症の進行を遅らせることが出来る唯一の術式と考えられています。この手術の最大のメリットは、最終手段の人工関節を使わずに「自分の関節を残したまま」で症状を改善することが期待できる点です。 また、比較的侵襲(体への負担)が少ない手術であり、手術後の日常生活に対する制限も少なく、スポーツさえ継続できて、要否はともかく正座が可能になる症例も多く見受けられるため、変形性膝関節症において現在最も推奨される治療法であると言えるでしょう。 しかも、最近の高位脛骨骨切り術は、新しい手術方法が開発された結果、術後早期からの歩行も可能になっています。 入院期間も従来の人工膝関節置換術とほとんど変わらず、およそ4週間~6週間が平均的です。 高位脛骨骨切り術を受けた場合のリハビリは、術後1週間位から徐々に膝に体重をかけ始めて、3週間以内には全体重をかけて歩行訓練を施行します。そして、4週間~5週間程度で安定した歩行、階段の昇降、日常生活動作などをクリアすることで軽快退院の運びとなります。 デメリットについて 従来の高位脛骨骨切り術は、骨癒合までの数ヶ月間、手術した足に十分な体重をかけることが出来ず、入院が長期にわたるのが欠点でした。そのため、仕事をお持ちの方にとって復帰に時間が必要なことは大きな欠点でした。 そして、これまでにも高位脛骨骨切り術の処置に伴って腓骨短縮などの合併症や有痛性偽関節(骨がくっつかず、痛みも出る)が引き起こされることが問題としてあります。 また、高位脛骨骨切り術を受けたのちに、骨が癒合するまで多少なりとも膝部の痛みが続くと言われており、実際に術後の痛みが軽快して骨癒合が完了するまでに個人差はあるものの、およそ半年以上は時間がかかるとも伝えられています。 つまり、膝機能がある程度満足が得られるレベルまで回復するためには、気苦労の多いリハビリをコツコツ、しっかり行う必要があると言えるでしょう。 まとめ・高位脛骨骨切り術のメリットとデメリット 変形性膝関節症は慢性疾患であり、骨肉腫などのように、命に関わるといった疾患ではありません。従って、どのような治療法を選択するかは、患者さん一人ひとりが望むゴールによって変わってきます。 例えば、変形性膝関節症を抱える80代の高齢者であっても、「登山や舞踊が長年の生き甲斐なので今後もあきらめずに続けたい」などの目標がある場合には、高位脛骨骨切り術で自分の関節を温存できるようにチャレンジするケースもあります。 高位脛骨骨切り術とは、脚の形をO脚からX脚に変える手術であり、変形性膝関節症によって内側に偏っている過重ストレスを自分の骨を切って角度を変えることによって反対の外側に移動させる治療方法です。 この手術では、術後に多少疼痛は伴うデメリットが挙げられる一方で、自分の関節を温存して機能を維持することができるために術後の日常生活にほとんど制限がない所が大きなメリットと言えます。 いずれにしましても病院等の医療機関を受診され、しっかりご相談されることをおススメします。 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。
2021.10.09