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- 肘関節
- 野球肘
- 上肢(腕の障害)
- 動作時の痛み
- スポーツ外傷
野球肘(離断性骨軟骨炎)は野球以外でもスポーツする子供に発症の可能性! 子供にスポーツを習わせているとき、親として最も心配なのが、怪我ではないでしょうか。 スポーツには怪我がつきものですが、練習を頑張れば頑張るほど、気づかずに手術が必要になってしっまたり、痛みがずっと残ってしまったりして結果的にスポーツを諦めないければならない事例が実際にあります。 しかし、正しい知識を持っていることで子供の痛みにも適切な対応ができ、体に負担が少ない治療ができる可能性があります。 今回は、野球の投球動作や、体操などの選手に起こりやすい「肘離断性骨軟骨炎」について解説していきます。肘離断性骨軟骨炎は、やや珍しい病気ですが、早期発見により手術が回避できる可能性のある病気です。 ぜひ正しい知識を身につけて、子供の身体を守ってください。 肘離断性骨軟骨炎:スポーツ(野球や体操、サッカーでも)をしている子供に多く見られる症状です 肘離断性骨軟骨炎とは何か 肘離断性骨軟骨炎とは、肘の外側の部分(上腕骨小頭)の軟骨に傷がつき、肘の痛みや関節の動きが悪くなってしまう病気です。「野球のようなピッチング、投球といった動作を伴うスポーツ」をやっている子供に多く、年齢としては9-12歳に多く見られます。 競技人口の多さから日本では野球を習っている子供に多く見られていますが、体操競技やサッカーをしている子供でも報告されており、この病気が発症する原因は正確にはわかっていません。 遺伝などの要素に加えて、投球などによって肘に繰り返し負荷がかかることで発症するのではないかと言われています。 肘離断性骨軟骨炎 発症部位 肘の外側の部分(上腕骨小頭) 状況 軟骨に傷がつき、肘の痛みや関節の動きが悪くなる 原因 ピッチングのような投球動作、体操競技、サッカー競技、その他 発症年齢 9~12歳といった子供に多くみられる 肘離断性骨軟骨炎の症状 肘離断性骨軟骨炎の最も多い症状としては肘の痛みと言われますが、特に投球時に肘の外側が痛くなるのが特徴です。また、痛みが出る前に肘の動かしにくさ(可動域制限)を訴えることもあります。 軽傷であれば手術などをしなくても改善することが多く、早期発見・早期治療が重要な病気ですが、痛みが出てきたときには病気が進行していることも多いため注意が必要です。 無症状の9歳から12歳までの野球選手に対し検査を行ったところ、1-3%程度の割合で肘離断性骨軟骨炎が見つかったという報告もあり、「軽い痛みであっても肘の痛みを感じるようであれば整形外科の受診」をお勧めします。 肘離断性骨軟骨炎の治療方針 肘離断性骨軟骨炎の治療は、病状の進行度によって異なります。正しい治療方針を決定するためには、病気の進行度をしっかりと判断する必要があります。そのため、肘離断性骨軟骨炎を疑った場合には単純レントゲン写真やCT、MRI、超音波検査など様々な検査を駆使して評価を行います。 これらの検査により、軟骨が傷ついただけなのか、傷ついた軟骨が剥がれ落ちてしまっているのかを評価して、以下の3段階に分類します。 1:初期(透亮期) 肘離断性骨軟骨炎の初期と診断されるのは、ほとんどが小学生です。 この時期に診断された場合には、手術はせずに様子を見る「保存的加療」を行っていきます。病巣の改善までは1年以上と時間はかかるものの、肘の酷使を避けるなどの指導により90%以上で改善したという報告もあり、早期発見によるメリットは非常に大きいです。 2:進行期(離断期) 進行期であっても、基本的には手術をしない「保存的加療」が選択されます。 ただし初期のうちに診断されたものと異なり、半分ほどの患者さんでは思うように治らず、手術が必要になる患者さんも多いです。症状や病気の状態にもよりますが、3か月から半年ほどで評価を行い、手術が必要かどうかを判断していきます。 3:終末期(遊離期) 終末期であっても全く症状がない場合には手術はせずに様子を見ていくこともあります。ただしこの時期には、傷ついた軟骨が剥がれ落ち、遊離骨と呼ばれる骨のかけらが痛みを引き起こすことも多く、手術が必要になることも多いです。これは、肘関節遊離体といわれるもので「関節ねずみ」とも呼ばれます。 野球肘と言われる肘離断性骨軟骨炎の手術と術後 肘離断性骨軟骨炎の手術では、剥がれた骨の破片の位置や損傷している軟骨の程度などによって、患者さん一人一人に合わせた手術が行われます。 例えば、関節鏡と呼ばれるカメラを使って傷や体の負担をできるだけ小さくする手術であったり、膝関節から骨軟骨柱という組織を採り肘に移植する骨軟骨移植術と呼ばれる大掛かりな手術が行われたり、様々な手術があります5。 早期に発見して骨や軟骨の損傷をできるだけ抑えることで、同じ「手術」であっても負担の軽い手術が選択できる可能性があります。 手術後は肘の可動域訓練や、体幹部・下半身などのトレーニングなどを行いつつ、少しずつ競技復帰を目指してリハビリを行っていきます。 手術によっても違いますが、早ければ1か月程度から半年程度での投球練習が可能になることが多いです。主治医の先生の指示に従って、リハビリを行っていきましょう。 まとめ・野球肘(離断性骨軟骨炎)は野球以外でもスポーツする子供に発症の可能性! 今回は肘離断性骨軟骨炎の症状と治療についてまとめてみました。 野球肘は、9歳から12歳までの投球動作を伴うスポーツをやっている児童に多い疾患である 症状としては、肘の外側の痛みや肘の動かしにくさを訴えることが多い 早期に見つかった場合は手術をしなくても改善することが多い 手術が必要になった場合には、競技復帰までには手術後、半年程度かかることがある 早期発見によって手術が防げる可能性がある病気ですので、子供が「肘が痛い」と言ってきたときに、様子を見ることなく、症状が悪化する前、早めに整形外科に受診させるようにしてください。 大切 お子様の「肘が痛い!」→ 聴き逃さない → 野球肘・肘離断性骨軟骨炎の可能性!→「すぐ整形外科へ」
2021.12.28 -
- 糖尿病
- 内科疾患
糖尿病予備軍と診断され、「何を食べたらいけないの?」と悩んでいませんか? 実は、血糖値を上げやすい食品や、食べすぎに注意が必要な「意外な食品」もあるんです。 放っておくと本格的に糖尿病へ進行する可能性もあるため、毎日の食事内容がとても重要になります。 この記事では「糖尿病予備軍が避けたい食品7選」とともに、「安心して食べられる食品」や、「血糖値の安定に役立つ野菜」として注目されている大根の栄養と効果的な食べ方も解説します。 無理な制限ではなく、食事の「選び方」を知ることが、健康を守る第一歩になりますのでぜひご覧ください。 糖尿病予備軍が「食べてはいけないもの」とは? 糖尿病予備軍と診断されても、「これを絶対に食べてはいけない!」という特定の食材があるわけではありません。 重要なのは、血糖値を急激に上げないようにコントロールし、将来的な糖尿病や合併症のリスクを防ぐことです。 そのためには、エネルギー(カロリー)や栄養素のバランスを意識した食事を心がけることが基本になります。 「糖分・脂質・塩分」の過剰摂取を避け、体に負担の少ない食べ方を選ぶことで、血糖値の安定につながります。 \まずは当院にお問い合わせください/ 糖質が多く「血糖値」を急上昇させる食品 食事の栄養素のうち、血糖値に影響を及ぼすのは炭水化物です。 炭水化物には、食後の血糖値を上昇させ、エネルギー源となる「糖質」と、ほとんど消化されず血糖値の上昇を抑える「食物繊維」の2つがあります。 そのため、血糖値をコントロールするためには、食事中にどれだけ糖質が含まれるかを知っておくのは重要です。 しかし、だからといって糖質制限ダイエットや糖質制限食を行うのはあまりおすすめできません。 理由は、極端な糖質制限は腎症や動脈硬化に繋がる恐れがあり、逆効果となってしまうためです。 糖質を全く食べないのではなく、ご飯やパンを食べる前に、野菜など食物繊維の多いものを先に摂るよう意識するだけでも、血糖値の上昇を穏やかにする効果が期待できます。 食物繊維の摂取目標(18~64歳) 男性 1日21g以上 女性 1日18g以上 糖尿病の改善のために取りたい食材 食物繊維 野菜(特に根菜類) 海藻 キノコ 大豆 果物(糖分の過剰摂取に注意) 水溶性食物繊維が多い カボチャ オートミール 大根 大豆 キノコ 果物(糖分の過剰摂取に注意) 脂質・塩分が多く血管に負担をかける食品 糖尿病予備軍の方は、脂質や塩分の摂取にも気を配ることが重要です。 とくに脂質の中でも「飽和脂肪酸(例:肉の脂身やバター、チーズなど)」は、血中の悪玉コレステロール(LDL)を増やし、動脈硬化のリスクを高める可能性があるといわれています。 一方、魚や大豆などに多く含まれる「不飽和脂肪酸」には、悪玉コレステロールを下げる作用があり、積極的に取り入れたい脂質です。 また、塩分の摂りすぎも要注意です。 高血圧を招くことで糖尿病の合併症リスクを高める可能性があります。 食塩摂取の目標量として、以下の数値が推奨されています。 18歳以上の男性は1日7.5g未満 18歳以上の女性は1日6.5g未満 高血圧や腎症をお持ちの方は6g未満(文献1) 塩分の多い食品には、肉や魚の加工食品、漬物や佃煮などが挙げられます。 毎日の習慣ではなく「たまに楽しむ」程度に留めるなど、調整が必要です。 一見ヘルシーでも注意が必要な食品 「野菜ジュースを飲んでいるから健康的」「フルーツなら安心」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は見た目以上に糖質が多く含まれている場合があります。 市販の野菜ジュースや果汁100%のジュースには、糖質が多く含まれていたり、フルーツ缶詰はシロップ漬けになっていたりと、知らずに血糖値を上げてしまう要因となることがあります。 また、「カロリーオフ」や「ヘルシー」と書かれている食品でも、人工甘味料や脂質が多い場合があり、思った以上に血糖値へ影響を及ぼすことがあるため注意が必要です。 こうした食品を選ぶ際は、パッケージの「栄養成分表示」を確認する習慣をつけましょう。 「健康そう」というイメージだけで判断せず、成分を見て選ぶことが、血糖値コントロールには大切です。 糖尿病予備軍が「食べてはいけない」具体的な食品一覧【7選】 糖尿病予備軍の段階であっても、日々の食生活において血糖値の急激な上昇を避けることがとても重要です。 特に、糖質や脂質、塩分が多く含まれる食品は、インスリンの働きを乱す原因となり、糖尿病の発症リスクを高めてしまいます。 ここでは、糖尿病予備軍の方ができるだけ避けたほうが良い具体的な食品を7つご紹介いたします。 いずれも身近にある食品ばかりですが、「控える意識」を持つことで、血糖コントロールと健康維持の第一歩となります。 菓子パン・ドーナツなどの高糖質パン類 菓子パンやドーナツには、砂糖や小麦粉、油脂が多く含まれており、血糖値を急上昇させやすい食品です。 見た目以上にカロリーも高く、糖尿病予備軍の方にとっては控えたい食品のひとつです。 朝食代わりや間食として習慣化するのは避けましょう。 白米・うどんなどの高GI炭水化物 白米やうどんなどの精製された炭水化物は、消化吸収が早く、血糖値を急に上げやすい傾向があります。 できるだけ玄米や全粒粉のパン、そばなどの低GI食品に置き換える工夫をすることが、血糖値の安定につながります。 お菓子・スナック菓子 チョコレートやクッキー、ポテトチップスなどのお菓子類には、糖質と脂質が多く含まれています。 特に空腹時に摂取すると血糖値が大きく上がるため、日常的な間食として摂るのは控えましょう。 どうしても食べたい場合は、量を決めて楽しむことが大切です。 フルーツ缶詰・果汁飲料 フルーツ自体は栄養価が高いものの、缶詰や濃縮果汁飲料には砂糖が多く使われている場合があり、血糖値に悪影響を及ぼす恐れがあります。 果物を摂取する際は、生のものを適量にとどめるように心がけてください。 砂糖入りの飲み物(清涼飲料水・甘酒など) スポーツドリンクやジュース、甘酒などの甘い飲料には多くの糖分が含まれています。 液体は吸収が早いため、少量でも血糖値を大きく上げてしまうことがあります。 飲み物を選ぶ際は「無糖」や「糖質ゼロ」のものを選ぶようにしましょう。 加工肉(ウインナー・ベーコンなど) 加工肉には脂質と塩分が多く含まれており、糖尿病の合併症リスクである高血圧や脂質異常症にも関係してきます。 朝食やお弁当によく使われがちですが、できるだけ頻度を減らし、野菜や魚中心のメニューに切り替えるのがおすすめです。 コーンフレーク・甘いシリアル 一見ヘルシーに見えるシリアルですが、糖分が添加されているタイプが多く高カロリーです。 朝食として手軽な反面、血糖値の上昇を招く原因にもなります。 選ぶなら砂糖不使用のタイプにし、ヨーグルトやナッツと組み合わせる工夫が効果的です。 糖尿病予備軍でも安心して食べられる食品とは? 糖尿病予備軍の方にとって、毎日の食事はとても大切です。 ですが、「何を食べたらいいのかわからない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。 ここでは、血糖値を急激に上げにくく、安心して取り入れられる食品をいくつか紹介いたします。 無理な制限ではなく、上手に選ぶことがポイントです。 低GI食品(玄米・全粒粉パンなど) GI値(グリセミック・インデックス)が低い食品は、血糖値の上昇をゆるやかにする特徴があります。 特に玄米や全粒粉パンなどは、精製された白米や食パンに比べて食物繊維が多く含まれており、腹持ちも良いのが魅力です。 主食を選ぶ際は、白いものよりも「茶色いもの(未精製のもの)」を意識すると良いでしょう。 血糖値の上昇を抑える野菜・海藻類 野菜の中でも、葉野菜や根菜類(ただしイモ類は除く)、海藻類には食物繊維が豊富に含まれており、血糖値の急上昇を抑える働きがあります。 特に、食事の最初に野菜を食べることで「ベジファースト効果」が期待され、糖の吸収を穏やかにすることができます。 わかめやひじきなどの海藻も、日々の副菜に取り入れてみてください。 間食には素焼きナッツやゆで卵がおすすめ おやつを食べたいときは、血糖値が急に上がりにくい食品を選ぶことが大切です。 素焼きのナッツ(アーモンドやくるみなど)や、たんぱく質が豊富なゆで卵は間食として優れています。 ただし、ナッツ類はカロリーが高いため、1日あたりの量には注意が必要です(アーモンドであれば10粒程度が目安です)。 糖尿病予備群の食生活に取り入れたい「大根」について 大根は、糖尿病予備軍の方にも取り入れやすい、身近で優秀な食材の一つです。 食物繊維や消化酵素を豊富に含み、血糖値の上昇をゆるやかにする効果が期待されています。 また、カロリーが低いため、主食やおかずのボリュームを増やしたいときにも役立ちます。 ここでは、大根の栄養素や効果的な食べ方、注意点についてご紹介いたします。 大根の栄養素と食べ方のポイント 大根には、水溶性と不溶性、両方の食物繊維が含まれており、糖の吸収をおだやかにし、血糖値の急上昇を防ぐ働きがあります。 さらに「ジアスターゼ」などの消化酵素も豊富で、食後の消化を助けてくれるのも特長です。 生のまま食べることで酵素の効果を活かせますが、胃腸が弱い方や寒い時期には加熱するのもおすすめです。 加熱しても食物繊維はしっかり残るため、煮物や味噌汁、蒸し料理などに取り入れるのも良いでしょう。 大根の摂取量の目安と注意点 大根はカロリーが低く、たくさん食べても安心な印象がありますが、食べ過ぎはお腹を冷やしたり、胃腸に負担をかける可能性があります。 1日の摂取目安としては100g程度、加熱調理ならもう少し多めでも問題ないとされています。 また、大根おろしにすると酵素が活性化されますが、空腹時に大量に摂ると胃が荒れることもあるため、主食やたんぱく質と一緒にバランスよく取り入れることがポイントです。 糖尿病予備軍が注意したい合併症とは? 糖尿病予備軍の段階でも、血糖コントロールが不十分な状態が続くと、さまざまな合併症を引き起こす恐れがあります。 特に注意すべきは、目・腎臓・神経などの臓器に及ぶ慢性的な障害です。 予備軍の段階から、将来の合併症リスクを減らすための生活改善が重要とされています。 血管・臓器に広がる合併症のリスク 糖尿病が進行すると、「糖尿病性網膜症(失明の原因)」「糖尿病性腎症(人工透析の原因)」など、深刻な合併症を引き起こす可能性があります。 さらに、高血圧や脂質異常症が加わることで、動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中といった重篤な疾患に繋がるリスクも高まります。 \まずは当院にお問い合わせください/ 合併症を防ぐカギは「食事」と「運動」 合併症の予防には、食事と運動のバランスが欠かせません。 まずは、自分の活動量に応じた1日のエネルギー量を計算することが大切です。 無理な制限ではなく、継続可能な習慣を心がけ、必要であれば主治医や管理栄養士に相談しましょう。 また、ご自身の身体のことを把握しておくことも大切です。 まずはご自身の適正体重(BMI)を知っておきましょう。 1)適正体重(BMI)を計算する 適正体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22 2)適正エネルギー量を把握する 適正体重(BMI)に自分の日常生活の身体活動レベルをかけることで自分の適性エネルギー量を求めることができます。 身体活動レベルの目安と、適性エネルギー量を求める計算方法は次の通りです。 デスクワーク、主婦など 25~30×標準体重(kg)=1日の適性エネルギー量(kcal) 立ち仕事が多い 30~35×標準体重(kg)=1日の適性エネルギー量(kcal) 力仕事が多い 35×標準体重(kg)=1日の適性エネルギー量(kcal) まとめ|糖尿病予備軍は食事管理がカギ!避ける食品と正しい選び方を意識しよう 糖尿病予備軍の方は、合併症を未然に防ぐためにも、毎日の食事内容を見直すことが重要です。 ポイントは、糖質・脂質・塩分のとり過ぎを避けつつ、食物繊維を意識的に取り入れること。 エネルギー量のバランスを整え、極端な食事制限をせず、無理なく続けられる内容を心がけましょう。 また、体の状態によっては必要な栄養バランスも変わってきますので、すでに合併症の兆候がある方や不安がある場合は、自己判断せずに主治医や専門家に相談することが大切です。 参考文献 (文献1) 日本人の食事摂取基準(2020 年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書p306 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf(最終アクセス:2025年4月27日)
2021.12.24 -
- ひざ関節
「人工膝関節置換術を受けるので、やってはいけないことを把握しておきたい」 「手術後の生活でどんなことに気をつければいい?」 このような疑問を持つ方もいるのではないでしょうか? 人工膝関節置換術を受けると、膝の動きが改善し、痛みが和らぐ可能性があります。 しかし、手術後の生活では、膝に負担をかける動作を避けなければなりません。 誤った行動を続けると、痛みが再発したり、人工関節が破損したりするリスクがあるためです。 本記事では、人工膝関節手術後にやってはいけないことを詳しく解説します。生活の中で避けるべき動作や注意点も紹介するので、参考にしてみてください。 人工膝関節置換術とは|人工の関節を置き換える手術 人工膝関節置換術は、変形性膝関節症や関節リウマチなどで膝の関節が損傷し、痛みや可動域の制限が生じた際におこなわれる手術です。 この手術には、膝全体を人工関節に入れ替える「全置換術」と、損傷した部分のみを人工関節に交換する「部分置換術」の2種類があります。どちらを選択するかは、膝の損傷の程度や患者様の状態によって異なります。 【関連記事】 人工関節置換術、膝の手術を決断する前に知っておくべきこと 膝手術のデメリットは?メリットや後悔しないための治療法も紹介 人工膝関節置換術後にやってはいけないこと5選 人工膝関節置換術後、膝に負担がかかることをすると膝の痛みが再発したり、人工関節の耐久性に影響を与えたりする可能性があります。 長期的に膝の健康を守るためにも、人工膝関節置換術後にやってはいけないことを覚えておきましょう。 リハビリを怠る 膝に負担がかかる姿勢をとる 膝に負担がかかる運動をする 膝に負担がかかる環境を放置する 体重が増える生活を送る それぞれ詳しく解説します。 リハビリを怠る 手術後のリハビリは、継続を怠ってはいけません。 リハビリを中断すると、膝関節の可動域の制限や筋肉の衰えにより、日常生活における動作に困難が生じる恐れがあります。そのため、継続的なリハビリテーションが不可欠です。 人工膝関節置換術後のリハビリでは、以下のような膝周辺の筋力を鍛える運動や、関節をスムーズに動かすための訓練を中心におこないます。 筋力増強訓練 関節可動域訓練 持久力向上運動 立ち上がり動作訓練 歩行訓練・階段昇降訓練 継続的なリハビリが、膝の機能回復を大きく左右します。 膝に負担がかかる姿勢をとる 無理な姿勢を続けると、関節に余計な負担がかかり、痛みの再発や人工関節が破損するリスクがあります。 そのため、手術後は膝に負担がかかる姿勢をできるだけ避けてください。 とくに以下の姿勢は、膝に負担がかかりやすいため注意が必要です。 正座 あぐら 長時間の立ち仕事 長時間のしゃがみ込み 手術後の回復をスムーズにするためにも、膝に負担の少ない姿勢を心がけましょう。 膝に負担がかかる運動をする 手術後に膝へ大きな負担がかかる運動をすると、人工関節の緩みや破損の原因になります。 以下は膝に負担がかかりやすい運動の一例です。 スキー サッカー ダッシュ バスケットボール 坂道を上る自転車運動 膝関節に強い衝撃やねじれの力が加わる運動は、人工関節に強い負担をかけます。 スポーツを続けたい場合は、医師やリハビリ担当者と相談しながら、適切なトレーニング開始時期やメニューを決めましょう。 一方で、膝への負担が少ない散歩や水泳などは、問題ありません。適切な運動は膝の機能回復に役立ちます。 膝に負担がかかる環境を放置する 自宅が膝に負担がかかりやすい環境の場合は、放置すると人工関節の緩みや破損につながります。 生活する環境を見直し、膝への負担を軽減しましょう。 以下に、日常生活で改善できるポイントをまとめました。 変更内容 改善の効果 和式トイレから洋式トイレに変える 膝を深く曲げる動作を減らし、関節への負担が軽減される 階段に手すりを設置する 階段の上り下りによる膝の負担が軽減される 寝具を布団からベッドに変える 起き上がる際の膝の負担が軽減される 足にフィットする靴を新調する 膝の安定性を高め、膝関節への負担が軽減される 膝の負担を軽減する環境を整えれば、手術後の回復がスムーズになります。 体重が増える生活を送る 体重が増えると、膝への負担が大きくなり、人工関節の寿命が短くなる可能性があります。 人工関節を長持ちさせるためにも、手術後は、栄養バランスのとれた食事と軽い有酸素運動を取り入れて健康的な体重を維持しましょう。 散歩や水中ウォーキングなどの膝への負担が少ない運動を継続することで、無理なく体重をコントロールしやすくなります。 人工膝関節手術後の生活における3つの注意点 ここからは、人工膝関節手術後の生活における注意点を紹介します。 合併症を発症するリスクがある 手術後に人工膝関節が緩むケースがある 思うような改善が見られない可能性もある 手術後の経過を良好に保つためにも、事前にリスクを理解しておきましょう。 合併症を発症するリスクがある 手術後は、体が出血を防ぐために血を固まりやすくする働きをします。 また、手術中や手術後に足を動かせない状態が続くと、血液の流れが悪くなり、「血栓(けっせん)」と呼ばれる血のかたまりができやすくなります。 この血栓が血流に乗って肺の血管に詰まると「肺塞栓症(はいそくせんしょう)」という合併症を引き起こす可能性があるのです。 このリスクを防ぐために、手術前には血流の状態を検査し、手術中や手術後には血栓予防のストッキングや空気ポンプの使用が推奨されます。さらに、必要に応じて血栓を防ぐ薬を服用する場合もあります。 なお、人工膝関節の全置換手術を受けた後、下半身が腫れる症状は避けられません。 この腫れが長引くと、体の回復や動きに影響を与える可能性があります。そのため、手術後は足先をこまめに動かすリハビリが大切です。 関連記事: 人工関節手術で知っておくべき安全性と危険性 手術後に人工膝関節が緩むケースがある 人工膝関節が緩む主な原因は、体重の増加による関節への負担です。 とくに、肥満の状態が続くと、人工関節に過剰な負担がかかり、摩耗や緩みを引き起こす可能性があります。 また、肥満が原因でなくても、スポーツや激しい動作を繰り返すことで、人工関節が摩耗し、耐久性が低下する場合があります。 退院後は、定期的に医師の診察を受けましょう。レントゲン検査や血液検査をして、人工関節の異常や緩みの有無を確認しながら、適切な管理を続けることが大切です。 思うような改善が見られない可能性もある 人工膝関節手術は、必ずしも思い通りの改善が見られるわけではありません。 たとえば、手術後も痛みが残るケースがあります。これは「遺残疼痛(いざんとうつう)」と呼ばれる症状です。 また、膝の腫れやこわばりが原因で、思うように曲げられない状態になる場合もあります。 こうした症状は、多くの場合、時間の経過とともに改善します。 リハビリを取り入れれば、早い回復を期待できるため、無理のない範囲で膝を動かし、少しずつ改善を目指してください。 関連記事: 人工関節置換術後の痛みが取れない原因は?対処法などを現役医師が解説 膝関節疾患の治療には「再生医療」の選択肢もある 膝の痛みを和らげる治療には「再生医療」の選択肢もあります。 変形性膝関節症や半月板の損傷などに対し、手術をせずに改善を目指せる治療法の1つです。 再生医療における幹細胞治療は、体内の幹細胞(組織を修復する働きを持つ細胞)を利用し、傷んだ膝の組織を再生へ導く治療です。 注射による治療のため体への負担が少なく、人工関節手術を避けられる可能性があります。 当院では無料のメール相談を承っております。再生医療の詳しい内容については、お気軽にお問い合わせください。 【関連記事】 変形性股関節症の治し方は?症状軽減へ向けた生活の工夫も紹介 半月板断裂と損傷の違いとは?痛みの特徴や原因・治療法を解説【医師監修】 まとめ|人工膝関節置換術後のやってはいけないことを守って早期回復を目指そう 人工関節を長持ちさせ、痛みの少ない生活を維持するためには、膝への負担を最小限に抑える意識が大切です。 適度な運動や生活習慣の見直しを心がけ、早期回復と健康維持を目指しましょう。 「できるだけ身体に負担の少ない治療を進めたい…」という方に、選択肢の1つとして考えてほしいのが「再生医療」という新しい治療法です。 再生医療は、手術や入院を必要としません。体への負担が少ないのが特徴です。 詳しい治療法や効果が気になる方は、再生医療を専門とする当院「リペアセルクリニック」にお気軽にお問い合わせください。
2021.12.23 -
- 脳卒中
- 脳梗塞
- 頭部
「脳梗塞の再発が怖い」 「脳梗塞を繰り返す原因を知りたい」 一度脳梗塞を経験すると、再発のリスクが年を追うごとに高まります。実際、発症後1年で約10%、5年で約35%、10年では約50%の方が再発を経験したと報告されています。 日常生活で不安や心細さを感じるのは自然なことです。脳梗塞は再発率の高い疾患であり、そのリスクを理解し、退院後に適切に対処することが長期的な予後管理に極めて重要です。 本記事では、脳梗塞の再発率を現役医師が解説します。 脳梗塞を再発しなかった人の割合 脳梗塞の再発死亡率 脳梗塞の再発サイン 脳梗塞を繰り返す原因 脳梗塞の再発を予防する方法 記事の最後には、脳梗塞の再発に関するよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 脳梗塞の再発が不安な方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 脳梗塞の再発率 種類 詳細 脳梗塞 全体の1年再発率10%、10年再発率49.7% ラクナ梗塞 細い血管の閉塞による1年再発率7.2%、10年再発率46.8% アテローム血栓性脳梗塞 動脈硬化関連の1年再発率14.8%、10年再発率46.9% 心原性脳塞栓症 心臓由来の血栓による1年再発率19.6%、10年再発率75.2% (文献1)(文献2) 脳梗塞は再発しやすく、危険性はタイプによって異なります。再発は生活の質を大きく左右するため、退院後の予防が重要です。 生活習慣の改善や薬剤の服用に加え、自身の脳梗塞の種類を理解し、適切に対策することが再発防止につながります。 脳梗塞 脳梗塞は再発の可能性が高い疾患で、10年再発率は49.7%と報告されており、発症者のおよそ半数が再発を経験することになります。脳卒中全体の10年再発率は51.3%、くも膜下出血は70.0%、脳出血は55.6%と、いずれも高い値を示しています。(文献1) 脳梗塞に限ると、1年再発率は10.0%であり、10人に1人が1年以内に再発している計算になります。 脳卒中は日本人の死因第4位で、中でも脳梗塞は全体の57.0%を占める最も多い病型です。(文献1) 再発によって重症化や死亡に至る例も少なくなく、そのリスクは軽視できません。 とくに、再発は発症直後から1年以内に集中しており、海外の研究では発症後最初の30日間に最も高い再発率が認められたとの報告もあります(文献3) 発症後は、症状のわずかな変化にも注意を払い、異常を自覚した場合には、速やかに医療機関を受診することが重要です。 以下の記事では、脳梗塞について詳しく解説しています。 ラクナ梗塞 ラクナ梗塞は、高血圧などで損傷した脳深部の細い血管が血栓で詰まり発症し、症状は軽いことが多いものの、再発を繰り返すとパーキンソン症候群や認知症の原因となる疾患です。 再発率は1年で7.2%、10年で46.8%と報告されており、長期的には高いリスクを伴います。(文献2) そのため、継続的な予防と適切な管理が不可欠です。 以下の記事では、ラクナ脳梗塞について詳しく解説しています。 アテローム血栓性脳梗塞 アテローム血栓性脳梗塞は、頸動脈などの太い血管に動脈硬化(アテローム硬化)が生じることで発症します。血管内に形成された血栓がはがれて脳へ流入し梗塞を起こすのが特徴です。発症時は軽症でも徐々に進行する例が少なくありません。 再発率は1年で14.8%、10年で46.9%と報告されています。(文献2) 動脈硬化は高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病により進行しやすく、頸動脈だけでなく冠動脈や下肢動脈にも生じます。そのため、心筋梗塞や下肢閉塞性動脈硬化症を併発することもあり、全身的な管理が求められます。 以下の記事では、アテローム血栓性脳梗塞について詳しく解説しています。 心原性脳塞栓症 心原性脳塞栓症は、心臓内に生じた血栓が血流に乗って脳の動脈に到達し、血管を閉塞することで発症する脳梗塞です。主な原因は心房細動をはじめとする不整脈や心臓弁膜症などで、心臓内の血流が滞り血栓が形成されやすくなります。 このタイプの脳梗塞は突然発症し、重篤な症状を呈することが多いのが特徴です。再発率も高く、1年で19.6%、10年で75.2%に達すると報告されています。(文献2) 再発時も重症化しやすいため、抗凝固薬を用いた適切な治療と継続的な管理が再発予防に不可欠です。 以下の記事では、心原性脳梗塞について詳しく解説しています。 脳梗塞を再発しなかった人の割合 種類 1年再発率 1年再発しなかった割合 10年再発率 10年再発しなかった場合 ラクナ梗塞(細い血管が詰まるタイプ) 約7.2% 約92.8% 約46.8% 約53.2% アテローム血栓性脳梗塞(太い血管が詰まるタイプ) 約14.8% 約85.2% 約46.9% 約53.1% 心原性脳塞栓症(心臓でできた血栓が脳に飛ぶタイプ) 約19.6% 約80.4% 約75.2% 約24.8% 脳梗塞全体 約10.0% 約87.2% 約49.7% 約50.3% (文献2) 脳梗塞は再発しやすい病気ですが、再発しなかった方の割合を知ることも重要です。日本の研究では、脳梗塞全体で1年以内に約87.2%、約50.3%が再発していません。ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞では10年後も半数以上が再発せずに過ごしていますが、心原性脳塞栓症では約25%にとどまり、再発率がとくに高いと報告されています。(文献2) 脳梗塞の種類によって再発リスクは大きく異なります。再発しなかった人が多い背景には、生活習慣の改善や薬の継続といった日々の予防が欠かせません。再発を予防するための取り組みは、長期的な健康維持と生活の質の向上につながる重要な要素です。 脳梗塞の再発死亡率 脳梗塞は再発後1年以内の死亡率が約10%と報告されています。 高血圧・糖尿病・脂質異常症の管理、禁煙・節酒・運動・食生活改善など生活習慣の見直しが重要です。抗血栓薬や降圧薬は医師の指示に従って継続し、服薬アドヒアランス(処方薬を忘れず、正しい方法で飲み続けること)を守ることが再発予防につながります。 定期的な受診と検査で血圧や血糖、脂質、心房細動、頸動脈プラークを確認し、異常を早期に発見することが必要です。 心房細動や心不全を合併した場合は死亡リスクが高まるため、神経内科と循環器内科の連携が重要です。さらに、一過性脳虚血発作(TIA)などの前兆があれば速やかに 医療機関を受診することが予後改善に直結します。 脳梗塞の再発サイン 再発のサイン 詳細 片側のしびれ・麻痺、バランスの異常 身体の半分のしびれや脱力、力が入らない状態、歩行時のふらつき 言語・視覚に関わる異常 言葉が出にくい、ろれつが回らない、視界の異常や急な視野欠損 めまい・頭痛・意識変容などの緊急サイン 突然の激しいめまい、今までにない強い頭痛、意識がもうろうとする状態 脳梗塞は再発しやすく、早期にサインを見極めることが予後を左右します。片側のしびれや麻痺、歩行時のふらつきといった運動障害、言葉が出にくい、ろれつが回らない、視界の異常などの言語・視覚障害は重要な警告です。 さらに、突然の激しいめまいや強い頭痛、意識がもうろうとする状態は緊急のサインであり、速やかな受診が必要です。 以下の記事では、脳梗塞のサインについて詳しく解説しています。 【関連記事】 脳梗塞の前兆は?見逃さないためのチェックリストを公開中 脳梗塞になりやすい人の特徴は?前兆や後遺症も解説 片側のしびれ・麻痺、バランスの異常 項目 詳細 脳の損傷と半身症状 脳の損傷した側とは反対の身体半分にしびれや麻痺が現れる現象 バランス異常の原因 麻痺側をかばうことで重心が偏り、姿勢や歩行にふらつきが生じる状態 一過性脳虚血発作(TIA) 数分〜1時間以内に現れ回復する脳梗塞に似た症状で、再発前の警告サイン 早期対策と注意点 症状が突然現れた場合、短時間でも早期受診 脳梗塞では、脳の損傷部位と反対側の手足にしびれや麻痺が生じます。右脳の障害では左半身、左脳の障害では右半身に症状が出るのが典型です。 麻痺側をかばうことで重心が偏り、歩行時のふらつきや不安定さが起こることもあります。これらの症状は脳梗塞だけでなく、再発の前には、一過性脳虚血発作(TIA)がみられることがあります。症状は数分から1時間以内に回復する場合もありますが、これは重大な警告サインです。症状が短時間であっても軽視せず、速やかに受診することが再発予防と健康維持につながります。 以下の記事では、手足に違和感が出るアッヘンバッハ症候群と脳梗塞の関係性について詳しく解説しています。 言語・視覚に関わる異常 言語は左脳の前頭葉や側頭葉、視覚は後頭葉が担います。脳梗塞でこれらが障害されると血流が途絶え、言語障害や視覚異常が生じます。 言語では言葉が出にくい、ろれつが回らない、話が理解しにくいといった症状、視覚では視野の欠損や片目の見えにくさ、物が二重に見えるといった症状が突然現れることがあり、これらは再発の重要なサインです。数分で改善しても一過性脳虚血発作(TIA)の可能性があるため、速やかな受診が必要です。 以下の記事では、閃輝暗点について詳しく解説しています。 めまい・頭痛・意識変容などの緊急サイン 再発の前兆 詳細 めまい・ふらつき・バランスの乱れ 小脳や脳幹の血流障害による平衡感覚の低下、突然のめまいやふらつき 激しい頭痛と嘔吐、意識変化 脳内圧力上昇や出血性脳梗塞に伴う後頭部の強い頭痛、嘔吐、意識のもうろう状態 意識レベルの低下・混乱した状態 認知機能・意識維持領域への血流障害による突然の混乱、意識障害や失神に近い状態 小脳や脳幹は体のバランスを保つ重要な部位であり、血流が途絶えると突然のめまいやふらつきが生じます。これらの症状は疲労や薬の副作用と誤解されやすいため注意が必要です。 また、出血性脳梗塞や頭蓋内圧の急激な上昇では、強い頭痛、吐き気、意識混濁が短時間で出現することがあります。 さらに、認知機能や意識維持に関わる領域が障害されると、混乱や意識低下、失神に近い状態を引き起こす場合があります。これらはいずれも脳梗塞再発の緊急サインであり、症状が突然現れた場合は速やかな医療機関への受診が不可欠です。 以下の記事では、頭痛について詳しく解説しています。 【関連記事】 こめかみの痛みは脳梗塞のサイン?頭痛の原因や受診すべき目安を医師が解説 頭が痛いときの対処法を解説!原因やタイプ別の治療法についても紹介【医師監修】 脳梗塞を繰り返す原因 原因 詳細 生活習慣病と動脈硬化 高血圧や糖尿病、脂質異常症による血管の損傷と動脈硬化の進行 心血管疾患と血栓リスク 心房細動など心疾患による血栓形成と脳血管への血栓飛来による血管閉塞 不健康な生活習慣とストレス 喫煙、過度な飲酒、運動不足、塩分過多、不規則な食生活、慢性的なストレス状態 脳梗塞の再発は、高血圧や糖尿病による動脈硬化や心房細動による血栓形成、不健康な生活習慣が原因で起こります。 喫煙や過度な飲酒、運動不足やストレスも再発リスクを高めるため、適切な管理が再発予防につながります。 生活習慣病と動脈硬化 脳梗塞は脳の血管が詰まり血流が途絶する疾患であり、原因のひとつが動脈硬化です。動脈硬化とは、血管壁に脂肪やコレステロールが蓄積して血管が狭く硬くなる状態を指し、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病により進行します。 生活習慣病は血管を損傷させ血栓形成を促進し、脳梗塞のリスクを高めます。再発予防には薬物治療に加え、血圧や血糖の適切な管理、食生活の改善、適度な運動、禁煙が重要です。さらに、定期的な検査による早期発見と治療が動脈硬化の進行抑制と再発防止に直結します。 以下の記事では、脂質異常症の診断基準について詳しく解説しています。 心血管疾患と血栓リスク 心血管疾患は脳梗塞再発の大きな要因です。心房細動などの不整脈、心臓弁膜症、心筋梗塞、拡張型心筋症では心臓内の血流がよどみ、血栓が形成されやすくなります。心臓でできた血栓が脳血管に流れて閉塞を起こすと、心原性脳塞栓症が発症します。 とくに心房細動は無症状で進行することも多く、定期的な心電図検査や、動悸・息切れといった症状がある場合の早期受診が重要です。再発予防には、基礎疾患の適切な治療に加え、抗凝固薬による血栓予防と定期的な心臓検査が不可欠です。 以下の記事では、不整脈になりやすい人の特徴を詳しく解説しています。 不健康な生活習慣とストレス 原因 詳細 血管を傷つける生活習慣 喫煙、高塩分、脂肪や過度の飲酒、運動不足による血圧やコレステロールの悪化 慢性的なストレス 長期間のストレスによるコルチゾール増加、高血圧、血糖異常、炎症状態の持続 生活習慣とストレスの複合リスク 複数の治療可能なリスク要因の重なりによる再発リスク上昇、不健康生活と強いストレスの悪循環 不健康な生活習慣や慢性的なストレスは脳梗塞の再発リスクを高めます。喫煙や過度の飲酒、偏った食事、運動不足は動脈硬化を進め、ストレスは血圧や血糖を乱し血管に負担をかけます。 再発予防には禁煙、減塩、適度な運動、ストレス管理、そして医師の指導に基づく治療の継続が欠かせません。 以下の記事では、脳梗塞の予防・再発防止のために食べてはいけないものを詳しく解説しています。 脳梗塞の再発を予防する方法 再発を予防する方法 詳細 生活習慣・リスク因子の管理 血圧、血糖、脂質異常症のコントロール、禁煙、減塩、適度な運動、体重管理 適切な薬物療法と医療フォローの継続 原因に応じた抗血栓薬の服用、定期的な診察や血液検査、検査機器による血管状態の確認 質の良い睡眠とリハビリの継続 睡眠時無呼吸症候群の検査・対策、十分な睡眠環境の整備、理学療法士による継続リハビリ 脳梗塞の再発予防には、生活習慣の改善と医療的管理を組み合わせた多角的なアプローチが求められます。血圧・血糖・脂質の適切なコントロールに加え、禁煙、減塩、適度な運動、体重管理などの日常的な生活習慣の調整が基本です。 さらに、原因に応じた抗血栓薬の継続服用や、定期的な診察・血液検査、画像検査による血管状態の把握が再発リスクの低減に直結します。 加えて、睡眠時無呼吸症候群への対応や良質な睡眠環境の整備、医師による継続的なリハビリも重要です。これらを包括的に実践し、医療機関と連携しながら継続的に取り組むことが、脳梗塞再発を防ぐために不可欠です。 生活習慣・リスク因子の管理 項目 詳細 脳梗塞の再発リスク 動脈硬化や血栓形成を促進する高血圧、糖尿病、脂質異常症などのリスク因子 生活習慣の改善と管理 血圧・血糖のコントロール、塩分や脂肪を控えた食事、禁煙、適度な運動、節度ある飲酒 定期検査と薬物療法の継続 医師の指示に従い薬を服用、定期的な検査で血管や内臓の状態を確認 脳梗塞は脳の血管が詰まることで発症し、一度起こると再発のリスクが高まります。その背景には、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が関与し、血管を傷つけて動脈硬化や血栓形成を進行させる点が挙げられます。 再発を防ぐためには、血圧や血糖の適切な管理に加え、減塩・低脂肪を意識した食生活、禁煙、適度な運動、節度ある飲酒といった生活習慣の改善が欠かせません。 さらに、医師の指示に基づいた薬物療法を継続し、定期的な検査で血管や全身の状態を確認することも重要です。こうした継続的かつ総合的な健康管理が、脳梗塞の再発予防につながります。 以下の記事では、脂質異常症改善について詳しく解説しています。 適切な薬物療法と医療フォローの継続 脳梗塞の再発予防には、薬物療法と医療フォローの継続が重要です。抗血小板薬は血栓形成を抑え、抗凝固薬は血液凝固を調整して血管内の血栓を防ぎます。 病態に応じた使い分けにより再発リスクの低減が期待されます。さらに、高血圧や糖尿病、脂質異常症に対する治療も動脈硬化抑制に欠かせません。服薬は患者自身の判断で中断すべきではなく、医師の指示に基づいて継続することが求められます。 以下の記事では、脳梗塞に使われるメコバラミン(メチコバール)について詳しく解説しています。 質の良い睡眠とリハビリの継続 睡眠障害は脳梗塞の再発リスクを高め、日中の眠気はリハビリへの集中を妨げて回復を遅らせます。リハビリは身体機能の回復や生活の自立に直結し、神経回路の再構築に不可欠ですが、無理のない範囲で続けることが重要です。 家族や医師の支援はリハビリ継続を後押しします。再発予防には睡眠環境の整備や必要に応じた検査・治療、医師の指導によるリハビリの継続が欠かせません。 脳梗塞の再発に不安を抱えている方は当院へお気軽にご相談ください 脳梗塞の再発予防には生活習慣の改善や薬物療法、リハビリの継続など多方面での取り組みが必要であり、一人で抱えるには大きな負担となります。再発への不安や生活上の工夫、治療の継続に悩む方も少なくありません。 脳梗塞の再発についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、患者様とご家族を支える体制を整え、睡眠・食事・運動習慣の改善などに関するお悩みに丁寧に対応しています。患者様一人ひとりに合った再発予防策を共に考え、継続して取り組めるよう支援いたします。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 脳梗塞の再発に関するよくある質問 脳梗塞は他の病気と合併症になることはありますか? 脳梗塞は高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や、心房細動などの心疾患、睡眠時無呼吸症候群と合併しやすく、再発リスクを高めます。 また、誤嚥性肺炎、出血、脳血管性認知症、サルコペニア、脳卒中後てんかん、うつ病、摂食嚥下障害などの合併症を伴うこともあります。これらは脳や身体機能の障害や治療の影響で生じるため、基礎疾患の管理と合併症への早期対応が重要です。 以下の記事では、脳梗塞の合併症について詳しく解説しています。 振動(ブルブル)マシンは脳梗塞を再発させる原因になりますか? 振動マシン(WBV)が脳梗塞の再発を直接引き起こす医学的根拠は現時点で示されていません。 ただし、脳梗塞の既往がある方や血管が脆弱な方、心疾患を合併する方では、強い振動が身体に負担となる可能性があります。 利用を検討する場合は、体調や既往歴を踏まえ、必ず主治医に相談し、医学的な観点から使用の可否を判断することが推奨されます。 以下の記事では、振動(ブルブル)マシンと脳梗塞の関係性について詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) Ten year recurrence after first ever stroke in a Japanese community: the Hisayama study|PubMed (文献2) 脳梗塞の再発をどう防ぐか?―医療連携を強化する―|高齢者が増え続ける今,脳梗塞にいかに立ち向かうか (文献3) Predictors of mortality and recurrence after hospitalized cerebral infarction in an urban community: the Northern Manhattan Stroke Study
2021.12.21 -
- 脳卒中
- 頭部
二木の予後予測って何? 脳卒中のリハビリの見通しはどうやって立てる? 脳卒中を発症した家族を支えるのは、大きな不安と向き合う日々の連続です。「どのくらい回復するのか」「いつ自立できるのか」など、先が見えない状況に戸惑う方も多いでしょう。 そのようなときに役立つのが「二木の早期自立度予測基準」です。 本記事では、入院時・発症2週・1カ月時点での予後予測の具体的な活用方法を解説します。 予後を知ることで、リハビリ計画が立てやすくなりますので、ぜひ最後までご覧ください。 また、当院「リペアセルクリニック」では手術や入院を必要としない「再生医療」を提供しています。 脳卒中の後遺症治療にも効果が期待できますので、「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 二木の予後予測(早期自立度予測基準)とは? 脳卒中後の回復を予測する「二木の早期自立度予測基準」は、医療経済学者の二木立医師が研究・提唱したリハビリ計画を立てる際に重要な指標です。 入院時・発症2週・1カ月時点で回復の見込みを段階的に予測し、患者の自立度を評価します。 予測時期 評価項目 目的 入院時 運動機能、意識レベル、嚥下機能 初期の回復見込みを判断する 発症2週時 運動機能、日常動作、コミュニケーション リハビリの強度や内容を調整する 発症1カ月時 歩行能力、手足の動き、日常生活動作 退院後の生活計画を立てる 本章では、それぞれの時期における予測のポイントを解説します。内容を参考に、リハビリを進めるうえでの指針を明確にしましょう。 入院時の予測 入院時の予測では、発症から入院後できるだけ早い段階で、患者さんの状態を評価して行う予測です。 具体的には年齢、麻痺の程度、そして日常生活動作(ADL)の3つの要素から総合的に判断します。 入院時のADL能力 歩行能力予測 ベッド上の生活自立(※1) 歩行自立(大部分が屋外歩行可能で、かつ1カ月以内に屋内歩行自立) 基礎的ADL(※2)のうち2項目目以上実行 歩行自立(大部分が屋外歩行かつ、2カ月以内に歩行自立) 運動障害軽度(※3) 発症前の自立度が屋内歩行以下かつ運動障害重度(※4)かつ60歳以上 自立歩行不能(大部分が全介助) Ⅱ桁以上の意識障害かつ運動障害重度(※4)かつ70歳以上 ※1:介助なしでベッド上での起坐・座位保持が可能 ※2:基礎的ADL=食事、尿意の訴え、寝返り ※3:Brunnstorm stage4以上(麻痺側下肢伸展挙上可能) ※4:Brunnstorm stage3以下(麻痺側下肢伸展挙上不能) 発症2週時での予測 脳卒中の発症から2週間が経過すると、ある程度の回復が見られるようになり、この時点で再度、患者さんの状態を評価し予後予測を行います。 具体的には麻痺の程度、日常生活動作などを総合的に判断します。 発症2週時でのADL 歩行能力予測 ベッド上生活自立(※1) 歩行自立(かつその大部分が屋外歩行、かつ大部分が2カ月以内に歩行自立) 基礎的ADL(※2)3項とも介助かつ、60歳以上 自立歩行不能(かつ、大部分が全介助) Ⅱ桁以上の遷延性意識障害、重度の認知症、夜間せん妄を伴った中程度の認知症があり、かつ60歳以上 ※1:介助なしでベッド上での起坐・座位保持が可能 ※2:基礎的ADL=食事、尿意の訴え、寝返り 発症1カ月時の予測 発症から1カ月が経過すると、多くの患者さんで症状が安定してきますので、この時点で、より詳細な評価を行い最終的な予後予測を行います。 具体的には麻痺の程度、日常生活動作、認知機能などを総合的に判断材料とします。 発症1カ月でのADL 歩行能力予測 ベッド上生活自立(※1) 歩行自立(かつ、その大部分が屋外歩行、3カ月以内に歩行自立) 基礎的ADL(※2)の実行が1項目以下かつ、60歳以上 自立歩行不能(かつ、大部分が全介助) Ⅱ桁以上の遷延性意識障害、重度の認知症、両側障害、高度心疾患などがあり、かつ60歳以上 ※1:介助なしでベッド上での起坐・座位保持が可能 ※2:基礎的ADL=食事、尿意の訴え、寝返り 以下の記事では、脳卒中後のリハビリ方法について詳しく解説していますので、興味がある方はぜひご覧ください。 【脳卒中】予後予測に基づくリハビリが重要な理由 脳卒中の発症後、予後予測に基づくリハビリが重要な理由は以下の2つです。 リハビリ計画を立てる上で目標設定に役立つ 患者や家族が将来の見通しを知り安心できる 本章を参考に、二木の予後予測への理解を深めましょう。 リハビリ計画を立てる上で目標設定に役立つ リハビリには、明確な目標設定が欠かせません。 予後予測の活用によって回復見込みを把握し、段階的なリハビリ計画を立てられます。 無理のない範囲で適切な目標設定をしておくと、リハビリへのモチベーションも維持しやすくなります。 たとえば、発症2週時点での評価をもとに、どの程度歩行訓練を進めるべきかの判断も可能です。 また、発症1カ月時の予測によって、退院後の生活を見据えた計画も立てやすくなります。 患者や家族が将来の見通しを知り安心できる 予後の見通しがわかることで、患者や家族の不安が軽減されるメリットもあります。 脳卒中の回復には個人差がありますが、二木の予後予測を活用すれば、ある程度の見通しを立てられるためです。 たとえば、1カ月時点の予測をもとに、退院後に自宅でどの程度自立した生活が送れるかを判断できます。 そのため、必要な介護サービスの手配や、住環境の調整もスムーズに進めやすくなります。 予後を知ることで、家族も適切なサポートができるようになり、患者の自立を支える大きな力となるでしょう。 脳卒中の種類と原因については以下の記事で解説しています。予防するための注意点もチェックできますので、ぜひ参考にしてください。 脳卒中の予後は損傷部位や大きさによって変わる 脳卒中の回復度合いは、損傷した部位や病変の大きさによって大きく異なります。 同じ規模の脳卒中でも、損傷部位によって運動機能の回復が難しい場合や、逆に予後が良好なケースもあります。 本章では以下3つの損傷部位・損傷の大きさに分けて、予後への影響を解説します。 損傷が小さくても予後が不良な部位 損傷の大きさに比例して運動予後が決まる部位 損傷が大きくても運動予後が比較的良好な部位 本章の内容を、自分やご家族の予後をイメージするのにお役立てください。 損傷が小さくても予後が不良な部位 損傷が小さくても予後が不良な部位には以下が挙げられます。 放線冠(中大脳動脈穿通枝領域)の梗塞 内包後脚 脳幹(中脳・橋・延髄前方病巣) 視床(後外側の病巣で深部関節位置覚脱失のもの) 上記のような部位で脳梗塞が起こると、わずかな損傷でも機能低下を引き起こしやすいのが特徴です。 とくに内包や脳幹といった重要な神経経路を含む部位では、小さな病変でも運動機能に深刻な影響を与えます。(文献1)(文献2) 手足の動きや歩行能力が低下する可能性があるため、わずかな損傷でも機能回復が難しくなりやすいのです。 リハビリでは損傷部位に応じた適切なアプローチが求められます。 麻痺が強く残る可能性がある場合でも、適切なリハビリの継続によって、日常生活での自立度を向上させる可能性もあります。 損傷の大きさに比例して運動予後が決まる部位 病巣の大きさと比例して、運動予後がおおよそ決まるものは以下のとおりです。 被殻出血 視床出血 前頭葉皮質下出血 中大脳動脈前方枝を含む梗塞 前大脳動脈領域の梗塞 脳の大部分では、損傷の大きさが予後に直結します。損傷が大きいほど回復には長期間のリハビリが必要になる傾向があります。 適切な訓練を継続すれば、少しずつでも機能の回復を促すことが可能です。 無理をせず、損傷状態に合わせたプログラムを取り入れていけば、少しずつ日常動作の改善が期待できるでしょう。 損傷が大きくても運動予後が比較的良好な部位 大きい病巣でも運動予後が良好なものは、次のとおりです。 前頭葉前方の梗塞・皮質下出血 中大脳動脈後方の梗塞 後大脳動脈領域の梗塞 頭頂葉後方~後頭葉、側頭葉の皮質下出血 小脳半球に発生した片側性の梗塞・出血 たとえば、大脳皮質の非優位半球に損傷がある場合、もう一方の半球が機能を代償しやすいため、運動機能の回復が比較的良好な傾向にあります。 このような代償機能を「脳の可塑性(かそせい)」といいます。可塑性によって損傷が大きくても回復が進むケースがあるのです。 ただし、脳の可塑性を活用して回復を促すには、早期からの適切なリハビリが重要です。適切なトレーニングの継続で、日常生活に必要な動作を取り戻せる可能性があります。(文献3) 脳卒中の症状や治療法については、以下の記事でわかりやすくまとめていますので、ぜひご確認ください。 二木の予後予測の注意点は? 二木の予後予測は、脳卒中リハビリにおける有益な指標ですが、以下の点には注意が必要です。 あくまで予測であることを理解する 過信しすぎない 本章では、予後予測に関するそれぞれのポイントをわかりやすく解説します。 あくまで予測であることを理解する 二木の予後予測は、過去のデータに基づいて統計的に算出されたものです。 しかし実際の予後は個人差があり、予測よりも回復が早かったり、遅かったりするケースもあります。状態や置かれている環境によって、回復の度合いは大きく異なる可能性があるでしょう。 そのため、予後予測はあくまでも参考程度にとどめ、過度な期待や不安を抱かないように注意してください。 過信しすぎない 二木の予後予測の内容を過信しすぎないことも大切です。 予後が良いと予測されていても、積極的なリハビリテーションを行わなければ十分な回復を得られない可能性があります。 一方、予後が悪いと予測された場合でも、諦めずにリハビリを続けていれば状態が改善するケースもあります。 予後予測の結果を過信しすぎず、医師や専門家の指示のもと、適切なリハビリテーションを行いましょう。 まとめ|脳卒中のリハビリには二木の予後予測を取り入れよう 脳卒中の回復には、適切なリハビリ計画が欠かせません。 二木の予後予測の活用により、回復の見通しを立てやすくなり、より効果的なリハビリが可能になります。 入院時・発症2週・1カ月の評価を基に、適切なプランを立てることが重要です。 二木の予後予測を取り入れ、無理のないリハビリを続けて脳卒中後の自立を目指しましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では脳卒中の後遺症にお悩みの方へ、手術や入院の必要がない「再生医療」を提供しています。 まずはお気軽に「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてご相談ください。 二木の予後予測に関するよくある質問 脳卒中の回復期はどれくらいの期間ですか? 脳卒中の回復期は、一般的に発症後1カ月〜6カ月程度と言われています。(文献4) この時期は、集中的なリハビリテーションによって、機能回復が期待できる大切な時期です。 しかし、回復の度合いは個人差が大きく、損傷部位や程度、年齢、合併症の有無などによって大きく異なります。 リハビリにおける予後予測とは何ですか? リハビリにおける予後予測とは、患者さんの状態や検査結果などを基に、リハビリテーションによってどれくらい回復が見込まれるのかを予測する指標です。 予後予測は、リハビリテーションの目標設定や計画立案、患者本人や家族への説明にも役立ちます。 ただし、予後予測はあくまでも予測であり、実際の回復状況とは異なる場合がある点も理解しておく必要があります。 参考文献 (文献1) 生理学研究所「脳卒中後のリハビリによる運動機能の回復には、脳幹を介した複数の回路が協力して関わる」 https://www.nips.ac.jp/release/2019/09/post_399.html (文献2) Chen CL, et al. (2000). Brain lesion size and location: effects on motor recovery and functional outcome in stroke patients. Arch Phys Med Rehabil, 81(4), pp.447-452. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10768534/(最終アクセス:2025年2月28日) (文献3) 角田 亘「脳卒中リハビリテーションの今後|臨床神経学(60巻,3号) https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/60/3/60_cn-001399/_article/-char/ja/#article-overiew-abstract-wrap
2021.12.21 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
スポーツ選手のなかには、変形性膝関節症に悩まされている方もいるでしょう。膝は、スポーツのジャンプ動作や急な停止・発進・方向転換によって傷めやすい場所の一つです。 変形性膝関節症は、軟骨の摩耗によって膝に痛みを感じたり、関節が変形したりする疾患です。一般的には50代以降の女性に多く発生しますが、スポーツ選手のように日頃から膝に負担がかかる過ごし方をしていると、年齢や性別に関係なく軟骨が摩耗します。 今回は、変形性膝関節症を発症したスポーツ選手に向けて、早期復帰のための治療法や復帰までの流れを解説します。再生医療による治療法や症例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。 スポーツ選手が変形性膝関節症から早期復帰を目指せる「再生医療」について 変形性膝関節症を発症したスポーツ選手が早期復帰を目指すための方法として、再生医療による治療があります。 再生医療は、手術や入院の必要がなく、短期間での治療が目指せる治療法です。また、自分の血液や脂肪由来の幹細胞を使用するため、体への負担が少ないことが特徴です。 本章では、当院「リペアセルクリニック」で行っている再生医療の「幹細胞治療」と「PRP療法」について、詳しく解説します。 自己脂肪由来の幹細胞治療 自己脂肪由来の幹細胞治療では、摩耗した軟骨・靭帯・半月板に対し、患者様自身から採取・培養した幹細胞を注射します。幹細胞には、内蔵や皮膚・筋肉など、さまざまな細胞に分化(変化)する能力があります。 幹細胞治療は体への負担が少なく、手術を必要としない治療法です。米粒2〜3粒ほどの脂肪を採取後、4〜6週間かけて幹細胞を培養・増殖し、関節内へ注射します。 PRP(血小板血漿)療法 PRP療法とは、膝の痛みや炎症を抑えるために、血小板や成長因子を利用する治療法です。治療の流れとしては、遠心分離機にて血漿成分を抽出し、関節内に注射します。 PRP療法は最短30分でおこなえる治療です。再生医療は、短期間での治療が目指せる治療法として、変形性膝関節症に悩んでいるスポーツ選手の選択肢の一つになっています。 リペアセルクリニックでは、変形性膝関節症に対する再生医療をおこなっています。治療内容について詳しく知りたい方は、以下のページを参考にしてください。 変形性膝関節症の発症からスポーツ復帰までの流れ 変形性膝関節症を発症してすぐの痛みがある場合は、無理をせず、安静に過ごすことが大切です。まずは、保存療法によって炎症や痛みを抑えます。 その後、痛みのレベルに合わせて徐々に運動療法を取り入れ、スポーツ復帰を目指していくことになります。実際のスポーツの動きを取り入れたり、運動強度を上げたりする目安は、膝に痛みを感じなくなり、日常生活に支障がない程度の状態です。 また、スポーツ復帰直後は、膝に痛みが出ない範囲までの運動強度に留めましょう。 変形性膝関節症の発症リスクが高い人の特徴を知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。 変形性膝関節症のスポーツ選手が復帰を目指す上で気をつけること スポーツ復帰に向けて運動療法を取り入れる際には、膝に負荷をかけないように気をつける必要があります。運動療法においてとくに気をつけたいことは、以下の通りです。 膝への衝撃が強い運動を避ける 軽度な運動からスタートして徐々に強度を上げる インソールを着用して膝への負担を軽くする それぞれ詳しく解説していきます。 膝への衝撃が強い運動を避ける 変形性膝関節症のスポーツ選手が運動療法を取り入れる際は、膝への衝撃が強い運動を避けることが大切です。 変形性膝関節症を発症後、痛みが緩和したら運動を再開するケースがほとんどですが、その際は、膝に負担をかけすぎないよう注意しましょう。 膝への衝撃が強い運動は、たとえば、ジャンプ動作や急な停止・発進・方向転換などです。とくに膝に痛みがある場合は、無理をして運動を続けると、状態が悪化し、今後の選手生命が短くなる可能性があるため注意してください。 軽度な運動からスタートして徐々に強度を上げる 変形性膝関節症のスポーツ選手が復帰を目指すためには、軽度な運動からスタートし、徐々に強度を上げていくことが理想的です。 たとえ膝に多少の痛みがあっても、まったく動かさないでいると筋肉や関節が拘縮し、元の運動レベルまで回復するのに時間がかかります。 そのため、ウォーキングやプール運動、軽いストレッチ、筋力トレーニングなどからスタートし、徐々に運動強度を上げて、本格的なスポーツ復帰を目指します。なお、プールでの運動は、浮力によって関節への負荷が軽減されるため、とくに痛みが強い方におすすめです。 インソールを着用して膝への負担を軽くする 変形性膝関節症の発症からスポーツ復帰を目指す際は、インソールを使用して膝への負担を軽くする方法も効果的です。とくに、下肢にO脚の変形が見られる場合は、靴にインソールを装着して膝の内側にかかる負荷を軽減させます。 変形性膝関節症は、よくある筋肉痛と違い、痛みを感じたまま放って置いて治るものではありません。そのため、インソールやサポーターなどで膝への負担を軽くしながら、運動する頻度や時間、強度を慎重に調整しましょう。 変形性膝関節症の治療|手術療法 運動療法を含めた保存療法で変形性膝関節症の症状が改善しない場合は、手術療法を検討します。 変形性膝関節症の手術は、関節鏡視下手術や高位脛骨骨切り術、人工関節置換術などです。手術のタイミングや適応される手術方法は、持病の有無・年齢・症状の程度によっても異なります。 以下で、それぞれ詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。 関節鏡視下手術 関節鏡視下手術とは、膝に開けた小さな穴から手術器具を入れ、損傷した半月板や関節軟骨を取り除く手術法です。手術による身体への負担は比較的低く、手術時間も1〜2時間程度です。 関節鏡視下手術は、術後すぐに歩けるメリットがあります。ただし、膝に違和感がなく歩けるようになるまでに数カ月から半年ほどかかります。 高位脛骨骨切り術 高位脛骨骨切り術とは、脛骨の一部を切り取り、膝にかかる偏った負担を整える手術法です。変形性膝関節症に多いO脚変形を矯正し、膝関節の内側への負担を軽減させます。 高位脛骨骨切り術の場合、1〜2カ月程度の入院期間を経て、リハビリテーションに5〜6週間必要です。そのため、スポーツへの復帰には時間がかかります。 人工関節置換術 人工関節置換術とは、金属やチタンなどを使い、傷んだ膝関節を人工の関節に置き換える手術法です。 入院期間は1カ月程度と、高位脛骨骨切り術と比べて短いことが特徴です。また、関節鏡視下手術や高位脛骨骨切り術と比べて、痛みの改善が期待できます。 ただし、術後は正座のように、膝を深く曲げられなくなります(屈曲制限)。たとえスポーツ復帰できても、パフォーマンスへの影響が懸念されるため、慎重な検討が必要です。なお、人工関節に劣化や緩みがみられた場合には再手術になります。 変形性膝関節症の治療|再生医療 運動療法を含めた保存療法で症状の改善がみられない場合は、手術に代わり、再生医療による治療を選択することも可能です。再生医療には、自己脂肪由来の幹細胞を注射する幹細胞治療や、血液を利用するPRP療法などがあります。 再生医療は手術・入院を必要としないのが特徴です。 リペアセルクリニックでは、変形性膝関節症に対する再生医療をおこなっています。当院の幹細胞治療は、米粒2〜3粒ほどの脂肪を採取するだけで済むため、身体への負担が少ないことが特徴です。 再生医療について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。 【関連記事】 【再生医療】半月板損傷と変形性膝関節症が同時発症も幹細胞治療とPRPで完治!関節鏡手術が必要と診断されても注射だけで治療可能って本当?【医師が解説】 【体験談】変形性膝関節症に対する再生医療の可能性 ここでは、当院における変形性膝関節症に対する再生医療の症例を紹介するので、ぜひ参考にしてください。 症例1.50代女性|日本1位マラソンランナーの膝関節痛が改善 50代の女性は、年代別のフルマラソン日本一の選手です。レース時にはアドレナリンが出ていて痛みを忘れているようでしたが、練習では膝の痛みで思うようにトレーニングができない状態でした。 レントゲンとMRIで確認すると、膝関節の軟骨がすり減っており、変形性膝関節症が認められました。翌年のマラソン大会を目指してしっかり治したいとの希望を考慮して、治療方針を決定します。国内の幹細胞治療の平均投与数よりかなり多めの1億個の細胞を計3回、PRPも投与しました。 1億個の幹細胞とPRPを投与した約2週間後には痛みが軽快し始め、1カ月後にはほぼ痛みがなくなりました。 その後、1カ月おきに1億個の幹細胞を投与し、初めの投与から約3カ月後には5キロのジョギングを始めています。経過も良好で、治療から約3年後のマラソンリレー大会での3位入賞の報告を受けました。 こちらの症例について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。 症例2.50代女性|バレーボールをする際のロッキング症状が改善 50代の女性は、約15年ほど前からバレーボールをしており、急に膝が伸びにくくなるロッキング症状が現れていました。それでも痛みがないときが多かったため、放置してバレーボールを継続していました。手術をしたくないとの思いから様子をみていたところ、急に左膝の痛みが強くなり救急搬送されたそうです。 ロッキングの放置が怖くなり、諦めて手術を考えていたところ、当院の再生医療を見つけて来院されました。 レントゲンで確認すると、両膝とも軟骨がすり減り、関節の間が狭くなっていました。治療方針を決定し、両膝関節に幹細胞5000万個ずつを2回、PRPも投与します。投与後約1カ月で効果が現れ、3カ月目には膝の痛みがまったくなくなりました。その後、ロッキングを起こすことがなくなったと報告を受けています。 こちらの症例について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。 まとめ|変形性膝関節症に悩んでいるスポーツ選手は適切な治療法の選択が大切 変形性膝関節症のスポーツ選手が、現場復帰を目指すにあたって重要なことは見極めです。膝に強い痛みを感じたまま運動すると悪化する可能性がある一方で、膝をまったく動かさないことも問題です。 スポーツへの早期復帰を目指すためには、膝がどのような状態なのかを見極め、適した治療を選択する必要があります。 運動療法を含めた保存療法で症状の改善が見られない場合は、手術療法や再生医療による治療を検討します。 再生医療は、身体への負担が少なく、入院や手術の必要がない治療法です。変形性膝関節症から早期復帰を目指すスポーツ選手は、ぜひ一度ご相談ください。 変形性膝関節症に関するよくある質問 変形性膝関節症の人がしてはいけない運動はある? 変形性膝関節症の人がしてはいけない運動は、主に以下の通りです。 ランニング スクワット 階段の昇降 長時間の歩行 娯楽程度の運動で変形性膝関節症が進行するリスクは低いといえます。しかし、膝への負担が大きい過度なスポーツはできるだけ避けてください。スポーツ復帰に関しては、医師に相談の上、適切なペースで徐々に負荷を上げていきましょう。 変形性膝関節症の人が日常生活で気をつけることはある? 変形性膝関節症の人は、運動に限らず、日常生活でも膝に負担がかからないよう気をつける必要があります。たとえば、体重が重たいと膝への負担が増えるため、できる範囲での減量をおすすめします。 また、正座や和式トイレの使用など、和式の生活スタイルは膝への負担が大きくなりがちです。ベッドや足つきの座椅子などを使用し、洋式の生活スタイルに近づけるよう意識してみてください。
2021.12.20 -
- 肘関節
- 関節リウマチ
- ひざ関節
- 股関節
- 肩関節
- 手部
- 足部
「人工関節の手術は痛みをなくすために必要なのはわかるけれど、合併症や後遺症が心配でなかなか踏み切れない……」そのような不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 肩の人工関節置換術は、つらい痛みを和らげ、生活の質を取り戻す有効な方法です。 しかし一方で、手術には特有のデメリットやリスクがあるのも事実です。 本記事では、肩人工関節の手術に伴う代表的な7つのデメリットを整理して解説します。 それぞれのリスクの特徴や発生しやすい条件、予防の工夫についても触れますので、正しくリスクを理解し、後悔のない治療選択につなげましょう。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。肩の痛みや人工関節について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 肩の人工関節の7つのデメリット・リスク 肩人工関節手術は、痛みを軽減し生活の質を取り戻す有効な方法ですが、肩は可動域が広く、膝や股関節とは異なるリスクを抱えやすい部位です。 そのため、手術を受ける前に想定される合併症を理解しておくことが大切です。 ここでは代表的な7つのリスクを紹介します。 感染症や血栓症といった生命に関わるものから、脱臼や可動域制限、再手術の必要性といった長期的に影響するものまで、それぞれ確認していきましょう。 感染症リスク 肩の人工関節手術で最も注意すべき合併症の一つが感染症です。 人工関節は体内に異物を入れるため、いったん細菌が侵入すると自然には治りにくく、再手術が必要になることもあります。 感染症には大きく2つのタイプがあります。手術後すぐに起こる「早期感染」と、数年後に発症する「遅発感染」です。 早期感染では発熱や患部の強い痛み、腫れなどがみられ、遅発感染では軽い痛みや動かしにくさが長く続く形で現れることがあります。 感染症リスクを高める要因としては以下が知られています。 糖尿病 関節リウマチ 免疫抑制剤を使用している 肥満 喫煙習慣 これらの条件がある方は、感染の危険性が高まるため、手術前に十分な準備や対策を行うことが重要です。 感染症にかかった場合の治療は、まず抗菌薬による点滴が行われます。症状が強い場合や感染が広がっている場合には、人工関節を入れ替える再手術が必要になることもあります。 予防策としては、手術前に虫歯や皮膚炎などの感染源を治療しておくこと、手術時には抗菌薬を予防的に投与することが有効とされています。 また、清潔な環境での手術操作と手術後の適切なリハビリ管理も重要です。(文献1) 血栓症の危険性 肩人工関節の手術では、血栓症も重要なリスクの一つです。血栓症とは、血管の中に血のかたまり(血栓)ができて血流を妨げる状態を指します。 とくに脚の深い血管にできる深部静脈血栓症(DVT)と、血栓が肺に飛んで血管を詰まらせる肺塞栓症は、命に関わることもある合併症です。 症状としては、脚の腫れや赤み、強い痛みが現れる場合があります。 肺塞栓症では、急な息切れ、胸の痛み、めまいなどが起こり、緊急対応が必要になります。 リスクを高める要因には次のようなものがあります。 高齢 肥満 がんなどの悪性疾患 血栓症の既往歴 長時間の手術や手術後の安静 手術後の体調に異変を感じた場合は、すぐに医療スタッフに伝えましょう。(文献2) 脱臼リスクと動作制限 肩は体の関節の中でも最も動きの幅が広い構造を持っています。 そのため、人工関節に置き換えると、特定の動作で脱臼が起こりやすくなる特徴があります。 注意が必要なのは、次のような動作です。 背中に手を回す(帯を結ぶ、ポケットに手を入れるなど) 腕を大きく上げる(洗濯物を干す、高い場所に物を取るなど) 手を体の内側に大きくひねる動作 これらは人工関節に強い負担をかけ、脱臼のリスクを高めるとされています。 予防のためには、手術後のリハビリで正しい動かし方を学ぶことが欠かせません。 一度脱臼すると再発しやすい傾向があるため、手術後は慎重な管理で脱臼を防ぎましょう。 生活の中では脱臼しやすい姿勢を避けたり、無理に腕を伸ばさない工夫も必要です。 理学療法士による生活指導も受けて、動作の工夫を取り入れてください。(文献3) 摩耗・ゆるみによる再置換の可能性 人工関節は一度入れれば一生使えるわけではありません。 時間の経過とともに摩耗や「ゆるみ」が起こり、再手術(再置換)が必要になる場合があります。 人工関節の摩耗は、金属やポリエチレンといった部品同士が繰り返し擦れ合うことで進行します。 その結果、関節の安定性が低下し、痛みや腫れ、動かしにくさが再び現れてきます。 また、摩耗によって生じた微細な粉が骨を刺激し、骨が少しずつ体に吸収されて弱くなることで、人工関節がゆるみやすくなります。 再置換が必要となる主な兆候は以下の通りです。 関節の痛みが再発する 肩を動かしたときに違和感や異常な音がある X線検査でインプラントの位置がずれている 再置換手術は、初回の手術よりも難易度が高く、合併症のリスクも大きくなります。 人工関節の寿命は一般的に15〜20年程度とされますが、患者様の年齢や生活スタイルによって大きく変わります。 若い方や活動量が多い方は、再置換の可能性が高まるため、長期的な視点で手術を検討しましょう。 神経損傷と機能障害のリスク 肩人工関節手術では、周囲を走行する重要な神経を傷つけてしまう可能性があります。神経は細く繊細で、一度損傷すると回復が難しい場合があるため、とても注意が必要です。 代表的な神経損傷には次のようなものがあります。 神経 働き・役割 腋窩神経(えきかしんけい) 三角筋を通っており、損傷すると腕を横に持ち上げる(外転)動作ができなくなります。 筋皮神経(きんぴしんけい) 上腕二頭筋を通り、肘を曲げる力が弱くなるほか、前腕の外側の感覚が鈍くなることがあります。 これらの神経は肩関節のすぐ近くを通っているため、人工関節の設置や手術器具の操作中に影響を受けやすい位置にあります。 神経損傷が起こると、日常生活の質に大きな影響を与えます。 このため、手術を担当する医師が肩の解剖を熟知していること、また術後の神経症状を見逃さずに早期対応する体制が整っていることがとても重要です。(文献4) 可動域制限による生活動作の困難 肩人工関節手術の後、多くの患者様が直面する課題の一つが可動域の制限です。 とくにリバース型人工関節では、肩の構造を反転させて安定性を高めるため、どうしても動かせる範囲が狭くなります。 代表的に制限されやすい動きは以下の通りです。 動作 難しくなる動き・事例 屈曲(前に腕を上げる) 洗濯物を干す、高い棚に手を伸ばすといった動作が難しくなる。 外転(横に腕を広げる) 荷物を持ち上げる、体操で両手を広げるといった動きに制限が出る。 内旋(腕を内側にひねる) 背中に手を回す動作が困難となる。 外旋(腕を外にひねる) 洗髪や髪を後ろで束ねる動作がしにくくなる。 研究報告では、リバース型人工関節は痛みの改善や安定性の向上に有効である一方、背中に手を回す動作(内旋)や頭上動作の制限が残ることが多いと示されています。(文献5) このため、術後にはどの動きが難しくなるのかを事前に理解し、理学療法士と一緒に日常生活に適した代替動作を学ぶことが重要です。 たとえば、衣服の着脱では前開きの服を選ぶ、入浴では入浴補助具を活用するなど、生活を工夫することで制限の影響を軽減できます。 再手術が必要になる可能性 肩人工関節は、痛みを和らげ生活の質を改善する有効な治療法ですが、一度の手術で一生使えるとは限りません。 感染、脱臼、摩耗・ゆるみなどの問題が生じると、再手術(再置換や再固定)が必要になる場合があります。 再手術は初回の手術に比べて難易度が高く、以下の課題があります。 骨の欠損や変形:人工関節の取り外しにより骨がさらに損なわれ、固定が難しくなる。 合併症の増加:感染や神経損傷、血栓症などのリスクが高まる。 回復期間の延長:リハビリが長引き、日常生活への復帰に時間がかかる。 とくに高齢者の場合、再手術時には体力や合併症の影響が大きくなるため、初回手術の段階で将来の再手術の可能性を念頭に置いて計画を立てることが大切です。 肩の人工関節の種類別デメリット|従来型とリバース型 肩人工関節には、大きく分けて「アナトミカル型(従来型)」と「リバース型」の2種類があります。 それぞれの構造や適応が異なるため、発生しやすいデメリットにも違いがあります。以下の通りです。 アナトミカル型(従来型) リバース型 特徴 自然に近い動きを再現しやすい 若年層や活動性の高い患者にも用いられる 腱板損傷があっても施術可能 脱臼リスクあり デメリット 腱板が損傷している場合は安定性が低い 脱臼リスクが比較的高い 可動域制限が生じやすい 負荷をかける動作で脱臼リスクがある 主な適応 腱板が保たれている場合に適応 腱板断裂性関節症、高齢者 このように、肩の人工関節はどちらを選ぶかで将来の生活に与える影響が変わります。 担当医と十分に相談し、自分の症状や生活スタイルに合った方法を選択することが重要です。(文献6)(文献7) 肩の人工関節手術の概要とポイント 肩人工関節手術は、保存療法で改善が得られない患者様に行われる治療法です。 損傷した関節を人工関節に置き換えることで、痛みを和らげ、生活の質を高めることを目的としています。 手術は全身麻酔で行われ、入院は一般的に2〜4週間程度です。術後はリハビリを通じて徐々に可動域と筋力を回復させていきます。 肩の人工関節手術の適応疾患別リスク 肩人工関節手術は、基礎疾患によって手術後のリスクや経過が異なります。主な疾患ごとの特徴を以下の表にまとめました。 疾患名 手術が適切と判断される特徴 主なリスク・注意点 変形性肩関節症 関節のすり減りによる痛み・可動域制限 高齢者では感染や血栓症リスクが高い 関節リウマチ 炎症で関節が破壊される 免疫抑制薬の影響で感染リスクが上昇 腱板断裂性関節症 腱板が損傷し肩を動かせない リバース型が多く、可動域制限や脱臼が残りやすい 上腕骨頭壊死 骨への血流障害で壊死が進行 若年者でも起こり、再手術の可能性が比較的高い 疾患ごとのリスクを理解しておくことで、手術後の生活に備えられます。 変形性肩関節症のリスクについては、以下の記事で詳細に解説しておりますので、気になる方はご確認ください。 肩の人工関節手術の入院期間と回復までの流れ 肩人工関節手術は、入院から退院後のリハビリまで一定の流れがあります。以下の表に一般的な目安をまとめました。 時期 主な内容 ポイント 手術当日〜翌日 全身麻酔で手術、安静 痛み止めや感染予防の管理が行われる 1週目 基本的なリハビリ開始 医師や理学療法士の指導で可動域訓練を少しずつ開始 2〜3週目 入院リハビリ 日常生活に必要な動作(更衣・洗面など)の練習 退院後(1〜3カ月) 外来リハビリ中心 洗濯物を干す・棚に手を伸ばすなど生活動作を徐々に回復 半年以降 社会生活復帰 家事・趣味・軽いスポーツが可能となる例もある 入院は平均で2〜3週間程度ですが、年齢や合併症によって延びることもあります。完全な回復には半年ほどかかるケースもあるため、焦らず段階的にリハビリを続けることが大切です。 肩の人工関節手術にかかる費用目安 手術費用については、自己負担3割の場合、おおむね50万〜60万円前後が一つの目安になります。 例として、ある病院では人工肩関節置換術(入院8日)で約56万円と案内されています。 医療機関や入院日数、個室利用などで上下しますが、総医療費が200万〜250万円に達するケースもあり、その場合の3割負担は約60万〜75万円もあります。 ただし、高額療養費制度を併用すれば自己負担は月ごとの上限額までに抑えられる仕組みです。 以下は、肩の人工関節手術で費用が掛かる項目についてまとめたものです。 費用項目 概要 確認ポイント 手術料・麻酔料 人工関節本体を含む外科手技と麻酔管理の費用 保険適用範囲、インプラントの種類、術式の違い 入院費 病室・投薬・処置・検査などの入院管理費 入院日数、個室か大部屋か、食事療養費の扱い リハビリ費 急性期から外来期までの理学療法費 入院中の頻度、退院後の通院回数と期間 術後外来・投薬 創部チェック、画像検査、疼痛コントロール 通院間隔、画像検査の種類と回数 装具・消耗品 スリング、保護材、創部ケア用品 自費分の有無、交換頻度 公的制度 高額療養費制度、限度額適用認定証、医療費控除 手続き方法、自己負担上限、対象外費用の確認 費用を抑えるには、公的制度の活用が鍵となります。高額療養費制度などを活用して、人工関節手術の費用を抑えましょう。 肩疾患の人工関節に再生医療は適用される? 再生医療は、すでに人工関節を入れた肩には適用されません。しかし、人工関節手術を行う前の段階であれば、症状や画像所見、生活背景などを総合して、手術前の選択肢として検討されることがあります。 再生医療は、患者様自身から採取・培養した幹細胞を患部に投与する治療法です。入院や手術を行わずに受けられます。ただし、対象疾患や期待できる経過には個人差があり、医師の評価が前提となります。 実施の可否、治療計画、想定される経過、リスクなどの詳細については、当院リペアセルクリニックまでご相談ください。 まとめ|肩人工関節のデメリットを理解して後悔のない治療選択を 肩に人工関節を入れるかどうかの判断は、リスクの理解から始まります。 本記事では、感染症・血栓症・脱臼・摩耗やゆるみ・神経損傷・可動域制限・再手術の7点を軸に整理しました。 人工肩関節置換術後に変形性肩関節症などの合併症が起こるリスクは、患者様の年齢や基礎疾患、手術方法、術後の過ごし方によって変わります。 また、使用する人工関節が従来型かリバース型かによって、術後に残る機能制限や日常生活での注意点も異なります。 人工肩関節置換術後の入院はおおむね2〜3週間が目安で、外来リハビリを経て数カ月かけて生活を整える流れになります。 費用は複数の項目で構成されるため、高額療養費制度などの公的支援も視野に入れて、見積もりの内訳を早めに確認しましょう。 迷いが残るときは、専門医に相談して診察を受けるのが一番の解決策です。 手術を避けたいとお考えの場合は再生医療の選択肢もあるので、お悩みの方はぜひ当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。 リペアセルクリニックでは再生医療に精通した医師が、患者様の状態に応じて個別に治療方針を提案いたします。 参考文献 (文献1) 人工関節置換術後感染に関する研究|日本人工関節学会誌 (文献2) 人工関節置換術と静脈血栓塞栓症|core.ac.uk (文献3) リバース型人工肩関節置換術後の脱臼症例報告|肩関節学会誌 (文献4) 人工肩関節置換術における腋窩神経損傷のリスク|肩関節学会誌 (文献5) 肩関節リバース型人工関節置換術後の可動域と機能評価|日本リハビリテーション医学会誌 (文献6) リバース型人工肩関節置換術の適応基準|日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会 (文献7) リバース型人工肩関節のガイドライン|日本肩関節学会
2021.12.20 -
- 糖尿病
- 内科疾患
厚生労働省の調査によると、2019年時点で20歳以上のうち、糖尿病が強く疑われる人は約1,196万人。 予備軍も含めると、実に2,000万人以上が糖尿病リスクを抱えていることがわかっています。 それだけ多くの人が悩む病気ですが、「糖尿病」と一口にいっても、実は「1型」と「2型」の2つのタイプがあるのをご存知でしょうか。 今回は、糖尿病について「1型糖尿病」「2型糖尿病」それぞれの違いや特徴、治療法についてわかりやすくご紹介します。 糖尿病は1型より2型の方が多い 糖尿病には1型と2型の2種類がありますが、実際に患者数が多いのは2型糖尿病です。 厚生労働省の2023年「患者調査」によると、現在治療を受けている糖尿病患者は全国で約552万人。 そのうち2型糖尿病の人は約364万人にのぼり、全体の65%以上を占めています。(参考1) いっぽうで、1型糖尿病の患者数は約12万人とされ、全体の中ではごくわずかです。 さらに、「その他の糖尿病」に分類されている約176万人の多くも、実際には2型に含まれる可能性が高いため、糖尿病の9割以上が2型と考えられています。 2型糖尿病は、中高年以降に発症しやすく、生活習慣が深く関係しているのが特徴です。 それに対して1型糖尿病は、自己免疫の異常などが原因とされ、年齢に関係なく発症するものの、子どもや若者で多く見られる傾向があります。 1型糖尿病とは?原因や症状を詳しく解説 1型糖尿病は、膵臓のランゲルハンス島という部分にあるβ細胞が壊され、その結果、血糖を下げる役割があるインスリンを作り出せずに高血糖の状態が続く疾患です。 糖尿病全体のうち、1型は約5%程度と少数派ですが、先天的な体質や遺伝的素因が関与しているとされ、生活習慣とは関係なく若い人を中心に幅広い年齢で発症します。 1型糖尿病の主な原因とは? 1型糖尿病でなぜβ細胞が壊れるのかは現時点では判明していませんが、免疫反応が正しく働かず、自分の細胞にもかかわらず、外部から侵入しようとしてきた細菌・ウイルスなどの有害物質などと間違って攻撃してしまう、自己免疫反応がかかわっていると考えられています。 そのため、生活習慣病が大きな原因である2型糖尿病とは異なり、注射によってインスリンを補う必要があります。 1型糖尿病の3つのタイプ(劇症・急性・緩徐進行) β細胞の破壊は一般的には進行性で、病気が進行すると、ほとんどインスリンを出せなくなります。 1型糖尿病は、β細胞が破壊される進行スピードによって、下記のように分類されます。 劇症1型糖尿病 発症から1週間程度でインスリン依存状態になるタイプです。 そのため、すぐにインスリンを補充しなければ、糖尿病の急性合併症である「糖尿病ケトアシドーシス」となり重症になる可能性があります。 急性発症1糖尿病 1型糖尿病で最も頻度の高いタイプで、糖尿病の症状が出てから数ヶ月でインスリン依存状態になります。 人によっては、発症したすぐ後であれば、一時的に残っている自己のインスリン効果がある場合もありますが、長続きせず、その後は再びインスリン治療が必要です。 緩徐進行(かんじょしんこう)1型糖尿病 半年~数年と比較的ゆっくりとインスリン分泌が低下していくタイプです。 発症した最初は、2型糖尿病と同じようにインスリン注射を使わなくても血糖値を抑えることができます。 しかし、途中で血液検査の結果から、実は緩徐進行1型糖尿病だったと判明する場合が多くあります。 1型糖尿病の治療方法 1型糖尿病は、原則としてインスリン療法が必要です。 また原因として、生活習慣の乱れということはありませんが、薬物療法だけでは、重度の低血糖になる可能性があるため、2型糖尿病と同じように食事・運動習慣に注意します。 1型糖尿病の食事療法 基本的に食べてはいけない物はありません。 1人ずつ生活スタイル・インスリン治療法が違うため、普段の食事方法については、主治医・管理栄養士としっかり話し合うことが重要です。 また、炭水化物は食後の血糖値の上昇に大きくかかわります。 そのため、炭水化物を調整する方法である「カーボ(炭水化物)カウント」をおこない、食事の炭水化物量に合わせてインスリンの量を調節する。 もしくは、インスリン治療に合わせて食事の炭水化物の量を調節すると血糖値が安定しやすくなります。 1型糖尿病の運動療法 重い合併症がなく、血糖値が落ち着いていれば、運動の制限はありません。 実際に、プロのスポーツ選手も存在します。 しかし、運動する際は、低血糖に注意が必要なため、インスリン療法や補食を調整します。 どのような方法が推奨されるかは、1人ずつ異なるため、主治医の先生と相談して決めることが重要です。 \まずは当院にお問い合わせください/ 2型糖尿病とは?原因と3つのリスク 2型糖尿病は、糖尿病の中で最も多く、いわゆる「生活習慣病」として知られています。 膵臓から分泌されるインスリンの働きが悪くなったり、十分に作られなくなることで、血糖値が高い状態が続く病気です。 原因は1つではなく、遺伝的な体質に加えて、加齢や生活習慣の乱れがきっかけとなって発症する、後天的な疾患としての側面が強いのが特徴です。 食生活の乱れや運動不足などの生活習慣が深く関係していると言われています。 2型糖尿病の原因 「糖尿病=生活習慣の問題」と思われがちですが、それだけではありません。 2型糖尿病は、遺伝的な体質と生活習慣が積み重なって発症するケースが多いのが特徴です。 たとえば、家族に糖尿病の人がいると、体質的に血糖値が上がりやすいことがあり、そこに運動不足や過食、ストレスなどが加わることで発症のリスクが高まります。 空腹感や口の渇き、頻尿、視界のかすみなどの初期症状が現れたら、早めの検査が大切です。 2型糖尿病の3つのリスク(肥満・遺伝・生活習慣) 2型糖尿病の発症には、以下のようなリスクが深く関わっています。 肥満・内臓脂肪の蓄積 体重が増えるとインスリンの効きが悪くなり、血糖値が下がりにくくなります。 遺伝的な体質 親や兄弟に糖尿病の人がいると、発症のリスクが高くなります。 不規則な生活習慣 運動不足や食べすぎ、夜遅い食事、ストレスなどがインスリンの分泌・作用に悪影響を与えます。 これらの要素が重なることで、発症リスクが高まるため、普段から生活を見直すことが予防にもつながります。 2型糖尿病の治療方法 2型糖尿病の治療には、大きく分けて「食事療法」「運動療法」「薬物療法」があります。 中でも、食事と運動による生活習慣の見直しは、治療の基本とされています。 特に初期の段階では、食事と運動だけで血糖値を安定させられることもあるため、医師の指導のもと、できるだけ早く生活改善に取り組むことが重要です。 薬物療法が必要になる場合もありますが、今回は特に「食事療法」と「運動療法」について詳しく解説していきます。 2型糖尿病の食事療法 2型糖尿病の管理において、食事の工夫はとても大切です。 基本は、栄養バランスの取れた食事を心がけること。 糖質の摂りすぎを避けつつ、主食・主菜・副菜の3つをしっかり揃えるよう意識しましょう。 また、食べ方もポイントです。 「ゆっくりよく噛んで食べる」「夜遅くに食事をしない」といった食習慣の見直しも血糖コントロールに役立ちます。 さらに、1日に必要なカロリーを把握することも大切で、適正な摂取カロリーは、以下の式でおおよそ求められます。 標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22 必要エネルギー量=標準体重 × 身体活動量(25〜30程度) 計算例) たとえば、身長160cm・軽めの活動量の人なら、 1.6×1.6×22=56.3kg(標準体重) 56.3×25~30=1407~1689kcal/日が目安です。 炭水化物:50~60% たんぱく質:15~20% 脂質:20~25% 数字ばかりで難しく感じるかもしれませんが、医師や管理栄養士と相談しながら、自分に合った食事スタイルを見つけていくことが大切です。 2型糖尿病の運動療法 運動は、2型糖尿病の改善に欠かせない習慣のひとつです。 体重の管理や心肺機能の向上だけでなく、血糖値を下げる効果やインスリンの働きを助ける効果も期待できます。 特に2型糖尿病の人は、食事療法と運動療法を組み合わせることで、より血糖コントロールが安定しやすくなると言われています。 運動の種類には主に2つあります。 有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など) レジスタンス運動(筋トレなど) 糖尿病への運動療法は、ダンベルなどを使用して筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動より、歩行やジョギング、水泳などの全身運動にあたる有酸素運動のほうがインスリンの働きがよくなるため、糖尿病の管理に適しています。 運動の目標として、1日20~60分程度の運動をできれば毎日、もしくは週3回以上。 合計で週150分以上を目指すと効果的です。 また、可能であれば週に2~3回程度、有酸素運動とともにレジスタンス運動を組み合わせることで、体力や筋力アップにもつながります。 \まずは当院にお問い合わせください/ その他の糖尿病 糖尿病は「1型」と「2型」だけではなく、実はその他のタイプもあります。 たとえば、妊娠中に発症する「妊娠糖尿病」や、薬の副作用・病気などが原因で起こる「二次性糖尿病」などがあります。 妊娠糖尿病 妊娠中に一時的に血糖値が高くなるタイプで、出産後には自然と治ることも多いですが、将来的に2型糖尿病になるリスクがあるため注意が必要です。 二次性糖尿病 ステロイド薬の長期使用や、ホルモン異常、膵臓の病気などが原因で起こる糖尿病です。 原因となる病気や薬を見直すことが、改善のポイントになります。 これらの糖尿病も早期発見と治療がとても大切です。 いつもと違う体調の変化があれば、放置せずに病院で相談するようにしましょう。 まとめ|生活習慣を整えて糖尿病を予防しよう 糖尿病には「1型糖尿病」と「2型糖尿病」の2つのタイプがあります。 1型糖尿病は自己免疫反応によって膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンを生成できなくなる疾患です。主に先天的な要素が強く、急性発症型や緩徐進行型などがあり、治療にはインスリン補充が必要となります。 一方、2型糖尿病は生活習慣の乱れや遺伝的要因により膵臓のインスリン分泌が低下する疾患で、「生活習慣病」としても知られています。治療は食事療法や運動療法が中心となり、適切な体重管理と運動が重要です。 どちらのタイプでも共通して大切なのは生活習慣を整えることです。バランスのとれた食事と適度な運動を習慣づけることで血糖値を安定させやすくなります。 また、信頼できる主治医との相談や定期的な健康診断も欠かせません。糖尿病の予防や治療法に悩んでいる方も、まずはできることから少しずつ始めてみましょう。 当院では、糖尿病に対する再生医療を提供しております。再生医療に関する詳細は、以下のページをご覧ください。 参考文献 (文献1) 日本生活習慣病予防協会「糖尿病で治療を受けている総患者数は、552万3,000人 令和5年(2023)「患者調査の概況」より」 https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/2025/010845.php(最終アクセス:2025年4月27日)
2021.12.18 -
- 股関節
- 変形性股関節症
変形性股関節症|股関節の負担が大きな「立ち上がり動作」で注意したいこと 変形性股関節症を発症すると、軟骨のすり減りや骨の変形を防ぐため、できるだけ股関節に負担を掛けないようにする必要があります。 特に、変形性股関節症の日常生活で気をつけて欲しい動作として、「立ち上がり動作」があります。今回は、変形性股関節症を発症した場合に、なぜ「立ち上がり動作に気をつけるべきなのか」について、その理由を解説します。 変形性股関節症とは 変形性股関節症とは、股関節にある軟骨が「すり減り」、骨の変形によって「股関節の隙間」が減ることで、骨同士が直接すれ合うことで痛みを感じる病気です。 軟骨のすり減りや、骨が変形するような股関節の摩耗は、多くの場合、加齢が中心ですが、実はそれ以外にも日常動作や、激しいスポーツでの負担が原因となっている場合があります。 いずれの理由であっても一旦、軟骨のすり減りや、骨が変形し、組織が損傷してしまうと元通りの状態に治すのは、非常に難しくなります。 変形性股関節症を発症後の「立ち上がり動作」は、股関節の屈曲による負担がかかる上、体重もかかってしまうため、「股関節にとっては大きな負担」になりやすい動作となります。 そのため、変形性股関節症は、可能な限り股関節に負担がかからないように過ごすことを意識し、進行を遅らせる努力が必要になります。 その意味で立ち上がり動作には特に特に気をつけなければなりません。変形性股関節症で股関節の負担に関わる「立ち上がり動作」で気を付けたいことを記してまいります 立ち上がり動作しだいで症状が悪化しかねない 変形性股関節症は、股関節を使用することで症状が進む病気です。しかも、立ち上がり動作は股関節に大きな負担がかかる動作です。股関節は、歩くときにはもちろん、立っているだけでも負担がかかります。 前傾した姿勢や、しゃがみこんだ姿勢から立つような「立ち上がり動作」をするときには、大きな動きをしていないつもりでも自分自身の体重そのものが股関節に負荷を与えることになるため、どうしても痛みを伴います。 立ち上がり動作を繰り返すと痛みが出る 初期の変形性股関節症では、痛みを感じない場合が多くあります。 初期のころは、痛みがないだけに不用意に股関節に負荷をかけがちとなり、注意が必要です。股関節への負担が日常的に続くと軟骨のすり減りが進むことになります。股関節の摩耗や疲弊が進むと期せずして歩行時、立ち上がり時に徐々に痛みが出るようになります。 このように変形性股関節症を発症後、頻繁に「立ち上がり動作」を繰り返すと、関節の摩耗や疲弊が進み、症状が進行して痛みを強く感じるようになります。さらに症状が進行すると安静にしていても痛みを感じたり、就寝時にも痛みで目が覚め、眠れなくなってしまうこともあります。 股関節以外(腰や膝)にも負担がかかります 注意したいのは、変形性股関節症の人が「立ち上がり動作」を行うと、どうしても股関節をかばってしまうため腰や、膝にも負担がかかり、時間とともに「腰の痛み」や、「膝の痛み」に繋がる可能性があります。 負担の少ない「立ち上がり動作」をするために 変形性股関節症を発症した場合でも、できるだけ症状の進行は抑えたいものです。そのためには、日常の過ごし方はがとても大切になります。 生活様式を洋式に変える 立ち上がり動作が股関節に負担になる…とはいっても、症状によっては、まだ痛みが少なく、痛みなしに立ち上がることができる場合があるかもしれません。それでも症状は徐々に進行していきます。 注意が必要とはいえ、日常生活で立ち上がり動作を一切しないことは難しいと思います。そのようなときには、生活自体を変更してく必要性があります。 例えば床に布団を敷くことはやめてベッドにする。トイレが和式であるなら洋式に変更する。畳に座っているなら椅子にする。食事もテーブルで行う。玄関には椅子を置くなど、生活様式そのものを徹底して、洋風に変えたり、しゃがむ動作を無くしていく工夫が大切です。 そうすることで、変形性股関節症であっても日常生活上で立ち上がる動作を減らすことが可能になります。 生活様式を変える/生活を洋風にするイメージ 布団をやめてベットにする トイレを和式から洋式にする 畳から椅子にする 低いテーブルから、椅子に座って使うテーブルにする その他 筋肉をつけるようにする 変形性股関節症で、強い痛みを感じるようになると、ますます歩くことが億劫になり、そうなると股関節周辺の筋力も低下してきます。そもそも股関節は筋肉によってサポートされているため、筋力の低下は、変形性股関節症を悪化させる原因になります。 そのため、負担の少ない適度な運動をおこない、筋力をつける意識を持つことが必要です。 変形性股関節症で立ち上がり動作を繰り返し続けるとどうなる? 立ち上がり動作とは、例えば下記ような日常の動作のことを指します。どれも日常生活でおこなうことが多い動作です。変形性股関節症の人が、このような立ち上がり動作を繰り返し続けるとどうなるのでしょうか。 無理していると 落ちている物を拾う 椅子から立ち上がる トイレに行く 靴ひも結ぶ 靴下を履く・・・ 歩くのも困難になりかねない 変形性股関節症は、初期の場合は痛みを感じない場合もありますが、軟骨のすり減りが進み股関節の隙間がなくなってくると、骨同士が直接こすれあうようになり痛みが出始めます。 股関節は歩く際にも使用されるため、症状の進んだ変形性膝関節症の人は歩くことすら難しくなる可能性があります。 進行すると杖や車いすに移動を頼るようになる 杖を使うことで股関節への負担を軽減することができるため、より早い段階で杖を使うと症状の進行を抑えることができます。 しかし、徐々に変形性股関節症が進むと、歩き始めや歩行時にも痛みを感じるようになり、最終的には歩くことが困難となり、車いすに移動を頼ることになってしまう可能性があります。 変形性股関節症の治療に「再生医療」という選択肢 これまでの変形性股関節症は、損傷した軟骨や骨の変形は二度と元に戻らないため、最終的な治療として今ある関節を人工関節に置換える手術を行うしかありませんでした。 しかし、外科的な手術には抵抗がある、療養期間が長くなることから仕事が忙しいなどの理由で手術を躊躇する。その他、さまざまな理由から手術を受けることができないという人もいます。 また、人工関節を入れる手術をしても、人工関節のメンテナンスのための通院や、最も憂慮すべきは、人工関節の経年劣化による再手術の必要性があるということです。 そこで紹介するのが、「再生医療」です。再生医療とは、自分自身の「幹細胞」や「血小板」を用いて、股関節の修復を促す新しい治療方法です。 自己脂肪由来・幹細胞治療 幹細胞には、さまざまな細胞に変化する能力があり、皮膚や筋肉のほか、軟骨や骨にも変化できる細胞です。この幹細胞の能力を利用して軟骨や骨の変形の修復を促し、痛みの改善を目指すのが、「自己脂肪由来・幹細胞治療」という再生医療です。 PRP療法・再生医療 血液に含まれる血小板にも、組織を修復する能力があります。自分の血液を採取し、血小板を濃縮させたものを損傷した部位へ注入することで、関節組織の修復や再生を促し、痛みの改善を目指すのがPRP再生医療です。 再生医療は、副作用のリスクが少なく、メリットが多い 自己脂肪由来・幹細胞治療、PRP再生医療は、どちらの治療方法も、自分自身の細胞や血液を用いるため、拒絶反応や、アレルギーなどの副作用の心配が少なく、安全性が高く治療期間も短いという特徴があります。 さらに、手術よりも身体的な負担が少なく、手術の時間が取れない、高齢で手術をする体力がない人でも受けられるというメリットがあります。 まとめ・変形性股関節症|股関節の負担が大きい立ち上がり動作に注意 変形性股関節症の人が気をつけるべき「立ち上がり動作」についてご紹介しました。立ち上がり動作は、日常生活をする上で、どうしても必要な動作ですが股関節に負担のかからない方法で動作をおこなう工夫をするなどして、変形性股関節症の進行を遅らせるように意識しましょう。 しかし、工夫して進行を遅らせることは可能であっても、残念ながら症状そのものの進行を止めることはできません。いつしか痛みが強くなり、最終的には安静にしていても痛みを感じるようになるばかりか、移動を車椅子に頼らざるを得なくなることは希ではありません。 このように日常生活に支障をきたすような場合、手術によって人工関節に置換える治療法もありますが近年は、手術を避けて再生医療を選択することも可能になりました。 以上、変形性股関節症を発症した場合は、立ち上がり動作をはじめ、股関節に負担をかけない意識で生活しましょう。もちろん早期に整形外科をはじめ、病院等にて専門的な治療をお受けになること強くお勧め致します。 尚、既に治療をはじめておられ、その治療では効果を感じづらい、手術を受ける時間がない、できるだけ副作用の心配がない治療を受けたい。そもそも手術は嫌だ!という場合は、「再生医療」も選択肢のひとつとして検討されることをオススメします。 https://youtu.be/isSkwxfHrbI?si=-Q71vVuG9D6rlNPe ▶こちらの動画も是非ご覧ください。 ▼ 再生医療で変形性股関節症を治療する 変形性股関節症は、再生医療により手術・入院を避けて改善することが可能です ▼話題/以下もご覧ください 変形性股関節症|農業で発症、やめる!やめない?悪化させないために
2021.12.17 -
- ひざ関節
- 半月板損傷
- 膝の外側の痛み
「半月板断裂と半月板損傷は何が違うの?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 結論からいえば、2つに明確な違いはないものの、痛み方の特徴や程度によって「損傷」「断裂」と呼び分けている場合があります。 この記事では、半月板断裂と損傷の違いについて、具体的な症状や治療法、リハビリ方法などを医師監修のもと解説します。 適切な対処で膝の健康状態を維持したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。 また、当院「リペアセルクリニック」では半月板損傷に対する再生医療・幹細胞治療を行っております。 膝の痛みでお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 半月板断裂と損傷の違い 膝の半月板に起きる様々な障害を総称して半月板損傷と呼ぶこともありますが、症状の特徴や痛みの程度によって「半月板損傷」「半月板断裂」と呼び分けるケースもあります。 いずれも主な原因は、加齢による半月板の変性や柔軟性の低下、スポーツなどによる過度な負荷です。 本章を参考に、半月板断裂・損傷に違いがあるのかを知っておきましょう。 半月板損傷(断裂)の症状 半月板損傷(断裂)の症状は、いずれも膝への強い痛みや違和感が特徴です。 原因に大きな差はないものの、損傷の程度によって現れる症状が異なる場合があります。 具体的には以下のような症状があげられます。 診断名 症状の特徴・痛み 半月板断裂 激しい痛み、関節のロック感 半月板損傷 鈍い痛み、違和感 半月板断裂は、強い痛みとともに関節が動かなくなる「ロッキング」が特徴的です。とくに、膝をひねる動作をした際に「バキッ」とした音が鳴ることがあり、その後急激な痛みと腫れを伴います。 一方、断裂まで及ばない半月板損傷では「鈍い痛み」や「違和感」が続く場合が多いです。 初期は動作時に軽い違和感がある程度でも、放置すると損傷が進行するため注意が必要です。軽度のうちは保存療法で回復が見込まれるものの、長期間改善しない場合は手術を検討します。 半月板損傷の痛みや原因については、こちらの記事でも詳しく紹介しているので、ぜひ参考にご覧ください。 半月板損傷(断裂)の原因は「膝への大きな負荷・衝撃」や「加齢」 半月板損傷・断裂はいずれも以下のような原因で起こります。 スポーツや急な動作による膝への負荷 交通事故・転倒などによる膝への急な衝撃 加齢による膝の組織の劣化 半月板損傷や断裂は、サッカーやバスケットボールなど、膝をひねる動作が多い競技でとくに多いけがです。ジャンプの着地や急停止、方向転換を繰り返すと、膝に強いストレスがかかり、半月板がダメージを受けるリスクが高まります。 さらに、交通事故や転倒時など、膝に突然大きな衝撃を受けると、半月板断裂・損傷を起こすこともあるでしょう。 また、年齢とともに半月板の弾力は失われていきます。膝の曲げ伸ばしを繰り返すなど、日常の動作による負荷だけで損傷が起こるケースも少なくありません。 スポーツ前は念入りな準備運動やストレッチを行う、普段から適度な運動で膝周りの筋肉を鍛えるなどを心がけましょう。 半月板損傷の5つの症状(タイプ)とは 半月板損傷は、損傷の形状や部位によって複数のタイプに分類されます。代表的な損傷タイプは以下の5つです。 損傷タイプ 特徴 症状 縦断裂 縦方向に裂け目が入る 引っかかり感や痛み。膝をひねると悪化する 横断裂 横方向に裂ける 鈍い痛みや腫れ。膝の不安定感が出る 円盤状断裂 円盤状の半月板に裂け目ができる コツコツ音や引っかかり感が特徴 フラップ状断裂 裂けた部分が剥がれ、フラップ状になる 膝のロック感や激しい痛み 水平断裂 上下に分断されるように裂ける 鈍い痛みが膝全体に広がり炎症が悪化する 症状を放置すると、進行して治療が困難になる場合がありますので、早期に医師の診断を受けましょう。 半月板断裂と損傷の治療方法の違い 半月板断裂の治療法は、損傷の程度や部位、患者の年齢・活動量などに応じて変わります。 大きく分けて、手術療法と保存療法があります。 半月板断裂の治療方法 半月板断裂の治療方法は、断裂の範囲や症状の重さによって異なります。 軽度の場合は保存療法で回復が見込めますが、重度の場合は手術が必要となるケースもあります。 完全断裂は手術が推奨される場合が多い 半月板が完全に裂けてしまうと、自然治癒は期待できません。関節内に断裂した部分が挟まり、膝が動かしにくくなることもあります。 このような場合、推奨されるのは「縫合術」や「部分切除術」などの手術療法です。 縫合術は、半月板を修復する手術で、若年層やスポーツを続けたい方に適しています。一方、部分切除術は損傷部分を切除し、膝の動きをスムーズにする方法です。 いずれも、術後には筋力を回復させるためのリハビリが必要です。 部分断裂はリハビリや装具での保存療法も選択肢 部分的な断裂において、症状が軽度でロッキングが無く、手術を望まれない場合は保存療法が選択肢となります。 膝に負担をかけないように安静にし、サポーターや装具を使用して膝の安定性を保つのが目的です。 また、炎症を抑えるために、アイシングや消炎鎮痛剤が処方される場合もあります。 リハビリでは、大腿四頭筋など膝を支える筋肉を鍛えるトレーニングを行い、膝の負担を軽減します。 以下の記事では、半月板損傷を早く治す方法や効果的なリハビリについて現役医師が解説していますので、ぜひ参考にしてください。 半月板損傷の治療方法 半月板損傷の場合、基本的には保存療法で改善が期待できます。 しかし、損傷の程度や部位、患者の年齢や活動量などによって異なり、症状によっては手術が必要なケースもあります。 軽度損傷はリハビリと安静が基本 半月板損傷が軽度の場合、リハビリテーションと安静が基本的な治療法です。 リハビリテーションでは、膝周りの筋肉を強化したり、関節の可動域を広げたりします。 また、炎症や痛みを抑えるために、薬物療法や注射療法が行われる場合もあります。 重症化すると断裂と同様の手術が必要になる場合も 半月板損傷が進行し、膝の機能に支障をきたす場合は手術を検討します。 痛みが長期間続き、日常生活に影響を及ぼす場合は、縫合術や部分切除術が選択されるケースもあります。 とくに、高齢者の半月板損傷は変形性膝関節症へ進行する可能性があるため、症状の悪化を防ぐための早期治療が重要です。 半月板損傷の治療法や術後のリスクについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。 まとめ|半月板断裂と損傷の違いを理解して適切に治療を行おう 半月板断裂と損傷に明確な違いはないものの、症状の特徴や痛みの程度が異なる場合があります。どちらもスポーツや外傷、加齢による柔軟性の低下などが原因です。 膝に痛みや違和感がある場合は、自己判断せず専門医を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では半月板損傷の治療も行っております。 気になる症状がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 半月板断裂と損傷の違いに関するよくある質問 靭帯断裂と半月板損傷の違いは何ですか? 靭帯断裂は、膝を安定させる靭帯が完全または部分的に切れる状態を指します。 一方、半月板損傷は、膝のクッションとしての役割を果たす軟骨の損傷を意味します。 靭帯断裂は、膝のグラつきや激しい痛みを伴うことが多く、スポーツによる外傷が主な原因です。 一方、半月板損傷は、違和感や鈍い痛みが特徴で、加齢や慢性的な膝への負担によるものが多くあります。 どちらも早期の診断と治療が重要になります。 半月板損傷は手術しないほうがいいですか? 半月板損傷の治療法は、損傷の程度や症状によって異なります。 軽度であれば、保存療法にて改善が見込めることが多いです。 しかし、症状が改善しない場合や、日常生活に支障をきたす場合は、手術が必要となる場合もあります。 手術が必要かどうかは、専門医が患者の状態を総合的に判断して決定します。 半月板損傷の手術に関するメリット・デメリットは以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。 また、当院「リペアセルクリニック」では手術をしない治療法として再生医療を提案しております。 膝の痛みや手術で不安な方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。
2021.12.16 -
- 糖尿病
- 内科疾患
糖尿病|血糖値をントロールして改善を目指せる適正エネルギー量とは 糖尿病は、薬物療法によって症状が改善しても食事方法を見直さなければ、いずれ糖尿病の症状が出てしまいかねません。本記事では糖尿病の改善を目指すための食事方法について生活習慣からくる標準体重を知り、適正エネルギーを知ることで血糖値のコントロールを目指します。 また、本記事で紹介する食事方法はあくまで目安となるものです。適正な食事量は人によって違うため、より詳しく知りたい人は主治医や管理栄養士、糖尿病療養指導士に相談するようにしましょう。 糖尿病とは 私たちが食事をすると、胃や腸などの消化管で消化・吸収されます。このとき、すい臓から分泌されたインスリンというホルモンが肝臓や筋肉などに働き、食事の中のブドウ糖を細胞内に取り込みます。 これによって、食後の血糖値が正常値に保たれているのです。糖尿病は、血糖値を下げるインスリンの作用不足により、様々な代謝異常を起こす病気です。 糖尿病には1型と2型があります。 1型糖尿病はインスリン分泌の低下や消失により起こる糖尿病で、自己免疫疾患の一つとされています。2型糖尿病はインスリンが分泌しているにもかかわらず、インスリン働きが妨げられ血糖値が下がらないことで起こる糖尿病です。 日本人の糖尿病の80~90%はこの2型糖尿病にあたります。また、妊娠中に発症した糖尿病は妊娠糖尿病と呼ばれます。高血糖の他にも、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙がリスク因子となるので注意が必要です。 糖尿病の合併症 糖尿病は全身の血管が通っている部位に合併症を引き起こす可能性があります。 特に、毛細血管が傷ついた場合、その場所によって網膜症(眼の網膜)、腎症(腎臓)、神経障害(神経系)が生じ、これらは糖尿病3大合併症と呼ばれています。 また、大きな血管が傷つくことによって脳血管障害(脳)、心疾患(心臓)、足壊疽などの動脈硬化症(足)を生じることがあります。 糖尿病の治療 糖尿病の治療には、食事・運動・薬物療法の3つをバランスよく行います。1型糖尿病の治療には、インスリン注射が必要となります。また、インスリン注射と合わせてバランスのとれた食事をすることが重要になります。 2型糖尿病の治療は、バランスのとれた食事をすること、適度な運動、標準体重を維持することなどが重要になります。つまし、いずれの糖尿病の治療においても、バランスのとれた食事になるよう、食事方法の見直しが大切なのです。 食事療法・バランスの良い食事で血糖値をコントロール 糖尿病の治療には食事療法が重要になります。 1型糖尿病の人はインスリン注射を行うことが多いため、バランスの良い食事に合わせてインスリン注射による低血糖を防ぐことが必要になります。 2型糖尿病の食事療法は、エネルギー量と各栄養素をバランスよく摂ることで、「血糖コントロール」を良好に保ちます。また、1回の食事中の糖質量が多いと食後高血糖を引き起こす可能性があるため、1日の食事をなるべく均等に3回に分けて食べるようにしましょう。 1日のエネルギー摂取量をする方法 糖尿病を改善するためには、自分にとって適正なエネルギー量を計算する方法があります。まずは自分の標準体重を計算します。ご存知の方も多いBMIという計算式で標準体重を求めることが可能です。 標準体重(BMI) 標準体重/BMI(kg) = 身長(m) × 身長(m) × 22 このようにご自身の身長だけで求めることができます。ただし、これはあくまで標準(指標)であり、実際は、各人の生活習慣によって変化すべきものです。 ▼ 生活習慣の違いによる適性エネルギー量 標準体重に自分の日常生活の身体活動レベルをかけることで自分の「適性エネルギー量」を求めることができます。身体活動レベルの目安と、適性エネルギー量を求める計算方法は次の通りです。 デスクワーク、主婦など 25~30×標準体重(kg)=1日の適性エネルギー量(kcal) 立ち仕事が多い 30~35×標準体重(kg)=1日の適性エネルギー量(kcal) 力仕事が多い 35×標準体重(kg)=1日の適性エネルギー量(kcal) また、1日の適性エネルギー量は年齢や性別によっても変わってきます。本記事の記載はあくまでも目安の量と考えて、詳しく知りたい場合は主治医、管理栄養士、糖尿病療養指導士にご相談ください。 食事で血糖値コントロールするためには 食事の栄養素のうち、血糖値に影響を及ぼすのは炭水化物です。 炭水化物には、食後の血糖値を上昇させ、エネルギーとなる糖質と、ほとんど消化されず血糖値の上昇を抑え、エネルギーにならない食物繊維があります。 糖尿病改善のためには、食物繊維が含まれる食品を多く摂るように心がけましょう。食物繊維の目標は、1日20~25gといわれています。 食物繊維を多く含む食品には、野菜(特に根菜類)、海藻、キノコ、大豆、果物(糖質も多いので食べ過ぎに注意が必要)が挙げられるので、日々の食事に取り入れてみましょう。 また、血糖値が上がり過ぎないための食べ方を工夫することができます。具体的な方法として、次のようなものがあります。 血糖値を上げない食べ方 ゆっくり時間をかけて食べる よく噛んで食べる 野菜を先に食べる このように食べ方についての工夫も、参考にしてみてください。 まとめ・血糖値をントロールして改善を目指す糖尿病の適正エネルギー量とは 糖尿病が悪化すると全身に様々な合併症が生じます。しかし、食事療法を始めとする糖尿病治療を適切に行うことにより、合併症や動脈硬化の発症や悪化を防ぐことができるのです。 食事は毎日の生活で欠かせないものです。急激な食事制限は、ストレスから長続きしないだけでなく、かえって症状が悪化する恐れがあります。 また現在糖尿病を抱えている人は、主治医や管理栄養士、糖尿病療養指導士と相談しながら継続ができる食事療法を進めていきましょう。 以上、糖尿病を食事で改善するために、適正エネルギーの消費量を知り、血糖値をコントロールする方法について記しました。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 ▼糖尿病の合併症|最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、糖尿病の新たな治療法として注目を浴びています ▼以下の記事もご参考にされませんか 糖尿病の合併症!悪化を防ぐために考えて欲しいこと
2021.12.16 -
- 脳卒中
- 頭部
脳卒中は脳の血管が詰まったり破れたりして脳の機能が損なわれる病気の総称です。(文献1)大きく脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の3種類に分けられ、発症すると運動障害や感覚障害など後遺症のリスクが増加します。 代表的な運動障害が手足の麻痺で、身体のいずれか片側にあらわれるのが特徴です。脳卒中の発症後早期から積極的なリハビリに取り組むと、ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作の向上)が見込めます。 今回は脳卒中の後遺症で多く見られる足の麻痺について、リハビリのやり方を詳しくお伝えします。リハビリを始める前に知っておくべき点も解説するため、ぜひ参考にしてください。 足の麻痺のリハビリは必要!早めに始めるほど回復する可能性が高まる 足の麻痺のリハビリは、早期に社会復帰するために必要です。足の麻痺が残ると歩行が困難になったり転倒危険性が高くなったりする上、社会参加の機会が失われると精神面にも悪影響を及ぼす恐れがあります。 リハビリで足の麻痺をどこまで改善できるかは症状の程度や年齢、損傷部位により異なるため一概には断言できません。しかし脳神経には可塑性があるため、早期にリハビリを開始するほど歩行機能の改善が見込めます。 足の麻痺のリハビリに取り組む目的・必要性としては筋肉の弱体化を防止したり、身体のバランス感覚を保持したり、日常生活における動作に必要な筋力を維持したりする点が挙げられます。 足の麻痺のリハビリを始める前に知っておきたいこと 足の麻痺のリハビリを始める前に、以下4つのポイントを知っておきましょう。 正しいフォーム(姿勢)で実施する 転倒・転落の対策を十分に行う 適度に水分補給・休憩をとる 痛みがある(出る)場合は無理しない 足の麻痺のリハビリに取り組む際は、正しいフォーム(姿勢)で実施するのが原則です。誤ったフォーム(姿勢)では狙った筋肉にアプローチできない上、筋肉痛や腰痛などのリスクが増加します。 リハビリを実施する際は転倒・転落への対策を十分に講じてください。自宅の部屋で行う方はリハビリのためのスペースを十分に確保し、滑りやすい物を足元に置かないようにしましょう。 導線上に不要な物を置かないようにするだけでなく、万が一の転倒に備えてすぐに壁に触れられる環境を整えることも大切です。 リハビリの実施中は水分補給と適度な休憩を欠かさず、途中で痛みが出た場合は無理をせず中断しましょう。リハビリ中に頻繁に痛みが出る方は、正しいフォーム(姿勢)で実施できているか確認する必要があります。 リハビリの初期は筋出力が低下しているため、少ない回数・時間からはじめ、慣れてきたら徐々に増やすのがポイントです。 足の麻痺のリハビリ方法|自主トレする場合 足の麻痺のリハビリ方法について、自宅で自主トレする場合に効果的な運動を以下に分けて解説します。 ベッド上でできるリハビリ 座ったままできるリハビリ 起立してできるリハビリ 脳卒中の発症から48時間以内に離床すると、不動関連の合併症のリスクを低減できるとわかっています。(文献2)医師の許可が出たら自分にできるリハビリに取り組み、足の麻痺を少しでも軽減しましょう。 ベッド上でできるリハビリ ベッド上でできる足の麻痺のリハビリ方法は以下の3つです。 片足を上げる運動 お尻を上げる運動(ブリッジ) タオルを膝裏でつぶす運動 それぞれについて詳しく解説します。 片足を上げる運動 ベッド上でできるリハビリの一つが、寝た状態から片足を上げる運動です。 目的 股関節を屈曲させる際にはたらく腸腰筋を強化する 方法 1.ベッドにあおむけで寝て両足を伸ばす 2.手のひらを下にしてお尻の両脇に置く 3.ひざを伸ばしたまま右足をゆっくりと上げる 4.足をあげた状態を2秒ほどキープしたらゆっくりと元に戻す 5.左右10回ずつ行う 腸腰筋は腰の骨と太ももの骨をつなぐ筋肉で、歩行の際に太ももをあげる(股関節を屈曲させる)はたらきがあります。腸腰筋をしっかり使えると足が高く上がるため、転倒リスクを下げる効果が期待できます。 仰向けだけでなく横向きでリハビリに取り組むと、お尻の筋肉(中殿筋)が鍛えられ、歩行時に体幹(全身から四肢を除いた部分)を安定させるのに効果的です。 お尻を上げる運動(ブリッジ) お尻を上げる運動もベッド上でできるリハビリの一つです。 目的 股関節を伸展させる際にはたらく大殿筋を強化する 方法 1.ベッドにあおむけで寝て両足を伸ばす 2.手のひらを下にしてお尻の両脇に置く 3.両ひざを立ててお尻をゆっくりと上げる 4.2秒ほど姿勢をキープしたらゆっくりと元に戻す 5.最初は10回から始め慣れてきたら回数を増やす 大殿筋は骨盤と太ももの骨を結ぶお尻の大きな筋肉で、歩行の際に後ろ足で地面をける動作(股関節の伸展)の際にはたらきます。 大殿筋が鍛えられると地面をしっかりと蹴れるようになるため、歩行をスムーズにする効果が期待できます。お尻を上げた際に、肩から膝が一直線になるイメージで行うのがポイントです。 タオルを膝裏でつぶす運動 丸めたタオルを膝裏でつぶす運動も、足の筋肉の強化に効果的です。 目的 股関節の屈曲・膝関節の伸展の際にはたらく大腿直筋を強化する 方法 1.ベッドにあおむけで寝て左ひざを立てる 2.丸めて棒状にしたタオルを右膝の下に入れる 3.右膝を伸ばし膝裏でタオルをつぶすように力を加える 4.左右10回ずつ行う 大腿直筋は骨盤と膝下(脛骨粗面)を結ぶ筋肉で、太ももをあげたり(股関節の屈曲)、膝を伸ばしたり(膝関節の伸展)する際にはたらきます。 大腿直筋が鍛えられると膝を曲げ伸ばししやすくなるため、歩行をスムーズにする効果が期待出来ます。ベッドに座れるようであれば、両手を後ろについてリハビリしても構いません。 座ったままできるリハビリ 座ったままできる足の麻痺のリハビリ方法は以下の3つです。 太ももを上げる運動 つま先を上げる運動 膝を閉じる運動 それぞれについて詳しく解説します。 太ももを上げる運動 椅子に座れるようになったら、太ももを上げる運動に取り組みましょう。 目的 股関節を屈曲させる際にはたらく腸腰筋を強化する 方法 1.両足の裏が地面につく高さの椅子に座る 2.両手で椅子の縁をつかむ 3.右足を上げて膝を胸の方へ近づける 4.2秒ほど姿勢をキープしたらゆっくりと元に戻す 5.左右10回ずつ行う 椅子に座り太ももを上げる運動に取り組むと、足を上げる際にはたらく腸腰筋の強化につながります。太ももをあげる際は、上半身が後ろに倒れないよう意識しましょう。 上半身が後ろに倒れると体重を利用して太ももを上げてしまうため、腸腰筋が十分に刺激されません。歩行がおぼつかない方は、ベッドの端に座ってリハビリしても構いません。 つま先を上げる運動 つま先を上げる運動は、立ったり座ったりする際に使われる筋肉を強化するのに効果的です。 目的 股関節の屈曲・膝関節の伸展の際にはたらく大腿直筋を強化する 方法 1.両足の裏が地面につく高さの椅子に座る 2.両手で椅子の縁をつかむ 3.膝を伸ばしたまま右足を床と平行になるまで上げる 4.2秒ほど姿勢をキープしたらゆっくりと元に戻す 5.左右10回ずつ行う 椅子に座りつま先を上げる運動に取り組むと、股関節を曲げて膝を伸ばす際にはたらく大腿直筋の強化につながります。つま先を上げる際は、足が床と平行になる高さまでで構いません。 足を上げる際に上半身が後ろに倒れないよう意識しましょう。上半身が後ろに倒れると体重を利用して足を上げてしまうため、大腿直筋を鍛える効果が低くなります。 膝を閉じる運動 椅子に座って膝を閉じる運動に取り組むと、骨盤が安定して歩行の際に足を上げやすくなります。 目的 股関節を屈曲したり骨盤を安定させたりするはたらきを持つ内転筋群を強化する 方法 1.両足の裏が地面につく高さの椅子に座る 2.両手で椅子の縁をつかむ 3.膝の間に挟んだボールをつぶすように足を閉じる 4.2秒ほど姿勢をキープしたらゆっくりと元に戻す 5.最初は10回から始め慣れてきたら回数を増やす 内転筋群は骨盤と太ももの骨の内側を結ぶ筋肉で、骨盤を安定させたり足を上げる際に補助的なはたらきをしたりする筋肉です。内転筋群を強化すると足が外側に広がるのを抑え、まっすぐ歩きやすくなるメリットがあります。 自宅に適当なボールがない方は、タオルを丸めたものやクッション、折りたたんだ座布団などでも代用可能です。 起立してできるリハビリ 起立できるようになったら以下3つのリハビリに取り組むのがおすすめです。 立ったり座ったりを繰り返す運動 足を後ろに蹴る運動 片足を横に開く運動 それぞれについて詳しく解説します。 立ったり座ったりを繰り返す運動 立ったり座ったりを繰り返す運動に取り組むと、バランスよく立つための筋力アップに効果的です。 目的 足全体の筋力強化、および麻痺側の足に体重をかけてバランスよく立つ 方法 1.テーブルを前にして椅子に腰かける 2.両手をテーブルについて体重をかけ立ち上がる 3.両足に均等に体重をかけるイメージで姿勢を維持する 4.お辞儀するように上半身を前に倒しながら椅子に腰かける 5.最初は10回から始め慣れてきたら回数を増やす 立ったり座ったりを繰り返す運動のコツは、立つときも座るときもゆっくり時間をかけることです。時間をかけることで筋肉が十分に収縮するため、効率よく筋力アップにつながります。 腕の力に頼らなくても立てるようになったら、机がない場所で椅子に座った状態から立ち上がる訓練にも取り組みましょう。ただし、転倒に備えて壁の近くで行うなど工夫してください。 足を後ろに蹴る運動 足を後ろに蹴る運動を繰り返すと、歩行の際に足で地面をしっかり蹴れるようになります。 目的 股関節を伸展させる際にはたらく大殿筋を強化する 方法 1.立った状態で椅子の背もたれや机の縁に両手を置く 2.膝を伸ばしたまま右足を大きく後ろに蹴る 3.右足を後ろに下げた姿勢を2秒ほどキープしてゆっくりと元に戻す 4.左右10回ずつ行う 足を後ろに蹴る運動は地面をける際にはたらく大殿筋を鍛えるリハビリのため、素早く行う必要はありません。できるだけゆっくり行い、お尻の筋肉に効いていることを意識するのがポイントです。 足を後ろに下げるときは、上半身が前に倒れないよう意識しましょう。上半身が前に倒れると反動で足を後ろに下げてしまうため、大殿筋に十分な負荷がかからなくなります。 片足を横に開く運動 片足を横に開く運動を繰り返すと、骨盤を安定させるための筋力アップが期待できます。 目的 骨盤を安定させる際にはたらく中殿筋を強化する 方法 1.立った状態で椅子の背もたれや机の縁に両手を置く 2.膝を伸ばしたまま右足を大きく左側に開く 3.足を開いた姿勢を2秒ほどキープしてゆっくりと元に戻す 4.左右10回ずつ行う 片足を横に開く運動も素早く行うのではなく、できるだけ時間をかけてゆっくり取り組むのがポイントです。足を開く際は上半身が左右に傾かないよう意識しましょう。 上半身が左右に傾くと反動で足を振り上げてしまうため、十分に中殿筋が刺激されなくなります。つま先を外側に開かず真っすぐ前に向けると、より効率的に中殿筋を刺激できます。 足の麻痺のリハビリ方法|病院のリハビリテーション室で実施する場合 足の麻痺のリハビリは、病院のリハビリテーション室で実施する場合もあります。脳卒中の発症直後は集中治療室で過ごしますが、車いすに座れるようになると一般病棟へ移るのが一般的です。 一般病棟でベッドサイドでのリハビリに取り組んだ後、立ったり座ったりするための筋力が付いてきたら、リハビリテーション室で歩行機能を回復させるためのリハビリを実施します。 リハビリテーション室で取り組む歩行機能の回復に向けたリハビリ方法は、以下の通りです。 立つ訓練に取り組む 手すりを用いた歩行練習に移る 杖を使って歩く練習を開始する リハビリテーション室では最初に両足でバランスよく立つための訓練に取り組み、立位が安定して保持できるようになれば手すりを用いた歩行練習に移ります。歩容が安定してきたら、杖を使って歩けるようになるためのリハビリに取り組みます。 脳卒中の発症に伴う歩行障害の程度は個人によりさまざまです。作業療法士が一人ひとりに適したプログラムを作成し、回復度合いを見ながら運動強度を強めていきます。 足の麻痺はリハビリしても後遺症が出る可能性はある 脳卒中の発症後から速やかにリハビリに取り組むと、歩行障害の改善が期待できます。実際に脳卒中を発症した方のおよそ3人に2人は、リハビリによる自立歩行が可能です。(文献3) しかし、現在の医療技術で脳卒中の発症に伴う感覚麻痺を完全に治すことは難しく、足の麻痺のリハビリに取り組んでも、後遺症が出る可能性は否定できません。実際、18歳から65歳までの発症者では、3割以上に中等度以上の後遺症が残るとされています。(文献4) 具体的な後遺症の例としては運動麻痺や感覚麻痺、失語症、高次機能障害、嚥下障害、排尿障害、認知症、うつなどが挙げられます。 脳卒中による後遺症のリスクを少しでも低減するため、発症後の早い段階から適切な治療およびリハビリに取り組むことが重要です。 \まずは当院にお問い合わせください/ 足の麻痺の治療には再生医療をご検討ください 近年、足の麻痺の治療法の一つとして、再生医療が挙げられるようになりました。 足の麻痺に対する再生医療の具体的な手順は以下の通りです。 脳卒中患者の血液を採取する 同様に脂肪を採取する 幹細胞を培養する 脳卒中患者に幹細胞を投与する 再生医療に関しても、治療を始めるタイミングが早ければ早いほど良い結果が見込めます。 当院リペアセルクリニックでは、脳卒中による足の麻痺の治療にも用いられる再生医療を扱っておりますので、ご興味のある方はぜひ一度ご相談ください。 まとめ|足の麻痺のリハビリは早期からコツコツ進めるのがポイント 脳卒中の発症後に見られる代表的な運動障害が手足の麻痺ですが、発症後の早期から積極的なリハビリに取り組むと、ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作の向上)が見込めます。 実際に脳卒中を発症した方のおよそ3人に2人が、適切な治療およびリハビリによって自立歩行が可能になるとわかっています。 脳卒中の累積再発率は初回発症後から5年で約35%とされていますが、再生医療により損傷した血管が修復されると、将来の脳卒中の再発を予防できる点もメリットの1つです。(文献5) リペアセルクリニックでは、足の麻痺に対する再生療法に関するご相談を受け付けています。患者様の症状に応じて期待できる効果を丁寧にご説明しますので、お気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献 (文献1) 東京都保健医療局「脳卒中とは」 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/siryou25-2(最終アクセス:2025年4月17日) (文献2) 理学療法学「脳卒中患者に対する発症後48時間以内の規律と定義した早期離床導入の効果」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/advpub/0/advpub_11753/_pdf(最終アクセス:2025年4月16日) (文献3) 理学療法科学「脳卒中片麻痺患者における下肢感覚障害が歩行が自立するまでの期間の長さに及ぼす影響」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/38/6/38_456/_pdf/-char/en(最終アクセス:2025年4月17日) (文献4) 厚生労働省「脳卒中患者(18-65歳)の予後」 https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/01-01-02-06.html(最終アクセス:2025年4月17日) (文献5) 厚生労働省「脳卒中の回復期・維持期の診療提供体制の考え方」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/5_4.pdf(最終アクセス:2025年4月17日)
2021.12.14 -
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脳卒中の種類と原因|発症を予防する生活上の生活目標と修正方法について 脳卒中とは、脳の血管が突然つまったり破れたりすることで脳の血管に障害を起こす病気を総称して「脳卒中」といいます。この脳卒中、いくつか種類に分かれ、それぞれ発症原因も異なります。 そこで、脳卒中を4つの種類に分けて、それぞれの特徴と発症原因、その対策を分かりやすく解説します。その後、脳卒中の原因を提示して、予防できることと、できないことを解説します。 それぞれのリスクを知ることで普段の生活から予防を心がけていただければと思います。 脳卒中の原因 脳卒中の種類 ・脳の血管がつまる ① 脳梗塞 ・脳の血管が破れる ② 脳出血 ③ くも膜下出血 ・一時的に脳の血管がつまる ④ 一過性脳虚血発作 ①脳梗塞 脳梗塞とは、脳卒中のなかでも最も患者数が多いとされている病気で、脳の血管が詰まることが原因となって脳に栄養が運ばれなくなり、その結果、脳の組織が壊死(えし)してしまう病気を指します。 脳梗塞では、運動機能を司っている場所が障害を受けると、手足の麻痺が現れるといったように、壊死した部分が司っていた機能に応じた症状が現れるという特徴があります。 ②脳出血 脳出血とは、脳の血管が破れることが原因となって出血が起こり、脳の組織が壊されてしまう病気です。脳梗塞と同様、脳の障害された場所が司っている機能に応じた症状が現れる特徴があります。 ③くも膜下出血 くも膜下出血とは、血管にできた「こぶ(「脳動脈瘤」と呼ばれる)」が破裂することが原因となって脳の表面に出血が起こる病気です。特徴として、突然、強烈な頭痛を生じることが多く、緊急の処置を必要とするケースが多くみられ注意が必要です。 ④一過性脳虚血発作 一過性脳虚血発作とは、脳梗塞に近い病態であり、脳梗塞の前兆として現れることがあります。一時的に脳の血管がつまることで症状が現れますが、24時間以内に症状が消えてなくなる点が特徴的です。 脳卒中の原因 ①脳梗塞:動脈硬化や血栓が原因 脳梗塞には、主に「脳血栓症」と「脳塞栓症」があります。脳塞栓症は、脳血栓症と比べて脳の太い血管がつまり、広い範囲で脳梗塞を生じることが原因となって重症化することが多いのが特徴です。 ・脳血栓症 脳や頸部の血管に動脈硬化による狭窄や閉塞が起こることによって生じるもの。 ・脳塞栓症 心臓や足など全身のどこかにできた血栓(血のかたまり)が、血流に乗って脳に到達することによって生じるもの。 特に近年の高齢化に伴い、心房細動という不整脈によって心臓内に血栓が形成され、これが血流に乗って脳に到達して生じる「心原性脳塞栓症」が増加しています。 ②脳出血:動脈硬化が原因 脳出血は、脳の血管の動脈硬化が原因で発症します。動脈硬化によってもろくなった血管に高い血圧がかかることで血管が破れ、脳出血が起こると考えられており、運動時や用便時、入浴時など血圧が急激に上昇した際に発症しやすいとされています。 ③くも膜下出血:脳動脈瘤の破裂が原因 くも膜下出血は、脳動脈瘤と呼ばれる脳の血管にできたこぶが破裂することが原因となって起こります。脳動脈瘤ができる原因は正確にはわかっていませんが、高血圧や脳血管への血流、ストレス、喫煙や遺伝的要因が関与していると考えられています。 高血圧、喫煙は脳動脈瘤が破裂する危険因子にもなるといわれています。 また、脳動脈瘤が生じやすい体質は遺伝するともいわれており、家族の中に脳動脈瘤が生じたことがある方やくも膜下出血を起こしたことがある方がいる場合は発症しやすいといえます。 脳卒中の原因から理解する予防できること!予防できないこと! 脳卒中の危険因子(原因)は「修正できない危険因子」と生活上で「修正できる危険因子」とがあり、脳卒中を予防するためには「修正できる危険因子」を改善するように日頃から注意していく必要があります。 そこで、修正できない危険因子と、修正できる危険因子を明確にして、修正できる危険因子については、その対策を明示させて頂きました。 (1) 修正できない危険因子(原因)とは 自分ではどうしようもない発症原因となるもの 年齢:55歳以上では、10歳ごとに脳卒中の発症リスクが約2倍になります 性別:男性は女性よりもリスクが高いとされています 家族歴 (脳卒中):両親や祖父母に脳卒中の既往がある場合、発症のリスクが高くなるとされています。 (2)修正できる危険因子(原因)とは 修正できる危険因子を知ることは、予防できない危険因子を知った上で、取り組めば脳卒中の発症リスクを下げることが可能になります。意識することで自分でできる対策です。 修正できる危険因子(原因) 高血圧 糖尿病(高血糖) 脂質異常症 心房細動などの心疾患 喫煙 飲酒 肥満 ①高血圧 高血圧は脳卒中の最大の危険因子であり、血圧が高いほど脳卒中の発生率は高くなります。食生活の乱れやアルコールの飲みすぎ、急激な運動などで血液の粘り気が強くなったり、血液が流れるときの抵抗が大きくなったりすることで血圧が上昇します。 【高血圧】の場合の修正目標 高齢者: 140/90mmHg 未満 若年、中年者: 130/85mmHg 未満 糖尿病や腎障害合併例: 130/80mmHg 未満が推奨されています (2009 脳卒中治療ガイドラインより) ▼ ▼ ▼ 【高血圧の場合】脳卒中の発症を避けるための生活目標 起床後や就寝前など、定期的に血圧を測定する(自己測定) 眼底検査や心電図、尿検査などで高血圧の合併症を定期的にチェックする 薄味にしたり減塩しょうゆを使ったりするなど、食塩を摂りすぎないようにする →理想の塩分摂取量:6g/日未満 精神的、身体的ともに過剰なストレスを避ける →疲れたら無理をせず休む、気分転換など 暖かい部屋から寒い廊下に出る、突然エアコンの風を直接受けるなど、急激な寒暖差を避ける ぬるま湯は血管を拡張させるため、入浴時はぬるま湯にそっと入る 定期的に有酸素運動を行う(例:毎日30分の散歩) 野菜・果物・魚類(カリウムを多く含む食品が望ましい)を積極的に摂る 体重を減らす 医師の指示通りに降圧剤を内服する (カルシウム拮抗剤、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬、ACE 阻害薬、β遮断薬など) ②糖尿病(高血糖) 糖尿病は、インスリンの作用不足によって血糖値が上昇する病態で、脳卒中のうち特に脳梗塞の危険因子として重要とされています。 【糖尿病の場合】の修正目標 空腹時血糖:110mg/dl以下 HbA1c:5.8%以下(ヘモグロビンA1c=過去約1ヵ月間の血糖値を反映する) ▼ ▼ ▼ 【糖尿病の場合】脳卒中の発症を避けるための生活目標 医療機関で定期的に血糖を測定する(食前採血が望ましい) 眼底検査や心電図、尿検査などで糖尿病の合併症を定期的にチェックする 食事カロリー(エネルギー摂取量)を減らす バランスのよい食事摂取を心がけ、偏食傾向を治す 散歩やジョギングなど、定期的に有酸素運動を行う 規則正しく、疲れすぎない生活を送る 医師の指示通りに、経口血糖降下剤を内服、またはインスリン注射を行う →インスリン注射を行っている場合は、血糖自己測定が望ましい インスリン注射を行っている場合、低血糖状態を正しく理解して、対処法(飴をなめるなど)を知っておく ③脂質異常症 脂質異常症とは、高コレステロール血症(高 LDL-コレステロール血症)、高トリグリセリド血症(高中性脂肪血症)、低 HDL-コレステロール血症を指します。 その中でも、高コレステロール血症が脳卒中のうち、特に脳梗塞の危険因子として重要で、高LDL-コレステロール血症は冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)の危険因子としても知られています。 【脂質異常症の場合】の修正目標 LDL-コレステロール 120~160mg/dl 以下 HDL-コレステロール 40mg/dl以上 トリグリセリド 150mg/dl ※他の冠動脈疾患の危険因子(年齢、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患の家族歴など)の有無によって LDL-コレステロールの目標値は異なる (動脈硬化性疾患予防ガイドラインより) ▼▼▼ 【脂質異常症の場合】脳卒中の発症を避けるための生活目標 肉や乳製品に多く含まれる動物性脂肪の摂りすぎに注意する (一日のコレステロール摂取量は 300g 以下にする) 野菜、海そう、穀類、豆類に多く含まれる食物繊維を多く摂る 植物油、大豆、緑黄色野菜を多く摂る 定期的に有酸素運動を行う ④心房細動などの心疾患 心房細動は、脳梗塞(心原性脳塞栓症)の危険因子です。心房細動では心房内の血流が乱れて滞るため、血栓(血のかたまり)ができやすくなります。血栓が血流に乗って脳に運ばれ脳の血管がつまると、脳梗塞を引き起こします。 治療法として、ワーファリンの内服による抗凝固療法を行うことで、脳梗塞の発症率が低下することが確認されています。 【心疾患の場合】の修正目標 ワーファリンを適切に内服して、定期的に医師の診察を受ける ▼▼▼ 【心疾患の場合】修正すべき生活目標 精神的、身体的ともに過剰なストレスを避ける 動悸、息切れ、めまい、胸痛などが出現したらすぐに医療機関を受診する 体内水分が過剰になると、心臓に負担がかかるため過剰な水分摂取を避ける 医師の指示通りにワーファリンを内服、定期的にプロトロンビン時間(INR)を測定する (INR を 2.0~3.0(高齢者では、1.6~2.6)にコントロールする) ※ワーファリンを内服している場合 ビタミン K を多く含む食品(納豆、緑色野菜など)の摂取を避ける 打撲、切り傷で出血しやすいため出血傾向に気をつける ⑤喫煙 喫煙は、脳卒中のうち特に脳梗塞とクモ膜下出血の危険因子です。タバコは交感神経系を興奮させるため、タバコを吸うと一過性に血圧が上がり、ニコチンは、血管を収縮させて高血圧や動脈硬化を一層悪化させます。 また受動喫煙も、脳卒中の危険因子と考えられています。 【喫煙の場合】の修正目標 禁煙する ▼▼▼ 【喫煙の場合】の生活目標 タバコを買わない 灰皿やライターを捨てる 皆の前で「禁煙宣言」をする 禁煙外来を受診して、専門的な治療を受ける ⑥飲酒 飲酒量が増えるほど、脳内出血とクモ膜下出血の発症率は高くなります。脳梗塞の発症率は、少量や中等量の飲酒者ではむしろ低くなりますが、大量飲酒者では高くなるとされています。 大量飲酒は、脱水を誘発し血液が濃くなり、固まりやすく=詰まりやすくなります。 【飲酒の修正目標】 摂取アルコール量を一日 30g 以下にする (日本酒で 1 合以下、ビールで中びん1 本以下、ワインで 240cc 以下に相当) ▼▼▼ 【飲酒の場合】の生活目標 アルコールを買わない 「飲み会」「宴会」への参加を控える 「休肝日」を作る ⑦肥満(メタボリック・シンドローム)・運動不足 肥満やメタボリック・シンドロームは新たな脳卒中の危険因子として注目されています。 ※メタボリック・シンドロームの診断基準 ウエスト周囲径が男性 85cm以上、女性 90cm 以上 トリグリセリド 150mg/dl 以上かつ/またはHDL-コレステロール 40mg/dl 未満 収縮期血圧 13mmHg 以上かつ/または拡張期血圧 85mmHg 以上 空腹時血糖 110mg/dl 以上 このうちの 2 項目以上が存在すること、とされています。 【肥満の場合】の修正目標 BMIを25未満にする (BMI=体重(kg) ÷ {身長(m) X 身長(m)}) ▼▼▼ 【肥満の場合】の生活目標 過剰なカロリー摂取(エネルギー摂取)を避ける 毎日、体重やウエスト周囲径を測定し、自己への動機づけを行う 散歩、早歩き、ジョギング、自転車など定期的に運動を行う まとめ・脳卒中の種類と原因|発症を予防するため、注意すべき生活目標と修正方法 脳卒中は、一旦発症すると命に係わる病です。避けれるものなら避けたい病です。そこで、注意できない事柄を「修正できない危険因子」とし、注意することで避けられるものを「修正できる危険因子」に分けてご説明しました。 ご自身の状態に合わせて取り組むべき課題を見つけて頂ければと思います。以上、脳卒中の種類と原因について記しました。 30代になったら自分の血圧を把握し、コントロールすることを心がける 塩分控えめの食生活で、コレステロールを減らす 仕事の時間以外でリラックスできる趣味を持ち、適度な運動を習慣化する 40代になったら脳ドックを定期的に受診し、脳の健康状態をきちんと把握する 脳卒中を発症してしまったら、再生医療という手段もございます。興味ある方は以下もご参考になさってください。 以上、脳卒中の4つの種類と発症原因、脳卒中にならないためにできること!について、記させて頂きました。 参考になれば幸いです。 ▼脳卒中の後遺症|脳卒中の最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳卒中の新たな治療法として注目を浴びる再生医療とは ▼こちらのご覧ください 脳卒中のリハビリで手足の麻痺を回復させ残った機能を最大化させるために
2021.12.14 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
変形性膝関節症の治療ガイドライン(治療方針)に基づいた運動療法とは 「変形性膝関節症のため、膝が痛い」そんなお悩みはありませんか? 変形性膝関節症は、膝にかかる衝撃を吸収・分散する役割を担う関節軟骨がすり減ることで、関節内部に炎症が起きるほか、関節に変形が起こり痛みを感じる疾患です。 男女比は、女性に多く、年齢は50代以降と年を重ねるほど罹患率は高くなります。 膝の痛みで病院を受診し、変形性膝関節症と診断されると、膝に負担がかかる日常生活を見直すよう指導されるほか、運動療法により膝を安定させる筋肉を鍛えるよう指導されます。 このような治療方針は、変形性膝関節症の「診療ガイドライン」に基づき決定されています。この記事では、「変形性膝関節症のガイドライン」と、それに基づいた運動療法をご紹介します。 変形性膝関節症との診断で指導されるガイドライン(治療方針) 日常生活を見直すよう指導(膝に負担がかからぬよう) 運動療法(リハビリ)で筋肉を鍛えて膝を安定させる 変形性膝関節症のガイドライン(治療方針)とは 変形性膝関節症には、糖尿病診断に用いる血糖値・HbA1cというような基準が確立されていません。 そのため変形性膝関節症の進行度合いや、治療効果を評価するために各国独自で診療ガイドラインが作成されています。日本では日本整形外科学会の定めた「変形性膝関節症の管理に関するOARSI勧告 OARSIによるエビデンスに基づく「エキスパートコンセンサスガイドライン変形性膝関節症ガイドライン」があります。 これは変形性膝関節症唯一の国際学会であるOARSIが定めたガイドラインを翻訳し、日本人向けに適合させたガイドラインです。 そんな日本整形外科学会の変形性膝関節症ガイドラインには「定期的な有酸素運動、筋力強化訓練および関節可動域訓練を実施し、かつこれらの継続を奨励する」と記載されていることからも、変形性膝関節症の治療に、運動療法が有効だと推奨されています。 運動療法を行うことで、筋力低下、加齢により不安定になった膝の安定性を高め、痛みをかばうことで拘縮が起きている膝の可動域を向上させます。 また運動療法は、膝への負担になる肥満の解消にもつながることからも、変形性膝関節症に対して基本の治療として評価されています。 ”引用:変形性膝関節症の管理に関する OARSI 勧告―OARSI によるエビデンスに基づくエキスパートコンセンサスガイドライン(日本整形外科学会変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会による適合化終了版)” https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/1/106_75/_pdf/-char/ja ガイドライン(治療方針)に基づいた痛みを緩和する運動療法とは 次にガイドラインに記載されている「有酸素運動」「筋力強化訓練」「可動域訓練」を紹介していきます。 有酸素運動 有酸素運動とは酸素を取り込みながら行う運動で、ウォーキングのほか長距離走・ヨガなどがあります。有酸素運動は酸素を取り込まずに行う無酸素運動と比べて、緩やかな運動が多いため、変形性膝関節症のように膝に痛みを抱えている方にはおすすめです。 その中でもウォーキングや、プールなどでの水中運動が変形性膝関節症の方に一般的な有酸素運動です。 変形性膝関節症の方のウォーキングは、無理のない距離とペースで取り組むことが大切です。1日1万歩と推奨されていることがありますが、無理に行う必要はありません。 無理をすると、かえって膝を傷めるばかりか、痛みが落ち着くまで運動に取り組めないなど、治療に支障をきたします。 またウォーキングをすると、痛みが強く満足に取り組めない場合は、プールでの水中運動がオススメです。水中では浮力がかかる分、膝をはじめ全身への負荷が下げることができます。 筋力強化訓練 大腿四頭筋などを筋力強化することで、膝の安定性が増します。代表的なものに、足あげトレーニングがあります。椅子に座った姿勢、または仰向けに寝転んだ状態で行います。 片側の膝を伸ばし、90度(寝た状態では30〜45度)挙上した状態で10秒ほどキープ、降ろして数秒間休憩します。これを20回繰り返します。全身を動かすウォーキングと違い、低負荷で大腿四頭筋をピンポイントに鍛えることができます。 可動域訓練 膝に痛みがある状態では、立ち座り、歩くといった動作がおっくうになってしまい、次第に関節の可動域が低下します。可動域が低下すると関節の柔軟性がなくなり余計に痛みを感じやすくなることから、普段から膝を曲げ伸ばしして、可動域を広げていく必要があります。 可動域訓練は、足あげトレーニングと同じ座った姿勢で、膝を曲げたり伸ばしたりすることにより可動域を広げていきます。筋力強化訓練・可動域訓練ともに椅子に座りながら行える点から、どちらの運動をしているのか混同しないように、意識して使い分けることがポイントです。 まとめ・変形性膝関節症の治療ガイドライン(治療方針)に基づいた運動療法 今回紹介した有酸素運動・筋力強化訓練・可動域訓練に取り組むにあたり、いきなり長い距離を歩いたり、強度な運動をすると、かえって膝の負担になります。 くれぐれも無理はせず、これまでの運動習慣や痛みの程度と相談しながら運動に励みましょう。 また歩行で痛みを感じる際には「杖の使用」をおすすめします。一般的な杖に、持ち手がT字のものがありますが、最近ではノルディック杖のようなスポーティーなタイプも普及しており、選択肢は増えています。 変形性膝関節症になると、膝の痛みをかばい、活動量が減ってしまいがちですが、ガイドラインで推奨されているように、体を動かしながら悪化を防ぐことが基本的な治療方法だと覚えておきましょう。 もし、膝関節の痛み、変形性膝関節症でお悩みなら私どもにご相談ください。先端分野である再生医療でお役に立てるかもしれません。症状は、遅れれば遅れるほど進行する恐れがあります。 痛みは早期治療が大原則です。 もう一つの再生医療(幹細胞治療) 当院にいただくお問い合わせでよくお聞きするのは、 「治療に行ってもヒアルロン酸の注射や、痛み止めしかなく、改善しない」ということ。 実のところ、従来の治療では、現在の症状を回復させることはできず、痛みを緩和することしかできません。それもそのはず、痛みを伴う軟骨のすり減りを改善させることは難しく、痛みを少なくする方法しかなかったからです。 その結果、症状が進行し、人工関節の手術ということになりがちでした。そんな中、医学の進歩で「再生医療」という医療分野が発達してまいりました。 自分自身の「幹細胞」を用いた自己治癒力で軟骨を再生できるようになったのです。 当院は厚生労働省から認められた再生医療専門です。 「幹細胞?」「自己治癒力?」「再生医療?」・・・ご不明点は、ご遠慮なくお問い合わせください。 https://youtu.be/NbYAdVr0ez4?si=u1H7cYbPCXLhAya8 ▲リペアセルクリニック医師が解説。こちらの動画も参考になりましたら幸いです。 ▼ 再生医療なら変形性膝関節症の新たな治療法に取り組めます 変形性膝関節症は、「再生医療」により手術せずに症状を改善することが可能です ▼以下もご参考していただけます 変形性膝関節症の進行を予防するために!膝の負担を減らす方法を医師が解説
2021.12.13 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 半月板損傷
- 膝の外側の痛み
「変形性膝関節症と半月板損傷って何が違うの?」 膝の痛みが続くと日常生活にも影響が出て不安になりますが、原因としてよく挙げられるのが「変形性膝関節症」と「半月板損傷」です。 これらは似たような症状でも、原因や治療法が異なりますので、自己判断は危険です。そこで、この記事ではそれぞれの違いや適切な対策を医師がわかりやすく解説します。 自分の症状に合った適切な対応が判断できるようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。 また、当院「リペアセルクリニック」では半月板損傷に対する再生医療・幹細胞治療を行っております。 膝の痛みでお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 変形性膝関節症と半月板損傷の違いとは? 膝の痛みを引き起こす代表的な疾患に「変形性膝関節症」や「半月板損傷」がありますが、原因や症状・治療法は大きく異なります。 以下の2つの違いを正しく理解することで、適切な対処法を選べるようになります。 変形性膝関節症は膝関節が変形する病気 半月板損傷は膝の軟骨が傷つく怪我 本章ではそれぞれの特徴を詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。 変形性膝関節症は膝関節が変形する病気 変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減り、骨と骨が直接ぶつかることで炎症や痛みを引き起こす病気です。(文献1) 加齢とともに軟骨がすり減るため発症し、徐々に進行していくのが特徴です。 初期段階では、立ち上がりや歩き始めに軽い痛みを感じるケースが多く見られます。 しかし、進行すると安静時にも痛みが続くようになり、膝の曲げ伸ばしが困難になるケースもあります。 また、変形が進むとO脚やX脚になる場合もあるため注意が必要です。 半月板損傷は膝の軟骨が傷つく怪我 半月板損傷は、膝の内部にある半月板が裂けたり損傷したりする状態を指します。 スポーツ中の膝のひねりや転倒が主な原因ですが、加齢による半月板の脆弱化も影響します。 損傷が軽度の場合は痛みや腫れだけで済む場合もありますが、放置すると症状が悪化して変形性膝関節症へつながるリスクもあります。 そのため、スポーツや日常生活で膝を酷使する方は、違和感を覚えたら早めに受診しましょう。 半月板損傷の症状については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。 変形性膝関節症の主な原因 変形性膝関節症は、中高年に多く見られる膝の病気ですが、主な原因には以下の3つが挙げられます。 加齢による軟骨のすり減り 体重増加や姿勢の悪さ 運動不足や遺伝 要因を理解していれば、進行を予防できる可能性が高まるので、チェックしてみてください。 加齢による軟骨のすり減りが主な要因 軟骨はクッションの役割を果たしますが、年齢とともに修復が追いつかず軟骨がすり減り、骨同士が直接ぶつかるようになります。 その結果、関節の変形や骨棘(こっきょく)※1の形成、滑膜(かつまく)※2の炎症を引き起こし痛みや腫れが生じます。 ※1 すり減った骨を再生しようとするも正しい位置で再生できず、横にはみ出して増殖した骨 ※2 膝関節の関節包の内側にある薄い組織、滑液を分泌し、関節の動きを滑らかにする 膝の痛みは放置すると、症状は徐々に悪化していく可能性もあるため、「年齢のせい」と諦めず、早めに医師に相談しましょう。 体重増加や姿勢の悪さが進行を助長 体重が増えると、膝にかかる負担は増大します。 とくに肥満は関節に大きな圧力をかけ、軟骨の摩耗を早める原因になりかねません。 また、悪い姿勢や歩き方も膝への負荷を増やし、変形性膝関節症の進行を助長します。 そのため「立ち仕事が多い」「肥満気味」と感じる方は要注意です。 姿勢を改善したり、適度な運動で体重を管理したりすると膝の健康を保てるため意識してみましょう。 変形性膝関節症の原因と初期症状については、以下の記事でも詳しく紹介しています。 運動不足や遺伝も原因となる場合がある 運動不足は、筋力低下や関節の柔軟性低下を招き、変形性膝関節症のリスクを高めます。 適度な運動は、膝周りの筋肉を強化し関節を安定させる効果があるため、積極的に体を動かすようにしましょう。 また、変形性膝関節症は遺伝的な要因も関与していると考えられているため、家族に変形性膝関節症の方がいる場合は注意が必要です。(文献2) 日頃から膝を労り、定期的な検診を受けるように心がけてください。 こちらの記事では、変形性膝関節症の原因やスポーツから発症するリスクについて解説しています。 気になる症状がある方は、ぜひ参考にしてください。 半月板損傷の主な原因 半月板損傷は、膝にかかる負担や動きの影響で発生しますが、主な原因は以下の3つが挙げられます。 スポーツや転倒による膝の急な動きが原因 老化で半月板が弱くなる場合もある 急性損傷と慢性損傷で原因が異なる 本章では、それぞれの要因について詳しく解説します。 スポーツや転倒による膝の急な動きが原因 半月板損傷の多くは、スポーツや転倒など膝に急激な負荷や衝撃が加わることで発生します。 とくにサッカーやバスケットボールなど、急な方向転換を必要とする競技ではリスクが高まるので注意が必要です。 また、過剰な負担をかけ続けると、軟骨が耐えきれず損傷する場合もあります。 外傷は突然発生するため、予測が難しいものです。 しかし、スポーツ前のウォーミングアップや膝を保護する装具の使用が損傷を予防する手段となります。 老化で半月板が弱くなる場合もある 加齢に伴い、半月板は弾力性を失い薄く脆くなっていきます。 そのため、若い頃であれば問題なかったような動作でも、高齢になると半月板損傷を引き起こす場合があります。 加齢による半月板損傷は、日常生活での些細な動作がきっかけで起こるケースも少なくありません。 たとえば、立ち上がる、しゃがむ、階段を上るといった動作でも、膝に負担がかかり、半月板が損傷する可能性があります。 高齢の方は、とくに膝を労り無理な動作は避けるように心がけましょう。 急性損傷と慢性損傷で原因が異なる 半月板損傷は発生の仕方に違いがあり、急性損傷と慢性損傷に分けられます。 急性損傷は、スポーツや転倒など突発的な外力によって起こる損傷です。 一方、慢性損傷は加齢による変性や、小さな損傷の積み重ねによって徐々に進行していく損傷です。 急性損傷の場合は、損傷した瞬間に強い痛みや腫れを感じる場合が多いのに対し、慢性損傷の場合は、初期症状が軽いため、気づかないうちに進行している場合もあります。 変形性膝関節症と半月板損傷の治療法は? 変形性膝関節症と半月板損傷の治療法は、症状や進行度により異なります。 本章ではそれぞれの治療法を詳しく解説しますので、参考にしてください。 変形性膝関節症の治療法 変形性膝関節症の治療法は以下のとおりです。 治療法 概要 適応症例 保存療法 安静や膝サポーター、痛み止めで自然治癒を促す 軽度の損傷や一時的な症状 手術 半月板を縫合したり、部分切除で修復する手術 大きな損傷や長期間症状が改善しない場合 再生医療・幹細胞治療 幹細胞を投与し、損傷した半月板を切り取らず進行を防ぐ 保存療法や手術の適応外または補助治療 薬物療法で痛みを和らげる 痛みや炎症を軽減するために薬物療法が用いられます。 飲み薬や関節内注射が一般的で、とくにヒアルロン酸注射は関節の潤滑を助け、痛みを抑えます。 症状が軽い段階で効果を発揮します。 リハビリで筋力をつける 膝を支える筋肉を強化して関節への負担を軽減します。 専門の理学療法士とともに適切な運動を行うことで、痛みの軽減や日常生活の改善につながります。 また、自宅での軽い運動も効果的です。 手術で関節の機能を改善する 症状が進行し、保存療法では改善が難しい場合には手術が選択肢となります。 代表的な手術は人工関節置換術や関節鏡手術です。 手術により膝の機能が回復し、痛みの軽減が期待されます。 変形性膝関節症の手術に関するメリットとデメリットは、こちらの記事で紹介しています。 再生医療・幹細胞治療 幹細胞を活用した再生医療は、損傷した軟骨の再生を促し、症状の改善を目指せるのが大きな特徴です。 変形性膝関節症の再生医療に関する詳細は以下の記事で解説しています。新しい治療法に興味がある方はぜひご覧ください。 半月板損傷の治療法 半月板損傷の治療法は以下のとおりです。 治療法 概要 適応症例 保存療法 安静や膝サポーター、痛み止めで自然治癒を促す 軽度の損傷や一時的な症状 手術 半月板を縫合したり、部分切除で修復する手術 大きな損傷や長期間症状が改善しない場合 再生医療・幹細胞治療 幹細胞を投与し、損傷した半月板を切り取らず進行を防ぐ 保存療法や手術の適応外または補助治療 保存療法で自然治癒を促す 軽度の損傷であれば、安静や膝サポーターの使用により自然治癒を目指します。 また、炎症を抑えるために湿布や痛み止めも併用します。 さらにスポーツなど膝への負担を一時的に控えるのも重要です。 以下の記事では、半月板損傷を早く治すための治療法や効果的なリハビリ方法について解説しています。 手術で半月板を修復する 半月板が大きく損傷している場合や、保存療法で改善が見られない場合は手術療法が選択されます。 関節鏡を用いた手術で、損傷した半月板を縫合したり、切除したりします。 以下の記事では、半月板損傷の手術に関するメリット・デメリットについて詳しく解説しています。 手術で不安がある方はチェックしてみてください。 再生医療・幹細胞治療 半月板損傷に対しても、再生医療や幹細胞治療が研究されています。 幹細胞を投与して損傷した半月板損傷を修復させ、膝関節の機能回復を目指します。 こちらでは、半月板損傷や半月板断裂に対する再生医療・幹細胞治療について詳しく紹介しています。 [半⽉板] まとめ|変形性膝関節症と半月板損傷の違いを知って適切な対策を取ろう 変形性膝関節症と半月板損傷は、膝の痛みを引き起こす代表的な疾患ですが、原因や治療法には違いがあります。 変形性膝関節症は主に加齢や体重増加が原因で進行し、骨が変形する病気です。 一方、半月板損傷はスポーツや転倒による衝撃で発生しやすい膝の軟骨の損傷です。 どちらも早期発見と適切な治療が、膝の健康を保つために重要です。 膝に違和感を感じたら、早めに専門医を受診し自分に合った治療法を選びましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では変形性膝関節症や半月板損傷の治療も行っております。 気になる症状がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 変形性膝関節症と半月板損傷に関するよくある質問 半月板損傷を放っておくとどうなりますか? 半月板損傷を放置すると、損傷した部分が引っかかり関節軟骨を傷つけてしまう可能性があります。 その結果、変形性膝関節症へと進行し、歩行が困難になるなど日常生活に支障をきたす可能性もあるため注意が必要です。 また、損傷した半月板が関節内で引っかかることで、ロッキングという膝が動かなくなる症状を引き起こすケースもあります。 半月板損傷は自然治癒が難しいため、放置せずに早めに医療機関を受診しましょう。 以下では、半月板損傷を放置するリスクについてさらに詳しく解説しています。 膝の半月板が損傷する原因は何ですか? 膝の半月板が損傷する原因は、大きく分けて2つあります。 1つは、スポーツや転倒など、膝に急激な衝撃や捻りが加わることによるものです。 ジャンプや方向転換を伴うスポーツで多く見られます。 もう1つは、加齢による半月板の変性です。 加齢によって半月板の弾力性が低下し、脆くなることで、ちょっとした動作でも損傷しやすくなります。 また、当院「リペアセルクリニック」では手術をしない治療法として再生医療を提案しております。 膝の痛みや手術で不安な方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 参考文献 文献1 日本理学療法士協会「理学療法ハンドブック シリーズ 7 変形性膝関節症」 https://www.japanpt.or.jp/about_pt/asset/pdf/handbook07_whole_compressed.pdf 文献2 理化学研究所 生命医科学研究センター「膝の変形性関節症の原因遺伝子『DVWA』を同定」 https://www.ims.riken.jp/pdf/20080712_2-3.pdf
2021.12.13 -
- 関節リウマチ
- お皿付近に違和感
- 内科疾患
「関節リウマチの初期症状を知りたい」 「指や関節の違和感があるけど、関節リウマチの初期症状?」 関節リウマチは進行すると関節の破壊を伴いながら、骨格系の機能障害を引き起こし、日常生活における動作などを低下させていく病気です。 現在、日本では人口の約1%の方に発症の可能性があるとされており、全身性の自己免疫疾患で、男女比はおよそ1:3と女性のほうが男性より多い病気と言われています。 今回は、放置すると危ない関節リウマチの初期症状を中心に、チェックリストを踏まえて解説します。違和感があるときは、早めにお近くの医療機関を受診するのが大切です。 また、関節リウマチ全体の概要は、以下の記事で詳細を解説しているのであわせて参考にしてみてください。 関節リウマチの初期症状 関節リウマチの主な初期症状は、以下のとおりです。 ・関節のこわばり ・関節部の疼痛 ・関節の腫れ ・関節の機能障害 なお、関節のこわばりとは、関節が自分で思ったように動かない機能障害が起こっている状況です。 痛みを発症する関節部位は、全身の中であらゆる場所で生じる可能性があります。ただ、とくに手首や手指の関節部で引き起こされる傾向にあり、患部は一か所だけでなく複数で認められる場合が多いです。 もし仮に関節部の炎症が長期間にわたって継続されると、関節の軟骨や骨組織自体が少しずつ破壊されていきます。 病状が進行すると関節の変形や関節の脱臼をはじめ、関節が硬くこわばってしまい、曲げ伸ばしが困難になるほどの変化を引き起こす場合があります。 さらに、炎症が強くなると発熱や全身の倦怠感、また体重の減少や食欲不振といった全身症状を伴う場合もあるため、日常生活に著しく支障をきたしかねません。 「初期症状かもしれない」と感じたときは、早い段階で医療機関を受診するのが大切です。 【チェックリスト】関節リウマチの初期症状に当てはまる方は要注意! 関節リウマチの初期症状に当てはまるのか、以下の表に項目ごとにチェックリストをまとめています。 当てはまるものがあれば、関節リウマチの可能性があるので、早めに医療機関を受診してみてください。 全身の症状 ・体のだるさや疲れやすさ ・微熱が続く ・食欲の低下 ・体重の減少 ・貧血気味 など 関節の症状 ・朝の両手のこわばり感 ・手指における関節の腫れ ・関節の痛み など 日常生活での症状 ・朝食を作る際の動作に違和感がある ・歯ブラシが使いづらい ・お箸をうまく使えない ・ドアノブが回しづらい ・家のカギが開けづらい ・靴ひもが結びづらい ・パソコン入力がしづらい など その他の症状 ・眼や口の渇き ・口内炎 など 関節リウマチが発症する原因 関節リウマチの詳しい発症原因は、現代においても明確になっていません。 ただ、どうやら先天性の遺伝的要因と、周辺の環境的要素が複雑に組み合わさり、発症するのではないかと考えられています。 昨今の研究によりますと、関節リウマチの発症は遺伝的要因が約10%関与しており、症状を発症しやすい遺伝子は約100種類あると考えられています。 一方、発症リスクの観点(環境的な原因)として、重要視されるのが喫煙歴です。ほかには歯周病や慢性呼吸器感染症の免疫機構など、複数の要因が挙げられています。 画像検査はレントゲンを中心に行われ、患部の手足部を実際に撮影して骨の表面が欠けているか否か、あるいは骨隙間の距離が縮んでいないかを診断します。 関節リウマチの治療方法【薬物療法・手術療法など】 関節リウマチの治療法は「薬物療法」や「手術療法」が挙げられます。それぞれの治療方法には、メリットとデメリットがあります。 どれを選択するかは重症度や合併症の有無、あるいは日常生活でどのくらい支障が出ているのかなど、多角的に評価して判断する流れです。 関節リウマチにおける関節の破壊的な変化は、一般的に発症して概ね2年以内の期間で急速に進行すると判明しています。破壊されてしまった軟骨や骨関節は、元の正常な状態に戻せないので早期の診断と治療が重要です。 まずは関節リウマチの病気がいかなるものかを理解して、適度な運動と安静のバランスを考えながら、食生活などを含めた規則正しい生活習慣を送るのが重要です。 前述した通り、喫煙歴や歯周病の有無が関節リウマチにおける病気の活動性に影響していると考えられています。そのため、患者さんが喫煙しているときは禁煙指導を行う可能性もあります。 また、薬物療法の点から見ていきましょう。薬物療法は、関節リウマチにおける治療の中心的な治療方法です。関節リウマチ患者における関節部位の炎症を抑えて、症状改善を目指すために行います。 【関節リウマチの治療薬】 ・抗リウマチ薬 ・生物学的製剤(※) (※)生物学的製剤とは: →生物が産生するたんぱく質などの成分を改良して作製された新薬のこと 現在、関節リウマチの治療薬に使える生物学的製剤は、8種類ほどあると言われています。 生物学的製剤は、とくに関節破壊を抑制する効果が際立って優れていると言われています。関節リウマチの症状をより軽度な状態に改善して、維持をするのが可能になりました。 また、患者様の中にはさまざまな薬物療法などの治療を実施しても、関節変形による機能障害が後遺症として残る場合もあるでしょう。その際は、人工関節置換術や滑膜切除術など、手術治療が選ばれる可能性もあります。 ここまで読み進めてみて「生物学的製剤に副作用はあるの?」と気になられた方は、以下で詳細を説明しているのであわせて参考にしてみてください。 まとめ|関節リウマチの初期症状があるときは早めに医療機関を受診しよう 近年では、関節リウマチの治療法も大きな変貌を遂げています。治療の大きな役割を担っているのは、2003年に初めて登場した生物学的製剤です。 生物学的製剤は、免疫機構において重要な役割を果たす炎症性サイトカインの物質に直接的に作用して、関節リウマチの活動を抑えられます。従来のほかの薬剤と比べて、有効性が高いと評価されています。 いずれにしても関節リウマチの違和感や痛みを放置しないために、初期症状の内容を再度押さえておきましょう。 【関節リウマチの初期症状】 ・関節のこわばり ・関節部の疼痛 ・関節の腫れ ・関節の機能障害 早期の発見と治療が大原則なので、関節に違和感を感じたら、専門の医療機関を早めに受診してみてください。 当院「リペアセルクリニック」では、治療の選択肢のひとつとして、再生医療による関節リウマチの治療も行っています。 症例の一例として、関節リウマチの症状をもたれている患者様に、PRPの注射を行い、膝関節や手首の痛みを軽減させた事例もあります。 症例の詳細については、専用記事で解説しているので、良ければあわせて参考にしていただけますと幸いです。 また、関節リウマチ以外の症状でも、なにかしらの不調が出てしまう場合もあります。体のお悩みを抱えておられるときは、ぜひ当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。 関節リウマチの初期症状に関わるQ&A 関節リウマチの初期症状に関わる質問と答えを解説します。 Q.関節リウマチでしてはいけないことは? A.以下の10個があげられます。 1.症状を悪化させる食事(砂糖や加工食品は要注意) 2.激しい運動(適度であればOK) 3.体や関節を冷やす 4.首に負担をかける行動 5.肥満の状態 6.同じ姿勢を長時間とる 7.重いものを持つ 8.正座をする 9.喫煙をする 10.ストレスを溜める 関節リウマチでしてはいけない10項目の詳細は、以下の記事で解説しているので、あわせて参考にしてみてください。 Q.関節リウマチは血液検査で判断できますか? A.はい。血液検査では、リウマトイド因子や、抗環状シトルリン化ペプチド抗体の有無で判断します。 Q.関節リウマチの初期症状があるときは何科を受診すれば良いですか? A.整形外科、内科、リウマチ科、膠原病科などを受診しましょう。 また、リウマチ専門のスタッフがいる医療機関を知りたいときは、日本リウマチ学会や日本リウマチ財団のWebサイトから、お近くの医療機関などを検索できます。
2021.12.10 -
- 股関節
大腿骨頭壊死は血流の悪化により、太ももの骨の根本にある大腿骨頭が骨壊死を起こす病気です。大きく「特発性大腿骨頭壊死症」と「症候性大腿骨頭壊死症」の2種類に分けられます。とくに特発性大腿骨頭壊死症は医療費助成の対象となる指定難病の一つです。(文献1) 好発年齢は男性が40代・女性が60代で、男女比は3:2です。新たに特発性大腿骨頭壊死症を発症する方は1年に2000〜3000人とされており、それほど珍しい病気ではありません。 骨が壊死してもすぐには痛みが出ず、壊死部分が圧迫されて潰れる(圧壊する)段階になって初めて痛みが生じます。現代の医療技術では、適切な治療により痛みを効果的に管理し、質の高い日常生活を送ることが可能です。 今回は大腿骨頭壊死のうち、特発性大腿骨頭壊死症の症状や治療法、入院期間について解説します。特発性大腿骨頭壊死症を発症した方で、治るか不安な方はぜひ参考にしてください。 大腿骨頭壊死が治るかは壊死の範囲・部位によって大きく異なる 大腿骨頭壊死が治るかは、壊死の範囲および部位により大きく異なります。そもそも骨壊死を起こしたから痛みが出るわけではありません。骨壊死を起こした部分に負荷がかかり、骨がつぶれる(圧壊を起こす)と痛みが生じます。 骨壊死を起こしている範囲が狭い・負荷がかかりにくい場所の場合、生涯に渡り圧壊を起こさず痛みが出ない例も少なくありません。骨壊死した部分が圧壊して痛みが強い場合であっても、適切な治療で取り除くことは可能です。 しかし、骨壊死により圧壊した部分を元通りに修復する方法はありません。骨壊死を起こした場合は経過を観察し、必要に応じて適切な治療を受けることが重要です。 大腿骨頭壊死の症状|初期症状とどんな痛みがあるかも紹介 大腿骨頭壊死を発症しても骨が壊死した段階では自覚症状がほとんどありませんが、骨が圧壊すると以下の初期症状が出始めます。 足の付け根の痛み 股関節の可動制限(文献2) 大腿骨頭壊死の初期症状の一つが、足の付け根の痛みです。椅子から立ち上がる際や歩行時など、股関節に体重がかかると鋭い痛みが生じます。股関節を内側にひねった際に傷みが生じやすい点も大腿骨頭壊死の特徴の一つです。 大腿骨頭壊死の初期症状としては、股関節の可動制限も挙げられます。股関節の外転(足を外側に開く動作)・内旋(足を付け根からひねる動作)が制限されるのが特徴です。 足の付け根の痛みが見られる方や、股関節の可動制限が気になる方は、大腿骨頭壊死の疑いもあるため、自己判断で放置せず専門医の診察を受けるようにしましょう。 大腿骨頭壊死の原因 特発性大腿骨頭壊死症の「特発性」は明確な原因がわからないことを意味しますが、主に以下の要因で発症リスクが増加すると考えられています。 ステロイド製剤の服用 アルコールの過剰摂取 ステロイド製剤は全身性エリテマトーデス(SLE)や膠原病、関節リウマチ、アレルギー疾患などの治療に用いられる身近な医薬品の一つです。ステロイド製剤を服用した方すべてが大腿骨頭壊死を発症するわけではありませんが、発症者の約半数にステロイド製剤の使用歴があるとわかっています。(文献3) アルコールの過剰摂取も、特発性大腿骨頭壊死症のリスクを高めるとされています。さまざまな研究により特発性大腿骨頭壊死症の発症者にアルコールの過剰摂取が認められていますが、発症機序は不明です。 大腿骨頭壊死が疑われる際にやってはいけないこと 大腿骨頭壊死が疑われる際にやってはいけないことは以下の通りです。 股関節に持続的な負荷をかける動作 体重増加 股関節の屈曲 飲酒・喫煙 大腿骨頭壊死の症状は、壊死した場所が圧壊して増悪します。激しい運動や重量物の運搬、階段の昇降など、股関節に持続的な負荷がかかる動作はなるべく避けてください。 体重増加も股関節への負担増加につながるため、標準体重を超過しないよう食事メニューを見直す必要があります。股関節の屈曲も壊死した部分に負荷をかけるため、頻繁にしゃがんだり立ったりする動作は可能な限り避けましょう。 また、「大腿骨頭壊死の原因」でも解説した通り、アルコールは大腿骨頭壊死を発症する要因の一つです。タバコに含まれるニコチンは毛細血管を収縮させ、骨壊死を加速させる可能性が指摘されています。大腿骨頭壊死を発症したら禁酒・禁煙に取り組みましょう。 大腿骨頭壊死の診断方法 大腿骨頭壊死は血液検査では診断できないため、主に以下2つの方法で発症の有無を確認します。 レントゲン MRI 大腿骨頭壊死が疑われる際は、まずレントゲンによる検査が行われます。大腿骨頭壊死の初期では壊死部の圧壊が起きておらず、診断が難しいケースも少なくありません。症状が進行すると変形性股関節症の所見から、大腿骨頭壊死が見つかる例もあります。 レントゲンでは大腿骨頭壊死を発症しているかわからない場合、MRI(磁気共鳴画像診断)による検査が行われます。MRIでは圧壊が起こっていない初期の大腿骨頭壊死を発見できる点がメリットの一つです。 整形外科ではCT(コンピュータ断層撮影)を用いた検査を行うケースもありますが、大腿骨頭壊死に関しては治療内容を決めたり、手術の計画を立てたりする際に用いられるのが一般的です。 股関節の大腿骨頭壊死の治療法 大腿骨頭壊死の主な治療法は以下の3つです。 保存療法(手術しない方法) 手術療法 再生医療 大腿骨頭壊死は自然治癒が見込めないため、症状の程度や進行度合いに応じて適切な治療法が選択されます。 それぞれの治療法をさらに詳しく解説します。 保存療法(手術しない方法) 大腿骨頭の壊死範囲がごく小さく圧壊が見られない際は、保存療法で経過を観察するケースがあります。大腿骨頭壊死の保存療法としては、主に以下3つの方法が挙げられます。 免荷・装具療法 物理療法・高圧酸素療法 薬物療法 免荷・装具療法は松葉づえやロフストランドなどを用いて患部にかかる負担を軽減し、痛みの緩和や歩行機能の改善を図る治療法です。 日本整形外科学会などが監修する特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン2019では、免荷療法で短期的には痛みが緩和するものの、長期的な圧壊予防効果および手術療法への移行を抑制する効果は期待できないとされています。(文献4) 物理療法・高圧酸素療法に関しては多くが海外で行われており、痛みを軽減したり圧壊の進行を予防したりする点に関して、エビデンスを伴う論文は認められていません。 薬物療法ではアレンドロネートやゾレドロネートなどのビスホスホネート系製剤が用いられます。薬物療法に関しては圧壊を抑制したり症状の増悪を予防したりする効果が報告されているものの、近年の調査では有意な効果が認められないとの報告もあります。 骨頭壊死に伴う圧壊がそれほど進行していなければ保存療法も有効ですが、日常生活に支障を来すほどの症状が見られる際は、その他の治療法を検討する必要があるでしょう。 手術療法 大腿骨頭の壊死範囲が広い場合や、日常生活に支障を来すほどの痛み・可動制限が認められる場合は、手術療法が検討されます。 大腿骨頭壊死の手術法としては以下2つがよく知られています。 骨切り術 人工関節置換術 それぞれについて詳しく解説します。 骨切り術 大腿骨頭壊死に対する手術療法の一つが骨切り術です。骨切り術では壊死を免れた健常な関節面を、体重がかかる部分へ移動する点が特徴です。自分の骨を利用した手術療法のため、関節を温存できる点が大きなメリットです。また、体重がかかる部分から移動した壊死部は、健常な骨へと生まれ変わる可能性も指摘されています。 大腿骨頭壊死症に対する大腿骨頭前方回転骨切り術を行ったある病院では、術後経過観察期間平均5年5カ月で、関節温存率が77.8%(18例のうち14例)と報告されています。(文献5) 人工関節置換術 大腿骨頭壊死に対する手術療法の一つが人工関節置換術です。人工関節置換術はさらに「人工骨頭置換術」と「人工股関節全置換術」の2つに分けられます。人工骨頭置換術では、臼蓋側(骨盤側)には手を加えず、壊死した骨頭だけ置換します。簡便な方法ですが、術後も痛みを残すケースが少なくありません。 人工股関節全置換術では壊死した骨頭を置換するだけでなく、臼蓋側(骨盤側)も人工物に置き換える点が特徴です。大腿骨頭の壊死した部分を切除して丸いボールを被せ、臼蓋側(骨盤側)に半球状のカップを設置し、特殊な加工を施したポリエチレンをはめ込みます。(文献6) 人工関節置換術のメリットは痛みの緩和や関節可動域の改善効果が高い点です。また、手術の翌週には歩行訓練が始められる上、リハビリ期間が骨切り術に比べて短いため、高齢者に関しては極めて有効な治療法とされています。 一方で、人工関節がすり減るため15〜20年程度を目途に再度手術を受けなければならない点や、感染症を起こしやすいのが懸念点です。また、特定の動作に伴い人工関節が脱臼しやすい点もデメリットとして挙げられています。 再生医療 大腿骨頭壊死の治療法として、近年では再生医療も挙げられるようになりました。大腿骨頭壊死を発症した方の血液から採取した幹細胞を培養し、増殖させてから患部に注入するのが再生医療の特徴です。 ただし、再生医療には健康保険が適用されないケースが多いため、治療費が高額になりがちです。再生医療は新しい治療法のため、地域によっては受けられる病院やクリニックがないケースもあります。 当院「リペアセルクリニック」では細胞加工室と連携し、通常は難しいとされる股関節への幹細胞注入を実現しています。大腿骨頭壊死の再生医療に興味がある方や、できれば手術を避けたい方は、当院までお気軽にお問い合わせください。 大腿骨頭壊死の治療にかかる入院期間は? 大腿骨頭壊死の治療で入院する期間は治療法や施設により異なりますが、一般的には以下の期間が目安となります。 骨切り術:1~2ヶ月程度 人工関節置換術:2週間~4週間程度 再生医療:数日程度 骨切り術は自分の関節を温存できる点がメリットですが、入院期間およびリハビリ日数が長い点が特徴です。人工関節置換術は2週間〜4週間程度が入院期間の目安で、安定して階段昇降や中距離歩行が可能になった段階で退院するケースが多いです。 まとめ|大腿骨頭壊死は早期発見・治療によって治るかが決まる 大腿骨頭壊死は早期発見・早期治療ができるかにより、どの程度回復するか決まります。発症初期には自覚症状を伴わないケースも多いですが、動作に伴う痛みや関節の動きの悪さが気になる方は、可能な限り早めに医療機関を受診して適切な治療を受けることが重要です。 症状が軽度の場合は保存療法で様子を見るケースもありますが、長期的な圧壊予防効果および手術療法への移行を抑制する効果は期待できません。人工関節置換術は痛みの緩和および関節可動域の改善効果が高い治療法ですが、感染症や脱臼のリスクを伴います。 近年では大腿骨頭壊死に対しても再生医療が用いられるケースがあり、手術を避けたい方にとっては検討したい治療法の一つとなっています。 リペアセルクリニックでは独自の技術で、通常は難しいとされる股関節への幹細胞注入を可能にしました。なるべく手術を避けたい方や再生医療に興味がある方は、リペアセルクリニックまでお気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 参考文献 (文献1) 難病情報センター「特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71)」 https://www.nanbyou.or.jp/entry/160(最終アクセス:2025年4月18日) (文献2) 公益財団法人日本股関節研究振興財団「指定難病の特発性大腿骨頭壊死症をご存知ですか?」 https://www.kokansetu.or.jp/personal/hpjclumn.php?no=23(最終アクセス:2025年4月18日) (文献3) 公益財団法人日本股関節研究振興財団「ステロイド治療に伴う大腿骨頭壊死の発生予防を目指して」 https://www.kokansetu.or.jp/personal/hpjclumn.php?no=36(最終アクセス:2025年4月18日) (文献4) 日本整形外科学会・厚生労働省指定難病特発性大腿骨頭壊死症研究班「特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン2019」 https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00541.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true(最終アクセス:2025年4月18日) (文献5) 整形外科と災害外科66「当科における大腿骨頭壊死症に対する大腿骨頭前方回転骨切り術の検討」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/66/4/66_800/_pdf(最終アクセス:2025年4月18日) (文献6) 東京医科大学病院「人工股関節全置換術を受ける患者さんへ」 https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/kansetsu/pdf/pamph_tha.pdf(最終アクセス:2025年4月18日)
2021.12.10 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
「変形性膝関節症はダイエットで痛みが緩和される?」「膝に負担をかけないダイエット方法はある?」 変形性膝関節症と診断されて、このような疑問を感じる方は多いのではないでしょうか。 ダイエットで変形性膝関節症を改善するには、無理のない範囲で体重をコントロールし、膝への負担を減らすことが重要です。 この記事では、変形性膝関節症に効果的なダイエット方法を、食事と運動の両面から解説します。最後までご覧いただき、生活習慣に合った方法を見つけて健康的な毎日を取り戻しましょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では変形性膝関節症に対する再生医療治療を行っております。 膝の痛みでお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 変形性膝関節症の症状緩和にダイエットが効果的な理由 ダイエットが変形性膝関節症に効果的な理由は以下の3つです。 体重減少で膝への負担が軽減する 体脂肪が減り炎症を抑制できる 軟骨の保護と再生につながる 変形性膝関節症は、膝への負担が大きくなるにつれて症状悪化のリスクも高まります。 とくに体重が膝関節に与える影響は大きいため、適切なダイエットをすれば痛みや炎症を和らげる効果が期待できるでしょう。 本章では、体重管理が変形性膝関節症の改善にどのように役立つか解説します。 体重減少で膝への負担が軽減する 変形性膝関節症になると、膝の軟骨がすり減り骨同士がぶつかり合って炎症や痛みを引き起こします。 体重が増加すると、当然ながら膝にかかる負担も大きくなります。 そのため、ダイエットによって体重を減らすことは、膝への負担を軽減し、痛みを和らげるために非常に有効な手段といえるでしょう。 体重が1kg増えるごとに、膝にかかる負担は2〜3kgも増えるとされています。(文献1) 少しでも体重を減らせば、歩行時の痛みだけでなく、階段の上り下りや立ち座りなどの動作も楽になることが期待できるでしょう。 変形性膝関節症の原因や初期症状については以下の記事でも詳しく解説していますので、参考にご覧ください。 体脂肪が減り炎症を抑制できる 過剰な体脂肪は膝の炎症を悪化させる原因にもなります。 脂肪細胞が分泌する炎症性物質は膝関節に悪影響を及ぼし、痛みや腫れを引き起こすためです。 ダイエットによって体脂肪を減らすと、これらの炎症物質の分泌が減少し、症状が緩和される可能性があります。 また、抗炎症作用のある食材(オメガ3脂肪酸を含む魚類や野菜など)を取り入れることで、関節の炎症を抑える効果が期待できます。(文献2) 軟骨の保護と再生につながる 膝関節の軟骨は、体重の負荷を吸収する重要な役割を担っています。体重が重いと軟骨にかかる負担が大きくなり、摩耗を進行させる原因となります。 ダイエットで体重を減らすことで膝の軟骨への負担を軽減し、損傷の進行を遅らせる効果が期待できるでしょう。 また、コラーゲンやグルコサミンなど、軟骨の再生を助ける成分を含む食品を積極的に摂取するのもおすすめです。 体重管理と栄養バランスを意識し、膝の健康を保ちましょう。 変形性膝関節症のダイエット方法 変形性膝関節症は、膝への負担を軽減する運動や食事療法を取り入れるダイエットが有効です。 無理のない運動から始める 自宅でできる運動 食事療法で体重をコントロールする 本章では、上記3つのポイントに分けて具体的なダイエット方法を詳しく解説します。 無理のない運動から始める 膝の負担を軽減するためには、無理のない範囲で運動を始めてみるのがおすすめです。 たとえば、ウォーキングや水中運動は膝に優しく、負担を最小限に抑えながら体重を調整できます。 また、運動を開始する前には軽いストレッチによって、怪我のリスクを減らし、より効果的に体を動かせます。 週2〜3回、短時間からでも始めていけば、負担を軽減しつつダイエットも続けやすくなるでしょう。 変形性膝関節症の進行を予防する方法や、膝の負担を減らす効果的な運動についてはこちらの記事も参考にご確認ください。 自宅でできる運動 外出が難しい方には、自宅でできる運動がおすすめです。 椅子に座った状態で足を伸ばすエクササイズや、軽いスクワットなどが効果的です。 とくにスクワットは、膝を痛めない範囲で行えば太ももの筋力を鍛え、膝を支える力を強化します。 また、ヨガやストレッチは関節の柔軟性を高めるだけでなく、リラックス効果も得られます。 自宅で手軽に行える運動を取り入れていけば、ダイエットも無理なく継続できるでしょう。 以下の記事では、変形性膝関節症を悪化させないための日常の工夫や、継続して運動に取り組む方法を紹介しています。 食事療法で体重をコントロールする 食事療法は、体重を減らし膝の負担を軽減するための効果的な方法です。 バランスの良い食事を心がけていれば、健康的に体重管理ができます。 具体的なポイントを以下にまとめます。 早食いを控える 早食いは、満腹感を得る前に必要以上に食べてしまうことが原因で体重増加にもつながります。 そのため、食事には時間をかけて一口ごとにしっかり噛む習慣をつけましょう。 また、食べるスピードをゆっくりにするため、箸を置いたり水を飲んだりしながら進めるのも効果的です。 まとめ食い(ドカ食い)を控える 空腹を長時間放置すると、次の食事でまとめ食いしがちです。 これによりカロリー過多となり、体重増加につながります。 規則正しく1日3食を心がけ、間食で適度に空腹を満たす工夫をすれば、ドカ食いも防ぎやすくなります。 ながら食い、つられ食いを控える、よく噛んで食べる テレビやスマートフォンを見ながらの「ながら食い」は、満腹感を感じにくくなる原因です。 また、つられ食いも食べ過ぎを招きがちです。 そのため、食事中は周囲の誘惑を避け、食べることに集中しましょう。 一口ずつよく噛んで味わえば、満足感が得られて食べ過ぎを防げます。 不要な食品を買わない、菓子類を身の回りに置かない スナック菓子や高カロリー食品を身近に置いていると、つい手が伸びてしまいます。 買い物の際は不要な食品を控え、手元に誘惑がない環境を作りましょう。 また、代わりにフルーツやナッツなど、健康的な間食を用意するのがおすすめです。 変形性膝関節症でダイエットを実践する上での注意点 変形性膝関節症でダイエットを実践する上では、無理をせず医師の指示のもと行うなど、いくつかの注意点があります。 本章では以下2つのポイントを紹介します。 無理せず継続することが大切 医師に相談しながら進める ダイエットを進める際の注意点を詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。 無理せず継続することが大切 ダイエットで重要なのは、無理せず継続することです。 とくに変形性膝関節症の方は、膝への負担を考慮しながら、無理のない範囲で運動や食事制限を行う必要があります。 たとえば、急に激しい運動を始めると膝を痛めてしまう可能性があります。 そのため、ウォーキングなどの軽い運動から始め、徐々に運動強度を上げていくようにしましょう。 また、極端な食事制限も、栄養不足やリバウンドにつながる可能性があります。 健康的な食生活を維持しながら、無理のない範囲でのカロリーコントロールも大切です。 医師に相談しながら進める 変形性膝関節症は個人差が大きいため、医師に相談しながら進めていくのが安心です。 とくに体重管理や運動の方法については、膝の状態に応じたアドバイスを受けて安全に進められます。 たとえば、痛みが強い場合には、膝に負担をかけない運動や補助具の活用を提案される場合もあります。 また、適切な栄養指導を受けて、症状の緩和につながる食事内容を知れるのもメリットです。 専門家のサポートを受けながら取り組むことで、リスクを抑えた効果的なダイエットが実現するでしょう。 変形性膝関節症に関する従来の治療法と、新たに注目される治療法を以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。 まとめ|変形性膝関節症は各種ダイエット方法で改善を目指そう 変形性膝関節症の症状を緩和するためには、体重管理が非常に重要です。 適切な運動や食事療法を取り入れることで、膝への負担を軽減し、症状の悪化を防ぐ効果が期待できます。 無理のない方法を選び、自分のペースで継続していくのがダイエット成功の鍵です。 日々の努力が積み重なれば、膝の痛みが和らぎ生活の質も向上します。 変形性膝関節症でお悩みの方は、医師に相談しながら、自分に合った方法で取り組むようにしましょう。 当院「リペアセルクリニック」では変形性膝関節症の治療を行っております。 気になる症状がある方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 変形性膝関節症のダイエット方法に関するよくある質問 変形性膝関節症に良い運動は何ですか? 膝に優しい運動として、水中ウォーキングやストレッチがおすすめです。 水中での運動は膝への負担を軽減しながら筋力を鍛えられるため、痛みの強い方にも適しています。 また、太ももの筋肉を鍛える軽いスクワットや、関節を柔軟にするヨガも効果的です。 ただし、無理をせず、自分の膝の状態に合った運動を選びましょう。 変形性膝関節症と肥満の関係はありますか? 肥満は変形性膝関節症の大きなリスク要因です。 体重が増えると膝にかかる負荷が増し、軟骨の摩耗や痛みを悪化させる原因になります。 一方で、体重を減らすことで膝への負担が軽減され、症状の進行を防ぐ効果が期待できます。 健康的な体重管理は膝の健康を守る上でも非常に重要です。 また、当院「リペアセルクリニック」では手術をしない治療法として再生医療を提案しております。 膝の痛みや変形性膝関節症の手術で不安な方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 参考文献 (文献1) 八事あしの健康会(監修:日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院)「あしの健康教室~膝編~第2弾」 https://www.nagoya2.jrc.or.jp/content/uploads/2016/11/ashino-kenkoukyoushitsu_hiza-2_111129-1.pdf (文献2) 管理栄養士 鈴木美紀(富士整形外科病院)「関節リウマチの 食事と栄養について|医療法人社団英志会 富士整形外科病院」 https://www.fujiseikei.com/news/2_631e7e67cbc6d/upload/20220912-093607-6628.pdf
2021.12.10 -
- ひざ関節
- 膝部、その他疾患
膝に現れる「関節ねずみ」とは何か?と気になる方もいるでしょう。正式には「関節内遊離体」と呼ばれるこの状態は、関節の中で小さな骨や軟骨の破片が遊離し、動くたびに痛みや引っかかりなどが出現するものです。 とくに膝の関節内で発生しやすく、スポーツをしている方や膝に負担のかかる動作を日常的に行う方に見られることが多いのが特徴です。 この記事では、関節ねずみの原因、症状、治療方法について詳しく解説します。膝の違和感に悩む方は、ぜひ参考にしてください。 膝に現れる関節ねずみ(関節内遊離体)とは? 関節ねずみ(関節内遊離体)とは、関節内部に発生する小さな骨や軟骨のかけらが関節内で遊離して動き回る状態です。膝関節に発生する場合が多く、スポーツでの負荷や関節の変性により、軟骨や骨の一部が剥がれ落ちることが原因です。 遊離体が関節内で動き、膝の曲げ伸ばしの際に引っかかることで痛みや違和感が生じることがあります。とくに、激しい運動や動作で症状が悪化するため、日常生活に支障が出る場合もあります。 関節ねずみは全身の関節に起こりえる 関節ねずみ(関節内遊離体)は、膝関節に限らず全身のさまざまな関節に発生する可能性があります。関節ねずみは。関節内で小さな骨片や軟骨の一部が剥がれて遊離体となり、関節内を自由に動き回ることから、関節ねずみと呼ばれています。 遊離体が関節内で動くと、引っかかるような痛みや違和感が生じ、関節の可動域が制限される場合があります。症状の悪化や関節の摩耗につながることもあり、とくに運動や日常動作の際に不便を感じることが多いです。 関節ねずみは関節の変性や外傷が原因となるため、痛みが続く場合や運動制限が大きい場合には、関節鏡手術によって遊離体を取り除くことが一般的です。 関節炎や関節症が原因となる 関節ねずみ(関節内遊離体)は、関節炎や関節症が原因で発生します。これらの疾患は、関節軟骨や骨の損傷や変性を引き起こしやすく、その過程で関節内の骨や軟骨の小片が剥がれ落ち、関節内に遊離体として残るためです。 遊離体が関節内で動き回ると、さらに炎症や痛みが起こり、関節の可動域が制限されることもあります。 関節ねずみによって引き起こされる症状 関節ねずみ(関節内遊離体)によって引き起こされる症状には、関節痛やロッキング現象があります。関節ねずみが関節内で移動すると、関節の曲げ伸ばしをした時に遊離体と軟骨が擦れ合い、強い痛みを生じやすいです。この痛みは動作に伴って悪化し、歩行や運動が困難になる場合もあります。 また、関節ねずみが関節内で引っかかり、関節の動きが突然止まるロッキング現象も発生します。ロッキングが起こると、膝を完全に伸ばせなくなったり、逆に曲げられなくなったりするため、日常生活やスポーツ活動に大きな支障が生じます。 関節ねずみの検査方法 関節ねずみの検査では、X線やMRI(磁気共鳴画像法)、CT(コンピュータ断層撮影)検査が用いられます。 X線検査は、骨片の形状を抽出するため、骨が剥がれて関節内で浮遊している場合、位置や大きさを確認するのに役立ちます。しかし、X線では軟骨片はほとんど映らないため、MRIやCT検査の併用が必要です。 MRI検査は関節軟骨や靭帯などの軟部組織も詳細に映し出せるため、軟骨片や関節内の炎症の程度を確認するのに効果的です。一方、CT検査は細かい骨片の抽出に適しており、遊離体が硬い骨片の場合にその形状や位置をより鮮明に捉えられます。 関節ねずみの治療法 関節ねずみに対しての治療は3種類あります。 保存療法 手術療法 再生医療 それぞれ解説していきます。 保存療法 関節ねずみの保存療法では、痛みや炎症のコントロールを目的に、薬物療法や理学療法が行われます。薬物療法では、消炎鎮痛剤の内服や関節内注射などで痛みや炎症を抑えることが中心です。一方、理学療法では、関節の負担を軽減するための装具の使用や、筋力強化のためのリハビリテーションを実施します。 保存療法は症状が軽度の場合や、遊離体が小さく動きが少ない場合に有効とされ、痛みの緩和や症状の進行を遅らせる効果が期待できます。 手術療法 関節ねずみの手術療法は、遊離体を取り除き関節の正常な動きを回復させることが目的です。一般的には、関節鏡手術が行われ、関節鏡を用いて関節内を観察しながら遊離体を除去します。関節鏡手術は、切開が少なく傷が小さいため、回復が早く、身体への負担が少ないです。 手術が適用されるのは、遊離体が関節内で移動して痛みや引っかかり感が強い場合や、保存療法で症状が改善しない場合になります。 再生医療 関節ねずみの治療において、再生医療は新たな選択肢です。関節軟骨の再生を目指して、幹細胞治療やPRP(多血小板血漿)療法が行われます。 幹細胞治療は、幹細胞を培養して関節に注入し、軟骨の再生を促進する治療です。PRP療法は、自身の血液から血小板が多く含まれた成分を抽出し、関節に注入することで、組織修復や痛みの軽減を図ります。 再生医療は、とくに関節軟骨が損傷している場合に効果が期待され、治癒が難しいとされる関節の回復を目指す治療法として注目されています。 関節ねずみの予防 関節ねずみの予防には、膝への負担を減らし、関節を保護することが大切です。まず、運動前には十分なウォーミングアップとストレッチを行い、関節や筋肉を柔らかくすることで関節への負担を軽減できます。 膝に過度な負荷がかかる激しい運動や、急な方向転換を伴うスポーツでは、膝を守るサポーターや適切なシューズを着用することがおすすめです。 また、日常生活では体重管理を心がけることも、膝関節への負担軽減につながります。さらに、筋力を高めて膝周囲をサポートすることで、関節への負荷を分散し、軟骨や骨の損傷を予防できます。 まとめ|関節ねずみについて知り、最適な治療法を選びましょう。 関節内遊離体(関節ねずみ)とは関節内に本来ないはずの軟骨や骨のかけらが存在する状態です。 肘や膝などの関節内で生じることが多く、高齢者のみならず野球やテニス、バスケットボールなどの競技者にも多く認められる傾向があります。膝部分に関節内遊離体がある人は、関節の痛みや膝の動かしにくさなどの症状が現れます。この疾患を疑われる人は、整形外科等にて画像検査(レントゲン検査やMRI検査)や、関節鏡検査を実践してもらうことをお勧めします。 一般的には、症状が軽い人では経過観察が行われて、症状が強い人やスポーツ選手は手術によって関節内遊離体の除去が施行されます。関節が痛んで関節内遊離体が心配な人はぜひ前向きに整形外科を受診してくださいね。 関節ねずみについてよくあるQ&A 関節ねずみの手術費用はいくらくらいですか? 関節ねずみの手術費用は、一般的に十数万円程度かかります。多くの場合、関節鏡手術が用いられ、健康保険が適用されるため3割負担で前述の金額です。 ただ、費用は病院や手術方法、また入院の有無によって変動します。また、再生医療や特殊な治療を行う場合には保険適用外の可能性があるため、詳細は医師や病院に相談し、見積もりを確認することが大切です。 関節ねずみの手術後の入院期間はどの程度ですか? 関節ねずみの関節鏡手術後の入院期間は、通常2〜3日程度と比較的短期間で済むことが多いです。関節鏡手術は、切開が小さく術後の回復も早いため、早期退院が可能です。 軽度なケースでは日帰り手術も行われる場合がありますが、炎症や腫れが引くまで経過観察のために数日間の入院が必要な場合もあります。入院期間は患者の年齢や症状の重さ、手術後のリハビリ計画によっても異なるため、医師と事前に相談しておくと安心です。
2021.11.30 -
- 脊椎
- 脊椎、その他疾患
頚椎すべり症とはどんな疾患なのか、どのような症状が現れるのか知りたい方はいませんか。 頚椎すべり症は首の痛みだけでなく、手足のしびれや感覚障害などの神経症状が生じる恐れもあります。症状が進行すると日常生活にも支障をきたすため、早期からの治療が重要です。 この記事では、頚椎すべり症の症状や生活で避けるべきこと、治療法についてご紹介します。どのような疾患なのかを知ることで、発症時の早期からの適切な対処につながるでしょう。 頚椎すべり症とは 頚椎すべり症とは、頚椎(首部分の背骨)が前後にずれてしまう状態のことです。 背骨は「椎体(ついたい)」と呼ばれる骨がつながってできており、それがなんらかの原因でずれることで発症します。頚椎すべり症を発症すると、首の痛みやしびれなどのさまざま原因が現れるのが特徴です。 ここでは、頚椎すべり症の症状や原因について詳しく解説します。 頚椎すべり症の症状 頚椎すべり症は神経が圧迫される可能性があるため、首の痛みや肩こりだけでなく、しびれや感覚障害などの症状が現れることがあります。発症時の初期症状としては、まず腰痛や下肢の痛みなどが出現するケースが多いです。 下肢に現れる症状としては、歩くときのふらつきや間欠性跛行(かんけつせいはこう)があげられます。 間欠性跛行とは、歩き続けると下肢の痛みやしびれが強くなる症状で、休憩すると軽快するのが特徴です。これらに加えて腕や指のしびれを伴うこともあり、生活では以下のような影響が現れます。 指の動きがぎこちなくなる ボタンがうまく止められなくなる 字が書きづらくなる このような症状はゆっくり出現し、徐々に悪化することが一般的です。また、頚椎は脳へとつながる血管の通り道にもなっています。 そのため、すべり症で首の骨がずれると、血管を強く圧迫して頭痛が現れることもあります。慢性的な頭痛や症状の悪化がみられた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 頚椎すべり症の原因 頚椎すべり症の原因としては、加齢や長期間の首へのストレスなどがあげられます。これらの原因によって、椎体の間にあるクッションの役割を持った「椎間板(ついかんばん)」が変性を起こし、骨がずれやすくなります。 また、頚椎周囲の靭帯や筋肉のゆるみによって、骨を固定できずに発症することもあるでしょう。とくに普段から姿勢が悪く、首に慢性的な負担がかかっている方や高齢者は、頚椎すべり症には十分に注意する必要があります。 頚椎すべり症の種類 腰椎すべり症は大きく分けて2種類あり、「分離すべり症」と「変性すべり症」があります。 それぞれの背骨をつなげている場所が分離した状態を、分離すべり症と呼びます。椎体の間にある椎間板が老化し、変性したことが原因で発症したものが変性すべり症です。 変性すべり症は分離すべり症と比較して、中年以降の女性にみられやすいことから、女性ホルモンが関係していると考えられています。どちらの種類も神経が圧迫されやすくなるため、出現する症状には大きな差はないとされています。 頚椎すべり症の診断方法 頚椎すべり症の診断では、まずは問診を行い、その後レントゲン撮影にて以下のような状態を確認します。 骨の変形の程度 姿勢の状態 靱帯骨化の有無 さらにMRI検査を行い、神経の状態も確認します。頚椎を前後に曲げた状態で撮影を行うことで、不安定性の程度も診断可能です。似たような症状が現れる疾患として、「椎間板ヘルニア」や「脊髄腫瘍」なども考えられるため、これらとの鑑別も重要となります。 椎間板ヘルニアは、腰椎に起こりやすい疾患の1つです。腰椎椎間板ヘルニアについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。 頚椎すべり症の治療法 頚椎すべり症の治療では、おもに「保存療法」と「手術療法」の2種類があげられます。ここでは、それぞれの治療法について詳しく解説します。 保存療法 保存療法では、頚椎すべり症の症状に応じてさまざまな治療が行われます。たとえば、首の痛みや肩こりなどの症状に対して行われる治療は、以下のとおりです。 温熱療法 マッサージ 電気治療 鍼灸治療 牽引療法 これらに加えて、消炎鎮痛剤やブロック注射などの薬物療法によって痛み、しびれの症状軽減を図ります。リハビリでストレッチや首まわりの筋力訓練などを行うことも有効とされています。このように、強い痛みが出ていない段階であれば、保存治療を継続します。 手術療法 保存療法を行っても症状が軽減されず、日常生活に支障をきたしている場合は、手術による治療が検討されます。とくに痛みが強く、手足の神経症状が出現している場合は早めの手術が望まれます。 代表的な手術は、骨同士をボルトで固定する「固定術」です。この手術法では、顕微鏡や内視鏡を使ってできるだけ身体の負担を少なくしながら行い、手術後の早期離床を図ります。手術後は 安静やコルセットなどによる保護が必要となりますが、多くの場合は翌日から歩行ができます。 すべり症による症状が強くない場合は、内視鏡を用いて神経の圧迫をとる低侵襲の手術が選択されるケースもあります。 頚椎すべり症でやってはいけないこと 頚椎すべり症でやってはいけないこととして、仕事で常に首を曲げ続ける、同じ体勢で長時間首に負荷をかけ続けるなどがあげられます。 そのような生活を送っている方は、出来るだけ避けて首に負担をかけないように心がけてください。日常的に姿勢を正すように意識することで、首の負担軽減につながります。 例として、首を10度下に傾けると頚椎の負荷が2倍になるとされています。そのため、デスクワークやパソコンを長時間する場合は、仕事でもこまめに休憩をとりましょう。またスマホはうつむきながら見ることが多く、首に負担をかける原因となるため、長時間の使用には注意が必要です。 [首の痛み] まとめ|頚椎すべり症による痛みを感じたら早めに受診しよう 頚椎すべり症は首の骨がずれることで生じる疾患で、発症すると痛みをはじめとした症状が現れます。歩きにくさや手足のしびれ、感覚障害などの症状が強く出ている場合は、早めに専門医に診てもらうことをおすすめします。 また、普段の生活で避けるべきポイントをおさえて、症状の悪化防止に努めることも大切です。ぜひ今回の記事を参考にして、頚椎すべり症に対する早めの対応を心がけましょう。 頚椎すべり症に関するよくある質問 ここでは、頚椎すべり症に関するよくある質問についてお答えします。頚椎すべり症に関して疑問に感じているものがあれば、ぜひこちらも参考にしてみてください。 Q.首の骨のずれにおすすめのストレッチは? A.頚椎すべり症におすすめのストレッチとしては、以下のとおりです。 背中全体の筋肉を伸ばすストレッチです。 太もも前面についている「大腿四頭筋」を伸ばすストレッチです。大腿四頭筋は骨盤にもついているため、硬くなると背骨全体の歪みにつながる恐れがあります。 Q.首の骨のずれは自分で治せる? A.首の骨のずれは、自分で治すことはおすすめできません。無理に治そうとすると、かえって首に負担をかけてしまい、症状の悪化につながります。神経を傷つけてしまうと、取り返しのつかない事態になることもあります。 決して自己判断で対処するのではなく、必ず医療機関に受診し、医師に相談しましょう。
2021.11.30 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
「膝の痛みが続いている」「変形性膝関節症の初期症状では」 上記のように、膝に痛みを抱えており、変形性膝関節症を疑っている方もいるでしょう。 変形性膝関節症とは、膝関節にあるクッションの役割をする軟骨が、加齢や筋肉量低下によってすり減り、痛みが生じる病気です。変形性膝関節症は、進行性の病気であり、徐々に症状が現れるのが特徴です。 本記事では、変形性膝関節症の初期症状を解説します。末期や中期の症状も紹介しているので、膝の痛みに悩みを抱えている方は、ぜひご覧ください。 変形性膝関節症の初期症状とは 変形性膝関節症は、進行性の病気です。初期症状は、動き始めに痛みが生じたり、胡座や正座など膝に負担のかかる座り方がしづらくなったりするのが特徴的です。 本章では変形性膝関節症の代表的な初期症状を3つ紹介します。 動き始めに違和感と痛みが生じる 変形性膝関節症の代表的な初期症状が、動き始めの違和感や痛みです。 はじめは、膝がなんとなく動かしづらかったり、重しをつけられているような違和感があったりなどの症状から始まります。 起床時や長時間椅子に座っているところから動き始めた際に、痛みが生じる場合もあります。 しかし、初期段階では、痛みや違和感が生じても、しばらくすると治まるケースが大半です。 痛みや違和感が持続しないため「ただの老化現象だ」「一時的な不調」と捉え、変形性膝関節症の初期症状を見逃してしまう方も多くいるため、注意が必要です。 階段昇降時に痛みが生じる 階段昇降時に痛みが生じるのも、変形性膝関節症の初期症状としてあげられます。なかでも、階段を降りる際に痛みが生じやすい傾向にあります。 階段の昇降動作は、普通に歩くよりも膝に負担がかかりやすいのが特徴です。 「歩く分には問題ないが、階段昇降時に痛みが生じる」と、昇降動作によって変形性膝関節症に気づく方も少なくありません。 階段の昇降時に痛みがあるものの、歩く分には問題ないからといって放置していると、変形性膝関節症が進行する可能性があります。 階段の昇降時に痛みが生じる場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。 胡座や正座をしづらくなる 変形性膝関節症の初期症状として、胡座や正座がしづらくなるのも特徴です。 胡座や正座は、膝関節に負担がかかりやすいため、変形性膝関節症を発症していると、痛みが生じやすい傾向にあります。 床に直接座ったり、和式トイレをしたりする場合も、胡座や正座と同様、膝関節に大きな負担がかかります。 普段から胡座をかいたり、床に直接座ったりする際に、痛みや違和感が生じている方は、変形性膝関節症の初期症状の可能性が考えられるでしょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。 変形性膝関節症の中期症状 変形性膝関節症は、進行性の病気のため、進行する度に痛みや違和感が強くなります。膝の可動域を制限されていき、日常生活を送りにくくなるケースも少なくありません。 ここからは、変形性膝関節症の中期症状を紹介します。 動作中も痛みが持続する 変形性膝関節症の中期になると、歩いたり、階段を降りたりする動作中も痛みが持続するようになります。動きはじめだけに痛みが生じていた初期との違いです。 重い荷物を持った状態で歩いていると、より痛みが強くなるケースも少なくありません。歩いたり、階段を上り下りしたりするのが痛みで億劫になります。 体を動かさなくなるため、運動不足によって膝を支えている筋力が衰え、より症状が悪化する可能性もあります。 膝が腫れたり変形したりする 変形性膝関節症の中期は、膝が腫れたり、変形したりします。変形性膝関節症は、膝関節に炎症を起こし、膝関節内の液体が過剰分泌されます。 いわゆる「膝に水が溜まる」状態になり、膝関節が腫れて見えるようになるのが特徴です。 さらに膝の内側の軟骨がすり減る関係で、O脚が目立ちやすくなるケースもあります。外見的な症状以外にも、膝が重く感じたり、腫れてる部分がだるいと感じたりする方もいます。 膝を伸ばしきれなくなる 変形性膝関節症は、名前の通り膝が変形するため、膝の曲げ伸ばしがしづらくなります。曲げ伸ばしのしづらさや、膝の痛みをかばうため、関節を動かさなくなる方も少なくありません。 膝を動かさなくなると、膝周りの組織が衰え、固まってしまう「拘縮(こうしゅく)」と呼ばれる症状が出てきます。 頑張って膝を伸ばそうとしても伸ばしきれなかったり、逆に曲げようとしても曲げきれなかったりするようになるのが特徴です。曲げ伸ばしができないからといって、放置していると、より拘縮が悪化してしまいます。 変形性膝関節症の末期症状 変形性膝関節症の末期は、痛みや膝の変形が顕著になり、歩行困難になる可能性が高まります。日常生活に大きな支障を与え、最悪の場合は、寝たきりになるケースもあるでしょう。 変形性膝関節症の末期の症状を見ていきましょう。 安静にしていても痛みが生じる 変形性膝関節症の末期になると、安静時にも痛みが生じます。 立っているときはもちろん、横になっているときも痛みが持続します。ひどい場合は、痛みで夜中に目が覚めてしまうケースもあるでしょう。 安静にしても痛みが生じるようになると、薬物治療やリハビリテーションでは改善を見込めない可能性が高いとされています。 骨を切って脚の角度を変える「骨切り手術」や、膝関節を人工関節に変える「人工関節置換術」が検討されます。 脚が変形する 脚が顕著なO脚やX脚に変形するのも、変形性膝関節症の末期症状の1つです。 膝関節の摩耗が積み重なると、軟骨は消失し、膝関節の隙間がなくなります。膝関節以外に、太ももやスネなどの骨や関節も一緒に変形するため、脚全体が変形してしまいます。 脚の変形に伴い、外見的な変化を隠すため、外出を避ける方も少なくありません。自宅にいる時間が増えると、体を動かさなくなるため、症状が悪化し、日常生活に影響を及ぼします。 歩行困難になる 末期段階は、安静にしていても痛みが生じたり、脚が変形したりするため、自力では歩けなくなるケースも少なくありません。 杖を使って歩いたり、車椅子での生活になったりします。歩くのに痛みが生じるため、自宅内では這いずって移動するようになる方もいます。 日常動作ができない上に、外出や運動機会がなくなるため、認知機能の低下を招く恐れもあるでしょう。 変形性膝関節症が進行すると、認知症の発症原因にもなりかねません。末期症状が生じる前に、薬物治療やリハビリテーションをし、進行スピードを遅らせるのが大切です。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。 変形性膝関節症と似たような病気の可能性もある 膝に痛みがあっても、すべての膝の痛みが変形性膝関節症ではありません。 膝関節以外の痛みや発熱の有無など、問診や触診の情報を元に「関節リウマチ・痛風・化膿性関節炎」などを疑います。 検査では血液検査や関節液の成分を検査し、検査結果を元に変形性膝関節症以外の病気である要素を取り除いた上で、はじめて変形性膝関節症と診断されるため、一概には判断できません。 【関連記事】 関節リウマチは、どんな病気?その初期症状と治療法 膝の関節炎とリウマチの違いとは?症状と治療法などを現役医師が解説 変形性膝関節症の原因とは? 変形性膝関節症の大きな原因は、加齢による膝への負担があげられます。 変形性膝関節症の患者数は50代以上の2人に1人が発症しているといわれており、誰でも発症する可能性があります。 加齢以外にも、肥満やO脚、X脚などが原因になるケースもあるため、変形性膝関節症の原因を詳しく見ていきましょう。 加齢 変形性膝関節症を発症する大きな原因が加齢です。 膝関節の骨と骨の間にある軟骨は、クッションのような役割を果たしています。軟骨によって、膝関節は痛みなくスムーズに動くのです。 しかし、加齢とともに軟骨がすり減るため、膝関節の滑らかな動きが阻害されます。膝関節が滑らかに動かないと、炎症を起こして徐々に痛みが生じるのです。 摩耗した軟骨は自然には再生されないため「加齢による膝の痛みだ」と判断せず、進行を早急に食い止める必要があります。 肥満 肥満の影響で膝に負担がかかり、変形性膝関節症を発症するケースもあります。体重が増えると、体重を支えている膝関節に負荷がかかります。 中高年になると、代謝が落ちたり、運動不足になったりする関係で、内臓脂肪がつきやすく、体重が増加しやすいため注意が必要です。 肥満体型で膝に痛みや違和感がある方は、できるだけ膝への負担を抑えるため、食事制限や運動を取り入れ減量を目指しましょう。 O脚・X脚 O脚やX脚など脚が変形していると、普通に歩いたり、階段を登ったりするだけで膝関節に負担がかかりやすくなります。 日本人は、膝と膝の間に隙間が開くO脚の方が多いとされているため、注意が必要です。O脚は、膝の内側に体重がかかりやすくなるため、膝関節に大きな負担が加わります。 かつては、O脚やX脚は治らないとされていましたが、近年では矯正グッズや整形外科による治療での改善が期待できます。 変形性膝関節症を防ぐためにも、O脚やX脚気味の方は、矯正しておくと良いでしょう。 変形性膝関節症の治療 変形性膝関節症の治療は、進行段階によって異なります。 症状が軽い場合は、内服薬や外用薬で痛みを軽減し、膝関節内にヒアルロン酸を注入して対処するのが一般的です。 膝関節内にヒアルロン酸を注入すると、痛みの緩和に加え、関節の滑りが良くなる効果を期待できます。 さらに症状の緩和を目指すべく、薬物療法とリハビリテーションを併用するのが一般的です。 痛みによって膝を動かさなくなり、固まってしまったり、筋肉量が低下したりするのを防げます。膝を温める「物理療法」や、足底板やサポーターを用いたサポートも行われます。 薬物治療やリハビリテーションをしても、効果が見られない場合の選択肢は「手術療法」です。 手術療法「骨切り手術」や「人工関節置換術」などが代表的です。「関節鏡視下手術」と呼ばれる、負担が少ない手術方法もありますが、症状が進行している場合は、改善を見込めないケースもあります。 膝関節の再生医療について 変形性膝関節症を発症している方の中には、症状が進行していてもさまざまな事情で手術の選択が難しい方もおられます。 そのような方には、おすすめな治療方法として再生医療があげられます。 再生医療のなかでも、幹細胞治療は、自身から取り出した脂肪組織に含まれる幹細胞を培養により増殖し、膝関節へ注入する治療法です。痛みの原因となる関節軟骨や半月板にアプローチできます。 従来の治療で効果を感じられなかった方は、再生医療による幹細胞治療を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。 リペアセルクリニックでは、変形性膝関節症の治療として再生医療を提供しています。 変形性膝関節症の進行を遅らせるポイント 変形性膝関節症の進行を遅らせるには、適度な運動と日常生活の動作が大切です。 とくに太ももの前の筋肉を鍛えるのが有効です。筋力強化以外にも、関節の柔軟性を高めるストレッチも良いでしょう。 日常生活では、できるだけ膝関節に負担のかかる動作は控えるのが重要です。変形性膝関節症の進行を遅らせる日常動作のヒントを見てみましょう。 胡座や正座は避ける トイレは和式ではなく洋式にする 床に座らず椅子に座る 膝を温めて血行を良くする 階段の利用を減らす 生活環境を変えるのは難しい可能性もありますが、できる部分から取り組みましょう。また、肥満体型の方は、食事制限や有酸素運動を取り入れて、体重減量を目指すのも大切です。 まとめ・変形性膝関節症の初期症状が見られたら速やかに医療機関へ 変形性膝関節症とは、膝関節にある軟骨が、加齢や筋力低下によってすり減り、痛みが生じる病気です。初期症状として、動き始めの痛みや違和感があげられます。 ただし、変形性膝関節症の症状は人によって異なり、進行していてもあまり痛みが出ない方もいるため、一概にはいえません。 変形性膝関節症は、時間をかけて症状が進行し、徐々に症状が重くなるため、早い段階で治療を始める必要があります。 そのため、膝に痛みや違和感を抱いている方は、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。
2021.11.25