-
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 膝の内側の痛み
医療用の膝サポーターには、保険適用のものと、自費となるものがあります。 保険適用される膝サポーターは、国が定める条件を満たしたものに限り、それ以外は自己負担の対象です。 本記事では、医療用膝サポーターにおける保険適用の条件や払い戻しの申請方法について解説しています。膝の痛みや違和感に悩み、膝サポーターの購入を検討中の方は、参考にしてみてください。 医療用の膝サポーターが保険適用になる条件【該当しない場合は自費】 医療用の膝サポーターが保険適用になるには、国が定める一定の条件を満たす必要があります。 保険適用の条件は以下の3つです。 ・完成品であること ・疾病または負傷の治療遂行上必要なものであること ・オーダーメイドで製作した場合のものと同等もしくはそれに準ずる機能が得られるものと認められるもの 参考:厚生労働省|リスト化に当たってのリスト化の対象及び基本的な考え方について これらに該当しない場合は、自費で購入することになります。 以下は、膝サポーターを使用する可能性が高い疾患です。※疾患名をクリックすれば詳細記事をチェックできます ・変形性膝関節症 ・前十字靱帯損傷 ・後十字靭帯断裂 ・半月板損傷 このような膝の疾患がある場合、医療用サポーターの使用を医師に相談してみましょう。 整形外科や病院で処方される医療用膝サポーターは保険適用の可能性が高い 整形外科や病院で処方される膝サポーターは、医療用として国から認められているものが多いです。そのため、保険適用で購入できる可能性が高いといえます。 一方で、市販のサポーターは、医療機器としての認可を受けていないものも多く存在します。 保険適用のサポーターを利用したい方は、まずは医師に相談して、手配できるかどうか確認してみると良いでしょう。 医療用膝サポーターの価格表 医療用膝サポーターの価格については、国が公表している以下の資料に詳しく記載されています。 参考:厚生労働省|療養費の支給対象となる既製品の治療用装具 資料では、以下のような情報を確認できます。 ・製品名 ・メーカー名 ・対象疾患・症状の適応例 ・装具の機能・目的 ・装具の基準価格 価格が気になる方は、資料を一度確認してみてください。製品の比較検討もできるため、購入時の参考になるでしょう。 医療用膝サポーターが保険適用になった場合の申請方法 医療用膝サポーターが保険適用になった場合、先に立て替えて支払い、その後に払い戻しを受ける仕組みです。 払い戻しを受けるには、健康保険課や特別出張所の窓口で申請をおこないます。 以下は、申請時に必要な書類の一例です。 ・保険証 ・内訳がわかる領収書 ・医師の診断書(意見書) ・振込口座の確認できるもの ・療養費支給申請書兼請求書(都道府県の役所で手配可能) 提出先の都道府県によって、提出書類や申請の流れが異なる場合があります。手続きがスムーズに進むよう、事前に申請方法を確認しておきましょう。 なお、払い戻しにはおよそ3カ月かかります。 まとめ|医療用膝サポーターが保険適用になる条件を知って医療費の負担を抑えよう 医療用の膝サポーターは治療を目的としたものなので、市販のものより性能が良い商品が多い傾向にあります。 国が公表している資料に、保険適用のサポーターが一覧で紹介されているので、購入する際は参考にしてみてください。 なお、しばらくサポーターを使用しても効果が実感できない場合は、病院の受診を検討してみてください。症状が進行している可能性もあるためです。 自分に合った病院を探している方は再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』への受診をご検討ください。再生医療とは人間の自然治癒力を活用した最新の医療技術です。すり減った軟骨を再生し、膝の痛みを軽減させる効果があります。 本来なら手術しなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。
2022.03.30 -
- 健康・美容
「骨粗しょう症が心配」「関節痛が気になる」と悩んでいませんか。骨が弱くなる大きな原因はカルシウムの不足ですが、他の栄養素によるサポートも丈夫な骨を作るためには欠かせません。また、生活習慣の見直しも大切です。 本記事では、社会人や高齢者が骨を強くするための食事・生活習慣を医師が紹介します。骨のために避けたい食事・生活習慣もお伝えするので、普段の生活を見直し丈夫な骨を作っていきましょう。 骨を強くする食べ物はどんなもの?4つの栄養素がカギ 日本人の多くはカルシウム不足だといわれます。また、丈夫な骨を作るためにはカルシウム以外の栄養素もバランスよく摂ることが大切です。 以下では骨を強くするためにとくに大切な4つの栄養素について説明します。 栄養素 効果 カルシウム 骨の材料となる ビタミンD カルシウムの吸収を助ける ビタミンK 骨が作られるのを助ける マグネシウム 骨が作られるのを助ける カルシウム|骨を丈夫にする カルシウムは骨に最も多く含まれるミネラルです。 カルシウムが不足して骨が弱くなれば、骨折のリスクが増加します。また、立つ・歩くなど生活動作を行う身体能力が徐々に低下し、日常生活に支障が出たり要介護状態となったりするのです。 この身体能力の低下を「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」といい、近年問題視されています。 骨のカルシウムを維持して元気に暮らし続けるために、以下のようなカルシウムを豊富に含む食品を積極的に摂りましょう。 牛乳、乳製品(ヨーグルト) 大豆、大豆加工品(豆腐、おから、納豆) 魚介類(干しエビ、小魚) 野菜(モロヘイヤ、小松菜) 海藻類(昆布、ひじき) とくに乳製品および大豆食品中のカルシウムが吸収されやすいとの報告があります。野菜や海藻はこれらの食品と一緒に摂ると、吸収されやすくなるためおすすめです。 参考:もっと知ろう!「ロコモティブシンドローム」|日本整形外科学会 骨を強くするメリット 骨を強くするということは、骨密度が高い丈夫な骨をつくるということを意味します。骨を強くすると、加齢に伴う骨粗鬆症や骨折などのリスクを少なくし、要介護や寝たきり状態の予防に繋がるのです。 また、骨を強くする方法は、関節軟骨のすり減りを抑える方法とも深い関わりがあるため、関節痛や腰痛の予防にも高い効果を発揮します。 骨折や関節痛に悩まされる事の無い生活を送るためにも、骨を強くするための生活習慣について知っておきましょう。 ビタミンD|カルシウムの吸収を助ける ビタミンDは、腸からのカルシウムの吸収を助ける栄養素です。尿中に出ていくカルシウムを減らすはたらきもあり、カルシウムを効率よく利用するために欠かせません。 ビタミンDは魚類やきのこに多く含まれます。具体的には以下の食品です。 サケ サンマ ウナギ シラス干し イワシ丸干し きくらげ しいたけ しいたけに含まれるビタミンDは、紫外線に当たると増える性質があります。生でも干ししいたけでも、食べる前に天日に当てるとより多くのビタミンDを摂取できます。 参考:骨を強くする栄養素|骨粗鬆症財団 ビタミンK|骨の形成を促進する ビタミンKは、体内に吸収されたカルシウムが骨に取り込まれるのを助ける栄養素です。以下のように、色の濃い葉野菜や納豆に多く含まれます。 モロヘイヤ 小松菜 ほうれん草 ブロッコリー 納豆 ビタミンKは油とともに食べると吸収されやすくなります。野菜は炒め物にしたり肉類と一緒に食べたりするほか、油の入ったドレッシングをかけるのもおすすめです。 納豆はとくにビタミンKが豊富ですが、血栓症予防のための抗凝固薬の効果を妨げる場合があります。このような薬を服用中の方は、主治医の指示に従ってください。 参考:骨を強くする栄養素|骨粗鬆症財団 マグネシウム|骨の形成を促進する マグネシウムは、カルシウムが骨に取り込まれるのを助けるほか、骨の材料としても大切な栄養素です。体内にあるマグネシウムのうち、50〜60%は骨に存在します。 マグネシウムを多く含む食品には次のものがあります。 大豆製品 ごま ナッツ類 海藻 魚介類 大豆製品や魚介類にはカルシウムも豊富です。ぜひ積極的にとりましょう。 参考:1-7 ミネラル(1)多量ミネラル①ナトリウム(Na)|厚生労働省 骨を強くする栄養素の吸収を促す食品を摂ることも大切 食事で摂るカルシウムは、そのままでは腸から吸収されにくい性質があります。効率よく吸収されて骨に取り込まれるためには、サポートする栄養素と組み合わせることが重要です。 また、骨にはコラーゲンなどのたんぱく質も含まれます。コラーゲンはカルシウムが固まるための「骨組み」となり、骨のしなやかさを保つ役目があるため、カルシウムと同様に骨の健康を保つ上で大切です。 カルシウムのはたらきをサポートする栄養素と、それらが多く含まれる食品を以下にまとめました。 栄養素 効果 主な食品 たんぱく質 コラーゲン(骨の骨組み)の材料となる 豆腐、肉、魚 ビタミンC コラーゲンが作られるのを助ける 野菜、果物 ビタミンD カルシウムの吸収を助ける きのこ類 ビタミンK 骨が作られるのを助ける 納豆 マグネシウム 骨が作られるのを助ける 大豆、アーモンド これらの食品を、カルシウムを多く含む食品と合わせて摂ると食事全体のバランスも良くなるためおすすめです。 骨を強くすると骨折・関節痛・腰痛などを予防できる 骨を強くするには、骨密度が高い丈夫な骨を作ることが必要です。骨を強くすると、加齢に伴う骨粗しょう症や骨折などのリスクを減らし、要介護や寝たきり状態の予防につながります。 また骨を強くする方法は、関節軟骨のすり減りを抑え、関節痛や腰痛の予防にも高い効果を発揮します。 骨折や関節痛に悩まされることの無い生活を送るためにも、骨を強くするための生活習慣を知っておきましょう。 骨にいい食べ物以外で骨を強くするための方法 骨に良い食べ物に、以下の対策を組み合わせることで、より効果的に骨の強化が可能です。 積極的に日に当たる 適度に運動する習慣をつける ここでは社会人・高齢者の方にも取り入れやすい方法を紹介します。 積極的に日に当たる カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、紫外線に当たることで皮膚でも作られます。屋内で過ごす時間が長い方や、綿密な紫外線対策を行っている方は、毎日意識して日光浴を取り入れましょう。日焼けが気になる場合は、手のひらを日光浴させるだけでも効果があります。 日光浴の時間の目安は、冬場なら日なたで30分〜1時間程度、夏場なら木陰で15分〜30分程度です。直射日光を浴びなくても窓際で過ごしたり、洗濯物干しのついでに陽に当たったりすれば十分です。紫外線を浴びすぎると皮膚がダメージを受けるため、日光浴は適度な時間に留めましょう。 適度に運動する習慣をつける 骨に適度な刺激が加わると、骨を作る細胞が活発化します。日常生活の中で運動量を増やすことで、骨が強くなるのです。 以下では社会人や高齢者が取り組みやすい運動を紹介します。 社会人で運動不足になりがちな方向け 社会人の方は、通勤や移動時間を活用して、意識して運動量を増やしましょう。歩幅を広くしたり、早歩きしたりするだけでも負荷は上がります。 できれば普段の道のりより少し遠回りするなど工夫して10分長く歩いてみましょう。階段も積極的に利用してください。上りよりも下りの方が、骨に負荷がかかりやすいためおすすめです。 その他ストレッチやラジオ体操も、運動不足に効果的です。余力があれば、自宅で軽い筋力トレーニングも行ってみましょう。 高齢で身体に無理なく運動したい方向け 高齢の方は、けがや体の負担に気をつけながら、少しずつ活動量を増やしてみましょう。洗濯や掃除、買い物に出かけるなどの家事も立派な運動です。日常の活動量を増やすことから始めるとハードルが下がります。 室内で壁に手をついての片足立ちや、椅子の背などにつかまってかかとを上げて落とす運動を行うと、手軽に骨を鍛えられます。体の負担になりにくいウォーキングや水泳もおすすめです。 以下の記事も参考に、健康的な生活を目指しましょう。 骨の強化を妨げる食事・生活習慣に注意 骨を弱くするリスクのある食事・生活習慣について、以下にまとめました。思い当たるものがないかチェックしてみましょう。 1日の中で、牛乳やヨーグルトを全く飲食しない 1日3食(朝食、昼食、夕食)をきちんと食べることが少ない スナック菓子が好きでよく食べる 自分は肥満だと思う 運動する習慣がない O脚である 上記で当てはまる項目が多いほど、知らないうちに骨が弱くなっている可能性があります。 O脚の方は、筋力の低下や変形性膝関節症が原因かもしれません。これらは運動不足をはじめ、骨を弱くする生活習慣とも関わります。加齢によって骨は弱くなりやすく、とくに閉経後の女性は骨粗しょう症のリスクが高いといわれるため注意が必要です。 骨のために改善したい食事・生活習慣について、以下で詳しく説明します。 外食・コンビニ食のしすぎ 塩分の多い食べ物の摂りすぎ 過度なダイエット・偏食 過度な飲酒(アルコール摂取) 喫煙(タバコ)の習慣 外食・コンビニ食のしすぎ 加工食品などに使われる食品添加物には、ミネラルの一種であるリンが多く含まれます。リンはさまざまな食品に含まれており、骨の材料としても重要ですが、とりすぎるとカルシウムの吸収を妨げます。 外食やコンビニ弁当などを頻繁に利用する方は、とくにリンの摂りすぎに注意しましょう。魚のフライよりも焼き魚を選ぶなど、シンプルな調理方法のメニューを選ぶと添加物を避けやすいです。 参考:1-7 ミネラル(1)多量ミネラル①ナトリウム(Na)|厚生労働省 塩分の多い食べ物の摂りすぎ 塩分のとりすぎも、カルシウムの吸収を妨げます。濃い味付けが好きだったり、スナック菓子を頻繁に食べたりすると塩分過多になりやすいです。 また、カルシウムを摂るためにチーズや小魚を食べ過ぎると、塩分も摂り過ぎる可能性があります。 減塩の食品を選んだり、塩分が添加されていない牛乳やヨーグルトに置き換えたりして塩分の摂取量に気をつけましょう。 過度なダイエット・偏食 極端なダイエットや食事制限をしていると、若い人でも骨密度が低下しやすいです。 栄養不足になれば、骨の材料となる栄養素や、骨が作られるのを助ける栄養素も不足しがちになります。また、やせると体重による骨への負荷が減るため、骨を作る細胞への刺激も減ります。 骨密度が低下すると、将来骨粗しょう症になるリスクが高まります。無理な食事制限は行わず、1日3食バランスよく食べてしっかり運動しましょう。 過度な飲酒(アルコール摂取) お酒を飲み過ぎるとカルシウムの吸収が悪くなります。また、アルコールの利尿作用によって尿量が増え、尿中にカルシウムが排出されやすいです。 ただ、適量のアルコールであれば骨を強くし、骨粗しょう症の予防につながるともいわれています。 飲酒は適量に抑えるか、休肝日を作るように心がけましょう。お酒の飲み方は以下の記事も参考にしてください。 喫煙(タバコ)の習慣 喫煙は骨粗しょう症の危険因子のひとつです。タバコに含まれるニコチンはカルシウムの吸収を妨げます。女性の場合は、骨を丈夫に保つ女性ホルモン(エストロゲン)が減るのも懸念点です。喫煙習慣のある方は、禁煙するか本数を減らすだけでも骨を強くする効果が期待できます。 タバコは軟骨への悪影響も指摘されており、関節症が悪化しやすいです。以下の記事も併せてご覧ください。 まとめ|骨を強くする食べ物を積極的に摂り健康的に過ごしましょう 骨の強さを表す骨密度は加齢に伴い減少していきます。とくに女性は閉経を期に骨密度が大きく低下し、骨粗しょう症のリスクが増大するといわれています。また、中高年に限らず若い方も、極端なダイエットや食事制限は骨密度の低下を引き起こすためおすすめできません。 骨を健康な状態に保つには、食事によるカルシウムの十分な摂取と適度な運動の2点が重要です。カルシウムの吸収を妨げる食事や生活習慣はなるべく避けましょう。 以上を気をつけていても膝や股関節の痛みでお悩みの場合は、当院へご相談ください。初回カウンセリングでは専門医が丁寧にご説明いたします。電話・メールでの無料相談も行っていますので、お気軽にご連絡ください。
2022.03.29 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
脊髄損傷を負ったあと「リハビリでどこまで回復できるのか?」「効果的なトレーニング方法は?」とお悩みの方もいるのではないでしょうか? リハビリは早期に始めるほど効果が高く、適切なトレーニングを継続すれば日常生活の質向上が期待できます。 本記事では、脊髄損傷におけるリハビリやトレーニングについて詳しく解説します。リハビリの回復見込みや注意点も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。 脊髄損傷のリハビリ内容【主な部位へのアプローチポイント】 さっそく、脊髄損傷のリハビリ内容を解説します。脊髄損傷におけるリハビリでは以下の訓練や療法がよくおこなわれます。 可動域訓練 筋力トレーニング 歩行訓練 電気刺激 順番に見ていきましょう。 可動域訓練|全身へのアプローチが可能 脊髄損傷後のリハビリでは、早期から関節の可動域訓練を行います。 脊髄を損傷すると「正常な筋肉」「麻痺がある筋肉」「筋力低下した筋肉」が混在します。その結果、筋肉のバランスが崩れることで拘縮(こうしゅく:関節が固くなり動きが制限される状態)が発生しやすくなるため、早期の訓練開始が重要です。 下部頸髄損傷による拘縮では、肘・膝・足の関節が屈曲位で固定されるだけでなく、全身の柔軟性が低下します。 拘縮が進行すると、座位の維持や寝返り、起き上がり、移乗(車椅子への移動など)にも支障が出るため、可動域訓練は全身の機能維持において欠かせない訓練といえます。 筋力トレーニング|上肢・下肢の筋力強化に有効 脊髄損傷のリハビリを目的とした筋力トレーニングは、麻痺を負った筋肉とのバランスを整えるほか、残存した機能を活用して日常生活を送るために欠かせない取り組みです。 たとえば、呼吸筋を鍛える「バルサルバ法」(バルサルバ手技とは異なる)は、呼吸機能の回復に有効であり、生活の質(QOL)の向上につながります。このトレーニングは、息を止めて腹部に力を入れることで呼吸筋を鍛える方法で、推奨時間は30秒未満です。 適切な筋力トレーニングを継続すれば、上肢・下肢の筋力を維持・向上させ、日常動作の改善を図れます。 歩行訓練|下肢の機能回復に有効 歩行訓練を早期から実施すると、歩行機能の向上だけでなく、身体機能も高まります。 脊髄損傷のリハビリでは「吊り上げ式免荷歩行」がよく採用されます。 これはジャケットを装着して体を上方へ牽引し、体重負荷を軽減しながら安全に歩行訓練をする方法です。 吊り上げ式免荷歩行を実施するメリットは以下の4つです。 早い段階から歩行練習ができる 身体の一部を支え負担を軽減できる 転倒のリスクを減らし安全に訓練できる 歩く動作に近い運動ができ意欲が向上する この方法により、安全性を保ちながら下肢の機能回復を促進します。 電気刺激|指先への細やかなアプローチも可能 機能的電気刺激(FES:functional electric stimulation)では、電気刺激により、麻痺を起こした筋肉を動かすことで身体機能の回復を図るリハビリ手法です。 具体的には、体の表面に装着もしくは体内に埋め込んだ電極から電気信号を送り筋肉を収縮させる方法です。 電気刺激により、歩行や起立動作などの日常生活動作の改善に加え、高位脊髄損傷者では人工呼吸器が不用になった報告があります。動作の向上は脊髄損傷を負った方にとって、リハビリ意欲の向上につながるでしょう。 電気刺激は、手指や手首の動作改善にも有効であり、握力の向上や指先の細かな動作の回復を促します。これにより、食事や着替え、筆記といった日常生活動作の自立支援にも貢献します。 再生医療|脊髄損傷の後遺症に対する新たな治療法 従来の治療法は主にリハビリで、症状が悪化すれば手術を受けるのが一般的でした。 しかし近年、幹細胞を用いた「再生医療」が新たな選択肢として注目されています。 幹細胞には損傷した組織を修復する働きがあり、筋力の回復や歩行の安定、感覚の改善などが期待されています。 点滴や患部に直接注射することで幹細胞が体内に投与され、血液を介して脊髄へ届けられる仕組みです。 再生医療は、手術のように傷跡が残る心配がなく、体への負担が少ない点も大きなメリットです。 「再生医療に興味があるけど具体的なイメージがつかめなくて不安…」という方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 脊髄損傷におけるリハビリの回復見込みは? 脊髄損傷後のリハビリによる回復の見込みは、損傷の程度や種類によって異なります。 脊髄損傷は、大きく分けて以下の2つに分類されます。 分類 症状 完全麻痺 脊髄の神経伝達が完全に断たれた状態で、運動機能や感覚が完全に失われた状態 不全麻痺 脊髄の神経伝達が部分的に残っており、運動機能や感覚の一部が残っている状態 一般的に、完全麻痺の場合、失われた機能の完全な回復は難しいとされています。一方で、不全麻痺の場合は、早期にリハビリを開始して適切な治療を継続すれば、機能回復が期待できます。 リハビリだけでなく、脊髄損傷の後遺症には、再生医療という選択肢もあります。 幹細胞を採取・培養する再生医療は、自己再生能力を持つ幹細胞を利用して、損傷した組織の修復を目指す治療法です。 詳しい治療法については、下記のページをご覧ください。 脊髄損傷のリハビリに関する2つの注意点 脊髄損傷におけるリハビリ時の注意点を2つ解説します。 受傷後すぐは廃用症候群の発症に注意する 脊髄ショックのリスクも念頭に置いておく これらの点を理解した上で、安全なリハビリに取り組みましょう。 受傷後すぐは廃用症候群の発症に注意する 受傷直後は、安静にする必要があるため、ベッド上で過ごす時間が長くなります。 そこで注意したいのが、廃用症候群の発症です。 廃用症候群とは、安静状態が長時間続くことで起こる心身機能のトラブルや疾患の総称です。 たとえば、以下のような症状が現れます。 床ずれ 関節拘縮 尿路結石 起立性低血圧 睡眠覚醒リズム障害 褥瘡(じょくそう:長時間同じ姿勢により身体が圧迫されて皮膚や組織が損傷する状態)を防ぐためには、こまめに体位を変え、圧を分散させるマットやクッションを活用することが必要です。 脊髄ショックのリスクも念頭に置いておく 脊髄損傷のリハビリを進める際には、脊髄ショックのリスクを考慮する必要があります。 脊髄ショックとは、脊髄に損傷を受けた際に、損傷部位だけでなく脊髄全体に影響が及ぶ現象です。 脊髄と脳の連絡が絶たれることで発生し、運動や感覚が麻痺するだけでなく、脊髄反射が完全に消失する特徴があります。 脊髄ショックは通常、1日から2日で急性期を抜けますが、重症の場合は数日から長くて数週間続きます。 その間、体を動かすことができず、安静にして過ごさなくてはなりません。また、回復後も症状が重い場合は、予後が厳しくなる可能性が高くなります。 リハビリを開始する際には、脊髄ショックの発生を念頭に置き、医師の指示に従いながら慎重に治療を進める姿勢が大切です。 まとめ|脊髄損傷におけるリハビリのトレーニングで機能回復を目指そう 脊髄損傷は、体の中枢にある神経が損傷することです。脊髄を損傷すると、損傷した部位や程度により違いがあるものの麻痺が発生します。 損傷する脊髄レベルが高いほど重症度も高くなり、頸髄が横断される形で損傷する完全麻痺では、体を動かせなくなったり、感覚が感じ取れなくなったりします。 脊髄損傷後の主な治療法はリハビリです。リハビリでは、回復・残存した神経機能を日常生活に結び付けるため、体位変換・可動域訓練・筋力トレーニング・歩行訓練・電気刺激などに取り組みます。 また、リハビリで思ったような効果がみられない場合は、「再生医療」も選択肢としてご検討ください。 再生医療は、これまで困難とされていた脊髄の損傷修復や再生を目指す治療法です。 無料のメール相談・オンラインカウンセリングも受け付けていますので「再生医療で脊髄損傷をどうやって治療するの?」と気になる方は当院「リペアセルクリニック」にお気軽にお問い合わせください。
2022.03.28 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
「膝の痛みが一向に改善しない」 「変形性膝関節症のリハビリ方法を知りたい」 変形性膝関節症により、歩行や階段の昇降が困難になり、日常生活に支障をきたす方は多くいます。運動療法が勧められても、「どの程度続ければ良いのか」「症状が悪化しないか」といった不安を抱く方もいるでしょう。 しかし、症状や体力に応じた運動を無理なく続けることで、膝の痛みや動きの改善が期待できます。まずはできる範囲から始めることが大切です。 本記事では、現役医師が高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリ方法を詳しく解説します。リハビリ期間や禁忌事項についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 変形性膝関節症の症状でお悩みの方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 高齢者の変形性膝関節症にリハビリが不可欠である理由 不可欠である理由 詳細 筋力維持で膝の負担を減らす 太もも周囲の筋力強化による関節の安定化・日常動作時の衝撃軽減 転倒予防で自立した生活を守る バランス能力向上によるつまずき防止・歩行の安定性確保 手術を避ける可能性もある 関節可動域改善と痛み軽減による症状進行抑制・保存療法の効果最大化 高齢者の変形性膝関節症では、運動療法を中心としたリハビリが治療の基本です。継続的なリハビリにより、軟骨のすり減りによる痛みや動きにくさの改善、症状進行の抑制が期待できます。 加齢に伴う筋力や柔軟性の低下を補い、転倒予防や生活の質の維持にもつながります。 痛みを理由に安静にしすぎると症状が悪化する可能性があるため、医師の指導のもと、無理のない範囲で継続することが大切です。 以下の記事では、変形性膝関節症を放っておくリスクについて詳しく解説しています。 筋力維持で膝の負担を減らす 高齢になると大腿四頭筋が脆弱になりやすく、膝を支える力が低下して痛みや機能障害が生じやすくなります。 筋力の維持・向上は、膝への負担を軽減し、立ち上がりや歩行、階段昇降をスムーズに行うために欠かせません。 大腿四頭筋を鍛える運動プログラムで膝の痛みや機能が改善することが報告されています。(文献1) 筋力トレーニングは、無理なく「ゆっくり・少しずつ」行うことが大切です。 膝伸ばしやミニスクワットなど負担の少ない動作が適しています。高齢者では8〜12週間の筋力強化プログラムで、筋力の向上と症状の改善が確認されています。(文献2) 転倒予防で自立した生活を守る 項目 詳細 転倒リスクが高まる理由 膝周囲筋力低下や関節可動域制限による歩行バランス不良・支持力低下 転倒を防ぐ運動・訓練 片足立ち・ゆっくり歩行などのバランス訓練、脚筋力強化による安定性向上 日常動作の工夫と環境整備 手すり利用・照明確保・靴選び・立ち上がりや歩行量調整によるリスク管理 家族・介護者のサポート 歩行時の見守り・声かけ・手すりや杖の準備による安堵感と転倒予防 筋力やバランス能力が低下すると、転倒による骨折や外傷のリスクが高まります。 リハビリでは下肢筋力の回復に加え、体幹の安定性向上や姿勢の調整を行います。 重心を保つ力が養われることで段差や不整地でのふらつきが減り、日常生活の安定性が高まって自立した生活の維持が可能です。 手術を避ける可能性もある リハビリ(運動療法・生活習慣改善)と教育を受けた関節症患者を対象とした研究では、運動プログラム終了後に「手術を希望しない」と回答した方は、5年間で実際に手術を受ける確率が約20%低いと報告されています。(文献3) 手術は年齢・体力・合併症リスクの影響を受けるため、高齢者では保存的治療を優先すべきとの見解も示されています。(文献4) ただし、保存療法で手術を確実に回避できるわけではありません。軟骨損傷が進行した症例では手術が適切となる場合もあり、保存治療のみの患者でも5年後に一定数が手術を受けた報告があります。(文献5) 高齢者が適切に取り組むためには、医療者と相談して自分に合う運動内容を決め、無理なく頻度・量を調整することが重要です。 体重管理や補助具の活用も効果を高め、継続により手術回避や先送りの可能性が高まるとされています。(文献6) 以下の記事では、変形性膝関節症を進行させないための工夫について詳しく解説しています。 高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリ方法 リハビリ方法 詳細 筋力トレーニングとストレッチ 大腿四頭筋・ハムストリングスの強化と関節周囲の柔軟性向上による膝負担軽減 バランス・姿勢・歩行の改善訓練 片足立ちや姿勢調整による転倒予防・歩行安定性向上 水中運動・自転車など膝に負担の少ない運動 浮力や軽負荷を活用した関節への衝撃軽減と持久力向上 変形性膝関節症のリハビリは、筋力強化・柔軟性向上・バランス改善を中心とした運動療法です。症状に合わせて無理のない範囲で継続することが大切です。 具体的には、太ももやふくらはぎを鍛える筋力トレーニング、関節の動きを滑らかにするストレッチ、転倒予防のバランス訓練、正しい歩き方を身につける歩行練習などがあります。 水中運動や自転車といった膝への負担が少ない有酸素運動を加えると、全身の体力向上にもつながります。 変形性膝関節症の最新ガイドラインについては、こちらの記事で詳しく解説しています。 筋力トレーニングとストレッチ 項目 詳細 筋力トレーニングの役割 大腿四頭筋強化による膝関節の安定化・膝負担軽減 ストレッチの効果 可動域拡大と柔軟性向上による動作の円滑化 継続する重要性 毎日の少量継続による膝負担軽減と症状進行抑制 医師の指導を受ける理由 個々の膝状態に適した効果的な運動の選択 膝を支える筋肉の強化と柔軟性の維持は、変形性膝関節症のリハビリの基本です。大腿四頭筋を鍛える脚上げ運動や、ふくらはぎのストレッチは関節の安定性向上と可動域拡大に有効です。 痛みが出るほどの負荷は避け、無理なくゆっくり継続することが重要で、これにより歩行や立ち座りが楽になります。 高齢者が適切に続けるためには、体調に合わせて量と強度を調整し、転倒の危険がない環境で行うことが大切です。 継続が肝心であり、多くの研究では8〜12週間以上の継続で効果が確認されています。(文献6) バランス・姿勢・歩行の改善訓練 膝の変形や筋力低下により身体のバランスが崩れやすくなり、転倒リスクが高まります。バランス訓練は立位や歩行時の安定性を高め、転倒予防に効果的です。 また、体幹を鍛えることで姿勢が整い、膝への負担軽減や歩行効率の向上につながります。 歩行訓練では正しい歩き方の習得と補助具の活用により安定性を高め、日常生活の動作改善が期待できます。 水中運動・自転車など膝に負担の少ない運動 項目 詳細 水中運動は膝への負担が軽い 浮力による体重負担軽減と痛みが強い場合でも行いやすい運動継続 筋力アップと関節の動き改善 水の抵抗を利用した筋力強化と関節可動性向上・筋緊張緩和によるリラックス効果 自転車運動も膝に優しい選択 膝を深く曲げずに行える反復運動による低負荷での持久力・筋力維持向上 適切に続けるためのポイント 体調や膝の状態に応じた強度設定と医師・理学療法士の指導下で継続実施 水中歩行やエアロバイクは、膝への負荷を抑えながら筋力を鍛えられる運動です。浮力やペダル抵抗が適度な刺激となり、痛みが出にくく継続しやすいのが特徴です。 膝を深く曲げずに動かせるため、炎症や腫れが悪化しにくく、リハビリに適しています。 水中運動は、数分の水中歩行から始め、週2〜3回続けることが効果的です。さらに12週間の介入でバランスや痛みの改善が報告されています。(文献7) 自転車運動では、サドルをやや高めに設定し、軽い負荷で高回転を維持することで膝への負担を抑えられ、「低負荷・高回転数」が効果的とされています。(文献8) 以下の記事では、変形性膝関節症のリハビリにおける水中運動について詳しく解説しています。 変形性膝関節症は水泳で平泳ぎできる?膝に負担をかけない泳法を解説【医師監修】 高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリの期間 リハビリの期間 詳細 リハビリ開始から1〜3カ月|基礎機能の回復期 痛み軽減と可動域改善・基礎筋力向上による日常動作の安定化 リハビリ開始から3〜6カ月|機能改善の促進期 筋力強化とバランス能力向上による歩行・立ち座り動作の改善 リハビリ開始から6カ月以降|習慣化と維持期 運動習慣の定着による症状再発予防・機能維持の長期的安定化 変形性膝関節症のリハビリは段階的に進み、1〜3カ月で痛みや可動域の改善、3〜6カ月で筋力やバランス向上による動作安定が期待されます。 6カ月以降は運動習慣を定着させ、症状の再発を防ぎながら機能維持を図る段階です。ただし、これらはあくまで一般的な目安であり、症状の程度・生活状況・合併症の有無によって進行のペースは大きく異なります。 リハビリ開始から1〜3カ月|基礎機能の回復期 変形性膝関節症では、大腿四頭筋の弱化や関節可動域の低下により歩行や立ち上がりが困難になります。 運動療法を行った研究では、約3カ月の介入で可動域や歩行速度が有意に改善したと報告されており、1〜3カ月はリハビリ効果が身体機能に現れ始める時期です。(文献9) この期間は、無理な負荷を避け、適切な範囲で筋力や動作を整える準備段階です。中〜低強度の運動でも高齢者の機能改善に効果があるとされています。(文献10) また、症状が進む前の早期介入ほど効果が得られやすく、早期に運動療法を導入した患者では比較的早期に改善がみられたと報告されています。(文献11) リハビリ開始から3〜6カ月|機能改善の促進期 リハビリ開始後1〜3カ月で筋力や可動域の基礎が整い始めた後、3〜6カ月はその基盤をさらに伸ばす時期です。習慣化された運動に適度な負荷や変化を加えることで、膝機能や歩行能力がより向上することが報告されています。(文献12) この期間は、通院での理学療法と自宅での自主訓練が連携し、継続するほど機能改善が高まることも示されています。(文献13) また、3〜6カ月で改善が進むと6カ月以降の維持期へ移行しやすく、途中で中断すれば後退する可能性があるため、この期間は長期的な機能維持の土台となる重要な時期です。(文献14) リハビリ開始から6カ月以降|習慣化と維持期 変形性膝関節症では、リハビリ開始から6カ月以降は機能改善から維持へ移行する重要な時期です。3〜6カ月で基礎的な筋力や可動域が整った後は、得られた機能を日常生活レベルで安定させることが目的となります。 実際、運動療法を6カ月以上継続した高齢者では、身体活動量の維持に効果があったと報告されています。(文献15) また、フィジカルアクティビティ(運動や日常的な身体活動)介入後にフォローアップや継続支援が加わると、長期的な活動維持が改善したとの報告もあります。(文献16) ガイドラインでも「運動介入開始から長期維持が鍵」と示されており、6カ月以降は習慣化とメンテナンスが膝機能を守る上で非常に重要です。(文献17) 高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリの禁忌事項 禁忌事項 詳細 急な動作や強い負荷の回避 膝関節への急激なストレス増大による痛み悪化や炎症助長 深い膝曲げ・正座の制限 膝軟骨への過度な圧迫と関節負担増加による症状悪化 無理な運動やストレッチ 過伸展や過負荷による筋・靭帯損傷や関節炎増悪 喫煙・飲酒などの生活習慣 血流悪化や炎症増加による治癒遅延と症状進行 リハビリは適切に取り組めば効果的ですが、誤った方法は症状を悪化させます。高齢者では関節や筋肉が弱いため、急な動作や強い負荷は軟骨や靱帯を傷める危険があります。 深い膝曲げや正座も負担が大きいため避けましょう。「早く良くしたい」という焦りから無理をすることは逆効果です。また、喫煙や過度の飲酒は炎症を長引かせるため、リハビリ効果を高めるには生活習慣の見直しも重要です。 以下の記事では、変形性膝関節症において、やってはいけないことを詳しく解説しています。 急な動作や強い負荷の回避 項目 詳細 変形性膝関節症と膝への負担 軟骨摩耗による関節脆弱化と強い力・無理な動作による負荷の増大 避けるべき動作 ジャンプ・急な方向転換・深い膝曲げ・重い物の持ち上げ・長時間立位歩行 急な動作がいけない理由 関節への過負荷と軟骨・周囲組織の損傷リスク増大および転倒危険性 安定してリハビリを続けるために 体調と膝状態に合わせた無理のない動作と医師の指導のもと継続 膝への急な衝撃や過度な屈伸は、軟骨や靭帯を傷つける原因です。変形性膝関節症では軟骨がすり減っているため、急な動作や深い膝曲げは痛みや炎症を悪化させる可能性があります。 そのため、ジャンプや急な方向転換、重い物を持つ動作は避けましょう。また、膝の状態に応じて無理なく動き、痛みが強い場合は休むことが大切です。医師の指導のもと継続することで、症状の改善が期待できます。 深い膝曲げ・正座の制限 項目 詳細 深く膝を曲げる動作が膝に与える影響 関節内圧上昇による軟骨への過負荷と炎症・痛み増悪 正座やしゃがみ込みのリスク 関節隙間の狭小化と軟骨摩擦増大による痛みの悪化 生活の中での注意点 椅子・洋式トイレの活用や床生活の回避による負担軽減 膝を守る生活習慣づくり 深い膝曲げを避ける日常動作工夫による症状進行予防 変形性膝関節症では、膝を深く曲げる動作によって関節内の圧力が大きく上昇し、すり減った軟骨に強い負担がかかります。正座や深いしゃがみ込みは関節の隙間をさらに狭め、痛みを悪化させる原因となります。 床生活や和式トイレを避けて椅子や洋式トイレを利用するなど、膝を深く曲げない生活習慣を身につけることが症状進行の予防に欠かせません。 無理な運動やストレッチ 項目 詳細 避けたほうが良い動きの具体例 ジャンプ・急な方向転換・深い膝曲げ・痛み時の過度な筋トレやストレッチによる炎症誘発 ストレッチの注意点 痛みのない範囲でのゆっくりした伸張による柔軟性維持 安定して続けるためのポイント 膝状態の把握と無理のない運動選択・痛み増強時の中止と医師相談 変形性膝関節症では、膝の軟骨や関節が弱っているため、無理な運動は負担となり炎症や痛みを悪化させる可能性があります。とくに急な方向転換や強い衝撃を受ける動作は、関節の安定性を損ない、損傷リスクを高めます。 リハビリは痛みの程度に合わせて負荷を調整し、無理のない範囲で行うことが大切です。違和感や痛みが強まる場合は中止し、医療機関を受診しましょう。 喫煙・飲酒などの生活習慣 項目 詳細 膝関節に影響が出やすい理由 喫煙による軟骨・骨代謝低下と血流悪化、飲酒による軟骨変性のリスク増大 高齢者で影響が出やすい理由 加齢による修復力低下と長年の生活習慣の影響 具体的な注意点 禁煙・飲酒量の見直し・膝症状悪化時の飲酒喫煙回避 リハビリとの関係 回復力低下によるリハビリ効果減弱と症状進行リスク増加 喫煙は軟骨や骨の代謝および血流を悪化させ、変形性膝関節症の発症・進行リスクを高めることが遺伝的・疫学的研究で示されています。 とくに、喫煙により変形性膝関節症のリスクが約20%上昇するとの報告もあります。(文献18) 一方、飲酒についても週あたりの量が多いほど軟骨変性マーカー(MRI T2値・WORMSスコア)が高い傾向です。(文献19) さらに、週1〜7杯以上の飲酒で軟骨変性が増える報告もあり、修復力の低い高齢者では影響が出やすいため、リハビリ効果を高めるには禁煙と飲酒量の見直しが重要です。(文献19) 高齢者の変形性膝関節症のリハビリと併用できる治療法 治療法 詳細 栄養療法 体重管理と抗炎症作用を意識した栄養摂取による関節負担の軽減 装具療法 膝サポーター・足底板などによる関節安定化と負荷分散 薬物療法 痛みや炎症を抑える内服薬・外用薬の併用による症状緩和 物理療法 温熱・電気・超音波などによる血流改善と痛み軽減 再生医療 幹細胞による組織修復促進と炎症抑制 変形性膝関節症では、リハビリと併用してさまざまな治療を適切に組み合わせることで、症状の緩和や機能の改善が期待できます。 ただし、いずれの治療も医師の指導のもとで適切に行うことが重要です。とくに再生医療は適応が限られており、実施可能な医療機関も限定されているため、医師との相談が必要です。 以下の記事では、変形性膝関節症の治療法について詳しく解説しています。 栄養療法 項目 詳細 関節の健康・炎症制御に栄養が関わる理由 オメガ3脂肪酸・抗酸化栄養素による炎症抑制と軟骨保護 軟骨の健康に必要な栄養素 コラーゲン・ヒアルロン酸生成に必要なビタミンC・タンパク質・ミネラル 炎症を抑える食事の重要性 青魚・緑黄色野菜・ナッツ類による抗炎症作用と痛み軽減 体重管理との連携効果 栄養管理による体重負荷軽減と悪化予防 継続的な栄養指導の推奨 個別の栄養指導と医師による健康維持 変形性膝関節症では、筋力低下、軟骨摩耗、炎症が同時に進行します。 オメガ3脂肪酸、食物繊維、ポリフェノールを多く含む食事が、症状改善や進行抑制に有効であることが報告されています。(文献20) 適切な栄養管理は軟骨の材料補給や体重管理に役立ち、リハビリ効果を高めるため、医師の栄養指導を受けることが大切です。 以下の記事では、変形性膝関節症の正しいダイエットについて詳しく解説しています。 装具療法 装具療法は、サポーターや足底板を用いて膝の安定性を高め、日常動作を助ける治療法です。ソフトサポーターは膝のぐらつきを抑えて動作時の安定性を向上させ、インソールや機能的膝装具は膝にかかる力の向きを調整し痛みの悪化を防止します。 リハビリでは、装具を併用することで安定性が向上し、運動効果を引き出しやすくなります。 ガイドラインでも「装具はすべての患者に必須ではないが、有用な補助戦略となり得る」と示されており、症状に合わせた選択が重要です。(文献21) 薬物療法 薬物療法は、痛みや炎症を和らげ、日常生活動作やリハビリを支援します。外用薬は局所の鎮痛・消炎に有用です。内服薬のNSAIDsはより強い痛みに効果的ですが、長期使用には注意が必要です。 ヒアルロン酸やステロイドの関節内注射は、関節に直接作用して症状を改善します。ただし、薬物療法には限界があることを理解しておく必要があります。 薬物療法は症状を一時的に和らげるにとどまるため、運動療法や装具療法との併用が大切です。 薬の使用にあたっては、医師の指導に従い、自己判断で調整しないよう注意しましょう。 物理療法 物理療法は温熱・電気・超音波などを用いて、身体への負担を抑えながら痛みや炎症を和らげる治療法です。血行を促進し筋緊張を改善することで、関節可動域の拡大や歩行能力の向上が期待されます。 高齢者は膝のこわばりや痛みにより運動を避ける傾向があります。しかし、物理療法で症状を軽減することで運動に取り組みやすくなり、運動療法を継続することが重要です。 超音波療法などの物理的モダリティにより、関節可動域・痛み・機能が改善したとの報告もあります。(文献22) 再生医療 再生医療は、膝の軟骨や関節が本来もつ治癒力を高め、損傷組織の修復・再生を促す治療法です。代表的な方法に幹細胞治療やPRP(血小板濃縮療法)があり、痛みの軽減に加えて関節可動域や機能の改善が期待できます。 とくに中程度までの軟骨損傷をもつ患者で効果が期待され、長期的な症状緩和につながります。 低侵襲で切開や入院を必要としないため、手術を避けたい高齢者や身体への負担を懸念する方にも実施しやすいのが利点です。 以下の記事では、再生医療を用いた事例を紹介しています。 リハビリで改善しない高齢者の変形性膝関節症は医療機関を受診しよう 適切なリハビリを数カ月続けても症状が改善しない、あるいは悪化している場合は、別の原因や合併症が隠れている可能性があります。自己流での運動や家族だけのケアには限界があり、医師の診断と治療が必要です。 軟骨の損傷が進行していたり、靱帯や半月板に問題があったりする場合、リハビリだけでは対応できません。その場合は薬物療法や装具療法の追加、あるいは手術の検討が必要になります。 また、関節リウマチや骨粗鬆症など膝以外の病気が症状の原因となっている場合もあるため、早めに受診して原因を特定し、適切な治療を受けることで悪化を防止できる可能性があります。 変形性膝関節症についてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。変形性膝関節症に対して、当院では再生医療を用いた治療も行っています。 再生医療では、幹細胞が炎症の調整や組織修復を助けることで、自然には修復しにくい膝軟骨の状態改善が期待できます。また、手術を避けながら、比較的低リスクで機能回復を目指せる点も利点です。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 高齢者の変形性膝関節症におけるリハビリに関するよくある質問 高齢者の変形性膝関節症は手術が必要ですか? 変形性膝関節症の治療において多くの場合、初期段階で手術が必要になることはありません。まずは運動療法、薬物療法、装具療法といった保存療法が基本となります。 これらを継続しても強い痛みで歩行が困難になる、あるいは日常生活に大きな支障が出る場合に、人工膝関節置換術などの手術が検討されます。 以下の記事では、変形性膝関節症の手術について詳しく解説しています。 【関連記事】 変形性膝関節症の手術における高齢者リスクを医師が解説|費用や入院期間も紹介 変形性膝関節症の手術による成功率は?入院期間や費用も解説 高齢者の変形性膝関節症は整体で治りますか? 整体で変形性膝関節症を根本的に治すことはできません。変形性膝関節症は膝関節の軟骨がすり減ることで生じる構造的変化が原因であり、整体でこの変化を元に戻すことは不可能です。 整体により一時的に筋肉のこわばりが和らぎ、動かしやすく感じることはありますが、根本的な改善や進行抑制につながる医学的根拠はありません。 症状の悪化を防ぐためには、整形外科で診断を受け、医師の指導のもとで適切なリハビリや運動療法を行うことが大切です。 以下の記事では、接骨院における変形性膝関節症の治療について詳しく解説しています。 参考文献 (文献1) Quadriceps strengthening exercises are effective in improving pain, function and quality of life in patients with osteoarthritis of the knee|PMC PubMed Central® (文献2) Impairment-targeted exercises for older adults with knee pain: a proof-of-principle study (TargET-Knee-Pain)|BMC Part of Springer Nature (文献3) Change in willingness for surgery and risk of joint replacement after an education and exercise program for hip/knee osteoarthritis: A longitudinal cohort study of 55,059 people|PLOS Aging and Health (文献4) Surgical Versus Non-Surgical Treatments for the Knee: Which Is More Effective?|PMC PubMed Central® (文献5) Five-year follow-up of patients with knee osteoarthritis not eligible for total knee replacement: results from a randomised trial|PMC PubMed Central® (文献6) The Role of Resistance Training Dosing on Pain and Physical Function in Individuals With Knee Osteoarthritis: A Systematic Review|PubMed® (文献7) The PICO project: aquatic exercise for knee osteoarthritis in overweight and obese individuals|BMC Part of Springer Nature (文献8) Loading of the knee joint during ergometer cycling: telemetric in vivo data|PubMed® (文献9) Home Stretching Exercise is Effective for Improving Knee Range of Motion and Gait in Patients with Knee Osteoarthritis (文献10) Is long-term physical activity safe for older adults with knee pain?: a systematic review|ScienceDirect (文献11) Physical Exercise and Weight Loss for Hip and Knee Osteoarthritis in Very Old Patients: A Systematic Review of the Literature|The Open Rheumatology Journal (文献12) Effectiveness of exercise for osteoarthritis of the knee: A review of the literature|PMC PubMed Central® (文献13) Rehabilitation of Patients with Moderate Knee Osteoarthritis Using Hyaluronic Acid Viscosupplementation and Physiotherapy|MDPI (文献14) Effectiveness of exercise for osteoarthritis of the knee: A review of the literature|PMC PubMed Central® (文献15) Management and Rehabilitative Treatment in Osteoarthritis with a Novel Physical Therapy Approach: A Randomized Control Study|MDPI (文献16) Effectiveness of booster strategies to promote physical activity maintenance: a systematic review and meta-analysis|BMC Part of Springer Nature (文献17) Osteoarthritis year in review 2022: rehabilitation|ScienceDirect (文献18) The causal impact of smoking behavior on osteoarthritis: a Mendelian randomization analysis|frontiers (文献19) Associations between alcohol, smoking, and cartilage composition and knee joint morphology: Data from the Osteoarthritis Initiative|PMC PubMed Central® (文献20) Diet in Knee Osteoarthritis—Myths and Facts|PMC PubMed Central® (文献21) Braces and orthoses for treating osteoarthritis of the knee|PMC PubMed Central® (文献22) Standard of Care: _Osteoarthritis of the Knee Case Type / Diagnosis: Knee Osteoarthritis. ICD-9: 715.16, 719.46|BRIGHAM AND WOMEN’S HOSPITAL Department of Rehabilitation Services
2022.03.25 -
- 肝疾患
- 内科疾患
「健康診断で肝臓の数値が高いと言われて不安になった…」 「肝臓の数値異常は薬のせい?」 このような疑問をお持ちの方も多いでしょう。 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、自覚症状が出にくいため、健康診断の結果で初めて異常を指摘される人も多いとされています。 数値が悪化する原因はさまざまですが、日常的に服用している薬が肝臓に負担をかけている可能性もあります。 本記事では、肝臓の数値が悪化する原因やそれを改善するための対策について解説します。 肝臓の数値を改善し、健康な状態を維持するためのポイントを押さえていきましょう。 薬による肝臓への負担と薬物性肝障害 私たちが薬を服用すると、その成分は体内で吸収され、血液を通じて全身に運ばれます。 その過程で重要な役割を担うのが「肝臓」です。 肝臓は、薬の成分を分解・代謝し、体にとって不要なものを無毒化する働きをしています。 しかし、薬の種類や飲み合わせ、服用量によっては、この代謝過程が肝臓にとって大きな負担になる場合があり、肝臓の数値に影響を与え、基準値より高くなることがあります。 肝臓の数値が上昇している場合、薬が原因となっている「薬物性肝障害」の可能性が考えられます。 自覚症状がないケースも多いため、定期的に肝機能をチェックし、薬の影響で肝臓に負担がかかっていないかを確認することが大切です。 薬物性肝障害とは? 薬物性肝障害とは、薬の影響によって肝臓の細胞が傷つき、肝機能に異常が生じる状態を指します。 薬そのものだけでなく、代謝の過程で発生する物質が肝細胞にダメージを与えることもあります。 症状には倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸(おうだん)などがありますが、自覚症状がまったく現れないケースも少なくありません。 そのため、体調に異変がなくても、定期的に血液検査で肝臓の数値(AST・ALTなど)を確認することが大切です。 とくに、複数の薬を同時に服用している方や、長期間薬を使っている方は、知らず知らずのうちに肝臓に負担がかかっている可能性があります。 数値の異常が見つかった場合は、薬の中止や変更を検討する必要があるため、早期発見と医師のフォローが重要です。 肝機能を示す主な検査数値と薬が与える負担について 肝臓の状態を把握するには、血液検査で得られる肝機能の数値をチェックすることが重要です。 肝臓への薬の負担を把握するうえでも注目すべき指標は次の3つです。 AST(GOT) ALT(GPT) γ-GTP それぞれの数値の役割と、どのような薬が影響を及ぼすのか、詳しく解説します。 AST(GOT)とは? AST(GOT)は、肝臓に関するトラブルの初期発見に役立つ指標のひとつです。 主に肝臓や心臓、筋肉などに存在する酵素で、細胞がダメージを受けると血液中に漏れ出し、その数値が上昇します。 正常値の目安 :男性でおおよそ10~40 U/L、女性で10~35 U/L 上昇するケース:肝炎、アルコール性肝障害、筋肉疾患など ASTは、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)や抗生物質、抗てんかん薬などの使用によって上昇することがあります。 とくに高用量の解熱鎮痛薬は、肝臓への代謝負担が大きく、ASTが一時的に高くなる場合があります。 ALT(GPT)とは? ALT(GPT)は、主に肝臓に多く含まれている酵素で、肝細胞が損傷を受けた際に血中に放出されます。 ASTよりも肝臓に特化した指標とされており、肝機能をダイレクトに反映する重要な数値です。 正常値の目安:男性で10~45 U/L、女性で7~30 U/L 上昇するケース:脂肪肝、薬物性肝障害、ウイルス性肝炎など ALTは、脂質異常症の治療薬(スタチン系)や糖尿病治療薬(メトホルミン)、一部の抗生物質などで上昇することがあります。 また、サプリメントの過剰摂取もALT上昇の原因になる可能性があり、「健康のために摂ったつもり」が肝臓に負担をかけるケースもあります。 γ-GTPとは? γ-GTP(ガンマグルタミルトランスぺプチダーゼ)は、肝臓や胆道に関係する酵素で、アルコール摂取や薬物、胆道系の異常によって上昇しやすい数値です。 とくに、アルコール性肝障害との関連が深い指標です。 正常値の目安:男性で10~70 U/L、女性で10~40 U/L(施設によってやや異なる) 上昇するケース:アルコール性肝障害、胆道閉塞、脂肪肝など γ-GTPは、抗てんかん薬(フェニトイン、カルバマゼピン)や精神安定剤(バルビツール酸系)、一部の抗菌薬などで上昇することがあります。 また、鎮静剤や睡眠薬の長期使用でもγ-GTPが高くなる場合があります。 \まずは当院にお問い合わせください/ 薬による肝臓の負担を軽減する方法 薬は正しく使えば健康の回復や症状の改善に大きな力を発揮しますが、使い方を誤ると肝臓に負担をかけてしまうこともあります。 本章では、薬の服用による肝臓への負担をできるだけ軽減するため、次の3つの方法を紹介します。 医師・薬剤師に相談しながら服用する 用法・用量を守る(過剰摂取しない) アルコールと併用しない 医師・薬剤師に相談しながら服用する 複数の薬を同時に使うことで、肝臓に過度な負担がかかることがあります。 薬を服用する際は、自己判断で市販薬やサプリメントを追加するのではなく、必ず医師や薬剤師に相談することが大切です。 とくに持病がある方や長期間薬を使用している方は、定期的な血液検査で肝臓の数値を確認しながら、服薬を見直すことも検討しましょう。 用法・用量を守る(過剰摂取しない) 「早く治したいから」と、決められた用量を超えて薬を飲むことは非常に危険です。 解熱鎮痛薬や風邪薬などは市販でも手軽に手に入りますが、過剰摂取すると肝臓に強いダメージを与えることがあります。 薬は決められた量・タイミングで飲むことが、肝臓の負担を最小限に抑える基本です。 アルコールと併用しない アルコールは肝臓で分解されるため、薬と一緒に摂取すると肝臓への負担がさらに大きくなります。 解熱鎮痛剤や抗生物質など、肝臓に影響を与えやすい薬を服用している場合のアルコールの摂取は、数値異常や薬物性肝障害のリスクを高めることになります。 薬を服用中は、なるべくアルコールは控えるようにしましょう。 薬以外で肝臓に負荷がかかる要因 薬の服用だけでなく、日常生活の中にも肝臓に負担をかける要因は多く存在します。 代表的な要因は次のとおりです。 アルコールの過剰摂取 脂肪肝や肥満 睡眠不足や過労 サプリメント・健康食品の過剰摂取 上記の要因が重なることで、肝臓が処理しきれず、薬による影響がより強く出る可能性もあるため注意が必要です。 肝臓は自覚症状が出にくい「沈黙の臓器」ともいわれているため、気づかないうちにダメージが蓄積していることも少なくありません。 薬を安全に使うためにも、日常的に肝臓への負担を減らす意識を持つことが大切です。 肝臓の数値を正常化するためにできること 肝臓の機能は体全体の健康に大きな影響を与えるため、定期的に肝臓の状態をチェックし、必要な対策を講じることが重要です。 本章では、肝臓の数値を正常化するためにできることとして次の2つがあります。 肝臓の状態を定期的にチェックする 肝臓に優しい生活習慣を継続する それぞれについて、詳しく解説します。 肝臓の状態を定期的にチェックする 肝臓の数値を正常化するための第一歩は、健康診断で定期的に肝機能をチェックすることです。 肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、多少ダメージを受けていても自覚症状が出にくいため、異常があっても気づかないことがよくあります。 健康診断では、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値が肝臓の状態を把握する指標として確認されます。 もし検査結果で数値が基準値を超えていた場合は、原因の特定が重要です。 たとえば、薬の服用歴や飲酒の習慣、肥満の有無などを医師と一緒に振り返り、生活習慣や薬の見直し、再検査などの対策がとられます。 健康診断の結果は「見て終わり」にせず、早期に対策を講じることが大切です。 とくに、薬を継続して服用している人や肝臓に負担をかける生活習慣がある人は、年に一度の健康診断を習慣にすることで、肝機能の異常を早期にキャッチしやすくなります。 肝臓に優しい生活習慣を継続する 肝臓の数値を正常化するためには、生活習慣の改善が不可欠です。 まず、バランスの取れた食事を心がけ、肝臓に負担をかける脂肪分やアルコールの摂取を控えましょう。 脂肪肝や肥満は肝臓に大きな負担をかけるため、適度な運動を取り入れて体重管理を行うことも大切です。 また、睡眠は肝臓の修復を助けるため、質の良い睡眠を十分にとることもポイントです。 生活習慣を改善することにより、肝臓の機能が回復し、数値が正常範囲に戻ることが期待できます。 肝臓は自己修復力がある臓器なので、日々のケアを続けることで、肝機能が向上しやすくなります。 まとめ|肝臓の負担が少ない適切な食事・運動で異常数値を防ごう 肝臓は私たちの体内で薬やアルコール、老廃物の処理などを担う重要な臓器ですが、知らず知らずのうちに負担がかかっていることも少なくありません。 薬を服用している場合、肝臓はその成分を代謝・分解するために大きく働くことになり、負担が蓄積すると数値異常や薬物性肝障害のリスクも高まります。 肝機能の異常を防ぐためには、日々の生活習慣の見直しが何より大切です。 バランスの良い食事と脂肪・糖分・アルコールの過剰摂取を避けることで肝臓負担を軽減できます。 定期的な健康診断での数値チェックと異常時の早期受診も大切です。薬との付き合い方を見直し、肝臓に優しい生活を心がけましょう。 肝臓の健康状態に不安がある方は、当院「リペアセルクリニック」での再生医療もご検討ください。専門医が個別に合わせた治療をご提案しています。ぜひご相談ください。
2022.03.25 -
- 脊髄損傷
- 脊椎
脊髄損傷を負っても、適切なリハビリやサポートを受ければ、スポーツを再び楽しむことは十分に可能です。 実際、多くの方がレクリエーションから競技スポーツまで幅広く取り組み、社会参加や自己実現の手段として活用しています。 本記事では、脊髄損傷を経験された方やそのご家族、支援者の方にとって、スポーツが前向きな人生を築くきっかけとなるよう、役立つ内容をまとめました。 脊髄損傷後にスポーツを始めるための参考になれば幸いです。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、脊髄損傷の治療に用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。ぜひ登録してご活用ください。 脊髄を損傷しても可能なスポーツ 脊髄を損傷しても、身体の状況に応じて参加可能なスポーツは数多くあります。 ここでは、パラリンピック正式競技・国内のスポーツ・国内外のスポーツにわけて、それぞれ情報を表にまとめました。 パラリンピック正式競技 以下は、障害のあるアスリート(脊髄損傷を含む身体障害者)が参加できるパラリンピック正式競技です。 競技名 連盟・協会 対象者 競技概要 陸上 日本障害者陸上競技連盟 神経機能残存レベルC6前後から可能な例あり。障害の種類・程度で細かくクラス分け。 一般の規則に準じつつ、障害に応じたルール・用具を適用。専用の三輪車(レーサー)を用いて行う。大分国際車いすマラソンが有名。 水泳 日本身体障害者水泳連盟 障害の原因を問わず、運動機能によって10クラスに分類。 一般の規則に準じて実施。下肢障害がある選手は水中スタートが可能。障害の程度により競技内容が調整される。 車いすテニス 日本車いすテニス協会 下肢または上下肢に恒久的障害がある者。 一般のルールに準じ、ツーバウンドルールを追加。車いす操作も技術の一部。専用車いすを使用。 ボッチャ 日本ボッチャ協会 四肢・体幹に重度障害のある者。 ジャックボールにどれだけ近づけられるかを競う。アシスタントによる補助具使用も可能。個人・ペア・チーム戦がある。 卓球 日本肢体不自由者卓球協会 車いす使用者など、障害に応じた5クラス。 サービスやトスのルールが障害に応じて調整される。個人戦・団体戦あり。 アーチェリー 日本身体障害者アーチェリー連盟 五つのクラスに分類され、重度では車いす使用の四肢麻痺者も含む。 一般のルールを基に、用具や補助具(リリーサーなど)の使用が認められる。リカーブ・コンパウンドの種目がある。 車いすフェンシング 日本車いすフェンシング協会 A級、B級にクラス分け。 腕の長さに応じて車いすを固定。フルーレ・エペ・サーブル種目あり。上半身の技術とスピードが求められる。 パワーリフティング 日本パラ・パワーリフティング連盟 障害の程度でなく、体重別に10階級で分類。 ベンチプレス種目を行う。バーベルを胸に下ろし、再度押し上げる試技。 射撃 日本障害者スポーツ射撃連盟 上肢に障害がある者、スタンド使用が必要な者等で2分類。 ライフル・ピストルで射撃し、精密さを競う。精神的集中力も必要。 ウィルチェアーラグビー 日本ウィルチェアーラグビー連盟 頸髄損傷など四肢障害のある者。 前方パスや車いすでのタックルが認められるラグビー。持ち点制度あり。 車いすバスケットボール 日本車椅子バスケットボール連盟 持ち点制度で障害の程度に応じた選手構成。 一般のルールに準じつつ、車いす操作に関する特別ルールあり。 ボート 日本アダプティブローイング協会 使用できる部位によって4分類。 シングル・ダブル・フォアの種目を1000m直線コースで競う。 ハンドサイクル 日本ハンドサイクル協会 肢体不自由者 手で回す自転車型の競技。年齢・性別問わず楽しめる。 スキー 日本チェアスキー協会 座位・立位・視覚障害に分類。係数で公平性を調整。 アルペンスキー4種目に加え、スーパーコンビなどもあり。用具に工夫。 バイアスロン 日本障害者クロスカントリースキー協会 クロスカントリーと射撃の複合競技。 呼吸・精神力のコントロールが必要な耐久系競技。 クロスカントリー 日本障害者クロスカントリースキー協会 専用スキーとストックで雪原を滑走しタイムを競う。 「雪原のマラソン」とも呼ばれる耐久レース。 アイススレッジホッケー 日本アイススレッジホッケー協会 両足麻痺などの障害者 スレッジと短スティックを用いて行う激しい接触競技。 車いすカーリング 日本車椅子カーリング協会 車いす使用者(男女混合) 一般ルールに準じる。戦略性が高く「氷上のチェス」とも呼ばれる。 国内のスポーツ 日本国内では、独自に発展してきた種目が多くあり、パラリンピック競技とは別に地域や全国規模の大会で活発に行われています。 以下は、脊髄損傷を含むさまざまな障害のある方に対して、運動機会や社会参加の一助として広く推奨されている競技です。 競技名 連盟・協会 対象者 競技概要 フライングディスク 日本障害者フライングディスク連盟 男女別・座位・立位による4区分。障害の程度や性別による分類はなし。 アキュラシー(10投中の通過数を競う)とディスタンス(飛距離を競う)の2種目。専用ゴールを使用し、全国障害者スポーツ大会の公式競技。 車いすツインバスケットボール 日本車椅子ツインバスケットボール連盟 四肢麻痺者。運動能力に応じて持ち点があり、コート上の合計は11.5点以内 車いすバスケットを基に開発。正規ゴールと1.2mの低い補助ゴールを使い分ける。障害の状態に応じてパスの工夫が求められる。 電動車いすサッカー 日本電動車椅子サッカー協会 自立歩行不可の重度障害者。上体保持が困難な選手も含む。男女の制限なし。 1チーム4人でプレー。ジョイスティックで操作する電動車いすにフットガードを装着し、バスケットコート上でプレー。スピード感と操作技術が魅力。 ハンドボール(車いす) 日本車椅子ハンドボール連盟 車いす使用者6名中、上肢障害を伴う選手が2名以上必要。 スポンジ製ボールを使用し、6人制でゴールを競う。バスケ未満の身体能力でも楽しめる競技として、リハビリ・レクリエーション要素も重視される。 国内外のスポーツ 以下は、競技性とレクリエーション性の両面を持ち、国内外での普及が進んでいるスポーツです。 なかには、健常者と同じ土俵で競える種目も多く、スポーツによる社会参加や自己実現の機会として注目されています。 競技名 連盟・協会 対象者 競技概要 車いすビリヤード 日本車椅子ビリヤード協会 車いす使用者。障害の程度によって2クラスに分かれる。 ナインボール中心のポケットビリヤード。健常者と混合でプレーできる国際大会もあり。規則は一般に準じつつ、車いす特有の制限がある。 車いすダンス 日本車いすダンススポーツ連盟 車いす使用者 デュオ(車いす同士)やコンビ(車いす+健常者)で踊るダンス競技。世界大会もあり、芸術性と競技性を兼ね備える 車いすゴルフ 日本障害者ゴルフ協会 車いす使用者 一般のコース・ルールを活用。専用カートや車いすでのプレーが可能で、全国のゴルフ場でも開催例あり。 スキューバダイビング 日本バリアフリーダイビング協会 誰でも(障害の種類を問わず) 浮力により身体への負担が軽減されるため、とくに肢体不自由者に人気。全国に障害者向けスクールがあり、国際的にも広がりを見せる。 脊髄損傷後のスポーツの始め方3ステップ 脊髄損傷後の身体は非常に繊細で、スポーツを再開するまでには段階的なリハビリが欠かせません。 無理のないプロセスを踏むことで、二次的な障害を防ぎつつ、日常生活への適応や社会参加を目指すことが可能です。 ここでは、リハビリからスポーツ参加までの流れを3つのステップにわけて解説します。 ①全身状態を管理しながらリハビリ 損傷直後は、神経の損傷部位の安定を最優先に考え、ベッド上での安静や患部の固定が求められます。 リハビリは、心肺機能・筋力・関節可動域の低下を防ぐことが目的です。 理学療法士などが手足を動かす他動運動(受け身で動かしてもらう運動)や呼吸トレーニングから始め、状態によっては早期に座位練習を導入し、できるだけ早い段階での生活動作の獲得を目指します。 ②退院後は自宅でリハビリ 医療機関での集中リハビリを終えた後は、自宅や地域のリハビリ施設で継続的に運動療法を行うことが推奨されます。 とくに、腰に近い部分の脊髄損傷で神経が完全には断たれていない場合は、、歩行可能となるケースもあり、日常生活動作の改善を中心に無理なく体を動かすことが回復につながります。 ③回復状況を見ながらスポーツを開始 いつからスポーツを再開できるかは、麻痺の程度や体幹の安定性、筋力の回復具合によって異なります。 初期段階ではストレッチや座位での軽運動から始め、医師や理学療法士の指導のもと、徐々に負荷を高めていくのが一般的です。たとえば、軽いウォーキングやプール内運動などは、比較的早期に取り入れられる場合があります。 一方で、腰部への負荷が高いゴルフや野球は、損傷部位や治療内容によって異なりますが、一般的にはコルセットが外せるようになるまで難しいでしょう。 障害者スポーツには、障害の種類や程度に応じた多彩な種目があり、競技志向だけでなく、レクリエーション型のスポーツも存在します。 まずは身体の状態に合った活動から始め、運動の楽しさや達成感を感じることが大切です。 脊髄損傷者のスポーツにおける「クラス分け」とは 障害の有無に関係なく公平に競技が行えるようにするために、パラスポーツでは「クラス分け(Classification)」という制度が導入されています。障害の種類や程度に応じて選手をグループに分け、競技上の優劣が生じないように調整する仕組みです。 脊髄損傷には、完全麻痺や不全麻痺といった種類があり、残っている運動機能も人によって異なります。同じ障害名でも実際の身体機能には差があるため、機能的な公平性を保つ必要があるのです。 クラス分けでは程度の差を考慮し、可能な限り同程度の身体機能を持つ選手同士が競えるよう調整されます。 クラス分けの種類 クラス分けの基準は、競技や大会の種類によって異なります。 たとえば、パラリンピック競技では「国際パラリンピック委員会(IPC)」が定める「IPCクラス分けコード」に従って分類されるのが特徴です。 一方、国内の障害者スポーツ大会やリハビリ施設のイベントでは、それぞれ独自の基準が設けられている場合があります。 また、同じ競技でも種目によってクラス分けの方法は異なりますが、いずれもクラス分けの目的は競技の公平性の確保です。 誰でも競技に参加できるのか 国際大会であるパラリンピックに参加するには、「最小障害基準(Minimum Disability Criteria/MDC)」を満たしていることが必要です。 競技に支障をきたす明確な障害が存在することを示す基準で、該当しない場合は出場資格が認められません。 一方、日本国内の大会や地域スポーツイベントでは、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳を持っていれば、一定の条件のもとで出場できる場合があります。 競技レベルや開催規模に応じて参加条件が異なるため、主催者への確認が必要です。 どんな人が参加しているのか クラス分けの対象となる障害は、脊髄損傷による四肢麻痺や対麻痺のほか、脳性まひによるアテトーゼ(不随意運動)や、手足の切断、視覚障害など多岐にわたります。 たとえば、脊髄を損傷した方は、筋力低下により筋肉を意図的に動かすことが難しかったり、関節の可動域が制限されたりする場合があります。 こうした機能的な障害の程度を基準に、それぞれの競技で適切なクラスに分類され、公平な条件のもとで競技に参加することが可能になるのです。 クラス分けの流れ パラスポーツの大会で正式な記録を残すには、事前に「クラス分け」を受けておくことが必須です。 クラスを持たずに出場した場合の成績は公認記録とならないため、競技参加前に正式な評価を受ける必要があります。 クラス分けは、身体機能評価・技術評価・競技観察」の3つのプロセスから構成され、障害の程度とスポーツパフォーマンスを総合的に判断して、最も適したクラスに分類されます。 ① 身体機能評価(Physical Assessment) 医師や理学療法士などの専門スタッフによる問診をはじめ、筋力テスト、関節の可動域(どこまで動かせるか)、姿勢保持やバランス能力などを確認します。 スポーツ参加に必要な最低限の身体条件(最小障害基準)を満たしているかが判定されます。 ② 技術評価(Technical Assessment) 競技に必要な動作(例:ラケットの振り、投球、スタート動作など)を事前に実演し、そのパフォーマンスやスキルの程度を評価します。 スポーツごとの特性に基づき、どのクラスに属するかは技術評価で仮決定されます。 ③ 競技観察(Observation Assessment) 実際の大会で初めて競技に出場する際(First Appearance)には、事前評価で仮決定されたクラスが適切かどうかを審判や専門スタッフが観察し、最終的にクラスが確定されます。 不適切なクラス配置による、競技上の不公平を防ぐのが目的です。 クラス分けを実施する人 正式なクラス分けは、専門の資格を持つ「クラシファイヤー(Classifier)」によって行われます。 クラシファイヤーとは、障害の評価と競技特性に関する専門知識・技術を習得し、認定を受けた評価者です。 パラリンピックや公認の国内競技大会では、クラシファイヤーによるクラス分けが前提となっており、非公認の判定では公式記録として認められません。 クラス分けは1名で判断されるのではなく、2〜3名のクラシファイヤーが「パネル」としてチームを組み、ひとりの選手の評価を協議の上で決定します。 この体制により、個人の主観に偏らない公平な評価が保たれているわけです。 なお、クラシファイヤーには次の2種類があります。 国際クラシファイヤー(International Classifier) 国際パラ陸上競技連盟(World Para Athletics)など、世界の競技団体によって認定され、パラリンピックや国際大会でのクラス分けを担当する資格です。 国内クラシファイヤー(National Classifier) 日本パラ陸上競技連盟など国内の競技団体が認定し、日本国内の大会でクラス分けを実施する資格です。 脊髄損傷のスポーツにおけるクラス分け記号の見方 パラスポーツでは、公平な競技を実現するために、クラス分けごとに「記号(クラスコード)」が付与されます。選手がどの競技種目に、どのような障害の状態で、どのクラスに属するのかを明確に示すための記号です。 たとえば、「T33N」のように表示され、左から競技種目・障害の種類・障害の程度・クラス・ステータスの順に配置されます。 以下では、それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。 1.競技種目 クラス記号の最初の1文字目は、選手が参加する競技の種別を表しています。 T(Track):陸上の走る・跳ぶ種目に該当(例:100m走、走り幅跳びなど) F(Field):陸上の投げる種目に該当(例:砲丸投げ、やり投げなど) 2.障害の種類 クラス記号の2桁目と3桁目は、障害の種類を示しています。脊髄損傷もここに含まれる分類があります。(文献1) 10番台:視覚障害のある競技者 20番台:知的障害のある競技者 30番台:脳性の麻痺がある立位競技者と車いすや投てき台を使用する競技者 40番台:低身長・脚長差・切断(義足不使用)・関節可動域制限・筋力低下のある競技者 50番台:脚長差・切断・関節可動域制限・筋力低下があり車いすや投てき台を使用する競技者 60番台:足の切断から義足を装着する競技者 3.障害の程度 次に続く1桁の数字は、障害の重さを示します。 0〜9の数字が割り当てられ、数字が小さいほど障害の程度が重く、大きくなるほど機能がより多く残っていることを意味します。 4.クラス・ステータス 最後のアルファベットは、その選手のクラス分けの状態を表しています。 N(New):これまでクラス分けをされたことがなく、新たにクラス分けをされる者 R(Review):クラス分けをされたが、再びクラス分けを必要とする者 C(Confirmed):クラスが確定された者 脊髄損傷後にスポーツをはじめる際の注意点 脊髄損傷後の身体には多様な変化が起こるため、スポーツを再開・開始する際には慎重な配慮が求められます。 筋力や感覚だけでなく、自律神経や姿勢制御といった内部機能も影響を受けているため、適切な知識と準備が欠かせません。 ここでは、脊髄損傷者が安全にスポーツに取り組むために留意すべき3つのポイントを紹介します。 体温コントロールと熱中症 脊髄損傷によって自律神経が障害されると、体温調節機能が低下し、発汗が困難になる場合があります。 その結果、暑い環境では体温が上昇しやすく、熱中症のリスクが高まるため、屋外での活動時や運動前後には以下の点に注意が必要です。 こまめな水分補給(可能であればスポーツドリンクなど電解質を含む飲料を選ぶ) 通気性の良い服装の着用 頻繁な休憩と日陰でのクールダウン 扇風機や冷却グッズの活用 また、体温調節に不安がある場合は、室内での運動を選択するほか、運動前後に体温をチェックしておきましょう。 自律神経過反射と異常高血圧 損傷部位がみぞおちのあたり(T6)より上の方に起こりやすいのが「自律神経過反射」と呼ばれる症状です。 急激な高血圧を伴う発作で、以下のような症状が現れます。 激しい頭痛 顔面紅潮や発汗 鼻づまり、吐き気 損傷レベルより上の発汗や異常感覚 上記の症状が現れた場合は運動を直ちに中止し、衣類や装具の圧迫、排尿・排便のトラブル、座位バランスの崩れなどを確認します。 原因が特定できなければ、すぐに医療者に連絡してください。 車いす競技での二次障害 車いす使用者がスポーツに参加する際に注意すべきなのが、上肢の「オーバーユース(過使用)」による障害です。 とくに、肩関節の故障が頻発しやすく、車いす操作とスポーツ動作の両方で酷使されることが主な要因となります。 二次障害を防ぐためには、以下のポイントを押さえておきましょう。 肩甲骨周囲筋のストレッチ 上腕三頭筋・三角筋などの補強トレーニング 理学療法士によるフォーム指導 姿勢の見直しと座位保持バランスの強化 定期的なメディカルチェック 肩だけでなく、褥瘡(じょくそう:床ずれ)や体幹筋の衰えも見逃さず、予防的な対策を取り入れることが理想です。 スポーツの可能性を広げる脊髄損傷の「再生医療」 脊髄損傷によって一度失われた運動・感覚機能は、回復が困難とされてきました。 しかし近年では、再生医療という新たな治療の選択肢が登場しています。 再生医療とは、体が本来備えている傷の修復プロセスに関わる細胞を活用する治療法です。 脊髄損傷に対しては「幹細胞治療」が用いられており、患者様自身から採取した幹細胞を培養し、損傷した部位に投与します。当院「リペアセルクリニック」では、損傷部位により近いところに幹細胞を届けるため、脊髄腔内への注射によって投与を行っています。 早期回復を目指す方や手術を避けたい方、アスリートでも導入が進んでおり、体への負担を抑えた治療法を検討している方の選択肢となっているのです。 当院で行っている脊髄損傷の再生医療について、以下の記事で症例を紹介しているので、参考にしてみてください。 まとめ|脊髄損傷後もさまざまなスポーツを行える 脊髄損傷があっても、障害の程度や体の状態に合ったスポーツを選べば、無理なく楽しむことが可能です。 競技スポーツからレクリエーションまでさまざまな種目から選択でき、自分に合ったスポーツを選ぶことで、体力を保ちながら社会に参加できます。 医師やリハビリ専門職と相談しながら、安全に取り組んでいきましょう。 また、再生医療などの新しい治療選択肢も広がっています。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、脊髄損傷の治療に用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施していますので、ぜひご登録ください。 脊髄損傷とスポーツに関するよくある質問 脊髄を損傷して活躍しているスポーツ選手はいる? はい、います。たとえば、車いすテニスの国枝慎吾選手は脊髄損傷を乗り越え世界で活躍しています。 脊髄損傷C6レベルの方の車いすからベッドへの移動方法は? C6(頚髄の下部)損傷の方には、車いすをベッドに直角に寄せ、体幹を支えながら手の力で移乗する「直角アプローチ」という方法があります。 手首を反らせると指が自然に曲がる仕組みを利用した「テノデーシス動作」など、残された機能をうまく使う工夫が重要です。 キャスター上げが可能になる脊髄損傷レベル(部位)は? C7〜C8レベル(首の付け根あたり)の損傷であればキャスター上げが可能となり、屋外移動の自由度が増します。 ツインバスケや車いすテニスなど、上肢機能を使うスポーツにも参加可能です。 脊髄損傷の方の車いすの選び方は? 車いすは、以下のポイントを押さえた上で選びましょう。 どれだけ体を動かせるか 1日どれくらい使うか どうやって乗り移るか 屋内外どちらで使うか 上記をふまえて、予算とのバランスを考慮すると良いでしょう。 また、軽量で小回りの利くタイプや外出向けの頑丈なタイプなど、身体状態と生活スタイルに合った車いすを選ぶことも大切です。 (文献1) TOKYO 2020 PARALYMPIC GAMES HANDBOOK|東京都オリンピック・パラリンピック準備局
2022.03.25 -
- 健康・美容
年齢とともに、「最近つまずきやすくなった」「階段の上り下りがつらい」と感じていませんか? それは、筋肉の衰えが進行しているサインかもしれません。 筋肉の衰えは、体型の変化といった外見上の問題にとどまらず、転倒や骨折、要介護状態を招く深刻な健康リスクにつながるため注意が必要です。 本記事では、筋肉が衰える原因や初期症状、進行によるリスクを解説し、セルフチェック方法や食事・運動を中心とした具体的な対策もご紹介します。 最後までご覧いただき、いつまでも元気で自立した生活を続けるための第一歩を踏み出しましょう。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、変形性関節症や軟骨損傷などの治療に用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施していますので、ぜひご登録ください。 筋肉の衰えは加齢が主な原因 加齢は、筋肉の衰えにおいて最も大きな要因です。 年齢を重ね、自然と筋肉量や筋力が低下しやすくなる現象は「サルコペニア」と呼ばれており、要介護状態に陥る一因となります。さらに筋肉の衰えは、身体機能やバランス能力の低下を引き起こすため注意しなければなりません。 また、骨折や関節障害の原因となる「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」や、虚弱な状態で健康障害や介護が必要になる「フレイル」の進行にも深く関与しています。 とくに、高齢者は食事が偏りがちになり、たんぱく質・ビタミン・ミネラルなど筋肉の維持に必要な栄養素が不足しやすいため注意が必要です。 筋肉が低下した状態を「サルコペニア」と呼ぶ サルコペニアとは、筋肉量が減少し、それに伴って筋力や身体機能も低下する状態を指す医学用語です。 加齢に伴って自然に起こる「一次性サルコペニア」と、病気や栄養不良、運動不足などが原因で生じる「二次性サルコペニア」に分類されます。 サルコペニアが進行すると、歩行速度の低下やつまずき・転倒が増えるため、日常生活で動作が制限されるようになる前に対策を講じることが大切です。 また、フレイルやロコモといった加齢に伴って起こりやすい症状や状態と重なって進行しやすく、結果的に介護が必要な状態につながる恐れもあります。 筋肉の衰えは気づかないうちに進行するため、健康寿命を延ばすには初期段階での発見と対策が欠かせません。 フレイル・サルコペニア・ロコモについては、以下の記事もご覧ください。 筋肉の衰えと同時にしびれや震え(けいれん)があるなら重大な病気かも 筋肉の衰えに加えて手足のしびれや震え、けいれんなどの神経症状が同時に見られる場合は、重大な病気の恐れがあります。 単なる加齢や運動不足による筋力低下ではなく、以下のような脳や脊髄、末梢神経の病気が原因の可能性があるのです。 脊髄損傷 多発性硬化症 筋萎縮性側索硬化症 末梢神経障害 上記は、早期発見・早期治療が極めて重要な疾患です。 筋力の低下に加えて神経症状が見られる場合は、速やかに神経内科や脳神経外科など専門の医療機関を受診しましょう。 筋肉の衰えで生じる症状 筋肉の衰えは、複数の要因が重なって生じてきます。気付かぬうちに進行するため、早めに症状の特徴を知っておくことが重要です。 ここでは、筋肉の衰えで生じる典型的な症状を見ていきましょう。 筋肉量が減少した場合の症状|体重減少など 筋肉量が減ると、その分だけ体重も減少しやすくなります。筋肉は熱産生や水分保持にも関与しており、筋量の低下は冷え性や脱水・熱中症のリスクにもつながります。 また、筋肉が減ることで骨密度も低下し、骨粗しょう症を併発するケースもあるため注意しなければなりません。 気になる体重の変化や冷え、疲れやすさなどがあれば、早めに対処していくことが大切です。 筋力が低下した場合の症状|立ち上がれないなど 筋力低下が進むと、「椅子から立ち上がるのが難しい」「ペットボトルの蓋が開けにくい」といった日常動作で支障が生じます。 脚の筋力が落ちると、椅子から立ち上がる際に何かにつかまらないと難しくなる状態になる恐れがあるのです。また、握力低下によって、缶のプルタブを開けるのが難しいなどの細かな動作にも影響が出ます。 筋力が低下すると、常に最大の力を使ってしまいがちになるため、疲れやすくなる点も見逃せません。動作がぎこちなくなったり、日常生活に支障が出てきたりしたら、筋力低下の可能性を疑いましょう。 身体機能が低下した場合の症状|階段を上り下りできないなど 身体機能が落ちると、歩行速度やバランス、階段昇降などの動作にも支障が出ます。 たとえば、歩行速度が落ちると、青信号のうちに横断歩道を渡り切れないといった事態にもなりかねません。また、階段の上り下りがつらくなった場合は、脚部の機能低下のサインです。 疲れるからと外出を控えるようになると、身体機能のさらなる低下を招く悪循環に陥ってしまいます。身体機能低下は、単に筋肉が弱くなるだけでなく、生活の自由度にまで影響を及ぼす点を理解しておきましょう。 筋肉の衰えによる健康リスク 筋肉の減少や筋力の低下は、単なる身体能力の衰えにとどまりません。 筋肉は、運動や姿勢を保つことだけでなく、代謝・免疫・呼吸・摂食嚥下といった多くの生理機能に関わっているのです。 ここでは、筋肉の衰えによって生じる代表的な健康リスクを解説します。 転倒・骨折から寝たきりになるリスク 筋力が衰えると、姿勢保持やバランス機能が低下しやすくなります。その結果、わずかな段差やバランスの崩れでも転倒しやすくなるため注意が必要です。 高齢者が転倒すると、大腿骨などの骨折を引き起こす危険性が高く、長期入院や安静が続くことでさらに筋力が低下する悪循環に陥ります。 最終的に寝たきり状態となると、日常生活の自立が困難になるケースも少なくありません。 転倒して骨折し、寝たきりになるという流れは、高齢者の健康寿命を大きく縮める要因のひとつになっているのです。 要介護状態になるリスク 筋肉が衰えると、日常生活に必要な以下の基本動作が困難になります。 立ち上がり 歩行 階段昇降 衣服の着脱 さらに進行すると、自力で生活を維持できなくなり、介助を必要とする「要介護状態」に移行します。 とくに、加齢とともに体力・筋力が低下している高齢者では、ちょっとした体調不良や怪我がきっかけとなり、急速に介護依存度が高まる場合も少なくありません。 筋力の低下を早期に察知して予防的な対策を講じることが、介護を必要としない生活を長く維持するためには不可欠です。 生活習慣病が悪化するリスク 筋肉は、糖代謝に重要な役割を担っており、血糖を取り込んでエネルギーとして利用する働きが活発な組織です。 筋肉量が減ると血糖の処理能力が低下し、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病が悪化する可能性が高まります。 さらに、筋肉の減少により基礎代謝も低下し、エネルギー消費量が減ることで肥満のリスクが高まる点も要注意です。 生活習慣病が進行すれば、動脈硬化や心血管疾患にもつながるため、筋肉の維持が慢性疾患の予防や管理にもつながります。 誤嚥性肺炎のリスク 筋肉の衰えは、食べ物を噛んだり飲み込んだりする際に使う、咀嚼筋(そしゃくきん)や嚥下筋(えんげきん)にも影響を与えます。 咀嚼筋や嚥下筋の筋肉が弱くなると、食物や唾液が気管に誤って入る「誤嚥」が起こりやすくなるため注意しなければなりません。誤嚥が繰り返されると、口腔内の細菌が肺に入り込み、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクも高まります。 とくに高齢者においては、免疫力の低下も重なって肺炎の重症化や死亡リスクが高くなるため、口周りや喉の筋肉の機能低下には要注意です。 筋肉の衰えをセルフチェックしよう 筋肉量・筋力が低下し始めると、身体活動や日常動作に支障が出やすくなります。とくに高齢期には、早めの段階で衰えを察知して対策しましょう。 ここでは、医療機関や研究で紹介されている簡単なセルフチェック方法を紹介します。専用機器が無くても自宅で実施可能なので、ぜひ実践してみてください。 指輪っかテスト 両手の親指と人差し指で輪を作り、ふくらはぎの一番太い部分を囲みましょう。輪の方が大きくて隙間ができる場合、ふくらはぎの筋肉量が低下している可能性があります。 ふくらはぎは「第2の心臓」とも呼ばれ、全身の筋肉量の指標にもなる部位です。ふくらはぎが細くなっている状態に気づいたときは、早めに対策しましょう。 開眼立脚位テスト 両手を腰に当て、両目を開けたまま片足を床から数センチ浮かせて立ちます。転倒を防ぐため、壁や椅子のそばで行ってください。 床に着けている「支持足」がずれる、または支持足以外の体の一部が床や壁に触れるまでの時間を最大1分まで測定して記録します。(文献1) 年代別に、以下の時間と照らし合わせてみてください。 30代:55秒 40代:40秒 50代:30秒 60代:20秒 70代以上:20秒以上を目標に 上記の時間を下回る場合は、筋力の低下やバランス感覚(平衡感覚)に問題が起きている可能性があります。定期的にチェックして、ご自身の状態を把握しておきましょう。 筋肉そのものだけでなく身体の安定性もチェックでき、高齢者の転倒リスクの把握に有効なテストです。 5回立ち座りテスト 肘掛けのない椅子に浅く腰かけ、手を使わずに立ち上がり・座る動作を5回繰り返し、かかった時間を測定しましょう。 12秒以上かかる場合、下肢の筋力や持久力が落ちている可能性があります。(文献2) 立ち座りの動作には、大腿四頭筋などの主要な筋肉が関わるため、日常生活動作の基礎を定期的に評価するのに有効です。 ペットボトル開けテスト 未開封のペットボトルを使い、キャップをどのように開けているかを確認します。 正常な握力があれば、親指と人差し指を中心とした「筒握り」で開けられますが、握力が低下していると指先だけでは力が足りず、5本の指全体でキャップを上から覆うように握る「逆筒握り」になりがちです。 日常的な動作から筋力の低下を見つけ出すテストで、とくに上肢の筋肉の状態を把握する手がかりとなります。 筋肉の衰えを防ぐ対策 筋肉の衰えを予防するには、日常生活の中で運動・栄養・生活習慣をバランスよく整えることが欠かせません。 ここでは、筋肉の健康を維持するための対策をご紹介します。 たんぱく質の摂取 筋肉の衰えを防ぐには、たんぱく質の十分な摂取が必要です。 たんぱく質は、筋肉・臓器・皮膚など身体を構成する材料であり、人間の生命維持に不可欠な栄養素のひとつです。とくに、高齢者は筋肉の合成効率が低下するため、意識的にたんぱく質を摂りましょう。 たんぱく質を多く含む主な食品は、以下の通りです。 魚 肉 卵 大豆製品 乳製品 高齢になると食事が単調になりやすく、炭水化物中心の食生活が続くと、たんぱく質不足を招きかねません。全体的に少ない食事量でも、多種類の食材を組み合わせ、バランスの取れた食生活を心がけましょう。 なお、食事の用意が負担になる場合には、ヨーグルトや牛乳、豆腐、納豆など調理不要で手軽に摂れる食品を冷蔵庫に常備しておくと便利です。 下半身のトレーニング 下半身を積極的に動かすことが、筋肉の衰えを予防するのに有効です。 以下では、家庭でも実践しやすい2つの下半身トレーニングをご紹介します。 椅子を利用して大腿四頭筋を鍛える 椅子に浅く腰かけた状態から、ゆっくりと立ち上がる・座る動作を繰り返すことで、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)を効果的に鍛えられます。 膝や腰に痛みがなければ、「立ち座り10回→1分休憩」を1セットとし、最大3セット行いましょう。特別な器具が不要で、椅子があれば誰でも始められます。 以下の2点を意識するとより効果的です。 立ち上がる・座るをなるべくゆっくりと繰り返し、筋肉にしっかり刺激を与える 手を使わずに、脚の筋力にしっかり負荷をかける 片脚で立ち座りする より負荷を高めるには、片脚を少し浮かせた状態で立ち座りを行う方法があります。 椅子の近くにテーブルや壁など支えにつかまるものを用意し、慣れるまでは安全を確保してから実施しましょう。 片脚での立ち座りは、片脚で立ったときのバランス能力・脚全体の筋力・体幹の安定性を同時に鍛えられるため、加齢による動作機能低下を防ぐ上で効果的です。 ゆっくり動作を行い、立ち上がった時に数秒静止するように意識すると、さらに効果が高まります。週に数回、少しずつ回数・セット数を増やし、脚の筋力とバランス感覚を養っていきましょう。 日光を浴びる 筋肉の健康維持には、適度な日光浴も欠かせません。 日光に含まれる紫外線を浴びると、体内でビタミンDが生成されます。ビタミンDは、カルシウムの吸収を助けるだけでなく、筋肉の合成や筋力の維持にも関与している重要な要素です。 とくに、高齢者はビタミンD不足が進みやすく、筋肉の衰えや転倒リスクが高まる要因となります。 1日15~30分程度、腕や脚に日光を浴びる習慣を取り入れるだけでも効果が期待できるので、実践していきましょう。季節や地域、肌の色によって必要な時間は異なります。 筋肉の衰えで運動するときは腰痛や膝の痛みに注意 運動は、筋肉の衰えを防ぐために重要ですが、やり方を誤ると関節や筋肉を傷め、かえって健康を損なう恐れがあります。 高齢者や運動習慣のない方が急に強い運動を始めると、腰や膝に過度な負担がかかり、慢性的な痛みや炎症を引き起こす可能性があるため注意が必要です。安全に配慮しながら、強度・回数・時間を少しずつ段階的に増やしていきましょう。 また、体調がすぐれない日や、猛暑・寒冷時などの過酷な環境では無理をせず、体調管理を優先してください。とくに、関節痛や腰痛、持病(高血圧・心疾患など)がある方は自己判断で行わず、事前にかかりつけ医にまずは相談しましょう。 まとめ|筋肉の衰えを対策して介護リスクを減らそう 筋肉の衰えに対する予防・対策は、将来的な介護リスクを軽減し、自立した生活を長く維持するために不可欠です。 年齢とともに筋力や運動機能は自然と低下していきますが、放置すると転倒・骨折・要介護といった深刻な問題に発展しかねません。 たんぱく質を中心としたバランスの良い食事を意識しつつ、無理のない範囲で体を動かす習慣を取り入れていきましょう。 今回の記事が、介護を必要としない、いきいきとした生活を送る一助となれば幸いです。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、ロコモの原因となる変形性関節症や軟骨損傷などに用いられている再生医療に関する情報の提供と簡易オンライン診断を実施しています。 膝の痛みなどでお悩みの方は、ぜひご登録いただき、ご活用ください。 筋肉の衰えに関するよくある質問 筋肉の衰えで主な初期症状は? 筋肉が徐々に衰えると、まず以下のような症状が現れます。 以前と比べて力が入りにくくなった 歩くスピードが遅くなったと感じる 階段を上るのがつらい 初期段階では自覚症状が少なく見過ごされやすいため、普段の動きで疲れやすさやつまずきやすさを感じたら要注意です。 筋肉の衰えがはじまる年齢は? 筋肉量は、一般的に20代をピークに減少し始めます。加齢とともに減少ペースが加速し、50代以降に顕著になる傾向があります。 そのため、40代のうちから運動習慣や食事の見直しを始め、筋肉量の維持を心がけることが大切です。 筋肉がない人の特徴は? 筋肉量が少ない人に共通する特徴は以下の通りです。 長時間座る生活が中心で運動習慣がない たんぱく質摂取が不十分、あるいは極端な食事制限を行っている 睡眠が浅い・休息が十分ではない 上記の生活習慣が重なることで、筋肉量の低下リスクが高まります。 筋トレしているのに筋肉が減る・つかないのは何故? 筋トレを行っていても筋肉が増えない、また減る原因として、以下のような要因が考えられます。 負荷が軽すぎて筋肥大刺激が不足している たんぱく質やエネルギーの摂取が十分でない オーバートレーニング・休息不足で筋肉修復が追い付いていない 有酸素運動が過剰で筋肉分解が促進されている 上記を見直せば、筋肉の成長環境を整えられます。 筋肉の衰えは何科を受診すればいい? 筋肉の衰えが疑われる場合、症状に合わせて次の科を受診先として検討しましょう。 「整形外科」または「サルコペニア外来」:下肢・体幹の筋力低下や筋量減少が主体 「脳神経内科」または「脳神経外科」:手足の麻痺・力が入らない・言語や嚥下機能の低下を伴う 筋肉が衰える背景には神経・筋疾患が潜む可能性もあるため、早めに専門医に相談してください。 参考文献 (文献1) 生活習慣病などの情報|厚生労働省「健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~」 (文献2) 高齢者の運動機能セルフチェックお役立ちBOOK|三重県リハビリテーション情報センター
2022.03.25 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
- 膝の外側の痛み
「インターネットで膝の痛みについて検索しても、自分の膝の症状に当てはまるのかわからない」と悩んでいませんか。 自分の膝の痛みは放置しても治るのか、病院で治療を受けるべきなのかが判断できず、不安になることもあるかもしれません。 膝には靭帯や軟骨、筋肉などさまざまな組織が存在し、損傷や炎症を起こしている部位によって疾患名が変わる可能性があります。自己判断が難しい場合もあるため、気になる場合は早めに整形外科の受診も検討しましょう。 本記事では膝の部位ごとに痛みを感じる病気と対処方法を解説します。 記事を最後まで読めば膝の痛みがある部位ごとに疑われる疾患名がわかり、病院に行くべきか判断する際の参考になるでしょう。 「膝が痛む場所」によって診断結果が変わる可能性が高い 結論から言えば、膝の痛みが出ている場所によって、診断される病名は変わる可能性が高いでしょう。 膝には靭帯や軟骨、筋肉などさまざまな組織があり、どの組織が損傷・炎症しているかによって疾患名が変わるためです。 言い換えると、痛みが出る部位が明確であれば、損傷・炎症している膝の組織や疾患名も予測しやすいといえます。 「膝の内側」が痛む2つの病気 膝の内側が痛い場合は、以下2つの病気が考えられます。 変形性膝関節症 鵞足炎 膝の内側の痛みに悩んでいる方は、自分自身の症状に当てはまるかチェックしてみましょう。また、変形性膝関節症と鵞足炎の詳細については、以下の記事もご参照ください。 変形性膝関節症 変形性膝関節症とは、関節の軟骨がすり減ることで膝関節が変形していく病気です。加齢や筋力低下のほかにも、骨折•感染症も原因となる可能性があります。 主な症状は変形した関節の痛みや可動域の制限、関節水腫などです。初期症状では痛みがある程度ですが、進行していくにつれて変形が大きくなり、炎症反応がみられるようになります。 末期になれば変形が強く関節面がゆがむために関節可動域制限が大きくなり、日常生活に支障がでることも珍しくありません。 鵞足炎 鵞足炎とは、膝の内側に付着する筋肉の腱が炎症を起こす病気です。 ダッシュからのストップやジャンプ動作を繰り返すことで生じる、いわゆるオーバーユース症候群に分類されます。スポーツ選手に多く発症しますが、階段の上り下りや長距離歩行が多い人に発症することも少なくありません。 主な症状は歩くときや椅子からの立ち上がりなど、足に力を入れたときに膝の内側、下方に生じる痛みです。重症化すると荷重時だけでなく、安静時にも痛みを感じることがあります。 「膝の外側」が痛む2つの病気 実際に膝の外側が痛い場合、以下に挙げる2つの病気が考えられます。 腸脛靭帯炎 外側半月板損傷 膝の外側に痛みを感じている方にはこれらの病気が当てはまるかもしれません。痛みで悩んでいる方はぜひチェックして、ご自身の症状と比較してください。 腸脛靭帯炎 腸脛靭帯炎とはランナー膝とも呼ばれ、膝の外側にある腸脛靭帯という組織に炎症がみられる病気です。 膝の曲げ伸ばしを繰り返すことで腸脛靭帯が膝の外側の出っ張り(大腿骨外顆)とこすれ、摩擦によって炎症が起きます。そのため、ランニングなど膝の曲げ伸ばしが多いスポーツが主な原因です。 症状は膝の外側の痛みで、初期では膝を動かしたときのみに痛みを感じます。重症化してくると安静時にも痛みを感じるようになり、痛みがなかなかひきません。 外側半月板損傷 外側半月板損傷とは、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(脛の骨)の間にあるクッションの損傷です。 膝関節の内側と外側にそれぞれありますが、外側にある半月板の損傷が膝の外側の痛みにつながります。損傷の原因はスポーツや日常生活のなかで膝の外側に大きな負担がかかり続けることや、加齢に伴う関節の変性、筋力低下などです。 外側半月板損傷では痛みのほか、関節可動域の制限がみられます。関節運動が不安定になり、膝の曲げ伸ばしの途中で半月板が引っかかることで動かなくなる「ロッキング」も外側半月板損傷の特徴です。 「膝の上側」が痛む2つの病気 膝の上側に痛みを出す病気で考えられるものは以下の2つです。 大腿四頭筋付着部炎 膝蓋大腿関節症 膝の曲げ伸ばしなどで膝の上に痛みを感じる人はこれらの病気が当てはまる可能性があります。自分の症状と照らし合わせてみてください。 また、膝の上の痛みについては以下の記事でも解説していますので、気になる方はこちらもチェックしましょう。 大腿四頭筋付着部炎 大腿四頭筋付着部炎とは、太ももの前にある大腿四頭筋が付着する膝蓋骨(膝のお皿)上部に痛みを生じる病気で、ジャンパー膝とも呼ばれます。 いわゆるオーバーユース症候群に分類され、大腿四頭筋を使いすぎることが原因です。ジャンプ動作やダッシュを繰り返すスポーツ選手に多く発症します。 初期症状ではスポーツ時に限定される痛みが特徴ですが、悪化すると歩行や階段昇降など日常生活でも痛みを感じるようになります。 大腿四頭筋付着部炎(ジャンパー膝)の原因や治療は、以下の記事も参考にしてください。 膝蓋大腿関節症 膝蓋大腿関節症は、大腿骨と膝蓋骨の間にある軟骨が変性することで痛みや関節可動域制限が生じる病気です。 膝の運動に伴い上下に動く膝蓋骨の軟骨が変性することで動きが悪くなり、関節の変形へとつながります。 主な原因は加齢と膝蓋骨の骨折・脱臼です。これらの原因によって膝蓋骨の軟骨が変性、摩耗し、膝の上部に痛みが生じます。 また、膝蓋骨の動きが悪くなることで膝全体の可動域が制限されることもあるでしょう。 「膝の裏側」が痛む2つの病気 膝の裏側に痛みが出る場合に疑われるのは、以下の2つの病気です。 関節リウマチ 膝靭帯損傷 これらの病気は放置すると危険なため、膝の裏側に痛みを感じる方は注意が必要です。ご自身の症状とこの2つの病気が当てはまるかどうか必ずチェックしてください。 また以下の記事も参考にしていただけると幸いです。 関節リウマチ 関節リウマチは、関節の中にある滑膜という組織がなんらかの原因で異常増殖し、炎症を起こす進行性の疾患です。 症状が進行すると関節が破壊され、痛みや関節の変形を伴います。全身の関節に起こる病気ですが、膝であれば膝裏にも痛みを感じることが特徴的です。 関節リウマチは自己免疫疾患だと考えられていて、発症する原因はわかっていません。しかし、30〜40代の女性に発症しやすい傾向があります。 早期発見・早期治療によって症状の進行を抑えることが重要な疾患です。 膝靭帯損傷 膝靭帯損傷は膝にある4種類の靭帯のいずれかが損傷する疾患で、膝の裏の痛みではとくに後十字靭帯損傷が疑われます。 後十字靭帯損傷は事故やスポーツによって損傷しやすい靭帯で、損傷すると膝裏の痛みや膝の伸ばしにくさが出るのが特徴です。 後十字靭帯は自然治癒が難しいため、損傷すると時間経過とともに元どおりになることがありません。すぐに手術をする必要はありませんが、サポーターなどの装具での補強やリハビリが必要です。 【場所別】膝が痛むときの対処法 膝の痛みは、痛む場所によって対処法が異なります。主な対策は以下のとおりです。 膝の内側が痛む場合は「膝に負担をかけないようにする」 膝の外側が痛む場合は「股関節の運動を心がける」 膝の上側が痛む場合は「ストレッチと筋トレを行う」 膝の裏側が痛む場合は「無理をせず医療機関を受診する」 本章を参考に、自分の膝の痛みに合った対処法を試してみましょう。 膝の内側が痛む場合は「膝に負担をかけないようにする」 膝の内側が痛い場合は、「鵞足炎」もしくは「変形性膝関節症」の可能性があるため、膝関節へ負担をかけないことが大切です。 病名によって対処法がやや異なるため、以下の表を参考に試してみましょう。 病気名 対処法 鵞足炎 ・安静にすること ・鵞足につく太ももの内側・裏側の筋肉をストレッチする ・お尻の筋力強化 変形性膝関節症 ・適切な体重にコントロールする ・膝の筋力強化 ・痛み止め(消炎鎮痛剤)の服用 これらの疾患は圧痛の位置によっておおまかに見分けられます。 鵞足炎では膝の内側・下方に圧痛があるのに対し、変形性膝関節症では大腿骨と脛骨の関節面付近に圧痛があります。 圧痛の場所を確認し、可能性のある疾患を見極めた上で適切な対処を行いましょう。 膝の外側が痛む場合は「股関節の運動を心がける」 膝の外側に痛みを感じる場合「腸脛靭帯炎」もしくは「外側半月板損傷」が考えられます。これらの疾患への対処法として、股関節周囲の筋力強化やストレッチが重要です。 腸脛靭帯は股関節の外側から膝に向かって伸びている靭帯で、膝を支える役割がある組織です。お尻の筋肉とつながっているため、股関節の筋力強化やストレッチで強くしなやかになり、腸脛靭帯炎の予防になるでしょう。 外側半月板は膝の中にあるクッションで2つある半月板のうち、外側にあるものを指します。身体の外側に体重がかかると外側半月板の負担になるため、股関節の筋力強化・ストレッチを行い、体重のかかり方をコントロールする必要があります。 股関節を捻るストレッチやあぐらをかくストレッチが効果的です。筋力強化は仰向けでのお尻上げやスクワットといったお尻の筋肉に力をいれるトレーニングを取り入れてください。 また、どちらの疾患もオーバーユースが要因となるため、痛みが強いときには安静も重要です。 膝の上側が痛む場合は「ストレッチと筋トレを行う」 膝の上に痛みを感じる場合「大腿四頭筋付着部炎」や「膝蓋大腿関節症」の可能性があるため、太ももの筋肉の柔軟性を高めましょう。 大腿四頭筋付着部炎と膝蓋大腿関節症は大腿四頭筋の柔軟性が低下することで発症しやすくなります。膝を深くまで曲げるストレッチや、足を後ろに引いて骨盤を前に出すストレッチで大腿四頭筋の柔軟性が高まるでしょう。 また、ストレッチだけでなく筋力強化も重要です。大腿四頭筋を強化することで膝蓋骨の動きがスムーズになり、また付着部の炎症も起きにくくなります。仰向けでの脚上げやスクワット、段差昇降が有効なため、ぜひ試してみてください。 なお、大腿四頭筋のストレッチの詳しいやり方はこちらでも解説しています。ぜひご覧ください。 膝の裏側が痛む場合は「無理をせず医療機関を受診する」 膝の裏に痛みを感じるときは「関節リウマチ」や「膝靭帯損傷」が疑われます。自分での対処が難しいケースがほとんどであるため、可能な限り早く整形外科を受診しましょう。 整形外科を受診する場合には、MRIがある施設がおすすめです。MRIがあれば関節の変形や炎症の程度がわかるため、適切な診断を受けられます。 また、関節リウマチを疑う場合には採血も必要なため、受診する前に採血が可能か問い合わせておくと安心です。 まとめ|膝の痛みは場所によって原因が違う!気になる人は早めの受診がおすすめ 今回は膝が痛む場所からわかる膝の病気について詳しく解説しました。 個々の経過や受傷状況などによって専門医による診察が重要であることはいうまでもありませんが、膝の痛む場所によってそれぞれ特徴的な膝の病気があることも事実です。 もし膝の痛みの原因が自分で特定できない場合は、病院で受診することをおすすめします。 また、当院「リペアクリニック」では、膝の痛みに関する治療法として、再生医療を行っています。 2023年12月には、国内初の「分化誘導による関節の再生医療」による治療を厚生労働省に特許申請し、受理されました。 「分化誘導による関節の再生医療」は、従来より高い再生能力を持った幹細胞による治療であり、幅広い膝疾患への効果が期待できます。 膝の痛みにおいて、手術以外の選択肢を持ちたいと考えている方は、ぜひ当院の「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」からご相談ください。 この記事が、膝の痛みの原因や対処法を知り、適切な治療を受けるための参考資料になれば嬉しく思います。 膝の痛みについてよくある質問 膝の痛みの原因はなんですか? 損傷・炎症がある組織によって異なります。 膝の痛みは靭帯や軟骨といった組織が損傷・炎症を起こすことで生じます。これらの組織は部位によって違うため、痛みの部位だけでは原因組織の断定はできません。 そのため、原因を特定するためには病院を受診しましょう。とくにMRI検査をすれば詳細な組織の評価ができるため、MRI撮影ができる施設がおすすめです。 膝が痛むとき受診は必要ですか? 受診することをおすすめします。 もし痛みの原因が軟骨や靭帯である場合、自然治癒が見込めません。そのため、正しい治療をしなければ痛みが長引く可能性があります。 病院を受診して痛みの原因を特定できれば、痛みの改善に向けた正しい治療が受けられるでしょう。また、再発防止に向けたアドバイスももらえるため、可能なら早めの受診をおすすめします。
2022.03.23 -
- 足底腱膜炎
「足底腱膜炎はなぜ重症化するの」 「足底腱膜炎が悪化したらどうすれば良いの」 このような不安を抱える方は多いでしょう。 足底腱膜炎は、足裏に負荷がかかりすぎることで発症し、重症化すると激しい痛みや安静時の痛みが生じます。 本記事では、足底腱膜炎が重症化したときの症状や重症化する原因と対処法について詳しく解説します。 重症化した足底腱膜炎の治し方も紹介しますので、足底腱膜炎が悪化して悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。 足底腱膜炎が重症化したときの症状 足底腱膜炎には症状の程度があり、軽症であれば痛みは軽く日常生活に大きな支障はでません。中等症になると、歩行時の痛みや強い圧痛により日常生活に支障をきたします。 さらに症状が悪化し、重症化してしまうと以下のような症状がみられます。 動作時に激しい痛みが出る 動いていなくても痛みがある 踵骨棘が現れる 動作時に激しい痛みが出る 足底腱膜炎が重症化すると、多くの場合で痛みが強くなります。とくに長時間の立ち仕事や歩行、ランニングなどで足裏に体重がかかる際に、かかとや足裏に激しい痛みが出やすくなるでしょう。 階段の上り下りや、つま先立ちのような動作でも同様の症状がみられます。症状が進行すると、安静にしていてもジンジンとした痛みを感じたり、歩くこと自体が難しくなったりする場合もあります。 動いていなくても痛みがある 足底腱膜炎の初期は、動き始めや足裏に負荷がかかった際に痛みを感じることが一般的です。しかし、症状が重症化すると、炎症が強まり、足を地面に着いていない安静時でも痛みが出るようになります。 たとえば、座っているときや寝ているときなど、何もしていない状態でも、かかとや足裏がズキズキと絶えず痛む場合があります。このような状態になると、日常生活に大きな支障をきたすかもしれません。 踵骨棘(かかとの骨の突起)が現れる 足底腱膜炎の症状が長く続くと、かかとの骨に踵骨棘(しょうこつきょく)と呼ばれるトゲのような骨の突起が形成される場合があります。これは、足底腱膜が付着部を繰り返し引っ張ることで、その部分が骨化したものです。 この踵骨棘ができると、さらに痛みが増すことがあり、炎症を繰り返す要因の1つにもなります。踵骨棘がみられるほど重症化すると、治療が難しく、回復までの期間が長期に及ぶ傾向がみられます。痛みが6カ月以上続くような状態は「難治性足底腱膜炎」と呼ばれ、より専門的な治療が必要です。 そのため、足底腱膜炎は重症化する前に適切な治療を受けることが大切です。また、治療法のひとつである再生医療は、入院が不要で患者様の負担も少ない点が特徴です。 足底腱膜炎に対する再生医療について詳しく知りたい方に向けて、当院リペアセルクリニックでは、メール相談、オンラインカウンセリングも承っておりますので、ぜひご活用ください。 足底腱膜炎が重症化する5つの原因と対処法 足底腱膜炎が重症化する原因として以下の点があげられます。 痛みを我慢して足裏に負荷をかけ続ける 肥満体型で足裏への負担が大きい ふくらはぎの筋肉やアキレス腱の柔軟性が低い 加齢により足底腱膜の機能が低下する 足裏のアーチが崩れている 対処法と合わせて1つずつ解説していきます。 関連記事:足底腱膜炎が重症化するとどうなる?主な症状・治療法を再生医療専門医が詳しく解説 痛みを我慢して足裏に負荷をかけ続ける 足底腱膜炎は、足裏にある足底腱膜に繰り返し負荷がかかり、微細な損傷や炎症が生じることで発症します。 初期の段階で痛みを感じても、我慢して長時間の立ち仕事やランニングなどを続けると、炎症はさらに悪化し、症状の重症化を招く場合も少なくありません。 痛みや足裏の疲労を感じた際には、無理をせずに休憩を取り、足指をゆっくり反らせるストレッチや、ふくらはぎを伸ばす運動などでこまめにケアをおこなうことが大切です。 肥満体型で足裏への負担が大きい 体重が増加すると、立っているときや歩くときに足裏にかかる圧力は、標準体型の人と比較して大きくなります。 私たちの足は、全体重を支える土台であり、とくに足底腱膜は歩行や走行時の衝撃を吸収する重要な役割を担う部分です。 しかし、体重が増えるとその分、足底腱膜にかかる負荷が増大し、炎症や微細な損傷を引き起こしやすくなります。そのため、適切な体重管理は、足底腱膜炎の悪化を防ぐ上で大切なポイントの1つです。 ふくらはぎの筋肉やアキレス腱の柔軟性が低い ふくらはぎの筋肉や、その延長線上にあるアキレス腱は、歩行やランニング時の衝撃を吸収し、足首の動きをスムーズにする重要な役割を担う部分です。 これらの部位の柔軟性が低下し硬くなってしまうと、足首の動きが制限されやすくなります。 その結果、歩く際に足底腱膜が過剰に引っ張られる状態になり、負担が増加し、足底腱膜炎の悪化につながります。日頃からストレッチをおこない、ふくらはぎやアキレス腱の柔軟性を保つよう心がけることが大切です。 加齢により足底腱膜の機能が低下する 年齢を重ねるとともに、徐々に足底腱膜の柔軟性が失われ、硬くなるため、衝撃を吸収するクッションとしての機能が低下します。 その結果、歩いたり走ったりする際に地面から受ける衝撃が足裏に直接的に伝わりやすくなり、足底腱膜への負担が増加します。 このような負担を和らげるためには、クッション性のあるインソールの使用や、足に合った靴を選ぶことが、1つの対処法として考えられるでしょう。 足裏のアーチが崩れている 足裏のアーチ構造は、歩行や運動の際に地面から受ける衝撃を吸収するバネのような役割を担う重要な部分です。 このアーチが低すぎる「扁平足」や、逆に高すぎる「ハイアーチ(凹足)」の状態では、衝撃吸収がうまく機能せず、足底腱膜に過度な負担がかかりやすくなります。 アーチの崩れが起こる要因は、生まれつきの骨格のほか、加齢や運動不足による足裏の筋力低下、長時間の立ち仕事、合わない靴の着用などが挙げられます。 重症化した足底腱膜炎の治し方 足底腱膜炎は症状が軽いほど治りやすく、重症化すると治療が困難になります。 重症化した足底腱膜炎の治し方には以下の治療法が挙げられます。 体外衝撃波治療 手術療法 再生医療 1つずつ詳しく解説していきます。 体外衝撃波治療 体外衝撃波治療は、患部に非連続性の音波である衝撃波を照射し、痛みの感覚を伝える神経に作用して痛みを和らげるとともに、組織の修復を促すことを目的とした治療法です。 衝撃波が患部の細胞を刺激するため、血流の改善や組織再生に関わる成長因子の産生を促すといった作用が期待されます。通常、1週間に1回程度の頻度で、数回(多くは3〜5回程度)の照射を1クールとしておこないます。 体外衝撃波治療は、他の保存療法(薬物療法、理学療法、装具療法など)を6カ月以上おこなっても症状の改善がみられない「難治性足底腱膜炎」に対してのみ、健康保険が適用されます。 手術療法 足底腱膜炎の治療は、まず安静、ストレッチ、インソール、物理療法といった保存療法がおこなわれます。 これらの保存療法を長期間(一般的には6カ月〜1年以上)続けても症状の改善がみられず、日常生活に大きな支障をきたしている場合に、手術療法が検討されることがあります。 ただし、足底腱膜炎で手術に至るケースは非常に稀です。手術方法としては、内視鏡を用いて足底腱膜の緊張をゆるめるために一部を切離する方法や、痛みの原因となっている骨棘を切除する方法などがあります。 再生医療 足底腱膜炎の治療において、再生医療は新しい選択肢として考えられます。これは、人間が本来持っている組織の治癒力を利用する治療法です。 代表的なものに「PRP(多血小板血漿)療法」と「幹細胞治療」があります。PRP療法は、患者様ご自身の血液を採取し、そこから血小板を多く含む成分(PRP)を抽出して患部に注射します。 一方、幹細胞治療は、患者様ご自身の脂肪などから幹細胞を採取し、培養して患部に移植する方法です。 これらの再生医療は、患者様ご自身の細胞や血液を用いるため、アレルギー反応や拒絶反応といった副作用のリスクが低いとされています。日帰りの治療が可能で、入院の必要はありません。 足底腱膜炎に対する再生医療について詳しく知りたい方に向けて、当院リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも承っておりますので、ぜひご活用ください。 足底腱膜炎が重症化する前に早期の治療を心がけよう 足底腱膜炎は、初期段階での適切な対処が重要です。放置すると、日常生活に大きな支障をきたす場合も少なくありません。 痛みを我慢して足裏に負荷をかけ続けることや、肥満、ふくらはぎやアキレス腱の柔軟性低下、加齢による足底腱膜の機能低下、足裏のアーチの崩れなどが原因で、症状は徐々に進行します。 重症化すると、安静時の痛みや踵骨棘が現れ、痛みが6カ月以上続くような状態は「難治性足底腱膜炎」と呼ばれます。 そうなると、治療期間が長引くだけでなく、体外衝撃波治療や手術、再生医療といった、より専門的な治療が必要です。 足底腱膜炎の症状に気づいたら、できるだけ早い段階で医療機関を受診し、早期から適切な治療を受けましょう。自己判断で無理をせず、安静やストレッチなどのケアを併用すると重症化を予防できます。
2022.03.18 -
- 肝疾患
- 内科疾患
「脂肪肝ってどんな症状が出る?」 「放っておくとどんなリスクがあるのか知りたい」 このような不安を抱えている方は多いでしょう。 脂肪肝は、肝臓に脂肪がたまる状態で、初期のうちはほとんど症状が出ないため、自覚がないまま進行してしまう場合があります。 しかし、放置すると肝炎や肝硬変、さらには肝臓がんへと進行するリスクもある病気です。 本記事では、脂肪肝の主な症状や進行によって現れるサイン、原因を解説します。検査の種類や改善の方法も紹介するので、脂肪肝が気になる方や自分の症状と照らし合わせて確認したい方は、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 脂肪肝について気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 脂肪肝とは 脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪などの脂質が異常にたまった状態を指します。 アルコールや偏った食事、運動不足などの生活習慣の乱れが主な原因です。 脂肪肝は大きく以下の2つに分類されます。 アルコール性脂肪肝:過度の飲酒が原因 非アルコール性脂肪肝(NAFLD):飲酒以外の要因が原因 さらに、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、以下の2つに分類されます。 非アルコール性脂肪肝(NAFL):症状が進行しづらい 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH):肝炎に進行しやすい とくに、NASHは放置すると肝硬変や肝がんに進展するケースもあります。 脂肪肝の分類を表にまとめると、以下のとおりです。 脂肪肝 アルコール性:過度の飲酒が原因 非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD):飲酒が原因ではない 非アルコール性脂肪肝 (NAFL):症状が進行しづらい 非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH):肝炎に進行しやすい また、脂肪肝は放置すると約1~2割の頻度で肝炎・肝硬変・肝細胞がんへと進行し、重症化する恐れがあります。 早期に生活習慣を見直し予防や改善に取り組むことが大切です。 脂肪肝の主な症状 脂肪肝の主な症状を以下の2つのケースに分けて解説します。 初期症状の場合 状態が悪化した場合 それぞれの段階での症状を詳しく見ていきましょう。 初期症状の場合 脂肪肝の初期症状は、多くのケースで症状がありません。 人間ドックや健康診断の際に行った検査結果で、初めて異常を知るケースも多くあります。 そのため、自覚症状のないまま日常生活を送っている人も多くいます。 状態が悪化した場合 脂肪肝の状態が悪化すると、以下のような症状が現れます。 肩がこる 頭がボーッとする 疲れやすい これらの症状は日常生活に大きな影響を与えづらく、気づくのが遅くなりがちです。しかし、脂肪肝の進行を示すサインとして見逃さないことが大切です。 また、脂肪肝がさらに悪化すると肝炎や肝硬変に進行するリスクも高まります。 肝硬変では、手足のむくみや腹水といった症状が見られ、生活に支障が出てしまうケースも少なくありません。 脂肪肝は進行すると重篤で致命的な症状が現れる可能性がある疾患です。自覚症状がなくても指摘を受けた場合は、放置せず早めに医療機関を受診しましょう。 関連記事:脂肪肝と言われたらどうすればいい?生活習慣を改善する方法も紹介 | 大阪 リペアセルクリニック 脂肪肝の原因 脂肪肝の原因には複数の要因が関与しています。正しく理解することで、効果的な予防策や改善方法を選択できます。 脂肪肝の主な原因は以下のとおりです。 肥満 過度な食事摂取 アルコール 糖尿病 各原因がどのように脂肪肝を引き起こすのか、詳しく解説していきます。 肥満 脂肪肝を引き起こす最も多い原因は肥満です。(文献1)肥満により脂肪が肝臓に運ばれる量が増え、中性脂肪として肝臓に蓄積されやすくなるためです。 さらに、肥満になり体重が増えるとインスリンの働きが低下し、脂肪の代謝が正常に機能しなくなります。 体重を適正に保つことは、脂肪肝の予防と改善に直結します。 過度な食事摂取 摂取カロリーが消費カロリーを上回る過度な食事摂取は、脂肪肝の原因となります。余剰なエネルギーが中性脂肪として肝臓に蓄積され、肝細胞の機能を低下させるためです。 たとえば、揚げ物や甘い物、スナック菓子などを頻繁に摂取する行動が該当します。また、早食いや不規則な食事時間も血糖値の急激な上昇を招き、脂肪蓄積を促進させます。 腹八分目を心がけ、栄養バランスを意識した食事に切り替えましょう。 アルコール アルコールは肝臓で分解される際に中性脂肪の合成を促し、脂肪の蓄積を引き起こします。飲酒量が多いほど肝臓への負担は増え、アルコール性脂肪肝へ進行しやすくなります。 とくに、ビールや甘いカクテルは糖質も多く、エネルギー過多を招きやすいです。 毎日飲む習慣がある場合は、肝臓の回復時間が確保できず炎症が長引く可能性があります。休肝日を設け、飲酒量を適正に保つことで脂肪肝予防につながります。 糖尿病 糖尿病により血糖値の高い状態が続くとインスリンの働きが弱まり、糖から脂肪への変換が活発になります。 その結果、中性脂肪が肝臓にたまりやすくなり、脂肪肝を発症しやすくなります。とくに、2型糖尿病では内臓脂肪の蓄積が同時に進み、肝臓への負担がさらに増します。 糖尿病の適切な管理が脂肪肝の予防と改善に直結するため、かかりつけの病院などで定期的な検査を心がけましょう。 脂肪肝の検査方法 血液検査で異常が認められた場合、肝臓の状態をより詳細に精査するため以下の画像検査を行います。 腹部超音波検査(エコー) CT検査 MRI検査 その他に、肝細胞を採取する肝生検という処置を行い、細胞の特性を顕微鏡で詳しく調査することによって病気の進展度や悪性所見の有無などを調べる検査もあります。 脂肪肝の改善方法 脂肪肝は、原因や発症機序によって治療方針が異なります。生活で注意すべき視点も柔軟に変化させる必要があります。 主な改善方法は以下のとおりです。 アルコールの摂取量を減らす 運動して減量する 栄養バランスのとれた食生活を送る 糖尿病の治療を進める それぞれの方法について詳しく解説します。 脂肪肝の改善方法について、詳しく知りたい方は以下のページもあわせてご覧ください。また、メール相談やオンラインカウンセリングも承っておりますのでご利用ください。 【関連記事】 脂肪肝に効果的な対策方法とは?診断される数値の目安も解説 | 大阪 リペアセルクリニック 脂肪肝を早く治すには?今すぐ始めたい改善方法を解説 アルコールの摂取量を減らす アルコールが原因で脂肪肝になった場合は、アルコールの摂取量を減らすことで脂肪の分解が進みやすくなります。 とくに、休肝日を設けると肝細胞の修復が促され効果的です。ビールや甘いカクテルは糖質が多く、控えることでカロリー過多の防止にもつながります。 飲む量や頻度を具体的に減らす目標を立て、無理なく継続する工夫をしましょう。 運動して減量する 定期的な運動はエネルギー消費を高め、肝臓に蓄積した脂肪を減らします。とくに、有酸素運動は中性脂肪の燃焼を促し、脂肪肝の改善に有効です。 ウォーキングやジョギングを1日30分、週3~4回程度続けると効果が現れやすくなります。(文献2)さらに、筋力トレーニングを組み合わせると基礎代謝が上がり、脂肪がたまりにくい体質に変わります。 日常生活でも階段利用やこまめな歩行を意識して、無理なく体重を減らしましょう。 栄養バランスのとれた食生活を送る 栄養バランスを整えることで、肝臓の負担を減らし脂肪の蓄積を防げます。 バランスの良い食事とは具体的に以下のとおりです。 エネルギー源となる主食(ごはん・パン・麺類) 体をつくるたんぱく質を含む主菜(魚・肉・卵・大豆製品) 体調を整える副菜(野菜・きのこ・海藻) さらに、乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズ)や果物(みかん・りんご・バナナなど)を組み合わせることで、ビタミンやミネラル、カルシウムも補えます。 ゆっくり良く噛んで食べたり、夜遅くの食事は控えたりして、食事の仕方にも配慮して食生活を改善していきましょう。 糖尿病の治療を進める 糖尿病を適切に治療すると脂肪肝を改善できます。 治療を進めることで糖尿病によるインスリンの低下を抑えられ、肝臓への脂肪蓄積を防げるからです。 糖尿病患者の方は、医師の指導に沿って脂肪肝の改善と並行して治療を続けましょう。 脂肪肝の症状が出る前に生活習慣を見直そう 脂肪肝とはどのような病気なのか、原因や症状、検査や治療、改善のポイントについて解説しました。脂肪肝は、肝臓に中性脂肪や脂質などの成分が蓄積する状態でバランスが偏った食生活や運動不足が原因で発症します。 健康診断や人間ドックで肝機能の数値で異常が発見されることが多く、初期の段階ではほとんど自覚症状が無いのが特徴的です。しかし、病状が進行すると倦怠感、腹部膨満感、食欲不振などの有意症状が出現する場合もあります。 脂肪肝に対する基本的な治療策としては、主に生活習慣の改善、食事療法や運動療法になります。 改善を目指す上で大切なのは、定期的に主治医やかかりつけ医と相談しながら肝機能の検査を行い、自分の状態を正しく把握していくことです。 また、生活習慣の改善とあわせて行う治療として、再生医療という選択肢もあります。 脂肪肝に対する再生医療について、以下の記事では実際の症例を紹介しています。ぜひ一度ご覧ください。 患者様の状態によって、再生医療の実施可否、治療計画、想定される経過、リスクなどが異なります。 詳細については、当院リペアセルクリニックまでご相談ください。 脂肪肝の症状に関するよくある質問 脂肪肝にいい食べ物はありますか? 脂肪肝の改善や予防には、良質なたんぱく質と食物繊維を多く含む食べ物が有効です。たんぱく質は不足しやすい栄養素のため、以下のたんぱく質が豊富な食材を積極的に取り入れましょう。 肉 魚 卵 大豆製品 さらに、食物繊維には脂肪の蓄積を抑える働きが期待されます。 野菜やきのこ類、海藻などの食物繊維を豊富に含む食品を日々の食事に意識して加えていきます。 脂肪肝になるとお腹は出ますか? 脂肪肝とお腹の出方は深く関係していますが、すべての脂肪肝患者が当てはまるわけではありません。非アルコール性脂肪肝の主な原因は、食べ過ぎや運動不足による肥満です。(文献3) 余分なエネルギーが脂肪として肝臓や内臓にたまり、その結果お腹まわりが大きくなっていきます。 一方、アルコール性脂肪肝は痩せ型の人にも多く見られます。 外見が標準体型でも肝臓に脂肪が蓄積している可能性もあるため、お腹が出ていないから脂肪肝ではないと判断しないようにしましょう。 脂肪肝の症状でおならがよくでることはありますか? 脂肪肝自体がおならの増加を直接引き起こすことはありません。 しかし、脂肪肝の原因となる食生活が腸内環境を乱し、ガスがたまりやすくなる場合があります。 とくに、脂質やタンパク質の消化が不十分な場合、腸内で悪玉菌の増殖を促し、おならの回数やにおいを強めます。腸内環境を整える食事を意識し、脂肪肝と併せて改善を目指しましょう。 参考文献 (文献1) 脂肪肝|全国健康保険協会 (文献2) 運動療法はNAFLD/NASHに有効か?|日本消化器学会・日本肝臓学会NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改定第2板) (文献3) 「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)の診療ガイドライン2020年版」|日本肝臓学会
2022.03.17 -
- 手部
- 手部、その他疾患
TFCCとは「三角線維軟骨複合体(Triangular Fibrocartilage Complex)」の略です。 手首の小指側にある関節の病気で、転倒時に手をついたり、ひねったりして引き起こされる障害です。 そもそも「三角線維軟骨複合体」とは、手首の小指側にあるぐりぐりした関節部に存在している軟部組織を指しています。 中には転倒した影響により手首をひねって痛いと感じている人もいるでしょう。 今回はTFCC損傷とはどのような病気なのか、その原因、症状、治療方法などに関する情報を中心に詳しく解説していきます。 そもそもTFCC損傷とは? TFCC損傷とは、橈骨と尺骨の遠位端同士および尺側手根靭帯とを接合している靭帯が損傷している症状を指します。 橈骨と尺骨、それぞれの違いは以下の通りです。 橈骨(とうこつ) ひじから手首まで2本ある前腕骨のうち、前腕の親指側の骨を指す 尺骨(しゃっこつ) ひじから手首まで2本ある前腕骨のうち、小指側にあり、橈骨と平行している骨を指す 解剖学的に前腕部の橈骨と尺骨間には複数の靭帯があり、これらの骨を支持しています。 前腕の手首側の遠位部に位置するTFCCが損傷してダメージを受けると、手関節全体において機能障害を引き起こす点が懸念されています。 中には転倒して手首をひねると痛いと感じる人もいるでしょう。 以下の記事ではTFCC損傷が起きる場所や痛みの症例を解説しているので、あわせてご覧ください。 尺骨茎状突起が出てる人によくある発症の原因 TFCC損傷の1つである「尺骨茎状突起」が出てる人によくある発症の原因は、主に交通事故や自転車走行中の転倒です。 手関節部に対する強い衝撃や手首における過剰な負荷の繰り返し動作によって引き起こされるケースも、よくある発症の原因です。 交通事故で発症する以外にも、以下のような日常生活でも起こる可能性があります。 スポーツ テニス、バドミントン、ゴルフ、野球など(道具を用いて強振) 職業 重い荷物の持ち運び、料理(重いフライパン) 加齢 手関節の変性 その他 解剖学的な異常 他にも、外傷を認めず尺骨が橈骨に対して長くなる解剖学的な異常(尺骨突き上げ症候群)によっても引き起こされるケースもあります。 TFCC損傷の症状は主に以下のような症例が挙げられます。 ・手関節尺側(小指側)の動作時痛 ・前腕をひねる動作(回内外)の可動域制限手関節部のなかでも「尺骨茎状突起」と呼ばれる部位に局所的に疼痛を認めるケースがあり、TFCC損傷における症状の特徴の1つです。 患部の靭帯が損傷し、関節面の不安定性に伴って軟骨同士の適合性が悪化します。 「disc」と呼ばれる円盤状の軟骨組織が断裂した結果、痛みを伴うのです。 ・タオルを絞る ・運転時に車のカギを回す ・ドアノブを回す など 手首を捻るような動作をした際に手関節部のとくに尺骨側(小指側)において疼痛症状が顕著になって出現します。 物を持つ際に手関節部に強い痛みを感じて力が入らないケースもあるので、掌を上側に向けると少し軽減すると知られています。 転倒した影響により手首をひねると痛い人や手首に痺れを感じている人は、以下の記事で治療法を詳しくまとめました。 仕事復帰までの期間も含め、気になる人はぜひご覧ください。 なお、尺骨茎状突起が出てる人は他にも多くの骨折症状があります。 レントゲン撮影が一般的な検査方法なので、違和感がある人は医療機関でも受診をおすすめします。 TFCC損傷の診断方法と治療方法 尺骨茎状突起が出てる人を含め、転倒して手首をひねると痛いと感じる人に向けて、TFCC損傷の診断方法と治療方法を解説します。 転倒して手首をひねった人や日常生活を送る上で違和感がある人は、ぜひ参考にしてください。 TFCC損傷の診断方法 尺骨茎状突起が出てる人を含めTFCC損傷が起きている場合、レントゲン撮影による検査が大半です。 ・肘頭骨折 ・尺骨骨幹部骨折 など 上記のような骨折が発症していて尺骨茎状突起が出てる人であれば、診断自体は容易です。 しかし、尺骨茎状突起が出てる人の症状は、該当部位が小さい可能性もあるので、レントゲン撮影のみでは見逃されてしまう恐れがあります。 TFCC損傷の診断方法はレントゲン撮影が大半ですが、MRI検査もおすすめの選択肢です。 当院ではメール相談だけでなく、オンラインカウンセリングも実施しているので「どの検査にすべきか話し合いたい」人はぜひ、気軽にご連絡ください。 治療方法①初期段階の場合 TFCC損傷を患った場合の初期的な治療としては、以下の方法が用いられます。 ・運動を中止する ・サポーターやギブスによって患部を固定し局所の安静を図る ・消炎鎮痛剤などの服薬治療をする など 装具を用いた治療方法に関しては軟骨の変性を悪化させないため、あるいは橈骨尺骨間の可動性を正常に復帰させるためにもおすすめです。 治療方法②疼痛症状がひどい場合 疼痛症状がひどいケースでは、局所麻酔剤を含有して炎症を抑制する効果を狙ってステロイド注射を実施します。 数カ月単位で症状が改善するのを期待する治療方法です。 数カ月間に渡って治療策が奏効しない際には、手術加療が検討されます。 最近では、TFCC損傷している部位が深い場所にあって組織自体も小さいために切開手術よりも術野がよく確保できるようになっています。 関節鏡や内視鏡を用いて病変部位の縫合処置や部分切除術なども頻繁に実施されるようになってきているのです。 まとめ・TFCC損傷の症状が出たらすぐに診断を! 今回はTFCC損傷とはどのような病気なのか、その原因、症状、治療方法などを詳しく解説しました。 TFCC損傷とは、遠位橈尺関節を安定化させている支持組織である三角線維軟骨複合体が転倒して発症するケースが大半です。 手をついたり、ひねったりするなどの外傷やスポーツや作業で繰り返される過度の負担などでストレスがかかり、手関節部に疼痛症状が出現する疾患です。 尺側手関節痛の原因疾患は多岐に渡ります。 万が一普段の日常生活で手首の小指側が痛みを覚え、安静にしてもなかなか症状が改善しない人は最寄りの手外科専門医の診察を受けましょう。 ▼ TFCC損傷等のスポーツ外傷(筋・腱・靭帯損傷)に対する再生医療 当院の再生医療は、スポーツ選手のパフォーマンス(QOL)を維持する治療を推進しています
2022.03.17 -
- 腱板損傷・断裂
- インピンジメント症候群
- 肩関節、その他疾患
- 肩関節
「ただの肩こりだと思っていたけど、なかなか痛みが治まらない…」 「何かの病気かもしれない…」 そんな肩の痛みに不安を感じていませんか? 肩の痛みは肩こりや筋肉疲労・加齢によるものが多いですが、病気が関係している場合もあります。 また、肩の痛み(肩こり)はがんの初期症状として起こるケースもあり、痛みが数週間続く場合や、夜間に痛みが強くなる場合は注意が必要です。 本記事では、肩の痛みと病気の関係性、がんによる肩の痛みの特徴について解説し、注意すべき症状のポイントも紹介します。 肩の痛みで悩んでいる方や、病院に行くべきか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。 肩の痛みの原因として疑われる病気 肩の痛みは、多くの場合「単なる肩こり」として片付けられがちですが、実は深刻な病気が隠れている可能性もあります。 とくに、痛みが長引く、夜間痛がある、腕の動きに制限が出る場合は注意が必要です。 広く知られている代表的な病気として、以下の3つがあります。 肩関節周囲炎 肩峰下インピンジメント症候群 腱板断裂 次に、それぞれの病気の原因・検査・治療について解説いたします。 肩関節周囲炎 肩関節周囲炎は、一般的に「四十肩」や「五十肩」とも呼ばれ、肩の関節や周囲の組織に炎症が起こることで痛みや可動域の制限が生じる病気です。 とくに、40〜50代以降に多く見られ、肩を動かすたびに痛みが走ることが特徴です。 肩関節周囲炎の原因 肩関節周囲炎の原因は明確には分かっていませんが、加齢に伴う組織の変性が関与していると考えられています。 肩の腱や関節包(関節を包む膜)が炎症を起こし、組織が硬くなってしまうことで、痛みと動きの制限が生じます。 肩関節周囲炎の多くは以下のような要因が関係しています。 加齢による組織の変化:肩の腱や関節包が硬くなりやすくなる 過度な肩の使用:スポーツや仕事などで肩を酷使することが影響 長期間の不動:ケガや手術後などで肩を動かさない期間があると発症しやすい 糖尿病などの基礎疾患:糖尿病の人は発症リスクが高い 肩関節周囲炎の検査 肩関節周囲炎の診断は、問診と身体診察を中心に行います。 医師が肩の動きをチェックし、特定の動作で痛みが出るかどうかを確認し、以下の検査が行われることがあります。 X線(レントゲン)検査:関節の変形や石灰沈着の有無を確認 超音波検査:腱や靭帯の炎症や損傷を評価 MRI検査:肩腱板の損傷や炎症の程度を詳しく調べる 肩関節周囲炎の治療 肩関節周囲炎の治療は、症状の程度に応じて行われます。 通常、次のような保存療法(手術をしない治療)が中心となります。 痛みのコントロール 消炎鎮痛剤(NSAIDs)の服用 ステロイド注射(炎症が強い場合に有効) リハビリ・運動療法 ストレッチ:肩の可動域を広げる運動 温熱療法:温めることで血流を改善し、筋肉の緊張を和らげる 理学療法:専門家の指導のもとで行うリハビリ 肩峰下インピンジメント症候群 肩峰下インピンジメント症候群は、肩を動かした際に肩の腱板(けんばん)や滑液包(かつえきほう)が肩峰(けんぽう)と衝突(インピンジメント)し、炎症や痛みを引き起こす疾患です。 とくに、腕を上げる動作で痛みが強くなり、スポーツや日常生活に支障をきたすことがあります。 肩峰下インピンジメント症候群の原因 肩峰下インピンジメント症候群の主な原因は、肩関節の構造や動きの異常により、腱板や滑液包が繰り返し圧迫されることです。 具体的には、以下の要因が関係しています。 過度な肩の使用:野球やテニス、水泳など、肩を頻繁に使うスポーツによる負担 肩関節の不安定性:筋力低下や不適切な肩の動作が原因で、腱板への負担が増える 加齢による変化:40歳以上で腱板が弱くなりやすく、衝突が起こりやすい 骨の形状異常:肩峰の形が先天的に鋭利な形をしている場合、腱板が圧迫されやすい 肩峰下インピンジメント症候群の検査 肩峰下インピンジメント症候群の診断では、医師による問診と身体診察が重要で、以下のような検査が行われます。 Neer(ニア)テスト・Hawkins(ホーキンス)テスト 腕を特定の角度に持ち上げた際に痛みが出るかどうかを確認するテスト X線(レントゲン)検査 肩峰の形状や骨の異常を確認し、肩関節の構造的な問題をチェック 超音波検査・MRI検査 腱板や滑液包の炎症・損傷の有無をより詳しく評価 肩峰下インピンジメント症候群の治療 治療は、保存療法(手術をしない方法)が基本となりますが、重症例では手術が検討されることもあります。 ◆保存療法(軽症〜中等症の場合) 安静と負荷の軽減:痛みが強い場合は、過度な動作を控える 消炎鎮痛剤(NSAIDs):痛みと炎症を抑える ストレッチ・筋力強化:肩甲骨周りや腱板の筋肉を鍛えるリハビリ ステロイド注射:炎症が強い場合、一時的に痛みを和らげるために使用 ◆手術療法(重症例の場合) 保存療法で改善しない場合、関節鏡を用いた肩峰下除圧術(肩峰の一部を削る手術)などが検討される 腱板断裂 腱板断裂(けんばんだんれつ)は、肩関節を支える筋肉の腱(腱板)が部分的または完全に切れてしまう疾患です。 とくに中高年に多く見られ、肩の痛みや腕の上げづらさが特徴です。 放置すると肩の機能が低下し、日常生活に支障をきたすことがあります。 腱板断裂の原因 腱板断裂の原因は、大きく分けて加齢による変性と外傷の2つがあります。 ◆加齢による変性(変性断裂) 加齢に伴い腱板の組織が徐々に摩耗し、断裂しやすくなることです。 40歳以降になると、腱板への血流が低下することで修復能力が衰え、自然に断裂することもあります。 また、スポーツや仕事で肩を繰り返し使うことによる負担の蓄積も、変性断裂のリスクを高める要因となります。 ◆外傷(外傷性断裂) 転倒して肩を強く打ったり、腕を強く引っ張られたりすることで腱板が急激に損傷し、断裂が発生することです。 とくに、重い荷物を持ち上げる際に過度な負荷がかかると、腱板が損傷しやすくなります。 さらに、野球・テニス・ラグビーなどのスポーツや、交通事故による強い衝撃も外傷性断裂の原因として挙げられます。 腱板断裂の検査 腱板断裂は、問診と身体診察に加え、画像検査によって診断されます。 ◆身体診察 ドロップアームテスト:腕を持ち上げた状態からゆっくり下げる際にコントロールできず落ちてしまうか確認 ペインフルアークサイン:腕を横に上げる際に一定の角度で痛みが出るかを確認 ◆画像検査 X線(レントゲン):骨の変形や肩峰下の狭小化を確認 超音波検査:リアルタイムで腱板の動きを評価し、小さな断裂も発見しやすい MRI検査:腱板の損傷の程度(部分断裂か完全断裂か)を詳細に診断 腱板断裂の治療 腱板断裂の治療は、断裂の程度や患者の年齢・活動レベルによって異なります。 軽度の腱板断裂や、高齢者で手術を避けたい場合には、保存療法が選択されますが、重症の場合は手術療法が検討されます。 ◆保存療法(軽度の部分断裂や高齢者の場合) 安静・負担の軽減 消炎鎮痛剤(NSAIDs) リハビリテーション ステロイド注射 ◆手術療法(完全断裂や保存療法で改善しない場合) 関節鏡視下腱板修復術 腱移植術 人工関節置換術 石灰沈着性腱板炎 石灰沈着性腱板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)は、肩の腱板にリン酸カルシウム(石灰)が沈着し、炎症や強い痛みを引き起こす疾患です。 40〜50代の女性に多く見られ、夜間や突然の激しい痛みが特徴です。 石灰沈着性腱板炎の原因 石灰沈着性腱板炎の正確な原因は明確には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。 腱板の血流低下:加齢や血流の減少により、腱板の一部が石灰化しやすくなる 過剰な負荷:肩を頻繁に使う動作が多い人は、腱板に負担がかかり石灰沈着のリスクが上がる 体質的要因:特定の人に起こりやすく、遺伝的な影響も示唆されている 沈着した石灰が周囲の組織を刺激し、炎症を引き起こすことで強い痛みが発生します。 石灰沈着性腱板炎の検査 診断には問診と身体診察のほか、画像検査が用いられます。 X線(レントゲン)検査 超音波検査 MRI検査 石灰沈着性腱板炎の治療 石灰沈着性腱板炎の治療は、症状の程度に応じて保存療法と手術療法が選択されます。 ◆保存療法(軽症〜中等症の場合) 安静・負担軽減 消炎鎮痛剤(NSAIDs) ステロイド注射 リハビリテーション ◆手術療法(重症例や改善が見られない場合) 超音波ガイド下洗浄療法 関節鏡視下手術 翼状肩甲骨(翼状肩甲) 翼状肩甲骨(よくじょうけんこうこつ)は、肩甲骨が正常な位置に固定されず、背中から浮き上がる状態を指します。 肩甲骨が翼のように突出することからこの名前がついています。 肩や腕の動かしにくさ、痛み、筋力低下などの症状を伴うことがあります。 翼状肩甲骨(翼状肩甲)の原因 翼状肩甲骨の原因は、主に神経の障害と筋肉の異常に分けられます。 ◆神経の障害 長胸神経麻痺(前鋸筋の機能低下) 副神経麻痺(僧帽筋の機能低下) 肩甲背神経障害(菱形筋の機能低下) ◆筋肉の異常 筋萎縮や筋力低下 外傷や手術後の影響 翼状肩甲骨(翼状肩甲)の検査 翼状肩甲骨は、視診・触診と機能検査を中心に診断されます。 ◆視診・触診 肩甲骨が背中から浮き上がっているかを観察 肩を動かしたときの肩甲骨の動きを確認 ◆機能検査 壁押しテスト(Wall Push-up Test) 壁に向かって両手をつき、腕立て伏せのように押したときに肩甲骨が異常に突出するかを確認 筋力テスト:前鋸筋・僧帽筋・菱形筋などの機能を評価 ◆神経検査 電気生理学的検査(筋電図)で神経の損傷の有無を調べる MRIや超音波検査を用いて神経や筋肉の状態を確認することもある 翼状肩甲骨(翼状肩甲)の治療 翼状肩甲骨の治療は、保存療法と手術療法に分けられます。 ◆保存療法(軽症〜中等症の場合) リハビリテーション 装具療法 理学療法(電気刺激療法) ◆手術療法(重症例や改善が見られない場合) 神経移行術 筋移植術 肩甲骨固定術 反復性肩関節脱臼 反復性肩関節脱臼(はんぷくせいけんかんせつだっきゅう)は、一度肩関節が脱臼した後に、軽い衝撃や日常動作でも繰り返し脱臼してしまう状態を指します。 とくに若年層のスポーツ選手に多く見られ、肩の不安定感や痛みを伴うことが特徴です。 反復性肩関節脱臼の原因 反復性肩関節脱臼の主な原因は、外傷による関節の損傷と関節の構造的な問題の2つに分けられます。 ◆外傷による関節の損傷 初回の脱臼時に、肩関節の関節唇(かんせつしん)という軟部組織が損傷し、関節が不安定になる(バンカート損傷) 腕を強く後方に引っ張られるような動作で、関節の前方部分が緩み、脱臼しやすくなる スポーツ(野球・バスケットボール・柔道など)や転倒による外傷が原因になることが多い ◆関節の構造的な問題 関節の緩さ(関節弛緩性):生まれつき関節が柔らかい人は、靭帯や関節包が伸びやすく、脱臼しやすい 筋力不足:肩周りの筋力が弱いと、関節の安定性が低下し脱臼しやすくなる 骨の形状異常:関節窩(かんせつか)という肩甲骨側の受け皿が小さい場合、関節がはまりにくく脱臼を繰り返す 反復性肩関節脱臼の検査 反復性肩関節脱臼の診断には、問診・身体診察と画像検査が行われます。 ◆問診・身体診察 過去の脱臼歴、発生状況を確認 肩の不安定感や可動域をチェック 不安試験(Apprehension Test) ◆画像検査 X線(レントゲン)検査 MRI検査 CT検査 反復性肩関節脱臼の治療 反復性肩関節脱臼の治療は、保存療法と手術療法に分けられます。 ◆保存療法(軽症例・手術を避けたい場合) リハビリテーション 装具療法 生活習慣の改善 ◆手術療法(重症例・保存療法で改善しない場合) バンカート修復術 骨移植術(ラタジェ手術) 関節包縫縮術 肩の痛みとがんの関係性 肩の痛みは通常、肩こりや筋肉疲労、関節の疾患などによって引き起こされますが、まれにがんが原因となる場合もあります。 通常の治療で改善しない長期間続く痛みは注意が必要です。 がんによる肩の痛みの特徴 がんが原因となる肩の痛みにはいくつかの特徴があります。 まず、安静時でも痛みが続くことがあり、通常の肩こりは動かすと痛みが出るのに対し、がんによる痛みは夜間や寝ている間に強くなることがあります。 また、痛みが徐々に強くなり、鎮痛剤が効きにくくなることや、肩だけでなく首、背中、腕にも違和感を感じる場合があります。 しびれや筋力低下を伴うこともあり、これらの症状が現れる場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。 肩の痛みを改善・予防するセルフケア方法 肩の痛みは日常的な動作や姿勢から来ることが多いため、普段からのセルフケアがとても重要です。 本章では、肩の痛みを改善したり予防したりするためのストレッチと入浴を取り入れた方法を紹介します。 ストレッチ 肩の筋肉を柔軟に保つことは、肩の痛みを予防し、すでに痛みを感じている場合にも症状を和らげる効果があります。 肩周りの筋肉を適切に伸ばすストレッチを行うことで、血流が改善され、筋肉の緊張をほぐすことができます。 肩回し運動 肩を前後に回すことで、肩の筋肉をほぐすことができます。 両肩を耳に向かって持ち上げ、肩甲骨を回すようにして前後にゆっくり回します。 10回程度前回しと後回しを繰り返します。 肩甲骨ストレッチ 肩甲骨周りの筋肉をストレッチすることで、肩の可動域を改善し、痛みの軽減に繋がります。 立って、または座って両手を肩に置き、肘を大きく円を描くように回します。 回す方向を変えながら10回程度行い、肩甲骨を意識して動かすようにしましょう。 肩と腕の伸ばしストレッチ 肩の痛みがひどくなる前に、肩と腕を伸ばすストレッチを行うことで、予防効果が高まります。 片手をまっすぐ前に伸ばし、反対の手でその手首を引き寄せます。 肩を意識して10秒間伸ばし、その後反対側も行います。 入浴 入浴は肩の痛みを改善するために非常に効果的な方法です。 お湯の温度や入浴の方法を工夫することで、よりリラックスでき、肩の痛みを緩和できます。 温かいお湯に浸かることで血流が促進され、筋肉の緊張がほぐれます。 温浴によるリラックス 肩の痛みがある場合は、ぬるめのお湯(38〜40℃程度)にゆっくり浸かると、筋肉がリラックスし、肩こりの改善に効果があります。 お湯に浸かることで、血行が促進され、痛みの原因となる筋肉の緊張が和らぎます。 半身浴 肩だけでなく、全身を温めるために、半身浴を行うのも効果的です。お湯が肩にまで浸かるようにし、肩を温めることができます。 さらに、半身浴は長時間お湯に浸かることができ、肩だけでなく全身の疲労を軽減することにも繋がります。 入浴後のストレッチ 入浴後は筋肉が柔らかくなっているため、さらにストレッチを行うことで効果が高まります。 肩甲骨や腕を伸ばすストレッチを行うことで、筋肉がさらにほぐれ、肩の痛みの予防や改善に繋がります。 肩の痛みで病院を受診すべきタイミングは? 肩の痛みが日常的に発生しても、多くは軽度の筋肉疲労や肩こりが原因です。 しかし、肩の痛みが3週間以上続く、安静時や夜間に痛みが悪化する場合、またはしびれや筋力低下、体重減少、発熱など他の症状が伴う場合は、重大な病気が隠れている可能性があります。 とくに、肩の痛みが首や背中、腕に広がる場合や、激しい外傷を受けた後は早期受診が必要です。 また、40歳以上の方や、がんや心臓病の既往歴がある場合、肩の痛みが他の疾患のサインとなることもあります。 肩の痛みを軽視せず、適切な診断を受けることで、早期治療が可能となり、症状の悪化を防ぐことができます。 再生医療|肩の痛みに対する治療選択肢 再生医療は肩の痛みに対する新しい治療法として注目されています。 再生医療では、幹細胞を用いて自然修復力を高めます。 PRP療法や幹細胞治療など、患者様自身の血液や幹細胞を用いて肩関節の炎症や軟部組織の損傷にアプローチする治療法です。 再生医療は、手術・入院を必要としないため、治療期間が短い傾向があります。 肩の痛みでお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 まとめ|肩の痛みから考えられる病気を理解して適切な治療や検査を受けよう 今回は肩の痛みで疑うべき病気とは何なのか、それらの病気に対する検査および治療方法などについて詳しく解説してきました。 「肩が痛い」、「肩が上がらない」などの自覚症状があり、日常生活においてお困りの方は、専門の医療機関などで早期的に診察や検査を受けましょう。 また、これら整形外科的な治療以外にも、肩の痛みに対しては「再生医療」という新しい治療法も選択肢となります。 再生医療については、以下の動画もあわせてご覧ください。 https://youtu.be/bKupVfsXpHM?si=YQsu_VT2ZGqSNB2v 今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。
2022.03.16 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
膝に痛みを感じながらも仕事が忙しい・病院に行くのが手間といった理由で、そのまま様子を見ている方も多いのではないでしょうか。 しかし、膝の痛みが続く場合や階段の昇り降りがつらい・腫れて熱を持っているといった症状があるときは、重大な疾患が隠れている可能性もあるため注意が必要です。 以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 こうした症状を放置すると、変形性膝関節症・関節リウマチ・半月板損傷などが進行し、歩行障害や手術が必要になるリスクも高まります。 一方で、早期に正しい診断と治療を受けることで、負担の少ない方法で回復が目指せるケースも少なくありません。 本記事では、膝が痛いときに病院へ行くべきかの判断基準や、考えられる代表的な膝疾患についてわかりやすく解説しています。 また、膝の痛みについて「病院に行くほどではないけれど、この膝の痛み、気になる」「似た症例があるなら知っておきたい」という方は、当院(リペアセルクリニック)の公式LINEをご活用ください。 再生医療を中心に、膝の痛みや症状別のセルフチェック情報、症例の紹介などをLINE限定で配信しています。 \公式LINEでは再生医療に関する情報や症例を公開中!/ 膝が痛いときに病院に行くべき理由 膝の痛みが数日経っても治まらない場合は、病院の受診を検討しましょう。症状の改善には、早期に痛みの原因を特定し、適切な治療をすることが大切です。 痛みの原因として考えられる膝軟骨のすり減りや慢性的な炎症は、自然に元の状態へ戻るのは難しいと言われています。 膝の痛みは症状や状態によって、リハビリや固定具を活用した保存治療などの専門的な治療が必要です。 膝の痛い状態で病院に行かずに放置するリスク 膝の痛みを放置すれば、事態が深刻化するケースも少なくありません。 たとえば、軽度の捻挫や炎症が、適切な治療を受けないまま慢性化することで、日常生活に支障をきたす可能性があります。 特に変形性膝関節症や半月板損傷などの疾患では、早期治療の機会を逃すことで、症状が重症化する恐れがあります。その結果、保存療法では改善が難しくなり、手術が必要となるケースも少なくありません。 また、痛みをかばうことで、反対側の膝や腰、足首に過度な負担がかかり、新たな痛みや障害を引き起こす可能性もあります。 膝の痛みの放置には、症状の悪化や身体全体のバランスを崩すリスクがあります。 ▼膝の痛みに潜む重大な病気とは?1分でチェック! https://youtube.com/shorts/SFl4q1RCuCw?feature=shared 膝が痛いときはどんな病院を受診すべき? 膝が痛いときの受診先として、主に整形外科と整骨院が選択肢として挙げられます。 整形外科では、MRIやレントゲンなどの検査設備が充実しており、医師による診断と治療を受けることができます。一方、整骨院は医師による診察や薬の処方はできませんが、痛みの緩和や機能改善のための施術を行います。 施設 目的 治療内容 整形外科 ・医学的診断に基づく評価 ・疾患の治療と回復 ・症状の進行予防 ・必要に応じた手術の検討 ・レントゲン、MRIなどの画像診断 ・血液検査 ・投薬治療 ・注射治療 ・手術 ・装具の処方 ・リハビリテーションの実施・指導 整骨院 ・筋肉や関節の機能回復を目的とした施術 ・痛みの軽減を目的とした施術 ・日常生活動作の改善 ・身体機能の維持 ・向上 ・マッサージ ・関節の調整 ・ストレッチ指導 ・超音波やマイクロ波などの物理療法 ・テーピング ・運動指導 膝が痛いときは、まず整形外科を受診しましょう。 特に異常がなく膝に軽い痛みや違和感がある程度の場合は、整骨院に通院して症状の改善を目指すこともご検討ください。 また、膝の痛みに対しては「再生医療」という選択肢もあります。 再生医療は、患者様自身の幹細胞を採取・培養して痛みの改善や軟骨の再生を目指す治療法です。 当院「リペアセルクリニック」では電話相談やオンラインカウンセリングにも対応しています。再生医療について興味がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。 病院に行く時間がない方でも、ご自宅から簡単にお電話できます。 >>0120-706-313(受付時間:9:00〜18:00) 膝の痛みを伴う代表的な3つの疾患 膝の痛みにはさまざまな原因があり、その症状を引き起こす疾患も多岐にわたります。膝の痛みが長引いたり、急激に悪化する場合、適切な診断を受けることが重要です。 ここでは、膝の痛みを伴う代表的な疾患を3つ紹介します。 変形性膝関節症 半月板損傷 関節リウマチ 3つの疾患の原因や症状について、それぞれ解説します。 変形性膝関節症 変形性膝関節症とは、膝関節にある軟骨のすり減りによって、痛みや動きの制限が伴う疾患です。 変形性膝関節症は加齢とともに、高齢になるほど罹患率が高くなる傾向にあります。 また、日常的な膝への負担や、過度な運動による衝撃も変形性膝関節症を発症する原因です。 症状が進行すると最終的には、骨の変形にまで至ります。痛みや動きの制限も顕著になるため、早期治療が大切です。 半月板損傷 半月板損傷とは、膝関節のクッションとして機能する半月板に亀裂が入る、または組織が欠損する疾患です。 損傷する原因は、スポーツ時の膝のひねりや転倒、加齢による摩耗などです。 半月板が損傷すると、膝の痛みや腫れが生じ、関節の動きが制限されます。症状を放置すれば軟骨の損傷も進み、変形性膝関節症を発症するケースもあります。 膝をぶつけたり、半月板の付近に痛みが生じたりする場合は、半月板損傷の可能性を視野に入れ病院の受診を検討しましょう。 関節リウマチ 関節リウマチとは、免疫の異常によって関節が炎症を起こし、痛みや腫れを引き起こす自己免疫疾患です。 炎症が続くと、関節の変形や機能低下が進み、日常生活にも支障をきたします。 また、関節リウマチは、臓器障害や動脈硬化の促進といった全身症状を引き起こす可能性もあります。 早期に対応がとれるよう、膝の痛みを感じたら関節リウマチ発症の疑いも頭に入れておきましょう。 まとめ|膝が痛いときに病院に行くべき理由を知って適切な治療を進めよう 病院に行くべきか悩んでいる方も、膝の痛みが続く場合は、早めに病院を受診しましょう。 軽い炎症なら自然に治ることもありますが、変形性膝関節症や半月板損傷などの疾患では、放置すると悪化するおそれがあります。 早期治療が症状の進行を防ぐため、違和感を覚えたら放置せずに医療機関へ行きましょう。 なお、膝の痛みに対しては「再生医療」という選択肢があります。 変形性膝関節症や半月板損傷などの疾患で膝の痛みにお悩みの方は、ぜひ当院「リペアセルクリニック」の再生医療をご検討ください。 膝の痛みに関するよくある質問 最後に膝の痛みに関するよくある質問と回答をまとめます。 膝の痛みは自然に治りますか? 膝の痛みが自然に治るかどうかは、原因によって異なります。 軽い炎症や一時的な疲労が原因であれば、適度な休息を取れば回復する場合もあります。 しかし、変形性膝関節症のように軟骨がすり減る疾患では、自然に元の状態に戻る確率は低いです。 膝の状態を自己判断するのは難しいので、痛みを感じた際は専門家に診てもらいましょう。 膝の痛みは整体で治りますか? 整体で痛みを改善できるかどうかは、膝の状態や疾患の種類によって異なります。 整体は、主に筋肉や関節のバランスを整えて体の痛みを緩和する施術です。 膝関節の周りの筋肉が硬くなっていたり、関節に歪みがあったりする場合は、整体の施術によって痛みが改善する場合があります。 しかし、変形性膝関節症のように関節自体が変形している状態では、整体での改善は期待できません。リハビリや手術といった専門的治療が必要になります。 曲げると痛い膝の痛みの原因は? 膝を曲げたときに痛みを感じる原因として、変形性膝関節症や半月板損傷などの膝疾患が考えられます。 ほかにも、スポーツや仕事で膝を酷使して、炎症を起こしている可能性もあります。 適切なケアをしていくためにも、病院を受診して原因を特定しましょう。
2022.03.15 -
- 再生治療
突然の激痛と共に起こる肉離れで「この痛みはいつまで続くのか」「一日も早く元の生活やスポーツに戻りたい」そんな焦りや不安を感じていませんか? 肉離れの全治期間は損傷の程度によって大きく異なりますが、適切な対処と治療法の選択によって回復を早めることが期待できます。 本記事では肉離れが全治するまでの期間を重症度別に詳しく解説します。肉離れを早く治すコツや再発予防のポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。 また、リペアセルクリニックではご自身の治癒力を活用して早期復帰をサポートする「再生医療」を提供しており、筋肉損傷にも効果が認められた症例について、LINEで情報発信しております。 つらい痛みから解放されるための一歩を踏み出すために、ぜひご活用ください。 ▼再生医療に関するガイドブックをプレゼント中! 肉離れの全治までの期間 肉離れの全治までの期間は、重症度によって異なります。肉離れの重症度は以下の3段階に分類されます。(文献1) 軽症 中等症 重症 重症度ごとの全治までの期間を見ていきましょう。 軽症 軽度の場合は、全治までの期間は1〜2週間ほどです。 軽度は、筋繊維が微細に損傷している状態です。筋肉が小さなダメージを受けており、筋肉に出血が見られます。 受傷部を押すと痛みを感じますが、何もしなければ痛みはほとんどありません。歩行やストレッチはわずかな痛みを感じる程度です。 中等症 中等症の場合、全治までの期間は3〜5週間ほどです。 中等症は、筋繊維や筋膜が損傷または一部断裂している状態です。筋肉へのダメージがやや大きく、皮下出血が見られます。 受傷部を押すと強い痛みを感じます。歩行やストレッチはできるものの痛みを伴うため、継続して身体を動かすのが難しくなります。 重症 重症の場合は、全治までの期間は2〜3カ月ほどかかります。 重症は、筋繊維が完全に断裂している状態です。なにもしていなくても強い痛みを感じ、歩行やストレッチといった日常の軽い動作も困難です。 肉離れの全治を目指した代表的な2つの治療法 肉離れに有効な2つの治療法を解説します。 安静・固定・リハビリ 再生医療 順番に見ていきましょう。 固定・安静・リハビリ 肉離れの基本的な治療は、固定・安静・リハビリです。 肉離れは、筋肉が切り傷や裂傷を起こしている状態です。実際に起きていることは、転んだときにできる切り傷や裂傷と一緒といえます。傷は皮膚と皮膚を寄せ合い固定することによって修復していきます。 肉離れが起きた際も、テーピングや包帯などで固定して、症状が落ち着くまで安静にします。そして、徐々に可動域を広げるリハビリをおこなっていくのが基本的な治療パターンです。 再生医療 「再生医療」とは、ご自身の血液中に含まれる、傷を治す働きを持つ「血小板」という成分を利用し、損傷した筋肉組織の修復を促す治療法です。 治療方法は、採取した血液を遠心分離機にかけて、血小板を濃縮した液体を注射で患部に注入するだけです。30分ほどで一連の治療を終えられるので、身体への負担も大きくありません。 再生医療は肉離れを含むスポーツ外傷に高い効果が期待できる治療法なので、スポーツに早期復帰したい方にもおすすめです。 「再生医療はどんな治療方法なの?」と気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』のLINEをご確認ください。 実際の改善症例と合わせて、再生医療の仕組みをわかりやすくお伝えいたします。 ▼無料のオンライン診断も受付中! >>公式LINEはこちら 肉離れを早く治すコツ 肉離れを早く治すには、応急処置の実施がとても大切です。適切な応急処置をおこなえば、腫れや内出血を最小限に抑えられ、結果的に全治までの期間も短縮できます。 肉離れに有効な応急処置は、RICE処置です。RICE処置は、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字から名付けられました。 肉離れにおけるRICE処置の内容は以下のとおりです。 処置 内容 安静 ・無理に身体を動かさず安静にする ・患部の腫れや血管・神経の損傷を防ぐのが目的 冷却 ・ビニール袋やアイスバックに氷を入れて患部を冷やす ・2次性の低酸素障害により患部の細胞壊死と腫れを抑えるのが目的 圧迫 ・テーピングや弾性包帯で軽く圧迫気味に固定する ・患部の内出血や腫れを防ぐのが目的 挙上 ・患部を心臓より高く挙げる ・患部の腫れを予防・腫れの軽減を図るのが目的 参考:日本整形外科学会監修|スポーツ外傷の応急処置(RICE処置) 肉離れを起こしたときは、病院にかかるまでの間にこのRICE処置を試してみてください。 まとめ|肉離れが全治するまでの期間を知って回復を目指そう 肉離れが全治するまでの期間は、重症度によって異なります。 軽症:約1〜2週間 中等症:約3~5週間 重症:約2〜3カ月 上記の期間はあくまで目安です。怪我の具合や回復速度は個々によって違うので、担当医の指示に従いながら、焦らず着実に回復を目指しましょう。 しかし、「安静だけでは物足りない」「より確実に、早く復帰したい」「再発は絶対に避けたい」という方には、損傷した筋肉組織そのものの再生を目指す治療法の検討をおすすめします。 リペアセルクリニックが提供する「再生医療(自己脂肪由来幹細胞治療)」は、まさにその根本的な解決を目指す最先端の選択肢です。 ご自身の脂肪から採取・培養した幹細胞を患部に直接投与することで、幹細胞が持つ高い組織修復能力により、肉離れに効果的な治療法としての効果が期待できます。 痛みの軽減はもちろん、より質の高い回復と早期のスポーツ・社会復帰、そして再発リスクの低減が期待できます。 自分の肉離れの症状にも効果が期待できるか気になる方や、改善が見込めた症例の事例も知りたい方は、ぜひ無料相談をご利用ください。 ▼LINEにて再生医療のガイドブックも配信中! >>【無料】公式LINEはこちら 肉離れに関するよくある質問 最後に肉離れに関するよくある質問と回答をまとめます。 太ももやふくらはぎの肉離れが全治するまでの期間は? 太ももやふくらはぎの肉離れが全治するまでの期間は、重症度によって異なります。重症度別の全治までの期間の目安は、前述した情報が参考になります。以下でもう1度、情報を振り返りましょう。 軽症:約1〜2週間 中等症:約3~5週間 重症:約2〜3カ月 自身の症状の程度にあわせて適切な治療を進めてください。 以下の記事では、ふくらはぎの筋断裂(肉離れ)について解説しています。原因や予防法なども紹介しているので、詳細が気になる方は参考にしてみてください。 軽度の肉離れだと1週間ほどで治りますか? 軽度(筋繊維が微細損傷したレベル)の肉離れであれば、1週間で治るケースもあります。先述のとおり、軽度肉離れの全治までの期間は、およそ1〜2週間です。 ただし、期間を気にして焦って治そうとするのは禁物です。担当医の指示のもと、無理のない範囲で回復を目指しましょう。 肉離れを予防する方法はありますか? 肉離れの予防には、運動前の十分なストレッチが効果的です。 肉離れは、筋肉の疲労や柔軟性の低下が原因となって起こります。運動前にしっかりストレッチをして筋肉をほぐしておけば、筋肉への負担を軽減でき、肉離れのリスクを下げられます。 肉離れが一生治らない可能性もありますか? 肉離れは適切なケアをすれば、完治する可能性が高いケガです。 ただし、1回肉離れを起こした筋肉は再発を繰り返すと言われています。そのため、肉離れが起きたら完全に治すことに集中するのが望ましいといえます。中途半端に治療すると再発のリスクが高まってしまうためです。 また、肉離れが治ったあとは、運動前のストレッチを念入りにおこない、再発防止に努めましょう。 【参考文献】 文献1:https://www.rinspo.jp/journal/2010/files/24-3/331-333.pdf
2022.03.15 -
- 健康・美容
- ひざ関節
膝関節が痛みが辛く、階段の上り下りや腰かける動作が辛い。 膝関節の痛みにプロテオグリカンが良いと聞いたが、本当に効果はあるの? 日常生活の中で、このように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。 関節痛に効果のある成分といえば、コラーゲンや、ヒアルロン酸などがよく知られていますが、さらに上回る働きをもつ成分として近年注目されているのが「プロテオグリカン」です。 プロテオグリカンは保水性に優れており、摩擦や衝撃から軟骨を保護する役割があります。 本記事では、プロテオグリカンの効果・効能や関節痛との関わりについて解説します。プロテオグリカンによって膝関節痛を軽減させたい方はぜひ参考にしてください。 プロテオグリカンとは プロテオグリカンとは、軟骨や皮膚などに多く存在する糖タンパク質の一種です。 主な役割は、プロテオグリカンは水をよく含んだスポンジのようなイメージで、軟骨に摩擦や衝撃が加わると、水分が浸みだして、軟骨に潤いを与えます。 これにより、関節が摩擦や衝撃から守られます。 前提として、関節軟骨は骨とは違い、約70%が水分、他30%がプロテオグリカンやコラーゲン、ヒアルロン酸で構成されています。 プロテオグリカンは、関節と関節の間にある軟骨(関節軟骨)の主成分の一つであり、保水性に優れているため軟骨の保護に効果的と言われています。 近年では、プロテオグリカンのさまざまな効果・効能が数多くの研究により報告されており、健康食品や化粧品の原材料として利用する動きが高まっています。 プロテオグリカンは効果なし?期待できる効果 プロテオグリカンは、すり減った軟骨の修復を助けたり、軟骨細胞を増加させたりする働きがあり、関節痛を和らげる効果が期待できます。 プロテオグリカンの効果・効能の詳細は、以下の通りです。 細胞の増殖や成長を促進 抗炎症作用 生活習慣病の予防 細胞の増殖や成長を促進 プロテオグリカンは、細胞の増殖や成長を促進する因子(EGF)とよく似た作用があることが報告されています。 摩擦や衝撃ですり減った軟骨細胞を修復する機能は、関節痛を和らげるために非常に重要です。 また、プロテオグリカンはコラーゲンやヒアルロン酸の生成を促す作用があるため、美肌効果も期待できます。 抗炎症作用 プロテオグリカンには、炎症を抑えるサイトカインの働きを促す効果があるため、抗炎症作用があるといわれています。 軟骨細胞の修復に加えて、痛みそのものの軽減も期待できます。 生活習慣病の予防 プロテオグリカンは、肥満や糖尿病などの生活習慣病の予防にも効果を発揮するといわれています。 プロテオグリカンを摂取することで、体重の減少や血糖値の上昇抑制につながったとの報告があるようです。 プロテオグリカンに副作用はある? プロテオグリカンの摂取による副作用はありません。 多くの場合、サケの鼻の軟骨から抽出されるため、天然成分で体に安心と言われています。 ただし、食物アレルギーのある方は使用前に医師に確認した方が良いでしょう。 プロテオグリカンを取り入れる方法 プロテオグリカンは関節痛に効果的であるため、積極的に取り入れたいと思われる方もいるでしょう。 プロテオグリカンは食物に含まれていたり、サプリメントとして販売されたりしていますが、経口から摂取するのは難しいと言われています。なぜなら、調理工程や体内において消化吸収による影響を受けてしまうためです。 具体的に、なぜ食事やサプリメントでプロテオグリカンを取り込めないのか解説します。 食事 結論からいえば、プロテオグリカンは食事で摂取すること自体は可能であるものの、そのまま身体に取り込むのは非常に難しいといえるでしょう。 プロテオグリカンは動物の軟骨の主成分で,とくに、魚や動物の軟骨に多く含まれているため、食事に取り入れることは可能です。しかし、プロテオグリカンを構成しているタンパク質は熱に弱いため、加熱すると分解されてしまいます。 また、タンパク質は胃や腸で消化吸収される際にアミノ酸にまで分解されてしまうため、プロテオグリカンとして摂取するのが難しいといえます。 サプリメント プロテオグリカンのサプリメントは、食事同様胃や腸で分解されてしまうため、プロテオグリカンを血中に取りこむことは難しいといえます。 仮に体内へ取り込めたとしても、軟骨は血流が少ないため、その成分が届くとは考えにくいでしょう。つまり、プロテオグリカンのサプリメントを摂取しても軟骨が再生するほどの効果を上げることは難しいといえます。 プロテオグリカンは、膝などの関節以外、美容面での効果を大きく表示していることもありますが、積極的に効果があるとはいえません。ただ、プラシボー効果によって効いたような感覚になることがあるかもしれません。 プラシボー(プラセボ)効果とサプリメント プラシボー効果は、有効ではない「くすり等」を、成分が含まれている前提で使用者に摂取させると、実際に効いた人が出る現象です。 人は、「〇〇に良い成分が入っているから!」と言われると(知ると)、その効果に対する暗示を受けてか、実際にその効果を実感することがあります。これは自らの治癒力が発揮されて解決に導いているのではないかと言われる不思議な現象です。 しかし、偽薬やサプリメントがすべて代替できるわけではありません。プラシボー効果は絶対ではなく、万人に効くとは限らないためです。 とはいえ、サプリメントを摂取することで得られる精神的な満足感があるのは否めないのが事実です。そのため、プロテオグリカンのサプリメントも摂取するなら、「効果がある」、「効いてる」と思って摂取したほうが良いかもしれません。 運動によって増やす 関節のプロテオグリカンは、運動によって増やせます。 運動などで関節の曲げ伸ばしを行うと、血流量が増加して軟骨細胞に酸素や栄養が行き渡り、プロテオグリカンの増加が促進されるのです。 逆に運動の機会が少ないと、身体が「プロテオグリカンは必要ない」と判断し、減少してしまいます。自ら積極的に体を動かすことで、身体にプロテオグリカンの必要性を感じさせることが大切といえるでしょう。 プロテオグリカンの増加には、激しい運動は不要で、ウォーキングやストレッチなどでも十分に効果が見込めます。 関節の痛みを恐れて運動不足になってしまうと、酸素や栄養が軟骨細胞に供給されなくなります。 結果、プロテオグリカンが減少し、かえって関節痛の悪化につながる恐れがあります。 ただし、関節に痛みがあるにもかかわらず、プロテオグリカンの増やすため、無理に運動をするのが控えましょう。医師の指導のもと、身体に負担のない範囲で行うようにしてください。 膝関節の痛みの治療に有効な再生医療について https://www.youtube.com/watch?v=W2JZQekWJ8w 膝関節の痛みには、先端医療である再生医療による治療法も選択肢の一つです。 再生医療とは、人間の持つ再生力を活用し、損傷した組織を再生・修復させる医療技術のことです。 従来の膝関節の痛みの治療では、痛み止めの服用などの薬物療法で症状が改善しなかった場合、手術しか選択肢がないというケースも少なくありませんでした。 しかし、近年の治療では、手術せずに膝関節の痛みの改善が期待できる再生医療が注目されています。 現在の治療で期待した効果が出ない方や手術せずに膝関節を治療したい方は、ぜひ再生医療をご検討ください。 プロテオグリカンは膝関節の痛いの改善効果が期待できる 関節痛の緩和に効果のあるプロテオグリカンは、食事やサプリメントで摂取することは現実的ではありません。 しかし精神的な満足感や、プラシボー効果などで実際に効いてしまう人がいるのも事実です。 プロテオグリカンは、適度な運動によって体内で増やすことも可能です。関節の健康のためには、医療機関や専門家の指導に従って適度な運動などを行うのが大切です。 普段の生活から健康的でバランス取れた食事をとり、適度な運動を心がければプロテオグリカンの不足を防げるでしょう。 膝関節の痛みについては、以下の記事でも解説しているため、参考にしてください。 また、当院「リペアセルクリニック」では、自己の幹細胞を用いた再生医療により、関節の痛みを和らげる治療を提供しています。 もしあなたが関節痛に悩まされ、治療法の選択肢を増やしたいと考えているなら、ぜひお気軽にご相談ください
2022.03.14 -
- 脳卒中
- 頭部
- くも膜下出血
くも膜下出血は、重い後遺症が出る方や亡くなってしまう方も少なくない一方で、後遺症が軽く済む場合もあります。 しかし「後遺症がなくても再発しないか不安」という方もいるのではないでしょうか。 本記事では、くも膜下出血の再発率や、再発の前兆について詳しく解説しています。 くも膜下出血の再発を防ぐためのポイントも紹介しているので、再発しないか不安な日々を過ごしている方は、ぜひ参考にしてください。 \再発予防につながる再生医療とは/ 再生医療とは、機能障害や機能不全になった脳細胞に対して、体が持つ再生能力を利用して損なわれた機能を再生させる医療技術のことです。 従来の治療では難しかった脳血管障害の再発予防や後遺症治療にも注目されています。 【こんな方は再生医療をご検討ください】 くも膜下出血が再発しないか不安を抱えている 現在の治療やリハビリを継続した方がいいのかわからない 大きな手術や長期間の入院をせずに治療できる方法を探している 再生医療では、今まで元に戻らないとされていた損傷した脳細胞の改善が期待できるため、くも膜下出血の再発予防や後遺症改善につながる可能性があります。 詳しい治療法については、再生医療を専門とする当院リペアセルクリニックにお問い合わせください。 くも膜下出血は後遺症がなくても再発のリスクがある くも膜下出血の原因となるのは、脳の血管にできたコブ「脳動脈瘤」の破裂です。 血管には壁が薄く弱い部分があり、強い血流を受けると膨らんでコブができることがあります。このコブに高い血圧がかかるなどして破裂してしまうと、くも膜下出血が起きます。 くも膜下出血が起きると、運動麻痺・感覚障害・高次脳機能障害など後遺症が出ることも多いです。また、適切な治療が行われ後遺症がなくても、後から同じ場所や別の場所に再び脳動脈瘤ができてしまうことは珍しくありません。 再発しないように気をつけることが、くも膜下出血を経験した方にとって重要なテーマになります。 くも膜下出血が再発しないか不安な方は、先端医療である再生医療をご検討ください。 再生医療では、今まで元に戻らないとされていた損傷した脳細胞の改善が期待できるため、くも膜下出血の再発予防や後遺症改善につながる可能性があります。 当院リペアセルクリニックでは、専門の医師・スタッフによる無料のカウンセリングも実施しており、再生医療についてわかりやすくご説明いたします。 再生医療について詳しく知りたい方は、一度当院までご相談ください。 くも膜下出血の概要については以下の記事で詳しく紹介しているので、あわせてご覧ください。 くも膜下出血の再発率|1カ月以内に20~30%が再発 くも膜下出血の再発率の高さを数字で見てみましょう。 くも膜下出血は、発症から1カ月までの初期に最も再発しやすいのが特徴です。具体的には、最初の1カ月で20〜30%の方が再発するとの報告があります。(文献1)別の報告では、発症初日の再発率が3〜4%、以降4週間は1日あたり1〜2%です。(文献1) 発症から3カ月目以降の再発率は、1年あたり3%との報告があります。(文献1)少なく感じるかもしれませんが、1万人の患者様がいれば約300人が再発する計算となり、決して低い数字ではありません。 くも膜下出血の再発の前兆 くも膜下出血が再発する前兆・初期症状の代表例は目の症状と頭痛です。 これらの症状をもとに、脳動脈瘤が破裂する前に受診できれば、早期の治療で再発を防げる可能性があります。また、再発のごく初期で気付ければ、治療が成功する可能性も高まります。 くも膜下出血を経験した方は再発の前兆を知っておき、常日ごろから注意する意識が大切です。 再発の前兆①動眼神経麻痺 くも膜下出血の再発の前兆または初期症状として、以下のような目の症状が代表的です。 両目でモノを見るとモノが二つに見える 視力の低下 視野が欠ける これらの症状は、大きくなった脳動脈瘤が目につながる神経を圧迫するために起こります。 モノが二つに見える症状は、眼球の運動やまぶたの開閉を担当する「動眼神経」の麻痺が原因です。片方の瞼が開かなくなる症状も併発します。 視力が低下したり視野が欠けたりする症状は、目で見たものを脳に伝える「視神経」への圧迫が原因です。 以上のような目の異常に気付いたら、脳動脈瘤が大きくなっている可能性があります。脳動脈瘤が破裂してしまうと、くも膜下出血の再発につながる可能性があるため、速やかに脳外科や脳神経外科を受診してください。 再発の前兆②頭痛 注意すべき二つ目の症状は「頭痛」です。頭痛を感じた場合は、すでに少量の出血が生じている可能性が高いため、早急に治療すべきとの意識を持ってください。 頭痛に関して知っておきたいポイントは、以下の2点です。 痛みの程度はさまざまである(軽くても要注意) 視野の乱れとともに起きることもある とくに軽い頭痛の場合、くも膜下出血の再発の前兆とは考えずに見過ごしてしまうことも多いです。痛みが軽くても、異常を感じたら念のため病院へ向かいましょう。 受診する際には、くも膜下出血の経験があることを必ず医師に伝えてください。伝えないと、単なる風邪などと診断されてしまうケースがあるからです。 ほかにも気になる症状があれば、「いつもと違う」「初めての痛み」などと、症状の内容を詳しく医師に伝えるよう努めてください。 くも膜下出血の再発を防ぐには生活習慣の改善と定期検査が大切 くも膜下出血の再発予防には、生活習慣の改善と定期的な検査が大切です。それぞれ説明します。 生活習慣の改善 日常生活で注意すべきポイントは以下のとおりです。 処方薬は主治医・薬剤師の指示通りに服用する 定期的に血圧を測る ストレスを溜めず規則正しい生活を送る 過度な飲酒を控える・禁煙をする 塩分の取りすぎに注意してバランスの良い食事を心がける くも膜下出血の危険因子は過度な飲酒、高血圧、喫煙です。(文献1)糖尿病も脳卒中全般のリスクとなるため、コントロールが欠かせません。(文献2)飲酒は適量に抑え、喫煙習慣のある方は禁煙しましょう。 高圧薬や糖尿病薬などを処方されていれば、指示通りに服用してください。ストレス管理や減塩も高血圧のコントロールに有用です。自宅で血圧を測り、血圧手帳に記録しておけば、医師が体の状態を判断する助けとなります。 生活上の注意点は、以下の記事で詳しく紹介しているので、あわせてご覧ください。 定期的な検査 くも膜下出血の再発防止には、定期的に検査を受けることも非常に重要です。脳動脈瘤を検査で発見できれば、破裂してしまう前に処置できるからです。 くも膜下出血を発症して10年くらい経過してから、治療した脳動脈瘤が再び大きくなったり、新しい脳動脈瘤ができて破裂したりする可能性もあります。一度検査して問題なかったからと油断せずに、定期的に検査を受けましょう。 くも膜下出血になると長生きできない?5年後の生存率 くも膜下出血を発症してから5年後の生存率は、55%前後といわれています。(文献3)生存率が低い要因の一つは、発症30日以内に、くも膜下出血自体で亡くなる方が多いことです。(文献1)発症初期の死亡率は、発症時の重症度や、どれだけ早く治療を開始できたかに左右されます。(文献1) 最初の30日を乗り越えたら、その後は再出血の有無が大きな要素となります。(文献1)生活習慣を整え、定期的に検査を受けて再出血の予防につなげましょう。 万が一再発してしまった場合も、もし早めに気づければ、治療が間に合う可能性が高まります。本記事で紹介した再発の前兆を覚えておき、体に異変を感じたらためらわずに受診しましょう。 くも膜下出血を発症し後遺症が出たが3年で改善した事例 ここでは、くも膜下出血の後遺症がある患者様に再生医療を行った事例を紹介します。 患者様は50代の女性です。当院「リペアセルクリニック」を受診したとき、くも膜下出血を発症してから3年が経過しており、後遺症として左半身麻痺が残っていました。日常生活で大きな不自由はないものの、ときどき足がもつれて転びそうになる、左手が思うように動かせない、ときどき呂律が回らなくなる、といった症状がありました。 幹細胞を点滴する再生医療を行ったところ、治療後3週間ほどで以下の変化が見られています。 足の踏ん張りが効くようになり、転倒しなくなった 左上肢の力がつき、左腕で背中を洗えるようになった 左手の力がつき、左手でボールを握れるようになった 今まで不自由だった動作ができるようになり、毎日の生活が楽になったとのことです。 この症例については以下の記事で詳しくご覧ください。 くも膜下出血は後遺症なしでも再発のリスクあり!油断せず予防に努めよう くも膜下出血は再発率が非常に高い病気です。たとえ後遺症がなくても、再発防止を意識して生活しましょう。 とくに節度ある飲酒、高血圧の管理、禁煙がポイントです。定期的な検査も欠かさず受けましょう。 再発の前兆となる症状は、目の異常と頭痛です。このほかにも体の異常を感じたら、すぐに脳外科や脳神経外科などを受診してください。早期に対処すれば再発を防げる可能性が高まります。 くも膜下出血の後遺症でお困りの方は、再生医療が役立つかもしれません。日常生活に大きな支障がない症状でも、再生医療で改善する可能性があります。 興味があれば、お気軽に当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。 参考文献 (文献1) 日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2009 Ⅳ.クモ膜下出血」2009年 https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_04.pdf(最終アクセス:2025年2月22日) (文献2) 四條克倫.「脳卒中ガイドライン2021(改訂2023)」『日大医学雑誌』82(6), pp.325-322, 2023年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/82/6/82_325/_pdf/-char/ja(最終アクセス:2025年2月22日) (文献3) 今井明ほか.「脳卒中患者の生命予後と死因の 5 年間にわたる観察研究:栃木県の調査結果とアメリカの報告との比較」『脳卒中』32(6), pp.572-578, 2010年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/32/6/32_6_572/_pdf(最終アクセス:2025年2月22日)
2022.03.14 -
- 健康・美容
年齢とともに、歩く・立つといった「体を動かす力」が衰えていくことがあります。 こうした状態を「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」または「ロコモ」と呼びます。 進行すると寝たきりになるなど、要支援・要介護のリスクが高まることもあり、適切な運動による予防・改善が必要です。 この記事では、ロコモを予防するための基本トレーニング「ロコトレ」の効果や、毎日続けるコツをわかりやすく解説します。 ロコトレを続けることで得られる効果とは? ロコトレを継続することで、脚力やバランス感覚が向上し、転倒のリスクを減らすことができます。 高齢者にとって、日常生活の中で「つまずく」「よろける」といった小さな不安を減らし、健康寿命をのばすことにもつながります。 また、下半身の筋力を鍛えることで歩行が安定し、階段の昇り降りや買い物などの外出もラクになります。 ロコトレは特別な道具や広いスペースがなくても取り組める運動です。 無理なく続けられる習慣として、適度な運動習慣は自律神経のバランスを整え、心身ともに元気を保てます。 ロコモティブシンドロームのチェック項目は以下の記事でご確認ください。 ロコモ予防だけじゃない!全身にうれしい変化 ロコトレはロコモ(運動器症候群)の予防に効果的なだけではありません。 以下のような変化が期待できます。 血流が促進され、冷えやむくみが改善する 下半身の筋力強化と同時に代謝が上がり、太りにくい体になる 心肺機能がサポートされ、疲れにくくなる 体の変化だけでなく、気持ちが前向きになった、よく眠れるようになったという声もあり、心身ともにプラスの効果が期待できます。 ロコモ予防については、以下の記事もご覧ください。 筋力・柔軟性・姿勢の改善につながる理由 ロコトレに含まれる「片脚立ち」や「スクワット」といった基本的な動きは、下半身の主要な筋肉を効率よく使うことで筋力の維持・向上につながります。 とくに、太ももやお尻、体幹の筋肉が鍛えられることで、体をしっかり支えられるようになります。 また、動作の中で膝や股関節を丁寧に動かすことで、関節まわりの柔軟性も高まります。 柔軟性の向上は転倒予防にとって重要な要素です。結果として、ケガのリスクも減ります。 姿勢の面では、片脚立ちでバランスを取ることが体幹の筋肉を刺激し、猫背や反り腰などの姿勢の乱れの改善にも効果が期待できます。 正しい姿勢の維持は、日常生活の質向上に直結する大切なポイントです。歩き方や立ち姿も安定し、見た目の若々しさにもつながります。 ロコトレの基本|片脚立ちとスクワットの手順・効果 ロコモを予防するには、日々の生活の中で無理のない運動を習慣化することが大切です。 その基本となるのが、誰でも簡単に始められる「片脚立ち」と「スクワット」の2つのロコトレです。 この章では、それぞれのやり方と得られる効果をわかりやすく紹介します。 片脚立ち|バランス能力を高めて転倒を予防 片脚立ちは、シンプルながらとても効果的なトレーニングです。 片脚で立つだけの動きですが、足の筋肉や体幹、股関節まわりの安定性が自然と鍛えられます。 【片脚立ちの手順】 壁や椅子につかまる 片脚を上げる 30秒ほど姿勢を保つ 左右を入れ替えて1日3回を目安に行う 30秒が難しい場合は10秒から始めるなど、ご自身に状況に合わせて調整しながら初めてみてください。 片脚立ちを日常的に行うことで、バランス感覚の向上につながり、転倒リスクを大幅に減らすことができます。 とくに高齢者にとっては、転倒が骨折や寝たきりの原因になることがあるため、予防の観点でも重要な運動です。 スクワット|下半身の筋力アップで歩行がラクに スクワットは、太ももやお尻、体幹など下半身の主要な筋肉をまとめて鍛えられる効率の良いトレーニングです。 とくに歩行や立ち上がりなど、日常動作の基礎になる筋力を底上げしてくれます。 筋肉がしっかり働くようになると、膝や腰への負担も軽減され、歩く・立つ・座るといった動作がスムーズになります。 さらに、運動不足による筋力低下を防ぐ効果も期待できます。 【スクワットの手順】 肩幅に足を開いて立つ(つま先はやや外側、背筋はまっすぐ) 息を吸いながら、ゆっくり腰を落とす(膝はつま先より前に出さない、かかとは床につけたまま) 息を吐きながら元の姿勢に戻る 最初は浅めのスクワットから始め、無理のない範囲で続けましょう。 1日10回を目安に、慣れてきたら回数や深さを少しずつ増やすのがおすすめです。 ロコトレの効果を高めるコツと注意点 ロコトレはやみくもに続けるだけでは十分な成果を得にくい場合もあります。 そこで、より効果的にロコトレを取り入れるためのポイントをお伝えします。 無理なく続けられる頻度と時間を設定する 痛みや違和感が出たら、すぐに中止して様子を見る 正しい姿勢とフォームを意識する 継続するモチベーションを保つ工夫をする これらを意識することで、ロコトレの効果を最大限に引き出せます。 安全に継続して取り組むために、以下の点にも気をつけましょう。 無理せず続けるための頻度とタイミング ロコトレは、短時間でも毎日コツコツ続けることが大切です。 1回あたりの運動時間は5〜10分程度で十分ですが、週に1〜2回だけでは効果が出にくくなります。 毎日1〜2回の実施(朝・夜など生活に取り入れやすいタイミングで) 体調や疲れ具合に応じて回数や強度を調整 「決まった時間」よりも「継続しやすい時間」に行うのがコツ 無理をして三日坊主になるよりも、継続しやすい習慣に落とし込むことがうまく続けるためのコツです。 次第に体の変化も感じられ、続けるモチベーションにもつながります。 痛みや違和感があるときはどうすべき? ロコトレは無理のない範囲で継続することが大切ですが、運動中に膝や足腰に痛みや違和感が出る場合は注意が必要です。 痛みや違和感があるときは、以下の対応を取ってください。 すぐに運動を中止して安静にする 患部をアイシングする 数日休んでも改善しない場合は受診を 無理をすると症状が悪化するおそれがあるため、一旦中止して安静にしてください。 また、軽度の炎症や筋肉疲労であれば、冷やすことで症状が緩和する場合もあります。1回10~15分を目安に痛む部位を冷やしましょう。 痛みが続き改善しない場合は、関節や筋肉に異常があるかもしれません。一度医療機関を受診してください。 痛みを我慢して運動を続けるのは逆効果です。体と相談しながら、無理のない範囲で進めることが、ロコトレを習慣にするための大切なポイントです。 ロコトレ+αでさらに効果アップ!おすすめ運動 ロコトレはシンプルで効果的な運動ですが、さらに体力や筋力を高めたい人には「プラスαの運動」がおすすめです。 ここでは、ロコトレに組み合わせて取り入れたい2つの簡単なエクササイズをご紹介します。 ふくらはぎの筋力を鍛える「ヒールレイズ」 太もも・お尻の筋肉とバランス力を強化する「フロントランジ」 どちらも特別な道具は不要で、自宅で無理なく取り組めます。 ふくらはぎを鍛える「ヒールレイズ」 ヒールレイズは、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)を鍛える運動です。 この筋肉は、歩く・階段を上がる・つま先立ちをするなど、日常のあらゆる動作に関係しています。 やり方 壁や椅子に手を添えて、まっすぐ立つ ゆっくりとつま先立ちになる かかとをゆっくり元に戻す 10回〜15回を1セット、1日2〜3セットを目安に ポイントは反動を使わず、ゆっくり上下することです。 ふくらはぎを意識して動かすことで、筋肉にしっかり負荷がかかり、ふらつき予防や脚のむくみ改善にもつながります。 柔軟性と筋力をつける「フロントランジ」 フロントランジは、太もも・お尻・体幹を同時に鍛えながら、股関節や足首の柔軟性も高められる万能エクササイズです。 筋力と可動域の両方をバランスよく強化したい人におすすめです。 やり方 足を肩幅に開いて立つ 片足を大きく前に踏み出す 前の膝を90度に曲げ、後ろの膝を床に近づける ゆっくり元の位置に戻す 左右交互に10回ずつ、1〜2セットからスタート 背筋をまっすぐ保ち、膝がつま先より前に出ないように注意しましょう。 下半身全体をまんべんなく鍛えられるうえ、姿勢改善や転倒予防にも役立ちます。 まとめ|ロコトレは毎日継続して行うのが大事 ロコモ(運動器症候群)は、気づかないうちに進行し、歩行や立ち座りがつらくなることがあります。 だからこそ、日頃から運動を取り入れ、予防に努めることが大切です。 ロコトレは、シンプルな動きで筋力やバランス感覚を鍛えることができ、自立した生活を支える土台づくりになります。 できることから少しずつでも取り入れてみてください。運動を続けることが、将来の健康を守ることにつながります。 ただし、関節や腰の痛みなどが酷い場合は、無理な運動をせず、医療機関で医師の診察を受けましょう。 受診するべきかお悩みの際は、当院へお気軽にご相談ください。
2022.03.11 -
- ひざ関節
- 膝蓋軟骨軟化症
「膝の痛みや違和感が気になる」 「ランニングをしていると膝が軋むような感じがする」 ランニング時や階段の昇り降りなどで、膝に痛みや違和感を感じているものの、どのような病気なのかわからず悩む方もいるでしょう。 膝蓋軟骨軟化症(しつがいなんこつなんかしょう)は「ランナー膝」とも呼ばれ、10〜20代の若い世代や女性に多い膝の疾患です。 この記事では、膝蓋軟骨軟化症の原因や治療法を詳しく解説します。また、症状別の治療法も紹介するので、整形外科を受診する際の参考になれば幸いです。 ランナー膝の1つ「膝蓋軟骨軟化症」は10~20代に多い膝の疾患 膝蓋軟骨軟化症は、膝蓋骨(膝の皿)の裏側にある軟骨が柔らかくなる疾患であり、ランナー膝の一種としても知られています。とくに、10〜20代の若い世代に多くみられ、スポーツ活動が活発な人に発症しやすい傾向があります。 男性よりも女性に多くみられる病気で、女性ホルモンの影響やハイヒールのような不安定な靴を履くなど、女性ならではの原因があるのも事実です。 主な症状は、膝の痛みや違和感で、初期は自覚症状がない場合も少なくありません。進行すると、日常生活にも支障をきたす可能性があるため、注意が必要です。 若い世代のランナーに多いといわれている膝蓋軟骨軟化症の原因や症状など、詳しくみていきましょう。 膝蓋軟骨軟化症の原因 膝蓋軟骨軟化症は、膝にかかる負担や身体構造の問題、筋力バランスの悪化など複数の原因が重なって起こります。発症には、スポーツや日常生活での動作も関係しています。 そもそも膝蓋軟骨とは、膝の皿である膝蓋骨のうしろ側に付着している軟骨成分です。膝蓋軟骨は大腿骨と関節部を構成しており、軟骨組織は、通常であれば滑らかに関節面を可動します。 しかし、太ももの筋肉である大腿四頭筋の筋力不足や関節面の柔軟性低下などによって関節接合部が摩耗すると、ゴリゴリと膝部分から音が鳴るケースも珍しくありません。 ここでは、具体的にどのような原因が膝蓋軟骨軟化症につながるのかを解説します。 膝への負担が大きい動作をする ランニングやジャンプなど、膝への負担が大きい動作を繰り返すと、膝蓋軟骨が徐々に磨耗し、軟化する場合があります。 たとえば、ランニングの際、膝にかかる力は体重の約2〜3倍ほどといわれています。しかし、普通にランニングするだけで、膝蓋軟骨軟化症になるわけではありません。 階段を上る、しゃがみ込むなど日常生活で頻繁に行う動作を繰り返すと膝への負担がかかるため、注意しましょう。 若い世代の場合、成長期に運動量が多くなると症状が出るケースが多くみられます。過度な運動量を避け、適切な休息とクールダウンを取り入れるのが重要です。 身体構造に問題がある 膝蓋骨の形状や脚の骨格など、身体構造の問題も膝蓋軟骨軟化症の原因となります。代表的な例は以下のとおりです。 膝蓋骨が正しい位置より外側に偏った状態(膝蓋骨の外側偏位) X脚 外反母趾 扁平足(へんぺいそく) 膝蓋骨と大腿骨が正しい位置関係にならないと、膝蓋骨が外側へ偏り、膝蓋軟骨が摩耗したり断裂したりする場合があります。X脚は、膝関節に不自然な負荷がかかりやすいだけでなく、軟骨がすり減りやすくなります。 また、外反母趾や扁平足なども、間接的に膝への負担を増加させる原因です。ハイヒールを履くと、外反母趾を発症する可能性があると考えられています。 外反母趾はX脚に発展しやすいだけでなく、膝蓋軟骨軟化症に罹患しやすいと疾患関連性が指摘されているのも事実です。 筋力のバランスが悪い 膝周りにある大腿四頭筋やハムストリングの筋力バランスが悪いことも、膝蓋軟骨軟化症の原因です。 膝蓋骨を支える筋肉への負荷が均等に分散されないため、軟骨へ負担がかかります。 たとえば、太もも前側にある大腿四頭筋が強く、お尻の筋肉である臀筋(でんきん)が弱いと、足の内側と外側の筋力差が大きく、膝蓋骨が安定しません。また、体幹が弱いと運動時における体のバランスが崩れやすく、膝への負担が増える原因となります。 筋力バランスを整えるトレーニングが、膝蓋軟骨軟化症状の予防や改善に有効です。 膝蓋軟骨軟化症の症状 膝蓋軟骨軟化症が進行すると、膝の痛みや違和感など特徴的な症状が出てきます。症状の現れ方は人によって違いますが、日常動作にも支障をきたすため注意が必要です。 具体的な症状をみていきましょう。 膝の痛み 膝蓋軟骨軟化症で多い症状は、膝蓋骨の周囲や裏側を中心とした痛みで、一般的には膝関節の腫れや熱感などは見られません。 膝関節を屈伸した際に痛みが増すといわれているため、階段の昇り降りやランニング、急に椅子から立ち上がる際などのときに症状が悪化しやすいと考えられます。 走っているときに膝蓋骨の裏側に痛み症状を覚えた人は、膝蓋軟骨軟化症を発症した疑いが持たれるでしょう。ランニング時に膝部分を何度も屈曲する動作を行うため、膝蓋骨裏側に存在する軟骨成分と大腿骨下端部が摩擦し合って関節面が傷ついていると考えられます。 症状が軽い段階では一時的に痛みが消える場合もありますが、症状が進行すると、安静時や軽い動作でも強い痛みを感じるようになるため、注意が必要です。 膝が軋むような違和感 膝蓋軟骨軟化症になると、膝の曲げ伸ばしをする際に、ゴリゴリ、じょりじょりとした軋むような音や、引っかかるような違和感を覚えるケースがあります。 これは、膝蓋軟骨の表面が軟化して凸凹ができ、膝蓋骨や大腿骨の間で摩擦が生じるためです。 膝が軋むような違和感は、痛みとともに現れる場合や単独で現れる場合もあります。初期症状では、特定の動作時だけ自覚する程度ですが、進行すると日常的な動作でも頻繁に違和感を感じるようになり、不快感や不安感を伴います。 膝蓋軟骨軟化症の検査 膝蓋軟骨軟化症で行われる検査は、以下のとおりです。 専門医による問診・視診・触診 MRI検査 関節鏡検査 まずは、診察で症状がどのようなときに出現するのか、あるいはいつから発症しているのかなどの臨床経過を確認する作業から開始します。 診察時には、膝関節部に腫れや赤みなどの所見はあるか、押さえて痛い部分は存在するか、膝に疼痛症状が起こる動作などを評価していきます。 MRI検査は、磁石と電波を利用して膝関節の内部を映像化する検査方法です。膝蓋骨の裏側に位置している軟骨部に特徴的な軟骨変形や軟骨破壊などの病変部があるか否かを調査します。 膝蓋軟骨軟化症と類似している疾患として、膝蓋骨後面欠損、離断性骨軟骨炎などが挙げられるため、MRI画像所見や既往歴などを詳細に評価して適切な診断につなげていきます。 膝蓋軟骨軟化症の診断や病変の確認に有効な検査方法は、関節鏡検査です。ただし、関節腔内に細い筒状の内視鏡を挿入する必要があり、膝関節を切開しなければなりません。 患者様の身体への負担が少ない方法として、専門医の診察やMRI検査を実施している医療機関が多くみられます。 【症状別】膝蓋軟骨軟化症の治療 膝蓋軟骨軟化症で行われる治療は、主に保存療法や手術療法・再生療法です。患者様一人ひとりの症状に合わせて、適した治療法を選択します。 症状別に各治療方法を紹介するので、参考にしてください。 【軽度〜中程度】保存療法 症状が軽度から中程度の場合は、保存療法を行います。 保存療法とは、手術をせずに症状の改善を目指す治療法です。主に薬物療法と理学療法に分類されます。 症状の程度などによって個人派はありますが、治療期間は1年前後かかるケースがあります。 薬物療法 薬物療法は膝の炎症を抑え、痛みを緩和する目的で行います。 具体的には、次のような抗炎症薬や湿布薬が使用されます。 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) 鎮痛薬 ヒアルロン酸注射 湿布薬 症状によっては、ヒアルロン酸を注射する場合もあり、治療法は多岐に渡ります。 ただし、内服薬のなかには副作用を引き起こす可能性があるため、長期間服用する際は注意しなければなりません。 腹痛や吐き気などの消化器症状をはじめ、喘息発作・血圧上昇などの症状が出た際には、受診した医療機関に連絡しましょう。 理学療法 理学療法は、筋力強化や柔軟性向上のため運動療法を中心に行います。 膝蓋骨は、太ももの前後に位置する大腿四頭筋につながっているため、強化すると膝関節が安定し、痛みを予防できます。 また、ストレッチやマッサージでは、膝の柔軟性を高めると、痛みの予防が可能です。 専門である理学療法士による指導を受けると、効果的なトレーニングができます。症状に応じてテーピングやサポーターなどの補助的な方法も併用します。 運動やストレッチは、実施した分だけ効果が出るわけではありません。やり過ぎると症状を悪化させるリスクもあるため、自己判断で行わず、理学療法士の指示に従いましょう。 【重度】手術療法 保存療法で改善がみられない場合には、手術を伴う治療が検討されます。主に実施される治療方法は以下のとおりです。 関節鏡手術 軟骨デブリードマン 脛骨(けいこつ)粗面挙上術 関節鏡手術とは、小さく切開した部分から内視鏡を挿入し、損傷した軟骨の処置を行います。傷口の小さく、身体への負担が比較的小さく、回復が早い傾向にあります。 軟骨表面を整えるデブリードマンや、関節の接触圧を減少させる脛骨粗面挙上術などの手術方法もあり、年齢や症状に応じた選択が必要です。 手術療法は、保存療法で改善しなかった症状を根治できるよう治療しますが、術後の痛みや感染症などのリスクがあるのも事実です。 手術を検討する際は、担当の整形外科医とも良く相談しましょう。 【重度】再生医療 近年では、自身の細胞や組織を用いる再生医療も選択肢の1つとして注目されています。手術や入院の必要がないのが特徴です。 再生医療では、主に次の治療が行われます。 自家軟骨細胞移植:患者様の健康な軟骨から細胞を採取・培養し、増やした細胞を損傷部に移植 幹細胞治療:骨髄や脂肪組織から採取・培養した幹細胞を損傷部位に投与 多血小板血漿療法(PRP療法):血液から濃縮した血小板を抽出し、損傷部位に投与 なかでも、当院「リペアセルクリニック」では脂肪由来の幹細胞治療や多血小板血漿療法(PRP療法)をご提供しています。 患者様自身の細胞を利用して治療するため、拒絶反応やアレルギーのリスクも少ない治療法です。 再生医療に興味のある方は、お気軽にご相談ください。 まとめ|膝蓋軟骨軟化症の症状にお悩みなら早めに受診しよう 膝蓋軟骨軟化症は、10〜20代の若い世代でランニングをはじめとしたスポーツをする人に多く見受けられる病気の一種です。 膝蓋軟骨軟化症は、膝にかかる過度の負担や、身体構造の問題など、複数の原因が考えられます。 軽度〜中程度の場合、保存治療により改善が見込めますが、重度では手術療法を検討するケースもあります。 膝蓋軟骨軟化症と診断されたら、進行する前に整形外科を受診しましょう。 当院では、患者様自身の細胞や組織を用いた「再生医療」も選択可能です。 膝蓋軟骨軟化症に関してよくある質問 膝蓋軟骨軟化症と診断されたら運動しない方が良いですか? 膝蓋軟骨軟化症と診断されたからといって、必ずしも運動を中止する必要はありません。ただし、膝に負担がかかるランニングやジャンプなどの運動は一時的に控えた方が良いでしょう。 整形外科医や理学療法士の指示に従い、痛みが軽減したら膝に負担の少ない運動から始め、徐々に負荷を上げていくのが重要です。 膝蓋軟骨軟化症の改善にストレッチは有効ですか? 膝蓋軟骨軟化症の改善にストレッチは有効です。とくに、膝の前後や股関節周囲の筋肉を伸ばすストレッチは、筋肉の緊張をほぐし、膝にかかる負担を軽くします。 ストレッチを継続すると、膝蓋骨の動きがスムーズになり、痛みを軽減させる効果が期待できます。 ただし、間違った方法で行うと症状を悪化させる可能性もあるため、整形外科医や理学療法士の指導を受けるのがおすすめです。 膝蓋軟骨軟化症の治療に手術は必要ですか? すべての患者様に手術が必要なわけではありません。基本的には、薬物療法や理学療法を中心とした保存療法を行い、症状の改善を目指します。 保存療法で効果が得られない場合や、軟骨の損傷が重度の場合には、手術が検討されます。手術が必要か否かは、症状や検査結果・年齢などを総合的に判断するため、整形外科医とも相談しましょう。
2022.03.11 -
- 半月板損傷
- ひざ関節
- 膝の外側の痛み
膝の半月板損傷に対する治療として、ヒアルロン酸注射を思い浮かべる人は多いかもしれません。「本当に効果はあるのだろうか」「いつまで続けないといけないのだろうか」と疑問に思うこともあるでしょう。 半月板損傷におけるヒアルロン酸注射は有効ですが、一時的な効果しか得られない点は注意が必要です。 半月板損傷を根本的に治療するには、他の方法も検討する必要があります。 本記事では半月板損傷に対するヒアルロン酸注射の効果やメカニズム、ヒアルロン酸以外に必要な治療などを解説します。 半月板損傷の治療法の選択肢を広げたい人は、ぜひ最後までチェックしてみてください。 【結論】半月板損傷にヒアルロン酸注射は有効な可能性がある 結論からいえば、半月板損傷に対してヒアルロン酸注射は有効な可能性があります。 過去の研究から、ヒアルロン酸注射によって炎症を強める成分を抑え、さらに炎症を抑える成分を回復させることが示唆されています。(文献1) 加えて、ヒアルロン酸が軟骨の劣化を抑え、衝撃吸収作用を高めることもわかっています。(文献2) 半月板損傷の原因や症状について詳しくは、「半月板損傷とは?原因・症状・治療法・やってはいけないこと」の記事もご覧ください。 そもそもヒアルロン酸注射とは? ヒアルロン酸注射とは、ヒアルロン酸ナトリウムを膝関節に注入する治療法です。 ヒアルロン酸は膝の軟骨の成分の一つで、水分を多く含んでいます。膝関節に注射することで、関節の動きをスムーズにしたり、炎症を抑える効果が期待できるでしょう。 ヒアルロン酸は半月板損傷だけでなく、変形性膝関節症で軟骨がすり減り、関節の動きが悪くなったり痛みが出たりするときの治療にも使われています。 ヒアルロン酸注射の効果はあくまでも一時的 ヒアルロン酸注射は半月板損傷に有効と考えられていますが、効果は一時的です。ヒアルロン酸が関節内で分解され、ヒアルロン酸濃度が薄くなるためです。 1回の効果は持続しても1~2週間程度と考えられています。 また、ヒアルロン酸注射によって痛みが治まっても損傷した半月板は元に戻っていないため、痛みが再発する可能性があります。 ヒアルロン酸注射で効果が出ないケース 半月板損傷におけるヒアルロン酸注射で効果が得られないケースは以下のとおりです。 膝関節内の炎症が強い場合 関節の変形が重度の場合 半月板損傷の炎症が大きすぎると、ヒアルロン酸では抑えられない可能性があります。また、関節の変形が重度の場合は、ヒアルロン酸の潤滑油としての働きが効かないこともあるでしょう。 膝のヒアルロン酸注射が効かないケースについては、詳しくは以下の記事で解説しています。半月板損傷でヒアルロン酸注射を検討している人は目を通しておきましょう。 【いつまで?】半月板損傷でヒアルロン酸注射を続ける期間 半月板損傷に対するヒアルロン酸注射は、基本的に5回1クールの周期でおこないます。 ヒアルロン酸の効果を持続するためには、完全に分解される前に次のヒアルロン酸を補充しなければいけません。 まずは1週間に1回のペースで開始して5週程度連続して実施することが多い治療です。間隔を少しずつ空けていき、約2週間に1回のペースで注射を5回~10回前後継続して行います。 3カ月程度を目処に継続し、改善が見込めない場合はステロイド注射や手術など別の治療方法も検討していきます。 ヒアルロン酸注射の費用は1割負担で1,000円程度 ヒアルロン酸注射は医療保険が適応になる治療方法です。 治療費用は再診料や技術料金も含めて1割負担の人なら両膝1,000円程度、3割負担の人なら3,000円程度が一般的です。 そのほか薬の処方箋料や、レントゲンなどの撮影をした場合には撮影料が別途必要となります。初回の診察ではレントゲンなどの画像撮影も必要です。 詳しい治療費については、病院の窓口で確認しましょう。 半月板損傷でヒアルロン酸注射の効果がなかった場合の対処法 半月板損傷に対してヒアルロン酸注射を実施しても効果が乏しいときの対処法として、以下の3つが挙げられます。 炎症に対してのステロイド注射や内服 運動療法や物理療法などのリハビリ 半月板の縫合術や人工関節などの手術 ヒアルロン酸注射で効果がない場合、ステロイド注射や非ステロイド性消炎鎮痛薬などの薬物療法を行うことがあります。また、運動療法や物理療法などを導入することもあるでしょう。 もしこれらの保存療法でも改善がみられない場合は手術を検討することもあります。 なお、当院リペアセルクリニックでは膝関節の再生医療も実施しています。 再生医療は自然治癒が難しいとされる半月板の損傷に対して期待されている治療方法です。お気軽にメール相談もしくはオンラインカウンセリングからご相談ください。 まとめ|半月板損傷の治療はヒアルロン酸注射以外も検討しよう 半月板損傷に対して、ヒアルロン酸注射は炎症を抑えたり、痛みを軽減したりなどの効果が期待できます。週1回や2週間に1回のペースでヒアルロン酸注射をおこない、3カ月程度継続する治療です。 しかし、ヒアルロン酸注射の効果はあくまでも一時的です。 根本的な治療をするには、ヒアルロン酸注射と並行してリハビリをしたり、手術を受けることも視野に入れる必要があるでしょう。 なお、当院リペアセルクリニックでは半月板損傷に対して再生医療をおこなっています。 再生医療は、半月板のほか軟骨・神経など自然治癒が難しい組織に対して期待されている治療方法です。 半月板を根本治療を検討している人は、当院のメール相談もしくはオンラインカウンセリングからご相談ください。この記事が少しでも参考になれば幸いです。 半月板損傷のヒアルロン酸注射についてよくある質問 半月板損傷に対してヒアルロン酸注射は効果がありますか? 半月板損傷による炎症を抑える効果や痛みを軽減する効果が期待できます。 ヒアルロン酸注射は半月板損傷の症状を軽減する可能性がある治療方法です。しかし、半月板損傷が大きく、関節が変形するなど症状が大きい場合にはあまり効果がない可能性もあります。 半月板損傷でヒアルロン酸注射の効果がなかったときの対処方法はありますか? ほかの注射や痛み止め、リハビリ、手術が検討されます。 ヒアルロン酸注射の効果が乏しかった場合、ステロイド注射や非ステロイド性消炎鎮痛薬などの痛み止め、リハビリ、手術療法が有効です。また、当院リペアクリニックでは再生医療も実施しています。 参考文献 (文献1) 加藤幸夫 ほか「ラット変形性膝関節症モデルにおける高分子ヒアルロン酸の作用:ヒアルロン酸応答遺伝子の網羅的解析|ClinRheumatol(25)」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cra/25/3/25_174/_pdf/-char/ja (文献2) 科研製薬株式会社「早期変形性膝関節症の病態解明による診療の変遷」 http://e-kansetsu.jp/asset/pdf/interview_ishijima_210115.pdf
2022.03.11 -
- ひざ関節
- 半月板損傷
「半月板の亀裂って、どうして起こるの?」 「スポーツをしていたら急に膝が痛くなった原因は?」 このような疑問をお持ちではないでしょうか。 半月板の亀裂は、膝への強い負荷や繰り返しの衝撃によって発生します。 原因はさまざまですが、とくにスポーツ中の急な方向転換やジャンプの着地、加齢による組織の変性が関係しているケースが多く見られます。 本記事では、半月板の亀裂が起こる原因や症状を詳しく解説しています。 治療法も紹介しているので、記事を参考にして、自身の症状に合ったものを選択してみてください。 半月板が亀裂・損傷する3つの原因 半月板の亀裂・損傷の主な原因は、スポーツや運動による外傷、加齢による機能低下です。また、先天的な半月板の形状が要因で半月板の亀裂・損傷を引き起こすケースもあります。 本章では、半月板が亀裂・損傷する3つの原因について詳しく解説します。 半月板の損傷について症状や診断、治療法などは「半月板損傷とは?原因・症状・治療法・やってはいけないこと」で解説しています。あわせてご覧ください。 スポーツや運動による外傷 半月板に亀裂が入る原因として、スポーツや運動による外傷が挙げられます。 とくに、急に方向を変えたり、ジャンプの着地で膝をひねったりすると、膝に強い負担がかかり、半月板が損傷しやすいです。 スポーツによる膝のけがには、半月板損傷、骨折、靱帯損傷、軟骨損傷などがあります。その中でも、半月板損傷は発生頻度が高く、前十字靱帯の断裂と同時に起こるケースも少なくありません。 スポーツを安全に楽しむためにも、適切なウォーミングアップや膝への負担を減らすトレーニングを意識しましょう。 なお、スポーツ外傷に対する治療法には「再生医療」の選択肢が挙げられます。損傷を起こしている膝関節に幹細胞を注入するだけで、傷ついた膝の組織や軟骨の再生を促します。 再生医療について詳しく知りたいという方は、無料のメール相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。 加齢 半月板は、膝関節の衝撃を吸収する役割を担っていますが、加齢とともにその機能は低下します。 機能が低下すれば、わずかな力が加わっただけでも半月板が傷つきやすくなります。 結果的に、半月板が裂ける「変性断裂」の状態になるケースも珍しくありません。 先天的な半月板の形状 半月板の損傷は外傷だけでなく、生まれつきの形状によっても起こる場合があります。 先天的に半月板が通常よりも大きく分厚い「円板状半月」と呼ばれる状態では、膝の動きに伴う負担が大きくなり、損傷のリスクが高まります。 【基礎知識】半月板の亀裂・損傷とは? 半月板の亀裂・損傷とは、半月板に亀裂が入り、膝に痛みやひっかかり感が伴う状態です。 ここでは、半月板損傷の主な症状や検査方法を詳しく解説します。 半月板損傷の主な症状|痛みや引っかかりなど 半月板損傷の検査方法|レントゲンやMRI検査 理解を深めて、治療を進めていきましょう。 半月板損傷の主な症状|痛みや引っかかりなど 半月板が損傷すると、膝に強い痛みが生じるほか、曲げ伸ばしがスムーズにできなくなる場合があります。 主な症状は以下のとおりです。 痛み 引っかかり感 ロッキング(膝が動かない) 膝内部で出血 膝に水がたまる 症状が悪化すると、日常生活にも影響を及ぼす可能性があります。 違和感や痛みを感じた場合は、早めに病院を受診しましょう。 関連記事: 半月板断裂と損傷の違いとは?痛みの特徴や原因・治療法を解説【医師監修】 半月板損傷の検査方法|レントゲンやMRI検査 半月板損傷が疑われる場合、整形外科の診察を受けることが一般的です。 まず、医師が膝に負荷をかけながら動かし、痛みの有無を確認する診察がおこなわれます。これにより、半月板損傷の可能性を判断します。 より詳しく調べるために用いられるのは、画像検査です。代表的な方法として、レントゲン検査とMRI検査があります。 検査の種類 検査の特徴 レントゲン検査 関節の隙間の変化や骨の異常が確認可能 MRI検査 損傷の程度や損傷の種類(縦断裂、水平断裂、横断裂、弁状断裂など)が特定可能 医師の診察と画像検査を組み合わせることで、正確な診断につながります。 半月板の亀裂・損傷を早く治す治療法【重症度別】 半月板の亀裂・損傷の代表的な治療法を3つ紹介します。 保存療法|症状が軽度の方向け 手術|症状が重度の方向け 再生医療|軽度・重度どちらの方も選べる どの治療法を選択するかは、症状の進行具合や日常生活への影響を考慮した上で決めていきます。 関連記事: 半月板損傷を早く治す方法は?治療法と効果的なリハビリを現役医師が解説 保存療法|症状が軽度の方向け 半月板損傷が軽度の場合、保存療法を選択できます。保存療法とは、膝への負担を減らしながら自然な回復を促す治療法です。 具体的には、安静にして膝を必要以上に動かさないようにします。 炎症や痛みが強い場合は、抗炎症薬が処方され、症状の緩和を目指します。 保存療法では、膝周りの筋力を鍛えるリハビリが欠かせません。 適切なトレーニングをすれば、膝の可動域を広げ、関節への負担を軽減できます。 関連記事: 【効かない?】半月板損傷にヒアルロン酸注射は効果ある?費用や期間も医師が解説 手術|症状が重度の方向け 膝部の痛み、引っかかり感、ロッキングなどの症状が継続して認められる場合には手術療法を検討します。 手術には主に以下2つの方法があります。 手法 内容 切除術 損傷した半月板の一部を切り取る 縫合術 損傷した部分を縫い合わせて修復する 現在、半月板手術は約9割が切除術です。 しかし、半月板は膝関節の安定性を保ち、衝撃を吸収する役割を担っているため、切除すると膝への負担が増え、将来的に変形性膝関節症になるリスクが高まります。 そのため、近年では半月板をできるだけ温存する縫合術が推奨される傾向にあります。 関連記事: 半月板損傷の手術で痛みは治る?メリットとデメリットについて医師が解説 再生医療|軽度・重度どちらの方も選べる 近年は、半月板損傷の手術を伴わない治療法として、再生医療が注目されています。 再生医療には主に幹細胞治療とPRP療法のふたつがあります。 幹細胞治療は、患者様自身の幹細胞を採取・培養して患部に投与する治療法です。 PRP療法では、採取した血液から抽出した多血小板血漿(PRP)を患部に注射します。血小板に含まれる成長因子には炎症を抑える働きがあります。 どちらも患者様自身から採取した幹細胞・血液を用いるため、副作用のリスクが少ないのが特徴です。 当院「リペアセルクリニック」では「幹細胞治療」「PRP療法」の両方を提供しています。 半月板損傷に対する治療として再生医療をご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。 [半⽉板] まとめ|半月板が亀裂・損傷する原因を理解して適切な治療を選択しよう 半月板が亀裂・損傷する原因は、主にスポーツ中の膝への衝撃や加齢です。 損傷した状態を放置していると、動きに制限が出て日常生活に支障をきたしたり、半月板が断裂したりする可能性があるため、早めに病院を受診しましょう。 体への負担が少ない治療法をお探しの方は、再生医療をご検討ください。 再生医療について詳しくは、以下のページでご確認いただけます。 半月板が亀裂・損傷に関するよくある質問 半月板損傷を手術しないで治す方法はありますか? 軽度の損傷であれば、保存療法を選択できます。 膝への負担を減らしながら自然回復を待つ方法が一般的です。具体的には、安静や、抗炎症薬の服薬、リハビリなどが挙げられます。 また、半月板損傷は切らずに治せる「再生医療」も選択可能です。 再生医療の「幹細胞治療」や「PRP療法(多血小板血漿療法)」を用いれば、手術をせずに膝の回復を目指せます。 詳しい治療法や効果が気になる方は、再生医療を専門とする当院「リペアセルクリニック」にお気軽にお問い合わせください。 \まずは当院にお問い合わせください/ 半月板損傷の人はやってはいけないことを教えてください 以下のような膝に負担をかける動作は、痛みの悪化や回復の遅れにつながるため避ける必要があります。 急な方向転換 階段の昇り降り 立ちっぱなしや長時間の歩行 あぐらや正座など膝に負担がかかる姿勢 日常生活の中で膝を守ることを意識し、早期回復を目指しましょう。 関連記事: 【医師監修】半月板損傷でやってはいけないこと!放置するリスクや治療方法も解説
2022.03.10 -
- ひざ関節
- オスグッドシュラッター病
「膝の下が痛む」 「正座やジャンプ時に違和感がある」 走ったりジャンプした後に膝の下が痛む場合、成長期特有のオスグッド病の可能性があります。オスグッドは安静やストレッチ、リハビリで多くは改善します。放置せず、痛みが続く場合は整形外科を受診しましょう。 本記事では、現役医師がオスグッドの原因・症状・治療法から、再発予防法までをわかりやすく解説します。記事の最後には、オスグッドについてよくある質問をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。 当院「リペアセルクリニック」の公式LINEでは、再生医療の情報提供と簡易オンライン診断を実施しております。 オスグッドについて気になる症状がある方は、ぜひ一度公式LINEにご登録ください。 オスグッドとは オスグッド(オスグッド・シュラッター病)は、膝蓋骨の下に位置する脛骨粗面と呼ばれる部位に炎症や隆起が生じる疾患です。成長期の子どもに多く見られ、膝下の骨が突出して違和感や圧痛を伴うのが特徴です。(文献1) 原因は、ジャンプやダッシュなどの繰り返し動作により、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が脛骨を強く引っ張ることです。 成長期は骨が未熟で筋肉や靭帯とのバランスが崩れやすく、この牽引力が炎症を引き起こします。とくにサッカーやバスケットボール、バレーボールなどの競技で発症しやすい傾向があります。 多くは成長とともに自然に改善しますが、痛みを我慢して運動を続けると慢性化することもあるため、早期の対応が大切です。 オスグッドが発症しやすい年齢 オスグッド病は、成長期にみられる代表的な膝のスポーツ障害で、脛骨粗面が未成熟な時期に発症しやすいことが複数の研究で報告されています。一般的な教科書・レビューによると、男子で10〜15歳前後、女子で8〜13歳前後に多くみられます。(文献2) また、男子12〜15歳の発症率が最も高いとする報告もあり、思春期にスポーツ活動を行う青年では、前面膝部痛の主要な原因のひとつとされる疾患です。(文献3) さらに、後方調査研究では9〜15歳の男女で有病率約12%、スポーツを行う群では21%に達するとの報告もあります。(文献4) 加えて、成長スパート期(ピーク身長速度)の前後6カ月は発症リスクが高く、骨の成熟が未熟であるほど牽引ストレスの影響を受けやすいとされます。(文献4) オスグッドと成長期(身長)の関係性 項目 内容 発症年齢 主に10〜15歳の成長期 成長期の特徴 身長の急激な伸びによる成長板の活発な発育 骨の状態 柔らかく未成熟な骨構造 発症要因 筋肉や腱の成長が骨の成長に追いつかないアンバランス 牽引に関与する筋 太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)による脛骨粗面の強い牽引 病態 脛骨粗面への牽引による炎症や微細な剥離 身長への影響 成長阻害の医学的根拠なし 自然治癒の時期 成長板が閉じて骨が硬くなる思春期後半 誤解 オスグッドが原因で身長が止まるという根拠のない噂 改善の条件 適切な治療と休養の継続 (文献2) オスグッドは膝下の脛骨粗面に生じる局所的な炎症であり、骨全体の成長を妨げることはなく、身長の伸びにも直接関係しない疾患です。 ただし、成長期の急激な身長の伸びと発症時期が重なりやすいため、オスグッドによって身長が止まると誤解されることがあります。実際には、痛みにより運動量が一時的に減少し、骨への刺激が減ることで成長に間接的な影響を及ぼす可能性がある程度です。 適切な治療と休養を行えば、成長への影響はほとんどなく、身長の伸びも通常通り進行します。 以下の記事では、オスグッドと身長の関係性について詳しく解説しています。 オスグッドの症状 症状 詳細 膝下部の腫れや骨の突出 膝蓋骨のすぐ下にある脛骨粗面の盛り上がりや腫れの出現。骨の一部が突き出たように見える状態。触れると硬く感じる膨隆 運動時・運動後の症状 ジャンプやダッシュなど膝を曲げ伸ばす運動で起こる膝下の違和感。練習後の重だるさや張り感の持続。無理をすると症状の悪化 圧痛や触診時の違和感 指で押した際に感じる局所的な敏感反応。周囲の緊張や筋の硬さによる圧迫感。診察時に確認される特徴的な反応 オスグッドの主な症状は、膝下の脛骨粗面に生じる隆起と痛み、腫れ、熱感などです。多くの場合は片脚に発症し、膝を動かす際に痛みが強く、安静時には軽減します。 成長期には骨の成長に筋肉の発達が追いつかず、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)から脛骨粗面への牽引が強まることで炎症が起こります。柔らかい成長期の骨に繰り返し負荷がかかると、軟骨の一部が剥離し、疼痛や腫脹を伴うのが特徴です。 以下の記事では、ジャンパー膝とオスグッドの違いについて詳しく解説しています。 膝下部の腫れや骨の突出 要因 詳細 脛骨粗面部(成長軟骨部)の炎症と過剰な牽引力 成長期の未成熟な脛骨粗面への繰り返しの牽引刺激。付着部での微細損傷と炎症反応の発生。炎症による軟部組織の浮腫と膝下のふくらみの形成 骨軟骨部への骨化反応・骨片形成による突出 慢性的な炎症や刺激による骨化反応の亢進。骨片形成や硬化による骨表面の突出。触診で認めるこぶ状の隆起 成長期特有の軟らかい骨構造ゆえの影響 骨化途上の軟骨組織を含む脛骨粗面の構造的脆弱性。繰り返しの牽引ストレスによる軟骨や骨端部の微細損傷と変形の発生 (文献5) オスグッドでは、膝下の脛骨粗面が炎症を起こし、腫れや骨の隆起が現れます。 これは、成長期の柔らかい骨に脛骨粗面の牽引力が繰り返し加わることで炎症や浮腫が生じるためです。炎症が長引くと、骨化反応や骨片形成によって硬いこぶ状の膨らみが残ることがありますが、適切な安静と治療で多くは自然に改善します。 運動時・運動後の症状 症状 詳細 膝下(脛骨粗面)の痛み・不快感の増悪 膝の繰り返し動作による牽引刺激と成長軟骨部の炎症反応 腫れ・浮腫の増強 運動刺激による軟部組織の炎症と水分貯留 押すと響くような痛み(圧痛・触診痛) 脛骨粗面への圧迫刺激と炎症部位の過敏化 筋緊張・筋肉の張り感 大腿四頭筋やハムストリングスの過緊張と牽引力の増加 動作制限(屈伸・ジャンプ・階段昇降の困難) 炎症や腫れによる膝関節の可動域制限 オスグッドは、膝に負担のかかる動作で膝下に痛みや張りが生じ、練習量が多い時期に悪化しやすい疾患です。 痛みがあっても我慢して運動を続けてしまうケースがよく見られますが、これは炎症を長引かせ、回復を遅らせる原因となります。少しでも違和感があれば、無理をせず早めに整形外科を受診しましょう。 圧痛や触診時の違和感 要因 詳細 腱付着部の炎症・浮腫 繰り返しの牽引刺激による骨接合部の炎症反応と局所の浮腫形成 骨軟骨部・成長線部の脆弱性 未成熟な骨・軟骨構造による牽引ストレスへの弱さと微細損傷の発生 骨片分離・骨隆起の刺激 炎症や牽引による骨片形成や隆起が周囲組織を刺激する状態 血流増加・神経過敏化 炎症による血流の亢進と神経感受性の上昇による刺激過敏 オスグッドでは、膝下の脛骨粗面を押すとズーンと響くような違和感や痛みが生じ、腫れや熱感を伴い、膝の屈伸や正座が困難になります。 圧痛は診断の重要な所見であり、整形外科では押圧による痛みの反応や腫れの範囲を確認します。無理な押圧やマッサージは症状を悪化させるため、自己判断を避けて医師の指導を受けることが重要です。 オスグッドの原因 原因 詳細 成長期の骨と筋肉のアンバランス 骨の急速な成長に筋肉の伸びが追いつかず、膝下への牽引ストレスが増加する状態 運動による過度な負担 ジャンプやダッシュなどの繰り返し動作による脛骨粗面への過剰な牽引刺激 姿勢や身体のバランスの崩れ 猫背や反り腰、筋力の左右差などによる下肢アライメント不良と膝への負担集中 栄養バランスの乱れ 成長期に必要なカルシウム・ビタミンD・たんぱく質の不足による骨・筋肉の発達不均衡 オスグッドは、成長期における骨と筋肉の発達のアンバランスに、運動による過度な負担が加わることで発症します。 急速に成長する骨に筋肉の伸びが追いつかず、膝下の脛骨粗面に強い牽引力がかかることが主な原因です。 さらに、猫背や反り腰などの姿勢不良、筋力の左右差、栄養バランスの乱れもリスクを高めます。適切な休養と身体の使い方の見直しが予防に重要です。 以下の記事では、膝が痛い時に疑われる病気を一覧で詳しく解説しています。 成長期の骨と筋肉のアンバランス 成長期(10〜15歳頃)には、骨の成長が筋肉や腱の発達より速く進むことでバランスが崩れ、柔らかい成長軟骨(脛骨粗面など)が大腿四頭筋の牽引によって炎症や損傷を起こしやすくなります。 さらに、筋肉の硬化や柔軟性の低下、繰り返されるジャンプやダッシュ、不適切なフォームなどが膝下への負担を増大させ、オスグッドの発症を招きます。 骨と筋肉の成長差による牽引ストレスが成長期特有の膝痛の主因とされており、日頃からのストレッチや身体のケアが予防に不可欠です。 運動による過度な負担 成長期には、骨の成長が筋肉や腱の発達より速く進むことでバランスが崩れ、膝下(脛骨粗面)への牽引力が強まります。 大腿四頭筋の柔軟性低下により膝下の軟骨部に負担がかかり、未成熟な脛骨粗面が繰り返す膝の屈伸動作で損傷しやすくなります。不適切なフォーム、姿勢不良、休養不足、硬い地面での運動も症状を悪化させる要因です。 姿勢や身体のバランスの崩れ 姿勢の乱れや身体のバランスの崩れは、オスグッドの発症や悪化の要因です。体幹の筋力が低下して姿勢が不安定になると膝への負担が増え、骨盤が後ろに傾いたり関節の位置関係が崩れたりすると、膝前面へのストレスが強まります。 大腿四頭筋やハムストリングスの柔軟性が低下したり、筋力のバランスが崩れたりすると、膝下への引っ張る力が高まります。 ジャンプや着地で姿勢が崩れ膝が内側に入ると捻れの負担が生じるため、体幹や下肢の筋力・柔軟性を整えることがオスグッドの予防と再発防止に欠かせません。 栄養バランスの乱れ 原因 内容 骨や軟骨の発育不良 カルシウム・ビタミンD・マグネシウム不足による骨・軟骨の発育障害、脛骨粗面の脆弱化 筋肉の修復遅延 タンパク質不足による筋肉の硬化・柔軟性低下、脛骨粗面への過剰な牽引力 体力・回復力の低下 ビタミン・鉄分不足による全身疲労・回復遅延、膝周囲組織の炎症や損傷 タンパク質の劣化(糖化) 糖質過多によるタンパク質機能の低下、筋力低下・骨の脆弱化 成長期のエネルギー不足 栄養偏りによる発育スピードと回復力の不均衡、骨・筋肉への過剰負荷 栄養不足は骨を脆くし、オスグッドのリスクを高めます。カルシウム、たんぱく質、ビタミンDの不足は骨の強度を低下させ、膝下の炎症を起こしやすくします。 成長期は過度な食事制限や偏食を避け、発育と運動量に合った栄養摂取を心がけましょう。 オスグッドの検査方法 検査項目 内容 問診・触診 年齢・スポーツ歴・症状を確認し、脛骨粗面の圧痛・腫れ・隆起を評価 X線検査 脛骨粗面の形状・骨皮質の不整・剥離骨片の有無を確認し、進行度を把握 超音波検査(エコー) 炎症・腱の肥厚・滑液包の腫れ・骨の突出を観察 MRI検査 靭帯・軟部組織・骨端軟骨の損傷や炎症を詳細に評価し、他疾患との鑑別に有用 オスグッドは、問診・視診・触診で膝下の隆起や圧痛を確認し、必要に応じて画像検査を行います。X線では脛骨粗面の分節化、骨片、骨皮質不整などを評価し、症状が強い場合や鑑別が必要な際には、超音波検査やMRI検査で軟部組織の炎症を詳細に評価します。 オスグッドの治し方(治療法) 治療法 詳細 保存療法 運動量の制限や休養による膝への負担軽減。ストレッチや筋力バランスの改善による牽引力の抑制。患部の冷却やサポーター使用による炎症の鎮静化 薬物療法 消炎鎮痛薬による炎症の抑制。腫れや違和感の軽減を目的とした短期投与。外用薬による局所症状の緩和 手術療法 重症例での突出骨片や腱付着部の調整。慢性化に伴う骨片除去や再固定 再生医療 自己血由来因子や細胞治療による骨・腱組織の修復促進。損傷部位の再生による機能回復の支援 オスグッドの治療は、症状に応じて段階的に行い、初期は運動制限やストレッチ、アイシングで膝への負荷を軽減します。 痛みが強い場合は消炎鎮痛薬の内服や外用で炎症を抑え、保存療法で改善しない重症例では骨片除去などの外科的治療を行います。 近年はPRP(多血小板血漿)療法などの再生医療も導入され、組織修復と早期回復が期待されますが、対応できる医療機関は限られるため、医師への相談が必要です。 保存療法 対処法 詳細 運動制限・活動調整 ジャンプ、ダッシュ、屈伸など痛みを誘発する動作の制限。運動頻度や強度の調整による付着部への刺激軽減と回復促進 アイシング(冷却療法)・RICE法 運動後の炎症や腫れを抑えるために患部を冷却する標準的治療。初期は1~2時間おきに1日数回の実施が推奨。炎症部位の鎮静と疼痛緩和に有効 理学療法・ストレッチ・筋力強化 大腿四頭筋やハムストリングスの柔軟性改善と筋力強化。牽引応力の軽減による再発防止と症状改善 サポーター・テーピング・膝保護具 脛骨粗面への負荷軽減を目的とした補助具の使用。疼痛緩和と関節安定性の維持。運動時や復帰期のサポート 保存療法はオスグッド病治療の基本であり、膝への負担を減らして炎症の悪化を防ぎ、自然治癒を促します。アイシングで炎症を抑え、ストレッチや理学療法で筋肉の柔軟性を高めます。 電気治療や温熱療法による血流改善、テーピングやサポーターによる負担軽減も有効です。継続的なリハビリで筋力バランスを整え、再発を予防します。 ある報告では、保存療法で約1年後に90%近くが臨床的改善を示したとされています。(文献6) 薬物療法 効果・目的 詳細 炎症と痛みの軽減 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による炎症抑制と疼痛緩和 急性期の症状緩和 痛みの強い時期における症状悪化の防止と早期回復の促進 保存療法の補助 休息やストレッチと併用による疼痛コントロールと生活の質の向上 注射療法による局所治療 痛みの部位への薬剤注入による即効的な炎症軽減と慢性化防止 症状が強い場合には、整形外科で消炎鎮痛薬が処方され、痛みや炎症を抑えることでリハビリやストレッチを進めやすくします。 湿布薬や塗り薬が併用されることもありますが、市販薬を自己判断で長期間使用すると治癒が遅れる可能性があるため注意が必要です。薬物療法はあくまで補助的な手段であり、根本的な改善には運動量の調整と身体のケアが欠かせません。 手術療法 オスグッド病の手術療法は、運動制限やリハビリ、薬物療法などの保存療法で十分な改善が得られない重症例に対して検討されます。脛骨粗面の骨片が遊離して周囲組織を刺激し、強い痛みや日常生活への支障が続く場合が主な適応です。 代表的な手術法には、剥離した骨片を除去する骨片摘出術と、突出した骨を削って形状を整える骨切り術があります。 多くの報告で手術後は疼痛の軽減と高いスポーツ復帰率が示されており、6症例の報告では平均21週6日後に全例が競技復帰を果たし、術後評価も良好でした。(文献7) さらに、長期経過観察の研究でも成績は良好で、疼痛残存例や再手術例は少数とされています。(文献8) 合併症は比較的少なく、軽度なものや修正治療を要する例が一部報告されています。(文献8)手術療法は最終的な治療手段であり、症状や生活状況に応じた慎重な検討が重要です。 再生医療 オスグッドの症状に対して、再生医療では、患者自身の血液成分を利用して組織修復を促します。PRP療法は、血小板に含まれる成長因子を患部へ注入する方法です。軟骨や腱の修復が促進され、炎症と疼痛が軽減します。保存療法との併用により、治療期間の短縮も見込めます。 自己血を使用するため副作用リスクは低いのが特徴です。ただし骨の成長自体を促す治療ではないため、医師による適応判断が欠かせません。 以下の記事では、再生医療について詳しく解説しています。 【関連記事】 再生医療とは オスグッド病(成長痛)の原因と治し方を解説! オスグッドの予防方法 予防方法 詳細 ストレッチとウォーミングアップの習慣化 筋肉や腱の柔軟性維持による膝への牽引力軽減。大腿四頭筋やハムストリングス中心のストレッチ継続と血流促進による損傷予防 正しいフォームでの運動実践 膝への過度な負担を防ぐ動作習得。姿勢や着地動作の改善による関節への衝撃分散と再発防止 運動量と休養のバランス調整 過度な練習の抑制と適切な休息の確保による炎症防止。成長期に合わせた運動量管理による回復促進 適切な栄養バランスを意識する カルシウム、たんぱく質、ビタミンDの摂取による骨・筋肉の発育促進。エネルギー不足防止による疲労耐性向上 オスグッドは成長期に多く見られますが、日常のケアと生活習慣の工夫で予防が期待できます。運動前後のストレッチと正しいフォームの習得により、膝への負担を軽減できます。 また、運動量と休養のバランスを整え、カルシウムやたんぱく質、ビタミンDを含む食事を心がけることが大切です。こうした基本的な取り組みの積み重ねが、再発予防と健康な成長につながります。 ストレッチとウォーミングアップの習慣化 効果・目的 詳細 筋肉の柔軟性を高める 成長期の筋肉や腱の硬化を防ぎ、大腿四頭筋・ハムストリングス・股関節周囲の柔軟性を向上させることで膝への牽引力を軽減 血流促進と筋肉のウォームアップ 運動前の体温上昇と血流促進による筋肉の弾力性・可動域向上。急激な負荷の抑制と発症リスクの低減 ケガの予防とパフォーマンス向上 筋肉の硬さやアンバランスの改善による正しい動作の習得。膝への過剰な負担や不良動作の防止 再発予防 成長期の柔軟性維持による再発防止。身長の急激な伸びに合わせたストレッチ頻度の調整 痛みの悪化防止の注意点 無理なストレッチの回避と痛みの確認。強い痛み時の中止と医師への相談 運動前後のストレッチは、筋肉や腱の柔軟性を保ち、膝への負担を軽減します。とくに大腿四頭筋(太もも前側)や下腿三頭筋(ふくらはぎ)のストレッチが大切です。 ウォーミングアップで血流を促してから本格的な運動を開始することで、筋肉の硬化を防ぎます。日常的な柔軟体操の継続も、再発予防に有効です。 以下の記事では、オスグッドにおけるストレッチの方法を詳しく解説しています。 正しいフォームでの運動実践 効果・目的 詳細 膝への負担軽減 膝がつま先より前に出る、内側に入るなどの誤った動作の防止。正しい屈曲角度の維持による脛骨粗面への牽引力の調整と膝関節への負担軽減 怪我のリスク低減 姿勢の安定による膝・腰・股関節の保護。関節全体の安定性向上による捻挫やスポーツ障害の予防 スポーツパフォーマンスの向上 正しい姿勢の習得による動作効率と俊敏性の向上 運動の習慣化と自己管理 指導者やトレーナーによるフォーム確認と修正。動画記録による動作改善と運動習慣の定着 姿勢や動作の癖は膝下への負担を増やし、オスグッド病の発症リスクを高めます。医師の指導を受けて正しい身体の使い方を身につけることが大切です。 膝をつま先より前に出さず、脚を肩幅に保ち、腰とつま先の向きを整えることで膝への負担を分散できます。正しいフォームを意識することは、成長期の膝を守り、オスグッド病の予防と再発防止に有効です。 運動量と休養のバランス調整 項目 詳細 痛みのレベルに応じた運動量調整 軽度の痛み時は運動継続、中等度の痛み時はジャンプやダッシュを控える部分休養、強い痛み時は休養による安静確保 無理な運動継続のリスク 痛みを我慢した運動による炎症悪化と回復遅延。休養期間延長と競技復帰遅延のリスク増加 休養中の身体機能維持トレーニング 体幹・股関節周囲の筋力維持。上半身運動や水中運動による心肺機能の保持と回復促進 適切な休養の重要性 睡眠と休息による疲労回復。ストレッチやアイシングによる炎症抑制と筋肉・関節の回復促進 段階的復帰のすすめ 症状軽減後の運動負荷の漸増による再発防止。スポーツ復帰とパフォーマンス維持の両立 成長期の子どもは休まず運動を続けてしまいがちですが、身体は休養によって回復し発達します。休養日を設けることで、疲労をためないことが予防の基本です。 休養をトレーニングの一部と考え、身体を整える時間の確保が大切です。オスグッドの回復には、痛みに合わせた運動制限と十分な休養が欠かせず、無理のない運動調整と段階的な復帰が再発防止と早期回復につながります。 以下の記事では、オスグッドのテーピングについて詳しく解説しています。 適切な栄養バランスを意識する オスグッドの予防と改善には、骨や筋肉、軟骨の成長と修復を支える栄養バランスが欠かせません。成長期はコラーゲンの材料となるタンパク質をはじめ、骨を強くするカルシウムや、筋肉代謝を助けるビタミンB群、鉄分、マグネシウムなどを十分に摂ることが大切です。 糖質のとり過ぎはタンパク質を劣化させ、筋肉や骨を弱くする原因になるため注意が必要です。バランスの良い食事は疲労回復と治癒を促し、必要に応じてプロテインなどで補うのも効果的です。良質な睡眠と規則正しい生活が回復と再発予防を支えます。 オスグッドで気をつけるべきポイント 気をつけるべきポイント 詳細 痛みを我慢せず安静にする 痛みは炎症や損傷のサインであり、無理をせず運動を休止し、安静と冷却で回復を促す 自己流ではなく適切な方法でストレッチを実践する 誤ったストレッチは悪化の原因となるため、医師の指導のもとで正しい方法と強度で行う 栄養と休養のバランスを整える 骨や筋肉の修復には栄養と睡眠が不可欠であり、疲労をためず自然な回復力を高める 心身のサポートを意識する 焦りや不安を軽減し、家族や指導者の励ましによって前向きに治療を続けることが大切 痛みは身体からのサインであり、無理をせず安静にして冷やすことが回復において重要です。ストレッチは自己流を避け、医師の指導のもとで正しく行いましょう。 栄養と睡眠を十分にとり、疲労をためないことも大切です。さらに、焦りや不安を抱えず、家族や指導者の支えを受けながら前向きに治療に取り組むことが大切です。 痛みを我慢せず安静にする 項目 詳細 痛みを放置しない重要性 骨端軟骨の炎症や微小剥離による痛みの悪化防止。炎症の慢性化や安静時痛への進行予防 安静の徹底が症状改善に不可欠 膝への負担軽減と炎症鎮静化。強い痛み時の運動制限とアイシング併用による回復促進 長期間の我慢や放置は危険 骨隆起や形状異常の残存、成人後の遺残痛のリスク。膝以外の関節への二次的障害の発生防止 早期対処が将来の膝の健康を守る 初期段階でのケアによる慢性化防止。早期回復・日常生活への復帰 痛みは身体からの重要なサインです。無理に運動を続けると炎症が悪化し、治癒が遅れる原因になります。 症状が現れたら運動を中止し、整形外科で診察を受けましょう。適切な安静とアイシングで炎症を抑えることが欠かせません。オスグッド病では痛みを我慢せず、早期に対応することが大切です。 自己流ではなく適切な方法でストレッチを実践する オスグッドにおけるストレッチは、症状の悪化を防ぎ回復を促すために、自己流ではなく正しい方法で行いましょう。ストレッチは身体が温まった運動後や入浴後に行い、筋肉を無理なく伸ばすことが効果的です。 とくに、痛みを我慢して行うのは逆効果であり、筋肉が気持ち良いと感じる範囲で20〜30秒間キープし、徐々に柔軟性を高めていくのが理想です。 呼吸を止めずにゆっくり行い、大腿四頭筋やハムストリングス、股関節周囲など関係する筋群をバランスよく伸ばしましょう。急性期の強い痛みがある時期はストレッチを避け、医師や専門家の指導を受けながら、回復段階に合わせて実践します。 栄養と休養のバランスを整える オスグッドの予防と回復には、栄養と休養のバランスが欠かせません。成長期の骨や筋肉、軟骨の発達と修復を支えるためには、タンパク質、カルシウム、ビタミンD、ミネラルをバランスよく摂ることが大切です。 糖質の摂りすぎはタンパク質の質を下げ、筋肉や骨を弱くするため注意しましょう。休養は成長ホルモンの分泌と修復を促す働きがあり、身体は睡眠中に疲労回復や組織の修復を行います。6~8時間の睡眠を目安に、生活リズムを整えましょう。 運動後は栄養補給と休養をうまく組み合わせることで、回復を助け、症状の軽減や再発防止につながります。 心身のサポートを意識する オスグッドの治療には、身体だけでなく心の支えも大切です。成長期の子どもは痛みや運動制限によって不安を感じやすく、ストレスが症状を悪化させることがあります。 親や指導者は子どもの気持ちに寄り添い、励ましやわかりやすい説明でリハビリや治療を継続できる環境作りが欠かせません。 十分な休養と栄養を確保し、痛みを抑えながら運動を続けられるような工夫も必要です。無理のない運動と心のケアが、子どもの回復を支えます。 オスグッドを理解して適切な対策を講じよう オスグッド病は成長期によくみられる膝の障害ですが、適切に対応をすれば回復が見込めます。症状の程度に合わせたケアを行うことが悪化を防ぐポイントです。 医療機関で適切な診断を受け、無理をせず身体を休めつつ、ストレッチ・栄養管理・休養を心がけることが再発防止と健康な成長につながります。 オスグッドについてお悩みの方は、当院「リペアセルクリニック」へご相談ください。当院では、オスグッドの損傷部位に対して再生医療を用いた治療を行っています。再生医療は、脛骨粗面付着部から脛骨粗面にかけての炎症や微細な損傷など、治りにくい症状に対して有効な治療法です。 PRP(多血小板血漿)などの生体由来製剤を用い、成長因子の働きで炎症を抑え、組織の修復を促します。すべての症例に適応するわけではありませんが、症状や状態に応じて選択される治療法のひとつです。 ご質問やご相談は、「メール」もしくは「オンラインカウンセリング」で受け付けておりますので、お気軽にお申し付けください。 オスグッドに関するよくある質問 オスグッドを早く治す方法はありますか? オスグッドを早く治す特別な方法はなく、最も重要なのは安静にすることです。主な原因は大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)の使いすぎであり、筋肉を休ませることが回復への近道です。軽いストレッチは回復を助ける効果があり、大腿四頭筋をやさしく伸ばすことで筋肉をほぐし、膝への負担を軽減できます。 オスグッドの治療法には「再生医療」の選択肢もあります。 再生医療の「PRP療法(多血小板血漿療法)」は、患者様自身の血液から血小板を濃縮した液体を患部に注射する治療法です。 詳しい治療法については、当院「リペアセルクリニック」の無料のメール相談にてお気軽にお問い合わせください。 以下の記事では、オスグッドの治療法について詳しく解説しています。 オスグッドによる膝の出っ張りは大人になったら治りますか? オスグッドによる膝の出っ張りは、大人になっても残る場合があります。 また、まれにその部分を押すと痛みが出たり、運動中に違和感を覚えたりするケースもあります。 出っ張りや痛みが気になるときは、治療によって緩和を目指す方法もありますので、専門の医師に相談しましょう。 以下の記事では、大人のオスグッドについてい詳しく解説しています。 オスグッドは整形外科と接骨院どちらを受診すべきですか? 初期診断や治療方針の決定には整形外科の受診が適切です。X線などの画像検査で状態を確認し、必要に応じてリハビリを行います。 オスグッドに対してサプリメントは効果ありますか? オスグッドに対するサプリメントの効果について、現時点で十分な医学的証拠はありません。 ただし、栄養学的研究では、アミノ酸、ビタミンC、ビタミンD、亜鉛、銅などが腱や靱帯、結合組織の修復や維持に関与する可能性が指摘されています。(文献9) とくに、コラーゲンペプチドとビタミンCの併用は腱修復を促す補助的効果が期待される報告もあります。(文献10) 参考文献 (文献1) オスグッド病|スポーツ損傷シリーズ (文献2) Osgood-Schlatter Disease|National Library of Medicine National Center for Biotechnology Information (文献3) Osgood-Schlatter disease: a 2020 update of a common knee condition in children|PubMed (文献4) Incidence and management of Osgood–Schlatter disease in general practice: retrospective cohort study|PMC PubMed Central (文献5) Apophysitis of the Tibial Tuberosity (Osgood-Schlatter Disease): A Review|PMC PubMed Central (文献6) Osgood-Schlatter Disease: Appearance, Diagnosis and Treatment: A Narrative Review|Healthcare (Basel) (文献7) Surgical Treatment Outcomes of Unresolved Osgood-Schlatter Disease in Adolescent Athletes|PMC PubMed Central (文献8) Long-term outcome after surgical treatment of unresolved osgood-schlatter disease in young men: surgical technique|PubMed (文献9) Nutritional research may be useful in treating tendon injuries|PubMed (文献10) The impact of nutrition on tendon health and tendinopathy: a systematic review|J Int Soc Sports Nutr
2022.03.10






