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40代以降になってから現れてくる膝の痛みの原因には、どのようなものがあるのか気になる方はいませんか。 膝関節は加齢とともに衰えやすくなるため、そのままにすると痛みや骨の変形などを引き起こす原因となります。 とくに40代以降になると「変形性膝関節症」を発症しやすくなるので、その病気も疑う必要があるでしょう。 この記事では、40代以降で膝が痛くなる原因や治療法などをご紹介します。どのような対処法があるのかを把握・実践することで、膝の痛みを軽減できるきっかけになるでしょう。 40代以降で膝が痛む原因の多くは「変形性膝関節症」 変形性膝関節症とは、膝の関節内でクッションの役割をしている関節軟骨がすり減ってしまう病気です。関節軟骨がすり減ることで、骨と骨が摩擦を起こすようになり、膝関節の変形や痛みなどが現れます。 若いころはなんともなかったのに、40歳を過ぎたあたりから徐々に膝の痛みを自覚しはじめる方も増えてきています。 40代から50代は働き盛りで、人生にとっても重要な時期といえるでしょう。そんな40代からはじまる膝の痛みの多くが、変形性膝関節症とされています。 ある調査によると、膝に痛みを感じはじめた年齢でもっとも多いのは50代(全体の約29%)であり、次いで40代(全体の25%を占める)といわれています。 変形性膝関節症の原因 変形性膝関節症の原因の代表例は、加齢による関節軟骨の衰えです。 加齢とともに関節軟骨の弾力性が低下すると、クッションとしての役割がうまく果たせなくなります。このことから、変形性膝関節症は加齢にともなって発症しやすくなります。 そのほかにも、以下のような要素も変形性膝関節症の発症原因です。 肥満 遺伝 膝の使いすぎ 外傷による膝の損傷 変形性膝関節症の原因や初期症状について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。 変形性膝関節症の症状 変形性膝関節症のおもな症状は、膝の痛みです。発症初期の段階では、膝のこわばりや違和感などからはじまり、症状が進行するにつれて徐々に痛みが現れます。 とくに、以下のような動作時に痛みが生じる傾向にあります。 歩く 座る かがむ 立ち上がる 階段の昇り降りをする 膝を曲げ伸ばしする 痛みだけでなく、炎症によって膝周囲が腫れることもあるでしょう。また、変形性膝関節症の症状は膝関節に起こりますが、膝の下が痛むケースもあります。 【40代以降】膝が痛む原因の「変形性膝関節症」の症状チェック 40代以降で膝が痛む場合、変形性膝関節症を疑う必要があります。 しかし、変形性膝関節症の有無を判断するには、どのようなポイントに注意すべきなのでしょうか。ここでは、おさえておくべき症状のチェックポイントについて解説します。 膝の痛みの症状チェック 膝の健康を確認するためには、以下の症状をチェックしてみましょう。 これらのチェック項目が多いほど、変形性膝関節症の可能性が高くなります。 膝関節は、普通の道を歩くだけでも体重のおよそ3倍、立つ・しゃがむなどの動作では約8倍の負担がかかるといわれています。 私たちは、普段の生活で知らないうちに膝を酷使しがちです。さらに加齢や体重の増加にともなって膝への負担が高まり、やがて変形性膝関節症につながります。 変形性膝関節症を予防するには体重管理によって肥満を避けつつ、運動などで筋肉を維持して膝への負担軽減が重要です。 膝が痛む場所は内側か外側か 変形性膝関節症の症状が現れる場所は大きく二つに分けられ、それぞれ特徴が異なります。 一つは「膝関節の外側がすり減る外側型」、二つ目が「膝の内側の関節がすり減ってしまう内側型」です。 たとえば、外側型の場合は怪我や病気などによる二次性の原因から発症することがよくあります。 また、内側型では、以下のような一次性の原因が中心です。 加齢 肥満 O脚 膝関節にかかる体重の負荷度合いは、内側が7割、外側が3割程度といわれています。 変形性膝関節症の症状について詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。 【40代以降向け】膝痛の治し方 ここでは、40代以降の中年期に注意すべき膝の痛み、とくに変形性膝関節症の治療方法について紹介します。 膝の負担を減らす 膝の負担を減らすための予防法としては、以下のとおりです。 体重管理に努める(適正体重の維持) O脚の治療 正しい姿勢をキープすることを意識する 正しい靴を選ぶ 正しい歩き方を身に付ける このような方法で膝の負担を軽減し、変形性膝関節症の予防に努めましょう。 ストレッチや運動をする どのようなケースでもおすすめのリハビリは、「膝の曲げ伸ばし」や「軽めのストレッチ」です。ただし、この膝の曲げ伸ばしは、筋力トレーニングではありません。 膝の痛みに対して膝まわりの筋力強化がおすすめと聞くと、早く治したい気持ちからハードなトレーニングをしがちです。 しかし、膝に過度な負担をかけると、余計に症状が悪化する原因となります。そのため、筋トレではなく膝のストレッチや、ゆっくりとした曲げ伸ばし運動などのエクササイズを継続的に行ってみましょう。 変形性膝関節症の治療ガイドラインにもとづいた運動を詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。 手術を必要としない再生医療で治療する 近年では、ヒトの皮下組織に存在する「脂肪組織由来幹細胞」を用いた再生医療によって、膝の痛みが改善する可能性が期待されています。日本でも変形性膝関節症に対して、幹細胞による再生医療が本格的に開始されています。 変形性膝関節症は退行性疾患であり、鎮痛剤や運動をはじめとした保存療法では完全に痛みをおさえることは難しいでしょう。そのため症状が進行した場合、根本的な治療である人工関節置換術や骨切り術などの手術を選択するしかありませんでした。 しかし、脂肪組織由来の幹細胞を用いた再生医療が発展したことにより、膝軟骨の再生が期待できるようになりました。 再生医療によって膝周囲の疼痛が軽減した中で適切な理学療法を行えば、変形性膝関節症における症状の改善につながるのです。 まとめ|40代以降の膝の痛みは放置せずに医師に相談を! 膝の痛みの原因として、仕事や日常動作による膝の酷使、そして加齢が考えられます。とくに40代以降に起こりがちな変形性膝関節症には十分に注意する必要があります。 擦り減った関節軟骨は再生医療を利用する以外、元には戻りませんが、症状の進行を遅らせることは十分に可能です。 また、膝が痛いからといって安静にしすぎるのも良くないことです。膝関節は動かさなくなれば、徐々に衰えて機能が低下してしまいます。 機能低下を予防するには、膝への負担をかけないようにしつつ、体重の管理やストレッチなどのエクササイズが有効です。それでも進行が進む場合は、手術または再生医療などに頼る方法があります。 中年期以降に少しでも膝の部分に違和感や痛みを感じた際は、症状がひどくなる前に、早めに整形外科を受診されることをおすすめします。
2021.10.06 -
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「グルコサミンとコンドロイチンの違いは?」 「グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントに副作用はある?」 グルコサミンやコンドロイチンは、体のあらゆる部分に存在しており、細胞同士をつなぎとめたり、水分を保持したりする性質をもっています。 ただ、グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントによる摂取は、研究結果によると、残念ながら痛みが軽減したエビデンスは少ないのが実情です。 今回はグルコサミンとコンドロイチンの違いを始め、サプリメントの摂取による副作用などを解説します。 思い込みによって効果を感じるプラセボ効果についても解説するので、これからサプリメントの摂取を検討されている方は参考にしてみてください。 グルコサミンとコンドロイチンの違いとは? グルコサミンは、アミノ糖の一種で軟骨を始め、爪や皮膚などに分布しています。 一方、コンドロイチンは、ムコ多糖と呼ばれており、グルコサミンなどのアミノ糖が連なってできた多糖体です。 どちらも体内で自然に生成される成分、関節を構成する成分として有名です。 グルコサミンやコンドロイチンは、体のあらゆる部分に存在しており、細胞同士をつなぎとめたり、水分を保持したりする性質をもっています。 関節内では、コンドロイチンはプロテオグリカンと呼ばれ、軟骨の構成成分としてクッションのような役割を果たし、骨と骨が接触しないよう保護してくれています。 膝・腰・肩などの関節が痛む原因 膝や腰、肩の痛みは多くの場合、加齢によるものが原因です。残念なことに体の機能は、年齢を重ねるにつれて徐々に衰えます。 グルコサミンやコンドロイチンといった体内で生成される成分も、加齢で生産率は減少していき、関節内の柔軟性や弾力性がしだいに失われます。 関節を構成する成分が減ってしまうと脆くなり、軟骨がすり減って骨がぶつかり合い、周辺の神経に伝わって痛みが出てくるのです。 たとえば、重労働や激しい運動など、膝や腰、肩を使いすぎる行動を継続すると痛みの原因になります。 すでに症状があり、膝などの関節痛が治らない方は、根本的な治療を行うほうが良いケースもあります。 当院「リペアセルクリニック」では、膝の痛みに関する再生医療の治療実績もございますので、まずはお気軽にメールや電話にてお問い合わせください。 グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントは関節痛に効果がない 軟骨に豊富に含まれているグルコサミンやコンドロイチンは、サプリメントから補給する方法もありますが、実は関節痛には効果がないのがわかっています。 関節の痛みに効果がない理由として、口からの摂取による影響が考えられるでしょう。 消化器官を通過すると、グルコサミンやコンドロイチンの構成成分であるアミノ酸や糖質は、胃液などにより消化および分解されてしまいます。 そのまま体に吸収されるため、軟骨まで到達するとは考えにくいのです。また、軟骨には血管がほとんどなく、栄養として成分が直接届きにくいとされています。 一般的にイメージされるサプリメントの効果は、軟骨減少の改善を始め、膝や腰、肩の痛みにおける症状改善などがあげられます。 ただ、研究結果をみると、グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントがもたらす効能は、科学的な根拠に乏しいのが実情です。 サプリメントの効果に関する研究論文【痛みが軽減したエビデンスは少ない】 米国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)が出資した主要な研究など、一部の研究によると、グルコサミンのサプリメントが痛みを軽減させたエビデンスは、ほとんどあるいはまったくありませんでした。 一部の研究発表では、コンドロイチンやグルコサミンなどの成分をサプリメントとして服用すると、膝や腰、肩の痛みを軽減する可能性があると示唆しています。 ただし、実際のところは「可能性レベル」であって、ほとんどの研究において「劇的な改善をもたらしたといえるほどの効果はない」と報告されています。 実際に大規模な研究結果でも、グルコサミンやコンドロイチンといった成分が関節の痛みに効果があるというエビデンスを示していません。 つまり、グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントが、痛みを軽減するのかは十分な証拠がない状況といえます。 関節痛にサプリメントが効くのは思い込み?プラセボ(プラシーボ)効果とは プラセボ(プラシーボ)効果とは、本来は薬としての効能がまったくない物質を摂取しているのにもかかわらず、効能が得られたと感じることです。 膝や関節に関わるグルコサミンやコンドロイチン、プロテオグリカン、ヒアルロン酸などのサプリメントも、同様に思い込みで効果を実感している可能性もあります。 実際に摂取された方のなかには「痛みが軽くなった」「痛みが半減した」などの意見が上がっている製品もあるようです。 実際に利用者が、どの製品のサプリメントに効果があると感じたのかは正確にはわかりません。 ただ、サプリメントの摂取で、膝や関節への効果を感じている理由としては、プラセボ効果が関わっているのではないかと考えられています。 グルコサミンとコンドロイチンの服用における実験結果 アメリカの臨床研究では、関節痛などの問題を抱えている大勢の方に集まってもらい、2つのグループに分けてモニタリングを行いました。 片方のグループには、グルコサミンやコンドロイチンの「本物のサプリメント」を与えて、もう片方のグループには、まったく何の効果もない「偽のサプリメント」を与えました。 実際にそれぞれのグループに一定の期間服用させたところ、グルコサミンとコンドロイチンの成分が入っているかどうかにかかわらず、以下のような改善が見られたのです。 本物のサプリメントを与えたグループ ・症状の改善が見られた層がいた 偽のサプリメントを与えたグループ ・「痛みが緩和した」「痛みが改善した」 など症状の改善が見られた層がいた 上記はプラセボ効果によるもので、一種の「思い込みによる心理的な働き」と考えられています。 「グルコサミンやコンドロイチンのサプリメントは、摂取すると膝の痛みがとれる」といった情報から、思い込みやイメージなどにより、効いたように感じてしまうのです。 しかし、思い込みだとしても、実際に症状が良くなったと感じるなら、本人にとっては「痛みを改善する目的が達成できた」といった見方もできるかもしれません。 ただ、残念ながら結果が得られなければ、この記事を思い起こしていただければと思います。 グルコサミンとコンドロイチンの副作用 厚生労働省eJIMによると、グルコサミンとコンドロイチンのどちらも、3年間継続して摂取した場合、重篤な副作用は見られない結果でした。(文献1) ただ、本人の体における状態などを始め、服用している薬との飲み合わせによっては、何かしらの副作用が出る可能性もゼロではありません。 サプリメントの摂取を行うときは、必ず医療機関で医師や薬剤師などに問題がないかを確認してみてください。 まとめ|グルコサミンとコンドロイチンのサプリメントが関節痛に効く可能性は低い グルコサミンやコンドロイチンは、体の軟骨成分に豊富に含まれている物質です。 医学的にはサプリメントで成分を補ったとしても、膝や肩などの関節に届く可能性は低く、痛みに効くとは言い切れないのが現状です。 ただ、今後の臨床研究により、なんらかの効能が見つかる可能性もあるかもしれません。 現在膝や肩などの関節痛に悩まされているなら、サプリメントに頼りすぎず、ぜひ整形外科を始めとした医療機関の受診をおすすめします。 痛みには思わぬ病気が隠れている場合もあるため、早期発見と早期治療が何よりの対処法です。 体の痛みや違和感といった症状を放置せず、しっかりとした診断に基づく治療を受けてみてください。 また、膝まわりの痛みに関しては、幹細胞を使った再生医療による治療方法もございます。 当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による関節症などの治療実績もございますので、関節に関わる症状がある方は、ぜひメールや電話からお悩みをご相談ください。 グルコサミンとコンドロイチンの違いに関するQ&A グルコサミンとコンドロイチンの違いに関する質問と答えをまとめています。 Q.軟骨成分のプロテオグリカンは関節痛に効果があるの? A.食事やサプリメントによる効果は期待できないと考えられています。 ただ、運動によって血流が良くなると、細胞に栄養などが届きやすくなり、プロテオグリカンの増加が促進されるのがわかっています。 プロテオグリカンと関節痛に関する詳細については、以下の記事を参考にしてみてください。 Q.コラーゲンのサプリメント・ドリンクは関節の違和感などに効果があるの? A.「低分子コラーゲン」「コラーゲンペプチド」と表記があるサプリメントやドリンクは、効果が期待できるかもしれません。 低分子化したものはコラーゲンペプチドとも呼ばれており、粒子が細かく腸壁で吸収されてから血液を通り、皮膚や骨、関節などの全身に届きます。 コラーゲンのサプリメントと関節痛との関わりについては、以下の記事も参考になります。 Q.グルコサミンやコンドロイチンを含む食べ物は? A.以下の食べ物に含まれています。 ・グルコサミン:カニやエビなど(甲殻類の殻) ・コンドロイチン:牛や豚などの軟骨、干しえび、きのこ類、山芋 など 栄養素は相互作用で働くので、偏らずにさまざまな食べ物をバランス良く摂取してみてください。 参考文献 文献1 厚生労働省eJIM|海外の情報 グルコサミンとコンドロイチン
2021.10.06 -
- ひざ関節
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「膝が痛く、変形性膝関節症かもしれない」「変形性膝関節症の診断方法は?」 上記のように、膝に痛みを抱えており、変形性膝関節症を疑っている方もいるでしょう。変形性膝関節症の診断方法はいくつかありますが、代表的なのは画像所見です。 本記事では、変形性膝関節症の画像所見を詳しく解説します。変形性膝関節症の進行に沿った自覚症状や、変形性膝関節症になりやすい方の特徴も紹介しているので、膝に痛みを抱えている方は、ぜひご覧ください。 変形性膝関節症は画像所見で進行度合いを確認できる 変形性膝関節症は、画像所見で進行度合いを確認できます。 画像所見(画像診断)とは、レントゲン検査(X線検査)やMRI検査などの画像結果をもとに、病気の発見や診断をする検査方法です。 変形性膝関節症は、レントゲン検査にて診断されるのが一般的です。寝転んだ状態で正面・側面から撮影する方法と、立って撮影する方法があります。 レントゲン検査によって、白く映し出された大腿骨と脛骨の末端を注視します。変形性膝関節症は進行しているほど、骨の隙間が狭くなるのが特徴です。 骨の形や配置などから軟骨のすり減り具合を確認し、変形性膝関節症の進行度合いを判断します。 レントゲン検査以外にも、膝関節に炎症を起こしていたり、水が溜まっていたりする場合は、関節液検査をするケースもあります。 関節液検査とは、関節液を採取し、変形性膝関節症かを判断する検査方法です。 変形性膝関節症の画像所見によるステージ分離(KL分類) 変形性膝関節症は、画像所見によって4つのステージに分類されます。 ステージ分類は「Kellgren-Lawrence(ケルグレンローレンス)分類」と呼ばれ、グレード0〜4の5段階に分けて進行度合いを表します。グレード分類は、以下の通りです。 grade0 ・大腿骨と脛骨の関節の隙間が十分にある正常な状態 grade1 ・骨の一部がトゲのように尖っている(骨棘)上、関節液が骨に侵入している状態 ・骨への負担が蓄積し、骨が異常に固くなる硬化が見られる grade2 ・関節の隙間が狭くなっているものの、正常1/2以上の隙間がある状態 grade3 ・関節の隙間がさらに狭くなり、正常の1/2以下の状態 grade4 ・関節の隙間がなくなっている状態 ・大腿骨が内側に傾き、大腿骨と脛骨のズレている状態 ・明らかな骨棘の形成が見られる なお、靭帯や軟骨を確認するには、レントゲン検査よりも明暗が確認できるMRI検査が使われます。 変形性膝関節症の進行に沿った自覚症状の分類|前期から末期まで 変形性膝関節症は、進行度合いによって自覚症状が異なり、前期・初期・中期・末期に分類されます。 膝に痛みや違和感を抱いている方は、4つの分類に当てはまる可能性もあるでしょう。 ここからは、変形性膝関節症の進行に沿った自覚症状の分類を詳しく紹介します。 前期 変形性膝関節症の前期は、関節軟骨に劣化や痛みが出る「軟骨変性」が発生します。 自覚症状はほとんどありませんが、長い年月をかけて関節軟骨の弾力が少しずつ衰え、病気は進行していきます。 一度衰えた軟骨は、自然治癒できないため、膝への負担軽減や運動療法による筋力向上で進行を食い止める方法しかありません。 初期 初期段階になると、前期にはなかった自覚症状が出始めます。 自覚症状が出る理由として、初期段階から徐々に軟骨がすり減り始めるためです。自覚症状は以下があげられます。 軽い痛み 動かしにくさ こわばり 違和感 初期段階で発生する「軟骨変性」が進むと、関節軟骨が持つ骨と骨の間のクッション機能が失われます。 1カ所の骨に過度な負荷がかかると「骨硬化」が見られます。骨硬化とは、骨同士がぶつかり合い、骨が固くなる状態です。 他にも「滑膜」と呼ばれる、関節を覆っている膜状の組織が炎症を起こし、激しい痛みが生じるのも初期の特徴です。 中期 変形性膝関節症の進行度合いが中期になると、初期の激しい痛みは軽減されます。 しかし、激しい痛みは落ち着くものの、痛みは慢性化し、日常生活の動作に影響が出始めます。支障が出やすい動作は、以下の通りです。 階段の昇り降り 立ち上がり 正座 膝の曲げ伸ばし 膝を動かす度に痛みが生じるため、できるだけ膝を動かさないようにすると、膝周辺の筋肉や靭帯を動かす機会が減少します。 膝を動かさずにいると、膝関節の動きが固くなり、動かしにくくなります。 関節の動きに制限がかかる状態を「拘縮(こうしゅく)」と呼び、神経や血管を圧迫して痛みが悪化する可能性もあります。 末期 末期になると、膝関節の軟骨がほとんど擦り切れた状態になり、安静時も痛みが生じます。 大腿骨と脛骨が直接ぶつかるため、立つ・座る・歩くといった生活の基本の動作もまともにできなくなります。 さらに杖や手すりなど、頼りにするものがないと歩くのは難しくなる点も、末期の特徴です。最悪の場合は、寝たきりになるケースもあります。 末期の場合は、薬物治療や運動療法では改善を見込めないため「骨切り手術」や「人工関節置換術」などの手術療法を行います。 変形性膝関節症になりやすい方の特徴 変形性膝関節症の原因は、加齢や膝への過度な負担などさまざまですが、発症しやすい方にはいくつかの特徴があります。 ここからは、変形性膝関節症になりやすい方の特徴を4つ紹介します。 高齢者の方 高齢者の方は、変形性膝関節症を発症しやすい傾向にあります。 年齢を重ねると筋力低下によって、体重を支える膝周りの筋肉が衰え、膝関節に負担がかかりやすくなります。 軟骨や半月板の変性によって、衝撃吸収や柔軟性が低下するのも要因の1つです。 歳を重ねるとともに、運動や外出機会が減少しやすく、筋力も低下する傾向にあるため、日頃から適度な運動を心掛けるのが大切です。 女性の方 変形性膝関節症は、男性よりも女性の方が発症しやすいとされています。 女性は、更年期によるホルモンバランスの乱れによって、骨密度が低下しやすい傾向にあります。骨密度の低下は、骨の強度が下がり、関節に負担がかかりやすくなるため、注意が必要です。 他にも、女性は男性よりも筋肉量が少なく、膝関節に負担がかかりやすい点からも女性は変形性膝関節症を発症しやすいと考えられています。 膝に過度な負荷がかかる生活をしている方 膝の曲げ伸ばしやジャンプなどを頻繁に行うスポーツをしている方は、膝に過度な負荷がかかるため、変形性膝関節症を発症しやすい傾向にあります また農業や重労働など、重たい荷物を持った上で、膝の曲げ伸ばしをする方も変形性膝関節症を発症しやすいとされています。 長年の負荷が蓄積され、膝軟骨が少しずつ摩耗するため、できるだけ負荷を避ける必要があります。 運動習慣がない方 変形性膝関節症になりやすい方の特徴として、運動習慣がない方もあげられます。 運動習慣のない方は、膝周りの筋肉が衰えやすいためです。さらに肥満傾向の方は膝への負荷が大きくなるため、より変形性膝関節症を発症しやすくなります。 膝は体重を支える役割を持っており、階段の昇り降りは体重の6〜7倍の負荷がかかるともいわれています。 そのため、膝の健康維持には適度な運動と体重管理が重要となります。 変形性膝関節症の予防法 変形性膝関節症の予防には、膝に負担をかけない動作を心がけることや、筋トレやウォーキングによる筋力強化が効果的です。 現時点で痛みや違和感がある方も、これらの方法で症状の進行を遅らせる効果を期待できます。 本章では、変形性膝関節症の予防法を2つ紹介します。 できるだけ膝に負担のかからない生活をする 変形性膝関節症を予防するには、普段の生活で膝に負担をかけないことが大切です。 膝への負担を抑えると、発症予防はもちろん、痛みの軽減も期待できます。膝に負担をかけない生活動作は、以下があげられます。 同じ姿勢を長時間続けない 正しい歩き方を身につける 膝関節を温める O脚やX脚の方はインソールで補正する 膝を伸ばして踵から着地し、つま先で後ろから蹴ると、正しい歩き方ができます。 誤った歩き方を続けていると、膝の形が変形したり、本来負担のかからない部分に負荷がかかってしまうため、日頃から正しい歩き方を意識しましょう。 筋トレやウォーキングで筋力を増やす 筋トレやウォーキングで筋力を増やすと、変形性膝関節症の予防効果が期待できます。 なかでも、膝の痛みを予防するには、太ももの筋肉を鍛えるのがおすすめです。太ももにある大腿四頭筋を鍛えると、膝関節を衝撃から守ってくれます。 また、肥満傾向にある方は、筋トレで筋力を増やしつつ、ウォーキングで脂肪を落とすのも大切です。 ウォーキングは有酸素運動に分類され、脂肪燃焼効果を期待できます。 ウォーキングで脂肪を落とし、肥満を解消すると、膝にかかる負担も軽減され、変形性膝関節症の予防につながります。 なお、脂肪を落とすには、食生活の改善も大切です。揚げ物やスイーツなど脂質の多い食事は控え、たんぱく質や野菜を中心とした食事を心がけましょう。 変形性膝関節症の治療法 変形性膝関節症の治療は、保存療法と手術療法の2種類に分けられます。保存療法で改善を見込めない場合、手術療法を行うのが一般的です。 変形性膝関節症の治療法を詳しく見ていきましょう。 保存療法 保存療法とは、病気の原因を直接取り除くのではなく、痛みや違和感などの症状緩和を目指す治療法です。 具体的には、以下があげられます。 運動療法 薬物療法 装具療法 運動療法は、大腿四頭筋をはじめとした膝関節周りの筋肉を鍛える治療法です。 外用薬や内服薬で痛みを抑える薬物治療を併用するケースも多くあります。 また装具療法とは、O脚やX脚など脚の変形をサポートするため、特殊な器具を使った治療法です。 代表的なのは、靴底に「外側くさび状足底挿板(そくていそうばん)」と呼ばれる装具を装着します。 手術療法 あらゆる保存療法でも改善を見込めない場合は、手術療法を行います。 膝関節を人工物に置き換える「人工関節置換術」や、骨を切って角度を変える「高位脛骨骨切り術」などが代表的です。 負担の少ない手術を受けたい方は、関節内に内視鏡を挿入し、専用の器具を用いて行う治療です。手術範囲が小さいため、体への負担の少なさが特徴です。 しかし、膝の変形が進行している場合は、思うような効果を見込めない点が難点とされています。 再生医療 変形性膝関節症の治療法には、再生医療という選択肢も挙げられます。 再生医療は主に患者様の幹細胞を用いた治療で、手術を必要とせず治療期間の短縮を目指せます。 また患者様自身から採取した幹細胞を培養して投与するため、副作用のリスクが低いのも特徴です。 当院「リペアセルクリニック」では、変形性膝関節症に対しての再生医療を提供しております。 興味がある方は、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、お気軽にご相談ください。 まとめ・変形性膝関節症は画像所見で進行度合いを確認できる 変形性膝関節症の画像診断と自覚症状における分類について、その見方や仕方をご紹介しました。 両者の進行度合いが一致するとは限らないことから、膝に痛みがないからと油断してはいけません。 膝に違和感を覚えた時点で早期受診・発見すれば、変形性膝関節症の治療の幅を広げ、進行を遅らせられます。 また変形性膝関節症の基本的な治療は「運動療法」です。膝周囲の筋肉を鍛え、膝への負担を軽減できれば、進行を遅らせられるでしょう。 たとえ手術の適応となった場合でも、術後も運動療法を継続するのが大事です。 運動療法により膝の可動域を維持すると、今後の人生をいかに支障なく過ごせるかに関わってきます。 変形性膝関節症には、再生医療の選択肢もあります。従来の治療で効果を実感できなかった方は、再生医療も検討してみてはいかがでしょうか。 リペアセルクリニックでは、変形性膝関節症に対する再生医療を提供しています。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。
2021.09.22 -
- 変形性膝関節症
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膝関節の痛みや機能障害が日常生活に支障をきたす場合、保存療法やリハビリでの改善が難しいケースでは手術が検討されます。 膝手術を行うと、痛みを軽減できたり歩きやすくなったりするなどのメリットが得られます。しかし、デメリットについても理解したうえで、手術を受けるか検討するのが大切です。 本記事では、膝手術のデメリットをまとめました。メリットや膝手術以外の治療法も紹介するので、治療法に悩みを抱えている方は、参考にしてください。 膝手術のデメリット 膝手術を受けるにあたって、デメリットを理解しておくのが重要です。ここでは、膝手術のデメリットを紹介します。 一定期間入院する 術後すぐにリハビリがはじまる 感染症や合併症を引き起こす可能性がある 一定期間経過した場合は再手術を受ける必要がある 膝手術後の生活には一定の制限が設けられる 以下で詳しく解説するので、膝手術のデメリットが知りたい方は参考にしてください。 一定期間入院する 膝手術を行った場合、2日〜1ヶ月ほど入院が必要になります。入院期間に幅が生じる理由は、手術の種類や個人の症状、経過によって日数が異なるためです。 代表的な膝手術と入院期間の目安は、以下の通りです。 代表的な膝手術 入院期間の目安 関節鏡視下手術 約2〜3日 高位脛骨骨切り術 約5〜6週間 人工関節置換 約1カ月 また、手術後、日常生活への復帰までには一定期間要します。膝手術を受ける場合、入院が一定期間必要になる点と、元の生活に戻るまでに時間を要する点を事前に理解しておきましょう。 術後すぐにリハビリがはじまる リハビリは、早い人で手術当日からスタートします。一般的に、手術してすぐは安静にした方が良いと考えがちです。 しかし、膝手術の場合、リハビリが身体機能や痛みの回復を促す効果が期待されています。膝を動かさない状態が続くと、筋肉がくっついて曲がらないまま固まってしまう可能性があるため、できる限り早く膝を動かす練習が重要です。 手術当日は、ベッドの上で上体を起こしたり膝を動かしたりするなどのリハビリからはじめます。術後の状態を見ながらベッドサイドやリハビリ室での訓練といったように、膝関節可動域を向上させるリハビリを実施します。 このような早期からの積極的なリハビリは効果的である反面、筋力や体力が十分でない方にとっては身体的・精神的な負担となることがあります。これが膝手術の大きなデメリットの一つと言えるでしょう。 感染症や合併症を引き起こす可能性がある 膝手術により人工関節にすると、細菌に対する抵抗力が低くなり、感染症や合併症を引き起こす可能性があります。人工関節は手術の傷口や風邪、虫歯などの菌が血流に乗って運ばれてくるケースがあるためです。 感染症に感染した場合、人工関節を入れ替える再手術を行う必要があるため、退院後も日頃から体調管理や虫歯に気をつけて生活しなければなりません。 また、術後は血液が固まりやすい状態になり、血栓のリスクが生じます。感染症や合併症を引き起こす可能性もゼロではないため、膝手術後は日頃から予防策をとる必要があります。 一定期間経過した場合は再手術を受ける必要がある 膝手術から一定期間経過すると、人工関節を取り換えるための再手術を受ける必要があります。一般的に、人工関節の耐用年数は15年~20年ほどが目安です。 人工関節で長期間生活を送っていると、本人が気づかぬうちにゆるみや摩擦が生じる可能性もあります。特に、膝関節に負担がかかりやすい作業や運動をしている場合は、ゆるみや摩擦が生じる原因になります。 ゆるみや摩擦の状態によっては、人工関節を入れ直す再手術が必要です。膝手術をして終わりではなく、人工関節に異常がないか定期的に検査する必要があります。 膝手術後の生活には一定の制限が設けられる 手術後は膝の曲げ伸ばしがしにくくなるため、生活に一定の制限が設けられるデメリットが生じます。主な制限は、以下の通りです。 正座やあぐらをかくのは避ける 重い荷物を持つのを控える 良い姿勢を意識して生活する 適切な体重を維持する ジョギングやテニスなど激しい運動は避ける 膝に負担をかけると、人工関節のゆるみや摩擦が生じる要因になります。激しい運動は控えるのが無難ですが、運動不足は体重増加につながります。 体重増加も膝への負担がかかる原因になるため、運動する際は散歩や水泳など関節への負担がかかりにくいものを選びましょう。トラブルを防ぐためにも、膝に負担がかからない生活を意識するのが大切です。 膝手術のメリット デメリットがあるものの、膝手術により膝関節に関する悩みを解消できます。ここでは、膝手術のメリットを紹介します。 痛みが軽減される 歩きやすくなる 姿勢が良くなる 活動範囲が広がる 以下で詳しく解説するので、膝手術によりもたらされるメリットを知りたい方は参考にしてください。 痛みが軽減される 膝手術のメリットは、膝の痛み軽減が期待できる点です。手術で痛みの原因となる損傷した関節組織を取り除けるため、痛み緩和につながります。 膝の痛みが軽減できると、無意識にかばっていた腰や足首などほかの関節への負担緩和も期待できます。すなわち、膝手術は足腰の痛みを軽減できる点がメリットです。 なお、痛みは軽減されますが、患者によっては術後しばらく疼痛が続く可能性があることも認識しておきましょう。 歩きやすくなる 膝手術には、歩行に関するストレスが緩和されるメリットがあります。人工関節により関節が安定するため、歩きやすくなります。 立ち上がったり歩いたりする際の痛みが軽減され、手術前と比べて早く歩けるようになる可能性も期待できるのが、膝手術を受ける利点です。 膝関節の痛みにより、歩くのが億劫と感じている場合は、安定した足取りで歩けるようになる膝手術を検討しましょう。 姿勢が良くなる 膝手術を受けると、歪みによる身体の負担を軽減するため姿勢が良くなります。術後は、脚が真っすぐ伸びた状態になるためです。 たとえば、O脚(膝の間に隙間がある状態)の方には大きな変化が期待できます。不安定な姿勢が真っすぐ伸びるため、関節や筋肉の負担を軽減し、身体の痛みや不調のリスク低減につながります。 また、膝をかばう姿勢は頭の位置が前下がりになり、暗い印象を与えるケースも少なくありません。膝手術により姿勢が良くなるため、見た目の印象アップ効果も期待できる点がメリットです。 活動範囲が広がる 膝手術は活動の幅を広げられるため、寝たきりや引きこもり防止のメリットがあります。膝関節に痛みがあると外出を億劫に感じやすく、家の中に閉じこもってしまう方も少なくありません。 手術によって痛みが軽減し歩行が楽になることで、外出への抵抗感が減少します。これは単なる移動の改善だけでなく、社会参加の機会を増やし、精神的な健康にも良い影響を与えます。 無理のない範囲で旅行やスポーツが楽しめるようになるため、生活の質向上につながる点が膝手術のメリットです。 家の中に閉じこもりがちな現状を変えたい場合、膝手術を検討してみましょう。 膝手術の選択肢となる再生医療とは 痛みの軽減や生活の質向上といったメリットがある一方で、膝手術には入院や感染症などのデメリットが生じます。手術を避けたい、あるいは踏み切れない場合は再生医療における治療法の「幹細胞治療」を検討するのも選択肢の一つです。 再生医療とは、組織や細胞などを元通りに戻すために、人間が持つ再生力を用いた治療法です。幹細胞治療では、膝関節に幹細胞を注入し、すり減った軟骨を再生させて立ち上がりや歩行時の痛みを軽減します。 手術を必要としないだけでなく、入院が不要な点も再生医療の特徴です。 当院「リペアルセルクリニック」では、膝の痛みや変形性膝関節症の再生医療・幹細胞治療を実施しています。 メール相談やオンラインカウンセリングも提供していますので、お気軽にご相談ください。 まとめ・後悔しないために膝手術のデメリットを理解した上で治療を検討しよう 膝手術を受けると一定期間入院が必要になったり、日常生活に制限が設けられたりするなどのデメリットが生じます。手術を受けてから、元の生活に戻るまでには時間を要するため、術後すぐに症状回復が期待できるわけではない点に注意が必要です。 デメリットがある一方、膝手術を受けると痛みの軽減や生活の質向上といったメリットを得られます。 デメリットとメリット、どちらも理解したうえで、自分にとって最良な治療プランを検討しましょう。 なお、膝の痛みに対する治療法としては、再生医療もあります。膝手術のデメリットにお悩みの方は、再生医療もご検討ください。 膝手術に関するよくある質問 Q.膝手術に後遺症は残りますか 膝の曲げ伸ばしがしづらくなる可能性があります。そのため、以下の行動に不自由を感じる場合が考えられます。 正座やあぐらがかきにくい 靴下を履きにくい 和室トイレが使いにくい 下に落ちたものを拾いにくい 無理に関節を曲げようとすると、脱臼する可能性も少なくありません。脱臼を防ぐためには、生活で一定の制限が必要です。 また、治療後には痛みが残る場合がある点についても理解しておきましょう。 Q.膝の人工関節手術に年齢制限はありますか 膝の人工関節手術に年齢制限は明確に定められておらず、幅広い年齢層が受けています。従来、人工関節手術の負担を考慮して、60歳〜65歳以上の手術が対象となっていました。 日本人の平均余命は約80歳のため、人工関節の耐用年数が15年ほどと考えた際、60歳~65歳以上だと再手術を受ける可能性が低くなります。(文献1) しかし、再手術の可能性を踏まえたうえで手術を希望した場合、年齢制限を設けず手術を実施する施設も増えているのが現状です。 なお、膝の人工関節手術に年齢制限はないため、健康上の問題が無ければ90歳以上の方でも受けられます。 Q.膝手術の費用はどのくらいかかりますか 膝手術の費用は、術式によって異なります。代表的な手術と費用例は、以下の通りです。 手術の種類 手術費用(自己負担額) 関節鏡視下手術 2.5万円〜7.5万円 高位脛骨骨切り術 14.6万円〜43.8万円 人工関節置換術 18.6万円〜55万円 手術費用以外にも差額ベッド代や食事代など、保険適用されない費用が発生する点にも注意が必要です。 膝手術費用の負担を軽減する方法には、「限度額適用認定証」や「高額療養費制度」の2つがあります。膝手術を検討する際は、制度を活用して手術費用の負担をできる限り抑えましょう。 参考文献 (文献1) 厚生労働省「令和4年簡易生命表の概要」2022年 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life22/dl/life22-15.pdf(最終アクセス:2025年2月20日)
2021.09.18 -
- 変形性膝関節症
- ひざ関節
変形性膝関節症の手術費用ってどのくらい? 保険適用は可能なの? 変形性膝関節症と診断され、手術を勧められた際に上記の疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。 結論からお伝えすると、変形性膝関節症の手術費用は、行う術式(手術の種類)によって差があります。 「限度額適用認定」や「高額療養費」などの制度を活用すれば、自己負担を抑えられる可能性があるため、活用しましょう。 本記事では変形性膝関節症の手術にかかる一般的な費用や保険適用時の金額、費用を抑える方法を解説します。 保険適用できる条件も詳しく紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。 変形性膝関節症の手術費用は「術式によって異なる」 変形性膝関節症の手術費用は、術式(行う手術の種類)によって異なります。 変形性膝関節症で行われる代表的な手術は「関節鏡手術」「脛骨の骨切り術」「人工膝関節の置換手術」の3種類があげられます。それぞれの手術費用の例は以下のとおりです。 術式(手術内容) 保険適用前の金額 自己負担額 その他に負担する費用 関節鏡視下手術 250,000円 3割負担:約75,000円 1割負担;約25,000円 差額ベッド代(※): 約5,000円〜20,000円 食事代(1食): 110円〜490円 高位脛骨骨切り術 1,460,000円 3割負担:約438,000円 1割負担;約146,000円 人工関節置換術 1,860,000円 3割負担:約558,000円 1割負担;約186,000円 ※差額ベッド代:病院によって金額が異なる「個室や特別室を希望」した際に発生する、標準的な病室との差額 それぞれの手術費用は、使用される「材料・技術・入院の要否」などにより異なり、健康保険や医療費助成制度を活用して自己負担額が決定されます。 また、差額のベッド代は「個室は2万円〜、2人部屋なら1万円〜」など、入院先の病院によってさまざまです。 ここでは手術の概要や自己負担額について、さらに詳しく解説いたします。 関節鏡視下手術は2.5〜7.5万円 関節鏡視下手術は内視鏡を使って関節内を観察し、損傷した軟骨や滑膜、骨のトゲなどを取り除く手術です。 体への負担が少なく、手術時間や回復までの期間が短い一方、効果が持続しにくく再び痛みが出る場合もあります。 関節鏡手術の費用はおおよそ25万円となっており、負担額による費用は次のとおりです。 自己負担割合 自己負担額 3割負担 約7.5万円 1割負担 約2.5万円 ※上記に差額ベッド代や食事代が自己負担に加算されます。 高位脛骨骨切り術は14.6〜43.8万円 高位脛骨骨切り術は、膝の変形や荷重の偏りを改善するために、脛骨の一部を切除して膝の角度を調整する手術です。 O脚の状態では膝の内側に負担が集中しやすく、骨を切り形状を矯正することで負担を和らげます。 高位脛骨骨切り術の費用は約146万円となっており、負担額による費用は以下のとおりです。 自己負担割合 自己負担額 3割負担 約43.8万円 1割負担 約14.6万円 ※上記に差額ベッド代や食事代が自己負担に加算されます。 人工関節置換術は18.6〜55万円 人工関節置換術は膝の関節全体を人工関節に置き換える手術です。 人工関節に置き換える手術には、関節のすべてを交換する人工膝関節全置換術と、傷んだ部分のみ交換する単顆置換術があります。 多くは全置換術が適用され、痛みの軽減に期待できますが、正座が難しくなるなど関節可動域は低下します。 また、体への侵襲が他の手術と比べて大きい点も特徴的です。 稀に深刻な合併症を伴う可能性もあるため、リスクを理解し手術については医師と相談して判断してください。 手術費用は約186万円です。また、負担額による費用は次のとおりです。 自己負担割合 自己負担額 3割負担 約55万円 1割負担 約18.6万円 ※上記に差額ベッド代や食事代が自己負担に加算されます。 保険適用されない費用 自己負担の割合によって手術費を減額できますが、保険適用外の費用には以下が挙げられます。 保険適用外の項目 自己負担額 差額ベッド代 約5,000円〜20,000円 食事代(1食) 110円〜490円 差額のベッド代とは、病院によって金額が異なる「個室や特別室を希望」した際に発生する、標準的な病室との差額です。 また、入院中の食事代の一部も保険適用外です。たとえば、一般の方が1カ月入院した場合「490円×3食×30日=44,100円」となるでしょう。 ただし、住民税非課税世帯の方は、所得や年齢に応じて1食分の負担額がさらに減ります。 また、変形性膝関節症で手術するメリット・デメリットや、高齢者が手術を受ける際のリスクは以下の記事でも紹介しています。これから変形性膝関節症で手術を検討している方は参考にしていただければ幸いです。 変形性膝関節症で手術費用の負担を軽減する2つの方法 変形性膝関節症の手術費用は高額になりがちですが、負担を軽減するには「限度額適用認定証」や「高額療養費制度」があります。 それぞれの特徴と違いは以下のとおりです。(文献1) 項目 限度額適用認定証 高額療養費制度 目的 医療費の窓口支払いを一時的に減らす 医療費負担が高額になった場合、後で払い戻す 手続き方法 事前に申請し、認定証を医療機関に提示 医療費を一旦支払い、その後申請する 利用の流れ 1. 事前に市区町村役場または社会保険事務所に申請 2. 医療機関で認定証を提示し、限度額内の自己負担で治療を受ける 1. 一旦自己負担分を全額支払う 2. 後で健康保険組合等に申請し、高額療養費として一部払い戻しを受ける 3. 支給まで約3〜4か月かかる場合がある 申請のタイミング 入院・手術前に事前申請 支払い後に後から申請 適用される医療費 月ごとの自己負担限度額に収まる医療費 既に支払った医療費が限度額を超えた分 メリット 窓口支払いが限度額内で済む 突然の高額な医療費も後で軽減される 医療費の支払いで家計を圧迫しないためにも、制度を上手に活用して手術費用を抑える工夫をしましょう。 限度額適用認定証や高額療養費制度の詳細は加入している保険組合にご確認ください。 限度額適用認定証で窓口負担を減らす 1つ目は医療費が高額になった際に負担を軽くしてくれる「限度額適用認定証」です。 健康保険組合などで発行されるため、事前に取得しておくと病院での支払いを限度額内に抑えられます。 そのため、手術によって発生した高額な医療費をその場で支払う必要がなくなり、治療を安心して受けられるでしょう。(文献2) 高額療養費制度を申請して減額する 2つ目は、医療費が高額になったときに払い戻しを受けられる「高額療養費制度」です。 毎月の医療費が一定額を超えた場合、後日払い戻しを申請できます。 収入による限度額が決められているため、超過した分は払い戻し対象です。 また、申請手続きは、健康保険組合や市区町村の窓口で行います。 申請後には数カ月で支給されるため、手術費用の負担が軽くなり長期的な医療費の不安も減るでしょう。 ただし、健康保険内診療で適用されるケースとされない場合もあるので、それぞれ紹介します。(文献3) 高額療養費制度が適用される健康保険内診療 健康保険が適用されるケースは以下のとおりです。 技術代 金属などの材料費 輸血料 麻酔料 検査料 画像診断料 注射料 再診料 入院料 リハビリ料 など 通常の治療費や料院費用、手術代などが対象となり、一定の限度額を超えた際に支給されます。 高額療養費制度が適用されない保険外診療費 健康保険が適用されない費用の例は以下のとおりです。 差額ベッド代 食事代 など 差額ベッド代や特別な検査・先進医療などは、高額療養費制度の対象外で自己負担が必要です。そのため、制度の適用範囲を理解しながら効果的に活用しましょう。 また、制度を利用しても一時的に高額な支払いが発生するのも事実です。 しかし、70歳未満や70歳以上の非課税世帯は「限度額適用認定証」を提示することで、支払いが「自己負担限度額」に抑えられます。 さらに、70〜75歳以上の非課税世帯でない方も「高齢受給者証」や「後期高齢者医療被保険者証」を提示すると限度額までの支払いに抑えられるので、ぜひ活用してください。 ※平成30年8月から70歳以上の方の上限額に変更がありました。 これまで現役並みとされる課税所得145万円以上の方でも限度額適用認定証を必要としませんでしたが、新たに課税所得145万円〜689万円の方は、I〜Ⅲの区分に従って上限額が変更され、限度額適用認定証も必要になりました。詳しくは以下のページをご覧ください。 厚生労働省|高額医療費制度の見直しについて まとめ|変形性膝関節症の手術費用は制度を利用して負担を抑えよう 変形性膝関節症の手術費用は、行う手術の種類によって異なります。最終的な自己負担額は、保険適用の有無や高額療養費制度などの活用によって決定します。 また、「限度額適用認定」や「高額療養費制度」を活用することで、自己負担限度額に抑えた支払いが可能です。 手術については他にも費用がかかる場合が多く、病院によって追加の費用が発生することもあるため、入院前には治療内容や費用について、しっかり相談することをおすすめします。 変形性膝関節症の手術費用についてよくある質問 オスグッドの手術費用はどれくらい? オスグッド・シュラッター病の手術費用は、保険適用の有無や病院の方針によって異なります。 一般的には10万円前後の費用がかかりますが、高額療養費制度の活用によって減額も可能です。 オスグッド・シュラッター病については以下の記事もご覧ください。 変形性膝関節症で入院なしの治療法はある? 変形性膝関節症の治療には、必ずしも入院が必要なわけではありません。 保存療法や日帰り手術が可能な場合も多く、痛みの程度や進行度に応じて選択できます。 また、当院では再生医療・幹細胞治療もおすすめしております。 変形性膝関節症で手術を検討している方は、こちらも参考にしていただければ幸いです。 参考文献一覧 (文献1) 全国健康保険協会|「高額療養費」と 「限度額適用認定証」 について (文献2) 全国健康保険協会 協会けんぽ|健康保険限度額適用認定申請書 (文献3) 厚生労働省|平成30年8月から、 - 高額療養費の上限額が 変わります
2021.09.17 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
「変形性膝関節症でしてはいけないことは?」 「変形性膝関節症のときに仕事の動作で注意したいことは?」 変形性膝関節症とは、膝の軟骨(半月板・関節軟骨)がすり減るのを原因として、膝に痛みや変形をもたらす病気です。 変形性膝関節症の悪化を防ぐには、膝への負担をかけないように過ごす必要があります。 膝は足関節と股関節の間に位置する関節で、立ち座りの動作を始め、歩くといった日常生活の動作に重要な関節のため、大きな負担がかかりがちです。 たとえば、歩行では体重の2~3倍、走ると5倍もの負担がかかります。階段の昇降においては5~6倍、しゃがみ立ちでは7~8倍の負担がかかるといわれています。 今回は、変形性膝関節症でしてはいけないことを仕事の職種別に、対策を含めて解説します。生活のためにも、仕事を辞めるわけにはいかない方は参考にしてみてください。 また、当院「リペアセルクリニック」では、再生医療による変形性膝関節症の治療実績もございます。膝まわりの悩みを抱えておられる方は、ぜひ一度ご相談ください。 変形性膝関節症でしてはいけないこと【仕事の職種別】 変形性膝関節症の人がしてはいけないことは、膝に負担がかかる動作が頻繁に起こる仕事です。 具体的には、以下のような仕事内容が当てはまります。 【膝に負担がかかる動作】 ・立ったり、座ったりを繰り返す ・急な方向転換やストップがある ・ジャンプの動作など膝に強い衝撃がかかる ・長時間の立位を行う ・長距離の歩行を行う ・重い荷物などの上げ下げがある ・しゃがむ、立ち上がるといった動作を行う ただ、膝の関節痛がありながらも、仕事を続けなければならない方も少なくありません。 膝に負担がかかる動作が多い職種について、以下で具体的に対策を考えてみました。痛みの根本的な解決にはなりませんが、予防するときの参考にしてみてください。 ・大工 ・引っ越し作業・配達 ・トラックの運転手 ・デスクワーク ・旅館・茶道の講師 ・スーパー・コンビニのレジ打ち業務 ・営業職 変形性膝関節症の方で、仕事中にサポーターを使うときは以下の記事も参考になります。 大工 大工の仕事は、重たい部材の上げ下げや木材の運搬、長時間の立ち仕事などが多く、膝に負担がかかりがちな仕事です。 床貼りやペンキ塗りをするときは、立ったり座ったりするなど、しゃがみこむ動作が必要になります。 仕事のときは、膝の曲げ伸ばしを助けてくれるタイプのサポーターをつけましょう。また、膝を意識しながら、なるべく負担のかからないような動作を研究してみてください。 また、時間配分を決めて定期的に休みつつ、作業前後にストレッチを取り入れるのも有効です。 引っ越し作業・配達 引っ越しや配達の作業では、重たい荷物を積み下ろしするため、膝に大きな負担がかかります。 ほかにも、階段の昇り降りを始め、繰り返しの屈伸など、膝に大きな負担がかかる作業を繰り返しがちです。 また、誤解されている方が多いのですが、階段や坂道では、上りよりも下るほうが膝への負担が大きくなります。階段の昇降には手すりを持ちながら、上り下りのサポートを行いましょう。 膝を痛めてしまう前にサポーターを装着し、膝の曲げ伸ばしを助けながら、作業の前後は準備運動やストレッチを習慣化してみてください。 トラックの運転手 トラックの運転をされる場合、渋滞などにあうとクラッチを操作する左足の曲げ伸ばしにおいて、膝が悲鳴をあげがちです。 同様に姿勢が崩れると、アクセルの動作でも膝に負担がかかります。 シートに腰をしっかりつけて正しい姿勢で座り、少しでも足の曲げ伸ばしに負担がかからない姿勢を模索しましょう。 また、以下のような状況のときは、膝に負担がかからないように、できる範囲でゆっくりした動作を意識してみてください。 ・高さのある荷台を降りるとき ・運転席から降りるとき ・荷物の出し入れや運搬をするとき ほかにも、高速道路などのサービスエリアで休憩するときは、ストレッチを習慣化するのがおすすめです。短距離のときも、作業の合間に取り入れて体をほぐしてみてください。 デスクワーク 室内のデスクワークは心配がないと思われがちですが、冷房が効いた室内にいると膝が冷えます。膝が冷えると血管が収縮し、血液の流れが悪くなって筋肉が硬くなりがちです。 また、長時間椅子に座っているのも良くありません。膝を動かさないままでは、痛みの物質の排出が滞り、痛みを感じやすくなります。 対策としては、以下の心がけを行うのがおすすめです。 ・膝にブランケットをかけて冷え対策をする ・膝にサポーターをつけて温める ・椅子の高さを調整して膝に負担がかからないようにする ・座る姿勢にも気を使う 時間を決めて、席を立ったり膝のストレッチを行ったりするなど、膝を含めて全身を動かすのが大切です。 旅館・茶道の講師 旅館や茶道の講師は、畳の作法やお茶を振る舞うときに正座の動作が多い仕事です。 正座は膝が折りたたまれる上、自身の体重がかかります。また、椅子から立ち上がるときと比べて、地面から高さがあるので膝への負担がかかりがちです。 とくに正座から立ち上がる動作は、膝に負荷がかかりやすい動作なので要注意です。 対策としてはできる限り、以下の内容を意識してみてください。 ・正座するときはクッションや正座椅子を使う ・立ち上がるときは手で何か支えになるものを持つ ・定期的なストレッチを行う ・負担を減らすために体重の管理を心がける 旅館や茶道の講師として仕事をされている方にかかわらず、正座や床に近いところで作業が多い方は、上記を参考に膝への負担を配慮してみてください。 スーパー・コンビニのレジ打ち業務 スーパーやコンビニなどのレジ打ち業務の特徴は、一定の場所で長時間、立ちっぱなしである点です。 同じ姿勢で長時間過ごすと、膝から上の体重がすべてかかるため、膝への負担が大きくなります。 とくに変形性膝関節症になると、膝に偏った負担がかかって痛みを感じやすくなります。膝への負担を少なくするために、以下の対策を行いましょう。 ・体重管理を行う ・なるべく椅子を使う 椅子に座るのが難しいときは、その場で足踏みをしたり、少しだけでも体を動かすように意識して膝への負担を減らしてみてください。 営業職 営業の外回りで歩く時間が多い方は、靴が重要です。女性の場合、ヒールのように安定性に欠けた靴では膝に負担がかかります。 ほかにも、サンダルやデッキシューズなども、膝に負担がかかるので注意が必要です。 靴を選ぶときは男性も女性も、かかとがしっかり包み込まれるような靴や、ビジネスタイプのウォーキングシューズを選びましょう。 衝撃を吸収するタイプの中敷き(インソール)などを使うのも有効です。 また、歩くときの足腰への負担を減らすには、体重の管理を行うのも大切になります。 ただ、上記で述べてきた方法は解決策ではないので、根本的な治療が重要です。変形性膝関節症に関する膝の痛みは、早めに医療機関で治療に取り組むのをおすすめします。 たとえば、再生医療による治療では幹細胞を使い、手術不要で膝まわりにおける症状の改善をサポートします。 変形性膝関節症になったときの過ごし方 膝に痛みがあると、関節を動かさないようにしがちですが、適度に体を動かすのも大切です。 膝まわりの筋力が落ちてしまうと、かえって関節への負担が高まります。そのため、初期症状がある頃は、膝まわりの筋力が落ちないように、意識して動くのをおすすめします。 ウォーキングなどであれば、歩くと大腿四頭筋を始めとする膝まわりの筋力低下を防げるのでおすすめです。 肥満傾向の方は、筋力を落とさないように注意しながら、脂肪を落として体重を減らすのも大切です。 単に食事量を減らすのではなく、カロリー制限をするなど、食事制限を行うと負荷を減らしながら膝の安定性を高められます。 軽めの運動は大切ではありますが、膝の負担になるほどの運動は行わないように、様子を見ながら取り組んでみてください。 また、日常生活の動作見直しを始め、変形性膝関節症の予防法における詳細は、以下の記事も参考になります。 まとめ|変形性膝関節症になったら膝への負担を減らす工夫をしよう 仕事での屈伸動作や正座、急な方向転換など、膝に負荷がかかる仕事の動作が積み重なると、痛みを感じる原因につながります。 また、軟骨下骨の新陳代謝(骨吸収と形成)に異常をきたすほか、関節軟骨の変性や破壊にもつながるので注意が必要です。 対策としては、膝関節に安定性をもたらすウォーキングや、大腿四頭筋のトレーニングのように、適度に膝を動かすのが変形性膝関節症の予防にも大切です。 仕事で変形性膝関節症の悪化を防ぐには、進行の予防にサポーターを使ったり、ストレッチを定期的に取り入れたりするなど、自分なりの工夫を心がけましょう。 また、根本的な改善には、治療方法を検討するのも重要です。当院「リペアセルクリニック」では、変形性膝関節症における治療方法のひとつとして再生医療を行っています。 以下の動画を参考に、実際に来院された患者様のお声もご覧いただけると幸いです。 https://youtu.be/VAxeH1j4TEY?feature=shared 【リペアセルクリニックへの相談方法】 ・メール相談 ・来院予約 ・電話相談:0120-706-313(オンラインカウンセリングの予約) 変形性膝関節症でしてはいけないことに関わるQ&A 変形性膝関節症でしてはいけないことに関わる質問と答えをまとめています。 Q.変形性膝関節症のときにしてはいけない運動はある? A.以下のように、ひざに負担のかかる運動は避けましょう。 ・テニス ・卓球 ・ゴルフ ・社交ダンス など 屈伸運動やジャンプを必要とする運動は控えながら、なるべく膝への負担が少ない運動を取り入れてみてください。 Q.変形性膝関節症のときは運動したほうが良い? A.はい、適度な運動は大切です。 たとえば、水中運動、地上での適度なウォーキングなどがおすすめです。 室内でできる運動では、厚生労働省に掲載されている椅子に座って行うストレッチなどが参考になります。(文献1) 運動するときは無理をしないように注意して、かかりつけの医師などに相談しながら行いましょう。 運動方法の詳細については、以下の記事も参考にしてみてください。 Q.変形性膝関節症の治療方法は何がある? A.以下のような治療方法があります。 ・薬物療法:飲み薬や湿布薬、塗り薬などを使う ・手術療法:内視鏡手術、人工関節置換術などを行う ・理学療法(運動療法):装具、運動により筋肉や関節などに働きかける ・再生医療:PRP療法などにより自然治癒力に働きかける それぞれの治療方法については、以下の記事で詳しく解説しています。 Q.変形性膝関節症の手術をするメリット・デメリットは? A.手術するメリットとデメリットには、以下のような内容があげられます。 手術のメリット 手術のデメリット ・起床時に膝のこわばりがなくなる ・痛みなく階段を上り下りできる ・膝を気にせずスッと歩き出せる ・膝を気にせず好きなところに出かけられる ・手術そのもので合併症の危険性がある ・膝の曲げ伸ばしに違和感が出る場合もある ・重い荷物を避ける必要がある ・正座ができない ・かがめない、かがみにくくなる ・生活習慣の変化を受け入れる必要がある ・スポーツに支障が出る可能性もある ただし、本人の状態や症状によっては、手術のメリットとデメリットについて、上記に当てはまらない可能性もあります。必ず医療機関で医師にご相談ください。 変形性膝関節症の手術をする前に知っておきたい内容については、以下の記事も参考になります。 参考文献 文献1 厚生労働省|変形性ひざ関節症の人を対象にした運動プログラム
2021.09.13 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
変形性膝関節症の治療法や種類を一挙に解説します(薬物療法、保存療法、手術療法、理学療法、理学療法、再生医療) 変形性膝関節症の治療法(保存療法)にはどんな種類があるの? 変形性膝関節症の治療法については、様々な種類があります。今回は、その治療について徹底して解説させていただきます。変形性膝関節症は、関節軟骨の変性や摩耗を伴う退行性の病気です。 中高齢者の膝関節痛のいちばんの原因疾患として、その頻度は高くみられます。 そして、初期や中期の変形性膝関節症に対しては、さまざまな保存療法が有効であり、ある程度まで進行した変形性膝関節症に対しては、手術が必要となります。 変形性膝関節症の治療法 初期~中期:さまざまな「保存療法」が有効 ~末期:「手術療法」が必要となる 症状としては、初期では起床時や休憩後などでの膝を動かした際に痛みが発生します。痛みは寒い日や、雨の降る日など、天気の悪い日に増悪することが多く、天気のよい日などは痛みを感じにくい場合もあります。 変形性膝関節症の進行に伴い、歩く場合に痛みが発生し、長距離歩行や階段昇降が困難になり、安静時痛や夜間痛が出現することもあります。 また、正座ができなくなるなどの膝関節の屈曲制限や、反対に膝が完全に伸ばせなくなるなどの関節可動域制限が生じてくると日常生活上いろいろな支障がみられます。 変形性膝関節症に対して行われる治療法にはおもに薬物療法・運動療法・理学療法・装具療法・内視鏡手術・人工関節置換術、そして最近注目されている先端医療分野で再生医療というものがあります。 1.薬物療法 変形性膝関節症の薬物療法では、さまざまな薬が処方されます。薬の種類には大きく分けて「内服薬(飲み薬)」「湿布薬」「塗り薬」「坐薬」の4種類があります。 通常、内服薬は頓用、塗り薬や湿布薬は痛みが慢性化した場合の長期使用、坐薬は耐え難い痛みがあるときの緊急用として使用されます。 薬物療法、薬の種類 内服薬(飲み薬) 湿布薬 塗り薬 坐 薬 内服薬として最もよく処方されるのは鎮痛薬で、「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」と「アセトアミノフェン」が多く使用されます。NSAIDsはロキソニン、ボルタレンなどの製品名がよく知られています。 体内の炎症を鎮める薬で、主に痛みが関節の中にある場合によく効きます。ただし、副作用として胃腸障害が現れることがあり、胃痛や吐き気、ときには胃潰瘍になるというケースもあります。そのため、多くの場合「胃薬」も一緒に処方されます。 湿布薬や塗り薬は「外用薬」と呼ばれ、その中にはNSAIDsの成分が含まれており、患部に貼ったり塗ったりすることで経皮吸収(皮膚から吸収すること)され、炎症を鎮める効果が期待できます。 内服薬のような胃腸障害や内臓疾患の心配が少なく、長期使用も可能です。一方でかゆみや、かぶれ、アレルギー反応を起こすこともあり、皮膚が過敏な人は注意が必要です。 薬物療法の種類 内服薬:鎮痛薬 概 要:体内の炎症を鎮める薬、主に痛みが関節の中にある場合に効果が高い 副作用:胃腸障害(胃痛、吐き気、胃潰瘍) NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):ロキソニン、ボルタレンなどの製品名 アセトアミノフェン 外用薬:湿布薬、塗り薬、 概 要:NSAIDsの成分を含み患部に貼付、塗布することで経皮吸収(皮膚から吸収) 副作用:かぶれ、アレルギー等(長期使用も可能) 鎮痛薬や湿布薬などで痛みがひかない場合には、膝の関節内にヒアルロン酸注射を打つことがあります。ヒアルロン酸は、膝の動きを滑らかにし、クッションの役割を担うことに一役買っています。 変形性膝関節症では、関節液中のヒアルロン酸の量が少なかったり、弾性や粘性が低下していたりするため、不足するヒアルロン酸を注射器で関節内に注入します。 膝関節にヒアルロン酸を注入すると、痛みが和らぐほか、膝の動きが滑らかになり、また関節軟骨の栄養になるといった効果が期待できます。 鎮痛薬や湿布薬などで痛みがひかない場合 膝(関節内):注射(ヒアルロン酸) 概 要:膝の動きを滑らかになる。 痛みを和らげ、動きを滑らかする。 運動療法/リハビリ 運動療法は、リハビリの一貫として専門家の指導の下、筋肉をほぐしたり、硬くなった関節の動きを広げて動きやすくするなどの適切な所作、運動を行うことによって痛みや機能の障害を回復させ、或いは改善を目指すために行います。 その他、運動療法は膝周りの弱った筋肉の力を向上させて膝を支えることができるよう、運動機能を取り戻すことを期待して行います。その内容は、以下のような目的をもって各種、組み合わせて行われます。 リハビリの目的 筋力アップ 可動域の拡大 体重管理(必要ならダイエット) ※体重管理は、膝に負担をかけないために重要です。肥満傾向がある場合は、ダイエットも指導することになります。 理学療法・装具療法 装具療法では、装具を用いることで膝関節にかかる負担を軽減し、関節を安定させることで痛みを和らげます。装具は、関節の変形を治す効果はありませんが、普段の生活の立つ、歩くなど膝関節にかかる負担を軽減するのに役立ちます。 希望する人は医師に相談して、自分の関節の状態に合ったものをすすめてもらうといいでしょう。変形性膝関節症の治療に用いる装具には、次のようなものがあります。 ① 装具/サポーター 目的:膝を温める。 効果:患部の細胞の新陳代謝を促進、炎症を鎮める。膝が守られているという安心感。 タイプ:薄型で伸縮性や保温性の高い医療用タイプを選ぶといいでしょう。 ② 足底板/インソール 目的:歩いたりした際の痛みが緩和される。 概要:O脚、X脚タイプの変形性膝関節症の初期、靴の中や足裏に足底板(インソール)を活用する。 タイプ:靴への中敷きタイプ、足裏に直接つける室内用タイプがある。 注意 :初期~中期の患者さんに有効。変形が進行した末期の場合は改善効果が期待できない。 足底板は、物理的な作用で変形した膝関節の角度を一定角度補整できる治療法です。O脚の人の場合、足底板を使って足の外側を高くし、内側を低くすることで、膝の内側に偏っていた負荷が軽くなって痛みが和らぐのです。 内視鏡手術 内視鏡(関節鏡)手術は、腰椎麻酔をしてから膝蓋骨の周辺に1cmほどの小さな切開口を2〜3カ所あけて、カメラのついた内視鏡を挿入し、炎症の原因となるこすれ落ちた軟骨や断裂した半月板、炎症を起こした滑膜などを取り除き、膝痛を改善する手術法です。 滑膜の炎症が強くて水がたまりやすい人、半月板損傷や関節遊離体(いわゆる関節ネズミ)のある人など、膝の痛む原因がはっきりわかっている人に特に有効です。 内視鏡手術の最大の利点は、切開部が小さいため体力的負担が少ないことです。 手術時間は1時間前後と短く、手術当日は翌朝まで安静にしますが、翌日からは歩くことができます。入院も1日程度と短期間で済み、多くの場合2〜3日で通常の生活に戻れます。 人工関節置換術 変形性膝関節症が進行し、痛みがとても強くて歩行が困難になった場合、「人工膝関節置換術」が検討されます。変形した膝関節の骨をインプラント(人工の関節)に置き換えるというもので、膝関節の一部のみを入れ換える「片側置換術(UKA)」と、関節の接合部全体を入れ換える「全置換術(TKA)」に分けられます。 人工膝関節置換術の手術を受けると、痛みはほぼ完全に消え、可動域が広がって滑らかに膝を動かすことができるようになります。O脚やX脚がある場合には、まっすぐな足に矯正され、歩行時に膝のぐらつきがある人はそれも解消されます。 再生医療/PRP療法 再生医療とは、人の細胞が持つ「自然治癒力」を引き出して機能の回復を図る治療法です。 変形性膝関節症の場合、重症化すると手術に頼らざるを得ないのが実情ですが、こうした手術適応例において、組織修復力を持つ再生医療の治療効果が期待されています。 現在、最も多く行われている再生医療が「PRP療法(自己多血小板血漿注入療法)」です。 血小板とは、血液に含まれる細胞のことで、血液を固める働きのほかに、組織の修復を促す成長因子を出す働きがあります。PRP療法では、患者さん自身の血液から、血小板が多く含まれる血小板血漿(PRP)を抽出し、患部に注入します。すると、その部分の組織の修復が促されていきます。 PRPは自分の血液から抽出するため、薬物療法のような副作用がほとんどないという利点があります。その反面、PRPは軟骨や半月板にはならないので、完全に軟骨がなくなってしまった重症の膝痛に対する効果は低下します。 変形性膝関節症では、関節の炎症を抑えて痛みを和らげ、軟骨や骨の変形の進行を防ぐ目的でPRP療法が用いられます。 https://youtu.be/OHnPrPHbtZM?si=IVTQZdjdcf8krciR 再生医療/幹細胞治療 このほかの再生医療には「幹細胞治療」があります。これは、衰えた膝の関節軟骨を再生させて痛みを抑える再生医療です。 幹細胞とは、皮膚や血液など、絶えず細胞が入れ替わる組織を保持するために、新しい細胞を再び産生して補充する能力をもつ細胞のことです。 幹細胞には、分化能(皮膚、血液、神経、血管、骨、筋肉など細胞を作り出す能力)と、自己複製能(自らと同じ能力を持つ細胞に分裂することができる能力)の2つの能力があります。 変形性膝関節症の治療で実用化されているのは「間葉系幹細胞」による軟骨再生療法です。間葉系幹細胞は骨髄に由来する非造血系の細胞ですが、骨髄ばかりか脂肪や骨膜などから比較的容易に取り出すことが可能です。 しかも、骨芽細胞や脂肪細胞だけでなく、軟骨細胞や筋細胞、神経細胞にも分化する能力を持っています。患者さん自身の細胞を使うため拒絶反応や副作用もなく、増殖に伴う老化の影響や分化能の低下が少ないのも大きな特徴です。 培養幹細胞治療では、お腹の脂肪から採取した間葉系幹細胞を培養して膝関節内に注入する治療や、膝の滑膜から採取した間葉系幹細胞を関節内に定期的に注入したり、半月板損傷に対する内視鏡手術の際に幹細胞を移植したりする治療が行われています。 さらに、軟骨細胞そのものを取り出して培養し、欠けた軟骨の再生を促す「自家培養軟骨移植」の研究も進み、実用化されています。これは患者さん自身の軟骨から取り出した細胞を培養し、膝の軟骨が欠けた箇所へ移植することにより、痛みなどの症状を緩和します。 これらの再生医療は、一部を除き自由診療となり、全額が自己負担となります。費用は医療施設によって大きく異なりますのでお問合せされることをお勧めします。 ただ、再生医療は実施する医療機関によって培養手段、投与手法をはじめ特徴が違います。そのため、一律に比較することができず、費用感だけでの比較はあまり意味がありません。興味がお有りならお問合せされることをお勧めします。 当院も再生医療専門のクリニックです。お問合せ頂ければ親切丁寧にご説明させて頂き、無理にお勧めすることもございませんのでお気軽にお問い合わせください。 尚、医療機関が再生医療を行う、あるいは特定細胞加工物を製造する場合には、厚生労働省への届出が法律で定められています。再生医療をお考えならその施設が「再生医療等提供機関」として登録されているか、必ず確認のうえ受診しましょう。 https://youtu.be/JvYn_j6n9io?si=bIobL5rL_HgE3wt3 まとめ・変形性膝関節症の治療方法や種類を一挙に解説します 以上のように、変形性膝関節症を治すための治療法は、薬物療法、保存療法、手術療法、理学療法、理学療法、再生医療などのように様々ありますが、まずは予防が大切です。 普段、日常生活を過ごすというだけでも膝には、体重の何倍もの負担が掛かっています。体重管理に気を付けて体重の増加に敏感になっていただきたいと思います。 それでも膝に痛みや、違和感を感じられたら年齢や症状に応じて整形外科をはじめとした医療機関で検査・診察を受け、医師と相談の上、適応となる治療法を選択してください。 以上、変形性膝関節症の保存療法を徹底解説させていただきました。参考にしていただけると幸いです。 ▼ 再生医療で変形性膝関節症を治療する 変形性膝関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下の情報も参考にされませんか 変形性膝関節症の装具療法の種類と注意点について
2021.09.07 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板損傷の画像診断|超音波(エコー)による検査方法について 超音波検査の特徴には、①簡便かつ非侵襲的(体に傷をつけない)、②リアルタイムで観察可能、③プローブを使用するなどの特徴があります。 検査をするにあたって、場所は選ばず、特別な準備も必要ありません。そのため超音波器械さえあれば、その場で好きなときに好きなだけ検査を行うことができます。また、体の外から当てた超音波は人体には無害で痛みもありません。簡便かつ非侵襲的な診断といえるものです。 最近ではポータブルの超音波器械が普及しており、性能も十分に高いため、器械そのものを持ち込んで集団検診、疫学調査が可能となっています。 スポーツ領域では競技グラウンドや練習現場に、学校などでは集団検診の場で検査が可能であり、一度に大量のデータを集積することも可能となっています。 リアルタイムで観察が可能 超音波画像はリアルタイムで観察できるため、腱板や関節唇上腕二頭筋長頭腱の動態検査、ストレス検査による不安定性の計測が可能です。また超音波の画像をみながら、損傷部位にピンポイントで穿刺(対外から針を刺す)することも可能です。 プローブを使用する 超音波検査ではプローブを用いますが、この際プローブによる軽い圧迫で、患部の圧痛との相関がみられることがあります。腱板の検査においては特にそれが認められ、診断率を上げることが可能です。 (1)使用する装置とプローブ 肩関節の超音波診断に使用する超音波断層装置は、ある程度の上級機種であれば大差はありません。プローブは7.5MHz~10MHz程度のリニアプローブを用いるのが一般的です。 体表面が凹となっている腋窩(わきの下のリンパ節)や肩峰—鎖骨間隙では、小型のコンベックスタイプのプローブが有用です。 (2)肩関節に対する超音波検査 ①患者を坐位または仰臥位とし、肩関節を中間位で軽度伸展させます。 ②まず、上腕二頭筋長頭腱および結節間溝を中心に検索します。肩甲下筋腱は、被検者の上腕を内外旋して小結節付着部を中心に検索します。 ③プローブを頭側へ移動させると棘上筋腱前縁が確認でき、さらに後方へ長軸像のまま棘上筋腱全体を検索します。 ④短軸像でも棘上筋腱全体を調べた後、棘下筋腱を長軸像で付着部を中心に検索します。 ⑤さらに、肩甲棘の中点で棘下筋の筋幅を両側計測します。 腱板損傷の超音波像 (1)肩甲下筋腱断裂・損傷 上腕骨を外旋させ、健側と厚み形態を比較します。健側と比べ腱が非薄化しており、投球障害では頭側関節包面に低エコーを呈します。 (2)棘上筋腱断裂 腱板の表面エコーと内部エコーの変化に注意しながら検査します。 表面エコーが平坦か下方凸になっていれば小断裂の存在を、内部エコーにおいて限局した低エコーが関節包面に存在していれば関節包断裂の存在を、境界エコーが不整で直下の内部エコーが低エコーになっていないケースでは滑液包断裂を示唆します。 また超音波で異常が存在した部位に限局している圧痛を認めたら、臨床的に同部が疼痛の主因になっていることが多いです。 (3)棘下筋断裂 棘下筋は薄いため、左右を比較します。頭側に低エコーを呈することが多いです。 (4)棘下筋萎縮 棘下筋の萎縮は投球動作で出現しやすいです。棘下筋の筋腹の厚みを左右比較するとともに、経時的に観察します。 まとめ・腱板損傷の画像診断|超音波(エコー)による検査方法について 超音波検査は、軟部組織を簡便かつ非侵襲的に診断できるとともに、患者自らモニターに映し出される画像をみることができるという利点があります。 最近では、超音波器機の発達に伴い画像が鮮明化し、診断の精度が向上するとともに、腱板のみならず他の部位にも応用されつつあります。 しかし、まだ診断率は検者の技量と経験に左右されるため、超音波検査の特性と限界を十分理解することが正診率を上げるうえで重要になってきます。 以上、腱板損傷における超音波・画像診断による検査についてご説明しました。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下では腱板損傷の保存療法をご紹介しています 肩の腱板損傷の症状と機能改善のための保存療法について
2021.08.18 -
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 脊椎
頚椎椎間板ヘルニアの各症状と身体所見、治療法|似た病態について解説します 背骨の骨と骨をつなぐ役割の組織を「椎間板」と言い、「頚椎椎間板ヘルニア」とは、椎間板組織が脊柱管内に突出または脱出して脊髓や神経根を圧迫し症状をきたす疾患です。 発症年齢としては、30~50歳代の男性に多くみられます。発生する部位ではC5、C/6(第5頚椎と第6頚椎の間の椎間板で発生)が最も多く、次にC4、C5並びにC6、C7にも多く発症します。(以下の図参照) 事故による外傷性や加齢による経年性による変性が機序となることが多く、「喫煙も危険因子」とされています。 なお脊柱管横断面で「正中型」、「外側型」と「傍正中型」とヘルニアが飛び出た方向で3分類されます。正中ヘルニアを脊髄症、外側型や傍正中型は神経根症や脊髄神経根症(脊髄症と神経根症の合併)をきたすことが多く、画像検査で椎間根ヘルニアを認めても、無症状であることも多いので注意が必要です。 脊柱管横断面 正中型 脊髄症 外側型 神経根症、脊髄神経根症(脊髄症と神経根症の合併) 傍正中型 発症原因 事故による外傷性 加齢による経年性による変性 喫煙も危険因子とされる 症状について 「頸椎症」のほかに、神経根が圧追されると「神経根症」、脊髄が圧迫されると「脊髄症」の症状が生じます。以下に各症状と身体所見、治療法を解説します。 頚椎症 首から肩甲骨にかけて痛みがあり首を動かすに痛みが増強し、安静にすると軽快します。 神経根症(radiculopathy) 上肢への放散痛、知覚障害、しびれ感、脱力感などの症状が生じます。放散痛の領域を詳しく把握することで障害神経根を推測することが可能です。前胸部に放散する疼痛がある狭心症に似た頸性狭心症(cervical angina)と呼ばれる疾患があり、鑑別を必要とします。 脊髄症(myelopathy) ボタンが掛けにくい、著が使いにくい、ボタンを上手く掛けることができない、といった手指巧級運動障害や歩行障害を生じます。痙性歩行により歩容は揺劣となり、階段昇降時には手すりが必要となります。また小走りも難しくなります。 初期は大きなボタンを掛けることはできますが、ワイシャツのような小さいボタンが掛けにくくなります。指または手のひら全体のしびれを訴えることがあり、脊髄の圧迫する部位によってしびれの領域に違いがみられます。手の痺れは手根管症候群などの疾患を除外診断しなければいけません。 進行すると膀胱直腸障害(頻尿、尿勢低下、残尿感、便秘)も自覚するようになります。 身体所見について 身体的な所見としては、以下のような症状があげられます。 頸椎症 頸椎の可動域制限と僧帽筋、棘下筋、棘上筋などに圧痛を生じます。 神経根症 神経根の障害高位に一致した上肢の筋力低下および筋萎縮、感覚障害、深部腱反射の低下が生じます。スパーリングテスト(Spurling test)、ジャクソンテスト(Jackson test)が陽性となることが多いです。 脊髄症 上肢の障害髄節に一致して深部反射が弱くなり、筋力低下が生じることもあります。また錐体路障害により、それ以下の深部反射、ホフマン(Hoffmann)反射、ワルテンベルク(Wartenberg)反射が亢進し、バビンスキー(Babinski)反射、膝・足間代(足クローヌス)も陽性となります。 また小指が閉じることができない指離れ徴候(finger escape sign)がみられ、10秒テスト(手掌を下にしてできるだけ速く、グーパーを繰り返す)では通常20回以下になります。感覚障害は、初期には上肢のみに生じることが多いです。 画像検査について 診断には画像による診断が必要となり、そのため以下のような検査が行われます。 X線像(レントゲン) 椎間板ヘルニアでは一般に椎間板腔狭小化(椎間板と椎間板の間の隙間が狭くなること)や骨棘形成は軽度であることが多いです。高齢者では、骨棘などの変性が著明になると隣接椎間に椎間板ヘルニアが発生することもあります。 MRI(磁気共鳴画像法) 椎間板ヘルニアの局在や、圧迫された脊髄、椎間板変性の度合い、神経根の状態を確認することができます。 脊髄造影(ミエログラフィー) 脳槽・脊髄用の水溶性造影剤をくも膜下腔に注入して、脊髄や神経根を明瞭に描出することができる検査です。脊髄造影後にCTを撮影すると椎間板ヘルニアの局在、神経根や脊髄の圧迫を三次元的にとらえることが可能です。しかし、MRIが導入された現在では、脊髄造影をする機会は減ってきています。 頚椎椎間板ヘルニアの治療法について 頚椎症状、神経根症、脊髄症に分けて説明します。椎間板ヘルニアは自然吸収されることが多いため、無理に手術を選択すべきではないと考えます。 頚椎症に対する治療 頚椎症状のみで手術療法を行うことはあまりありません。消炎鎮痛剤などの薬物療法、トリガーボイントブロック注射、ストレッチなどを行います。 神経根症に対する治療 神経根症は症状によりますが保存療法を行った後に手術療法が検討します。 ●保存療法 消炎鎮痛薬などの薬物療法を行います。頸椎カラーを装着して頸部の安静を図ることもあり、痛みが激しい場合には、副腎皮質ステロイドの内服、硬膜外ブロック、神経根ブロック、星状神神経ブロックなどを併用します。ほとんどの症例で、保存療法により2〜3カ月以内に軽快することが多いです。 ●手術療法 保存療法を2〜3カ月続けても効果がない場合や、進行性の麻痺を認めた場合には手術を行います。推間板ヘルニアは脊髄や神経根の前方にあるため、前方除圧固定術(anterior decompression and fusion)を選択することが多いです。 前方除圧固定術は胸鎖乳突筋の内側から進入し、気管と食道を内側によけて椎間板に到達し、当該高位の椎間板やヘルニアを完全に摘出し、椎体間に腸骨から採取した骨や人工物(インプラント)を移植して固定します。 アライメントの維持や移植骨の脱転を予防する目的で、前方にプレートを使用することもあります。神経根症をきたす椎間板ヘルニアは傍正中型あるいは外側型なので、後方から部分椎弓切除と椎間孔切除を行った上でヘルニアを摘出することもあります。 脊髄症に対する治療 脊髄症では症状により保存療法と重症であれば手術療法が検討され以下のような治療を行います。 ●保存療法 軽度であれば、鎖椎カラーで頸部の安静を図り、椎間板ヘルニアの自然吸収を待ちます。しかし痙性歩行、手指巧緻運動障害により日常生活に支障がある場合や、排尿障害がある場合には、機能障害が永続性となることを避けるために手術を行います。 ●手術療法 脊髄症の場合でも、通常は1椎間での障害で脊髄の前方にヘルニアがあるので、神経根症と同様に前方除圧固定術を選択することが多いです。しかし、椎間板ヘルニアの高位以外でも脊柱管の狭窄がある場合には、後方から椎弓形成術 (laminoplasty)を選択することもあります。 椎弓形成術は脊髄の広範囲な除圧を容易に行うことができ、さらに脊髄を保護する脊柱の後方要素を温存することができます。合併症は比較的少ないですが、頸椎後方伸筋群に侵襲を加えるため、術後に頸部痛をきたしやすいという難点があります。 頸椎椎間板ヘルニア、脊髄症いずれにおいても言えることなんですが症状が出現して手術するまで時間がかかればかかるほど、術後の後遺症は残りやすくなります。後遺症が残るとその後一生治らなかったり、症状が増強することがあります。 そんな場合の最新治療として注目されるのが「再生医療」となります。当院では、数多くの術後の後遺症に対する幹細胞治療を行なっており高い治療効果を得ています。詳しくはこちらへ ▼こちらの動画もご参考になれば幸いです。 https://www.youtube.com/watch?v=0hyJR5VW3oY&t=63s 頸椎椎間板ヘルニアと似た症状の病気 頸椎椎間板ヘルニアと似ていますが違った病態をご紹介しておきます。似ているとはいえ、疾患によって治療方針が変わってくるため、頸肩腕痛を引き起こす疾患との鑑別が大変重要となります。。 肩軟部組織の変性疾患(腱板断裂、凍結肩など) 肩関節の運動痛や肩関節可動域制限を認めれば、頸椎疾患以外と考えます。C5神経根症と腱板断裂は、ともに上腕近位外側の疼痛を訴え、関節の外転ができなくなるので鑑別を必要とします。 C5神経根症では、三角筋や上腕二頭筋で筋力低下を生じることが多いですが、腱板断裂では上腕二頭筋の筋力は通常正常です。 胸郭出口症候群 (thoracic outlet syndrome) 頸肋、中斜角筋、前斜角筋、鎖骨および第1肋骨、小胸筋などにより腕神経叢と鎖骨下動脈が胸郭出口部で圧迫され、上肢の疼痛、しびれ、握力低下、重だるさなどが生じます。 ライトテスト(Wright test)、モーレイテスト(Moley test)、アドソンテスト(Adson test)が陽性となります。胸郭出口症候群の症状は前腕尺側に多いのが特徴です。 肘部管症候群(cubital tunnel syndrome) 尺骨神経の絞扼性神経障害で尺骨神経溝にティネル様徴候(Tinel)がみられます。環指尺側から小指にかけてのしびれや麻痺など感覚障害が生じ、進行すると環指と小指の変形が起きます。 手根管症候群(carpal tunnel syndrome) 正中神経の絞扼性神経障害手根管部でティネル様徴候(Tinel)が陽性になります。母指から環指の痺れや疼痛など生じ、指先の症状は夜間や早朝に強い傾向があります。 母指球筋萎縮が進むと猿手変形が生じます。確定診断には、当該神経の神経伝導速度を測定が必要です。 脊随腫瘍 (spinal cord tumor)、脊椎腫瘍(spiatumor) MRIで容易に確定診断することが可能です。稀に パンコースト(Pancoast)腫瘍により、主に尺骨神経側に神経症状を生じることもあるので注意が必要です。 まとめ・頚椎椎間板ヘルニアの各症状と身体所見、治療法|似た病態 以上、頚椎椎間板ヘルニアで現れる症状の種類と身体の所見、治療法について記し、合わせて似た病態についても解説させて頂きました。 頚椎椎間板ヘルニアは、椎間板組織が脊柱管内に突出または脱出して脊髓や神経根を圧迫し症状を引き起こす疾患です。 30〜50歳代といった年齢の男性に多く見られ、特にC5-C6や、C6-C7の部位で頻繁に発生することが多い疾患です。発症原因は、事故による外傷性や、加齢による変性が主な原因とされ。喫煙も問題視されています。 症状には頚椎症、神経根症、脊髄症があり、それぞれ首から肩甲骨にかけての痛みや、上肢への放散痛、手指の運動障害、歩行障害などが見られます。 その診断には、レントゲン、MRI、脊髄造影などの画像検査によって行われます。 治療法としては保存療法と手術療法があり、保存療法では「消炎鎮痛薬」の使用や「頸椎カラー(首を安定させて保護する目的で使用される装具。多くはプラスチック製で首を固定し、動きを制限することで頚椎を保護する)」の装着が行われます。 手術による治療は、保存療法が効果的ではない場合、また神経障害が進行している場合に選択されて前方除圧固定術や椎弓形成術といあった手術が行われます。 尚、他にも類似した病態に「肩腱板断裂」「胸郭出口症候群」「肘部管症候群」「手根管症候群」「脊髄腫瘍」なども考慮し、区別しなければなりません。 いずれにしても、医療機関で検査の上、医師の診断をもとに症状や病態に合わせた治療法を選択することが大切です。 今回は、頚椎椎間板ヘルニアを大きな視点から、記事に致しました。分かりにくい部分ではございますのでご不明な点があればお問い合わせください。 ▼以下の記事も参考にされませんか 頚椎椎間板ヘルニア!日常生活でやってはいけないこと
2021.08.05 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
肩腱板損傷の画像診断|CT、MRI以外、関節の造影検査をご存知ですか 肩関節疾患の診断において、CTや、MRIの飛躍的な進歩にもかかわらず、造影検査は依然として重要な補助診断法の一つです。この造影検査方法には3種類あります。 陽性造影:ヨード製剤を用います。 陰性造影:空気を用います。 二重造影:ヨード製剤と空気の両方を用います。 この3種類の中では、「1)陽性造影」が広く行われています。 動態関節造影と肩峰下滑液包造影 それぞれの方法をご説明します。 動態関節造影 イメージ透視の映像をビデオなどに連続的に記録する方法で、造影剤のダイナミックな移動が観察でき、所見の見落としを防ぐ事もできるので、肩関節造影時に同時に行っています。 肩峰下滑液包造影 主に腱板滑液包面断裂の診断に用いられています。造影剤(ウログラフイン、イソビストなどの水溶性のもの) 5mLと1%キシロカイン5mLを混和した注射器に、23G短針を接続して、立位または座位で透視下にて、肩峰外側縁のやや下方から AHI(acromio-humeral interval:肩峰前下面の骨皮質と上腕骨頭の頂点との間の距離)の中上 1/3を目標にして、肩峰下滑液包内に刺入します。 二重造影では造影剤1mLと空気10mLを注入します。造影剤が腱板内に入り込んだり、腱板滑液包、局所に貯留したりする場合は腱板滑液包面断裂を疑います。 腱板断裂の関節造影について 関節造影について詳しくご説明します。 腱板断裂で疑われる画像所見 造影剤が肩峰下滑液包に漏出すれば、腱板の全層断裂 (full-thickness tear)の診断が確定します。外旋位前後像で大結節直上に造影剤の漏出があれば棘上筋腱の断裂を疑い、内旋位前後像で大結節直上に造影剤の漏出があれば棘下筋腱の断裂を疑います。 scapular Y像 腱板の断裂部への造影剤の漏出だけでなく、水平断裂像の描出も可能です。長期間経過した腱板小断裂や腱板不全断裂 (関節包面断裂や水平断裂)の描出は難しいので、他動的に肩関節をよく動かして、関節内圧を上げてから再度調べる必要があります。 動態撮影を併用すると、断裂の大きさや断裂部位がより明らかとなります。また、腱板滑液包面断裂の診断には、肩峰下滑液包造影が用いられます。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます 一般的な肩関節造影法について 以下で詳しくご説明いたします。 前方刺入法 ① 検査前にヨードや局所麻酔薬に対するアレルギー反応の有無について確認します。 ② 透視台の上に仰臥位になって貰います。 ③上肢を体側に接して透視台の上に置いた状態で外旋位になるように体位を調整します。 ④ 烏口突起を中心に広範囲に消毒をします。 ⑤ 1%キシロカイン10mLの入った注射器に21Gスパイナル針を接続。 ➅透視下にて烏口突起先端の1cm尾側で、1cm外側から関節裂隙に垂直に刺入。 ⓻少量の局所麻酔薬を注入して抵抗がないこと、上肢を少し内外旋して針先が関節内にあることを確認。 ⑥ 21Gスパイナル針を留置したまま 造影剤 (ウログラフィン、イソビストなどの水溶性のもの) 10mLと1 %キシロカイン10m Lを混和した延長チューブ付きの注射器に交換。 透視下にて確認しながら、ゆっくり注入します。(注入量は約 20rnLとされています。) ⓻造影は内旋位、外旋位および挙上位の3枚の前後像を撮影。 ⑧肩関節疾患に応じて軸射位像と scapular Y像などの撮影を追加します。 正常の画像所見 内旋位像 肩関節の前方組織が弛緩するので、内側に肩甲下筋滑液包(subscapularis bursa)、内下方に関節包前部 (anterior pouch)、および下方に関節包下部(腋窩陥凹; axillary pouchまたは inferior pouch) が描出されます。 外旋位像 肩関節の前方組織が緊張するので、肩甲下筋滑液包、関節包前部、および関節包下部は縮小します。外側に上腕二頭筋長頭腱腱鞘 (bicipital tendon sheath) が描出されます。 挙上位像 肩関節の下方組織が緊張するので、関節包下部は縮小します。上方に上腕二頭筋長頭腱腱 鞘、内側に肩甲下筋滑液位が描出されます。 軸射位像 関節窩の前縁と後縁に関節唇が三角形の陰影として描出され、前方には肩甲下筋滑液包も描出されます。 scapular Y像 前方に肩甲下筋滑液包、前下方に関節包前部、下方に関節包下部、および後下方に関節包後部 (posterior pouch)が描出されます。 以上、肩腱板損傷の画像診断について、CT、MRI以外の検査方法である関節の「造影検査」についてご説明いたしました。今回は、専門的な内容で難しかったかもしれませんが、ご不明な点があればご遠慮なくお問い合わせください。 少しでも参考にしていただけたなら幸いです。 ▼ 再生医療で腱板損傷を治療する 腱板損傷は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下の検査方法もご参考下さい 腱板損傷の診断法、超音波(エコー)による画像検査について
2021.08.04 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板損傷とは 、肩についている腱板と呼ばれる筋肉が損傷する疾患です。腱板損傷になると、肩の痛みや筋力低下の症状が現れます。 腱板損傷を放置すると、痛みの増幅や 腱板断裂 の発症リスクをともなうため、早期治療が大切です。 本記事では、腱板損傷の診断に役立つテストを紹介します。自覚症状があればテストを実施し、腱板損傷の可能性を感じたら病院を受診して適切な治療を受けましょう。 「腱板損傷が悪化して手術が必要になりそう…」という方は、「再生医療 」による治療を一度検討してみてください。身体にメスを入れない治療法で、今注目を浴びています。 腱板損傷の代表的筋力テスト4つ まずは、筋力低下の状態を確認するテストを4つ紹介します。 棘上筋(S S P)テスト 棘下筋(I P S)テスト 肩甲下筋(S S C)テスト Drop arm sign(ドロップアームサイン) 筋肉の可動域に制限が出たり、左右の動きに差が生じたりする場合は、腱板損傷の可能性があります。また、動作で痛みがともなう場合も腱板損傷を疑いましょう。 棘上筋(S S P)テスト 棘上筋は外転(腕を体の横から挙上する動作)で作用する筋肉です。 腱板の中で最も損傷が多いのが棘上筋 であり、棘上筋が断裂すると外転筋力が20〜30%低下するといわれています。 Full can test: 肩関節外転30°で外旋位(親指を上に向ける)にする 腕を上げてもらう力に対し、検者は抵抗を加えてチェックする Empty can test: 肩関節外転30°で内旋位(親指を下に向ける)にする 腕を上げてもらう力に対し、検者は抵抗を加えてチェックする 棘下筋(I P S)テスト 棘下筋は肩関節の外旋(腕を外にひねる動作)で作用する筋肉です。 External rotation lag sign: 腕を下に下ろした状態から肘を90°に曲げます 肘から先を外側に開いていき左右で差がみられれば陽性 肩甲下筋(S S C)テスト 肩甲下筋は肩関節の内旋(腕を内にひねる動作)で作用する筋肉です。腱板損傷の場合、痛みにより手を背中に回す動作ができないことがありますので、そのような時は下の2つのテストを試みる。 Lift off test: 背中に手を回し、その手を背中から離して保持できるかチェックする Bear-hug test: 患側(痛みのある方)の手で、健側(痛みのない方)の肩を押し込み、その力の強さをチェックして評価する Belly-press: 患側(痛みのある方)の手で、お腹を押し込む力の強さをチェックし、評価する Drop arm sign(ドロップアームサイン) 検査する人が外転90°まで持ち上げ、支持している手を離す 患者さんが腕を支えられなかったり、わずかな抵抗で腕を下ろした場合は陽性 このように腱板の各筋肉を個別にスクリーニングするテスト法はありますが、 実際は損傷している筋肉と検査結果が一致しない場合があります。 例えば、棘上筋が単独で損傷している時に肩甲下筋テストで陽性となる場合や、逆に肩甲下筋が損傷している時に棘上筋テストが陽性になる場合があります。 腱板損傷の有無はその他のテストも併用してチェックしましょう。 腱板損傷のテスト法には、筋力テスト以外に疼痛誘発テストがあります。疼痛誘発テストは検査者が患者さんに特定の動きを操作する、または患者さん自身に体を動かしてもらうことで腱板に疼痛が発生するかをチェックし評価します。 ▼ 腱板損傷を再生医療で治療する 腱板損傷の痛む場所を特定する2つのテスト 次に、痛みの部位の特定や状態を確認するテストを2つ紹介します。 インピンジメントサイン ペインフルアークサイン 動作に痛みを感じれば、腱板損傷の可能性があります。 インピンジメントサイン 1) Neer test: 検者は患側の肩甲骨を押し下げ、もう片方の手で外転させていく。 これは上腕骨を肩峰下面に押し当てるテストであり、外転90°を過ぎたあたりで疼痛がみられれば陽性 2) Hawkins test: 検者は屈曲(前方に腕を上げる動作)90°まで腕を上げ、内旋を加える。 これは上腕骨の大結節を烏口肩甲靭帯の下面に押し当てるテスト法であり、疼痛がみられれば陽性。 ペインフルアークサイン 患者さんの力により外転方向に挙上する。 棘上筋が損傷していれば60°〜120°の間で疼痛を感じ、それ以外の角度では疼痛を感じない。 紹介したテストを実施して、腱板損傷の可能性があれば病院を受診しましょう。腱板損傷を放置して、無理に肩を動かせば症状が悪化するリスクがあります。 下記の記事では、腱板損傷の人がやってはいけない動作について解説しています。病院で腱板損傷の診断を受けた方は、日常生活での過ごし方の参考にしてみてください。 腱板損傷の3つの画像診断方法 腱板損傷の診断では上記のテスト法が判断の手がかりになりますが、腱板損傷以外の疾患と鑑別し、正確に損傷部位を特定する場合には、画像による検査が必要となります。腱板損傷ではM R Iや超音波による検査が有用です。 M R I検査 腱板損傷に対する画像診断では、M R Iによる検査が最も有用です。 M R I検査とは磁気共鳴画像といい、レントゲン検査やC T検査のように放射線を使用するのではなく、電磁波を使用した画像診断です。 M R I検査では、どの腱板が損傷しているのか、どの範囲まで損傷しているのか、腱板のどの場所で損傷しているのかなどを評価することが可能です。 超音波(エコー)検査 超音波検査 では、筋肉や腱の状況を確認することができ、炎症が起きている場所の特定も可能です。超音波検査はM R Iと違い診察室で手軽に行える検査のため、患者さんと一緒にモニターを見ながら肩の状態を説明することもできます。 また超音波を当てながら注射の針を進めることで、より正確な目的地(炎症部位や筋膜、神経など)まで誘導することができます。 レントゲン検査 レントゲン検査では筋肉や腱の状態は確認できないため、腱板損傷の判断をするには難しいです。ただし、 腱板が断裂すると関節の隙間(肩峰と上腕骨頭の間)が狭くなることがあります。 また腱板損傷は肩関節の肩峰が変形し、骨棘(こつきょく:トゲのように変形した骨)により腱板がすり切れて発生する場合もありますので、原因究明の手がかりにもなります。 検査して重症と診断されれば、手術になる可能性があります。「手術の傷跡が残るのが嫌だ」「仕事があるから入院やリハビリをしたくない」という方には「再生医療」がおすすめです。 再生医療とは、修復力のある幹細胞の働きを利用して、弱ったり、傷ついたりした細胞を再生する医療技術です。手術のように身体を切開しないので、入院やリハビリをする必要がありません。 再生医療なら弊社 『 リペアセルクリニック 』にご相談ください。再生医療の症例数8,000例以上の経験を活かし、患者さま一人ひとりにあった治療プランをご提案いたします。 まとめ|腱板損傷の疑いがあればテストを受けて確かめよう! 腱板損傷を評価するためのテスト法は検査をする目的によって方法が異なります。陽性反応がみられるテストは痛みを伴いますので、痛みの出る強さはポジション、筋力低下の加減を記録しておくと、治療経過を確認する上での指標にもなります。 ただし、腱板損傷は時間の経過とともに疼痛が消失したり、拘縮により関節の動きに制限がかかり、正確なテストの評価ができないことがあります。また急性期であってもテスト法だけでは情報が不十分なため、画像診断も含めて判断する必要があります。 現在、腱板損傷の治療法のひとつとして「再生医療」 が注目されています。切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 リペアセルクリニック では、無料相談も受け付けていますので「再生医療で腱板損傷をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック 』にお気軽にお問い合わせください。
2021.04.01 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
腱板損傷のリハビリには、損傷を受けていない腱や筋肉の機能向上や患部に負担をかけないための動作改善といった効果があります。 しかし、リハビリを進めていくにあたりいくつか注意点があります。症状の悪化を防ぐためにも、リハビリの正しい実践方法を覚えましょう。 本記事では、腱板損傷におけるリハビリの効果や代表的なリハビリプログラムを解説します。リハビリをとおして、腱板損傷の症状を緩和させたい方は参考にしてみてください。 腱板損傷はリハビリだけで治るのか? 腱板損傷は、損傷の範囲が狭ければリハビリで症状の改善を期待できます。しかし、完全断裂や広範囲の断裂の場合は、リハビリのみでの回復が難しく手術が選択肢に入ってきます。 そもそも、腱板とは肩に付いている筋肉(腱)で「棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋」の4つからなります。腱板損傷では、これらの筋肉のいずれかが損傷し、あるいは複数の筋肉が断裂している状態です。 損傷の程度は筋肉の一部分が損傷している「部分断裂」と、完全に切れてしまった「完全断裂」とに分けられます。 現在、腱板損傷の治療法の1つとして「再生医療」が注目されています。切らない治療法なので、手術の傷跡や術後の後遺症の心配がありません。 無料相談も受け付けていますので「再生医療で腱板損傷をどうやって治療するの?」と気になる方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 腱板損傷におけるリハビリの目的や期間 腱板損傷におけるリハビリの目的は、損傷していない筋や腱の機能向上や損傷した部位に負担をかけないための動作改善です。 腱板損傷のリハビリ期間の目安は、日常生活への復帰なら2〜3カ月程度、スポーツや重労働の仕事への復帰であれば6カ月程度です。 個々の状態によっても、リハビリ期間は変わってきます。自身の状態を把握したい方は、以下の記事で紹介している腱板損傷の筋力や痛み確認テストを試してみてください。 腱板損傷のリハビリでおこなわれる代表的な3つのプログラム ここでは、腱板損傷のリハビリでおこなわれる代表的な3つのプログラムを紹介します。 ・筋力トレーニング ・ストレッチ ・日常生活の訓練 順番に見ていきましょう。 筋力トレーニング 機能低下が認められた腱板に対しては、リハビリとして積極的なトレーニングを指導します。 腱板は体の深いところに位置するため「インナーマッスル」と呼ばれます。そのため、腱板損傷のリハビリを目的とした筋トレは、インナーマッスルに焦点を当てたトレーニングが効果的です。 たとえば、腱板を鍛えるトレーニングでは、筋トレ用のゴム製チューブやタオルを活用して、対象部位を効果的に鍛えるやり方が有効です。 ただし、腱板に収縮時痛(力を入れたときの痛み)や、伸張痛(ストレッチのように筋肉が伸ばされたときの痛み)が出現し、断裂が疑われる腱板に対しては積極的なトレーニングはおこなわず、ほかの腱板に対する運動をおこなうようにします。 ストレッチ ストレッチには、腱板の可動域を広げたり、筋肉の緊張状態をほぐしたりする効果があります。 たとえば、肩の上げ下げや肩回しの動きは腱板損傷の回復に効果が期待できます。 痛みを伴うような過剰なストレッチは、病態の悪化や筋の防御性収縮を招き逆効果となりますので、深呼吸とあわせて実施するなどリラックスをしながら無理のなく進めましょう。 日常生活の指導 腱板損傷の症状を悪化させないために、日常生活における動作の指導もおこなわれます。 以下は、日常生活のなかで腱板に負荷がかかりやすい動作の一例です。 ・衣服の着脱 ・荷物の持ち運び ・寝るときの姿勢 損傷を起こしている部位や症状の程度に応じて、個々に合った動作指導がおこなわれます。 腱板損傷のリハビリでやってはいけない3つのNG行為 腱板損傷のリハビリに取り組む際、やってはいけない行為があります。 ・発症直後に無理をして動かすこと ・焦って負荷をかけすぎること ・リハビリを怠ること 順調な回復を図るためにも、紹介する3つのポイントをおさえてリハビリに臨みましょう。 発症直後に無理をして動かすこと 発症直後は、可動域制限や筋力の低下が認められても、関節内での炎症が強く、無理に関節を動かすと疼痛を助長させてしまうリスクがあります。そのため、発症直後は三角巾を含む固定具を用いて患部の安静を第一優先しなければなりません。 段階的回復を目指すためにも、リハビリは患部の炎症が落ち着いてから進めましょう。 現在、腱板損傷の治療法として「再生医療」が注目されています。 人間の自然治癒力を活用した治療なので、身体への負担を最小限にできます。詳しい治療方法や効果が気になる方は、再生医療専門の『リペアセルクリニック』にお気軽にお問い合わせください。 焦って負荷をかけすぎること リハビリ開始時は、自動介助運動(患者自身が力を入れ、セラピストが補助をする運動)から開始し、徐々に自動運動へと移行します。 自動運動でも痛みを感じずに運動できれば、抵抗運動のように腱板筋に負荷をかけていきます。 ただし、腱板損傷をした肩関節の挙上動作の獲得は、スポーツにたとえると一度覚えたフォームを改善するのと同じように時間を要する場合があります。 そのため、リハビリは焦らず取り組んでいきましょう。 リハビリを怠ること 腱板損傷を発症してから長期間が経過している場合は、関節包の硬化による筋肉の伸張性低下や、疼痛による関節拘縮を起こすケースが多くなります。 リハビリを怠ると症状が慢性化する可能性があるので、医師の指示に従って継続的にリハビリを実施しましょう。 肩の腱板断裂を放置するリスクについてはこちら▼ まとめ|腱板損傷に効果的なリハビリを覚えて回復を目指そう 腱板損傷では受症してからの経過により症状が異なるため、病態に合わせたリハビリが必要です。そして腱板損傷に対するリハビリでは、いかに残存している機能を引き出すか、また残存している機能で日常生活動作を獲得させるかがポイントとなってきます。 本記事で紹介した代表的なリハビリのプログラムを中心に、専門医の指導のもと無理のない範囲で進めていきましょう。 もし手術を勧められ迷われている場合は、切らない治療の「再生医療」という選択肢もあります。 以下の動画で再生医療の詳しい説明をしているので、治療の進め方や効果が気になる方は参考にしてみてください。 https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=bKupVfsXpHM&embeds_referring_euri=https%3A%2F%2Ffuelcells.org%2F&source_ve_path=Mjg2NjY
2021.03.22 -
- 腱板損傷・断裂
- 肩関節
「肩腱板断裂の痛みを少しでも和らげたい」「自分で肩腱板断裂の痛みに対処する方法はない?」 そんな思いを抱えていませんか? 肩腱板断裂は腕を上げるたび鋭い痛みが走るケガであり、夜も眠れないほどの不快感に悩まされている方も多いはずです。日々の生活で痛みを我慢し続けるのは、心身に大きな負担がかかるでしょう。 結論からいえば、肩腱板断裂の痛みは、適切な対処法によって軽減することも可能です。 今回は、肩腱板断裂の痛みを緩和する5つの方法をご紹介します。 最後までご覧いただくことで、痛みの負担を少しでも軽減できるきっかけになるでしょう。 また、当院「リペアセルクリニック」では肩腱板断裂に効果が期待できる再生医療を提供しています。 肩腱板断裂の症状にお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 肩腱板断裂の痛みを和らげる5つの方法 肩腱板断裂の痛みを和らげるには、以下5つの方法があります。 温冷療法 姿勢と腕の位置の矯正ストレッチ 枕の高さのを調整 消炎鎮痛剤や湿布 これらは自宅でも実践できる方法ですが、医師の指導のもと症状や生活スタイルに合わせて取り入れていきましょう。 本章ではそれぞれの対処法を詳しく解説していきます。 また、以下の記事では肩腱板断裂が放置では治らない理由を紹介していますので、気になる方は参考にしていただけると幸いです。 温冷療法で炎症を抑え痛みを軽減 温冷療法は、症状や時期によって温めたり冷やしたりすることで効果的に痛みを軽減する対処法です。 ケガをしてから48時間以内の急性期は冷やすことで炎症を抑制し、それ以降は温めて血行を促進します。 冷却には氷嚢やアイスパックを、温めるにはホットパックや入浴を活用しましょう。 ただし、15分以上の連続使用は避けて皮膚を保護するためにタオルを必ず挟むのがポイントです。(文献1) 正しい姿勢と腕の位置で負担を減らす 日常生活では、正しい姿勢や腕の使い方を工夫すると肩への負担を大きく軽減できます。 とくに気をつけたいのは以下の3点です。 腕を上げすぎない 同じ姿勢を長時間続けない 重いものを持たない デスクワークでは、肘を机につけて支えると肩の負担を減らせます。 また、パソコン作業時はキーボードを体の正面に置き、マウス操作は肘を開きすぎないよう注意しましょう。 こまめに休憩を取り軽く肩を回すのも効果的です。 痛くない範囲でのストレッチ 痛くない範囲で行うストレッチは、肩周りの柔軟性を保ち痛みの軽減に期待できます。 まずは、壁に手をついて体を少しずつ前に傾けるストレッチから始めましょう。 ここでも痛みが出ない程度にゆっくりと動かし、無理な姿勢は避けます。 1回のストレッチは10秒程度を目安に、1日3回ほど実施するのがおすすめです。 徐々に可動域を広げていくと、日常生活での動きやすさも改善していきます。 枕の高さを調整して夜間痛を防ぐ 肩腱板断裂の痛みが夜間に強くなる場合、枕の高さが合っていないのが原因の1つとして挙げられます。 枕が高すぎると肩に負担がかかり、痛みが増す可能性があるためです。 そのため、適切な高さの枕を選ぶと肩が自然な位置に保たれ負担が軽減します。 また、横向きで寝る際は肩を下にせず、クッションで支えると楽になるはずです。 夜間の痛みは睡眠の質を低下させて日中の活動にも影響を及ぼすため、枕の高さを調整して痛みの緩和対策をしましょう。 消炎鎮痛剤や湿布で痛みを抑える 肩腱板断裂の痛みを一時的に抑えるには、消炎鎮痛剤や湿布も有効です。 薬局で購入できる市販の痛み止めや湿布は、炎症を抑える効果があるためです。 湿布は冷感タイプと温感タイプがあるため、症状に合わせて使い分けましょう。 たとえば、炎症や腫れが強い場合は冷感タイプ、慢性的な痛みや筋肉のこわばりが気になる場合は温感タイプが適しています。 ただし、痛みを緩和する一時的な対策であり根本的な治療ではありません。 したがって、長期間使用する際は症状や治療方針について医師への相談をおすすめします。 肩腱板断裂の主な原因3つ 肩腱板断裂が起こる原因は大きく分けて3つあります。 加齢による腱板組織の老化 転倒や外傷による腱板の損傷・断裂 過度の使用(オーバーユース) 年齢や生活習慣、事故などさまざまな要因で発症する可能性があります。 本章では肩腱板断裂の主な3つの原因を詳しく解説していきます。 加齢による腱板組織の老化 加齢に伴う腱板組織の老化は、肩腱板断裂の最も一般的な原因です。 40代後半から徐々に腱板の組織が弱くなり始め、50代以降で断裂のリスクが高まります。 年齢とともに腱板を構成する組織の弾力性が低下し、血行も悪くなるため、日常生活での些細な動作でも断裂を引き起こすことがあります。 加齢による腱板組織の老化は、定期的なストレッチや適度な運動によって、ある程度の予防が可能です。(文献2) 転倒や外傷による腱板の損傷・断裂 転倒やスポーツで肩を強打した際に腱板が損傷することがあるため、外傷が直接的な原因となるケースも少なくありません。 とくに高齢者は転倒時に受け身が取りづらく、肩に衝撃が集中しやすいためです。 また、重い物を持ち上げた際に腱板が急激に引っ張られて断裂する場合もあります。 したがって、外傷による損傷を防ぐためには、転倒防止の対策や筋力トレーニングが効果的です。 万が一、外傷を受けて肩腱板断裂が疑われる際には、早めに医療機関で診察を受けましょう。 体にメスを入れて関節の手術をするということは、術後の関節部の癒着が起こります。この癒着は術後のリハビリで対応しますが、完全に癒着が取れずに関節の可動域が悪くなりそれに伴い痛みが出ることが多々あるのです。痛みは、四十肩・五十肩に似ています。 過度の使用(オーバーユース)腱板の再断裂 日常的に肩を酷使する動作を続けていると、腱板がダメージを受けやすくなります。 たとえば、テニスや野球などのスポーツや、肩を頻繁に動かす職業や趣味を持つ人は注意が必要です。 腱板に休息が取れない状態が続くと、小さな損傷が断裂につながることがあります。 そのため、適切な休息を取り、筋肉をサポートするストレッチやトレーニングを取り入れると良いでしょう。 肩を労わりながら、長く健康を保つ意識が大切です。 また、腱板断裂と五十肩(四十肩)の違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事も確認してみてください。 肩腱板損傷の検査方法は4つ 肩腱板断裂が疑われる場合、適切な治療のために正確な診断が必要です。 検査方法は主に以下の4つがあります。 ドロップアームテスト(Drop Arm Test) レントゲン検査 超音波検査 MRI検査 それぞれの検査には特徴があるため1つずつ詳しく見ていきましょう。 ドロップアームテスト(Drop Arm Test) ドロップアームテストは、診察の初期段階で実施することが多い検査方法です。比較的短時間で検査が可能であり、特別な機器も必要なく実施できるのが特徴です。 腕を横に90度上げた状態からゆっくりと下ろしていく動作で、肩腱板の状態を確認します。 健康な場合は腕をスムーズに下ろせますが、腱板断裂があると途中で腕が落ちてしまいます。 また、痛みを伴う場合は必ず検査前に医師に伝えましょう。 レントゲン検査 レントゲン検査は、骨の状態を確認する基本的な画像診断です。 腱板断裂に伴う骨の変形や、肩峰下の石灰沈着の有無を調べられます。 また、年齢による骨の変化も同時に確認できるため、治療方針を決める重要な情報となります。 レントゲン検査の時間は数分程度で済み、基本的に痛みもほとんどありません。 ただし、軟部組織である腱板自体は直接見ることができないため、他の検査と組み合わせて診断を行います。 超音波検査 超音波検査は、腱板の状態を動きながら観察できる便利な検査方法です。 肩を動かしながらリアルタイムで腱板の様子を確認でき、断裂の有無や範囲を詳しく調べられます。 体への負担が少ない検査なので、高齢者でも気軽に受けられるのが特徴です。 また、検査時に医師と対話しながら痛む部位を直接確認できるため、より正確な診断につながります。 MRI検査 MRI検査は、最も詳細に腱板の状態を確認できる検査方法です。 腱板の断裂の有無はもちろん、断裂の大きさや周囲の組織への影響まで把握できます。 検査は専用の装置の中で、約20〜30分ほど静かに横になっているだけで済みます。 放射線は使用せず痛みもないため、体への負担は最小限です。 ただし「心臓ペースメーカーや人工内耳・中耳」など、金属を体内に入れている方は検査できない場合があるため、事前に医師に相談しましょう。 また、CTやMRI以外で行う関節の造影検査については以下の記事でも詳細に解説しています。 肩腱板断裂の3つの治療法 肩腱板断裂の治療は症状の程度や年齢、生活スタイルによって選択していきます。 主な3つの治療法は以下のとおりです。 治療法 特徴 保存療法 投薬やリハビリテーションを中心とした非手術的な治療 手術療法 断裂した腱板を修復する外科的な治療 再生医療 幹細胞などを用いた新しい治療 それぞれの特徴やメリットを詳しく解説します。 保存療法とは、痛みの軽減と肩の機能回復を目指し、投薬やリハビリテーションを組み合わせて進める治療法です。 具体的には、消炎鎮痛剤の服用や温冷療法、ストレッチなどを行います。 治療期間は3〜6カ月程度が一般的で、65歳以上の方や部分断裂でも保存療法が推奨されます。 症状が軽減するまで時間はかかりますが、根気強く続けることで日常生活への影響を最小限に抑えられるでしょう。 手術療法 手術療法は、保存療法で改善が見られない場合や、完全断裂で症状が重い場合に検討される治療法です。 代表的なのは、断裂した腱板を縫い合わせて肩の機能を回復させる「関節鏡を使った手術」です。 手術後にはリハビリが必要となりますが、しっかり行えば機能が改善する可能性が高まります。 そのため、手術療法はリハビリ期間も含めて医師と十分に相談した上で選択してください。 再生医療 再生医療は、患者さん自身の血小板や幹細胞を利用して、損傷した腱板の修復を促進する治療法です。 従来の手術に比べて身体への負担が少なく回復も早いのが特徴で、手術を避ける選択肢として近年注目を集めています。 また、手術をされた方にも再生医療は有効です。 腱板に再生医療を併用することで、再断裂のリスクを抑えるだけでなく、傷口の修復や術後に起こり得る疼痛の軽減にも期待されます。 再生医療に関する詳細は以下のページでも詳しく解説しています。 また、当院では肩腱板断裂に効果が期待できる再生医療を提供しています。肩腱板断裂の症状でお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 まとめ|肩腱板断裂の痛みについては専門医に相談してみよう 肩腱板断裂の痛みは、適切な対処法で和らげることができます。 自宅でできる温冷療法やストレッチ、姿勢の改善から医療機関での治療まで症状に応じた選択肢があります。 ただし、自己判断での過度な運動や負荷は症状を悪化させる可能性もあるので注意が必要です。 まずは専門医に相談し、自分に合った治療法を見つけていきましょう。 早期発見・早期治療が、痛みの軽減と日常生活への早期復帰につながります。 また、当院「リペアセルクリニック」では再生医療の提供もしていますので、肩腱板断裂の痛みでお悩みの方は「メール相談」もしくは「オンラインカウンセリング」にてお気軽にご相談ください。 肩腱板断裂に関するQA 腱板断裂でやってはいけないことはなんですか? 肩腱板断裂で最も避けたいのは、無理に肩を使い続けることです。 腕を頭上に上げる動作や、重いものを持ち上げたり、我慢して運動を続けるのも「やってはいけない動作」だといえます。 また「様子を見れば治るだろう」と放置してしまうのも要注意です。 適切な治療を受けないまま症状が進行してしまうと、より複雑な治療が必要になったり、回復までの期間が長引いたりするケースもあります。 少しでも痛みが気になる場合は、早めに専門医へ相談しましょう。 また、腱板断裂(腱板損傷)でやってはいけない動作については、以下の記事も参考にしていただけると幸いです。 肩腱板損傷はどのくらいで治るのですか? 肩腱板損傷の回復期間は、損傷の程度や治療方法によって異なります。 軽度であれば数週間から数カ月ですが、完全断裂の場合は手術が必要となるため、術後のリハビリも含めると半年から1年ほどかかるでしょう。 したがって、早期発見・早期治療が重要ですので、痛みがあれば我慢せずに早めの受診をおすすめします。 また、肩腱板損傷を放置する危険性については以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方は参考にしてください。(文献2) 参考文献一覧 (文献1) 物理療法系専門領域研究部会_寒冷療法 (文献2) 公益財団法人 日本整形外科学会_「肩腱板断裂」
2021.03.16 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
膝の痛みや変形性膝関節症・半月板損傷を含む膝の疾患で、膝サポーターの着用を検討されている方もいるでしょう。 本記事では、膝サポーターを効果的に使用する方法や正しい装着方法、商品の選び方などを解説しています。膝サポーターの使い方に困っている方や、どのサポーターにすれば良いのか悩んでいる方は参考にしてみてください。 膝サポーターの効果的に使用する方法【丸まらない状態を保つのがコツ】 以下3つのポイントをおさえて使用すると、サポーターの効果や耐久性が長持ちしやすくなります。 ・長時間の使用は避ける ・膝もサポーターも清潔な状態を保つ ・定期的に交換する 膝サポーターの効果を長続きさせて、快適な装着感を維持しましょう。 長時間の使用は避ける サポーターを長時間つけ続けていると、患部が圧迫されて血流が悪くなってしまいます。また、楽だからといって、ずっと装着したままでいると膝を支える筋力が低下しかねません。 そのため、意識して定期的に外して、できるだけ着けている時間を短くする工夫が大切です。安静時もつけっぱなしにするのではなく、外す習慣をつけるようにしましょう。 膝もサポーターも清潔な状態を保つ 変形性膝関節症でサポーターを使用するときは、膝もサポーターも清潔な状態で使用するようにしてください。 汚れや汗で不衛生な状態で使用すると皮膚がアレルギー反応を起こしたり、接触性皮膚炎を引き起こしたりする可能性があるためです。 以下は、サポーターを清潔に保つ方法です。 ・定期的に洗濯や手洗いをする ・膝の汗を拭きとってから使用する ・使用していないときは形を整えて保管しておく サポーターによって手入れの方法が異なります。使用方法や洗濯方法をよく確認した上で、適切なケアを心がけましょう。 定期的に交換する サポーターは消耗品という認識をもってください。 長期間使用していると素材が伸びたり、弾力性が失われたりして、サポート効果が薄れます。 劣化したサポーターを使って変な負担が掛かることで逆に症状が悪くなる危険性もあります。劣化が見られ、正しくフィットしなくなってきた場合は積極的に新しいものに交換しましょう。 なお、しばらくサポーターを使用しても効果が実感できない場合は、病院の受診を検討してみてください。症状が進行している可能性もあるためです。 自分に合った病院を探している方は再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』への受診をご検討ください。再生医療とは人間の自然治癒力を活用した最新の医療技術です。すり減った軟骨を再生し、膝の痛みを軽減させる効果があります。 本来なら手術しなければいけない状態でも、再生医療で治療できる可能性があります。 膝サポーターの正しい4つの選び方|丸まらない商品の選定ポイントも紹介 ここでは、膝サポーターの正しい選び方を解説します。 膝サポーターを購入する際は、主に以下4つの項目をチェックして選びましょう。 ・膝のサイズに合ったものを選ぶ|血行不良を防止 ・用途に合ったものを選ぶ|迷ったら主治医に相談 ・使用感の良いものを選ぶ|付け心地は試着して確認 ・素材を見て選ぶ|サポーターのずれや丸まりの対策 それぞれの選定ポイントを詳しく解説します。 膝のサイズに合ったものを選ぶ|血行不良を防止 膝サポーターを使うときは、まず自分の膝のサイズに合ったものを選ぶことが大切です。 サイズが合っていないと、膝をしっかり固定することができなくなり、十分な効果が得られないからです。以下は、正しいサイズの選び方です。 ・自分の膝周りのサイズを事前に測っておく(膝上10㎝の周囲をメジャーで図る) ・自分の周囲の長さをもとに、商品のサイズ表を確認して適切なものを選ぶ サイズ選びを正しくおこなえば、より良い治療効果が期待できます。 用途に合ったものを選ぶ|迷ったら主治医に相談 サポーターには以下のように、さまざまな用途の商品があります。 ・スポーツにおすすめのタイプ ・立ち仕事をする場合におすすめのタイプ ・高齢者におすすめのタイプ ・リハビリをおこなう人におすすめのタイプ 用途によって、サポート力や素材の特性が異なります。そのため、自分の生活スタイルやニーズに合ったものを選ぶ視点が大切です。使用シーンを考慮した選択が効果的な治療につながります。 自分に合った用途がわからない場合は、主治医に相談して選び方のアドバイスをもらうと良いでしょう。 使用感の良いものを選ぶ|付け心地は試着して確認 サポーターを選ぶ際は、使用感も重視すべきです。サイズが合っていても、付け心地が悪いと継続的な使用が難しくなるためです。 サポーターは、サンプルを置いているお店もあるので、実際に試して使用感をチェックするのがおすすめです。 素材を見て選ぶ|サポーターのずれや丸まりの対策 膝サポーターを選ぶ際は、素材のチェックも大切です。 たとえば、滑り止めの素材が付いたタイプのものは、サポーターがズレたり、丸まったりするのを防ぐ効果が期待できます。 また、寒い時期は保温効果のあるサポーターを選ぶのがおすすめです。 冷えは痛みの原因ともなるので、保温効果のあるサポーターを使用すれば痛みを緩和できる可能性があります。 膝サポーターの装着方法3ステップ|丸まらないつけ方 サポーターは正しく装着しないと、期待する効果が得られません。そこで、膝サポーターの正しい装着方法を3ステップで解説します。 ・ステップ1.立った状態で装着する ・ステップ2.上からベルトを締めていく ・ステップ3.膝を動かして確認する 参考にしながら、装着してみてください。 ステップ1.立った状態で装着する サポーターをつけるときは、立った状態で装着するのが望ましいです。 立ち姿勢で膝を伸ばした状態でサポーターをつけると、しっかりとサポーターが巻き付いて膝を曲げたときに緩みにくくなります。 ただし、サポーターなしで立つのが難しいという人は座った状態でつけても問題ありません。 座った状態でサポーターをつける場合は、膝を少しだけ曲げた状態でつけるとしっかりと付けられます。 ステップ2.上からベルトを締めていく ベルトを締めるタイプのサポーターの場合、サポーターは上の方から締めていきます。上のベルトを締めるときは、強く締める必要はなく、フィットしているな!と感じられるくらいで十分です。 上を締めてズレがないかチェックしたら、今度は下のベルトを締めます。 下の方を締めるときは、膝の皿の部分をきちんと補助できるように下から上に引き上げながら締めるのがポイントです。 下の方は上の方よりも強めに圧がかかるように締めますが、血流を阻害するほど強く締めすぎないように注意しましょう。 ステップ3.膝を動かして確認する サポーターをつけ終えたら一度膝を軽く動かしてみて、締め付けが強すぎないかチェックします。また、きちんとフィットしているかチェックしているかも確認しましょう。 強い圧迫感や、サポーターのズレや丸まりといったフィットを阻害する要素があれば、つけ直すようにしてください。 まとめ|膝サポーターの丸まらない着用方法を覚えて安定力を高めよう 膝サポーターは、正しい手順で装着すれば、丸まったり、ずれたりしにくくなります。 本記事で紹介した正しい装着方法を参考に、膝にしっかりとフィットさせて、サポートの効果を最大限に引き出していきましょう。 なお、膝の痛みや変形性膝関節症・半月板損傷といった膝の疾患でお悩みの方は、再生医療を専門とする『リペアセルクリニック』への受診をご検討ください。 「再生医療」とは人間の自然治癒力を活用した最新の医療技術です。すり減った軟骨を再生し、膝の痛みを軽減させる効果があります。 無料相談も受け付けていますので「具体的な治療方法が知りたい」と気になる方は、お気軽にお問い合わせください。
2021.03.03 -
- ひざ関節
- 変形性膝関節症
変形性膝関節症の回復には適切なサポーターの活用が効果的です。膝の固定や保温効果により痛みを和らげるほか、適度な運動をサポートして症状の改善も期待できます。 サポーターは痛みを和らげ、膝の動きを助ける有効な手段ですが、すり減った軟骨を元に戻すものではありません。 そのためサポーターの効果を最大限に引き出そうと考えるのであれば、自分に合ったものを選び、正しく装着していくのが大切です。 本記事では、変形性膝関節症で使うサポーターの効果や選び方のポイントを解説します。注意点も紹介しているので、サポーターを活用したい方はぜひ参考にしてください。 また、将来的な進行を防ぎ、できれば手術に頼らず根本から膝の健康を取り戻したいとお考えなら、早めに次の選択肢を知っておくことが大切です。 特に、ご自身の細胞を活用して軟骨の修復を目指す「再生医療(幹細胞治療)」は、従来の治療方法と比較しても手術を必要とせず、根本的な治療も期待できます。 将来の手術を避けるために今からできることや、再生医療に関する情報を当クリニックのLINEにて配信しておりますので、知識の1つとしてお役立てください。 ▼膝の痛みの改善症例あり! 変形性膝関節症でサポーターをした方がいい4つの理由 さっそく、変形性膝関節症でサポーターをした方がいい理由を解説します。 ・膝の固定 ・保温効果 ・触圧覚を刺激 ・悪循環の遮断効果 それぞれの効果について詳しく見ていきましょう。 膝の固定 サポーターは、膝をしっかりと支えて固定する役割を担います。膝を固定すれば、関節への負担が軽減されるため痛みを和らげる効果が期待できるでしょう。 痛みがあると歩行が不安定になり、転倒するリスクが高まります。高齢者は筋力の低下も重なってより転びやすくなるためとくに注意が必要です。 触圧覚を刺激 人の皮膚には「触圧覚」(物に触れた感覚)と「痛覚」(痛みの感覚)があります。サポーターで膝を適度に圧迫すると、触圧覚が刺激されます。 痛覚よりも触圧覚が先に脳へ伝わるため、痛みの感覚が抑えられるのです。 保温効果 サポーターによる保温効果も膝の痛み軽減に役立ちます。 膝が冷えると血管が縮み、血液の流れが悪くなり、筋肉が硬くなります。硬くなった筋肉を動かすと、負担が増えて痛みが出やすくなるのです。 寒い日に外出したり、冷房の効いた部屋で過ごしたりする際は、サポーターで膝を温めて痛みを予防しましょう。 悪循環の遮断効果 変形性膝関節症では、痛みを避けるため動きを控えがちです。 しかし、運動不足が症状を悪化させる原因となります。膝をあまり動かさないでいると、周囲の筋肉が衰え、軟骨がさらにすり減りやすくなるためです。 サポーターを使えば、安心して膝を動かせます。適度に体を動かせば、筋力回復と軟骨の保護につながり回復を早められるでしょう。 また、変形性膝関節症や膝の症状にお悩みの方で、手術以外の治療法について興味がある方は「再生医療」もご検討ください。 現在当クリニックの公式LINEでは、再生医療や膝の症状の改善症例について紹介しています。 >>公式LINEはこちら 反対にサポーターを着けているからといって動きすぎるのも禁物です。以下の記事では変形性膝関節症の人がしてはいけない動作や仕事の業務を解説しているので、治療中の過ごし方が気になる方はぜひあわせてご覧ください。 変形性膝関節症で使うサポーター選びのポイント ここでは、サポーター選びのポイントを解説します。 サポーターには「医療用」と「一般用」の2種類があり、ドラッグストアやオンラインストアなどで購入可能です。変形性膝関節症に使用する場合は「医療用」が推奨される傾向にあります。 購入を検討する際は、サポーターのランキングサイトや販売サイトで口コミを確認するのがおすすめです。口コミを見れば、装着感や使用感といった実際の使用者のリアルな声をチェックできます。 サポーター選びの具体的なポイントは以下の3点です。 確認ポイント 選ぶ視点の例 サイズ ・膝にフィットするか ・共用もしくは男性用・女性用か ・締め付け具合が適切か 固定力 ・膝をしっかり支えられるか ・動きを妨げない程度の固定力か 保温性 ・保温効果に優れているか ・蒸れにくい素材か 購入前は可能な限り試着をしましょう。実際に装着してみれば、フィット感や使用感がよりわかります。 以下の記事では、サポーター選び方の詳細や装着方法について解説しています。詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。 変形性膝関節症でサポーターを使うときの注意点4つ 変形性膝関節症でサポーターを使うときに注意すべき点がいくつかあります。適切でない使い方をすると症状が悪化する可能性があるため、以下4つのポイントをおさえましょう。 ・汗を拭いて使用する ・正しく装着する ・安静時はサポーターを外す ・サポーターの効果が薄いときは専門家に相談する 順番に解説します。 汗を拭いて使用する 汗をかいた状態で着用すると、サポーターがずれやすくなります。サポーターがずれれば、歩行が不安定になって膝や腰に負担がかかり痛みが出る可能性があります。 汗をかきやすい夏場はとくに対策が必要です。サポーター装着前に膝の汗を拭き取り、使用中も汗が溜まったら小まめに拭きましょう。 正しく装着する サポーターは正しい位置に装着してはじめて、効果を発揮します。 装着位置が上下左右にずれると、膝を正しく支えられないため、サポート力が弱まります。また、血行不良を引き起こす場合もあるでしょう。装着して少しでも違和感があれば、正しい位置にあるかどうか確認してください。 サポーターの正しい装着方法は、商品パッケージの説明書や公式サイトに記載されている場合が多いので、事前によく見ておきましょう。 安静時はサポーターを外す サポーターは活動時のみ使用するのが基本です。 サポーターを付けっぱなしにすると、うっ血(血液の流れが悪くなる状態)や圧迫により痛みが生じる可能性があります。 症状悪化のリスクを避けるためにも、自宅でくつろぐ時間や就寝時といった安静時にはサポーターを意識的に外しましょう。 サポーターの効果が薄いときは専門家に相談する サポーターを使用しても症状が改善しないときは専門家に相談しましょう。状態が悪化している可能性があるためです。 一方で相談した結果、手段があまり残されておらずに手術に踏み切るしかない場合もあります。 もし、手術しかないと諦めかけている場合はぜひリペアセルクリニックにご相談ください。 当院は再生医療(自己脂肪由来幹細胞治療)を専門としており、 この治療はメスを使わず、ご自身の細胞の力ですり減った軟骨の修復・再生を目指すものです。 痛みの根本原因にアプローチし、手術を回避できる可能性も十分にあります。 ご自身の膝の症状に対して再生医療が対象かどうか疑問に思う方や、改善症例が気になる方は、ぜひ当クリニックの公式LINEをご確認ください。 ▼無料のオンライン診断あり >>公式LINEはこちら まとめ|変形性膝関節症ではサポーターをうまく活用して早期回復を目指そう サポーターは変形性膝関節症の症状改善に役立つアイテムです。膝を支えて歩行時の安定感を高め、痛みも和らげます。 サポーターの効果を最大限に引き出すポイントは、自分の膝にフィットするサイズやサポート力があるものを選び、正しく装着することです。 しばらくサポーターを使用しても効果が実感できない場合は、病院の受診を検討してみてください。症状が進行している可能性もあるためです。 受診した際は、医師にサポーターの適切な使い方を聞いてみるのも良いでしょう。より効果が期待できる装着方法がわかり、早期回復につながる場合もあります。 また、根本的に変形性膝関節症を治療していきたいと考えている方は、手術を必要としない治療方法である再生医療もご検討ください。 膝や関節の痛みに関する改善症例について現在公式LINEにて配信しておりますので、将来的な選択肢の幅を広げたい方はこの機会に知識としてお役立てください。 ▼多くの膝や関節の痛みの改善症例を配信中 >>公式LINEで確認する 変形性膝関節症で使うサポーターに関するよくある質問 最後に変形性膝関節症で使うサポーターに関するよくある質問と回答をまとめます。 サポーターは保険が適用されますか? 国に登録されているサポーターであれば保険適用の対象です。 登録されているサポーターは厚生労働省が公表している「療養費の支給対象となる既製品の治療用装具」の一覧よりご確認いただけます。 詳細が気になる方は チェックしてみてください。 サポーターをつけない方がいいケースはありますか? 膝周辺に炎症や傷がある状態でサポーターをつけると、皮膚の状態が悪化するリスクがあるため使用は控えた方が良いでしょう。 また、化学繊維のアレルギーをもっている方も注意が必要です。サポーターの素材によってはアレルギー反応が出る可能性があります。
2021.02.16 -
- 股関節
- 変形性股関節症
変形性股関節症を農業で発症!予防と悪化を防ぐには 農業をやっていて、不安定な姿勢で長時間作業を繰り返していくうちに変形性股関節症になってしまい、痛みがつらいという人もいるかもしれません。変形性股関節症は、関節の痛みと機能障害が起こりますが進行すると持続痛となり取れなくなる恐れもあります。 そのため、「変形性股関節症になってしまったら、農業はやめるべきなのか?」「股関節に関節症を発症したら農業は、してはいけない仕事なのか?」「そもそも立ち仕事は避けるべきなのか?」など、不安に感じるられているのではないでしょうか。 そこで今回は、変形性股関節症になったら農業をやめるべきなのか、という疑問について、やめるわけにはいかない場合の予防法と治療について解説します。 結論から言いますと、もし変形性股関節症になってしまった場合でも、「農業をやめるべきである」「してはいけない」とは一概に言いきれません。ただし、変形性股関節症になった状態で通常どおりに農業をおこなうというのは危険です。 変形性関節症になっても農業を続けるには? 変形性関節症になったとしても農業を続けたい場合は、痛みのコントロールや症状の進行を抑えるための治療をおこなうことが大切です。痛みの緩和や症状の進行を抑えていく必要があります。 股関節に負担がかからないように生活する 変形性股関節症は、股関節に負担がかかることにより痛みが生じ、症状が進行します。股関節には、農業以外にも、立ち仕事はもちろん、日常生活の中でも無意識のうちに大きな負担がかかる動作や仕事があります。 例えば、歩くだけでも負担がかかりますし、トイレが和式であったり、いつも履いている靴の質が悪いなどということが股関節への大きな負担になることもあります。 そのため、なるべく股関節に負担がかからないよう生活スタイルを変えることや、クッション性に優れ、弾力があって股関節への衝撃を和らげることができる靴を選ぶなど、身近なところから股関節への負担を軽減するように変えていくことが必要です。 変形性股関節症の治療法を検討する 変形性股関節症には、いくつか治療法が存在します。変形性股関節症の場合、股関節に負担のかからないエクササイズや、水中運動などの運動療法が有効です。 このした治療法は、股関節周辺の筋力をつけていくことで、痛みを緩和させる効果が期待できるからです。そのほかには、薬物による治療方法や、症状が進んでしまった場合には人工関節置換手術などがあります。 長期的かつ健康的な視野で見れば、軽度の変形性股関節症は、運動による治療も可能ですが、日常に支障をきたすレベルで関節が痛むなどの場合は、薬物や手術などによる治療を検討されたほうが良いでしょう。 主治医に相談をする 変形性股関節症では、進行の程度や症状によって治療法が異なります。股関節に違和感がある、痛みがあるという場合は、まずは、整形外科をはじめとした専門の医療機関を受診し、診断をしてもらいましょう。 その上で、これまで通りに農作業をおこなっても良いのか、股関節への負担を軽くするために、農業のやり方を変えていくほうがいいのかなどについて主治医に相談してみてください。 農業をしていると変形性股関節症になりやすいの? 農業をしていると変形性股関節症になりやすいという声もありますが、実際のところはどうなのでしょうか。 結論から述べますと、一概に農業をしていると必ず変形性股関節症になるというわけではありません。しかし、農業と変形性股関節症にはいくつかの関係性があります。 農業は変形性股関節症の原因となる姿勢や動作が多い 農業は長時間の立ち仕事であることはもちろんのこと、重たいものを運ぶ、不安定な体勢で作業をするなど、変形性股関節症の原因となる動作が多いです。 変形性股関節症は、股関節への過度な負荷によって引き起こされるため、そういう意味でも農業は多かれ少なかれ変形性股関節症のリスクがあると言えるでしょう。 農業でかかる関節への負担は股関節だけではない 農業は、不安定な姿勢が多いため股関節に負担がかかると言われますが、そのほかの関節にも負担がかかり、膝や腰を痛める人もいます。また、股関節に痛みが生じ、その痛みをかばいながら作業をすると、今度は腰や膝などほかの関節の痛みも併発する可能性もあります。 つまり農業は、股関節だけでなく全身の関節との付き合い方がとても大切になってくる職業であると言えます。 変形性股関節症|予防と悪化させないために 農業だけが変形性股関節症になるリスクがあるというわけではありません。 しかし、農業には変形性股関節症になるリスクが大きな動作が多いことは間違いありません。そのため、農業で変形性股関節症にならないように意識し、悪化させないようにするための予防が必要です。 椅子に座って農業をする 長時間の立ち仕事による農業は股関節に負担をかけるため、変形性股関節症になるリスクがあります。ですから、立ち仕事の時間を減らせるように工夫しましょう。最近は、座ったまま移動ができるキャスター付の農業作業用の椅子などが広く出回っています。そういったアイテムの使用もおススメです。 休憩をこまめにとる 農業で変形性股関節症にならないようにするには、小まめに休憩をとるようにしましょう。 一般のサラリーマンに比べ、農業は明確な就業時間や休憩時間が決まっていないことが多いと思います。そのため、農業を営む人の中には、定期的な休憩を取らずに働いてしまう人もいるようです。 しかし、休憩を取らずに、働き続けることは良くありません。例えば一時間ごとに10分などと決めておくと休憩を意識しやすくなります。どうしても休憩が取りづらい状況であるならば、立ち仕事を減らす工夫や、少しでも関節への負担をかけない工夫をしましょう。 疲労がたまったらストレッチをする 農業をしていて股関節が痛く感じることがあれば、疲労がたまっている証拠です。もしも痛みを感じたら、少し休み、股関節周辺のストレッチをしましょう。 また、お風呂上がりや寝る前などにも、太ももの筋肉やお尻の後ろにある大殿筋などをほぐすようにストレッチするのも効果的です。農業による筋肉の疲労を放置せず、日々しっかりとストレッチをすることで、変形性股関節症の予防につながります。 変形性股関節症でも農業を続けられる関節の痛みの緩和法とは 変形性股関節症になった状態で農業を続けることは大変です。しかし、医師の判断にもよりますし、個人差もありますが、痛みのコントロールをすることができれば、ある程度は農業を続けることが可能でしょう。 変形性股関節症の痛みの緩和方法を紹介します。 関節を温める 関節を温めることによって痛みを緩和できます。ホットタオルや使い捨てカイロなどで関節を温めましょう。股関節を温めることで血行が良くなり、体の修復機能が向上するので、「痛みの緩和」が期待できます。 半身浴をする 関節を温め、血行を良くするという観点から、半身浴もおススメです。お湯の温度を38度から40度ぐらいに設定して半身浴をしてみてください。ホットタオルなどで部分的に温めるよりも、半身浴は股関節全体を温めて、より血行を良くする効果が期待できます。 また半身浴は変形性股関節症の痛みをやわらげるだけでなく、血行が良くなることで体の新陳代謝機能が上がるため、健康そのものにも効果的です。毎日の疲れをとるためにも、ゆっくり半身浴をするという習慣を取り入れてみるのも良いでしょう。 農業を続けたい!変形性股関節症には再生医療という治療方法もある! 変形性股関節症になり、痛みが生じるようになると、農業を続けることが大変になってきますが、それでも農業を続けたい!そもそも農業が生業でやめるわけにはいかない!という場合は、短い治療期間で済み、副作用のリスクも少ない最先端の治療法「再生医療」という選択肢もあります。 再生医療で痛みの改善が可能になれば、生活の質が上がりますし、人工関節に置換えるなどの外科的手術も不要になる可能性が高まります。変形性股関節症の痛みで農作業に支障があると悩まれているのであれば、検討される価値のある治療法です。 https://youtu.be/isSkwxfHrbI?si=xBpcu7q-w5wcdT8Y ▶こちらの動画では、変形性股関節症に効果的な再生医療について解説しています。是非ご覧ください。 まとめ・変形性股関節症を農業で発症!予防と悪化を防ぐには 農業をしていると必ず変形性股関節症になるというわけではありません。しかし、ほかの仕事に比べて股関節への負担がかかりやすい農業は、股関節に対する関節症、特に変形性股関節症のリスクがあるのは確かです。 現在、農業に携わっていて変形性股関節症に悩まされている人や、痛みが強くなったら農業ができなくなるのではないかと不安に感じている人は、今回ご紹介した予防や痛みを緩和する方法を試されてはいかがでしょうか。 また、変形性股関節症は専門医による治療が必要です。せっかく診断を受けても軽度ならと仕事を優先し、つい無理な作業や立ち仕事を続けられてしまう方もおられます。 ご注意頂きたいのは放置して自然治癒することはありません。変形性股関節症は放置すると症状が進行する病気です。早めに専門医の指導の下、適切な治療を受けましょう。 以上、変変形性股関節症は農業で起こりやすいのか?その予防と治療法について、という視点でからご説明させていただきました。変形性股関節症と正しく向き合い、毎日元気に農業を続けていきたいものです。 ▼ 再生医療で変形性股関節症を治療する 変形性股関節症は、再生医療により手術せずに症状を改善することができます ▼以下もぜひご覧ください 変形性股関節症を悪化させないために気をつけたいこと
2021.02.10 -
- 股関節
- 変形性股関節症
「歩くときにふらつく感じがするので、杖を使いたいけれど選び方がわからない」 「すでに杖を使っているけれど、本当に自分に合っているのか自信がない」変形性股関節症と診断され、歩行時の不安から上記のように悩む方もいるでしょう。 不安定になりがちな足元を支え、歩行を助けてくれる杖は、もう1本の足ともいえます。 本記事では、変形性股関節症に適した杖の選び方と気を付けたいポイントを解説します。杖の正しい使い方も紹介するので、少しでも股関節の負担を軽減させたい方は、参考にしてください。 変形性股関節症に合った正しい杖の選び方と気をつけたいポイント せっかく杖を買っても自分に合っていなければ、歩くたびに股関節へ余計な負担がかかってしまう恐れがあります。杖を購入する際は、実際に自分で持って歩いてみるのも大切ですが、理学療法士や専門の医師に相談すると良いでしょう。 変形性股関節症に合った杖の選び方について、気をつけたいポイントも交えて紹介します。 変形性股関節症に関して詳しく知りたい人は、こちらの記事もご覧ください。 1)杖の重さ 杖を選ぶうえで、とくに重視したい点は軽さと強度です。 一般的に販売されているのは、軽さと強度を兼ね備えたアルミ製や、より軽いカーボン製の杖で、軽量でありながら強度の高さが特徴です。 重量がある杖は十分な強度をもつだけでなく、歩行に安心感を与えるメリットがあります。 ただし、あまりに重い杖は持つ手や腕に負担がかかるため、使い続けると疲れやすく結果的に使いづらく感じてしまうかもしれません。 杖の重さ メリット デメリット 重い杖 頑丈、安心感 使用で疲れ、使いづらくなる 軽い杖 軽量で強度が高く使いやすい 安定性は重い杖に劣る 2)握りやすさ 杖を選ぶポイントは、持ち手が自分の手になじみ、無理なく握れる太さである点です。 持ち手の素材には、木製やゴム製などさまざまな種類があります。滑りにくく自分の手にフィットする素材を選ぶと、握力が弱い人でも疲れにくく快適に使用できるでしょう。 購入前は実際に握って歩く練習をすると、自分に合った持ち手の杖を見つけられます。 3)長さ 杖の長さは「身長÷2+2~3cm」が目安といわれています。 短すぎる杖を使うと前傾姿勢になり、股関節への負担が大きくなるため、歩行を補助するつもりが、かえって症状が悪化する原因になりかねません。 一方、長すぎると扱いづらく、スムーズな歩行を妨げます。長時間の使用や長距離を歩行する際には、疲れやすさを感じるでしょう。 正しい姿勢で歩けるよう、自分にあった適切な長さの杖を選ぶのがポイントです。伸縮可能なタイプも販売されており、自分の身長に合わせて細かく長さを調整して使用できます。 適切な長さポイント 身長の半分に2〜3cmプラスした長さ 正しい姿勢で歩行できるよう調整する → 短い杖:前に姿勢が倒れるため、股関節への負担が大きい → 長い杖:扱いづらさや歩きにくさを感じ、疲れやすくなる 【症状別】変形性股関節症の方に適した杖の種類 杖には複数の種類があり、杖の形も歩きやすさに影響を与えます。 変形性股関節症の症状に適した杖の種類を紹介するので、ご自身に合った形が探せるよう基本的な性能を比べてみてください。 【症状が軽い方】T字杖 T字杖は、一本杖に握り手がついたタイプで、一般的な杖のひとつです。T字杖は、特別な使い方を覚える必要がなく誰でも簡単に使用できるため、比較的症状が軽い人に向いています。 多脚杖ほど安定しないため、高齢者や症状が進み自力での歩くのが困難な人には、安定性の面から不向きといえます。 同じT字杖でも、持ち手の形状や大きさ、重心などさまざまな種類があります。持ち運びに便利な折りたたみ式の製品もあるため、実際の使用感や使用シーンを考慮して選びましょう。 【手が変形している方】ロフストランド杖 ロフストランド杖は、別名「前腕固定型杖」とも呼ばれる一本杖の一種です。上部にある腕を通す輪と、下部についている握り手の2点で体重を支えられる構造になっており、T字杖よりも安定感があります。 手が変形している人や、握力・腕の筋力が低下し、T字杖では歩行時に体重を支えきれない人などに選択されます。 【筋力が低下している方】多脚杖 3点あるいは4点が地面と接する多脚杖は、接地面が複数あり体重が分散されるため、T字杖よりも安定感が増します。 一本杖では歩く際にふらつく人や、症状が進み筋力が低下している人には、多脚杖がおすすめです。 変形性股関節症の痛みが強い場合、杖に体重を預けて歩く機会が増えますが、多脚杖は高い安定性により転倒リスクを軽減できるメリットがあります。一方、一本杖よりも重くなってしまうデメリットもあるのも事実です。 変形性股関節症における正しい杖の使い方 変形性股関節症の人は、購入した杖の効果を発揮できるよう購入したお店や受診している医院などで使い方の指導を受けるようにしましょう。 正しく杖を使えると、痛みが改善されるだけでなく、歩行が楽に感じられ、行動範囲も広がります。 本章では、正しい杖の使い方を紹介します。 杖は痛みのある足と反対側の手で持つ 杖を使う際は、痛みがある足と反対側の手で持つのが基本です。 たとえば、右股関節が痛いなら左手で、左股関節が痛いなら右手で杖を持ちます。症状がある反対側の手で杖を持つと、歩行時に体重を分散させ、痛みのある股関節にかかる負担が減らせます。 痛みがある足と同じ側の手で杖を持つと、体重が痛みのある足に偏り、さらに負担がかかって症状が悪化する恐れがあるため、注意してください。 杖を持つ際は、体の横で自然に腕を下ろした位置が基本です。杖の長さは身長に合わせて調節し、肘が伸びきらず軽く曲がる程度の高さに設定しましょう。 杖と痛みのある足を同時に出す 歩行時は、杖と痛みのある足を同時に出すのが基本です。 右足が痛む場合は、左手の杖と右足を前に出し、続けて左足を前に出します。右足を出した際に、左手の杖に体重を預けるよう意識すると、痛みがある足への負担が軽減できます。 「杖と痛みがある足を同時に出す」動作を意識的に繰り返せると、歩行のリズムが整い体の重心が安定するでしょう。平地での歩行に慣れたら、少しずつ歩幅を広げていくと、より自然な歩行に近づきます。 杖に体重を預けすぎず、あくまで補助として使う意識が大切です。 階段は手すりも利用してゆっくり昇降する 階段の昇降は、平地の歩行以上に注意が必要です。とくに、変形性股関節症の人は股関節の動きが制限されるため、バランスを崩しやすく転倒リスクが高まります。必ず手すりを利用し、1段ずつゆっくりと、安全を最優先に昇降しましょう。 <階段の上り方> 杖を1段上に出す 痛みがない側の足を1段上げる 杖で体重を支えながら痛みのある足を引き上げる <階段の下り方> 杖を1段下に下ろす 痛みのある足を下ろす 杖で体重を支えながら痛みのない足を下ろす 「上る際は健康な足から、下りる際は痛みがある足から」という手順を守り、1段ずつ確実に昇降します。焦らず、自分のペースを守るのが、転倒防止につながります。 手すりがない階段や、どうしても不安な場合は、他の人に介助を求めることも検討しましょう。 変形性股関節症で杖を使うメリット 変形性股関節症の人にとって、杖は単なる歩行補助具ではありません。適切に杖を使用すると、日常生活の質を大きく向上できます。 杖の使用がもたらす具体的なメリットを紹介するので、ぜひチェックしてください。 股関節への負担が減らせる 変形性股関節症の方が杖を使うメリットとして、股関節にかかる負担を軽減できる点が挙げられます。 歩行時は、両足の股関節に体重が均等にかかるのが理想的です。しかし、変形性股関節症では、痛みから無意識のうちに痛みがない足に体重をかけてしまう傾向があります。 片方の足に体重が偏ったままだと、股関節にかかる負担も増加し、症状悪化の可能性があるのも事実です。 杖を使用すると、体重の一部が杖に分散され、股関節にかかる圧力が減少します。とくに、長時間の歩行や階段の昇降など、股関節に負担がかかりやすい状況下でも、杖は大きな助けとなるでしょう。 歩行時の痛みが和らぎ安定する 杖の使用は歩行時の痛みを和らげ、歩行が安定するメリットをもたらします。杖が第3の足となり体の重心が安定すると、ふらつき・よろめきは軽減され、転倒リスクを減らせるでしょう。 変形性股関節症による歩行時の痛みは、多くの人が抱える悩みです。 痛みが強いと、トイレ・お風呂などの日常動作が億劫になり、筋力低下や症状悪化などの悪循環に陥る人もいます。さらに症状が進むと寝たきりになってしまう可能性があります。 安定した歩行は、身体的なメリットだけでなく、精神的な安定にもつながります。 歩行範囲が拡大し運動不足が解消する 変形性股関節症で歩行がつらくなっていても、正しく杖を使えると、痛みが軽減されて歩行範囲も広くなります。 「少し遠くまで歩いてみよう」「新しいお店に行ってみよう」と、意欲的に行動できるようになるかもしれません。 歩行範囲が広がると、運動不足の解消にも大きく貢献します。変形性股関節症の人は痛みから運動不足になりがちですが、歩けると筋力維持や関節の柔軟性向上につながります。 散歩や買い物など、日常生活の中で無理なく運動を取り入れ、より健康的な毎日を過ごしましょう。 変形性股関節症に合った杖を選んで歩行の負担を減らそう 変形性股関節症で杖を使う場合は、症状に合った種類の杖を選ぶのが大切です。自分の身長に合った高さや握りやすさだけでなく、使用シーンや使用時間も考慮すると、より使いやすい杖を選べます。 自分にピッタリな杖を選べると、股関節への負担が減るだけでなく、行動範囲も広がるなどのメリットをもたらします。変形性股関節症で杖の選び方や使い方に悩んでいる人は、実際に販売している店舗や病院へ行って理学療法士や専門の医師によるアドバイスを受けながら杖を選ぶと良いでしょう。 変形性股関節症についてはこちらもご参照ください。
2021.02.08 -
- 股関節
- 変形性股関節症
股関節の痛みが強いときに行われる治療のひとつに、ステロイド注射があります。 とくに変形性股関節症の治療では、痛みを和らげるためにステロイド注射がよく使われますが、長期間の使用には副作用のリスクがあるため注意が必要です。 本記事では、股関節のステロイド注射の必要性や副作用の可能性について詳しく解説します。 治療に対する不安を少しでも軽減できるよう、正しい知識を身につけておきましょう。 変形性股関節症の治療|ステロイド薬の必要性と副作用を解説 ステロイドは、変形性股関節症の保存療法の一環でよく使われる薬です。 痛みに効く薬として、主にステロイド注射や経口薬として治療に用いられます。 「必要性は理解できるけど、副作用が気になる」 「どのぐらいの効果があるの?」など 副作用や効果について不安を感じる方は多く、なかには、ステロイドの使用を躊躇してしまう方もいらっしゃいます。 本章では、変形性股関節症に対するステロイド薬を用いた治療についてご説明します。 変形性股関節症におけるステロイド薬の使用目的とは? ステロイド薬は、痛みの緩和や痛みを抑える目的で使用されます。 変形性股関節症は、股関節の軟骨が摩耗し、関節が変形して痛みや可動域の制限を引き起こす疾患です。 治療法には「保存療法」と「手術療法」があり、初期から中期の症状の場合は保存療法で治療します。 保存療法では、手術を回避するためにまず痛みの緩和が求められます。 これは、運動療法の効果を高めるためだけでなく、痛みによって生じる体の防御反応を抑える目的もあります。 股関節に痛みがあると、無意識のうちに他の筋肉や組織に余計な負担がかかるため、ステロイド注射などで痛みを防ぐことが重要です。 ステロイド薬には抗炎症作用と鎮痛作用がある ステロイド薬の効果は、痛みを抑えるだけでなく、痛みの原因となる炎症そのものを抑える効果があります。 痛みの原因物質の産生を抑え、強い抗炎症作用や鎮痛(痛みを止める)作用を発揮します。 そのため、変形性股関節症でステロイド注射や経口薬を使用すると、炎症を抑え、痛みを軽減するなどの改善効果が期待できます。 ただし、ステロイド薬は免疫力の低下や骨密度の低下など、副作用が起こる可能性もあるため使用には注意が必要です。 ステロイド薬の効果時間(期間)はどのくらい? ステロイド薬の効果時間は、使用方法や投与経路によって異なります。 一般的に、以下のような持続時間が考えられます。 経口薬(内服薬):数時間〜1日程度 薬の種類によって異なりますが、中程度の作用時間を持つ薬は1日に1〜2回の服用が必要になる場合が多いです。 注射(関節内注射):1週間〜数か月 特に関節内に投与されるステロイド注射は、短期間で効果が現れ、持続時間は数週間から数か月とされています。 外用薬(塗り薬):数時間〜1日 皮膚に塗るタイプのステロイドは即効性があり、1日数回塗布することで効果を持続させます。 吸入薬:数時間〜1日 喘息などの治療に使用される吸入ステロイドは、即効性よりも継続的な使用で効果を発揮します。 変形性股関節症においては、ステロイド注射が使用される場合が多く、一時的に痛みを和らげる効果が期待できますが、持続時間には個人差があり、効果が切れると再度痛みが現れることもあります。 ステロイド薬の副作用 ステロイドは、さまざまな病気の治療に使用されていますが、長期間または高用量で使用すると、副作用が現れる可能性があります。 主な副作用として、次の5つがあります。 免疫力の低下 骨密度の低下(骨粗しょう症) 血糖値の上昇(糖尿病のリスク) 体重増加・むくみ 精神的な影響 ここから、上記副作用の解説とステロイド注射で副作用が現れる期間・対処法について紹介します。 免疫力の低下 ステロイドは免疫機能を抑制するため、感染症にかかりやすくなる可能性があります。 風邪やインフルエンザにかかるリスクが高まるほか、傷の治癒も遅くなるため、手術後の回復にも影響を与える場合があります。 骨密度の低下(骨粗しょう症) 長期間使用すると、骨形成を抑制し、骨吸収を促進することで骨密度低下を引き起こします。 そのため、骨折しやすくなる可能性があります。 とくに高齢者や閉経後の女性は、骨密度の低下が進みやすいため注意が必要です。 骨粗しょう症を予防するために、カルシウムやビタミンDの摂取、適度な運動を心がけましょう。 血糖値の上昇(糖尿病のリスク) ステロイドは血糖値を上げる作用があり、糖尿病の発症リスクを高めることがあります。 糖尿病の既往がある場合や家族に糖尿病の人がいる場合は注意が必要です。 体重増加・むくみ ステロイドは体内の水分や塩分のバランスを変えるため、顔や手足がむくみやすくなります。 また、食欲が増進するため、体重が増えやすくなります。 塩分を控えた食事と、適度な運動で、体重増加を抑えることが可能です。 精神的な影響 ステロイドの使用により、気分の変動が大きくなったり、不眠、不安感、うつ症状が現れたりする場合があります。 高用量のステロイド注射や経口薬を使用すると、一時的に気分が高揚する(多幸感)こともありますが、急に気分が落ち込むこともあるため、注意が必要です。 症状が強い場合は、医師に相談し、適切な対策を講じることが大切です。 ステロイド注射の副作用が現れるまでの期間 副作用が現れるまでの期間と主な症状は以下のとおりです。 【ステロイド注射を受けた直後から数時間以内】 注射部位の痛みや腫れ:一時的に患部が痛くなることがありますが、通常は数日以内に治まります。 顔のほてり(フラッシング):特に女性に多く見られ、顔が赤くなったり、体が熱く感じたりする場合があります。 軽度のめまい・頭痛:一時的な症状として現れることがありますが、長く続く場合は医師に相談が必要です。 【ステロイド注射を受けた数日から数週間後】 血糖値の上昇:糖尿病のある人や血糖値が上がりやすい体質の人は、注射後数日以内に血糖値が高くなることがあります。 睡眠障害や気分の変化:一部の人は、注射後に不眠や気分の浮き沈みを感じることがあります。 食欲の増加:ステロイドの影響で食欲が増し、体重増加につながることがあります。 【数ヶ月以上など長期間による、ステロイド注射を受ける場合】 骨密度の低下(骨粗しょう症):長期間にわたる使用は骨をもろくし、骨折のリスクを高めます。 皮膚の変化:皮膚が薄くなったり、注射部位に色素沈着が起こることがあります。 免疫力の低下:頻繁に使用すると感染症にかかりやすくなる可能性があります。 ステロイド注射の副作用が現れるまでの期間は、使用量や個人の体質、健康状態によって異なります。 ステロイド注射を受けた後は、体の変化に注意を払い、少しでも違和感を覚えたら、速やかに医師に相談しましょう。 ステロイド注射で副作用が現れたときの対処法 ステロイド注射後に副作用が現れた場合、軽度の症状であれば、経過を観察などで様子を見る場合が主ですが、症状が重篤であったり、日常生活に支障をきたすような場合は、ステロイドの減量や中止、または他の治療法への変更を検討する必要があります。 軽度な症状でも、自己判断は避け、すぐに医師に相談しましょう。 自己判断で放置してしまうと、症状が悪化し、最悪の場合は命に関わることもあるため、適切な処置を受けることが非常に重要です。 ステロイド薬は、変形性股関節症を根本的に治すものではない ステロイド注射や経口薬による治療は、痛みの改善には効果が期待できますが、損傷した関節を修復する効果はありません。 そのため、痛みの緩和をさせながら様子見はできても、軟骨のすり減りや骨の変形の進行自体を止めるなど、変形性股関節症の根本的な治療をすることはできません。 また、変形性股関節症は進行する病気です。 つまり、ステロイド注射などで治療をおこなったとしても、最終的には手術を行う必要が出てくる可能性があります。 変形性股関節症のステロイド薬での治療はどのように行うのか? 変形性股関節症の治療にはステロイド注射と経口薬があり、まずは経口薬から始め、痛みに対する効果が感じづらくなってきた場合に関節内にステロイドを直接注射します。 ステロイド注射を、直接損傷した股関節に注射することにより、ステロイド薬の強力な抗炎症作用が効果を発揮し、痛みを改善することができます。 しかし、長期的な使用は副作用のリスクがあり、徐々に変形性股関節症の症状が進行するとステロイド注射の薬効が薄れ、効き目が感じられなくなることもあります。 このように薬効がなくなると外科的治療である手術を検討しなければなりません。 ステロイド以外の治療選択肢としての再生医療 ステロイドは炎症を抑える効果が高い一方で、副作用のリスクも伴います。 そのため、近年では再生医療がステロイドに代わる新たな治療法として注目されています。 再生医療は、自己治癒力を高め、損傷した組織や細胞を修復・再生することを目的とした治療法です。 再生医療の治療法には、主にPRP(多血小板血漿)療法と幹細胞治療があります。 どちらも患者様自身から採取した血液・幹細胞を用いるため、副作用のリスクが低いのが特徴です。 再生医療に興味がある方は、ぜひ当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。 まとめ|変形性股関節症の治療におけるステロイド注射の副作用を知っておこう 本記事では、変形性股関節症の治療で使用されるステロイド薬についてご紹介しました。 ステロイド薬には強い抗炎症作用と鎮痛作用があり、経口薬やステロイド注射で、痛みの軽減と緩和が期待できます。 しかし、ステロイドには骨を脆くするなどの薬としての副作用があり、長期的なステロイド治療はおすすめできません。 また、ステロイドは変形性股関節症の根本的な治療に効果を発揮するわけでもありません。ステロイドの特性を知った上での服用が大切です。 いずれにしても、専門医と相談の上、無理のないより良い治療法を探し、痛みと向き合っていただくことをおすすめします。 変形性股関節症には、再生医療という治療選択肢もあります。 再生医療について詳しく知りたい方は、以下もあわせてご覧ください。
2021.02.02 -
- 股関節
- 変形性股関節症
股関節の痛みや違和感が特徴的な「臼蓋形成不全」と診断され、本当に治るのか不安になっていませんか。 なかには症状がつらくて改善するイメージができず、今後の生活が成り立つかどうか心配されている方も多いでしょう。 しかし、臼蓋形成不全は早期治療で改善が期待できます。軽症ならリハビリや安静などの保存療法で症状が緩和されるため、早めの対処が大切です。 本記事では、臼蓋形成不全の治療や日常生活のポイントを詳しく解説します。 この記事を参考に、適切な治療やセルフケアを行って臼蓋形成不全の症状を緩和させましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、股関節痛の軽減や変形性股関節症の重症化予防を目的とした再生医療を行っております。 「メール相談」または「オンラインカウンセリング」にて無料相談を受付中です。股関節痛でお悩みの方は、ぜひ当院までご相談ください。 臼蓋形成不全は適切な治療で治る可能性が高まる 専門医による適切な治療を受けると、臼蓋形成不全の治癒率は高まる可能性があります。 臼蓋形成不全とは、大腿骨をつないでいる骨盤のくぼみ「臼蓋」が浅い状態です。大腿骨と臼蓋の安定性が破綻することで骨盤のバランスが崩れ、股関節の痛みや違和感が生じます。(文献1) ここでは、臼蓋形成不全の主な治療について詳しく解説します。股関節の痛みでつらい方も、本章を参考に前向きに治療を検討してみてください。 1.初期の場合は「保存療法」 「変形性股関節症への進行を防ぐこと」が、臼蓋形成不全の治療目的です。 臼蓋形成不全では、股関節が不安定になりやすい状態です。軽度の場合は股関節を支える筋肉を鍛えるために、筋肉トレーニングを保存療法として取り入れることもあります。 また、つらいときは安静にすることもありますが、筋肉が衰えて歩行困難になるリスクがあるため、長期間続けないようにします。 変形性股関節の保存療法について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。 2.重症の場合は「手術療法」 保存療法で改善がなければ、悪化を予防するために臼蓋を大きくする手術が行われる場合があります。 臼蓋形成不全の治療で用いられる手術は、主に以下の2つです。 術式 方法 骨切り術 股関節の骨を削り、大腿骨との咬み合わせを調整する 人工股関節置換術 人工関節に替え、大腿骨と臼蓋をつなぐ ただし、あくまで手術は保存療法を用いても重症化したときに行われます。臼蓋形成不全の診断を受けても、必ず手術をしなければならないわけではありません。そのため、懸念がある方は医師と入念に話し合ってから決めましょう。 臼蓋形成不全に伴う股関節痛は、保存療法・手術療法以外では「再生医療」を用いた治療も可能です。気になる方は、以下のページをご覧ください。 臼蓋形成不全は「変形性股関節症」のリスクがあるため放置は厳禁 実は、臼蓋形成不全が「変形性股関節症」の発症原因になる可能性があります。 一般的に変形性股関節症の主な発症原因は「加齢」です。しかし、臼蓋形成不全にて股関節が傷みやすい人の場合、若年でも変形性股関節症を発症する場合があります。 また、小児期の臼蓋形成不全は画像診断でわかることが多く、自覚症状がない場合もあります。そのため、幼少期に発症した臼蓋形成不全の後遺症に気が付かず放置し、変形性股関節症になってしまったケースも珍しくありません。 大人になってから股関節の違和感や痛みを放置せず、早期に適切な治療を受けることが大切です。 臼蓋形成不全でやってはいけないこと3つ 臼蓋形成不全になった際にやってはいけないことは、主に以下の3つです。 無理な運動や重労働 しゃがむ動作 関節に負担をかける座り方 本章を参考に日常生活の注意点をおさえ、悪化を防ぐようにしましょう。 無理な運動や重労働 激しい運動や重労働は、股関節に負担がかかります。股関節痛が気になる際は、以下のような動作を避けるようにしましょう。 重たい荷物の持ち運び 股関節を大きく動かす筋トレやストレッチ 激しく飛び跳ねる運動(ジョギング・ジャンプなど) ただし、まったく動かない状態が続くと筋肉が衰えてしまう原因になります。医師の指示に従って適切な運動をしましょう。 しゃがむ動作 深くしゃがむ動作は、股関節周辺の骨に負担をかけるため、痛みの悪化につながります。激しい運動のみならず、何気ない日常生活の動作にも注意が必要です。普段の生活で無意識に深くしゃがみ込む動作の例として、以下があります。 トイレでしゃがむ 床のものを拾う 靴ひもを結ぶ これらを行う際に、うっかり股関節に負担をかけると痛みが増すこともあります。臼蓋形成不全の方は、動作を過剰に繰り返さないよう十分注意しましょう。 座り方 以下の座り方は、股関節に負担をかける可能性があります。股関節の痛みがある際は避けるようにしましょう。 あぐら 正座 横座り とくに、普段から床に直接座る習慣のある方は注意が必要です。地べたに座らず、座布団・クッション・椅子などを活用して股関節の負担を和らげるようにしましょう。 臼蓋形成不全の人におすすめの筋力トレーニング ここからは、臼蓋形成不全の人におすすめの筋トレ方法を3つご紹介します。どれもすぐに実践できる方法のため、股関節痛で悩んでいる方はぜひ実践してみてください。 仰向けで膝を抱えるトレーニング 床の上に、仰向けの状態で横になる 右ひざを両手で抱える 無理のない範囲で胸に引き寄せ、10秒ほどキープ 左膝も同様に2.~3.を行う 自宅でリラックスした状態で、股関節の周りの筋肉を伸ばせます。寝る前や起床時のスキマ時間にお試しください。 立って足を広げるトレーニング 床に垂直になるようにまっすぐ立つ 右足をゆっくり真横に広げ、ゆっくり閉じる 数回繰り返す 左足も同様に行う ※転倒しないよう必要に応じて壁などに手をついて行ってください 上記の動作は、太ももの外側の筋肉が鍛えられます。また、体の軸がぶれないよう意識するとより効果的です。ぜひ実践してみてください。 座って股関節を回すトレーニング 椅子に座る 足を少し浮かせる 足の付け根を右回り・左回りにそれぞれ5回ずつ回す 上記のトレーニングは、股関節を動かす範囲を広げて柔らかくする効果が期待できます。自宅でくつろいでいるときや、仕事の合間にお試しください。 今回ご紹介した筋トレは臼蓋形成不全の方におすすめですが、無理に動かすと股関節の痛みが悪化する恐れがあります。痛みがつらい場合は、運動をすぐに中止してください。 まとめ|臼蓋形成不全を早めに治療して悪化を防ぎましょう 臼蓋形成不全は直ちに生命に関わる疾患ではありませんが、「変形性股関節症へ進行するリスクがある」ことを考えると、放置することは危険、問題になる可能性があります。 股関節に違和感があれば、早めに病院等、医療機関で専門医に相談しましょう。 当院「リペアセルクリニック」では、股関節痛の軽減や変形性股関節症の重症化予防を目的とした再生医療による治療を行っております。 「メール相談」または「オンラインカウンセリング」にて無料相談を受付中です。股関節痛でお悩みの方は、ぜひ当院までご相談ください。 臼蓋形成不全の治療についてよくある質問 臼蓋形成不全は進行しますか? 成長過程で自然治癒する場合が多いものの、臼蓋形成不全が重度になると自然に治らず悪化して変形性股関節症に移行するリスクも考えられます。 臼蓋形成不全は、股関節が不安定になりやすい状態です。軽度の場合は股関節を支える筋力を強化する目的で股関節周囲の筋力トレーニングを行うことがあります。一方で重度の場合は、変形性股関節症に進行するリスクが高いため、臼蓋を大きくするための手術を行う場合もあります。(文献2) 臼蓋形成不全になったら手術した方が良いですか? 臼蓋形成不全と診断されたからと言って、必ず手術しなければならないわけではありません。症状の程度により、適切な治療が異なります。多くの場合であれば保存療法が、重度では手術が選択されます。しかし、医師の判断と患者のライフスタイルや希望によるため、担当医としっかり相談しましょう。 年代別の変形性股関節症の進行リスクについては、以下の記事にて詳しく解説しています。気になる方は、あわせて参考にしてください。 参考文献 (文献1) 南角学ほか.「変形性股関節症患者の臼蓋形成不全は腸腰筋の筋萎縮と関連する」『第49回日本理学療法学術大会 抄録集』2巻(41号), https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2013/0/2013_0526/_article/-char/ja/(最終アクセス:2025年2月19日) (文献2) ニノ宮節夫.「リハ医のための股関節手術-その適応と術式の選択-」『リハビリテーション医学』5巻(35号), p330-p.333, 1998年https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1964/35/5/35_5_330/_pdf(最終アクセス:2025年2月19日)
2021.01.18 -
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「股関節の手術が必要になりそう……」 「術後のリスクが正直心配……」などと悩んでいませんか。 とくに高齢者が股関節の手術をする際に実施される人工股関節置換術では、痛み以外にも多くのリスクがあるのも実情です。 そこで今回は高齢者が人工股関節置換術をする前に知っておきたいリスクを解説します。 手術以外の選択肢や治療期間、歩けるまでどれくらいかかるのかなども取り上げているので、ぜひ最後までご覧ください。 【基礎知識】高齢者の股関節手術でおこなわれる人工股関節置換術とは 高齢者がおこなう人工股関節置換術とは、加齢に伴ってすり減った股関節部分を切除し、人工関節に置き換える手術です。 人工股関節置換術は加齢による関節の劣化や痛みを軽減し、生活の質を向上させるための有効な手段です。 人工股関節置換術をおこなうのは主に高齢者になり、逆に50歳未満の場合は「骨切り術」を実施するケースが大半です。 たとえ80歳以上であっても、股関節の手術前に診断した結果次第では、年齢制限なく手術を受けられます。 人工股関節には20〜30年以上の耐久性能があるため、年齢によっては再手術の必要がありません。しかし、高齢者が人工股関節置換術をする際は、後述するリスクについてよくご確認ください。 高齢者が股関節の手術をする前に知っておきたいリスク 高齢者が人工股関節置換術をする際、リスクを把握せずにおこなってしまうと、日常生活に支障をきたす可能性があります。 手術後に発生する可能性のあるリスクは、主に以下の通りです。 術後に起こりうる合併症(後遺症)のリスク 年齢によるリスク リスクが発生する原因や具体的なリスク内容を順番に解説していきます。 術後に起こりうる合併症(後遺症)のリスク 高齢者が人工股関節置換術をおこなう場合、合併症のリスクが高くなることが懸念されます。 病気は年齢を重ねるごとに発症のリスクが高まります。高齢者はとくに基礎疾患を有しているケースもあるため注意が必要です。 糖尿病などの病歴がある人は、手術前に発症する可能性のある合併症について理解し、リスクを認識することが重要です。 合併症の種類 詳細 感染 ・多くの場合で発症する合併症 ・発症率は0.5〜3.0%とされ高齢者は10% ・手術中の細菌侵入が主な原因 ・糖尿病や関節リウマチの治療をしている人、ステロイド治療を受けている人は感染リスクが高い 血栓症・肺塞栓症 ・手術中、手術後に深部静脈血栓症 ・脚のむくみや痛みを引き起こす ・血栓が肺に移動すると肺塞栓症になり突然死のリスクが発生 ・発症率は0.2%以下だが要注意 脱臼・骨折 ・人工股関節置換術の術後、転倒や無理な姿勢で発生 ・骨折は術後の転倒で発生 ・高齢者、骨粗しょう症の女性はリスクが高い 人工関節のゆるみ ・骨と人工関節の接着面にゆるみが生じて痛みや歩行障害になる ・過度な体重増加、重たい荷物を持つ、激しいスポーツなどが主な原因 高齢者に限らず発症する人工股関節置換術のリスクについては、以下の記事もあわせてご覧ください。 年齢によるリスク 人工股関節置換術を含めた手術は、高齢になればなるほどリスクが大きくなります。 高齢者は、老化に伴って股関節を支える筋肉が衰え、次第に腰が曲がって姿勢が変わります。筋肉の衰えから、若い人よりもリハビリにかける時間が長くなってしまうのです。 寝たきりになってしまうリスクもあるため、家族のサポートも重要になります。何より、高齢者が手術する際、体や心肺機能への負担も忘れてはいけません。 人工股関節置換術が必要になる変形性股関節症では、全身麻酔で手術をするケースが大半です。 心肺機能の低下に伴って、手術を受けられない場合もあるため、事前に担当医と相談して治療法を決める必要があります。 手術の年代別リスクについてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。 【高齢者向け】人工股関節における手術後のリハビリ内容 高齢者が人工股関節置換術をおこなった後は、手術の翌日からリハビリが始まります。 患者様の状態に応じてリハビリの強度が変わり、以下の段階で実施されます。 リハビリ段階 リハビリ内容 リハビリの目的 初期段階 ・ベッド上での軽い運動 ・関節のストレッチ ・筋力維持エクササイズ ・体を動かすのに慣れる ・関節の可動域を広げる ・筋力を維持する 中期段階 ・歩行訓練(歩行器や杖を使用) ・正しい姿勢で歩く練習 ・歩行距離を増やす ・バランス感覚と筋力の向上 後期段階 ・有酸素運動 ・心肺機能の強化 ・日常生活への復帰 ・心肺機能の向上 上記のように、段階に応じてリハビリ内容が異なるため、焦らずリハビリをしていきましょう。 高齢者が股関節の治療をする際の手術以外の選択肢 手術に頼らず、股関節の症状を改善するための選択肢もいくつか存在します。 保存療法 再生医療 これらの治療法は、症状や患者様の状態に応じて選ばれます。それぞれ詳しく解説します。 保存療法 高齢者が股関節の治療において「手術はしたくない」と考える場合、まず保存療法が選択肢として挙げられます。 保存療法は、股関節の痛みや機能障害を軽減させる手術以外の治療法です。 保存療法には主に、以下の種類があります。 保存療法の種類 治療の目的 詳細 薬物療法 痛みの緩和 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痛剤を使用 理学療法 筋力維持と柔軟性向上 理学療法士による運動プログラムで関節の可動域を広げ、筋肉を強化 上記の治療法が保存療法ですが、あくまで「症状の進行を遅らせる」のが主な目的です。 再生医療 従来であれば、高齢者が股関節の治療をする際、保存療法で改善されなかった場合は手術するしかありませんでした。 しかし昨今では、手術をしない治療法である「再生医療」が注目を集めています。 再生医療とは、これまで再生不可能だと思われてきた軟骨に対して、自分の幹細胞を使って再生できるようになった治療法です。 体への負担が少なく、自らの脂肪を米粒3粒程度採取して、その脂肪から幹細胞を抽出、培養します。 人工関節置換術のような手術や、長期の入院、長期のリハビリも不要なだけでなく、日帰りで済む治療法です。 変形性股関節症に関する再生医療について詳しくは、下記のリンク先をご覧ください。 股関節の手術で起こりうるリスクで不安な方は気軽にご相談ください 高齢者が発症するケースの多い変形性股関節症のような病気は、年齢を問わず初期であれば保存療法が有効です。 ただし、症状自体を止めるのは不可能です。症状が進行すると、人工股関節置換術を検討しなくてはなりません。 また、人工股関節置換術のような手術は、合併症につながるリスクがあります。手術は多くの場合、傷口からの感染症が伴うため、手術をしない再生医療が注目を集めています。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けています。 再生医療について詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。 高齢者が股関節の手術をする上でよくある質問 手術後は何に注意すれば良いの? 手術後の注意点は、回復をスムーズに進めるために「安静」が求められます。 具体的には、無理な動作や過度な負荷を避け、少しずつ日常生活に戻るようにします。 とくに、階段の昇降や長時間の立ち仕事は、最初は避けるのがおすすめです。 また、転倒のリスクを減らすために、家の中の環境を整える必要もあります。滑りやすい床や障害物を取り除き、手すりを設置するなど、安全対策を講じましょう。 さらに、手術後は免疫力が低下している可能性があるため、傷口の管理に注意し、衛生状態を保つ必要があります。 何か異常を感じた場合は速やかに医療機関に相談しましょう。 以下の記事では、より詳細に注意すべきポイントをまとめているので、ぜひ参考にしてください。 治療の期間はどれくらい? 人工股関節置換術の治療期間は、患者様の健康状態によって異なりますが、術後6〜12カ月程度です。 治療をスムーズに済ませるためにも、まずは入院前の準備として禁煙や体重管理などの徹底が必要です。 まず手術をする前には、人工股関節置換術を受ける医療機関ごとに設けられた検査項目に基づき、検査入院の有無を決めていきます。 手術を含めた入院期間中は多くの場合で、理学療法(リハビリ)も実施するので、リハビリ内容を聞いておくのも良いでしょう。 杖を使った歩行訓練や階段の上り下りなど、日常生活をイメージした訓練をおこない、2〜3週間程度で退院になります。 退院後は定期的な医師の診察も必要で、術後1カ月、3カ月、半年、1年といったタイミングでのフォローアップが推奨されています。 高齢者の場合はとくに、回復には個人差が大きいため、医師と相談しながら、無理のないペースで治療を進めていきましょう。 手術をした後は歩けるの? 人工股関節置換術を受けた後、多くの高齢者が最も気にするのは、再び歩けるようになるかどうかです。一般的には、手術後しばらくのリハビリ期間を経て、多くの患者が歩行能力を回復します。 手術直後は、痛みや腫れがあるため、杖のような歩行補助具の使用がおすすめです。 リハビリの初期段階では、理学療法士が患者様の状態に合わせたプログラムを組み、筋力や柔軟性の回復を目指します。 先述で解説したように、まずはベッド上での軽い運動から始まり、徐々に歩行訓練を開始します。 しかし、回復の速度は個人差があり、体力や健康状態、術後のケアの質に依存するため、焦らず歩けるよう訓練していきましょう。 リペアセルクリニックでは、メール相談やオンラインカウンセリングも受け付けているので、気軽にご連絡ください。 高齢者が人工股関節で歩けるようになるまでにどれくらいかかる? 高齢者が人工股関節置換術を受けた後、歩行が可能になるまでの期間は手術をしてから1週間程度です。 当然、個人の健康状態やリハビリの進捗によって異なりますが、1週間後には杖を使った歩行訓練が始まります。 手術後、最初の1〜2日間は安静が必要ですが、多くの患者様の手術が終わった2週間後には、杖を使いながら安定的に歩行が可能です。 杖を使って安定した歩行ができれば無事、退院できます。 ただし、股関節の痛みが入院中に完全回復しないケースもあるため「数カ月は軽度な痛みが残る」と捉えておきましょう。 何より、合併症のリスクも見逃せないポイントなので、定期検診では我慢せずに症状を伝えるのがおすすめです。
2021.01.13 -
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変形性股関節症|人工関節の手術のリスクを説明します 変形性股関節症と診断された場合、「薬物療法」や「運動療法(リハビリ)」といった「保存治療」以外に、「手術療法」という選択肢があります。 しかし、変形性股関節症での手術療法は、股関節を人工関節に置換える文字通り「人工股関節置換術」といい、手術としても大掛かりな部類になります。 医療機関で、人工関節を勧められた場合、以下のようなお悩みや、心配をされるのではないでしょうか?! 人工関節にする手術を勧められた場合の心配やお悩み 今ある自分の関節を人工物に取り換える違和感や恐れ 摩耗や緩みで数年後に再手術が必要な場合があること 人工関節にすることで変えなばならない生活スタイル 一度、人工関節にすると引き返せないこと 合併症の不安、万一細菌が入ると怖い再手術(3~10%) 長い手術時間や全身麻酔、輸血の心配 接続する脆くなった骨への影響 など、知れば知るほど不安に思われるのも当たり前だと思います。 そこで今回は、「変形性股関節症の人工関節手術(人工関節置換術)」について、以下のような疑問やお悩みにお答えできればと思います 「どのようなリスクがあるのか?」 「高齢者の場合のリスク?」 「術後に何を、どのように気を付けるべきなのか?」 「それ(手術)以外に方法は無いのか」 変形性股関節症の人工関節手術のリスクについて 変形性股関節症に関わらず手術は、手術であるかぎり、他の病気や、けがの手術と同じように必ずリスクは伴います。逆にリスクが一切ない手術は存在しません。 そのため、「変形性股関節症の手術に限ってリスクはない」ということは言えません。しかも手術を受ける人によってリスクは様々、「高い、或いは低い」「大または小」があります。 そのため、手術を行うためには前もって多くの検査が必要となります。 その結果、リスクが大きいと判断されれば、手術自体を受けることはできません。つまり、手術による治療は、手術をしないよりもリスクがあるともいえるのです。 高齢者の変形性股関節症の人工関節手術のリスク 高齢者の方が変形性股関節症の人工関節手術を行う場合は、リスクが高くなる可能性があります。医療機関での治療過程で「あとは手術しかない」と言われたとしても、医師に納得いくまで説明を受けて、よく検討する必要があります。 「こんなはずでは無かった」とならないように注意しましょう。 高齢者の場合、股関節はもちろんのこと、骨そのものが脆くなっていることがあり、骨ではないチタン合金、クロム合金などといった人工的に作った股関節を今ある自分の股関節に置き換えるため、体内の骨と接合する必要があります。 接合には、骨ではない合金などといった異物を取り付けるために、「セメント(骨セメント)」や、「セメントレス」といった2つの接合方法があり、患者の骨の状態を見て判断されます。 素材や技術は日々、進歩を続けていますが、どうしても一長一短があります。 人工関節、身体(骨)との接合、固定方法上のリスク セメント:当初は非常に強固だが経年で緩む危険性がある。 セメントレス:緩みにくい反面、安心できる(固定が定まる)まで6か月ほど必要。 しかし、いずれの手術であっても、成功しても、セメントはもちろん、セメントレスであったとしても時間とともに緩む可能性は0ではありません。将来に再手術というリスクという可能性を考えておくべきです。 また、特に女性の場合、事前の検査で骨粗鬆症の罹患率が高く、骨密度が低ければ、人工関節は丈夫でも周囲の骨に対して骨折というリスクがあることを注意しなければなりません。 手術の合併症、手術で感染症が重篤化するリスク 人工関節の可否、骨だけの問題ではなく、身体の免疫機能そのものが低下している場合、変形性股関節症の手術が無事終わったあとでも、その後に感染症を引き起こせば重篤になる可能性があります。 一度感染症を引き起こしてしまうと傷の治りが悪くなるため、結果として再手術が必要となり人工股関節を取り替えなければならないような事態になる恐れもあります。 感染症をおこしてしまう確率を0%にすることはできず大変危険なので、免疫機能についても十分に検査をして、変形性股関節症の手術に適応するかどうかを検討しなければなりません。 それ以外にも全身麻酔のリスク、輸血のリスクなど検討しなければならないことは数多くあります。 これらは、けして大げさに申し上げているのではなく、実際に人工関節手術を受ける前に説明を受ける内容です。 保存療法では人工関節を避けることはできない 保存療法とは、内服薬や外用薬などの薬物を利用する薬物療法や、ウォーキングなどの軽い運動を行い股関節周囲や足の筋力を高めるリハビリテーション、運動療法があるのですが、これら地道な努力を行なっているにもかかわらず痛みが緩和されずに効果を感じられないという人もいます。 また、初期のころは多少でも効果を感じることができたけど、徐々に効果が低くなるという場合もあります。 このように保存療法は、コツコツできる範囲で行っていても効果が感じられず、常に痛みがあり、日常生活に支障をきたすようであれば、手術を受けたほうが良いと判断される場合もあり、保存療法等リハビリを行っているからと人工関節の手術を避けられるものではありません。 人工関節、術後のリスク 変形性股関節症の手術を受けて、めでたく成功した場合でも注意は必要です。 実は、術後の日常生活にこそリスクが潜んでいます。 そこで手術後にどのような生活を心がければ良いのかを事前に知っておきましょう。そうすることで手術を受けた後も、危険を回避しながら安全に過ごすことができます。 日常的に自分の姿勢や動作に注意しなければなりません 変形性股関節症の手術を終えた直後、リハビリをすることで体の調子が徐々に戻ってきます。上手くいけば痛みも改善し、無理をしなければ日常生活を送ることができるようになるでしょう。 しかし、常に気を付けなければいけないことがあります。それは、股関節への配慮です。 ご注意いただきたいのは、股関節を無理に内側にひねるような姿勢は、脱臼を起こしてしまう恐れがあります。また、あぐらや正座、しゃがむ動作などの姿勢は、変形性股関節症の手術の後におこなうと非常に危険です。 つまり、和風の床に直接座るような生活スタイルから、椅子やベットで過ごせる洋風の生活へ意識してチェンジしていく必要があります。この辺りも家族の理解を得ながら進めていきましょう。 もしもの場合、再手術になることもあるので、このあたりは十分に注意しなければなりません。 手術後の細菌による感染に注意(皮膚炎や歯周病も) 変形性股関節症の手術の後に起こるリスクは脱臼などだけではありません。感染症にも十分注意が必要です。 感染は、手術した部位だけの問題ではありません。手術後の感染を防ぐためには「水虫」や、「皮膚炎」などにも注意すべきです。足まわりを清潔に保っておくことが大切です。 また虫歯、歯槽膿漏などの症状によって細菌が入り、感染が起こす可能性もあるため、常に口腔内を清潔にしておくことも重要です。必要であれば手術の前に歯科、口腔外科などに通い、オーラルケアをしておけば更に安心です。 変形性股関節症|人工関節を選択する場合に知っておきたいこと 変形性股関節症の手術は、手術中だけでなく手術後の生活にもリスクが伴います。なるべく危険を避けて手術を受けるようにしましょう。 事前に手術内容を理解しておく(納得する) 変形性股関節症の手術で、自身の股関節を人工の股関節に置き換える手術を行う場合、手術中、術後の感染リスクや、人工股関節が入ることによるリスク。どのような生活が待っているのかなどを十分に説明を受け、理解しておくことが必要です。 事前に手術内容を把握しておくことで、手術をしたその日から危険を回避できるような対策をとれるようにもなります。また、知識を持っていれば手術を受ける前に股関節に負担のかからない生活環境を整えるなどの対応を取ることも可能になります。 いずれにしても変形性股関節症の手術を行うことが自分にとって本当に最善なのか検討し、危険が多いと感じるようであれば、まずは薬物療法や、運動療法で痛みを改善することを優先したほうが良いかもしれません。 これら主治医ともよく話し合って、納得して手術を受けるようにしてくださいね。今の時代、他の医療機関でセカンドオピニオン受けるという手もあります。手術は最終手段です。 信頼できる医療機関を選択する(自身で納得できること) 自分はもとより、家族の同意を得て変形性股関節症の手術を決断したなら、多くの症例を持ち、信頼できる先生がいたり、設備が整った病院である等の基準も大切です。普段から通いなれて気心が知れた医療機関という手段もあります。 選び方としては今やネット社会です。情報は検索することで過剰なほど得られます。 変形性股関節症の手術を行っている医療機関は全国に多くありますがインターネットや、口コミを参考にしながら事前に情報収集しましょう。 手術に関して家族や信頼できる友人などの意見を聞ければ聞き、ご自分でメリットはもちろんですが、リスクもしっかりと理解し、納得した上で手術を受けましょう。後戻りはできないので注意してください。 手術後リハビリをしっかりと行う 変形性股関節症の手術が成功したあと大切なのはリハビリです。 急がず、コツコツ気長に継続して人工股関節を体に慣らしていくことが大切です。手術後の危険のリスクを少なくするためにも前向きに取り組んで回復を目指しましょう。 歩行が問題なくできるようになっても無理は禁物。転倒などの危険性もあります。自信がつくまでは杖を使うなど危険を回避する方法を取り入れることも大切です。 変形性股関節症|人工関節以外の選択肢「再生医療」という先端医療 変形性股関節症の手術は、症例を有した信頼のできる医療機関であれば、基本的に安全に受けることができるます。 しかし、手術である以上、危険が全くないというわけではないため、手術後の生活に不安を感じている人や年齢の問題、骨密度や再手術の可能性、感染のリスク、何より人工のもので置き換える違和感に恐怖を感じておられる方にご紹介したいのが近年注目されている先端治療である「再生医療」という手段です。 手術を決断する前に自分に可能性がないか調べてみてはいかがでしょうか。上手くいけば手術というリスクを回避して改善を目指すことができるかもしれません。 再生医療は、患者自身の細胞を利用するため、拒絶反応やアレルギーなどの副作用が少なく、安全性に優れた治療方法です。また、人工股関節を入れるというような大掛かりな手術ではないので、感染のリスクが少ないのも魅力です。 変形性股関節症で、従来の治療方法ではあまり痛みの改善効果が期待できなかった人や、手術の危険要素がどうしても不安であるという人にとって、再生医療は選択肢の一つになるでしょう。 > 股関節の再生医療について詳細 https://youtu.be/BIzpa2SVAt4?si=D4MITF9M-bqvJbKo まとめ・変形性股関節症|人工関節手術のリスクについて 今回は、変形性股関節症の手術における「リスク」について紹介しました。これは脅しなどではなく、危険性やリスクを知識として知っておき、理解しておくことが自らを守ることに繋がると判断したためです。 医療機関で納得のいく説明を受けるためにも手術の実際とリスクを知っておき、疑問点は臆すること質問できるようになって欲しいと思います。 手術を検討する場合は、手術そのものだけでなく、手術後の生活についても事前にしっかりと理解し、信頼できる医療機関を選ぶこと、自分自身はもちろんのこと、家族も納得してもらった上で手術を受けることが大切です。 また、最後にご紹介した再生医療は、手術を避けることができる危険の少ない最先端の医療として注目を集めています。変形性股関節症の治療においても効果を期待することできます。 いずれにしましても、手術はもちろん、治療にあたってはしっかりとした実績を持った専門医や医療機関にご相談になってください。以上、変形性股関節症の人工関節手術のリスクと術後の注意点について記させて頂きました。 人工関節の話が出たり、人工関節置換術の説明を受けたり、変形性股関節症でお悩みの場合、参考にしていただければ幸いです。 ▼ 再生医療で変形性股関節症を治療する 変形性股関節症は、最新の再生医療なら手術せずに症状の改善を目指せます(詳細) ▼以下もご覧ください 変形性股関節症の保存療法|治療効果を上げるための注意
2021.01.06