-
- 脊椎
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰部脊柱管狭窄症
- 脊椎、その他疾患
腰から足にかけての激痛やしびれの症状が出る坐骨神経痛は、悪化すると「死ぬほど痛い」と感じる人は多く、腰痛の中でも日常生活に支障をきたすことが多いです。 痛みの改善には手術しかないと考える方もいるかもしれませんが、坐骨神経痛は薬物療法やリハビリなどの手術を行わない保存療法で症状が緩和する可能性があります。 また、リペアセルクリニック坂本理事長のYouTubeでも坐骨神経痛について解説していますので、あわせてご確認ください。 「死ぬほど痛い」と感じるほど重症の坐骨神経痛は、適切な治療を受けないと歩行困難になる可能性もあります。 深刻な痛みで不安がある方は、ぜひお電話でご相談ください。 今までは手術によって痛みやしびれを取る治療が一般的とされてきましたが、近年では神経損傷を改善する可能性がある治療法として再生医療が注目されています。 「坐骨神経痛が死ぬほど痛いからなんとかしたい」という方は、どんな些細なことでもお気軽にご質問くださいね! 坐骨神経痛の辛い痛みを和らげる7つの治療法 坐骨神経痛の辛い痛みを和らげるための治療法は主に以下の7つです。 痛みを緩和する薬物療法 神経ブロック療法 筋肉をほぐす理学療法とリハビリ 認知行動療法 装具療法 重度の場合に行われる手術療法 再生医療 自分にあった症状に合わせて、治療法も検討していきましょう。 坐骨神経痛の原因や症状については、以下の記事で解説しています。あわせてご覧ください。 痛みを緩和する薬物療法 坐骨神経痛の痛みに対して、まず試される治療法が薬物療法です。痛み止めや炎症を抑える薬を服用することで、辛い症状を和らげる効果が期待できます。 最初は市販の痛み止めから始め、症状が重い場合は医師が処方する鎮痛剤や抗炎症薬を使用するケースもあります。 薬には副作用のリスクもあるため、自己判断での服用は避けて必ず医師に相談しましょう。 ▼神経損傷の治療に再生医療が注目 >>【無料】公式LINE限定の再生医療ガイドブックを見てみる 神経ブロック療法 痛みの原因となっている神経に直接アプローチするのが神経ブロック療法です。 局所麻酔薬を注射して、痛みを伝える神経の働きを一時的に抑制します。 神経ブロック療法は、比較的即効性があり重度の痛みにも効果を期待できるのが特徴です。 また、効果の持続時間には個人差があり、数時間から数カ月以上継続する方もいます。(文献1) 筋肉をほぐす理学療法とリハビリ 理学療法により、坐骨神経周辺の筋肉をほぐし血行を改善するのも、坐骨神経痛に効果が期待できます。 理学療法を受ける場合は、専門家の指導のもとストレッチや運動療法を行います。温熱療法やマッサージなども組み合わせることで、こわばった筋肉がリラックスし痛みの軽減につながるでしょう。 また、リハビリでは痛みの少ない範囲で軽い運動から始め、徐々に負荷を上げていく段階的なプログラムを実施します。 自宅でも医師や理学療法士の指導のもと、簡単なストレッチや運動を続けることで、より早い回復が期待できます。 認知行動療法 認知行動療法とは、物事の考え方・捉え方や行動に働きかけてストレスを軽減する治療法です。 専門家との定期的な面談を通じて、痛みと上手に付き合うコツを学びます。また、リラックス法や呼吸法なども取り入れるとより効果的です。 継続的な取り組みが必要ですが、痛みへの不安が軽減されることで生活の質の向上も期待できます。 装具療法 坐骨神経痛が辛いときは、腰椎を安定させて痛みを和らげるために、コルセットなどの装具を使用することがあります。 ただし、長期の装着は体力低下を引き起こす可能性があるため、医師に相談しながら、使用期間は1カ月程度を目安に調整しましょう。 装具の使用で痛みが改善したら、徐々に体を動かし筋力の回復を目指すのがおすすめです。 重度の場合に行われる手術療法 保存的治療で改善が見られない重症例では、神経を圧迫している椎間板や骨を取り除き、症状の改善を目指す手術療法が検討されます。 近年は、内視鏡手術など身体への負担が少ない手術方法も発達してきており、比較的早い段階で退院や日常生活への復帰ができる傾向があります。 ただし、手術にはリスクも伴うため慎重な判断が必要ですので、医師と十分に相談し手術の必要性を見極めましょう。 再生医療 再生医療とは、患者さま自身の細胞を利用して損傷した組織の再生・修復を促進する治療法のことです。 患者さま自身の細胞を使うため、拒絶反応やアレルギー反応などの副作用リスクが少ない点も魅力の一つといえるでしょう。 手術せずに損傷した坐骨神経の症状改善に期待できる新たな選択肢として再生医療が注目されています。 「坐骨神経が死ぬほど痛くて日常生活もままならない」という方は、ぜひ再生医療による治療をご検討ください。 当院(リペアセルクリニック)では無料カウンセリングも行っております。 坐骨神経痛の痛み症状が改善できる可能性がある再生医療の治療法について、ぜひ一度ご相談ください。 そもそも坐骨神経痛とは?辛い3つの症状 坐骨神経痛とは、体の中で最も太い神経である坐骨神経に沿って痛みが走る症状です。 主な症状としては以下3つが挙げられます。 腰から足先にかけての鋭い激痛やしびれ お尻から脚にかけての持続的な痛み 座位や歩行で悪化する下半身の違和感や麻痺感 人によって症状は異なりますが「死ぬほど痛い」と表現されるケースもあり、日常生活に支障をきたすほどの痛みもあります。 本章では、坐骨神経痛の主な症状を解説します。 腰から足先にかけての鋭い激痛やしびれ 坐骨神経に沿って走る電気が走るような鋭い痛みは、最も特徴的な症状の1つです。 突然襲ってくる激痛は、まるで雷に打たれたかのような衝撃を伴います。多くの方が「今まで経験したことのない痛さ」と表現するほどです。 さらに、痛みの強さは時間帯や動作によって変化し、夜間に悪化する場合もあります。 もしも我慢できないほどの痛みに襲われたら、すぐに医療機関での受診をおすすめします。 お尻から脚にかけての持続的な痛み 坐骨神経痛特有の「ズキズキ」「ジンジン」した痛みは長時間続くのが特徴です。 お尻から太ももの裏側、ふくらはぎにかけて痛みが持続し、座る姿勢がとくにつらくなります。 また、痛みで姿勢が崩れてさらに症状が悪化する可能性もあるため、早期の段階で適切な治療を受けて慢性化を防ぎましょう。 座位や歩行で悪化する下半身の違和感や麻痺感 座っているときや歩行時に増す「違和感や麻痺感」も見逃せない重要な症状です。 たとえば長時間の座位で痺れが強くなったり、歩行時にふらつきを感じたりする場合もあります。 また、日常生活での何気ない動作が困難になり、仕事や家事に支障も出てきます。そのため、症状の進行を防ぐためにも、早めの対策と生活習慣の見直しが重要です。 坐骨神経痛の主な原因3選! 坐骨神経痛の代表的な原因は以下の3つが挙げられます。 椎間板ヘルニア 脊柱管狭窄症 加齢や筋力低下 主な原因を理解してから適切な治療法を選択できます。 ここでは症状との関連性や予防法を含めて詳しく解説します。 椎間板ヘルニア 椎間板ヘルニアとは「加齢」や「日常的に腰部に負担をかける」ことにより、クッション役である椎間板が飛び出し神経を圧迫する症状です。 デスクワークが多い30〜50代の方が発症しやすく、座っているだけでも激痛に襲われるケースもあります。 早期発見・早期治療が重要であり、適切な治療を受ければ多くの方が症状改善を実感できます。 また、腰椎椎間板ヘルニアの詳しい症状や重症度が気になる方は以下の記事もチェックしてみてください。 脊柱管狭窄症 脊柱管狭窄症は、年齢とともに脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される症状です。 とくに50代以降の方に多く見られ、立ち仕事や長時間の歩行で症状が悪化します。 また、前かがみで痛みが和らぎ、背筋を伸ばすと痛みが強くなるのが特徴です。 しかし、多くの場合が適切な治療と生活習慣の改善で症状をコントロールできます。 脊柱管狭窄症で注意すべきポイントや、症状と治療法については以下の記事も参考にしてみてください。 加齢や筋力低下 加齢による筋力低下も坐骨神経痛の原因の1つです。 腰回りの筋肉が衰えると、背骨を支える力が弱まり神経への負担が増加するため、日常生活での些細な動作で激痛が走ることもあります。 しかし、正しい運動習慣と筋力トレーニングの継続で症状の改善や予防が期待できます。 また、加齢や筋力低下で気になる症状があれば「メール」や「オンラインカウンセリング」でのご相談も受け付けておりますので、お気軽にお問合せください。 坐骨神経痛の予防法とセルフケア 坐骨神経痛の痛みは日々のケアで和らげることができます。 ここでは、痛みに悩まされている方にも効果的な3つの予防方法をご紹介します。 日常的にできる簡単なストレッチ 正しい姿勢を保つための意識づけ 適度な運動で筋力を強化する 継続的に行うと辛い症状の改善や予防に期待できるでしょう。 日常的にできる簡単なストレッチ 朝晩5分から始められるストレッチで、硬くなった筋肉をほぐしていきます。 とくに効果的なのが、仰向けで行う膝抱えストレッチです。 背中を床につけ、片膝を胸に向かってゆっくり引き寄せます 反対側の足はまっすぐ伸ばしたまま30秒キープ 左右2セットずつ行うのがおすすめです。 無理のない範囲で継続していると、徐々に筋肉の柔軟性が高まり痛みの予防につながります。 正しい姿勢を保つための意識づけ 猫背やストレートネックは坐骨神経痛の原因になりやすいため要注意です。 デスクワークが多い方は背筋を伸ばし、足裏を床につけた姿勢を心がけましょう。 長時間同じ姿勢も避けたいポイントですので、1時間に1回は立ち上がって軽く体を動かすことをおすすめします。 正しい姿勢を保っていれば、神経への負担が軽減され痛みの予防に効果的です。 適度な運動で筋力を強化する 急激な運動は逆効果ですが、適度な運動は予防にも効果的です。 ウォーキングや水中歩行から始めるのがおすすめで、とくに体幹を鍛えると腰への負担が軽減されます。 まずは1日10分からでもOKですので、徐々に時間を延ばして体を強化していきましょう。 まとめ|死ぬほど痛い坐骨神経痛は適切な治療法で改善しよう 坐骨神経痛の痛みは確かに辛いものですが、適切な治療とケアで改善に期待できます。まずは専門医に相談し、あなたに合った効果的な治療を検討してみてください。 治療には薬物療法や神経ブロック、リハビリなど症状に合わせて選択できます。 本記事を参考に簡単なセルフケアも取り入れつつ、日常的に予防も意識してみてください。 近年の治療では、手術をしない新たな選択肢として「再生医療」が注目されています。 痛みでできなかったことが再びできるようになる可能性がある再生医療について「どのような治療を行うか」ぜひお問い合わせください。 坐骨神経痛が死ぬほど痛いときによくある質問 Q:坐骨神経痛と間違える病気はありますか? 坐骨神経痛に似た症状に「梨状筋症候群」や「変形性股関節症」があげられます。 いずれも神経損傷や関節軟骨がすり減ってしまい従来の治療では元に戻らないと言われています。 しかし、近年では損傷した神経や関節軟骨に対して再生医療による治療も選択肢の一つです。 今まで元に戻らないとされていた神経や組織の改善が期待できる治療法なので、この機会にぜひ知っておきましょう。 ▼神経損傷の治療に再生医療が注目 >>【無料】公式LINE限定の再生医療ガイドブックを見てみる Q:坐骨神経痛でやってはいけないことは何ですか? 坐骨神経痛の症状を悪化させないために、主に以下の動作が挙げられます。 長時間の同じ姿勢 無理な運動 重いものを持ち上げる とくに急激な動きや、ねじる動作は症状を悪化させる原因となります。 また、坐骨神経痛でやってはいけないことについては、以下の記事でさらに詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。 参考文献一覧 文献1 日本ペインクリニック学会_第Ⅰ章 ペインクリニックにおける神経ブロック
2022.04.13 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 膝の内側の痛み
- 膝の慢性障害
鵞足炎と変形性膝関節症は、膝の似たような部位に痛みを引き起こしますが、発症の原因や症状の進行度が異なります。 鵞足炎は主に筋肉の炎症によるもので、変形性膝関節症は軟骨がすり減ることで発症する疾患です。 適切な治療を進めていくためには、それぞれの違いを理解しておくことが大切です。 本記事では、鵞足炎と変形性膝関節症の違いをわかりやすく解説します。セルフチェック方法や具体的な治療法も紹介しているので、参考にしてみてください。 鵞足炎と変形性膝関節症の違い まずは、「鵞足炎」と「変形性膝関節症」がどのような疾患なのかを確認しましょう。それぞれの特徴を理解した上で、両者の違いを詳しく見ていきます。 鵞足炎とは|膝付近の鵞足部で起こる炎症 膝の内側にある鵞足部で発生する炎症が、鵞足炎です。 過度のスポーツ活動や運動をすると、膝の負担が増え、炎症が生じやすくなります。 この炎症は主に、鵞足部にある「滑液包」もしくは筋肉で起きており、膝を酷使することで発症しやすくなります。 主な症状は以下のとおりです。 膝関節の少し下に圧痛がある 関節部分の腫れを伴うことがある 骨の変形は基本的には認められない のちほど解説する治療法を進めれば、症状の軽減や再発予防が可能です。 変形性膝関節症とは|膝軟骨のすり減りによって発症する疾患 膝の軟骨がすり減ることで発症する疾患が、変形性膝関節症です。 加齢や肥満が影響しやすく、関節に強い痛みを引き起こす病気です。 症状が進むと膝の動きに支障をきたし、日常生活にも影響を与えます。 主な症状は以下のとおりです。 階段の昇り降りで膝に痛みがある 膝関節が強ばり違和感が増す 関節が変形し硬くなって曲げ伸ばしに支障をきたす 発症の原因は加齢や肥満以外に、靱帯損傷や半月板損傷、骨折などの外傷による影響も考えられます。 進行すると平地での歩行にも痛みを伴うほか、化膿性関節炎の後遺症として発症する場合もあるため、早期治療が大切です。 なお、変形性膝関節症の治療法には「再生医療」の選択肢が挙げられます。損傷を起こしている膝関節に幹細胞を注入するだけで、傷ついた組織の再生に導きます。 再生医療について詳しく知りたいという方は、無料のメール相談、オンラインカウンセリング も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。 【関連記事】 変形性膝関節症の初期症状とは?原因や治療方法もわかりやすく解説 変形性膝関節症の原因、スポーツから発症するリスクについて 鵞足炎と変形性膝関節症の違いを表で比較 鵞足炎と変形性膝関節症は、どちらも似たような部位に痛みを生じるため、混同されやすい疾患ですが、発症の原因や症状、治療方法には違いがあります。 以下の表に鵞足炎と変形性膝関節症の違いをまとめました。 鵞足炎 変形性膝関節症 原因 筋肉の炎症 ・軟骨のすり減り ・加齢 ・肥満 など 発症部位 膝関節の内側付近(鵞足部) 膝関節 主な症状 ・膝関節の少し下に圧痛・関節部分の腫れ ・骨の変形は基本的に認められない ・膝関節の違和感や強ばり ・階段の昇り降りでの痛み ・関節の変形による可動域の狭まり 主な治療 ・運動制限(膝のオーバーユースを避ける) ・足のねじれ調整 ・体重管理 ・筋力トレーニング ・鎮痛剤、湿布 ・関節内の水を抜く 予防法 過度な運動を避け、膝の負担を軽減する ・体重を増やしすぎない ・膝周囲の筋力を維持する 膝の痛みを感じた際は、それぞれの特徴を理解し、適切な対処を心がけましょう。 鵞足炎と変形性膝関節症のセルフチェック表 ここでは「鵞足炎」と「変形性膝関節症」それぞれのセルフチェック表を紹介します。 当てはまる項目が多い場合は、各疾患を発症している可能性を視野に入れましょう。 【鵞足炎のセルフチェック表】 階段の上り下りで膝の内側に痛みを感じる 正座やあぐらをかいたときに痛みが強くなる 安静時よりも運動後に痛みが増すことが多い 膝を90度以上曲げたり、完全に伸ばしたりした際に痛みが出る 膝関節そのものに腫れはないが膝の内側が腫れぼったく感じる 膝の内側を押すと痛みを感じる(とくに膝の内側5~7cmほど下の部分) 膝を曲げる動作(踵をお尻に近づける)を行った際に膝の内側が痛む 【変形性膝関節症のセルフチェック表】 膝が不安定に感じることがある 膝の周囲が腫れているように感じる 膝の形が変わってきたように見える 階段の昇り降りで膝に強い痛みを感じる 正座やしゃがむ動作が難しくなっている 朝起きたときに膝がこわばることがある 歩き始めや椅子から立ち上がる際に膝が痛む 膝を動かしたときに痛みや軋むような感覚がある 長時間座った後に立ち上がると膝に痛みを感じる 体重が増加して膝への負担が大きくなっていると感じる 膝の痛みは放置すると悪化する可能性があります。 セルフチェックの結果を参考にし、症状が続く場合は医療機関の受診を検討しましょう。 鵞足炎と変形性膝関節症の治療法 ここでは、鵞足炎と変形性膝関節症の治療法について解説します。 鵞足炎の治療法 変形性膝関節症の治療法 膝の痛みに対する治療の選択肢「再生医療」について 近年注目されている新しい治療法「再生医療」も紹介しているので、治療法を選ぶ際の参考にしてみてください。 鵞足炎の治療法 鵞足炎の治療には、症状の程度に応じた適切なアプローチが必要です。 初期の治療として、安静が大切です。膝に過度な負担をかけないよう、激しい運動や長時間の正座、しゃがみ込みなどの姿勢は避けましょう。痛みがあるときはアイシング(冷却)すると、炎症の軽減が期待できます。 痛みが強い場合には、抗炎症薬の服用や湿布の使用による薬物療法を取り入れます。 理学療法によるリハビリも治療の一環です。ストレッチや筋力トレーニングをすれば、膝の機能回復や再発予防につながります。 変形性膝関節症の治療法 変形性膝関節症の治療は、症状の進行度に応じて段階的に進められます。 痛みが軽く、日常生活への影響が少ない場合は、内服薬や湿布薬、消炎鎮痛剤などの服用・服薬による薬物療法が用いられます。炎症を軽減するほかの治療法には、ヒアルロン酸の注入があります。関節の滑りを良くするため、炎症が起こりにくいです。 痛みが続き、膝の動きに違和感が出始めた場合は、リハビリや装具(サポーター・インソール)を活用して膝の負担を減らします。 痛みが強く、日常生活に支障をきたす場合は、手術が検討されます。 以下は、変形性膝関節症における代表的な手術です。 骨切り手術:骨を切って膝の形を整える方法 人工関節置換術:人工の関節を置き換える方法 早期発見により、手術を回避できる可能性もあります。症状が悪化する前に治療を進めていくことが大切です。 【関連記事】 変形性膝関節症の治療は早期発見が鍵!初期症状を見逃さないために 変形性膝関節症|高齢者も知っておくべき手術の種類とそのリスク 膝の痛みに対する治療選択肢「再生医療」について 膝の治療には「再生医療」の選択肢もあります。 変形性膝関節症や半月板の損傷などに対し、手術を伴わない治療法の1つです。 再生医療における「幹細胞治療」は、自身の幹細胞を使い、損傷した組織や細胞を再生に導く方法です。 「PRP療法」も再生医療の1つで、自身の血液から血小板を取り出し、損傷部位に注入する方法です。 血小板に含まれる成長因子が炎症を抑える働きをします。 どちらも注射を打つだけなので体への負担が少なく、手術せずに治療できる可能性があります。 当院「リペアセルクリニック」では「幹細胞治療」「PRP療法」の両方の治療が選択可能です。 再生医療について詳しく知りたいという方は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にお問い合わせください。 まとめ|鵞足炎と変形性膝関節症の違いを知って今後の治療方針を考えよう 鵞足炎と変形性膝関節症は、どちらも膝に痛みを引き起こす疾患ですが、その原因や治療法には違いがあります。 本記事の違いを示す表やセルフチェックを参考に、疑われる疾患があれば医療機関を受診してください。 症状が軽度の場合は、安静や炎症を抑える薬の服用などの保存療法で様子を見ます。 症状が悪化し、痛みに耐えられなかったり、動きに制限が出て日常生活に支障をきたしたりすれば、手術も検討されます。 変形性膝関節症や関節リウマチなどの治療法には「再生医療」の選択肢が挙げられます。 当院「リペアセルクリニック」では、脂肪由来の幹細胞を用いた治療を行っております。患者様自身から採取した幹細胞を用いるため、副作用のリスクが少ないのが特徴です。 人工関節や手術を避けたいとお考えの方は、ぜひ再生医療もご検討ください。
2022.04.13 -
- 股関節
- 変形性股関節症
股関節の痛みや違和感を感じている方は多いのではないでしょうか。 股関節の病気は、年齢による変化や炎症、生まれつきの要因など原因は人によって異なります。また、スポーツや転倒などによる股関節の怪我にも注意が必要です。 この記事では、代表的な「股関節の病気」を一覧で紹介し、症状や治療法をわかりやすく解説します。 なお、股関節の病気に対しては再生医療という手術を伴わない治療法も選択肢の一つです。当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供や簡易オンライン診断を実施していますので、ぜひご登録ください。 股関節の病気一覧 股関節の痛みや違和感の原因には、さまざまな病気や怪我があります。 主な病気を症状や原因ごとに紹介します。 病気の名前 症状 変形性股関節症 立ち上がるときや歩き始めに股関節が痛む あぐらをかく、靴下を履くなどの動作がしにくい 大腿骨頭壊死症 突然、痛みが現れる 関節リウマチ 朝、関節がこわばる 関節の腫れや痛みがある 複数の関節に症状が出る 臼蓋形成不全 股関節の違和感や痛み 股関節が動かしづらい 大腿骨頸部骨折 転倒後に立てない、歩けない 股関節唇損傷 股関節が痛む 引っかかるような感じがする 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI) 股関節を深く曲げたり捻ったりすると痛みが強くなる 化膿性股関節炎 股関節に急に強い痛みが出る 38度以上の高熱 股関節の病気は加齢や使いすぎだけでなく、子どもや若年層にも起こります。また、痛みの原因は一つではなく体の使い方や筋力バランス、体重による負荷などの生活習慣も影響します。 原因を見極めるためには整形外科での画像検査(X線やMRIなど)や医師の診断が欠かせません。 変形性股関節症 変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減り痛みや動かしにくさが生じる病気です。 変形性股関節症の主な原因は、以下の通りです。 加齢による軟骨の摩耗 筋力の低下 体重増加による負担 過去のけが 先天的な股関節の異常(臼蓋形成不全) 次のような症状がある場合は、変形性股関節症を疑いましょう。 立ち上がるときや歩き始めに股関節が痛む あぐらをかく、靴下を履くなどの動作がしにくい 長時間歩くと足の付け根がだるくなる 朝起きたときに股関節がこわばる 症状を放置すると、関節の変形が進行して歩行が難しくなったり、安静にしていても痛んだりして日常生活に支障をきたす恐れがあります。股関節の痛みが続く場合は、早めに整形外科を受診しましょう。 当院で行った変形性股関節症に対する再生医療の症例を、以下でご紹介しています。 【関連記事】 変形性股関節症とは?原因・症状・治療法をわかりやすく解説 大腿骨頭壊死症 大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)は、股関節の骨の先端(大腿骨頭)に血液が十分に届かなくなり、骨が壊死してしまう病気です。血流が途絶えることで骨がもろくなりつぶれるように変形してしまうと、強い痛みや歩行障害を引き起こします。 ステロイド薬の長期使用や多量の飲酒が影響する場合がありますが、はっきりした理由がわからないケースもあります。発症年齢は30〜50歳代に多く、比較的若い世代にも起こりうる病気です。 骨が壊死しても初期には痛みがなく、骨がつぶれ始めた時点で初めて症状が現れるのが特徴です。 以下のような症状がみられる場合は大腿骨頭壊死症の可能性があるため、早めに整形外科で検査を受けましょう。 腰や膝、股関節の痛み 突然、痛みが現れる 安静にしていると痛みが和らぐ なお、似た病気に「ペルテス病(大腿骨頭壊死症の一種)」があり、子どもに発症するケースも報告されています。進行すると関節の変形を引き起こし、歩行に支障をきたすこともあります。 当院の大腿骨頭壊死症に対する再生医療について、以下の症例記事をご覧ください。 【関連記事】 大腿骨頭壊死症の原因とは?生活習慣との関連性や予防法について紹介 関節リウマチ 関節リウマチは、自分の免疫が関節を攻撃してしまう自己免疫疾患です。関節の内側を覆う滑膜(かつまく)という薄い膜が炎症を起こし、痛みや腫れを引き起こします。進行すると軟骨や骨が破壊され、関節の変形や可動域の制限につながる場合があります。 以下のような症状がある方は、関節リウマチの可能性を疑ってみましょう。 朝起きたときに関節がこわばる 関節の腫れや痛みがある 複数の関節に症状が出る リウマチは早期に治療を始めることで、関節破壊を防ぎやすくなります。関節の痛みやこわばりが続く場合は、整形外科やリウマチ専門医の受診を検討しましょう。 当院で行った関節リウマチに対する再生医療の症例を、以下でご紹介しています。 【関連記事】 関節リウマチとは?初期症状・原因・診断・治療・生活上の注意 | リペアセルクリニック東京院 臼蓋形成不全 臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)は、生まれつきまたは発育の過程で股関節の受け皿(臼蓋)が浅い状態を指します。股関節が不安定だと成長とともに関節に負担がかかり、将来的に変形性股関節症を発症するリスクが高まるといわれています。 以下のような様子が見られる場合は、臼蓋形成不全の可能性を疑ってみましょう。 時期 主な症状 乳児期 太もものシワが左右で違う 足を広げにくい 壮年期以降 股関節の違和感や痛み 股関節が動かしづらい 体を捻る・立ち続けるなどで股関節が痛む 安静にしても痛む 足の長さが左右で異なる 痛む足を引きずるようにして歩く 乳幼児健診などで股関節の開きが悪いと指摘された場合や歩き方に違和感がある場合は、早めに整形外科で検査を受けましょう。 当院で行った臼蓋形成不全に対する再生医療の症例を、以下でご紹介しています。 大腿骨頸部骨折 大腿骨頸部骨折は、股関節のすぐ下にある大腿骨の首の部分(頸部)が折れるケガです。とくに骨粗しょう症で骨がもろくなった高齢者に多く、転倒や転落をきっかけに発生します。中には、軽く捻った程度で骨折するケースもあります。 以下の症状がある場合は、大腿骨頸部骨折を疑いましょう。 転倒後に立てない、歩けない 足を動かすと強い痛みがある 足の向きが外側にねじれている 数日前から足の付け根を痛がっていたが、急に立てなくなった 大腿骨頸部骨折は、寝たきりや日常生活に影響する恐れがあります。 また、骨折部位の血流が悪くなることで大腿骨頭壊死症につながる可能性もあります。転倒後に足の付け根に違和感がある場合は早めに整形外科を受診しましょう。 股関節唇損傷 股関節唇損傷(こかんせつしんそんしょう)は、股関節にある関節唇と呼ばれる軟骨組織が傷つく病気です。 主な原因は、以下の通りです。 サッカー・バレエ・ゴルフなど股関節を大きく動かすスポーツ 転倒や衝突 大腿骨寛骨臼インピンジメントや臼蓋形成不全により関節唇に過度な負担がかかった 以下の症状がみられる場合、股関節唇損傷かもしれません。 足を曲げたり捻ったりした際に股関節が痛んだり引っかかるような感じがする 立ち上がりや自転車の乗り降り、寝返りの際に痛みや違和感を感じる 股関節がぐらつき、抜けるような感覚がある 損傷の程度や原因によっては保存療法で改善する場合もありますが、痛みが続くときは手術を検討します。競技への復帰を目指す場合は医師や理学療法士の指導のもと、焦らず段階的にリハビリを進めましょう。 以下の記事では、股関節唇損傷の治療期間について解説しているので参考にしてください。 【関連記事】 股関節唇損傷はどのくらいで治る?治療期間や予防法も紹介 | リペアセルクリニック東京院 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI) 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)は、股関節を構成する骨の形にわずかな異常があることで、骨同士がぶつかり合ってしまう状態を指します。バスケットボール・アイスホッケー・サッカーなど、股関節を大きく動かすスポーツによって股関節の関節唇が繰り返し擦れ、炎症や痛みが生じます。 大腿骨寛骨臼インピンジメントの症状は以下の通りです。 運動時に股関節の痛みや動きにくさを感じる 股関節を深く曲げたり捻ったりすると痛みが強くなる 股関節が抜けるような感じがする 初期は軽い違和感や痛みが一般的ですが、徐々に進行する恐れがあります。早めに整形外科を受診すれば、関節の損傷の進行を抑えられる可能性が高まります。 化膿性股関節炎 化膿性股関節炎は、股関節の中に細菌が入り込み関節内で炎症や膿が生じる感染症です。 乳幼児や高齢者、糖尿病や関節リウマチなど、免疫力が低下している方にみられるのが一般的です。また、人工関節の手術をきっかけに発症する場合もあります。 以下の症状があれば、化膿性股関節炎を疑ってみましょう。 股関節に急に強い痛みが出て、足を動かせない 股関節が腫れている 38度以上の高熱 だるさや頭痛 乳幼児の場合はぐったりして足を動かそうとしない 炎症が進むと関節内の組織が破壊され、短期間で強い痛みや高熱を伴うのが特徴です。放置すると関節が変形して歩行が困難になる恐れがあるため、早期に整形外科を受診しましょう。 股関節の病気の受診目安 股関節の痛みが2週間以上続く、または一度良くなっても再び痛みが出る場合は、早めの受診を検討しましょう。 関節や筋肉に一時的な炎症が起きているだけなら自然に回復する場合もありますが、変形や血流障害などの病気が隠れている恐れがあります。 とくに、以下の症状がある場合は注意が必要です。 急に痛みが現れる 安静にしていても痛む 腫れて熱をもっている しびれや脱力感を伴う 脚の長さが左右で違って感じる 歩行が難しい・足を引きずる 発熱を伴う強い痛み 自身の症状を振り返り、整形外科の受診を検討しましょう。 股関節の病気の検査と診断 股関節の痛みで整形外科を受診すると、症状や動き方の確認に加えて画像検査や血液検査を行うのが一般的です。 主な検査の内容は、以下の通りです。 検査名 検査の内容 主に疑われる病気 X線(レントゲン)検査 股関節の骨の形や関節の隙間を撮影する 変形性股関節症 大腿骨頭壊死症 臼蓋形成不全など MRI検査 骨・軟骨・靭帯・関節唇などの軟部組織を詳しく撮影する 変形性股関節症 大腿骨頭壊死症 股関節唇損傷など CT検査 骨の形状を立体的に確認する 変形性股関節症 大腿骨寛骨臼インピンジメントなど 血液検査 採血により炎症反応や免疫異常を調べる 関節リウマチ 化膿性股関節炎など 超音波(エコー)検査 音波で関節内部の状態をリアルタイムに観察する 乳児の股関節脱臼 関節リウマチ 骨密度検査 骨の密度や強度を測定する 大腿骨頸部骨折のリスク評価 検査によって痛みの原因を明確にできれば、治療方針を立てやすくなります。早めに診断を受けて回復への一歩を踏み出しましょう。 股関節の病気の治療法 股関節の治療には痛みの程度や進行度、年齢などに応じていくつかの方法があります。 保存療法 手術療法 再生医療 自分の細胞を活用して関節機能の回復をめざす再生医療という治療法についても紹介します。 保存療法|リハビリ・運動・薬物療法など 股関節の痛みが軽度な場合や進行をできるだけ抑えたい場合には、手術を行わずに症状を和らげる保存療法が選択されます。関節への負担を減らし可動域や筋力を保つことで、痛みの緩和と再発予防を目指します。 具体的な内容は、以下の通りです。 治療法 目的 内容 リハビリ(理学療法) 筋力・柔軟性を保ち、関節への負担軽減を目指す 理学療法士の指導のもと、股関節まわりのストレッチや筋トレ、歩行訓練などを行う 運動療法 体重コントロールと血流改善を促す 水中ウォーキングや軽いストレッチなど、関節に負担をかけない運動を継続する 薬物療法 痛みや炎症を抑える 消炎鎮痛薬(NSAIDs)や湿布薬の使用。必要に応じてヒアルロン酸注射などを併用する 生活指導 症状の悪化を防ぐ 正しい姿勢の習慣化、和式動作の回避、体重管理など 物理療法 熱や補助具で、痛みや動きの改善を図る 入浴やホットパックで温めたり杖やサポーターを活用したりする 上記の方法を組み合わせて経過をみながら、痛みや可動域の改善を目指します。十分な効果が得られない場合は、手術療法を検討する場合があります。 以下の記事では、変形性股関節症の保存療法について解説しているので参考にしてください。 手術療法|股関節鏡手術・人工関節置換術など 進行した股関節の病気では、薬やリハビリだけで十分な改善が見込めない場合、手術が選択肢となります。股関節の病気の代表的な手術には、股関節鏡手術・骨切り術・人工股関節置換術が挙げられます。 手術法 手術内容 主な対象例 股関節鏡手術 小さな切開から内視鏡を挿入し、関節内の損傷部を修復 軽度〜中等度の臼蓋形成不全や関節唇損傷など 骨切り術 骨の向きや位置を整え、関節の負担を軽減 若年者の臼蓋形成不全 人工股関節置換術 痛んだ関節を人工関節に置き換える 重度の変形性股関節症や進行例 股関節の手術は痛みの改善や機能回復に大きな効果が期待できる一方で、術後のリハビリや生活の工夫が欠かせません。また、手術後も股関節に過度な負担をかけないよう、体重管理や筋力トレーニングの継続が重要です。 医師とよく相談し、自分の生活や希望に合った治療法を選びましょう。 以下の記事は、股関節の手術を受けるリスクについて解説しているので参考にしてください。 再生医療|自分の細胞を活用する治療法 人工関節手術を受ける前の段階であれば、再生医療も選択肢の一つです。再生医療では、自身の身体から採取した細胞や血液の成分を活用し、損傷した組織にアプローチを試みます。 主な治療法は、以下の通りです。 幹細胞治療:軟骨や骨、靭帯などさまざまな細胞に変化できる幹細胞を用いた治療法 PRP治療:血液に含まれる成分の炎症を抑える働きを利用する治療法 入院や大きな手術を行わず、日帰りで受けられる点が特徴です。入院や手術を避けたい方、保存療法を続けても痛みが残る方にとって、再生医療は一つの選択肢となります。 当院「リペアセルクリニック」では、脂肪由来の幹細胞を用いた自己脂肪由来幹細胞治療と、血液から採取した血小板を活用するPRP療法を行っています。 実際に再生医療を受けられた方の経過については、症例一覧ページでご紹介しているので、治療を検討される際の参考としてご覧ください。 まとめ|股関節の病気は早期発見と適切な治療が重要 股関節の痛みや違和感は、加齢・外傷・血流障害・炎症などさまざまな原因で起こります。どの病気も、早期発見・早期治療が進行の予防につながります。気になる症状が続くときは、整形外科を受診しましょう。 主な股関節の病気は、以下の通りです。 変形性股関節症 大腿骨頭壊死症 関節リウマチ 臼蓋形成不全 大腿骨頸部骨折 股関節唇損傷 大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI) 化膿性股関節炎 股関節の病気は、保存療法・手術・再生医療など状態に合わせた多様な治療法が検討できます。手術を避けたい方は、自分の細胞を用いる再生医療が選択肢となる場合もあります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の紹介や簡易オンライン診断を受け付けているので、再生医療について詳しく知りたい方はご登録ください。 股関節の痛みに関するよくある質問 股関節の痛みは何科を受診すれば良い? 股関節の痛みや違和感がある場合は整形外科を受診しましょう。 整形外科では、レントゲンやMRIなどの画像検査を通して、骨・軟骨・筋肉・神経などの異常を詳しく確認できます。痛みの原因がはっきりしないまま自己判断で様子を見ていると、変形や炎症が進行して治療が長引くおそれもあります。 股関節の病気を予防するには? 股関節の病気を予防するために日常から意識したいポイントは、以下の通りです。 体重管理:食事の見直しや有酸素運動を取り入れ、股関節にかかる負担軽減を目指す 筋力トレーニング:股関節周囲のストレッチ・軽い筋トレ・水中ウォーキングなどを習慣化して関節まわりの筋肉を強化する セルフチェック:足の開き方・歩き始めの違和感・靴のすり減り方などを確認して自分の股関節の状態を把握する 股関節に違和感や痛みを感じたら早めに生活習慣を見直して、将来的な変形や手術のリスク軽減につなげましょう。 股関節の病気は遺伝する? 股関節の病気の中には、遺伝的な要因が関係している可能性があることがわかっています。 近い親族に発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)の患者が多いほど、変形性股関節症の発症リスクが高く、進行も早い傾向があるというデータがあります。(文献1) ただし、必ず遺伝するわけではありません。同じ家系でも発症しない人も多く、肥満・重労働・生活習慣などの環境要因が大きく影響するケースもあります。また、原因がはっきりしない大腿骨頭壊死のような病気もあり、遺伝だけで説明できるものではありません。 家族に先天性股関節脱臼の既往がある場合は、乳児期の股関節健診を欠かさず受けるのが大切です。赤ちゃんの足が自然に“M字”のように開いた姿勢を保てるよう、抱っこやおむつ替えの仕方を工夫するなど、予防できる部分にも目を向けましょう。 遺伝要因の有無にかかわらず、股関節に違和感や痛みを感じたら、早めに整形外科で相談しましょう。 参考文献 (文献1) 発育性股関節形成不全の遺伝的リスクが変形性股関節症発症へ与える影響を解明| | 静岡県公立大学法人静岡県立大学
2022.04.08 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- PRP治療
- 膝の内側の痛み
再生医療のひとつであるPRP療法は、患者さん自身の血液を使って自己治癒力を引き出す治療法です。手術や入院の必要がなく、副作用のリスクも極めて低く、体への負担が少ない点が大きなメリットです。 変形性膝関節症にも使われるPRP療法ですが、本当に効果があるのか疑問に思われる方もいるでしょう。この記事では、変形性膝関節症に対するPRP療法が実際どのように行われるかを、患者さんの声を交えながら解説します。効果だけでなく、PRP療法の限界についてもお伝えします。 PRP療法が気になる方は、ぜひ参考にしてください。 変形性膝関節症に有効な「PRP療法」とは? PRP療法(多血小板血漿療法)とは、患者さんから採取した血液から血小板を多く含む「多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma:PRP)」を精製し、傷んでいる場所に注射する再生医療です。 血小板は出血を止めるはたらきを持つほか、さまざまな種類の成長因子を含むため、自己治癒力を高めるはたらきもあります。変形性膝関節症でも、膝の組織の修復を助ける作用や、炎症を抑える作用で痛みを軽減させやすいです。 膝にPRP療法を行う場合は、膝のお皿の外から関節の中をめがけて注射します。膝の関節の中にはちょうど袋があり、その中にPRPを注射する形です。 変形性膝関節症の治療にPRP療法を選ぶメリット PRP療法で変形性膝関節症の治療を行うメリットは、以下のとおりです。 最短30分で治療が完了 手術が不要 入院も不要 PRP療法などの再生医療はシンプルな手順で実施され、即日で完了する場合もあります。 治療の際は、まず腕から少し採血をして、血液を特殊な機械に30分ほどかけて分離します。PRPが精製できるので、膝の関節に注射すれば治療は完了です。 手術をしないため、手術に伴う合併症の心配もありません。入院も不要のため、日常生活への影響も最小限です。さまざまな理由で人工関節をしたくない方にも良い選択肢となります。 以下の記事では、PRP療法のメリットとデメリットを詳しく解説していますので、併せてご覧ください。 変形性膝関節症でPRP療法がおすすめな人の特徴 変形性膝関節症でPRP療法がおすすめなのは、現在の治療に不満がある方や、手術をしたくない・できない方、治療を急ぐ方などです。 そのほか、以下に該当する方もおすすめできます。 保険診療のヒアルロン酸注射が効かなくなった方 薬を飲んでも痛みが取れない方 慢性化した痛みを治したい方 スポーツや仕事に早く復帰したい方 薬剤アレルギーが怖い方 薬剤アレルギーがあり治療ができない方 手術を避けたい方 長期入院ができない方 持続効果の高い治療がしたい方 PRP療法は自然治癒力を促進させるため、従来の方法では治療が難しかったケースでも効果が期待できます。 また、薬剤ではなく患者さん自身の血液を使うため、アレルギー反応や拒絶反応など副作用のリスクが低い治療法です。 変形性膝関節症でPRP治療を受けられた方の体験談 ここからは、実際にPRP療法を受けられた方の実例を紹介します。最初の2例はPRP療法と幹細胞治療の併用例、最後の1例はPRP療法単独の症例です。 当院で両変形性膝関節症を治療された70代女性の声 3年前からの両膝関節痛の患者さんです。近くの整形外科では、関節軟骨がほぼ消失している末期の変形性関節症と診断され、何度も水を抜いてもらっていました。とくに左膝の痛みは10段階中10と強く、歩くのが困難でトイレにすら行けないこともあったそうです。 幹細胞治療とPRP療法を行い、1年後には左膝の痛みが10から1に、右膝の痛みが6から0に軽減しました。「整形外科で膝の水を何回抜いてもらっても、溜まっていたのに今では水も溜まらなくなり痛みもなくなり、すごくうれしいです。」と喜んでいらっしゃいました。 治療方法 ・幹細胞治療:右膝に4000万個細胞、左膝に6000万個細胞、計4回 ・PRP療法 治療前後の痛みの変化(10段階) ・左膝:10→1 ・右膝:6→0 治療費用 ・幹細胞治療 関節1部位 幹細胞数(2500万個~1億個) 投与回数(1回)132万円(税込)/2500万個 ・PRP治療 16.5万円(税込) この症例については以下の記事で詳しくご覧ください。 当院で変形性膝関節症を治療された60代男性(漁師)の声 10年前からの左膝関節痛と、1年前からの右膝関節痛の患者様です。職業は漁師で「仕事で膝へ負担がかかり両膝の痛みが出た」と語っておられました。 近くの整形外科では、両膝の進行期の変形性関節症と診断されて治療を受けていました。しかし、左膝の痛みが10段階中9まで悪化し、漁師の仕事に支障をきたしていたそうです。人工関節にしてしまうと仕事復帰が難しくなるため、再生医療を考えて来院されました。 初回投与から3カ月後には、左膝の痛みが9から3に、右膝の痛みも3から0まで軽減しました。 治療方法 ・幹細胞治療:左膝に7000万個細胞、右膝には3000万個細胞、計3回 ・PRP療法 治療前後の痛みの変化(10段階) ・左膝:9→3 ・右膝:3→0 治療費用 ・幹細胞治療 関節1部位 幹細胞数 (2500万個~1億個) 投与回数(1回)132万円(税込)/2500万個 ・PRP治療 16.5万円(税込) この症例については以下の記事で詳しくご覧ください。 当院でPRP治療を受けられた50代女性の声 テレビや人づての話で再生治療に興味をもち来院された50代女性の患者様は、膝の痛みにPRP療法を単独で実施しました。 この方は、もともと膝がとても痛くて歩行困難が見られ、ヒアルロン酸の注射をしても1日しかもたないとのことで、PRPの治療を選択されました。かなり膝の変形も強く、人工関節を入れてもおかしくない方だったのですが、手術はどうしても避けたいとのことで注射を選択されています。 最初は不安もあったようですが「いつものような膝の注射をしただけだったので、つらい気持ちは全然感じることなく、スムーズに治療を受けられました」とおっしゃっていました。 治療を通してはじめ10あった痛みが、4回注射した後には2か3になりました。もともと杖で歩かれていたのですが「4回目のときには杖なしで自分の足で立つことができるようになっていて自分でもすごくびっくりしました。『すごく効いた』という実感があってとてもうれしかったです」と喜びの言葉を残されています。 治療方法 PRP療法 治療前後の痛みの変化(10段階) 10→2~3→5で安定 治療費用 PRP治療 16.5万円(税込) 「PRP治療後は立ったまま料理や家の片付けができるようになりました。友だちとUSJに遊びにいったり、ひとりで旅行したり色々なところに自分の足でいきたいと思います」と次の楽しみを見つけられていた点も印象的でした。 PRP療法の効果には個人差がありますが、この方は持続期間も長く認めており効果があった事例といえます。 PRP療法はプロアスリートも実際に靭帯損傷で用いた治療法 PRP療法は手術が不要で、長期の入院も必要ありません。プロアスリートから見ると、治療によるパフォーマンスの低下を避け、早期に復帰できる可能性があります。 このためPRP療法は、多くのプロアスリートに選ばれています。 PRP療法の効果には個人差があるため、早期に復帰できるかは明言できません。しかし、プロアスリートたちは高い効果を期待して、PRP療法を選択しています。 変形膝関節症でPRP治療を選ぶ際の注意点 変形膝関節症でPRP治療を選ぶ際には注意点があります。 まずPRP療法は痛みを止める効果には優れていますが、軟骨を再生する力は持ちません。変形膝関節症の場合、膝関節の軟骨がすり減ることで痛みが出るため、PRP療法では根本的な解決策にならない点に注意が必要です。 またPRP療法単独では、いずれかの段階で痛みが戻る可能性があります。痛みを止め、すり減った軟骨の再生を目指すなら、「幹細胞治療」が必要です。 幹細胞治療はPRP療法のように即日実施できるものではありませんが、PRP療法と同じく手術や入院は不要です。実際の治療では、患者さんから米粒2~3粒ほどの脂肪を採取し、専門施設で幹細胞を抽出して培養します。この幹細胞を患部に戻すことで、軟骨の再生が期待できます。 変形性膝関節症にはPRP療法のほかに運動療法も効果が見込める 変形性膝関節症には、PRP療法のほかに以下の運動・訓練も効果が見込めます。 有酸素運動 筋力強化訓練 可動域訓練 変形性膝関節症の診療ガイドラインには「定期的な有酸素運動・筋力強化訓練および関節可動域訓練を実施し、かつこれらの継続を奨励する」とあります。これらは「非薬物療法の中では最も重要度の高い項目」とされ、根拠のある治療法なのです。 変形性膝関節症の方におすすめの有酸素運動は、ウォーキングやプールでの水中運動です。また、筋力強化訓練で大腿四頭筋などの筋肉を強化すれば、膝の安定性が増します。 可動域(かどういき)訓練とは、関節を動かせる範囲「可動域」を広げる訓練です。可動域が狭くなると関節の柔軟性が低下し、痛みを感じやすくなるため、訓練によって可動域を広げていく必要があります。(文献) 以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。 まとめ|変形性膝関節症でPRP療法を検討中なら気軽にお問い合わせください 今回はPRP療法の流れと、治療を受けた方の実際の声をご紹介しました。 PRP療法は、手術や入院を伴わずに膝の痛みの軽減を目指せる治療法です。 ただし、PRP療法には膝の軟骨を再生する効果はありません。症状によっては、治療効果は限定的となります。軟骨の再生を図り、根本的な治療を目指すなら、幹細胞治療も選択肢の一つです。 PRP療法や幹細胞治療に興味がある方は、リペアセルクリニックへお気軽にお問い合わせください。お悩みをうかがい、詳しく説明させていただきます。 参考文献 (文献) 日本内科学会雑誌 106 巻 1 号「変形性膝関節症の管理に関するOARSI勧告ーOARSIによるエビデンスに基づくエキスパートコンセンサスガイドライン(日本整形外科学会変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会による適合化終了版)」https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/1/106_75/_pdf/-char/ja
2022.04.07 -
- 股関節
- 変形性股関節症
変形性股関節症と診断されたら、今以上に悪化させないように気をつけたいと考える方は多いのではないでしょうか。 変形性股関節症とは、股関節の軟骨がすり減ったり、骨の変形によって骨同士が擦れ合ったりして炎症が起こり、痛みを伴う疾患です。 変形性股関節症の悪化を防ぐには、ストレッチをして股関節の柔軟性を高めることが効果的です。股関節周りやお尻に効くストレッチを中心におこない、可動域を広げましょう。 今回は、変形性股関節症を悪化させないためのストレッチ方法や、気をつけるべきことを解説してまいります。手術を伴わない再生医療による治療法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。 変形性股関節症を悪化させないためのストレッチ方法 変形性股関節症を悪化させないためには、ストレッチをはじめとする運動療法が効果的です。ここでは、変形性股関節症の方におすすめのストレッチ方法を紹介します。 股関節の前側に効くストレッチ 股関節の内側に効くストレッチ 寝ながらできる股関節のストレッチ 股関節に負担をかけないように気をつけながら、ストレッチをして股関節の柔軟性や可動域の維持に努めましょう。なお、痛みがあるときは無理をしないことが大切です。やりすぎは逆効果になる場合があるため、ストレッチをして痛みが強くなったら医療機関を受診するようにしてください。 股関節の前側に効くストレッチ 変形性股関節症の悪化を防ぐためには、股関節の前側に効くストレッチがおすすめです。 左右いずれかのお尻を椅子に置き、横向きに座る 椅子に腰掛けていないほうの足を軽く後ろに伸ばし、つま先を立てる 椅子に腰掛けていないほうの足をさらに後方に伸ばしていく このとき、前側の股関節から太ももまでの筋肉を伸ばすイメージでおこなうことがポイントです。1セットあたり40秒程度を2〜3回繰り返し、左右の足を替えておこないます。 椅子に半分腰掛けた姿勢でストレッチするため、椅子の大きさや形によってはバランスを崩しやすいため注意が必要です。 股関節の内側に効くストレッチ 股関節の内側に効くストレッチも、変形性股関節症の悪化を防ぐために効果的です。 椅子に座って左右いずれかの足をもう片方の膝の上に乗せる 乗せた足の膝を下方向から外側に押し下げる 上半身をゆっくりと前に倒す このとき、股関節の内側からお尻の筋肉を伸ばすよう意識してください。1セットあたり40秒程度で2〜3回繰り返し、左右の足を替えて同じようにストレッチします。椅子に深く腰掛け、安定した状態でおこなうことがポイントです。 寝ながらできる股関節のストレッチ 股関節に効くストレッチには、寝ながらできるものもあります。 仰向けで寝る 左右いずれかの膝を両手で抱えて身体に引き寄せる この姿勢を約15秒間キープし、2〜3回繰り返して左右の足を替えます。膝を抱えて身体に引き寄せるとき、反対側の足は伸ばしたままの状態にします。痛みを感じない程度に無理なくストレッチしてください。 ストレッチ以外の運動療法 変形性股関節症の悪化を防ぐためには、ストレッチ以外の運動療法も効果的です。軽いウォーキングも、股関節の柔軟性を高め、可動域を広げるために有効です。 ウォーキングをする際は、ゆっくりとしたペースで歩行しましょう。歩く速度が早いと股関節に負担がかかり、かえって症状を悪化させるリスクがある点に注意してください。 また、筋力トレーニングをして筋力強化を図ることも大切です。股関節周りの筋力強化によって、股関節の動きを安定させたり衝撃から関節を守ったりできます。ただし、ストレッチと同様に過度な負荷がかかる筋力トレーニングは逆効果です。ウォーキングや筋力トレーニングも、痛みのない範囲内で無理なく続けましょう。 変形性股関節症に効果的な筋力トレーニングについて詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。 変形性股関節症の悪化を防ぐためにやってはいけないこと【ストレッチ以外】 変形性股関節症は、股関節に負担がかかると症状が進行してしまいます。そのため、変形性股関節症の症状の進行を抑え、悪化を防ぐために、やってはいけないことがあります。 以下で、それぞれ詳しく見ていきましょう。 股関節に負担をかける 変形性股関節症の初期の段階では、痛みを感じない場合も少なくありません。しかし、変形性股関節症の悪化を防ぐために、やってはいけない姿勢(禁忌肢位)があります。 変形性股関節症の禁忌肢位は、主に以下の通りです。 横座りや割り座 しゃがむ姿勢や長時間ひざまずく姿勢 足組み テニスやゴルフなどの股関節を捻る動作を伴うスポーツ ほかにも、長時間同じ姿勢を維持しない、横向きか仰向けで寝るといったことを心がけると股関節への負担を減らせます。変形性股関節症の進行を防ぐためにも、日常生活からできることを意識しましょう。 長時間連続して歩く 変形性股関節症の場合、長時間連続して歩くことは避けましょう。長時間の連続した運動は、たとえ軽度であっても筋肉が疲労してしまい、関節に負担をかけてしまうためです。 また、股関節の骨と骨の間にある軟骨は、衝撃を吸収し、骨同士が直接触れ合わないようクッションの役割を果たしています。しかし、軟骨は関節を使うことで徐々にすり減ってしまうため注意が必要です。 変形性股関節症と診断されたら、歩くときにもできるだけ股関節に負担がかからないように意識する必要があります。少しくらい大丈夫だろうといった考えは捨てて、無理をしないようにしてください。 痛みを感じるような運動やトレーニングを控える 変形性股関節症と診断されたら、無理は禁物です。筋力をつけようとして痛みを感じるほど運動してしまうと、かえって症状が進行してしまうケースも少なくありません。 変形性股関節症では、適度な運動が推奨されます。しかし、激しいダンスやエアロビクス、ボーリングやウェイトマシーンを使っての筋力トレーニングは関節へ過度な負担がかかるため避けるべきです。 変形性股関節症のリハビリテーションでは、関節への負担が少ないウォーキングや水中歩行などをゆっくりおこない、関節に無理をかけないように気をつける必要があります。 肥満を放置する 変形性股関節症の場合にやってはいけないこととして、肥満の放置が挙げられます。普通に歩くだけでも、関節には体重の約3~5倍の負担がかかります。そのため、体重は直接股関節へ負荷をかけることになるため注意が必要です。 とくに中高年になると身体の基礎代謝が落ち、体重管理が難しくなります。運動も大切ですが、肥満を改善するためには食生活の見直しが必要です。 変形性股関節症において気をつけたいことは、食べ過ぎないことと栄養バランスの良い食事を心がけることです。夕食は寝る2~3時間以上前には済ませ、暴飲暴食は避けましょう。 また、早食いにならないようにゆっくりとよく噛むことで、食欲が抑えられ、食べすぎを防げます。変形性股関節症と体重管理は切り離せないだけに、十分気をつけましょう。 変形性股関節症の治療法を検討する際のポイント ここでは、変形性股関節症の治療法を検討する際に気をつけることについて解説します。 納得できる医療機関を見つける 変形性股関節症の治療においては、納得できる医療機関を見つけることが大切です。変形性股関節症では、以下をはじめとするさまざまな治療がおこなわれます。 薬物療法 運動療法 手術療法 まずは薬物療法や運動療法で症状の改善を目指し、思うような効果が現れない場合には、手術療法を検討します。 変形性股関節症の手術療法では、入院が必要です。しかし、なかにはどうしても仕事が忙しくて時間が取れないといった理由で手術を希望しない人もいます。 また、手術療法にも骨切り術や人工関節置換術があり、その後の通院頻度や入院期間も異なります。 変形性股関節症の治療においては、病院までの距離や医師との相性なども含め、本人や家族が納得できる医療機関を見つけることが必要です。 意思や希望を主治医に伝える 変形性股関節症の方は、今後どのように治療を進めていきたいか、自分の意思をしっかりと主治医に伝えるようにしましょう。また、家族の意思や希望もあわせて伝えておくと安心です。 自分の意思や希望が治療に反映されていないと、モチベーションが下がってしまい、治療自体に影響が出るケースも珍しくありません。 すぐに手術を受けたいのか、しばらくは飲み薬のほかに湿布薬や座薬を使って様子をみたいのかなど、医師に希望を伝えた上で、相談しながら治療を進めましょう。 変形性股関節症に対するステロイド薬の使用について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 変形性股関節症には再生医療という選択肢もある 変形性股関節症の治療における選択肢として、再生医療があります。かつて変形性股関節症の治療では、薬で痛みが抑えられなくなった場合には手術をするしかないといわれていました。 しかし、現在では身体への負担が少なくて済む再生医療による治療も選択可能です。 再生医療と手術はどのように違うのか 再生医療は、自分の血液や幹細胞を使用するため、体への負担が少なく、数回の通院で完結する治療法です。 一方、人工関節置換術のような比較的大がかりな手術では、深部静脈血栓症・肺塞栓症・人工関節の再脱臼といった合併症のリスクを伴います。 再生医療の効果はいつまで続くのか 再生医療の治療効果は人工関節の耐久年数と同じ程度の持続が期待されています。 人工関節には耐久年数があり、一般的には平均15〜20年程度といわれています。人工関節の場合、経年劣化による不具合によって疼痛が発生するリスクがあります。 また、日常生活に支障が出る場合には、再手術が必要になるケースも少なくありません。 薬物療法や運動療法では効果が感じられず、手術を受けようか悩んでいる方、あるいはどうしても手術を受けたくない方にとって、再生医療はもう一つの選択肢になります。 以下の動画では、再生医療が変形性股関節症の痛みをどのように軽減したかを説明しています。ぜひ参考にしてみてください。 https://www.youtube.com/watch?v=ZYdyeWBuMQA まとめ|ストレッチをして変形性股関節症の悪化を防ごう 変形性股関節症の治療においては、股関節に負担をかけないように気をつけることが大切です。 おすすめは、股関節の前側・内側、お尻周りに効くストレッチです。なお、ストレッチは痛みを感じない程度でおこなうことがポイントです。痛みが現れたり、股関節に違和感を感じたりする場合は、ストレッチを中止して医療機関を受診してください。 ストレッチ以外にも、日常生活でできるだけ股関節に負担をかけないよう気をつけ、変形性股関節症の悪化を防ぎましょう。 なお、リペアセルクリニックでは、無料のメール相談を実施しています。変形性股関節症の症状が改善せずにお悩みの方は、ぜひ気軽にご相談ください。
2022.04.07 -
- 変形性股関節症
- 股関節
「最近、股関節の痛みが気になる…でも、手術はまだ考えたくない」 「この先も自分の足で元気に歩き続けるために、今からできることはないだろうか?」 変形性股関節症と診断され、そのようなお悩みや疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 手術を回避し、痛みをコントロールしながら日常生活を送るためには、保存療法について正しく理解し、実践することが非常に重要です。 本記事では、変形性股関節症の保存療法の基本となる4つの柱(運動・生活指導・薬物・物理療法)から、治療を続ける期間の目安までを詳しく解説します。 また、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報と簡易オンライン診断をお届けしています。 ご登録いただき、ご自身の身体と向き合う機会としてご利用ください。 変形性股関節症の保存療法とは|手術に頼らない治療の基本 変形性股関節症の治療は、「保存療法」と「手術療法」の二つに大別されます。 このうち保存療法とは、その名の通り手術をせずに股関節の機能を温存し、痛みなどの症状をコントロールしていく治療法の総称を指します。 その目的は、痛みや炎症を和らげ、症状の進行を緩やかにし、日常生活の質を最大限に維持・向上させることにあります。 病状が初期から進行期にある多くの患者様にとって、まず取り組むべき治療の第一選択肢となるのが、この保存療法です。 治療プロセスは、専門医による正確な診断から始まります。 レントゲンやMRIといった画像検査、丁寧な問診、身体診察を通じて股関節の状態を多角的に評価します。 そして患者様一人ひとりの年齢、活動量、生活背景などを総合的に考慮し、オーダーメイドの治療計画が立てられます。 この医師との二人三脚のプロセスが、治療成功の第一歩と言えるでしょう。 変形性股関節症の保存療法|4つの治療法と効果的な組み合わせ 保存療法は、単一の治療だけで効果を出すのは難しい場合があります。より高い治療効果を得るためには、複数のアプローチを戦略的に組み合わせることが不可欠です。 中心となるのは、以下の4つの柱です。 運動療法・リハビリ:関節を支える筋力を強化し、安定性を高める 生活指導:日常動作や体重を見直し、股関節への負担を根本から減らす 薬物療法:薬の力で、つらい痛みや炎症を効果的にコントロールする 物理療法:温熱効果や装具を利用し、痛みを和らげる これらは互いに補完し合う関係にあり、どれか一つだけを頑張るのではなく、バランス良く取り組むことが症状改善への近道となります。専門医や理学療法士と相談しながら、ご自身に最適な治療の組み合わせを見つけていきましょう。 1.運動療法・リハビリ|筋力強化と可動域改善 運動療法では、まずストレッチやマッサージをおこない、筋肉をほぐします。 股関節周囲の筋肉の柔軟性は、痛みの改善だけでなく、関節の動く範囲の改善にもつながります。 しかし、運動療法をするときに、早く筋肉をつけようとして無理に運動しないように注意しなければなりません。 また、ジョギングやサッカーのような激しい運動も股関節に負担をかけ、変形性股関節症を進行させてしまいます。 ゆっくりと歩くウォーキングや、負担の少ない水泳などをおこなうようにしましょう。 ウォーキング 関節への負担が少ない運動の代表格がウォーキングです。 とくに水中でのウォーキングは、浮力によって体重負荷が大幅に軽減されるため、痛みが強い方でも取り組みやすいでしょう。 陸上を歩く際は、衝撃吸収性に優れたクッション性の高い靴を選び、まずは平坦な道を1日20〜30分程度から始めてみるのがおすすめです。 筋力トレーニング 股関節の安定性に直接寄与するのが、お尻の筋肉(中殿筋)や太ももの筋肉(大腿四頭筋)です。 これらの筋肉を重点的に鍛えることで、歩行時のふらつきを防ぎ、関節をしっかりと支えることができます。 横向きに寝て脚をゆっくりと持ち上げる運動や、仰向けで膝を曲げた状態からお尻を浮かせる運動など、自宅でも安全に行えるトレーニングが数多く存在します。 変形性股関節症のリハビリについては、以下の記事にて詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。 2.生活指導|日常動作の工夫と体重管理 日々の何気ない動作や生活習慣が、知らないうちに股関節へ大きな負担をかけていることがあります。 この負担を意識的に減らす生活指導も、運動療法と並行して行うべき重要なアプローチです。 中でも最も重要なのが体重管理です。体重が1kg増えるだけで、歩行時には股関節に約3〜4kgもの負荷がかかるとされています。 つまり、体重をコントロールすること自体が、効果的な治療法なのです。 その他、以下のような生活上の工夫を取り入れることで、股関節への負担は大きく変わってきます。 洋式の生活:正座やあぐら、低い椅子からの立ち座りは股関節に大きな負担をかけます。可能な限り、椅子やテーブル、ベッドを中心とした生活スタイルに切り替えましょう。 動作の工夫:床の物を拾う際は、膝を曲げて腰を落とすように意識する、重い荷物はカートを利用するなど、一つ一つの動作を見直すことが大切です。 靴の選択:歩行時の地面からの衝撃は、股関節痛の大きな要因です。クッション性が高く、かかとが安定した靴を選びましょう。 3.薬物療法|薬物による疼痛・炎症管理 痛みが強く、運動や日常生活に支障が出ている場合、薬物療法を併用して症状をコントロールします。 薬物療法は、痛みによる動作制限の悪循環を断ち切り、運動療法などをよりスムーズに進めるためのサポーターとしての役割を果たします。 投与方法 内容・注意点 内服薬 痛みや炎症を抑える目的で、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが主に処方されます。胃腸障害などの副作用が出る可能性もあるため、必ず医師の指示通りに服用することが鉄則です。 外用薬 湿布や塗り薬といった外用薬は、内服薬に比べて全身への副作用のリスクが低く、手軽に使える利点があります。 関節内注射 痛みが局所的に強く、内服薬などでは十分にコントロールできない場合、股関節に直接ヒアルロン酸やステロイドを注射する方法があります。 これらの薬は、あくまで痛みを緩和し、生活の質を維持するための手段です。 自己判断で量を増減したり中断したりせず、必ず医師と相談の上で使用してください。 4.物理療法|温熱療法と装具の効果的活用 物理療法は、熱や物理的な補助具を用いて、痛みの緩和や機能の改善を図る治療法です。 薬物療法とは異なるアプローチで、症状の改善をサポートします。温熱療法と装具の2つについて解説します。 温熱療法 股関節周辺を温めることで血行が促進され、筋肉の緊張がほぐれ、痛みが和らぐ効果があります。 温熱療法は、とくに筋肉のこわばりからくる鈍い痛みに対して有効です。ご家庭での入浴やホットパックの利用が手軽ですが、注意点もあります。 痛みが起きた直後の急性期には、温めることでかえって炎症が悪化することがあるため、自己判断で行わず、医師に確認してから実践しましょう。 装具療法 杖やサポーター、インソール(足底板)といった装具を用いて、股関節への力学的な負担を軽減する方法です。 とくに杖は、歩行時の股関節への負荷を最大で60%も軽減できるとされ、非常に有効な手段です。(文献1) 杖は、痛い方の脚と反対側の手で持つのが基本です。体を安定させ、効率的に負荷を分散させることができます。 変形性股関節症の保存療法はいつまで続ける?改善効果と期間目安 保存療法の期間は、症状の程度や治療への取り組み方によって個人差があります。そのため、全ての患者様に共通する決まった期間はありません。 一般的には、保存療法の効果は10年程度続くと考えられていますが、あくまで目安です。股関節の状態は日々変化するため、日々の痛みの強さや歩行量、家事のしやすさなどを記録し、専門医と相談しながら治療計画を柔軟に見直すことが重要です。 保存療法は「いつまで」と決めるものではなく、生活の一部として無理なく続けることが基本です。迷ったときは一人で抱え込まず、担当医と一緒にプランを整えていきましょう。 保存療法で避けるべき行動を知っておくと、ご自身の体に合った取り組み方が理解しやすくなります。詳しくは、こちらの記事もご確認ください。 変形性股関節症に対する保存療法以外の選択肢「再生医療」について 保存療法を継続しても症状の改善が難しい場合や、手術以外の方法を検討したい場合に、選択肢の一つとして再生医療があります。 再生医療は、患者様ご自身の血液や脂肪から特定の成分(血小板や幹細胞など)を抽出し、関節内に投与する方法です。 このアプローチは、ご自身の体にもともと備わっている組織の修復過程や、炎症を抑える働きに着目した治療法です。 ご自身の細胞を用いるため、アレルギー反応などのリスクは低いとされています。 変形性股関節症に対する再生医療について、以下の記事で症例を紹介しています。治療内容の参考にぜひ一度ご覧ください。 再生医療をご検討の際は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。再生医療に精通した医師が、患者様の状態に応じて個別に治療方針をご提案いたします。 変形性股関節症でお悩みの方へ|専門医と一緒に治療法を見つけましょう 保存療法の目的は、手術以外の方法で痛みを管理し、今ある関節機能を最大限に維持することです。 その成功の鍵は「運動療法」「生活指導」「薬物療法」「物理療法」という4本柱を、専門家のアドバイスのもとでバランス良く組み合わせることにあります。 保存療法は息の長い治療です。焦らず根気強く続けることが何よりも大切ですが、再生医療という選択肢が存在することも、ぜひご認識ください。 ご自身の状態を正しく理解し、専門家と共に粘り強く治療を続けることが、より豊かな日常生活を取り戻すための鍵となります。 もし現在の治療に行き詰まりを感じていたり、今後の治療方針に悩んでいるのであれば、一人で抱え込まず気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 杖を用いた歩行の特性|昭和大学保健医療学部
2022.04.07 -
- 肝疾患
- 内科疾患
肝臓は、薬やアルコール、有害物質などを分解・処理する役割を持つ、生命維持に欠かせない臓器です。ただし、日常生活の中で気づかないうちに負担がかかり、機能が低下しているケースも少なくありません。 とくに、薬の服用などで肝臓に過剰な負荷をかけ続けると、重大な疾患の原因にもなるため注意が必要です。 本記事では、肝臓の働きを項目別にわかりやすく解説し、意識したい生活習慣や身体の変化についてもご紹介します。 【肝臓の働き一覧表】 役割 働き 胆汁の合成・分泌 脂肪の消化・吸収を助ける胆汁を生成し、ビリルビンやコレステロールなどの老廃物を排泄する。 代謝 炭水化物・脂質・タンパク質を必要な形に変換・合成・分解し、体内の栄養バランスを調整する。 栄養素の貯蔵 グリコーゲンや脂肪、ビタミン、ミネラルを貯蔵し、必要に応じてエネルギーや材料として供給する。 解毒・排泄 アルコール・薬物・アンモニアなどの有害物質を無毒化し、排泄できる形に変換する。 免疫 クッパー細胞やNK細胞が異物を除去し、免疫機能維持に必要なアミノ酸やエネルギーを供給する。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、肝臓疾患の新しい治療法「再生医療」に関する情報の提供と簡易オンライン診断を行っておりますので、ぜひご活用ください。 肝臓の5つの働きをわかりやすく解説 肝臓には多くの働きがあります。 ここでは、以下の5つに注目して、肝臓の働きを詳しく見ていきましょう。 胆汁の合成・分泌 代謝(炭水化物・脂質・タンパク質など) 栄養素の貯蔵 解毒・排泄 免疫 胆汁の合成・分泌|脂肪の消化・吸収を助ける 胆汁は、食べ物に含まれる脂肪などの消化・吸収を助ける分泌液です。 胆汁の主要な成分は、コレステロールから合成される「胆汁酸」で、脂肪に胆汁酸が混ざると消化酵素による分解を受けやすくなります。 また肝臓は、古くなった赤血球の分解で生成される色素「ビリルビン」を処理・排泄する役割も担っています。ビリルビンは、そのままだと水に溶けません。肝臓で水に溶けやすい形に変換されて胆汁に混ざり、消化管へ排泄されます。 さらに、作られた胆汁は十二指腸へ送り出され、脂肪の消化・吸収を助けます。 このように肝臓は、胆汁の合成と分泌、脂肪の消化・吸収に欠かせない重要な臓器なのです。 代謝|炭水化物(糖質)・脂質・タンパク質などを変換・合成する 代謝とは、体内でさまざまな分子が合成・分解される際の化学反応です。 たとえば、炭水化物・脂質・タンパク質は、肝臓において以下のように代謝されています。 変換・合成元 変換・合成先 炭水化物 ・ブドウ糖以外の単糖類(フルクトースやガラクトース)をブドウ糖に変換 ・ブドウ糖をグリコーゲンに合成して貯蔵 ・アミノ酸や脂肪からブドウ糖を合成 脂質 ・脂肪を運ぶタンパク質の合成(VLDL、HDL) ・ブドウ糖から脂肪を合成 ・脂肪・ブドウ糖・アミノ酸からコレステロールを合成 タンパク質 ・非必須アミノ酸(体内で合成可能なアミノ酸)を合成 ・アミノ酸からタンパク質(アルブミンや血液凝固因子など)を合成 ・余分なアミノ酸の分解 体にとって使いやすい形への変換や不足分の合成、貯蔵しやすい形への合成などが行われるのが特徴です。 栄養素の貯蔵|エネルギーの貯蔵と供給を担っている 肝臓は、糖や脂質の貯蔵において中心的な役割を果たしている臓器です。また、ビタミンやミネラルの貯蔵も担っています。 体内でブドウ糖が余っているとき、肝臓はまずグリコーゲン(ブドウ糖の貯蔵形態)として蓄えます。グリコーゲンが十分になってもまた余っていれば、脂肪に変換して脂肪組織で貯蔵できる形にします。 逆に、ブドウ糖が不足しているときは、肝臓のグリコーゲンを分解してブドウ糖に戻し、血液中に供給します。グリコーゲンがなくなれば、アミノ酸や乳酸、脂肪を材料にブドウ糖を新たに合成することが可能です。 エネルギー源以外で、肝臓に貯蔵される栄養素の例として以下があります。 鉄 ビタミンB12 ビタミンA ビタミンD 解毒作用・排泄|アンモニアなど有害な物質を無毒化する 肝臓は、アルコールやニコチン、薬の成分などを分解して無害化するとともに、体内で生じる有害物質や排泄が難しい物質を体外へ排泄可能な形に変える働きも持っています。 たとえば、余分なアミノ酸を分解する過程でできるアンモニアは、そのままでは有毒なため、尿素に変換されます。赤血球が分解される際に出るビリルビンを、水に溶ける形に変換するのも肝臓の役目です。体内で働いたホルモンも、一部は肝臓で分解されます。 また、肝臓では運動などで生成された乳酸をブドウ糖に変換し、エネルギー源として再利用することが可能です。 免疫|細菌やウイルスなどの異物を除去する 肝臓は、消化管で吸収された栄養素が最初に流れ込む場所です。 消化管からの血液の通り道には、クッパー細胞と呼ばれる免疫担当の細胞が存在し、栄養とともに運ばれてくる細菌やウイルスなどの異物を処理しています。 さらに、ウイルスに感染した細胞や不要になった細胞の残骸などを排除するナチュラルキラー(NK)細胞など、さまざまな免疫細胞が集まっているのも特徴です。 なお、免疫系が適切に働くには、病原体に結合して目印となるタンパク質の「免疫グロブリン」が必要になります。免疫細胞が免疫グロブリンを作るには、肝臓から供給されるアミノ酸やエネルギーが欠かせません。 肝臓の働きを良くするために意識したい生活習慣 ここでは、肝臓のために普段から意識したい生活習慣について解説します。 肝臓の働きを良くするためにも、ぜひ参考にしてみてください。 栄養バランスを考えて食事のメニューを選ぶ 肝臓の働きを維持するには、肝臓の細胞を作るタンパク質や、肝臓の機能を助けるビタミン類が不足しないように注意が必要です。 積極的に摂取したい栄養素を多く含む、食品の一例を以下にまとめました。 栄養素 食品例 タンパク質 ・鶏むね肉 ・豆腐 ・卵 ビタミンB群 ・豚肉 ・ほうれん草 ・納豆 ・玄米 ビタミンC ・ブロッコリー ・キウイフルーツ ・さつまいも ビタミンE ・アーモンド(ナッツ類) ・アボカド ・カボチャ ポリフェノール ・緑茶 ・ブルーベリー ・ココア タウリン ・しじみ ・あさり ・いか これらの栄養素を意識しながら、さまざまな食品をバランスよく食べましょう。 なお、すでに肝機能が落ちている方は、タンパク質や塩分の制限が必要な場合もあります。これから受診する場合は医師に相談し、医療機関にかかっている方は指示を優先して調整してください。 睡眠不足・ストレス過多を避ける 肝臓の働きを良好に保つには、睡眠不足とストレス過多を避けることが大切です。 睡眠時間が短いと、肝臓が日中のダメージを修復・再生する時間も少なくなります。毎日決まった時間に寝起きするなど規則正しい生活を送り、質の高い睡眠を確保しましょう。 寝る前のカフェイン摂取や、スマートフォンの使用を控えるのも効果的です。 また、過度なストレスも自律神経を乱し、肝臓へのダメージにつながります。活性酸素が増えることで肝細胞が傷ついたり、ストレスによる食生活の変化で肝臓に負担がかかったりする可能性もあるため注意が必要です。 適度な運動や趣味など、自分に合った方法で上手にストレスを発散しましょう。 ウォーキングなど軽い運動を習慣にする ウォーキングなどの軽い有酸素運動も、肝臓に良い影響をもたらします。とくに、肥満や脂肪肝を指摘されている場合に効果的です。 適度な運動は、肝臓の脂肪を減らす効果があると報告されています。(文献4) おすすめの有酸素運動は、ウォーキングやサイクリング、スイミングなどです。少し汗をかきながら無理なく続けられる強度で、1回30分~60分、週に3~4回を目安に運動を習慣にしましょう。(文献6) アルコールを控える 肝機能を守るためには、日常的な飲酒習慣の見直しが重要です。 アルコールは肝臓で分解されるため、過剰な摂取が続くと肝臓に大きな負担をかけ、脂肪肝やアルコール性肝炎、肝硬変などの疾患につながりかねません。 生活習慣病のリスクを高める飲酒量としては、男性1日あたり純アルコール40g以上、女性20g以上とされています。(文献5) 純アルコール20gは以下の量に相当します。 ビール(5%):中瓶1本(500ml) 日本酒:1合(180ml) ワイン:グラス2杯弱(約180ml) チューハイ(7%):350ml缶1本 ウイスキー・焼酎:シングル2杯(約60ml) これらを目安に、飲酒量を抑えるよう心がけましょう。とくにγ-GTPなど肝機能の数値が高い場合には、週に最低2日は休肝日を設けることが大切です。 薬の不適切な服用に注意する 薬の不適切な服用は、肝臓や腎臓などの臓器に負担をかけます。 とくに肝臓は、薬物代謝の中心的な役割を担っており、必要以上の薬が体内に入ると、薬剤性肝障害を引き起こすケースがあるのです。 市販薬を含めて複数の薬を併用している場合は、有効成分が重複していないか、相互作用がないかを確認しましょう。 安全に薬を使うためにも、以下を確認しておいてください。 医師や薬剤師の指示に従い、用法・用量を厳守する 飲み合わせに注意し、不明な点があれば必ず専門家に相談する 飲み忘れや中断時は、自分で調整せず再度指示を受ける 薬は、適切な使い方で治療効果を発揮します。肝臓を守るためにも、自己判断による過剰な服用は避けましょう。 肝臓と薬の関連性については、以下の記事でも詳しく解説しています。 肝臓の働きとコレステロールの関係 コレステロールは体に不可欠な脂質であり、その大部分は肝臓で合成されます。 体内のコレステロールの約70〜80%が肝臓を中心に作られており、細胞膜やホルモン、胆汁酸の材料として利用されているのです。 肝臓で合成されたコレステロールは、LDL(低密度リポタンパク)により全身へ運ばれ、各組織で利用されます。余分なコレステロールは、HDL(高密度リポタンパク)によって回収され、再び肝臓に戻されて胆汁酸として分解・排泄します。 肝臓はコレステロールの生成・輸送・代謝・排泄という一連の流れをコントロールしており、血中の脂質バランスを調整しています。しかし、肝機能が低下するとこれらの調整機能が乱れ、血中のコレステロール値が異常をきたす可能性があるため注意しなければなりません。 とくに脂肪肝や慢性的な肝障害がある場合には、コレステロールの排泄がうまくいかず、動脈硬化や心血管疾患のリスクが高まります。 健康なコレステロールバランスを保ち、生活習慣病の予防にもつなげるためには、肝臓の正常な働きが欠かせません。 肝臓の働きをチェックする方法 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、自覚症状が現れにくい臓器です。異常があっても気づかないまま進行するケースも多く、健康な状態を維持するためには、定期的なチェックが欠かせません。 まずは、年に一度会社で実施される定期健康診断を活用しましょう。健康診断の機会がない場合でも、かかりつけ医や内科のクリニックで、自発的に肝機能を調べる血液検査を受けることも可能です。 血液検査では、肝臓の状態を数値で客観的に把握でき、早期の肝機能異常の発見につながります。 とくに、肝疾患のリスクがある人や、疲れやすさ・肌荒れ・黄疸などが気になる人は、積極的に検査を受けましょう。 血液検査でわかる肝機能の数値 血液検査で確認できる数値を以下の表にまとめました。 検査結果をもらったら、照らし合わせて確認してみましょう。 項目名 基準値の目安 内容(役割・異常の意味) AST(GOT) 男女共通:13〜30 U/L程度 肝臓以外にも心筋や筋肉に含まれ、肝細胞が壊れると血中に増加。肝炎や肝硬変で上昇。 ALT(GPT) 男性:10〜42 U/L 女性:7〜23 U/L 主に肝臓に存在し、ALTの上昇は肝細胞の障害を示す。 γ-GTP 男性:13〜64 U/L 女性:9〜32 U/L 胆道系やアルコール代謝に関与。飲酒や胆道障害で上昇。慢性肝疾患でも高い数値になる。 (文献7) なお、それぞれの基準値は検査機関や測定法によって異なります。上記の数値はあくまで目安です。 肝臓の働きが悪くなると身体に現れる変化 肝臓は、働きが悪化しても目立った症状はなかなか現れませんが、以下のような症状が現れた場合は、肝機能低下のサインかもしれません。 全身がだるくなって疲れやすくなる 黄疸(肌や目が黄色くなる)やむくみが出やすくなる では、それぞれ詳しく見ていきましょう。 全身がだるくなって疲れやすくなる 肝臓の働きが悪くなると、心当たりのない全身のだるさが続いたり、疲れやすくなったりします。 まず考えられるのが、ブドウ糖の供給を調節する機能の低下です。ブドウ糖の供給がうまくいかなくなると、体の各組織が十分なエネルギーを得られなくなります。 有害物質の解毒・分解が滞り、アンモニアなどの老廃物が身体に溜まることも倦怠感の一因です。ほかにも、栄養素の貯蔵障害やタンパク質の合成低下、ホルモンの調整機能の不調なども影響します。 このように、肝臓の働きが低下すると複数の機能が同時に影響を受けるため、慢性的なだるさや疲労感につながることを理解しておきましょう。 黄疸(肌や目が黄色くなる)やむくみが出やすくなる 黄疸とは、白目や皮膚が黄色くなる症状です。 黄疸は肝機能の低下を示す代表的なサインであり、肝臓でのビリルビン(赤血球が壊れる際に生じる黄色の色素)の処理や排出が十分に行われなくなることで現れます。急性肝炎では、黄疸が現れる前に尿の色が濃くなることが多く、その数日後に皮膚や目の黄変が見られるケースがあります。(文献2) ただし、むくみの原因は、肝臓におけるタンパク質の合成障害である可能性も否定できません。 血液中のタンパク質(アルブミンなど)が減少すると、水分を血管内にとどめておく力が低下します。その結果、水分が血管の外にしみ出し、むくみや腹水として蓄積することがあります。 肝臓の働きの悪化が進むとかかりやすい重大な病気 肝臓の働きが悪化すると、以下のような肝臓の病気を発症するリスクが高まります。 急性肝炎 慢性肝炎 アルコール性肝炎 非アルコール性脂肪肝炎 ウイルス性肝炎 肝硬変 肝臓がん ここでは、急性肝炎・慢性肝炎・肝硬変の3つの特徴を説明します。 急性肝炎 急性肝炎とは、肝炎ウイルスやアルコール、薬剤などの影響で肝臓内の細胞が破壊され、高度な炎症反応がみられる病態です。 肝炎ウイルスが原因であるケースが多く、感染して数週間から数カ月後に黄疸や食欲不振、全身倦怠感、発熱といった症状が現れます。(文献2) 肝炎ウイルスの種類には、A・B・C・D・E型があり、このうちD型は日本であまり見られません。どの型であっても、治療の基本は安静と食事療法です。 肝臓への負担を抑えるためにタンパク質を制限するほか、必要に応じて輸液や炎症を抑える薬を投与する場合もあります。 急性肝炎は重症化するケースもありますが、多くは自然に回復します。ただし、C型肝炎は慢性化する確率が高いため、急性の症状が落ち着いても、6カ月の経過観察が必要です。 慢性肝炎 慢性肝炎とは、肝臓の炎症が半年以上継続している状態を指します。 主な原因は、急性肝炎が完全に治りきらずに炎症が続く場合や、脂肪の蓄積、アルコールによる継続的な肝臓への負担などです。 慢性肝炎による炎症と修復が繰り返されると、肝臓は少しずつ繊維化し、慢性肝臓病と呼ばれる機能低下の状態となります。さらに放置すれば、肝硬変や肝臓がんに移行する恐れもあるため要注意です。(文献3) 慢性肝炎の自覚症状は非常に軽微なため、健康診断の血液検査でたまたま発見される場合が多いとされています。とくに気をつけるべき数値は、肝臓の働きを反映する「ALT」です。 日本肝臓学会では、ALTが30を超えたらかかりつけ医を受診するよう推奨しているので、症状がなくても放置せずに早めの受診を心がけましょう。(文献3) 肝硬変 肝硬変とは、肝臓の組織が繊維化して固くなってしまう病気です。慢性肝炎などによって、肝臓内の細胞が破壊と修復を繰り返すうちに発症します。 C型肝炎がもっとも多い原因ですが、近年ではアルコール性肝障害や、非アルコール性脂肪肝炎が原因で肝硬変となる割合が増えています。(文献1)そのため、ウイルス感染がなくても、飲酒習慣や肥満・脂肪肝がある方は定期的な検査を受けることが重要です。 肝硬変の初期にはほとんど目立った症状を認めないケースが多いですが、進行するにしたがって倦怠感や吐き気、体重減少など、さまざまな症状が出現します。さらに病状が悪化すると、むくみやおなかの張り、白目や皮膚が黄色くなる黄疸なども現れます。 肝硬変になると、肝臓の機能は低下したまま元に戻りません。また、肝がんが発生する危険性も高くなります。(文献1) 肝硬変の発症や進行を防ぐために、生活習慣の見直しと定期的な検診を心がけましょう。 なお、肝硬変の治療には再生医療の「幹細胞治療」が活用されています。肝硬変に対する幹細胞治療の症例については、以下の記事を参考にしてみてください。 肝臓疾患の治療には再生医療をご検討ください 脂肪肝や肝炎といった肝臓の病気は、放置すると肝硬変や肝がんに進行する場合もあります。しかしながら、自覚症状が出にくいため、気づいたときには進行しているケースも少なくありません。 そんな肝臓疾患の新しい治療法として、再生医療があります。 再生医療とは、体内の幹細胞が持つ組織修復能力や炎症を抑える働きを活かした治療法です。患者様自身の幹細胞を用いるため、身体への負担を抑えられ、入院を伴う大きな手術も必要ありません。 当院リペアセルクリニックでも、脂肪肝・肝硬変・肝炎に対する再生医療を提供していますので、お気軽にご相談ください。 まとめ|肝臓の働きで気になる点があれば受診しよう 肝臓は、私たちの体内で薬やアルコール、老廃物の処理などを担う重要な臓器ですが、知らず知らずのうちに負担がかかっていることも少なくありません。 とくに、薬を服用している場合、肝臓が薬の成分を代謝・分解するために大きく働くことになり、負担が蓄積すると数値の異常や薬物性肝障害のリスクも高まります。 肝機能の異常を防ぐためには、日々の生活習慣の見直しが何より大切です。バランスの良い食事と脂肪・糖分・アルコールの過剰摂取を避けることで、肝臓への負担を軽減できます。 また、定期的な健康診断での数値チェックと、異常に気づいたときの早期受診も大切です。薬との付き合い方を見直しながら、肝臓に優しい生活を心がけましょう。 肝臓の健康状態に不安がある方は、再生医療も選択肢になります。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を行っていますので、ぜひご登録ください 肝臓の働きに関するよくある質問 肝臓の働きを小学生向けにわかりやすく解説して 肝臓は、おなかの右上、あばら骨の中にある大きな臓器です。 体の中の「工場」のような場所で、食べ物から入った栄養をエネルギーに変えたり、使いきれなかったりした分を「エネルギーの貯金」としてためて、足りなくなったときに取り出します。 また、血液の中の毒やいらない物を分解して、体の外に出しやすくする役目もあります。 さらに、ケガをしたときに血を固めるたんぱく質や、油っぽい料理を消化しやすくする胆汁(たんじゅう)も作っているなど、健康的な生活のために欠かせません。 こうした大事な仕事をしているので、お菓子を食べ過ぎたり、ジュースを飲み過ぎたりせず、よく寝て元気に動いて、大切な肝臓を守っていきましょう。 肝臓で重要な3つの働きは? 肝臓は身体の代謝と恒常性を支える中心的な臓器であり、とくに以下の3つが重要な働きです。 1.アルブミンや凝固因子といった生命維持に不可欠なタンパク質を合成し、さらに糖質・脂質・ビタミンを貯蔵して必要に応じて調節する。 2.薬物やアルコール、アンモニアなどの有害物質を無毒化し、体外へ排泄できる形へ変換する解毒機能を持つ。 3.脂肪の消化・吸収に不可欠な胆汁酸を含む胆汁をつくり、老廃物を排泄する。 上記3つの働きが連動することで体内環境が安定し、健康が維持される仕組みになっています。 参考文献 (文献1) 肝硬変診療ガイドライン 2020(改訂第 3 版)|日本消化器病学会・日本肝臓学会 (文献2) 急性肝炎|国立健康危機管理情報機構 肝炎情報センター (文献3) 奈良宣言特設サイト|日本肝臓学会 (文献4) NAFLD/NASH 診療ガイドライン 2020(改訂第 2 版)|日本消化器病学会・日本肝臓学会 (文献5) 11月 肝機能が気になったら|全国健康保険協会 (文献6) 脂肪性肝疾患患者に対する肝臓リハは?|日本肝臓学会 (文献7) 臨床検査基準値一覧|2016年6月版 国立がん研究センター中央病院 臨床検査部
2022.04.04 -
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 脊椎
「頚椎椎間板ヘルニアでやってはいけないことは?」 「ヘルニア予防で注意すべきポイントは?」 頚椎椎間板ヘルニアの多くは、日常生活で悪い姿勢のまま作業をしたり、首に負担のかかりやすい運動(スポーツ)をしたりすると起きやすくなります。 そのため、日常生活において大きな衝撃がない場合でも、首に負担がかかる動作で症状が悪化するリスクがあるため、注意が必要です。 本記事では、頚椎椎間板ヘルニアでやってはいけないことについて詳しく解説します。 早く治すためにも、やってはいけないことを守り、適切な治療を受けましょう。 また、頚椎椎間板ヘルニアによる痛みやしびれを早く治したい方は、再生医療も選択肢の一つです。 \ヘルニアによる神経痛の改善に有効な「再生医療」とは/ 再生医療は、患者さまの細胞や血液を用いて自然治癒力を向上させることで、痛みやしびれの原因となる損傷した神経の再生・修復を促す治療法です。 【こんな方は再生医療をご検討ください】 ヘルニアによる痛みやしびれを早く治したい 根本的に治療したいが、手術はできるだけ避けたい 痛み止めや湿布が効かない、あるいはすぐに痛みがぶり返す リハビリやマッサージを続けているが、期待した効果が得られない 当院リペアセルクリニックでは、再生医療の具体的な治療法や適応症例について無料カウンセリングを行っているため、お気軽にご相談ください。 まずはヘルニアによる神経痛の治療について無料相談! 頚椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニアについて 頚椎椎間板ヘルニアは、椎間板の一部が本来の正常な位置から逸脱し、後方・背中側に向けて突出してしまう病気をいいます。 ちなみに「椎間板(ついかんばん)」とは、脊椎(せきつい)領域において、骨と骨の間にあるクッションの役割を担っている軟骨のことです。 首の骨は「頚椎(けいつい)」と呼ばれ、7つの骨で構成されています。 特に、頭側に位置する上位頚椎椎間板ヘルニアは、加齢にともなう下位頚椎の変形などにより、上位頚椎に負荷がかかって引き起こされるのが一般的です。 若年者から中年層にかけて幅広く発症し、多くは悪い姿勢でのデスクワークが原因で起こる傾向にあります。 あるいは頚部に重い負担や、大きな衝撃がかかる以下のようなスポーツで発症する可能性もあるでしょう。 ・ラグビー、アメフト ・柔道 ・レスリング、ほか格闘技など ・スキー、スノーボードなど(ウインタースポーツ) また、頚椎椎間板ヘルニアになったときにあらわれる症状は、以下のとおりです。 ・首や肩、腕にかけて広範囲に痛みやしびれが出てくる ・食事中に箸が持ちづらくなる ・服を着るときにボタンがかけづらくなる ・歩くときに足がもつれる 医療機関などで頚椎椎間板ヘルニアの患者さんを診療するときは、手足の感覚や筋力が通常より低下していないかを確かめます。 あるいは四肢の腱(けん)反射異常などを観察したうえで、MRI検査(核磁気共鳴装置)で画像を確認し、脊髄の圧迫状態を確認します。 頚椎椎間板ヘルニアでやってはいけないこと5つ【予防法も解説】 前項で触れた通り、頚椎椎間板ヘルニアという病気は、スポーツなどが契機となって発症しやすい傾向にあります。 頚部のしびれや痛みなどの症状がみられる場合には、運動を一旦中止し、医療機関の受診を検討しなければなりません。 以下では、日常生活で注意するためにも、頚椎椎間板ヘルニアでやってはいけないこと5つをご紹介いたします。動画の解説もあわせてご確認をいただけるとうれしいです。 https://www.youtube.com/watch?v=xbxEK7kz0y0 ・スポーツでの違和感は放置しない ・姿勢が良くないまま過ごさない ・体重管理をせず体に負担をかけない ・自転車・バイクなどに乗って負担をかけない ・喫煙を習慣化しない スポーツでの違和感は放置しない アメリカンフットボールやラグビー、格闘技系など、激しいコンタクトを要求されるスポーツ選手は特に注意が必要です。 また、体操選手などは、体に対して急激で強い外力が頻繁に加わる動作をおこない、長時間同じような動作を反復するので頚椎椎間板ヘルニアを発症するリスクがあります。 とくに年齢を重ねると椎間板が劣化しやすいため、激しい動きがある種目は行わないようにするか、可能な限りリスクに注意して行うなどの対策を取ってみてください。 ほかにも、症状が軽度な場合に「この程度なら大丈夫」と自己判断して放置し、治療をしないままスポーツや生活を続けるのは避けましょう。 頚椎椎間板ヘルニアは自然に良くならないので、違和感を放置すると症状を悪化させる原因に繋がりかねません。 首に痛みや違和感があるときは、早めに医療機関で診察を受けて、医師から適切な判断を仰いでみてください。 姿勢が良くないまま過ごさない 頚椎椎間板ヘルニアを引き起こしやすい例としては、日常的な姿勢の悪さがあげられます。 たとえば、腰の部分が反ってしまう「そり腰」を始め、腹部に体幹を支える力が入っていない状態の「猫背」が代表例です。 頚椎椎間板ヘルニアの発症防止や、発症後に症状を悪化させないためにも、日常生活で背筋を伸ばすなど「正しい姿勢を意識する」ことが大切です。 以下では、姿勢が崩れていないかの確認方法を解説いたします。 【姿勢の確認方法】 まずは、大きな鏡の前で自身の姿勢を確認しましょう。 もしくは自然に壁の後ろに立ち、かかとを壁に付ける形で確認します。 その際、お尻・肩・頭は、壁に軽くついているかを始め、背中は手のひら1枚分ほどの隙間があるかも確かめましょう。 準備が整ったら、姿勢が悪いときに当てはまる以下のポイントをチェックします。 ・お尻、肩、頭が壁につかない部分がある ・頭の後頭部がつかない(頚椎に負担がかかっている) 姿勢の悪さに気づいたときは、背筋を伸ばすなど、日頃から正しい姿勢を意識するように注意しましょう。 正しい姿勢を知って維持したい方は、正しい歩き方を含めて解説している以下の記事も参考になります。 体重管理をせず体に負担をかけない 平均的な体重の成人は、上半身の重さが全体重の6割ほどといわれています。 体重が重い肥満傾向の場合は、そのぶん頚椎椎間板にかかる負荷が大きくなります。 身長に対して過剰な体重にならないためにも、適度な運動や食生活の見直しをおこない、体重を管理することが大切です。 自転車・バイクなどに乗って負担をかけない すでに頚椎症の疑いや症状がある場合は、自転車やバイク、自動車などに乗るのは控えるほうが良いでしょう。 特に自転車やバイクの転倒時には、急激に首に力が入ってしまいます。リスクを避けるためになるべく運転を控えましょう。 それでも自転車に乗る場合は、停止時はすぐに地面に足が着くようサドルを調整し、無理のない走行を心がけます。 また、自動車でほかの人に運転してもらう場合は、乗る前に事情を説明しておき、安全運転をお願いしましょう。 乗り物に乗るときは、以下の点にご注意ください。 【自転車・バイク・自動車などに乗るときの注意点】 ・発進や停止するときは、首に大きな負担がかかる点を意識する ・急発進や急ブレーキも、首に大きな負担がかかるので避ける 乗り物以外では、重い荷物を持ち上げるなど、首に負担がかかる動作は控えてみてください。 どうしても持ち上げる必要があるときは、腰を曲げてかがむのではなく、膝を折ってかがめば首にかかる負担を減らして持ち上げやすくなります。 正しい姿勢を意識しながら、何らかの動作が必要なときは、首に負担がかからないようご注意ください。 喫煙を習慣化しない 何より注意すべきは喫煙です。喫煙は、全身の毛細血管の血流を悪化させて、椎間板の劣化が起こりやすくなると考えられています。 頚椎椎間板ヘルニアを患っているにも関わらず、喫煙習慣があるのなら、なるべくタバコを吸わないようにしましょう。 もしくは大幅に減らすなど、できる限り禁煙するといった努力を心がけてみてください。 ご存知のように、タバコは万病のもとといわれるため、この機会に禁煙されてはいかがでしょうか。 最近は電子タバコなどもあり、切り替えながら少しずつでも減らしていければベストですね。 頚椎椎間板ヘルニアでやってはいけないこと【まとめ】 ・激しいスポーツを避ける(それ以外のスポーツも要注意) ・重い荷物を持つなどの重労働は避ける ・腰を曲げてお辞儀するようにかがまない(首に負担がかかる) ・猫背、そり腰を避ける(正しい姿勢を知る) ・太らないこと、体重の増加に注意する ・自転車やバイク、自動車の急発進や急停止などに注意する ・スマホを悪い姿勢で見ない(首への負担を意識する) ・禁煙が望ましい 【頚椎椎間板ヘルニアの予防法】 ・正しい姿勢を知って維持する ・腹部で体幹を支えるように意識して姿勢を正す 頚椎椎間板ヘルニアを予防するには、ストレッチ方法を知っておくのもおすすめです。詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。 まとめ|頚椎椎間板ヘルニアは姿勢を意識して負担を減らそう 椎間板が劣化する原因は加齢などを含めてさまざまなので、普段の生活における環境要因(乗り物の運転など)を始め、正しい姿勢を意識することが大切です。 頚椎椎間板ヘルニアになる要因やリスクを避けるために、スポーツでの違和感を放置したり、姿勢が悪いまま過ごしたりしないようにしましょう。 以上のポイントに気をつけることで頚椎椎間板ヘルニアの症状の悪化を防ぐことができるでしょう。 また、つらい頚椎椎間板ヘルニアの治療には、手術せずにヘルニアの根本的な改善が期待できる再生医療をご検討ください。 \ヘルニア治療に有効な再生医療とは/ 再生医療は、患者さまの細胞や血液を用いて自然治癒力を向上させることで、ヘルニアによる痛みやしびれの根本的な改善が期待できる治療法です。 手術では、椎間板や黄色靱帯を切り取る、骨を削ることによって、脊髄神経の通り道を広げます。 しかし、神経にアプローチする治療はいまだに幹細胞(再生医療)のみとなります。 【こんな方は再生医療をご検討ください】 ヘルニアによる痛みやしびれを早く治したい 根本的に治療したいが、手術はできるだけ避けたい 痛み止めやリハビリを続けているが、期待した効果が得られていない 従来の治療では難しかった損傷した神経にアプローチできるため、つらい神経症状の改善・軽減が期待できます。 当院リペアセルクリニックでは、再生医療の具体的な治療法や適応症例について無料カウンセリングを行っているため、お気軽にご相談ください。 まずはヘルニアの治療について無料相談! 頚椎椎間板ヘルニアでやってはいけないことに関するQ&A 頚椎椎間板ヘルニアでやってはいけないことに関して、よくある質問と答えをご紹介いたします。 Q.頚椎椎間板ヘルニアの治療法は? A.頚椎椎間板ヘルニアでは「保存的治療」もしくは「外科的治療」を行います。 保存的治療において、主な治療方法は以下の3つです。 ・薬物治療:鎮痛薬の内服、神経ブロックなど(安静保持を含む) ・牽引治療:頚椎カラー装具で首を固定、首の牽引治療など ・理学療法:マッケンジー法、首のエクササイズなど ただ、保存的治療では顕著な症状改善を見込めず、手や足の筋力低下が続いて悪化するケースもあるかもしれません。 もしくは、スムーズに歩けないなどの歩行障害、尿失禁を始めとする排尿障害を合併する場合には、外科的治療(手術)を検討するケースもあります。 また、近年のヘルニア治療では、手術せずに損傷した神経の改善を目指す再生医療も注目されています。 「自分の症状でも効果が期待できるのか」「まずは再生医療の話だけでも聞いてみたい」という方は、ぜひ当院リペアセルクリニックにご相談ください。 まずはヘルニアの治療について無料相談! 頚椎椎間板ヘルニアの治療法における詳細は、以下の記事で解説しているので参考にしてみてください。 Q.頚椎椎間板ヘルニアの初期症状は? A.初期症状は、主に以下の3つがあげられます。 ・首の痛み(最初期の症状) ・片方の腕や手の痛み、痺れ ・両手の痺れ、感覚障害 進行すると症状が悪化する可能性があります。少しでも違和感があるときは、早い段階で医療機関を受診してみてください。 頚椎椎間板ヘルニアにおける初期症状の詳細は、以下の記事も参考になります。 Q.頚椎椎間板ヘルニアの入院期間・休業期間はどのくらい? A.手術を受けた場合、入院期間の目安は、リハビリなどを含めて10~14日ほどです。休業期間の目安は、2~3週間ほどになります。 頚椎椎間板ヘルニアの入院期間や休業期間の詳細を知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。 Q.頚椎椎間板ヘルニアのリハビリ方法は? A.患者さまの状態や生活習慣に応じて、運動療法や物理療法などを行います。 また、専門家からセルフケアの方法や動作に関するアドバイスも受けられます。 リハビリの目的などを含めて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
2022.04.04 -
- 健康・美容
「高齢になっても元気に過ごしたい」と考えていても、転倒や病気をきっかけに寝たきりになってしまうことは珍しくありません。 寝たきりを防ぐためには、運動、食事、人とのつながりなど、普段の生活習慣が大切です。 この記事では、寝たきりにならないために知っておきたい主な原因と予防のポイントを解説します。高齢のご家族がいる方や、ご自身の将来が気になる方は、ぜひ最後までご覧ください。 また、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 関節の痛みや脳卒中の後遺症など、将来寝たきりにつながる可能性のある症状でお悩みの方は、ぜひ公式LINEにご登録ください。 寝たきりにならないためには日々の生活習慣が大切 寝たきりを防ぐには特別な対策よりも、日々の生活習慣の積み重ねが重要です。 適度な運動や栄養バランスの取れた食事、地域や家族との交流といった習慣が、心身の衰えを防ぎ自立した生活を長く保つことにつながります。 健康で自立した生活を送れる期間を延ばすために、できることから少しずつ取り組みましょう。 寝たきりになる主な原因 寝たきりになる主な原因は、以下の3つです。 認知症 脳卒中 骨折・転倒 上記は、厚生労働省が発表した「介護が必要になった主な原因」の上位でもあり、加齢とともに誰にでも起こり得るものです。(文献1) それぞれの原因が、どのように寝たきりにつながるのかを詳しく解説します。 認知症 寝たきりの主な原因として最も多いのが認知症です。厚生労働省の「令和4年国民生活基礎調査」によると、介護が必要になった原因の第1位は認知症でした。(文献1) 認知症とは、脳の病気や障害などによって、記憶や判断力などが徐々に低下していく病気の総称です。 認知症には、主に以下の4つのタイプがあります。 主な認知症のタイプ 内容 アルツハイマー病 脳の神経細胞が徐々に壊れていくことで、記憶力や思考力が低下する病気 脳血管性認知症 脳梗塞や脳出血などの脳卒中が原因で起こり、記憶力の低下や歩行困難などの症状が現れる レビー小体型認知症 レビー小体と呼ばれる異常なタンパク質が脳の神経細胞に蓄積し、物忘れや時間・場所の感覚がわからなくなる 前頭側頭葉変性症 脳の前頭葉や側頭葉と呼ばれる部分が縮んでしまうことで、感情をコントロールできなくなったり、言葉が出にくくなったりする 認知症が進行すると、今がいつなのか、ここがどこなのかがわからなくなり、人との会話もできなくなります。最終的には、食事や着替えなど日常生活のすべてに介助が必要となり、寝たきりの状態になることもあります。 認知症の早期発見と進行予防のためには、日頃の生活習慣の見直しと家族や医療機関との連携が重要です。 脳卒中 脳卒中は、寝たきりになる原因として、とくに気をつけたい病気です。厚生労働省の「令和4年国民生活基礎調査」によると、介護が必要になった原因の第2位は脳卒中でした。(文献1) 脳卒中とは、脳の血管が詰まる(脳梗塞)、脳の血管が破れる(脳出血・くも膜下出血)などによって、脳の細胞に必要な酸素や栄養が届かなくなり、脳の細胞が損傷を受ける病気の総称です。 脳卒中になると、体の片側が動かなくなる半身麻痺や、うまく話せなくなる言語障害などの症状が現れ、一人で日常生活を送ることが困難になる場合があります。また、重い後遺症により長期入院やリハビリが必要となり、その間に筋力や体力が急激に衰えるリスクもあります。 脳卒中は、脳だけでなく体全体の機能に大きな影響を与える可能性のある病気です。以下のコラムは、脳卒中の前兆について紹介していますので参考にしてください。 骨折や転倒 転倒による骨折は、高齢者が寝たきりになる原因のひとつです。「令和4年国民生活基礎調査」によると、介護が必要になった原因の第3位は、骨折・転倒です。(文献1) とくに太ももの骨である大腿骨の骨折は長期間ベッドで安静にしている必要があり、筋力が低下して介護が必要な状態になるリスクが高くなります。 家の中で転倒事故が起こりやすい場所は次の通りです。 居間:家具の角やコード類 寝室:ベッドからの起き上がり時 玄関:段差や靴の脱ぎ履き時 階段:上り下り時のつまずき 浴室:濡れた床で滑ってしまう 電気コードやカーペットの配置を見直したり、スロープや手すりの設置を検討したりしてみましょう。 さらに、骨粗しょう症の方は骨がもろくなっているため、軽い転倒でも骨折しやすくなります。骨粗しょう症とは、加齢や女性ホルモンの減少、カルシウム不足などが原因で骨の密度が低下し、もろくなってしまう病気です。 骨粗しょう症の原因や予防策について詳しく知りたい方は、以下のコラムをご覧ください。 寝たきりにならないための予防法 寝たきりを防ぐには、日常生活の中で意識的に健康を保つことが重要です。 寝たきりにならないための予防法は、以下の通りです。 生活習慣病の予防 社会活動への参加 適度な運動 口腔ケア 栄養バランスの取れた食事 これらを意識して、できることから少しずつ始めてみましょう。 生活習慣病の予防・対策 寝たきりを防ぐには、糖尿病や高血圧、コレステロールの異常、肥満など生活習慣病の適切な管理が重要です。 生活習慣病を放置すると、認知症や脳卒中のリスクを高める恐れがあります。たとえば高血圧や糖尿病をそのままにしておくと、血管に負担がかかり続けて傷つきやすくなり、脳卒中を起こす危険性が高まります。 生活習慣病の予防策は、以下の通りです。 体重や血圧、血糖値を適正に保つ 減塩を意識したバランスの良い食生活を送る ウォーキング、水泳などの有酸素運動を習慣にする 処方された薬を正しく服用する 定期的な健康診断を受ける リラックスできる趣味を持つ 禁煙する 生活習慣病と寝たきりの原因となる病気には、密接な関係があります。将来も自分らしく元気に過ごすために、毎日の健康管理を大切にしましょう。 社会活動への参加 高齢になると、外出や人付き合いが億劫になりがちですが、人と関わることは脳や身体を活性化する有効な手段です。 外出には、身支度や時間管理、段取りといった一連の行動が求められ、これらが脳を刺激します。また、人と話す、笑い合うといった日常の交流は、やる気や幸福感をもたらすドーパミンの分泌を促し、記憶力や判断力といった働きの維持にも役立ちます。 社会活動の一例は、下記の通りです。 図書館を利用する 映画館やコミュニティセンターで映画を観る 習い事に通う 地域のサロンに参加する ボランティアに挑戦する 大切なのは、無理せず続けられる範囲で他者と関わることです。人とのつながりを大切にし、社会との関わりを持ち続けることが、寝たきりや認知症を防ぐための大きな力になります。 意識して身体を動かす 寝たきりにならないためには、意識して体を動かすことが大切です。転倒を恐れて体を動かさないでいると、筋肉が衰えて転倒や骨折のリスクが高まります。 身体活動が少ない人ほど、わずかな運動でも健康増進効果が期待できます。(文献2) 以下の運動を、無理のない範囲で取り入れてみましょう。 軽いウォーキング(15~30分程度) 週2~3回の筋トレ 椅子に座っての足上げ運動やスクワット ストレッチ ラジオ体操 家事や庭仕事 日常に運動の習慣を組み込むことが、将来の寝たきり予防につながります。 口の健康を保ち噛む力を維持する 口の健康は、寝たきり予防に欠かせない要素のひとつです。 年齢とともに噛む力や飲み込む力が弱くなると、食事がしづらくなり、栄養不足や体力の低下を招くことがあります。実際に、口の機能が少し落ちただけでも、要介護になるリスクや死亡率が高まるという研究報告もあります。(文献3) 口の機能を保つには、日々の歯磨きや定期的な歯科検診で、むし歯や歯周病を防ぐことが基本です。 また、下記のような噛む力や舌の動きを保つトレーニングも効果的です。 パタカラ体操(パ・タ・カ・ラと発音する口の体操) 噛みごたえのある食品(根菜や干し芋など)を意識的に食べる 唾液腺マッサージ 頬の筋肉を鍛える 口の健康を保つことは、食事や会話の楽しみを守るだけでなく、全身の健康や社会とのつながりを保つ上でも役立ちます。できることから、日常生活に取り入れてみましょう。 バランスの良い食事を摂る 寝たきりを防ぐには、栄養バランスのとれた食事が欠かせません。 高齢になると食欲が落ち、たんぱく質やビタミンなどの栄養素が不足しやすくなります。そのため、筋力が落ちて転びやすくなったり、体を動かすのが面倒になったりする場合があります。 寝たきりにならないために意識的に摂取したい栄養素は、下記の通りです。(文献4) 栄養素 主な働きや注意点 摂取例 炭水化物 痩せすぎも太りすぎも心身の衰えにつながる可能性がある ごはん・パン・麺類 たんぱく質 筋肉のもとになる 不足すると転倒や体力低下の原因になる場合がある 肉・魚・卵・大豆製品 ビタミンD 骨を強く保ち、骨粗しょう症の予防に役立つ きのこ類・卵黄・魚類 カルシウム 骨を丈夫に保ち、骨折の予防につながる 小魚・乳製品・緑黄色野菜 食物繊維 腸内環境を整えて便秘を予防する きのこ・海藻・根菜類 ビタミンB2 皮膚や粘膜、爪などの健康を保つ 納豆・乳製品・レバー 食事は1日3食を基本に、主食・主菜・副菜をそろえるのが理想です。また、栄養のはたらきを十分に引き出すためには、軽い運動や筋トレを一緒に行うことも大切です。 さらに、高齢になると喉の渇きを感じにくくなります。脱水を防ぐためにも、意識的にこまめな水分補給を心がけましょう。 毎日の食生活を少しずつ見直すことが、寝たきりを防ぎ、健康寿命をのばすことにつながります。 再生医療 寝たきりになる原因のひとつ脳卒中の予防方法として、再生医療という治療法があります。 再生医療は他の細胞に変化する能力を持つ「幹細胞」という細胞を用いる治療法です。 脳卒中に対する再生医療については、以下のページで症例を紹介しています。ぜひご覧いただき、興味をお持ちの方はお気軽に当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 寝たきりにならないための運動・筋トレ 寝たきりにならないための運動・筋トレ体操を3種類ご紹介します。 転倒や寝たきりのリスクを防ぐために、体調に合わせて無理のない範囲で取り入れて筋力や柔軟性の向上を目指しましょう。 寝たままできる|股関節のストレッチ ベッドの上で寝たままできる股関節のストレッチは、股関節周囲の柔軟性を高め、寝返りや起き上がりの動作がスムーズになる効果が期待できます。 手順は以下の通りです。 仰向けになり、両ひざを立てる 両ひざを左右にゆっくり倒す 10回繰り返す おしりから腰がしっかり伸びていることを意識すると効果的です。また、背中がベッドから浮かないよう、動作はゆっくりと行いましょう。 椅子に座ったままできる|太ももの筋トレ 椅子に座ったままできる膝のばしは、太ももの前側(大腿四頭筋)を鍛え、歩行時の安定性の向上が目指せます。 手順は下記の通りです。 椅子に浅く腰かける 片足を3秒かけてゆっくり前方へ伸ばす 伸ばした状態で1秒間キープ 3秒かけて足を下ろす 左右10回ずつ行う 膝を伸ばしたとき、つま先が天井を向くよう意識しましょう。 立ったままできる|股関節周囲の筋トレ 立ったままできるもも上げは、股関節周囲の筋肉を刺激し、ふらつきや転倒の予防につながります。 手順は以下の通りです。 背筋を伸ばして立ち、片手を壁につける 壁に手をつけた側の脚を、3秒かけて持ち上げて膝を曲げる 1秒間そのままキープする 3秒かけて足を下ろす 左右10回ずつ行う 太ももが床と平行になる高さまで上げ、反動をつけず、ゆっくりと動かすと効果的です。 体操は無理のない範囲で行い、継続することで筋力や柔軟性を保てます。毎日のすきま時間を活用して、寝たきり予防を目指しましょう。 寝たきりにならないための家族の関わり方 高齢者が寝たきりにならないためには、家族の関わり方が大きな影響を与えます。とくに重要なのは、本人のできることを尊重し、生活の中での役割を保ち続けてもらうことです。 家族の方ができるサポートの例は、以下の通りです。 買い物や家事などを本人のペースで任せる 地域の集まりに誘って外出の機会を増やす 手すりや照明などで住まいを安全に整える 必要以上の手助けは、本人のやる気をなくし、かえって寝たきりにつながることもあります。できることは見守り、難しいところだけを手伝う姿勢が大切です。 家族の関わり方しだいで、本人の自立を守り寝たきりの予防にもつながります。 寝たきり予防のカギ|廃用症候群・サルコペニア・フレイル 日々の生活の中で、軽い運動やバランスの良い食事を意識することが、寝たきりにならないための第一歩です。 反対に、何もせずに過ごしていると、加齢や病気をきっかけに筋力や心身の機能が衰え、廃用症候群・サルコペニア・フレイルと呼ばれる状態に陥るおそれがあります。 以下の表で、ご自身やご家族が当てはまるかどうかチェックしてみましょう。 状態名 主な特徴 チェックポイント 廃用症候群 ケガや病気で安静にしているうちに体の機能が低下 数日寝込んでから体力が戻らない 日常動作が面倒になった 食べ物を飲み込みにくい、むせやすい サルコペニア 加齢による筋肉量の減少 瓶のふたが開けにくい 片足立ちができない つまずきやすくなった フレイル 心と体の両方が弱ってきた状態 横断歩道を青信号のうちに渡れない ここ半年で体重が2kg以上減った 一つでも当てはまれば、予防に向けた対策を始めるサインかもしれません。早めに気づき、今からできることから始めてみましょう。 まとめ|寝たきり予防は「今」から始めよう 寝たきりを防ぐには、年齢に関係なく、ふだんの生活を見直すことが大切です。 運動不足、人との関わりの減少、生活習慣病の放置は、将来寝たきりになるリスクを高めてしまいます。体と心の健康を保つために、今できることから少しずつ取り組みましょう。 また、糖尿病や脳卒中などの病気は、再生医療の対象になる場合があります。再生医療とは、患者様自身の細胞や血液を用いて、損傷した組織にアプローチする治療法です。 生活習慣の改善が難しいと感じている方や、脳卒中の後遺症にお悩みの方は、当院までお気軽にお問い合わせください。 参考文献 (文献1) 令和4年国民生活基礎調査IV介護の状況|厚生労働省 (文献2) 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023|厚生労働省 (文献3) 介護予防マニュアル第4版|厚生労働省 (文献4) 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(高齢者)|厚生労働省
2022.04.01 -
- 股関節
- ひざ関節
- 肩関節
- 肘関節
- 手部
「痛み止めにステロイド注射を使う効果は?」 「痛み止めのステロイド注射はどんな副作用があるの?」 ステロイドは、変形性膝関節症や変形性股関節症を始め、各種関節症の保存療法(薬物療法)で、痛み止めとして使われているメジャーな薬です。 ステロイドは痛み止めの薬として効果を発揮します。ただ、ステロイドの副作用が気になり、怖いと感じる方もおられるはずです。 今回は関節症の痛み止めに使われる機会が多いステロイド注射の効果、副作用などをご説明いたします。 最後まで読んでいただければ、ステロイド注射を使うメリットとデメリットを理解できるので、治療を受けるべきか迷われている方は参考にしてみてください。 関節症に痛み止めのステロイド注射を使う効果は2つ 関節症に痛み止めのステロイド薬(ステロイド注射)を使う効果を2つ解説します。 ・鎮痛効果 ・抗炎症作用 鎮痛効果 ステロイド薬を使うメリットには、鎮痛効果による痛みの緩和があげられます。 各種関節症の発症初期には、保存療法(薬物療法)がおこなわれるケースが一般的です。 ステロイド注射は痛みを緩和させる目的で、以下のようなときに使います。 ・生活を送るときの不自由さを減らすため ・運動療法による治療効果を高めるため とくに運動療法を行うときに痛みがあると、痛む部位を守ろうとするあまり、ほかの筋肉や組織に力が入りがちです。結果としてほかの部位まで痛める可能性もあります。 保存療法を有効に進めるためにも、ステロイド注射で痛みを減らす必要があるのです。 抗炎症作用 ステロイド薬には、炎症(痛みの原因)を和らげる抗炎症作用があります。 痛みの原因物質の産生を抑えられると、鎮痛(痛みを抑える)効果が期待できるのです。 各種関節症の保存療法では、初期の段階ではステロイド注射で痛みを緩和しながら炎症を防ぎ、リハビリなどの運動療法における効果を上げる目的で使います。 痛み止めのステロイド注射に関する副作用 ステロイドに悪いイメージがあるのは、副作用があると聞いたからではないでしょうか。 実際に、ステロイド注射の副作用のひとつに「骨が脆くなる」点があげられます。そのため、事前の骨の検査や年齢によっては、ステロイド治療を行えない場合があるのです。 以下で、副作用における一例をまとめています。 【ステロイドの副作用】 ・ステロイド注射を長期間、あるいは短期間に多く投与された場合 →股関節の「大腿骨頭」、肩関節の「上腕骨頭」、 「膝関節」の骨への血流が阻害され、骨の組織が壊死する危険性がある ・短期的に大量に使ったり、長期的に使ったりした場合 →骨の代謝やホルモンの産生に影響を与える ・長期的に使うと骨を脆くする危険性がある →「大腿骨骨頭壊死」「上腕骨頭壊死」「膝関節骨壊死」 といった困難な症状を招く可能性もある 【骨粗鬆症のリスク】 ・ステロイド注射は短期間に多くの投与、あるいは長期間使うと、 骨やホルモンの代謝に影響を与えかねない 【感染症になりやすい】 ・ステロイド注射は免疫を抑制するため、 長期間、関節内に投与を行うと「化膿性関節炎」になる危険性がある ・関節炎になった場合、抗生物質の内服による治療や、 重症化した場合は、関節内の洗浄が必要になる しかし、ステロイド注射は、変形性膝関節症や変形性股関節症、肩の関節症などの痛みに対して鎮痛、消炎(炎症をとりさること)の改善効果が得られます。 デメリットを過大評価すると使うのをためらってしまいがちです。 先にステロイド注射を使うデメリットを知っておくと、ステロイド治療に対する判断の一助となり、医師の診断や意見を理解する上でも役立ちます。 医療機関などで医師の管理のもと、適切にステロイド治療を行えると、必要以上に怖がる必要はなくなるはずです。 【長期使用はNG】痛み止めのステロイド注射は根本治療にならない ステロイド注射は、関節症の痛みで困っている場合に高い鎮痛効果が期待できます。 ただ、副作用があるステロイド注射を長期間、継続して使うのはおすすめできません。短期間でも大量に使うのは避けましょう。 また、ステロイド治療は、骨の変形や軟骨のすり減りなど、関節の状態を修復する効果はありません。病気の進行を止めるなど、根本的な治療を目的としていないのです。 たとえば、変形性関節症は進行する病気です。変形性関節症の人がステロイド治療を行っても、最終的には手術が必要となる可能性があります。 関節症におけるステロイドでの治療方法について 関節症でのステロイド治療は、内服薬と注射があります。 症状や状態にもよりますが、内服薬で痛みに対する効果が感じにくくなった場合に、関節内にステロイド薬を直接注射する流れが一般的です。 ステロイド薬を関節に注射すると、抗炎症作用により痛みを改善します。ただ、何度も申しますが、長期的な使用や短期の大量投与は、副作用のリスクがあるので避けましょう。 また、関節症の症状が進行するとステロイドの効果が減少して、外科的治療として手術の選択を迫られるかもしれません。 しかし、近年はステロイド注射以外にも、手術や入院を避けられる再生医療の治療方法もあります。 再生医療の幹細胞治療では、膝や股関節、肩などの治療において、自身の幹細胞を培養して関節注射を行う流れです。 まとめ|関節症のステロイド注射は痛み止めに効果がある ステロイド薬は、内服や痛む関節に直接注射する方法で使います。鎮痛効果と抗炎症作用により、痛みを緩和させる効果があります。 ただし、ステロイド注射はメリットがある反面、副作用もあるので注意が必要です。短期的な大量投与や、長期的なステロイド治療は避けるべきです。 ステロイド注射は問題のある部位を修復できないので、根本的な解決はできません。 ただ、医療機関などで医師の管理下で治療するなら、必要以上に怖がる必要はないでしょう。ステロイドの特性を知った上で、治療に使っていただければと思います。 また、関節症に関わる治療のひとつとして、再生医療もあります。ステロイド治療以外で、根本的な治療を探している方は、再生医療の治療方法も視野に入れてご検討ください。 痛み止めのステロイド注射に関するQ&A 痛み止めのステロイド注射に関して、質問と答えをまとめています。 Q.関節症における痛み止めのステロイド注射は保険適用ですか? A.はい、一般的には保険適用になります。 ただし、症状や治療方法によっても変わる可能性があるので、詳細は医療機関でご確認ください。
2022.04.01 -
- 股関節
- 変形性股関節症
「病院で股関節を人工関節に置き換える手術をすすめられた」「変形性股関節症の手術が決まっている」といった方の多くは、手術後の生活が気になるのではないでしょうか。 股関節の変形などの治療として手術で人工股関節を入れても、すべてが元通りになるわけではありません。 手術後は、股関節に負担がかからないように以下のような動作や姿勢に気をつけて生活する必要があります。 本記事では、人工股関節手術後の生活で気をつけるべきことを解説します。 早期回復のためのポイントや仕事復帰までの目安もまとめているので、人工股関節手術を控えている・検討している方は、ぜひ参考にしてください。 人工股関節手術後の生活における注意点 人工股関節手術後の生活では、過度な運動や股関節に大きな負担がかかる姿勢を避ける必要があります。 具体的には、以下の6つに注意して過ごしましょう。 それぞれ詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。 以下の記事では、人工関節や手術のリスクについて解説しています。あわせてご覧ください。 【医師監修】人工関節とは|メリット・デメリットや置換術について詳しく解説 【医師監修】高齢者が股関節手術を受けるリスクを解説|年代別で控えた方がいい理由も紹介 適度に歩く時間をつくる 人工股関節手術後の歩行に関して、とくに制限はありませんが、以下の点に注意しましょう。 筋力の低下を防ぐため歩く時間を作る 歩行時は革靴ではなく滑り止めがついた運動靴を履く 翌日まで疲労が残る場合は、運動量が多すぎる可能性が高いため、ペースを調節してください。 股関節に負担がかかる日常動作は避ける 人工股関節手術後の生活では、股関節を曲げて膝を内側にねじるような姿勢は負担が大きいので避けましょう。 とくに股関節の屈曲などの複合動作が続くと、股関節に大きな負担がかかって脱臼や骨折の原因になります。 人工股関節の脱臼を防ぐためにも、日常生活の中では以下の点に注意が必要です。 あぐらや横座りなどを避ける ズボンや靴下などを履くときは床ではなく椅子に腰掛ける ただし、座るときにどの程度の注意が必要かは、手術方法によって異なります。 近年は筋肉や腱を切らずに済む方法が増え、人工股関節手術後の脱臼のリスクそのものが低下しています。 手術後に避けるべき動作や姿勢については、医療機関や主治医に確認しましょう。 過度な運動やスポーツを避ける 人工股関節手術後は、過度な運動やスポーツを避ける必要があります。 手術をしたからといって、ハードな運動ができるわけではありません。 過度な運動は股関節の脱臼やゆるみを起こしてしまう可能性があるため、注意が必要です。 ただし、適度な運動は、股関節周りの筋肉を鍛えることにつながるため、無理のない範囲で体を動かすことをおすすめします。 実際に、人工股関節手術後の生活で、ハイキングやウォーキングなど、さまざまな運動を楽しんでいる人もいます。 手術後の生活で無理なくできる運動は、水泳やウォーキングなどです。 ただし、水泳の場合、股関節に負担がかかる平泳ぎよりもバタ足などがおすすめです。 また、ウォーキングは15分程度の軽い運動にとどめるなどの配慮が必要です。 重いものを持たないようにする 人工股関節手術後の生活では、日常的に重たいものを持たないように注意しましょう。 重いものを持ち上げたり、持って移動したりすると、股関節に大きな負担がかかります。 もちろん、しゃがんだ姿勢から荷物を持ち上げることも避けましょう。 軽い荷物であれば大丈夫ですが、足腰を使わなければ持ち上がらないほどの重い荷物であれば、家族や友人に手伝ってもらって運んでください。 とくに家族には、人工股関節手術ことを伝え、手術後の生活についてよく理解してもらっておくと安心です。 入浴時は膝を大きく曲げないようにする 人工股関節手術後の入浴時は、とくに身体を洗う姿勢に注意してください。 ほかにも、以下の点に気をつけると股関節への負担を減らせます。 シャワーチェアを使用して椅子に腰掛けた姿勢で身体を洗う かがみこまなくて済むようにタオルではなく柄が長いブラシを使用する 浴槽で両足を伸ばせない場合は浴槽用の小さな椅子を使用する 椅子を使うスペースがない場合は、浴槽の縁にも腰掛けることも可能です。しかし、足先を洗う際などは無理にかがみこむと脱臼する可能性が高いため注意しましょう。 なお、浴槽への出入りしやすくするためには、浴室の壁に手すりを取り付けると便利です。 転倒を防ぐための生活環境を整える 人工股関節手術後は、人工股関節の破損を避けるためにも転倒に気をつけましょう。 手術後の生活では、人工股関節とうまく付き合っていく意識が必要です。 転倒は、人工股関節の破損だけではなく骨折の原因にもなります。 骨折によって歩行が難しくなると、手術をした意味がなくなってしまいます。 手術後は、外出の際に階段を避けてエスカレーターやエレベーターを利用したり、足場の悪いところは極力歩かないようにしたりするといった心がけが必要です。 人工股関節手術後から仕事復帰までの目安期間 人工股関節手術後に仕事復帰できるまでの期間は職種によって異なり、事務職であれば、数週間から1カ月程度で復帰が可能です。 しかし、業務上でしゃがんだりかがんだりする動作を伴う場合は、復帰までに時間がかかります。 人工股関節手術後の仕事復帰までの目安は、以下の通りです。 事務職 2~4週 立ち仕事(半日) 4~6週 立ち仕事(1日) 6~8週 ドライバー・配送業 2~3カ月 激しい肉体労働が中心の仕事 3カ月以降 ただし、手術後の回復には個人差があるため、まずは主治医に相談してから仕事に復帰する計画を立てましょう。 人工股関節手術後に生活へ復帰するためのポイント ここでは、人工股関節手術後の生活において、早期回復のために工夫すべきポイントを紹介します。 股関節に負担の少ない生活スタイルに変える 人工股関節手術後の生活では、股関節に負担のかかる姿勢を避ける必要があります。 たとえば、正座や足を前に投げ出して座る姿勢は手術後でも問題ありませんが、体育座りや横座りなどは脱臼のリスクが高まります。 和式トイレなどでしゃがみ込む、座布団に座る、重いものを持ち上げるなどの動作は、意識して避けましょう。 人工股関節手術後は、できる範囲で椅子や洋式トイレを利用するようにして、生活スタイルを切り替えていくことをおすすめします。 また、布団を敷いて寝ている方は、ベッドにしたほうが股関節に負担をかけずに済みます。 体重管理をする 人工股関節手術後の回復を早めるためには、体重管理もポイントです。 体重が重いだけでも、股関節には大きな負担がかかるため、適度な運動をして体重管理しましょう。 標準体重よりも重い場合や、普段から身体が重いと感じている場合は、思い切ってダイエットを始めることもおすすめです。 ただし、単に体重を減らすだけではなく、筋力の維持にも努める必要があります。手術後は徐々に股関節を慣らすようにして、1日15分程度のウォーキングなど軽い運動をしましょう。 適切なリハビリテーションを続ける 人工股関節手術後の回復を早めるためには、適切なリハビリテーションを続ける必要があります。 人工股関節手術後は、筋力が低下している状態です。 とくに手術前から痛みで動きが制限されていた場合は、筋力の低下が顕著になる傾向があります。 人工股関節手術後に目指す生活レベルにもよるものの、筋力を回復させるためには、手術後も長期間にわたってリハビリテーションを続けることが大切です。 医療機関や主治医に相談しながら、納得のいく治療計画を立てましょう。 人工股関節手術後の生活の注意点に関するよくある質問 人工股関節手術後の日常生活の注意点に関するよくある質問と回答を紹介します。 人工股関節手術後の生活で気を付けることは? 人工股関節手術後の日常生活では、股関節に負担がかからないように気を付けましょう。 近年では人工股関節の耐久年数が向上していることから、日常生活だけでなく運動をする方も増えてきています。 しかし、人工関節は使えば使うほど摩耗していくため、股関節に負担がかかる動作を続けることで人工股関節の寿命が短くなっているといえます。 そのため、人工股関節を少しでも長持ちさせるためにも、術後の日常生活では股関節に負担がかからないように注意することが重要です。 自宅でもリハビリは必要ですか? 基本的に退院後でも自宅でリハビリは継続した方が良いです。 必要なリハビリは患者さまの目的によって異なるため、自分に合ったリハビリを続けましょう。 例えば「趣味のスポーツを再開したい」という場合には、そのスポーツで股関節にかかる負担を軽減できるように筋力トレーニングやストレッチが必要です。 しかし、自宅付近の移動ができれば良いという方は、スポーツをやりたい人ほどリハビリを頑張る必要はないといえます。 日常生活をおくる上で影響がない程度に筋力や柔軟性の維持に努めましょう。 人工股関節手術後にやってはいけないスポーツは? 人工股関節手術後は、股関節を捻るような以下のスポーツは控えましょう。 サッカー バスケットボール 野球 バレーボール テニス 水泳 柔道 ラグビー 上記のようなスポーツは、股関節を捻る際に大きな負荷がかかるため、人工関節の摩耗や破損につながる可能性が高いです。 しかし、筋力や柔軟性を低下させないために適度な運動は推奨されています。 どの程度の運動ができるかは個人差があるため、主治医と相談した上で行いましょう。 人工股関節手術後に杖はいつまで使うべき? 人工股関節手術後は、3ヶ月前後を目安に杖を使用しましょう。 術後に転倒してしまうと人工股関節の脱臼や損傷のリスクがあるため、転倒防止に杖の使用が有効です。 とくに混雑しやすい場所や長時間歩く場合などの状況をみて、3ヶ月を過ぎても杖を使用した方が良いでしょう。 人工股関節手術後の生活では関節に負担をかけないようにしよう 今回は、人工股関節手術後の生活で気をつけるべきことや工夫すると良いことなどを解説しました。 基本的に人工股関節手術後の生活では、人工股関節に配慮さえすれば大きな支障はきたさないでしょう。 しかし、人工股関節とうまく付き合っていく必要があるため、どうしても注意や工夫をしなければならない場面も出てきます。 なお、手術後の生活における注意事項や運動、リハビリテーションなどに関しては、必ず主治医の指導を受けるようにしてください。 ▼ 立ち上がり動作における股関節への負担を減らすポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。
2022.03.31 -
- ひざ関節
ウォーキングが習慣になっていると、膝が多少痛くても運動したくなる方も多いのではないでしょうか? なかには、「少し歩いた方が痛みが和らぐ」と考える方もいるかもしれません。 しかし膝が痛い時は、無理せず安静にするのが大切です。 この記事では、膝が痛い時の対処法や、痛みの抑え方などを解説します。ぜひ参考にご覧ください。 膝が痛いときはウォーキングせずに休む 膝が痛いときは、重症になることを予防するためにもウォーキングせずに休みましょう。 膝に痛みを感じる原因に、急激な方向転換や、度重なる負担からきた筋肉や靭帯の損傷、骨への衝撃が関節内部まで及ぶことによって、膝の故障に加えて半月板損傷や滑液包炎を発症していることが考えられます。 また、体の防御反応である「炎症」が起きている可能性もあります。 炎症がある場合は、ウォーキングなど軽い運動であっても炎症が回復するまで控えるのが賢明でしょう。 では、炎症はどのように判断すれば良いのでしょうか? これを判断する基準は、5つあります。それは腫脹、疼痛、発赤、機能障害、熱感というものです。 膝の炎症を判断する基準 膝の炎症を判断する基準は、以下の通りです。 腫脹 疼痛 発赤 機能障害 熱感 炎症が起きると、傷めた箇所の毛細血管が広がり、局所的に血の流れが増大することで発赤や、熱感がみられるようになります。 また、血液が血管外へ漏れ出すことで組織が腫れ、傷めた箇所が圧迫されることで痛みを感じます。 すると痛みにより思うように体を動かせない機能的な障害が起こります。そして炎症反応の過程で血管が拡張します。 上記の判断基準はあくまで、このような状況になった場合の医療機関を受診するキッカケにしていただくものです。 炎症を感じたら素人判断せずに医師の診断を受けましょう。 以下の記事では、膝の痛みによくある鵞足炎(がそくえん)という疾患について詳しく解説しているので、合わせてご覧ください。 膝痛の慢性化に注意 膝を傷めた場合、まずは冷やすことで血管を収縮させ、腫れや炎症の広がりを抑えることが推奨されています。 尚、炎症が起きているのにも関わらず、運動を続けたり、治りきる前の早すぎる復帰には十分、気をつけたいところです。 注意しなければ炎症が長引くだけでなく、傷めた箇所の修復が追いつかず「いつまでたっても痛みが取れない」という痛みの慢性化につながってしまいます。 ウォーキングで起きる膝痛の治し方 ウォーキングで起きた膝の痛みに対しては、以下の対処で回復が期待できます。適切なケアで症状の改善を目指しましょう。 発症直後はただちに冷却する ストレッチに取り組む 痛みが強い場合は病院で診察を受ける ウォーキングの再開時はテーピングをおこなう とくに発症直後にしっかりと冷やすのは重要です。 それぞれ詳しく解説するので参考にしてください。 発症直後はただちに冷却する ウォーキングのなかで膝に顕著な痛みを感じたら、患部を冷やしましょう。 受傷後、2〜3日ほど、できるだけ冷やすようにすれば、炎症反応を抑えられます。 1回あたり15~20分で、1日に2〜3回ほど冷却するのがおすすめです。 冷却には、水に濡らしたタオルや氷枕などを活用しましょう。 アイスノンなども便利です。 急性期(2〜3日)が過ぎ、腫れや強い痛みが落ち着いてきたら、今度はホットパックや長めの入浴で体を温めましょう。 血流をうながし、回復を促進します。 なお、「冷やす」「温める」の順番を間違えると逆効果なので注意しましょう。 ストレッチに取り組む 痛みがある程度落ち着いてからは、下半身のストレッチに取り組むのがおすすめです。 大腿四頭筋などが刺激されると、血流がよくなり、回復が早まります。ウォーキング代わりの運動にもなるでしょう。 例えば以下のようなストレッチは効果的です。 1.壁に片手をつく 2.片足の膝を上げて、つま先を手で掴む 3.そのまま体の内側に、足を引き寄せる 4.姿勢を30秒ほどキープする 5.1から4を3セット繰り返す ストレッチで、膝に負担を抱えず、大腿四頭筋などの筋肉を刺激し、回復を促進できます。 痛みが強い場合は病院で診察を受ける 痛みが落ち着かない場合は、重大な怪我を負っているかもしれません。 その場合は病院の受診をおすすめします。 軽度の炎症なら、数日冷却したり、体を温めたりする過程で痛みが引きます。 それでも痛みが続く場合は、より深刻な問題が隠れている可能性があります。 半月板損傷、靭帯の断裂、軟骨の損傷など、様々な原因が考えられるため、適切な診断と治療が必要です。 なお、膝の痛みが強い場合は、変形性膝関節症も疑われます。 あわせて以下の記事もご覧ください。 ウォーキングの再開時はテーピングをおこなう 痛みが引き、ウォーキングを再開する際、患部にテーピングを巻きましょう。 痛みが引いても、患部には炎症が残っており、再度刺激すると再発する可能性があります。 テーピングで関節の不必要な動きを制限し、膝への負荷を軽減することで再発を防ぎます。 適切なテーピングは関節を安定させ、痛みの原因となる過度な動きを抑制します。 なお、テーピングは自身でなく、専門家に巻いてもらうのを推奨します。 たとえば整形外科や接骨院では、技術者による正確なテーピングを実施できます。 ウォーキングのための膝痛予防トレーニング 痛みが慢性化してしまった人や、「変形性膝関節症」のように、膝に痛みが出やすい方は無理して運動を続けると、かえって膝の状態が悪化します。 運動を行う際には、痛みを我慢しながら行うのではなく、痛みなくできる運動を取り入れることがおすすめです。 いずれの運動も始めるときや、終わりには、ストレッチなどで身体をほぐすことが非常に効果的です。 また、運動が不安な場合は、膝へサポーターを着けて支えてやれば不安なく動けるかもしれません。 膝の負担が少ないトレーニング「等尺性運動」 膝に痛みを感じるタイミングのほとんどが、立ち上がる時、動き出しなどの膝に体重をかけた時です。 そんな方におすすめの運動が、座りながらできる大腿四頭筋を使う運動です。 椅子に座ったまま片方の膝を伸ばしたままキープします。 この方法は膝へ体重による負荷をかけずに大腿四頭筋のトレーニングが行えます。 このように関節を曲げ伸ばしせず、筋肉を収縮させる運動方法を「等尺性運動」といい、負担なく行えるのが特徴です。 軽度な運動で痛みを感じる方にはおすすめとなる運動方法です。 プールの浮力を活かしたウォーキングも有効 プールに入ることで体へ浮力が生まれます。 プールの深さにもよりますが、浮力は体重による負荷を50〜70%程度減らすことができます。プールでのウォーキングは膝に痛みを抱えている方におすすめの運動方法です。 特に地上でのウォーキングでは痛みを感じるけれど、椅子を使って行う等尺性運動では物足りない。そんな方におすすめの運動方法です。 リハビリを兼ねた低負荷のウォーキング リハビリを目的とした低負荷のウォーキングも有効です。 時間や歩数に目標を定めず、膝が痛まない距離と強度でウォーキングに取り組みましょう。 また、斜面や未舗装の実を含むルートは避けるのが賢明です。 変形性膝関節症がある場合は、個人の状態に合わせて歩行量を調整することが重要です。 痛みが出ない範囲で徐々に歩行量を増やし、症状に応じて医師や理学療法士の指導を仰ぐようにしましょう。 まとめ:膝が痛い時は本格的なウォーキングを避けて安静に ここまで膝の痛みを改善する目的でリハビリをしている中、そのための運動療法であっても膝が痛くなってきたという場合の対処法と、そもそも膝に負担をかけない運動について解説しました。 膝に痛みを感じる場合は、炎症が治るまで運動は休みましょう。 炎症が起きているかどうかは5つの徴候をもとに判断し、急性期には2〜3日冷やし、その後は温めることで回復を促進します。 もし2〜3日経過しても強い痛みを感じる場合などは、医療機関、病院等の整形外科を受診し、検査を受けるなど、その指示に従われることをおすすめします。 また、その際、運動方法などの助言を得たり、サポーターなどの装具のアドバイスを受けても良いでしょう。 痛みが慢性化していたり、変形性膝関節症の方は、運動の度に痛みを感じたり、痛みが出やすい状態になります。 痛みがあるときは無理は禁物です。 それでもで早期回復に向けて運動療法に取り組む場合は、今回紹介した椅子で行う等尺性運動、プールで行う運動、ウォーキングに、ストレッチを取り入れ、膝の痛みと相談しながら適切な強度で運動を選択し、膝への負担を減らして行うようにしてください。
2022.03.30 -
- ひざ関節
- 脊椎
- 股関節
- 肩関節
- 肘関節
- 手部
レントゲン検査やCT検査で股関節の痛みや違和感の原因が特定できない場合、MRI検査が必要となるケースがあります。 MRI検査では、レントゲンやCTでは映し出せない神経や筋肉の異常を詳しく調べられるからです。 本記事では、股関節に異常がないかを調べるMRI検査について詳しく解説します。 MRI検査で発見できる病名・疾患や、MRIの撮り方も紹介しているので、股関節の痛みや違和感に悩み詳しい検査を検討されている方は参考にしてみてください。 MRIを含む股関節を調べる画像検査3種【費用相場】 股関節の異常を調べるときに実施される画像検査は、主に以下の3種類です。 レントゲン検査 CT検査(Computed Tomography) MRI検査(Magnetic Resonance Imaging) 検査の内容や費用をそれぞれ見ていきましょう。 1)レントゲン検査 レントゲン検査は、多くの方にとってなじみのある放射線の一種であるエックス線を用いた検査方法です。短時間で簡単におこなえますし、苦痛もほとんどないため、まずはレントゲンを撮る病院が多いかと思います。 レントゲン検査は、骨の状態、部分を詳しく見るのに適しています。 たとえば骨折や、骨の変形などがその代表です。しかし、筋肉・軟骨・神経などの骨より柔らかい組織は撮影できません。 最近はデジタル化の影響で線量が格段に少なくなっているため通常の検査であれば問題はありません。ただ、放射線を用いる検査ですので、何度も繰り返して検索をおこなうなどの場合は被曝の可能性については気になるところです。 【検査費用の目安】 検査費用:600〜2,000円 ※撮影枚数2枚で3割負担の料金を想定 2)CT検査(Computed Tomography) CT検査は、レントゲンと同じエックス線を用います。 このエックス線をあらゆる方向から照射することで、体の輪切りした画像撮影が可能になります。レントゲンと違って体の内部まで輪切りにした状態で確認ができます。 輪切り画像を重ね合わせて他の断面の画像を構築したり、三次元(3D)の立体画像で確認したりできる検査です。 レントゲン検査よりもさらに詳しく骨の状態を評価できますが、レントゲンと同じく筋肉・軟骨・神経などの骨より柔らかい組織については判断しにくい特徴があります。 【検査費用の目安】 検査費用:5,000〜15,000円 ※3割負担の料金を想定 3)MRI検査(Magnetic Resonance Imaging) MRI検査とは、大きな磁石(磁場)を利用して体の内部を画像化する検査です。 レントゲン検査や、CT検査ではわからない筋肉や神経などの柔らかい組織を写し出す作業を得意としています。また、何より放射線を使用しないため被曝もなく、患者さんの人体に無害な検査という点で優れています。ただ、装置自体が大きく、とても高価なため、大学病院をはじめとした一部の施設にしか配置されていません。 また、誰でもできる訳ではありません。仕組みとして非常に強力な磁石を用いた装置なので、体内に金属があると検査できない場合があります。 MRI検査の注意点はこちら▼ 【検査費用の目安】 検査費用:5,000〜17,000円 ※3割負担の料金を想定 股関節のMRI検査でわかる主な3つの病名 ここでは、MRI検査で発見できる主な股関節の疾患を3つ紹介します。 ・変形性股関節症 ・関節リウマチ ・大腿骨頭壊死 順番に見ていきましょう。 変形性股関節症 変形性股関節症とは、股関節にある軟骨がすり減って、骨が変形する疾患です。変形性股関節症を発症し、症状が進行すると股関節に痛みが生じます。 また、股関節の可動域が制限されるようになり、立ち上がる動作や靴下をはく動作などに支障をきたすようになります。 変形性股関節症の詳細はこちら▼ なお、変形性股関節症の治療には、人間の自然治癒力を活用した「再生医療」が有効です。 幹細胞を股関節に注射すれば、すり減った軟骨が再生されます。徐々に痛みが軽減し、手術を回避できる可能性が高まります。 期待できる治療効果が知りたい方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にご相談ください。 関節リウマチ 関節リウマチとは、免疫システムの異常により、炎症を起こし痛みや腫れが生じる疾患です。股関節で発症した場合、リウマチ性股関節症と呼ばれます。 症状が進行または慢性化すると、関節が変形したり、こわばり・痛みによって日常生活に支障をきたしたりします。 また、炎症による発熱や、免疫システムのエラーによる臓器障害なども発生する可能性があるので、視野を広げた治療アプローチが必要です。 関節リウマチの詳細はこちら▼ 大腿骨頭壊死 大腿骨頭壊死は、股関節を形成する骨の一部である大腿骨頭への血流が低下して骨組織が壊死する疾患です。原因が不明な場合は「特発性大腿骨頭壊死」と呼ばれ、難病に指定されています。 症状が軽度で壊死の範囲が狭い場合は、経過観察も可能です。 しかし、壊死範囲が広く、症状が著しく進行している場合は、骨切り術や人工股関節置換術の手術が視野に入ってきます。 大腿骨頭壊死の詳細はこちら▼ 股関節を調べるときのMRIの撮り方 股関節を調べるときのMRIの撮り方を以下の表にまとめました。検査の流れを把握しておきたい方は参考にしてみてください。 流れ 検査内容 1.磁性体の装飾品を外す 磁場を発生させるMRIの故障の原因となるため、アクセサリーや時計などの金属類は事前に外しておく 2.検査着に着替える 必須ではないが安全性を考慮して推奨されている(参考1) 3.ヘッドホンや耳栓を装着する 検査中に騒音が発生するため、専用のアイテムで耳をふさぐ 4.ベッドに横たわる 指示に従って体勢を整える。撮影部位を固定する必要があるため患部によって多少体勢が変わる 5.検査開始 トンネル型の機械に入って検査を受ける。検査時間は撮影部位や撮影方法にもよるが、20〜45分 検査結果は、早くて当日中に出ます。詳細な分析を要する場合は、7〜10日ほどかかります。 MRI検査の全体像を解説した記事はこちら▼ まとめ|股関節に異常を感じたらMRI検査を検討しよう MRI検査は、レントゲン検査やCT検査ではわからない筋肉や神経などの組織の異常を詳細に映し出せます。 原因がはっきりわからない痛みや違和感が股関節に現れたら、MRI検査を受けて病名や疾患名を調べると良いでしょう。 早期に原因がわかれば、適切な治療を開始して早い回復を目指せます。 変形性股関節症を含む膝の痛みに対する根本的治療には「再生医療」を推奨します。再生医療は、人間の自然治癒力を活用した最新の医療技術で、すり減った膝軟骨の再生を図ります。 「再生医療に興味があるけど具体的なイメージがつかめなくて不安…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 股関節のMRI検査に関するよくある質問 最後に股関節のMRI検査に関するよくある質問と回答をまとめます。 MRIの画像に映る白い影は何ですか? MRI画像に映る白い影の原因は、以下のように複数考えられます。 ・小出血 ・骨髄の浮腫 ・組織や骨の損傷 ・レントゲンには映らないような微小な骨折 医師の話を聞いて、白い影の正確な原因を確認しましょう。 股関節のMRI検査で異常なしでも痛みが生じるのはなぜですか? 小さな組織の損傷は、MRIに映らない場合もあります。そのため、実際には損傷が起きていても、検査結果では「異常なし」と診断されるケースもゼロではありません。 また、股関節の靭帯が緩んで、痛みを伴う場合もあります。靭帯の緩みはMRIでは確認が難しく、検査では異常が見つからないケースもあります。 【参考文献】 参考1:http://fms.kopas.co.jp/fmdb/JJMRM/27/4/230.pdf
2022.03.30 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 膝の内側の痛み
医療用の膝サポーターには、保険適用のものと、自費となるものがあります。 保険適用される膝サポーターは、国が定める条件を満たしたものに限り、それ以外は自己負担の対象です。 本記事では、医療用膝サポーターにおける保険適用の条件や払い戻しの申請方法について解説しています。膝の痛みや違和感に悩み、膝サポーターの購入を検討中の方は、参考にしてみてください。 医療用の膝サポーターが保険適用になる条件【該当しない場合は自費】 医療用の膝サポーターが保険適用になるには、国が定める一定の条件を満たす必要があります。 保険適用の条件は以下の3つです。 ・完成品であること ・疾病または負傷の治療遂行上必要なものであること ・オーダーメイドで製作した場合のものと同等もしくはそれに準ずる機能が得られるものと認められるもの 参考:厚生労働省|リスト化に当たってのリスト化の対象及び基本的な考え方について これらに該当しない場合は、自費で購入することになります。 以下は、膝サポーターを使用する可能性が高い疾患です。※疾患名をクリックすれば詳細記事をチェックできます ・変形性膝関節症 ・前十字靱帯損傷 ・後十字靭帯断裂 ・半月板損傷 このような膝の疾患がある場合、医療用サポーターの使用を医師に相談してみましょう。 整形外科や病院で処方される医療用膝サポーターは保険適用の可能性が高い 整形外科や病院で処方される膝サポーターは、医療用として国から認められているものが多いです。そのため、保険適用で購入できる可能性が高いといえます。 一方で、市販のサポーターは、医療機器としての認可を受けていないものも多く存在します。 保険適用のサポーターを利用したい方は、まずは医師に相談して、手配できるかどうか確認してみると良いでしょう。 医療用膝サポーターの価格表 医療用膝サポーターの価格については、国が公表している以下の資料に詳しく記載されています。 参考:厚生労働省|療養費の支給対象となる既製品の治療用装具 資料では、以下のような情報を確認できます。 ・製品名 ・メーカー名 ・対象疾患・症状の適応例 ・装具の機能・目的 ・装具の基準価格 価格が気になる方は、資料を一度確認してみてください。製品の比較検討もできるため、購入時の参考になるでしょう。 医療用膝サポーターが保険適用になった場合の申請方法 医療用膝サポーターが保険適用になった場合、先に立て替えて支払い、その後に払い戻しを受ける仕組みです。 払い戻しを受けるには、健康保険課や特別出張所の窓口で申請をおこないます。 以下は、申請時に必要な書類の一例です。 ・保険証 ・内訳がわかる領収書 ・医師の診断書(意見書) ・振込口座の確認できるもの ・療養費支給申請書兼請求書(都道府県の役所で手配可能) 提出先の都道府県によって、提出書類や申請の流れが異なる場合があります。手続きがスムーズに進むよう、事前に申請方法を確認しておきましょう。 なお、払い戻しにはおよそ3カ月かかります。 まとめ|医療用膝サポーターが保険適用になる条件を知って医療費の負担を抑えよう 医療用の膝サポーターは治療を目的としたものなので、市販のものより性能が良い商品が多い傾向にあります。 国が公表している資料に、保険適用のサポーターが一覧で紹介されているので、購入する際は参考にしてみてください。 なお、しばらくサポーターを使用しても効果が実感できない場合は、病院の受診を検討してみてください。症状が進行している可能性もあるためです。 自分に合った病院を探している方は再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』への受診をご検討ください。再生医療とは人間の自然治癒力を活用した最新の医療技術です。すり減った軟骨を再生し、膝の痛みを軽減させる効果があります。 本来なら手術しなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。
2022.03.30 -
- 健康・美容
「骨粗しょう症が心配」「関節痛が気になる」と悩んでいませんか。骨が弱くなる大きな原因はカルシウムの不足ですが、他の栄養素によるサポートも丈夫な骨を作るためには欠かせません。また、生活習慣の見直しも大切です。 本記事では、社会人や高齢者が骨を強くするための食事・生活習慣を医師が紹介します。骨のために避けたい食事・生活習慣もお伝えするので、普段の生活を見直し丈夫な骨を作っていきましょう。 骨を強くする食べ物はどんなもの?4つの栄養素がカギ 日本人の多くはカルシウム不足だといわれます。また、丈夫な骨を作るためにはカルシウム以外の栄養素もバランスよく摂ることが大切です。 以下では骨を強くするためにとくに大切な4つの栄養素について説明します。 栄養素 効果 カルシウム 骨の材料となる ビタミンD カルシウムの吸収を助ける ビタミンK 骨が作られるのを助ける マグネシウム 骨が作られるのを助ける カルシウム|骨を丈夫にする カルシウムは骨に最も多く含まれるミネラルです。 カルシウムが不足して骨が弱くなれば、骨折のリスクが増加します。また、立つ・歩くなど生活動作を行う身体能力が徐々に低下し、日常生活に支障が出たり要介護状態となったりするのです。 この身体能力の低下を「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」といい、近年問題視されています。 骨のカルシウムを維持して元気に暮らし続けるために、以下のようなカルシウムを豊富に含む食品を積極的に摂りましょう。 牛乳、乳製品(ヨーグルト) 大豆、大豆加工品(豆腐、おから、納豆) 魚介類(干しエビ、小魚) 野菜(モロヘイヤ、小松菜) 海藻類(昆布、ひじき) とくに乳製品および大豆食品中のカルシウムが吸収されやすいとの報告があります。野菜や海藻はこれらの食品と一緒に摂ると、吸収されやすくなるためおすすめです。 参考:もっと知ろう!「ロコモティブシンドローム」|日本整形外科学会 骨を強くするメリット 骨を強くするということは、骨密度が高い丈夫な骨をつくるということを意味します。骨を強くすると、加齢に伴う骨粗鬆症や骨折などのリスクを少なくし、要介護や寝たきり状態の予防に繋がるのです。 また、骨を強くする方法は、関節軟骨のすり減りを抑える方法とも深い関わりがあるため、関節痛や腰痛の予防にも高い効果を発揮します。 骨折や関節痛に悩まされる事の無い生活を送るためにも、骨を強くするための生活習慣について知っておきましょう。 ビタミンD|カルシウムの吸収を助ける ビタミンDは、腸からのカルシウムの吸収を助ける栄養素です。尿中に出ていくカルシウムを減らすはたらきもあり、カルシウムを効率よく利用するために欠かせません。 ビタミンDは魚類やきのこに多く含まれます。具体的には以下の食品です。 サケ サンマ ウナギ シラス干し イワシ丸干し きくらげ しいたけ しいたけに含まれるビタミンDは、紫外線に当たると増える性質があります。生でも干ししいたけでも、食べる前に天日に当てるとより多くのビタミンDを摂取できます。 参考:骨を強くする栄養素|骨粗鬆症財団 ビタミンK|骨の形成を促進する ビタミンKは、体内に吸収されたカルシウムが骨に取り込まれるのを助ける栄養素です。以下のように、色の濃い葉野菜や納豆に多く含まれます。 モロヘイヤ 小松菜 ほうれん草 ブロッコリー 納豆 ビタミンKは油とともに食べると吸収されやすくなります。野菜は炒め物にしたり肉類と一緒に食べたりするほか、油の入ったドレッシングをかけるのもおすすめです。 納豆はとくにビタミンKが豊富ですが、血栓症予防のための抗凝固薬の効果を妨げる場合があります。このような薬を服用中の方は、主治医の指示に従ってください。 参考:骨を強くする栄養素|骨粗鬆症財団 マグネシウム|骨の形成を促進する マグネシウムは、カルシウムが骨に取り込まれるのを助けるほか、骨の材料としても大切な栄養素です。体内にあるマグネシウムのうち、50〜60%は骨に存在します。 マグネシウムを多く含む食品には次のものがあります。 大豆製品 ごま ナッツ類 海藻 魚介類 大豆製品や魚介類にはカルシウムも豊富です。ぜひ積極的にとりましょう。 参考:1-7 ミネラル(1)多量ミネラル①ナトリウム(Na)|厚生労働省 骨を強くする栄養素の吸収を促す食品を摂ることも大切 食事で摂るカルシウムは、そのままでは腸から吸収されにくい性質があります。効率よく吸収されて骨に取り込まれるためには、サポートする栄養素と組み合わせることが重要です。 また、骨にはコラーゲンなどのたんぱく質も含まれます。コラーゲンはカルシウムが固まるための「骨組み」となり、骨のしなやかさを保つ役目があるため、カルシウムと同様に骨の健康を保つ上で大切です。 カルシウムのはたらきをサポートする栄養素と、それらが多く含まれる食品を以下にまとめました。 栄養素 効果 主な食品 たんぱく質 コラーゲン(骨の骨組み)の材料となる 豆腐、肉、魚 ビタミンC コラーゲンが作られるのを助ける 野菜、果物 ビタミンD カルシウムの吸収を助ける きのこ類 ビタミンK 骨が作られるのを助ける 納豆 マグネシウム 骨が作られるのを助ける 大豆、アーモンド これらの食品を、カルシウムを多く含む食品と合わせて摂ると食事全体のバランスも良くなるためおすすめです。 骨を強くすると骨折・関節痛・腰痛などを予防できる 骨を強くするには、骨密度が高い丈夫な骨を作ることが必要です。骨を強くすると、加齢に伴う骨粗しょう症や骨折などのリスクを減らし、要介護や寝たきり状態の予防につながります。 また骨を強くする方法は、関節軟骨のすり減りを抑え、関節痛や腰痛の予防にも高い効果を発揮します。 骨折や関節痛に悩まされることの無い生活を送るためにも、骨を強くするための生活習慣を知っておきましょう。 骨にいい食べ物以外で骨を強くするための方法 骨に良い食べ物に、以下の対策を組み合わせることで、より効果的に骨の強化が可能です。 積極的に日に当たる 適度に運動する習慣をつける ここでは社会人・高齢者の方にも取り入れやすい方法を紹介します。 積極的に日に当たる カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、紫外線に当たることで皮膚でも作られます。屋内で過ごす時間が長い方や、綿密な紫外線対策を行っている方は、毎日意識して日光浴を取り入れましょう。日焼けが気になる場合は、手のひらを日光浴させるだけでも効果があります。 日光浴の時間の目安は、冬場なら日なたで30分〜1時間程度、夏場なら木陰で15分〜30分程度です。直射日光を浴びなくても窓際で過ごしたり、洗濯物干しのついでに陽に当たったりすれば十分です。紫外線を浴びすぎると皮膚がダメージを受けるため、日光浴は適度な時間に留めましょう。 適度に運動する習慣をつける 骨に適度な刺激が加わると、骨を作る細胞が活発化します。日常生活の中で運動量を増やすことで、骨が強くなるのです。 以下では社会人や高齢者が取り組みやすい運動を紹介します。 社会人で運動不足になりがちな方向け 社会人の方は、通勤や移動時間を活用して、意識して運動量を増やしましょう。歩幅を広くしたり、早歩きしたりするだけでも負荷は上がります。 できれば普段の道のりより少し遠回りするなど工夫して10分長く歩いてみましょう。階段も積極的に利用してください。上りよりも下りの方が、骨に負荷がかかりやすいためおすすめです。 その他ストレッチやラジオ体操も、運動不足に効果的です。余力があれば、自宅で軽い筋力トレーニングも行ってみましょう。 高齢で身体に無理なく運動したい方向け 高齢の方は、けがや体の負担に気をつけながら、少しずつ活動量を増やしてみましょう。洗濯や掃除、買い物に出かけるなどの家事も立派な運動です。日常の活動量を増やすことから始めるとハードルが下がります。 室内で壁に手をついての片足立ちや、椅子の背などにつかまってかかとを上げて落とす運動を行うと、手軽に骨を鍛えられます。体の負担になりにくいウォーキングや水泳もおすすめです。 以下の記事も参考に、健康的な生活を目指しましょう。 骨の強化を妨げる食事・生活習慣に注意 骨を弱くするリスクのある食事・生活習慣について、以下にまとめました。思い当たるものがないかチェックしてみましょう。 1日の中で、牛乳やヨーグルトを全く飲食しない 1日3食(朝食、昼食、夕食)をきちんと食べることが少ない スナック菓子が好きでよく食べる 自分は肥満だと思う 運動する習慣がない O脚である 上記で当てはまる項目が多いほど、知らないうちに骨が弱くなっている可能性があります。 O脚の方は、筋力の低下や変形性膝関節症が原因かもしれません。これらは運動不足をはじめ、骨を弱くする生活習慣とも関わります。加齢によって骨は弱くなりやすく、とくに閉経後の女性は骨粗しょう症のリスクが高いといわれるため注意が必要です。 骨のために改善したい食事・生活習慣について、以下で詳しく説明します。 外食・コンビニ食のしすぎ 塩分の多い食べ物の摂りすぎ 過度なダイエット・偏食 過度な飲酒(アルコール摂取) 喫煙(タバコ)の習慣 外食・コンビニ食のしすぎ 加工食品などに使われる食品添加物には、ミネラルの一種であるリンが多く含まれます。リンはさまざまな食品に含まれており、骨の材料としても重要ですが、とりすぎるとカルシウムの吸収を妨げます。 外食やコンビニ弁当などを頻繁に利用する方は、とくにリンの摂りすぎに注意しましょう。魚のフライよりも焼き魚を選ぶなど、シンプルな調理方法のメニューを選ぶと添加物を避けやすいです。 参考:1-7 ミネラル(1)多量ミネラル①ナトリウム(Na)|厚生労働省 塩分の多い食べ物の摂りすぎ 塩分のとりすぎも、カルシウムの吸収を妨げます。濃い味付けが好きだったり、スナック菓子を頻繁に食べたりすると塩分過多になりやすいです。 また、カルシウムを摂るためにチーズや小魚を食べ過ぎると、塩分も摂り過ぎる可能性があります。 減塩の食品を選んだり、塩分が添加されていない牛乳やヨーグルトに置き換えたりして塩分の摂取量に気をつけましょう。 過度なダイエット・偏食 極端なダイエットや食事制限をしていると、若い人でも骨密度が低下しやすいです。 栄養不足になれば、骨の材料となる栄養素や、骨が作られるのを助ける栄養素も不足しがちになります。また、やせると体重による骨への負荷が減るため、骨を作る細胞への刺激も減ります。 骨密度が低下すると、将来骨粗しょう症になるリスクが高まります。無理な食事制限は行わず、1日3食バランスよく食べてしっかり運動しましょう。 過度な飲酒(アルコール摂取) お酒を飲み過ぎるとカルシウムの吸収が悪くなります。また、アルコールの利尿作用によって尿量が増え、尿中にカルシウムが排出されやすいです。 ただ、適量のアルコールであれば骨を強くし、骨粗しょう症の予防につながるともいわれています。 飲酒は適量に抑えるか、休肝日を作るように心がけましょう。お酒の飲み方は以下の記事も参考にしてください。 喫煙(タバコ)の習慣 喫煙は骨粗しょう症の危険因子のひとつです。タバコに含まれるニコチンはカルシウムの吸収を妨げます。女性の場合は、骨を丈夫に保つ女性ホルモン(エストロゲン)が減るのも懸念点です。喫煙習慣のある方は、禁煙するか本数を減らすだけでも骨を強くする効果が期待できます。 タバコは軟骨への悪影響も指摘されており、関節症が悪化しやすいです。以下の記事も併せてご覧ください。 まとめ|骨を強くする食べ物を積極的に摂り健康的に過ごしましょう 骨の強さを表す骨密度は加齢に伴い減少していきます。とくに女性は閉経を期に骨密度が大きく低下し、骨粗しょう症のリスクが増大するといわれています。また、中高年に限らず若い方も、極端なダイエットや食事制限は骨密度の低下を引き起こすためおすすめできません。 骨を健康な状態に保つには、食事によるカルシウムの十分な摂取と適度な運動の2点が重要です。カルシウムの吸収を妨げる食事や生活習慣はなるべく避けましょう。 以上を気をつけていても膝や股関節の痛みでお悩みの場合は、当院へご相談ください。初回カウンセリングでは専門医が丁寧にご説明いたします。電話・メールでの無料相談も行っていますので、お気軽にご連絡ください。
2022.03.29 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
脊髄損傷を負ったあと「リハビリでどこまで回復できるのか?」「効果的なトレーニング方法は?」とお悩みの方もいるのではないでしょうか? リハビリは早期に始めるほど効果が高く、適切なトレーニングを継続すれば日常生活の質向上が期待できます。 本記事では、脊髄損傷におけるリハビリやトレーニングについて詳しく解説します。リハビリの回復見込みや注意点も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。 脊髄損傷のリハビリ内容【主な部位へのアプローチポイント】 さっそく、脊髄損傷のリハビリ内容を解説します。脊髄損傷におけるリハビリでは以下の訓練や療法がよくおこなわれます。 可動域訓練 筋力トレーニング 歩行訓練 電気刺激 順番に見ていきましょう。 可動域訓練|全身へのアプローチが可能 脊髄損傷後のリハビリでは、早期から関節の可動域訓練を行います。 脊髄を損傷すると「正常な筋肉」「麻痺がある筋肉」「筋力低下した筋肉」が混在します。その結果、筋肉のバランスが崩れることで拘縮(こうしゅく:関節が固くなり動きが制限される状態)が発生しやすくなるため、早期の訓練開始が重要です。 下部頸髄損傷による拘縮では、肘・膝・足の関節が屈曲位で固定されるだけでなく、全身の柔軟性が低下します。 拘縮が進行すると、座位の維持や寝返り、起き上がり、移乗(車椅子への移動など)にも支障が出るため、可動域訓練は全身の機能維持において欠かせない訓練といえます。 筋力トレーニング|上肢・下肢の筋力強化に有効 脊髄損傷のリハビリを目的とした筋力トレーニングは、麻痺を負った筋肉とのバランスを整えるほか、残存した機能を活用して日常生活を送るために欠かせない取り組みです。 たとえば、呼吸筋を鍛える「バルサルバ法」(バルサルバ手技とは異なる)は、呼吸機能の回復に有効であり、生活の質(QOL)の向上につながります。このトレーニングは、息を止めて腹部に力を入れることで呼吸筋を鍛える方法で、推奨時間は30秒未満です。 適切な筋力トレーニングを継続すれば、上肢・下肢の筋力を維持・向上させ、日常動作の改善を図れます。 歩行訓練|下肢の機能回復に有効 歩行訓練を早期から実施すると、歩行機能の向上だけでなく、身体機能も高まります。 脊髄損傷のリハビリでは「吊り上げ式免荷歩行」がよく採用されます。 これはジャケットを装着して体を上方へ牽引し、体重負荷を軽減しながら安全に歩行訓練をする方法です。 吊り上げ式免荷歩行を実施するメリットは以下の4つです。 早い段階から歩行練習ができる 身体の一部を支え負担を軽減できる 転倒のリスクを減らし安全に訓練できる 歩く動作に近い運動ができ意欲が向上する この方法により、安全性を保ちながら下肢の機能回復を促進します。 電気刺激|指先への細やかなアプローチも可能 機能的電気刺激(FES:functional electric stimulation)では、電気刺激により、麻痺を起こした筋肉を動かすことで身体機能の回復を図るリハビリ手法です。 具体的には、体の表面に装着もしくは体内に埋め込んだ電極から電気信号を送り筋肉を収縮させる方法です。 電気刺激により、歩行や起立動作などの日常生活動作の改善に加え、高位脊髄損傷者では人工呼吸器が不用になった報告があります。動作の向上は脊髄損傷を負った方にとって、リハビリ意欲の向上につながるでしょう。 電気刺激は、手指や手首の動作改善にも有効であり、握力の向上や指先の細かな動作の回復を促します。これにより、食事や着替え、筆記といった日常生活動作の自立支援にも貢献します。 再生医療|脊髄損傷の後遺症に対する新たな治療法 従来の治療法は主にリハビリで、症状が悪化すれば手術を受けるのが一般的でした。 しかし近年、幹細胞を用いた「再生医療」が新たな選択肢として注目されています。 幹細胞には損傷した組織を修復する働きがあり、筋力の回復や歩行の安定、感覚の改善などが期待されています。 点滴や患部に直接注射することで幹細胞が体内に投与され、血液を介して脊髄へ届けられる仕組みです。 再生医療は、手術のように傷跡が残る心配がなく、体への負担が少ない点も大きなメリットです。 「再生医療に興味があるけど具体的なイメージがつかめなくて不安…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脊髄損傷におけるリハビリの回復見込みは? 脊髄損傷後のリハビリによる回復の見込みは、損傷の程度や種類によって異なります。 脊髄損傷は、大きく分けて以下の2つに分類されます。 分類 症状 完全麻痺 脊髄の神経伝達が完全に断たれた状態で、運動機能や感覚が完全に失われた状態 不全麻痺 脊髄の神経伝達が部分的に残っており、運動機能や感覚の一部が残っている状態 一般的に、完全麻痺の場合、失われた機能の完全な回復は難しいとされています。一方で、不全麻痺の場合は、早期にリハビリを開始して適切な治療を継続すれば、機能回復が期待できます。 リハビリだけでなく、脊髄損傷の後遺症には、再生医療という選択肢もあります。 幹細胞を採取・培養する再生医療は、自己再生能力を持つ幹細胞を利用して、損傷した組織の修復を目指す治療法です。 詳しい治療法については、下記のページをご覧ください。 脊髄損傷のリハビリに関する2つの注意点 脊髄損傷におけるリハビリ時の注意点を2つ解説します。 受傷後すぐは廃用症候群の発症に注意する 脊髄ショックのリスクも念頭に置いておく これらの点を理解した上で、安全なリハビリに取り組みましょう。 受傷後すぐは廃用症候群の発症に注意する 受傷直後は、安静にする必要があるため、ベッド上で過ごす時間が長くなります。 そこで注意したいのが、廃用症候群の発症です。 廃用症候群とは、安静状態が長時間続くことで起こる心身機能のトラブルや疾患の総称です。 たとえば、以下のような症状が現れます。 床ずれ 関節拘縮 尿路結石 起立性低血圧 睡眠覚醒リズム障害 褥瘡(じょくそう:長時間同じ姿勢により身体が圧迫されて皮膚や組織が損傷する状態)を防ぐためには、こまめに体位を変え、圧を分散させるマットやクッションを活用することが必要です。 脊髄ショックのリスクも念頭に置いておく 脊髄損傷のリハビリを進める際には、脊髄ショックのリスクを考慮する必要があります。 脊髄ショックとは、脊髄に損傷を受けた際に、損傷部位だけでなく脊髄全体に影響が及ぶ現象です。 脊髄と脳の連絡が絶たれることで発生し、運動や感覚が麻痺するだけでなく、脊髄反射が完全に消失する特徴があります。 脊髄ショックは通常、1日から2日で急性期を抜けますが、重症の場合は数日から長くて数週間続きます。 その間、体を動かすことができず、安静にして過ごさなくてはなりません。また、回復後も症状が重い場合は、予後が厳しくなる可能性が高くなります。 リハビリを開始する際には、脊髄ショックの発生を念頭に置き、医師の指示に従いながら慎重に治療を進める姿勢が大切です。 まとめ|脊髄損傷におけるリハビリのトレーニングで機能回復を目指そう 脊髄損傷は、体の中枢にある神経が損傷することです。脊髄を損傷すると、損傷した部位や程度により違いがあるものの麻痺が発生します。 損傷する脊髄レベルが高いほど重症度も高くなり、頸髄が横断される形で損傷する完全麻痺では、体を動かせなくなったり、感覚が感じ取れなくなったりします。 脊髄損傷後の主な治療法はリハビリです。リハビリでは、回復・残存した神経機能を日常生活に結び付けるため、体位変換・可動域訓練・筋力トレーニング・歩行訓練・電気刺激などに取り組みます。 また、リハビリで思ったような効果がみられない場合は、「再生医療」も選択肢としてご検討ください。 再生医療は、これまで困難とされていた脊髄の損傷修復や再生を目指す治療法です。 無料のメール相談・オンラインカウンセリングも受け付けていますので「再生医療で脊髄損傷をどうやって治療するの?」と気になる方は当院「リペアセルクリニック」にお気軽にお問い合わせください。 頚髄の中心部分の損傷による「中心性脊髄損傷」については、以下の記事で詳しく解説しています。
2022.03.28 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
「膝の痛みが一向に改善しない」 「変形性膝関節症のリハビリ方法を知りたい」 変形性膝関節症により、歩行や階段の昇降が困難になり、日常生活に支障をきたす方は多くいます。運動療法が勧められても、「どの程度続ければ良いのか」「症状が悪化しないか」といった不安を抱く方もいるでしょう。 しかし、症状や体力に応じた運動を無理なく続けることで、膝の痛みや動きの改善が期待できます。まずはできる範囲から始めることが大切です。 本記事では、現役医師が高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリ方法を詳しく解説します。リハビリ期間や禁忌事項についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 変形性膝関節症の症状でお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 高齢者の変形性膝関節症にリハビリが不可欠である理由 不可欠である理由 詳細 筋力維持で膝の負担を減らす 太もも周囲の筋力強化による関節の安定化・日常動作時の衝撃軽減 転倒予防で自立した生活を守る バランス能力向上によるつまずき防止・歩行の安定性確保 手術を避ける可能性もある 関節可動域改善と痛み軽減による症状進行抑制・保存療法の効果最大化 高齢者の変形性膝関節症では、運動療法を中心としたリハビリが治療の基本です。継続的なリハビリにより、軟骨のすり減りによる痛みや動きにくさの改善、症状進行の抑制が期待できます。 加齢に伴う筋力や柔軟性の低下を補い、転倒予防や生活の質の維持にもつながります。 痛みを理由に安静にしすぎると症状が悪化する可能性があるため、医師の指導のもと、無理のない範囲で継続することが大切です。 以下の記事では、変形性膝関節症を放っておくリスクについて詳しく解説しています。 筋力維持で膝の負担を減らす 高齢になると大腿四頭筋が脆弱になりやすく、膝を支える力が低下して痛みや機能障害が生じやすくなります。 筋力の維持・向上は、膝への負担を軽減し、立ち上がりや歩行、階段昇降をスムーズに行うために欠かせません。 大腿四頭筋を鍛える運動プログラムで膝の痛みや機能が改善することが報告されています。(文献1) 筋力トレーニングは、無理なく「ゆっくり・少しずつ」行うことが大切です。 膝伸ばしやミニスクワットなど負担の少ない動作が適しています。高齢者では8〜12週間の筋力強化プログラムで、筋力の向上と症状の改善が確認されています。(文献2) 転倒予防で自立した生活を守る 項目 詳細 転倒リスクが高まる理由 膝周囲筋力低下や関節可動域制限による歩行バランス不良・支持力低下 転倒を防ぐ運動・訓練 片足立ち・ゆっくり歩行などのバランス訓練、脚筋力強化による安定性向上 日常動作の工夫と環境整備 手すり利用・照明確保・靴選び・立ち上がりや歩行量調整によるリスク管理 家族・介護者のサポート 歩行時の見守り・声かけ・手すりや杖の準備による安堵感と転倒予防 筋力やバランス能力が低下すると、転倒による骨折や外傷のリスクが高まります。 リハビリでは下肢筋力の回復に加え、体幹の安定性向上や姿勢の調整を行います。 重心を保つ力が養われることで段差や不整地でのふらつきが減り、日常生活の安定性が高まって自立した生活の維持が可能です。 手術を避ける可能性もある リハビリ(運動療法・生活習慣改善)と教育を受けた関節症患者を対象とした研究では、運動プログラム終了後に「手術を希望しない」と回答した方は、5年間で実際に手術を受ける確率が約20%低いと報告されています。(文献3) 手術は年齢・体力・合併症リスクの影響を受けるため、高齢者では保存的治療を優先すべきとの見解も示されています。(文献4) ただし、保存療法で手術を確実に回避できるわけではありません。軟骨損傷が進行した症例では手術が適切となる場合もあり、保存治療のみの患者でも5年後に一定数が手術を受けた報告があります。(文献5) 高齢者が適切に取り組むためには、医療者と相談して自分に合う運動内容を決め、無理なく頻度・量を調整することが重要です。 体重管理や補助具の活用も効果を高め、継続により手術回避や先送りの可能性が高まるとされています。(文献6) 以下の記事では、変形性膝関節症を進行させないための工夫について詳しく解説しています。 高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリ方法 リハビリ方法 詳細 筋力トレーニングとストレッチ 大腿四頭筋・ハムストリングスの強化と関節周囲の柔軟性向上による膝負担軽減 バランス・姿勢・歩行の改善訓練 片足立ちや姿勢調整による転倒予防・歩行安定性向上 水中運動・自転車など膝に負担の少ない運動 浮力や軽負荷を活用した関節への衝撃軽減と持久力向上 変形性膝関節症のリハビリは、筋力強化・柔軟性向上・バランス改善を中心とした運動療法です。症状に合わせて無理のない範囲で継続することが大切です。 具体的には、太ももやふくらはぎを鍛える筋力トレーニング、関節の動きを滑らかにするストレッチ、転倒予防のバランス訓練、正しい歩き方を身につける歩行練習などがあります。 水中運動や自転車といった膝への負担が少ない有酸素運動を加えると、全身の体力向上にもつながります。 変形性膝関節症の最新ガイドラインについては、こちらの記事で詳しく解説しています。 筋力トレーニングとストレッチ 項目 詳細 筋力トレーニングの役割 大腿四頭筋強化による膝関節の安定化・膝負担軽減 ストレッチの効果 可動域拡大と柔軟性向上による動作の円滑化 継続する重要性 毎日の少量継続による膝負担軽減と症状進行抑制 医師の指導を受ける理由 個々の膝状態に適した効果的な運動の選択 膝を支える筋肉の強化と柔軟性の維持は、変形性膝関節症のリハビリの基本です。大腿四頭筋を鍛える脚上げ運動や、ふくらはぎのストレッチは関節の安定性向上と可動域拡大に有効です。 痛みが出るほどの負荷は避け、無理なくゆっくり継続することが重要で、これにより歩行や立ち座りが楽になります。 高齢者が適切に続けるためには、体調に合わせて量と強度を調整し、転倒の危険がない環境で行うことが大切です。 継続が肝心であり、多くの研究では8〜12週間以上の継続で効果が確認されています。(文献6) バランス・姿勢・歩行の改善訓練 膝の変形や筋力低下により身体のバランスが崩れやすくなり、転倒リスクが高まります。バランス訓練は立位や歩行時の安定性を高め、転倒予防に効果的です。 また、体幹を鍛えることで姿勢が整い、膝への負担軽減や歩行効率の向上につながります。 歩行訓練では正しい歩き方の習得と補助具の活用により安定性を高め、日常生活の動作改善が期待できます。 水中運動・自転車など膝に負担の少ない運動 項目 詳細 水中運動は膝への負担が軽い 浮力による体重負担軽減と痛みが強い場合でも行いやすい運動継続 筋力アップと関節の動き改善 水の抵抗を利用した筋力強化と関節可動性向上・筋緊張緩和によるリラックス効果 自転車運動も膝に優しい選択 膝を深く曲げずに行える反復運動による低負荷での持久力・筋力維持向上 適切に続けるためのポイント 体調や膝の状態に応じた強度設定と医師・理学療法士の指導下で継続実施 水中歩行やエアロバイクは、膝への負荷を抑えながら筋力を鍛えられる運動です。浮力やペダル抵抗が適度な刺激となり、痛みが出にくく継続しやすいのが特徴です。 膝を深く曲げずに動かせるため、炎症や腫れが悪化しにくく、リハビリに適しています。 水中運動は、数分の水中歩行から始め、週2〜3回続けることが効果的です。さらに12週間の介入でバランスや痛みの改善が報告されています。(文献7) 自転車運動では、サドルをやや高めに設定し、軽い負荷で高回転を維持することで膝への負担を抑えられ、「低負荷・高回転数」が効果的とされています。(文献8) 以下の記事では、変形性膝関節症のリハビリにおける水中運動について詳しく解説しています。 変形性膝関節症は水泳で平泳ぎできる?膝に負担をかけない泳法を解説【医師監修】 高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリの期間 リハビリの期間 詳細 リハビリ開始から1〜3カ月|基礎機能の回復期 痛み軽減と可動域改善・基礎筋力向上による日常動作の安定化 リハビリ開始から3〜6カ月|機能改善の促進期 筋力強化とバランス能力向上による歩行・立ち座り動作の改善 リハビリ開始から6カ月以降|習慣化と維持期 運動習慣の定着による症状再発予防・機能維持の長期的安定化 変形性膝関節症のリハビリは段階的に進み、1〜3カ月で痛みや可動域の改善、3〜6カ月で筋力やバランス向上による動作安定が期待されます。 6カ月以降は運動習慣を定着させ、症状の再発を防ぎながら機能維持を図る段階です。ただし、これらはあくまで一般的な目安であり、症状の程度・生活状況・合併症の有無によって進行のペースは大きく異なります。 リハビリ開始から1〜3カ月|基礎機能の回復期 変形性膝関節症では、大腿四頭筋の弱化や関節可動域の低下により歩行や立ち上がりが困難になります。 運動療法を行った研究では、約3カ月の介入で可動域や歩行速度が有意に改善したと報告されており、1〜3カ月はリハビリ効果が身体機能に現れ始める時期です。(文献9) この期間は、無理な負荷を避け、適切な範囲で筋力や動作を整える準備段階です。中〜低強度の運動でも高齢者の機能改善に効果があるとされています。(文献10) また、症状が進む前の早期介入ほど効果が得られやすく、早期に運動療法を導入した患者では比較的早期に改善がみられたと報告されています。(文献11) リハビリ開始から3〜6カ月|機能改善の促進期 リハビリ開始後1〜3カ月で筋力や可動域の基礎が整い始めた後、3〜6カ月はその基盤をさらに伸ばす時期です。習慣化された運動に適度な負荷や変化を加えることで、膝機能や歩行能力がより向上することが報告されています。(文献12) この期間は、通院での理学療法と自宅での自主訓練が連携し、継続するほど機能改善が高まることも示されています。(文献13) また、3〜6カ月で改善が進むと6カ月以降の維持期へ移行しやすく、途中で中断すれば後退する可能性があるため、この期間は長期的な機能維持の土台となる重要な時期です。(文献14) リハビリ開始から6カ月以降|習慣化と維持期 変形性膝関節症では、リハビリ開始から6カ月以降は機能改善から維持へ移行する重要な時期です。3〜6カ月で基礎的な筋力や可動域が整った後は、得られた機能を日常生活レベルで安定させることが目的となります。 実際、運動療法を6カ月以上継続した高齢者では、身体活動量の維持に効果があったと報告されています。(文献15) また、フィジカルアクティビティ(運動や日常的な身体活動)介入後にフォローアップや継続支援が加わると、長期的な活動維持が改善したとの報告もあります。(文献16) ガイドラインでも「運動介入開始から長期維持が鍵」と示されており、6カ月以降は習慣化とメンテナンスが膝機能を守る上で非常に重要です。(文献17) 高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリの禁忌事項 禁忌事項 詳細 急な動作や強い負荷の回避 膝関節への急激なストレス増大による痛み悪化や炎症助長 深い膝曲げ・正座の制限 膝軟骨への過度な圧迫と関節負担増加による症状悪化 無理な運動やストレッチ 過伸展や過負荷による筋・靭帯損傷や関節炎増悪 喫煙・飲酒などの生活習慣 血流悪化や炎症増加による治癒遅延と症状進行 リハビリは適切に取り組めば効果的ですが、誤った方法は症状を悪化させます。高齢者では関節や筋肉が弱いため、急な動作や強い負荷は軟骨や靱帯を傷める危険があります。 深い膝曲げや正座も負担が大きいため避けましょう。「早く良くしたい」という焦りから無理をすることは逆効果です。また、喫煙や過度の飲酒は炎症を長引かせるため、リハビリ効果を高めるには生活習慣の見直しも重要です。 以下の記事では、変形性膝関節症において、やってはいけないことを詳しく解説しています。 急な動作や強い負荷の回避 項目 詳細 変形性膝関節症と膝への負担 軟骨摩耗による関節脆弱化と強い力・無理な動作による負荷の増大 避けるべき動作 ジャンプ・急な方向転換・深い膝曲げ・重い物の持ち上げ・長時間立位歩行 急な動作がいけない理由 関節への過負荷と軟骨・周囲組織の損傷リスク増大および転倒危険性 安定してリハビリを続けるために 体調と膝状態に合わせた無理のない動作と医師の指導のもと継続 膝への急な衝撃や過度な屈伸は、軟骨や靭帯を傷つける原因です。変形性膝関節症では軟骨がすり減っているため、急な動作や深い膝曲げは痛みや炎症を悪化させる可能性があります。 そのため、ジャンプや急な方向転換、重い物を持つ動作は避けましょう。また、膝の状態に応じて無理なく動き、痛みが強い場合は休むことが大切です。医師の指導のもと継続することで、症状の改善が期待できます。 深い膝曲げ・正座の制限 項目 詳細 深く膝を曲げる動作が膝に与える影響 関節内圧上昇による軟骨への過負荷と炎症・痛み増悪 正座やしゃがみ込みのリスク 関節隙間の狭小化と軟骨摩擦増大による痛みの悪化 生活の中での注意点 椅子・洋式トイレの活用や床生活の回避による負担軽減 膝を守る生活習慣づくり 深い膝曲げを避ける日常動作工夫による症状進行予防 変形性膝関節症では、膝を深く曲げる動作によって関節内の圧力が大きく上昇し、すり減った軟骨に強い負担がかかります。正座や深いしゃがみ込みは関節の隙間をさらに狭め、痛みを悪化させる原因となります。 床生活や和式トイレを避けて椅子や洋式トイレを利用するなど、膝を深く曲げない生活習慣を身につけることが症状進行の予防に欠かせません。 無理な運動やストレッチ 項目 詳細 避けたほうが良い動きの具体例 ジャンプ・急な方向転換・深い膝曲げ・痛み時の過度な筋トレやストレッチによる炎症誘発 ストレッチの注意点 痛みのない範囲でのゆっくりした伸張による柔軟性維持 安定して続けるためのポイント 膝状態の把握と無理のない運動選択・痛み増強時の中止と医師相談 変形性膝関節症では、膝の軟骨や関節が弱っているため、無理な運動は負担となり炎症や痛みを悪化させる可能性があります。とくに急な方向転換や強い衝撃を受ける動作は、関節の安定性を損ない、損傷リスクを高めます。 リハビリは痛みの程度に合わせて負荷を調整し、無理のない範囲で行うことが大切です。違和感や痛みが強まる場合は中止し、医療機関を受診しましょう。 喫煙・飲酒などの生活習慣 項目 詳細 膝関節に影響が出やすい理由 喫煙による軟骨・骨代謝低下と血流悪化、飲酒による軟骨変性のリスク増大 高齢者で影響が出やすい理由 加齢による修復力低下と長年の生活習慣の影響 具体的な注意点 禁煙・飲酒量の見直し・膝症状悪化時の飲酒喫煙回避 リハビリとの関係 回復力低下によるリハビリ効果減弱と症状進行リスク増加 喫煙は軟骨や骨の代謝および血流を悪化させ、変形性膝関節症の発症・進行リスクを高めることが遺伝的・疫学的研究で示されています。 とくに、喫煙により変形性膝関節症のリスクが約20%上昇するとの報告もあります。(文献18) 一方、飲酒についても週あたりの量が多いほど軟骨変性マーカー(MRI T2値・WORMSスコア)が高い傾向です。(文献19) さらに、週1〜7杯以上の飲酒で軟骨変性が増える報告もあり、修復力の低い高齢者では影響が出やすいため、リハビリ効果を高めるには禁煙と飲酒量の見直しが重要です。(文献19) 高齢者の変形性膝関節症のリハビリと併用できる治療法 治療法 詳細 栄養療法 体重管理と抗炎症作用を意識した栄養摂取による関節負担の軽減 装具療法 膝サポーター・足底板などによる関節安定化と負荷分散 薬物療法 痛みや炎症を抑える内服薬・外用薬の併用による症状緩和 物理療法 温熱・電気・超音波などによる血流改善と痛み軽減 再生医療 幹細胞による組織修復促進と炎症抑制 変形性膝関節症では、リハビリと併用してさまざまな治療を適切に組み合わせることで、症状の緩和や機能の改善が期待できます。 ただし、いずれの治療も医師の指導のもとで適切に行うことが重要です。とくに再生医療は適応が限られており、実施可能な医療機関も限定されているため、医師との相談が必要です。 以下の記事では、変形性膝関節症の治療法について詳しく解説しています。 栄養療法 項目 詳細 関節の健康・炎症制御に栄養が関わる理由 オメガ3脂肪酸・抗酸化栄養素による炎症抑制と軟骨保護 軟骨の健康に必要な栄養素 コラーゲン・ヒアルロン酸生成に必要なビタミンC・タンパク質・ミネラル 炎症を抑える食事の重要性 青魚・緑黄色野菜・ナッツ類による抗炎症作用と痛み軽減 体重管理との連携効果 栄養管理による体重負荷軽減と悪化予防 継続的な栄養指導の推奨 個別の栄養指導と医師による健康維持 変形性膝関節症では、筋力低下、軟骨摩耗、炎症が同時に進行します。 オメガ3脂肪酸、食物繊維、ポリフェノールを多く含む食事が、症状改善や進行抑制に有効であることが報告されています。(文献20) 適切な栄養管理は軟骨の材料補給や体重管理に役立ち、リハビリ効果を高めるため、医師の栄養指導を受けることが大切です。 以下の記事では、変形性膝関節症の正しいダイエットについて詳しく解説しています。 装具療法 装具療法は、サポーターや足底板を用いて膝の安定性を高め、日常動作を助ける治療法です。ソフトサポーターは膝のぐらつきを抑えて動作時の安定性を向上させ、インソールや機能的膝装具は膝にかかる力の向きを調整し痛みの悪化を防止します。 リハビリでは、装具を併用することで安定性が向上し、運動効果を引き出しやすくなります。 ガイドラインでも「装具はすべての患者に必須ではないが、有用な補助戦略となり得る」と示されており、症状に合わせた選択が重要です。(文献21) 薬物療法 薬物療法は、痛みや炎症を和らげ、日常生活動作やリハビリを支援します。外用薬は局所の鎮痛・消炎に有用です。内服薬のNSAIDsはより強い痛みに効果的ですが、長期使用には注意が必要です。 ヒアルロン酸やステロイドの関節内注射は、関節に直接作用して症状を改善します。ただし、薬物療法には限界があることを理解しておく必要があります。 薬物療法は症状を一時的に和らげるにとどまるため、運動療法や装具療法との併用が大切です。 薬の使用にあたっては、医師の指導に従い、自己判断で調整しないよう注意しましょう。 物理療法 物理療法は温熱・電気・超音波などを用いて、身体への負担を抑えながら痛みや炎症を和らげる治療法です。血行を促進し筋緊張を改善することで、関節可動域の拡大や歩行能力の向上が期待されます。 高齢者は膝のこわばりや痛みにより運動を避ける傾向があります。しかし、物理療法で症状を軽減することで運動に取り組みやすくなり、運動療法を継続することが重要です。 超音波療法などの物理的モダリティにより、関節可動域・痛み・機能が改善したとの報告もあります。(文献22) 再生医療 再生医療は、膝の軟骨や関節が本来もつ治癒力を高め、損傷組織の修復・再生を促す治療法です。代表的な方法に幹細胞治療やPRP(血小板濃縮療法)があり、痛みの軽減に加えて関節可動域や機能の改善が期待できます。 とくに中程度までの軟骨損傷をもつ患者で効果が期待され、長期的な症状緩和につながります。 低侵襲で切開や入院を必要としないため、手術を避けたい高齢者や身体への負担を懸念する方にも実施しやすいのが利点です。 以下の記事では、再生医療を用いた事例を紹介しています。 リハビリで改善しない高齢者の変形性膝関節症は医療機関を受診しよう 適切なリハビリを数カ月続けても症状が改善しない、あるいは悪化している場合は、別の原因や合併症が隠れている可能性があります。自己流での運動や家族だけのケアには限界があり、医師の診断と治療が必要です。 軟骨の損傷が進行していたり、靱帯や半月板に問題があったりする場合、リハビリだけでは対応できません。その場合は薬物療法や装具療法の追加、あるいは手術の検討が必要になります。 また、関節リウマチや骨粗鬆症など膝以外の病気が症状の原因となっている場合もあるため、早めに受診して原因を特定し、適切な治療を受けることで悪化を防止できる可能性があります。 変形性膝関節症についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。変形性膝関節症に対して、当院では再生医療を用いた治療も行っています。 再生医療では、幹細胞が炎症の調整や組織修復を助けることで、自然には修復しにくい膝軟骨の状態改善が期待できます。また、手術を避けながら、比較的低リスクで機能回復を目指せる点も利点です。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリに関するよくある質問 高齢者の変形性膝関節症は手術が必要ですか? 変形性膝関節症の治療において多くの場合、初期段階で手術が必要になることはありません。まずは運動療法、薬物療法、装具療法といった保存療法が基本となります。 これらを継続しても強い痛みで歩行が困難になる、あるいは日常生活に大きな支障が出る場合に、人工膝関節置換術などの手術が検討されます。 以下の記事では、変形性膝関節症の手術について詳しく解説しています。 【関連記事】 変形性膝関節症の手術における高齢者リスクを医師が解説|費用や入院期間も紹介 変形性膝関節症の手術による成功率は?入院期間や費用も解説 高齢者の変形性膝関節症は整体で治りますか? 整体で変形性膝関節症を根本的に治すことはできません。変形性膝関節症は膝関節の軟骨がすり減ることで生じる構造的変化が原因であり、整体でこの変化を元に戻すことは不可能です。 整体により一時的に筋肉のこわばりが和らぎ、動かしやすく感じることはありますが、根本的な改善や進行抑制につながる医学的根拠はありません。 症状の悪化を防ぐためには、整形外科で診断を受け、医師の指導のもとで適切なリハビリや運動療法を行うことが大切です。 以下の記事では、接骨院における変形性膝関節症の治療について詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) Quadriceps strengthening exercises are effective in improving pain, function and quality of life in patients with osteoarthritis of the knee|PMC PubMed Central® (文献2) Impairment-targeted exercises for older adults with knee pain: a proof-of-principle study (TargET-Knee-Pain)|BMC Part of Springer Nature (文献3) Change in willingness for surgery and risk of joint replacement after an education and exercise program for hip/knee osteoarthritis: A longitudinal cohort study of 55,059 people|PLOS Aging and Health (文献4) Surgical Versus Non-Surgical Treatments for the Knee: Which Is More Effective?|PMC PubMed Central® (文献5) Five-year follow-up of patients with knee osteoarthritis not eligible for total knee replacement: results from a randomised trial|PMC PubMed Central® (文献6) The Role of Resistance Training Dosing on Pain and Physical Function in Individuals With Knee Osteoarthritis: A Systematic Review|PubMed® (文献7) The PICO project: aquatic exercise for knee osteoarthritis in overweight and obese individuals|BMC Part of Springer Nature (文献8) Loading of the knee joint during ergometer cycling: telemetric in vivo data|PubMed® (文献9) Home Stretching Exercise is Effective for Improving Knee Range of Motion and Gait in Patients with Knee Osteoarthritis (文献10) Is long-term physical activity safe for older adults with knee pain?: a systematic review|ScienceDirect (文献11) Physical Exercise and Weight Loss for Hip and Knee Osteoarthritis in Very Old Patients: A Systematic Review of the Literature|The Open Rheumatology Journal (文献12) Effectiveness of exercise for osteoarthritis of the knee: A review of the literature|PMC PubMed Central® (文献13) Rehabilitation of Patients with Moderate Knee Osteoarthritis Using Hyaluronic Acid Viscosupplementation and Physiotherapy|MDPI (文献14) Effectiveness of exercise for osteoarthritis of the knee: A review of the literature|PMC PubMed Central® (文献15) Management and Rehabilitative Treatment in Osteoarthritis with a Novel Physical Therapy Approach: A Randomized Control Study|MDPI (文献16) Effectiveness of booster strategies to promote physical activity maintenance: a systematic review and meta-analysis|BMC Part of Springer Nature (文献17) Osteoarthritis year in review 2022: rehabilitation|ScienceDirect (文献18) The causal impact of smoking behavior on osteoarthritis: a Mendelian randomization analysis|frontiers (文献19) Associations between alcohol, smoking, and cartilage composition and knee joint morphology: Data from the Osteoarthritis Initiative|PMC PubMed Central® (文献20) Diet in Knee Osteoarthritis—Myths and Facts|PMC PubMed Central® (文献21) Braces and orthoses for treating osteoarthritis of the knee|PMC PubMed Central® (文献22) Standard of Care: _Osteoarthritis of the Knee Case Type / Diagnosis: Knee Osteoarthritis. ICD-9: 715.16, 719.46|BRIGHAM AND WOMEN’S HOSPITAL Department of Rehabilitation Services
2022.03.25 -
- 肝疾患
- 内科疾患
「健康診断で肝臓の数値が高いと言われて不安になった…」 「肝臓の数値異常は薬のせい?」 このような疑問をお持ちの方も多いでしょう。 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、自覚症状が出にくいため、健康診断の結果で初めて異常を指摘される人も多いとされています。 数値が悪化する原因はさまざまですが、日常的に服用している薬が肝臓に負担をかけている可能性もあります。 本記事では、肝臓の数値が悪化する原因やそれを改善するための対策について解説します。 肝臓の数値を改善し、健康な状態を維持するためのポイントを押さえていきましょう。 薬による肝臓への負担と薬物性肝障害 私たちが薬を服用すると、その成分は体内で吸収され、血液を通じて全身に運ばれます。 その過程で重要な役割を担うのが「肝臓」です。 肝臓は、薬の成分を分解・代謝し、体にとって不要なものを無毒化する働きをしています。 しかし、薬の種類や飲み合わせ、服用量によっては、この代謝過程が肝臓にとって大きな負担になる場合があり、肝臓の数値に影響を与え、基準値より高くなることがあります。 肝臓の数値が上昇している場合、薬が原因となっている「薬物性肝障害」の可能性が考えられます。 自覚症状がないケースも多いため、定期的に肝機能をチェックし、薬の影響で肝臓に負担がかかっていないかを確認することが大切です。 薬物性肝障害とは? 薬物性肝障害とは、薬の影響によって肝臓の細胞が傷つき、肝機能に異常が生じる状態を指します。 薬そのものだけでなく、代謝の過程で発生する物質が肝細胞にダメージを与えることもあります。 症状には倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸(おうだん)などがありますが、自覚症状がまったく現れないケースも少なくありません。 そのため、体調に異変がなくても、定期的に血液検査で肝臓の数値(AST・ALTなど)を確認することが大切です。 とくに、複数の薬を同時に服用している方や、長期間薬を使っている方は、知らず知らずのうちに肝臓に負担がかかっている可能性があります。 数値の異常が見つかった場合は、薬の中止や変更を検討する必要があるため、早期発見と医師のフォローが重要です。 肝機能を示す主な検査数値と薬が与える負担について 肝臓の状態を把握するには、血液検査で得られる肝機能の数値をチェックすることが重要です。 肝臓への薬の負担を把握するうえでも注目すべき指標は次の3つです。 AST(GOT) ALT(GPT) γ-GTP それぞれの数値の役割と、どのような薬が影響を及ぼすのか、詳しく解説します。 AST(GOT)とは? AST(GOT)は、肝臓に関するトラブルの初期発見に役立つ指標のひとつです。 主に肝臓や心臓、筋肉などに存在する酵素で、細胞がダメージを受けると血液中に漏れ出し、その数値が上昇します。 正常値の目安 :男性でおおよそ10~40 U/L、女性で10~35 U/L 上昇するケース:肝炎、アルコール性肝障害、筋肉疾患など ASTは、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)や抗生物質、抗てんかん薬などの使用によって上昇することがあります。 とくに高用量の解熱鎮痛薬は、肝臓への代謝負担が大きく、ASTが一時的に高くなる場合があります。 ALT(GPT)とは? ALT(GPT)は、主に肝臓に多く含まれている酵素で、肝細胞が損傷を受けた際に血中に放出されます。 ASTよりも肝臓に特化した指標とされており、肝機能をダイレクトに反映する重要な数値です。 正常値の目安:男性で10~45 U/L、女性で7~30 U/L 上昇するケース:脂肪肝、薬物性肝障害、ウイルス性肝炎など ALTは、脂質異常症の治療薬(スタチン系)や糖尿病治療薬(メトホルミン)、一部の抗生物質などで上昇することがあります。 また、サプリメントの過剰摂取もALT上昇の原因になる可能性があり、「健康のために摂ったつもり」が肝臓に負担をかけるケースもあります。 γ-GTPとは? γ-GTP(ガンマグルタミルトランスぺプチダーゼ)は、肝臓や胆道に関係する酵素で、アルコール摂取や薬物、胆道系の異常によって上昇しやすい数値です。 とくに、アルコール性肝障害との関連が深い指標です。 正常値の目安:男性で10~70 U/L、女性で10~40 U/L(施設によってやや異なる) 上昇するケース:アルコール性肝障害、胆道閉塞、脂肪肝など γ-GTPは、抗てんかん薬(フェニトイン、カルバマゼピン)や精神安定剤(バルビツール酸系)、一部の抗菌薬などで上昇することがあります。 また、鎮静剤や睡眠薬の長期使用でもγ-GTPが高くなる場合があります。 \まずは当院にお問い合わせください/ 薬による肝臓の負担を軽減する方法 薬は正しく使えば健康の回復や症状の改善に大きな力を発揮しますが、使い方を誤ると肝臓に負担をかけてしまうこともあります。 本章では、薬の服用による肝臓への負担をできるだけ軽減するため、次の3つの方法を紹介します。 医師・薬剤師に相談しながら服用する 用法・用量を守る(過剰摂取しない) アルコールと併用しない 医師・薬剤師に相談しながら服用する 複数の薬を同時に使うことで、肝臓に過度な負担がかかることがあります。 薬を服用する際は、自己判断で市販薬やサプリメントを追加するのではなく、必ず医師や薬剤師に相談することが大切です。 とくに持病がある方や長期間薬を使用している方は、定期的な血液検査で肝臓の数値を確認しながら、服薬を見直すことも検討しましょう。 用法・用量を守る(過剰摂取しない) 「早く治したいから」と、決められた用量を超えて薬を飲むことは非常に危険です。 解熱鎮痛薬や風邪薬などは市販でも手軽に手に入りますが、過剰摂取すると肝臓に強いダメージを与えることがあります。 薬は決められた量・タイミングで飲むことが、肝臓の負担を最小限に抑える基本です。 アルコールと併用しない アルコールは肝臓で分解されるため、薬と一緒に摂取すると肝臓への負担がさらに大きくなります。 解熱鎮痛剤や抗生物質など、肝臓に影響を与えやすい薬を服用している場合のアルコールの摂取は、数値異常や薬物性肝障害のリスクを高めることになります。 薬を服用中は、なるべくアルコールは控えるようにしましょう。 薬以外で肝臓に負荷がかかる要因 薬の服用だけでなく、日常生活の中にも肝臓に負担をかける要因は多く存在します。 代表的な要因は次のとおりです。 アルコールの過剰摂取 脂肪肝や肥満 睡眠不足や過労 サプリメント・健康食品の過剰摂取 上記の要因が重なることで、肝臓が処理しきれず、薬による影響がより強く出る可能性もあるため注意が必要です。 肝臓は自覚症状が出にくい「沈黙の臓器」ともいわれているため、気づかないうちにダメージが蓄積していることも少なくありません。 薬を安全に使うためにも、日常的に肝臓への負担を減らす意識を持つことが大切です。 肝臓の数値を正常化するためにできること 肝臓の機能は体全体の健康に大きな影響を与えるため、定期的に肝臓の状態をチェックし、必要な対策を講じることが重要です。 本章では、肝臓の数値を正常化するためにできることとして次の2つがあります。 肝臓の状態を定期的にチェックする 肝臓に優しい生活習慣を継続する それぞれについて、詳しく解説します。 肝臓の状態を定期的にチェックする 肝臓の数値を正常化するための第一歩は、健康診断で定期的に肝機能をチェックすることです。 肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、多少ダメージを受けていても自覚症状が出にくいため、異常があっても気づかないことがよくあります。 健康診断では、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値が肝臓の状態を把握する指標として確認されます。 もし検査結果で数値が基準値を超えていた場合は、原因の特定が重要です。 たとえば、薬の服用歴や飲酒の習慣、肥満の有無などを医師と一緒に振り返り、生活習慣や薬の見直し、再検査などの対策がとられます。 健康診断の結果は「見て終わり」にせず、早期に対策を講じることが大切です。 とくに、薬を継続して服用している人や肝臓に負担をかける生活習慣がある人は、年に一度の健康診断を習慣にすることで、肝機能の異常を早期にキャッチしやすくなります。 肝臓に優しい生活習慣を継続する 肝臓の数値を正常化するためには、生活習慣の改善が不可欠です。 まず、バランスの取れた食事を心がけ、肝臓に負担をかける脂肪分やアルコールの摂取を控えましょう。 脂肪肝や肥満は肝臓に大きな負担をかけるため、適度な運動を取り入れて体重管理を行うことも大切です。 また、睡眠は肝臓の修復を助けるため、質の良い睡眠を十分にとることもポイントです。 生活習慣を改善することにより、肝臓の機能が回復し、数値が正常範囲に戻ることが期待できます。 肝臓は自己修復力がある臓器なので、日々のケアを続けることで、肝機能が向上しやすくなります。 まとめ|肝臓の負担が少ない適切な食事・運動で異常数値を防ごう 肝臓は私たちの体内で薬やアルコール、老廃物の処理などを担う重要な臓器ですが、知らず知らずのうちに負担がかかっていることも少なくありません。 薬を服用している場合、肝臓はその成分を代謝・分解するために大きく働くことになり、負担が蓄積すると数値異常や薬物性肝障害のリスクも高まります。 肝機能の異常を防ぐためには、日々の生活習慣の見直しが何より大切です。 バランスの良い食事と脂肪・糖分・アルコールの過剰摂取を避けることで肝臓負担を軽減できます。 定期的な健康診断での数値チェックと異常時の早期受診も大切です。薬との付き合い方を見直し、肝臓に優しい生活を心がけましょう。 肝臓の健康状態に不安がある方は、当院「リペアセルクリニック」での再生医療もご検討ください。専門医が個別に合わせた治療をご提案しています。ぜひご相談ください。
2022.03.25 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
脊髄損傷を負っても、適切なリハビリやサポートを受ければ、スポーツを再び楽しむことは十分に可能です。 実際、多くの方がレクリエーションから競技スポーツまで幅広く取り組み、社会参加や自己実現の手段として活用しています。 本記事では、脊髄損傷を経験された方やそのご家族、支援者の方にとって、スポーツが前向きな人生を築くきっかけとなるよう、役立つ内容をまとめました。 脊髄損傷後にスポーツを始めるための参考になれば幸いです。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、脊髄損傷の治療に用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。ぜひ登録してご活用ください。 脊髄を損傷しても可能なスポーツ 脊髄を損傷しても、身体の状況に応じて参加可能なスポーツは数多くあります。 ここでは、パラリンピック正式競技・国内のスポーツ・国内外のスポーツにわけて、それぞれ情報を表にまとめました。 パラリンピック正式競技 以下は、障害のあるアスリート(脊髄損傷を含む身体障害者)が参加できるパラリンピック正式競技です。 競技名 連盟・協会 対象者 競技概要 陸上 日本障害者陸上競技連盟 神経機能残存レベルC6前後から可能な例あり。障害の種類・程度で細かくクラス分け。 一般の規則に準じつつ、障害に応じたルール・用具を適用。専用の三輪車(レーサー)を用いて行う。大分国際車いすマラソンが有名。 水泳 日本身体障害者水泳連盟 障害の原因を問わず、運動機能によって10クラスに分類。 一般の規則に準じて実施。下肢障害がある選手は水中スタートが可能。障害の程度により競技内容が調整される。 車いすテニス 日本車いすテニス協会 下肢または上下肢に恒久的障害がある者。 一般のルールに準じ、ツーバウンドルールを追加。車いす操作も技術の一部。専用車いすを使用。 ボッチャ 日本ボッチャ協会 四肢・体幹に重度障害のある者。 ジャックボールにどれだけ近づけられるかを競う。アシスタントによる補助具使用も可能。個人・ペア・チーム戦がある。 卓球 日本肢体不自由者卓球協会 車いす使用者など、障害に応じた5クラス。 サービスやトスのルールが障害に応じて調整される。個人戦・団体戦あり。 アーチェリー 日本身体障害者アーチェリー連盟 五つのクラスに分類され、重度では車いす使用の四肢麻痺者も含む。 一般のルールを基に、用具や補助具(リリーサーなど)の使用が認められる。リカーブ・コンパウンドの種目がある。 車いすフェンシング 日本車いすフェンシング協会 A級、B級にクラス分け。 腕の長さに応じて車いすを固定。フルーレ・エペ・サーブル種目あり。上半身の技術とスピードが求められる。 パワーリフティング 日本パラ・パワーリフティング連盟 障害の程度でなく、体重別に10階級で分類。 ベンチプレス種目を行う。バーベルを胸に下ろし、再度押し上げる試技。 射撃 日本障害者スポーツ射撃連盟 上肢に障害がある者、スタンド使用が必要な者等で2分類。 ライフル・ピストルで射撃し、精密さを競う。精神的集中力も必要。 ウィルチェアーラグビー 日本ウィルチェアーラグビー連盟 頸髄損傷など四肢障害のある者。 前方パスや車いすでのタックルが認められるラグビー。持ち点制度あり。 車いすバスケットボール 日本車椅子バスケットボール連盟 持ち点制度で障害の程度に応じた選手構成。 一般のルールに準じつつ、車いす操作に関する特別ルールあり。 ボート 日本アダプティブローイング協会 使用できる部位によって4分類。 シングル・ダブル・フォアの種目を1000m直線コースで競う。 ハンドサイクル 日本ハンドサイクル協会 肢体不自由者 手で回す自転車型の競技。年齢・性別問わず楽しめる。 スキー 日本チェアスキー協会 座位・立位・視覚障害に分類。係数で公平性を調整。 アルペンスキー4種目に加え、スーパーコンビなどもあり。用具に工夫。 バイアスロン 日本障害者クロスカントリースキー協会 クロスカントリーと射撃の複合競技。 呼吸・精神力のコントロールが必要な耐久系競技。 クロスカントリー 日本障害者クロスカントリースキー協会 専用スキーとストックで雪原を滑走しタイムを競う。 「雪原のマラソン」とも呼ばれる耐久レース。 アイススレッジホッケー 日本アイススレッジホッケー協会 両足麻痺などの障害者 スレッジと短スティックを用いて行う激しい接触競技。 車いすカーリング 日本車椅子カーリング協会 車いす使用者(男女混合) 一般ルールに準じる。戦略性が高く「氷上のチェス」とも呼ばれる。 国内のスポーツ 日本国内では、独自に発展してきた種目が多くあり、パラリンピック競技とは別に地域や全国規模の大会で活発に行われています。 以下は、脊髄損傷を含むさまざまな障害のある方に対して、運動機会や社会参加の一助として広く推奨されている競技です。 競技名 連盟・協会 対象者 競技概要 フライングディスク 日本障害者フライングディスク連盟 男女別・座位・立位による4区分。障害の程度や性別による分類はなし。 アキュラシー(10投中の通過数を競う)とディスタンス(飛距離を競う)の2種目。専用ゴールを使用し、全国障害者スポーツ大会の公式競技。 車いすツインバスケットボール 日本車椅子ツインバスケットボール連盟 四肢麻痺者。運動能力に応じて持ち点があり、コート上の合計は11.5点以内 車いすバスケットを基に開発。正規ゴールと1.2mの低い補助ゴールを使い分ける。障害の状態に応じてパスの工夫が求められる。 電動車いすサッカー 日本電動車椅子サッカー協会 自立歩行不可の重度障害者。上体保持が困難な選手も含む。男女の制限なし。 1チーム4人でプレー。ジョイスティックで操作する電動車いすにフットガードを装着し、バスケットコート上でプレー。スピード感と操作技術が魅力。 ハンドボール(車いす) 日本車椅子ハンドボール連盟 車いす使用者6名中、上肢障害を伴う選手が2名以上必要。 スポンジ製ボールを使用し、6人制でゴールを競う。バスケ未満の身体能力でも楽しめる競技として、リハビリ・レクリエーション要素も重視される。 国内外のスポーツ 以下は、競技性とレクリエーション性の両面を持ち、国内外での普及が進んでいるスポーツです。 なかには、健常者と同じ土俵で競える種目も多く、スポーツによる社会参加や自己実現の機会として注目されています。 競技名 連盟・協会 対象者 競技概要 車いすビリヤード 日本車椅子ビリヤード協会 車いす使用者。障害の程度によって2クラスに分かれる。 ナインボール中心のポケットビリヤード。健常者と混合でプレーできる国際大会もあり。規則は一般に準じつつ、車いす特有の制限がある。 車いすダンス 日本車いすダンススポーツ連盟 車いす使用者 デュオ(車いす同士)やコンビ(車いす+健常者)で踊るダンス競技。世界大会もあり、芸術性と競技性を兼ね備える 車いすゴルフ 日本障害者ゴルフ協会 車いす使用者 一般のコース・ルールを活用。専用カートや車いすでのプレーが可能で、全国のゴルフ場でも開催例あり。 スキューバダイビング 日本バリアフリーダイビング協会 誰でも(障害の種類を問わず) 浮力により身体への負担が軽減されるため、とくに肢体不自由者に人気。全国に障害者向けスクールがあり、国際的にも広がりを見せる。 脊髄損傷後のスポーツの始め方3ステップ 脊髄損傷後の身体は非常に繊細で、スポーツを再開するまでには段階的なリハビリが欠かせません。 無理のないプロセスを踏むことで、二次的な障害を防ぎつつ、日常生活への適応や社会参加を目指すことが可能です。 ここでは、リハビリからスポーツ参加までの流れを3つのステップにわけて解説します。 ①全身状態を管理しながらリハビリ 損傷直後は、神経の損傷部位の安定を最優先に考え、ベッド上での安静や患部の固定が求められます。 リハビリは、心肺機能・筋力・関節可動域の低下を防ぐことが目的です。 理学療法士などが手足を動かす他動運動(受け身で動かしてもらう運動)や呼吸トレーニングから始め、状態によっては早期に座位練習を導入し、できるだけ早い段階での生活動作の獲得を目指します。 ②退院後は自宅でリハビリ 医療機関での集中リハビリを終えた後は、自宅や地域のリハビリ施設で継続的に運動療法を行うことが推奨されます。 とくに、腰に近い部分の脊髄損傷で神経が完全には断たれていない場合は、、歩行可能となるケースもあり、日常生活動作の改善を中心に無理なく体を動かすことが回復につながります。 ③回復状況を見ながらスポーツを開始 いつからスポーツを再開できるかは、麻痺の程度や体幹の安定性、筋力の回復具合によって異なります。 初期段階ではストレッチや座位での軽運動から始め、医師や理学療法士の指導のもと、徐々に負荷を高めていくのが一般的です。たとえば、軽いウォーキングやプール内運動などは、比較的早期に取り入れられる場合があります。 一方で、腰部への負荷が高いゴルフや野球は、損傷部位や治療内容によって異なりますが、一般的にはコルセットが外せるようになるまで難しいでしょう。 障害者スポーツには、障害の種類や程度に応じた多彩な種目があり、競技志向だけでなく、レクリエーション型のスポーツも存在します。 まずは身体の状態に合った活動から始め、運動の楽しさや達成感を感じることが大切です。 脊髄損傷者のスポーツにおける「クラス分け」とは 障害の有無に関係なく公平に競技が行えるようにするために、パラスポーツでは「クラス分け(Classification)」という制度が導入されています。障害の種類や程度に応じて選手をグループに分け、競技上の優劣が生じないように調整する仕組みです。 脊髄損傷には、完全麻痺や不全麻痺といった種類があり、残っている運動機能も人によって異なります。同じ障害名でも実際の身体機能には差があるため、機能的な公平性を保つ必要があるのです。 クラス分けでは程度の差を考慮し、可能な限り同程度の身体機能を持つ選手同士が競えるよう調整されます。 クラス分けの種類 クラス分けの基準は、競技や大会の種類によって異なります。 たとえば、パラリンピック競技では「国際パラリンピック委員会(IPC)」が定める「IPCクラス分けコード」に従って分類されるのが特徴です。 一方、国内の障害者スポーツ大会やリハビリ施設のイベントでは、それぞれ独自の基準が設けられている場合があります。 また、同じ競技でも種目によってクラス分けの方法は異なりますが、いずれもクラス分けの目的は競技の公平性の確保です。 誰でも競技に参加できるのか 国際大会であるパラリンピックに参加するには、「最小障害基準(Minimum Disability Criteria/MDC)」を満たしていることが必要です。 競技に支障をきたす明確な障害が存在することを示す基準で、該当しない場合は出場資格が認められません。 一方、日本国内の大会や地域スポーツイベントでは、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳を持っていれば、一定の条件のもとで出場できる場合があります。 競技レベルや開催規模に応じて参加条件が異なるため、主催者への確認が必要です。 どんな人が参加しているのか クラス分けの対象となる障害は、脊髄損傷による四肢麻痺や対麻痺のほか、脳性まひによるアテトーゼ(不随意運動)や、手足の切断、視覚障害など多岐にわたります。 たとえば、脊髄を損傷した方は、筋力低下により筋肉を意図的に動かすことが難しかったり、関節の可動域が制限されたりする場合があります。 こうした機能的な障害の程度を基準に、それぞれの競技で適切なクラスに分類され、公平な条件のもとで競技に参加することが可能になるのです。 クラス分けの流れ パラスポーツの大会で正式な記録を残すには、事前に「クラス分け」を受けておくことが必須です。 クラスを持たずに出場した場合の成績は公認記録とならないため、競技参加前に正式な評価を受ける必要があります。 クラス分けは、身体機能評価・技術評価・競技観察」の3つのプロセスから構成され、障害の程度とスポーツパフォーマンスを総合的に判断して、最も適したクラスに分類されます。 ① 身体機能評価(Physical Assessment) 医師や理学療法士などの専門スタッフによる問診をはじめ、筋力テスト、関節の可動域(どこまで動かせるか)、姿勢保持やバランス能力などを確認します。 スポーツ参加に必要な最低限の身体条件(最小障害基準)を満たしているかが判定されます。 ② 技術評価(Technical Assessment) 競技に必要な動作(例:ラケットの振り、投球、スタート動作など)を事前に実演し、そのパフォーマンスやスキルの程度を評価します。 スポーツごとの特性に基づき、どのクラスに属するかは技術評価で仮決定されます。 ③ 競技観察(Observation Assessment) 実際の大会で初めて競技に出場する際(First Appearance)には、事前評価で仮決定されたクラスが適切かどうかを審判や専門スタッフが観察し、最終的にクラスが確定されます。 不適切なクラス配置による、競技上の不公平を防ぐのが目的です。 クラス分けを実施する人 正式なクラス分けは、専門の資格を持つ「クラシファイヤー(Classifier)」によって行われます。 クラシファイヤーとは、障害の評価と競技特性に関する専門知識・技術を習得し、認定を受けた評価者です。 パラリンピックや公認の国内競技大会では、クラシファイヤーによるクラス分けが前提となっており、非公認の判定では公式記録として認められません。 クラス分けは1名で判断されるのではなく、2〜3名のクラシファイヤーが「パネル」としてチームを組み、ひとりの選手の評価を協議の上で決定します。 この体制により、個人の主観に偏らない公平な評価が保たれているわけです。 なお、クラシファイヤーには次の2種類があります。 国際クラシファイヤー(International Classifier) 国際パラ陸上競技連盟(World Para Athletics)など、世界の競技団体によって認定され、パラリンピックや国際大会でのクラス分けを担当する資格です。 国内クラシファイヤー(National Classifier) 日本パラ陸上競技連盟など国内の競技団体が認定し、日本国内の大会でクラス分けを実施する資格です。 脊髄損傷のスポーツにおけるクラス分け記号の見方 パラスポーツでは、公平な競技を実現するために、クラス分けごとに「記号(クラスコード)」が付与されます。選手がどの競技種目に、どのような障害の状態で、どのクラスに属するのかを明確に示すための記号です。 たとえば、「T33N」のように表示され、左から競技種目・障害の種類・障害の程度・クラス・ステータスの順に配置されます。 以下では、それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。 1.競技種目 クラス記号の最初の1文字目は、選手が参加する競技の種別を表しています。 T(Track):陸上の走る・跳ぶ種目に該当(例:100m走、走り幅跳びなど) F(Field):陸上の投げる種目に該当(例:砲丸投げ、やり投げなど) 2.障害の種類 クラス記号の2桁目と3桁目は、障害の種類を示しています。脊髄損傷もここに含まれる分類があります。(文献1) 10番台:視覚障害のある競技者 20番台:知的障害のある競技者 30番台:脳性の麻痺がある立位競技者と車いすや投てき台を使用する競技者 40番台:低身長・脚長差・切断(義足不使用)・関節可動域制限・筋力低下のある競技者 50番台:脚長差・切断・関節可動域制限・筋力低下があり車いすや投てき台を使用する競技者 60番台:足の切断から義足を装着する競技者 3.障害の程度 次に続く1桁の数字は、障害の重さを示します。 0〜9の数字が割り当てられ、数字が小さいほど障害の程度が重く、大きくなるほど機能がより多く残っていることを意味します。 4.クラス・ステータス 最後のアルファベットは、その選手のクラス分けの状態を表しています。 N(New):これまでクラス分けをされたことがなく、新たにクラス分けをされる者 R(Review):クラス分けをされたが、再びクラス分けを必要とする者 C(Confirmed):クラスが確定された者 脊髄損傷後にスポーツをはじめる際の注意点 脊髄損傷後の身体には多様な変化が起こるため、スポーツを再開・開始する際には慎重な配慮が求められます。 筋力や感覚だけでなく、自律神経や姿勢制御といった内部機能も影響を受けているため、適切な知識と準備が欠かせません。 ここでは、脊髄損傷者が安全にスポーツに取り組むために留意すべき3つのポイントを紹介します。 体温コントロールと熱中症 脊髄損傷によって自律神経が障害されると、体温調節機能が低下し、発汗が困難になる場合があります。 その結果、暑い環境では体温が上昇しやすく、熱中症のリスクが高まるため、屋外での活動時や運動前後には以下の点に注意が必要です。 こまめな水分補給(可能であればスポーツドリンクなど電解質を含む飲料を選ぶ) 通気性の良い服装の着用 頻繁な休憩と日陰でのクールダウン 扇風機や冷却グッズの活用 また、体温調節に不安がある場合は、室内での運動を選択するほか、運動前後に体温をチェックしておきましょう。 自律神経過反射と異常高血圧 損傷部位がみぞおちのあたり(T6)より上の方に起こりやすいのが「自律神経過反射」と呼ばれる症状です。 急激な高血圧を伴う発作で、以下のような症状が現れます。 激しい頭痛 顔面紅潮や発汗 鼻づまり、吐き気 損傷レベルより上の発汗や異常感覚 上記の症状が現れた場合は運動を直ちに中止し、衣類や装具の圧迫、排尿・排便のトラブル、座位バランスの崩れなどを確認します。 原因が特定できなければ、すぐに医療者に連絡してください。 車いす競技での二次障害 車いす使用者がスポーツに参加する際に注意すべきなのが、上肢の「オーバーユース(過使用)」による障害です。 とくに、肩関節の故障が頻発しやすく、車いす操作とスポーツ動作の両方で酷使されることが主な要因となります。 二次障害を防ぐためには、以下のポイントを押さえておきましょう。 肩甲骨周囲筋のストレッチ 上腕三頭筋・三角筋などの補強トレーニング 理学療法士によるフォーム指導 姿勢の見直しと座位保持バランスの強化 定期的なメディカルチェック 肩だけでなく、褥瘡(じょくそう:床ずれ)や体幹筋の衰えも見逃さず、予防的な対策を取り入れることが理想です。 スポーツの可能性を広げる脊髄損傷の「再生医療」 脊髄損傷によって一度失われた運動・感覚機能は、回復が困難とされてきました。 しかし近年では、再生医療という新たな治療の選択肢が登場しています。 再生医療とは、体が本来備えている傷の修復プロセスに関わる細胞を活用する治療法です。 脊髄損傷に対しては「幹細胞治療」が用いられており、患者様自身から採取した幹細胞を培養し、損傷した部位に投与します。当院「リペアセルクリニック」では、損傷部位により近いところに幹細胞を届けるため、脊髄腔内への注射によって投与を行っています。 早期回復を目指す方や手術を避けたい方、アスリートでも導入が進んでおり、体への負担を抑えた治療法を検討している方の選択肢となっているのです。 当院で行っている脊髄損傷の再生医療について、以下の記事で症例を紹介しているので、参考にしてみてください。 まとめ|脊髄損傷後もさまざまなスポーツを行える 脊髄損傷があっても、障害の程度や体の状態に合ったスポーツを選べば、無理なく楽しむことが可能です。 競技スポーツからレクリエーションまでさまざまな種目から選択でき、自分に合ったスポーツを選ぶことで、体力を保ちながら社会に参加できます。 医師やリハビリ専門職と相談しながら、安全に取り組んでいきましょう。 また、再生医療などの新しい治療選択肢も広がっています。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、脊髄損傷の治療に用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施していますので、ぜひご登録ください。 頚髄の中心部分の損傷による「中心性脊髄損傷」については、以下の記事で詳しく解説しています。 脊髄損傷とスポーツに関するよくある質問 脊髄を損傷して活躍しているスポーツ選手はいる? はい、います。たとえば、車いすテニスの国枝慎吾選手は脊髄損傷を乗り越え世界で活躍しています。 脊髄損傷C6レベルの方の車いすからベッドへの移動方法は? C6(頚髄の下部)損傷の方には、車いすをベッドに直角に寄せ、体幹を支えながら手の力で移乗する「直角アプローチ」という方法があります。 手首を反らせると指が自然に曲がる仕組みを利用した「テノデーシス動作」など、残された機能をうまく使う工夫が重要です。 キャスター上げが可能になる脊髄損傷レベル(部位)は? C7〜C8レベル(首の付け根あたり)の損傷であればキャスター上げが可能となり、屋外移動の自由度が増します。 ツインバスケや車いすテニスなど、上肢機能を使うスポーツにも参加可能です。 脊髄損傷の方の車いすの選び方は? 車いすは、以下のポイントを押さえた上で選びましょう。 どれだけ体を動かせるか 1日どれくらい使うか どうやって乗り移るか 屋内外どちらで使うか 上記をふまえて、予算とのバランスを考慮すると良いでしょう。 また、軽量で小回りの利くタイプや外出向けの頑丈なタイプなど、身体状態と生活スタイルに合った車いすを選ぶことも大切です。 (文献1) TOKYO 2020 PARALYMPIC GAMES HANDBOOK|東京都オリンピック・パラリンピック準備局
2022.03.25 -
- 健康・美容
年齢とともに、「最近つまずきやすくなった」「階段の上り下りがつらい」と感じていませんか? それは、筋肉の衰えが進行しているサインかもしれません。 筋肉の衰えは、体型の変化といった外見上の問題にとどまらず、転倒や骨折、要介護状態を招く深刻な健康リスクにつながるため注意が必要です。 本記事では、筋肉が衰える原因や初期症状、進行によるリスクを解説し、セルフチェック方法や食事・運動を中心とした具体的な対策もご紹介します。 最後までご覧いただき、いつまでも元気で自立した生活を続けるための第一歩を踏み出しましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、変形性関節症や軟骨損傷などの治療に用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施していますので、ぜひご登録ください。 筋肉の衰えは加齢が主な原因 加齢は、筋肉の衰えにおいて最も大きな要因です。 年齢を重ね、自然と筋肉量や筋力が低下しやすくなる現象は「サルコペニア」と呼ばれており、要介護状態に陥る一因となります。さらに筋肉の衰えは、身体機能やバランス能力の低下を引き起こすため注意しなければなりません。 また、骨折や関節障害の原因となる「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」や、虚弱な状態で健康障害や介護が必要になる「フレイル」の進行にも深く関与しています。 とくに、高齢者は食事が偏りがちになり、たんぱく質・ビタミン・ミネラルなど筋肉の維持に必要な栄養素が不足しやすいため注意が必要です。 筋肉が低下した状態を「サルコペニア」と呼ぶ サルコペニアとは、筋肉量が減少し、それに伴って筋力や身体機能も低下する状態を指す医学用語です。 加齢に伴って自然に起こる「一次性サルコペニア」と、病気や栄養不良、運動不足などが原因で生じる「二次性サルコペニア」に分類されます。 サルコペニアが進行すると、歩行速度の低下やつまずき・転倒が増えるため、日常生活で動作が制限されるようになる前に対策を講じることが大切です。 また、フレイルやロコモといった加齢に伴って起こりやすい症状や状態と重なって進行しやすく、結果的に介護が必要な状態につながる恐れもあります。 筋肉の衰えは気づかないうちに進行するため、健康寿命を延ばすには初期段階での発見と対策が欠かせません。 フレイル・サルコペニア・ロコモについては、以下の記事もご覧ください。 筋肉の衰えと同時にしびれや震え(けいれん)があるなら重大な病気かも 筋肉の衰えに加えて手足のしびれや震え、けいれんなどの神経症状が同時に見られる場合は、重大な病気の恐れがあります。 単なる加齢や運動不足による筋力低下ではなく、以下のような脳や脊髄、末梢神経の病気が原因の可能性があるのです。 脊髄損傷 多発性硬化症 筋萎縮性側索硬化症 末梢神経障害 上記は、早期発見・早期治療が極めて重要な疾患です。 筋力の低下に加えて神経症状が見られる場合は、速やかに神経内科や脳神経外科など専門の医療機関を受診しましょう。 筋肉の衰えで生じる症状 筋肉の衰えは、複数の要因が重なって生じてきます。気付かぬうちに進行するため、早めに症状の特徴を知っておくことが重要です。 ここでは、筋肉の衰えで生じる典型的な症状を見ていきましょう。 筋肉量が減少した場合の症状|体重減少など 筋肉量が減ると、その分だけ体重も減少しやすくなります。筋肉は熱産生や水分保持にも関与しており、筋量の低下は冷え性や脱水・熱中症のリスクにもつながります。 また、筋肉が減ることで骨密度も低下し、骨粗しょう症を併発するケースもあるため注意しなければなりません。 気になる体重の変化や冷え、疲れやすさなどがあれば、早めに対処していくことが大切です。 筋力が低下した場合の症状|立ち上がれないなど 筋力低下が進むと、「椅子から立ち上がるのが難しい」「ペットボトルの蓋が開けにくい」といった日常動作で支障が生じます。 脚の筋力が落ちると、椅子から立ち上がる際に何かにつかまらないと難しくなる状態になる恐れがあるのです。また、握力低下によって、缶のプルタブを開けるのが難しいなどの細かな動作にも影響が出ます。 筋力が低下すると、常に最大の力を使ってしまいがちになるため、疲れやすくなる点も見逃せません。動作がぎこちなくなったり、日常生活に支障が出てきたりしたら、筋力低下の可能性を疑いましょう。 身体機能が低下した場合の症状|階段を上り下りできないなど 身体機能が落ちると、歩行速度やバランス、階段昇降などの動作にも支障が出ます。 たとえば、歩行速度が落ちると、青信号のうちに横断歩道を渡り切れないといった事態にもなりかねません。また、階段の上り下りがつらくなった場合は、脚部の機能低下のサインです。 疲れるからと外出を控えるようになると、身体機能のさらなる低下を招く悪循環に陥ってしまいます。身体機能低下は、単に筋肉が弱くなるだけでなく、生活の自由度にまで影響を及ぼす点を理解しておきましょう。 筋肉の衰えによる健康リスク 筋肉の減少や筋力の低下は、単なる身体能力の衰えにとどまりません。 筋肉は、運動や姿勢を保つことだけでなく、代謝・免疫・呼吸・摂食嚥下といった多くの生理機能に関わっているのです。 ここでは、筋肉の衰えによって生じる代表的な健康リスクを解説します。 転倒・骨折から寝たきりになるリスク 筋力が衰えると、姿勢保持やバランス機能が低下しやすくなります。その結果、わずかな段差やバランスの崩れでも転倒しやすくなるため注意が必要です。 高齢者が転倒すると、大腿骨などの骨折を引き起こす危険性が高く、長期入院や安静が続くことでさらに筋力が低下する悪循環に陥ります。 最終的に寝たきり状態となると、日常生活の自立が困難になるケースも少なくありません。 転倒して骨折し、寝たきりになるという流れは、高齢者の健康寿命を大きく縮める要因のひとつになっているのです。 要介護状態になるリスク 筋肉が衰えると、日常生活に必要な以下の基本動作が困難になります。 立ち上がり 歩行 階段昇降 衣服の着脱 さらに進行すると、自力で生活を維持できなくなり、介助を必要とする「要介護状態」に移行します。 とくに、加齢とともに体力・筋力が低下している高齢者では、ちょっとした体調不良や怪我がきっかけとなり、急速に介護依存度が高まる場合も少なくありません。 筋力の低下を早期に察知して予防的な対策を講じることが、介護を必要としない生活を長く維持するためには不可欠です。 生活習慣病が悪化するリスク 筋肉は、糖代謝に重要な役割を担っており、血糖を取り込んでエネルギーとして利用する働きが活発な組織です。 筋肉量が減ると血糖の処理能力が低下し、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病が悪化する可能性が高まります。 さらに、筋肉の減少により基礎代謝も低下し、エネルギー消費量が減ることで肥満のリスクが高まる点も要注意です。 生活習慣病が進行すれば、動脈硬化や心血管疾患にもつながるため、筋肉の維持が慢性疾患の予防や管理にもつながります。 誤嚥性肺炎のリスク 筋肉の衰えは、食べ物を噛んだり飲み込んだりする際に使う、咀嚼筋(そしゃくきん)や嚥下筋(えんげきん)にも影響を与えます。 咀嚼筋や嚥下筋の筋肉が弱くなると、食物や唾液が気管に誤って入る「誤嚥」が起こりやすくなるため注意しなければなりません。誤嚥が繰り返されると、口腔内の細菌が肺に入り込み、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクも高まります。 とくに高齢者においては、免疫力の低下も重なって肺炎の重症化や死亡リスクが高くなるため、口周りや喉の筋肉の機能低下には要注意です。 筋肉の衰えをセルフチェックしよう 筋肉量・筋力が低下し始めると、身体活動や日常動作に支障が出やすくなります。とくに高齢期には、早めの段階で衰えを察知して対策しましょう。 ここでは、医療機関や研究で紹介されている簡単なセルフチェック方法を紹介します。専用機器が無くても自宅で実施可能なので、ぜひ実践してみてください。 指輪っかテスト 両手の親指と人差し指で輪を作り、ふくらはぎの一番太い部分を囲みましょう。輪の方が大きくて隙間ができる場合、ふくらはぎの筋肉量が低下している可能性があります。 ふくらはぎは「第2の心臓」とも呼ばれ、全身の筋肉量の指標にもなる部位です。ふくらはぎが細くなっている状態に気づいたときは、早めに対策しましょう。 開眼立脚位テスト 両手を腰に当て、両目を開けたまま片足を床から数センチ浮かせて立ちます。転倒を防ぐため、壁や椅子のそばで行ってください。 床に着けている「支持足」がずれる、または支持足以外の体の一部が床や壁に触れるまでの時間を最大1分まで測定して記録します。(文献1) 年代別に、以下の時間と照らし合わせてみてください。 30代:55秒 40代:40秒 50代:30秒 60代:20秒 70代以上:20秒以上を目標に 上記の時間を下回る場合は、筋力の低下やバランス感覚(平衡感覚)に問題が起きている可能性があります。定期的にチェックして、ご自身の状態を把握しておきましょう。 筋肉そのものだけでなく身体の安定性もチェックでき、高齢者の転倒リスクの把握に有効なテストです。 5回立ち座りテスト 肘掛けのない椅子に浅く腰かけ、手を使わずに立ち上がり・座る動作を5回繰り返し、かかった時間を測定しましょう。 12秒以上かかる場合、下肢の筋力や持久力が落ちている可能性があります。(文献2) 立ち座りの動作には、大腿四頭筋などの主要な筋肉が関わるため、日常生活動作の基礎を定期的に評価するのに有効です。 ペットボトル開けテスト 未開封のペットボトルを使い、キャップをどのように開けているかを確認します。 正常な握力があれば、親指と人差し指を中心とした「筒握り」で開けられますが、握力が低下していると指先だけでは力が足りず、5本の指全体でキャップを上から覆うように握る「逆筒握り」になりがちです。 日常的な動作から筋力の低下を見つけ出すテストで、とくに上肢の筋肉の状態を把握する手がかりとなります。 筋肉の衰えを防ぐ対策 筋肉の衰えを予防するには、日常生活の中で運動・栄養・生活習慣をバランスよく整えることが欠かせません。 ここでは、筋肉の健康を維持するための対策をご紹介します。 たんぱく質の摂取 筋肉の衰えを防ぐには、たんぱく質の十分な摂取が必要です。 たんぱく質は、筋肉・臓器・皮膚など身体を構成する材料であり、人間の生命維持に不可欠な栄養素のひとつです。とくに、高齢者は筋肉の合成効率が低下するため、意識的にたんぱく質を摂りましょう。 たんぱく質を多く含む主な食品は、以下の通りです。 魚 肉 卵 大豆製品 乳製品 高齢になると食事が単調になりやすく、炭水化物中心の食生活が続くと、たんぱく質不足を招きかねません。全体的に少ない食事量でも、多種類の食材を組み合わせ、バランスの取れた食生活を心がけましょう。 なお、食事の用意が負担になる場合には、ヨーグルトや牛乳、豆腐、納豆など調理不要で手軽に摂れる食品を冷蔵庫に常備しておくと便利です。 下半身のトレーニング 下半身を積極的に動かすことが、筋肉の衰えを予防するのに有効です。 以下では、家庭でも実践しやすい2つの下半身トレーニングをご紹介します。 椅子を利用して大腿四頭筋を鍛える 椅子に浅く腰かけた状態から、ゆっくりと立ち上がる・座る動作を繰り返すことで、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)を効果的に鍛えられます。 膝や腰に痛みがなければ、「立ち座り10回→1分休憩」を1セットとし、最大3セット行いましょう。特別な器具が不要で、椅子があれば誰でも始められます。 以下の2点を意識するとより効果的です。 立ち上がる・座るをなるべくゆっくりと繰り返し、筋肉にしっかり刺激を与える 手を使わずに、脚の筋力にしっかり負荷をかける 片脚で立ち座りする より負荷を高めるには、片脚を少し浮かせた状態で立ち座りを行う方法があります。 椅子の近くにテーブルや壁など支えにつかまるものを用意し、慣れるまでは安全を確保してから実施しましょう。 片脚での立ち座りは、片脚で立ったときのバランス能力・脚全体の筋力・体幹の安定性を同時に鍛えられるため、加齢による動作機能低下を防ぐ上で効果的です。 ゆっくり動作を行い、立ち上がった時に数秒静止するように意識すると、さらに効果が高まります。週に数回、少しずつ回数・セット数を増やし、脚の筋力とバランス感覚を養っていきましょう。 日光を浴びる 筋肉の健康維持には、適度な日光浴も欠かせません。 日光に含まれる紫外線を浴びると、体内でビタミンDが生成されます。ビタミンDは、カルシウムの吸収を助けるだけでなく、筋肉の合成や筋力の維持にも関与している重要な要素です。 とくに、高齢者はビタミンD不足が進みやすく、筋肉の衰えや転倒リスクが高まる要因となります。 1日15~30分程度、腕や脚に日光を浴びる習慣を取り入れるだけでも効果が期待できるので、実践していきましょう。季節や地域、肌の色によって必要な時間は異なります。 筋肉の衰えで運動するときは腰痛や膝の痛みに注意 運動は、筋肉の衰えを防ぐために重要ですが、やり方を誤ると関節や筋肉を傷め、かえって健康を損なう恐れがあります。 高齢者や運動習慣のない方が急に強い運動を始めると、腰や膝に過度な負担がかかり、慢性的な痛みや炎症を引き起こす可能性があるため注意が必要です。安全に配慮しながら、強度・回数・時間を少しずつ段階的に増やしていきましょう。 また、体調がすぐれない日や、猛暑・寒冷時などの過酷な環境では無理をせず、体調管理を優先してください。とくに、関節痛や腰痛、持病(高血圧・心疾患など)がある方は自己判断で行わず、事前にかかりつけ医にまずは相談しましょう。 まとめ|筋肉の衰えを対策して介護リスクを減らそう 筋肉の衰えに対する予防・対策は、将来的な介護リスクを軽減し、自立した生活を長く維持するために不可欠です。 年齢とともに筋力や運動機能は自然と低下していきますが、放置すると転倒・骨折・要介護といった深刻な問題に発展しかねません。 たんぱく質を中心としたバランスの良い食事を意識しつつ、無理のない範囲で体を動かす習慣を取り入れていきましょう。 今回の記事が、介護を必要としない、いきいきとした生活を送る一助となれば幸いです。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、ロコモの原因となる変形性関節症や軟骨損傷などに用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。 膝の痛みなどでお悩みの方は、ぜひご登録いただき、ご活用ください。 筋肉の衰えに関するよくある質問 筋肉の衰えで主な初期症状は? 筋肉が徐々に衰えると、まず以下のような症状が現れます。 以前と比べて力が入りにくくなった 歩くスピードが遅くなったと感じる 階段を上るのがつらい 初期段階では自覚症状が少なく見過ごされやすいため、普段の動きで疲れやすさやつまずきやすさを感じたら要注意です。 筋肉の衰えがはじまる年齢は? 筋肉量は、一般的に20代をピークに減少し始めます。加齢とともに減少ペースが加速し、50代以降に顕著になる傾向があります。 そのため、40代のうちから運動習慣や食事の見直しを始め、筋肉量の維持を心がけることが大切です。 筋肉がない人の特徴は? 筋肉量が少ない人に共通する特徴は以下の通りです。 長時間座る生活が中心で運動習慣がない たんぱく質摂取が不十分、あるいは極端な食事制限を行っている 睡眠が浅い・休息が十分ではない 上記の生活習慣が重なることで、筋肉量の低下リスクが高まります。 筋トレしているのに筋肉が減る・つかないのは何故? 筋トレを行っていても筋肉が増えない、また減る原因として、以下のような要因が考えられます。 負荷が軽すぎて筋肥大刺激が不足している たんぱく質やエネルギーの摂取が十分でない オーバートレーニング・休息不足で筋肉修復が追い付いていない 有酸素運動が過剰で筋肉分解が促進されている 上記を見直せば、筋肉の成長環境を整えられます。 筋肉の衰えは何科を受診すればいい? 筋肉の衰えが疑われる場合、症状に合わせて次の科を受診先として検討しましょう。 「整形外科」または「サルコペニア外来」:下肢・体幹の筋力低下や筋量減少が主体 「脳神経内科」または「脳神経外科」:手足の麻痺・力が入らない・言語や嚥下機能の低下を伴う 筋肉が衰える背景には神経・筋疾患が潜む可能性もあるため、早めに専門医に相談してください。 参考文献 (文献1) 生活習慣病などの情報|厚生労働省「健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~」 (文献2) 高齢者の運動機能セルフチェックお役立ちBOOK|三重県リハビリテーション情報センター
2022.03.25 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 膝の外側の痛み
「インターネットで膝の痛みについて検索しても、自分の膝の症状に当てはまるのかわからない」と悩んでいませんか。 自分の膝の痛みは放置しても治るのか、病院で治療を受けるべきなのかが判断できず、不安になることもあるかもしれません。 膝には靭帯や軟骨、筋肉などさまざまな組織が存在し、損傷や炎症を起こしている部位によって疾患名が変わる可能性があります。自己判断が難しい場合もあるため、気になる場合は早めに整形外科の受診も検討しましょう。 本記事では膝の部位ごとに痛みを感じる病気と対処方法を解説します。 記事を最後まで読めば膝の痛みがある部位ごとに疑われる疾患名がわかり、病院に行くべきか判断する際の参考になるでしょう。 「膝が痛む場所」によって診断結果が変わる可能性が高い 結論から言えば、膝の痛みが出ている場所によって、診断される病名は変わる可能性が高いでしょう。 膝には靭帯や軟骨、筋肉などさまざまな組織があり、どの組織が損傷・炎症しているかによって疾患名が変わるためです。 言い換えると、痛みが出る部位が明確であれば、損傷・炎症している膝の組織や疾患名も予測しやすいといえます。 「膝の内側」が痛む2つの病気 膝の内側が痛い場合は、以下2つの病気が考えられます。 変形性膝関節症 鵞足炎 膝の内側の痛みに悩んでいる方は、自分自身の症状に当てはまるかチェックしてみましょう。また、変形性膝関節症と鵞足炎の詳細については、以下の記事もご参照ください。 変形性膝関節症 変形性膝関節症とは、関節の軟骨がすり減ることで膝関節が変形していく病気です。加齢や筋力低下のほかにも、骨折•感染症も原因となる可能性があります。 主な症状は変形した関節の痛みや可動域の制限、関節水腫などです。初期症状では痛みがある程度ですが、進行していくにつれて変形が大きくなり、炎症反応がみられるようになります。 末期になれば変形が強く関節面がゆがむために関節可動域制限が大きくなり、日常生活に支障がでることも珍しくありません。 鵞足炎 鵞足炎とは、膝の内側に付着する筋肉の腱が炎症を起こす病気です。 ダッシュからのストップやジャンプ動作を繰り返すことで生じる、いわゆるオーバーユース症候群に分類されます。スポーツ選手に多く発症しますが、階段の上り下りや長距離歩行が多い人に発症することも少なくありません。 主な症状は歩くときや椅子からの立ち上がりなど、足に力を入れたときに膝の内側、下方に生じる痛みです。重症化すると荷重時だけでなく、安静時にも痛みを感じることがあります。 「膝の外側」が痛む2つの病気 実際に膝の外側が痛い場合、以下に挙げる2つの病気が考えられます。 腸脛靭帯炎 外側半月板損傷 膝の外側に痛みを感じている方にはこれらの病気が当てはまるかもしれません。痛みで悩んでいる方はぜひチェックして、ご自身の症状と比較してください。 腸脛靭帯炎 腸脛靭帯炎とはランナー膝とも呼ばれ、膝の外側にある腸脛靭帯という組織に炎症がみられる病気です。 膝の曲げ伸ばしを繰り返すことで腸脛靭帯が膝の外側の出っ張り(大腿骨外顆)とこすれ、摩擦によって炎症が起きます。そのため、ランニングなど膝の曲げ伸ばしが多いスポーツが主な原因です。 症状は膝の外側の痛みで、初期では膝を動かしたときのみに痛みを感じます。重症化してくると安静時にも痛みを感じるようになり、痛みがなかなかひきません。 外側半月板損傷 外側半月板損傷とは、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(脛の骨)の間にあるクッションの損傷です。 膝関節の内側と外側にそれぞれありますが、外側にある半月板の損傷が膝の外側の痛みにつながります。損傷の原因はスポーツや日常生活のなかで膝の外側に大きな負担がかかり続けることや、加齢に伴う関節の変性、筋力低下などです。 外側半月板損傷では痛みのほか、関節可動域の制限がみられます。関節運動が不安定になり、膝の曲げ伸ばしの途中で半月板が引っかかることで動かなくなる「ロッキング」も外側半月板損傷の特徴です。 「膝の上側」が痛む2つの病気 膝の上側に痛みを出す病気で考えられるものは以下の2つです。 大腿四頭筋付着部炎 膝蓋大腿関節症 膝の曲げ伸ばしなどで膝の上に痛みを感じる人はこれらの病気が当てはまる可能性があります。自分の症状と照らし合わせてみてください。 また、膝の上の痛みについては以下の記事でも解説していますので、気になる方はこちらもチェックしましょう。 大腿四頭筋付着部炎 大腿四頭筋付着部炎とは、太ももの前にある大腿四頭筋が付着する膝蓋骨(膝のお皿)上部に痛みを生じる病気で、ジャンパー膝とも呼ばれます。 いわゆるオーバーユース症候群に分類され、大腿四頭筋を使いすぎることが原因です。ジャンプ動作やダッシュを繰り返すスポーツ選手に多く発症します。 初期症状ではスポーツ時に限定される痛みが特徴ですが、悪化すると歩行や階段昇降など日常生活でも痛みを感じるようになります。 大腿四頭筋付着部炎(ジャンパー膝)の原因や治療は、以下の記事も参考にしてください。 膝蓋大腿関節症 膝蓋大腿関節症は、大腿骨と膝蓋骨の間にある軟骨が変性することで痛みや関節可動域制限が生じる病気です。 膝の運動に伴い上下に動く膝蓋骨の軟骨が変性することで動きが悪くなり、関節の変形へとつながります。 主な原因は加齢と膝蓋骨の骨折・脱臼です。これらの原因によって膝蓋骨の軟骨が変性、摩耗し、膝の上部に痛みが生じます。 また、膝蓋骨の動きが悪くなることで膝全体の可動域が制限されることもあるでしょう。 「膝の裏側」が痛む2つの病気 膝の裏側に痛みが出る場合に疑われるのは、以下の2つの病気です。 関節リウマチ 膝靭帯損傷 これらの病気は放置すると危険なため、膝の裏側に痛みを感じる方は注意が必要です。ご自身の症状とこの2つの病気が当てはまるかどうか必ずチェックしてください。 また以下の記事も参考にしていただけると幸いです。 関節リウマチ 関節リウマチは、関節の中にある滑膜という組織がなんらかの原因で異常増殖し、炎症を起こす進行性の疾患です。 症状が進行すると関節が破壊され、痛みや関節の変形を伴います。全身の関節に起こる病気ですが、膝であれば膝裏にも痛みを感じることが特徴的です。 関節リウマチは自己免疫疾患だと考えられていて、発症する原因はわかっていません。しかし、30〜40代の女性に発症しやすい傾向があります。 早期発見・早期治療によって症状の進行を抑えることが重要な疾患です。 膝靭帯損傷 膝靭帯損傷は膝にある4種類の靭帯のいずれかが損傷する疾患で、膝の裏の痛みではとくに後十字靭帯損傷が疑われます。 後十字靭帯損傷は事故やスポーツによって損傷しやすい靭帯で、損傷すると膝裏の痛みや膝の伸ばしにくさが出るのが特徴です。 後十字靭帯は自然治癒が難しいため、損傷すると時間経過とともに元どおりになることがありません。すぐに手術をする必要はありませんが、サポーターなどの装具での補強やリハビリが必要です。 【場所別】膝が痛むときの対処法 膝の痛みは、痛む場所によって対処法が異なります。主な対策は以下のとおりです。 膝の内側が痛む場合は「膝に負担をかけないようにする」 膝の外側が痛む場合は「股関節の運動を心がける」 膝の上側が痛む場合は「ストレッチと筋トレを行う」 膝の裏側が痛む場合は「無理をせず医療機関を受診する」 本章を参考に、自分の膝の痛みに合った対処法を試してみましょう。 膝の内側が痛む場合は「膝に負担をかけないようにする」 膝の内側が痛い場合は、「鵞足炎」もしくは「変形性膝関節症」の可能性があるため、膝関節へ負担をかけないことが大切です。 病名によって対処法がやや異なるため、以下の表を参考に試してみましょう。 病気名 対処法 鵞足炎 ・安静にすること ・鵞足につく太ももの内側・裏側の筋肉をストレッチする ・お尻の筋力強化 変形性膝関節症 ・適切な体重にコントロールする ・膝の筋力強化 ・痛み止め(消炎鎮痛剤)の服用 これらの疾患は圧痛の位置によっておおまかに見分けられます。 鵞足炎では膝の内側・下方に圧痛があるのに対し、変形性膝関節症では大腿骨と脛骨の関節面付近に圧痛があります。 圧痛の場所を確認し、可能性のある疾患を見極めた上で適切な対処を行いましょう。 膝の外側が痛む場合は「股関節の運動を心がける」 膝の外側に痛みを感じる場合「腸脛靭帯炎」もしくは「外側半月板損傷」が考えられます。これらの疾患への対処法として、股関節周囲の筋力強化やストレッチが重要です。 腸脛靭帯は股関節の外側から膝に向かって伸びている靭帯で、膝を支える役割がある組織です。お尻の筋肉とつながっているため、股関節の筋力強化やストレッチで強くしなやかになり、腸脛靭帯炎の予防になるでしょう。 外側半月板は膝の中にあるクッションで2つある半月板のうち、外側にあるものを指します。身体の外側に体重がかかると外側半月板の負担になるため、股関節の筋力強化・ストレッチを行い、体重のかかり方をコントロールする必要があります。 股関節を捻るストレッチやあぐらをかくストレッチが効果的です。筋力強化は仰向けでのお尻上げやスクワットといったお尻の筋肉に力をいれるトレーニングを取り入れてください。 また、どちらの疾患もオーバーユースが要因となるため、痛みが強いときには安静も重要です。 膝の上側が痛む場合は「ストレッチと筋トレを行う」 膝の上に痛みを感じる場合「大腿四頭筋付着部炎」や「膝蓋大腿関節症」の可能性があるため、太ももの筋肉の柔軟性を高めましょう。 大腿四頭筋付着部炎と膝蓋大腿関節症は大腿四頭筋の柔軟性が低下することで発症しやすくなります。膝を深くまで曲げるストレッチや、足を後ろに引いて骨盤を前に出すストレッチで大腿四頭筋の柔軟性が高まるでしょう。 また、ストレッチだけでなく筋力強化も重要です。大腿四頭筋を強化することで膝蓋骨の動きがスムーズになり、また付着部の炎症も起きにくくなります。仰向けでの脚上げやスクワット、段差昇降が有効なため、ぜひ試してみてください。 なお、大腿四頭筋のストレッチの詳しいやり方はこちらでも解説しています。ぜひご覧ください。 膝の裏側が痛む場合は「無理をせず医療機関を受診する」 膝の裏に痛みを感じるときは「関節リウマチ」や「膝靭帯損傷」が疑われます。自分での対処が難しいケースがほとんどであるため、可能な限り早く整形外科を受診しましょう。 整形外科を受診する場合には、MRIがある施設がおすすめです。MRIがあれば関節の変形や炎症の程度がわかるため、適切な診断を受けられます。 また、関節リウマチを疑う場合には採血も必要なため、受診する前に採血が可能か問い合わせておくと安心です。 まとめ|膝の痛みは場所によって原因が違う!気になる人は早めの受診がおすすめ 今回は膝が痛む場所からわかる膝の病気について詳しく解説しました。 個々の経過や受傷状況などによって専門医による診察が重要であることはいうまでもありませんが、膝の痛む場所によってそれぞれ特徴的な膝の病気があることも事実です。 もし膝の痛みの原因が自分で特定できない場合は、病院で受診することをおすすめします。 また、当院「リペアクリニック」では、膝の痛みに関する治療法として、再生医療を行っています。 2023年12月には、国内初の「分化誘導による関節の再生医療」による治療を厚生労働省に特許申請し、受理されました。 「分化誘導による関節の再生医療」は、従来より高い再生能力を持った幹細胞による治療であり、幅広い膝疾患への効果が期待できます。 膝の痛みにおいて、手術以外の選択肢を持ちたいと考えている方は、ぜひ当院の「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」からご相談ください。 この記事が、膝の痛みの原因や対処法を知り、適切な治療を受けるための参考資料になれば嬉しく思います。 膝の痛みについてよくある質問 膝の痛みの原因はなんですか? 損傷・炎症がある組織によって異なります。 膝の痛みは靭帯や軟骨といった組織が損傷・炎症を起こすことで生じます。これらの組織は部位によって違うため、痛みの部位だけでは原因組織の断定はできません。 そのため、原因を特定するためには病院を受診しましょう。とくにMRI検査をすれば詳細な組織の評価ができるため、MRI撮影ができる施設がおすすめです。 膝が痛むとき受診は必要ですか? 受診することをおすすめします。 もし痛みの原因が軟骨や靭帯である場合、自然治癒が見込めません。そのため、正しい治療をしなければ痛みが長引く可能性があります。 病院を受診して痛みの原因を特定できれば、痛みの改善に向けた正しい治療が受けられるでしょう。また、再発防止に向けたアドバイスももらえるため、可能なら早めの受診をおすすめします。
2022.03.23






