- ひざ関節
- 関節リウマチ
- 変形性膝関節症
寝起きで膝が痛い原因は?変形性膝関節症や関節リウマチの対処法について医師が解説

膝の痛みは多くの方が悩まされている症状のひとつです。
膝は座る・立つ・歩くといった日常動作に深く関わるため、症状が強くなると日常生活への影響は大きなものになります。とくに「朝寝起きに膝が痛い」といった症状をご経験された方も多いことと存じます。
そこで本記事では、寝起きで生じる膝の痛みを中心に医師の見解からご紹介します。
- 寝起きに膝が痛む原因
- 膝の痛みの予防や対処法
目次
寝起きに膝が痛い原因として考えられる疾患
寝起きに膝が痛む症状は「関節リウマチ」と、「変形性膝関節症」疾患の特徴です。
それでは、なぜこのような症状が起きるのでしょうか。
関節は骨と骨のつなぎ目ですが、そこにはクッションの役割を果たす「軟骨」と、潤滑油の役割を果たす「関節液」があります。
関節リウマチや、変形性膝関節症といった疾患ではこの軟骨に障害が及んだり、関節液の量の調整がうまくいかなくなったりする結果、しばらく関節を動かさないと朝起きたとき時や、動き始めのとき時にこわばりや、痛みを感じることがあります。
関節を動かしてしばらく経つと、関節液の量が自然に調節されて症状が改善することがあります。ここからは、これらの主な原因となる関節リウマチと変形性膝関節症について解説していきます。
変形性膝関節症
変形性膝関節症は主に加齢により発症すると考えられており、膝関節の痛みやこわばり、関節可動域の制限などといった症状が認められます。変形性関節症は膝以外にも手足や脊椎に発症します。
変形性膝関節症の診断
典型的な症状や病歴があれば必ずしも画像などによる検索は必要ではないとされています。
しかし、非典型的な症状を伴う場合には同様の症状をきたす別の疾患を想定して画像検査や血液検査を必要とします。
レントゲンでは関節裂隙の狭小化や骨棘などといった所見を認めることがありますが、血液検査では変形性膝関節症に特徴的な所見はないとされています。
変形性膝関節症の治療
変形性膝関節症は基本的には加齢による変化であり、痛みの制御を目的とした治療が主となります。具体的には消炎・鎮痛薬の使用を症状に応じて行うことになります。
しかし、加齢による変化そのものは不可逆性です。消炎・鎮痛薬の使用で症状がコントロールできない場合などは人工関節置換術といった手術による治療を考慮する必要もあります。
変形性膝関節症の対処法
変形性膝関節症の予防 | 変形性膝関節症の対処法 |
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変形性膝関節症の予防策として、体重管理(適度なダイエット)が挙げられます。体重が増えると、膝への負担が増加するのも必然です。生活習慣の見直しからスタートしてみましょう。
また、普段から履いてる靴が適切なものでないと膝に負担がかかります。ハイヒールやサイズが合っていない靴は極力避ける努力も必要です。
対処法としては、適切かつ軽度な運動やサポーターの装着が挙げられます。運動は膝周りの筋肉を伸ばすストレッチなどが適切で、安静にしすぎて筋力が衰えしまわないよう無理ない範囲で行いましょう。
また、サポーターの装着も膝周りの不安感を解消してくれる心強い味方です。
関節リウマチ
関節リウマチは膝を含む全身の関節に起こる炎症を特徴とする疾患です。その原因には不明なところが残っているものの、関節組織に対する自己免疫の関与が考えられています。
一般的には手足の指の関節から始まることが多く、左右対称制の症状、朝のこわばりなどの典型的な症状が知られています。自己免疫の関与が考えられている関節リウマチですが、関節外に目や血管に症状をきたすこともあります。
関節リウマチの診断
関節リウマチの診断は、関節症状などの病歴だけで判断しません。レントゲン上での関節裂隙の狭小化などの所見、全身の炎症を反映した血液検査でのリウマチ因子・特殊抗体などを総合的に判断してなされます。
関節炎などの症状が出た場合は整形外科などへの受診をまずは考えますが、関節リウマチは膠原病内科やアレルギー内科などが専門となることがあります。適切な診療科も含めて、気になる症状がある場合はかかりつけまたは最寄りの医療機関に相談してみましょう。
関節リウマチの治療
自己免疫の関与が考えられている関節リウマチの治療法は、消炎・鎮痛といった一般的な関節痛にも共通する治療だけでなく、過剰な自己免疫を制御する免疫調整薬の使用が必要になることがあります。
このような治療は専門家の詳細な評価を必要とする場合が多いため、かかりつけ医の意見をよく聞いて治療を進めるようにしましょう。
関節リウマチの対処法
関節リウマチの予防 | 関節リウマチの対処法 |
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関節リウマチの発症を抑えるためにも、食生活の改善は必須です。
体重増加の元となる脂質・糖質類を摂りすぎには注意しましょう。また、喫煙もリウマチが発症・悪化する要因とされているため、控えておくべきです。
発症後の具体的な対処法としては、安静治療が基本です。心身の疲れを溜めないよう心がけましょう。また、関節を冷やす行為は悪化の要因となりえます。日頃から適度な保温を意識しましょう。
寝起きに膝が痛い原因を判断するためのチェックリスト
寝起きに膝が痛いのが膝の病気か判断するためのチェックリストは、以下の通りです。
- 50歳以上である
- 肥満体型、急激な体重増加があった
- 膝周辺が腫れている
- 起き上がるときに膝痛む
- 歩き始めなど動き出したときに膝が痛む
- 膝が曲がりづらい
- 深く膝を曲げる動作が難しい
- 過去に骨折や脱臼などのケガをしている
- 膝を酷使するスポーツをやっている
- 寝ているときにも膝が痛む
- 歩けないほど膝が痛む
上記のような症状が多く当てはまるほど、変形性膝関節症などの膝の病気である可能性が高いです。
寝起きだけでなく、寝ているときにも膝が痛む場合や歩けないほど膝が痛い場合は、重度の疾患の可能性があります。
痛みが長引いて生活に支障がでる前に医療機関を受診しましょう。
寝起きに膝が痛いときの悪化を防ぐための対処法
寝起きに膝が痛いときの悪化を防ぐための対処法をを紹介します。
- 体重管理
- 膝周辺の筋トレ
- 薬物療法
以下では、それぞれの対処法について詳しく解説していきます。
体重管理
寝起きに膝が痛い時は、急激な体重増加や肥満にならないように体重管理を行いましょう。
体重が1kg増加すると、歩行時に膝にかかる負担は2〜3kg増えるといわれています。
そのため、急激な体重増加や肥満によって膝に継続的な負担がかかると、変形性膝関節症などの発症リスクが高くなってしまいます。
食生活の改善や適度な運動によって体重を管理することが重要です。
膝周辺の筋トレ
寝起きに膝が痛い時は、筋力トレーニングによって膝周辺の筋力を鍛えることも重要です。
膝を支える筋力を鍛えることで膝の負担を軽減し、症状の悪化防止につながります。
痛みが強い場合は無理をせずに、できる範囲の筋トレを実施しましょう。
薬物療法
寝起きに膝が痛い時は、医療機関を受診し、痛み止めの服用などの薬物療法による治療を受けましょう。
薬物療法では患者さまの痛みや症状に応じて、消炎鎮痛薬のロキソニンやカロナールの服用、ヒアルロン酸注射を行います。
適切な治療方針は患者さまによって異なるため、自分に合った薬を処方してもらうことが重要です。
寝起きの膝が痛いときは早期に医療機関を受診することが重要
今回の記事では朝起きると膝が痛み、歩きはじめ膝に違和感を感じたときに想定される疾患である関節リウマチと、変形性膝関節症の症状と治療法について解説しました。
二つの疾患は類似点もありますが、診断や治療など、大きく異なる点もあります。より詳しく知りたい場合は既に受診している整形外科、または最寄りの医療機関に問い合わせてみましょう。
また、膝に関するお悩みは当クリニックでも受け付けています。ぜひ、お気軽にご相談ください。

膝の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。