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- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
「肩が痛くて腕が上がらない」 「夜中にズキズキとした痛みで目が覚めてしまう……」 辛い肩の症状に、毎日悩まされている方もいるでしょう。日常生活への支障が出る症状の原因として、肩の腱が切れてしまう「腱板(けんばん)断裂」が疑われます。 この記事では、腱板断裂(損傷)における診断で有効な超音波(エコー)検査の特徴について詳しく解説します。エコー所見や腱板断裂の治療方法についても紹介するので、診察を受けるか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。 腱板断裂における超音波(エコー)検査の特徴 腱板(けんばん)断裂における超音波(エコー)検査は、患者様の負担を抑えつつ正確な診断を行うために有効な検査方法です。 腱板断裂とは、肩の内部にある「腱板」という筋肉と腱の集まりが切れた状態を指します。 整形外科では、初診時にレントゲンを撮影し、症状のある部位や周辺部位に異常がないか確認します。ただし、腱板はレントゲンでは写らない組織であるため、腱板断裂の判断ができません。 診察時に腱板断裂が疑われる場合は、追加で超音波検査やMRI検査を行います。超音波検査の特徴について解説するので、肩の痛みで受診を検討している方は参考にしてください。 プローブを使用する 超音波検査では、皮膚の表面に透明なゼリーを塗り「プローブ」と呼ばれる小さなマイクのような形をした検査器具を肩に当てて検査します。プローブから発せられた超音波は、肩の中の筋肉や腱に反射し、その反射波を受信することで鮮明な画像としてモニターに表示されます。 検査で使うプローブは検査部位に合わせて選ぶ必要があり、肩関節に使用されるのは「リニア型」や小型の「コンベックス型」と呼ばれる種類です。 腱板断裂の場合、超音波検査で筋肉や腱の厚さ、断裂の位置や範囲を正確に確認できます。プローブを動かしながら微妙な位置調整ができるため、小さな断裂や部分的な損傷を見逃さずに観察できる点はメリットです。 体に傷をつけない 超音波検査は、体に傷をつけず負担の少ない検査です。レントゲン検査による放射線被ばくの心配もなく、MRI検査のような強力な磁場も使用しません。 そのため、妊娠中の方や体内に金属がある方でも安心して検査を受けられます。検査に伴う痛みもほとんどなく、患者様への身体的な負担が少ない検査といえます。 超音波検査は、症状の経過観察や治療効果の判定を目的として容易に繰り返し実施できる検査方法です。 リアルタイムで観察が可能 超音波検査では、筋肉や腱の状態をリアルタイムで観察できるのも特徴の1つです。 肩を動かした際に起こる筋肉の伸縮や腱の動き、断裂部の変化などを即座に画像で確認できるため、静止画像ではわからない機能的な診断ができます。 これにより、動作による痛みの原因や断裂範囲を明確に把握できます。治療効果や経過を定期的に診断することで、患者様に適した治療計画を立てるのに役立ちます。 腱板断裂に対する超音波(エコー)検査の手順 腱板断裂が疑われる際に行う超音波(エコー)検査の手順は、以下のとおりです。 ①椅子やベッドに座るか仰向けになり、肩関節を軽く伸ばした状態にする ②肘を曲げる筋肉につながる腱である上腕二頭筋長頭腱(ちょうとうけん)と腱の通る溝である結節間溝(けっせつかんこう)を中心にエコーで確認する ③肩甲下筋腱(けんこうかきんけん)や腱が付いている小結節付着部を中心に確認する ④プローブを肩の上方へ移動させて腕を上げる筋肉につながる腱である棘上筋腱(きょくじょうきんけん)や、後方へずらして腱全体を確認する ⑤棘上筋腱全体の断面をエコーで調べたあと、腕を外側にひねるための筋である棘下(きょくか)筋腱と付着部を腱の長さに沿って確認する ⑥さらに、肩の後方の骨である肩甲棘(けんこうきょく)の中央で肩後方の筋肉である棘下筋の厚みを両側計測する 腱板断裂の超音波検査では、断裂しやすい部分を重点的に観察し、腱の厚みや断裂の状態などを詳しく確認します。 肩甲下筋腱を調べる際は、患者様に肩を内側や外側にひねっていただき、腱や小結節付着部を確認します。また、棘上筋腱は腱の長さに沿って見るだけでなく、断面からの確認も重要です。 検査自体は10〜15分程度で終了し、ほとんど痛みを感じません。検査後はすぐに日常生活へ戻れるため、安心して検査を受けられます。 腱板断裂(損傷)のエコー所見 超音波(エコー)検査を行うと、腱板の各部位に生じた断裂や損傷の様子が確認できます。腱板は肩甲骨と腕の骨をつなぐ複数の筋肉や腱で構成されており、損傷部位によって画像所見は異なります。 なかでも、腱板断裂(損傷)が多い部位は、棘上筋と棘下筋です。 ここでは、腱板断裂で良くみられるエコー所見を紹介するので参考にしてください。 肩甲下筋腱断裂・損傷 腕を内側にひねる動作や肩関節を安定させる肩甲下筋腱が損傷すると、エコーでは腱の連続性が途切れ、不規則な陰影が映ります。部分的な損傷であれば腱の厚みが減少し、完全断裂の場合は腱が途切れて隙間が見えるのが特徴です。 断裂部分には、炎症による液体が溜まるケースも少なくありません。肩を内外にひねる動作を加えて検査すると、腱の動きが乏しく見えるのが確認できます。 肩甲下筋腱の断裂は、他の腱板筋腱に比べて頻度は低いものの、棘上筋腱断裂や棘下筋腱断裂と合併して発生する症例が多いといわれてます。 棘上筋腱断裂 腕を横に上げる動作において肩関節を安定させる棘上筋腱は、腱板のなかでも損傷を受けやすく、エコーでは断裂部分が鮮明に確認できます。正常な棘上筋腱は連続して滑らかな画像ですが、損傷や断裂があると腱の連続性が途絶え、低エコー(黒っぽく)に映るのが特徴です。 完全断裂になると断裂部の両端に隙間が生じ、腱が骨から離れている様子も観察できます。また、断裂部分には炎症による液体が溜まり、エコー画像で鮮明に写ります。 断裂・損傷部位に限局して、検査時の圧痛を認めた場合、棘上筋腱が疼痛の主な原因になっているケースが多いのも事実です。腱板断裂のなかで、とくに頻度が高いのは棘上筋腱断裂とされています。 棘下筋断裂 腕を外側にひねる動作に関与する棘下筋腱に断裂や損傷がある場合、エコーでは腱の形状が乱れ、途切れて見えます。正常な棘下筋腱は均一で整った線状に映りますが、断裂すると腱が薄くなったり、部分的に欠損したりします。 棘下筋は薄いため、左右を比較するのが重要です。断裂・損傷がある場合、頭側に低エコーに映るのが特徴です。 また、周囲には炎症による液体が貯留しているケースも少なくありません。腕を回しながら検査すると、損傷の程度や機能的な影響をリアルタイムで判断できるため、治療計画を決定する重要な手がかりになります。 棘下筋萎縮 棘下筋が長期間にわたり損傷・断裂したまま放置されると、筋肉が萎縮して薄くなります。エコーでは筋肉のボリュームが減少し、筋線維の模様が消失して白く映るのが特徴です。 棘下筋萎縮は投球動作で発症するケースが多く、進行すると肩の運動能力が低下し、腕を回す動作が難しくなります。エコーによって筋肉の厚さを測定し、正常な反対側の肩と比較すると、萎縮の程度や回復する可能性を把握できます。棘下筋萎縮は、損傷から時間が経過した際に見られる重要なエコー所見です。 腱板断裂の治療方法 腱板断裂の治療方法は、損傷の程度や患者様の年齢・生活スタイルを考慮して決められます。 主に、保存療法・手術療法・再生医療の3つの選択肢があり、症状やライフスタイルに合わせた治療方法を医師と相談して決定します。 それぞれの治療方法について紹介するので、診察を受ける際の参考にしてください。 治療方法に関する詳細は、こちらの記事も参考にしてください。 保存療法 保存療法は、手術を行わずに症状の改善を目指す治療方法の総称です。具体的な治療内容は以下のとおりです。 三角巾を使用して数週間安静にする 内服薬・外用薬を処方する 肩関節内に注射する ストレッチや筋力トレーニング 腱板断裂の治療では、三角巾を使用して肩の安静を保ち、負担を軽減します。痛みが強い場合には、消炎鎮痛剤の内服薬や外用薬(湿布や塗り薬)が処方されるケースが多くみられます。 また、炎症を抑えるためのステロイド注射や、関節の動きを滑らかにするヒアルロン酸注射を肩関節内や滑液包内に行う場合も少なくありません。 症状が落ち着いてきたら、理学療法を併用したストレッチや筋力トレーニングなどのリハビリテーションを行います。理学療法士による肩関節の可動域訓練や周囲の筋力トレーニング、正しい肩の使い方を習得し、症状の軽減と日常生活を送れるようにするのが目的です。 手術療法 手術療法は、保存療法で十分な効果が得られない場合や、断裂が大きく活動性の高い方、確実な機能回復を望む方などに検討されます。手術療法で検討されるのは、以下4つです。 鏡視下腱板修復術 腱板移植 人工関節置換術 リバース型人工関節置換術 小さな切開でカメラ(関節鏡)を肩関節に挿入し、モニターで確認しながら行う鏡視下腱板修復術は、従来の手術に比べて体への負担が少なく、術後の回復も早いメリットがあります。 腱板断裂が大きく鏡視下で縫い合わせるのが困難な症例では、太ももの裏側や背中から腱を採取し、移植する腱板移植を選択するケースもあります。 ほかにも、人工関節を肩関節に取り付ける人工関節置換術やリバース型人工関節置換術も選択肢の1つです。 手術で腱を修復した後は、断裂の大きさや修復方法に応じた適切なリハビリテーションを行い、機能回復訓練を行うのが重要です。 再生医療 再生医療は、自己の細胞を用いて腱板の自然治癒力を活かす治療方法です。当院「リペアセルクリニック」では、主に以下の治療方法を実施しています。 幹細胞治療 PRP治療 幹細胞治療では、脂肪細胞から採取した幹細胞を培養し、肩関節内に注射して患部に幹細胞を届けます。 一方、血液から血小板を多く含む血漿(PRP)を抽出して注射するPRP治療は炎症を抑える目的で行われるため、症状に適した治療方法を選択するのが重要です。 どちらの治療方法も自己細胞を使用するため、副作用やアレルギーのリスクも低く、安全性の高い治療として注目されています。 肩の痛みに対する治療方法でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 まとめ|腱板断裂(損傷)で行われるエコー検査への理解を深めよう 肩の痛みや腕の上がりにくさを引き起こす腱板断裂(損傷)に対する超音波(エコー)検査は、迅速かつ安全に診断できる検査方法です。 超音波検査ではプローブと呼ばれる検査器具を使用し、傷をつけずにリアルタイムで腱板の状態を確認できます。 腱板断裂(損傷)の治療方法は、注射やリハビリなどの保存療法、断裂した腱を修復する手術療法、自己細胞を活用する再生医療など多岐にわたります。治療方法を選択する際は、超音波検査を含む精密な診断に基づき、医師と十分に話し合って決定するのが大切です。 本記事を通じて、腱板断裂と超音波検査や治療法への理解を深め、ご自身の状態に適した医療を選択する参考になれば幸いです。
2021.08.18 -
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 脊椎
頚椎椎間板ヘルニアは、首の骨の間にある椎間板が突き出し、神経や脊髄が圧迫することによって様々な症状を引き起こす病気です。 とくに第4・第5頚椎などの部位で発症することが多く、首から肩、腕、手指にかけての痛みやしびれなどが生じることがあります。 症状が進行すると歩行困難や排尿障害に至るケースもあり、早期の発見と正確な診断が重要です。 本記事では、頚椎椎間板ヘルニアの代表的な症状や、発症しやすい部位の特徴、適切な検査方法まで専門的な知見をもとに解説します。 適切な対処と受診の参考にしていただければ幸いです。 頚椎椎間板ヘルニアの症状はC3・C4・C5・C6で出やすい 背骨の骨と骨をつなぐ役割の組織を「椎間板」といい、「頚椎椎間板ヘルニア」とは、脊柱管内に椎間板の組織が飛び出したり離脱したりすることで、脊髄や神経根部を圧迫し、さまざまな症状が現れる疾患です。 発症年齢としては、30~50歳代の男性に多くみられます。(文献1)発生する部位ではC5、C6(第5頚椎と第6頚椎の間の椎間板で発生)が最も多く、次にC4、C5並びにC6、C7にも多く発症します。(以下の図参照) 代表的な症状としては首から肩、腕にかけての痛みがあり、とくにデスクワーク後や夕方に強まる傾向があります。 また、腕や手先にしびれが現れ、細かな作業が難しくなるケースもあります。進行すると、手足の動きにぎこちなさが出て、生活に支障をきたすことも少なくありません。 頚椎椎間板ヘルニアの症状は発症部位によって異なる 頚椎椎間板ヘルニアは、突出したヘルニアの位置によって「正中型」「外側型」「傍正中型」に分類され、症状の現れ方も異なります。 正中型では脊髄が圧迫されて脊髄症を引き起こし、外側型や傍正中型では神経根症・脊髄症状・神経根症状が同時に見られる混合型症候を起こす傾向があります。 以下では各症状の特徴を説明します。 ヘルニアの位置 現れやすい症状 正中型 脊髄症 外側型 神経根症、脊髄神経根症(脊髄症と神経根症の合併) 傍正中型 神経根症、脊髄神経根症(脊髄症と神経根症の合併) 頚椎症 頚椎症は、首から肩甲骨にかけて痛みがあり首を動かすたびに痛みが増し、安静にすると軽快します。痛みのほかに、肩や腕にしびれを伴うこともあります。さらに、首の動きに伴ってめまいや耳鳴り、視覚異常を訴えるケースも報告されています。 神経根症(radiculopathy) 神経根症では、首から肩、腕、手指にかけて片側に放散するような鋭い痛みやしびれが生じます。 また、神経が圧迫される部位によっては、握力の低下や細かい動作がしづらくなるなど筋力が低下するのも特徴です。首の動きによっては痛みが悪化することもあります。(文献2) 放散痛の領域を詳しく把握することで障害神経根を予測できることが多いです。 場合によっては胸の前面に広がる痛みがあり、心臓の痛みと間違えやすい頸性狭心症(cervical angina)と呼ばれる疾患との区別が必要になります。 脊髄症(myelopathy) ボタンが掛けにくい、箸が使いにくい、ボタンを上手く掛けられないなど手指巧緻(しゅしこうち)運動障害や歩行障害を生じます。痙性歩行により歩容が不安定となり、階段昇降時には手すりが必要となったり、小走りが難しくなったりします。(文献3) 初期は大きなボタンだと問題ないですが、ワイシャツのような小さいボタンは掛けにくくなります。 指先や掌全体がしびれるという症状が出ることもあり、どの部分の脊髄が押されているかによって、しびれを感じる場所が異なってきます。手のしびれは手根管症候群などの疾患を除外して診断しなければいけません。 進行するとおしっこの勢いが弱くなる、排尿後も尿が残る感覚、便秘などの膀胱直腸障害も自覚し始めます。 脊髄が圧迫されることで、体幹や下肢にも影響が及び、感覚鈍麻や歩行困難が進行します。細かい手の動きが苦手になることに加え、足の突っ張り感やぎこちなさも特徴です。 日常生活での動作制限が増えることで、生活の質が低下していきます。 頚椎椎間板ヘルニアの疑いがある症状が出たときにやってはいけないこと 頚椎椎間板ヘルニアの疑いがある症状が出たときにやってはいけないことは以下です。 スポーツでの違和感を見過ごす 悪い姿勢で過ごし続ける 体重管理をせず、体に負担をかけ続ける 喫煙を続ける スポーツ中に首に痛みや違和感を覚えた場合、無理して続けるのは避けましょう。首の不快感を無視すると頚椎椎間板ヘルニアが深刻化する可能性が高いため、速やかに専門医に相談することが重要です。 また、悪い姿勢を続けることも危険です。姿勢が悪いまま過ごすと、首や背中に不必要な負担をかけ、頚椎椎間板ヘルニアを発症させる要因になります。 体重管理を怠ることも頚椎に過剰な負担をかけ、症状を悪化させる原因の一つです。適切な体重を維持することが、頚椎への負担を減らすためには不可欠です。 そして喫煙は血流を悪化させ椎間板の劣化を進行させるため、禁煙を心がけ、ヘルニアの進行を防ぐよう努めましょう。 頚椎椎間板ヘルニアの検査方法 頚椎椎間板ヘルニアの疑いがある場合、医師は身体の異常を確認する理学的検査と、画像による検査を組み合わせて診断を進めていきます。 理学的検査(身体所見) 頚椎椎間板ヘルニアが疑われる場合、まず医師によって理学的検査が行われます。これは患者の症状や神経障害の有無を直接確認するための重要なステップです。 以下の表に、頚椎症状・神経根症・脊髄症のそれぞれに対する理学的検査の内容をまとめています。 症状分類 主な理学的所見 代表的な検査法 頚椎症 ・頚椎の可動域制限 ・僧帽筋・棘上筋・棘下筋などの圧痛 ・頸部の可動域テスト ・筋肉の触診・圧痛評価など 神経根症 ・上肢の筋力低下や筋萎縮 ・感覚障害 ・深部腱反射の低下 ・障害高位と一致した部位に症状が出現する ・スパーリングテスト ・ジャクソンテスト ・深部腱反射テスト 脊髄症 ・上肢の深部反射の低下や筋力低下 ・錐体路症状 ・ホフマン反射 ・ワルテンベルク反射 ・バビンスキー反射 ・足クローヌス ・指離れ徴候 ・10秒テスト(20回未満で異常) これらの理学的検査によって、どの神経がどの程度障害されているかを把握し、後述する画像検査へと進む判断材料とします。 画像検査 診断には画像による診断が必要となり、そのため以下のような検査が行われます。 X線像(レントゲン) MRI(磁気共鳴画像法) 脊髄造影(ミエログラフィー) X線像(レントゲン) X線像(レントゲン)検査では、椎間板そのものは写りませんが、椎間の隙間や骨の形状、椎体のアライメントなどを確認できます。この疾患では、椎間の空間が狭くなったり、小さな骨の突起ができたりすることがあり、とくに第4-第5頚椎など発症しやすい部位の異常を見逃さないことが重要です。 高齢者では加齢による骨の変性が進行しやすく、骨の出っ張りが隣の椎間にもヘルニアを生じさせる例もあります。X線像(レントゲン)検査は初期診断として簡便に実施できるため、症状の進行や構造的変化を把握する上で有効な検査方法です。 MRI(磁気共鳴画像法) MRI(磁気共鳴画像法)は、頚椎椎間板ヘルニアの診断において最も精度の高い検査法とされており、椎間板の突出や脊髄の圧迫状態、神経根部の傷みを細かく表示することができます。 X線像やCTでは確認が難しい軟部組織の変化も明確に捉えることが可能で、とくに第4頚椎と第5頚椎の間などに問題がありそうな場合に役立ちます。症状の程度と画像所見を照らし合わせることで、治療方針の決定に役立ちます。 脊髄造影(ミエログラフィー) 脊髄造影検査では、脳槽・脊髄用の造影剤を脊髄の周囲に注入し、脊髄や神経根をくっきりと映像化します。映像化により、突出した椎間板が脊髄や神経の根元を押している様子を直接観察できます。 とくに、脊髄造影とCT検査を組み合わせると、ヘルニアの位置や神経への影響をより詳しく、立体的に評価することが可能です。ただし、近年では体への負担が少ないMRI検査が一般的になり、脊髄造影の実施数は減少傾向にあります。 【損傷部位別】頚椎椎間板ヘルニアの治療法 頚椎症状、神経根症、脊髄症に分けて説明します。椎間板ヘルニアは自然吸収されることが多いため、無理に手術を選択すべきではないと考えます。(文献4) 頚椎症に対する治療 頚椎症の対処法では、まず手術以外の保存的な治療が主体となります。以下のような方法が広く行われています。 薬物療法:消炎鎮痛剤を用いて、炎症や痛みを抑える トリガーポイントブロック注射:局所麻酔薬を注射して筋肉の緊張や痛みの緩和を図る 柔軟体操や理学的療法:筋肉をほぐして可動域を改善する これらを組み合わせることで、頚椎症による神経症状の改善が期待できます。 神経根症に対する治療 神経根症は症状によりますが保存療法を行った後に手術療法が検討されます。 治療法 治療内容 保存療法 ・消炎鎮痛薬を使用した薬物療法 ・頚椎カラーで首を固定し安静を図る ・激しい痛みに対してはステロイドの内服や、硬膜外ブロック・神経根ブロック・星状神経節ブロックなどを併用 手術療法 ・前方除圧固定術(椎間板やヘルニアを摘出し、インプラントで椎体を固定) ・外側型ヘルニアでは後方からの摘出術も選択されることがある 保存療法 保存療法では、消炎鎮痛薬などの薬物療法を行います。 痛みが激しい場合には以下を併用することもあります。 副腎皮質ステロイドの内服 神経根ブロック 星状神経ブロック 硬膜外ブロック など 頚椎椎間板ヘルニアは保存療法によって経過することが多く、2〜3カ月で改善効果を体感できることが多いです。 薬物療法の他にも、頚椎カラーを装着して頸部の安静を図ることもあります。 手術療法 保存療法を2〜3カ月継続しても効果が見られない場合や、麻痺が進行性に悪化している場合には外科手術に移行します。 椎間板ヘルニアは脊髄や神経根の前方にあるため、前方除圧固定術(anterior decompression and fusion)を選択することが多いです。(文献5) 前方除圧固定術では、首の横にある太い筋肉の内側から切り開き、のどと食道を横にずらして、問題のある椎間板まで到達します。そこで、飛び出している椎間板を完全に取り除き、その空いた場所に腰の骨から取った骨の一部や人工物(インプラント)を入れて、背骨同士をつなぎ合わせます。 背骨がずれないように、また入れた骨や材料が外れないように、金属の板を前側から取り付けることもあります。 神経に痛みやしびれが出ているタイプの椎間板ヘルニアでは、首の後ろ側から背骨の一部を削り、神経の通り道を広げてから、飛び出した椎間板を取り除く方法を選ぶこともあります。 これは骨や神経などの構造をさまざまな角度から確認しながら、飛び出した椎間板を取り除き、背骨を安定させる手術です。首や腕の痛み、しびれを改善するのが目的です。 脊髄症に対する治療 脊髄症では症状により保存療法と重症であれば手術療法が検討され以下のような治療を行います。 治療法 治療内容 保存療法 頚椎カラーで頸部を安静に保ち、ヘルニアの自然吸収を待つ 手術療法 前方にあるヘルニアには「前方除圧固定術」が一般的。 脊柱管狭窄を伴うケースでは、「椎弓形成術」により脊髄を広範囲に除圧し、神経の保護を図る。 保存療法 症状が軽い場合は、頚椎カラーを使って首を動かさないようにし、突出した椎間板が自然に引っ込むのを待ちます。 ただし、歩き方がぎこちなくなる・指先を動かしづらくなる、などの症状が現れた場合は、身体の機能低下が永久的になってしまうのを防ぐ目的で外科処置を実施します。 手術療法 脊髄症の場合でも、通常は1ヶ所の椎間に問題があるため、前からアプローチする前方除圧固定術を行うのが一般的です。ただし、他の部分も狭くなっている場合は、背中側から椎弓形成術を行うこともあります。 椎弓形成術は広範囲の圧迫を解消でき、脊髄を守る構造も残せます。合併症は少ないですが、後ろの筋肉を傷つけるため、術後に首が痛くなりやすい欠点があります。 重要なのは、症状出現から手術までの期間が長いほど、後遺症リスクが高まることです。適切な時期の治療が後遺症予防の鍵となります。 頚椎椎間板ヘルニアの後遺症の治療には再生医療をご検討ください https://youtu.be/0hyJR5VW3oY 頚椎椎間板ヘルニアの手術後、「手や足のしびれが残る」「力が入らない」といった後遺症に悩まされる方が少なくありません。とくにC4、C5の部位は運動機能に関わる神経が集まっており、術後の影響が出やすいのが特徴です。 長引く神経症状に対し、近年では再生医療を活用した治療法が多くの関心を集めています。リペアセルクリニックでは、こうした症状を抱える患者様に対し、幹細胞治療をご提案しております。 再生医療に関する詳細は、以下のページをご覧ください。 頚椎椎間板ヘルニアと似た症状の病気 頚椎椎間板ヘルニアと似ていますが違った病態を紹介しておきます。似ているとはいえ、疾患によって治療方針が変わってくるため、頸肩腕痛を引き起こす疾患との鑑別が非常に重要です。 肩の軟部組織の変化による疾患(肩の腱損傷、肩関節拘縮など) 肩関節を動かすときの痛みや肩の動きの制限が見られる場合は、頚椎疾患以外が原因と判断できます。 C5神経根症と腱板断裂は、両方とも腕の付け根の外側に痛みが出て、腕を横に広げる動きが難しくなるので見分けが必要です。 C5神経根症では、肩の三角形の筋肉や腕の前側の筋肉が弱くなることが多いですが、腱板断裂では腕の前側の筋肉の力は普通に保たれています。 胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome) 胸郭出口症候群は、首の横と前の筋肉群、鎖骨や一番上の肋骨、小さな胸の筋などによって腕へ行く神経の束と鎖骨下の血管が胸の出口で押されて生じる症状です。 長時間の同じ姿勢や反復動作、外傷、先天的な解剖学的変異などが原因で、腕の痛みや感覚の異常、手の力が弱まるなどの症状が特徴的です。 肘部管症候群(cubital tunnel syndrome) 肘部管症候群は、肘の内側にある神経が締め付けられる障害です。 小指側の神経が通る溝を軽く叩くと電気が走るような反応が起きます(ティネル徴候)。薬指の内側から小指にかけて感覚の異常や動きにくさなどが発生し、悪化すると薬指と小指の形が変わってしまいます。 肘を曲げた姿勢の長時間維持や肘の繰り返しの圧迫が原因となりやすく、しびれや痛みが特徴的です。 手根管症候群(carpal tunnel syndrome) 手根管症候群は、手首の通路での神経の圧迫障害です。 親指、人差し指、中指、薬指の一部にしびれや痛みが現れ、指先の不快感は夜中や朝方により強く現れる傾向が見られます。 長時間のキーボード操作や手首を曲げる作業、妊娠、関節リウマチなどが原因です。初期症状は夜間の痛みやしびれで、進行すると親指の筋肉が痩せて細かい作業が困難になります。 脊随腫瘍(spinal cord tumor)・脊椎腫瘍(spinal tumor) 脊髄腫瘍は神経の通り道に、脊椎腫瘍は背骨自体に発生する異常な細胞の集まりです。 主な症状は背中や首の痛み、手足のしびれや力の低下、歩行の問題などがあります。 進行すると感覚異常や運動機能が悪化し、排泄機能にも影響が出ることがあります。遺伝や他の場所からのがん転移などが主な原因です。 診断はMRI検査が中心で、治療は腫瘍のタイプや場所によって手術、放射線治療、薬物療法などを選択します。 \まずは当院にお問い合わせください/ まとめ|頚椎椎間板ヘルニアは症状が出た部位に応じて適した治療を受けましょう 頚椎椎間板ヘルニアは、椎間板が突出して脊髄や神経根を圧迫し、首や肩、腕の痛みやしびれ、手指の運動障害、歩行障害などを引き起こす疾患です。 とくにC5-C6やC6-C7の部位での発症が多く、30〜50代の男性に多く見られます。原因は加齢による変性や外傷、喫煙などがあり、診断にはレントゲンやMRIなどの画像検査が用いられます。症状の程度や進行具合に応じて、薬物療法や頚椎カラーなどの保存療法、または手術療法が選択されます。 いずれにしても、医療機関で検査を受け、医師の診断をもとに、症状や病態に合わせた適切な治療法を選択することが大切です。 なお、頚椎椎間板ヘルニアの治療には、「再生医療」という選択肢もあります。患者様ご自身の幹細胞や血小板を採取し、培養・加工を行った後、患部へ投与することで神経の回復をサポートする治療法です。気になる方は当院までご相談ください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献 (文献1) 日本整形外科学会「頸椎椎間板ヘルニア」 https://www.joa.or.jp/public/sick/pdf/MO0032CKA.pdf(最終アクセス:2025年4月18日) (文献2) 日本脊椎脊髄病学会「頚椎椎間板ヘルニア」 https://ssl.jssr.gr.jp/assets/file/common/sick/d_ketsuiherunia.pdf(最終アクセス:2025年4月18日) (文献3) 日本整形外科学会「頚椎症性脊髄症」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/cervical_spondylotic_myelopathy.html(最終アクセス:2025年4月18日) (文献4) MSDマニュアル「頸椎椎間板ヘルニア」MSDマニュアルプロフェッショナル版 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/06-%E7%AD%8B%E9%AA%A8%E6%A0%BC%E7%B3%BB%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%A8%E7%B5%90%E5%90%88%E7%B5%84%E7%B9%94%E7%96%BE%E6%82%A3/%E9%A0%B8%E9%83%A8%E7%97%9B%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%83%8C%E9%83%A8%E7%97%9B/%E9%A0%B8%E6%A4%8E%E6%A4%8E%E9%96%93%E6%9D%BF%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%82%A2(最終アクセス:2025年4月18日) (文献5) 一般社団法人日本脊髄外科学会「頚椎椎間板ヘルニア」 https://www.neurospine.jp/original24.html(最終アクセス:2025年4月18日)
2021.08.05 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
肩腱板損傷の画像診断|CT、MRI以外、関節の造影検査をご存知ですか 肩関節疾患の診断において、CTや、MRIの飛躍的な進歩にもかかわらず、造影検査は依然として重要な補助診断法の一つです。この造影検査方法には3種類あります。 陽性造影:ヨード製剤を用います。 陰性造影:空気を用います。 二重造影:ヨード製剤と空気の両方を用います。 この3種類の中では、「1)陽性造影」が広く行われています。 動態関節造影と肩峰下滑液包造影 それぞれの方法をご説明します。 動態関節造影 イメージ透視の映像をビデオなどに連続的に記録する方法で、造影剤のダイナミックな移動が観察でき、所見の見落としを防ぐ事もできるので、肩関節造影時に同時に行っています。 肩峰下滑液包造影 主に腱板滑液包面断裂の診断に用いられています。造影剤(ウログラフイン、イソビストなどの水溶性のもの) 5mLと1%キシロカイン5mLを混和した注射器に、23G短針を接続して、立位または座位で透視下にて、肩峰外側縁のやや下方から AHI(acromio-humeral interval:肩峰前下面の骨皮質と上腕骨頭の頂点との間の距離)の中上 1/3を目標にして、肩峰下滑液包内に刺入します。 二重造影では造影剤1mLと空気10mLを注入します。造影剤が腱板内に入り込んだり、腱板滑液包、局所に貯留したりする場合は腱板滑液包面断裂を疑います。 腱板断裂の関節造影について 関節造影について詳しくご説明します。 腱板断裂で疑われる画像所見 造影剤が肩峰下滑液包に漏出すれば、腱板の全層断裂 (full-thickness tear)の診断が確定します。外旋位前後像で大結節直上に造影剤の漏出があれば棘上筋腱の断裂を疑い、内旋位前後像で大結節直上に造影剤の漏出があれば棘下筋腱の断裂を疑います。 scapular Y像 腱板の断裂部への造影剤の漏出だけでなく、水平断裂像の描出も可能です。長期間経過した腱板小断裂や腱板不全断裂 (関節包面断裂や水平断裂)の描出は難しいので、他動的に肩関節をよく動かして、関節内圧を上げてから再度調べる必要があります。 動態撮影を併用すると、断裂の大きさや断裂部位がより明らかとなります。また、腱板滑液包面断裂の診断には、肩峰下滑液包造影が用いられます。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます 一般的な肩関節造影法について 以下で詳しくご説明いたします。 前方刺入法 ① 検査前にヨードや局所麻酔薬に対するアレルギー反応の有無について確認します。 ② 透視台の上に仰臥位になって貰います。 ③上肢を体側に接して透視台の上に置いた状態で外旋位になるように体位を調整します。 ④ 烏口突起を中心に広範囲に消毒をします。 ⑤ 1%キシロカイン10mLの入った注射器に21Gスパイナル針を接続。 ➅透視下にて烏口突起先端の1cm尾側で、1cm外側から関節裂隙に垂直に刺入。 ⓻少量の局所麻酔薬を注入して抵抗がないこと、上肢を少し内外旋して針先が関節内にあることを確認。 ⑥ 21Gスパイナル針を留置したまま 造影剤 (ウログラフィン、イソビストなどの水溶性のもの) 10mLと1 %キシロカイン10m Lを混和した延長チューブ付きの注射器に交換。 透視下にて確認しながら、ゆっくり注入します。(注入量は約 20rnLとされています。) ⓻造影は内旋位、外旋位および挙上位の3枚の前後像を撮影。 ⑧肩関節疾患に応じて軸射位像と scapular Y像などの撮影を追加します。 正常の画像所見 内旋位像 肩関節の前方組織が弛緩するので、内側に肩甲下筋滑液包(subscapularis bursa)、内下方に関節包前部 (anterior pouch)、および下方に関節包下部(腋窩陥凹; axillary pouchまたは inferior pouch) が描出されます。 外旋位像 肩関節の前方組織が緊張するので、肩甲下筋滑液包、関節包前部、および関節包下部は縮小します。外側に上腕二頭筋長頭腱腱鞘 (bicipital tendon sheath) が描出されます。 挙上位像 肩関節の下方組織が緊張するので、関節包下部は縮小します。上方に上腕二頭筋長頭腱腱 鞘、内側に肩甲下筋滑液位が描出されます。 軸射位像 関節窩の前縁と後縁に関節唇が三角形の陰影として描出され、前方には肩甲下筋滑液包も描出されます。 scapular Y像 前方に肩甲下筋滑液包、前下方に関節包前部、下方に関節包下部、および後下方に関節包後部 (posterior pouch)が描出されます。 以上、肩腱板損傷の画像診断について、CT、MRI以外の検査方法である関節の「造影検査」についてご説明いたしました。今回は、専門的な内容で難しかったかもしれませんが、ご不明な点があればご遠慮なくお問い合わせください。 少しでも参考にしていただけたなら幸いです。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下の検査方法もご参考下さい 腱板損傷の診断法、超音波(エコー)による画像検査について
2021.08.04 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板損傷とは 、肩についている腱板と呼ばれる筋肉が損傷する疾患です。腱板損傷になると、肩の痛みや筋力低下の症状が現れます。 腱板損傷を放置すると、痛みの増幅や 腱板断裂 の発症リスクをともなうため、早期治療が大切です。 本記事では、腱板損傷の診断に役立つテストを紹介します。自覚症状があればテストを実施し、腱板損傷の可能性を感じたら病院を受診して適切な治療を受けましょう。 「腱板損傷が悪化して手術が必要になりそう…」という方は、「再生医療 」による治療を一度検討してみてください。身体にメスを入れない治療法で、今注目を浴びています。 腱板損傷の代表的筋力テスト4つ まずは、筋力低下の状態を確認するテストを4つ紹介します。 棘上筋(S S P)テスト 棘下筋(I P S)テスト 肩甲下筋(S S C)テスト Drop arm sign(ドロップアームサイン) 筋肉の可動域に制限が出たり、左右の動きに差が生じたりする場合は、腱板損傷の可能性があります。また、動作で痛みがともなう場合も腱板損傷を疑いましょう。 棘上筋(S S P)テスト 棘上筋は外転(腕を体の横から挙上する動作)で作用する筋肉です。 腱板の中で最も損傷が多いのが棘上筋 であり、棘上筋が断裂すると外転筋力が20〜30%低下するといわれています。 Full can test: 肩関節外転30°で外旋位(親指を上に向ける)にする 腕を上げてもらう力に対し、検者は抵抗を加えてチェックする Empty can test: 肩関節外転30°で内旋位(親指を下に向ける)にする 腕を上げてもらう力に対し、検者は抵抗を加えてチェックする 棘下筋(I P S)テスト 棘下筋は肩関節の外旋(腕を外にひねる動作)で作用する筋肉です。 External rotation lag sign: 腕を下に下ろした状態から肘を90°に曲げます 肘から先を外側に開いていき左右で差がみられれば陽性 肩甲下筋(S S C)テスト 肩甲下筋は肩関節の内旋(腕を内にひねる動作)で作用する筋肉です。腱板損傷の場合、痛みにより手を背中に回す動作ができないことがありますので、そのような時は下の2つのテストを試みる。 Lift off test: 背中に手を回し、その手を背中から離して保持できるかチェックする Bear-hug test: 患側(痛みのある方)の手で、健側(痛みのない方)の肩を押し込み、その力の強さをチェックして評価する Belly-press: 患側(痛みのある方)の手で、お腹を押し込む力の強さをチェックし、評価する Drop arm sign(ドロップアームサイン) 検査する人が外転90°まで持ち上げ、支持している手を離す 患者さんが腕を支えられなかったり、わずかな抵抗で腕を下ろした場合は陽性 このように腱板の各筋肉を個別にスクリーニングするテスト法はありますが、 実際は損傷している筋肉と検査結果が一致しない場合があります。 例えば、棘上筋が単独で損傷している時に肩甲下筋テストで陽性となる場合や、逆に肩甲下筋が損傷している時に棘上筋テストが陽性になる場合があります。 腱板損傷の有無はその他のテストも併用してチェックしましょう。 腱板損傷のテスト法には、筋力テスト以外に疼痛誘発テストがあります。疼痛誘発テストは検査者が患者さんに特定の動きを操作する、または患者さん自身に体を動かしてもらうことで腱板に疼痛が発生するかをチェックし評価します。 ▼ 腱板損傷を再生医療で治療する 腱板損傷の痛む場所を特定する2つのテスト 次に、痛みの部位の特定や状態を確認するテストを2つ紹介します。 インピンジメントサイン ペインフルアークサイン 動作に痛みを感じれば、腱板損傷の可能性があります。 インピンジメントサイン 1) Neer test: 検者は患側の肩甲骨を押し下げ、もう片方の手で外転させていく。 これは上腕骨を肩峰下面に押し当てるテストであり、外転90°を過ぎたあたりで疼痛がみられれば陽性 2) Hawkins test: 検者は屈曲(前方に腕を上げる動作)90°まで腕を上げ、内旋を加える。 これは上腕骨の大結節を烏口肩甲靭帯の下面に押し当てるテスト法であり、疼痛がみられれば陽性。 ペインフルアークサイン 患者さんの力により外転方向に挙上する。 棘上筋が損傷していれば60°〜120°の間で疼痛を感じ、それ以外の角度では疼痛を感じない。 紹介したテストを実施して、腱板損傷の可能性があれば病院を受診しましょう。腱板損傷を放置して、無理に肩を動かせば症状が悪化するリスクがあります。 下記の記事では、腱板損傷の人がやってはいけない動作について解説しています。病院で腱板損傷の診断を受けた方は、日常生活での過ごし方の参考にしてみてください。 腱板損傷の3つの画像診断方法 腱板損傷の診断では上記のテスト法が判断の手がかりになりますが、腱板損傷以外の疾患と鑑別し、正確に損傷部位を特定する場合には、画像による検査が必要となります。腱板損傷ではM R Iや超音波による検査が有用です。 M R I検査 腱板損傷に対する画像診断では、M R Iによる検査が最も有用です。 M R I検査とは磁気共鳴画像といい、レントゲン検査やC T検査のように放射線を使用するのではなく、電磁波を使用した画像診断です。 M R I検査では、どの腱板が損傷しているのか、どの範囲まで損傷しているのか、腱板のどの場所で損傷しているのかなどを評価することが可能です。 超音波(エコー)検査 超音波検査 では、筋肉や腱の状況を確認することができ、炎症が起きている場所の特定も可能です。超音波検査はM R Iと違い診察室で手軽に行える検査のため、患者さんと一緒にモニターを見ながら肩の状態を説明することもできます。 また超音波を当てながら注射の針を進めることで、より正確な目的地(炎症部位や筋膜、神経など)まで誘導することができます。 レントゲン検査 レントゲン検査では筋肉や腱の状態は確認できないため、腱板損傷の判断をするには難しいです。ただし、 腱板が断裂すると関節の隙間(肩峰と上腕骨頭の間)が狭くなることがあります。 また腱板損傷は肩関節の肩峰が変形し、骨棘(こつきょく:トゲのように変形した骨)により腱板がすり切れて発生する場合もありますので、原因究明の手がかりにもなります。 検査して重症と診断されれば、手術になる可能性があります。「手術の傷跡が残るのが嫌だ」「仕事があるから入院やリハビリをしたくない」という方には「再生医療」がおすすめです。 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした細胞を再生する医療技術です。手術のように身体を切開しないので、入院やリハビリをする必要がありません。 再生医療なら弊社 『 リペアセルクリニック 』にご相談ください。再生医療の症例数8,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりにあった治療プランをご提案いたします。 まとめ|腱板損傷の疑いがあればテストを受けて確かめよう! 腱板損傷を評価するためのテスト法は検査をする目的によって方法が異なります。陽性反応がみられるテストは痛みを伴いますので、痛みの出る強さはポジション、筋力低下の加減を記録しておくと、治療経過を確認する上での指標にもなります。 ただし、腱板損傷は時間の経過とともに疼痛が消失したり、拘縮により関節の動きに制限がかかり、正確なテストの評価ができないことがあります。また急性期であってもテスト法だけでは情報が不十分なため、画像診断も含めて判断する必要があります。 現在、腱板損傷の治療法のひとつとして「再生医療」 が注目されています。切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 リペアセルクリニック では、無料相談も受け付けていますので「再生医療で腱板損傷をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック 』にお気軽にお問い合わせください。
2021.04.01 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板損傷のリハビリには、損傷を受けていない腱や筋肉の機能向上や患部に負担をかけないための動作改善といった効果があります。 しかし、リハビリを進めていくにあたりいくつか注意点がありますので、症状の悪化を防ぐためにも、リハビリの正しい実践方法を覚えましょう。 本記事では、腱板損傷におけるリハビリの効果や代表的なリハビリプログラムを解説します。 リハビリを通して、腱板損傷の症状を緩和させたい方は参考にしてみてください。 腱板損傷はリハビリだけで治るのか? 腱板損傷の治療において、リハビリで改善が可能かどうかは損傷の程度によって異なります。 リハビリで治る可能性があるケース ・損傷が軽度である(部分断裂) ・痛みや可動域制限が比較的軽い ・年齢や活動レベルによっては保存療法が有効 リハビリだけでは難しいケース ・完全断裂や広範囲の断裂がある場合 ・肩の機能障害が重度である ・筋力低下や夜間痛が強い そもそも、腱板とは肩に付いている4つの筋肉(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋)の総称で、腱板損傷はこれらの筋肉の一部が損傷する「部分断裂」または完全に切れる「完全断裂」に分類されます。 現在、腱板損傷の治療法の1つとして「再生医療」が注目されています。 自分の脂肪などから採取した細胞を培養・増殖させて注射することで、切れた腱を修復し、肩の機能を回復させることを目指す治療法です。 従来の手術と違い、体に負担をかけずに普段の生活を続けながら治療でき、傷跡や術後の後遺症の心配もほとんどありません。 例えば、実際に当院で治療を受けられた60代女性の患者様は、「手術しかない」と診断されていたにもかかわらず、幹細胞治療によって半年後には痛みも軽減し、スムーズに肩が動かせるようになったという回復例もあります。 >>腱板損傷の症例に関してはこちら 現在、リペアセルクリニックでは、腱板損傷に関する再生医療の無料電話相談を受け付けております。 「切らずに治す可能性を知りたい」という方は、ぜひ一度お電話でご相談ください。 再生医療で治療した際の実例は以下の動画でも紹介しています。 https://youtu.be/CFNAS_lUZKM?feature=shared 腱板損傷におけるリハビリの目的や期間 腱板損傷におけるリハビリの目的は、損傷していない筋や腱の機能向上や損傷した部位に負担をかけないための動作改善です。 腱板損傷のリハビリ期間の目安は、日常生活への復帰なら2〜3カ月程度、スポーツや重労働の仕事への復帰であれば6カ月程度です。 個々の状態によっても、リハビリ期間は変わってきます。自身の状態を把握したい方は、以下の記事で紹介している腱板損傷の筋力や痛み確認テストを試してみてください。 腱板損傷のリハビリでおこなわれる代表的な3つのプログラム ここでは、腱板損傷のリハビリでおこなわれる代表的な3つのプログラムを紹介します。 ・筋力トレーニング ・ストレッチ ・日常生活の訓練 順番に見ていきましょう。 筋力トレーニング 機能低下が認められた腱板に対しては、リハビリとして積極的なトレーニングを指導します。 腱板は体の深いところに位置するため「インナーマッスル」と呼ばれます。そのため、腱板損傷のリハビリを目的とした筋トレは、インナーマッスルに焦点を当てたトレーニングが効果的です。 たとえば、腱板を鍛えるトレーニングでは、筋トレ用のゴム製チューブやタオルを活用して、対象部位を効果的に鍛えるやり方が有効です。 ただし、腱板に収縮時痛(力を入れたときの痛み)や、伸張痛(ストレッチのように筋肉が伸ばされたときの痛み)が出現し、断裂が疑われる腱板に対しては積極的なトレーニングはおこなわず、ほかの腱板に対する運動をおこなうようにします。 ストレッチ ストレッチには、腱板の可動域を広げたり、筋肉の緊張状態をほぐしたりする効果があります。 たとえば、肩の上げ下げや肩回しの動きは腱板損傷の回復に効果が期待できます。 痛みを伴うような過剰なストレッチは、病態の悪化や筋の防御性収縮を招き逆効果となりますので、深呼吸とあわせて実施するなどリラックスをしながら無理なく進めましょう。 日常生活の指導 腱板損傷の症状を悪化させないために、日常生活における動作の指導もおこなわれます。 以下は、日常生活のなかで腱板に負荷がかかりやすい動作の一例です。 ・衣服の着脱 ・荷物の持ち運び ・寝るときの姿勢 損傷を起こしている部位や症状の程度に応じて、個々に合った動作指導がおこなわれます。 腱板損傷のリハビリでやってはいけない3つのNG行為 腱板損傷のリハビリに取り組む際、やってはいけない行為があります。 ・発症直後に無理をして動かすこと ・焦って負荷をかけすぎること ・リハビリを怠ること 順調な回復を図るためにも、紹介する3つのポイントをおさえてリハビリに臨みましょう。 発症直後に無理をして動かすこと 発症直後は、可動域制限や筋力の低下が認められても、関節内での炎症が強く、無理に関節を動かすと疼痛を助長させてしまうリスクがあります。そのため、発症直後は三角巾を含む固定具を用いて患部の安静を第一優先しなければなりません。 段階的回復を目指すためにも、リハビリは患部の炎症が落ち着いてから進めましょう。 現在、腱板損傷の治療法として「再生医療」が注目されています。 人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 焦って負荷をかけすぎること リハビリ開始時は、自動介助運動(患者自身が力を入れ、セラピストが補助をする運動)から開始し、徐々に自動運動へと移行します。 自動運動でも痛みを感じずに運動できれば、抵抗運動のように腱板筋に負荷をかけていきます。 ただし、腱板損傷をした肩関節の挙上動作の獲得は、スポーツにたとえると一度覚えたフォームを改善するのと同じように時間を要する場合があります。 そのため、リハビリは焦らず取り組んでいきましょう。 リハビリを怠ること 腱板損傷を発症してから長期間が経過している場合は、関節包の硬化による筋肉の伸張性低下や、疼痛による関節拘縮を起こすケースが多くなります。 リハビリを怠ると症状が慢性化する可能性があるので、医師の指示に従って継続的にリハビリを実施しましょう。 肩の腱板断裂を放置するリスクについてはこちら▼ まとめ|腱板損傷に効果的なリハビリを覚えて回復を目指そう 腱板損傷では受傷してからの経過により症状が異なるため、病態に合わせたリハビリが必要です。 そして腱板損傷に対するリハビリでは、いかに残存している機能を引き出すか、また残存している機能で日常生活動作を獲得させるかがポイントとなってきます。 本記事で紹介した代表的なリハビリのプログラムを中心に、専門医の指導のもと無理のない範囲で進めていきましょう。 もし手術を勧められ迷われている場合は、注射だけで肩腱板の再生を目指す幹細胞治療(再生医療)という選択肢もあります。 この治療は、手術や長期入院を必要とせず、仕事や日常生活を続けながら取り組むことが可能です。 また、ご自身の細胞を使うため、副作用やアレルギーのリスクも極めて低く、自然な形で組織の再生を促す方法として注目されています。 お電話でのご相談も受け付けておりますので、まずは話を聞いてみることから始めてみませんか? 以下の動画でも再生医療の詳しい説明をしているので、治療の進め方や効果が気になる方は参考にしてみてください。 ▼再生医療に関する問い合わせはこちら >>(こちらをクリックして)今すぐ相談してみる https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=bKupVfsXpHM&embeds_referring_euri=https%3A%2F%2Ffuelcells.org%2F&source_ve_path=Mjg2NjY
2021.03.22 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
肩腱板断裂は腕を上げるたび鋭い痛みがあるため、少しでも痛みを和らげたいという方も多いのではないでしょうか。 本記事では、肩腱板断裂の痛みを緩和する5つの方法と治療法について詳しく解説します。 肩腱板断裂の痛みを和らげるには症状に合わせた対処法が重要となり、自己判断で行うと痛みが悪化するリスクがあるため注意しながら行う必要があります。 もし、現在受けている治療で「痛みがなくならない」「期待した効果が見られていない」という方は、先端医療である再生医療を検討してみてください。 再生医療は、肩腱板断裂による痛みの根本的な改善が期待できる治療法として注目されています。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、肩腱板断裂を手術せずに治療できる再生医療に関する情報や症例を配信中です。 「肩の痛みをとにかく早く治したい」「肩腱板断裂を根本的に治したい」という方向けに有益な情報を公開しているので、ぜひこの機会にご参考ください。 \公式LINEでは再生医療に関する情報や症例を公開中!/ 肩腱板断裂の痛みを和らげる5つの方法 肩腱板断裂の痛みを和らげるには、以下5つの方法があります。 温冷療法で炎症を抑え痛みを軽減 正しい姿勢と腕の位置で負担を減らす 痛くない範囲でのストレッチ 枕の高さを調整して夜間痛を防ぐ 消炎鎮痛剤や湿布で痛みを抑える これらは自宅でも実践できる方法ですが、医師の指導のもと症状や生活スタイルに合わせて取り入れていきましょう。 本章ではそれぞれの対処法を詳しく解説していきます。 また、以下の記事では肩腱板断裂が放置では治らない理由を紹介していますので、気になる方は参考にしていただけると幸いです。 温冷療法で炎症を抑え痛みを軽減 温冷療法は、症状や時期によって温めたり冷やしたりすることで効果的に痛みを軽減する対処法です。 ケガをしてから48時間以内の急性期は冷やすことで炎症を抑制し、それ以降は温めて血行を促進します。 冷却には氷嚢やアイスパックを、温めるにはホットパックや入浴を活用しましょう。 また、寒冷療法は15分以上の連続使用は避けて皮膚を保護するためにタオルを必ず挟むのがポイントです。(文献1) 正しい姿勢と腕の位置で負担を減らす 日常生活では、正しい姿勢や腕の使い方を工夫すると肩への負担を大きく軽減できます。 とくに気をつけたいのは以下の3点です。 腕を上げすぎない 同じ姿勢を長時間続けない 重いものを持たない デスクワークでは、肘を机につけて支えると肩の負担を減らせます。 また、パソコン作業時はキーボードを体の正面に置き、マウス操作は肘を開きすぎないよう注意しましょう。 こまめに休憩を取り軽く肩を回すのも効果的です。 痛くない範囲でのストレッチ 痛くない範囲で行うストレッチは、肩周りの柔軟性を保ち痛みの軽減に期待できます。 まずは、壁に手をついて体を少しずつ前に傾けるストレッチから始めましょう。 ここでも痛みが出ない程度にゆっくりと動かし、無理な姿勢は避けます。 1回のストレッチは10秒程度を目安に、1日3回ほど実施するのがおすすめです。 徐々に可動域を広げていくと、日常生活での動きやすさも改善していきます。 枕の高さを調整して夜間痛を防ぐ 肩腱板断裂の痛みが夜間に強くなる場合、枕の高さが合っていないのが原因の1つとして挙げられます。 枕が高すぎると肩に負担がかかり、痛みが増す可能性があるためです。 そのため、適切な高さの枕を選ぶと肩が自然な位置に保たれ負担が軽減します。 また、横向きで寝る際は肩を下にせず、クッションで支えると楽になるはずです。 夜間の痛みは睡眠の質を低下させて日中の活動にも影響を及ぼすため、枕の高さを調整して痛みの緩和対策をしましょう。 消炎鎮痛剤や湿布で痛みを抑える 肩腱板断裂の痛みを一時的に抑えるには、消炎鎮痛剤や湿布も有効です。 薬局で購入できる市販の痛み止めや湿布は、炎症を抑える効果があるためです。 湿布は冷感タイプと温感タイプがあるため、症状に合わせて使い分けましょう。 たとえば、炎症や腫れが強い場合は冷感タイプ、慢性的な痛みや筋肉のこわばりが気になる場合は温感タイプが適しています。 ただし、痛みを緩和する一時的な対策であり根本的な治療ではありません。 したがって、長期間使用する際は症状や治療方針について医師への相談をおすすめします。 肩腱板断裂の主な原因3つ 肩腱板断裂が起こる原因は大きく分けて3つあります。 加齢による腱板組織の老化 転倒や外傷による腱板の損傷・断裂 過度の使用(オーバーユース) 年齢や生活習慣、事故などさまざまな要因で発症する可能性があります。 本章では肩腱板断裂の主な3つの原因を詳しく解説していきます。 加齢による腱板組織の老化 加齢に伴う腱板組織の老化は、肩腱板断裂の最も一般的な原因です。 40代後半から徐々に腱板の組織が弱くなり始め、50代以降で断裂のリスクが高まります。 年齢とともに腱板を構成する組織の弾力性が低下し、血行も悪くなるため、日常生活での些細な動作でも断裂を引き起こすことがあります。 加齢による腱板組織の老化は、定期的なストレッチや適度な運動によって、ある程度の予防が可能です。(文献2) 転倒や外傷による腱板の損傷・断裂 転倒やスポーツで肩を強打した際に腱板が損傷することがあるため、外傷が直接的な原因となるケースも少なくありません。 とくに高齢者は転倒時に受け身が取りづらく、肩に衝撃が集中しやすいためです。 また、重い物を持ち上げた際に腱板が急激に引っ張られて断裂する場合もあります。 したがって、外傷による損傷を防ぐためには、転倒防止の対策や筋力トレーニングが効果的です。 万が一、外傷を受けて肩腱板断裂が疑われる際には、早めに医療機関で診察を受けましょう。 体にメスを入れて関節の手術をするということは、術後の関節部の癒着が起こります。この癒着は術後のリハビリで対応しますが、完全に癒着が取れずに関節の可動域が悪くなりそれに伴い痛みが出ることが多々あるのです。痛みは、四十肩・五十肩に似ています。 過度の使用(オーバーユース)腱板の再断裂 日常的に肩を酷使する動作を続けていると、腱板がダメージを受けやすくなります。 たとえば、テニスや野球などのスポーツや、肩を頻繁に動かす職業や趣味を持つ人は注意が必要です。 腱板に休息が取れない状態が続くと、小さな損傷が断裂につながることがあります。 そのため、適切な休息を取り、筋肉をサポートするストレッチやトレーニングを取り入れると良いでしょう。 肩を労わりながら、長く健康を保つ意識が大切です。 また、腱板断裂と五十肩(四十肩)の違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事も確認してみてください。 肩腱板損傷の検査方法は4つ 肩腱板断裂が疑われる場合、適切な治療のために正確な診断が必要です。 検査方法は主に以下の4つがあります。 ドロップアームテスト(Drop Arm Test) レントゲン検査 超音波検査 MRI検査 それぞれの検査には特徴があるため1つずつ詳しく見ていきましょう。 ドロップアームテスト(Drop Arm Test) ドロップアームテストは、診察の初期段階で実施することが多い検査方法です。比較的短時間で検査が可能であり、特別な機器も必要なく実施できるのが特徴です。 腕を横に90度上げた状態でキープし、肩腱板の状態を確認します。健康な場合は同様の姿勢で腕を保持できますが、腱板断裂があると途中で腕が落ちてしまいます。 また、痛みを伴う場合は必ず検査前に医師に伝えましょう。 レントゲン検査 レントゲン検査は、骨の状態を確認する基本的な画像診断です。 腱板断裂に伴う骨の変形や、肩峰下の石灰沈着の有無を調べられます。 また、年齢による骨の変化も同時に確認できるため、治療方針を決める重要な情報となります。 レントゲン検査の時間は数分程度で済み、基本的に痛みもほとんどありません。 ただし、軟部組織である腱板自体は直接見ることができないため、他の検査と組み合わせて診断を行います。 超音波検査 超音波検査は、腱板の状態を動きながら観察できる便利な検査方法です。 肩を動かしながらリアルタイムで腱板の様子を確認でき、断裂の有無や範囲を詳しく調べられます。 体への負担が少ない検査なので、高齢者でも気軽に受けられるのが特徴です。 また、検査時に医師と対話しながら痛む部位を直接確認できるため、より正確な診断につながります。 MRI検査 MRI検査は、最も詳細に腱板の状態を確認できる検査方法です。 腱板の断裂の有無はもちろん、断裂の大きさや周囲の組織への影響まで把握できます。 検査は専用の装置の中で、約20〜30分ほど静かに横になっているだけで済みます。 放射線は使用せず痛みもないため、体への負担は最小限です。 ただし「心臓ペースメーカーや人工内耳・中耳」など、金属を体内に入れている方は検査できない場合があるため、事前に医師に相談しましょう。 また、CTやMRI以外で行う関節の造影検査については以下の記事でも詳細に解説しています。 肩腱板断裂の3つの治療法 肩腱板断裂の治療は症状の程度や年齢、生活スタイルによって選択していきます。 主な3つの治療法は以下のとおりです。 治療法 特徴 保存療法 投薬やリハビリテーションを中心とした非手術的な治療 手術療法 断裂した腱板を修復する外科的な治療 再生医療 幹細胞などを用いた新しい治療 それぞれの特徴やメリットを詳しく解説します。 保存療法とは、痛みの軽減と肩の機能回復を目指し、投薬やリハビリテーションを組み合わせて進める治療法です。 具体的には、消炎鎮痛剤の服用や温冷療法、ストレッチなどを行います。 治療期間は3〜6カ月程度が一般的で、65歳以上の方や部分断裂でも保存療法が推奨されます。 症状が軽減するまで時間はかかりますが、根気強く続けることで日常生活への影響を最小限に抑えられるでしょう。 手術療法 手術療法は、保存療法で改善が見られない場合や、完全断裂で症状が重い場合に検討される治療法です。 代表的なのは、断裂した腱板を縫い合わせて肩の機能を回復させる「関節鏡を使った手術」です。 手術後にはリハビリが必要となりますが、しっかり行えば機能が改善する可能性が高まります。 そのため、手術療法はリハビリ期間も含めて医師と十分に相談した上で選択してください。 再生医療 再生医療は、患者さん自身の血小板や幹細胞を利用して、損傷した腱板の修復を促進する治療法です。 従来の手術に比べて身体への負担が少なく回復も早いのが特徴で、手術を避ける選択肢として近年注目を集めています。 また、手術をされた方にも再生医療は有効です。 腱板に再生医療を併用することで、再断裂のリスクを抑えるだけでなく、傷口の修復や術後に起こり得る疼痛の軽減にも期待されます。 再生医療に関する詳細は以下のページでも詳しく解説しています。 また、当院では肩腱板断裂に効果が期待できる再生医療を提供しています。肩腱板断裂の症状でお悩みの方はお気軽にご相談ください。 \クリックして電話をかける/ まとめ|肩腱板断裂の痛みについては専門医に相談してみよう 肩腱板断裂の痛みは、適切な対処法で和らげることができます。 自宅でできる温冷療法やストレッチ、姿勢の改善から医療機関での治療まで症状に応じた選択肢があります。 ただし、自己判断での過度な運動や負荷は症状を悪化させる可能性もあるので注意が必要です。 まずは専門医に相談し、自分に合った治療法を見つけていきましょう。 早期発見・早期治療が、痛みの軽減と日常生活への早期復帰につながります。 また、当院「リペアセルクリニック」では再生医療の提供もしていますので、肩腱板断裂の痛みでお悩みの方はお気軽にご相談ください。 \クリックして電話をかける/ 肩腱板断裂に関するQA 腱板断裂でやってはいけないことはなんですか? 肩腱板断裂で最も避けたいのは、無理に肩を使い続けることです。 腕を頭上に上げる動作や、重いものを持ち上げたり、我慢して運動を続けるのも「やってはいけない動作」だといえます。 また「様子を見れば治るだろう」と放置してしまうのも要注意です。 適切な治療を受けないまま症状が進行してしまうと、より複雑な治療が必要になったり、回復までの期間が長引いたりするケースもあります。 少しでも痛みが気になる場合は、早めに専門医へ相談しましょう。 また、腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけない動作については、以下の記事も参考にしていただけると幸いです。 肩腱板損傷はどのくらいで治るのですか? 肩腱板損傷の回復期間は、損傷の程度や治療方法によって異なります。 軽度であれば数週間から数カ月ですが、完全断裂の場合は手術が必要となるため、術後のリハビリも含めると半年から1年ほどかかるでしょう。 したがって、早期発見・早期治療が重要ですので、痛みがあれば我慢せずに早めの受診をおすすめします。 また、肩腱板損傷を放置する危険性については以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方は参考にしてください。(文献2) 参考文献一覧 (文献1) 物理療法系専門領域研究部会_寒冷療法 (文献2) 公益財団法人 日本整形外科学会_「肩腱板断裂」
2021.03.16 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
膝の痛みや変形性膝関節症・半月板損傷を含む膝の疾患で、膝サポーターの着用を検討されている方もいるでしょう。 本記事では、膝サポーターを効果的に使用する方法や正しい装着方法、商品の選び方などを解説しています。膝サポーターの使い方に困っている方や、どのサポーターにすれば良いのか悩んでいる方は参考にしてみてください。 膝サポーターの効果的に使用する方法【丸まらない状態を保つのがコツ】 以下3つのポイントをおさえて使用すると、サポーターの効果や耐久性が長持ちしやすくなります。 ・長時間の使用は避ける ・膝もサポーターも清潔な状態を保つ ・定期的に交換する 膝サポーターの効果を長続きさせて、快適な装着感を維持しましょう。 長時間の使用は避ける サポーターを長時間装着し続けていると、患部が圧迫されて血流が悪くなってしまいます。また、楽だからといって、ずっと装着したままでいると膝を支える筋力が低下しかねません。 そのため、意識して定期的に外して、できるだけ着けている時間を短くする工夫が大切です。安静時もつけっぱなしにするのではなく、外す習慣をつけるようにしましょう。 膝もサポーターも清潔な状態を保つ 変形性膝関節症でサポーターを使用するときは、膝もサポーターも清潔な状態で使用するようにしてください。 汚れや汗で不衛生な状態で使用すると皮膚がアレルギー反応を起こしたり、接触性皮膚炎を引き起こしたりする可能性があるためです。 以下は、サポーターを清潔に保つ方法です。 ・定期的に洗濯や手洗いをする ・膝の汗を拭きとってから使用する ・使用していないときは形を整えて保管しておく サポーターによって手入れの方法が異なります。使用方法や洗濯方法をよく確認した上で、適切なケアを心がけましょう。 定期的に交換する サポーターは消耗品という認識をもってください。 長期間使用していると素材が伸びたり、弾力性が失われたりして、サポート効果が薄れます。 劣化したサポーターを使って変な負担が掛かることで逆に症状が悪くなる危険性もあります。劣化が見られ、正しくフィットしなくなってきた場合は積極的に新しいものに交換しましょう。 なお、しばらくサポーターを使用しても効果が実感できない場合は、病院の受診を検討してみてください。症状が進行している可能性もあるためです。 自分に合った病院を探している方は再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』への受診をご検討ください。再生医療とは人間の自然治癒力を活用した最新の医療技術です。すり減った軟骨を再生し、膝の痛みを軽減させる効果があります。 本来なら手術しなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。 膝サポーターの正しい4つの選び方|丸まらない商品の選定ポイントも紹介 ここでは、膝サポーターの正しい選び方を解説します。 膝サポーターを購入する際は、主に以下4つの項目をチェックして選びましょう。 ・膝のサイズに合ったものを選ぶ|血行不良を防止 ・用途に合ったものを選ぶ|迷ったら主治医に相談 ・使用感の良いものを選ぶ|付け心地は試着して確認 ・素材を見て選ぶ|サポーターのずれや丸まりの対策 それぞれの選定ポイントを詳しく解説します。 膝のサイズに合ったものを選ぶ|血行不良を防止 膝サポーターを使うときは、まず自分の膝のサイズに合ったものを選ぶことが大切です。 サイズが合っていないと、膝をしっかり固定することができなくなり、十分な効果が得られないからです。以下は、正しいサイズの選び方です。 ・自分の膝周りのサイズを事前に測っておく(膝上10㎝の周囲をメジャーで図る) ・自分の周囲の長さをもとに、商品のサイズ表を確認して適切なものを選ぶ サイズ選びを正しくおこなえば、より良い治療効果が期待できます。 用途に合ったものを選ぶ|迷ったら主治医に相談 サポーターには以下のように、さまざまな用途の商品があります。 ・スポーツにおすすめのタイプ ・立ち仕事をする場合におすすめのタイプ ・高齢者におすすめのタイプ ・リハビリをおこなう人におすすめのタイプ 用途によって、サポート力や素材の特性が異なります。そのため、自分の生活スタイルやニーズに合ったものを選ぶ視点が大切です。使用シーンを考慮した選択が効果的な治療につながります。 自分に合った用途がわからない場合は、主治医に相談して選び方のアドバイスをもらうと良いでしょう。 使用感の良いものを選ぶ|付け心地は試着して確認 サポーターを選ぶ際は、使用感も重視すべきです。サイズが合っていても、付け心地が悪いと継続的な使用が難しくなるためです。 サポーターは、サンプルを置いているお店もあるので、実際に試して使用感をチェックするのがおすすめです。 素材を見て選ぶ|サポーターのずれや丸まりの対策 膝サポーターを選ぶ際は、素材のチェックも大切です。 たとえば、滑り止めの素材が付いたタイプのものは、サポーターがズレたり、丸まったりするのを防ぐ効果が期待できます。 また、寒い時期は保温効果のあるサポーターを選ぶのがおすすめです。 冷えは痛みの原因ともなるので、保温効果のあるサポーターを使用すれば痛みを緩和できる可能性があります。 膝サポーターの装着方法3ステップ|丸まらないつけ方 サポーターは正しく装着しないと、期待する効果が得られません。そこで、膝サポーターの正しい装着方法を3ステップで解説します。 ・ステップ1.立った状態で装着する ・ステップ2.上からベルトを締めていく ・ステップ3.膝を動かして確認する 参考にしながら、装着してみてください。 ステップ1.立った状態で装着する サポーターをつけるときは、立った状態で装着するのが望ましいです。 立ち姿勢で膝を伸ばした状態でサポーターをつけると、しっかりとサポーターが巻き付いて膝を曲げたときに緩みにくくなります。 ただし、サポーターなしで立つのが難しいという人は座った状態でつけても問題ありません。 座った状態でサポーターをつける場合は、膝を少しだけ曲げた状態でつけるとしっかりと付けられます。 ステップ2.上からベルトを締めていく ベルトを締めるタイプのサポーターの場合、サポーターは上の方から締めていきます。上のベルトを締めるときは、強く締める必要はなく、フィットしているな!と感じられるくらいで十分です。 上を締めてズレがないかチェックしたら、今度は下のベルトを締めます。 下の方を締めるときは、膝の皿の部分をきちんと補助できるように下から上に引き上げながら締めるのがポイントです。 下の方は上の方よりも強めに圧がかかるように締めますが、血流を阻害するほど強く締めすぎないように注意しましょう。 ステップ3.膝を動かして確認する サポーターをつけ終えたら一度膝を軽く動かしてみて、締め付けが強すぎないかチェックします。また、きちんとフィットしているかチェックしているかも確認しましょう。 強い圧迫感や、サポーターのズレや丸まりといったフィットを阻害する要素があれば、つけ直すようにしてください。 まとめ|膝サポーターの丸まらない着用方法を覚えて安定力を高めよう 膝サポーターは、正しい手順で装着すれば、丸まったり、ずれたりしにくくなります。 本記事で紹介した正しい装着方法を参考に、膝にしっかりとフィットさせて、サポートの効果を最大限に引き出していきましょう。 なお、膝の痛みや変形性膝関節症・半月板損傷といった膝の疾患でお悩みの方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』への受診をご検討ください。 「再生医療」とは人間の自然治癒力を活用した最新の医療技術です。すり減った軟骨を再生し、膝の痛みを軽減させる効果があります。 無料相談も受け付けていますので「具体的な治療方法が知りたい」と気になる方は、お気軽にお問い合わせください。
2021.03.03 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
変形性膝関節症の回復には適切なサポーターの活用が効果的です。膝の固定や保温効果により痛みを和らげるほか、適度な運動をサポートして症状の改善も期待できます。 サポーターは痛みを和らげ、膝の動きを助ける有効な手段ですが、すり減った軟骨を元に戻すものではありません。 そのためサポーターの効果を最大限に引き出そうと考えるのであれば、自分に合ったものを選び、正しく装着していくのが大切です。 本記事では、変形性膝関節症で使うサポーターの効果や選び方のポイントを解説します。注意点も紹介しているので、サポーターを活用したい方はぜひ参考にしてください。 また、将来的な進行を防ぎ、できれば手術に頼らず根本から膝の健康を取り戻したいとお考えなら、早めに次の選択肢を知っておくことが大切です。 特に、ご自身の細胞を活用して軟骨の修復を目指す「再生医療(幹細胞治療)」は、従来の治療方法と比較しても手術を必要とせず、根本的な治療も期待できます。 将来の手術を避けるために今からできることや、再生医療に関する情報を当クリニックのLINEにて配信しておりますので、知識の1つとしてお役立てください。 ▼膝の痛みの改善症例あり! 変形性膝関節症でサポーターをした方がいい4つの理由 さっそく、変形性膝関節症でサポーターをした方がいい理由を解説します。 ・膝の固定 ・保温効果 ・触圧覚を刺激 ・悪循環の遮断効果 それぞれの効果について詳しく見ていきましょう。 膝の固定 サポーターは、膝をしっかりと支えて固定する役割を担います。膝を固定すれば、関節への負担が軽減されるため痛みを和らげる効果が期待できるでしょう。 痛みがあると歩行が不安定になり、転倒するリスクが高まります。高齢者は筋力の低下も重なってより転びやすくなるためとくに注意が必要です。 触圧覚を刺激 人の皮膚には「触圧覚」(物に触れた感覚)と「痛覚」(痛みの感覚)があります。サポーターで膝を適度に圧迫すると、触圧覚が刺激されます。 痛覚よりも触圧覚が先に脳へ伝わるため、痛みの感覚が抑えられるのです。 保温効果 サポーターによる保温効果も膝の痛み軽減に役立ちます。 膝が冷えると血管が縮み、血液の流れが悪くなり、筋肉が硬くなります。硬くなった筋肉を動かすと、負担が増えて痛みが出やすくなるのです。 寒い日に外出したり、冷房の効いた部屋で過ごしたりする際は、サポーターで膝を温めて痛みを予防しましょう。 悪循環の遮断効果 変形性膝関節症では、痛みを避けるため動きを控えがちです。 しかし、運動不足が症状を悪化させる原因となります。膝をあまり動かさないでいると、周囲の筋肉が衰え、軟骨がさらにすり減りやすくなるためです。 サポーターを使えば、安心して膝を動かせます。適度に体を動かせば、筋力回復と軟骨の保護につながり回復を早められるでしょう。 また、変形性膝関節症や膝の症状にお悩みの方で、手術以外の治療法について興味がある方は「再生医療」もご検討ください。 現在当クリニックの公式LINEでは、再生医療や膝の症状の改善症例について紹介しています。 >>公式LINEはこちら 反対にサポーターを着けているからといって動きすぎるのも禁物です。以下の記事では変形性膝関節症の人がしてはいけない動作や仕事の業務を解説しているので、治療中の過ごし方が気になる方はぜひあわせてご覧ください。 変形性膝関節症で使うサポーター選びのポイント ここでは、サポーター選びのポイントを解説します。 サポーターには「医療用」と「一般用」の2種類があり、ドラッグストアやオンラインストアなどで購入可能です。変形性膝関節症に使用する場合は「医療用」が推奨される傾向にあります。 購入を検討する際は、サポーターのランキングサイトや販売サイトで口コミを確認するのがおすすめです。口コミを見れば、装着感や使用感といった実際の使用者のリアルな声をチェックできます。 サポーター選びの具体的なポイントは以下の3点です。 確認ポイント 選ぶ視点の例 サイズ ・膝にフィットするか ・共用もしくは男性用・女性用か ・締め付け具合が適切か 固定力 ・膝をしっかり支えられるか ・動きを妨げない程度の固定力か 保温性 ・保温効果に優れているか ・蒸れにくい素材か 購入前は可能な限り試着をしましょう。実際に装着してみれば、フィット感や使用感がよりわかります。 以下の記事では、サポーター選び方の詳細や装着方法について解説しています。詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。 変形性膝関節症でサポーターを使うときの注意点4つ 変形性膝関節症でサポーターを使うときに注意すべき点がいくつかあります。適切でない使い方をすると症状が悪化する可能性があるため、以下4つのポイントをおさえましょう。 ・汗を拭いて使用する ・正しく装着する ・安静時はサポーターを外す ・サポーターの効果が薄いときは専門家に相談する 順番に解説します。 汗を拭いて使用する 汗をかいた状態で着用すると、サポーターがずれやすくなります。サポーターがずれれば、歩行が不安定になって膝や腰に負担がかかり痛みが出る可能性があります。 汗をかきやすい夏場はとくに対策が必要です。サポーター装着前に膝の汗を拭き取り、使用中も汗が溜まったら小まめに拭きましょう。 正しく装着する サポーターは正しい位置に装着してはじめて、効果を発揮します。 装着位置が上下左右にずれると、膝を正しく支えられないため、サポート力が弱まります。また、血行不良を引き起こす場合もあるでしょう。装着して少しでも違和感があれば、正しい位置にあるかどうか確認してください。 サポーターの正しい装着方法は、商品パッケージの説明書や公式サイトに記載されている場合が多いので、事前によく見ておきましょう。 安静時はサポーターを外す サポーターは活動時のみ使用するのが基本です。 サポーターを付けっぱなしにすると、うっ血(血液の流れが悪くなる状態)や圧迫により痛みが生じる可能性があります。 症状悪化のリスクを避けるためにも、自宅でくつろぐ時間や就寝時といった安静時にはサポーターを意識的に外しましょう。 サポーターの効果が薄いときは専門家に相談する サポーターを使用しても症状が改善しないときは専門家に相談しましょう。状態が悪化している可能性があるためです。 一方で相談した結果、手段があまり残されておらずに手術に踏み切るしかない場合もあります。 もし、手術しかないと諦めかけている場合はぜひリペアセルクリニックにご相談ください。 当院は再生医療(自己脂肪由来幹細胞治療)を専門としており、 この治療はメスを使わず、ご自身の細胞の力ですり減った軟骨の修復・再生を目指すものです。 痛みの根本原因にアプローチし、手術を回避できる可能性も十分にあります。 ご自身の膝の症状に対して再生医療が対象かどうか疑問に思う方や、改善症例が気になる方は、ぜひ当クリニックの公式LINEをご確認ください。 ▼無料のオンライン診断あり >>公式LINEはこちら まとめ|変形性膝関節症ではサポーターをうまく活用して早期回復を目指そう サポーターは変形性膝関節症の症状改善に役立つアイテムです。膝を支えて歩行時の安定感を高め、痛みも和らげます。 サポーターの効果を最大限に引き出すポイントは、自分の膝にフィットするサイズやサポート力があるものを選び、正しく装着することです。 しばらくサポーターを使用しても効果が実感できない場合は、病院の受診を検討してみてください。症状が進行している可能性もあるためです。 受診した際は、医師にサポーターの適切な使い方を聞いてみるのも良いでしょう。より効果が期待できる装着方法がわかり、早期回復につながる場合もあります。 また、根本的に変形性膝関節症を治療していきたいと考えている方は、手術を必要としない治療方法である再生医療もご検討ください。 膝や関節の痛みに関する改善症例について現在公式LINEにて配信しておりますので、将来的な選択肢の幅を広げたい方はこの機会に知識としてお役立てください。 ▼多くの膝や関節の痛みの改善症例を配信中 >>公式LINEで確認する 変形性膝関節症で使うサポーターに関するよくある質問 最後に変形性膝関節症で使うサポーターに関するよくある質問と回答をまとめます。 サポーターは保険が適用されますか? 国に登録されているサポーターであれば保険適用の対象です。 登録されているサポーターは厚生労働省が公表している「療養費の支給対象となる既製品の治療用装具」の一覧よりご確認いただけます。 詳細が気になる方は チェックしてみてください。 サポーターをつけない方がいいケースはありますか? 膝周辺に炎症や傷がある状態でサポーターをつけると、皮膚の状態が悪化するリスクがあるため使用は控えた方が良いでしょう。 また、化学繊維のアレルギーをもっている方も注意が必要です。サポーターの素材によってはアレルギー反応が出る可能性があります。
2021.02.16 -
- 股関節
- 変形性股関節症
変形性股関節症を農業で発症!予防と悪化を防ぐには 農業をやっていて、不安定な姿勢で長時間作業を繰り返していくうちに変形性股関節症になってしまい、痛みがつらいという人もいるかもしれません。変形性股関節症は、関節の痛みと機能障害が起こりますが進行すると持続痛となり取れなくなる恐れもあります。 そのため、「変形性股関節症になってしまったら、農業はやめるべきなのか?」「股関節に関節症を発症したら農業は、してはいけない仕事なのか?」「そもそも立ち仕事は避けるべきなのか?」など、不安に感じるられているのではないでしょうか。 そこで今回は、変形性股関節症になったら農業をやめるべきなのか、という疑問について、やめるわけにはいかない場合の予防法と治療について解説します。 結論から言いますと、もし変形性股関節症になってしまった場合でも、「農業をやめるべきである」「してはいけない」とは一概に言いきれません。ただし、変形性股関節症になった状態で通常どおりに農業をおこなうというのは危険です。 変形性関節症になっても農業を続けるには? 変形性関節症になったとしても農業を続けたい場合は、痛みのコントロールや症状の進行を抑えるための治療をおこなうことが大切です。痛みの緩和や症状の進行を抑えていく必要があります。 股関節に負担がかからないように生活する 変形性股関節症は、股関節に負担がかかることにより痛みが生じ、症状が進行します。股関節には、農業以外にも、立ち仕事はもちろん、日常生活の中でも無意識のうちに大きな負担がかかる動作や仕事があります。 例えば、歩くだけでも負担がかかりますし、トイレが和式であったり、いつも履いている靴の質が悪いなどということが股関節への大きな負担になることもあります。 そのため、なるべく股関節に負担がかからないよう生活スタイルを変えることや、クッション性に優れ、弾力があって股関節への衝撃を和らげることができる靴を選ぶなど、身近なところから股関節への負担を軽減するように変えていくことが必要です。 変形性股関節症の治療法を検討する 変形性股関節症には、いくつか治療法が存在します。変形性股関節症の場合、股関節に負担のかからないエクササイズや、水中運動などの運動療法が有効です。 このした治療法は、股関節周辺の筋力をつけていくことで、痛みを緩和させる効果が期待できるからです。そのほかには、薬物による治療方法や、症状が進んでしまった場合には人工関節置換手術などがあります。 長期的かつ健康的な視野で見れば、軽度の変形性股関節症は、運動による治療も可能ですが、日常に支障をきたすレベルで関節が痛むなどの場合は、薬物や手術などによる治療を検討されたほうが良いでしょう。 主治医に相談をする 変形性股関節症では、進行の程度や症状によって治療法が異なります。股関節に違和感がある、痛みがあるという場合は、まずは、整形外科をはじめとした専門の医療機関を受診し、診断をしてもらいましょう。 その上で、これまで通りに農作業をおこなっても良いのか、股関節への負担を軽くするために、農業のやり方を変えていくほうがいいのかなどについて主治医に相談してみてください。 農業をしていると変形性股関節症になりやすいの? 農業をしていると変形性股関節症になりやすいという声もありますが、実際のところはどうなのでしょうか。 結論から述べますと、一概に農業をしていると必ず変形性股関節症になるというわけではありません。しかし、農業と変形性股関節症にはいくつかの関係性があります。 農業は変形性股関節症の原因となる姿勢や動作が多い 農業は長時間の立ち仕事であることはもちろんのこと、重たいものを運ぶ、不安定な体勢で作業をするなど、変形性股関節症の原因となる動作が多いです。 変形性股関節症は、股関節への過度な負荷によって引き起こされるため、そういう意味でも農業は多かれ少なかれ変形性股関節症のリスクがあると言えるでしょう。 農業でかかる関節への負担は股関節だけではない 農業は、不安定な姿勢が多いため股関節に負担がかかると言われますが、そのほかの関節にも負担がかかり、膝や腰を痛める人もいます。また、股関節に痛みが生じ、その痛みをかばいながら作業をすると、今度は腰や膝などほかの関節の痛みも併発する可能性もあります。 つまり農業は、股関節だけでなく全身の関節との付き合い方がとても大切になってくる職業であると言えます。 変形性股関節症|予防と悪化させないために 農業だけが変形性股関節症になるリスクがあるというわけではありません。 しかし、農業には変形性股関節症になるリスクが大きな動作が多いことは間違いありません。そのため、農業で変形性股関節症にならないように意識し、悪化させないようにするための予防が必要です。 椅子に座って農業をする 長時間の立ち仕事による農業は股関節に負担をかけるため、変形性股関節症になるリスクがあります。ですから、立ち仕事の時間を減らせるように工夫しましょう。最近は、座ったまま移動ができるキャスター付の農業作業用の椅子などが広く出回っています。そういったアイテムの使用もおススメです。 休憩をこまめにとる 農業で変形性股関節症にならないようにするには、小まめに休憩をとるようにしましょう。 一般のサラリーマンに比べ、農業は明確な就業時間や休憩時間が決まっていないことが多いと思います。そのため、農業を営む人の中には、定期的な休憩を取らずに働いてしまう人もいるようです。 しかし、休憩を取らずに、働き続けることは良くありません。例えば一時間ごとに10分などと決めておくと休憩を意識しやすくなります。どうしても休憩が取りづらい状況であるならば、立ち仕事を減らす工夫や、少しでも関節への負担をかけない工夫をしましょう。 疲労がたまったらストレッチをする 農業をしていて股関節が痛く感じることがあれば、疲労がたまっている証拠です。もしも痛みを感じたら、少し休み、股関節周辺のストレッチをしましょう。 また、お風呂上がりや寝る前などにも、太ももの筋肉やお尻の後ろにある大殿筋などをほぐすようにストレッチするのも効果的です。農業による筋肉の疲労を放置せず、日々しっかりとストレッチをすることで、変形性股関節症の予防につながります。 変形性股関節症でも農業を続けられる関節の痛みの緩和法とは 変形性股関節症になった状態で農業を続けることは大変です。しかし、医師の判断にもよりますし、個人差もありますが、痛みのコントロールをすることができれば、ある程度は農業を続けることが可能でしょう。 変形性股関節症の痛みの緩和方法を紹介します。 関節を温める 関節を温めることによって痛みを緩和できます。ホットタオルや使い捨てカイロなどで関節を温めましょう。股関節を温めることで血行が良くなり、体の修復機能が向上するので、「痛みの緩和」が期待できます。 半身浴をする 関節を温め、血行を良くするという観点から、半身浴もおススメです。お湯の温度を38度から40度ぐらいに設定して半身浴をしてみてください。ホットタオルなどで部分的に温めるよりも、半身浴は股関節全体を温めて、より血行を良くする効果が期待できます。 また半身浴は変形性股関節症の痛みをやわらげるだけでなく、血行が良くなることで体の新陳代謝機能が上がるため、健康そのものにも効果的です。毎日の疲れをとるためにも、ゆっくり半身浴をするという習慣を取り入れてみるのも良いでしょう。 農業を続けたい!変形性股関節症には再生医療という治療方法もある! 変形性股関節症になり、痛みが生じるようになると、農業を続けることが大変になってきますが、それでも農業を続けたい!そもそも農業が生業でやめるわけにはいかない!という場合は、短い治療期間で済み、副作用のリスクも少ない最先端の治療法「再生医療」という選択肢もあります。 再生医療で痛みの改善が可能になれば、生活の質が上がりますし、人工関節に置換えるなどの外科的手術も不要になる可能性が高まります。変形性股関節症の痛みで農作業に支障があると悩まれているのであれば、検討される価値のある治療法です。 https://youtu.be/isSkwxfHrbI?si=xBpcu7q-w5wcdT8Y ▶こちらの動画では、変形性股関節症に効果的な再生医療について解説しています。是非ご覧ください。 まとめ・変形性股関節症を農業で発症!予防と悪化を防ぐには 農業をしていると必ず変形性股関節症になるというわけではありません。しかし、ほかの仕事に比べて股関節への負担がかかりやすい農業は、股関節に対する関節症、特に変形性股関節症のリスクがあるのは確かです。 現在、農業に携わっていて変形性股関節症に悩まされている人や、痛みが強くなったら農業ができなくなるのではないかと不安に感じている人は、今回ご紹介した予防や痛みを緩和する方法を試されてはいかがでしょうか。 また、変形性股関節症は専門医による治療が必要です。せっかく診断を受けても軽度ならと仕事を優先し、つい無理な作業や立ち仕事を続けられてしまう方もおられます。 ご注意頂きたいのは放置して自然治癒することはありません。変形性股関節症は放置すると症状が進行する病気です。早めに専門医の指導の下、適切な治療を受けましょう。 以上、変変形性股関節症は農業で起こりやすいのか?その予防と治療法について、という視点でからご説明させていただきました。変形性股関節症と正しく向き合い、毎日元気に農業を続けていきたいものです。 ▼ 再生医療で変形性股関節症を治療する 変形性股関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下もぜひご覧ください 変形性股関節症を悪化させないために気をつけたいこと
2021.02.10 -
- 股関節
- 変形性股関節症
「歩くときにふらつく感じがするので、杖を使いたいけれど選び方がわからない」 「すでに杖を使っているけれど、本当に自分に合っているのか自信がない」変形性股関節症と診断され、歩行時の不安から上記のように悩む方もいるでしょう。 不安定になりがちな足元を支え、歩行を助けてくれる杖は、もう1本の足ともいえます。 本記事では、変形性股関節症に適した杖の選び方と気を付けたいポイントを解説します。杖の正しい使い方も紹介するので、少しでも股関節の負担を軽減させたい方は、参考にしてください。 変形性股関節症に合った正しい杖の選び方と気をつけたいポイント せっかく杖を買っても自分に合っていなければ、歩くたびに股関節へ余計な負担がかかってしまう恐れがあります。杖を購入する際は、実際に自分で持って歩いてみるのも大切ですが、理学療法士や専門の医師に相談すると良いでしょう。 変形性股関節症に合った杖の選び方について、気をつけたいポイントも交えて紹介します。 変形性股関節症に関して詳しく知りたい人は、こちらの記事もご覧ください。 1)杖の重さ 杖を選ぶうえで、とくに重視したい点は軽さと強度です。 一般的に販売されているのは、軽さと強度を兼ね備えたアルミ製や、より軽いカーボン製の杖で、軽量でありながら強度の高さが特徴です。 重量がある杖は十分な強度をもつだけでなく、歩行に安心感を与えるメリットがあります。 ただし、あまりに重い杖は持つ手や腕に負担がかかるため、使い続けると疲れやすく結果的に使いづらく感じてしまうかもしれません。 杖の重さ メリット デメリット 重い杖 頑丈、安心感 使用で疲れ、使いづらくなる 軽い杖 軽量で強度が高く使いやすい 安定性は重い杖に劣る 2)握りやすさ 杖を選ぶポイントは、持ち手が自分の手になじみ、無理なく握れる太さである点です。 持ち手の素材には、木製やゴム製などさまざまな種類があります。滑りにくく自分の手にフィットする素材を選ぶと、握力が弱い人でも疲れにくく快適に使用できるでしょう。 購入前は実際に握って歩く練習をすると、自分に合った持ち手の杖を見つけられます。 3)長さ 杖の長さは「身長÷2+2~3cm」が目安といわれています。 短すぎる杖を使うと前傾姿勢になり、股関節への負担が大きくなるため、歩行を補助するつもりが、かえって症状が悪化する原因になりかねません。 一方、長すぎると扱いづらく、スムーズな歩行を妨げます。長時間の使用や長距離を歩行する際には、疲れやすさを感じるでしょう。 正しい姿勢で歩けるよう、自分にあった適切な長さの杖を選ぶのがポイントです。伸縮可能なタイプも販売されており、自分の身長に合わせて細かく長さを調整して使用できます。 適切な長さポイント 身長の半分に2〜3cmプラスした長さ 正しい姿勢で歩行できるよう調整する → 短い杖:前に姿勢が倒れるため、股関節への負担が大きい → 長い杖:扱いづらさや歩きにくさを感じ、疲れやすくなる 【症状別】変形性股関節症の方に適した杖の種類 杖には複数の種類があり、杖の形も歩きやすさに影響を与えます。 変形性股関節症の症状に適した杖の種類を紹介するので、ご自身に合った形が探せるよう基本的な性能を比べてみてください。 【症状が軽い方】T字杖 T字杖は、一本杖に握り手がついたタイプで、一般的な杖のひとつです。T字杖は、特別な使い方を覚える必要がなく誰でも簡単に使用できるため、比較的症状が軽い人に向いています。 多脚杖ほど安定しないため、高齢者や症状が進み自力での歩くのが困難な人には、安定性の面から不向きといえます。 同じT字杖でも、持ち手の形状や大きさ、重心などさまざまな種類があります。持ち運びに便利な折りたたみ式の製品もあるため、実際の使用感や使用シーンを考慮して選びましょう。 【手が変形している方】ロフストランド杖 ロフストランド杖は、別名「前腕固定型杖」とも呼ばれる一本杖の一種です。上部にある腕を通す輪と、下部についている握り手の2点で体重を支えられる構造になっており、T字杖よりも安定感があります。 手が変形している人や、握力・腕の筋力が低下し、T字杖では歩行時に体重を支えきれない人などに選択されます。 【筋力が低下している方】多脚杖 3点あるいは4点が地面と接する多脚杖は、接地面が複数あり体重が分散されるため、T字杖よりも安定感が増します。 一本杖では歩く際にふらつく人や、症状が進み筋力が低下している人には、多脚杖がおすすめです。 変形性股関節症の痛みが強い場合、杖に体重を預けて歩く機会が増えますが、多脚杖は高い安定性により転倒リスクを軽減できるメリットがあります。一方、一本杖よりも重くなってしまうデメリットもあるのも事実です。 変形性股関節症における正しい杖の使い方 変形性股関節症の人は、購入した杖の効果を発揮できるよう購入したお店や受診している医院などで使い方の指導を受けるようにしましょう。 正しく杖を使えると、痛みが改善されるだけでなく、歩行が楽に感じられ、行動範囲も広がります。 本章では、正しい杖の使い方を紹介します。 杖は痛みのある足と反対側の手で持つ 杖を使う際は、痛みがある足と反対側の手で持つのが基本です。 たとえば、右股関節が痛いなら左手で、左股関節が痛いなら右手で杖を持ちます。症状がある反対側の手で杖を持つと、歩行時に体重を分散させ、痛みのある股関節にかかる負担が減らせます。 痛みがある足と同じ側の手で杖を持つと、体重が痛みのある足に偏り、さらに負担がかかって症状が悪化する恐れがあるため、注意してください。 杖を持つ際は、体の横で自然に腕を下ろした位置が基本です。杖の長さは身長に合わせて調節し、肘が伸びきらず軽く曲がる程度の高さに設定しましょう。 杖と痛みのある足を同時に出す 歩行時は、杖と痛みのある足を同時に出すのが基本です。 右足が痛む場合は、左手の杖と右足を前に出し、続けて左足を前に出します。右足を出した際に、左手の杖に体重を預けるよう意識すると、痛みがある足への負担が軽減できます。 「杖と痛みがある足を同時に出す」動作を意識的に繰り返せると、歩行のリズムが整い体の重心が安定するでしょう。平地での歩行に慣れたら、少しずつ歩幅を広げていくと、より自然な歩行に近づきます。 杖に体重を預けすぎず、あくまで補助として使う意識が大切です。 階段は手すりも利用してゆっくり昇降する 階段の昇降は、平地の歩行以上に注意が必要です。とくに、変形性股関節症の人は股関節の動きが制限されるため、バランスを崩しやすく転倒リスクが高まります。必ず手すりを利用し、1段ずつゆっくりと、安全を最優先に昇降しましょう。 <階段の上り方> 杖を1段上に出す 痛みがない側の足を1段上げる 杖で体重を支えながら痛みのある足を引き上げる <階段の下り方> 杖を1段下に下ろす 痛みのある足を下ろす 杖で体重を支えながら痛みのない足を下ろす 「上る際は健康な足から、下りる際は痛みがある足から」という手順を守り、1段ずつ確実に昇降します。焦らず、自分のペースを守るのが、転倒防止につながります。 手すりがない階段や、どうしても不安な場合は、他の人に介助を求めることも検討しましょう。 変形性股関節症で杖を使うメリット 変形性股関節症の人にとって、杖は単なる歩行補助具ではありません。適切に杖を使用すると、日常生活の質を大きく向上できます。 杖の使用がもたらす具体的なメリットを紹介するので、ぜひチェックしてください。 股関節への負担が減らせる 変形性股関節症の方が杖を使うメリットとして、股関節にかかる負担を軽減できる点が挙げられます。 歩行時は、両足の股関節に体重が均等にかかるのが理想的です。しかし、変形性股関節症では、痛みから無意識のうちに痛みがない足に体重をかけてしまう傾向があります。 片方の足に体重が偏ったままだと、股関節にかかる負担も増加し、症状悪化の可能性があるのも事実です。 杖を使用すると、体重の一部が杖に分散され、股関節にかかる圧力が減少します。とくに、長時間の歩行や階段の昇降など、股関節に負担がかかりやすい状況下でも、杖は大きな助けとなるでしょう。 歩行時の痛みが和らぎ安定する 杖の使用は歩行時の痛みを和らげ、歩行が安定するメリットをもたらします。杖が第3の足となり体の重心が安定すると、ふらつき・よろめきは軽減され、転倒リスクを減らせるでしょう。 変形性股関節症による歩行時の痛みは、多くの人が抱える悩みです。 痛みが強いと、トイレ・お風呂などの日常動作が億劫になり、筋力低下や症状悪化などの悪循環に陥る人もいます。さらに症状が進むと寝たきりになってしまう可能性があります。 安定した歩行は、身体的なメリットだけでなく、精神的な安定にもつながります。 歩行範囲が拡大し運動不足が解消する 変形性股関節症で歩行がつらくなっていても、正しく杖を使えると、痛みが軽減されて歩行範囲も広くなります。 「少し遠くまで歩いてみよう」「新しいお店に行ってみよう」と、意欲的に行動できるようになるかもしれません。 歩行範囲が広がると、運動不足の解消にも大きく貢献します。変形性股関節症の人は痛みから運動不足になりがちですが、歩けると筋力維持や関節の柔軟性向上につながります。 散歩や買い物など、日常生活の中で無理なく運動を取り入れ、より健康的な毎日を過ごしましょう。 変形性股関節症に合った杖を選んで歩行の負担を減らそう 変形性股関節症で杖を使う場合は、症状に合った種類の杖を選ぶのが大切です。自分の身長に合った高さや握りやすさだけでなく、使用シーンや使用時間も考慮すると、より使いやすい杖を選べます。 自分にピッタリな杖を選べると、股関節への負担が減るだけでなく、行動範囲も広がるなどのメリットをもたらします。変形性股関節症で杖の選び方や使い方に悩んでいる人は、実際に販売している店舗や病院へ行って理学療法士や専門の医師によるアドバイスを受けながら杖を選ぶと良いでしょう。 変形性股関節症についてはこちらもご参照ください。
2021.02.08 -
- 股関節
- 変形性股関節症
股関節の痛みが強いときに行われる治療のひとつに、ステロイド注射があります。 とくに変形性股関節症の治療では、痛みを和らげるためにステロイド注射がよく使われますが、長期間の使用には副作用のリスクがあるため注意が必要です。 本記事では、股関節のステロイド注射の必要性や副作用の可能性について詳しく解説します。 治療に対する不安を少しでも軽減できるよう、正しい知識を身につけておきましょう。 変形性股関節症の治療|ステロイド薬の必要性と副作用を解説 ステロイドは、変形性股関節症の保存療法の一環でよく使われる薬です。 痛みに効く薬として、主にステロイド注射や経口薬として治療に用いられます。 「必要性は理解できるけど、副作用が気になる」 「どのぐらいの効果があるの?」など 副作用や効果について不安を感じる方は多く、なかには、ステロイドの使用を躊躇してしまう方もいらっしゃいます。 本章では、変形性股関節症に対するステロイド薬を用いた治療についてご説明します。 変形性股関節症におけるステロイド薬の使用目的とは? ステロイド薬は、痛みの緩和や痛みを抑える目的で使用されます。 変形性股関節症は、股関節の軟骨が摩耗し、関節が変形して痛みや可動域の制限を引き起こす疾患です。 治療法には「保存療法」と「手術療法」があり、初期から中期の症状の場合は保存療法で治療します。 保存療法では、手術を回避するためにまず痛みの緩和が求められます。 これは、運動療法の効果を高めるためだけでなく、痛みによって生じる体の防御反応を抑える目的もあります。 股関節に痛みがあると、無意識のうちに他の筋肉や組織に余計な負担がかかるため、ステロイド注射などで痛みを防ぐことが重要です。 ステロイド薬には抗炎症作用と鎮痛作用がある ステロイド薬の効果は、痛みを抑えるだけでなく、痛みの原因となる炎症そのものを抑える効果があります。 痛みの原因物質の産生を抑え、強い抗炎症作用や鎮痛(痛みを止める)作用を発揮します。 そのため、変形性股関節症でステロイド注射や経口薬を使用すると、炎症を抑え、痛みを軽減するなどの改善効果が期待できます。 ただし、ステロイド薬は免疫力の低下や骨密度の低下など、副作用が起こる可能性もあるため使用には注意が必要です。 ステロイド薬の効果時間(期間)はどのくらい? ステロイド薬の効果時間は、使用方法や投与経路によって異なります。 一般的に、以下のような持続時間が考えられます。 経口薬(内服薬):数時間〜1日程度 薬の種類によって異なりますが、中程度の作用時間を持つ薬は1日に1〜2回の服用が必要になる場合が多いです。 注射(関節内注射):1週間〜数か月 特に関節内に投与されるステロイド注射は、短期間で効果が現れ、持続時間は数週間から数か月とされています。 外用薬(塗り薬):数時間〜1日 皮膚に塗るタイプのステロイドは即効性があり、1日数回塗布することで効果を持続させます。 吸入薬:数時間〜1日 喘息などの治療に使用される吸入ステロイドは、即効性よりも継続的な使用で効果を発揮します。 変形性股関節症においては、ステロイド注射が使用される場合が多く、一時的に痛みを和らげる効果が期待できますが、持続時間には個人差があり、効果が切れると再度痛みが現れることもあります。 ステロイド薬の副作用 ステロイドは、さまざまな病気の治療に使用されていますが、長期間または高用量で使用すると、副作用が現れる可能性があります。 主な副作用として、次の5つがあります。 免疫力の低下 骨密度の低下(骨粗しょう症) 血糖値の上昇(糖尿病のリスク) 体重増加・むくみ 精神的な影響 ここから、上記副作用の解説とステロイド注射で副作用が現れる期間・対処法について紹介します。 免疫力の低下 ステロイドは免疫機能を抑制するため、感染症にかかりやすくなる可能性があります。 風邪やインフルエンザにかかるリスクが高まるほか、傷の治癒も遅くなるため、手術後の回復にも影響を与える場合があります。 骨密度の低下(骨粗しょう症) 長期間使用すると、骨形成を抑制し、骨吸収を促進することで骨密度低下を引き起こします。 そのため、骨折しやすくなる可能性があります。 とくに高齢者や閉経後の女性は、骨密度の低下が進みやすいため注意が必要です。 骨粗しょう症を予防するために、カルシウムやビタミンDの摂取、適度な運動を心がけましょう。 血糖値の上昇(糖尿病のリスク) ステロイドは血糖値を上げる作用があり、糖尿病の発症リスクを高めることがあります。 糖尿病の既往がある場合や家族に糖尿病の人がいる場合は注意が必要です。 体重増加・むくみ ステロイドは体内の水分や塩分のバランスを変えるため、顔や手足がむくみやすくなります。 また、食欲が増進するため、体重が増えやすくなります。 塩分を控えた食事と、適度な運動で、体重増加を抑えることが可能です。 精神的な影響 ステロイドの使用により、気分の変動が大きくなったり、不眠、不安感、うつ症状が現れたりする場合があります。 高用量のステロイド注射や経口薬を使用すると、一時的に気分が高揚する(多幸感)こともありますが、急に気分が落ち込むこともあるため、注意が必要です。 症状が強い場合は、医師に相談し、適切な対策を講じることが大切です。 ステロイド注射の副作用が現れるまでの期間 副作用が現れるまでの期間と主な症状は以下のとおりです。 【ステロイド注射を受けた直後から数時間以内】 注射部位の痛みや腫れ:一時的に患部が痛くなることがありますが、通常は数日以内に治まります。 顔のほてり(フラッシング):特に女性に多く見られ、顔が赤くなったり、体が熱く感じたりする場合があります。 軽度のめまい・頭痛:一時的な症状として現れることがありますが、長く続く場合は医師に相談が必要です。 【ステロイド注射を受けた数日から数週間後】 血糖値の上昇:糖尿病のある人や血糖値が上がりやすい体質の人は、注射後数日以内に血糖値が高くなることがあります。 睡眠障害や気分の変化:一部の人は、注射後に不眠や気分の浮き沈みを感じることがあります。 食欲の増加:ステロイドの影響で食欲が増し、体重増加につながることがあります。 【数ヶ月以上など長期間による、ステロイド注射を受ける場合】 骨密度の低下(骨粗しょう症):長期間にわたる使用は骨をもろくし、骨折のリスクを高めます。 皮膚の変化:皮膚が薄くなったり、注射部位に色素沈着が起こることがあります。 免疫力の低下:頻繁に使用すると感染症にかかりやすくなる可能性があります。 ステロイド注射の副作用が現れるまでの期間は、使用量や個人の体質、健康状態によって異なります。 ステロイド注射を受けた後は、体の変化に注意を払い、少しでも違和感を覚えたら、速やかに医師に相談しましょう。 ステロイド注射で副作用が現れたときの対処法 ステロイド注射後に副作用が現れた場合、軽度の症状であれば、経過を観察などで様子を見る場合が主ですが、症状が重篤であったり、日常生活に支障をきたすような場合は、ステロイドの減量や中止、または他の治療法への変更を検討する必要があります。 軽度な症状でも、自己判断は避け、すぐに医師に相談しましょう。 自己判断で放置してしまうと、症状が悪化し、最悪の場合は命に関わることもあるため、適切な処置を受けることが非常に重要です。 ステロイド薬は、変形性股関節症を根本的に治すものではない ステロイド注射や経口薬による治療は、痛みの改善には効果が期待できますが、損傷した関節を修復する効果はありません。 そのため、痛みの緩和をさせながら様子見はできても、軟骨のすり減りや骨の変形の進行自体を止めるなど、変形性股関節症の根本的な治療をすることはできません。 また、変形性股関節症は進行する病気です。 つまり、ステロイド注射などで治療をおこなったとしても、最終的には手術を行う必要が出てくる可能性があります。 変形性股関節症のステロイド薬での治療はどのように行うのか? 変形性股関節症の治療にはステロイド注射と経口薬があり、まずは経口薬から始め、痛みに対する効果が感じづらくなってきた場合に関節内にステロイドを直接注射します。 ステロイド注射を、直接損傷した股関節に注射することにより、ステロイド薬の強力な抗炎症作用が効果を発揮し、痛みを改善することができます。 しかし、長期的な使用は副作用のリスクがあり、徐々に変形性股関節症の症状が進行するとステロイド注射の薬効が薄れ、効き目が感じられなくなることもあります。 このように薬効がなくなると外科的治療である手術を検討しなければなりません。 ステロイド以外の治療選択肢としての再生医療 ステロイドは炎症を抑える効果が高い一方で、副作用のリスクも伴います。 そのため、近年では再生医療がステロイドに代わる新たな治療法として注目されています。 再生医療は、自己治癒力を高め、損傷した組織や細胞を修復・再生することを目的とした治療法です。 再生医療の治療法には、主にPRP(多血小板血漿)療法と幹細胞治療があります。 どちらも患者様自身から採取した血液・幹細胞を用いるため、副作用のリスクが低いのが特徴です。 再生医療に興味がある方は、ぜひ当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。 まとめ|変形性股関節症の治療におけるステロイド注射の副作用を知っておこう 本記事では、変形性股関節症の治療で使用されるステロイド薬についてご紹介しました。 ステロイド薬には強い抗炎症作用と鎮痛作用があり、経口薬やステロイド注射で、痛みの軽減と緩和が期待できます。 しかし、ステロイドには骨を脆くするなどの薬としての副作用があり、長期的なステロイド治療はおすすめできません。 また、ステロイドは変形性股関節症の根本的な治療に効果を発揮するわけでもありません。ステロイドの特性を知った上での服用が大切です。 いずれにしても、専門医と相談の上、無理のないより良い治療法を探し、痛みと向き合っていただくことをおすすめします。 変形性股関節症には、再生医療という治療選択肢もあります。 再生医療について詳しく知りたい方は、以下もあわせてご覧ください。
2021.02.02 -
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股関節の痛みや違和感が特徴的な「臼蓋形成不全」と診断され、本当に治るのか不安になっていませんか。 なかには症状がつらくて改善するイメージができず、今後の生活が成り立つかどうか心配されている方も多いでしょう。 しかし、臼蓋形成不全は早期治療で改善が期待できます。軽症ならリハビリや安静などの保存療法で症状が緩和されるため、早めの対処が大切です。 本記事では、臼蓋形成不全の治療や日常生活のポイントを詳しく解説します。 この記事を参考に、適切な治療やセルフケアを行って臼蓋形成不全の症状を緩和させましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、股関節痛の軽減や変形性股関節症の重症化予防を目的とした再生医療を行っております。 「メール相談」または「オンラインカウンセリング」にて無料相談を受付中です。股関節痛でお悩みの方は、ぜひ当院までご相談ください。 臼蓋形成不全は適切な治療で治る可能性が高まる 専門医による適切な治療を受けると、臼蓋形成不全の治癒率は高まる可能性があります。 臼蓋形成不全とは、大腿骨をつないでいる骨盤のくぼみ「臼蓋」が浅い状態です。大腿骨と臼蓋の安定性が破綻することで骨盤のバランスが崩れ、股関節の痛みや違和感が生じます。(文献1) ここでは、臼蓋形成不全の主な治療について詳しく解説します。股関節の痛みでつらい方も、本章を参考に前向きに治療を検討してみてください。 1.初期の場合は「保存療法」 「変形性股関節症への進行を防ぐこと」が、臼蓋形成不全の治療目的です。 臼蓋形成不全では、股関節が不安定になりやすい状態です。軽度の場合は股関節を支える筋肉を鍛えるために、筋肉トレーニングを保存療法として取り入れることもあります。 また、つらいときは安静にすることもありますが、筋肉が衰えて歩行困難になるリスクがあるため、長期間続けないようにします。 変形性股関節の保存療法について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。 2.重症の場合は「手術療法」 保存療法で改善がなければ、悪化を予防するために臼蓋を大きくする手術が行われる場合があります。 臼蓋形成不全の治療で用いられる手術は、主に以下の2つです。 術式 方法 骨切り術 股関節の骨を削り、大腿骨との咬み合わせを調整する 人工股関節置換術 人工関節に替え、大腿骨と臼蓋をつなぐ ただし、あくまで手術は保存療法を用いても重症化したときに行われます。臼蓋形成不全の診断を受けても、必ず手術をしなければならないわけではありません。そのため、懸念がある方は医師と入念に話し合ってから決めましょう。 臼蓋形成不全に伴う股関節痛は、保存療法・手術療法以外では「再生医療」を用いた治療も可能です。気になる方は、以下のページをご覧ください。 臼蓋形成不全は「変形性股関節症」のリスクがあるため放置は厳禁 実は、臼蓋形成不全が「変形性股関節症」の発症原因になる可能性があります。 一般的に変形性股関節症の主な発症原因は「加齢」です。しかし、臼蓋形成不全にて股関節が傷みやすい人の場合、若年でも変形性股関節症を発症する場合があります。 また、小児期の臼蓋形成不全は画像診断でわかることが多く、自覚症状がない場合もあります。そのため、幼少期に発症した臼蓋形成不全の後遺症に気が付かず放置し、変形性股関節症になってしまったケースも珍しくありません。 大人になってから股関節の違和感や痛みを放置せず、早期に適切な治療を受けることが大切です。 臼蓋形成不全でやってはいけないこと3つ 臼蓋形成不全になった際にやってはいけないことは、主に以下の3つです。 無理な運動や重労働 しゃがむ動作 関節に負担をかける座り方 本章を参考に日常生活の注意点をおさえ、悪化を防ぐようにしましょう。 無理な運動や重労働 激しい運動や重労働は、股関節に負担がかかります。股関節痛が気になる際は、以下のような動作を避けるようにしましょう。 重たい荷物の持ち運び 股関節を大きく動かす筋トレやストレッチ 激しく飛び跳ねる運動(ジョギング・ジャンプなど) ただし、まったく動かない状態が続くと筋肉が衰えてしまう原因になります。医師の指示に従って適切な運動をしましょう。 しゃがむ動作 深くしゃがむ動作は、股関節周辺の骨に負担をかけるため、痛みの悪化につながります。激しい運動のみならず、何気ない日常生活の動作にも注意が必要です。普段の生活で無意識に深くしゃがみ込む動作の例として、以下があります。 トイレでしゃがむ 床のものを拾う 靴ひもを結ぶ これらを行う際に、うっかり股関節に負担をかけると痛みが増すこともあります。臼蓋形成不全の方は、動作を過剰に繰り返さないよう十分注意しましょう。 座り方 以下の座り方は、股関節に負担をかける可能性があります。股関節の痛みがある際は避けるようにしましょう。 あぐら 正座 横座り とくに、普段から床に直接座る習慣のある方は注意が必要です。地べたに座らず、座布団・クッション・椅子などを活用して股関節の負担を和らげるようにしましょう。 臼蓋形成不全の人におすすめの筋力トレーニング ここからは、臼蓋形成不全の人におすすめの筋トレ方法を3つご紹介します。どれもすぐに実践できる方法のため、股関節痛で悩んでいる方はぜひ実践してみてください。 仰向けで膝を抱えるトレーニング 床の上に、仰向けの状態で横になる 右ひざを両手で抱える 無理のない範囲で胸に引き寄せ、10秒ほどキープ 左膝も同様に2.~3.を行う 自宅でリラックスした状態で、股関節の周りの筋肉を伸ばせます。寝る前や起床時のスキマ時間にお試しください。 立って足を広げるトレーニング 床に垂直になるようにまっすぐ立つ 右足をゆっくり真横に広げ、ゆっくり閉じる 数回繰り返す 左足も同様に行う ※転倒しないよう必要に応じて壁などに手をついて行ってください 上記の動作は、太ももの外側の筋肉が鍛えられます。また、体の軸がぶれないよう意識するとより効果的です。ぜひ実践してみてください。 座って股関節を回すトレーニング 椅子に座る 足を少し浮かせる 足の付け根を右回り・左回りにそれぞれ5回ずつ回す 上記のトレーニングは、股関節を動かす範囲を広げて柔らかくする効果が期待できます。自宅でくつろいでいるときや、仕事の合間にお試しください。 今回ご紹介した筋トレは臼蓋形成不全の方におすすめですが、無理に動かすと股関節の痛みが悪化する恐れがあります。痛みがつらい場合は、運動をすぐに中止してください。 まとめ|臼蓋形成不全を早めに治療して悪化を防ぎましょう 臼蓋形成不全は直ちに生命に関わる疾患ではありませんが、「変形性股関節症へ進行するリスクがある」ことを考えると、放置することは危険、問題になる可能性があります。 股関節に違和感があれば、早めに病院等、医療機関で専門医に相談しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、股関節痛の軽減や変形性股関節症の重症化予防を目的とした再生医療による治療を行っております。 「メール相談」または「オンラインカウンセリング」にて無料相談を受付中です。股関節痛でお悩みの方は、ぜひ当院までご相談ください。 臼蓋形成不全の治療についてよくある質問 臼蓋形成不全は進行しますか? 成長過程で自然治癒する場合が多いものの、臼蓋形成不全が重度になると自然に治らず悪化して変形性股関節症に移行するリスクも考えられます。 臼蓋形成不全は、股関節が不安定になりやすい状態です。軽度の場合は股関節を支える筋力を強化する目的で股関節周囲の筋力トレーニングを行うことがあります。一方で重度の場合は、変形性股関節症に進行するリスクが高いため、臼蓋を大きくするための手術を行う場合もあります。(文献2) 臼蓋形成不全になったら手術した方が良いですか? 臼蓋形成不全と診断されたからと言って、必ず手術しなければならないわけではありません。症状の程度により、適切な治療が異なります。多くの場合であれば保存療法が、重度では手術が選択されます。しかし、医師の判断と患者のライフスタイルや希望によるため、担当医としっかり相談しましょう。 年代別の変形性股関節症の進行リスクについては、以下の記事にて詳しく解説しています。気になる方は、あわせて参考にしてください。 参考文献 (文献1) 南角学ほか.「変形性股関節症患者の臼蓋形成不全は腸腰筋の筋萎縮と関連する」『第49回日本理学療法学術大会 抄録集』2巻(41号), https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2013/0/2013_0526/_article/-char/ja/(最終アクセス:2025年2月19日) (文献2) ニノ宮節夫.「リハ医のための股関節手術-その適応と術式の選択-」『リハビリテーション医学』5巻(35号), p330-p.333, 1998年https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1964/35/5/35_5_330/_pdf(最終アクセス:2025年2月19日)
2021.01.18 -
- 股関節
- 変形性股関節症
高齢者の股関節痛は、症状によって痛みを治すためには手術しか選択肢がないといわれるケースも少なくありません。 痛みの根本的な治療につながる手術ですが、術後の感染症や血栓症、人工関節のゆるみなどのリスクが考えられるため、慎重に検討しましょう。 本記事では、高齢者が股関節の手術をする際に知っておきたいリスクや、術後のリハビリテーションについて解説します。 また、股関節の痛みを手術せずに治療する方法を紹介しているので、手術以外の選択肢も検討したい方は、ぜひ参考にしてください。 \手術せずに治療する再生医療とは/ 再生医療とは、機能障害や機能不全になった股関節に対して、体が持つ再生能力を利用して損なわれた機能を再生させる医療技術のことです。 人工関節置換術による手術を避け、股関節の痛みの改善が期待できます。 【こんな方は再生医療をご検討ください】 股関節の痛みを手術せずに治したい 痛みは治したいけど、手術のリスクが不安 人工関節はどうしても避けたい 股関節の痛みを早く治したいけど、後遺症リスクや長期間のリハビリが必要なことから「できるだけ手術をしたくない」という方も少なくありません。 再生医療は、患者様の細胞のみを使って治療を行うことで、アレルギー反応や拒絶反応などのリスクが少ない治療法として注目されています。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の詳しい治療法を配信しているため、手術を受ける前にぜひご覧ください。 【基礎知識】高齢者の股関節手術でおこなわれる人工股関節置換術とは 高齢者がおこなう人工股関節置換術とは、加齢に伴ってすり減った股関節部分を切除し、人工関節に置き換える手術です。 人工股関節置換術は加齢による関節の劣化や痛みを軽減し、生活の質を向上させるための有効な手段です。 人工股関節置換術をおこなうのは主に高齢者になり、逆に50歳未満の場合は「骨切り術」を実施するケースが大半です。 たとえ80歳以上であっても、股関節の手術前に診断した結果次第では、年齢制限なく手術を受けられます。 人工股関節には20〜30年以上の耐久性能があるため、年齢によっては再手術の必要がありません。しかし、高齢者が人工股関節置換術をする際は、後述するリスクについてよくご確認ください。 高齢者が股関節の手術をする前に知っておきたいリスク 高齢者が人工股関節置換術をする際、リスクを把握せずにおこなってしまうと、日常生活に支障をきたす可能性があります。 手術後に発生する可能性のあるリスクは、主に以下の通りです。 術後に起こりうる合併症(後遺症)のリスク 年齢によるリスク リスクが発生する原因や具体的なリスク内容を順番に解説していきます。 術後に起こりうる合併症(後遺症)のリスク 高齢者が人工股関節置換術をおこなう場合、合併症のリスクが高くなることが懸念されます。 病気は年齢を重ねるごとに発症のリスクが高まります。高齢者はとくに基礎疾患を有しているケースもあるため注意が必要です。 糖尿病などの病歴がある人は、手術前に発症する可能性のある合併症について理解し、リスクを認識することが重要です。 合併症の種類 詳細 感染 ・多くの場合で発症する合併症 ・発症率は0.5〜3.0%とされ高齢者は10% ・手術中の細菌侵入が主な原因 ・糖尿病や関節リウマチの治療をしている人、ステロイド治療を受けている人は感染リスクが高い 血栓症・肺塞栓症 ・手術中、手術後に深部静脈血栓症 ・脚のむくみや痛みを引き起こす ・血栓が肺に移動すると肺塞栓症になり突然死のリスクが発生 ・発症率は0.2%以下だが要注意 脱臼・骨折 ・人工股関節置換術の術後、転倒や無理な姿勢で発生 ・骨折は術後の転倒で発生 ・高齢者、骨粗しょう症の女性はリスクが高い 人工関節のゆるみ ・骨と人工関節の接着面にゆるみが生じて痛みや歩行障害になる ・過度な体重増加、重たい荷物を持つ、激しいスポーツなどが主な原因 高齢者に限らず発症する人工股関節置換術のリスクについては、以下の記事もあわせてご覧ください。 年齢によるリスク 人工股関節置換術を含めた手術は、高齢になればなるほどリスクが大きくなります。 高齢者は、老化に伴って股関節を支える筋肉が衰え、次第に腰が曲がって姿勢が変わります。筋肉の衰えから、若い人よりもリハビリにかける時間が長くなってしまうのです。 寝たきりになってしまうリスクもあるため、家族のサポートも重要になります。何より、高齢者が手術する際、体や心肺機能への負担も忘れてはいけません。 人工股関節置換術が必要になる変形性股関節症では、全身麻酔で手術をするケースが大半です。 心肺機能の低下に伴って、手術を受けられない場合もあるため、事前に担当医と相談して治療法を決める必要があります。 手術の年代別リスクについてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。 【高齢者向け】人工股関節における手術後のリハビリ内容 高齢者が人工股関節置換術をおこなった後は、手術の翌日からリハビリが始まります。 患者様の状態に応じてリハビリの強度が変わり、以下の段階で実施されます。 リハビリ段階 リハビリ内容 リハビリの目的 初期段階 ・ベッド上での軽い運動 ・関節のストレッチ ・筋力維持エクササイズ ・体を動かすのに慣れる ・関節の可動域を広げる ・筋力を維持する 中期段階 ・歩行訓練(歩行器や杖を使用) ・正しい姿勢で歩く練習 ・歩行距離を増やす ・バランス感覚と筋力の向上 後期段階 ・有酸素運動 ・心肺機能の強化 ・日常生活への復帰 ・心肺機能の向上 上記のように、段階に応じてリハビリ内容が異なるため、焦らずリハビリをしていきましょう。 高齢者が股関節の治療をする際の手術以外の選択肢 手術に頼らず、股関節の症状を改善するための選択肢もいくつか存在します。 保存療法 再生医療 これらの治療法は、症状や患者様の状態に応じて選ばれます。それぞれ詳しく解説します。 保存療法 高齢者が股関節の治療において「手術はしたくない」と考える場合、まず保存療法が選択肢として挙げられます。 保存療法は、股関節の痛みや機能障害を軽減させる手術以外の治療法です。 保存療法には主に、以下の種類があります。 保存療法の種類 治療の目的 詳細 薬物療法 痛みの緩和 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痛剤を使用 理学療法 筋力維持と柔軟性向上 理学療法士による運動プログラムで関節の可動域を広げ、筋肉を強化 上記の治療法が保存療法ですが、あくまで「症状の進行を遅らせる」のが主な目的です。 再生医療 近年の治療では、手術をしない治療法である「再生医療」が注目を集めています。 従来の選択肢では、高齢者が股関節の治療をする際、保存療法で改善されなかった場合は手術するしかありませんでした。 しかし、医療技術の進歩によって、さまざまな組織に変化する幹細胞を用いて、損傷した軟骨組織の再生・修復を促す再生医療による治療も新たな選択肢になっています。 再生医療の治療では、患者さま自身の細胞を用いるため、アレルギーや拒絶反応などのリスクが少ない治療法です。 高齢者の方でも身体の負担が少なく受けられる治療なので、股関節の痛みにお悩みの方は、ぜひ当院リペアセルクリニックまでご相談ください。 また、当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療に関する情報や症例を配信しているので、ぜひ参考にしてみてください。 ▼手術せずに治療できる再生医療 >>公式LINEで再生医療に関する情報をみてみる 股関節の手術で起こりうるリスクで不安な方は気軽にご相談ください 高齢者が発症するケースの多い変形性股関節症のような病気は、年齢を問わず初期であれば保存療法が有効です。 ただし、症状自体を止めるのは不可能です。症状が進行すると、人工股関節置換術を検討しなくてはなりません。 また、人工股関節置換術のような手術は、合併症につながるリスクがあります。手術は多くの場合、傷口からの感染症が伴うため、手術をしない再生医療が注目を集めています。 当院リペアセルクリニックでは、専門の医師・スタッフによる無料のカウンセリングを実施しており、治療内容や注意点について丁寧にご説明いたします。 「術後のリスクが不安だから手術は避けたい」「再生医療について詳しく知りたい」という方は、ぜひ当院までご相談くだしさい。 また、当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の詳しい治療法を配信しているため、手術を受ける前にぜひご覧ください。 ▼手術せずに治療できる再生医療 >>公式LINEで再生医療に関する情報をみてみる 高齢者が股関節の手術をする上でよくある質問 手術後は何に注意すれば良いの? 手術後の注意点は、回復をスムーズに進めるために「安静」が求められます。 具体的には、無理な動作や過度な負荷を避け、少しずつ日常生活に戻るようにします。 とくに、階段の昇降や長時間の立ち仕事は、最初は避けるのがおすすめです。 また、転倒のリスクを減らすために、家の中の環境を整える必要もあります。滑りやすい床や障害物を取り除き、手すりを設置するなど、安全対策を講じましょう。 さらに、手術後は免疫力が低下している可能性があるため、傷口の管理に注意し、衛生状態を保つ必要があります。 何か異常を感じた場合は速やかに医療機関に相談しましょう。 以下の記事では、より詳細に注意すべきポイントをまとめているので、ぜひ参考にしてください。 治療の期間はどれくらい? 人工股関節置換術の治療期間は、患者様の健康状態によって異なりますが、術後6〜12カ月程度です。 治療をスムーズに済ませるためにも、まずは入院前の準備として禁煙や体重管理などの徹底が必要です。 まず手術をする前には、人工股関節置換術を受ける医療機関ごとに設けられた検査項目に基づき、検査入院の有無を決めていきます。 手術を含めた入院期間中は多くの場合で、理学療法(リハビリ)も実施するので、リハビリ内容を聞いておくのも良いでしょう。 杖を使った歩行訓練や階段の上り下りなど、日常生活をイメージした訓練をおこない、2〜3週間程度で退院になります。 退院後は定期的な医師の診察も必要で、術後1カ月、3カ月、半年、1年といったタイミングでのフォローアップが推奨されています。 高齢者の場合はとくに、回復には個人差が大きいため、医師と相談しながら、無理のないペースで治療を進めていきましょう。 手術をした後は歩けるの? 人工股関節置換術を受けた後、多くの高齢者が最も気にするのは、再び歩けるようになるかどうかです。一般的には、手術後しばらくのリハビリ期間を経て、多くの患者が歩行能力を回復します。 手術直後は、痛みや腫れがあるため、杖のような歩行補助具の使用がおすすめです。 リハビリの初期段階では、理学療法士が患者様の状態に合わせたプログラムを組み、筋力や柔軟性の回復を目指します。 先述で解説したように、まずはベッド上での軽い運動から始まり、徐々に歩行訓練を開始します。 しかし、回復の速度は個人差があり、体力や健康状態、術後のケアの質に依存するため、焦らず歩けるよう訓練していきましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、気軽にご連絡ください。 高齢者が人工股関節で歩けるようになるまでにどれくらいかかる? 高齢者が人工股関節置換術を受けた後、歩行が可能になるまでの期間は手術をしてから1週間程度です。 当然、個人の健康状態やリハビリの進捗によって異なりますが、1週間後には杖を使った歩行訓練が始まります。 手術後、最初の1〜2日間は安静が必要ですが、多くの患者様の手術が終わった2週間後には、杖を使いながら安定的に歩行が可能です。 杖を使って安定した歩行ができれば無事、退院できます。 ただし、股関節の痛みが入院中に完全回復しないケースもあるため「数カ月は軽度な痛みが残る」と捉えておきましょう。 何より、合併症のリスクも見逃せないポイントなので、定期検診では我慢せずに症状を伝えるのがおすすめです。
2021.01.13 -
- 股関節
- 変形性股関節症
変形性股関節症|人工関節の手術のリスクを説明します 変形性股関節症と診断された場合、「薬物療法」や「運動療法(リハビリ)」といった「保存治療」以外に、「手術療法」という選択肢があります。 しかし、変形性股関節症での手術療法は、股関節を人工関節に置換える文字通り「人工股関節置換術」といい、手術としても大掛かりな部類になります。 医療機関で、人工関節を勧められた場合、以下のようなお悩みや、心配をされるのではないでしょうか?! 人工関節にする手術を勧められた場合の心配やお悩み 今ある自分の関節を人工物に取り換える違和感や恐れ 摩耗や緩みで数年後に再手術が必要な場合があること 人工関節にすることで変えなばならない生活スタイル 一度、人工関節にすると引き返せないこと 合併症の不安、万一細菌が入ると怖い再手術(3~10%) 長い手術時間や全身麻酔、輸血の心配 接続する脆くなった骨への影響 など、知れば知るほど不安に思われるのも当たり前だと思います。 そこで今回は、「変形性股関節症の人工関節手術(人工関節置換術)」について、以下のような疑問やお悩みにお答えできればと思います 「どのようなリスクがあるのか?」 「高齢者の場合のリスク?」 「術後に何を、どのように気を付けるべきなのか?」 「それ(手術)以外に方法は無いのか」 変形性股関節症の人工関節手術のリスクについて 変形性股関節症に関わらず手術は、手術であるかぎり、他の病気や、けがの手術と同じように必ずリスクは伴います。逆にリスクが一切ない手術は存在しません。 そのため、「変形性股関節症の手術に限ってリスクはない」ということは言えません。しかも手術を受ける人によってリスクは様々、「高い、或いは低い」「大または小」があります。 そのため、手術を行うためには前もって多くの検査が必要となります。 その結果、リスクが大きいと判断されれば、手術自体を受けることはできません。つまり、手術による治療は、手術をしないよりもリスクがあるともいえるのです。 高齢者の変形性股関節症の人工関節手術のリスク 高齢者の方が変形性股関節症の人工関節手術を行う場合は、リスクが高くなる可能性があります。医療機関での治療過程で「あとは手術しかない」と言われたとしても、医師に納得いくまで説明を受けて、よく検討する必要があります。 「こんなはずでは無かった」とならないように注意しましょう。 高齢者の場合、股関節はもちろんのこと、骨そのものが脆くなっていることがあり、骨ではないチタン合金、クロム合金などといった人工的に作った股関節を今ある自分の股関節に置き換えるため、体内の骨と接合する必要があります。 接合には、骨ではない合金などといった異物を取り付けるために、「セメント(骨セメント)」や、「セメントレス」といった2つの接合方法があり、患者の骨の状態を見て判断されます。 素材や技術は日々、進歩を続けていますが、どうしても一長一短があります。 人工関節、身体(骨)との接合、固定方法上のリスク セメント:当初は非常に強固だが経年で緩む危険性がある。 セメントレス:緩みにくい反面、安心できる(固定が定まる)まで6か月ほど必要。 しかし、いずれの手術であっても、成功しても、セメントはもちろん、セメントレスであったとしても時間とともに緩む可能性は0ではありません。将来に再手術というリスクという可能性を考えておくべきです。 また、特に女性の場合、事前の検査で骨粗鬆症の罹患率が高く、骨密度が低ければ、人工関節は丈夫でも周囲の骨に対して骨折というリスクがあることを注意しなければなりません。 手術の合併症、手術で感染症が重篤化するリスク 人工関節の可否、骨だけの問題ではなく、身体の免疫機能そのものが低下している場合、変形性股関節症の手術が無事終わったあとでも、その後に感染症を引き起こせば重篤になる可能性があります。 一度感染症を引き起こしてしまうと傷の治りが悪くなるため、結果として再手術が必要となり人工股関節を取り替えなければならないような事態になる恐れもあります。 感染症をおこしてしまう確率を0%にすることはできず大変危険なので、免疫機能についても十分に検査をして、変形性股関節症の手術に適応するかどうかを検討しなければなりません。 それ以外にも全身麻酔のリスク、輸血のリスクなど検討しなければならないことは数多くあります。 これらは、けして大げさに申し上げているのではなく、実際に人工関節手術を受ける前に説明を受ける内容です。 保存療法では人工関節を避けることはできない 保存療法とは、内服薬や外用薬などの薬物を利用する薬物療法や、ウォーキングなどの軽い運動を行い股関節周囲や足の筋力を高めるリハビリテーション、運動療法があるのですが、これら地道な努力を行なっているにもかかわらず痛みが緩和されずに効果を感じられないという人もいます。 また、初期のころは多少でも効果を感じることができたけど、徐々に効果が低くなるという場合もあります。 このように保存療法は、コツコツできる範囲で行っていても効果が感じられず、常に痛みがあり、日常生活に支障をきたすようであれば、手術を受けたほうが良いと判断される場合もあり、保存療法等リハビリを行っているからと人工関節の手術を避けられるものではありません。 人工関節、術後のリスク 変形性股関節症の手術を受けて、めでたく成功した場合でも注意は必要です。 実は、術後の日常生活にこそリスクが潜んでいます。 そこで手術後にどのような生活を心がければ良いのかを事前に知っておきましょう。そうすることで手術を受けた後も、危険を回避しながら安全に過ごすことができます。 日常的に自分の姿勢や動作に注意しなければなりません 変形性股関節症の手術を終えた直後、リハビリをすることで体の調子が徐々に戻ってきます。上手くいけば痛みも改善し、無理をしなければ日常生活を送ることができるようになるでしょう。 しかし、常に気を付けなければいけないことがあります。それは、股関節への配慮です。 ご注意いただきたいのは、股関節を無理に内側にひねるような姿勢は、脱臼を起こしてしまう恐れがあります。また、あぐらや正座、しゃがむ動作などの姿勢は、変形性股関節症の手術の後におこなうと非常に危険です。 つまり、和風の床に直接座るような生活スタイルから、椅子やベットで過ごせる洋風の生活へ意識してチェンジしていく必要があります。この辺りも家族の理解を得ながら進めていきましょう。 もしもの場合、再手術になることもあるので、このあたりは十分に注意しなければなりません。 手術後の細菌による感染に注意(皮膚炎や歯周病も) 変形性股関節症の手術の後に起こるリスクは脱臼などだけではありません。感染症にも十分注意が必要です。 感染は、手術した部位だけの問題ではありません。手術後の感染を防ぐためには「水虫」や、「皮膚炎」などにも注意すべきです。足まわりを清潔に保っておくことが大切です。 また虫歯、歯槽膿漏などの症状によって細菌が入り、感染が起こす可能性もあるため、常に口腔内を清潔にしておくことも重要です。必要であれば手術の前に歯科、口腔外科などに通い、オーラルケアをしておけば更に安心です。 変形性股関節症|人工関節を選択する場合に知っておきたいこと 変形性股関節症の手術は、手術中だけでなく手術後の生活にもリスクが伴います。なるべく危険を避けて手術を受けるようにしましょう。 事前に手術内容を理解しておく(納得する) 変形性股関節症の手術で、自身の股関節を人工の股関節に置き換える手術を行う場合、手術中、術後の感染リスクや、人工股関節が入ることによるリスク。どのような生活が待っているのかなどを十分に説明を受け、理解しておくことが必要です。 事前に手術内容を把握しておくことで、手術をしたその日から危険を回避できるような対策をとれるようにもなります。また、知識を持っていれば手術を受ける前に股関節に負担のかからない生活環境を整えるなどの対応を取ることも可能になります。 いずれにしても変形性股関節症の手術を行うことが自分にとって本当に最善なのか検討し、危険が多いと感じるようであれば、まずは薬物療法や、運動療法で痛みを改善することを優先したほうが良いかもしれません。 これら主治医ともよく話し合って、納得して手術を受けるようにしてくださいね。今の時代、他の医療機関でセカンドオピニオン受けるという手もあります。手術は最終手段です。 信頼できる医療機関を選択する(自身で納得できること) 自分はもとより、家族の同意を得て変形性股関節症の手術を決断したなら、多くの症例を持ち、信頼できる先生がいたり、設備が整った病院である等の基準も大切です。普段から通いなれて気心が知れた医療機関という手段もあります。 選び方としては今やネット社会です。情報は検索することで過剰なほど得られます。 変形性股関節症の手術を行っている医療機関は全国に多くありますがインターネットや、口コミを参考にしながら事前に情報収集しましょう。 手術に関して家族や信頼できる友人などの意見を聞ければ聞き、ご自分でメリットはもちろんですが、リスクもしっかりと理解し、納得した上で手術を受けましょう。後戻りはできないので注意してください。 手術後リハビリをしっかりと行う 変形性股関節症の手術が成功したあと大切なのはリハビリです。 急がず、コツコツ気長に継続して人工股関節を体に慣らしていくことが大切です。手術後の危険のリスクを少なくするためにも前向きに取り組んで回復を目指しましょう。 歩行が問題なくできるようになっても無理は禁物。転倒などの危険性もあります。自信がつくまでは杖を使うなど危険を回避する方法を取り入れることも大切です。 変形性股関節症|人工関節以外の選択肢「再生医療」という先端医療 変形性股関節症の手術は、症例を有した信頼のできる医療機関であれば、基本的に安全に受けることができるます。 しかし、手術である以上、危険が全くないというわけではないため、手術後の生活に不安を感じている人や年齢の問題、骨密度や再手術の可能性、感染のリスク、何より人工のもので置き換える違和感に恐怖を感じておられる方にご紹介したいのが近年注目されている先端治療である「再生医療」という手段です。 手術を決断する前に自分に可能性がないか調べてみてはいかがでしょうか。上手くいけば手術というリスクを回避して改善を目指すことができるかもしれません。 再生医療は、患者自身の細胞を利用するため、拒絶反応やアレルギーなどの副作用が少なく、安全性に優れた治療方法です。また、人工股関節を入れるというような大掛かりな手術ではないので、感染のリスクが少ないのも魅力です。 変形性股関節症で、従来の治療方法ではあまり痛みの改善効果が期待できなかった人や、手術の危険要素がどうしても不安であるという人にとって、再生医療は選択肢の一つになるでしょう。 > 股関節の再生医療について詳細 https://youtu.be/BIzpa2SVAt4?si=D4MITF9M-bqvJbKo まとめ・変形性股関節症|人工関節手術のリスクについて 今回は、変形性股関節症の手術における「リスク」について紹介しました。これは脅しなどではなく、危険性やリスクを知識として知っておき、理解しておくことが自らを守ることに繋がると判断したためです。 医療機関で納得のいく説明を受けるためにも手術の実際とリスクを知っておき、疑問点は臆すること質問できるようになって欲しいと思います。 手術を検討する場合は、手術そのものだけでなく、手術後の生活についても事前にしっかりと理解し、信頼できる医療機関を選ぶこと、自分自身はもちろんのこと、家族も納得してもらった上で手術を受けることが大切です。 また、最後にご紹介した再生医療は、手術を避けることができる危険の少ない最先端の医療として注目を集めています。変形性股関節症の治療においても効果を期待することできます。 いずれにしましても、手術はもちろん、治療にあたってはしっかりとした実績を持った専門医や医療機関にご相談になってください。以上、変形性股関節症の人工関節手術のリスクと術後の注意点について記させて頂きました。 人工関節の話が出たり、人工関節置換術の説明を受けたり、変形性股関節症でお悩みの場合、参考にしていただければ幸いです。 ▼ 再生医療で変形性股関節症を治療する 変形性股関節症は、最新の再生医療なら手術せずに症状の改善を目指せます(詳細) ▼以下もご覧ください 変形性股関節症の保存療法|治療効果を上げるための注意
2021.01.06 -
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変形性股関節症と病院で診断され、これ以上悪化させないためにはどうすればいいか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。 変形性股関節症は股関節に負荷がかかり続けることで軟骨がすり減り、骨が変形していく疾患です。 進行を遅らせる方法があれば知りたいと思う人もいるかもしれません。 結論から言えば、変形性膝関節症で禁止されている動作や運動はなく、日常生活の動作や姿勢に注意すれば問題ありません。普段から股関節への負荷をできるだけ避け、股関節の可動域・筋力向上に効果的な運動を継続すれば、痛みを軽減できます。 そこで今回の記事では、変形性股関節症に対して避けるべき動作や効果的な運動をご紹介します。 病院で変形性股関節症と診断されて不安に思われている人は、ぜひ最後までチェックして実践してみてください。 ▼変形性膝関節症の原因について1分で解説! また、現在リペアセルクリニックでは、変形性膝関節症が再生医療によって改善が見込まれた症例を公式LINEにて配信中。 無料のオンライン診断も実施していますので、ぜひご利用ください。 変形性股関節症でやってはいけないこと|股関節への負担は要注意 変形性股関節症でやってはいけないこととして、以下の3つに注意してください。 運動 姿勢 生活習慣 ここから具体的に、どういった運動や姿勢、生活習慣が変形性股関節症に悪影響となるのか、詳しく解説していきます。 変形性股関節症の発症後に注意すべき点については、以下の記事もご覧ください。 変形性股関節症でやってはいけない・注意すべき運動 変形性股関節症でやってはいけない・注意すべき運動として、以下の2つには注意しましょう。 ジョギング ストレッチ・ヨガ(股関節に負担がかかるもの) これらの運動は股関節に大きな負担が生じます。軟骨の摩耗や骨の変形・痛みといった変形性股関節症の進行を強める要因となるため、可能な限り避けましょう。 ジョギングは着地の衝撃で股関節への負担が大きくなるとされています。また、大きく脚を開くようなストレッチやヨガも股関節への負担が大きいため、注意しましょう。 上記以外の運動中でも、痛みなど異変があれば無理に動かさず安静にするよう心がけてください。 変形性股関節症でやってはいけない・注意すべき姿勢 変形性股関節症でやってはいけない・注意すべき姿勢は以下の4つです。 あぐら 時間しゃがむ 足を組んで座ること 猫背 あぐらや長時間しゃがむ姿勢は、股関節への負担が大きく、変形性股関節症の症状を強めてしまう可能性があります。 足を組むのも、股関節が捻られて負担が大きくなるため避けましょう。 また、猫背の姿勢は骨盤と大腿骨(ふとももの骨)が不安定な形になりやすく、股関節への負担が大きい姿勢です。 変形性股関節症を悪化させる可能性があるため、正しい姿勢を保つようにしましょう。 変形性股関節症でやってはいけない・注意すべき生活習慣 変形性股関節症でやってはいけない・注意すべき生活習慣は以下の3つです。 重い物を持って立ち上がる・歩く行為 体重の増加 ヒールの高い靴を履く 重い物を持って立ち上がったり歩いたりする行動は、変形性股関節症を強めるリスクが高いです。 体重の増加も股関節に負担がかかるため、暴飲暴食や運動不足による肥満には注意しましょう。 また、ヒールの高い靴を履くと足首の動きが悪くなり、歩行時の衝撃を吸収しにくくなります。股関節にかかる負担が増えるため、できるだけフラットなパンプスやスニーカーなど、足首の動きに影響が少ない靴を選ぶと良いでしょう。 変形性股関節症の禁忌動作を続ける3つのリスク 変形性股関節症の禁忌動作を続けることで、以下に挙げる3つのリスクが生じます。 疼痛が増強する 歩行が困難になる 人工関節を入れる手術が必要になる なぜこのようなリスクが生じるのか、それぞれ詳しくみていきましょう。 疼痛が増強する 変形性股関節症の人がしゃがむ、股関節を内側にねじるなどの動作を日常的に繰り返すと、脚の骨と骨盤の間にある軟骨がすり減り、疼痛(とうつう)が増強してしまいます。 疼痛とは、皮膚や粘膜、内臓、骨膜、筋、腱などの自由神経が刺激されて発生する痛みのことです。焼けるような感覚、強いしびれなど、人によって感じ方や痛みの程度は異なります。 股関節に負担がかかる動作や姿勢を繰り返すと、変形性股関節症の症状の進行が加速し、疼痛もひどくなる可能性があります。 歩行そのものが困難になる 変形性股関節症は、運動療法で筋肉を鍛えるなど改善に向けたリハビリもおこないます。しかし、股関節に負担がかかる姿勢や動作を繰り返すと症状が悪化し、歩けなくなる可能性があります。 歩行が困難になると、簡単な外出や日常的な家事・入浴動作も難しくなるかもしれません。痛みや可動域制限によって日常生活に支障をきたし、「生活の質」が低下していくでしょう。 最終的には日常生活を送るだけでも人の手を借りないといけない恐れがあります。 このような最悪の事態を避けるためにも股関節に大きな負担がかからないよう意識して過ごしましょう。 人工関節を入れる手術が必要になる 変形性股関節症の症状が進行すると、人工関節を入れる手術が必要になります。すり減った軟骨や変形した骨は自然治癒しないため、痛みをとるためには人工関節を入れないといけません。 人工関節を入れる手術を行えば痛みを緩和できる可能性は高くなりますが、皮膚や筋肉を大きく切開するため、術後のリハビリが必要です。 また、脱臼や2回目の手術を避けるために、術前よりもより生活習慣に気を配る必要もあります。 人工関節手術のリスクについては、こちらの記事もご覧いただければ幸いです。 変形性股関節症の悪化を防ぐためにやるべき3つのこと 変形性股関節症の症状悪化を防ぐためには、以下3つのことに取り組んでください。 身近な人の理解を得る 無理のない範囲で股関節を動かし鍛える 負荷の少ないストレッチで股関節まわりの柔軟性を保つ これらの簡単な取り組みを繰り返すだけでも変形性股関節症の症状悪化を予防する効果が期待できます。変形性股関節症の症状進行を止めたい人は必ず最後までチェックしてください。 身近な人の理解を得る 変形性股関節症の人は、まず家族や職場の人など、身近な人の理解を得ることが重要です。周囲からの理解を得られれば、股関節に負担がかかる動作を代わってもらえるなど、変形性股関節症が悪化しないよう協力してもらいやすくなります。 とくに以下のようなシチュエーションでは、身近な人の理解・協力が重要です。 重たい物を運んでもらう 食卓を座卓からイス・テーブルに変えてもらう 浴槽をまたぐための補助台を用意してもらう 1人だけで考えるより精神的な安心感を得られやすく、前向きに治療に取り組めるようになります。 身近な人と一緒に診察を受ける、リハビリの見学をしてもらうなど、周囲の協力を得られるよう働きかけてみてください。 無理のない範囲で股関節を動かし鍛える 変形性股関節症では、筋肉がないと関節にかかる負担が大きくなるため、無理のない範囲で股関節を動かし、鍛える必要があります。 関節を支える組織には骨・靭帯・筋肉の3つがあります。筋肉が少ないと関節を支える負担が骨にかかり、軟骨の摩耗や骨の変形を強めてしまうかもしれません。無理のない範囲で運動をして、股関節に負担をかけないことが大切です。 仰向けでの脚上げ運動や、プールでの水泳・水中歩行は、股関節に負荷をかけず筋肉を鍛えられるためおすすめです。 負荷の少ないストレッチで股関節周りの柔軟性を保つ 筋肉を鍛えることと同様に、負荷の少ないストレッチも変形性股関節症の症状を抑えるために重要です。 ストレッチで股関節周りの柔軟性が保たれれば、股関節にかかる負担を減らせます。 たとえば60°しか動かない関節と120°動く関節を比較したとき、60°しか動かない関節では衝撃が加わる範囲が限定されます。しかし120°動けば衝撃が広い範囲に分散されるため、一部分にかかる負担は軽減されるでしょう。 つまり動きが硬い股関節だと狭い範囲の軟骨や骨に衝撃が加わりますが、可動域が広い股関節であれば全体に衝撃が分散されるため、軟骨のすり減りや骨の変形を全体に広げられます。 結果として変形性股関節症の症状予防につながるため、負荷の少ないストレッチは重要です。痛みが出ない範囲で十分なので、毎日継続しましょう。 ストレッチ方法や筋トレについては、以下の記事を参考にしてください。 変形性股関節症の治療法 変形性股関節症の治療は、病気の進行状況や症状の程度・年齢・活動量などを総合的に判断し、患者さん一人ひとりに合った方法が選択されます。 主な治療法は以下の通りです。 保存療法 手術療法 再生医療 それぞれの治療法には特徴がありますので、順に解説していきます。 保存療法 保存療法は、手術以外の方法で股関節への負担を軽減し、痛みを和らげ、病気の進行を遅らせることを目的とします。 変形性股関節症が軽度な場合はまず保存療法から検討され、日常生活の見直しが基本となります。 特に体重が増えると股関節への負荷が増加するため、体重管理が非常に重要です。 股関節周辺の筋力を強化し、関節の安定性を高めるためのトレーニングや、関節の可動域を維持・改善するためのストレッチといった運動療法もあわせて行います。 また、痛みや炎症を抑えるために消炎鎮痛剤の内服薬や外用薬が用いられることもあります。 手術療法 保存療法で十分な効果が得られない場合や、股関節の変形が進行し、日常生活に大きな支障が出ている場合には手術療法が検討されます。 代表的な手術には「人工股関節置換術」と「骨切り術」があり、変形性股関節症が進行期から末期に至り、強い痛みで日常生活が困難になっている場合に検討される治療法です。 人工股関節置換術:損傷した股関節の骨の表面を取り除き、金属やセラミック、ポリエチレンなどでできた人工の関節に置き換える手術 骨切り術:骨盤の骨や大腿骨の一部を切り、骨の向きや形を変えることで、体重がかかる部分を移動させて痛みを軽減する手術 どちらの手術を選択するかは、年齢・活動量・関節の状態などを総合的に考慮して決定されます。 一方でどちらも手術することには変わりないので、身体・精神への負担は比較的大きいと言えるでしょう。 再生医療 再生医療は、身体の自然治癒力を高めることにより、失われた組織や機能などの修復・再生を行うことを目的とした、最先端の治療方法です。 従来の疼痛緩和を目的とした対処療法とした外科的手術と大きく異なる点は「切らない治療法」であり、変形の進行は止められない対症療法と異なり損傷した軟骨の再生・痛みの軽減が期待できます。 再生医療を専門とする当院(リペアセルクリニック)では、独自の関節内ピンポイント注射を採用することで、より精度の高い治療技術を実現。 軟骨が最も損傷している箇所を特定しピンポイントに幹細胞を注入するため、軟骨再生を促します。 一度すり減ってなくなった軟骨は、基本的に自分の力では元に戻ることはありません。 変形性股関節症を放置したくないものの、身体的や精神的に大きな負担をかけたくないという方は、ぜひリペアセルクリニックの再生医療をご検討ください。 ▼LINEでも無料オンライン診断を実施中 >>公式LINEはこちら まとめ|変形性股関節症の悪化を防ぐためには股関節に負担をかけないことが大切 変形性股関節症は繰り返される股関節への負荷によって軟骨がすり減り、骨が変形することで発症する疾患です。 症状を進行させないためには股関節へ負担をかけないことが重要です。股関節への負担が大きい動作や姿勢を避け、家族の理解・協力のもと、日常生活で股関節にかかる負担を減らすよう努めましょう。 自分自身が無理のない範囲で運動・ストレッチを継続することも、変形性股関節症の症状緩和に効果的です。 また、当院「リペアセルクリニック」では、国内でも数少ない、自己の幹細胞を用いた再生医療(幹細胞治療)を提供しています。 再生医療によってすり減った軟骨を復活させられれば、変形性股関節症の症状軽減につながるかもしれません。また、再生医療と生活習慣の改善・運動を併用すれば、より高い効果が期待できます。 当院ではメール相談やオンラインカウンセリングも実施していますので、ご活用ください。 この記事が、変形性股関節症における手術以外の治療法・予防法を知るのに役立ったのなら嬉しく思います。 変形性股関節症についてよくある質問 変形性股関節症に良い運動は? 股関節に大きな負荷がかからない運動がおすすめです。 具体的には仰向けでの脚上げ運動やお尻挙げ、浮力で体重を軽減できるプール運動が挙げられます。また、軽めのウォーキングやヨガ・ストレッチも良いでしょう。 ランニングや縄跳びなど股関節に衝撃がかかる運動や、股関節に負荷が大きくかかる運動は避けるべき運動なので注意してください。 変形性股関節症は歩かない方が良いですか? 痛みがない範囲であれば歩いてもかまいません。むしろ軽めのウォーキングは変形性股関節症の症状を和らげる方法として推奨されています。 実際、京都大学がおこなった研究によると、変形性股関節症が進行していた人は1日7000歩以上歩いていたといわれています(文献1)。 1日20〜30分程度のウォーキングで、踵から着地してしっかり蹴る意識で歩けば大きな問題はありません。しかし、痛みがあれば中止するなど、無理のない範囲でおこないましょう。 参考文献 (文献1) Tateuchi H, et al. (2017). Daily cumulative hip moment is associated with radiographic progression of secondary hip osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage, 25(8), pp.1291-1298. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28232145/(最終アクセス:2025年2月28日)
2020.12.24 -
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変形性股関節症の症状改善には、ウォーキングや筋トレといった運動療法を中心としたリハビリが効果的です。 主に以下のようなリハビリプログラムを実施しましょう。 運動療法には、股関節の柔軟性を高めたり、股関節を守るための筋力を向上させたりする目的があります。 ただし、股関節に負担がかかりすぎるリハビリは、症状を悪化させるリスクがあるため注意が必要です。 運動療法を始める際には、運動量や実践時間における注意点を把握した上で開始しましょう。 変形性股関節症のリハビリテーションの目的 変形性股関節症のリハビリテーションには、股関節の柔軟性を高めて可動域を広げ、股関節の負担や痛みを軽減させる目的があります。 また、筋力強化を図って、股関節を衝撃から守る効果も期待できます。 なお、変形性股関節症の治療には「再生医療」が有効です。人間の自然治癒力を活用して、すり減った膝軟骨を再生させます。 期待できる治療効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 変形性股関節症のリハビリ(運動療法)プログラム【4選】 変形性股関節症に効果のある運動療法のリハビリを4つ紹介します。 水中ウォーキング ウォーキング 股関節周辺のストレッチ 下半身の筋力トレーニング 順番に見ていきましょう。 水中ウォーキング プールでの水中ウォーキングは、変形性股関節症のリハビリとして有効です。 水中では浮力が働くため、陸上でウォーキングするよりも股関節への負担が軽減されます。 また、水中ウォーキングは、水の抵抗により少しの動きでも全身の筋肉を使います。 そのため、股関節を守るための筋力をバランス良く強化できるのです。 ウォーキング 水中ウォーキングが難しい場合は、通常のウォーキングでも股関節の柔軟性を向上させ、可動域を広げる効果が期待できます。 リハビリを目的としたウォーキングでは、ゆっくりとしたペースでの歩行を心がけるのがポイントです。 歩く速度が早すぎると股関節に過度な負担がかかり、症状を悪化させる恐れがあるためです。 リハビリ開始時は15分程度から始め、体調や症状に応じて徐々に時間を延ばしていくのが理想的です。 リハビリは継続が大切なので、無理のない範囲で続けるようにしてみてください。 股関節周辺のストレッチ 股関節付近のストレッチをおこなうと、柔軟性が高まり股関節の可動域の拡大にもつながります。 変形性股関節症には、股関節の前側を伸ばすストレッチや股関節周りのお尻・太ももに効くストレッチが効果的です。 たとえば、股関節の前側を伸ばすストレッチでは、片足の膝を床につけて立ち膝の姿勢をとり、骨盤を前方に動かして、股関節の前側を伸ばします。 ももの内側を伸ばしたいときは、開脚のストレッチがおすすめです。 ストレッチは痛みのない範囲でおこないましょう。負担をかけすぎず、徐々に強度を上げていくのが理想です。 下半身の筋力トレーニング 適切な筋力トレーニングも変形性股関節症のリハビリに有効です。 筋力強化には、衝撃から関節を守ったり、股関節の動きを安定させたりする働きがあるためです。 変形性股関節症における筋力トレーニングでは、股関節周りを中心に足全体の筋力を高めていくのが効果的です。 たとえば、ふくらはぎの筋肉を鍛えるには、テーブルにつかまりかかとを上げ下げする運動がおすすめです。お尻の筋肉を鍛えるには、仰向けに寝て、両足を立てた状態でお尻を上に引き上げる運動が効果があります。 ストレッチ同様に過度な負担をかけるのは逆効果となります。痛みのない範囲で無理なく続けていきましょう。 変形性股関節症の根本的治療には「再生医療」を推奨します。再生医療は、人間の自然治癒力を活用した最新の医療技術で、すり減った膝軟骨の再生を図ります。 「再生医療に興味があるけど具体的なイメージがつかめなくて不安…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 変形性股関節症の方が自宅でもできる筋トレやストレッチ 変形性股関節症の方が自宅でもできるストレッチや筋トレを紹介します。 股関節周辺を鍛える筋トレ 股関節周辺の柔軟性向上させるストレッチ 変形性股関節症を悪化させないためにも、股関節周辺の柔軟性や筋力の維持は必要不可欠です。 自宅で行う場合は、無理のない範囲で少しづつ継続しましょう。 以下では、それぞれの具体的な方法について詳しく解説していきます。 股関節周辺を鍛える筋トレ 股関節周辺を鍛えるには、仰向けで手軽に実施できる「ヒップリフト」が有効です。 以下の手順で行いましょう。 ヒップリフトでは、お尻を浮かせるときに肩から膝までが一直線になっていることを意識するのがポイントです。 最初は1セット10回程度から始めて、徐々に回数やセット数を増やしていきましょう。 股関節周辺の柔軟性向上させるストレッチ 股関節周辺の柔軟性を向上させるために、以下のストレッチが有効です。 上記のストレッチでは、股関節の前面だけでなく後面や腰回りの筋肉も伸ばすことができます。 両膝を抱え込む際にお尻が床から離れないように意識するのがポイントです。 変形性股関節症のリハビリでやってはいけないこと 変形性股関節症でリハビリを実施する際は、以下3つの注意点があります。 ・股関節に負担が大きい運動は避ける ・痛みがあるときは無理をしない ・体重管理にも気を配る これらの注意点を守らないままリハビリを続けると、症状が悪化するリスクがあります。ポイントをおさえて効果的なリハビリを実施していきましょう。 股関節に負担が大きい運動は避ける 変形性股関節症の運動療法で激しい運動を長時間おこなうことは避けてください。 股関節への負担がかかりすぎて、軟骨のすり減りが進行してしまうためです。 以下は、股関節に大きな負担がかかりやすい運動例です。 ハードな筋力トレーニング サッカー ランニング マラソン テニス 変形性股関節症のリハビリにおける運動療法プログラム4選で紹介したリハビリは、股関節の負担が少ない運動療法です。 参考にしながら、自身に合った運動療法を見つけてみてください。 変形性股関節症でやってはいけない動作や運動についての解説はこちら 注意すべき動作の1つである立ち上がりについての解説はこちら 痛みがあるときは無理をしない 股関節に痛みを感じるときは、股関節を休ませてあげましょう。 痛みを我慢してまで運動やトレーニングをおこなうと、症状が悪化するリスクがあるからです。また、無意識に痛む部分をかばってしまい、ほかの関節にも負担をかけてしまう可能性もあります。 痛みを感じたら一度運動を中止し、安静に過ごすことを第一優先にするようにしてください。 急激な体重増加 リハビリで運動をおこなうためには「体重の管理」にも気を使ってください。体重が増えてしまうとせっかく運動療法をおこなっても関節への負担が増えて悪影響になりかねません。 とくに、疾患を患っている最中は、運動量が落ちるとどうしても体重が増えがちになります。 「増えたな」と思ったら、食べる量や間食を減らすなどして適正体重を保つよう心がけましょう。 変形性股関節症の発症後に気をつけることについての解説はこちら 変形性股関節症を根本的に治療したい方は再生医療も選択肢の一つ https://www.youtube.com/watch?v=PVZORiK2WsU&t=1s 変形性股関節症による股関節の痛みにお困りの方は、根本的な改善を目指せる再生医療による治療を検討しましょう。 再生医療とは、人間の持つ再生力を活用し、すり減った股関節の組織を再生・修復させる医療技術のことです。 リハビリや痛み止めなどの薬物療法によって痛みの緩和はできても、原因となっている変形性股関節症の改善にはつながりません。 しかし、人工関節や手術は避けたいという方も多いです。 再生医療は、手術や入院不要で治療できるため「手術せずに治療したい」「人工関節は避けたい」という方に多くご利用いただいています。 股関節の痛みにお悩みの方は、ぜひ当院リペアセルクリニックへご相談ください。 【まとめ】変形性股関節症に効果的なリハビリを知って症状悪化を防ごう 変形性股関節症の進行を遅らせたい方や症状改善を目指す方は、本記事で紹介した運動療法のリハビリを試してみてください。 リハビリは、焦って負荷をかけすぎたり、長時間続けたりすると症状が悪化するリスクがあります。確実な改善を目指すためにも、無理せず地道でも継続的に取り組みましょう。 変形性股関節症では運動療法も有効ですが、根本的な治療を希望されたい方や、すでに手術を勧められて迷っておられるなら、切らずに改善できる「股関節の再生医療」という手段もあります。 「手術せずに治療したい」「人工関節は避けたい」という方は、ぜひ当院リペアセルクリニックへご相談ください。
2020.12.21